JP2004066671A - 複合型光学素子の離型方法及び金型装置 - Google Patents
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Abstract
【目的】素子基板表面形状に制約を受けず、素子基板に大負荷を掛けることなく、容易に離型が可能な品質性と生産性に優れた複合型光学素子の離型方法を提供すること。
【構成】複合型光学素子の離型方法において、光学素子基板を規定の樹脂厚に配置すると共に、金型の光学面より突出したバネ部材の一端面を軽押圧して樹脂を硬化した後、離型進展手段により、バネ部材の一端面を光学素子基板から剥離し、樹脂層に亀裂進展形状を形成し、再び離型進展手段によりバネ部材の一端面を光学素子基板面に押し当てると共に、バネ部材の一端面を介して、形成された亀裂進展形状の直近から前記素子基板面に負勢力を与え、軽負荷で効率良く金型と樹脂とを剥離する。
【選択図】 図1
【構成】複合型光学素子の離型方法において、光学素子基板を規定の樹脂厚に配置すると共に、金型の光学面より突出したバネ部材の一端面を軽押圧して樹脂を硬化した後、離型進展手段により、バネ部材の一端面を光学素子基板から剥離し、樹脂層に亀裂進展形状を形成し、再び離型進展手段によりバネ部材の一端面を光学素子基板面に押し当てると共に、バネ部材の一端面を介して、形成された亀裂進展形状の直近から前記素子基板面に負勢力を与え、軽負荷で効率良く金型と樹脂とを剥離する。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、複合型光学素子の離型方法及び複合型光学素子の金型装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
複合型光学素子の製造方法において、樹脂を硬化した後、金型から樹脂と素子基板を一体的に容易に離型する手段として、離型剤から成る非粘着層を形成する技術が古くから知られている。例えば、特開昭60−73816号公報には、金型に離型剤を塗布する方法が提案されている。
【0003】
又、特開昭54−6006号公報には、硬化した樹脂と金型の密着面周辺全域に温度差を与え、熱膨張率の違いを利用して離型する方法が提案されている。
【0004】
或は、特開昭60−76319号公報には、成形品と金型との密着体に超音波振動を当接させ、密着体に超音波振動を与えることによって離型する方法が提案されている。
【0005】
更に、特開平06−270170号公報には、凹面レンズの金型成形面の光学有効径外外周部に形状記憶合金から成る弾性部材を設け、該弾性部材に樹脂を接触させて樹脂を硬化した後、前記弾性部材を変形させて樹脂と金型とを剥離する方法が提案されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、特開昭60−73816号公報記載の離型剤を成形面全体に塗布する方法では、塗布層の厚さ制御が困難なため、塗布ムラが発生する。又、離型剤は非粘質のため、樹脂が硬化中に収縮することで、部分的に樹脂が剥離する現象、即ち、ヒケが発生し、光学面を高精度に形成できない欠点を有する。尚、塵の付着や離型剤を稀釈する有機溶剤の取扱い及び対作業環境の考慮に注意を要する等の作業工程上の問題点を有する。
【0007】
更に、離型を繰り返すと、離型剤が徐々に樹脂に移行したり、表面の非粘着性の経時的な劣化を防止するため、一定経時後は再塗布を行うと定めると、それにより生産効率が低下する。それを避けるためには高価な金型を多数用意する必要もある。
【0008】
特開昭54−6006号公報よれば、所定温度加熱による金型と樹脂の線膨張の違いによる変形を離型に利用するため、初期形状に比べて全ての部材が熱変形状態にあり、金型を初期形状に戻すには、室温に戻した後、更に8時間の型形状再生時間が必要あることが実験により確認されている。従って、金型に温度変化を与える時間が長く、成形時間周期が長くなるという問題を抱えている。
【0009】
又、特開昭60−76319号公報よれば、超音波振動を密着体に与えて成形品と金型を離型するための初期亀裂を誘発するが、振動を与え続ける時間が長く、安定していないため、結果的に成形時間周期が長くなるという問題がある。
更に、特開平06−270170号公報よれば、凹面レンズ基板上の樹脂に形状記憶合金から成る弾性部材を接触させて樹脂を硬化した後、弾性部材を変形させて樹脂と金型とを剥離する。これは弾性部材が臨海応力を超えて変形することなく弾性部材の形状が初期形状に再生することを前提としている。
【0010】
ところが、凸型面レンズに上記形態を採用すると、離型方向とは相反する方向にレンズ面形状があるため、離型時、弾性部材に臨海応力を超えた力が加わり、弾性部材を初期形状に再生できない場合がある。
【0011】
又、近年では円形レンズ基板に限らず、マイクロレンズ、液晶モジュール等、素子基板が薄型化されたものが開発されており、離型時、基板の外形に機械的大負荷を与えることは一層困難となっている。
【0012】
本発明は上記問題に鑑みてなされたもので、その目的とする処は、素子基板表面形状に制約を受けず、素子基板に大負荷を掛けることなく、容易に離型が可能な品質性と生産性に優れた複合型光学素子の離型方法及び金型装置を提供することにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明は、所望の光学面を有する金型上にエネルギー硬化型樹脂を滴下し、該滴下された樹脂と光学素子基板を接触させ、樹脂を押し拡げて光学素子基板と、前記金型の間に樹脂層を介在させ、エネルギーを照射して樹脂を硬化し、該硬化樹脂と、前記光学素子基板を一体的に離型する複合型光学素子の離型方法であって、前記金型内部に設けられた空域と、前記金型成形面の光学有効範囲外の一部に前記空域と連通して設けられた開口部と、一端面が光学素子基板面と隙間なく接触し得る面で形成され、且つ、剥離性加工部が一体的に施されて前記金型の開口部に係合して保持され、他端面が前記金型の空域内に固定されるバネ部材と、前記金型の空域内を機械的移動手段若しくは温度制御手段を用いて、前記バネ部材の一端面を前記光学素子基板と、離間方向及び接触方向ないし接触方向に可動する離型進展手段とを、少なくとも具備する複合型光学素子の離型方法において、前記光学素子基板を規定の樹脂厚に配置すると共に、前記金型の光学面より突出した前記バネ部材の一端面を軽押圧して樹脂を硬化した後、前記離型進展手段により、前記バネ部材の一端面を前記光学素子基板から剥離し、樹脂層に亀裂進展形状を形成し、再び前記離型進展手段により前記バネ部材の一端面を前記光学素子基板面に押し当てると共に、前記バネ部材の一端面を介して、前記形成された亀裂進展形状の直近から前記素子基板面に負勢力を与え、軽負荷で効率良く金型と樹脂とを剥離することを特徴とする。
