JP2004062946A - 磁気ヘッド、ヘッド・ジンバル・アッセンブリ、磁気記録装置およびそれらの製造方法、ならびに磁気記録装置の制御方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】主磁極の残留磁化により先端から発生する磁界を抑制し、記録された磁化情報が破壊されない単磁極型ヘッドおよび垂直磁気記録装置を提供する。
【解決手段】媒体に情報の記録を行う主磁極と、主磁極を励磁して情報の記録を行うコイルと、絶縁層を介して少なくとも主磁極先端近傍に導電層を具備し、コイルへの電流遮断直後において導電層に主磁極高さ方向に電流を流して主磁極の磁化をトラック幅方向に向け、主磁極先端の磁荷を小さくする。
【選択図】 図1
【解決手段】媒体に情報の記録を行う主磁極と、主磁極を励磁して情報の記録を行うコイルと、絶縁層を介して少なくとも主磁極先端近傍に導電層を具備し、コイルへの電流遮断直後において導電層に主磁極高さ方向に電流を流して主磁極の磁化をトラック幅方向に向け、主磁極先端の磁荷を小さくする。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、垂直磁気記録技術に適用される磁気ヘッド、ヘッド・ジンバル・アッセンブリ、これを用いた磁気記録装置、これらの製造方法および磁気記録装置の制御方法に係り、特に狭トラック幅、たとえば、トラック幅が1μm以下の単磁極型垂直磁気記録ヘッドに関わる。
【0002】
【従来の技術】
近年、磁気ディスク装置等に採用される磁気記録技術において、記録密度が飛躍的に向上しており、これに伴い、高い記録密度において記録された磁化をより安定に保つことが可能な垂直磁気記録方式が注目されている。
【0003】
垂直磁気記録に用いられる磁気記録ヘッドと記録媒体の組み合わせとして、単磁極型記録ヘッドと、媒体面に垂直な磁気異方性を有する記録層および軟磁性裏打ち層からなる2層膜媒体が有望視されており、従来より様々なヘッド形状や媒体構造が提案されている。
【0004】
単磁極型ヘッドによる垂直磁気記録方式において、主磁極近傍に配置した励磁コイルに電流を流して磁界を発生し、記録媒体対向面(ABS面)に垂直な方向(主磁極高さ方向)に主磁極を磁化させ、主磁極先端ABS面側から発生する磁界により垂直磁気記録媒体内の磁性体を媒体面に垂直な方向に磁化し、コイルの電流を変化させて上記媒体の磁化の向きを交互に反転することにより情報の記録を行う。また、磁化された媒体表面から発生する磁界を再生ヘッドによって電気信号に変換し、情報の読み出しを行う。
【0005】
上記の単磁極ヘッドにおいて、十分な記録磁界を主磁極先端部に集中させるために、主磁極は図13、14に示すようにABS面側先端部で絞り込まれた形状になっているのが一般的である。また、通常は、トラック幅の機械加工精度および記録磁界分布の最適化を目的として、主磁極先端部のABS面から所定の距離(主磁極先端部高さ)にわたりトラック幅方向の幅が一定になるように加工される。ここで記録直後における単磁極ヘッド先端部の磁化状態のシミュレーション結果を図13および図14に示している。図13ではトラック幅が0.8μm、主磁極11の先端部高さが0.5μmの時の主磁極先端部の磁化ベクトルの方向を、図14ではトラック幅が0.25μm、主磁極11の先端部高さが0.5μmの時の主磁極先端部の磁化ベクトルの方向をそれぞれ模式的に示している。図13、図14ともに、主磁極11にはトラック幅方向に磁化容易軸を有する磁気異方性が付与されている。主磁極先端部高さに対しトラック幅が大きい場合、図13に示すように主磁極の磁化はトラック幅方向に向いて安定し、主磁極からの漏洩磁界は十分小さくなって、媒体に記録された磁化を変化させることはない。しかし高トラック密度化に伴い、トラック幅が主磁極先端部高さよりも小さくなると、記録直後の主磁極先端部の磁化は図14に示すように主磁極高さ方向に向きやすくなり、主磁極先端ABS面側の磁荷が大きくなる。特に2層膜媒体を用いた場合、前記磁化から軟磁性裏打ち層に向かって強い磁界が発生し、媒体記録層に既に記録された磁化を反転して誤った情報が記録され、情報を破壊するといった問題が生じる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
この問題に対し、特開平5−120613公報、および、特開平7―134804公報においては、記録後、記録ヘッドコイルにより、AC消磁を行う技術が開示されている。しかし、これらの開示技術は、発生磁界による再生出力変動や記録電流回路の複雑化にともなう高速化への障害等の新たな問題を伴う。また、特開平7−014118公報には主磁極に部分的に反強磁性層を設ける対策技術が開示されている。しかし、この技術は記録磁界の減少という問題を伴う。
【0007】
本発明は、狭トラック幅、たとえば0.5μm以下のトラック幅の垂直磁気記録装置に用いられる単磁極型ヘッドにおいて、非記録時における主磁極の残留磁化により主磁極先端から発生する磁界を抑制し、記録媒体に記録した磁化情報を破壊しない単磁極型ヘッドおよび垂直磁気記録装置、およびこれらの製造方法を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明では、磁気ヘッドとして、主磁極と、前記主磁極を励磁して、媒体対向面に対して垂直方向に記録磁界を発生させるコイルと、前記主磁極の媒体対向面に垂直な側面の少なくとも一側面上に絶縁層を介して形成された導電層とを有する垂直磁気記録ヘッドを備えるようにした。
【0009】
また、前記導電層は、前記一側面の媒体対向側に形成されているようにした。
【0010】
さらに、前記導電層は、前記記録磁界の方向に対して平行な方向に印加される電流を引き込むための電流端子を有するようにした。
【0011】
また、前記磁気ヘッドは磁気抵抗効果素子を有する再生ヘッドを備えるようにした。
【0012】
