JP2004066456A - フッ素樹脂フィルム及びその製造方法並びにこれを用いたフッ素樹脂フィルムラミネート金属板 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】金属板12表面にフッ素樹脂を含む組成物を積層して形成されたフッ素樹脂フィルムラミネート金属板10のフッ素樹脂フィルム11の改良であり、その特徴ある構成は、フィルムがフッ素樹脂中に含まれる1種又は2種以上の繰返し単位を基本単位として構成された樹脂を幹重合体とし、幹重合体を構成する1種又は2種以上の基本単位のところどころに接着性能を有する変性物質が枝重合体として配列した変性フッ素樹脂を更に含み、フィルムの露出する面から金属板と対向する面に向けて厚さ方向における変性フッ素樹脂の重量平均含有量が増加するように分布させるところにある。
【選択図】 図1
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、耐候性に優れたフッ素樹脂フィルムをラミネートした金属板を製造するためのフッ素樹脂フィルム及びその製造方法に関する。更に詳しくは、外装建材或いは道路の防音壁材等に用いるのに好適な耐候性、耐久性、加工性を有し、密着性に優れたフッ素樹脂フィルムラミネート金属板に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来より、耐候性、耐食性及び耐汚染性に優れた外装建材用の塗装鋼板として、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)等のフッ素樹脂塗料を主成分とし、アクリル樹脂を添加した塗料を鋼板に塗装した塗装鋼板が用いられている。
しかし、外装建材に使用される塗装鋼板は平板のまま使用されることは殆どなく、通常施工時に折曲げ加工等を施される。この加工の際に、塗膜に鋼板素地にまで達するような傷が付いたり、折曲げ加工部に微細なクラックが生じることがあり、その部位における耐食性は塗膜が健全な部位と比べると明らかに低下する。
【0003】
一方、近年ポリフッ化ビニル(PVF)或いはPVdFを主成分とするフッ素樹脂フィルムをめっき鋼板にラミネートしたフィルムラミネート鋼板が、外装建材用の鋼板として出荷されている。
このようなフィルムラミネート鋼板は塗装鋼板に比較して加工性が良好であり、塗装焼付け時にピンホール等が発生しないため耐食性にも優れており、更に優れた耐候性を示すフッ素樹脂が被覆されているため、総合的にみて耐久性に優れた鋼板といわれている。
【0004】
しかし、このフッ素樹脂系フィルムの優れた耐久性は優れた化学的安定性によるものであるが、逆にそのために母材、即ち金属板との密着性が弱い問題があった。
その改善方法として、金属板に形成した化成処理皮膜の上にエポキシ樹脂、その架橋剤、アクリル樹脂、及びフッ素樹脂を含有する接着剤層を介してフッ素樹脂フィルムが積層されたフッ素樹脂ラミネート金属板、接着剤組成物が開示されている(特開平5−185556、特開平5−186757)。上記構成を含む接着剤を用いると、低温での接着が可能で、しかも下地処理した各種母材とフッ素フィルムとの間で極めて良好な密着性、優れた耐食性が得られる。
【0005】
また、亜鉛系めっき鋼板の表面に、化成処理皮膜層、接着剤層、PVdF系樹脂フィルム層を順次設け、接着剤層を架橋用触媒或いはシランカップリング剤を含有するアクリル系樹脂とし、PVdF系樹脂フィルム層をアクリル系樹脂を含有する2層のPVdF系樹脂フィルム層とし、この2層のフィルム層が溶融押出法で成型され、上層のPVdF含有量を重量比で0.5〜0.8、下層のPVdF含有量を重量比で0.1〜0.5としたフッ素樹脂系フィルムラミネート鋼板が開示されている(特開平9−109325)。樹脂フィルム層をこのような構成とすることにより、上層をPVdFリッチとして優れた耐久性を保ち、下層をアクリル系樹脂リッチとして密着性を確保することができる。
【0006】
また、亜鉛系めっき鋼板の表面に、化成処理皮膜層、接着剤層、PVdF系樹脂フィルム層を順次設け、接着剤層に防錆顔料を含有し、ウレタン樹脂により変性されたエポキシ系樹脂組成物とし、PVdF系樹脂フィルム層をアクリル酸もしくはアクリル酸エステルを含有し、溶融押出法により成型して製造した2層以上の多層フィルム層とし、多層フィルム層の最外層のPVdF含有量を重量比で0.5〜0.8、多層フィルム層の最内層のPVdF含有量を重量比で0.1〜0.5とし、多層フィルムの少なくとも1つの層に着色顔料を含ませたフッ素樹脂系フィルムラミネート鋼板が開示されている(特開平11−48401)。樹脂フィルム層をこのような構成とすることにより、最外層は優れた耐久性を保ち、最内層は密着性を確保することができる。
【0007】
更に、金属板の表面にPVdF樹脂とアクリル樹脂からなる着色塗膜層を形成し、その上にPVdF樹脂とアクリル樹脂からなる透明フッ素樹脂フィルムを熱融着により積層したフッ素樹脂フィルムラミネート金属板が開示されている(特開2000−280402)。この公報に示されたラミネートフィルム金属板は、優れた密着性が得られ、従来の塗装鋼板等で問題となっていた曲げ加工部の耐食性が低下することもなく、紫外線劣化の要因とされている接着層を構成の中に含まないため、耐久密着性が低下することがない。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
