JP2004053724A - ビーム描画方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】このビーム描画方法は、ビームを照射し走査することでビーム描画を行い、直線と直線とをつなぐようにしてビームを走査するときに、各直線の始点と終点のつなぎ位置の計算を非直線上で行い、または、周期関数で行う。これにより、描画ライン間隔は直線上で計算したような周期性を持たずに分散し、描画形状の精度が向上する。
【選択図】 図8
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、電子ビームやレーザビームにより種々の形状を描画するビーム描画方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
例えば、光学機能面にブレーズ状の回折構造を有する光学素子を製造する際には、最近の光学素子に対する高性能化の要求により、光学素子の曲面上に所望の描画パターンをサブミクロンオーダーの高精度で形成することが必要である。このような微細構造を電子ビームを用いて基材に形成できるビーム描画装置が例えば本出願人による特願2001−357578で提案されている。
【0003】
かかるビーム描画装置により例えば回折ブレーズの集合体として円もしくは円弧を形成する場合、一般的に円または円弧を多角形で近似し、その各辺にあたる直線上をビームで走査する。このビーム走査のために直線の始点と終点の位置を決める必要があるが、このとき、3次元基準座標系におけるフィールド上に割り当てられたポジションDACの分解能により、計算値に最も近いセルを選択しなければならない。この場合、例えば、図15のように、円の中心と多角形頂点を結ぶ直線a,b上で始点と終点の計算を行うと、ポジションDACのX軸またはY軸に対して円の中心と多角形頂点とを結ぶ直線a,b同士が平行でない場合は、例えば直線a上の各点10を始点または終点とし、直線b上の各点11,12,・・・,15,・・・を終点または始点とすると、これらの点11〜15,・・・は、ポジションDACで割り当てられたセルの中心と必ずしも一致しないので、終点または始点として最も近いセルを選択せざるを得なくなる。その結果、選択された終点または始点11’,12’,・・・,15’,・・・の各位置は、図15のように、各ドットの中心位置となり、例えば直線bに比較的近い直線c’上での描画ライン間隔Δdは周期的な分布を持ってしまい、描画すべき円または円弧の形状精度が低下してしまう。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記従来技術の問題に鑑み、ビームを直線と直線とをつなぐようにして走査してビーム描画を行う際に所望の描画形状を精度よく得ることができるようにしたビーム描画方法を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明によるビーム描画方法は、ビームを照射し走査することでビーム描画を行うビーム描画方法であって、直線と直線とをつなぐようにして前記ビームを走査するときに、前記各直線の始点と終点のつなぎ位置の計算を非直線上で行うことを特徴とする。
【0006】
上記ビーム描画方法によれば、ビームを走査し直線と直線とをつなぐときの各直線の始点と終点のつなぎ位置は、非直線上で計算するので、描画ライン間隔は直線上で計算したような周期性を持たずに分散し、このため、描画形状の精度が向上し、所望の描画形状を得ることができる。
【0007】
本発明による別のビーム描画方法は、ビームを照射し走査することでビーム描画を行うビーム描画方法であって、直線と直線とをつなぐようにして前記ビームを走査するときに、前記各直線の始点と終点のつなぎ位置の計算を周期関数により行うことを特徴とする。
【0008】
上記ビーム描画方法によれば、ビームを走査し直線と直線とをつなぐときの各直線の始点と終点のつなぎ位置は、周期関数で計算するので、描画ライン間隔は直線上で計算したような周期性を持たずに分散し、このため、描画形状の精度が向上し、所望の描画形状を得ることができる。
