JP4120327B2 - 車両の制御装置および制御方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、車両の加速性能を向上させる制御装置および制御方法に関し、特に、2つの動力源を有する車両の発進時の加速性能を向上させる制御装置および制御方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
エンジンと電動機とを搭載したハイブリッド型とよばれる車両がある。この車両は、運転状況に応じて、燃費が向上するようにエンジンと電動機とを制御する。
【0003】
特開平3−121928号公報(特許文献1)は、このようなハイブリット型のパワートレインを開示する。この公報に開示されたパワートレインは、エンジンと、モータと、エンジンの負荷が所定の値以上になるとモータを駆動してエンジンをアシストする制御回路とを含む。
【0004】
この公報に開示されたパワートレインによると、エンジンの負荷が所定の値を超えるとモータが駆動されてエンジンがアシストされることになるので、エンジンの全負荷領域を使用することなく車両を走行させることができる。また、車両の制動時には、モータをジェネレータとして機能させて発電した電力により二次電池を充電して、エンジンをアシストする際に二次電池から電力をモータに供給する。これにより、エンジンから排出される排気ガスに含まれる窒素酸化物、一酸化炭素の含有量が少なくするとともに、燃費を向上させることができる。
【0005】
【特許文献1】
特開平3−121928号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述した公報に記載されたパワートレインでは、車両の発進時のギヤ比によって駆動輪に伝達されるトルクが異なるので、発進ギヤのギヤ比を考慮しないのでは、適切に所望のトルクを伝達できなくなる。
【0007】
本発明は、上述の課題を解決するためになされたものであって、第1の動力源と第1の動力源をアシストする第2の動力源とを搭載した車両において、十分な加速性能を実現させる、車両の制御装置および制御方法を提供することである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
第1の発明に係る制御装置は、第1の動力源と、第1の動力源をアシストする第2の動力源と、動力源からの駆動力が伝達される変速機とを搭載した車両の制御装置である。この制御装置は、車両が発進する際の変速機のギヤ比に応じて、第2の動力源による駆動力のアシストの度合いを設定するための設定手段を含む。
【0009】
第1の発明によると、設定手段は、たとえば、車両が発進する際に用いられる変速機のギヤ比が小さいほど、第1の動力源による駆動輪へ伝達されるトルクが小さいので、第2の動力源により第1の動力源をアシストする度合いを高めるようにアシスト量を設定する。すなわち、車両が発進する際の変速機のギヤ比に応じて第2の動力源により駆動力のアシストが行われることで、所望の加速度を発生させることができる。その結果、2つの動力源を搭載した車両において、十分な加速性能を実現させる車両の制御装置を提供することができる。
【0010】
第2の発明に係る制御装置は、第1の動力源と、第1の動力源をアシストする第2の動力源と、動力源からの駆動力が伝達される変速機とを搭載した車両の制御装置である。この制御装置は、車両に要求される加速の度合いを算定するための算定手段と、算定手段により算定された加速の度合いおよび車両が発進する際の変速機のギヤ比に応じて、第2の動力源による駆動力のアシストの度合いを設定するための設定手段とを含む。
【0011】
第2の発明によると、設定手段は、たとえば、良好な加速度を実現するために、加速の度合いが大きいほど、車両が発進する際の変速機のギヤ比が小さいほど、第2の動力源により第1の動力源をアシストする度合いを高めるようにアシスト量を設定する。すなわち、運転者による加速の要求の度合いと車両が発進する際の変速機のギヤ比とに応じて第2の動力源により駆動力のアシストが行われることで、所望の加速度を発生させることができる。その結果、2つの動力源を搭載した車両において、十分な加速性能を実現させる車両の制御装置を提供することができる。
【0012】
第3の発明に係る制御装置は、第2の発明の構成に加えて、算定手段は、車両に要求される要求加速度に対して実際の加速度により満足された比率および要求加速度と実際の加速度との差のいずれかを表わす加速の度合いを算定するための手段を含む。
【0013】
第3の発明によると、要求加速度に対する実際の加速度の比率および要求加速度と実際の加速度との差のいずれかに基づいて算定された加速の度合いを用いて、2つの動力源を搭載した車両において、十分な加速性能を実現させる車両の制御装置を提供することができる。
【0014】
第4の発明に係る制御装置は、第1〜3のいずれかの発明の構成に加えて、設定手段は、ギヤ比に対応してアシストの度合いが異なる複数の変化特性を設定するための手段を含む。
【0015】
第4の発明によると、設定手段は、ギヤ比に対してアシストの度合いが異なる複数の変化特性を設定しておく。車両の運転者により要求された加速の度合いに応じて、複数の変化特性の中から1の変化特性を選択することなどにより、アシストの度合いを設定する。これにより、加速の度合いを表わすアクセル開度やアクセル開度の変化率に基づいて、最も適合する加速度が得られるようにアシストの度合いを設定できる。
【0016】
第5の発明に係る制御装置は、第1〜3のいずれかの発明の構成に加えて、設定手段は、ギヤ比に対応してアシストの度合いが異なる複数の変化特性を設定するための手段と、複数の変化特性の中から1の変化特性を選択することにより、第2の動力源による駆動力のアシストの度合いを設定するための手段とを含む。
【0017】
第5の発明によると、設定手段は、ギヤ比に対してアシストの度合いが異なる複数の変化特性を設定しておく。設定手段は、車両の運転者により要求された加速の度合いに応じて、複数の変化特性の中から1の変化特性を選択することにより、アシストの度合いを設定する。これにより、加速の度合いを表わすアクセル開度やアクセル開度の変化率に基づいて、最も適合する加速度が得られるようにアシストの度合いを設定できる。
【0018】