特開平5−185556号公報に示されたフッ素樹脂ラミネート金属板の金属板とフッ素樹脂とを接着する接着剤及び特開平5−186757号公報に示された接着剤組成物には、エポキシ樹脂、その架橋剤、アクリル樹脂、及びフッ素樹脂がそれぞれ含有している。また、特開平9−109325号公報に示されたフッ素樹脂系フィルムラミネート鋼板の接着剤層には、架橋用触媒或いはシランカップリング剤を含有するアクリル系樹脂を用いている。また、特開平11−48401号公報に示されたフッ素樹脂系フィルムラミネート鋼板の接着剤層には防錆顔料が含有し、ウレタン樹脂により変性されたエポキシ系樹脂組成物が用いられている。更に、特開2000−280402号公報に示されたフッ素樹脂フィルムラミネート金属板の着色塗膜層にはPVdF樹脂とアクリル樹脂から構成されている。
上記公報にそれぞれ示される金属板とフッ素樹脂フィルムとを接着する密着層に主として使用されているアクリル系樹脂はその化学的安定性が弱いため、この樹脂の含有量が高い密着層は耐候性、耐腐食性が劣る問題があった。また、アクリル系樹脂、エポキシ樹脂は金属との密着性に優れるものの、PVdFフィルムとの密着性が低く、これらの樹脂を使用する密着層のフィルム側の密着性は十分であるとはいえなかった。
【0009】
本発明の目的は、金属板との密着性に優れたフッ素樹脂フィルム及びその製造方法を提供することにある。
本発明の別の目的は、外装建材や道路の防音壁材等に用いるのに好適な耐候性、耐久性、加工性を有し、密着性に優れたフッ素樹脂フィルムラミネート金属板を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
請求項1に係る発明は、図1に示すように、金属板12表面にフッ素樹脂を含む組成物を積層して形成されたフッ素樹脂フィルムラミネート金属板10のフッ素樹脂フィルム11の改良である。
その特徴ある構成は、フィルム11がフッ素樹脂中に含まれる1種又は2種以上の繰返し単位を基本単位として構成された樹脂を幹重合体とし、幹重合体を構成する1種又は2種以上の基本単位のところどころに接着性能を有する変性物質が枝重合体として配列した変性フッ素樹脂を更に含み、フィルム11の露出する面から金属板12と対向する面に向けて厚さ方向における変性フッ素樹脂の重量平均含有量が増加するように分布させるところにある。
請求項1に係る発明では、フッ素樹脂フィルム11中に変性フッ素樹脂を更に含ませ、フィルム11の露出する面から金属板12と対向する面に向けて厚さ方向における変性フッ素樹脂の重量平均含有量が増加するように分布させることで、金属板対向面側の変性フッ素樹脂含有量は高く、フッ素樹脂含有量は低くなる。この変性フッ素樹脂は接着性能を有するため、金属板12とフッ素樹脂フィルム11との接着性が向上する。その結果、本発明のフッ素樹脂フィルム11を用いることにより、金属板12とフッ素樹脂フィルム11との間に接着層を設けなくても実用上十分な密着性が得られる。また、フッ素樹脂フィルム中の変性フッ素樹脂は従来金属板との接着に用いられてきたアクリル樹脂等よりも化学安定性が優れるため、フッ素樹脂ラミネート金属板の耐候性、耐腐食性等を向上できる。
【0011】
請求項2に係る発明は、図3に示すように、金属板22表面にフッ素樹脂を含む組成物及びトップコーティング層23をこの順に積層して形成されたフッ素樹脂フィルムラミネート金属板20のフッ素樹脂フィルム21の改良である。
その特徴ある構成は、フィルム21がフッ素樹脂中に含まれる1種又は2種以上の繰返し単位を基本単位として構成された樹脂を幹重合体とし、幹重合体を構成する1種又は2種以上の基本単位のところどころに接着性能を有する変性物質が枝重合体として配列した変性フッ素樹脂を更に含み、フィルム21の厚さ方向の中心部から金属板22及びトップコーティング層23とそれぞれ対向する面に向けて変性フッ素樹脂の重量平均含有量が増加するように分布させるところにある。
請求項2に係る発明では、フッ素樹脂フィルム21中に変性フッ素樹脂を更に含ませ、フィルム21の厚さ方向の中心部から金属板22及びトップコーティング層23とそれぞれ対向する面に向けて変性フッ素樹脂の重量平均含有量が増加するように分布させることで、金属板対向面側及びトップコーティング層対向面側の変性フッ素樹脂含有量は高く、フッ素樹脂含有量は低くなる。この変性フッ素樹脂は接着性能を有するため、金属板22とフッ素樹脂フィルム21、フッ素樹脂フィルム21とトップコーティング層23との接着性がそれぞれ向上する。その結果、本発明のフッ素樹脂フィルム21を用いることにより、金属板22とフッ素樹脂フィルム21との間に接着層を設けなくても実用上十分な密着性が得られる。また、フッ素樹脂フィルム中の変性フッ素樹脂は従来金属板との接着に用いられてきたアクリル樹脂等よりも化学安定性が優れるため、フッ素樹脂ラミネート金属板の耐候性、耐腐食性等を向上できる。
【0012】
請求項3に係る発明は、請求項1又は2に係る発明であって、変性フッ素樹脂が幹重合体に変性物質がグラフト化されてなるフッ素樹脂フィルムである。
請求項4に係る発明は、請求項1ないし3いずれかに係る発明であって、幹重合体としてビニリデンフルオライド又はビニルフルオライドの少なくとも1種を含むフッ素樹脂フィルムである。
請求項5に係る発明は、請求項1ないし3いずれかに係る発明であって、変性物質がアクリル酸、アクリル酸メチル、メタクリル酸又はメタクリル酸メチルの少なくとも1種を含むフッ素樹脂フィルムである。