また、ヘッド・ジンバル・アッセンブリにおいて、前記磁気ヘッドを塔載し、且つ前記導電層に前記記録磁界の方向に対して平行な方向に印加される電流を引き込むための電流端子を有する磁気ヘッドスライダと、該スライダを保持するジンバルと、該ジンバルを保持し前記電流端子に印加される電流が流れる配線を有するサスペンションとを備えるようにし、また、前記配線を介して前記導電層に電流を供給する電流制御手段、および、前記磁気ヘッドの入出力信号を処理する能動回路を備えるようにした。
【0013】
さらにまた、磁気記録装置において、前記磁気ヘッドと、前記導電層に前記記録磁界の方向に対して平行な方向に印加される電流を引き込むための電流端子と前記電流端子に印加される電流が流れる配線と、前記配線を介して前記導電層に電流を供給する電流制御手段と、磁気記録媒体とを備えるようにした。さらに、磁気ヘッドの入出力信号を処理する能動回路、および、前記コイルに電流を供給する記録電流制御手段を備えるようにした。
【0014】
さらにまた、主磁極を励磁して媒体対向面に対して垂直方向に記録磁界を発生させるコイルに、記録電流を印加するステップと、前記コイルに印加した記録電流を遮断するステップと、前記一側面上に絶縁層を介して形成された導電層に、前記記録磁界の方向に対して平行な方向に電流を印加するステップとにより磁気記録装置を制御するようにした。
【0015】
さらに、主磁極を形成する工程と、前記主磁極に一方向に磁気異方性を付与する工程と、前記主磁極の一主面側にコイルを形成する工程と、前記主磁極の前記一主面側あるいは他主面側に導電層を形成する工程と、前記主磁極、前記導電層ならびに前記コイルとを電気的に絶縁する絶縁層を形成する工程とにより磁気ヘッドの製造を行うようにした。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。図1に、本発明の磁気ヘッドの第1の実施例の断面構造概略図を示している。図2は、図1に示される磁気ヘッドの正面概略図を示している。図1に示す磁気ヘッド1において、基板10上に、再生ヘッド部17、補助磁極15、補助磁極15と励磁コイル13を電気的に絶縁する絶縁層161、励磁コイル13、励磁コイル13と主磁極11を電気的に絶縁する絶縁層162、主磁極11、主磁極11と導電体12を電気的に絶縁する絶縁層163、導電体12、電極以外の部分を保護、絶縁する絶縁層164を順次積層製膜した。図1において、図の下側が媒体対向面側、上側が媒体対向面側と反対側となる。本図において導電体12、すなわち、導電層は媒体対向面側に設けられている。
【0017】
再生ヘッド部17は磁気シールド層172、173および該シールド172、173の間に、センス電流を流すための配線(図示せず)が接続された磁気抵抗素子171を備えるようにした。磁気抵抗素子171としては、巨大磁気抵抗素子(GMR素子)やスピントンネル磁気抵抗素子(TMR素子)などを用いることができる。なお、図2では、再生ヘッド部17および絶縁層161〜164を省略している。各々の層および複数の層を電気的、磁気的に結合するための絶縁層のコンタクト穴はスパッタ法やメッキ法などの薄膜堆積法と、フォトリソグラフィー工程を併用して形成した。導電体12の主磁極側先端部端子121に配線141を接続し、端子121に対し主磁極高さ方向に設けられた導電体12の端子122に配線142を接続するようにした。配線141および配線142は、主磁極層11や励磁コイル層13などと同様に、薄膜プロセスによって形成したが、ボンディング形成してもよい。また、導電体12と、配線141、配線142のいずれか、または両方を薄膜プロセスにより一体形成してもよい。主磁極11、補助磁極15は鉄、ニッケル、コバルト等を含む軟磁性材料で形成され、主磁極11において、主磁極11となる軟磁性薄膜堆積中に基板に磁場を印加する等の工程により、トラック幅方向に磁化容易軸を有する磁気異方性が付与されている。励磁コイル13、導電層12および配線141、142は銅、金等の非磁性かつ電気抵抗の低い材料で形成した。絶縁層材料としてはアルミナや酸化シリコン、フォトレジストなどを用いた。
【0018】
図3は、本発明の磁気ヘッドの第2の実施例の断面構造概略図を示している。図3においても、図の下側が媒体対向面側、上側が媒体対向面側と反対側になる。図4には、図3に示される単磁極ヘッドの正面概略図を示している。ここで図1と図3の共通部分には、同じ参照番号を付して説明を省略する。図3に示す構成では、導電層12と励磁コイル13が、主磁極11に対し同じ側に形成した。されている。なお、図1、図3において、補助磁極15および励磁コイル13を主磁極11に対し基板10寄りに形成した例を示したが、励磁コイル13および補助磁極15を、主磁極11に対し基板10の反対側、あるいは両側に形成することも可能であることは自明である。
【0019】
図1および図3の単磁極ヘッドにおいて、媒体に情報を記録する動作中は励磁コイル13に記録電流を流し、主磁極11を主磁極高さ方向に励磁する。記録動作を停止し励磁コイル13への電流を遮断した直後に、配線141と配線142を通して導電体12に電流を主磁極高さ方向に印加する。ここで導電体12と主磁極11の距離をL、導電体のトラック幅方向の長さをW、導電体の厚さをD、導電体に印加する電流をIとすると、主磁極11の記録トラック幅Twに対してWが十分大きい場合、電流Iにより主磁極11の先端部に印加されるトラック幅方向の磁界Hは式1で近似される。
H=I/2(W+D+2L) ・・・(1)
図15(グラフ)に本発明第1の実施例における情報誤消去抑止効果を示す。図15において、従来の構造の単磁極ヘッドにおいてトラック幅Twが60nm一定のときの、主磁極先端部高さを変化させた時の記録直後の主磁極先端から発生する残留磁界の関係のシミュレーション結果をプロットし、さらに本発明第1の実施例において、W=1μm、D=0.2μm、L=0.2μm、I=0.5Aとしたときの、主磁極先端部高さ120nmにおける主磁極先端から発生する残留磁界のシミュレーション結果をプロットしている。従来の単磁極ヘッドにおいて、主磁極先端部高さが大きくなるにつれて先端部残留磁界が増加し、主磁極先端部高さ120nmにおいて約3000Oeの残留磁界が生じる。一方、本発明のヘッドにおいて、印加した電流によってトラック幅方向の磁界が主磁極先端部に印加され、残留磁界は約600Oeまで減少し、媒体に記録された磁化を破壊しない。
