JP2004065150A - 植物育成基材およびそれから得られる栽培床 - Google Patents
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Abstract
【課題】軽量で、強力が高く、屋上等に設置する際に軽くて崩壊が生じず、取り扱い性、作業性等に優れ、しかも建造物への負荷が小さく、その上適度な保水性を有しながら水はけ性に優れていて植物を健全に生育させることができる栽培床、およびそのような栽培床を製造するための植物育成基材の提供。
【解決手段】単繊維繊度が10〜30dtex、繊維長が1〜20mm、アスペクト比が20〜1,000、水分率が15質量%以下および捲縮数が6個/cm以下である熱融着性繊維と、無機質資材を含有する植物育成基材、並びに該植物育成基材を加熱処理又は加圧加熱処理して得られる栽培床。
【選択図】 なし
【解決手段】単繊維繊度が10〜30dtex、繊維長が1〜20mm、アスペクト比が20〜1,000、水分率が15質量%以下および捲縮数が6個/cm以下である熱融着性繊維と、無機質資材を含有する植物育成基材、並びに該植物育成基材を加熱処理又は加圧加熱処理して得られる栽培床。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、植物育成基材およびそれから得られる栽培床に関する。より詳細には、本発明は、適度な保水性を有しながら水はけ性に優れていて植物を健全に生育させることができ、軽量で、取り扱い性および施工性に優れるばかりでなく、屋上などに施工した時に建造物に大きな負荷を与えず、しかも強度の高い栽培床などを形成することのできる植物育成基材およびそれから得られる栽培床に関する。本発明の植物育成基材から得られる栽培床は、前記した優れた特性により、屋上や法面などのような風や雨によって土の飛散や流失が生じやすい場所に施工しても栽培床の崩壊が生じず、植物を健全に生育させることができ、特にその優れた軽量性により屋上緑化のための栽培床用として適している。
【0002】
【従来の技術】
近年、我が国では、都市部での緑化面積の減少から、特に屋上での緑化事業が進められている。屋上緑化に当たっては、従来、ポリプロピレンなどからなる容器に培土を充填し、そこに種苗を移植して育成する方法が主に採用されている。しかしながら、この方法による場合は、培土の重量が大きいために、取り扱い性および施工性が非常に悪い。しかも、水はけが悪いことにより植物の生育不良を起こし易い。その上、培土の大きな重量に更に水の重量が加算されるため、屋上に大きな負荷がかかるという問題がある。さらに、屋上は風や雨の影響を受け易く、折角施工した培土が飛散したり、流失し易いという問題がある。
そのような問題を軽減するための対策として、培土の上からネットで覆う方法も採られているが、省力化やコストの点で問題がある。
【0003】
また、我が国では、就農人口の減少、就農人員の高齢化などに伴って、農作業の省力化、機械化が進められており、その1つとして、小さな容器で育てた苗を移植機で根鉢ごと容器からから抜き取って、田畑に自動的に植え付ける方法が広く採用されるようになっている。この方法による場合は、通常“セル”、“ポット”などと称されるプラスチック等からなる小さな容器または該小容器を連結して設けたトレーに培土を自動的に土詰めした後に野菜、草花、果樹、樹木などの植物の種子を播いて所定期間育苗するか、或いは種子を加えた培土を前記小さな容器またはそれを連結してなるトレーに自動的に土詰めした後に所定期間育苗し、それを根鉢ごと小容器から抜き取って移植機で田畑に植え付けることが一般に行われている。その場合に、移植機による植え付けが可能な根鉢を形成する目的で、培土基材に熱融着性の芯鞘型繊維を配合し、芯鞘型繊維の鞘部を軟化させて接着・固化した育苗用培土が提案されている(特開平11−113388号公報、特開2000−23561号公報など)。この従来技術によって得られる育苗用培土は、通常畑地で行われる機械移植などに用いることはできるが、軽量性、水はけ性、強度などの物性の点で未だ十分であるとは言えず、そのために、軽量で取り扱い性や施工性に優れ、建物に対する負荷が小さく、水はけ性に優れ、しかも高い強力が要求される、屋上緑化用の栽培床などにはあまり適していない。
【0004】
また、本発明者らは、培土基材に、繊維長が0.5〜2mm、アスペクト比が20〜300、水分率が繊維質量に対し15%以下および捲縮数が6個/cm以下である熱融着性繊維を配合して植物育成基材を調製し、それを加熱処理して植物育成基材中の熱融着性繊維を溶融接着すると、強力の高い根鉢が形成されること、その植物育成基材は容積が10cm3以下の小さな植物育成用容器に充填して用いるのに特に適していて、その植物育成基材を用いて形成された根鉢は移植機による植え付け作業時に崩壊せず、植え付け作業を円滑に行えることを先に見出して出願した(特開2002−58339号公報)。
さらに、本発明者らは、培土基材に、繊維長が2mmを超え15mm以下、アスペクト比が20〜1000、繊維水分率が繊維質量に対し15%以下および捲縮数が6個/cm以下である熱融着性繊維を配合して植物育成基材を調製し、それを加熱処理して植物育成基材中の熱融着性繊維を溶融接着した場合にも、強力の高い根鉢が形成されること、そしてその植物育成基材は容積が10cm3以上の比較的大きな植物育成用容器に充填して用いるのに特に適していて、それによって形成された根鉢は移植機による植え付け作業時に根鉢が崩壊せず、植え付け作業を円滑に行えることを先に見出して出願した(特開2002−58340号公報)。
本発明者らは、上記の出願を踏まえて更に検討を重ねてきたが、その結果、屋上緑化用の栽培床などに用いる植物育成基材としては、より軽量で、適度な保水性を有しながら水はけが良好で、しかもより高い強度を有する栽培床を形成し得る植物育成基材の開発が必要であることが判明した。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、軽量で、取り扱い性、施工性に優れると共に、建造物に対する負荷が小さく、しかも適度な保水性を有しながら水はけが良好で植物を根腐れを生ずることなく健全に生育させることができ、その上強度が高くて、屋上などへの施工時に栽培床の崩壊が生じず、更には強い風や雨に曝されても栽培床の飛散、流失、崩壊を生じず、植物を良好に保持して生育させることのできる、屋上緑化や法面緑化などに特に適する栽培床を提供することである。
さらに、本発明の目的は、前記した優れた特性を有する栽培床を形成するための植物育成基材を提供することである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成すべく本発明者らは鋭意検討を重ねてきた。その結果、10〜30dtexという特定の単繊維繊度を有し、しかも1〜20mmという特定の繊維長および20〜1,000という特定のアスペクト比を有し、且つ15%以下の水分率および6個/cm以下の捲縮数を有する熱融着性繊維と、無機質資材を用いて植物育成基材を調製し、植物育成基材中の熱融着性を溶融接着させると、軽量で取り扱い性および施工性に優れると共に建造物に対する負荷が小さく、適度な保水性を有しながら水はけが良好で植物を健全に生育させることができ、しかも極めて高い強度を有していて屋上などへの栽培床の施工時や強い風や雨に曝されても崩壊、飛散、流失などの生じない栽培床が形成されること、そしてその栽培床は屋上緑化や法面緑化、特に屋上緑化用の栽培床として適していることを見出した。
また、本発明者らは、上記の植物育成基材中の熱融着性繊維としては、繊維形成性重合体と該繊維形成性重合体よりも融点または軟化点が20℃以上低い熱可塑性重合体とからなる熱融着性の複合紡糸繊維および/または混合紡糸繊維が好適に用いられること、無機質資材としては、粒径が10mm以上で嵩密度が0.5kg/dm3以下の無機質発泡体を5質量%以上の割合で含む無機質資材が好適に用いられることを見出した。
さらに、本発明者らは、上記の植物育成基材においては、熱融着性繊維:無機質資材の含有割合は1:99〜50:50(質量比)であることが好ましいこと、また、植物育成基材における熱融着性繊維および粒径が10mm以上で嵩密度が0.5kg/dm3以下の無機質発泡体の含有量は、それぞれ0.3〜30質量%および5〜99質量%であるのが好ましいことなどを見出し、それらの知見に基づいて本発明を完成した。
【0007】
すなわち、本発明は、
(1) 単繊維繊度が10〜30dtex、繊維長が1〜20mm、アスペクト比が20〜1,000、水分率が15質量%以下および捲縮数が6個/cm以下である熱融着性繊維と、無機質資材を含有することを特徴とする植物育成基材である。
【0008】
そして、本発明は、
(2) 熱融着性繊維が、繊維形成性重合体と、該繊維形成性重合体よりも融点または軟化点が20℃以上低い熱可塑性重合体とからなる、熱融着性の複合紡糸繊維および/または混合紡糸繊維である前記(1)の植物育成基材;
(3) 無機質資材として、粒径が10mm以上で嵩密度が0.5kg/dm3以下の無機質発泡体を5質量%以上の割合で含む無機質資材を用いる前記(1)または(2)の植物育成基材;
(4) 熱融着性繊維:無機質資材の配合割合が、質量比で1:99〜50:50である前記(1)〜(3)のいずれかの植物育成基材;および、
(5) 植物育成基材の質量に対して、熱融着性繊維を0.3〜30質量%、および粒径が10mm以上で嵩密度が0.5kg/dm3以下の無機質発泡体を5〜99質量%の割合で含有する前記(1)〜(4)のいずれかの植物育成基材;である。
【0009】
さらに、本発明は、
(6) 下記の数式(I)により求められる曲げ強度が70mN以上である加圧加熱処理シート状物を与える前記(1)〜(5)のいずれかの植物育成基材である。
【0010】
【数2】
曲げ強度(mN)={(50×B)/(25×A)}×3/2 (I)
[但し、上記式中、Aは、植物育成基材を目付500g/m2のシート状物とし、100ml/m2の割合で水を散布した後、温度115℃、圧力49KPaで15分間加圧加熱処理して得られるシート状物を長さ100mmおよび幅25mmの試験片に裁断し、該試験片の上部全面に53.9kPaの圧力をかけたときの試験片の厚さ(mm)を示し、Bは、前記試験片の両端を距離50mmで隔置した左右の支持台上に載せてその両端を固定した状態で、試験片の中央部に面積2cm2の円形加圧板を載せて10mm/minの速度で下降させ、試験片が破損した際に試験片にかかっていた荷重(最大荷重)(mN)を示す。]
【0011】
そして、本発明は、
(7) 前記(1)〜(6)のいずれかの植物育成基材を用いて得られる栽培床;および、
(8) 熱融着性繊維が溶融接着されている前記(6)の栽培床;
である。
【0012】
さらに、本発明は、
(9) 前記(1)〜(6)のいずれかの植物育成基材を容器または型に充填し、加圧加熱処理して植物育成基材中の熱融着性繊維を溶融接着させると共に成形することを特徴とする栽培床の製造方法である。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下に本発明について詳細に説明する。
本発明の植物育成基材は、熱融着性繊維および無機質資材を含有する。
熱融着性繊維としては、熱融着性繊維を配合した植物育成基材を加熱処理したときに、溶融または軟化して熱融着性繊維同士の接着、熱融着性繊維と植物育成基材中の無機質資材や他の成分との接着などが行われ、しかも単繊維繊度が10〜30dtex、繊維長が1〜20mm、アスペクト比が20〜1,000、水分率が15質量%以下および捲縮数が6個/cm以下であるものであればいずれも使用できる。
【0014】
そのうちでも、熱融着性繊維としては、加熱処理後もその繊維形状を保ちながら繊維同士の溶融接着状態および繊維と植物育成基材中の成分との溶融接着状態を維持できるものを使用することが好ましく、それによって強力の一層高い栽培床などを形成することができる。
そのような熱融着性繊維としては、加熱処理を施した後でも繊維形態を維持できる高い融点または軟化点を有する繊維形成性重合体(第1成分)と、該繊維形成性重合体よりも20℃以上低い融点または軟化点を有する熱可塑性重合体(第2成分)とからなる複合紡糸繊維および/または混合紡糸繊維が好ましく用いられ、複合紡糸繊維がより好ましく用いられる。複合紡糸繊維および混合紡糸繊維においては、繊維の表面の少なくとも一部、好ましくは繊維表面の80%以上が低融点または低軟化点の熱可塑性重合体(第2成分)から形成されていることが好ましく、その場合には加熱処理によって繊維の溶融接着(繊維同士の接着および繊維と植物育成基材中の成分との接着)が良好に行われて、強力の高い栽培床などが形成される。
【0015】
前記した複合紡糸繊維および混合紡糸繊維を構成する繊維形成性重合体(第1成分)としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル、ポリアミド、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデンなどの高い融点または軟化点を有する繊維形成性重合体を挙げることができる。