【0014】
以下に本発明の作用について説明する。
【0015】
図8(a)に示すように、レンズ基板51の外形にいくら外力Fを与えても、樹脂52と金型の密着面で円弧状に力は分散され、樹脂と金型の剥離は一向に発現しない。そこで、これを剥離しようとすると分散された力各fを基の外力Fと対等にするため、F1+F2+F3+…の力、即ち、Fの何倍もの荷重が必要になる。
【0016】
図8(b)に示すように、レンズ基板41の外形41aに外力Fを与えると、レンズ基板41に成形された樹脂42と連なるノッチの先端部42bの金型との密着面に最初に力f1が伝達され、この力f1は外力Fとf1≒F・μ(μは1に近い)の関係であるため先端部42bから亀裂は一機に進展し、次に力はf2,f3へ受け継がれるが、大きく減衰しないため、亀裂は先へ進展し、V形状の樹脂層は金型から容易に剥離される。
【0017】
次に、例えばF/2の外力を41dのような41aから隔たった位置に与えたとしても離型が更に進展することはないが、41aの近傍である41b,41cにF/2の外力を与えると、亀裂が既に形成している箇所f4,f5から更に亀裂が進展し、離型が可能になる。即ち、初期亀裂開始点の離型力より低い離型力でも段階的に離型を進展させることができる。
【0018】
又、レンズ基板が大きくなる程、樹脂と金型の密着面積が大きくなり、比例して大きな離型力が必要となるため、光学有効径外に成形される42bのようなノッチを「複数隣接させて成形する」、或は「等分に複数箇所に分散して成形する」等の工夫が必要になる。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下に本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
【0020】
<実施の形態1>
図1は本実施の形態の樹脂硬化直後の縦断面を表す図、図2は本実施の形態の上面透視図、図3は図1の指示階層に基づく上面を表す図、図4は本実施の形態の成形工程を表す縦断面図、図5は本実施の形態を更に大きな基板に展開した例を表す図である。
【0021】
図1〜図3を参照して本実施の形態の構成について説明し、次に図1及び図4を参照して本実施の形態の成形工程について説明する。
【0022】
図1に示す金型3は、表層に化学メッキ層が施工された所望の光学面3bと、光学有効経外のレンズ基板1の端面に位置する開口部3aとから構成され、この開口部3aは、型内部の空域11と連通している。この金型の光学面3bの光軸上には、凸型球面レンズ基板1(以下;レンズ基板と称す)が同心位置で配置され、金型3の光学面3bとガラス基板1の間に紫外線硬化型樹脂2(以下;樹脂と称す)を介在させ、金型3、樹脂2、ガラス基板1は密着状態を形成している。
【0023】
図1〜図3に示すマジックバネ4は、一端の上面4aが、テフロン加工が施工されレンズ面に相対する面を持つ部位5と一体化され、バネ性を保持するアーム部4cと、型内部の空域11で位置を決めるための座部4dとから一体的にコの字状に形成される。バネ材としてはSUS等の繰り返しバネ特性の良好な材料を選択する。図2に示すようにマジックバネ4の上面及び部位5は、レンズ有効径の円弧に対して法線方向にV型の切り欠きが形成されている。このマジックバネ4は、樹脂硬化直後の初期状態では、金型の開口部3aに隙間なく嵌合し、部位5を介してレンズ基板1に完全密着し、プリチャージされている。
【0024】
型内部の空域11には、座台10が設けられ、図3に示すように座台10は2対設けられた離型ピン7の座部7bを摺動支持すると共に図1に示すようにマジックバネ4の座部4dをも支持する。離型ピン7のバネ座7cとマジックバネ4の一端面の面4bとの間に圧縮バネ6が設けられ、圧縮バネ6はマジックバネ4の一端面の上面4aをレンズ基板1側へ付勢すると共に離型ピン7の座部7bを座台10に安定的に負勢する。又、図1の初期状態では、離型ピン7の頂部7aとマジックバネ4の一端面の面4bの間に一定の隙間が設けられている。
【0025】
図1及び図3に示す離型台9は、その外周が型内部の空域11内のシリンダ12に摺動嵌合し、駆動モータ等の機械的動力により上下移動可能であると共に、上部に設けられた離型ピン7との当接部9aが離型ピン7の座部7bと軽接触している。更に、離型台9の上部にバネ掛け部9bが設けられており、このバネ掛け部9bと図2示すマジックバネ4のバネ掛け部4fの間に設けられた引張りバネ8は僅かにプリプリチャージされている。
【0026】
以下、図1及び図4を参照して成形工程について説明する。
【0027】
光学ガラスS−BAL41により形成されたレンズ基板1の下面に樹脂2との密着性を向上させるため、予めシランカップリング剤をディップコートして80℃30分間の乾燥処理を行う。ここで用いるカップリング剤は、水:エタノールが1:9の溶液に酢酸をPH調整した溶媒液にシランカップリング剤A−174(商品形式名;日本ユニカ(株))を1〜2wt%の割合で稀釈した液を用いる。
【0028】
金型の光学面中心にメタクリレート系紫外線硬化型樹脂、適量分を不図示ノズル口から吐出する。不図示アームにてレンズ基板1外形部を捕獲してレンズ基板1を金型3上の不図示中心位置出し枠に嵌合させる。その後、中心位置出し枠を光軸に沿って下降させ、レンズ基板1を金型3の光学面と平行に近接させ、気泡を巻き込まぬよう低速度で樹脂にレンズ基板1を接触させる。樹脂厚が規定値に達すると、レンズ基板1を嵌合保持した中心位置出し枠の下降は停止する。この時点で樹脂は光学有効径外まで押し拡げられており、レンズ基板1上方より紫外線照射可能な状態にある。
【0029】
レンズ基板1上方より紫外線を照射すると、図1に示すようにレンズ基板1、樹脂2、機械的動力が伝達されると、引張りバネ6を介して、金型3が密着した密着体が形成される。同時に図1の縦断面図によるとマジックバネ4と一体化された部位5も密着体であることが観察される。然るに、部位5は前述したように、テフロン加工が施工されているため図4の(a)に示すように離型台9にF9−1方向の機械的動力が伝達されると、引張りバネ6を介してマジックバネ4の一端面の上面4a及び一体化された部位5にF8−1の力が加わり、部位5が隔離しようとする力F5−1が働き、マジックバネ4のテンションF4−1と圧縮バネ6のテンションF6−1は抑えられ、部位5はレンズ基板1、樹脂2から容易に隔離し、間隙y1が形成される。ここで、部位5が剥離される各バネ力との相関は次関係で表される。