【0020】
上記のシミュレーション結果により、極めて狭いトラック幅に対する記録においても、本発明の磁気ヘッド構造で配置した導電層への電流印加により発生する磁界によって主磁極11の磁化はトラック幅方向に向き、主磁極11の先端部の磁荷が減少して、主磁極11の先端部から発生する漏洩磁界が媒体の保磁力に対し十分小さくなり、従来構造の磁気ヘッドにおいて狭トラック幅での記録を行う際に問題となった媒体の磁化情報の破壊が抑止されることが明らかとなった。
【0021】
図5には、本発明の磁気ヘッドを搭載するスライダの概略図を示している。スライダ2には、磁気ヘッド1の励磁コイル13、磁気抵抗素子171、導電層12の各端子に接続された端子21〜26を備えている。スライダのABS面には、媒体表面から所定の高さで浮上走行するための凹凸加工(図示せず)が施されている。図6には、本発明の磁気ヘッドを搭載するヘッド・ジンバル・アッセンブリの概略図を示す。図6のヘッド・ジンバル・アッセンブリ3において、磁気ヘッド1を搭載したスライダ2と、スライダ2を支持するジンバル32と、ジンバル32を支持する板バネ状のサスペンション31と、スライダ2の端子21〜26に接続し、磁極ヘッド1のコイル13、磁気抵抗素子171、および導電体12に電流を供給するための配線33および端子34を有する。記録時は配線33を通してコイル13に記録電流を印加し、再生時は再生ヘッド素子171からの出力を配線33を通して検出する。記録電流を遮断した直後、配線33を通して導電体12に電流を印加する。
【0022】
図7には、本発明のヘッド・ジンバル・アッセンブリにおいて、サスペンション上にヘッドアンプおよび導電層への電流制御回路を備えた例を示している。サスペンション31上には出入力信号を処理する能動回路として主に記録用スイッチング回路およびセンス電圧増幅回路からなるプリアンプ回路41、磁気ヘッド1上の導電層12に電流を印加する電流制御回路42、さらに、回路41、42に電源、ライトデータ信号、ライトゲート信号を供給し、回路41で増幅された再生信号を転送する配線33および端子34を備えている。ここで回路41、42を統合し、1つのICとすることも可能である。回路41、42をサスペンション31上に搭載することにより、ICからヘッド素子まで配線長が短くなり、インピーダンスが低減して高周波特性が改善し、さらに隣接した配線の電流による誘導起電力が減少し、再生ノイズが低減し、過剰な誘導電流により磁気抵抗素子が破壊されることを防止できる。
【0023】
図8には、本発明の磁気ヘッドによる記録、再生に用いるプリアンプの概略図を示している。プリアンプ4において、磁気ヘッド1の励磁コイル13に電流を供給する記録電流制御回路411、出力信号増幅回路412および磁気ヘッド1の導電層12に電流を供給する電流制御回路42を有することを特徴とする。
【0024】
図9には、本発明の磁気ヘッドに印加する電流のタイミングチャートを示している。ライトゲート信号入力端子434からライトゲート信号52を入力し、ライトゲート信号52がLレベルになると書き込み許可状態となり、ライトデータ入力端子433から入力されたライトデータ信号に応じた記録電流53が磁気ヘッド1の記録コイル13に流れる。ライトゲート信号52がHレベルになったとき、記録電流53を0にすると同時に電流制御回路42からヘッド1の導電層12に電流54を供給する。タイマなどの時間制御により、次にライトゲート信号52がLレベルになる以前に電流制御回路42により導電層電流54を0にする。以上の手順により非記録時にのみ導電層12へ電流54を印加することにより、該電流が磁気ヘッド1の記録動作に与える影響を無くし、不要な電力消費を抑制することができる。
【0025】
図10には、本発明の垂直磁気記録装置の媒体面から見た外観図を示している。図11には、本発明の垂直磁気記録装置の媒体側面から見た外観図を示している。筐体60内には垂直磁気記録媒体61、媒体61を支持、回転する手段としてのスピンドルモータ62、媒体61に対して情報の記録および再生を行う磁気ヘッド1(図示せず)を搭載したスライダ2、スライダ2を先端に搭載したヘッド・ジンバル・アッセンブリ3、ヘッド・ジンバル・アッセンブリ3を回転自在に支持する回転軸63、回転軸63を介してヘッド・ジンバル・アッセンブリ3を回転させ、かつ磁気ヘッド1の記録媒体61上での位置決めを行うボイスコイルモータ64、およびプリアンプ4が収納されている。筐体60外部には、信号処理回路、ディスク回転制御回路、ヘッド位置決め制御回路などが実装されたパッケージボード65が搭載されている。スピンドルモータ62によって回転する媒体61上でスライダ2が極低位置で浮上走行することにより、磁気ヘッド1の主磁極11および補助磁極15が、媒体61表面で近接対向している。図12には垂直記録媒体61として用いられる垂直2層膜媒体の断面構造図を示している。垂直記録媒体61は、本発明の垂直磁気記録装置の情報の記録対象であり、アルミニウムやガラスからなる基板上610上に、パーマロイやCo系アモルファスを用いた軟磁性裏打ち層611、CoCr系合金やCo/Pt人工格子多層膜などを用いた垂直磁気異方性を有する記録層612、カーボン膜などによる保護層613、潤滑層614が順に積層されている。軟磁性裏打ち層611、記録層612の結晶配向制御や磁区制御等を目的とした下地層を有してもよい。軟磁性裏打ち層611には、記録時に磁気ヘッド1の主磁極11からの記録磁界を誘導し、記録層612に印加される記録磁界の媒体面垂直成分を強める働きと、記録された磁化によって記録層612の基板610側に生じる磁荷をキャンセルして、より安定に記録状態を保つ働きを有している反面、記録直後の主磁極11の残留磁荷によって記録層612に印加される磁界も強め、記録層612に記録された磁化情報を破壊しやすいという欠点もある。従って、本発明による、記録直後における主磁極11の先端の磁荷低減は、上記垂直2層膜媒体との組み合わせにおいて特に効果を有する。