請求項6に係る発明は、請求項1ないし5いずれかに係る発明であって、変性フッ素樹脂が99〜70重量%の幹重合体に対して1〜30重量%の変性物質をグラフト重合させたフッ素樹脂フィルムである。
【0013】
請求項7に係る発明は、請求項1ないし6いずれかに係る発明であって、変性フッ素樹脂の重量平均分子量が50000〜700000であるフッ素樹脂フィルムである。
請求項8に係る発明は、請求項1又は2に係る発明であって、フッ素樹脂と変性フッ素樹脂との重量比(フッ素樹脂/変性フッ素樹脂)が50/50〜95/5であるフッ素樹脂フィルムである。
請求項9に係る発明は、請求項1、2又は8いずれかに係る発明であって、フッ素樹脂がPVdF、ポリフッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン(以下、VdF−HFPという。)共重合体、PVF又はそのコポリマーを含むフッ素樹脂フィルムである。
【0014】
請求項10に係る発明は、フッ素樹脂とフッ素樹脂中に含まれる1種又は2種以上の繰返し単位を基本単位として構成された幹重合体である樹脂をそれぞれ含む未重合樹脂フィルムを作製する工程と、作製した未重合樹脂フィルムに放射線を照射する工程と、照射したフィルムの一方の主面のみに変性物質を接触させて前記未重合樹脂フィルムと前記変性物質とを反応させる工程と、フィルムの両主面を洗浄して未反応の変性物質を除去する工程とを含むフッ素樹脂フィルムの製造方法である。
請求項10に係る発明では、上記各工程を経ることにより、フィルムの露出する面から金属板と対向する面に向けて厚さ方向における変性フッ素樹脂の重量平均含有量が増加するように分布させたフッ素樹脂フィルムが得られる。
【0015】
請求項11に係る発明は、フッ素樹脂とフッ素樹脂中に含まれる1種又は2種以上の繰返し単位を基本単位として構成された幹重合体である樹脂をそれぞれ含む未重合樹脂フィルムを作製する工程と、作製した未重合樹脂フィルムに放射線を照射する工程と、照射したフィルムの両主面に変性物質を接触させて未重合樹脂フィルムと変性物質とを反応させる工程と、フィルムの両主面を洗浄して未反応の変性物質を除去する工程とを含むフッ素樹脂フィルムの製造方法である。
請求項11に係る発明では、上記各工程を経ることにより、フィルムの厚さ方向の中心部から金属板及びトップコーティング層とそれぞれ対向する面に向けて変性フッ素樹脂の重量平均含有量が増加するように分布させたフッ素樹脂フィルムが得られる。
【0016】
請求項12に係る発明は、請求項10又は11に係る発明であって、未重合樹脂フィルムへの放射線照射は、樹脂フィルムへの吸収線量が1〜120kGyになるようにγ線を照射することにより行われるフッ素樹脂フィルムの製造方法である。
請求項13に係る発明は、請求項10又は11に係る発明であって、幹重合体である樹脂を構成する基本単位としてビニリデンフルオライド又はビニルフルオライドの少なくとも1種を含むフッ素樹脂フィルムの製造方法である。
請求項14に係る発明は、請求項10又は11に係る発明であって、変性物質がアクリル酸、アクリル酸メチル、メタクリル酸又はメタクリル酸メチルの少なくとも1種を含むフッ素樹脂フィルムの製造方法である。
請求項15に係る発明は、請求項10又は11に係る発明であって、フッ素樹脂がPVdF、VdF−HFP共重合体、PVF又はそのコポリマーを含むフッ素樹脂フィルムの製造方法である。
【0017】
請求項16に係る発明は、図1に示すように、金属板12表面に請求項1記載のフッ素樹脂フィルム11又は請求項10記載の方法により得られたフッ素樹脂フィルムを積層してなることを特徴とするフッ素樹脂フィルムラミネート金属板である。
請求項17に係る発明は、図3に示すように、金属板22表面に請求項2記載のフッ素樹脂フィルム21又は請求項11記載の方法により得られたフッ素樹脂フィルム及びトップコーティング層23をこの順に積層してなることを特徴とするフッ素樹脂フィルムラミネート金属板である。
【0018】
請求項18に係る発明は、請求項16又は17に係る発明であって、図2又は図4に示すように、金属板12,22とフッ素樹脂フィルム11,21との間に接着剤層13,24が設けられたラミネート金属板である。
請求項18に係る発明では、金属板12,22とフッ素樹脂フィルム11,21との間に接着剤層13,24を設けることにより、接着性がより向上する。
【0019】
請求項19に係る発明は、請求項16ないし18いずれかに係る発明であって、金属板が鋼板、めっき鋼板、ステンレス鋼板、アルミニウム板、チタン板又は銅板であるラミネート金属板である。
請求項20に係る発明は、請求項16ないし19いずれかに係る発明であって、金属板の表面にクロム酸系又はリン酸系の化成処理層が形成されたラミネート金属板である。
請求項21に係る発明は、請求項20に係る発明であって、化成処理層の上に樹脂成分を主成分とする下塗り層が設けられたラミネート金属板である。
請求項22に係る発明は、請求項21に係る発明であって、樹脂成分がエポキシ樹脂又はアクリル樹脂のいずれか一方又はその双方を含むラミネート金属板である。
【0020】
請求項23に係る発明は、請求項21に係る発明であって、下塗り層の厚さが3〜10μmであるラミネート金属板である。
請求項24に係る発明は、請求項21又は23に係る発明であって、下塗り層に防錆塗料を更に含むラミネート金属板である。
請求項25に係る発明は、請求項17に係る発明であって、トップコーティング層がPVdF、VdFを含むコポリマー、PVF及びVFを含むコポリマーからなる群より選ばれた1種以上の高分子化合物を含み、かつトップコーティング層が1層又は2層以上で構成されるラミネート金属板である。
