JP2004060861A - 車両の制御装置および制御方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】ロックアップクラッチ付きのフルードカップリングを搭載した車両において、十分な加速性能を実現する。
【解決手段】車両の制御方法は、車両が発進時であると(S110にてYES)、アクセル開度を検知するステップ(S120)と、アクセル開度が予め定められた開度しきい値以上であると(S130にてYES)、アクセル開度変化率を算出するステップ(S140)と、アクセル開度変化率が予め定められた開度変化率しきい値以上であると(S150にてYES)、フルードカップリングの速度比が高い領域においてもフルードカップリングの容量係数Cが低下しないように変更された容量係数特性を選択して、ロックアップクラッチをスリップ制御するステップ(S160)とを含む。
【選択図】 図6
【解決手段】車両の制御方法は、車両が発進時であると(S110にてYES)、アクセル開度を検知するステップ(S120)と、アクセル開度が予め定められた開度しきい値以上であると(S130にてYES)、アクセル開度変化率を算出するステップ(S140)と、アクセル開度変化率が予め定められた開度変化率しきい値以上であると(S150にてYES)、フルードカップリングの速度比が高い領域においてもフルードカップリングの容量係数Cが低下しないように変更された容量係数特性を選択して、ロックアップクラッチをスリップ制御するステップ(S160)とを含む。
【選択図】 図6
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、フルードカップリングやトルクコンバータを備えた車両の制御技術に関し、特に、発進時の加速性能を向上させる制御技術に関する。
【0002】
【従来の技術】
フルードカップリングやトルクコンバータは、流体継手として、自動車に搭載され、エンジンから出力されたトルクを必要に応じて変速機に伝達する。フルードカップリングは、トルクを増幅させないで伝達するのに対して、トルクコンバータは、内蔵されたステータによりトルクを増幅させて伝達する。このような流体継手の入力軸側の回転数と出力軸側の回転数の速度比は、出力軸の負荷状態に応じて変化する。この変化により車両の発進時のトルク変動やエンジンのトルク変動を好適に吸収する。
【0003】
このようなフルードカップリングを用いて、車両の発進時に十分な加速性能を得る技術がある。特開平1−220766号公報は、フルードカップリングを備えた車両用無段変速装置を開示する。この公報に開示された変速装置は、エンジンに連結されたフルードカップリングと、そのエンジンからフルードカップリングを介して伝達された回転を無段階に変速して駆動輪へ伝達する変速機とを含む。このフルードカップリングは、その容量係数が、速度比が0.5またはその手前の状態で最大値として、その後その速度比が1に向かうに従って零へ向かって急速に低下する変化特性を発現するように製作されている。
【0004】
この伝達装置によると、フルードカップリングの入力回転数(すなわちエンジンからの出力回転数)に対する出力回転数(すなわち無段変速機への入力回転数)で表わされる速度比が、零付近である発進当初では、エンジン回転数が低くかつフルードカップリングの伝達トルクが小さいため、エンジン出力トルクはエンジン回転数を上昇させるために消費される割合が多い。エンジン回転数が高くなるに従って、フルードカップリングの伝達トルクが増加し、フルードカップリングの出力軸回転数の変化量すなわち車両加速度が増加する。
【0005】
フルードカップリングの容量係数は、速度比が0.5またはその手前の状態で最大値として、その後その速度比が1に向かうに従って零へ向かって急速に低下するように設定されている。このため、発進当初は比較的小さな容量係数によりエンジン回転数の上昇が速やかに行なわれて、その後、速度比の変化に伴う容量係数の増加に関連して入力軸回転数の上昇が抑制されて車両加速度が一時的に増大する。
【0006】
すなわち、発進直後の低速度比側でフルードカップリングの容量係数が低いと、エンジンで発生したトルクは、連結される変速機に伝達される割合が少なく、エンジン自身の回転数を上昇させることに多く使われる。そのため、エンジンの回転数が上昇して、エンジン回転数が吹きあがった状態になる。この状態になると、エンジンで発生するトルクも大きい。その後、速度比が上昇するに従って容量係数も上昇し、エンジンにより発生した大きなトルクが変速機に伝達されて、大きな加速度を得ることができる。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述した公報に記載された装置では、フルードカップリングの容量係数の特性は、フルードカップリングの構造により一義的に決まってしまうものである。高速度比側の容量係数が低下する領域においては、再びエンジン回転数が上昇するため、加速が十分得られないまま、加速度が急激に低下し、必要な加速性能を発現する所定の時間を維持できない。
【0008】
本発明は、上述の課題を解決するためになされたものであって、フルードカップリングやトルクコンバータの流体継手を搭載した車両において、十分な加速性能を実現させる、車両の制御装置および制御方法を提供することである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
第1の発明に係る制御装置は、エンジンと、エンジンから入力された駆動力を変速機に伝達する流体継手とを搭載した車両を制御する。この制御装置は、車両に要求される加速の度合いを検知するための検知手段と、流体継手の入力回転数に対する出力回転数の比率に対応させて、流体継手の容量係数を記憶するための記憶手段と、検知手段により検知された加速の度合いに応じて、比率の高い領域における容量係数を変更するための変更手段とを含む。
【0010】
第1の発明によると、たとえば、車両の運転者により要求された加速の度合いが大きいと、変更手段は、高速度比側で低下する容量係数を低下させないように変更する。高速度比側においては、通常、速度比が増加すると容量係数が低下する。容量係数が低下すると、エンジンで発生したトルクは車軸に伝達されるよりもエンジンイナーシャに対して働いてエンジン回転数を上昇させることになる。逆に、この発明のように、高速度比側において容量係数を低下させないようにすると、エンジンで発生したトルクは、エンジンイナーシャに対して働くのではなく(エンジン回転数を上昇させることに使用されるのではなく)、車軸に伝達されるようになる。そうすると、車軸に伝達されたトルクは車両の加速度を発生させるので、加速度が発生している時間を長引かせることができる。その結果、フルードカップリングやトルクコンバータの流体継手を搭載した車両において、十分な加速性能を実現させる車両の制御装置を提供することができる。
【0011】
第2の発明に係る制御装置は、第1の発明の構成に加えて、記憶手段は、流体継手の入力回転数に対する出力回転数の比率に対応して変化する流体継手の容量係数について、比率の高い領域において容量係数が異なる複数の変化特性を記憶するための手段を含む。変更手段は、加速の度合いに応じて、複数の変化特性の中から1の変化特性を選択することにより、比率の高い領域における容量係数を変更するための手段を含む。
【0012】
第2の発明によると、予め記憶手段に流体継手の容量係数についての複数の変化特性を記憶させておく。このときに、高速度比側において容量係数を低下させない度合いが変わるような複数の変化特性を記憶させる。変更手段は、車両の運転者により要求された加速の度合いに応じて、複数の変化特性の中から一の変化特性を選択することにより、比率の高い領域における容量係数を変更する。これにより、加速の度合いを表わすアクセル開度やアクセル開度の変化率に基づいて、最も適合する容量係数に変更できる。
【0013】
第3の発明に係る制御装置は、第1または2の発明の構成に加えて、変更手段は、加速の度合いが大きいことに対応して、比率の高い領域における容量係数が大きくなるように変更するための手段を含む。
【0014】
第3の発明によると、変更手段は、車両の運転者により要求された加速の度合いが大きいほど、容量係数が大きくなるように変更する。これにより、要求された加速の度合いが大きいほど、加速の時間を長くすることができるので、運転者の要求に対応できる。
【0015】
第4の発明に係る制御装置は、第1〜3のいずれかの発明の構成に加えて、変更手段により容量係数を変更するか否かを判断するための判断手段をさらに含む。