また低融点または低軟化点の熱可塑性重合体(第2成分)としては、第1成分として用いられるポリエステル、ポリアミドよりも融点または軟化点が20℃以上低い熱可塑性重合体、例えば変性ポリエステル(共重合ポリエステルなど)、変性ポリアミド(共重合ポリアミドなど)、ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−プロピレン共重合体などを挙げることができる。
複合紡糸繊維または混合紡糸繊維は、適当な第1成分用重合体の1種または2種以上と、適当な第2成分用重合体の1種または2種以上を組み合わせて形成されていることができる。第2成分用重合体としては、熱融着性繊維の溶融接着を円滑に行うことができることから、その融点または軟化点が130℃以下の熱可塑性重合体が好ましく用いられる。
【0016】
複合紡糸繊維は、周知のように、2種以上の重合体の各々が繊維の長さ方向に途中で途切れることなく連続した状態で互いに接合して1本の繊維(複合繊維)を形成している繊維であり、一般に、その複合形態は繊維の横断面形状から見て、芯鞘型、貼り合わせ型(サイドバイサイド型)またはそれらの混在型などに分けられる。本発明で用いる複合紡糸繊維の複合形態は、それらのいずれであってもよく特に制限されない。そのうちでも、低融点または低軟化点の熱可塑性重合体(第2成分)を鞘成分とし、高融点または高軟化点の繊維形成性重合体(第1成分)を芯成分とする芯鞘型の複合紡糸繊維は、全表面が低融点または低軟化点の第2成分から形成されていて溶融接着性に優れているため、好ましく用いられる。
また、混合紡糸繊維は、互いに均一に混ざり合わない2種以上の重合体を紡糸口金から紡出する以前の段階で混合して紡糸することによって形成される繊維であり、2種以上の重合体の1種または2種以上が繊維の長さ方向に途中で途切れながら互いに接合して1本の繊維を形成している繊維であり、繊維の横断面は一般に海島型の構造を有していることが多く、場合によって貼り合わせ型の構造をとることもある。混合紡糸繊維としては、低融点または低軟化点の熱可塑性重合体(第2成分)が海成分をなし、高融点または高軟化点の繊維形成性重合体が島成分をなしている混合紡糸繊維が溶融接着性に優れているため好ましく用いられる。
【0017】
本発明で用いる熱融着性繊維の断面形状は特に制限されず、例えば、丸型、三角形型、T型、偏平型、多葉型、V字型、中空型などのいずれの断面形状であってもよい。
【0018】
本発明で用いる熱融着性繊維は、単繊維繊度が10〜30dtexであることが必要であり、10〜20dtexであることが好ましい。本発明では、無機質資材として10mm以上の大きな粒径を有する無機質発泡体を好適に使用することから、熱融着性繊維の単繊維繊度が10dtex未満であると、熱融着性繊維を溶融接着した際に、繊維と該無機質資材との接着や該無機質資材間の接着が良好に行われず、強力の高い栽培床などが形成されなくなる。一方、熱融着性繊維の単繊維繊度が30dtexを超えると、所定量の熱融着性繊維を配合した際に熱融着性繊維の繊維本数の絶対量が不足するため、強力の高い栽培床などが形成されなくなる。
【0019】
また、本発明で用いる熱融着性繊維は、その繊維長が1〜20mmであることが必要であり、3〜15mmであることが好ましく、5〜10mmであることがより好ましい。熱融着性繊維の繊維長が1mm未満であると、強力の高い栽培床などを形成できなくなり、一方20mmを超えると無機質資材や場合により他の成分と混合する際に分散性が不良となり、ボール状繊維塊を形成し易くなり、容器や型への充填作業が行いにくくなる。しかも、熱融着性繊維が植物育成基材中に均一に分散しなくなるために、強力の高い栽培床が形成されにくくなる。
【0020】
本発明で用いる熱融着性繊維のアスペクト比は20〜1,000あることが必要であり、50〜500であることが好ましい。熱融着性繊維のアスペクト比が20未満であると、強力の高い栽培床などが形成されにくくなり、一方1,000を超えると無機質資材などと混合する際に分散性が不足して繊維塊を生じて、容器への充填作業が行いにくくなり、しかも繊維が植物育成基材中に均一に分散していないために強力の高い栽培床などが形成されなくなることがある。
なお、本明細書における熱融着性繊維のアスペクト比とは、繊維長を繊維径(繊維の外径)で除した値をいう。
【0021】
本発明で用いる熱融着性繊維は、水分率が熱融着性繊維の質量に対して15%以下であることが必要であり、10%以下であることが好ましく、8%以下であることがより好ましく、5%以下であることが更に好ましい。熱融着性繊維の水分率が15%を超えると、無機質資材などと混合する際に熱融着性繊維が単糸に分繊しなくなって、植物育成基材中に均一に分散せず、強力の高い栽培床などが形成されにくくなる。
【0022】
本発明で用いる熱融着性繊維は、捲縮していても又は捲縮していなくてもいずれでもよいが、その捲縮数が6個/cm以下(約15個/インチ以下)、すなわち0〜6個/cmであることが必要であり、4個/cm以下であることが好ましく、2個/cm以下であることがより好ましい。熱融着性繊維の捲縮数が6個/cmを超えると、無機質資材などと混合する際に繊維塊を生じ易くなり、容器への充填作業が行いにくくなり、しかも繊維が植物育成基材中に均一に分散せず、強力の高い栽培床などが形成されにくくなる。熱融着性繊維が多少の捲縮を有する(1〜3個/cm程度)と、植物育成基材中での熱融着性繊維同士の接着・融着が行われ易くなって栽培床などの強力が向上することがある。
【0023】
本発明では無機質資材として、無機質発泡体、土、砂、石などが用いられ、そのうちでも粒径が10mm以上で嵩密度が0.5kg/dm3以下の無機質発泡体を5質量%以上の割合で含む無機質資材が好適に用いられる。
無機質資材として好適に用いられる無機質発泡体の粒径が10mm未満であると、植物育成基材の充填密度が高くなって、植物育成基材の軽量化を図りにくくなり、また水はけ性の低下、風雨による飛散や流失が生じ易くなることがある。無機質発泡体としては、粒径が10〜30mmのものを用いることがより好ましく、粒径が10〜20mmのものを用いることが更に好ましい。無機質発泡体の粒径が30mmを超えると、植物育成基材の調製時に分散性や取り扱い性が低下し易い。
また、無機質発泡体の嵩密度が0.5kg/dm3よりも高いと、植物育成基材の軽量化を行いにくくなり、しかも無機質発泡体中の気泡が減少するために水分保持性が低下し、植物の生育が悪くなり易い。無機質発泡体の嵩密度は0.1〜0.4kg/dm3であることがより好ましい。
さらに、無機質資材において、粒径が10mm以上で嵩密度が0.5kg/dm3以下の無機質発泡体の含有割合が5質量%未満の場合には、無機質発泡体の粒径が10mm未満である前述した場合と同様に、植物育成基材の充填密度が高くなって、植物育成基材の軽量化を図りにくくなり、また水はけ性の低下、風雨による飛散や流失が生じ易くなることがある。無機質資材としては、粒径が10mm以上で嵩密度が0.5kg/dm3以下の無機質発泡体を30質量%以上の割合で含む無機質資材がより好ましく用いられ、該無機質発泡体を50質量%以上の割合で含む無機質資材が更に好ましく用いられる。
【0024】
本発明では無機質発泡体として、植物に対して害を及ぼさず、粒径が10mm以上で且つ嵩密度が0.5kg/dm3以下であるものであればいずれも好適に用いることができ、具体例としては、パーライト、ナチュライト、バーミキュライト、ロックウール、ゼオライトなどを挙げることができる。そのうちでも軽量性および水はけ性などの点により優れている点からナチュライトが好ましく用いられる。
【0025】
本発明の植物育成基材における熱融着性繊維と無機質資材の配合割合は、質量比で、熱融着性繊維:無機質資材=1:99〜50:50であることが好ましく、5:95〜30:70であることがより好ましく、10:90〜20:80であることがより好ましい。
熱融着性繊維と無機質資材の合計質量に対して、熱融着性繊維の配合割合が1質量%よりも少ないと(無機質資材の配合割合が99質量%を超えると)、強力の高い栽培床などが形成されにくくなって、僅かな衝撃や外力で栽培床などの形が崩れ易くなり、取り扱い性、加工性が悪くなり易い。一方、熱融着性繊維と無機質資材の合計質量に対して、熱融着性繊維の配合割合が50質量%を超えると(無機質資材の配合割合が50質量%未満であると)、無機質資材などと混合して植物育成基材を調製する際に繊維塊を生じて、熱融着性繊維が植物育成基材中に均一に分散されにくくなって、作業性の低下、栽培床の強力低下などを生じ易くなり、しかもコストが高くなる。
【0026】
また、本発明の植物育成基材は、植物育成基材の全質量に対して、熱融着性繊維を0.3〜30質量%、特に1〜20質量%の割合で含有し、粒径が10mm以上で嵩密度が0.5kg/dm3以下の無機質発泡体を5〜99質量%、特に10〜97質量%、更には30〜95質量%の割合で含有することが好ましい。
植物育成基材の全質量に対して、熱融着性繊維の含有量が0.3質量%未満であると、強力の高い栽培床などが形成されにくくなって、僅かな衝撃や外力で栽培床などの形が崩れ易くなり、取り扱い性、加工性が悪くなり易い。一方、熱融着性繊維の含有量が30質量%を超えると、無機質資材の調製時に繊維塊を生じて、熱融着性繊維を植物育成基材中に均一に分散することが困難になり、植物育成基材の調製時での作業性の低下、植物育成基材から得られる栽培床の強力低下などを生じ易くなり、しかもコストが高くなる。
また、植物育成基材の全質量に対して、粒径が10mm以上で嵩密度が0.5kg/dm3以下の無機質発泡体の含有量が5質量%未満であると、水はけ性、軽量性が劣るようになり、一方99質量%を超えると強力の高い栽培床などが形成されにくくなる。
ここで、無機質資材中での粒径が10mm以上の無機質発泡体の含有量は、以下の段落0040に記載した「(2)無機質発泡体の流通経路」の測定法により測定される。
【0027】
本発明の植物育成基材は、上記した熱融着性繊維および無機質資材と共に、必要に応じて、ポリエチレングリコール系湿潤剤などの湿潤剤、無機質肥料、有機質肥料、化学堆肥などの肥料などを更に含有してもかまわない。湿潤剤を含有することにより、水はけ性や保温性を適正に調整できる。また、肥料は種子および苗の育成に寄与する。
【0028】
本発明の植物育成基材は、前記した特定の熱融着性繊維、無機質資材および必要に応じて他の成分を混合することによって製造される。混合方法および装置は特に制限されず、前記成分を均一に混合し得る方法および装置であればいずれでもよい。
【0029】
本発明の植物育成基材は、下記の数式(I)により求められる曲げ強度が70mN以上、特に85mN以上、更には100nM以上である加圧加熱処理シート状物を与える(形成し得る)植物育成基材であることが好ましい。
【0030】
【数3】
曲げ強度(mN)={(50×B)/(25×A)}×3/2 (I)
[但し、上記式中、Aは、植物育成基材を目付500g/m2のシート状物とし、100ml/m2の割合で水を散布した後、温度115℃、圧力49KPaで15分間加圧加熱処理して得られるシート状物を長さ100mmおよび幅25mmの試験片に裁断し、該試験片の上部全面に53.9kPaの圧力をかけたときの試験片の厚さ(mm)を示し、Bは、前記試験片の両端を距離50mmで隔置した左右の支持台上に載せてその両端を固定した状態で、試験片の中央部に面積2cm2の円形加圧板を載せて10mm/minの速度で下降させ、試験片が破損した際に試験片にかかっていた荷重(最大荷重)(mN)を示す。]
【0031】
上記の数式(I)により求められる曲げ強度が70mN以上である加圧加熱処理シート状物を形成し得る植物育成基材からは、高い強力を有する栽培床が形成され、該栽培床は、栽培床を屋上などに設置する際の作業性や取り扱い性、栽培床に植物を植え付ける際の作業性、栽培床に植え付けた植物の育成性、設置後の栽培床資材の飛散・流失防止などに優れている。
【0032】
前記した特定の熱融着性繊維と無機質資材を含有する本発明の植物育成基材を加熱して、熱融着性繊維を溶融して接着することによって、本発明の栽培床が製造される。加熱の方法および装置は特に制限されず、植物育成基材全体を所定の温度に均一に加熱し得る方法および装置であればいずれでもよい。熱融着性繊維による接着力を向上させて強力の大きな栽培床を製造するためには、加圧下に加熱することが好ましい。加圧加熱処理は、例えば、加熱式平板プレス機などの加圧加熱装置を使用してもよいし、また何らかの加圧手段によって植物育成基材全体に圧力をかけた状態にし、その状態で加熱処理を行うこともできる。
加熱処理または加圧加熱処理(以下両者を総称して「加熱処理」ということがある)を行う際の加熱温度は、熱融着性繊維における熱融着性の融点または軟化点に応じて選択することができ、一般的には、熱融着性繊維における熱融着性成分(熱融着性の熱可塑性重合体)の融点または軟化点以上で且つ該融点または軟化点+10℃以下の温度が好ましく採用される。
また、加熱処理を加圧加熱処理によって行う場合の圧力は、植物育成基材の組成、加熱温度、得られる栽培床の使用形態、植物育成基材の大きさなどに応じて適当な圧力を選択し得るが、一般的には、98kPa〜120kPaであることが好ましい。
【0033】