【0030】
(F4−1)+(F6−1)<(F9−1)−(F8−1・μ8)
−(F5−1・μ5)
μ;各力の損失
図2に示すように、部位5にはV型の切り欠き5bが形成されているため、前記間隙y1によって光学有効径内の樹脂層2aと連なる光学有効径外にV型のノッチ形成する樹脂層2bが成形される。このV型ノッチの形成によって、次の離型工程に先立ち、レンズ基板及び樹脂を金型から離型する際の離型応力が格段に緩和されることは、前述の従来例との作用の比較で説明した通りである。
【0031】
図4(b)に示すように、離型台9にF9−2方向の機械的動力が伝達されると、当接部9aが2対の離型ピン7の座部7bを押圧し、F9−3の力が伝達される。2対の離型ピン7が上昇し、離型ピン7の頂部7aがF7−1の力でマジックバネ4の一端面の面4bを押圧すると、マジックバネ4と一体の部位5bがレンズ基板1をF5−2の力で押圧し、V型のノッチを形成する樹脂2bから亀裂が進展し、金型3と樹脂2の間に間隙y4が形成される。間隙y4が拡大すると、部位5とレンズ基板1との間に間隙y5が現れ、レンズ基板1及び樹脂2が金型3から一体的に離型される。ここで発生するレンズ基板1の離型力と、各バネとの相関は次関係で表される。
【0032】
(F4−2)−(F6−2)≪(F9−2)−(F9−3・μ9)
−(F7−1・μ7)−(F5−2・μ5)
=(F1−1)
μ;各力の損失
レンズ基板1の離型力F1−1が比較的抑制された力で済むことは、前述の従来例との作用の比較で説明した通りである。
【0033】
以下、成形後の金型装置の初期化課程について説明する。
【0034】
図4(c)に示すように、離型台9にF9−3方向の機械的動力が伝達され、ストッパー13まで移動すると、引張りバネ6を介してマジックバネ4の一端面の面4bにF8−2の力が加わり、マジックバネ4の自由バネ力F4−2も加算され、マジックバネ4の一端面の上面4a及び一体化された部位5が初期状態(部位5の表面が樹脂層2の層厚より僅かに突出した位置)に再生される。同時に2対の離型ピン7は圧縮バネ6を介してF6−3の力が働き、座台10に押し戻され、離型ピン7の座部7bと離型台9の当接部9aとが、軽接触状態に再生される。ここで部位5が初期状態に再生する過程と各バネとの相関は次関係で表される。
【0035】
(F6−3)+(F4−3)<(F9−3)―(F8−2・μ8)
μ;各力の損失
本実施の形態における特徴的な効果は、前述したように、光学有効径外の硬化した樹脂層にV型のノッチを容易に形成し、その近傍に、金型と樹脂の密着面方向から負勢力を与えることによって、従来になく抑制された力で、ノッチ先端部に樹脂と金型との剥離を容易に発現し、更に抑制された力のまま剥離を進展させ、離型を完了することが可能になった。これにより、金型3の光学面3b全体に離型剤処理を施さずとも、連続しての離型が容易に実施できる。
【0036】
尚、本実施の形態では、離型台9の動力伝達方法としてエアシリンダを用いても良く、その場合は、密閉された型内部の空域11の内気圧変化をマジックバネ4の一端と一体化された部位5がレンズ基板1から隔離することに利用すれば引張りバネ6は不要になる。
【0037】
又、本実施の形態では、光学有効径外の硬化樹脂層にV型のノッチを1つ形成する形態を採ったが、レンズ基板が大きくなる程、1箇所に加えられる離型力の効果は限られるため、図5(a)に示すように対向する箇所にV型のノッチを形成したり、図5(b)に示すように等分の3箇所にV型のノッチを形成するような工夫が必要である。
【0038】
<実施の形態2>
図6は本実施の形態の樹脂硬化直後の縦断面を表す図、図7は本実施の形態の上面透視図である。本実施の形態は実施の形態1の変形例であるため、共通点についてはその説明を省略する。
【0039】
図6及び図7に示す冷却装置の封入口34と温風送風口35は、型内部の密閉された空域31と連通して設けられ、内部には結露防錆用の構造材が用いられる。図6に示すマジックバネ24の断面形状は実施の形態1のマジックバネ4と同様の形態であるが、使用する材料は冷却下で矢印U方向へ変位し、15℃以上(逆変態終了温度)で矢印T方向へ再生する形状記憶合金を用いる。形状記憶合金の材質は、Ni−Ti系に代表されるn系の合金である。又、マジックバネ24の一端面の上面24a及びこの面と一体化されたテフロン質の部位25は、図7に示すようにV型の切り欠きが隣接して2箇所設けられた形態である。
【0040】
その他、実施の形態1の引張りバネ6を使用しないため、本実施の形態のマジックバネ24、離型台29にはバネ掛け用のフックが設けられていない。
【0041】
以下、図6及び図7等を参照して特に実施の形態1とは異なる成形工程について説明する。
【0042】
レンズ基板1上方より紫外線を照射し、樹脂22が硬化すると、図6に示すようにレンズ基板1、樹脂22、金型23から成る密着体が形成される。同時にマジックバネ24と一体化された部位25も密着体となるが、実施の形態1と同様にテフロン質である。このため、図6に示すように冷却装置の封入口34から窒素冷却気が充填されると、型内部の空域31に設けられたマジックバネ24は、変態開始温度0℃以下の作用を受け、マジックバネ24の一端面の上面24a及び部位25が矢印U方向に変位して、レンズ基板1及び樹脂22から容易に隔離する。図7に示すように、部位25には、V型の切り欠き25b−1,25b−2が形成されているため、光学有効径内の樹脂層22aと連なる光学有効径外にV型のノッチを形成する樹脂層22b−1,22b−2が成形される。
【0043】
この直後、送風口35から30℃の温風が送風されると、マジックバネ24は逆変態開始温度10℃以上の作用を受け、マジックバネ24の一端面の上面24a及び部位25が矢印T方向に変位して、マジックバネ24を初期形状に再生する。
【0044】
続いて、実施の形態1と同様に離型台29にF29方向の機械的動力が伝達され、離型ピン7の座部を押圧し、3対の離型ピン7が上昇し、離型ピン7の各頂部がマジックバネ24の一端面の面24bを押圧する。更に、マジックバネ24と一体の部位25がレンズ基板を押圧すると、V型のノッチ22b−1,22b−2から亀裂が進展し、レンズ基板1及び樹脂22が金型23から一体的に離型される。