【0021】
【発明の実施の形態】
次に本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
本発明の第1のフッ素樹脂フィルムは、図1に示すように、金属板12表面にフッ素樹脂を含む組成物を積層して形成されたフッ素樹脂フィルムラミネート金属板10に用いられる。その特徴ある構成は、フィルム11がフッ素樹脂中に含まれる1種又は2種以上の繰返し単位を基本単位として構成された樹脂を幹重合体とし、幹重合体を構成する1種又は2種以上の基本単位のところどころに接着性能を有する変性物質が枝重合体として配列した変性フッ素樹脂を更に含み、フィルム11の露出する面から金属板12と対向する面に向けて厚さ方向における変性フッ素樹脂の重量平均含有量が増加するように分布させるところにある。
【0022】
フィルム11中に含まれる変性フッ素樹脂は、フッ素樹脂に含まれる繰返し単位を基本単位として構成された樹脂を幹重合体とするため、フッ素樹脂との密着性が高い。また接着性能を有する変性物質を枝重合体として配列させたため、従来接着剤に用いられてきたアクリル樹脂やエポキシ樹脂等を用いることなく金属板12とフィルム11を接着できる。また、変性フッ素樹脂はアクリル樹脂等に比べて化学的安定性が優れるため、変性フッ素樹脂を用いることにより、フッ素樹脂フィルムラミネート金属板10の耐光性、耐腐食性等も向上する。
【0023】
フィルム11の露出面側は変性フッ素樹脂の重量平均含有量を少なくし、金属板12との対向面側は変性フッ素樹脂の重量平均含有量を多くするように分布させる。これにより、露出面側は化学安定性の高いフッ素樹脂の含有量が高くなるので、フッ素樹脂フィルムラミネート金属板10の耐光性、耐久性が高くなる。金属板12との対向面側は、接着性能を有する変性フッ素樹脂の含有量が高くなるので、フィルム11と金属板12との密着性に優れる。
【0024】
本発明の第2のフッ素樹脂フィルムは、図3に示すように、金属板22表面にフッ素樹脂を含む組成物及びトップコーティング層23をこの順に積層して形成されたフッ素樹脂フィルムラミネート金属板20に用いられる。その特徴ある構成は、フィルム21がフッ素樹脂中に含まれる1種又は2種以上の繰返し単位を基本単位として構成された樹脂を幹重合体とし、幹重合体を構成する1種又は2種以上の基本単位のところどころに接着性能を有する変性物質が枝重合体として配列した変性フッ素樹脂を更に含み、フィルム21の厚さ方向の中心部から金属板22及びトップコーティング層23とそれぞれ対向する面に向けて変性フッ素樹脂の重量平均含有量が増加するように分布させるところにある。
【0025】
フィルム21の厚さ方向の中心部付近は変性フッ素樹脂の重量平均含有量を少なくし、金属板22との対向面側及びトップコーティング層23との対向面側は変性フッ素樹脂の重量平均含有量を多くするように分布させる。これにより、厚さ方向の中心部付近は化学安定性の高いフッ素樹脂の含有量が高くなるので、フッ素樹脂フィルムラミネート金属板20の耐光性、耐久性が高くなる。金属板22との対向面側及びトップコーティング層23との対向面側は、接着性能を有する変性フッ素樹脂の含有量が高くなるので、フィルム21と金属板22及びトップコーティング層23との密着性に優れる。
【0026】
本発明の第1及び第2のフッ素樹脂フィルムに用いる変性フッ素樹脂は幹重合体に変性物質がグラフト化されて構成される。
グラフト重合させる方法としては触媒法、連鎖移動法、放射線法、光重合法及び機械的切断法等がある。例えば放射線法では、フッ素樹脂に含まれる繰返し単位を基本単位として構成された樹脂である幹重合体と枝重合体となる変性物質とを一緒にして、放射線を連続的又は間欠的に放射することにより重合でき、幹重合体と変性物質とを接触させる前に幹重合体を予備放射することが好ましい。具体的には、幹重合体に放射線を照射した後で、前記被照射物にグラフト化材料となる変性物質を混合することにより、幹重合体の基本単位のところどころに変性物質が枝重合体として配列した変性フッ素樹脂を得ることができる。グラフト重合に用いる放射線は、電子ビーム、X線又はγ線が挙げられる。幹重合体への吸収線量が1〜120kGyになるようにγ線を照射する。幹重合体に放射線を照射することにより片末端にラジカルが形成され、変性物質がグラフト重合し易くなる。下記化学式(1)及び化学式(2)にPVdFとアクリル酸の放射線法によるグラフト重合で得られるアクリル酸グラフトPVdF(以下、AA−g−PVdFという。)の反応を示す。
【0027】
【化1】
【0028】
【化2】
【0029】
化学式(1)に示すように、PVdFにγ線を照射することによりPVdFの片末端にラジカルを形成する。化学式(2)に示すように、化学式(1)で形成された片末端にラジカルを有するPVdFにアクリル酸を接触させて、PVdFのラジカルにアクリル酸の二重結合部分をグラフト重合させる。
また別の例として化学式(3)及び化学式(4)にPVdFとメタクリル酸のグラフト重合を示す。
【0030】
【化3】
【0031】
【化4】
【0032】