第6の発明に係る制御装置は、第2〜5のいずれかの発明の構成に加えて、設定手段は、加速の度合いが大きいことに対応して、第2の動力源による駆動力のアシストの度合いが大きくなるように設定するための手段を含む。
【0019】
第6の発明によると、要求された加速の度合いが大きいほど、第2の動力源による駆動力のアシストの度合いが大きくなるように設定して、所望の加速フィーリングを得ることができる。
【0020】
第7の発明に係る制御装置は、第2〜5のいずれかの発明の構成に加えて、設定手段は、加速の度合いが小さいことに対応して、第2の動力源による駆動力のアシストの度合いが小さくなるように設定するための手段を含む。
【0021】
第7の発明によると、要求された加速の度合いが小さいほど、第2の動力源による駆動力のアシストの度合いが小さくなるように設定して、所望の加速フィーリングを得ることができる。
【0022】
第8の発明に係る制御装置は、第1〜7のいずれかの発明の構成に加えて、第1の動力源はエンジンであり、第2の動力源は電動機である車両を制御する。設定手段は、電動機により発生するトルク量を設定するための手段を含む。
【0023】
第8の発明によると、エンジンと電動機とを搭載したハイブリッド車両において、所望の加速フィーリングを得ることができる。
【0024】
第9の発明に係る制御装置は、第1〜8のいずれかの発明の構成に加えて、設定手段により第2の動力源による駆動力のアシストの度合いを設定するか否かを判断するための判断手段をさらに含む。
【0025】
第9の発明によると、運転者により加速が要求されても、たとえば速度が比較的高い場合には、第2の動力源により第1の動力源をアシストするのはエネルギーロスを招く場合があり得る。このとき、加速時間の点でも、燃費向上の点でも、不利な場合があるので、判断手段により、第2の動力源によるアシストを実行させるか否かを判断させる。
【0026】
第10の発明に係る制御装置は、第9の発明の構成に加えて、車両の車速を検出するための検出手段をさらに含む。判断手段は、検出手段により検出された車速に基づいて、第2の動力源による駆動力のアシストの度合いを設定するか否かを判断するための手段を含む。
【0027】
第10の発明によると、運転者により加速が要求されても、車両の速度が比較的高い場合には、第2の動力源により第1の動力源をアシストするのはエネルギーロスを招く。このとき、加速時間の点でも、燃費向上の点でも、不利な場合があるので、判断手段により、車両の速度に基づいて、第2の動力源によるアシストを実行させるか否かを判断させる。
【0028】
第11の発明に係る制御装置は、第10の発明の構成に加えて、判断手段は、車速が低いと設定手段により第2の動力源による駆動力のアシストの度合いを設定するように、車速が高いと設定手段による第2の動力源による駆動力のアシストの度合いの設定を中止するように判断するための手段を含む。
【0029】
第11の発明によると、運転者により加速が要求されても、車両の速度が比較的高い場合には、第2の動力源により第1の動力源をアシストするのはエネルギーロスを招く。そのため、判断手段により、車両の速度が低いと第2の動力源によるアシストを実行させ、車両の速度が高いと第2の動力源によるアシストの実行を中止させることで、車両発進時にのみ第2の動力源によるアシストを実行させることができる。
【0030】
第12の発明に係る制御方法は、第1の動力源と、第1の動力源をアシストする第2の動力源と、動力源からの駆動力が伝達される変速機とを搭載した車両の制御方法である。この制御方法は、車両が発進する際の変速機のギヤ比に応じて、第2の動力源による駆動力のアシストの度合いを設定する設定ステップを含む。
【0031】
第12の発明によると、設定ステップは、たとえば、車両が発進する際の変速機のギヤ比が小さいほど、第1の動力源による駆動輪へ伝達されるトルクが小さいので、第2の動力源により第1の動力源をアシストする度合いを高めるようにアシスト量を設定する。すなわち、車両が発進する際の変速機のギヤ比に応じて第2の動力源により駆動力のアシストが行われることで、所望の加速度を発生させることができる。その結果、2つの動力源を搭載した車両において、十分な加速性能を実現させる車両の制御方法を提供することができる。
【0032】
第13の発明に係る制御方法は、第1の動力源と、第1の動力源をアシストする第2の動力源と、動力源からの駆動力が伝達される変速機とを搭載した車両の制御方法である。この制御方法は、車両に要求される加速の度合いを算定する算定ステップと、算定ステップにて算定された加速の度合いおよび車両が発進する際の変速機のギヤ比に応じて、第2の動力源による駆動力のアシストの度合いを設定する設定ステップとを含む。
【0033】
第13の発明によると、設定ステップは、たとえば、良好な加速度を実現するために、加速の度合いが大きいほど、車両が発進する際の変速機のギヤ比が小さいほど、第2の動力源により第1の動力源をアシストする度合いを高めるようにアシスト量を設定する。すなわち、運転者による加速の要求の度合いと車両が発進する際の変速機のギヤ比とに応じて第2の動力源により駆動力のアシストが行われることで、所望の加速度を発生させることができる。その結果、2つの動力源を搭載した車両において、十分な加速性能を実現させる車両の制御方法を提供することができる。
【0034】
第14の発明に係る制御方法は、第13の発明の構成に加えて、算定ステップは、車両に要求される要求加速度に対して実際の加速度により満足された比率および要求加速度と実際の加速度との差のいずれかを表わす加速の度合いを算定するステップを含む。
【0035】
第14の発明によると、要求加速度に対する実際の加速度の比率および要求加速度と実際の加速度との差のいずれかに基づいて算出された加速の度合いを用いて、2つの動力源を搭載した車両において、十分な加速性能を実現させる車両の制御方法を提供することができる。
【0036】
第15の発明に係る制御方法は、第12〜14のいずれかの発明の構成に加えて、設定ステップは、ギヤ比に対応してアシストの度合いが異なる複数の変化特性を設定するステップを含む。
【0037】
第15の発明によると、設定ステップにて、ギヤ比に対してアシストの度合いが異なる複数の変化特性を設定しておく。車両の運転者により要求された加速の度合いに応じて、複数の変化特性の中から1の変化特性を選択することなどにより、アシストの度合いを設定する。これにより、加速の度合いを表わすアクセル開度やアクセル開度の変化率に基づいて、最も適合する加速度が得られるようにアシストの度合いを設定できる。
