JP2004055498A - 高電圧大電流用電磁継電器 - Google Patents

高電圧大電流用電磁継電器 Download PDF

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Takayuki Kawai
河合 貴幸
Hiroyuki Mori
森 博之
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Abstract

【課題】アーマチュアのコアに対する位置ずれの発生を防止する。
【解決手段】コイルボビン41の外側に配置されてコア45に固定されたヨーク46と、ヨーク46に回動自在に支持されてコア45に対向されたアーマチュア56と、一端部がヨーク46に固定されて自由端部にはアーマチュア56が固定された可動接点ばね50と、可動接点ばね50の自由端部に固定されて固定接点24、25に対向された可動接点64とを備えている高電圧大電流用電磁継電器4において、アーマチュア56の前後面には一対のヒンジ凹部57、57が形成され、両ヒンジ凹部57、57にはヨーク46に突設された一対のヒンジ凸部48a、48aが回動自在に嵌入されている。
【効果】アーマチュアへの押下力Fはヨークのヒンジ凸部で受け止められるため、アーマチュアがコアに対してずれる現象を防止できる。
【選択図】   図9

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、高電圧大電流用電磁継電器に関し、例えば、ハイブリッド車や電気自動車において電源と駆動用電動モータとの間の開閉制御に利用して有効なものに関する。
【0002】
【従来の技術】
ハイブリッド車や電気自動車の電源は電池(燃料電池を含む。)になるため、ハイブリッド車や電気自動車に搭載される駆動用電動モータ(以下、モータという。)は直流式になり、しかも、大きな出力を発揮する必要上、その駆動電力は例えば100V・100A等の高電圧大電流に設定される。この高電圧大電流のモータの駆動電気回路においてモータの不使用時にモータを電源から切り離して安全性を確保するためには、電磁継電器を介設することが考えられる。
【0003】
一般に、電磁継電器はベースに固定されたコイルボビンと、コイルボビンに挿通されたコアと、コイルボビンの外側に配置されてコアに固定されたヨークと、一端部がヨークに回動自在に支持されてコアに対向されたアーマチュアと、一端部がヨークに固定されて自由端部にアーマチュアを固定された可動接点ばねと、固定接点に対向されて可動接点ばねの自由端部に固定された可動接点とを備えており、コイルボビンのコイル線材への通電によるコアの磁力によってアーマチュアを可動接点ばねのばね力に抗して吸引することにより、可動接点を固定接点に接触させるように構成されている。そして、従来のこの種の電磁継電器においては、制御対象となる電流(以下、被制御電流という。)の通電経路は、ヨーク、可動接点ばね、可動接点、固定接点に設定されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、電磁継電器において100V・100Aのような高電圧大電流を取り扱おうとした場合には、アーマチュアがコアに対して位置ずれを起こすと、可動接点と固定接点との間の接触抵抗値の変動等の弊害が発生する。
【0005】
本発明の目的は、アーマチュアのコアに対する位置ずれの発生を防止することができる高電圧大電流用電磁継電器を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明に係る高電圧大電流用電磁継電器は、コイル線材が巻かれたコイルボビンと、このコイルボビンに挿通されたコアと、前記コイルボビンの外側に配置されて前記コアに固定されたヨークと、このヨークに回動自在に支持されて前記コアに対向されたアーマチュアと、一端部が前記ヨークに固定されて自由端部には前記アーマチュアが固定された可動接点ばねと、前記可動接点ばねの自由端部に固定されて固定接点に対向された可動接点とを備えている高電圧大電流用電磁継電器において、
前記アーマチュアの両端面には一対のヒンジ凹部が形成されており、この一対のヒンジ凹部には前記ヨークに突設されたヒンジ凸部が回動自在に嵌入されていることを特徴とする。
【0007】
前記した手段によれば、ヨークに突設されたヒンジ凸部がアーマチュアのヒンジ凹部に回動自在に嵌入されていることにより、アーマチュアに作用する押し下げ力はヨークのヒンジ凸部によって受け止められるため、アーマチュアがこの押し下げる力によってコアの吸引部に対して押し下げられてずれる現象は防止することができる。つまり、アーマチュアがコアに対してずれることによってアーマチュアに対するコアからの磁力が減少する現象の発生を防止することができるため、可動接点と固定接点との接触圧が減少することによる接触抵抗値の変動等の弊害が発生するのを未然に防止することができる。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の一実施の形態を図面に即して説明する。