【0045】
こうして、本実施の形態においても実施の形態1と同様の特徴的な効果を得ることができる。
【0046】
但し、マジックバネ24の弾性部24cは形状記憶合金の性質である大きな変形を与えても除荷すると完全に復元する弾性性質を持っているため、離型ピンの押圧力が除かれると、再び元の形状に戻り、何度でも繰り返し同じ作用を起こすことができる。この点では、実施の形態1よりも耐久性の面で優れている。
【0047】
尚、型内部の温度調整を必要とする空域31は、温度制御を効果的に行うためスペースを小さくし、温度差による線膨張の影響が金型の光学面に波及しないようにする。
【0048】
前記各実施の形態では、光学有効径外に樹脂から成るV型のノッチを1箇所成形し、その近傍に樹脂成形面側から離型力を与えた場合、2箇所隣接したV型のノッチを形成し、その近傍に樹脂成形面側から離型力を与えた場合について詳しく記述したが、本発明はこれに限定されるものではなく、V型のノッチを4箇所以上等分に成形、或はV型のノッチを隣接して3箇所以上成形しても良く、やはり、その近傍に樹脂成形面側から離型力を与えることによって同様の効果が得られる。
【0049】
又、図5のようにV型のノッチを2箇所対向して成形した場合、V型のノッチを3箇所等分に成形した場合は、時間差を設けて、順次、各V型のノッチ近傍に樹脂成形面側から離型力を与えることで順次剥離を進展させ、素子基板への応力負担を軽減し、本実施の形態と同様の効果が得られる。
【0050】
更に、前記各実施の形態では、コの字状バネの一端面の上面に、テフロン加工が施工され一体化された部位のレンズ基板面と相対する表面形状を凸面対応としたが、これに限定されるものではなく、部位の表面形状を凹面レンズ基板対応、或は平面素子基板対応としても良く、その場合も本実施の形態と同様の構成により同様の効果が得られる。
【0051】
(比較例1)
本発明の比較例として金型の光学面上が鏡面加工され、本発明と同様に化学メッキが施工され、離型材未塗布の金型を用い、樹脂硬化前に、光学有効径外のレンズ基板と金型の間に樹脂厚相当のテフロンシートを介在させ、樹脂硬化後は除去して図8(b)に示すようなV型のノッチ42bを形成し、同時に本発明と同様な金型、樹脂及び凸型レンズ基板の密着体を形成した後、V型のノッチから隔たった位置41dのレンズ基板側面と、その対向する側面に同じ外力Fを与えて、レンズ基板を上面方向に持ち上げようとしたが滑ってしまい離型できない。ノッチ部にも剥離の兆候は現れない。
【0052】
(比較例2)
本発明の比較例として比較例1と同様の金型を用い、比較例1と同様の方法でV型のノッチ42bを形成し、同時に本発明と同様な金型、樹脂及び凸型レンズ基板の密着体を形成した後、レンズ基板側面のノッチ直近41aと、その対向する側面に同じ外力Fを与えて、レンズ基板を上面方向に持ち上げようとしたところ、ノッチ先端からの剥離の兆候が観られたが、やはり滑ってしまい離型には至らなかった。
【0053】
【発明の効果】
以上の説明で明らかなように、本発明によれば、エネルギー照射後、硬化した樹脂のヒケによる成形面形状の精度不良や、離型剤塗布ムラによる成形面の外観ムラの発生がない。又、成形の度に型構造及び素子基板の温度循環を長時間待機したり、周期振動等の外的負荷を長時間与える必要がないので、成形の時間周期が短縮され、成形品の低コスト化が実現可能である。
【0054】
更に、基板面形状に対応して軽負荷で薄型基板の連続した離型が容易になり、素子基板及び素子成形面形状の損傷による不良品が発生しない。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態に係る樹脂硬化直後のレンズ基板の密着状態及び金型装置の縦断面の一部を示す図である。
【図2】本発明の実施の形態1に係る樹脂硬化直後の一部上面透視図である。
【図3】本発明の実施の形態1に係る図1の指示階層に基づく上面を示す図である。
【図4】本発明の実施の形態1に係る成形工程を表す縦断面図である。
【図5】本発明の実施の形態1に係る大きな基板への展開例を示す一部上面透視図である。
【図6】本発明の実施の形態2に係る樹脂硬化直後のレンズ基板の密着状態及び金型装置の縦断面の一部を示す図である。
【図7】本発明の実施の形態2に係る樹脂硬化直後の一部上面透視図である。
【図8】本発明の実施の形態に係る効果と従来例と比較例を説明する図である。
【符号の説明】
1,21,41,51 レンズ基板
2,42,52 紫外線硬化型樹脂
3,23 金型
4,24 マジックバネ
5,25 部位(テフロン質)
6 圧縮バネ
7 離型ピン
8 引張りバネ
9,29 離型台
10 座台
11,21 空域
12 シリンダ
13 ストッパ
【発明の属する技術分野】
本発明は、複合型光学素子の離型方法及び複合型光学素子の金型装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
複合型光学素子の製造方法において、樹脂を硬化した後、金型から樹脂と素子基板を一体的に容易に離型する手段として、離型剤から成る非粘着層を形成する技術が古くから知られている。例えば、特開昭60−73816号公報には、金型に離型剤を塗布する方法が提案されている。
【0003】
又、特開昭54−6006号公報には、硬化した樹脂と金型の密着面周辺全域に温度差を与え、熱膨張率の違いを利用して離型する方法が提案されている。
【0004】
或は、特開昭60−76319号公報には、成形品と金型との密着体に超音波振動を当接させ、密着体に超音波振動を与えることによって離型する方法が提案されている。
【0005】
更に、特開平06−270170号公報には、凹面レンズの金型成形面の光学有効径外外周部に形状記憶合金から成る弾性部材を設け、該弾性部材に樹脂を接触させて樹脂を硬化した後、前記弾性部材を変形させて樹脂と金型とを剥離する方法が提案されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、特開昭60−73816号公報記載の離型剤を成形面全体に塗布する方法では、塗布層の厚さ制御が困難なため、塗布ムラが発生する。又、離型剤は非粘質のため、樹脂が硬化中に収縮することで、部分的に樹脂が剥離する現象、即ち、ヒケが発生し、光学面を高精度に形成できない欠点を有する。尚、塵の付着や離型剤を稀釈する有機溶剤の取扱い及び対作業環境の考慮に注意を要する等の作業工程上の問題点を有する。