化学式(3)に示すように、PVdFにγ線を照射することによりPVdFの片末端にラジカルを形成する。化学式(4)に示すように、化学式(3)で形成した片末端にラジカルを有するPVdFにメタクリル酸を接触させて、PVdFのラジカルにメタクリル酸の二重結合部分をグラフト重合させる。グラフト重合は活性化した幹重合体が変性物質と接触している時間の長さ、放射線による幹重合体の予備活性の程度、変性物質が幹重合体を透過できるまでの程度、幹重合体及び変性物質が接触しているときの温度等によりそれぞれ重合生成が異なる。変性物質が酸である場合、変性物質を含有する溶液をサンプリングして、アルカリにより滴定し、残留する酸化合物濃度を測定することにより、グラフト化の程度を観測することができる。得られた組成物中のグラフト化の割合は、最終重量の10〜30%が望ましい。
【0033】
幹重合体を構成する基本単位としてビニリデンフルオライド又はビニルフルオライドの少なくとも1種が含まれる。変性物質には、アクリル酸、アクリル酸メチル、メタクリル酸又はメタクリル酸メチルの少なくとも1種が含まれる。変性フッ素樹脂は、99〜70重量%の幹重合体に対して1〜30重量%の変性物質をグラフト重合させる。幹重合体の割合が99重量%を越えると、変性フッ素樹脂に接着性能が得られず、幹重合体の割合が70重量%未満であると、フィルムの柔軟性が失われる不具合が生じる。95〜75重量%の幹重合体に対して5〜25重量%の変性物質がグラフト重合させることが好ましい。このようにして構成された変性フッ素樹脂の重量平均分子量は、50000〜700000である。重量平均分子量が50000未満であると樹脂自身の機械強度が不足する不具合を生じ、重量平均分子量が700000を越えるとフィルムの柔軟性が失われる不具合が生じる。重量平均分子量は100000〜500000が好ましい。フッ素樹脂フィルム中のフッ素樹脂と変性フッ素樹脂との重量比(フッ素樹脂/変性フッ素樹脂)は50/50〜95/5である。フッ素樹脂と変性フッ素樹脂との重量比(フッ素樹脂/変性フッ素樹脂)が50/50未満、即ち上記範囲よりもフッ素樹脂の割合が少ないと、フィルムの耐食性、耐候性が悪くなる不具合を生じ、95/5を越える場合、即ち上記範囲よりもフッ素樹脂の割合が多いと、接着力が弱まる不具合を生じる。フッ素樹脂と変性フッ素樹脂との重量比は、70/30〜90/10が好ましい。フッ素樹脂には、PVdF、VdF−HFP共重合体、PVF、そのコポリマー等が挙げられる。
【0034】
次に本発明の第1のフッ素樹脂フィルムの製造方法を説明する。
先ず、フッ素樹脂とフッ素樹脂中に含まれる1種又は2種以上の繰返し単位を基本単位として構成された幹重合体である樹脂をそれぞれ含む未重合樹脂フィルムを作製する。この工程では、既存の方法、例えば圧延法等を用いて未重合樹脂フィルムを作製する。フッ素樹脂としては、PVdF、VdF−HFP共重合体、PVF又はそのコポリマーを含む樹脂が挙げられる。幹重合体である樹脂を構成するフッ素樹脂中に含まれる1種又は2種以上の繰返し単位である基本単位としてビニリデンフルオライド又はビニルフルオライドの少なくとも1種が挙げられる。
【0035】
次いで、作製した未重合樹脂フィルムに放射線を照射する。樹脂フィルムへ放射線を照射することにより、フィルム中の幹重合体である樹脂の片末端にラジカルを形成する。未重合樹脂フィルムへの放射線照射は、樹脂フィルムへの吸収線量が1〜120kGyになるようにγ線を照射することにより行われる。好ましい樹脂フィルムへの吸収線量は5〜80kGyである。下限値未満の吸収線量では幹重合体である樹脂にラジカルが十分に形成されない。上限値を越える吸収線量では、樹脂が放射線によって分解され、耐食性、耐候性が失われる不具合が生じる。
次に、照射したフィルムの一方の主面のみに変性物質を接触させて未重合樹脂フィルムと変性物質とを反応させる。接触方法としては、照射されたフィルムの片面に変性物質をスプレーする方法が簡便なため好ましい。変性物質としては、アクリル酸、アクリル酸メチル、メタクリル酸又はメタクリル酸メチルの少なくとも1種が挙げられる。
最後に、フィルムの両主面を洗浄して未反応の変性物質を除去する。水やアルコール等を貯留した水槽中に樹脂フィルムを浸漬させて、未反応の変性物質を樹脂フィルム両主面から取除く。この洗浄により樹脂フィルムと変性物質との重合度の調製を行うこともできる。以上の工程を経ることにより本発明の第1のフッ素樹脂フィルムが得られる。
【0036】
次に本発明の第2のフッ素樹脂フィルムの製造方法を説明する。
この方法では、次の点が第1のフッ素樹脂フィルムの製造方法と相違する。即ち、照射したフィルムの両主面に変性物質を接触させて未重合樹脂フィルムと変性物質とを反応させる。放射線照射した樹脂フィルムの両主面に変性物質を接触させる方法としては、変性物質を溶解した溶液を貯留した水槽に放射線照射した樹脂フィルムを浸漬する方法が好ましい。放射線照射した樹脂フィルムと変性物質が反応する際、フィルム表面の樹脂分子は変性物質溶液に近いため、反応し易く、フィルム表面から離れた中心部の樹脂分子は反応し難いため、中心部にはグラフトポリマーの含有量が少ない分布となる。以上の工程を経ることにより、本発明の第2のフッ素樹脂フィルムが得られる。
【0037】
本発明の第1のフッ素樹脂フィルムラミネート金属板は、図1に示すように、金属板12表面に前述した本発明の第1のフッ素樹脂フィルム11又は本発明の第1の製造方法により得られたフッ素樹脂フィルムを積層してなることを特徴とする。金属板12とフッ素樹脂フィルム11との間には接着剤層13を設けてもよい。接着剤層には従来より接着剤に用いられているエポキシ樹脂、アクリル樹脂が挙げられる。