【0038】
第16の発明に係る制御方法は、第12〜14のいずれかの発明の構成に加えて、設定ステップは、ギヤ比に対応してアシストの度合いが異なる複数の変化特性を設定するステップと、複数の変化特性の中から1の変化特性を選択することにより、第2の動力源による駆動力のアシストの度合いを設定するステップとを含む。
【0039】
第16の発明によると、設定ステップにて、アシストの度合いが異なる複数の変化特性を設定しておく。設定ステップは、車両の運転者により要求された加速の度合いに応じて、複数の変化特性の中から1の変化特性を選択することにより、アシストの度合いを設定する。これにより、加速の度合いを表わすアクセル開度やアクセル開度の変化率に基づいて、最も適合する加速度が得られるようにアシストの度合いを設定できる。
【0040】
第17の発明に係る制御方法は、第13〜16のいずれかの発明の構成に加えて、設定ステップは、加速の度合いが大きいことに対応して、第2の動力源による駆動力のアシストの度合いが大きくなるように設定するステップを含む。
【0041】
第17の発明によると、要求された加速の度合いが大きいほど、第2の動力源による駆動力のアシストの度合いが大きくなるように設定して、所望の加速フィーリングを得ることができる。
【0042】
第18の発明に係る制御方法は、第13〜16のいずれかの発明の構成に加えて、設定ステップは、加速の度合いが小さいことに対応して、第2の動力源による駆動力のアシストの度合いが小さくなるように設定するステップを含む。
【0043】
第18の発明によると、要求された加速の度合いが小さいほど、第2の動力源による駆動力のアシストの度合いが小さくなるように設定して、所望の加速フィーリングを得ることができる。
【0044】
第19の発明に係る制御方法は、第12〜18のいずれかの発明の構成に加えて、第1の動力源はエンジンであり、第2の動力源は電動機である車両を制御する。設定ステップは、電動機により発生するトルク量を設定するステップを含む。
【0045】
第19の発明によると、エンジンと電気モータとを搭載したハイブリッド車両において、所望の加速フィーリングを得ることができる。
【0046】
第20の発明に係る制御方法は、第12〜19のいずれかの発明の構成に加えて、設定ステップにて第2の動力源による駆動力のアシストの度合いを設定するか否かを判断する判断ステップをさらに含む。
【0047】
第20の発明によると、運転者により加速が要求されても、たとえば速度が比較的高い場合には、第2の動力源により第1の動力源をアシストするのはエネルギーロスを招く場合があり得る。このとき、加速時間の点でも、燃費向上の点でも、不利な場合があるので、判断ステップにて、第2の動力源によるアシストを実行させるか否かを判断する。
【0048】
第21の発明に係る制御方法は、第20の発明の構成に加えて、車両の車速を検出する検出ステップをさらに含む。判断ステップは、検出ステップにて検出された車速に基づいて、第2の動力源による駆動力のアシストの度合いを設定するか否かを判断するステップを含む。
【0049】
第21の発明によると、運転者により加速が要求されても、車両の速度が比較的高い場合には、第2の動力源により第1の動力源をアシストするのはエネルギーロスを招く。このとき、加速時間の点でも、燃費向上の点でも、不利な場合があるので、判断ステップにて、車両の速度に基づいて、第2の動力源によるアシストを実行させるか否かを判断する。
【0050】
第22の発明に係る制御方法は、第21の発明の構成に加えて、判断ステップは、車速が低いと設定ステップにて第2の動力源による駆動力のアシストの度合いを設定するように、車速が高いと設定ステップにて第2の動力源による駆動力のアシストの度合いの設定を中止するように判断するステップを含む。
【0051】
第22の発明によると、運転者により加速が要求されても、車両の速度が比較的高い場合には、第2の動力源により第1の動力源をアシストするのはエネルギーロスを招く。そのため、判断ステップにて、車両の速度が低いと第2の動力源によるアシストを実行させ、車両の速度が高いと第2の動力源によるアシストの実行を中止させることで、車両発進時にのみ第2の動力源によるアシストを実行させることができる。
【0052】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明する。以下の説明では、同一の部品には同一の符号を付してある。それらの名称および機能も同じである。したがってそれらについての詳細な説明は繰返さない。
【0053】
以下、本発明の実施の形態に係る制御装置を搭載した車両のパワートレインについて説明する。以下の説明においては、流体継手をロックアップクラッチ付きフルードカップリングとして、変速機を自動変速機として説明する。しかしながら、本発明はこれに限定されない。たとえば、流体継手はトルク増幅機能を有するトルクコンバータであってもよいし、変速機は無段変速機(CVT:Continuously Variable Transmission)であってもよい。
【0054】
図1を参照して、本実施の形態に係る制御装置を含む車両のパワートレインについて説明する。本実施の形態に係る制御装置は、図1に示すECT_ECU( Electronic Controlled Automatic Transmission_Electronic Control Unit)400により実現される。
【0055】
図1に示すように、この車両は、エンジン100と、フルードカップリング200と、自動変速機300と、エンジン100をアシストするモータジェネレータ500と、モータジェネレータ500を制御するインバータ600とから構成される。エンジン100の出力軸は、模式的に表現されたエンジンイナーシャ110を介してフルードカップリング200の入力軸に接続される。エンジン100とフルードカップリング200とは回転軸150により連結されている。したがって、エンジン100の出力軸回転数N(E)とフルードカップリング200の入力軸回転数N(P)とは同じである。また、エンジン100の出力トルクをT(E)と、フルードカップリング200への入力トルクをT(P)として表わす。
【0056】