【0016】
第4の発明によると、運転者により加速が要求されても、たとえば車速が比較的高い場合には、流体継手のロックアップを解放するのはエネルギーロスを招く場合があり得る。このとき、加速時間の点でも、燃費向上の点でも、不利な場合があるので、判断手段により、容量係数を変化させるか否かを判断させる。
【0017】
第5の発明に係る制御装置は、第4の発明の構成に加えて、車両の車速を検出するための検出手段をさらに含む。判断手段は、検出手段により検出された車速に基づいて、容量係数を変更するか否かを判断するための手段を含む。
【0018】
第5の発明によると、運転者により加速が要求されても、車両の速度が比較的高いと、流体継手のロックアップを解放するのはエネルギーロスを招く。そのため、車両の速度に基づいて、判断手段により、容量係数を変化させるか否かを判断させる。
【0019】
第6の発明に係る制御装置は、第5の発明の構成に加えて、判断手段は、車速が低いと変更手段により容量係数を変更するように、車速が高いと変更手段による容量係数の変更を中止するように判断するための手段を含む。
【0020】
第6の発明によると、運転者により加速が要求されても、車両の速度が比較的高いと、流体継手のロックアップを解放するのはエネルギーロスを招く。そのため、判断手段により、車両の速度が低いと容量係数を変化させ、車両の速度が高いと容量係数を変化させることを中止させる。
【0021】
第7の発明に係る制御装置は、第1〜6のいずれかの発明の構成に加えて、流体継手は、ロックアップクラッチ付きフルードカップリングである。変更手段は、ロックアップクラッチの係合力を制御することにより、容量係数を変更するための手段を含む。
【0022】
第7の発明によると、ロックアップクラッチの係合力を制御してロックアップクラッチをスリップ制御することにより、容量係数を変更させて、所望の加速性能を得ることができる。
【0023】
第8の発明に係る制御方法は、エンジンと、エンジンからの駆動力を変速機に伝達する流体継手とを搭載した車両を制御する。この制御方法は、車両に要求される加速の度合いを検知する検知ステップと、流体継手の入力回転数に対する出力回転数の比率に対応させて、流体継手の容量係数を記憶する記憶ステップと、検知ステップにて検知された加速の度合いに応じて、比率の高い領域における容量係数を変更する変更ステップとを含む。
【0024】
第8の発明によると、たとえば、車両の運転者により要求された加速の度合いが大きいと、変更ステップにて、高速度比側で低下する容量係数を低下させないように変更される。高速度比側においては、通常、速度比が増加すると容量係数が低下する。容量係数が低下すると、エンジンで発生したトルクは車軸に伝達されるよりもエンジンイナーシャに対して働いてエンジン回転数を上昇させることになる。逆に、この発明のように、高速度比側において容量係数を低下させないようにすると、エンジンで発生したトルクは、エンジンイナーシャに対して働くのではなく(エンジン回転数を上昇させることに使用されるのではなく)、車軸に伝達されるようになる。そうすると、車軸に伝達されたトルクは車両の加速度を発生させるので、加速度が発生している時間を長引かせることができる。その結果、フルードカップリングやトルクコンバータの流体継手を搭載した車両において、十分な加速性能を実現させる車両の制御方法を提供することができる。
【0025】
第9の発明に係る制御方法は、第8の発明の構成に加えて、記憶ステップは、流体継手の入力回転数に対する出力回転数の比率に対応して変化する流体継手の容量係数について、比率の高い領域において容量係数が異なる複数の変化特性を記憶するステップを含む。変更ステップは、加速の度合いに応じて、複数の変化特性の中から一の変化特性を選択することにより、比率の高い領域における容量係数を変更するステップを含む。
【0026】
第9の発明によると、予め記憶ステップにて流体継手の容量係数についての複数の変化特性を記憶させておく。このときに、高速度比側において容量係数を低下させない度合いが変わるような複数の変化特性を記憶させる。変更ステップにて、車両の運転者により要求された加速の度合いに応じて、複数の変化特性の中から1の変化特性を選択することにより、比率の高い領域における容量係数を変更する。これにより、加速の度合いを表わすアクセル開度やアクセル開度の変化率に基づいて、最も適合する容量係数に変更できる。
【0027】
第10の発明に係る制御方法は、第8または9の発明の構成に加えて、変更ステップは、加速の度合いが大きいことに対応して、比率の高い領域における容量係数が大きくなるように変更するステップを含む。
【0028】
第10の発明によると、変更ステップにて、車両の運転者により要求された加速の度合いが大きいほど、容量係数が大きくなるように変更する。これにより、要求された加速の度合いが大きいほど、加速の時間を長くすることができるので、運転者の要求に対応できる。
【0029】
第11の発明に係る制御方法は、第8〜10のいすれかの発明の構成に加えて、変更ステップにて容量係数を変更するか否かを判断する判断ステップをさらに含む。
【0030】
第11の発明によると、運転者により加速が要求されても、たとえば車速が比較的高い場合には、流体継手のロックアップを解放するのはエネルギーロスを招く場合があり得る。このとき、加速時間の点でも、燃費向上の点でも、不利な場合があるので、判断手段により、容量係数を変化させるか否かを判断させる。
【0031】
第12の発明に係る制御方法は、第11の発明の構成に加えて、車両の車速を検出する検出ステップをさらに含む。判断ステップは、検出ステップにて検出された車速に基づいて、容量係数を変更するか否かを判断するステップを含む。
【0032】
第12の発明によると、運転者により加速が要求されても、車両の速度が比較的高いと、流体継手のロックアップを解放するのはエネルギーロスを招く。そのため、車両の速度に基づいて、判断ステップにて、容量係数を変化させるか否かを判断させる。
【0033】
第13の発明に係る制御方法は、第12の発明の構成に加えて、判断ステップは、車速が低いと変更ステップにて容量係数を変更するように、車速が高いと変更ステップにおける容量係数の変更を中止するように判断するステップを含む。
【0034】
第13の発明によると、運転者により加速が要求されても、車両の速度が比較的高いと、流体継手のロックアップを解放するのはエネルギーロスを招く。そのため、判断ステップにて、車両の速度が低いと容量係数を変化させ、車両の速度が高いと容量係数を変化させることを中止させる。
【0035】
第14の発明に係る制御方法は、第8〜13のいずれかの発明の構成に加えて、流体継手は、ロックアップクラッチ付きフルードカップリングである。変更ステップは、ロックアップクラッチの係合力を制御することにより、容量係数を変更するステップを含む。
【0036】
第14の発明によると、ロックアップクラッチの係合力を制御してロックアップクラッチをスリップ制御することにより、容量係数を変更させて、所望の加速性能を得ることができる。
【0037】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明する。以下の説明では、同一の部品には同一の符号を付してある。それらの名称および機能も同じである。したがってそれらについての詳細な説明は繰返さない。なお、以下の説明においては、流体継手をロックアップクラッチ付きフルードカップリングとして、変速機を自動変速機として説明する。しかしながら、本発明はこれに限定されない。たとえば、流体継手はトルク増幅機能を有するトルクコンバータであってもよいし、変速機は無段変速機(CVT:Continuously Variable Transmission)であってもよい。
【0038】
図1を参照して、本実施の形態に係る制御装置を含む車両のパワートレインについて説明する。本実施の形態に係る制御装置は、図1に示すECT_ECU((Electronic Controlled Automatic Transmission_Electronic Control Unit)400により実現される。
【0039】