植物育成基材の加熱処理は、熱融着性繊維と無機質資材を混合して調製した植物育成基材を箱などの容器や型に充填し、灌水せずにそのまま直接行ってもよいが、灌水した後に行うことが好ましい。灌水した後に加熱処理すると、熱融着性繊維を短時間で均一に溶融接着することができて、全体的に均整のとれた強力を有する栽培床が形成される。
加熱処理時時に灌水する場合は、灌水の程度に特に制限はないが、一般的には飽和の状態(毛管連絡切断点以上の含水状態)になる程度に灌水することが好ましい。
【0034】
栽培床の製造方法は、植物育成基材中の成分が熱融着性繊維によって均一に溶融接着される方法であればいずれでもよい。例えば、熱融着性繊維、無機質資材および必要に応じて他の成分を混合して調製した植物育成基材を、比較的大きな箱などの容器や型に充填して加熱処理した後、施工し易い大きさに切断または分割し、それを栽培床として屋上などに設置する方法、屋上などに設置する大きさに見合う箱などの容器や型を予め準備し、該容器や型に熱融着性繊維、無機質資材および必要に応じて他の成分を混合して調製した植物育成基材を充填して加熱処理して成形し、それを屋上などに容器または型ごと設置したり、容器または型から取り出して設置する方法などを挙げることができる。
本発明の栽培床は、屋上緑化のための栽培床として特に適しているが、それに制限されるものではなく、例えば、法面の緑化、公園、庭、道路のグリーンベルト部、畑地、グランド、ベランダ、室内、ビル内、壁面などにおいて植物を生育させるための苗床や栽培床としても有効に使用することができる。
【0035】
本発明の栽培床を用いて植物を育成する際の育成方法は特に制限されず、植物が健全に生育できる方法であればいずれでもよい。例えば、成形した栽培床に種子を直接播いて苗まで育成させた後に屋上などに設置する方法、栽培床に穴を空けておき、それを屋上などに設置した後に、苗を育成したセルやポットなどを、セルやポットごと前記穴にセットする方法または苗をセルやポットから根鉢ごと抜き取って前記穴にセットする方法などを挙げることができる。
【0036】
栽培床に種子を播く場合は、種子が植物育成基材中の熱融着性繊維を加熱接着させるための加熱処理時の加熱温度に耐え得るものであれば、加熱処理前に植物育成基材に種子を播いた後に加熱処理を行ってもよいが、植物育成基材を加熱処理して植物育成基材中の熱融着性繊維を溶融接着して栽培床を製造した後に該栽培床に種子を播くことが好ましい。加熱処理の前に種子を播くと、加熱時の高温により、種子の変質、死滅などを生じて、発芽しなかったり、発芽しても発育不良などを生ずる場合が多い。植物育成基材に灌水した後に加熱処理して栽培床を製造する場合は、加熱処理により得られる栽培床が灌水状態になっているので、再灌水を行わずに種子をそのまま直接播くことができる。しかし、必要であれば、播種時に再度灌水してもよい。
本発明の植物育成基材およびそれから得られる栽培床は、種子を播いたり、苗を植えるのに用いるだけではなく、挿し木などにも用いることができる。挿し木をする場合は、本発明の栽培床に植物の枝、幹、葉などを挿し木し、以後従来から採用されているのと同様の方法で生育させればよい。
【0037】
加熱処理を行う前の本発明の植物育成基材、または該植物育成基材を加熱処理して得られる本発明の栽培床に播種するのに適する植物としては、アゲラタム、イソトマ、インパチェンス、エキザカム、ガーベラ、ガザニア、カルセオラリア、クリサンセマム、コリウス、サルビア、シザンサス、シネラリア、ゼラニウム、トレニア、パンジー、ビンカ、プリムラ、ペチュニア、ベコニア、マリーゴールド、ラナンキュラス、カーネーション、キンギョソウ、ブプレウルム、ユーストマ、ストック、アネモネ、カンパニュラ、ダリア、スカピオサ、デルフィニウム、ラークスパー、ニゲラ、ハナシノブ、ブルーレースフラワー、マトリカリア、シンテッポウユリ、リモニウムシニュアータ、オキシペタルム、クラスペディア、ユウギリソウなどの花や観葉植物の種子;セルリー、ビート、ネギ、タマネギ、ニラ、キャベツ、コールラビ、メキャベツ、カリフラワー、ブロッコリー、ハクサイ、ツケナ、ゴマ、フダンソウ、シュンギグ、ミツバ、シソ、ホウレンソウ、レタス、アスパラガス、パセリ、エンダイブ、リーキなどの野菜類の種子;メロン、ピーマン、キュウリ、スイカ、カボチャ、トウガン、キンシウリ、トマト、ナス、オクラ、スイートコーン、インゲン、エンドウ、エダマメ、ソラマメなどの果菜類の種子などが挙げられる。
また、本発明の栽培床に挿し木をするのに適する植物としては、キク、カーネーション、宿根カスミソウなどの挿し木で繁殖できる植物が挙げられる。
さらに、本発明の栽培床には、樹木、芝草のほか、例えば、耐乾燥性に優れるサカサマンネングサ、モリムラマンネングサ、メキシコマンネングサ、ツルマンネングサ、コーラルカーペット、スプリュームなどのセダム類の植物の種を播いたり、植物を植えることができる。
【0038】
【実施例】
以下に実施例などにより本発明を具体的に説明するが、本発明は以下の例により何ら限定されるものではない。以下の例において、熱融着性繊維の単繊維繊度、無機質発泡体の粒径、無機質発泡体の見掛密度、加圧加熱処理シート状物の曲げ強度は、次のようにして測定した。
【0039】
(1)熱融着性繊維の単繊維繊度(dtex):
熱融着性繊維(短繊維に切断する前のフィラメント繊維)の一定試長(L)を採取してその質量(W)を測定し、前記試長(L)と質量(W)の値から熱融着性繊維の単繊維繊度(dtex)を求める操作を5回繰り返し、その平均値を採って熱融着性繊維の単繊維繊度(dtex)とした。
【0040】
(2)無機質発泡体の粒径(mm):
目開きが0.15mm、0.30mm、0.60mm、1.20mm、2.50mm、5.00mmおよび10.0mmの7種類の篩を準備し、目の小さい篩から順に用いて無機質発泡体を篩分けし、必要とする無機質発泡体の粒径までの目開きを有する篩で篩落とされた無機質発泡体を以下の実施例および比較例でそれぞれ使用して、各例で用いた無機質発泡体の粒径とした。
【0041】
(3)無機質発泡体の見掛密度(kg/dm3):
1dm3のメスシリンダーに無機質発泡体を充填し、1dm3当たりの質量を測定して無機質発泡体の見掛密度(kg/dm3)とした。
【0042】
(4)加圧加熱処理シート状物の曲げ強度:
(i) 以下の実施例または比較例で得られた植物育成基材を、箱に目付が500g/m2になるように充填して平らにならし、それに100ml/m2の割合で水を散布(灌水)した後、加熱式平板プレス機にて、温度115℃、圧力49KPaで15分間加圧加熱処理してシート状物をつくり、そのシート状物を長さ100mmおよび幅25mmの試験片aに裁断し、該試験片aの上部全面に53.9kPaの圧力をかけ、そのときの試験片aの厚さ(A)(mm)を測定した。
(ii) 次いで、上記(i)の試験片aを、図1に示すように、50mmの距離を設けて配置した左右の支持台1a,1bの上に載せ、試験片aの両端a1,a2を端部固定手段2a,2bで固定した後、試験片aの中央部に面積2cm2の円形加圧板3を載せて10mm/minの速度で下降させ、試験片aが破損した際に試験片aにかかっていた荷重(最大荷重)B(mN)を読み取って、下記の数式(I)によりシート状物の曲げ強度を算出した。
【0043】
【数4】
曲げ強度(mN)={(50×B)/(25×A)}×3/2 (I)
【0044】
また、以下の実施例または比較例で用いた熱融着性繊維の内容と略号は次のとおりである。
なお、以下の熱融着性繊維において、所定繊維長の繊維を得るための切断操作は、イーストマン・コダック社製の「ECカッター」を使用して、トウ繊度100ktexのトウを用いて速度140m/分の条件下に行った。
【0045】
○熱融着性繊維▲1▼:
芯成分がポリエチレンテレフタレートおよび鞘成分がイソフタル酸45モル%共重合ポリエチレンテレフタレートよりなる芯鞘型複合繊維[芯成分:鞘成分の質量比=1:1、鞘成分の軟化点=110℃、芯成分の融点=260℃、単繊維繊度=11dtex;繊維長=5mm、アスペクト比=150、水分率=10%、捲縮数=0個/cm(非捲縮)]
○熱融着性繊維▲2▼:
芯成分がポリエチレンテレフタレートおよび鞘成分がイソフタル酸45モル%共重合ポリエチレンテレフタレートよりなる芯鞘型複合繊維[芯成分:鞘成分の質量比=1:1、鞘成分の軟化点=110℃、芯成分の融点=260℃、単繊維繊度=15dtex;繊維長=10mm、アスペクト比=270、水分率=8%、捲縮数=0個/cm(非捲縮)]
○熱融着性繊維▲3▼:
芯成分がポリプロピレンおよび鞘成分がポリエチレンよりなる芯鞘型複合繊維[芯成分:鞘成分の質量比=1:1、鞘成分の軟化点=132℃、芯成分の融点=169℃、単繊維繊度=11dtex;繊維長=3mm、アスペクト比=70、水分率=5%、捲縮数=2個/cm]
○熱融着性繊維▲4▼:
芯成分がポリエチレンテレフタレートおよび鞘成分がイソフタル酸45モル%共重合ポリエチレンテレフタレートよりなる芯鞘型複合繊維[芯成分:鞘成分の質量比=1:1、鞘成分の軟化点=110℃、芯成分の融点=260℃、単繊維繊度=15dtex;繊維長=0.5mm、アスペクト比=13、水分率=8%、捲縮数=0個/cm(非捲縮)]
【0046】
○熱融着性繊維▲5▼:
芯成分がポリエチレンテレフタレートおよび鞘成分がイソフタル酸45モル%共重合ポリエチレンテレフタレートよりなる芯鞘型複合繊維[芯成分:鞘成分の質量比=1:1、鞘成分の軟化点=110℃、芯成分の融点=260℃、単繊維繊度=33dtex;繊維長=1mm、アスペクト比=38、水分率=8%、捲縮数=0個/cm(非捲縮)]
○熱融着性繊維▲6▼:
芯成分がポリエチレンテレフタレートおよび鞘成分がイソフタル酸45モル%共重合ポリエチレンテレフタレートよりなる芯鞘型複合繊維[芯成分:鞘成分の質量比=1:1、鞘成分の軟化点=110℃、芯成分の融点=260℃、単繊維繊度=11dtex;繊維長=5mm、アスペクト比=150、水分率=10%、捲縮数=約7.9個/cm]
○熱融着性繊維▲7▼:
芯成分がポリエチレンテレフタレートおよび鞘成分がイソフタル酸45モル%共重合ポリエチレンテレフタレートよりなる芯鞘型複合繊維[芯成分:鞘成分の質量比=1:1、鞘成分の軟化点=110℃、芯成分の融点=260℃、単繊維繊度=11dtex;繊維長=5mm、アスペクト比=150、水分率=20%、捲縮数=0個/cm(非捲縮)]
○熱融着性繊維▲8▼:
芯成分がポリエチレンテレフタレートおよび鞘成分がイソフタル酸45モル%共重合ポリエチレンテレフタレートよりなる芯鞘型複合繊維[芯成分:鞘成分の質量比=1:1、鞘成分の軟化点=110℃、芯成分の融点=260℃、単繊維繊度=11dtex;繊維長=51mm、アスペクト比=1600、水分率=10%、捲縮数=0個/cm(非捲縮)]
【0047】
さらに、以下の実施例および比較例で用いた無機質資材の内容と略号は次のとおりである。
○無機質資材(A):
ナチュライト(天然パーライト;中国産天然火山性軽石)(粒径=10〜20mm、見掛密度土=0.13kg/dm3)
○無機質資材(B):
パーライト(服部株式会社製「服部パーライトN−3号」)(真珠岩を精製後、急速に加熱膨張させた微細な気泡を有する無機質発泡体;粒径=1.2mm未満、嵩密度=0.19kg/dm3)
【0048】
《実施例1》
(1) 無機質資材(A)95質量部と熱融着性繊維▲1▼5質量部をミキサー容器に入れて撹拌・混合して植物育成基材を製造した。
(2) 上記(1)で得られた植物育成基材の一部を用いて、曲げ強度測定用の加圧加熱処理シート状物を上記した方法でつくり、その曲げ強度を上記した方法で測定したところ、下記の表1に示すとおりであった。
(3) 上記(1)で得られた植物育成基材の残りの部分を、箱(長さ×幅×高さ=100cm×50cm×3cm)に、3cmの深さに充填して平らにし(目付=4kg/m2)、次いで2ml/cm2の割合で灌水し、加熱式平板プレス機を用いて温度110℃、圧力98kPaの条件下に15分間加圧加熱処理し、冷却後に箱から取り出して栽培床とした。
(4) 上記(3)で得られた栽培床に直径約20mm、深さ10mmの穴を10cmの間隔で空け、1個の穴に土を約4g充填した後にセダムの種子1個を播き、温度15〜20℃、湿度40〜60%の条件下で発芽および苗の生育を行い(播種後約15日間)、次いでそれを屋上に設置したところ、栽培床の崩壊が生じず、軽量で取り扱い性に優れていた。
(5) 屋上設置後に、天候状態に応じて水を適宜散布して(約2日に1回の割合で散水)苗を育てたところ、適度の保水性を有しながら水はけ性に優れていて、根腐れなどによる枯れが生じず、しかも風雨による植物の倒れなどを生ずることがなく、セダムを良好に生育させることができた(屋上設置約30日後でのセダムの高さ=約15cm)。
【0049】
《実施例2》
(1) 無機質資材(A)95質量部と熱融着性繊維▲2▼5質量部をミキサー容器に入れて撹拌・混合して植物育成基材を製造した。
(2) 上記(1)で得られた植物育成基材の一部を用いて、曲げ強度測定用の加圧加熱処理シート状物をつくり、その曲げ強度を上記した方法で測定したところ、下記の表1に示すとおりであった。
(3) 上記(1)で得られた植物育成基材の残りの部分を使用して、実施例1の(3)におけるのと同様にして加圧加熱処理を行って、栽培床を製造した。
(4) 上記(3)で得られた栽培床を用いて実施例1の(4)におけるのと同様にしてセダムの種子の発芽および苗の生育を行い(播種後約15日間)、次いでそれを屋上に設置したところ、栽培床の崩壊が生じず、軽量で取り扱い性に優れていた。