【0009】
この場合、前記ビームの走査間隔を算出し、前記走査間隔の分布のばらつきの周期性に基づいて前記周期関数の係数を選定することで前記つなぎ位置を決定することが好ましい。そして、前記走査間隔の分布のばらつきの周期性を、ビーム径または近接効果を考慮したパラメータとして決定した加算走査ライン数分の走査間隔の積算値または平均値に基づいて判断することが好ましい。更に、前記積算値の変極点または前記積算値と前記積算値の設計値との差の値の符号の切り替わり間隔から最大周期を求め、その最大周期の値が一定以下となるように前記周期関数の係数を選定することで前記つなぎ位置を決定することが好ましい。
【0010】
上述の周期関数は三角関数とすることができる。即ち、前記各直線の始点と終点の位置の計算をサインカーブ等の三角関数を基に算出することができる。
【0011】
また、本発明による更に別のビーム描画方法は、ビームを照射し走査することでビーム描画を行うビーム描画方法であって、直線と直線とをつなぐようにして前記ビームを走査するときに、前記各直線の始点と終点のつなぎ位置の計算を乱数を基に行うことを特徴とする。
【0012】
上記ビーム描画方法によれば、ビームを走査し直線と直線とをつなぐときの各直線の始点と終点のつなぎ位置は乱数に基づいて計算するので、描画ライン間隔は直線上で計算したような周期性を持たずに分散し、このため、描画形状の精度が向上し、所望の描画形状を得ることができる。
【0013】
上述の各ビーム描画方法において、前記ビーム描画により3次元パターンを形成することが可能である。この場合、前記3次元パターンの集合体により円形のパターンを形成することができる。そして、前記円形のパターンは曲面上に形成できる。また、前記円形のパターンは回折ブレーズとすることができ、ブレーズ状の回折構造を有する光学素子に対応した形状を得ることができる。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、本発明による実施の形態について図面を用いて説明する。まず、本発明の実施の形態である電子ビーム描画方法を実行可能な電子ビーム描画装置について図1乃至図6を参照して説明する。図1は電子ビーム描画装置の全体構成を概略的に示す説明図であり、図2は図1の電子ビーム描画装置に含まれる測定装置の要部を示す図である。
【0015】
最初に、測定装置について説明する。図1の電子ビーム描画装置90は、基材21の表面の基準点及び基材の3次元形状を測定するための測定手段である測定装置80を備える。測定装置80は、3次元的に変化する形状を有する基材に、電子ビーム描画を行う際に、基材の3次元形状を測定できる。この測定装置は、3次元電子ビーム描画を行う一連の工程にて利用されるが、図1では電子ビーム描画装置と一体的に構成しているが、独立して単独で形成してもよい。ここで、基材21は、図2に示すように、一面が曲面形状を有する曲面部2aと、曲面部2aの周囲に形成された周囲面部である平坦部2bと、裏面側の底部2cとを有する。
【0016】
測定装置80は、図2に示すように、基材21に対してレーザ光を照射することで基材21を測定する第1のレーザ光照射部82と、第1のレーザ光照射部82にて発光されたレーザ光(第1の照射光)が基材21で反射しその反射光を受光する第1の受光部84と、第1のレーザ光照射部82とは異なる照射角度から照射を行う第2のレーザ光照射部86と、第2のレーザ光照射部86にて発光されたレーザ光(第2の照射光)が基材21を透過しその透過光を受光する第2の受光部88と、を含む。ここで、「透過」とは基材の一部をレーザ光等の一部が通過する状態を指し、「透過光」とは後述するようにレーザ光等の光の一部が散乱した残りの光を指すものとする。
【0017】
第1のレーザ光照射部82により電子ビームと交差する方向から基材21に対して第1の光ビームS1を照射し、平坦部2b上で反射する第1の光ビームS1の受光によって第1の光強度分布が検出される。この際に、図2に示すように、第1の光ビームS1は、基材21の平坦部2bと同じ面にて反射されるため、第1の強度分布に基づいて基材21の平坦部2b上の平面位置が測定算出できる。
