JP2004055555A - 正孔注入輸送層用組成物、有機el素子及びその製造方法 - Google Patents

正孔注入輸送層用組成物、有機el素子及びその製造方法 Download PDF

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Shunichi Seki
関 俊一
Hiroshi Kiguchi
木口 浩史
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Abstract

【課題】材料や素子設計の最適化を行うことができ、短時間、低コストで精度の高いパターニング成膜を行うことができる正孔注入輸送層用組成物を提供する。
【解決手段】本発明の正孔注入輸送層用組成物は、有機EL素子の正孔注入輸送層をインクジェット式記録ヘッドを用いてパターニング形成するために用いられる組成物であって、正孔注入輸送層の成分である導電性化合物と溶媒とを含み、インクジェット式記録ヘッドのインク吐出ノズル面を構成する材料に対する接触角が30°から170°の範囲であり、かつ、粘度が1cpから20cpの範囲であって、表面張力が20dyneから70dyneの範囲である。このような物性的特性により、材料や素子設計の最適化を行うことができ、かつ簡便、短時間、低コストで精度の高いパターニング成膜を行うことができる正孔注入輸送層用組成物を提供することができる。
【選択図】   図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ディスプレイ、表示光源などに用いられる電気的発光素子である有機EL(electroluminescence)素子の製造方法に関するものである。特に、インクジェットパターニングに好適な正孔注入輸送層用組成物に係わる。
【0002】
【従来の技術】
蛍光性有機分子を含む固体薄膜を電極で挟み電荷を印加すると陽極から正孔(ホール)が、陰極から電子が注入され、これらのキャリアは印加電場により薄膜中を移動し再結合する。この再結合の際放出されたエネルギーは蛍光分子の一重項励起状態(分子励起子)の形成に消費され、この一重項励起子の基底状態への緩和にともなって放出される蛍光を利用した素子が有機EL素子である。
【0003】
ところで、発光層のみからなる単層型構造素子では発光効率が低く、耐久性に問題があるため、陽極と発光層間に密着性の良い正孔注入輸送層を設けた二層構造型素子が提案されている。積層構造を採用することで、キャリアの注入/輸送バランスおよびキャリアの再結合部位の制御により、EL発光素子の発光効率、耐久性を向上させることができる。また、積層構造によれば、発光、注入/輸送といった機能を別々の材料に分担させることができるため、材料、素子の最適設計が可能になるという利点を持つ。
【0004】
これまで二層積層型有機EL素子の正孔注入輸送層化合物としては、ポルフィリン化合物(米国特許第4356429号,同4720432号)、アニリンやピリジンおよびそれらの誘導体低分子(特開平 3−34382号)、あるいはカーボン層用いた正孔注入輸送層(特開平 8−31573号)などがこれまでに提案されている。これらの低分子系材料を用いた正孔注入輸送層形成には、真空蒸着やスパッタによる成膜法が一般的である。高分子材料としてはポリアニリン(Nature,357,477(1992))などが知られ、スピンコートなどの湿式法で成膜される。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、真空蒸着やスパッタによる成膜法はバッチ処理であり長時間を有するため量産効率が悪い。また低分子材料の場合には成膜後結晶化しやすく、素子の信頼性が低下するといった課題を有する。一方、高分子材料の場合は分子設計上の自由度が高く、湿式のため材料の最適化がしやすいという利点を有するが、スピンコートなどの成膜法は材料の殆どを浪費するという大きな問題がある。
【0006】
更に、フルカラーディスプレイなど材料の微細パターンニングが必要とされる場合、蒸着法においては高精度のパターニングは困難であり、またフォトリソグラフィーによるパターニング工程に対しては材料に耐性がないという根本的な問題がある。高分子材料においても同様な問題を有する。正孔注入輸送層あるいはバッファー層として用いられる材料は導電性を有するものであるから完全なパターニングが実現できなければ同一基板上に設けられた隣の画素間での漏電を引き起こす原因となる。
【0007】
【課題を解決するための手段】