(5) 屋上設置後に、天候状態に応じて水を適宜散布して(約2日に1回の割合で散水)苗を育てたところ、適度の保水性を有しながら水はけ性に優れていて、根腐れなどによる枯れが生じず、しかも風雨による植物の倒れなどを生ずることがなく、セダムを良好に生育させることができた(屋上設置約30日後でのセダムの高さ=約15cm)。
【0050】
《実施例3》
(1) 無機質資材(A)90質量部と熱融着性繊維▲3▼10質量部をミキサー容器に入れて撹拌・混合して植物育成基材を製造した。
(2) 上記(1)で得られた植物育成基材の一部を用いて、曲げ強度測定用の加圧加熱処理シート状物を上記した方法でつくり、その曲げ強度を上記した方法で測定したところ、下記の表1に示すとおりであった。
(3) 上記(1)で得られた植物育成基材の残りの部分を使用して、実施例1の(3)におけるのと同様にして加圧加熱処理を行って、栽培床を製造した。
(4) 上記(3)で得られた栽培床を用いて実施例1の(4)におけるのと同様にしてセダムの種子の発芽および苗の生育を行い(播種後約15日間)、次いでそれを屋上に設置したところ、栽培床の崩壊が生じず、軽量で取り扱い性に優れていた。
(5) 屋上設置後に、天候状態に応じて水を適宜散布して(約2日に1回の割合で散水)苗を育てたところ、適度の保水性を有しながら水はけ性に優れていて、根腐れなどによる枯れが生じず、しかも風雨による植物の倒れなどを生ずることがなく、セダムを良好に生育させることができた(屋上設置約30日後でのセダムの高さ=約15cm)。
【0051】
《実施例4》
(1) 無機質資材(B)95質量部と熱融着性繊維▲1▼5質量部をミキサー容器に入れて撹拌・混合して植物育成基材を製造した。
(2) 上記(1)で得られた植物育成基材の一部を用いて、曲げ強度測定用の加圧加熱処理シート状物を上記した方法でつくり、その曲げ強度を上記した方法で測定したところ、下記の表1に示すとおりであった。
(3) 上記(1)で得られた植物育成基材の残りの部分を使用して、実施例1の(3)におけるのと同様にして加圧加熱処理を行って、栽培床を製造した。
(4) 上記(3)で得られた栽培床を用いて実施例1の(4)におけるのと同様にしてセダムの種子の発芽および苗の生育を行い(播種後約15日間)、次いでそれを屋上に設置した。軽量性で運搬性は良好であった。但し、実施例1〜3で得られた栽培床に比べて強力が低いために、作業時に栽培床が部分的に崩壊することがあった。
【0052】
《実施例5》
(1) 無機質資材(A)10質量部、無機質資材(B)85質量部および熱融着性繊維▲1▼5質量部をミキサー容器に入れて撹拌・混合して植物育成基材を製造した。
(2) 上記(1)で得られた植物育成基材の一部を用いて、曲げ強度測定用の加圧加熱処理シート状物をつくり、その曲げ強度を上記した方法で測定したところ、下記の表1に示すとおりであった。
(3) 上記(1)で得られた植物育成基材の残りの部分を使用して、実施例1の(3)におけるのと同様にして加圧加熱処理を行って、栽培床を製造した。
(4) 上記(3)で得られた栽培床を用いて実施例1の(4)におけるのと同様にしてセダムの種子の発芽および苗の生育を行い(播種後約15日間)、次いでそれを屋上に設置したところ、栽培床の崩壊が生じず、軽量で取り扱い性にほぼ優れていた。
(5) 屋上設置後に、天候状態に応じて水を適宜散布して(約2日に1回の割合で散水)苗を育てたところ、適度の保水性を有しながら水はけ性に優れていて、根腐れなどによる枯れが生じず、しかも風雨による植物の倒れなどを生ずることがなく、セダムを良好に生育させることができた(屋上設置約30日後でのセダムの高さ=約15cm)。
【0053】
《比較例1》
熱融着性繊維を用いずに無機質資材(A)のみを用いて、曲げ強度測定用の加圧加熱処理シート状物を上記した方法で製造しようとしたが、シート状物とすることができず、崩壊してしまった。
【0054】
《比較例2》
(1) 無機質資材(A)85質量部と熱融着性繊維▲4▼15質量部をミキサー容器に入れて撹拌・混合して植物育成基材を製造した。
(2) 上記(1)で得られた植物育成基材の一部を用いて、曲げ強度測定用の加圧加熱処理シート状物を上記した方法でつくり、その曲げ強度を上記した方法で測定したところ、下記の表2に示すとおりであった。
(3) 上記(1)で得られた植物育成基材の残りの部分を使用して、実施例1の(3)におけるのと同様にして加圧加熱処理を行って、栽培床を製造した。
(4) 上記(3)で得られた栽培床を用いて実施例1の(4)におけるのと同様にしてセダムの種子の発芽および苗の生育を行い(播種後約15日間)、次いでそれを屋上に設置しようとしたところ、軽量であったものの、栽培床の強力が小さく部分的に崩壊し、作業を円滑に行うことができなかった。
【0055】
《比較例3》
(1) 無機質資材(A)85質量部と熱融着性繊維▲5▼15質量部をミキサー容器に入れて撹拌・混合して植物育成基材を製造した。
(2) 上記(1)で得られた植物育成基材の一部を用いて、曲げ強度測定用の加圧加熱処理シート状物を上記した方法でつくり、その曲げ強度を上記した方法で測定したところ、下記の表2に示すとおりであった。
(3) 上記(1)で得られた植物育成基材の残りの部分を使用して、実施例1の(3)におけるのと同様にして加圧加熱処理を行って、栽培床を製造した。
(4) 上記(3)で得られた栽培床を用いて実施例1の(4)におけるのと同様にしてセダムの種子の発芽および苗の生育を行い(播種後約15日間)、次いでそれを屋上に設置しようとしたところ、軽量であったものの、栽培床の強力が小さく部分的に崩壊し、作業を円滑に行うことができなかった。
【0056】
《比較例4》
(1) 無機質資材(A)95質量部と熱融着性繊維▲6▼5質量部をミキサー容器に入れて撹拌・混合して植物育成基材を製造した。
(2) 上記(1)で得られた植物育成基材の一部を用いて、曲げ強度測定用の加圧加熱処理シート状物を上記した方法でつくり、その曲げ強度を上記した方法で測定したところ、下記の表2に示すとおりであった。
(3) 上記(1)で得られた植物育成基材の残りの部分を使用して、実施例1の(3)におけるのと同様にして加圧加熱処理を行って、栽培床を製造した。
(4) 上記(3)で得られた栽培床を用いて実施例1の(4)におけるのと同様にしてセダムの種子の発芽および苗の生育を行い(播種後約15日間)、次いでそれを屋上に設置しようとしたところ、軽量であったものの、熱融着性繊維の捲縮数が大きくて繊維塊による接着斑が発生したために、栽培床の強力が小さく部分的に崩壊し、作業を円滑に行うことができなかった。
【0057】
《比較例5》
(1) 無機質資材(A)95質量部と熱融着性繊維▲7▼5質量部をミキサー容器に入れて撹拌・混合して植物育成基材を製造した。
(2) 上記(1)で得られた植物育成基材の一部を用いて、曲げ強度測定用の加圧加熱処理シート状物を上記した方法でつくり、その曲げ強度を上記した方法で測定したところ、下記の表2に示すとおりであった。
(3) 上記(1)で得られた植物育成基材の残りの部分を使用して、実施例1の(3)におけるのと同様にして加圧加熱処理を行って、栽培床を製造した。
(4) 上記(3)で得られた栽培床を用いて実施例1の(4)におけるのと同様にしてセダムの種子の発芽および苗の生育を行い(播種後約15日間)、次いでそれを屋上に設置しようとしたところ、軽量であったものの、熱融着性繊維の単糸分繊性が不良であったために、栽培床の強力が小さく部分的に崩壊し、作業を円滑に行うことができなかった。
【0058】
《比較例6》
(1) 無機質資材(A)95質量部と熱融着性繊維▲8▼5質量部をミキサー容器に入れて撹拌・混合して植物育成基材を製造した。
(2) 上記(1)で得られた植物育成基材の一部を用いて、曲げ強度測定用の加圧加熱処理シート状物を上記した方法でつくり、その曲げ強度を上記した方法で測定したところ、下記の表2に示すとおりであった。
(3) 上記(1)で得られた植物育成基材の残りの部分を使用して、実施例1の(3)におけるのと同様にして加圧加熱処理を行い、冷却後に箱から取り出したところ、それにより得られた栽培床では、熱融着性繊維がボール状の繊維塊となっていて分散状態が不良であり、熱融着性繊維の存在しない部分での強力が低く部分的な崩壊を生じてしまい、種苗育成用の栽培床として不適なものであった。
【0059】
【表1】
【0060】
【表2】
【0061】
上記の表1および2の結果にみるように、実施例1〜5では、単繊維繊度が10〜30dtex、繊維長が1〜20mm、アスペクト比が20〜1,000、水分率が15質量%以下および捲縮数が6個/cm以下である熱融着性繊維と無機質資材を用いて植物育成基材を製造しているために、該植物育成基材を加圧加熱処理することによって得られる栽培床は軽量で強力が高く、その栽培床を屋上に設置した際に取り扱い性、施工性に優れており、しかも植物を良好に生育させることができる。
特に実施例1〜3の植物育成基材は、無機質資材として粒径が10mm以上で嵩密度が0.5kg/dm3以下の無機質発泡体を用いていることにより、植物育成基材を加圧加熱処理して得られる栽培床の強力が極めて高くて崩壊が全く生じず、屋上などに設置する際の取り扱い性、施工性に極めて優れている。
【0062】
これに対して、比較例1では熱融着性繊維を用いていないために、形状保持性のある栽培床を得ることができない。
また、比較例2の植物育成基材では、熱融着性繊維の繊維長が0.5mmと短く、本発明で規定1〜20mmの範囲から外れていて、しかも熱融着性繊維のアスペクト比が13と小さくて本発明で規定する20〜1,000の範囲から外れているために、植物育成基材を加圧加熱処理して得られる栽培床の強力が低く、屋上などに設置する際に部分的に崩壊し、取り扱い性、施工性に劣っている。
比較例3の植物育成基材では、熱融着性繊維の単繊維繊度が33dtexと大きくて本発明で規定する10〜30dtexの範囲から外れているために、植物育成基材を加圧加熱処理して得られる栽培床の強力が極めて低く、屋上などに設置する際に部分的に崩壊し、取り扱い性、施工性に劣っている。
【0063】
比較例4の植物育成基材では、熱融着性繊維の捲縮数が約7.9個/cmと大きく本発明で規定する6個/cm以下という範囲を超えているために、熱融着性繊維間に絡みやもつれが生じ易く、熱融着性繊維の繊維塊による接着斑が発生し、植物育成基材を加圧加熱処理して得られる栽培床の強力が低く、屋上などに設置する際に部分的に崩壊し、取り扱い性、施工性に劣っている。
比較例5の植物育成基材では、熱融着性繊維の水分率が20%と高くて本発明で規定する10%以下という範囲を超えているために、熱融着性繊維の単糸分繊性が不良で、植物育成基材を加圧加熱処理して得られる栽培床の強力が低く、屋上などに設置する際に部分的に崩壊し、取り扱い性、施工性に劣っている。
比較例6の植物育成基材では、熱融着性繊維の繊維長51mmと長くて本発明で規定する1〜20mmの範囲から外れているために、熱融着性繊維がボール状の繊維塊となり分散性が不良で、植物育成基材を加圧加熱処理して得られる栽培床の強力が低く、屋上などに設置する際に部分的に崩壊し、取り扱い性、施工性に劣っている。
【0064】
【発明の効果】
上記した特定の熱融着性繊維および無機質資材を含有する本発明の植物育成基材を加熱処理または加圧加熱処理して植物育成基材中の熱融着性繊維を溶融接着することによって、軽量で、強力および水はけ性に優れる本発明の栽培床を製造することができる。
本発明の栽培床は、適度な保水性を有しながら水はけ性に優れていて植物を健全に生育させることができる。しかも、軽量で、高い強力を有しているために、取り扱い性、施工時の作業性に優れており、その上屋上などに設置した際に建造物に対する負荷が小さい。
本発明の栽培床が高い強力を有していることにより、屋上などへの施工時に栽培床の崩壊が生じず、更には強い風や雨に曝されても栽培床の飛散、流失、崩壊を生じず、植物を良好に保持して生育させることのできる。
前記した優れた特性により、本発明の栽培床は、屋上緑化や法面緑化などに適しており、特に屋上緑化用の栽培床として好適である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の植物育成基材を加圧加熱処理して得られるシート状物の曲げ強度の測定方法を示す図である。
【符号の説明】
a 加圧加熱処理シート状物
1a 支持台
1b 支持台
2a 加圧加熱処理シート状物の端部固定手段
2b 加圧加熱処理シート状物の端部固定手段
3 加圧板
4 荷重検出部
【発明の属する技術分野】
本発明は、植物育成基材およびそれから得られる栽培床に関する。より詳細には、本発明は、適度な保水性を有しながら水はけ性に優れていて植物を健全に生育させることができ、軽量で、取り扱い性および施工性に優れるばかりでなく、屋上などに施工した時に建造物に大きな負荷を与えず、しかも強度の高い栽培床などを形成することのできる植物育成基材およびそれから得られる栽培床に関する。本発明の植物育成基材から得られる栽培床は、前記した優れた特性により、屋上や法面などのような風や雨によって土の飛散や流失が生じやすい場所に施工しても栽培床の崩壊が生じず、植物を健全に生育させることができ、特にその優れた軽量性により屋上緑化のための栽培床用として適している。