【0018】
また、第2のレーザ光照射部86によって、第1の光ビームS1と異なる電子ビームとほぼ直交する方向、即ち基材21の水平方向から基材21に対して第2の光ビームS2を照射し、基材21を透過する第2の光ビームS2が第2の受光部88に含まれるピンホール89を介して受光されて第2の光強度分布が検出される。
【0019】
この場合、図3(A)〜(C)に示すように、第2の光ビームS2が曲面部2a上を透過するので、第2の強度分布に基づいて基材21の平坦部2bより突出する曲面部2a上の高さ位置を測定算出できる。
【0020】
具体的には、第2の光ビームS2がXY基準座標系における曲面部2a上のある位置(x、y)の特定の高さを透過すると、この位置(x、y)において、図3(A)〜(C)に示すように、第2の光ビームS2が曲面部2aの曲面にて当たることにより散乱光SS1、SS2が生じ、この散乱光分の光強度が弱まる。このため、第2の受光部88にて検出された第2の光強度分布に基づいて高さ位置が測定算出される。
【0021】
この算出の際には、第2の受光部88の信号出力Opは、図6に示す特性図のような、信号出力Opと基材の高さとの相関関係を有するので、第2の受光部88での信号出力Opに基づき、基材の高さ位置を算出することができる。そして、この基材の高さ位置を、例えば描画位置として、電子ビームの焦点位置の調整が行われ描画が行われることとなる。従って、後述のように、測定装置80において精度良い高さ検出を行うことは、曲面部2aを有する基材21に対して電子ビームにより描画パターンを描画する際の描画精度をも向上させることにもなる。
【0022】
次に、電子ビーム描画装置全体について説明する。図1に示すように、電子ビーム描画装置90は、大電流で高解像度の電子線プローブを形成して高速に描画対象の基材21上を走査するものであり、高解像度の電子線プローブを形成し、電子ビームを生成してターゲットに対してビーム照射を行う電子ビーム生成手段である電子銃121と、この電子銃121からの電子ビームを通過させるスリット141と、スリット141を通過する電子ビームの基材21に対する焦点位置を制御するための電子レンズ161と、電子ビームが出射される経路上に配設され開口により電子ビームを所望の形状とするためのアパーチャー181と、電子ビームを偏向させることでターゲットである基材21上の走査位置等を制御する偏向器200と、偏向を補正する補正用コイル221と、を含む。なお、これらの各部は、鏡筒101内に配設されて電子ビーム出射時には真空状態に維持される。
【0023】
さらに、電子ビーム描画装置90は、描画対象となる基材21を載置するための載置台であるXYZステージ30と、このXYZステージ30上の載置位置に基材21を搬送するための搬送手段であるローダ40と、XYZステージ30を駆動するための駆動手段であるステージ駆動手段50と、ローダを駆動するためのローダ駆動装置60と、鏡筒101内及びXYZステージ30を含む筐体210内を真空となるように排気を行う真空排気装置70と、これらの制御を司る制御手段である制御回路100と、を含む。測定装置80は、XYZステージ30上の基材21の表面の基準点及び上述のように基材の3次元形状を測定する。
【0024】
電子レンズ161は、高さ方向に沿って複数箇所に離間して設置される各コイル170a、170b、170cの各々の電流値によって電子的なレンズが複数生成されることで各々制御され、電子ビームの焦点位置が制御される。
【0025】
ステージ駆動手段50は、XYZステージ30をX方向に駆動するX方向駆動機構52と、XYZステージ30をY方向に駆動するY方向駆動機構54と、XYZステージ30をZ方向に駆動するZ方向駆動機構56と、XYZステージ30をθ方向に駆動するθ方向駆動機構58と、を含む。これによって、XYZステージ30を3次元的に動作させたり、アライメントを行うことができる。
【0026】