そこで、本発明は、材料や素子設計の最適化を行うことができ、かつ簡便、短時間、低コストで精度の高いパターニング成膜を行うことができる正孔注入輸送層用組成物を提供することを課題とする。また、正孔注入輸送層用組成物の製造方法を提供することを課題とする。また、この組成物を用いた有機EL素子の製造法を提供することを課題とする。さらに、この製造方法で製造した、発光特性に優れた有機EL素子を提供することを課題とする。
【0008】
本発明の正孔注入輸送層用組成物は、有機EL素子の正孔注入輸送層をインクジェット式記録ヘッドを用いてパターニング形成するために用いられる組成物であって、正孔注入輸送層を形成する導電性化合物を分散或いは溶解させる極性溶媒、及び、インクジェットパターニングを容易にするための湿潤剤とを含み、以下の物性的特性(接触角、粘度、表面張力)を有する。
【0009】
(1)接触角
インクジェット式記録ヘッドのノズル面を構成する材料と正孔注入輸送層用組成物との接触角は30deg〜170degの範囲に設定することが好ましい。特に、35deg〜65degの範囲に設定することが好ましい。
【0010】
正孔注入輸送層用組成物がこの範囲の接触角をもつことによって吐出時の飛行曲がりを抑制することができ、精密な吐出制御が可能になる。接触角が30deg未満の場合、正孔注入輸送層用組成物のノズル面における濡れ性が増大し、正孔注入輸送層用組成物を吐出する際に、正孔注入輸送層用組成物がノズル孔の周囲に非対称に付着することがある。この場合、ノズル孔に付着した正孔注入輸送層用組成物と吐出しようとする正孔注入輸送層用組成物との相互間に引力が働くため、正孔注入輸送層用組成物は不均一な力により吐出されることになり、飛行曲がりが生じ、目標位置に着弾できない。また、飛行曲がり頻度が多くなる。一方、接触角が170degを超えると、正孔注入輸送層用組成物とノズル孔との相互作用が極小となり、ノズル先端でのメニスカスの形状が安定しないため正孔注入輸送層用組成物の吐出量及び吐出タイミングの制御が困難になる。
【0011】
尚、飛行曲がりとは、正孔注入輸送層用組成物をノズル孔から吐出させたとき、正孔注入輸送層用組成物の着弾位置が目標位置に対して30μm以上のずれを生じることをいう。また、飛行曲がり頻度とは、インクジェット式記録ヘッドの圧電体薄膜素子の振動周波数、例えば、14.4kHzで連続吐出したときの飛行曲がりが生じるまでの時間をいう。
【0012】
(2)粘度
正孔注入輸送層用組成物の粘度は1cp〜20cpの範囲が好ましい。特に、2cp〜4cpの範囲に設定することが好ましい。
【0013】
正孔注入輸送層用組成物の粘度が1cp未満の場合、ノズル孔における正孔注入輸送層用組成物のメニスカスが安定せず、吐出制御が困難となる。一方、粘度が20cpを超えると、ノズル孔から正孔注入輸送層用組成物を円滑に吐出させることができず、ノズル孔を大きくする等のインクジェット式記録ヘッドの仕様を変更しない限り、インク吐出が困難となる。さらに、粘度が大きい場合、正孔注入輸送層用組成物中の固形成分が析出しやすくなり、ノズル孔の目詰まり頻度が高くなる。
【0014】
(3)表面張力
正孔注入輸送層用組成物の表面張力は20dyne〜70dyneの範囲に設定することが好ましい。特に、25dyne〜40dyneの範囲内に設定することが好ましい。
【0015】
この範囲内の表面張力に設定することにより、上述した接触角と同様、飛行曲がりを抑制し、飛行曲がり頻度を低減することができる。表面張力が70dyne以上になると、ノズル先端でメニスカス形状が安定しないため、正孔注入輸送層用組成物の吐出量、吐出タイミングの制御が困難となる。一方、表面張力が20dyne未満であると、ノズル面の構成材料に対する正孔注入輸送層用組成物の濡れ性が増大するため、上記接触角の場合と同様、飛行曲がりが生じ、飛行曲がり頻度が高くなる。
【0016】
この飛行曲がりは、主にノズル孔の濡れ性が不均一である場合や、正孔注入輸送層用組成物の固形成分の付着による目詰まり等によって発生するが、インクジェット式記録ヘッドをクリーニングする(以下、「フッラッシング」という。)ことによって解消することができる。このフッラッシングは通常、インクジェット式記録ヘッド機構に細工をして目詰まりや飛行曲がりを防止するもので、正孔注入輸送層用組成物の吐出が一定時間(以下、「フラッシング時間」という。)行われなくなると、所定量の正孔注入輸送層用組成物を強制的に吐出させる仕組みになっている。このフラッシング時間は、正孔注入輸送層用組成物を吐出していないノズルが乾燥し、飛行曲がりを起こすまでの時間を意味し、正孔注入輸送層用組成物の特性を示す指標となる。フラッシング時間が長い程、インクジェットの印刷技法に適しているといえるため、長時間安定して正孔注入輸送層用組成物を吐出することができる。
【0017】