【0002】
【従来の技術】
近年、我が国では、都市部での緑化面積の減少から、特に屋上での緑化事業が進められている。屋上緑化に当たっては、従来、ポリプロピレンなどからなる容器に培土を充填し、そこに種苗を移植して育成する方法が主に採用されている。しかしながら、この方法による場合は、培土の重量が大きいために、取り扱い性および施工性が非常に悪い。しかも、水はけが悪いことにより植物の生育不良を起こし易い。その上、培土の大きな重量に更に水の重量が加算されるため、屋上に大きな負荷がかかるという問題がある。さらに、屋上は風や雨の影響を受け易く、折角施工した培土が飛散したり、流失し易いという問題がある。
そのような問題を軽減するための対策として、培土の上からネットで覆う方法も採られているが、省力化やコストの点で問題がある。
【0003】
また、我が国では、就農人口の減少、就農人員の高齢化などに伴って、農作業の省力化、機械化が進められており、その1つとして、小さな容器で育てた苗を移植機で根鉢ごと容器からから抜き取って、田畑に自動的に植え付ける方法が広く採用されるようになっている。この方法による場合は、通常“セル”、“ポット”などと称されるプラスチック等からなる小さな容器または該小容器を連結して設けたトレーに培土を自動的に土詰めした後に野菜、草花、果樹、樹木などの植物の種子を播いて所定期間育苗するか、或いは種子を加えた培土を前記小さな容器またはそれを連結してなるトレーに自動的に土詰めした後に所定期間育苗し、それを根鉢ごと小容器から抜き取って移植機で田畑に植え付けることが一般に行われている。その場合に、移植機による植え付けが可能な根鉢を形成する目的で、培土基材に熱融着性の芯鞘型繊維を配合し、芯鞘型繊維の鞘部を軟化させて接着・固化した育苗用培土が提案されている(特開平11−113388号公報、特開2000−23561号公報など)。この従来技術によって得られる育苗用培土は、通常畑地で行われる機械移植などに用いることはできるが、軽量性、水はけ性、強度などの物性の点で未だ十分であるとは言えず、そのために、軽量で取り扱い性や施工性に優れ、建物に対する負荷が小さく、水はけ性に優れ、しかも高い強力が要求される、屋上緑化用の栽培床などにはあまり適していない。
【0004】
また、本発明者らは、培土基材に、繊維長が0.5〜2mm、アスペクト比が20〜300、水分率が繊維質量に対し15%以下および捲縮数が6個/cm以下である熱融着性繊維を配合して植物育成基材を調製し、それを加熱処理して植物育成基材中の熱融着性繊維を溶融接着すると、強力の高い根鉢が形成されること、その植物育成基材は容積が10cm3以下の小さな植物育成用容器に充填して用いるのに特に適していて、その植物育成基材を用いて形成された根鉢は移植機による植え付け作業時に崩壊せず、植え付け作業を円滑に行えることを先に見出して出願した(特開2002−58339号公報)。
さらに、本発明者らは、培土基材に、繊維長が2mmを超え15mm以下、アスペクト比が20〜1000、繊維水分率が繊維質量に対し15%以下および捲縮数が6個/cm以下である熱融着性繊維を配合して植物育成基材を調製し、それを加熱処理して植物育成基材中の熱融着性繊維を溶融接着した場合にも、強力の高い根鉢が形成されること、そしてその植物育成基材は容積が10cm3以上の比較的大きな植物育成用容器に充填して用いるのに特に適していて、それによって形成された根鉢は移植機による植え付け作業時に根鉢が崩壊せず、植え付け作業を円滑に行えることを先に見出して出願した(特開2002−58340号公報)。
本発明者らは、上記の出願を踏まえて更に検討を重ねてきたが、その結果、屋上緑化用の栽培床などに用いる植物育成基材としては、より軽量で、適度な保水性を有しながら水はけが良好で、しかもより高い強度を有する栽培床を形成し得る植物育成基材の開発が必要であることが判明した。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、軽量で、取り扱い性、施工性に優れると共に、建造物に対する負荷が小さく、しかも適度な保水性を有しながら水はけが良好で植物を根腐れを生ずることなく健全に生育させることができ、その上強度が高くて、屋上などへの施工時に栽培床の崩壊が生じず、更には強い風や雨に曝されても栽培床の飛散、流失、崩壊を生じず、植物を良好に保持して生育させることのできる、屋上緑化や法面緑化などに特に適する栽培床を提供することである。
さらに、本発明の目的は、前記した優れた特性を有する栽培床を形成するための植物育成基材を提供することである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成すべく本発明者らは鋭意検討を重ねてきた。その結果、10〜30dtexという特定の単繊維繊度を有し、しかも1〜20mmという特定の繊維長および20〜1,000という特定のアスペクト比を有し、且つ15%以下の水分率および6個/cm以下の捲縮数を有する熱融着性繊維と、無機質資材を用いて植物育成基材を調製し、植物育成基材中の熱融着性を溶融接着させると、軽量で取り扱い性および施工性に優れると共に建造物に対する負荷が小さく、適度な保水性を有しながら水はけが良好で植物を健全に生育させることができ、しかも極めて高い強度を有していて屋上などへの栽培床の施工時や強い風や雨に曝されても崩壊、飛散、流失などの生じない栽培床が形成されること、そしてその栽培床は屋上緑化や法面緑化、特に屋上緑化用の栽培床として適していることを見出した。
また、本発明者らは、上記の植物育成基材中の熱融着性繊維としては、繊維形成性重合体と該繊維形成性重合体よりも融点または軟化点が20℃以上低い熱可塑性重合体とからなる熱融着性の複合紡糸繊維および/または混合紡糸繊維が好適に用いられること、無機質資材としては、粒径が10mm以上で嵩密度が0.5kg/dm3以下の無機質発泡体を5質量%以上の割合で含む無機質資材が好適に用いられることを見出した。
さらに、本発明者らは、上記の植物育成基材においては、熱融着性繊維:無機質資材の含有割合は1:99〜50:50(質量比)であることが好ましいこと、また、植物育成基材における熱融着性繊維および粒径が10mm以上で嵩密度が0.5kg/dm3以下の無機質発泡体の含有量は、それぞれ0.3〜30質量%および5〜99質量%であるのが好ましいことなどを見出し、それらの知見に基づいて本発明を完成した。
【0007】
すなわち、本発明は、
(1) 単繊維繊度が10〜30dtex、繊維長が1〜20mm、アスペクト比が20〜1,000、水分率が15質量%以下および捲縮数が6個/cm以下である熱融着性繊維と、無機質資材を含有することを特徴とする植物育成基材である。
【0008】
そして、本発明は、
(2) 熱融着性繊維が、繊維形成性重合体と、該繊維形成性重合体よりも融点または軟化点が20℃以上低い熱可塑性重合体とからなる、熱融着性の複合紡糸繊維および/または混合紡糸繊維である前記(1)の植物育成基材;
(3) 無機質資材として、粒径が10mm以上で嵩密度が0.5kg/dm3以下の無機質発泡体を5質量%以上の割合で含む無機質資材を用いる前記(1)または(2)の植物育成基材;
(4) 熱融着性繊維:無機質資材の配合割合が、質量比で1:99〜50:50である前記(1)〜(3)のいずれかの植物育成基材;および、
(5) 植物育成基材の質量に対して、熱融着性繊維を0.3〜30質量%、および粒径が10mm以上で嵩密度が0.5kg/dm3以下の無機質発泡体を5〜99質量%の割合で含有する前記(1)〜(4)のいずれかの植物育成基材;である。
【0009】
さらに、本発明は、
(6) 下記の数式(I)により求められる曲げ強度が70mN以上である加圧加熱処理シート状物を与える前記(1)〜(5)のいずれかの植物育成基材である。
【0010】
【数2】
曲げ強度(mN)={(50×B)/(25×A)}×3/2 (I)
[但し、上記式中、Aは、植物育成基材を目付500g/m2のシート状物とし、100ml/m2の割合で水を散布した後、温度115℃、圧力49KPaで15分間加圧加熱処理して得られるシート状物を長さ100mmおよび幅25mmの試験片に裁断し、該試験片の上部全面に53.9kPaの圧力をかけたときの試験片の厚さ(mm)を示し、Bは、前記試験片の両端を距離50mmで隔置した左右の支持台上に載せてその両端を固定した状態で、試験片の中央部に面積2cm2の円形加圧板を載せて10mm/minの速度で下降させ、試験片が破損した際に試験片にかかっていた荷重(最大荷重)(mN)を示す。]
【0011】
そして、本発明は、
(7) 前記(1)〜(6)のいずれかの植物育成基材を用いて得られる栽培床;および、
(8) 熱融着性繊維が溶融接着されている前記(6)の栽培床;
である。
【0012】
さらに、本発明は、
(9) 前記(1)〜(6)のいずれかの植物育成基材を容器または型に充填し、加圧加熱処理して植物育成基材中の熱融着性繊維を溶融接着させると共に成形することを特徴とする栽培床の製造方法である。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下に本発明について詳細に説明する。
本発明の植物育成基材は、熱融着性繊維および無機質資材を含有する。
熱融着性繊維としては、熱融着性繊維を配合した植物育成基材を加熱処理したときに、溶融または軟化して熱融着性繊維同士の接着、熱融着性繊維と植物育成基材中の無機質資材や他の成分との接着などが行われ、しかも単繊維繊度が10〜30dtex、繊維長が1〜20mm、アスペクト比が20〜1,000、水分率が15質量%以下および捲縮数が6個/cm以下であるものであればいずれも使用できる。
【0014】
そのうちでも、熱融着性繊維としては、加熱処理後もその繊維形状を保ちながら繊維同士の溶融接着状態および繊維と植物育成基材中の成分との溶融接着状態を維持できるものを使用することが好ましく、それによって強力の一層高い栽培床などを形成することができる。
そのような熱融着性繊維としては、加熱処理を施した後でも繊維形態を維持できる高い融点または軟化点を有する繊維形成性重合体(第1成分)と、該繊維形成性重合体よりも20℃以上低い融点または軟化点を有する熱可塑性重合体(第2成分)とからなる複合紡糸繊維および/または混合紡糸繊維が好ましく用いられ、複合紡糸繊維がより好ましく用いられる。複合紡糸繊維および混合紡糸繊維においては、繊維の表面の少なくとも一部、好ましくは繊維表面の80%以上が低融点または低軟化点の熱可塑性重合体(第2成分)から形成されていることが好ましく、その場合には加熱処理によって繊維の溶融接着(繊維同士の接着および繊維と植物育成基材中の成分との接着)が良好に行われて、強力の高い栽培床などが形成される。
【0015】
前記した複合紡糸繊維および混合紡糸繊維を構成する繊維形成性重合体(第1成分)としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル、ポリアミド、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデンなどの高い融点または軟化点を有する繊維形成性重合体を挙げることができる。
また低融点または低軟化点の熱可塑性重合体(第2成分)としては、第1成分として用いられるポリエステル、ポリアミドよりも融点または軟化点が20℃以上低い熱可塑性重合体、例えば変性ポリエステル(共重合ポリエステルなど)、変性ポリアミド(共重合ポリアミドなど)、ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−プロピレン共重合体などを挙げることができる。
複合紡糸繊維または混合紡糸繊維は、適当な第1成分用重合体の1種または2種以上と、適当な第2成分用重合体の1種または2種以上を組み合わせて形成されていることができる。第2成分用重合体としては、熱融着性繊維の溶融接着を円滑に行うことができることから、その融点または軟化点が130℃以下の熱可塑性重合体が好ましく用いられる。
【0016】
複合紡糸繊維は、周知のように、2種以上の重合体の各々が繊維の長さ方向に途中で途切れることなく連続した状態で互いに接合して1本の繊維(複合繊維)を形成している繊維であり、一般に、その複合形態は繊維の横断面形状から見て、芯鞘型、貼り合わせ型(サイドバイサイド型)またはそれらの混在型などに分けられる。本発明で用いる複合紡糸繊維の複合形態は、それらのいずれであってもよく特に制限されない。そのうちでも、低融点または低軟化点の熱可塑性重合体(第2成分)を鞘成分とし、高融点または高軟化点の繊維形成性重合体(第1成分)を芯成分とする芯鞘型の複合紡糸繊維は、全表面が低融点または低軟化点の第2成分から形成されていて溶融接着性に優れているため、好ましく用いられる。
また、混合紡糸繊維は、互いに均一に混ざり合わない2種以上の重合体を紡糸口金から紡出する以前の段階で混合して紡糸することによって形成される繊維であり、2種以上の重合体の1種または2種以上が繊維の長さ方向に途中で途切れながら互いに接合して1本の繊維を形成している繊維であり、繊維の横断面は一般に海島型の構造を有していることが多く、場合によって貼り合わせ型の構造をとることもある。混合紡糸繊維としては、低融点または低軟化点の熱可塑性重合体(第2成分)が海成分をなし、高融点または高軟化点の繊維形成性重合体が島成分をなしている混合紡糸繊維が溶融接着性に優れているため好ましく用いられる。