図1に示すように、この車両は、エンジン100と、フルードカップリング200と、自動変速機300とから構成される。エンジン100の出力軸は、模式的に表現されたエンジンイナーシャ110を介してフルードカップリング200の入力軸に接続される。エンジン100とフルードカップリング200とは回転軸150により連結されている。したがって、エンジン100の出力軸回転数N(E)とフルードカップリング200の入力軸回転数N(P)とは同じである。また、エンジン100の出力トルクをT(E)と、フルードカップリング200への入力トルクをT(P)として表わす。
【0040】
フルードカップリング200は、ロックアップクラッチ210を含み、ポンプ羽根車220とタービン羽根車230とから構成される。フルードカップリング200と自動変速機300とは、回転軸250により接続される。フルードカップリング200の出力軸回転数をN(T)と、フルードカップリング200の出力トルクをT(T)として表わす。
【0041】
これらのパワートレインを制御するECT_ECU400には、ポンプ回転数N(P)、タービン回転数N(T)、アクセル開度、車速、車両加速度、スロットル開度、AT信号およびシフトポジション信号が入力される。また、ECT_ECU400から、フルードカップリング200のロックアップクラッチ210に対してロックアップクラッチ係合圧信号が出力される。また、ECT_ECU400から、自動変速機300に対してAT制御信号が出力される。
【0042】
図1において、エンジン100の動力は、ロックアップクラッチ付きフルードカップリング200を備えた自動変速機300を介して後段の駆動輪に伝達される。フルードカップリング200は、エンジン100のクランク軸(フルードカップリング200の入力軸)150に固定されたポンプ羽根車220と、自動変速機300の入力軸(フルードカップリング200の出力軸)250に連結されたタービン羽根車230と、それらポンプ羽根車220および入力軸250を直結するロックアップクラッチ210を備えている。
【0043】
車両の発進時においては、ロックアップクラッチ210のロックアップを解放して、ロックアップクラッチ210がスリップ制御されることにより、エンジン100から自動変速機300へ伝達されるトルクを滑らかに増大させる。車両の停止時においては、ロックアップクラッチ210のクラッチを切って、自動変速機300の回転および停止のいずれにもかかわらずエンジン100の回転を許容する。通常走行時においては、ロックアップクラッチ210のロックアップ機能によりポンプ羽根車220およびタービン羽根車230を連結して回転損失を防止する。
【0044】
図2に自動変速機300のスケルトン図を、図3に自動変速機300の作動表を示す。図2に示すスケルトン図および図3に示す作動表によると、摩擦要素であるクラッチ要素(図中のC(0)〜C(2))や、ブレーキ要素(B(0)〜B(4))、ワンウェイクラッチ要素(F(0)〜F(2))が、どのギア段の場合に係合および解放されるかを示している。車両の発進時に使用される1速時には、クラッチ要素(C(0)、C(1))、ブレーキ要素(B(4))、ワンウェイクラッチ要素(F(0)、F(2))が係合する。
【0045】
なお、本実施の形態に係る制御装置であるECT_ECU400は、車両の発進時における車両に所望の加速時間を与えるために、ロックアップクラッチ210のスリップ制御によりロックアップクラッチの容量係数Cを変化させる。このため、発進時においてロックアップクラッチ210は解放状態であることが前提である。このことは、車両の発進時においてロックアップクラッチ210をロックアップしているとエンストするので、ロックアップクラッチ210は解放状態であることと整合する。
【0046】
図4を参照して、本実施の形態に係る制御装置であるECT_ECU400の内部メモリに記憶される速度比eに対するフルードカップリング200の容量係数Cの特性について説明する。本実施の形態に係る制御装置を実現するECT_ECU400においては、ロックアップクラッチ210付きのフルードカップリング220の容量係数Cを可変とするために、ロックアップクラッチ210のロックアップクラッチ係合圧を制御してロックアップクラッチ210をスリップ制御させる。これにより、ロックアップクラッチ210の係合圧を可変とし、フルードカップリング200の容量係数Cを可変とする。
【0047】
図4に示すように、速度比eに対して、容量係数Cは、その高速度比領域において、通常の特性とは異なる、特性(ア)および特性(イ)の2つの特性をさらに記憶している。なお、本実施の形態においては、通常の特性とは異なる特性を2種類さらに持つものとして説明するが、これに限定されるものではない。
【0048】
図4に示すように、通常の特性に対して特性(ア)および特性(イ)ともに、速度比eが0.5を超えても、容量係数Cが初期値をできるだけ長く持続する。
【0049】
ここで、容量係数Cは、フルードカップリング210の伝達トルクをT(P)、ポンプ羽根車220の回転数をN(P)とすると、C=T(P)/N(P)2で表わされる。また、速度比eは、フルードカップリング210の出力軸回転数をN(T)、フルードカップリング210の入力軸回転数N(P)とすると、e=N(T)/N(P)で表わされる。
【0050】
エンジン100の出力トルクT(E)とフルードカップリング210の入力トルクT(P)との関係について説明する。エンジン100のイナーシャをI、角速度をω、角加速度をdω/dtとすると、{T(E)−T(B)}=(I・dω/dt)の関係が成立する。角速度ωは{(2π/60)・N(E)}であって、角速度ωとエンジン回転数N(E)(=N(P))とは1対1の関係にあるから、T(P)と{C・ω2}とは比例関係にあることが導かれる。このことから、容量係数Cの大きさは、フルードカップリング210の入力トルクT(P)の大きさと対応すること、換言すれば、容量係数Cが大きいと同じ入力トルクT(P)に対して入力回転数N(P)は小さくなることがわかる。
【0051】
上述のように、{T(E)−T(P)}であらわされるトルクは、エンジンイナーシャ110に対して働き、エンジン100の回転数を上昇させるために使われたトルクである。すなわち、後段の駆動輪に伝達されなかったトルクである。図3に示す「1st」のギア比が5.0から6.0のような高ギア比において、図4に示すように速度比eが高い領域において容量係数Cが高い値である時間を延ばすことにより、エンジン100で発生したトルクを、エンジンイナーシャ110に対して働かせてエンジン回転数N(E)を上昇させるために使われるのではなく、後段の駆動輪に伝達するために使われることになる。その結果、車両の発進直後において、加速度が車両に発生する時間を延ばすことができる。
【0052】
すなわち、図4に示すように、速度比eが高い領域においては、容量係数Cが大きいほど、通常は、容量係数Cを低下させる。容量係数Cが低下すると、エンジン100で発生したトルクは後段の駆動輪に伝達されるよりも、エンジンイナーシャ110に対して働いてエンジン100の回転数N(E)を上昇させることになる。高速度比側においては、容量係数を図4に示すように減少させずに高い値を維持すると、エンジン100で発生したトルクは、エンジンイナーシャ110に対して働いてエンジン100の回転数N(E)を上昇させることに使用されないので、後段の駆動輪に伝達されるようになる。そうすると、加速度が発生している時間を長引かせることができる。
【0053】
図5を参照して、加速要求度合いとロックアップクラッチスリップ量の関係について説明する。本実施の形態に係るECT_ECU400は、ロックアップクラッチ210の係合圧を制御して、ロックアップクラッチをスリップ制御させることにより、フルードカップリング200の容量係数Cを可変とするものである。図5に示すように、加速要求度合いが高いほど、ロックアップクラッチ210のスリップ量を低くして(スリップさせないで)、後段の駆動輪にエンジン100で発生したトルクをできるだけ伝達するようにスリップ制御される。逆に、加速要求度合いが低い場合には、ロックアップクラッチ210のスリップ量が高く(スリップさせて)、エンジン100で発生したトルクをエンジンイナーシャ110に対して働かせて、エンジン100自体の回転数N(E)が上昇するようにスリップ制御される。
【0054】
図6を参照して、本実施の形態に係る制御装置であるECT_ECU400で実行されるプログラムの制御構造について説明する。
【0055】
ステップ(以下、ステップをSと略す。)100にて、ECT_ECU400は、車速を検知する。この検知は、ECT_ECU400に入力される車速検知信号に基づいて行なわれる。S110にて、ECT_ECU400は、車速が発進しきい値以下であるか否かを判断する。車速が発進しきい値以下である場合には(S110にてYES)、車両の発進時であると判断されて、処理はS120へ移される。もしそうでないと(S110にてNO)、処理はS180へ移される。