【0009】
本実施の形態において、本発明に係る高電圧大電流用電磁継電器は、ハイブリッド車や電気自動車のモータの駆動電気回路に使用されるものとして構成されており、例えば、100V・100A以上が定格の高電圧大電流用電磁継電器(以下、電磁継電器という。)4として構成されている。すなわち、図1に示されているように、ハイブリッド車や電気自動車の電源1とモータ2との駆動電気回路3に介設された電磁継電器4はリレースイッチ5を備えており、リレースイッチ5はリレーコイル(以下、コイルという。)6によって開閉を制御されるように構成されている。コイル6は12V等の通常の自動車用バッテリー7によって駆動されるようになっており、コントローラ8によって励消磁を制御されるようになっている。
【0010】
図2〜図6に示されているように、電磁継電器4は絶縁性を有する樹脂が使用されて略長方形の平板形状に形成されたベース10を備えている。ベース10の一主面(以下、上面とする。)における長い方の中心線上には、リレースイッチ5を仕切る仕切壁11が垂直に立設されており、ベース10の上面における短い方の中心線よりも片側(以下、右側とする。)寄りの部位には、後述する溶着解除装置80が設置されるブラケット12が垂直に立設されている。仕切壁11とブラケット12とは直交して連結した略十文字形状になっている。ベース10の上面における仕切壁11の両側(以下、前側および後側とする。)の右端部には前側取付溝13と後側取付溝14とがそれぞれ没設されている。前側取付溝13と後側取付溝14とは右端が開口し左端が閉塞した一定幅一定深さのガイド溝形状に形成されており、前側取付溝13および後側取付溝14にはリレースイッチ5の一対のターミナルユニット15、16がそれぞれが取り付けられている。
【0011】
二つのターミナルユニット15、16の構成は略同一であり、前後対称形に取り付けられているので、その構成および取付構造は一方のターミナルユニット15を代表にして説明する。
【0012】
ターミナルユニット15はターミナルプレート21と固定片22と取付軸23とを備えている。ターミナルプレート21は銅板等の導電性の良好な一定厚さの板体が使用されて打ち抜きプレス加工されており、側面視がコ字形状に屈曲されている。固定片22は前側取付溝13に摺動自在に嵌入する大きさの略正方形の平盤形状に形成されており、固定片22の上面の中心には、雄ねじ部材によって形成された取付軸23が垂直に固定されている。取付軸23はターミナルプレート21の上側水平部に開設された挿通孔に下側から挿入されており、固定片22の上面が上側水平部の下面に当接した状態になっている。ターミナルプレート21はベース10の前側右端部に、固定片22が前側取付溝13へ右端の開口から嵌入されて上側水平部と下側水平部とによって前側右端部を挟み込む状態で装着されている。ベース10の前側右端部に装着されたターミナルプレート21は、ベース10に被せ付けられるカバー(図示せず)によって左右方向の移動を規制されるようになっている。
【0013】
そして、一方のターミナルユニット(以下、前側ターミナルユニットという。)15のターミナルプレート21の下側水平部には、前側固定接点24が垂直方向下向きに突設され、他方のターミナルユニット(以下、後側ターミナルユニットという。)16のターミナルプレート21の下側水平部の下面には、後側固定接点25が突設されている。例えば、図1に示されているように、前側ターミナルユニット15にはモータ2側の経路が電気的に接続され、後側ターミナルユニット16には電源1側の経路が電気的に接続される。
【0014】
ベース10の左右の両端面にはカバーを固定するための係合爪28が一対ずつ突設されている。ベース10の左端面の中央部には棒状の支持部29が垂下されており、支持部29の下端には取付部片30が水平方向外向きに突設されている。ベース10の前後辺の中央部には一対の固定筒31、31が、略二段円筒形状にそれぞれ形成されて垂直方向に突設されており、両固定筒31、31の下面間にはコイルアッシー40およびマグネットアッシー90がねじ部材32によって固定されている。次に、コイルアッシー40について説明する。
【0015】