制御回路100は、電子銃121に電源を供給するための電子銃電源部102と、この電子銃電源部102での電流、電圧などを調整制御する電子銃制御部104と、電子レンズ161(複数の各電子的なレンズを各々)を動作させるためのレンズ電源部106と、このレンズ電源部106での各電子レンズに対応する各電流を調整制御するレンズ制御部108と、を含む。
【0027】
さらに、制御回路100は、補正用コイル221を制御するためのコイル制御部110と、偏向器200にて成形方向の偏向を行う成形偏向部112aと、偏向器200にて副走査方向の偏向を行うための副偏向部112bと、偏向器200にて主走査方向の偏向を行うための主偏向部112cと、成形偏向部112aを制御するためにデジタル信号をアナログ信号に変換制御する高速D/A変換器114aと、副偏向部112bを制御するためにデジタル信号をアナログ信号に変換制御する高速D/A変換器114bと、主偏向部112cを制御するためにデジタル信号をアナログ信号に変換制御する高精度D/A変換器114cと、を含む。
【0028】
さらに、制御回路100は、偏向器200における位置誤差を補正する、乃ち、位置誤差補正信号などを各高速D/A変換器114a、114b、及び高精度D/A変換器114cに対して供給して位置誤差補正を促すあるいはコイル制御部110に対してその信号を供給することで補正用コイル221にて位置誤差補正を行う位置誤差補正回路116と、これら位置誤差補正回路116並びに各高速D/A変換器114a、114b及び高精度D/A変換器114cを制御して電子ビームの電界を制御する電界制御手段である電界制御回路118と、描画パターンなどを基材21に対して生成するためのパターン発生回路120と、を含む。
【0029】
さらに、制御回路100は、レーザ制御系を含み、このレーザ制御系は、第1のレーザ光照射部82及び第1の受光部84の制御を行う第1のレーザ駆動制御回路130と、第2のレーザ光照射部86及び第2の受光部88の制御を行う第2のレーザ駆動制御回路132と、を有する。これらの制御系には、図示しないが、レーザ照射光の出力(レーザの光強度)を調整制御するための各種制御回路が含まれている。
【0030】
また、制御回路100は、第1の受光部84での受光結果に基づき、測定結果を算出するための第1の測定算出部140と、第2の受光部88での受光結果に基づき、測定結果を算出するための第2の測定算出部142と、を含む。
【0031】
さらに、制御回路100は、ステージ駆動手段50を制御するためのステージ制御回路150と、ローダ駆動装置60を制御するローダ制御回路152と、上述の第1、第2のレーザ駆動制御回路130、132・第1、第2のレーザ出力制御回路134、136・第1、第2の測定算出部140、142・ステージ制御回路150・ローダ制御回路152を制御する機構制御回路154と、真空排気装置70の真空排気を制御する真空排気制御回路156と、測定情報やその他の情報を入力するための情報入力部158と、入力された情報や他の複数の情報を記憶するための記憶手段であるメモリ160と、各種制御を行うための制御プログラムを記憶したプログラムメモリ162と、各種描画ラインの制御を行うための制御系300と、これらの各部の制御を司る例えばCPUなどにて形成された制御部170と、を含む。
【0032】
上述のような構成を有する電子ビーム描画装置90において、ローダ40によって搬送された基材21がXYZステージ30上に載置されると、真空排気装置70によって鏡筒101及び筐体210内の空気やダストなどを排気したした後、電子銃121から電子ビームが照射される。
【0033】
電子銃121から照射された電子ビームは、電子レンズ161を介して偏向器200により偏向され、偏向された電子ビームB(以下、この電子レンズ161を通過後の偏向制御された電子ビームに関してのみ「電子ビームB」と符号を付与することがある)は、XYZステージ30上の基材21の表面、例えば曲面部(曲面)2a上の描画位置に対して照射されることで描画が行われる。
【0034】
この際に、測定装置80によって、基材21上の描画位置(描画位置のうち少なくとも高さ位置)、もしくは後述するような基準点の位置が測定され、制御回路100は、その測定結果に基づき、電子レンズ161のコイル170a、170b、170cなどに流れる各電流値などを調整制御して、電子ビームBの焦点深度の位置、すなわち焦点位置を制御し、その焦点位置が描画位置となるように移動制御される。