【0026】
以上に述べた、本発明実施例の磁気ヘッド、ヘッド・ジンバル・アッセンブリ、これらを用いた磁気記録装置において、狭トラック幅、例えば、0.5μmから0.1μmのトラック幅の垂直磁気記録において、従来技術では問題とされていた、記録後の誤消去を大幅に低減することが出来、記録した情報の破壊を回避することが可能となった。なお、本発明の第1の実施例および第2の実施例の磁気ヘッドは同様の記録後の誤消去低減効果を示した。
【0027】
【発明の効果】
以上詳述したように本発明では、記録直後に主磁極近傍に配置した導電体に主磁極高さ方向に電流を印加し、この電流から発生する磁界により主磁極の磁化を媒体面に平行な方向に向けて主磁極先端の磁荷を低減し、非記録時における主磁極先端からの漏洩磁界を低減して、情報の破壊を回避することができる。また、電流による主磁極の磁区制御を非記録時にのみ行うことにより、記録性能に影響を与えず、高周波での記録に適したヘッド設計が容易である。さらに上記導電体は記録コイルと同様のプロセスにより比較的容易に作製することが可能であり、低コストで安定した記録を行う垂直磁気記録ヘッドを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施例の磁気ヘッドの断面概略図である。
【図2】本発明の第1の実施例の磁気ヘッドの正面概略図である。
【図3】本発明の第2の実施例の磁気ヘッドの断面概略図である。
【図4】本発明の第2の実施例の磁気ヘッドの正面概略図である。
【図5】本発明の磁気ヘッドスライダの正面概略図である。
【図6】本発明のヘッド・ジンバル・アッセンブリの概略図である。
【図7】プリアンプ回路および導電層電流制御回路を搭載した、本発明のヘッド・ジンバル・アッセンブリの概略図である。
【図8】本発明のプリアンプの概略図である。
【図9】記録コイルと導電層に印加する電流のタイミングチャートである。
【図10】本発明の磁気ディスク装置の媒体面から見た概略図である。
【図11】本発明の磁気ディスク装置の媒体側面から見た概略図である。
【図12】本発明の磁気ディスク装置の記録媒体の断面概略図である。
【図13】トラック幅の広い単磁極ヘッド先端部の磁区構造の概念図である。
【図14】トラック幅の狭い単磁極ヘッド先端部の磁区構造の概念図である
【図15】従来構造及び本発明の構造の磁気ヘッドを用いた場合の狭トラック幅記録における主磁極先端部残留磁界の主磁極先端部高さ依存性をシミュレーションにより比較した図である。。
【符号の説明】
1…磁気ヘッド、2…スライダ、3…ヘッド・ジンバル・アッセンブリ、4…プリアンプ、6…磁気ディスク装置、10…ヘッド基板、11…主磁極、12…導電層、13…励磁コイル、15…補助磁極、17…再生ヘッド部、21〜26…端子、31…サスペンション、32…ジンバル、33…配線、34…端子、41…プリアンプ部、42…導電層電流制御回路、51…ライトデータ信号、52…ライトゲート信号、53…記録電流、54…導電層電流、60…筐体、61…垂直磁気記録媒体、62…スピンドルモータ、63…回転軸、64…ボイスコイルモータ、65…パッケージボード、121〜122…導電層端子、141〜142…配線、161〜164…絶縁層、171…磁気抵抗素子、172〜173…磁気シールド、411…再生出力増幅回路、412…記録電流制御回路、431…電源端子、432…再生出力端子、433…ライトデータ入力端子、434…ライトゲート信号入力端子、610…媒体基板、611…軟磁性裏打ち層、612…垂直記録層、613…保護層、614…潤滑層。
【発明の属する技術分野】
本発明は、垂直磁気記録技術に適用される磁気ヘッド、ヘッド・ジンバル・アッセンブリ、これを用いた磁気記録装置、これらの製造方法および磁気記録装置の制御方法に係り、特に狭トラック幅、たとえば、トラック幅が1μm以下の単磁極型垂直磁気記録ヘッドに関わる。
【0002】
【従来の技術】
近年、磁気ディスク装置等に採用される磁気記録技術において、記録密度が飛躍的に向上しており、これに伴い、高い記録密度において記録された磁化をより安定に保つことが可能な垂直磁気記録方式が注目されている。
【0003】
垂直磁気記録に用いられる磁気記録ヘッドと記録媒体の組み合わせとして、単磁極型記録ヘッドと、媒体面に垂直な磁気異方性を有する記録層および軟磁性裏打ち層からなる2層膜媒体が有望視されており、従来より様々なヘッド形状や媒体構造が提案されている。
【0004】
単磁極型ヘッドによる垂直磁気記録方式において、主磁極近傍に配置した励磁コイルに電流を流して磁界を発生し、記録媒体対向面(ABS面)に垂直な方向(主磁極高さ方向)に主磁極を磁化させ、主磁極先端ABS面側から発生する磁界により垂直磁気記録媒体内の磁性体を媒体面に垂直な方向に磁化し、コイルの電流を変化させて上記媒体の磁化の向きを交互に反転することにより情報の記録を行う。また、磁化された媒体表面から発生する磁界を再生ヘッドによって電気信号に変換し、情報の読み出しを行う。
【0005】