従って、正孔注入輸送層用組成物が上記の物性値を有することで、フラッシング時間を長くすることができ、大気と正孔注入輸送層用組成物の界面をよりフレッシュな状態に保持することができる。また、吐出される正孔注入輸送層用組成物のドットの濃度を均一にすることができるので正孔注入輸送層用組成物のムラの発生等を防止することができる。さらに、飛行直進性に優れるため、インクジェット式記録ヘッドの制御が容易となり、製造装置を簡易な構成とすることができる。
【0018】
尚、極性溶媒として、水と低級アルコール(例えば、メタノール又はエタノール)の混合溶媒が好ましい。また、水とセロソルブ系溶媒(例えば、エトキシエタノール)の混合溶媒としてもよい。また、湿潤剤はグリセリンが好ましい。さらに、本発明の正孔注入輸送層用組成物の製造方法は、超音波処理工程と、濾過工程を経て調整するものである。
【0019】
本発明の有機EL素子の製造方法は、画素領域毎に区画された仕切部材内に形成される、正孔注入輸送層と発光層の積層構造を有する有機EL素子の製造方法であって、画素領域に対応した開口部を備える仕切部材を基板上に形成する工程と、インクジェット式記録ヘッドを用いて前記開口部内に、本発明の正孔注入輸送層用組成物を充填する工程と、開口部内に充填された正孔注入輸送層用組成物を乾燥処理して正孔注入輸送層を形成する工程と、を備える。この方法により、正孔注入輸送層の膜厚、ドット数等の条件を任意に調整することができるため、有機EL発光素子のサイズやパターンも任意に設定することができる。
【0020】
本発明の有機EL素子は、上記の方法で製造されるものであり、正孔注入輸送層の膜厚が、0.1μm以下とする。また、正孔注入輸送層の膜抵抗は、0.5×10Ω/m乃至5×10Ω/mの範囲とする。正孔注入輸送層の膜厚、膜抵抗を上記の範囲に設定することで、有機EL素子の発光特性を向上させることができる。
【0021】
【発明の実施の形態】
発明の実施の形態1.
以下、本実施の形態に係わる正孔注入輸送層用組成物、有機EL素子の製造方法及び有機EL素子について説明する。
【0022】
正孔注入輸送層用組成物は、主として正孔注入輸送層を形成する導電性化合物、分散溶媒、湿潤剤を含み、インクジェット方式によるパターン成膜に用いられる。この正孔注入輸送層を形成する導電性化合物は陽極よりイオン化ポテンシャルが低い化合物が望ましい。例えば、陽電極としてITOを用いた場合、低分子系材料としては、銅フタロシアニン等のポルフィリン化合物が挙げられる。
【0023】
尚、その他の添加剤、被膜安定化材料を添加してもよく、例えば、粘度調製剤、老化防止剤、pH調製剤、防腐剤、樹脂エマルジョン、レベリング剤等を用いることができる。
【0024】
(実施例)
導電性化合物(正孔注入輸送層成分)として、銅フタロシアニンを用いた場合の、正孔注入輸送層用組成物の物性的特性について検討した。試料は表1乃至表10に示す組成物1乃至組成物10を調整した。
【0025】
組成物1
【0026】
【表1】
Figure 2004055555
【0027】
組成物2
【0028】
【表2】
Figure 2004055555
【0029】
組成物3
【0030】
【表3】
Figure 2004055555
【0031】
組成物4
【0032】
【表4】
Figure 2004055555
【0033】
組成物5
【0034】
【表5】
Figure 2004055555
【0035】
組成物6
【0036】
【表6】
Figure 2004055555
【0037】
組成物7
【0038】
【表7】
Figure 2004055555
【0039】
組成物8
【0040】
【表8】
Figure 2004055555
【0041】
組成物9
【0042】
【表9】
Figure 2004055555
【0043】
組成物10
【0044】
【表10】
Figure 2004055555
【0045】
(吐出評価)
表1〜表8に示す組成物1〜組成物8のインクジェット式記録ヘッドを構成するノズル面構成材料に対する接触角、粘度および表面張力を測定し、それらの吐出性を評価した。吐出評価はインクジェットプリント装置(エプソン製MJ−500C)を用いて行った。
【0046】
尚、粘度は20℃での測定値である。これらの結果を表11に示す。
【0047】
【表11】
Figure 2004055555
【0048】
この結果から、接触角は30°から170°、特に、35°から65°が好ましいことがわかる。また、粘度は1cpから20cp、特に、2cpから4cpが好ましく、表面張力は20dyneから70dyne、特に、25dyneから40dyneの範囲が好ましいことがわかる。
【0049】