【0035】
あるいは、測定結果に基づき、制御回路100は、ステージ駆動手段50を制御することにより、電子ビームBの焦点位置が描画位置となるようにXYZステージ30を移動させる。
【0036】
また、電子ビームの制御、XYZステージ30の制御のいずれか一方の制御によって行っても、双方を利用して行ってもよい。
【0037】
さらに、電子ビーム描画装置90に測定装置80を搭載する場合に、第2のレーザ光照射部86と第2の受光部88との離間距離を、載置台たるXYZステージ30のXY平面方向(載置面方向)での移動ストローク以上にした状態で配設されている。このような構成とすることにより、筐体210の一部を穿設することにより、測定装置80を搭載でき、特に、筐体210を大幅に改造することを要しない。
【0038】
次に、電子ビーム描画装置90における、描画を行う場合の原理の概要について、説明する。
【0039】
先ず、基材21は、図4(A)(B)に示すように、例えば樹脂等による光学素子例えば光レンズ等にて形成されることが好ましく、断面略平板状の平坦部2bと、この平坦部2bより突出形成された曲面をなす曲面部2aと、を含む。この曲面部2aの曲面は、球面に限らず、非球面などの他のあらゆる高さ方向に変化を有する自由曲面であってよい。
【0040】
このような基材21において、予め基材21をXYZステージ30上に載置する前に、基材21上の複数例えば3個の基準点P00、P01、P02を決定してこの位置を測定しておく(第1の測定)。これによって、例えば、基準点P00とP01によりX軸、基準点P00とP02によりY軸が定義され、3次元座標系における第1の基準座標系が算出される。ここで、第1の基準座標系における高さ位置をHo(x、y)(第1の高さ位置)とする。これによって、基材21の厚み分布の算出を行うことができる。
【0041】
一方、基材21をXYZステージ30上に載置した後も、同様の処理を行う。すなわち、図4(A)に示すように、基材21上の複数例えば3個の基準点P10、P11、P12を決定してこの位置を測定しておく(第2の測定)。これによって、例えば、基準点P10とP11によりX軸、基準点P10とP12によりY軸が定義され、3次元座標系における第2の基準座標系が算出される。
【0042】
さらに、これらの基準点P00、P01、P02、P10、P11、P12により第1の基準座標系を第2の基準座標系に変換するための座標変換行列などを算出して、この座標変換行列を利用して、第2の基準座標系におけるHo(x、y)に対応する高さ位置Hp(x、y)(第2の高さ位置)を算出して、この位置を最適フォーカス位置、すなわち描画位置として電子ビームの焦点位置が合わされるべき位置とすることとなる。これにより、上述の基材21の厚み分布の補正を行うことができる。
【0043】
なお、上述の第2の測定は、電子ビーム描画装置90の測定装置80を用いて測定することができる。そして、第1の測定は、予め別の場所において他の測定装置を用いて測定しておく必要がある。このような、基材21をXYZステージ30上に載置する前に予め基準点を測定するための測定装置としては、上述の測定装置80と全く同様の構成の測定装置(第2の測定手段)を採用することができる。
【0044】
この場合、測定装置からの測定結果は、例えば図1に示す情報入力部158にて入力されたり、制御回路100と接続される不図示のネットワークを介してデータ転送されて、メモリ160などに格納されることとなる。もちろん、この測定装置が不要となる場合も考えられる。
【0045】
上記のようにして、描画位置が算出されて、電子ビームの焦点位置が制御されて描画が行われることとなる。
【0046】