【0017】
本発明で用いる熱融着性繊維の断面形状は特に制限されず、例えば、丸型、三角形型、T型、偏平型、多葉型、V字型、中空型などのいずれの断面形状であってもよい。
【0018】
本発明で用いる熱融着性繊維は、単繊維繊度が10〜30dtexであることが必要であり、10〜20dtexであることが好ましい。本発明では、無機質資材として10mm以上の大きな粒径を有する無機質発泡体を好適に使用することから、熱融着性繊維の単繊維繊度が10dtex未満であると、熱融着性繊維を溶融接着した際に、繊維と該無機質資材との接着や該無機質資材間の接着が良好に行われず、強力の高い栽培床などが形成されなくなる。一方、熱融着性繊維の単繊維繊度が30dtexを超えると、所定量の熱融着性繊維を配合した際に熱融着性繊維の繊維本数の絶対量が不足するため、強力の高い栽培床などが形成されなくなる。
【0019】
また、本発明で用いる熱融着性繊維は、その繊維長が1〜20mmであることが必要であり、3〜15mmであることが好ましく、5〜10mmであることがより好ましい。熱融着性繊維の繊維長が1mm未満であると、強力の高い栽培床などを形成できなくなり、一方20mmを超えると無機質資材や場合により他の成分と混合する際に分散性が不良となり、ボール状繊維塊を形成し易くなり、容器や型への充填作業が行いにくくなる。しかも、熱融着性繊維が植物育成基材中に均一に分散しなくなるために、強力の高い栽培床が形成されにくくなる。
【0020】
本発明で用いる熱融着性繊維のアスペクト比は20〜1,000あることが必要であり、50〜500であることが好ましい。熱融着性繊維のアスペクト比が20未満であると、強力の高い栽培床などが形成されにくくなり、一方1,000を超えると無機質資材などと混合する際に分散性が不足して繊維塊を生じて、容器への充填作業が行いにくくなり、しかも繊維が植物育成基材中に均一に分散していないために強力の高い栽培床などが形成されなくなることがある。
なお、本明細書における熱融着性繊維のアスペクト比とは、繊維長を繊維径(繊維の外径)で除した値をいう。
【0021】
本発明で用いる熱融着性繊維は、水分率が熱融着性繊維の質量に対して15%以下であることが必要であり、10%以下であることが好ましく、8%以下であることがより好ましく、5%以下であることが更に好ましい。熱融着性繊維の水分率が15%を超えると、無機質資材などと混合する際に熱融着性繊維が単糸に分繊しなくなって、植物育成基材中に均一に分散せず、強力の高い栽培床などが形成されにくくなる。
【0022】
本発明で用いる熱融着性繊維は、捲縮していても又は捲縮していなくてもいずれでもよいが、その捲縮数が6個/cm以下(約15個/インチ以下)、すなわち0〜6個/cmであることが必要であり、4個/cm以下であることが好ましく、2個/cm以下であることがより好ましい。熱融着性繊維の捲縮数が6個/cmを超えると、無機質資材などと混合する際に繊維塊を生じ易くなり、容器への充填作業が行いにくくなり、しかも繊維が植物育成基材中に均一に分散せず、強力の高い栽培床などが形成されにくくなる。熱融着性繊維が多少の捲縮を有する(1〜3個/cm程度)と、植物育成基材中での熱融着性繊維同士の接着・融着が行われ易くなって栽培床などの強力が向上することがある。
【0023】
本発明では無機質資材として、無機質発泡体、土、砂、石などが用いられ、そのうちでも粒径が10mm以上で嵩密度が0.5kg/dm3以下の無機質発泡体を5質量%以上の割合で含む無機質資材が好適に用いられる。
無機質資材として好適に用いられる無機質発泡体の粒径が10mm未満であると、植物育成基材の充填密度が高くなって、植物育成基材の軽量化を図りにくくなり、また水はけ性の低下、風雨による飛散や流失が生じ易くなることがある。無機質発泡体としては、粒径が10〜30mmのものを用いることがより好ましく、粒径が10〜20mmのものを用いることが更に好ましい。無機質発泡体の粒径が30mmを超えると、植物育成基材の調製時に分散性や取り扱い性が低下し易い。
また、無機質発泡体の嵩密度が0.5kg/dm3よりも高いと、植物育成基材の軽量化を行いにくくなり、しかも無機質発泡体中の気泡が減少するために水分保持性が低下し、植物の生育が悪くなり易い。無機質発泡体の嵩密度は0.1〜0.4kg/dm3であることがより好ましい。
さらに、無機質資材において、粒径が10mm以上で嵩密度が0.5kg/dm3以下の無機質発泡体の含有割合が5質量%未満の場合には、無機質発泡体の粒径が10mm未満である前述した場合と同様に、植物育成基材の充填密度が高くなって、植物育成基材の軽量化を図りにくくなり、また水はけ性の低下、風雨による飛散や流失が生じ易くなることがある。無機質資材としては、粒径が10mm以上で嵩密度が0.5kg/dm3以下の無機質発泡体を30質量%以上の割合で含む無機質資材がより好ましく用いられ、該無機質発泡体を50質量%以上の割合で含む無機質資材が更に好ましく用いられる。
【0024】
本発明では無機質発泡体として、植物に対して害を及ぼさず、粒径が10mm以上で且つ嵩密度が0.5kg/dm3以下であるものであればいずれも好適に用いることができ、具体例としては、パーライト、ナチュライト、バーミキュライト、ロックウール、ゼオライトなどを挙げることができる。そのうちでも軽量性および水はけ性などの点により優れている点からナチュライトが好ましく用いられる。
【0025】
本発明の植物育成基材における熱融着性繊維と無機質資材の配合割合は、質量比で、熱融着性繊維:無機質資材=1:99〜50:50であることが好ましく、5:95〜30:70であることがより好ましく、10:90〜20:80であることがより好ましい。
熱融着性繊維と無機質資材の合計質量に対して、熱融着性繊維の配合割合が1質量%よりも少ないと(無機質資材の配合割合が99質量%を超えると)、強力の高い栽培床などが形成されにくくなって、僅かな衝撃や外力で栽培床などの形が崩れ易くなり、取り扱い性、加工性が悪くなり易い。一方、熱融着性繊維と無機質資材の合計質量に対して、熱融着性繊維の配合割合が50質量%を超えると(無機質資材の配合割合が50質量%未満であると)、無機質資材などと混合して植物育成基材を調製する際に繊維塊を生じて、熱融着性繊維が植物育成基材中に均一に分散されにくくなって、作業性の低下、栽培床の強力低下などを生じ易くなり、しかもコストが高くなる。
【0026】
また、本発明の植物育成基材は、植物育成基材の全質量に対して、熱融着性繊維を0.3〜30質量%、特に1〜20質量%の割合で含有し、粒径が10mm以上で嵩密度が0.5kg/dm3以下の無機質発泡体を5〜99質量%、特に10〜97質量%、更には30〜95質量%の割合で含有することが好ましい。
植物育成基材の全質量に対して、熱融着性繊維の含有量が0.3質量%未満であると、強力の高い栽培床などが形成されにくくなって、僅かな衝撃や外力で栽培床などの形が崩れ易くなり、取り扱い性、加工性が悪くなり易い。一方、熱融着性繊維の含有量が30質量%を超えると、無機質資材の調製時に繊維塊を生じて、熱融着性繊維を植物育成基材中に均一に分散することが困難になり、植物育成基材の調製時での作業性の低下、植物育成基材から得られる栽培床の強力低下などを生じ易くなり、しかもコストが高くなる。
また、植物育成基材の全質量に対して、粒径が10mm以上で嵩密度が0.5kg/dm3以下の無機質発泡体の含有量が5質量%未満であると、水はけ性、軽量性が劣るようになり、一方99質量%を超えると強力の高い栽培床などが形成されにくくなる。
ここで、無機質資材中での粒径が10mm以上の無機質発泡体の含有量は、以下の段落0040に記載した「(2)無機質発泡体の流通経路」の測定法により測定される。
【0027】
本発明の植物育成基材は、上記した熱融着性繊維および無機質資材と共に、必要に応じて、ポリエチレングリコール系湿潤剤などの湿潤剤、無機質肥料、有機質肥料、化学堆肥などの肥料などを更に含有してもかまわない。湿潤剤を含有することにより、水はけ性や保温性を適正に調整できる。また、肥料は種子および苗の育成に寄与する。
【0028】
本発明の植物育成基材は、前記した特定の熱融着性繊維、無機質資材および必要に応じて他の成分を混合することによって製造される。混合方法および装置は特に制限されず、前記成分を均一に混合し得る方法および装置であればいずれでもよい。
【0029】
本発明の植物育成基材は、下記の数式(I)により求められる曲げ強度が70mN以上、特に85mN以上、更には100nM以上である加圧加熱処理シート状物を与える(形成し得る)植物育成基材であることが好ましい。
【0030】
【数3】
曲げ強度(mN)={(50×B)/(25×A)}×3/2 (I)
[但し、上記式中、Aは、植物育成基材を目付500g/m2のシート状物とし、100ml/m2の割合で水を散布した後、温度115℃、圧力49KPaで15分間加圧加熱処理して得られるシート状物を長さ100mmおよび幅25mmの試験片に裁断し、該試験片の上部全面に53.9kPaの圧力をかけたときの試験片の厚さ(mm)を示し、Bは、前記試験片の両端を距離50mmで隔置した左右の支持台上に載せてその両端を固定した状態で、試験片の中央部に面積2cm2の円形加圧板を載せて10mm/minの速度で下降させ、試験片が破損した際に試験片にかかっていた荷重(最大荷重)(mN)を示す。]
【0031】
上記の数式(I)により求められる曲げ強度が70mN以上である加圧加熱処理シート状物を形成し得る植物育成基材からは、高い強力を有する栽培床が形成され、該栽培床は、栽培床を屋上などに設置する際の作業性や取り扱い性、栽培床に植物を植え付ける際の作業性、栽培床に植え付けた植物の育成性、設置後の栽培床資材の飛散・流失防止などに優れている。
【0032】
前記した特定の熱融着性繊維と無機質資材を含有する本発明の植物育成基材を加熱して、熱融着性繊維を溶融して接着することによって、本発明の栽培床が製造される。加熱の方法および装置は特に制限されず、植物育成基材全体を所定の温度に均一に加熱し得る方法および装置であればいずれでもよい。熱融着性繊維による接着力を向上させて強力の大きな栽培床を製造するためには、加圧下に加熱することが好ましい。加圧加熱処理は、例えば、加熱式平板プレス機などの加圧加熱装置を使用してもよいし、また何らかの加圧手段によって植物育成基材全体に圧力をかけた状態にし、その状態で加熱処理を行うこともできる。
加熱処理または加圧加熱処理(以下両者を総称して「加熱処理」ということがある)を行う際の加熱温度は、熱融着性繊維における熱融着性の融点または軟化点に応じて選択することができ、一般的には、熱融着性繊維における熱融着性成分(熱融着性の熱可塑性重合体)の融点または軟化点以上で且つ該融点または軟化点+10℃以下の温度が好ましく採用される。
また、加熱処理を加圧加熱処理によって行う場合の圧力は、植物育成基材の組成、加熱温度、得られる栽培床の使用形態、植物育成基材の大きさなどに応じて適当な圧力を選択し得るが、一般的には、98kPa〜120kPaであることが好ましい。
【0033】
植物育成基材の加熱処理は、熱融着性繊維と無機質資材を混合して調製した植物育成基材を箱などの容器や型に充填し、灌水せずにそのまま直接行ってもよいが、灌水した後に行うことが好ましい。灌水した後に加熱処理すると、熱融着性繊維を短時間で均一に溶融接着することができて、全体的に均整のとれた強力を有する栽培床が形成される。
加熱処理時時に灌水する場合は、灌水の程度に特に制限はないが、一般的には飽和の状態(毛管連絡切断点以上の含水状態)になる程度に灌水することが好ましい。
【0034】
栽培床の製造方法は、植物育成基材中の成分が熱融着性繊維によって均一に溶融接着される方法であればいずれでもよい。例えば、熱融着性繊維、無機質資材および必要に応じて他の成分を混合して調製した植物育成基材を、比較的大きな箱などの容器や型に充填して加熱処理した後、施工し易い大きさに切断または分割し、それを栽培床として屋上などに設置する方法、屋上などに設置する大きさに見合う箱などの容器や型を予め準備し、該容器や型に熱融着性繊維、無機質資材および必要に応じて他の成分を混合して調製した植物育成基材を充填して加熱処理して成形し、それを屋上などに容器または型ごと設置したり、容器または型から取り出して設置する方法などを挙げることができる。
本発明の栽培床は、屋上緑化のための栽培床として特に適しているが、それに制限されるものではなく、例えば、法面の緑化、公園、庭、道路のグリーンベルト部、畑地、グランド、ベランダ、室内、ビル内、壁面などにおいて植物を生育させるための苗床や栽培床としても有効に使用することができる。
【0035】
本発明の栽培床を用いて植物を育成する際の育成方法は特に制限されず、植物が健全に生育できる方法であればいずれでもよい。例えば、成形した栽培床に種子を直接播いて苗まで育成させた後に屋上などに設置する方法、栽培床に穴を空けておき、それを屋上などに設置した後に、苗を育成したセルやポットなどを、セルやポットごと前記穴にセットする方法または苗をセルやポットから根鉢ごと抜き取って前記穴にセットする方法などを挙げることができる。
【0036】