また、湿潤剤としてグリセリンが混入されている組成物1乃至組成物3は、湿潤剤が混入されていない組成物6乃至組成物8と比較すると、吐出性に優れていることがわかる。従って、インク組成物中に湿潤剤が含まれていることが好ましい。湿潤剤を混入することで、インク組成物がノズル口で乾燥・凝固することを有効に防止することができる。かかる湿潤剤としては、例えば、グリセリン、ジエチレングリコール等の多価アルコール類が挙げられるが、グリセリンが特に好ましい。
【0050】
(正孔注入輸送層用組成物の製法)
表1乃至表3、及び、表9、表10にそれぞれ示す組成物1乃至組成物3、及び、組成物9、組成物10を製造し、超音波処理前後の正孔注入輸送層形成化合物(銅フタロシアニン)の粒度分布を測定した。更に、超音波処理後、濾過工程を経た上記正孔注入輸送層用組成物を用い、インクジェット方式パターニングにより形成された正孔注入輸送層の成膜性を評価した。
【0051】
これらの結果を表12に示す。超音波処理の効果は1μm以下の粒度分布の割合で示した。
【0052】
尚、スチレンアクリル樹脂分散液での粒径は1μm以上である。
【0053】
【表12】
Figure 2004055555
【0054】
この結果から、前記分散液を4時間超音波処理することで分散性を上げることができることがわかる。また、超音波処理分散液をさらに濾過することによって、より均一な正孔注入輸送層膜を得ることができる。また、導電性化合物の分散極性溶媒としては、水、又は、水とメタノール或いはエトキシエタノールとの混合溶媒であることが好ましく(組成物1乃至組成物3)、これらの溶媒を用いた場合、成膜性も良いことがわかる。
【0055】
(有機EL素子の製造工程)
表1乃至表3に示す組成物1乃至組成物3を用いて、以下に示す手順でインクジェット方式による正孔注入輸送層のパターニング成膜を行い、有機EL素子を製造した。
【0056】
陽極形成工程(第1図(A))
本工程はガラス基板102上に陽極101を形成する工程である。ガラス基板102としては、酸やアルカリ等の薬品に侵されにくく、量産可能であるものが好ましい。ITO透明電極を基板102上に0.1μmの厚さで成膜し、100μmピッチでパターニングする。
【0057】
仕切部材形成工程(同図(B))
本工程は、ガラス基板102上に仕切部材103を形成する工程である。具体的には、陽極(ITO電極)101間を埋め、インク垂れ防止壁(バンク)を兼ねた非感光性ポリイミド(仕切部材)をフォトリソグラフィーにより形成した。非感光性ポリイミドは幅20μm、厚さ2.0μmとした。
【0058】
正孔注入輸送層用組成物吐出工程(同図(C))
更に、インクジェットプリント装置(エプソン製MJ−800C)104のヘッド105から正孔注入輸送層用組成物1乃至3(図中106)を吐出し、正孔注入輸送層107をパターンニング成膜した。パターン成膜後、200℃10分の乾燥処理により正孔注入輸送層を形成した。正孔注入輸送層用組成物吐出時において、バンク越しの塗布は見られず、高精度の正孔注入輸送層パターンが得られた。
【0059】
発光層組成物充填工程(同図(D))
次いで、緑色発光層としてPPV前駆体(ポリ(パラ−フェニレンビニレン))組成物を製造した。インクジェット方式により発光層組成物108を吐出し、発光層109をパターンニング成膜した。発光層109としては赤色発光を示すローダミンBをドープしたPPVや青色発光を示すクマリンをドープしたPPVを用いても良い。赤、緑、青の3原色発光を示す発光層を正孔注入輸送層上に更にパターニングすることにより高精細なフルカラー有機ELディスプレイの製造が可能となる。
【0060】
陰極形成工程(同図(E))
最後に、発光層109を覆うように陰電極110を蒸着して有機EL素子を形成した。
【0061】
(正孔注入輸送層の成膜評価)
上記有機EL素子の製造工程において、正孔注入輸送層用組成物の吐出回数を変えたときの正孔注入輸送層の膜厚、シート抵抗を測定し、成膜性を評価した。これらの結果を表13に示す。
【0062】
【表13】
Figure 2004055555
【0063】
この結果から、低分子系材料の場合、正孔注入輸送層の膜厚が0.05μm以下であり、膜抵抗値が0.5×10Ω/mから5×10Ω/mである場合、発光特性が良いことがわかる。
【0064】
(作用)
本実施の形態のインクジェット方式パターニングによれば、微細パターニングを簡便に短時間かつ低コストで実現できる。従って、べた成膜法では解決することのできなかった正孔注入輸送層自身による漏電の心配はない。また、吐出量あるいは吐出回数の加減により膜厚の制御が容易にできるため、それによって薄膜設計の最適化が可能となる。
【0065】
発明の実施の形態2.