【0007】
更に、離型を繰り返すと、離型剤が徐々に樹脂に移行したり、表面の非粘着性の経時的な劣化を防止するため、一定経時後は再塗布を行うと定めると、それにより生産効率が低下する。それを避けるためには高価な金型を多数用意する必要もある。
【0008】
特開昭54−6006号公報よれば、所定温度加熱による金型と樹脂の線膨張の違いによる変形を離型に利用するため、初期形状に比べて全ての部材が熱変形状態にあり、金型を初期形状に戻すには、室温に戻した後、更に8時間の型形状再生時間が必要あることが実験により確認されている。従って、金型に温度変化を与える時間が長く、成形時間周期が長くなるという問題を抱えている。
【0009】
又、特開昭60−76319号公報よれば、超音波振動を密着体に与えて成形品と金型を離型するための初期亀裂を誘発するが、振動を与え続ける時間が長く、安定していないため、結果的に成形時間周期が長くなるという問題がある。
更に、特開平06−270170号公報よれば、凹面レンズ基板上の樹脂に形状記憶合金から成る弾性部材を接触させて樹脂を硬化した後、弾性部材を変形させて樹脂と金型とを剥離する。これは弾性部材が臨海応力を超えて変形することなく弾性部材の形状が初期形状に再生することを前提としている。
【0010】
ところが、凸型面レンズに上記形態を採用すると、離型方向とは相反する方向にレンズ面形状があるため、離型時、弾性部材に臨海応力を超えた力が加わり、弾性部材を初期形状に再生できない場合がある。
【0011】
又、近年では円形レンズ基板に限らず、マイクロレンズ、液晶モジュール等、素子基板が薄型化されたものが開発されており、離型時、基板の外形に機械的大負荷を与えることは一層困難となっている。
【0012】
本発明は上記問題に鑑みてなされたもので、その目的とする処は、素子基板表面形状に制約を受けず、素子基板に大負荷を掛けることなく、容易に離型が可能な品質性と生産性に優れた複合型光学素子の離型方法及び金型装置を提供することにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明は、所望の光学面を有する金型上にエネルギー硬化型樹脂を滴下し、該滴下された樹脂と光学素子基板を接触させ、樹脂を押し拡げて光学素子基板と、前記金型の間に樹脂層を介在させ、エネルギーを照射して樹脂を硬化し、該硬化樹脂と、前記光学素子基板を一体的に離型する複合型光学素子の離型方法であって、前記金型内部に設けられた空域と、前記金型成形面の光学有効範囲外の一部に前記空域と連通して設けられた開口部と、一端面が光学素子基板面と隙間なく接触し得る面で形成され、且つ、剥離性加工部が一体的に施されて前記金型の開口部に係合して保持され、他端面が前記金型の空域内に固定されるバネ部材と、前記金型の空域内を機械的移動手段若しくは温度制御手段を用いて、前記バネ部材の一端面を前記光学素子基板と、離間方向及び接触方向ないし接触方向に可動する離型進展手段とを、少なくとも具備する複合型光学素子の離型方法において、前記光学素子基板を規定の樹脂厚に配置すると共に、前記金型の光学面より突出した前記バネ部材の一端面を軽押圧して樹脂を硬化した後、前記離型進展手段により、前記バネ部材の一端面を前記光学素子基板から剥離し、樹脂層に亀裂進展形状を形成し、再び前記離型進展手段により前記バネ部材の一端面を前記光学素子基板面に押し当てると共に、前記バネ部材の一端面を介して、前記形成された亀裂進展形状の直近から前記素子基板面に負勢力を与え、軽負荷で効率良く金型と樹脂とを剥離することを特徴とする。
【0014】
以下に本発明の作用について説明する。
【0015】
図8(a)に示すように、レンズ基板51の外形にいくら外力Fを与えても、樹脂52と金型の密着面で円弧状に力は分散され、樹脂と金型の剥離は一向に発現しない。そこで、これを剥離しようとすると分散された力各fを基の外力Fと対等にするため、F1+F2+F3+…の力、即ち、Fの何倍もの荷重が必要になる。
【0016】
図8(b)に示すように、レンズ基板41の外形41aに外力Fを与えると、レンズ基板41に成形された樹脂42と連なるノッチの先端部42bの金型との密着面に最初に力f1が伝達され、この力f1は外力Fとf1≒F・μ(μは1に近い)の関係であるため先端部42bから亀裂は一機に進展し、次に力はf2,f3へ受け継がれるが、大きく減衰しないため、亀裂は先へ進展し、V形状の樹脂層は金型から容易に剥離される。
【0017】
次に、例えばF/2の外力を41dのような41aから隔たった位置に与えたとしても離型が更に進展することはないが、41aの近傍である41b,41cにF/2の外力を与えると、亀裂が既に形成している箇所f4,f5から更に亀裂が進展し、離型が可能になる。即ち、初期亀裂開始点の離型力より低い離型力でも段階的に離型を進展させることができる。
【0018】
又、レンズ基板が大きくなる程、樹脂と金型の密着面積が大きくなり、比例して大きな離型力が必要となるため、光学有効径外に成形される42bのようなノッチを「複数隣接させて成形する」、或は「等分に複数箇所に分散して成形する」等の工夫が必要になる。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下に本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
【0020】
<実施の形態1>
図1は本実施の形態の樹脂硬化直後の縦断面を表す図、図2は本実施の形態の上面透視図、図3は図1の指示階層に基づく上面を表す図、図4は本実施の形態の成形工程を表す縦断面図、図5は本実施の形態を更に大きな基板に展開した例を表す図である。
【0021】
図1〜図3を参照して本実施の形態の構成について説明し、次に図1及び図4を参照して本実施の形態の成形工程について説明する。
【0022】
図1に示す金型3は、表層に化学メッキ層が施工された所望の光学面3bと、光学有効経外のレンズ基板1の端面に位置する開口部3aとから構成され、この開口部3aは、型内部の空域11と連通している。この金型の光学面3bの光軸上には、凸型球面レンズ基板1(以下;レンズ基板と称す)が同心位置で配置され、金型3の光学面3bとガラス基板1の間に紫外線硬化型樹脂2(以下;樹脂と称す)を介在させ、金型3、樹脂2、ガラス基板1は密着状態を形成している。
【0023】