【0056】
S120にて、ECT_ECU400は、アクセル開度を検知する。この検知は、ECT_ECU400に入力されるアクセル開度信号に基づいて行われる。S130にて、ECT_ECU400は、アクセル開度が開度しきい値以上であるか否かを判断する。アクセル開度が開度しきい値以上であると(S130にてYES)、大きな加速度合いが要求されていると判断されて、処理はS140へ移される。もしそうでないと(S130にてNO)、処理はS170へ移される。
【0057】
S140にて、ECT_ECU400は、アクセス開度変化率を算出する。この算出は、S120にて検知したアクセル開度と、ECT_ECUの内部クロックが持つクロック信号とに基づいて、アクセル開度の時間変化率を算出することにより行なわれる。S150にて、ECT_ECU400は、アクセル開度変化率が開度変化率しきい値以上であるか否かを判断する。アクセル開度変化率が開度変化率しきい値よりも大きい場合には(S150にてYES)、急に大きくなるような加速度合いが要求されていると判断されて、処理はS160へ移される。もしそうでないと(S150にてNO)、処理はS170へ移される。
【0058】
S160にて、ECT_ECU400は、容量係数特性(イ)(図4)を選択して、ロックアップクラッチ210をスリップ制御させる。S170にて、ECT_ECU400は、容量係数特性(ア)(図4)を選択して、ロックアップクラッチ210をスリップ制御させる。
【0059】
S180にて、ECT_ECU400は、ロックアップクラッチ210をロックアップがオンした状態に制御する。
【0060】
以上のような構造およびフローチャートに基づく、本実施の形態に係るパワートレインの動作について説明する。
【0061】
車両が発進するとECT_ECU400は車速を検知する(S100)。検知した車速が発進しきい値よりも小さいと(S110にてYES)、発進時であると判断されて、ロックアップクラッチ210をスリップ制御させることによりフルードカップリング210の容量係数Cを可変として、加速時間を長引かせる制御が実行される。
【0062】
アクセル開度が検知され(S120)、アクセル開度が予め定められた開度しきい値よりも大きく、アクセル開度の変化率が予め定められた開度変化率しきい値よりも大きいと(S130にてYES、S150にてYES)、図4に示す容量係数特性(イ)が選択されて、ECT_ECU400は、ロックアップクラッチ210をスリップ制御させる。一方、発進時ではあるがアクセル開度が予め定められた開度しきい値未満であったり(S130にてNO)、アクセル開度が予め定められた開度しきい値以上であるがアクセル開度変化率が予め定められた開度変化率しきい値未満であると(S130にてYES、S150にてNO)、図4に示す容量係数特性(ア)が選択されて、ECT_ECU400はロッククラッチ210をスリップ制御させる(S170)。
【0063】
図7および図8を参照して、時間に対する、加速度Gの変化と、エンジン回転数N(E)の変化とを説明する。図8に示すように、発進直後からの時間tの経過に従って、エンジン回転数N(E)は最初なだらかに、次に急激に増加する。容量係数Cが通常の特性であれば(図4)、図8に示すようにエンジン回転数N(E)が急激に上昇する。これは、図4に示すように、容量係数Cが通常の特性である場合には、速度比eが0.5を超えると容量係数Cが低下するようにフルードカップリング200のロックアップクラッチ210がスリップ制御される。このため、容量係数Cの低下に伴って、エンジン100で発生したトルクが、エンジンイナーシャ110に働いて、エンジン回転数N(E)を上昇させる。すなわち、エンジン100の回転数が吹き上がることになる。
【0064】
図7に示すように、容量係数Cが通常の特性である場合には、エンジンが吹き上がる(エンジン100で発生したトルクがエンジンイナーシャ110に対して働いてエンジンが吹き上がる)ので、エンジン100で発生したトルクは連結される駆動輪に伝達されず、加速度Gのピークが持続しない。
【0065】
一方、本発明の実施の形態に係るECT_ECU400は、図4に示されるように特性(ア)または特性(イ)のように速度比eが高い領域において、容量係数Cが低下するタイミングを遅らせているため、図8に示すように特性(ア)および特性(イ)の場合にはエンジン100が吹き上がるタイミングが遅れる。これに伴い、図7に示すように、エンジン100で発生したトルクは、エンジンイナーシャ110に働いてエンジン100の回転数を吹き上がらせるのではなく、エンジン100で発生したトルクは連結される駆動輪に伝達されて、加速度Gのピークを持続させることになる。
【0066】
以上のようにして、本実施の形態に係るパワートレインによると、車両の運転者に要求された加速の度合いが大きいと、高速度比側で低下するフルードカップリングの容量係数Cが低下しないように制御される。高速度比側においては、通常、速度比が増加すると容量係数が低下する。容量係数が低下するとエンジンで発生したトルクは車軸に伝達されるよりも、エンジンイナーシャに対して働いてエンジン回転数を上昇させることになる。逆に、本実施の形態に係るパワートレインのように高速度比側において容量係数Cを低下させないようにすると、エンジンで発生したトルクは、エンジンイナーシャに対して働くのではなく(エンジン回転数を上昇させてエンジンを吹き上がらせるのではなく)、車軸に伝達されるようになる。そうすると、車軸に伝達されたトルクは車両の加速度を発生させるので、加速度が発生している時間を長引かせることができる。その結果、ロックアップクラッチ付きフルードカップリングを搭載した車両において、十分な加速性能を実現される車両のパワートレインを提供することができる。
【0067】
なお、上述した実施の形態においては、ロックアップクラッチ付きフルードカップリングにおいて、ロックアップクラッチの係合圧を制御することによりフルードカップリングの容量係数を可変に制御するものとして説明したが、容量係数を可変にする方法はこれに限定されるものではない。
【0068】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る制御装置が搭載された車両のパワートレインの構成を示す図である。
【図2】図1に示す自動変速機のスケルトン図である。
【図3】図1に示す自動変速機の作動係合状態を表わす図である。
【図4】速度比に対するフルードカップリングの容量係数の関係を示す図である。
【図5】加速要求度合いに対するフルードカップリングのロックアップクラッチのスリップ量の関係を示す図である。
【図6】ECT_ECUで実行される処理の制御構造を示すフローチャートである。
【図7】時間に対する加速度の変化を示す図である。
【図8】時間に対するエンジン回転数の変化を示す図である。
【符号の説明】
100 エンジン、110 エンジンイナーシャ、200 フルードカップリング、210 ロックアップクラッチ、220 ポンプ羽根車、230 タービン羽根車、300 自動変速機、400 ECT_ECU。
【発明の属する技術分野】
本発明は、フルードカップリングやトルクコンバータを備えた車両の制御技術に関し、特に、発進時の加速性能を向上させる制御技術に関する。
【0002】
【従来の技術】
フルードカップリングやトルクコンバータは、流体継手として、自動車に搭載され、エンジンから出力されたトルクを必要に応じて変速機に伝達する。フルードカップリングは、トルクを増幅させないで伝達するのに対して、トルクコンバータは、内蔵されたステータによりトルクを増幅させて伝達する。このような流体継手の入力軸側の回転数と出力軸側の回転数の速度比は、出力軸の負荷状態に応じて変化する。この変化により車両の発進時のトルク変動やエンジンのトルク変動を好適に吸収する。
【0003】
このようなフルードカップリングを用いて、車両の発進時に十分な加速性能を得る技術がある。特開平1−220766号公報は、フルードカップリングを備えた車両用無段変速装置を開示する。この公報に開示された変速装置は、エンジンに連結されたフルードカップリングと、そのエンジンからフルードカップリングを介して伝達された回転を無段階に変速して駆動輪へ伝達する変速機とを含む。このフルードカップリングは、その容量係数が、速度比が0.5またはその手前の状態で最大値として、その後その速度比が1に向かうに従って零へ向かって急速に低下する変化特性を発現するように製作されている。