本実施の形態は、正孔注入輸送層を形成する導電性化合物を溶液からの成膜が可能な材料(高分子材料)としたもので、ポリアニリン、ポリシラン等の導電性高分子を用いるものである。特に、水を主溶媒として使えること、混合比により特性を調節できることからPEDT(ポリエチレンジオキシチオフェン)
【0066】
【化1】
Figure 2004055555
【0067】
とPSS(ポリスチレンスルフォン酸)
【0068】
【化2】
Figure 2004055555
【0069】
の混合材料が好ましい。
【0070】
(実施例)
高分子材料(正孔注入輸送層成分)として、PEDT/PSS混合水溶液を用いた場合の正孔注入輸送層用組成物を、表14乃至表18に示す5種類(組成物11乃至組成物15)を調整し、物性的特性(接触角、表面張力及び粘度)を測定した。
【0071】
組成物11
【0072】
【表14】
Figure 2004055555
【0073】
組成物12
【0074】
【表15】
Figure 2004055555
【0075】
組成物13
【0076】
【表16】
Figure 2004055555
【0077】
組成物14
【0078】
【表17】
Figure 2004055555
【0079】
組成物15
【0080】
【表18】
Figure 2004055555
【0081】
吐出評価は、インクジェットプリント装置(エプソン製MJ−800C)を用いて行った。また、成膜性の評価は、吐出による塗布後、200℃、10〜60分の加熱処理後の膜状態を評価した。粘度は20℃での測定値である。
【0082】
【表19】
Figure 2004055555
【0083】
以上の結果から、導電性高分子材料の濃度は、組成物全体に対して0.01wt%〜10.0wt%が好ましく、特に、0.1wt%〜5.0wt%が好ましい。導電性高分子の濃度が低すぎると必要な膜厚を得るために吐出回数が多くなってしまい量産効率が悪くなり、一方、導電性高分子の濃度が高すぎても粘度が高くなってしまうからである。
【0084】
また、正孔注入輸送層用組成物中には湿潤剤が含まれていることが好ましい。これによりインク組成物がインクジェットノズル口で乾燥・凝固することを有効に防止することができる。かかる湿潤剤としては、例えば、グリセリン、ジエチレングリコール等の多価アルコール類が挙げられるが、グリセリンが好ましい。湿潤剤の添加量としては、組成物全体量に対して5wt%〜20wt%程度が好ましい。
【0085】
正孔注入輸送層用組成物に用いる極性溶媒としては、水と低級アルコールの混合溶媒あるいは水とセロソルブ系溶媒の混合溶媒が好ましい。これらの溶媒を用いることにより導電性化合物の溶解性あるいは分散性を損なうことなく、正孔注入輸送層用組成物のインクジェット用ヘッドのノズル面を構成する材料に対する接触角、粘度および表面張力の調整が可能となる。低級アルコールとしてはメタノール、エタノールがより好ましい。セロソルブ系溶媒としては成膜性という点からもエトキシエタノールがより好ましい。
【0086】
尚、その他の添加剤、被膜安定化材料を添加してもよく、例えば、粘度調製剤、老化防止剤、pH調製剤、防腐剤、樹脂エマルジョン、レベリング剤等を用いることができる。
【0087】
(正孔注入輸送層用組成物の製造方法)
表18に示す正孔注入輸送層用組成物(組成物15)を用いて、超音波処理、濾過工程の有無による成膜性および発光特性の比較を表7に示す。緑色発光層としてはPPV(ポリ(パラ−フェニレンビニレン))を用いた。
【0088】
【表20】
Figure 2004055555
【0089】
この結果から、超音波処理することでより分散性を上げ、さらに、超音波処理分散液を濾過した組成物を用いることによって平坦性の良い均一な正孔注入輸送層を得ることができることがわかる。膜厚は0.05μm〜0.1μmが好ましい。正孔注入輸送層の成膜性は素子の発光特性に影響を及ぼすからである。
【0090】
尚、本実施の形態の有機EL素子の製造工程は、実施の形態1と同様である。
【0091】
【発明の効果】