図7に詳示されているように、コイルアッシー40は絶縁性を有する樹脂が使用されて糸巻形状に一体成形されたコイルボビン(以下、ボビンという。)41を備えており、ボビン41にはコイル線材42が巻回されている。コイル線材42の巻き始め端末部と巻き終わり端末部とは銅板等の導電性の良好な板材が使用されて打ち抜きプレス加工によって形成された一対のコイル用ターミナル部材43、44にそれぞれ電気的に接続されている。一対のコイル用ターミナル部材43、44はL字形状に形成されて、その垂直部がベース10の右端に垂下された支持部29の下端の取付部片30に下から挿入されて固定されている。
【0016】
ボビン41の筒部の中空部には鉄等の磁性材料によって長方形の平板形状に形成されたコア45が左右方向に挿通されており、コア45の左端に設定された吸引部45aはボビン41の左端面から若干突出した状態になっている。コア45のボビン41の右側フランジの外側には鉄等の磁性材料の板材によってアングル形状に形成されたヨーク46が固定されており、ヨーク46はベース10の両固定筒31、31に固定されている。すなわち、ヨーク46は高さがボビン41の高さと略等しく左右方向の長さがボビン41の軸方向の長さよりも若干長いアングル形状に形成されており、ヨーク46の横部片の前後端辺における略中央部にそれぞれ突設された一対のブラケット部47、47がベース10の両固定筒31、31にマグネットアッシー90と共にねじ部材32、32によって共締めされている。
【0017】
ヨーク46における縦部片にはコア45のかしめ部45bが挿入されてかしめ加工されており、ボビン41はヨーク46にコア45を介して固定されている。ヨーク46のかしめ部45bと反対側の左端辺には位置決め凹部48が一定深さに形成されており、位置決め凹部48の前後方向の幅はアーマチュア56のヒンジ部58の前後方向の幅に対応されている。ヨーク46の横部片の上面には一対の突起49、49が前後に配置されて突設されている。ヨーク46の両突起49、49が突設された上面には可動接点ばね50の固定端部51が当接されて、かしめ加工により固定されている。すなわち、可動接点ばね50は導電性を有する板ばね材が用いられてアングル形状に屈曲成形されており、固定端部51と自由端部52とを備えている。固定端部51と自由端部52とは略直角に屈曲された一対のヒンジ部53、53によって連結されている。固定端部51は縦長の長方形の板形状に形成されており、固定端部51の右端部には一対の取付孔54、54がそれぞれ開設されている。ヨーク46に可動接点ばね50の固定端部51が当接される際に、両取付孔54、54には両突起49、49がそれぞれ嵌入され、両突起49、49がかしめ加工されることにより、固定端部51はヨーク46に固定される。
【0018】
可動接点ばね50の自由端部52の右端面にはアーマチュア56およびブラケット60が一対のリベット55によって共に締結されている。アーマチュア56は可動接点ばね50の自由端部52の前後幅と等しい前後幅を有する長方形の板形状に形成されており、アーマチュア56の上端部における前後両端面には前後で一対のヒンジ凹部57、57が略正方形の切欠部形状に形成されている。可動接点ばね50がヨーク46に固定された状態において、アーマチュア56の前後のヒンジ凹部57、57にはヨーク46の位置決め凹部48の両脇に相対的に突設されたヒンジ凸部48a、48aが回動自在に嵌入された状態になり、アーマチュア56の両ヒンジ凹部57、57間に形成されたヒンジ部58がヨーク46の位置決め凹部48に回動自在に嵌入した状態になる。この嵌入状態によって、ヒンジ部58は位置決め凹部48によって垂直面内において正確に回動するように支持された状態になる。
【0019】
ブラケット60は絶縁性を有する樹脂が使用されてアングル形状に形成されており、縦部片が可動接点ばね50とアーマチュア56との間に挟み込まれて一対のリベット55によって締結されている。ブラケット60の横部片の下面における左端部には前後で一対の突起61、61が下向きに突設されており、両突起61、61の左端面はアーマチュア56のヒンジ部58からの突出部59の右端面に当接した状態になっている。
【0020】
ブラケット60の横部片の上面には前後で一対の可動片63、63が一対のリベット62、62によってそれぞれ締結されている。両可動片63、63の右端部間には可動接点64が架橋されて溶接されており、可動接点64の前後両端部は前後の固定接点24、25と対向するように垂直方向上向きに突設されている。ブラケット60の横部片の右端辺の中央にはストッパ部65が下向きに突設されており、ストッパ部65はヨーク46の上面に当接することにより、ブラケット60の開方向の位置を規制するようになっている。このストッパ部65は樹脂によって構成されているため、ブラケット60の開方向の位置を規制する機能と、開放時の動作音を消音させる機能とを有している。
【0021】