上記の単磁極ヘッドにおいて、十分な記録磁界を主磁極先端部に集中させるために、主磁極は図13、14に示すようにABS面側先端部で絞り込まれた形状になっているのが一般的である。また、通常は、トラック幅の機械加工精度および記録磁界分布の最適化を目的として、主磁極先端部のABS面から所定の距離(主磁極先端部高さ)にわたりトラック幅方向の幅が一定になるように加工される。ここで記録直後における単磁極ヘッド先端部の磁化状態のシミュレーション結果を図13および図14に示している。図13ではトラック幅が0.8μm、主磁極11の先端部高さが0.5μmの時の主磁極先端部の磁化ベクトルの方向を、図14ではトラック幅が0.25μm、主磁極11の先端部高さが0.5μmの時の主磁極先端部の磁化ベクトルの方向をそれぞれ模式的に示している。図13、図14ともに、主磁極11にはトラック幅方向に磁化容易軸を有する磁気異方性が付与されている。主磁極先端部高さに対しトラック幅が大きい場合、図13に示すように主磁極の磁化はトラック幅方向に向いて安定し、主磁極からの漏洩磁界は十分小さくなって、媒体に記録された磁化を変化させることはない。しかし高トラック密度化に伴い、トラック幅が主磁極先端部高さよりも小さくなると、記録直後の主磁極先端部の磁化は図14に示すように主磁極高さ方向に向きやすくなり、主磁極先端ABS面側の磁荷が大きくなる。特に2層膜媒体を用いた場合、前記磁化から軟磁性裏打ち層に向かって強い磁界が発生し、媒体記録層に既に記録された磁化を反転して誤った情報が記録され、情報を破壊するといった問題が生じる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
この問題に対し、特開平5−120613公報、および、特開平7―134804公報においては、記録後、記録ヘッドコイルにより、AC消磁を行う技術が開示されている。しかし、これらの開示技術は、発生磁界による再生出力変動や記録電流回路の複雑化にともなう高速化への障害等の新たな問題を伴う。また、特開平7−014118公報には主磁極に部分的に反強磁性層を設ける対策技術が開示されている。しかし、この技術は記録磁界の減少という問題を伴う。
【0007】
本発明は、狭トラック幅、たとえば0.5μm以下のトラック幅の垂直磁気記録装置に用いられる単磁極型ヘッドにおいて、非記録時における主磁極の残留磁化により主磁極先端から発生する磁界を抑制し、記録媒体に記録した磁化情報を破壊しない単磁極型ヘッドおよび垂直磁気記録装置、およびこれらの製造方法を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明では、磁気ヘッドとして、主磁極と、前記主磁極を励磁して、媒体対向面に対して垂直方向に記録磁界を発生させるコイルと、前記主磁極の媒体対向面に垂直な側面の少なくとも一側面上に絶縁層を介して形成された導電層とを有する垂直磁気記録ヘッドを備えるようにした。
【0009】
また、前記導電層は、前記一側面の媒体対向側に形成されているようにした。
【0010】
さらに、前記導電層は、前記記録磁界の方向に対して平行な方向に印加される電流を引き込むための電流端子を有するようにした。
【0011】
また、前記磁気ヘッドは磁気抵抗効果素子を有する再生ヘッドを備えるようにした。
【0012】
また、ヘッド・ジンバル・アッセンブリにおいて、前記磁気ヘッドを塔載し、且つ前記導電層に前記記録磁界の方向に対して平行な方向に印加される電流を引き込むための電流端子を有する磁気ヘッドスライダと、該スライダを保持するジンバルと、該ジンバルを保持し前記電流端子に印加される電流が流れる配線を有するサスペンションとを備えるようにし、また、前記配線を介して前記導電層に電流を供給する電流制御手段、および、前記磁気ヘッドの入出力信号を処理する能動回路を備えるようにした。
【0013】
さらにまた、磁気記録装置において、前記磁気ヘッドと、前記導電層に前記記録磁界の方向に対して平行な方向に印加される電流を引き込むための電流端子と前記電流端子に印加される電流が流れる配線と、前記配線を介して前記導電層に電流を供給する電流制御手段と、磁気記録媒体とを備えるようにした。さらに、磁気ヘッドの入出力信号を処理する能動回路、および、前記コイルに電流を供給する記録電流制御手段を備えるようにした。
【0014】
さらにまた、主磁極を励磁して媒体対向面に対して垂直方向に記録磁界を発生させるコイルに、記録電流を印加するステップと、前記コイルに印加した記録電流を遮断するステップと、前記一側面上に絶縁層を介して形成された導電層に、前記記録磁界の方向に対して平行な方向に電流を印加するステップとにより磁気記録装置を制御するようにした。
【0015】
さらに、主磁極を形成する工程と、前記主磁極に一方向に磁気異方性を付与する工程と、前記主磁極の一主面側にコイルを形成する工程と、前記主磁極の前記一主面側あるいは他主面側に導電層を形成する工程と、前記主磁極、前記導電層ならびに前記コイルとを電気的に絶縁する絶縁層を形成する工程とにより磁気ヘッドの製造を行うようにした。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。図1に、本発明の磁気ヘッドの第1の実施例の断面構造概略図を示している。図2は、図1に示される磁気ヘッドの正面概略図を示している。図1に示す磁気ヘッド1において、基板10上に、再生ヘッド部17、補助磁極15、補助磁極15と励磁コイル13を電気的に絶縁する絶縁層161、励磁コイル13、励磁コイル13と主磁極11を電気的に絶縁する絶縁層162、主磁極11、主磁極11と導電体12を電気的に絶縁する絶縁層163、導電体12、電極以外の部分を保護、絶縁する絶縁層164を順次積層製膜した。図1において、図の下側が媒体対向面側、上側が媒体対向面側と反対側となる。本図において導電体12、すなわち、導電層は媒体対向面側に設けられている。
【0017】