【0004】
この伝達装置によると、フルードカップリングの入力回転数(すなわちエンジンからの出力回転数)に対する出力回転数(すなわち無段変速機への入力回転数)で表わされる速度比が、零付近である発進当初では、エンジン回転数が低くかつフルードカップリングの伝達トルクが小さいため、エンジン出力トルクはエンジン回転数を上昇させるために消費される割合が多い。エンジン回転数が高くなるに従って、フルードカップリングの伝達トルクが増加し、フルードカップリングの出力軸回転数の変化量すなわち車両加速度が増加する。
【0005】
フルードカップリングの容量係数は、速度比が0.5またはその手前の状態で最大値として、その後その速度比が1に向かうに従って零へ向かって急速に低下するように設定されている。このため、発進当初は比較的小さな容量係数によりエンジン回転数の上昇が速やかに行なわれて、その後、速度比の変化に伴う容量係数の増加に関連して入力軸回転数の上昇が抑制されて車両加速度が一時的に増大する。
【0006】
すなわち、発進直後の低速度比側でフルードカップリングの容量係数が低いと、エンジンで発生したトルクは、連結される変速機に伝達される割合が少なく、エンジン自身の回転数を上昇させることに多く使われる。そのため、エンジンの回転数が上昇して、エンジン回転数が吹きあがった状態になる。この状態になると、エンジンで発生するトルクも大きい。その後、速度比が上昇するに従って容量係数も上昇し、エンジンにより発生した大きなトルクが変速機に伝達されて、大きな加速度を得ることができる。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述した公報に記載された装置では、フルードカップリングの容量係数の特性は、フルードカップリングの構造により一義的に決まってしまうものである。高速度比側の容量係数が低下する領域においては、再びエンジン回転数が上昇するため、加速が十分得られないまま、加速度が急激に低下し、必要な加速性能を発現する所定の時間を維持できない。
【0008】
本発明は、上述の課題を解決するためになされたものであって、フルードカップリングやトルクコンバータの流体継手を搭載した車両において、十分な加速性能を実現させる、車両の制御装置および制御方法を提供することである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
第1の発明に係る制御装置は、エンジンと、エンジンから入力された駆動力を変速機に伝達する流体継手とを搭載した車両を制御する。この制御装置は、車両に要求される加速の度合いを検知するための検知手段と、流体継手の入力回転数に対する出力回転数の比率に対応させて、流体継手の容量係数を記憶するための記憶手段と、検知手段により検知された加速の度合いに応じて、比率の高い領域における容量係数を変更するための変更手段とを含む。
【0010】
第1の発明によると、たとえば、車両の運転者により要求された加速の度合いが大きいと、変更手段は、高速度比側で低下する容量係数を低下させないように変更する。高速度比側においては、通常、速度比が増加すると容量係数が低下する。容量係数が低下すると、エンジンで発生したトルクは車軸に伝達されるよりもエンジンイナーシャに対して働いてエンジン回転数を上昇させることになる。逆に、この発明のように、高速度比側において容量係数を低下させないようにすると、エンジンで発生したトルクは、エンジンイナーシャに対して働くのではなく(エンジン回転数を上昇させることに使用されるのではなく)、車軸に伝達されるようになる。そうすると、車軸に伝達されたトルクは車両の加速度を発生させるので、加速度が発生している時間を長引かせることができる。その結果、フルードカップリングやトルクコンバータの流体継手を搭載した車両において、十分な加速性能を実現させる車両の制御装置を提供することができる。
【0011】
第2の発明に係る制御装置は、第1の発明の構成に加えて、記憶手段は、流体継手の入力回転数に対する出力回転数の比率に対応して変化する流体継手の容量係数について、比率の高い領域において容量係数が異なる複数の変化特性を記憶するための手段を含む。変更手段は、加速の度合いに応じて、複数の変化特性の中から1の変化特性を選択することにより、比率の高い領域における容量係数を変更するための手段を含む。
【0012】
第2の発明によると、予め記憶手段に流体継手の容量係数についての複数の変化特性を記憶させておく。このときに、高速度比側において容量係数を低下させない度合いが変わるような複数の変化特性を記憶させる。変更手段は、車両の運転者により要求された加速の度合いに応じて、複数の変化特性の中から一の変化特性を選択することにより、比率の高い領域における容量係数を変更する。これにより、加速の度合いを表わすアクセル開度やアクセル開度の変化率に基づいて、最も適合する容量係数に変更できる。
【0013】
第3の発明に係る制御装置は、第1または2の発明の構成に加えて、変更手段は、加速の度合いが大きいことに対応して、比率の高い領域における容量係数が大きくなるように変更するための手段を含む。
【0014】
第3の発明によると、変更手段は、車両の運転者により要求された加速の度合いが大きいほど、容量係数が大きくなるように変更する。これにより、要求された加速の度合いが大きいほど、加速の時間を長くすることができるので、運転者の要求に対応できる。
【0015】
第4の発明に係る制御装置は、第1〜3のいずれかの発明の構成に加えて、変更手段により容量係数を変更するか否かを判断するための判断手段をさらに含む。
【0016】
第4の発明によると、運転者により加速が要求されても、たとえば車速が比較的高い場合には、流体継手のロックアップを解放するのはエネルギーロスを招く場合があり得る。このとき、加速時間の点でも、燃費向上の点でも、不利な場合があるので、判断手段により、容量係数を変化させるか否かを判断させる。
【0017】
第5の発明に係る制御装置は、第4の発明の構成に加えて、車両の車速を検出するための検出手段をさらに含む。判断手段は、検出手段により検出された車速に基づいて、容量係数を変更するか否かを判断するための手段を含む。
【0018】
第5の発明によると、運転者により加速が要求されても、車両の速度が比較的高いと、流体継手のロックアップを解放するのはエネルギーロスを招く。そのため、車両の速度に基づいて、判断手段により、容量係数を変化させるか否かを判断させる。
【0019】
第6の発明に係る制御装置は、第5の発明の構成に加えて、判断手段は、車速が低いと変更手段により容量係数を変更するように、車速が高いと変更手段による容量係数の変更を中止するように判断するための手段を含む。
【0020】
第6の発明によると、運転者により加速が要求されても、車両の速度が比較的高いと、流体継手のロックアップを解放するのはエネルギーロスを招く。そのため、判断手段により、車両の速度が低いと容量係数を変化させ、車両の速度が高いと容量係数を変化させることを中止させる。
【0021】
第7の発明に係る制御装置は、第1〜6のいずれかの発明の構成に加えて、流体継手は、ロックアップクラッチ付きフルードカップリングである。変更手段は、ロックアップクラッチの係合力を制御することにより、容量係数を変更するための手段を含む。
【0022】
第7の発明によると、ロックアップクラッチの係合力を制御してロックアップクラッチをスリップ制御することにより、容量係数を変更させて、所望の加速性能を得ることができる。
【0023】
第8の発明に係る制御方法は、エンジンと、エンジンからの駆動力を変速機に伝達する流体継手とを搭載した車両を制御する。この制御方法は、車両に要求される加速の度合いを検知する検知ステップと、流体継手の入力回転数に対する出力回転数の比率に対応させて、流体継手の容量係数を記憶する記憶ステップと、検知ステップにて検知された加速の度合いに応じて、比率の高い領域における容量係数を変更する変更ステップとを含む。
【0024】