モータジェネレータ500は、エンジン100とフルードカップリング200とを接続する回転軸150にトルクを伝達するように構成される。このモータジェネレータ500は、車両の発進時に所望の加速度を得るためにモータとして作動してエンジン100をアシストする。また、回生制動時にはジェネレータとして作動して運動エネルギーを電気エネルギーに変換して回収する。
【0057】
フルードカップリング200は、ロックアップクラッチ210を含み、ポンプ羽根車220とタービン羽根車230とから構成される。フルードカップリング200と自動変速機300とは、回転軸250により接続される。フルードカップリング200の出力軸回転数をN(T)と、フルードカップリング200の出力トルクをT(T)として表わす。
【0058】
これらのパワートレインを制御するECT_ECU400には、ポンプ回転数N(P)、タービン回転数N(T)、アクセル開度、車速、車両加速度、スロットル開度、AT信号およびシフトポジション信号が入力される。また、ECT_ECU400から、フルードカップリング200のロックアップクラッチ210に対してロックアップクラッチ係合圧信号が出力される。ECT_ECU400から、自動変速機300に対してAT制御信号が出力される。ECT_ECU400から、インバータ600に対してアシスト量指示信号が出力される。
【0059】
図1において、エンジン100またはエンジン100およびモータジェネレータ500の動力は、ロックアップクラッチ付きフルードカップリング200を備えた自動変速機300を介して連結される駆動輪に伝達される。フルードカップリング200は、エンジン100のクランク軸(フルードカップリング200の入力軸)150に固定されたポンプ羽根車220と、自動変速機300の入力軸(フルードカップリング200の出力軸)250に連結されたタービン羽根車230と、それらポンプ羽根車220および入力軸250を直結するロックアップクラッチ210を備えている。
【0060】
車両の発進時においては、ロックアップクラッチ210のロックアップを解放して、ロックアップクラッチ210がスリップ制御されることにより、エンジン100から自動変速機300へ伝達されるトルクを滑らかに増大させる。車両の停止時においては、ロックアップクラッチ210のクラッチを切って、自動変速機300の回転および停止のいずれにもかかわらずエンジン100の回転を許容する。通常走行時においては、ロックアップクラッチ210のロックアップ機能によりポンプ羽根車220およびタービン羽根車230を連結して回転損失を防止する。
【0061】
図2に自動変速機300のスケルトン図を、図3に自動変速機300の作動表を示す。図2に示すスケルトン図および図3に示す作動表によると、摩擦要素であるクラッチ要素(図中のC(0)〜C(2))や、ブレーキ要素(B(0)〜B(4))、ワンウェイクラッチ要素(F(0)〜F(2))が、どのギヤ段の場合に係合および解放されるかを示している。車両の発進時に使用される1速時には、クラッチ要素(C(0)、C(1))、ブレーキ要素(B(4))、ワンウェイクラッチ要素(F(0)、F(2))が係合する。
【0062】
なお、本実施の形態に係る制御装置であるECT_ECU400は、発進時における車両に所望の加速時間を与えるために、ロックアップクラッチ210のスリップ制御によりフルードカップリング200の容量係数Cを変化させるとともに、このような容量係数の制御では満足されない加速要求を満足させるためにモータジェネレータ500によりエンジン100をアシストする。このため、発進時においてロックアップクラッチ210は解放状態であることが前提である。このことは、車両の発進時においてロックアップクラッチ210をロックアップしているとエンストするので、ロックアップクラッチ210は解放状態であることと整合する。
【0063】
図4を参照して、本実施の形態に係る制御装置であるECT_ECU400の内部メモリに記憶される、高速度比領域における、速度比eに対するフルードカップリング200の容量係数Cの容量係数特性曲線について説明する。本実施の形態に係る制御装置を実現するECT_ECU400においては、ロックアップクラッチ210付きのフルードカップリング200の容量係数Cを可変とするために、ロックアップクラッチ210のロックアップクラッチ係合圧を制御してロックアップクラッチ210をスリップ制御させる。これにより、ロックアップクラッチ210の係合圧を可変とし、フルードカップリング200の容量係数Cを可変とする。
【0064】
図4に示すように、速度比eに対して、容量係数Cは、その高速度比領域において、通常の容量係数特性曲線(1)とは異なる、容量係数特性曲線(2)および容量係数特性曲線(3)の2つの特性をさらに記憶している。なお、本実施の形態においては、通常の特性曲線とは異なる特性曲線を2種類さらに持つものとして説明するが、これに限定されるものではない。また、このような特性曲線は、以下に示す他の特性曲線を含めて、マップで持つものであってもよいし、数式で持つものであってもよい。
【0065】
図4に示すように、通常の容量係数特性曲線(1)に対して容量係数特性曲線(2)および容量係数特性曲線(3)ともに、速度比eが0.5を超えても、容量係数Cが初期値をできるだけ長く持続する。
【0066】
ここで、容量係数Cは、フルードカップリング200の伝達トルクをT(P)、ポンプ羽根車220の回転数をN(P)とすると、C=T(P)/N(P)2で表わされる。また、速度比eは、フルードカップリング200の出力軸回転数をN(T)、フルードカップリング200の入力軸回転数N(P)とすると、e=N(T)/N(P)で表わされる。
【0067】
エンジン100の出力トルクT(E)とフルードカップリング200の入力トルクT(P)との関係について説明する。エンジン100のイナーシャをI、角速度をω、角加速度をdω/dtとすると、{T(E)−T(B)}=(I・dω/dt)の関係が成立する。角速度ωは{(2π/60)・N(E)}であって、角速度ωとエンジン回転数N(E)(=N(P))とは1対1の関係にあるから、T(P)と{C・ω2}とは比例関係にあることが導かれる。このことから、容量係数Cの大きさは、フルードカップリング200の入力トルクT(P)の大きさと対応すること、換言すれば、容量係数Cが大きいと同じ入力トルクT(P)に対して入力回転数N(P)は小さくなることがわかる。
【0068】