本発明によれば、正孔注入輸送層用組成物を液体にすることにより材料の最適設計を可能にし、更に液体組成物をインク化することにより、インクジェット方式による正孔注入輸送層の高精度パターニングを可能にできる。また、正孔注入輸送層材料して導電性化合物、特に、高分子材料を用いることにより高信頼性、高特性の有機EL素子を製造することが可能となる。
【0092】
本発明に係わるインクジェット方式パターニングによれば、簡便でかつ低コストな正孔注入輸送層形成を提供することができる。
【0093】
本発明の有機EL素子の製造法によれば、膜厚、ドット数等の条件を任意に調整可能であるため発光素子のサイズやパターンも任意に設定することができる。更に、インクジェット方式パターニングによる赤色、緑色、青色の3原色発光層形成とを組み合わせることにより、発光特性の優れた高精細フルカラーディスプレイの開発が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】EL素子の製造工程断面図である。
【符号の説明】
101  透明画素電極
102  ガラス基板
103  仕切部材
104  インクジェットプリント装置
105  インクジェットヘッド
106  正孔注入輸送用組成物
107  正孔注入輸送層
108  発光層組成物
109  発光層
110  陰電極

Claims (15)

  1. 有機EL素子の正孔注入輸送層をインクジェット式記録ヘッドを用いてパターニング形成するために用いられる組成物であって、導電性化合物と溶媒とを含み、前記インクジェット式記録ヘッドのインク吐出ノズル面を構成する材料に対する接触角が30°から170°の範囲であり、かつ、粘度が1cpから20cpの範囲である、正孔注入輸送層用組成物。
  2. 前記導電性化合物は高分子材料或いは低分子材料の何れかである、請求項1に記載の正孔注入輸送層用組成物。
  3. 前記導電性化合物の濃度は、0.01wt%乃至10wt%の範囲である、請求項1に記載の正孔注入輸送層用組成物。
  4. 前記導電性化合物が前記溶媒として極性溶媒に溶解又は分散された状態で存在する、請求項1に記載の正孔注入輸送層用組成物。
  5. 前記極性溶媒は水と低級アルコールの混合溶媒である、請求項4に記載の正孔注入輸送層用組成物。
  6. 前記低級アルコールは、メタノール又はエタノールである、請求項5に記載の正孔注入輸送層用組成物。
  7. 前記極性溶媒が水とセロソルブ系溶媒の混合溶媒である、請求項4に記載の正孔注入輸送層用組成物。
  8. 前記セロソルブ系溶媒は、エトキシエタノールである、請求項7に記載の正孔注入輸送層用組成物。
  9. 前記組成物中には湿潤剤が含まれている、請求項1に記載の正孔注入輸送層用組成物。
  10. 前記湿潤剤はグリセリンである、請求項9に記載の正孔注入輸送層用組成物。
  11. 請求項1乃至請求項10のうち何れか1項に記載の正孔注入輸送層用組成物を、超音波処理工程と、濾過工程を経て製造する方法。
  12. 画素領域毎に区画された仕切部材内に形成される、正孔注入輸送層と発光層の積層構造を有する有機EL素子の製造方法において、
    前記画素領域に対応した開口部を備える仕切部材を基板上に形成する工程と、
    インクジェット式記録ヘッドを用いて前記開口部内に、導電性化合物と溶媒とを含み、前記インクジェット式記録ヘッドのインク吐出ノズル面を構成する材料に対する接触角が30°から170°の範囲であり、かつ、粘度が1cpから20cpの範囲である正孔注入輸送層用組成物を充填する工程と、
    前記開口部内に充填された前記正孔注入輸送層用組成物を乾燥処理して正孔注入輸送層を形成する工程と、
    を備える有機EL素子の製造方法。
  13. 請求項12に記載の製造方法で製造された有機EL素子。
  14. 請求項12に記載の製造方法で製造された、前記正孔注入輸送層の膜厚が0.1μm以下である、有機EL素子。
  15. 請求項12に記載の製造方法で製造された、前記正孔注入輸送層の膜抵抗が0.5×10Ω/m乃至5×10Ω/mの範囲である、有機EL素子。
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