エポキシ樹脂としては、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールAD等のビスフェノール類とエピハロヒドリン又はβ−メチルエポハロヒドリンとの反応で得られるエポキシ化合物、及びこれらの共重合体が挙げられる。更に、これらのエポキシ化合物のモノカルボン酸もしくはジカルボン酸変性物、モノ、ジ、もしくはポリアルコール変性物、モノもしくはジアミン変性物、モノ、ジもしくはポリフェノール変性物もエポキシ樹脂として使用できる。
アクリル樹脂としては、使用するフッ素樹脂との相溶性の高いものがよく、これも熱可塑性、熱硬化性のいずれでもよい。熱可塑性アクリル樹脂としては、メチルメタクリレート、エチルアクリレート等のアクリル酸エステル又はメタクリル酸エステルの重合体及び共重合体が挙げられる。この場合、エステル物のエステル基は、メチル、エチル、プロピル、ブチル、イソブチル、n−ヘキシル、ラウリル、ステアリル等のアルキル基でよい。共重合体の場合、エステル基は1種でも2種以上でもよい。熱硬化性アクリル樹脂としては、分子中に橋架け構造を作るような官能基(カルボキシル基、水酸基、アミノ基、メチロール基、エポキシ基等)を持ったモノマー、例えばアクリル酸、メタクリル酸、アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、アリルグリシジルエーテル、グルシジルメタクリレートなどの群と、このような官能基を持たない、例えばスチレン並びに上記のアクリル酸もしくはメタクリル酸エステルの群という2つの群から選ばれた2種以上のモノマーを共重合して得られるポリマーが挙げられるが、それらに限定されるものではない。
【0038】
本発明のフッ素樹脂フィルムラミネート金属板10の母材である金属板12の種類は特に限定されないが、製造されるラミネート金属板は、耐候性に優れていることから屋外で使用されることが多く、母材にも耐食性に優れたものが適用されることが多い。金属板12としては、鋼板、端面耐食性に優れている亜鉛系等のメッキ鋼板、アルミニウム系等のメッキ鋼板、ステンレス鋼板、アルミニウム板、チタン板、銅板等も使用可能である。この金属板12の表面には下地処理として、クロム酸系又はリン酸塩系の化成処理を施して化成処理層を形成し、密着性を確保する。この化成処理層は、従来より用いられている方法を用いることができる。化成処理層の付着量は特に限定されないが、リン酸亜鉛処理で、0.1〜2.0g/m2、リン酸クロメート処理、塗布型クロメート処理ではクロム金属としてそれぞれ5〜70mg/m2、20〜150mg/m2である。下地処理の付着量が過少では均一性に劣り、過大の場合には加工部の密着性が低下する。化成処理を施した金属板表面には、樹脂成分を主成分とする下塗り層が設けられる。下塗り層を設けることにより、フッ素樹脂フィルムと金属板の接着をより向上する効果が得られる。主成分の樹脂成分としては、エポキシ樹脂、アクリル樹脂が挙げられる。下塗り層の厚さは3〜10μmである。好ましくは5〜8μmである。この下塗り層に防錆塗料を更に含ませてもよい。
【0039】
本発明の第2のフッ素樹脂フィルムラミネート金属板は、図3に示すように、金属板22表面に前述した本発明の第2のフッ素樹脂フィルム21又は本発明の第2の製造方法により得られたフッ素樹脂フィルム及びトップコーティング層23をこの順に積層してなることを特徴とする。トップコーティング層23にはPVdF、VdFを含むコポリマー、PVF及びVFを含むコポリマーからなる群より選ばれた1種以上の高分子化合物が含まれる。このトップコーティング層23は1層又は2層以上で構成される。
【0040】
【実施例】
次に本発明の実施例を比較例とともに詳しく説明する。
<実施例1>
厚さ40μmのPVdFホモポリマーフィルムを用意した。酸素濃度が50ppm以下の窒素ガス雰囲気下でγ線照射装置によりフィルムへの吸収線量が40kGyになるようにγ線を照射した。γ線照射したフィルムに、予め窒素ガス置換により脱酸素した50重量%アクリル酸水溶液を片面にのみ接触させ、窒素通気を続けながら80℃で5分間反応を行い、樹脂フィルムの片面にグラフト重合を施した。グラフト化したPVdFフィルムを素早く大過剰のメタノール中に投入してグラフト重合反応を停止させ、更に、樹脂フィルムを水洗することにより、フッ素樹脂フィルムを得た。得られたフッ素樹脂フィルムを金属板表面にラミネートしてフッ素樹脂フィルムラミネート金属板を作製した。
【0041】
<実施例2>
厚さ40μmのPVdFホモポリマーフィルムを用意した。酸素濃度が50ppm以下の窒素ガス雰囲気下でγ線照射装置によりフィルムへの吸収線量が40kGyになるようにγ線を照射した。γ線照射したフィルムに、予め窒素ガス置換により脱酸素した50重量%アクリル酸水溶液を両主面に接触させ、窒素通気を続けながら80℃で5分間反応を行い、樹脂フィルムの両主面にグラフト重合を施した。グラフト化したPVdFフィルムを素早く大過剰のメタノール中に投入してグラフト重合反応を停止させ、更に、樹脂フィルムを水洗することにより、フッ素樹脂フィルムを得た。得られたフッ素樹脂フィルムを金属板表面にラミネートし、更に、フッ素樹脂フィルムの上にトップコーティング層を形成してフッ素樹脂フィルムラミネート金属板を作製した。
<実施例3>
γ線の照射線量を20kGyとした以外は、実施例1と同様にしてフッ素樹脂フィルムラミネート金属板を得た。
【0042】
<比較例1>
フッ素樹脂フィルムに厚さ40μmのPVdFホモポリマーフィルムを用い、このフィルムをそのまま金属板表面にラミネートしてフッ素樹脂フィルムラミネート金属板を作製した。