上述のように、{T(E)−T(P)}であらわされるトルクは、エンジンイナーシャ110に対して働き、エンジン100の回転数を上昇させるために使われたトルクである。すなわち、連結される駆動輪に伝達されなかったトルクである。図3に示す「1st」のギヤ比が5.0から6.0のような大きなギヤ比において、図4に示すように速度比eが大きい領域において容量係数Cが大きい値である時間を延ばすことにより、エンジン100で発生したトルクを、エンジンイナーシャ110に対して働かせてエンジン回転数N(E)を上昇させるために使われるのではなく、連結される駆動輪に伝達するために使われることになる。その結果、車両の発進直後において、比較的大きな加速度が車両に発生する時間を延ばすことができる。
【0069】
すなわち、図4に示すように、速度比eが大きい領域においては、速度比eが大きいほど、通常は、容量係数Cを小さくする。容量係数Cが小さくなると、エンジン100で発生したトルクは連結される駆動輪に伝達されるよりも、エンジンイナーシャ110に対して働いてエンジン100の回転数N(E)を上昇させることになる。高速度比側においては、容量係数を図4に示すように減少させずに大きい値を維持すると、エンジン100で発生したトルクは、エンジンイナーシャ110に対して働いてエンジン100の回転数N(E)を上昇させることに使用されないので、連結される駆動輪に伝達されるようになる。そうすると、比較的大きな加速度が発生している時間を長引かせることができる。
【0070】
図5に示すように、容量係数Cが通常の容量係数特性曲線(1)である場合には、エンジンの回転数が上昇する(エンジン100で発生したトルクがエンジンイナーシャ110に対して働いてエンジン100の回転数が上昇する)ので、エンジン100で発生したトルクは連結される駆動輪に伝達されず、加速度Gのピークが持続しない。一方、図4に示されるように容量係数特性曲線(2)または容量係数特性曲線(3)のように速度比eが大きい領域において、容量係数Cを小さくするタイミングを遅らせているため、エンジン100の回転数が上昇するタイミングが遅れる。これに伴い、図5に示すように、エンジン100で発生したトルクは、エンジンイナーシャ110に働いてエンジン100の回転数を上昇させるのではなく、エンジン100で発生したトルクは連結される駆動輪に伝達されて、加速度Gのピークを持続させることになる。
【0071】
図6を参照して、加速要求度合いとロックアップクラッチスリップ量の関係について説明する。本実施の形態に係るECT_ECU400は、ロックアップクラッチ210の係合圧を制御して、ロックアップクラッチをスリップ制御させることにより、フルードカップリング200の容量係数Cを可変とするものである。図6に示すように、加速要求度合いが大きいほど、ロックアップクラッチ210のスリップ量を小さくして(スリップさせないで)、連結される駆動輪にエンジン100で発生したトルクをできるだけ伝達するようにスリップ制御される。逆に、加速要求度合いが小さい場合には、ロックアップクラッチ210のスリップ量を大きくして(スリップさせて)、エンジン100で発生したトルクをエンジンイナーシャ110に対して働かせて、エンジン100自体の回転数N(E)が上昇するようにスリップ制御される。
【0072】
図7を参照して、本実施の形態に係る制御装置であるECT_ECU400の内部メモリに記憶される、低速度比領域における、速度比eに対するフルードカップリング200の容量係数Cの容量係数特性曲線について説明する。
【0073】
図7に示すように、速度比eに対して、容量係数Cは、その低速度比領域において、通常の容量係数特性曲線(1)とは異なる、容量係数特性曲線(2)および容量係数特性曲線(3)の2つの特性曲線をさらに記憶している。なお、本実施の形態においては、通常の特性曲線とは異なる特性曲線を2種類さらに持つものとして説明するが、これに限定されるものではない。
【0074】
図7に示すように、通常の容量係数特性曲線(1)に対して容量係数特性曲線(2)および容量係数特性曲線(3)ともに、速度比eが0.5付近を超えるまで、容量係数Cの上昇をできるだけ抑えている。低速度比領域においては、容量係数Cが小さいほどエンジン100の回転数が早く上昇して、エンジン100自身のトルクが大きくなる。低速度比領域において、容量係数Cを増加させないように抑えると、エンジン100の回転数が早く上昇して、速度比eが大きくなり、容量係数Cが徐々に上がり始める。その状態でトルクが伝達される。そのとき、回転数が十分に上昇しているので(トルクも大きくパワーも大きいので)、加速度のピーク値を大きくできる。
【0075】
図3に示す「1st」のギヤ比が2.0から3.0のような比較的小さなギヤ比において、図7に示すように速度比eが小さい領域において容量係数Cが小さい値であることにより、エンジン100で発生したトルクを、エンジンイナーシャ110に対して働かせてエンジン回転数N(E)を上昇させるために使うことができる。その結果、車両の発進直後において、車両に発生する加速度のピーク値を上昇させることができる。
【0076】
すなわち、図7に示すように、速度比eが小さい領域においては、速度比eが大きくなると、通常は、容量係数Cを増加させる。容量係数Cが増加すると、エンジン100で発生したトルクはエンジンイナーシャ110に対して働いてエンジン100の回転数N(E)を上昇させるよりも、連結される駆動輪に伝達されることになる。低速度比側においては、容量係数を図7に示すように増加させずに小さい値を維持すると、エンジン100で発生したトルクは、連結される駆動輪に伝達されることに使用されないで、エンジンイナーシャ110に対して働いてエンジン100の回転数N(E)を上昇させることに使用される。エンジン100の回転数が十分に上昇した状態でトルクが伝達されるので、加速度のピーク値を大きくさせることができる。
【0077】
図8に示すように、容量係数Cが通常の容量係数特性曲線(1)である場合には、エンジンの回転数が上昇しない(エンジン100で発生したトルクが連結される駆動輪に伝達されるのでエンジン100の回転数が上昇しない)ので、エンジン100で発生したトルクは連結される駆動輪に伝達される。加速度Gのピーク値が小さい。一方、図7に示されるように容量係数特性曲線(2)または容量係数特性曲線(3)のように速度比eが小さい領域において、容量係数Cを上昇させるタイミングを遅らせているため、エンジン100の回転数が上昇するタイミングが早まる。これに伴い、図8に示すように、エンジン100で発生したトルクは、エンジンイナーシャ110に働いてエンジン100の回転数を上昇させてからトルクを伝達するため、エンジン100で発生した大きなパワーおよびトルクを連結される駆動輪に伝達されて、加速度Gのピーク値を大きくさせることになる。