第8の発明によると、たとえば、車両の運転者により要求された加速の度合いが大きいと、変更ステップにて、高速度比側で低下する容量係数を低下させないように変更される。高速度比側においては、通常、速度比が増加すると容量係数が低下する。容量係数が低下すると、エンジンで発生したトルクは車軸に伝達されるよりもエンジンイナーシャに対して働いてエンジン回転数を上昇させることになる。逆に、この発明のように、高速度比側において容量係数を低下させないようにすると、エンジンで発生したトルクは、エンジンイナーシャに対して働くのではなく(エンジン回転数を上昇させることに使用されるのではなく)、車軸に伝達されるようになる。そうすると、車軸に伝達されたトルクは車両の加速度を発生させるので、加速度が発生している時間を長引かせることができる。その結果、フルードカップリングやトルクコンバータの流体継手を搭載した車両において、十分な加速性能を実現させる車両の制御方法を提供することができる。
【0025】
第9の発明に係る制御方法は、第8の発明の構成に加えて、記憶ステップは、流体継手の入力回転数に対する出力回転数の比率に対応して変化する流体継手の容量係数について、比率の高い領域において容量係数が異なる複数の変化特性を記憶するステップを含む。変更ステップは、加速の度合いに応じて、複数の変化特性の中から一の変化特性を選択することにより、比率の高い領域における容量係数を変更するステップを含む。
【0026】
第9の発明によると、予め記憶ステップにて流体継手の容量係数についての複数の変化特性を記憶させておく。このときに、高速度比側において容量係数を低下させない度合いが変わるような複数の変化特性を記憶させる。変更ステップにて、車両の運転者により要求された加速の度合いに応じて、複数の変化特性の中から1の変化特性を選択することにより、比率の高い領域における容量係数を変更する。これにより、加速の度合いを表わすアクセル開度やアクセル開度の変化率に基づいて、最も適合する容量係数に変更できる。
【0027】
第10の発明に係る制御方法は、第8または9の発明の構成に加えて、変更ステップは、加速の度合いが大きいことに対応して、比率の高い領域における容量係数が大きくなるように変更するステップを含む。
【0028】
第10の発明によると、変更ステップにて、車両の運転者により要求された加速の度合いが大きいほど、容量係数が大きくなるように変更する。これにより、要求された加速の度合いが大きいほど、加速の時間を長くすることができるので、運転者の要求に対応できる。
【0029】
第11の発明に係る制御方法は、第8〜10のいすれかの発明の構成に加えて、変更ステップにて容量係数を変更するか否かを判断する判断ステップをさらに含む。
【0030】
第11の発明によると、運転者により加速が要求されても、たとえば車速が比較的高い場合には、流体継手のロックアップを解放するのはエネルギーロスを招く場合があり得る。このとき、加速時間の点でも、燃費向上の点でも、不利な場合があるので、判断手段により、容量係数を変化させるか否かを判断させる。
【0031】
第12の発明に係る制御方法は、第11の発明の構成に加えて、車両の車速を検出する検出ステップをさらに含む。判断ステップは、検出ステップにて検出された車速に基づいて、容量係数を変更するか否かを判断するステップを含む。
【0032】
第12の発明によると、運転者により加速が要求されても、車両の速度が比較的高いと、流体継手のロックアップを解放するのはエネルギーロスを招く。そのため、車両の速度に基づいて、判断ステップにて、容量係数を変化させるか否かを判断させる。
【0033】
第13の発明に係る制御方法は、第12の発明の構成に加えて、判断ステップは、車速が低いと変更ステップにて容量係数を変更するように、車速が高いと変更ステップにおける容量係数の変更を中止するように判断するステップを含む。
【0034】
第13の発明によると、運転者により加速が要求されても、車両の速度が比較的高いと、流体継手のロックアップを解放するのはエネルギーロスを招く。そのため、判断ステップにて、車両の速度が低いと容量係数を変化させ、車両の速度が高いと容量係数を変化させることを中止させる。
【0035】
第14の発明に係る制御方法は、第8〜13のいずれかの発明の構成に加えて、流体継手は、ロックアップクラッチ付きフルードカップリングである。変更ステップは、ロックアップクラッチの係合力を制御することにより、容量係数を変更するステップを含む。
【0036】
第14の発明によると、ロックアップクラッチの係合力を制御してロックアップクラッチをスリップ制御することにより、容量係数を変更させて、所望の加速性能を得ることができる。
【0037】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明する。以下の説明では、同一の部品には同一の符号を付してある。それらの名称および機能も同じである。したがってそれらについての詳細な説明は繰返さない。なお、以下の説明においては、流体継手をロックアップクラッチ付きフルードカップリングとして、変速機を自動変速機として説明する。しかしながら、本発明はこれに限定されない。たとえば、流体継手はトルク増幅機能を有するトルクコンバータであってもよいし、変速機は無段変速機(CVT:Continuously Variable Transmission)であってもよい。
【0038】
図1を参照して、本実施の形態に係る制御装置を含む車両のパワートレインについて説明する。本実施の形態に係る制御装置は、図1に示すECT_ECU((Electronic Controlled Automatic Transmission_Electronic Control Unit)400により実現される。
【0039】
図1に示すように、この車両は、エンジン100と、フルードカップリング200と、自動変速機300とから構成される。エンジン100の出力軸は、模式的に表現されたエンジンイナーシャ110を介してフルードカップリング200の入力軸に接続される。エンジン100とフルードカップリング200とは回転軸150により連結されている。したがって、エンジン100の出力軸回転数N(E)とフルードカップリング200の入力軸回転数N(P)とは同じである。また、エンジン100の出力トルクをT(E)と、フルードカップリング200への入力トルクをT(P)として表わす。
【0040】
フルードカップリング200は、ロックアップクラッチ210を含み、ポンプ羽根車220とタービン羽根車230とから構成される。フルードカップリング200と自動変速機300とは、回転軸250により接続される。フルードカップリング200の出力軸回転数をN(T)と、フルードカップリング200の出力トルクをT(T)として表わす。
【0041】
これらのパワートレインを制御するECT_ECU400には、ポンプ回転数N(P)、タービン回転数N(T)、アクセル開度、車速、車両加速度、スロットル開度、AT信号およびシフトポジション信号が入力される。また、ECT_ECU400から、フルードカップリング200のロックアップクラッチ210に対してロックアップクラッチ係合圧信号が出力される。また、ECT_ECU400から、自動変速機300に対してAT制御信号が出力される。
【0042】
図1において、エンジン100の動力は、ロックアップクラッチ付きフルードカップリング200を備えた自動変速機300を介して後段の駆動輪に伝達される。フルードカップリング200は、エンジン100のクランク軸(フルードカップリング200の入力軸)150に固定されたポンプ羽根車220と、自動変速機300の入力軸(フルードカップリング200の出力軸)250に連結されたタービン羽根車230と、それらポンプ羽根車220および入力軸250を直結するロックアップクラッチ210を備えている。
【0043】
車両の発進時においては、ロックアップクラッチ210のロックアップを解放して、ロックアップクラッチ210がスリップ制御されることにより、エンジン100から自動変速機300へ伝達されるトルクを滑らかに増大させる。車両の停止時においては、ロックアップクラッチ210のクラッチを切って、自動変速機300の回転および停止のいずれにもかかわらずエンジン100の回転を許容する。通常走行時においては、ロックアップクラッチ210のロックアップ機能によりポンプ羽根車220およびタービン羽根車230を連結して回転損失を防止する。
【0044】
図2に自動変速機300のスケルトン図を、図3に自動変速機300の作動表を示す。図2に示すスケルトン図および図3に示す作動表によると、摩擦要素であるクラッチ要素(図中のC(0)〜C(2))や、ブレーキ要素(B(0)〜B(4))、ワンウェイクラッチ要素(F(0)〜F(2))が、どのギア段の場合に係合および解放されるかを示している。車両の発進時に使用される1速時には、クラッチ要素(C(0)、C(1))、ブレーキ要素(B(4))、ワンウェイクラッチ要素(F(0)、F(2))が係合する。