具体的には、図4(C)に示すように、電子ビームの焦点深度FZ(ビームウエストBW)の焦点位置を、3次元基準座標系における単位空間の1フィールド(m=1)内の描画位置に調整制御する(この制御は、上述したように、電子レンズ161による電流値の調整もしくはXYZステージ30の駆動制御のいずれか一方又は双方によって行われる。)。なお、本例においては、1フィールドの高さ分を焦点深度FZより長くなるように、フィールドを設定してあるがこれに限定されるものではない。ここで、焦点深度FZとは、図5に示すように、電子レンズ161を介して照射される電子ビームBにおいて、ビームウエストBWが有効な範囲の高さを示す。なお、電子ビームBの場合、図5に示すように、電子レンズ161の幅D、電子レンズ161よりビームウエスト(ビーム径の最も細い所)BWまでの深さfとすると、D/fは、0.01程度であり、例えば50nm程度の解像度を有し、焦点深度は例えば数十μ程度ある。
【0047】
そして、図4(C)に示すように、例えば1フィールド内をY方向にシフトしつつ順次X方向に走査することにより、1フィールド内の描画が行われることとなる。さらに、1フィールド内において、描画されていない領域があれば、その領域についても、上述の焦点位置の制御を行いつつZ方向に移動し、同様の走査による描画処理を行うこととなる。
【0048】
次に、1フィールド内の描画が行われた後、他のフィールド、例えばm=2のフィールド、m=3のフィールドにおいても、上述同様に、測定や描画位置の算出を行いつつ描画処理がリアルタイムで行われることとなる。このようにして、描画されるべき描画領域について全ての描画が終了すると、基材21の表面における描画処理が終了することとなる。
【0049】
なお、本例では、この描画領域を被描画層とし、この被描画層における曲面部2aの表面の曲面に該当する部分を被描画面としている。
【0050】
さらに、上述のような各種演算処理、測定処理、制御処理などの処理を行う処理プログラムは、プログラムメモリ162に予め制御プログラムとして格納されることとなる。
【0051】
なお、電子ビーム描画装置90のメモリ160には、不図示の形状記憶テーブルを有し、この形状記憶テーブルには、例えば基材21の曲面部2aに回折格子を傾けて各ピッチ毎に形成する際の走査位置に対するドーズ量分布を予め定義したドーズ分布の特性などに関するドーズ分布情報、その他の情報が格納されている。
【0052】
また、プログラムメモリ162には、これらの処理を行う処理プログラム、ドーズ分布情報などの情報をもとに、曲面部2a上の所定の傾斜角度におけるドーズ分布特性など演算により算出するためのドーズ分布演算プログラム、その他の処理プログラムなどを有している。
【0053】
このため、制御部170は、測定装置80にて測定された描画位置に基づき、電子レンズの電流値を調整して電子ビームの焦点位置を描画位置に応じて可変制御するとともに、焦点位置における焦点深度内について、ドーズ分布の特性に基づいて、そのドーズ量を算出しつつ基材の描画を行うように制御する。
【0054】
あるいは、制御部170は、測定装置80にて測定された描画位置に基づき、駆動手段によりXYZステージ30を昇降させて、電子銃121にて照射された電子ビームの焦点位置を描画位置に応じて可変制御するとともに、焦点位置における焦点深度内について、メモリ160のドーズ分布の特性に基づいて、そのドーズ量を算出しつつ基材の描画を行うように制御する。
【0055】
次に、図1〜図6で説明した電子ビーム描画装置90を用いたビーム描画において、XY軸に対して平行な方向に走査させた描画と角度を持った方向に走査する描画とを混在させて描画パターンを得る場合のビーム描画方法を円パターンの描画のために円を多角形近似して描画を行うことを例にして図7、図8により説明する。
【0056】
図7(a)は円を多角形近似したときの一辺における始点と終点との間の各ドーズラインを示し、図7(b)は図7(a)における各ドーズラインのつなぎ部分を拡大して示す図であり、図8は本実施の形態のビーム描画方法を説明するためのフローチャートである。
【0057】
図7(a)のように、円を多角形近似したときの一辺であるドーズライン1を円描画中心pを通る半径方向の破線で示す直線c上の始点2から同じく円描画中心pを通る半径方向の破線で示す直線d上の終点3まで電子ビームを走査することでビーム描画できる。そして、図7(b)のように、ドーズライン間隔Δdだけずらして始点4から直線c上の終点まで電子ビームを走査することで次のドーズラインのビーム描画を行う。このとき、図7(b)の点3〜7,・・・のようなつなぎ部分の計算は次のようにして行うことができる。