<比較例2>
フッ素樹脂フィルムにグラフト重合率15%のAA−g−PVdF6重量部とPVdF94重量部とを均一に混合して作製されたフィルムを用いた以外は実施例1と同様にしてフッ素樹脂ラミネート金属板を作製した。
<比較例3>
フッ素樹脂フィルムにグラフト重合率31%のAA−g−PVdFから作製されたフィルムを用いた以外は実施例1と同様にしてフッ素樹脂ラミネート金属板を作製した。
【0043】
<比較試験及び評価>
実施例1〜3及び比較例1〜3でそれぞれ得られたフッ素樹脂フィルムラミネート金属板を用いて以下に示す評価試験を行った。
▲1▼ 初期加工性能評価試験
製造後2時間以内に試験片を同じ厚さの被塗板を挟み、塗面を外側にして180度折曲げ、折曲げ部先端に剥離、クラックが発生しない加工度を挟んだ被塗板の枚数(T)で評価した。
▲2▼ 経時加工性能評価試験
製造後、50℃高温槽で50日間放置した後、初期加工性能の評価方法と同じく、試験編を同じ厚さの被塗板を挟み、塗面を外側にして180度折り曲げ、折曲げ部先端に剥離、クラックが発生しない加工度を、挟んだ被塗板の枚数(T)で評価した。
▲3▼ 接着性評価試験
作製したラミネート鋼板に5mm幅の十字スリットを入れ、沸騰水中に4時間加熱した後、5mmのエリクセン張り出しを行い、フィルムの剥離状況を評価した。
▲4▼ 耐食性評価試験
JISZ2371に準じてCASS試験を72時間実施し、下記の標準で耐食性を評価した。
【0044】
実施例1〜3及び比較例1〜3のフッ素樹脂フィルムラミネート金属板における各種評価試験の結果を表1に示す。なお、表1中の接着性試験欄の記号◎はフィルムの剥離がないことを表し、記号×はフィルムの剥離が認められることを表す。また耐食性試験欄の記号◎は錆の発生がないことを表し、記号×は錆の発生が認められることを表す。
【0045】
【表1】
【0046】
表1より明らかなように、比較例1及び2のラミネート金属板は、評価試験▲2▼の経時加工性能及び評価試験▲3▼の接着性において劣っており、比較例3のラミネート金属板は、評価試験▲4▼の耐食性において劣っている結果となった。この結果に対して実施例1〜3のラミネート金属板は、評価試験▲1▼〜▲4▼の全てにおいて優れた評価が得られていることが判った。
【0047】
【発明の効果】
以上述べたように、本発明の第1のフッ素樹脂フィルムは、金属板表面にフッ素樹脂を含む組成物を積層して形成されたフッ素樹脂フィルムラミネート金属板に用いられる。その特徴ある構成は、フィルムがフッ素樹脂中に含まれる1種又は2種以上の繰返し単位を基本単位として構成された樹脂を幹重合体とし、幹重合体を構成する1種又は2種以上の基本単位のところどころに接着性能を有する変性物質が枝重合体として配列した変性フッ素樹脂を更に含み、フィルムの露出する面から金属板と対向する面に向けて厚さ方向における前記変性フッ素樹脂の重量平均含有量が増加するように分布させるところにある。
【0048】
また、本発明の第2のフッ素樹脂フィルムは、金属板表面にフッ素樹脂を含む組成物及びトップコーティング層をこの順に積層して形成されたフッ素樹脂フィルムラミネート金属板に用いられる。その特徴ある構成は、フィルムがフッ素樹脂中に含まれる1種又は2種以上の繰返し単位を基本単位として構成された樹脂を幹重合体とし、幹重合体を構成する1種又は2種以上の基本単位のところどころに接着性能を有する変性物質が枝重合体として配列した変性フッ素樹脂を更に含み、フィルムの厚さ方向の中心部から金属板及びトップコーティング層とそれぞれ対向する面に向けて変性フッ素樹脂の重量平均含有量が増加するように分布させるところにある。
【0049】
このように構成されたフッ素樹脂フィルムは、金属板、金属板とトップコーティング層との密着性にそれぞれ優れたフィルムとなる。
この本発明の第1又は第2のフッ素樹脂フィルムを用いて作製されたフッ素樹脂フィルムラミネート金属板は、外装建材や道路の防音壁材等に用いるのに好適な耐候性、耐久性、加工性を有し、かつ密着性に優れた金属板となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1のフッ素樹脂フィルムラミネート金属板の説明図。
【図2】接着剤層を設けたラミネート金属板の説明図。
【図3】第2のフッ素樹脂フィルムラミネート金属板の説明図。
【図4】接着剤層を設けたラミネート金属板の説明図。
【符号の説明】
10,20 フッ素樹脂フィルムラミネート金属板
11,21 フッ素樹脂フィルム
12,22 金属板
13,24 接着剤層
23 トップコーティング層
Claims (25)
- 金属板(12)表面にフッ素樹脂を含む組成物を積層して形成されたフッ素樹脂フィルムラミネート金属板(10)のフッ素樹脂フィルムにおいて、
前記フィルム(11)が前記フッ素樹脂中に含まれる1種又は2種以上の繰返し単位を基本単位として構成された樹脂を幹重合体とし、前記幹重合体を構成する1種又は2種以上の基本単位のところどころに接着性能を有する変性物質が枝重合体として配列した変性フッ素樹脂を更に含み、
前記フィルム(11)の露出する面から前記金属板(12)と対向する面に向けて厚さ方向における前記変性フッ素樹脂の重量平均含有量が増加するように分布させることを特徴とするフッ素樹脂フィルム。 - 金属板(22)表面にフッ素樹脂を含む組成物及びトップコーティング層(23)をこの順に積層して形成されたフッ素樹脂フィルムラミネート金属板(20)のフッ素樹脂フィルムにおいて、