図1〜図3に示すマジックバネ4は、一端の上面4aが、テフロン加工が施工されレンズ面に相対する面を持つ部位5と一体化され、バネ性を保持するアーム部4cと、型内部の空域11で位置を決めるための座部4dとから一体的にコの字状に形成される。バネ材としてはSUS等の繰り返しバネ特性の良好な材料を選択する。図2に示すようにマジックバネ4の上面及び部位5は、レンズ有効径の円弧に対して法線方向にV型の切り欠きが形成されている。このマジックバネ4は、樹脂硬化直後の初期状態では、金型の開口部3aに隙間なく嵌合し、部位5を介してレンズ基板1に完全密着し、プリチャージされている。
【0024】
型内部の空域11には、座台10が設けられ、図3に示すように座台10は2対設けられた離型ピン7の座部7bを摺動支持すると共に図1に示すようにマジックバネ4の座部4dをも支持する。離型ピン7のバネ座7cとマジックバネ4の一端面の面4bとの間に圧縮バネ6が設けられ、圧縮バネ6はマジックバネ4の一端面の上面4aをレンズ基板1側へ付勢すると共に離型ピン7の座部7bを座台10に安定的に負勢する。又、図1の初期状態では、離型ピン7の頂部7aとマジックバネ4の一端面の面4bの間に一定の隙間が設けられている。
【0025】
図1及び図3に示す離型台9は、その外周が型内部の空域11内のシリンダ12に摺動嵌合し、駆動モータ等の機械的動力により上下移動可能であると共に、上部に設けられた離型ピン7との当接部9aが離型ピン7の座部7bと軽接触している。更に、離型台9の上部にバネ掛け部9bが設けられており、このバネ掛け部9bと図2示すマジックバネ4のバネ掛け部4fの間に設けられた引張りバネ8は僅かにプリプリチャージされている。
【0026】
以下、図1及び図4を参照して成形工程について説明する。
【0027】
光学ガラスS−BAL41により形成されたレンズ基板1の下面に樹脂2との密着性を向上させるため、予めシランカップリング剤をディップコートして80℃30分間の乾燥処理を行う。ここで用いるカップリング剤は、水:エタノールが1:9の溶液に酢酸をPH調整した溶媒液にシランカップリング剤A−174(商品形式名;日本ユニカ(株))を1〜2wt%の割合で稀釈した液を用いる。
【0028】
金型の光学面中心にメタクリレート系紫外線硬化型樹脂、適量分を不図示ノズル口から吐出する。不図示アームにてレンズ基板1外形部を捕獲してレンズ基板1を金型3上の不図示中心位置出し枠に嵌合させる。その後、中心位置出し枠を光軸に沿って下降させ、レンズ基板1を金型3の光学面と平行に近接させ、気泡を巻き込まぬよう低速度で樹脂にレンズ基板1を接触させる。樹脂厚が規定値に達すると、レンズ基板1を嵌合保持した中心位置出し枠の下降は停止する。この時点で樹脂は光学有効径外まで押し拡げられており、レンズ基板1上方より紫外線照射可能な状態にある。
【0029】
レンズ基板1上方より紫外線を照射すると、図1に示すようにレンズ基板1、樹脂2、機械的動力が伝達されると、引張りバネ6を介して、金型3が密着した密着体が形成される。同時に図1の縦断面図によるとマジックバネ4と一体化された部位5も密着体であることが観察される。然るに、部位5は前述したように、テフロン加工が施工されているため図4の(a)に示すように離型台9にF9−1方向の機械的動力が伝達されると、引張りバネ6を介してマジックバネ4の一端面の上面4a及び一体化された部位5にF8−1の力が加わり、部位5が隔離しようとする力F5−1が働き、マジックバネ4のテンションF4−1と圧縮バネ6のテンションF6−1は抑えられ、部位5はレンズ基板1、樹脂2から容易に隔離し、間隙y1が形成される。ここで、部位5が剥離される各バネ力との相関は次関係で表される。
【0030】
(F4−1)+(F6−1)<(F9−1)−(F8−1・μ8)
−(F5−1・μ5)
μ;各力の損失
図2に示すように、部位5にはV型の切り欠き5bが形成されているため、前記間隙y1によって光学有効径内の樹脂層2aと連なる光学有効径外にV型のノッチ形成する樹脂層2bが成形される。このV型ノッチの形成によって、次の離型工程に先立ち、レンズ基板及び樹脂を金型から離型する際の離型応力が格段に緩和されることは、前述の従来例との作用の比較で説明した通りである。
【0031】
図4(b)に示すように、離型台9にF9−2方向の機械的動力が伝達されると、当接部9aが2対の離型ピン7の座部7bを押圧し、F9−3の力が伝達される。2対の離型ピン7が上昇し、離型ピン7の頂部7aがF7−1の力でマジックバネ4の一端面の面4bを押圧すると、マジックバネ4と一体の部位5bがレンズ基板1をF5−2の力で押圧し、V型のノッチを形成する樹脂2bから亀裂が進展し、金型3と樹脂2の間に間隙y4が形成される。間隙y4が拡大すると、部位5とレンズ基板1との間に間隙y5が現れ、レンズ基板1及び樹脂2が金型3から一体的に離型される。ここで発生するレンズ基板1の離型力と、各バネとの相関は次関係で表される。
【0032】
(F4−2)−(F6−2)≪(F9−2)−(F9−3・μ9)
−(F7−1・μ7)−(F5−2・μ5)
=(F1−1)
μ;各力の損失
レンズ基板1の離型力F1−1が比較的抑制された力で済むことは、前述の従来例との作用の比較で説明した通りである。
【0033】
以下、成形後の金型装置の初期化課程について説明する。
【0034】
図4(c)に示すように、離型台9にF9−3方向の機械的動力が伝達され、ストッパー13まで移動すると、引張りバネ6を介してマジックバネ4の一端面の面4bにF8−2の力が加わり、マジックバネ4の自由バネ力F4−2も加算され、マジックバネ4の一端面の上面4a及び一体化された部位5が初期状態(部位5の表面が樹脂層2の層厚より僅かに突出した位置)に再生される。同時に2対の離型ピン7は圧縮バネ6を介してF6−3の力が働き、座台10に押し戻され、離型ピン7の座部7bと離型台9の当接部9aとが、軽接触状態に再生される。ここで部位5が初期状態に再生する過程と各バネとの相関は次関係で表される。
【0035】
(F6−3)+(F4−3)<(F9−3)―(F8−2・μ8)
μ;各力の損失
本実施の形態における特徴的な効果は、前述したように、光学有効径外の硬化した樹脂層にV型のノッチを容易に形成し、その近傍に、金型と樹脂の密着面方向から負勢力を与えることによって、従来になく抑制された力で、ノッチ先端部に樹脂と金型との剥離を容易に発現し、更に抑制された力のまま剥離を進展させ、離型を完了することが可能になった。これにより、金型3の光学面3b全体に離型剤処理を施さずとも、連続しての離型が容易に実施できる。
【0036】