再生ヘッド部17は磁気シールド層172、173および該シールド172、173の間に、センス電流を流すための配線(図示せず)が接続された磁気抵抗素子171を備えるようにした。磁気抵抗素子171としては、巨大磁気抵抗素子(GMR素子)やスピントンネル磁気抵抗素子(TMR素子)などを用いることができる。なお、図2では、再生ヘッド部17および絶縁層161〜164を省略している。各々の層および複数の層を電気的、磁気的に結合するための絶縁層のコンタクト穴はスパッタ法やメッキ法などの薄膜堆積法と、フォトリソグラフィー工程を併用して形成した。導電体12の主磁極側先端部端子121に配線141を接続し、端子121に対し主磁極高さ方向に設けられた導電体12の端子122に配線142を接続するようにした。配線141および配線142は、主磁極層11や励磁コイル層13などと同様に、薄膜プロセスによって形成したが、ボンディング形成してもよい。また、導電体12と、配線141、配線142のいずれか、または両方を薄膜プロセスにより一体形成してもよい。主磁極11、補助磁極15は鉄、ニッケル、コバルト等を含む軟磁性材料で形成され、主磁極11において、主磁極11となる軟磁性薄膜堆積中に基板に磁場を印加する等の工程により、トラック幅方向に磁化容易軸を有する磁気異方性が付与されている。励磁コイル13、導電層12および配線141、142は銅、金等の非磁性かつ電気抵抗の低い材料で形成した。絶縁層材料としてはアルミナや酸化シリコン、フォトレジストなどを用いた。
【0018】
図3は、本発明の磁気ヘッドの第2の実施例の断面構造概略図を示している。図3においても、図の下側が媒体対向面側、上側が媒体対向面側と反対側になる。図4には、図3に示される単磁極ヘッドの正面概略図を示している。ここで図1と図3の共通部分には、同じ参照番号を付して説明を省略する。図3に示す構成では、導電層12と励磁コイル13が、主磁極11に対し同じ側に形成した。されている。なお、図1、図3において、補助磁極15および励磁コイル13を主磁極11に対し基板10寄りに形成した例を示したが、励磁コイル13および補助磁極15を、主磁極11に対し基板10の反対側、あるいは両側に形成することも可能であることは自明である。
【0019】
図1および図3の単磁極ヘッドにおいて、媒体に情報を記録する動作中は励磁コイル13に記録電流を流し、主磁極11を主磁極高さ方向に励磁する。記録動作を停止し励磁コイル13への電流を遮断した直後に、配線141と配線142を通して導電体12に電流を主磁極高さ方向に印加する。ここで導電体12と主磁極11の距離をL、導電体のトラック幅方向の長さをW、導電体の厚さをD、導電体に印加する電流をIとすると、主磁極11の記録トラック幅Twに対してWが十分大きい場合、電流Iにより主磁極11の先端部に印加されるトラック幅方向の磁界Hは式1で近似される。
H=I/2(W+D+2L) ・・・(1)
図15(グラフ)に本発明第1の実施例における情報誤消去抑止効果を示す。図15において、従来の構造の単磁極ヘッドにおいてトラック幅Twが60nm一定のときの、主磁極先端部高さを変化させた時の記録直後の主磁極先端から発生する残留磁界の関係のシミュレーション結果をプロットし、さらに本発明第1の実施例において、W=1μm、D=0.2μm、L=0.2μm、I=0.5Aとしたときの、主磁極先端部高さ120nmにおける主磁極先端から発生する残留磁界のシミュレーション結果をプロットしている。従来の単磁極ヘッドにおいて、主磁極先端部高さが大きくなるにつれて先端部残留磁界が増加し、主磁極先端部高さ120nmにおいて約3000Oeの残留磁界が生じる。一方、本発明のヘッドにおいて、印加した電流によってトラック幅方向の磁界が主磁極先端部に印加され、残留磁界は約600Oeまで減少し、媒体に記録された磁化を破壊しない。
【0020】
上記のシミュレーション結果により、極めて狭いトラック幅に対する記録においても、本発明の磁気ヘッド構造で配置した導電層への電流印加により発生する磁界によって主磁極11の磁化はトラック幅方向に向き、主磁極11の先端部の磁荷が減少して、主磁極11の先端部から発生する漏洩磁界が媒体の保磁力に対し十分小さくなり、従来構造の磁気ヘッドにおいて狭トラック幅での記録を行う際に問題となった媒体の磁化情報の破壊が抑止されることが明らかとなった。
【0021】
図5には、本発明の磁気ヘッドを搭載するスライダの概略図を示している。スライダ2には、磁気ヘッド1の励磁コイル13、磁気抵抗素子171、導電層12の各端子に接続された端子21〜26を備えている。スライダのABS面には、媒体表面から所定の高さで浮上走行するための凹凸加工(図示せず)が施されている。図6には、本発明の磁気ヘッドを搭載するヘッド・ジンバル・アッセンブリの概略図を示す。図6のヘッド・ジンバル・アッセンブリ3において、磁気ヘッド1を搭載したスライダ2と、スライダ2を支持するジンバル32と、ジンバル32を支持する板バネ状のサスペンション31と、スライダ2の端子21〜26に接続し、磁極ヘッド1のコイル13、磁気抵抗素子171、および導電体12に電流を供給するための配線33および端子34を有する。記録時は配線33を通してコイル13に記録電流を印加し、再生時は再生ヘッド素子171からの出力を配線33を通して検出する。記録電流を遮断した直後、配線33を通して導電体12に電流を印加する。
【0022】
図7には、本発明のヘッド・ジンバル・アッセンブリにおいて、サスペンション上にヘッドアンプおよび導電層への電流制御回路を備えた例を示している。サスペンション31上には出入力信号を処理する能動回路として主に記録用スイッチング回路およびセンス電圧増幅回路からなるプリアンプ回路41、磁気ヘッド1上の導電層12に電流を印加する電流制御回路42、さらに、回路41、42に電源、ライトデータ信号、ライトゲート信号を供給し、回路41で増幅された再生信号を転送する配線33および端子34を備えている。ここで回路41、42を統合し、1つのICとすることも可能である。回路41、42をサスペンション31上に搭載することにより、ICからヘッド素子まで配線長が短くなり、インピーダンスが低減して高周波特性が改善し、さらに隣接した配線の電流による誘導起電力が減少し、再生ノイズが低減し、過剰な誘導電流により磁気抵抗素子が破壊されることを防止できる。
【0023】
図8には、本発明の磁気ヘッドによる記録、再生に用いるプリアンプの概略図を示している。プリアンプ4において、磁気ヘッド1の励磁コイル13に電流を供給する記録電流制御回路411、出力信号増幅回路412および磁気ヘッド1の導電層12に電流を供給する電流制御回路42を有することを特徴とする。