ボビン41の左側フランジの下端部にはブラケット部66が水平方向左向きに突設されている。ブラケット部66の上面における左側フランジとの境目には保持溝67が前後方向に延在するように没設されており、保持溝67には前側コイル用ターミナル部材43の水平部43aおよび後側コイル用ターミナル部材44の水平部44aが嵌入されて固定されている。前側コイル用ターミナル部材43の水平部43aと後側コイル用ターミナル部材44の水平部44aとの間には、消弧用素子68が電気的に接続されている。
【0022】
また、ブラケット部66には溶着検出装置70が設置されている。溶着検出装置70は一対の検出用ターミナル部材71、72を備えており、両検出用ターミナル部材71、72はブラケット部66の下面における両コイル用ターミナル部材43、44の前脇および後脇にそれぞれ固定されている。両検出用ターミナル部材71、72はL字形状に形成されており、その垂直部がベース10の右端に垂下された支持部29の下端の取付部片30に両コイル用ターミナル部材43、44の前脇および後脇において下から挿入されて固定されている。一方の検出用ターミナル部材(以下、前側検出用ターミナル部材という。)71の右端部には取付部片73が垂直方向上向きに屈曲され、取付部片73はブラケット部66の左端部に没設された一対の保持溝69、69のうち前側の保持溝69に下側から嵌入されて固定されており、取付部片73の上端部には固定接点74が右向きに突設されている。他方の検出用ターミナル部材(以下、後側検出用ターミナル部材という。)72の右端部には取付部片75が垂直方向上向きに屈曲され、取付部片75はブラケット部66の左端部に没設された後側の保持溝69に下側から嵌入されて固定されており、取付部片75の上端部には可動片77の一端部がスポット溶接部76によって固定されている。可動片77は銅板等のばね性および導電性を有する板材が使用されて細長い板形状に形成されて前後方向に延在するように配され、可動片77の自由端部である前端部には可動接点78が固定接点74と対向するように突設されている。可動片77はブラケット60の下端部に突設された係合片79に左方向から係合されることによって開閉されるようになっている。例えば、図1に示されているように、両検出用ターミナル部材71、72はコントローラ8に電気的に接続される。
【0023】
ベース10の上面に突設されたブラケット12には溶着解除装置80が設置されている。溶着解除装置80は長方形の平板形状に形成された支持プレート81を備えており、支持プレート81の下面の両端部には一対のプッシュロッド82、82が垂直方向下向きに突設されている。両プッシュロッド82、82はブラケット12に長孔形状に形成されたガイド孔83に挿入されており、両プッシュロッド82、82の下端面はコイルアッシー40の一対の可動片63、63の上面にそれぞれ対向されている。両プッシュロッド82、82の下端部にはスプリングシート84、84がそれぞれ突設されており、両スプリングシート84、84とガイド孔83の底壁下面との間にはスプリング85、85が圧縮状態でそれぞれ介設されている。支持プレート81の中央には把手取付軸86が支持プレート81と直交するように配されて回転自在に取り付けられており、把手取付軸86の上端には把手87が固定され、把手取付軸86の下端にはストッパ88が固定されている。ストッパ88は支持プレート81が引き上げられた状態においてガイド孔83の上端開口縁辺に係合するように構成されている。
【0024】
コイルアッシー40の右端部にはマグネットアッシー90が被せられ付けられている。マグネットアッシー90は絶縁性を有する樹脂が使用されて一体成形されたサブカバー91を備えている。サブカバー91はコイルアッシー40の右端部を被覆する左側壁が開放の直方体の箱形状に形成されたコイルカバー部92を備えており、コイルカバー部92はコイルアッシー40のボビン41およびヨーク46の右端部に右方から被せられている。コイルカバー部92の左端の上端には前後で一対のブラケット部93、93が左方向かつ前後方向にそれぞれ突設されており、両ブラケット部93、93がベース10の両固定筒31、31の下端面にヨーク46の一対のブラケット部47、47と共にねじ部材32、32によって共締めされることにより、マグネットアッシー90がベース10およびコイルアッシー40に固定されている。
【0025】