尚、本実施の形態では、離型台9の動力伝達方法としてエアシリンダを用いても良く、その場合は、密閉された型内部の空域11の内気圧変化をマジックバネ4の一端と一体化された部位5がレンズ基板1から隔離することに利用すれば引張りバネ6は不要になる。
【0037】
又、本実施の形態では、光学有効径外の硬化樹脂層にV型のノッチを1つ形成する形態を採ったが、レンズ基板が大きくなる程、1箇所に加えられる離型力の効果は限られるため、図5(a)に示すように対向する箇所にV型のノッチを形成したり、図5(b)に示すように等分の3箇所にV型のノッチを形成するような工夫が必要である。
【0038】
<実施の形態2>
図6は本実施の形態の樹脂硬化直後の縦断面を表す図、図7は本実施の形態の上面透視図である。本実施の形態は実施の形態1の変形例であるため、共通点についてはその説明を省略する。
【0039】
図6及び図7に示す冷却装置の封入口34と温風送風口35は、型内部の密閉された空域31と連通して設けられ、内部には結露防錆用の構造材が用いられる。図6に示すマジックバネ24の断面形状は実施の形態1のマジックバネ4と同様の形態であるが、使用する材料は冷却下で矢印U方向へ変位し、15℃以上(逆変態終了温度)で矢印T方向へ再生する形状記憶合金を用いる。形状記憶合金の材質は、Ni−Ti系に代表されるn系の合金である。又、マジックバネ24の一端面の上面24a及びこの面と一体化されたテフロン質の部位25は、図7に示すようにV型の切り欠きが隣接して2箇所設けられた形態である。
【0040】
その他、実施の形態1の引張りバネ6を使用しないため、本実施の形態のマジックバネ24、離型台29にはバネ掛け用のフックが設けられていない。
【0041】
以下、図6及び図7等を参照して特に実施の形態1とは異なる成形工程について説明する。
【0042】
レンズ基板1上方より紫外線を照射し、樹脂22が硬化すると、図6に示すようにレンズ基板1、樹脂22、金型23から成る密着体が形成される。同時にマジックバネ24と一体化された部位25も密着体となるが、実施の形態1と同様にテフロン質である。このため、図6に示すように冷却装置の封入口34から窒素冷却気が充填されると、型内部の空域31に設けられたマジックバネ24は、変態開始温度0℃以下の作用を受け、マジックバネ24の一端面の上面24a及び部位25が矢印U方向に変位して、レンズ基板1及び樹脂22から容易に隔離する。図7に示すように、部位25には、V型の切り欠き25b−1,25b−2が形成されているため、光学有効径内の樹脂層22aと連なる光学有効径外にV型のノッチを形成する樹脂層22b−1,22b−2が成形される。
【0043】
この直後、送風口35から30℃の温風が送風されると、マジックバネ24は逆変態開始温度10℃以上の作用を受け、マジックバネ24の一端面の上面24a及び部位25が矢印T方向に変位して、マジックバネ24を初期形状に再生する。
【0044】
続いて、実施の形態1と同様に離型台29にF29方向の機械的動力が伝達され、離型ピン7の座部を押圧し、3対の離型ピン7が上昇し、離型ピン7の各頂部がマジックバネ24の一端面の面24bを押圧する。更に、マジックバネ24と一体の部位25がレンズ基板を押圧すると、V型のノッチ22b−1,22b−2から亀裂が進展し、レンズ基板1及び樹脂22が金型23から一体的に離型される。
【0045】
こうして、本実施の形態においても実施の形態1と同様の特徴的な効果を得ることができる。
【0046】
但し、マジックバネ24の弾性部24cは形状記憶合金の性質である大きな変形を与えても除荷すると完全に復元する弾性性質を持っているため、離型ピンの押圧力が除かれると、再び元の形状に戻り、何度でも繰り返し同じ作用を起こすことができる。この点では、実施の形態1よりも耐久性の面で優れている。
【0047】
尚、型内部の温度調整を必要とする空域31は、温度制御を効果的に行うためスペースを小さくし、温度差による線膨張の影響が金型の光学面に波及しないようにする。
【0048】
前記各実施の形態では、光学有効径外に樹脂から成るV型のノッチを1箇所成形し、その近傍に樹脂成形面側から離型力を与えた場合、2箇所隣接したV型のノッチを形成し、その近傍に樹脂成形面側から離型力を与えた場合について詳しく記述したが、本発明はこれに限定されるものではなく、V型のノッチを4箇所以上等分に成形、或はV型のノッチを隣接して3箇所以上成形しても良く、やはり、その近傍に樹脂成形面側から離型力を与えることによって同様の効果が得られる。
【0049】
又、図5のようにV型のノッチを2箇所対向して成形した場合、V型のノッチを3箇所等分に成形した場合は、時間差を設けて、順次、各V型のノッチ近傍に樹脂成形面側から離型力を与えることで順次剥離を進展させ、素子基板への応力負担を軽減し、本実施の形態と同様の効果が得られる。
【0050】
更に、前記各実施の形態では、コの字状バネの一端面の上面に、テフロン加工が施工され一体化された部位のレンズ基板面と相対する表面形状を凸面対応としたが、これに限定されるものではなく、部位の表面形状を凹面レンズ基板対応、或は平面素子基板対応としても良く、その場合も本実施の形態と同様の構成により同様の効果が得られる。
【0051】
(比較例1)
本発明の比較例として金型の光学面上が鏡面加工され、本発明と同様に化学メッキが施工され、離型材未塗布の金型を用い、樹脂硬化前に、光学有効径外のレンズ基板と金型の間に樹脂厚相当のテフロンシートを介在させ、樹脂硬化後は除去して図8(b)に示すようなV型のノッチ42bを形成し、同時に本発明と同様な金型、樹脂及び凸型レンズ基板の密着体を形成した後、V型のノッチから隔たった位置41dのレンズ基板側面と、その対向する側面に同じ外力Fを与えて、レンズ基板を上面方向に持ち上げようとしたが滑ってしまい離型できない。ノッチ部にも剥離の兆候は現れない。
【0052】
(比較例2)
本発明の比較例として比較例1と同様の金型を用い、比較例1と同様の方法でV型のノッチ42bを形成し、同時に本発明と同様な金型、樹脂及び凸型レンズ基板の密着体を形成した後、レンズ基板側面のノッチ直近41aと、その対向する側面に同じ外力Fを与えて、レンズ基板を上面方向に持ち上げようとしたところ、ノッチ先端からの剥離の兆候が観られたが、やはり滑ってしまい離型には至らなかった。
【0053】
【発明の効果】