【0024】
図9には、本発明の磁気ヘッドに印加する電流のタイミングチャートを示している。ライトゲート信号入力端子434からライトゲート信号52を入力し、ライトゲート信号52がLレベルになると書き込み許可状態となり、ライトデータ入力端子433から入力されたライトデータ信号に応じた記録電流53が磁気ヘッド1の記録コイル13に流れる。ライトゲート信号52がHレベルになったとき、記録電流53を0にすると同時に電流制御回路42からヘッド1の導電層12に電流54を供給する。タイマなどの時間制御により、次にライトゲート信号52がLレベルになる以前に電流制御回路42により導電層電流54を0にする。以上の手順により非記録時にのみ導電層12へ電流54を印加することにより、該電流が磁気ヘッド1の記録動作に与える影響を無くし、不要な電力消費を抑制することができる。
【0025】
図10には、本発明の垂直磁気記録装置の媒体面から見た外観図を示している。図11には、本発明の垂直磁気記録装置の媒体側面から見た外観図を示している。筐体60内には垂直磁気記録媒体61、媒体61を支持、回転する手段としてのスピンドルモータ62、媒体61に対して情報の記録および再生を行う磁気ヘッド1(図示せず)を搭載したスライダ2、スライダ2を先端に搭載したヘッド・ジンバル・アッセンブリ3、ヘッド・ジンバル・アッセンブリ3を回転自在に支持する回転軸63、回転軸63を介してヘッド・ジンバル・アッセンブリ3を回転させ、かつ磁気ヘッド1の記録媒体61上での位置決めを行うボイスコイルモータ64、およびプリアンプ4が収納されている。筐体60外部には、信号処理回路、ディスク回転制御回路、ヘッド位置決め制御回路などが実装されたパッケージボード65が搭載されている。スピンドルモータ62によって回転する媒体61上でスライダ2が極低位置で浮上走行することにより、磁気ヘッド1の主磁極11および補助磁極15が、媒体61表面で近接対向している。図12には垂直記録媒体61として用いられる垂直2層膜媒体の断面構造図を示している。垂直記録媒体61は、本発明の垂直磁気記録装置の情報の記録対象であり、アルミニウムやガラスからなる基板上610上に、パーマロイやCo系アモルファスを用いた軟磁性裏打ち層611、CoCr系合金やCo/Pt人工格子多層膜などを用いた垂直磁気異方性を有する記録層612、カーボン膜などによる保護層613、潤滑層614が順に積層されている。軟磁性裏打ち層611、記録層612の結晶配向制御や磁区制御等を目的とした下地層を有してもよい。軟磁性裏打ち層611には、記録時に磁気ヘッド1の主磁極11からの記録磁界を誘導し、記録層612に印加される記録磁界の媒体面垂直成分を強める働きと、記録された磁化によって記録層612の基板610側に生じる磁荷をキャンセルして、より安定に記録状態を保つ働きを有している反面、記録直後の主磁極11の残留磁荷によって記録層612に印加される磁界も強め、記録層612に記録された磁化情報を破壊しやすいという欠点もある。従って、本発明による、記録直後における主磁極11の先端の磁荷低減は、上記垂直2層膜媒体との組み合わせにおいて特に効果を有する。
【0026】
以上に述べた、本発明実施例の磁気ヘッド、ヘッド・ジンバル・アッセンブリ、これらを用いた磁気記録装置において、狭トラック幅、例えば、0.5μmから0.1μmのトラック幅の垂直磁気記録において、従来技術では問題とされていた、記録後の誤消去を大幅に低減することが出来、記録した情報の破壊を回避することが可能となった。なお、本発明の第1の実施例および第2の実施例の磁気ヘッドは同様の記録後の誤消去低減効果を示した。
【0027】
【発明の効果】
以上詳述したように本発明では、記録直後に主磁極近傍に配置した導電体に主磁極高さ方向に電流を印加し、この電流から発生する磁界により主磁極の磁化を媒体面に平行な方向に向けて主磁極先端の磁荷を低減し、非記録時における主磁極先端からの漏洩磁界を低減して、情報の破壊を回避することができる。また、電流による主磁極の磁区制御を非記録時にのみ行うことにより、記録性能に影響を与えず、高周波での記録に適したヘッド設計が容易である。さらに上記導電体は記録コイルと同様のプロセスにより比較的容易に作製することが可能であり、低コストで安定した記録を行う垂直磁気記録ヘッドを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施例の磁気ヘッドの断面概略図である。
【図2】本発明の第1の実施例の磁気ヘッドの正面概略図である。
【図3】本発明の第2の実施例の磁気ヘッドの断面概略図である。
【図4】本発明の第2の実施例の磁気ヘッドの正面概略図である。
【図5】本発明の磁気ヘッドスライダの正面概略図である。
【図6】本発明のヘッド・ジンバル・アッセンブリの概略図である。
【図7】プリアンプ回路および導電層電流制御回路を搭載した、本発明のヘッド・ジンバル・アッセンブリの概略図である。
【図8】本発明のプリアンプの概略図である。
【図9】記録コイルと導電層に印加する電流のタイミングチャートである。
【図10】本発明の磁気ディスク装置の媒体面から見た概略図である。
【図11】本発明の磁気ディスク装置の媒体側面から見た概略図である。
【図12】本発明の磁気ディスク装置の記録媒体の断面概略図である。
【図13】トラック幅の広い単磁極ヘッド先端部の磁区構造の概念図である。
【図14】トラック幅の狭い単磁極ヘッド先端部の磁区構造の概念図である
【図15】従来構造及び本発明の構造の磁気ヘッドを用いた場合の狭トラック幅記録における主磁極先端部残留磁界の主磁極先端部高さ依存性をシミュレーションにより比較した図である。。
【符号の説明】