【0045】
なお、本実施の形態に係る制御装置であるECT_ECU400は、車両の発進時における車両に所望の加速時間を与えるために、ロックアップクラッチ210のスリップ制御によりロックアップクラッチの容量係数Cを変化させる。このため、発進時においてロックアップクラッチ210は解放状態であることが前提である。このことは、車両の発進時においてロックアップクラッチ210をロックアップしているとエンストするので、ロックアップクラッチ210は解放状態であることと整合する。
【0046】
図4を参照して、本実施の形態に係る制御装置であるECT_ECU400の内部メモリに記憶される速度比eに対するフルードカップリング200の容量係数Cの特性について説明する。本実施の形態に係る制御装置を実現するECT_ECU400においては、ロックアップクラッチ210付きのフルードカップリング220の容量係数Cを可変とするために、ロックアップクラッチ210のロックアップクラッチ係合圧を制御してロックアップクラッチ210をスリップ制御させる。これにより、ロックアップクラッチ210の係合圧を可変とし、フルードカップリング200の容量係数Cを可変とする。
【0047】
図4に示すように、速度比eに対して、容量係数Cは、その高速度比領域において、通常の特性とは異なる、特性(ア)および特性(イ)の2つの特性をさらに記憶している。なお、本実施の形態においては、通常の特性とは異なる特性を2種類さらに持つものとして説明するが、これに限定されるものではない。
【0048】
図4に示すように、通常の特性に対して特性(ア)および特性(イ)ともに、速度比eが0.5を超えても、容量係数Cが初期値をできるだけ長く持続する。
【0049】
ここで、容量係数Cは、フルードカップリング210の伝達トルクをT(P)、ポンプ羽根車220の回転数をN(P)とすると、C=T(P)/N(P)2で表わされる。また、速度比eは、フルードカップリング210の出力軸回転数をN(T)、フルードカップリング210の入力軸回転数N(P)とすると、e=N(T)/N(P)で表わされる。
【0050】
エンジン100の出力トルクT(E)とフルードカップリング210の入力トルクT(P)との関係について説明する。エンジン100のイナーシャをI、角速度をω、角加速度をdω/dtとすると、{T(E)−T(B)}=(I・dω/dt)の関係が成立する。角速度ωは{(2π/60)・N(E)}であって、角速度ωとエンジン回転数N(E)(=N(P))とは1対1の関係にあるから、T(P)と{C・ω2}とは比例関係にあることが導かれる。このことから、容量係数Cの大きさは、フルードカップリング210の入力トルクT(P)の大きさと対応すること、換言すれば、容量係数Cが大きいと同じ入力トルクT(P)に対して入力回転数N(P)は小さくなることがわかる。
【0051】
上述のように、{T(E)−T(P)}であらわされるトルクは、エンジンイナーシャ110に対して働き、エンジン100の回転数を上昇させるために使われたトルクである。すなわち、後段の駆動輪に伝達されなかったトルクである。図3に示す「1st」のギア比が5.0から6.0のような高ギア比において、図4に示すように速度比eが高い領域において容量係数Cが高い値である時間を延ばすことにより、エンジン100で発生したトルクを、エンジンイナーシャ110に対して働かせてエンジン回転数N(E)を上昇させるために使われるのではなく、後段の駆動輪に伝達するために使われることになる。その結果、車両の発進直後において、加速度が車両に発生する時間を延ばすことができる。
【0052】
すなわち、図4に示すように、速度比eが高い領域においては、容量係数Cが大きいほど、通常は、容量係数Cを低下させる。容量係数Cが低下すると、エンジン100で発生したトルクは後段の駆動輪に伝達されるよりも、エンジンイナーシャ110に対して働いてエンジン100の回転数N(E)を上昇させることになる。高速度比側においては、容量係数を図4に示すように減少させずに高い値を維持すると、エンジン100で発生したトルクは、エンジンイナーシャ110に対して働いてエンジン100の回転数N(E)を上昇させることに使用されないので、後段の駆動輪に伝達されるようになる。そうすると、加速度が発生している時間を長引かせることができる。
【0053】
図5を参照して、加速要求度合いとロックアップクラッチスリップ量の関係について説明する。本実施の形態に係るECT_ECU400は、ロックアップクラッチ210の係合圧を制御して、ロックアップクラッチをスリップ制御させることにより、フルードカップリング200の容量係数Cを可変とするものである。図5に示すように、加速要求度合いが高いほど、ロックアップクラッチ210のスリップ量を低くして(スリップさせないで)、後段の駆動輪にエンジン100で発生したトルクをできるだけ伝達するようにスリップ制御される。逆に、加速要求度合いが低い場合には、ロックアップクラッチ210のスリップ量が高く(スリップさせて)、エンジン100で発生したトルクをエンジンイナーシャ110に対して働かせて、エンジン100自体の回転数N(E)が上昇するようにスリップ制御される。
【0054】
図6を参照して、本実施の形態に係る制御装置であるECT_ECU400で実行されるプログラムの制御構造について説明する。
【0055】
ステップ(以下、ステップをSと略す。)100にて、ECT_ECU400は、車速を検知する。この検知は、ECT_ECU400に入力される車速検知信号に基づいて行なわれる。S110にて、ECT_ECU400は、車速が発進しきい値以下であるか否かを判断する。車速が発進しきい値以下である場合には(S110にてYES)、車両の発進時であると判断されて、処理はS120へ移される。もしそうでないと(S110にてNO)、処理はS180へ移される。
【0056】
S120にて、ECT_ECU400は、アクセル開度を検知する。この検知は、ECT_ECU400に入力されるアクセル開度信号に基づいて行われる。S130にて、ECT_ECU400は、アクセル開度が開度しきい値以上であるか否かを判断する。アクセル開度が開度しきい値以上であると(S130にてYES)、大きな加速度合いが要求されていると判断されて、処理はS140へ移される。もしそうでないと(S130にてNO)、処理はS170へ移される。
【0057】
S140にて、ECT_ECU400は、アクセス開度変化率を算出する。この算出は、S120にて検知したアクセル開度と、ECT_ECUの内部クロックが持つクロック信号とに基づいて、アクセル開度の時間変化率を算出することにより行なわれる。S150にて、ECT_ECU400は、アクセル開度変化率が開度変化率しきい値以上であるか否かを判断する。アクセル開度変化率が開度変化率しきい値よりも大きい場合には(S150にてYES)、急に大きくなるような加速度合いが要求されていると判断されて、処理はS160へ移される。もしそうでないと(S150にてNO)、処理はS170へ移される。
【0058】
S160にて、ECT_ECU400は、容量係数特性(イ)(図4)を選択して、ロックアップクラッチ210をスリップ制御させる。S170にて、ECT_ECU400は、容量係数特性(ア)(図4)を選択して、ロックアップクラッチ210をスリップ制御させる。
【0059】
S180にて、ECT_ECU400は、ロックアップクラッチ210をロックアップがオンした状態に制御する。
【0060】
以上のような構造およびフローチャートに基づく、本実施の形態に係るパワートレインの動作について説明する。
【0061】
車両が発進するとECT_ECU400は車速を検知する(S100)。検知した車速が発進しきい値よりも小さいと(S110にてYES)、発進時であると判断されて、ロックアップクラッチ210をスリップ制御させることによりフルードカップリング210の容量係数Cを可変として、加速時間を長引かせる制御が実行される。
【0062】
アクセル開度が検知され(S120)、アクセル開度が予め定められた開度しきい値よりも大きく、アクセル開度の変化率が予め定められた開度変化率しきい値よりも大きいと(S130にてYES、S150にてYES)、図4に示す容量係数特性(イ)が選択されて、ECT_ECU400は、ロックアップクラッチ210をスリップ制御させる。一方、発進時ではあるがアクセル開度が予め定められた開度しきい値未満であったり(S130にてNO)、アクセル開度が予め定められた開度しきい値以上であるがアクセル開度変化率が予め定められた開度変化率しきい値未満であると(S130にてYES、S150にてNO)、図4に示す容量係数特性(ア)が選択されて、ECT_ECU400はロッククラッチ210をスリップ制御させる(S170)。