以上の説明で明らかなように、本発明によれば、エネルギー照射後、硬化した樹脂のヒケによる成形面形状の精度不良や、離型剤塗布ムラによる成形面の外観ムラの発生がない。又、成形の度に型構造及び素子基板の温度循環を長時間待機したり、周期振動等の外的負荷を長時間与える必要がないので、成形の時間周期が短縮され、成形品の低コスト化が実現可能である。
【0054】
更に、基板面形状に対応して軽負荷で薄型基板の連続した離型が容易になり、素子基板及び素子成形面形状の損傷による不良品が発生しない。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態に係る樹脂硬化直後のレンズ基板の密着状態及び金型装置の縦断面の一部を示す図である。
【図2】本発明の実施の形態1に係る樹脂硬化直後の一部上面透視図である。
【図3】本発明の実施の形態1に係る図1の指示階層に基づく上面を示す図である。
【図4】本発明の実施の形態1に係る成形工程を表す縦断面図である。
【図5】本発明の実施の形態1に係る大きな基板への展開例を示す一部上面透視図である。
【図6】本発明の実施の形態2に係る樹脂硬化直後のレンズ基板の密着状態及び金型装置の縦断面の一部を示す図である。
【図7】本発明の実施の形態2に係る樹脂硬化直後の一部上面透視図である。
【図8】本発明の実施の形態に係る効果と従来例と比較例を説明する図である。
【符号の説明】
1,21,41,51 レンズ基板
2,42,52 紫外線硬化型樹脂
3,23 金型
4,24 マジックバネ
5,25 部位(テフロン質)
6 圧縮バネ
7 離型ピン
8 引張りバネ
9,29 離型台
10 座台
11,21 空域
12 シリンダ
13 ストッパ
Claims (6)
- 所望の光学面を有する金型上にエネルギー硬化型樹脂を滴下し、該滴下された樹脂と光学素子基板を接触させ、樹脂を押し拡げて光学素子基板と、前記金型の間に樹脂層を介在させ、エネルギーを照射して樹脂を硬化し、該硬化樹脂と、前記光学素子基板を一体的に離型する複合型光学素子の離型方法であって、前記金型内部に設けられた空域と、前記金型成形面の光学有効範囲外の一部に前記空域と連通して設けられた開口部と、一端面が光学素子基板面と隙間なく接触し得る面で形成され、且つ、剥離性加工部が一体的に施されて前記金型の開口部に係合して保持され、他端面が前記金型の空域内に固定されるバネ部材と、前記金型の空域内を機械的移動手段若しくは温度制御手段を用いて、前記バネ部材の一端面を前記光学素子基板と、離間方向及び接触方向ないし接触方向に可動する離型進展手段とを、少なくとも具備する複合型光学素子の離型方法において、
前記光学素子基板を規定の樹脂厚に配置すると共に、前記金型の光学面より突出した前記バネ部材の一端面を軽押圧して樹脂を硬化した後、前記離型進展手段により、前記バネ部材の一端面を前記光学素子基板から剥離し、樹脂層に亀裂進展形状を形成し、再び前記離型進展手段により前記バネ部材の一端面を前記光学素子基板面に押し当てると共に、前記バネ部材の一端面を介して、前記形成された亀裂進展形状の直近から前記素子基板面に負勢力を与え、軽負荷で効率良く金型と樹脂とを剥離することを特徴とする複合型光学素子の離型方法。 - 所望の光学面を有する金型上にエネルギー硬化型樹脂を滴下し、該滴下された樹脂と光学素子基板を接触させ、樹脂を押し拡げて光学素子基板と、前記金型の間に樹脂層を介在させ、エネルギーを照射して樹脂を硬化し、該硬化樹脂と、前記光学素子基板を一体的に離型する複合型光学素子の離型方法であって、前記金型内部に設けられた空域と、前記金型成形面の光学有効範囲外の一部に前記空域と連通して設けられた開口部と、一端面が光学素子基板面と隙間なく接触し得る面で形成され、且つ、剥離性加工部が一体的に施されて前記金型の開口部に係合して保持され、他端面が前記金型の空域内に固定されるバネ部材と、前記金型の空域内を機械的移動手段若しくは温度制御手段を用いて、前記バネ部材の一端面を前記光学素子基板と、離間方向及び接触方向ないし接触方向に可動する離型進展手段とを、少なくとも具備することを特徴とする複合型光学素子の金型装置。
- 前記バネ部材の一端面は、光学有効ラインに対して法線方向に1つ又は2つ以上のV型の切り欠きを持つ形状であることを特徴とする請求項1記載の複合型光学素子の離型方法。
- 前記離型進展手段は、前記バネ部材の一端面を前記金型の空域内から押圧可能な強固な支持部材であることを特徴とする請求項1記載の複合型光学素子の離型方法。
- 前記バネ部材はコの字状に形成され、該バネ部材の一端面と他端面の間に圧縮バネが介在されていることを特徴とする請求項1記載の複合型光学素子の離型方法。
- 前記金型の空域を温度制御可能な温度制御装置を具備し、並びに室温下、前記光学素子基板が配置される前は前記バネ部材の一端面の表面が前記金型光学面から規定の樹脂厚より僅かに突出した自由状態にあり、前記金型の空域が所定温度以下の冷却時は、前記光学素子基板から隔離し、前記圧縮バネを僅かに負勢する形状記憶合金で形成されていることを特徴とする請求項5記載の複合型光学素子の離型方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2002230135A JP2004066671A (ja) | 2002-08-07 | 2002-08-07 | 複合型光学素子の離型方法及び金型装置 |
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JP2002230135A JP2004066671A (ja) | 2002-08-07 | 2002-08-07 | 複合型光学素子の離型方法及び金型装置 |
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Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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US7462320B2 (en) | 2005-10-25 | 2008-12-09 | Industrial Technology Research Institute | Method and device for demolding |
-
2002
- 2002-08-07 JP JP2002230135A patent/JP2004066671A/ja active Pending
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