コイルカバー部92の右上には上端開口の直方体の箱形状に形成されたマグネット保持部94が前後方向かつ垂直方向に延設されており、マグネット保持部94には長方形の平盤形状に形成されたマグネット95および長方形の平板形状に形成されたプレート96がそれぞれ左側から順に収納されている。マグネットアッシー90がコイルアッシー40に組み付けられた状態において、マグネット95およびプレート96と可動接点64との関係は、マグネット95およびプレート96の長手方向が可動接点64の延在方向と平行になるように設定されている。また、マグネット95の磁束の方向とコイルアッシー40の磁束の方向とはマグネット95の磁力によってコイルアッシー40の磁力を補強し得るように同一の方向に設定されている。マグネット保持部94およびコイルカバー部92の右端面における前後方向の中心線上には固定部97が右方に突設されており、この固定部97の右端面はカバーの内周面の一部に当接するようになっている。この当接により、マグネットアッシー90はカバーによって確実に位置決めされた状態になる。コイルカバー部92の天井壁における一対の可動片63、63に対向する位置には、一対のストッパ98、98が突設されている。
【0026】
次に、作用および効果を説明する。
【0027】
モータ2を制御するためのコントローラ8からの電圧が電磁継電器4の両コイル用ターミナル部材43、44に印加されると、コイル線材42が励磁されてアーマチュア56がコア45によって磁気的に吸引されるため、図9(a)に示されているように、アーマチュア56に可動接点ばね50と共に固定されたブラケット60の垂直部がコア45の吸引部45aの方向に吸引される。ブラケット60の垂直部が吸引部45aの方向に吸引されると、ブラケット60に固定された可動片63、63は前側固定接点24および後側固定接点25の方向へ回動するため、可動片63、63間の可動接点64は前側固定接点24および後側固定接点25に同時に接触する。このため、リレースイッチ5の前側ターミナルユニット15は後側ターミナルユニット16に、前側固定接点24、可動接点64および後側固定接点25によって電気的に接続される。この際、高電圧大電流の被制御電流は可動接点ばね50や可動片63、63を迂回して通電するため、可動接点ばね50や可動片63、63における通電抵抗による発熱等の障害の発生を防止することができる。したがって、高電圧大電流の被制御電流であっても発熱等の障害を引き起こすことなく良好に通電することができる。
【0028】
ところで、可動接点64が両固定接点24、25に磁力によって強力に押し付けられると、図9(a)に示されているように、アーマチュア56には押し下げる力Fが可動片63、63およびブラケット60を介して作用する。アーマチュア56がこの押し下げる力Fによって押し下げられてコア45の吸引部45aに対してずれると、アーマチュア56に対するコア45からの磁力が減少することにより、可動接点64と両固定接点24、25との接触圧が減少するため、接触抵抗値の変動等の弊害が発生する。
【0029】
しかし、本実施の形態においては、ヨーク46の位置決め凹部48の両脇に相対的に突設されたヒンジ凸部48a、48aがアーマチュア56の前後のヒンジ凹部57、57に回動自在に嵌入されて、前後のヒンジ凹部57、57間に形成されたアーマチュア56のヒンジ部58がヨーク46の位置決め凹部48に回動自在に嵌入されていることにより、アーマチュア56に作用した押し下げ力Fはヨーク46のヒンジ凸部48a、48aによって受け止められるため、アーマチュア56がこの押し下げる力Fによってコア45の吸引部45aに対して押し下げられてずれる現象は防止することができる。つまり、アーマチュア56がコア45に対してずれることによってアーマチュア56に対するコア45からの磁力が減少する現象の発生を防止することができるため、可動接点64と両固定接点24、25との接触圧が減少することによる接触抵抗値の変動等の弊害が発生するのを未然に防止することができる。
【0030】
両コイル用ターミナル部材43、44への電圧の印加が停止されると、コイル線材42およびコア45が消磁されるため、可動接点ばね50の垂直部が可動接点ばね50の弾性力によって復帰することにより、アーマチュア56に可動接点ばね50と共に固定されたブラケット60の垂直部がコア45の吸引部45aから離反する。すると、ブラケット60に固定された可動片63、63は前側固定接点24および後側固定接点25から離反する方向へ回動するため、可動片63、63間の可動接点64は前側固定接点24および後側固定接点25から同時に離れ、リレースイッチ5が開かれる。この際、ブラケット60に下向きに突設されたストッパ部65は開放時に所定の位置停止と消音の効果とを発揮する。
【0031】
ところで、被制御電流として高電圧大電流を取り扱う場合には、可動接点64と両固定接点24、25との溶着が発生する可能性が大きくなる。そこで、本実施の形態においては、溶着検出装置70および溶着解除装置80が設置されている。次に、溶着検出装置70および溶着解除装置80の作用を説明する。
【0032】