【0058】
図8に示すように、初期化状態(i=0,k=1)で、描画パターンを入力する(S01)が、本例では円パターンであり、多角形近似するので、角度分割数Iを例えば図1の情報入力部158のキーボード等から入力する。
【0059】
次に、走査角度(2π/I)×(i−1)〜(2π/I)×i間の走査位置データを次式(1)のつなぎ位置の関数T(n)により生成する(S02)。
【0060】
つなぎ位置の関数T(n)=sin((2π/(α×k))×n ・・・(1)
但し、α×k>2πを常に満たす。
【0061】
図7(b)のように各ドーズライン始点(または終点)近傍(例えば、Δθだけ内側)においてドーズライン間隔Δdnを算出する(S03)。このドーズライン間隔ΔdnをL区間移動平均(d(n))とし(S04)、d(n)の変極点の間隔の最大値MAX_Dkを算出する(S05)。そして、MAX_Dk≦MAX_D(k−1)のとき、または、k=1のとき、A=kとする(S06)。これにより最大周期を求める。
【0062】
次に、k=Kか否かを判断し(S07)、k≠Kのときは、k=k+1としてS02に戻る。また、k=Kのときは次のステップS08に移る。なお、Kは、予め設定する値であり、上記式(1)の関数T(n)における最小周期を決める値である。
【0063】
次に、上記式(1)のつなぎ位置の関数T(n)=sin((2π/(α×A))×nによりi番目のデータを生成する(S08)。ここで、n=1,2,3,・・・とすることで、図7(b)のようなつなぎ部分における各点3,4,5,・・・を得ることができる。そして、上記ステップS02〜S08をi=Iとなるまでi=i+1としながら繰り返し(S09)、円を分割数Iで多角形近似するときの全てのデータの生成を完了してから電子ビーム描画を実行する(S10)。
【0064】
上述のステップS02〜S09は図1の電子ビーム描画装置90の制御部170で実行され、その生成されたデータに基づいて電子ビーム描画が高速D/A変換器114b、高精度D/A変換器114c、副偏向部112b及び主偏向部112cを介して偏向器200により制御されながら実行される。
【0065】
このときの電子ビーム描画は、例えば、図7(a)(b)において始点2からドーズライン1上を電子ビームを終点3まで走査し、次に始点4から直線c上の終点まで走査するようにして描画することができる。また、例えば、電子ビームを終点3まで走査してから、次に、その点3を始点にして次の辺を走査するようにしてビーム描画をするようにしてもよい。
【0066】
次に、図9〜図14を参照して上記ビーム描画方法について更に説明する。図9は、後述の図12のような従来の直線状のつなぎラインを上述の図7,図8のようにしてサインカーブにした場合のつなぎ部分を示す図であり、図10は、図9のようにつなぎラインをサインカーブにした場合のドーズラインのNo.とドーズライン間隔の関係を示す図であり、図11は図10の場合に形成されたブレーズ形状をプローブ顕微鏡により観察した側面図である。図12〜図14は従来例を比較のために説明するための図である。
【0067】
図9のように、ビーム走査方向切り替わり部分における図12の直線状のつなぎラインa’,b’を上述の図7,図8のようにしてサインカーブのつなぎラインe,f’とした場合、ドーズラインNo.毎の(n=1,2,3,・・・)ドーズライン間隔Δdは、図10の各点のように適度に分散し、また、図10の実線で示す10区間移動平均間隔Δdnが周期性を持たずに変動していることが分かる。
【0068】
これに対し、図12のようにビーム走査方向切り替わり部分におけるつなぎラインa’,b’を従来の直線状とした場合、ドーズラインNo.毎のドーズライン間隔Δdは、図13の各点のように周期性を有し、また、図13の実線で示す10区間移動平均間隔Δdnが周期性を持って変動している。
【0069】