【0078】
図9を参照して、低速度比領域における、加速要求度合いとロックアップクラッチスリップ量の関係について説明する。本実施の形態に係るECT_ECU400は、ロックアップクラッチ210の係合圧を制御して、ロックアップクラッチをスリップ制御させることにより、フルードカップリング200の容量係数Cを可変とするものである。図9に示すように、加速要求度合いが大きいほど、ロックアップクラッチ210のスリップ量を大きくして(スリップさせて)、エンジン100で発生したトルクをエンジン100の回転数N(E)が上昇するようにスリップ制御される。逆に、加速要求度合いが小さい場合には、ロックアップクラッチ210のスリップ量を小さくして(スリップさせないで)、エンジン100で発生したトルクを連結される駆動輪へ伝達するようにスリップ制御される。
【0079】
図10を参照して、本実施の形態に係る制御装置であるECT_ECU400の内部メモリに記憶される、速度比とトルクアシスト量との関係について説明する。図10に示すように、トルクアシスト量は速度比の関数であるとともに、発進時のギヤ比によりトルクアシスト量が異なる。最もギヤ比が小さい場合のトルクアシスト量は、特性曲線(1)で示され、最もギヤ比が大きい場合のトルクアシスト量は、特性曲線(6)で示される。他の特性曲線については、特性曲線(2)、特性曲線(3)、特性曲線(4)、特性曲線(5)の順にギヤ比が大きくなる。発進時のギヤ比に応じてトルクアシスト量が異なる。
【0080】
図11および図12を参照して、本実施の形態に係る制御装置であるECT_ECU400の内部メモリに記憶される、1stギヤ比とトルクアシスト量との関係について説明する。図11および図12に示すように、発進時のギヤ比によりトルクアシスト量が異なる。1stギヤ比を横軸に設定すると、トルクアシスト量は右下がり特性になる。また、図11に示すように、低速度比領域の容量係数が小さいほど、あるいは駆動力源トルク(エンジントルク)が大きいほど、トルクアシスト量は低下する傾向を有する。さらに図12に示すように、高速度比領域の容量係数の変化に対するトルクアシスト量は、エンジンおよびモータのイナーシャの影響を受ける。このため、イナーシャが比較的小さい場合、高速度比領域の容量係数が大きくなるとトルクアシスト量が小さくなる。一方、イナーシャが比較的大きい場合、トルクアシスト量が大きくなる。
【0081】
図13を参照して、本実施の形態に係る制御装置であるECT_ECU400で実行されるプログラムの制御構造について説明する。
【0082】
ステップ(以下、ステップをSと略す。)10にて、ECT_ECU400は、車速を検知する。この検知は、ECT_ECU400に入力される車速検知信号に基づいて行なわれる。
【0083】
S12にて、ECT_ECU400は、検知した車速が発進しきい値以下であるか否かを判断する。発進しきい値は、ECT_ECU400に内蔵されるメモリに予め記憶されている。車速が発進しきい値以下である場合には(S12にてYES)、処理はS14へ移される。もしそうでないと(S12にてNO)、処理はS38へ移される。
【0084】
S14にて、ECT_ECU400は、アクセル開度を検知する。この検知は、ECT_ECU400に入力されるアクセル開度信号に基づいて行なわれる。S16にて、ECT_ECU400は、検知したアクセル開度が予め定められた開度しきい値以上であるか否かを判断する。この開度しきい値は、ECT_ECU400に内蔵されたメモリに予め記憶されている。アクセル開度が、開度しきい値より大きい場合には(S16にてYES)、処理はS18へ移される。もしそうでないと(S16にてNO)、処理はS38へ移される。
【0085】
S18にて、ECT_ECU400は、アクセル開度変化率を算出する。この算出は、検知したアクセル開度と、ECT_ECU400に含まれるクロックが発生するクロック信号に基づいて、アクセル開度の時間変化率を算出することにより行なわれる。
【0086】
S20にて、ECT_ECU400は、算出したアクセル開度変化率が、予め定められた開度変化率しきい値よりも小さいか否かを判断する。アクセル開度変化率が予め定められた開度変化率しきい値以下である場合には(S20にてYES)処理はS38へ移される。もしそうでないと(S20にてNO)、処理はS22へ移される。
【0087】
S22にて、ECT_ECU400は、発進ギヤ比を識別する。この発進ギヤ比は、ECT_ECU400自体が決定する。S24にて、ECT_ECU400は、識別した発進ギヤ比に応じて処理を移す。
【0088】
S26にて、ECT_ECU400は、発進ギヤ比制御のトルクアシスト特性(1)(図10の特性曲線(1))を選択してモータジェネレータ500を制御する。このとき、ECT_ECU400は、モータジェネレータ500に接続されたインバータ600に対してアシスト量のトルクを発生するように指示信号を出力する。その後、この処理は終了する。
【0089】
S28にて、ECT_ECU400は、発進ギヤ比制御のトルクアシスト特性(2)(図10の特性曲線(2))を選択してモータジェネレータ500を制御する。このとき、ECT_ECU400は、モータジェネレータ500に接続されたインバータ600に対してアシスト量のトルクを発生するように指示信号を出力する。その後、この処理は終了する。
【0090】
S30にて、ECT_ECU400は、発進ギヤ比制御のトルクアシスト特性(3)(図10の特性曲線(3))を選択してモータジェネレータ500を制御する。このとき、ECT_ECU400は、モータジェネレータ500に接続されたインバータ600に対してアシスト量のトルクを発生するように指示信号を出力する。その後、この処理は終了する。
【0091】
S32にて、ECT_ECU400は、発進ギヤ比制御のトルクアシスト特性(4)(図10の特性曲線(4))を選択してモータジェネレータ500を制御する。このとき、ECT_ECU400は、モータジェネレータ500に接続されたインバータ600に対してアシスト量のトルクを発生するように指示信号を出力する。その後、この処理は終了する。
