JP2004059762A - 自己粘着性シート及びその製造方法 - Google Patents

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【課題】従来の手段による自己粘着性シートは、テープの引剥力(巻戻力、JIS Z 0237に準拠)が2.5N/10mm程度と強すぎてしまった。管材保護用の自己粘着性シートとして求められる巻戻力は、1.0〜1.5N/10mmがよいとされている。
【解決手段】自己粘着性シートを、塩化ビニル系重合体100重量部、可塑剤5〜80重量部、粘着付与剤3〜20重量部及び改質剤1〜10重量部を混合した組成物をシート状に形成し、アニールし、シート表面にシボを設けたことを特徴とする。

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、空調機用配管、ガス管、水道管等の管の外周に巻き付けられて管を保護する自己粘着性シートに係り、特に不用意に巻き戻されないと共に巻き付け作業のし易い自己粘着性シート及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
自己粘着性シートとして、本出願人は、特開2001−3008号公報で、アニールの設定温度で粘着力を0.294〜0.589N/10mm(30〜60gf/10mm)に設定できるものを開示した。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記公報の手段による自己粘着性シートは、テープの引剥力(巻戻力、JIS Z 0237に準拠)が2.5N/10mm程度と強すぎてしまった。管材保護用の自己粘着性シートとして求められる巻戻力は、1.0〜1.5N/10mmがよいとされている。
【0004】
本発明の目的は、上記従来品の欠点を解消すべく発明されたものであって、巻戻力を1.0〜1.5N/10mmの範囲内で任意に設定した自己粘着性シートを提供するものである。
【0005】
【課題を解決する手段】
本発明は、上記に鑑み発明されたものであって、塩化ビニル系重合体100重量部、可塑剤5〜80重量部、粘着付与剤3〜20重量部及び改質剤1〜10重量部を混合した組成物をシート状に形成し、アニールした自己粘着性シートにおいて、シート表面にシボを設けたことを特徴とする自己粘着性シートである。
【0006】
ここで、前記シボは、自己粘着性シートの巻戻力を弱めるために設けられたものであり、これにより、シボのない自己粘着性シートの巻戻力より低い値の巻戻力を得ることができる。このシボを設ける手段としては、シート形成時のカレンダ工程時にその表面に細かい凹凸のあるエンボスロールを設ける手段がある。
【0007】
このシボとしては、好ましくは、前記シート表面が表面粗さ(中心線平均粗さ)Ra1.0〜1.8μmであることが好ましい。この表面粗さの値を特定したのは、あまりに小さいと、シボを設けた意味がなく、あまりに大きいと巻戻力が小さくなりすぎるためである。巻戻力があまりに小さくなると、テープ状にして巻き戻す際に、不用意に巻き戻されてしまい、作業し難くなるためである。
【0008】
本発明における塩化ビニル系重合体は、ポリ塩化ビニルの他、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−エチレン共重合体、塩化ビニル−プロピレン共重合体、塩素化ポリエチレン等や、これらの混合物を含むものを使用できる。ここで、塩化ビニル系重合体の重合度は700〜3000のものを使用できるが、加工性の問題から1700〜3000の高重合度の重合体がよく、この場合、低重合度(700〜1700)の場合に比べて初期弾性率が高く、風合いのよいシートを得ることができる。また、700〜1700の低重合度の場合、改質剤を配合すれば加工性を改善できる。なお、改質剤は1〜10重量部配合するのが好ましく、具体的にはMBS、EVA、塩素化ポリエチレン等があり、高重合度の場合に配合してもよいのは勿論である。