1…磁気ヘッド、2…スライダ、3…ヘッド・ジンバル・アッセンブリ、4…プリアンプ、6…磁気ディスク装置、10…ヘッド基板、11…主磁極、12…導電層、13…励磁コイル、15…補助磁極、17…再生ヘッド部、21〜26…端子、31…サスペンション、32…ジンバル、33…配線、34…端子、41…プリアンプ部、42…導電層電流制御回路、51…ライトデータ信号、52…ライトゲート信号、53…記録電流、54…導電層電流、60…筐体、61…垂直磁気記録媒体、62…スピンドルモータ、63…回転軸、64…ボイスコイルモータ、65…パッケージボード、121〜122…導電層端子、141〜142…配線、161〜164…絶縁層、171…磁気抵抗素子、172〜173…磁気シールド、411…再生出力増幅回路、412…記録電流制御回路、431…電源端子、432…再生出力端子、433…ライトデータ入力端子、434…ライトゲート信号入力端子、610…媒体基板、611…軟磁性裏打ち層、612…垂直記録層、613…保護層、614…潤滑層。
Claims (17)
- 主磁極と、前記主磁極を励磁することにより、媒体対向面に対して垂直方向に記録磁界を発生させる励磁コイルと、前記主磁極の媒体対向面に垂直な側面のうち少なくとも一側面上に絶縁層を介して形成された導電層とを有する垂直磁気記録ヘッドを備えることを特徴とする磁気ヘッド。
- 前記導電層は、前記一側面の媒体対向側に形成されていることを特徴とする請求項1記載の磁気ヘッド。
- 前記導電層は、前記記録磁束の方向に対して平行な方向に印加される電流を引き込むための電流端子を有することを特徴とする請求項1または2記載の磁気ヘッド。
- さらに、磁気抵抗効果素子を有する再生ヘッドを備えることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の磁気ヘッド。
- 主磁極、前記主磁極を励磁することにより、媒体対向面に対して垂直方向に記録磁界を発生させる励磁コイル、及び前記主磁極の媒体対向面に垂直な側面のうち少なくとも一側面上に絶縁層を介して形成された導電層とを有する垂直磁気記録ヘッドを備えることを特徴とする磁気ヘッドと、
前記磁気ヘッドを塔載し、且つ前記導電層に前記記録磁界の方向に対して平行な方向に印加される電流を引き込むための電流端子を有する磁気ヘッドスライダと、該スライダを保持するジンバルと、該ジンバルを保持し前記電流端子に印加される電流が流れる配線を有するサスペンションとを備えることを特徴とするヘッド・ジンバル・アッセンブリ。 - 前記導電層は、前記一側面の媒体対向面側に形成されていることを特徴とする請求項5に記載のヘッド・ジンバル・アッセンブリ。
- 前記配線を介して前記導電層に電流を供給する電流制御手段を備えることを特徴とする請求項5または6に記載のヘッド・ジンバル・アッセンブリ。
- 前記磁気ヘッドは、磁気抵抗効果素子を有する再生ヘッドを備えることを特徴とする請求項5から7のいずれか1項に記載のヘッド・ジンバル・アッセンブリ。
- 前記磁気ヘッドの入出力信号を処理する能動回路を備えることを特徴とする請求項8に記載のヘッド・ジンバル・アッセンブリ。
- 主磁極、前記主磁極を励磁することにより、媒体対向面に対して垂直方向に記録磁界を発生させる励磁コイル、及び前記主磁極の媒体対向面に垂直な側面の少なくとも一側面上に絶縁層を介して形成された導電層とを有する垂直磁気記録ヘッドを備えることを特徴とする磁気ヘッドと、
前記導電層に前記記録磁界の方向に対して平行な方向に印加される電流を引き込むための電流端子と
前記電流端子に印加される電流が流れる配線と、
前記配線を介して前記導電層に電流を供給する電流制御手段と、
磁気記録媒体とを備えることを特徴とする磁気記録装置。 - 前記導電層は、前記主磁極の媒体対向面に垂直な側面のうち少なくとも一側面の媒体対向面側に形成されていることを特徴とする請求項10記載の磁気記録装置。
- 前記磁気ヘッドは、磁気抵抗効果素子を有する再生ヘッドを備えることを特徴とする請求項10または11に記載の磁気記録装置。
- 前記磁気ヘッドの入出力信号を処理する能動回路を有するヘッド・ジンバル・アッセンブリを備えることを特徴とする請求項12記載の磁気記録装置。
- 前記コイルに電流を供給する記録電流制御手段を備えることを特徴とする請求項10から14のいずれか1項に記載の磁気記録装置。
- 主磁極を励磁して媒体対向面に対して垂直方向に記録磁界を発生させるコイルに、記録電流を印加するステップと、
前記コイルに印加した記録電流を遮断するステップと、
前記主磁極の媒体対向面に垂直な側面の少なくとも一側面上に絶縁層を介して形成された導電層に、前記記録磁界の方向に対して平行な方向に電流を印加するステップとを含むことを特徴とする磁気記録装置の制御方法。 - 主磁極を形成する工程と、
前記主磁極に一方向に磁気異方性を付与する工程と、
前記主磁極の一主面側に励磁コイルを形成する工程と、
前記主磁極の前記一主面側あるいは他主面側に導電層を形成する工程と、
前記主磁極、前記導電層ならびに前記励磁コイルとを電気的に絶縁する絶縁層を形成する工程とを含むことを特徴とする磁気ヘッドの製造方法。 - 基板上に、再生ヘッド部、補助磁極、補助磁極と励磁コイルを電気的に絶縁する絶縁層、励磁コイルを順次形成する工程と、
励磁コイルと主磁極を電気的に絶縁する絶縁層、主磁極、主磁極と導電層を電気的に絶縁する絶縁層、導電層を順次形成する工程、あるいは、励磁コイルと導電層を電気的に絶縁する絶縁層、導電層、主磁極と導電層を電気的に絶縁する絶縁層、主磁極、励磁コイルと主磁極を電気的に絶縁する絶縁層、励磁コイルを順次形成する工程と、
前記主磁極形成工程中に磁場を印加し、主磁極に一方向に磁気異方性を付与する工程とにより磁気ヘッドを形成する工程と、
前記導電層に前記記録磁束の方向に対して平行な方向に印加される電流を引き込むための電流端子を形成する工程と、
前記電流端子に印加される電流が流れる配線を形成する工程と、
前記配線を介して前記導電層に電流を供給する電流制御手段を形成するする工程とを含むことを特徴とする磁気記録装置の製造方法。
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