図9(a)で参照されるように、可動接点64と両固定接点24、25との溶着が発生すると、溶着検出装置70においてはブラケット60の下端部に突設された係合片79が可動片77を右方向に移動させた状態のままになるため、固定接点74と可動接点78との間が開いたままになる。この状態が両コイル用ターミナル部材43、44への電圧の印加後も予め設定された期間以上に継続すると、コントローラ8は可動接点64と両固定接点24、25との溶着が発生したと判定し、溶着事故が発生した旨を警報するとともに、所定の非常処置を講じる。
【0033】
可動接点64と両固定接点24、25との溶着の解除に際しては、溶着解除装置80の把手87が90度回転されることによってストッパ88のガイド孔83との係合が解除される。ストッパ88のガイド孔83との係合が解除されると、図10に示されているように、一対のプッシュロッド82、82がスプリング85、85の弾性力によって押し下げられることにより一対の可動片63、63を押し下げるため、両可動片63、63間に固定された可動接点64をそれが溶着した両固定接点24、25から強制的に剥離させる。
【0034】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、コアによるアーマチュアの吸引に伴ってアーマチュアに作用する押し下げ力によってアーマチュアがコアに対してずらされる現象を防止することができるため、可動接点と固定接点との間の接触抵抗値の変動等の弊害が発生するのを未然に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施の形態である高電圧大電流用電磁継電器が使用されたモータ駆動電気回路を示す回路図である。
【図2】その高電圧大電流用電磁継電器を示す外観斜視図である。
【図3】同じく正面図である。
【図4】同じく側面図である。
【図5】同じく正面断面図である。
【図6】同じく側面断面図である。
【図7】コイルアッシーを示す分解斜視図である。
【図8】主要部を示す斜視図である。
【図9】リレースイッチの閉じ時を示しており、(a)は一部切断正面図、(b)は(a)のb部を示す拡大図である。
【図10】溶着解除装置の作用を示す一部切断正面図である。
【符号の説明】
1…ハイブリッド車や電気自動車の電源、2…モータ、3…モータ駆動電気回路、4…電磁継電器、5…リレースイッチ、6…リレーコイル、7…通常の自動車用バッテリー、8…コントローラ、10…ベース、11…仕切壁、12…ブラケット、13…前側取付溝、14…後側取付溝、15…前側ターミナルユニット、16…後側ターミナルユニット、21…ターミナルプレート、22…固定片、23…取付軸、24…前側固定接点、25…後側固定接点、28…係合爪、29…支持部、30…取付部片、31…固定筒、32…ねじ部材、40…コイルアッシー、41…コイルボビン(ボビン)、42…コイル線材、43…前側コイル用ターミナル部材、43a…水平部、44…後側コイル用ターミナル部材、44a…水平部、45…コア、45a…吸引部、45b…かしめ部、46…ヨーク、47…ブラケット部、48…位置決め凹部、48a…ヒンジ凸部、49…突起、50…可動接点ばね、51…固定端部、52…自由端部、53…ヒンジ部、54…取付孔、55…リベット、56…アーマチュア、57…ヒンジ凹部、58…ヒンジ部、59…突出部、60…ブラケット、61…突起、62…リベット、63…可動片、64…可動接点、65…ストッパ部、66…ブラケット部、67…保持溝、68…消弧用素子、69…保持溝、70…溶着検出装置、71、72…検出用ターミナル部材、73、75…取付部片、74…固定接点、76…スポット溶接部、77…可動片、78…可動接点、79…係合片、80…溶着解除装置、81…支持プレート、82…プッシュロッド、83…ガイド孔、84…スプリングシート、85…スプリング、86…把手取付軸、87…把手、88…ストッパ、90…マグネットアッシー、91…サブカバー、92…コイルカバー部、93…ブラケット部、94…マグネット保持部、95…マグネット、96…プレート、97…固定部、98…ストッパ。

Claims (1)

  1. コイル線材が巻かれたコイルボビンと、このコイルボビンに挿通されたコアと、前記コイルボビンの外側に配置されて前記コアに固定されたヨークと、このヨークに回動自在に支持されて前記コアに対向されたアーマチュアと、一端部が前記ヨークに固定されて自由端部には前記アーマチュアが固定された可動接点ばねと、前記可動接点ばねの自由端部に固定されて固定接点に対向された可動接点とを備えている高電圧大電流用電磁継電器において、
    前記アーマチュアの両端面には一対のヒンジ凹部が形成されており、この一対のヒンジ凹部には前記ヨークに突設されたヒンジ凸部が回動自在に嵌入されていることを特徴とする高電圧大電流用電磁継電器。
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