【0092】
S34にて、ECT_ECU400は、発進ギヤ比制御のトルクアシスト特性(5)(図10の特性曲線(5))を選択してモータジェネレータ500を制御する。このとき、ECT_ECU400は、モータジェネレータ500に接続されたインバータ600に対してアシスト量のトルクを発生するように指示信号を出力する。その後、この処理は終了する。
【0093】
S36にて、ECT_ECU400は、発進ギヤ比制御のトルクアシスト特性(6)(図10の特性曲線(6))を選択してモータジェネレータ500を制御する。このとき、ECT_ECU400は、モータジェネレータ500に接続されたインバータ600に対してアシスト量のトルクを発生するように指示信号を出力する。その後、この処理は終了する。
【0094】
S38にて、ECT_ECU400は、モータジェネレータ500によるトルクアシスト処理なしと設定する。その後この処理は終了する。
【0095】
以上のような構造およびフローチャートに基づく、本実施の形態に係るパワートレインの動作について説明する。
【0096】
制御が開始されると車速が検知され(S10)、車速が発進しきい値以下であると、車両の発進時であると判断され(S12にてYES)、アクセル開度が検知される(S14)。アクセル開度が予め定められた開度しきい値以上であると(S16にてYES)、アクセル開度変化率が算出される(S18)。アクセル開度変化率が予め定められた開度変化率しきい値よりも大きいと(S20にてYES)、発進ギヤ比が検知される(S22)。
【0097】
発進ギヤ比から求められる発進ギヤ比識別番号が(1)であると(S24で「1」)、ECT_ECU400により、発進ギヤ比制御のトルクアシスト特性(1)(図10の特性曲線(1))が選択されて、モータジェネレータ500が制御される(S26)。
【0098】
発進ギヤ比から求められる発進ギヤ比識別番号が(2)であると(S24で「2」)、ECT_ECU400により、発進ギヤ比制御のトルクアシスト特性(2)(図10の特性曲線(2))が選択されて、モータジェネレータ500が制御される(S28)。
【0099】
発進ギヤ比から求められる発進ギヤ比識別番号が(3)であると(S24で「3」)、ECT_ECU400により、発進ギヤ比制御のトルクアシスト特性(3)(図10の特性曲線(3))が選択されて、モータジェネレータ500が制御される(S30)。
【0100】
発進ギヤ比から求められる発進ギヤ比識別番号が(4)であると(S24で「4」)、ECT_ECU400により、発進ギヤ比制御のトルクアシスト特性(4)(図10の特性曲線(4))が選択されて、モータジェネレータ500が制御される(S32)。
【0101】
発進ギヤ比から求められる発進ギヤ比識別番号が(5)であると(S24で「5」)、ECT_ECU400により、発進ギヤ比制御のトルクアシスト特性(5)(図10の特性曲線(5))が選択されて、モータジェネレータ500が制御される(S34)。
【0102】
発進ギヤ比から求められる発進ギヤ比識別番号が(6)であると(S24で「6」)、ECT_ECU400により、発進ギヤ比制御のトルクアシスト特性(6)(図10の特性曲線(6))が選択されて、モータジェネレータ500が制御される(S36)。
【0103】
このように、発進ギヤ比の違いによってトルクアシスト量を変更する。図7の通常の容量係数特性曲線(1)に対して、発進ギヤ比に基づいて、図10の特性曲線(1)〜(6)を適切に選択することにより、発進ギヤの違いを補填して、同じような加速性能を実現することができる。
【0104】
以上のようにして、本実施の形態に係るパワートレインによると、速度比に対応してフルードカップリングの容量係数を変化させる。このとき、低速度比領域と高速度比領域とに分けて容量係数の特性が記憶される。それらの容量係数の特性に従って、車両に発生する加速度が決定される。一方、発進時のギヤ比に対してエンジンをアシストするモータのトルクアシスト特性を規定しておく。このとき、発進時のギヤ比毎に分けて規定する。ECT_ECUは、速度比に対応して規定された容量係数により発現する加速度を発進ギヤ比に対応してモータによるアシストを実行させる。このとき、ギヤ比の大小を分けてトルクアシスト特性を分けている。その結果、ロックアップクラッチ付きのフルードカップリングを搭載した車両において、発進時のギヤ比にかかわらず、十分な加速性能を実現させる車両のパワートレインを提供することができる。
【0105】
また、上述した実施の形態においては、本発明に係る制御装置をロックアップクラッチ付きフルードカップリングに適用した例について説明したが、本発明の制御装置はこれに限定されない。たとえば、ロックアップクラッチ付きフルードカップリングに代えて、本発明に係る制御装置をロックアップクラッチ付きトルクコンバータに適用してもよい。フルードカップリングに代えてトルクコンバータを用いても、エンジンに対してモータによりトルクのアシストを行なうことにより、発進ギヤ比の違いを補填して、所望の加速度を実現させることができる。
【0106】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の実施の形態に係る制御装置が搭載された車両のパワートレインの構成を示す図である。
【図2】 図1に示す自動変速機のスケルトン図である。
【図3】 図1に示す自動変速機の作動係合状態を表わす図である。
【図4】 低速度比領域における速度比に対するフルードカップリングの容量係数の関係を示す図である。
【図5】 低速度比領域における時間に対する加速度の変化を示す図である。
【図6】 加速要求度合いに対するフルードカップリングのロックアップクラッチのスリップ量の関係を示す図である。
【図7】 低速度比領域における速度比に対するフルードカップリングの容量係数の関係を示す図である。
【図8】 高速度比領域における時間に対する加速度の変化を示す図である。
【図9】 高速度比領域における加速要求度合いに対するフルードカップリングのロックアップクラッチのスリップ量の関係を示す図である。
【図10】 本発明の実施の形態に係る制御装置に記憶される、速度比に対するトルクアシスト特性曲線を示す図である。
【図11】 本発明の実施の形態に係る制御装置に記憶される、1stギヤ比に対するトルクアシスト特性曲線(その1)を示す図である。