前記フィルム(21)が前記フッ素樹脂中に含まれる1種又は2種以上の繰返し単位を基本単位として構成された樹脂を幹重合体とし、前記幹重合体を構成する1種又は2種以上の基本単位のところどころに接着性能を有する変性物質が枝重合体として配列した変性フッ素樹脂を更に含み、
前記フィルム(21)の厚さ方向の中心部から前記金属板(22)及び前記トップコーティング層(23)とそれぞれ対向する面に向けて前記変性フッ素樹脂の重量平均含有量が増加するように分布させることを特徴とするフッ素樹脂フィルム。 - 変性フッ素樹脂が幹重合体に変性物質がグラフト化されてなる請求項1又は2記載のフッ素樹脂フィルム。
- 幹重合体を構成する基本単位としてビニリデンフルオライド又はビニルフルオライドの少なくとも1種を含む請求項1ないし3いずれか記載のフッ素樹脂フィルム。
- 変性物質がアクリル酸、アクリル酸メチル、メタクリル酸又はメタクリル酸メチルの少なくとも1種を含む請求項1ないし3いずれか記載のフッ素樹脂フィルム。
- 変性フッ素樹脂が99〜70重量%の幹重合体に対して1〜30重量%の変性物質をグラフト重合させた請求項1ないし5いずれか記載のフッ素樹脂フィルム。
- 変性フッ素樹脂の重量平均分子量が50000〜700000である請求項1ないし6いずれか記載のフッ素樹脂フィルム。
- フッ素樹脂と変性フッ素樹脂との重量比(フッ素樹脂/変性フッ素樹脂)が50/50〜95/5である請求項1又は2記載のフッ素樹脂フィルム。
- フッ素樹脂がポリフッ化ビニリデン、ポリフッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、ポリフッ化ビニル又はそのコポリマーを含む請求項1、2又は8いずれか記載のフッ素樹脂フィルム。
- フッ素樹脂と前記フッ素樹脂中に含まれる1種又は2種以上の繰返し単位を基本単位として構成された幹重合体である樹脂をそれぞれ含む未重合樹脂フィルムを作製する工程と、
前記作製した未重合樹脂フィルムに放射線を照射する工程と、
前記照射したフィルムの一方の主面のみに変性物質を接触させて前記未重合樹脂フィルムと前記変性物質とを反応させる工程と、
前記フィルムの両主面を洗浄して未反応の変性物質を除去する工程と
を含むフッ素樹脂フィルムの製造方法。 - フッ素樹脂と前記フッ素樹脂中に含まれる1種又は2種以上の繰返し単位を基本単位として構成された幹重合体である樹脂をそれぞれ含む未重合樹脂フィルムを作製する工程と、
前記作製した未重合樹脂フィルムに放射線を照射する工程と、
前記照射したフィルムの両主面に変性物質を接触させて前記未重合樹脂フィルムと前記変性物質とを反応させる工程と、
前記フィルムの両主面を洗浄して未反応の変性物質を除去する工程と
を含むフッ素樹脂フィルムの製造方法。 - 未重合樹脂フィルムへの放射線照射は、前記樹脂フィルムへの吸収線量が1〜120kGyになるようにγ線を照射することにより行われる請求項10又は11記載のフッ素樹脂フィルムの製造方法。
- 幹重合体である樹脂を構成する基本単位としてビニリデンフルオライド又はビニルフルオライドの少なくとも1種を含む請求項10又は11記載のフッ素樹脂フィルムの製造方法。
- 変性物質がアクリル酸、アクリル酸メチル、メタクリル酸又はメタクリル酸メチルの少なくとも1種を含む請求項10又は11記載のフッ素樹脂フィルムの製造方法。
- フッ素樹脂がポリフッ化ビニリデン、ポリフッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、ポリフッ化ビニル又はそのコポリマーを含む請求項10又は11記載のフッ素樹脂フィルムの製造方法。
- 金属板(12)表面に請求項1記載のフッ素樹脂フィルム(11)又は請求項10記載の方法により得られたフッ素樹脂フィルムを積層してなることを特徴とするフッ素樹脂フィルムラミネート金属板。
- 金属板(22)表面に請求項2記載のフッ素樹脂フィルム(21)又は請求項11記載の方法により得られたフッ素樹脂フィルム及びトップコーティング層(23)をこの順に積層してなることを特徴とするフッ素樹脂フィルムラミネート金属板。
- 金属板(12,22)とフッ素樹脂フィルム(11,21)との間に接着剤層(13,24)が設けられた請求項16又は17記載のラミネート金属板。
- 金属板(12,22)が鋼板、めっき鋼板、ステンレス鋼板、アルミニウム板、チタン板又は銅板である請求項16ないし18いずれか記載のラミネート金属板。
- 金属板(12,22)の表面にクロム酸系又はリン酸系の化成処理層が形成された請求項16ないし19いずれか記載のラミネート金属板。
- 化成処理層の上に樹脂成分を主成分とする下塗り層が設けられた請求項20記載のラミネート金属板。
- 樹脂成分がエポキシ樹脂又はアクリル樹脂のいずれか一方又はその双方を含む請求項21記載のラミネート金属板。
- 下塗り層の厚さが3〜10μmである請求項21記載のラミネート金属板。
- 下塗り層に防錆塗料を更に含む請求項21又は23記載のラミネート金属板。
- トップコーティング層(23)がポリフッ化ビニリデン、フッ化ビニリデンを含むコポリマー、ポリフッ化ビニル及びフッ化ビニルを含むコポリマーからなる群より選ばれた1種以上の高分子化合物を含み、かつ前記トップコーティング層(23)が1層又は2層以上で構成される請求項17記載のラミネート金属板。
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