栽培床に種子を播く場合は、種子が植物育成基材中の熱融着性繊維を加熱接着させるための加熱処理時の加熱温度に耐え得るものであれば、加熱処理前に植物育成基材に種子を播いた後に加熱処理を行ってもよいが、植物育成基材を加熱処理して植物育成基材中の熱融着性繊維を溶融接着して栽培床を製造した後に該栽培床に種子を播くことが好ましい。加熱処理の前に種子を播くと、加熱時の高温により、種子の変質、死滅などを生じて、発芽しなかったり、発芽しても発育不良などを生ずる場合が多い。植物育成基材に灌水した後に加熱処理して栽培床を製造する場合は、加熱処理により得られる栽培床が灌水状態になっているので、再灌水を行わずに種子をそのまま直接播くことができる。しかし、必要であれば、播種時に再度灌水してもよい。
本発明の植物育成基材およびそれから得られる栽培床は、種子を播いたり、苗を植えるのに用いるだけではなく、挿し木などにも用いることができる。挿し木をする場合は、本発明の栽培床に植物の枝、幹、葉などを挿し木し、以後従来から採用されているのと同様の方法で生育させればよい。
【0037】
加熱処理を行う前の本発明の植物育成基材、または該植物育成基材を加熱処理して得られる本発明の栽培床に播種するのに適する植物としては、アゲラタム、イソトマ、インパチェンス、エキザカム、ガーベラ、ガザニア、カルセオラリア、クリサンセマム、コリウス、サルビア、シザンサス、シネラリア、ゼラニウム、トレニア、パンジー、ビンカ、プリムラ、ペチュニア、ベコニア、マリーゴールド、ラナンキュラス、カーネーション、キンギョソウ、ブプレウルム、ユーストマ、ストック、アネモネ、カンパニュラ、ダリア、スカピオサ、デルフィニウム、ラークスパー、ニゲラ、ハナシノブ、ブルーレースフラワー、マトリカリア、シンテッポウユリ、リモニウムシニュアータ、オキシペタルム、クラスペディア、ユウギリソウなどの花や観葉植物の種子;セルリー、ビート、ネギ、タマネギ、ニラ、キャベツ、コールラビ、メキャベツ、カリフラワー、ブロッコリー、ハクサイ、ツケナ、ゴマ、フダンソウ、シュンギグ、ミツバ、シソ、ホウレンソウ、レタス、アスパラガス、パセリ、エンダイブ、リーキなどの野菜類の種子;メロン、ピーマン、キュウリ、スイカ、カボチャ、トウガン、キンシウリ、トマト、ナス、オクラ、スイートコーン、インゲン、エンドウ、エダマメ、ソラマメなどの果菜類の種子などが挙げられる。
また、本発明の栽培床に挿し木をするのに適する植物としては、キク、カーネーション、宿根カスミソウなどの挿し木で繁殖できる植物が挙げられる。
さらに、本発明の栽培床には、樹木、芝草のほか、例えば、耐乾燥性に優れるサカサマンネングサ、モリムラマンネングサ、メキシコマンネングサ、ツルマンネングサ、コーラルカーペット、スプリュームなどのセダム類の植物の種を播いたり、植物を植えることができる。
【0038】
【実施例】
以下に実施例などにより本発明を具体的に説明するが、本発明は以下の例により何ら限定されるものではない。以下の例において、熱融着性繊維の単繊維繊度、無機質発泡体の粒径、無機質発泡体の見掛密度、加圧加熱処理シート状物の曲げ強度は、次のようにして測定した。
【0039】
(1)熱融着性繊維の単繊維繊度(dtex):
熱融着性繊維(短繊維に切断する前のフィラメント繊維)の一定試長(L)を採取してその質量(W)を測定し、前記試長(L)と質量(W)の値から熱融着性繊維の単繊維繊度(dtex)を求める操作を5回繰り返し、その平均値を採って熱融着性繊維の単繊維繊度(dtex)とした。
【0040】
(2)無機質発泡体の粒径(mm):
目開きが0.15mm、0.30mm、0.60mm、1.20mm、2.50mm、5.00mmおよび10.0mmの7種類の篩を準備し、目の小さい篩から順に用いて無機質発泡体を篩分けし、必要とする無機質発泡体の粒径までの目開きを有する篩で篩落とされた無機質発泡体を以下の実施例および比較例でそれぞれ使用して、各例で用いた無機質発泡体の粒径とした。
【0041】
(3)無機質発泡体の見掛密度(kg/dm3):
1dm3のメスシリンダーに無機質発泡体を充填し、1dm3当たりの質量を測定して無機質発泡体の見掛密度(kg/dm3)とした。
【0042】
(4)加圧加熱処理シート状物の曲げ強度:
(i) 以下の実施例または比較例で得られた植物育成基材を、箱に目付が500g/m2になるように充填して平らにならし、それに100ml/m2の割合で水を散布(灌水)した後、加熱式平板プレス機にて、温度115℃、圧力49KPaで15分間加圧加熱処理してシート状物をつくり、そのシート状物を長さ100mmおよび幅25mmの試験片aに裁断し、該試験片aの上部全面に53.9kPaの圧力をかけ、そのときの試験片aの厚さ(A)(mm)を測定した。
(ii) 次いで、上記(i)の試験片aを、図1に示すように、50mmの距離を設けて配置した左右の支持台1a,1bの上に載せ、試験片aの両端a1,a2を端部固定手段2a,2bで固定した後、試験片aの中央部に面積2cm2の円形加圧板3を載せて10mm/minの速度で下降させ、試験片aが破損した際に試験片aにかかっていた荷重(最大荷重)B(mN)を読み取って、下記の数式(I)によりシート状物の曲げ強度を算出した。
【0043】
【数4】
曲げ強度(mN)={(50×B)/(25×A)}×3/2 (I)
【0044】
また、以下の実施例または比較例で用いた熱融着性繊維の内容と略号は次のとおりである。
なお、以下の熱融着性繊維において、所定繊維長の繊維を得るための切断操作は、イーストマン・コダック社製の「ECカッター」を使用して、トウ繊度100ktexのトウを用いて速度140m/分の条件下に行った。
【0045】
○熱融着性繊維▲1▼:
芯成分がポリエチレンテレフタレートおよび鞘成分がイソフタル酸45モル%共重合ポリエチレンテレフタレートよりなる芯鞘型複合繊維[芯成分:鞘成分の質量比=1:1、鞘成分の軟化点=110℃、芯成分の融点=260℃、単繊維繊度=11dtex;繊維長=5mm、アスペクト比=150、水分率=10%、捲縮数=0個/cm(非捲縮)]
○熱融着性繊維▲2▼:
芯成分がポリエチレンテレフタレートおよび鞘成分がイソフタル酸45モル%共重合ポリエチレンテレフタレートよりなる芯鞘型複合繊維[芯成分:鞘成分の質量比=1:1、鞘成分の軟化点=110℃、芯成分の融点=260℃、単繊維繊度=15dtex;繊維長=10mm、アスペクト比=270、水分率=8%、捲縮数=0個/cm(非捲縮)]
○熱融着性繊維▲3▼:
芯成分がポリプロピレンおよび鞘成分がポリエチレンよりなる芯鞘型複合繊維[芯成分:鞘成分の質量比=1:1、鞘成分の軟化点=132℃、芯成分の融点=169℃、単繊維繊度=11dtex;繊維長=3mm、アスペクト比=70、水分率=5%、捲縮数=2個/cm]
○熱融着性繊維▲4▼:
芯成分がポリエチレンテレフタレートおよび鞘成分がイソフタル酸45モル%共重合ポリエチレンテレフタレートよりなる芯鞘型複合繊維[芯成分:鞘成分の質量比=1:1、鞘成分の軟化点=110℃、芯成分の融点=260℃、単繊維繊度=15dtex;繊維長=0.5mm、アスペクト比=13、水分率=8%、捲縮数=0個/cm(非捲縮)]
【0046】
○熱融着性繊維▲5▼:
芯成分がポリエチレンテレフタレートおよび鞘成分がイソフタル酸45モル%共重合ポリエチレンテレフタレートよりなる芯鞘型複合繊維[芯成分:鞘成分の質量比=1:1、鞘成分の軟化点=110℃、芯成分の融点=260℃、単繊維繊度=33dtex;繊維長=1mm、アスペクト比=38、水分率=8%、捲縮数=0個/cm(非捲縮)]
○熱融着性繊維▲6▼:
芯成分がポリエチレンテレフタレートおよび鞘成分がイソフタル酸45モル%共重合ポリエチレンテレフタレートよりなる芯鞘型複合繊維[芯成分:鞘成分の質量比=1:1、鞘成分の軟化点=110℃、芯成分の融点=260℃、単繊維繊度=11dtex;繊維長=5mm、アスペクト比=150、水分率=10%、捲縮数=約7.9個/cm]
○熱融着性繊維▲7▼:
芯成分がポリエチレンテレフタレートおよび鞘成分がイソフタル酸45モル%共重合ポリエチレンテレフタレートよりなる芯鞘型複合繊維[芯成分:鞘成分の質量比=1:1、鞘成分の軟化点=110℃、芯成分の融点=260℃、単繊維繊度=11dtex;繊維長=5mm、アスペクト比=150、水分率=20%、捲縮数=0個/cm(非捲縮)]
○熱融着性繊維▲8▼:
芯成分がポリエチレンテレフタレートおよび鞘成分がイソフタル酸45モル%共重合ポリエチレンテレフタレートよりなる芯鞘型複合繊維[芯成分:鞘成分の質量比=1:1、鞘成分の軟化点=110℃、芯成分の融点=260℃、単繊維繊度=11dtex;繊維長=51mm、アスペクト比=1600、水分率=10%、捲縮数=0個/cm(非捲縮)]
【0047】
さらに、以下の実施例および比較例で用いた無機質資材の内容と略号は次のとおりである。
○無機質資材(A):
ナチュライト(天然パーライト;中国産天然火山性軽石)(粒径=10〜20mm、見掛密度土=0.13kg/dm3)
○無機質資材(B):
パーライト(服部株式会社製「服部パーライトN−3号」)(真珠岩を精製後、急速に加熱膨張させた微細な気泡を有する無機質発泡体;粒径=1.2mm未満、嵩密度=0.19kg/dm3)
【0048】
《実施例1》
(1) 無機質資材(A)95質量部と熱融着性繊維▲1▼5質量部をミキサー容器に入れて撹拌・混合して植物育成基材を製造した。
(2) 上記(1)で得られた植物育成基材の一部を用いて、曲げ強度測定用の加圧加熱処理シート状物を上記した方法でつくり、その曲げ強度を上記した方法で測定したところ、下記の表1に示すとおりであった。
(3) 上記(1)で得られた植物育成基材の残りの部分を、箱(長さ×幅×高さ=100cm×50cm×3cm)に、3cmの深さに充填して平らにし(目付=4kg/m2)、次いで2ml/cm2の割合で灌水し、加熱式平板プレス機を用いて温度110℃、圧力98kPaの条件下に15分間加圧加熱処理し、冷却後に箱から取り出して栽培床とした。
(4) 上記(3)で得られた栽培床に直径約20mm、深さ10mmの穴を10cmの間隔で空け、1個の穴に土を約4g充填した後にセダムの種子1個を播き、温度15〜20℃、湿度40〜60%の条件下で発芽および苗の生育を行い(播種後約15日間)、次いでそれを屋上に設置したところ、栽培床の崩壊が生じず、軽量で取り扱い性に優れていた。
(5) 屋上設置後に、天候状態に応じて水を適宜散布して(約2日に1回の割合で散水)苗を育てたところ、適度の保水性を有しながら水はけ性に優れていて、根腐れなどによる枯れが生じず、しかも風雨による植物の倒れなどを生ずることがなく、セダムを良好に生育させることができた(屋上設置約30日後でのセダムの高さ=約15cm)。
【0049】
《実施例2》
(1) 無機質資材(A)95質量部と熱融着性繊維▲2▼5質量部をミキサー容器に入れて撹拌・混合して植物育成基材を製造した。
(2) 上記(1)で得られた植物育成基材の一部を用いて、曲げ強度測定用の加圧加熱処理シート状物をつくり、その曲げ強度を上記した方法で測定したところ、下記の表1に示すとおりであった。
(3) 上記(1)で得られた植物育成基材の残りの部分を使用して、実施例1の(3)におけるのと同様にして加圧加熱処理を行って、栽培床を製造した。
(4) 上記(3)で得られた栽培床を用いて実施例1の(4)におけるのと同様にしてセダムの種子の発芽および苗の生育を行い(播種後約15日間)、次いでそれを屋上に設置したところ、栽培床の崩壊が生じず、軽量で取り扱い性に優れていた。
(5) 屋上設置後に、天候状態に応じて水を適宜散布して(約2日に1回の割合で散水)苗を育てたところ、適度の保水性を有しながら水はけ性に優れていて、根腐れなどによる枯れが生じず、しかも風雨による植物の倒れなどを生ずることがなく、セダムを良好に生育させることができた(屋上設置約30日後でのセダムの高さ=約15cm)。
【0050】
《実施例3》
(1) 無機質資材(A)90質量部と熱融着性繊維▲3▼10質量部をミキサー容器に入れて撹拌・混合して植物育成基材を製造した。
(2) 上記(1)で得られた植物育成基材の一部を用いて、曲げ強度測定用の加圧加熱処理シート状物を上記した方法でつくり、その曲げ強度を上記した方法で測定したところ、下記の表1に示すとおりであった。
(3) 上記(1)で得られた植物育成基材の残りの部分を使用して、実施例1の(3)におけるのと同様にして加圧加熱処理を行って、栽培床を製造した。
(4) 上記(3)で得られた栽培床を用いて実施例1の(4)におけるのと同様にしてセダムの種子の発芽および苗の生育を行い(播種後約15日間)、次いでそれを屋上に設置したところ、栽培床の崩壊が生じず、軽量で取り扱い性に優れていた。
(5) 屋上設置後に、天候状態に応じて水を適宜散布して(約2日に1回の割合で散水)苗を育てたところ、適度の保水性を有しながら水はけ性に優れていて、根腐れなどによる枯れが生じず、しかも風雨による植物の倒れなどを生ずることがなく、セダムを良好に生育させることができた(屋上設置約30日後でのセダムの高さ=約15cm)。
【0051】
《実施例4》
(1) 無機質資材(B)95質量部と熱融着性繊維▲1▼5質量部をミキサー容器に入れて撹拌・混合して植物育成基材を製造した。
(2) 上記(1)で得られた植物育成基材の一部を用いて、曲げ強度測定用の加圧加熱処理シート状物を上記した方法でつくり、その曲げ強度を上記した方法で測定したところ、下記の表1に示すとおりであった。