【0063】
図7および図8を参照して、時間に対する、加速度Gの変化と、エンジン回転数N(E)の変化とを説明する。図8に示すように、発進直後からの時間tの経過に従って、エンジン回転数N(E)は最初なだらかに、次に急激に増加する。容量係数Cが通常の特性であれば(図4)、図8に示すようにエンジン回転数N(E)が急激に上昇する。これは、図4に示すように、容量係数Cが通常の特性である場合には、速度比eが0.5を超えると容量係数Cが低下するようにフルードカップリング200のロックアップクラッチ210がスリップ制御される。このため、容量係数Cの低下に伴って、エンジン100で発生したトルクが、エンジンイナーシャ110に働いて、エンジン回転数N(E)を上昇させる。すなわち、エンジン100の回転数が吹き上がることになる。
【0064】
図7に示すように、容量係数Cが通常の特性である場合には、エンジンが吹き上がる(エンジン100で発生したトルクがエンジンイナーシャ110に対して働いてエンジンが吹き上がる)ので、エンジン100で発生したトルクは連結される駆動輪に伝達されず、加速度Gのピークが持続しない。
【0065】
一方、本発明の実施の形態に係るECT_ECU400は、図4に示されるように特性(ア)または特性(イ)のように速度比eが高い領域において、容量係数Cが低下するタイミングを遅らせているため、図8に示すように特性(ア)および特性(イ)の場合にはエンジン100が吹き上がるタイミングが遅れる。これに伴い、図7に示すように、エンジン100で発生したトルクは、エンジンイナーシャ110に働いてエンジン100の回転数を吹き上がらせるのではなく、エンジン100で発生したトルクは連結される駆動輪に伝達されて、加速度Gのピークを持続させることになる。
【0066】
以上のようにして、本実施の形態に係るパワートレインによると、車両の運転者に要求された加速の度合いが大きいと、高速度比側で低下するフルードカップリングの容量係数Cが低下しないように制御される。高速度比側においては、通常、速度比が増加すると容量係数が低下する。容量係数が低下するとエンジンで発生したトルクは車軸に伝達されるよりも、エンジンイナーシャに対して働いてエンジン回転数を上昇させることになる。逆に、本実施の形態に係るパワートレインのように高速度比側において容量係数Cを低下させないようにすると、エンジンで発生したトルクは、エンジンイナーシャに対して働くのではなく(エンジン回転数を上昇させてエンジンを吹き上がらせるのではなく)、車軸に伝達されるようになる。そうすると、車軸に伝達されたトルクは車両の加速度を発生させるので、加速度が発生している時間を長引かせることができる。その結果、ロックアップクラッチ付きフルードカップリングを搭載した車両において、十分な加速性能を実現される車両のパワートレインを提供することができる。
【0067】
なお、上述した実施の形態においては、ロックアップクラッチ付きフルードカップリングにおいて、ロックアップクラッチの係合圧を制御することによりフルードカップリングの容量係数を可変に制御するものとして説明したが、容量係数を可変にする方法はこれに限定されるものではない。
【0068】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る制御装置が搭載された車両のパワートレインの構成を示す図である。
【図2】図1に示す自動変速機のスケルトン図である。
【図3】図1に示す自動変速機の作動係合状態を表わす図である。
【図4】速度比に対するフルードカップリングの容量係数の関係を示す図である。
【図5】加速要求度合いに対するフルードカップリングのロックアップクラッチのスリップ量の関係を示す図である。
【図6】ECT_ECUで実行される処理の制御構造を示すフローチャートである。
【図7】時間に対する加速度の変化を示す図である。
【図8】時間に対するエンジン回転数の変化を示す図である。
【符号の説明】
100 エンジン、110 エンジンイナーシャ、200 フルードカップリング、210 ロックアップクラッチ、220 ポンプ羽根車、230 タービン羽根車、300 自動変速機、400 ECT_ECU。
Claims (14)
- エンジンと、前記エンジンからの駆動力を変速機に伝達する流体継手とを搭載した車両の制御装置であって、
前記車両に要求される加速の度合いを検知するための検知手段と、
前記流体継手の入力回転数に対する出力回転数の比率に対応させて、前記流体継手の容量係数を記憶するための記憶手段と、
前記検知手段により検知された加速の度合いに応じて、前記比率の高い領域における容量係数を変更するための変更手段とを含む、制御装置。 - 前記記憶手段は、前記流体継手の入力回転数に対する出力回転数の比率に対応して変化する前記流体継手の容量係数について、前記比率の高い領域において容量係数が異なる複数の変化特性を記憶するための手段を含み、
前記変更手段は、前記加速の度合いに応じて、前記複数の変化特性の中から1の変化特性を選択することにより、前記比率の高い領域における容量係数を変更するための手段を含む、請求項1に記載の制御装置。 - 前記変更手段は、前記加速の度合いが大きいことに対応して、前記比率の高い領域における容量係数が大きくなるように変更するための手段を含む、請求項1または2に記載の制御装置。
- 前記制御装置は、前記変更手段により容量係数を変更するか否かを判断するための判断手段をさらに含む、請求項1〜3のいずれかに記載の制御装置。
- 前記制御装置は、前記車両の車速を検出するための検出手段をさらに含み、
前記判断手段は、前記検出手段により検出された車速に基づいて、容量係数を変更するか否かを判断するための手段を含む、請求項4に記載の制御装置。 - 前記判断手段は、前記車速が低いと前記変更手段により容量係数を変更するように、前記車速が高いと前記変更手段による容量係数の変更を中止するように判断するための手段を含む、請求項5に記載の制御装置。
- 前記流体継手は、ロックアップクラッチ付きフルードカップリングであって、
前記変更手段は、前記ロックアップクラッチの係合力を制御することにより、容量係数を変更するための手段を含む、請求項1〜6のいずれかに記載の制御装置。 - エンジンと、前記エンジンからの駆動力を変速機に伝達する流体継手とを搭載した車両の制御方法であって、
前記車両に要求される加速の度合いを検知する検知ステップと、
前記流体継手の入力回転数に対する出力回転数の比率に対応させて、前記流体継手の容量係数を記憶する記憶ステップと、
前記検知ステップにて検知された加速の度合いに応じて、前記比率の高い領域における容量係数を変更する変更ステップとを含む、制御方法。 - 前記記憶ステップは、前記流体継手の入力回転数に対する出力回転数の比率に対応して変化する前記流体継手の容量係数について、前記比率の高い領域において容量係数が異なる複数の変化特性を記憶するステップを含み、
前記変更ステップは、前記加速の度合いに応じて、前記複数の変化特性の中から1の変化特性を選択することにより、前記比率の高い領域における容量係数を変更するステップを含む、請求項8に記載の制御方法。 - 前記変更ステップは、前記加速の度合いが大きいことに対応して、前記比率の高い領域における容量係数が大きくなるように変更するステップを含む、請求項8または9に記載の制御方法。
- 前記制御方法は、前記変更ステップにて容量係数を変更するか否かを判断する判断ステップをさらに含む、請求項8〜10のいずれかに記載の制御方法。
- 前記制御方法は、前記車両の車速を検出する検出ステップをさらに含み、
前記判断ステップは、前記検出ステップにて検出された車速に基づいて、容量係数を変更するか否かを判断するステップを含む、請求項11に記載の制御方法。 - 前記判断ステップは、前記車速が低いと前記変更ステップにて容量係数を変更するように、前記車速が高いと前記変更ステップにおける容量係数の変更を中止するように判断するステップを含む、請求項12に記載の制御方法。
- 前記流体継手は、ロックアップクラッチ付きフルードカップリングであって、
前記変更ステップは、前記ロックアップクラッチの係合力を制御することにより、容量係数を変更するステップを含む、請求項8〜13のいずれかに記載の制御方法。
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