【0009】
本発明における可塑剤としては、エステル系可塑剤、ポリエステル系可塑剤等を使用でき、好ましくはエステル系高分子量可塑剤である。可塑剤の具体的な例としては、フタル酸ジヘプチル(DHP)、フタル酸ジ−2−エチルヘキシル(DOP)、フタル酸ジ−n−オクチル(n−DOP)、フタル酸ジイソデシル(DIDP)、ベンジルブチルフタレート(BBP)、トリメリット酸トリ−2−エチルヘキシル(TOTM)、アジピン酸ジ−2−エチルヘキシル(DOA)、トリクレジルフォスフェート(TCP)、ベンジルオクチルアジペート(BOA)、ジフェニルクレジルフォスフェート(DPCP)若しくはアジピン酸ジイソデシル等がある。なお、これらの混合物を使用でき、可塑剤によって粘着力が異なるのは勿論である。
【0010】
ここで、上記可塑剤が5〜80重量部の範囲内で配合されるのは、5重量部未満であると可塑剤としての効果が発現せず80重量部より多くなると組成物自体の弾性力や引張強度が低下してしまうためである。
【0011】
また、本発明における粘着付与剤としては、ロジン系樹脂、テルペン系樹脂、脂肪族系石油樹脂、芳香族系石油樹脂、脂環族系石油樹脂、クロマン樹脂、スチレン系樹脂、アルキルフェノール樹脂、キシレン樹脂等を使用できるが、好ましくはテルペン系樹脂や脂肪族系石油樹脂がよく、試験した結果、これらの樹脂に限って高い粘着力を得ることができた。具体的な例としては、テルペン樹脂であるYSレジンPX−1000(安原油脂社製)、脂肪族系石油樹脂であるエスコレッツ(エッソ化学社製)がよい。なお、水添ロジン、水添ロジンエステル、さらには脂肪族系石油樹脂等の樹脂でも水添系の樹脂は、加工性が高いが粘着力が高くならないため高い粘着力を必要とする場合には粘着付与剤としては好ましくない。
【0012】
ここで、上記粘着付与剤が3〜20重量部の範囲内で配合されるのは、3重量部未満であると高い粘着力が発現せず20重量部より多くなると粘着力が高くなりすぎて剥離粘着力をも高くなってしまうためである。
【0013】
なお、本発明の自己粘着シートに難燃剤を配合した場合には、その基材の難燃性が減殺されることなく粘着力を有するのは勿論のことである。
【0014】
本発明に係る自己粘着性シートは、次の工程で製造される。すなわち、他の発明としての自己粘着性シートの製造方法は、塩化ビニル系重合体100重量部、可塑剤5〜80重量部、粘着付与剤3〜20重量部及び改質剤1〜10重量部を混合し、この混合した組成物をシート状に形成し、さらにこのシートに対して前記粘着付与剤の軟化点〜該軟化点より15℃低い温度の範囲に設定された温度でアニールをすることを特徴とするものである。
【0015】
この発明において、アニールの温度を前記粘着付与剤の軟化点〜該軟化点より15℃低い温度の範囲に設定したのは、アニールの設定温度によって巻戻力を低く調整できることを見出したためである。
【0016】
【実施例】
以下、本発明の実施例について詳細に説明する。
【0017】
表1に本発明にかかる自己粘着性シートの各実施例と各比較例を示す。表1における中心線平均粗さRa(単位:μm)は、JIS B 0601、JIS B 0633に準拠して測定したものであり、巻戻力は、このアニールを行った自己粘着性シートをJIS Z 0237に準拠して測定した値であり、300mm/分の速度で引き剥がして測定した。表1の作業性は、テープの自重で巻ほぐれるか、または、巻きが重すぎる場合を×、テープの自重で巻きほぐれないが引き剥がしが軽い、または、巻きが若干重い場合を△、テープの自重で巻きほぐれなく、引き剥がし及び巻きが適度である場合を○にした。
【0018】
【表1】
Figure 2004059762
【0019】