(3) 上記(1)で得られた植物育成基材の残りの部分を使用して、実施例1の(3)におけるのと同様にして加圧加熱処理を行って、栽培床を製造した。
(4) 上記(3)で得られた栽培床を用いて実施例1の(4)におけるのと同様にしてセダムの種子の発芽および苗の生育を行い(播種後約15日間)、次いでそれを屋上に設置した。軽量性で運搬性は良好であった。但し、実施例1〜3で得られた栽培床に比べて強力が低いために、作業時に栽培床が部分的に崩壊することがあった。
【0052】
《実施例5》
(1) 無機質資材(A)10質量部、無機質資材(B)85質量部および熱融着性繊維▲1▼5質量部をミキサー容器に入れて撹拌・混合して植物育成基材を製造した。
(2) 上記(1)で得られた植物育成基材の一部を用いて、曲げ強度測定用の加圧加熱処理シート状物をつくり、その曲げ強度を上記した方法で測定したところ、下記の表1に示すとおりであった。
(3) 上記(1)で得られた植物育成基材の残りの部分を使用して、実施例1の(3)におけるのと同様にして加圧加熱処理を行って、栽培床を製造した。
(4) 上記(3)で得られた栽培床を用いて実施例1の(4)におけるのと同様にしてセダムの種子の発芽および苗の生育を行い(播種後約15日間)、次いでそれを屋上に設置したところ、栽培床の崩壊が生じず、軽量で取り扱い性にほぼ優れていた。
(5) 屋上設置後に、天候状態に応じて水を適宜散布して(約2日に1回の割合で散水)苗を育てたところ、適度の保水性を有しながら水はけ性に優れていて、根腐れなどによる枯れが生じず、しかも風雨による植物の倒れなどを生ずることがなく、セダムを良好に生育させることができた(屋上設置約30日後でのセダムの高さ=約15cm)。
【0053】
《比較例1》
熱融着性繊維を用いずに無機質資材(A)のみを用いて、曲げ強度測定用の加圧加熱処理シート状物を上記した方法で製造しようとしたが、シート状物とすることができず、崩壊してしまった。
【0054】
《比較例2》
(1) 無機質資材(A)85質量部と熱融着性繊維▲4▼15質量部をミキサー容器に入れて撹拌・混合して植物育成基材を製造した。
(2) 上記(1)で得られた植物育成基材の一部を用いて、曲げ強度測定用の加圧加熱処理シート状物を上記した方法でつくり、その曲げ強度を上記した方法で測定したところ、下記の表2に示すとおりであった。
(3) 上記(1)で得られた植物育成基材の残りの部分を使用して、実施例1の(3)におけるのと同様にして加圧加熱処理を行って、栽培床を製造した。
(4) 上記(3)で得られた栽培床を用いて実施例1の(4)におけるのと同様にしてセダムの種子の発芽および苗の生育を行い(播種後約15日間)、次いでそれを屋上に設置しようとしたところ、軽量であったものの、栽培床の強力が小さく部分的に崩壊し、作業を円滑に行うことができなかった。
【0055】
《比較例3》
(1) 無機質資材(A)85質量部と熱融着性繊維▲5▼15質量部をミキサー容器に入れて撹拌・混合して植物育成基材を製造した。
(2) 上記(1)で得られた植物育成基材の一部を用いて、曲げ強度測定用の加圧加熱処理シート状物を上記した方法でつくり、その曲げ強度を上記した方法で測定したところ、下記の表2に示すとおりであった。
(3) 上記(1)で得られた植物育成基材の残りの部分を使用して、実施例1の(3)におけるのと同様にして加圧加熱処理を行って、栽培床を製造した。
(4) 上記(3)で得られた栽培床を用いて実施例1の(4)におけるのと同様にしてセダムの種子の発芽および苗の生育を行い(播種後約15日間)、次いでそれを屋上に設置しようとしたところ、軽量であったものの、栽培床の強力が小さく部分的に崩壊し、作業を円滑に行うことができなかった。
【0056】
《比較例4》
(1) 無機質資材(A)95質量部と熱融着性繊維▲6▼5質量部をミキサー容器に入れて撹拌・混合して植物育成基材を製造した。
(2) 上記(1)で得られた植物育成基材の一部を用いて、曲げ強度測定用の加圧加熱処理シート状物を上記した方法でつくり、その曲げ強度を上記した方法で測定したところ、下記の表2に示すとおりであった。
(3) 上記(1)で得られた植物育成基材の残りの部分を使用して、実施例1の(3)におけるのと同様にして加圧加熱処理を行って、栽培床を製造した。
(4) 上記(3)で得られた栽培床を用いて実施例1の(4)におけるのと同様にしてセダムの種子の発芽および苗の生育を行い(播種後約15日間)、次いでそれを屋上に設置しようとしたところ、軽量であったものの、熱融着性繊維の捲縮数が大きくて繊維塊による接着斑が発生したために、栽培床の強力が小さく部分的に崩壊し、作業を円滑に行うことができなかった。
【0057】
《比較例5》
(1) 無機質資材(A)95質量部と熱融着性繊維▲7▼5質量部をミキサー容器に入れて撹拌・混合して植物育成基材を製造した。
(2) 上記(1)で得られた植物育成基材の一部を用いて、曲げ強度測定用の加圧加熱処理シート状物を上記した方法でつくり、その曲げ強度を上記した方法で測定したところ、下記の表2に示すとおりであった。
(3) 上記(1)で得られた植物育成基材の残りの部分を使用して、実施例1の(3)におけるのと同様にして加圧加熱処理を行って、栽培床を製造した。
(4) 上記(3)で得られた栽培床を用いて実施例1の(4)におけるのと同様にしてセダムの種子の発芽および苗の生育を行い(播種後約15日間)、次いでそれを屋上に設置しようとしたところ、軽量であったものの、熱融着性繊維の単糸分繊性が不良であったために、栽培床の強力が小さく部分的に崩壊し、作業を円滑に行うことができなかった。
【0058】
《比較例6》
(1) 無機質資材(A)95質量部と熱融着性繊維▲8▼5質量部をミキサー容器に入れて撹拌・混合して植物育成基材を製造した。
(2) 上記(1)で得られた植物育成基材の一部を用いて、曲げ強度測定用の加圧加熱処理シート状物を上記した方法でつくり、その曲げ強度を上記した方法で測定したところ、下記の表2に示すとおりであった。
(3) 上記(1)で得られた植物育成基材の残りの部分を使用して、実施例1の(3)におけるのと同様にして加圧加熱処理を行い、冷却後に箱から取り出したところ、それにより得られた栽培床では、熱融着性繊維がボール状の繊維塊となっていて分散状態が不良であり、熱融着性繊維の存在しない部分での強力が低く部分的な崩壊を生じてしまい、種苗育成用の栽培床として不適なものであった。
【0059】
【表1】
【0060】
【表2】
【0061】
上記の表1および2の結果にみるように、実施例1〜5では、単繊維繊度が10〜30dtex、繊維長が1〜20mm、アスペクト比が20〜1,000、水分率が15質量%以下および捲縮数が6個/cm以下である熱融着性繊維と無機質資材を用いて植物育成基材を製造しているために、該植物育成基材を加圧加熱処理することによって得られる栽培床は軽量で強力が高く、その栽培床を屋上に設置した際に取り扱い性、施工性に優れており、しかも植物を良好に生育させることができる。
特に実施例1〜3の植物育成基材は、無機質資材として粒径が10mm以上で嵩密度が0.5kg/dm3以下の無機質発泡体を用いていることにより、植物育成基材を加圧加熱処理して得られる栽培床の強力が極めて高くて崩壊が全く生じず、屋上などに設置する際の取り扱い性、施工性に極めて優れている。
【0062】
これに対して、比較例1では熱融着性繊維を用いていないために、形状保持性のある栽培床を得ることができない。
また、比較例2の植物育成基材では、熱融着性繊維の繊維長が0.5mmと短く、本発明で規定1〜20mmの範囲から外れていて、しかも熱融着性繊維のアスペクト比が13と小さくて本発明で規定する20〜1,000の範囲から外れているために、植物育成基材を加圧加熱処理して得られる栽培床の強力が低く、屋上などに設置する際に部分的に崩壊し、取り扱い性、施工性に劣っている。
比較例3の植物育成基材では、熱融着性繊維の単繊維繊度が33dtexと大きくて本発明で規定する10〜30dtexの範囲から外れているために、植物育成基材を加圧加熱処理して得られる栽培床の強力が極めて低く、屋上などに設置する際に部分的に崩壊し、取り扱い性、施工性に劣っている。
【0063】
比較例4の植物育成基材では、熱融着性繊維の捲縮数が約7.9個/cmと大きく本発明で規定する6個/cm以下という範囲を超えているために、熱融着性繊維間に絡みやもつれが生じ易く、熱融着性繊維の繊維塊による接着斑が発生し、植物育成基材を加圧加熱処理して得られる栽培床の強力が低く、屋上などに設置する際に部分的に崩壊し、取り扱い性、施工性に劣っている。
比較例5の植物育成基材では、熱融着性繊維の水分率が20%と高くて本発明で規定する10%以下という範囲を超えているために、熱融着性繊維の単糸分繊性が不良で、植物育成基材を加圧加熱処理して得られる栽培床の強力が低く、屋上などに設置する際に部分的に崩壊し、取り扱い性、施工性に劣っている。
比較例6の植物育成基材では、熱融着性繊維の繊維長51mmと長くて本発明で規定する1〜20mmの範囲から外れているために、熱融着性繊維がボール状の繊維塊となり分散性が不良で、植物育成基材を加圧加熱処理して得られる栽培床の強力が低く、屋上などに設置する際に部分的に崩壊し、取り扱い性、施工性に劣っている。
【0064】
【発明の効果】
上記した特定の熱融着性繊維および無機質資材を含有する本発明の植物育成基材を加熱処理または加圧加熱処理して植物育成基材中の熱融着性繊維を溶融接着することによって、軽量で、強力および水はけ性に優れる本発明の栽培床を製造することができる。
本発明の栽培床は、適度な保水性を有しながら水はけ性に優れていて植物を健全に生育させることができる。しかも、軽量で、高い強力を有しているために、取り扱い性、施工時の作業性に優れており、その上屋上などに設置した際に建造物に対する負荷が小さい。
本発明の栽培床が高い強力を有していることにより、屋上などへの施工時に栽培床の崩壊が生じず、更には強い風や雨に曝されても栽培床の飛散、流失、崩壊を生じず、植物を良好に保持して生育させることのできる。
前記した優れた特性により、本発明の栽培床は、屋上緑化や法面緑化などに適しており、特に屋上緑化用の栽培床として好適である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の植物育成基材を加圧加熱処理して得られるシート状物の曲げ強度の測定方法を示す図である。
【符号の説明】
a 加圧加熱処理シート状物
1a 支持台
1b 支持台
2a 加圧加熱処理シート状物の端部固定手段
2b 加圧加熱処理シート状物の端部固定手段
3 加圧板
4 荷重検出部
Claims (9)
- 単繊維繊度が10〜30dtex、繊維長が1〜20mm、アスペクト比が20〜1,000、水分率が15質量%以下および捲縮数が6個/cm以下である熱融着性繊維と、無機質資材を含有することを特徴とする植物育成基材。
- 熱融着性繊維が、繊維形成性重合体と、該繊維形成性重合体よりも融点または軟化点が20℃以上低い熱可塑性重合体とからなる、熱融着性の複合紡糸繊維および/または混合紡糸繊維である請求項1に記載の植物育成基材。
- 無機質資材として、粒径が10mm以上で嵩密度が0.5kg/dm3以下の無機質発泡体を5質量%以上の割合で含む無機質資材を用いる請求項1または2に記載の植物育成基材。
- 熱融着性繊維:無機質資材の配合割合が、質量比で1:99〜50:50である請求項1〜3のいずれか1項に記載の植物育成基材。
- 植物育成基材の質量に対して、熱融着性繊維を0.3〜30質量%、および粒径が10mm以上で嵩密度が0.5kg/dm3以下の無機質発泡体を5〜99質量%の割合で含有する請求項1〜4のいずれか1項に記載の植物育成基材。
- 下記の数式(I)により求められる曲げ強度が70mN以上である加圧加熱処理シート状物を与える請求項1〜5のいずれか1項に記載の植物育成基材。
- 請求項1〜6のいずれか1項に記載の植物育成基材を用いて得られる栽培床。
- 熱融着性繊維が溶融接着されている請求項6の栽培床。
- 請求項1〜6のいずれか1項に記載の植物育成基材を容器または型に充填し、加圧加熱処理して植物育成基材中の熱融着性繊維を溶融接着させると共に成形することを特徴とする栽培床の製造方法。
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JP2002231080A JP2004065150A (ja) | 2002-08-08 | 2002-08-08 | 植物育成基材およびそれから得られる栽培床 |
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2006197927A (ja) * | 2004-12-24 | 2006-08-03 | Nichigi Crown Kk | ベチバーの育苗/増殖方法 |
KR101624187B1 (ko) * | 2014-05-23 | 2016-05-25 | 상명대학교 천안산학협력단 | 육성기반재 및 이를 이용한 식생매트와 그 제조방법 |
-
2002
- 2002-08-08 JP JP2002231080A patent/JP2004065150A/ja active Pending
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