【図12】 本発明の実施の形態に係る制御装置に記憶される、1stギヤ比に対するトルクアシスト特性曲線(その2)を示す図である。
【図13】 本発明の実施の形態に係るECT_ECUで実行される処理の制御構造を示すフローチャートである。
【符号の説明】
100 エンジン、110 エンジンイナーシャ、200 フルードカップリング、210 ロックアップクラッチ、220 ポンプ羽根車、230 タービン羽根車、300 自動変速機、400 ECT_ECU、500 モータジェネレータ、600 インバータ。
Claims (18)
- 第1の動力源と、前記第1の動力源をアシストする第2の動力源と、前記動力源からの駆動力が流体継手を介して伝達される変速機とを搭載した車両の制御装置であって、
前記車両が発進する際の前記変速機のギヤ比が小さいほど大きくなるように、かつ前記流体継手の容量係数が小さいほど大きくなるように、前記第2の動力源による駆動力のアシストの度合いを設定するための設定手段を含み、
前記第1の動力源は、エンジンである、制御装置。 - 第1の動力源と、前記第1の動力源をアシストする第2の動力源と、前記動力源からの駆動力が流体継手を介して伝達される変速機とを搭載した車両の制御装置であって、
前記車両に要求される加速の度合いを算定するための算定手段と、
前記算定手段により算定された加速の度合いが大きいほど大きくなるように、前記車両が発進する際の前記変速機のギヤ比が小さいほど大きくなるように、かつ前記流体継手の容量係数が小さいほど大きくなるように、前記第2の動力源による駆動力のアシストの度合いを設定するための設定手段とを含み、
前記第1の動力源は、エンジンである、制御装置。 - 前記算定手段は、前記車両に要求される要求加速度に対して実際の加速度により満足された比率および要求加速度と実際の加速度との差のいずれかを表わす加速の度合いを算定するための手段を含む、請求項2に記載の制御装置。
- 前記設定手段は、前記ギヤ比に対応して前記アシストの度合いが異なる複数の変化特性を設定するための手段を含む、請求項1〜3のいずれかに記載の制御装置。
- 前記設定手段は、
前記ギヤ比に対応して前記アシストの度合いが異なる複数の変化特性を設定するための手段と、
前記複数の変化特性の中から1の変化特性を選択することにより、前記第2の動力源による駆動力のアシストの度合いを設定するための手段とを含む、請求項1〜3のいずれかに記載の制御装置。 - 前記第2の動力源は電動機であり、
前記設定手段は、前記電動機により発生するトルク量を設定するための手段を含む、請求項1〜5のいずれかに記載の制御装置。 - 前記制御装置は、前記設定手段により前記第2の動力源による駆動力のアシストの度合いを設定するか否かを判断するための判断手段をさらに含む、請求項1〜6のいずれかに記載の制御装置。
- 前記制御装置は、前記車両の車速を検出するための検出手段をさらに含み、
前記判断手段は、前記検出手段により検出された車速に基づいて、前記第2の動力源による駆動力のアシストの度合いを設定するか否かを判断するための手段を含む、請求項7に記載の制御装置。 - 前記判断手段は、前記車速が低いと前記設定手段により前記第2の動力源による駆動力のアシストの度合いを設定するように、前記車速が高いと前記設定手段による前記第2の動力源による駆動力のアシストの度合いの設定を中止するように判断するための手段を含む、請求項8に記載の制御装置。
- 第1の動力源と、前記第1の動力源をアシストする第2の動力源と、前記動力源からの駆動力が流体継手を介して伝達される変速機とを搭載した車両の制御方法であって、
前記車両が発進する際の前記変速機のギヤ比が小さいほど大きくなるように、かつ前記流体継手の容量係数が小さいほど大きくなるように、前記第2の動力源による駆動力のアシストの度合いを設定する設定ステップを含み、
前記第1の動力源は、エンジンである、制御方法。 - 第1の動力源と、前記第1の動力源をアシストする第2の動力源と、前記動力源からの駆動力が流体継手を介して伝達される変速機とを搭載した車両の制御方法であって、
前記車両に要求される加速の度合いを算定する算定ステップと、
前記算定ステップにて算定された加速の度合いが大きいほど大きくなるように、前記車両が発進する際の前記変速機のギヤ比が小さいほど大きくなるように、かつ前記流体継手の容量係数が小さいほど大きくなるように、前記第2の動力源による駆動力のアシストの度合いを設定する設定ステップとを含み、
前記第1の動力源は、エンジンである、制御方法。 - 前記算定ステップは、前記車両に要求される要求加速度に対して実際の加速度により満足された比率および要求加速度と実際の加速度との差のいずれかを表わす加速の度合いを算定するステップを含む、請求項11に記載の制御方法。
- 前記設定ステップは、前記ギヤ比に対応して前記アシストの度合いが異なる複数の変化特性を設定するステップを含む、請求項10〜12のいずれかに記載の制御方法。
- 前記設定ステップは、
前記ギヤ比に対応して前記アシストの度合いが異なる複数の変化特性を設定するステップと、
前記複数の変化特性の中から1の変化特性を選択することにより、前記第2の動力源による駆動力のアシストの度合いを設定するステップとを含む、請求項10〜12のいずれかに記載の制御方法。 - 前記第2の動力源は電動機であり、
前記設定ステップは、前記電動機により発生するトルク量を設定するステップを含む、請求項10〜14のいずれかに記載の制御方法。 - 前記制御方法は、前記設定ステップにて前記第2の動力源による駆動力のアシストの度合いを設定するか否かを判断する判断ステップをさらに含む、請求項10〜15のいずれかに記載の制御方法。
- 前記制御方法は、前記車両の車速を検出する検出ステップをさらに含み、
前記判断ステップは、前記検出ステップにて検出された車速に基づいて、前記第2の動力源による駆動力のアシストの度合いを設定するか否かを判断するステップを含む、請求項16に記載の制御方法。 - 前記判断ステップは、前記車速が低いと前記設定ステップにて前記第2の動力源による駆動力のアシストの度合いを設定するように、前記車速が高いと前記設定ステップにて前記第2の動力源による駆動力のアシストの度合いの設定を中止するように判断するステップを含む、請求項17に記載の制御方法。
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