ここで、表1の実施例1の自己粘着性シートは、重合度1300のポリ塩化ビニル樹脂(大洋塩ビ社製)100重量部、可塑剤としてのDOP(ジェイプラス社製)55重量部、粘着付与剤としてのC石油樹脂(エッソ化学社製、軟化点94℃)10重量部、改質剤としてのMBS(日本合成ゴム社製)2重量部、安定剤としてのCa−Zn系安定剤(水澤化学社製)2重量部、滑剤としてのSt酸(日本油脂社製)0.2重量部、さらにMMA(鐘淵化学工業社製)2重量部が配合されている。
【0020】
本実施例1は、上記配合物を混合し、カレンダ工程により厚さ150μmのフィルムに成形する。このフィルムを巻芯に巻き取った後、90℃(上記粘着付与剤の軟化点より4℃低い温度)の環境下で8時間放置するアニールを行った。なお、この時のカレンダ工程で、エンボスロールにて表1に示す中心線平均粗さ(単位:μm)を与えている。
【0021】
本実施例1にあっては、要求される巻戻力を得ることができた。そのため、不用意に巻き戻されないと共に巻き付け作業のし易い自己粘着性シートを得ることができた。
【0022】
比較例1、2及び実施例2、3は、実施例1の製造方法において、カレンダ工程時のエンボスロールを変えて中心線平均粗さRaの値を変えたものである。Raが1.0〜1.8の範囲なら巻戻力が要望される範囲内であり作業性も良好であるが、この範囲を外れると作業性が悪かった。
【0023】
比較例3、4及び実施例4は、実施例1の製造方法において、アニールの温度を変えたものである。アニールの設定温度が前記粘着付与剤の軟化点から該軟化点より15℃低い温度の範囲に設定されていると、巻戻力が要望される範囲内であり、作業性も良好であるが、この範囲を外れると作業性が悪かった。
【0024】
【発明の効果】
本発明にあっては、塩化ビニル系重合体100重量部、可塑剤5〜80重量部、粘着付与剤3〜20重量部及び改質剤1〜10重量部を混合した組成物をシート状に形成し、アニールした自己粘着性シートにおいて、シート表面にシボを設けたことを特徴とし、これにより不用意に巻き戻されない範囲内で巻戻力を低下させる一方、巻き付け作業のし易い自己粘着性シートを提供することができた。
【0025】
他の発明にあっては、前記シート表面が中心線平均粗さRa1.0〜1.8μmであることを特徴とし、これにより巻戻力を1.0〜1.5N/10mmの範囲内で任意に設定し、不用意に巻き戻されないと共に巻き付け作業のし易い自己粘着性シートを提供することができた。
【0026】
また、他の発明にあっては、塩化ビニル系重合体100重量部、可塑剤5〜80重量部、粘着付与剤3〜20重量部及び改質剤1〜10重量部を混合し、この混合した組成物をシート状に形成し、さらにこのシートに対して前記粘着付与剤の軟化点〜該軟化点より15℃低い温度の範囲に設定された温度でアニールをすることを特徴とし、これにより巻戻力を1.0〜1.5N/10mmの範囲内で任意に設定し、不用意に巻き戻されないと共に巻き付け作業のし易い自己粘着性シートを製造する製造方法を提供できた。

Claims (3)

  1. 塩化ビニル系重合体100重量部、可塑剤5〜80重量部、粘着付与剤3〜20重量部及び改質剤1〜10重量部を混合した組成物をシート状に形成し、アニールした自己粘着性シートにおいて、シート表面にシボを設けたことを特徴とする自己粘着性シート。
  2. 前記シート表面が中心線平均粗さRa1.0〜1.8μmであることを特徴とする請求項1記載の自己粘着性シート。
  3. 塩化ビニル系重合体100重量部、可塑剤5〜80重量部、粘着付与剤3〜20重量部及び改質剤1〜10重量部を混合し、この混合した組成物をシート状に形成し、さらにこのシートに対して前記粘着付与剤の軟化点〜該軟化点より15℃低い温度の範囲に設定された温度でアニールをすることを特徴とする自己粘着性シートの製造方法。
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