上述のように、図12のような従来方法では、XY軸に対して平行な方向を基準とした場合、角度を持った走査は描画ラインの始点・終点の計算値から最も近い座標を選択することになるため、描画ライン間隔は完全な等間隔にならず、かつ周期的な分布を持ってしまう。そのために、ドーズの空間的な分布に偏りが生じ、得たいパターンとは異なる描画形状が形成されてしまう。例えば、図14のように、ブレーズを得るための描画の際に、斜面部分が平らにならずにうねりを持つなどの現象が生じてしまう。
【0070】
これに対し、本実施の形態のビーム描画によれば、図10のように、ドーズライン間隔を意識的に分散させることで周期的な分布を持たないので、ドーズの空間的な分布を均一に近づけることができる。例えば、図11のように、ブレーズを得るための描画の際に、斜面部分が図14の従来の場合よりも平らになり精度が向上していることが分かる。このように、本実施の形態の電子ビーム描画によりブレーズ形状等の所望の形状を精度よく得ることができる。
【0071】
なお、制御系300は、上述のような円描画時に正多角形(不定多角形を含む)に近似するのに必要な(円の半径に応じた)種々のデータ(例えば、ある一つの半径の円について、その多角形による分割数I、各辺の位置各点位置の座標情報並びにクロック数の倍数値、さらにはZ方向の位置などの各円に応じた情報等)、さらには円描画に限らず種々の曲線を描画する際に直線近似するのに必要な種々のデータ、各種描画パターン(矩形、三角形、多角形、縦線、横線、斜線、円板、円周、三角周、円弧、扇形、楕円等)に関するデータを含む。
【0072】
以上のように本発明を実施の形態により説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、本発明の技術的思想の範囲内で各種の変形が可能である。例えば、本実施の形態では、電子ビームによる描画を説明したが、レーザビームによる描画でもよい。また、描画することで得る形状はブレーズ形状に限定されず他の形状であってもよいことは勿論である。
【0073】
また、ビームを走査するときの各直線の始点と終点のつなぎ位置の計算はサインカーブによる周期関数で行ったが、これに限定されず、他の周期関数であってもよいことは勿論である。また、乱数に基づいて各直線の始点と終点のつなぎ位置を計算してもよい。
【0074】
なお、本明細書において周期関数とは、次式が成立するような関数fをいい、例えば、三角関数やフーリエ級数等があるが、f(x)=定数となるような関数は含まない。
f(x+nT)=f(x) 但し、n:整数(n=1,2,・・・)
【0075】
【発明の効果】
本発明のビーム描画方法によれば、ビームを直線と直線とをつなぐようにして走査してビーム描画を行う際に所望の描画形状を精度よく得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態による電子ビーム描画方法を実行可能な電子ビーム描画装置の全体の概略構成を示す説明図である。
【図2】図1の電子ビーム描画装置に含まれる測定装置の概略構成を示す説明図である。
【図3】図3(A)〜(C)は、図2の測定装置による基材の面高さの測定について説明するための説明図である。
【図4】図4(A)(B)は、図1の電子ビーム描画装置にて描画される基材を示す説明図であり、図4(C)は、描画原理を説明するための説明図である。
【図5】図1の電子ビーム描画装置におけるビームウエストを説明するための説明図である。
【図6】図1,図2の測定装置の信号出力と基材の高さとの関係を示す特性図である。
【図7】図7(a)は本実施の形態のビーム描画方法において円を多角形近似したときの一辺における始点と終点との間の各ドーズラインを示し、図7(b)は図7(a)における各ドーズラインのつなぎ部分を拡大して示す図である。
【図8】本実施の形態のビーム描画方法を説明するためのフローチャートである。
【図9】図12のような従来の直線状のつなぎラインを図7,図8のようにしてサインカーブにした場合のつなぎ部分を示す図である。
【図10】図9のようにつなぎラインをサインカーブにした場合のドーズラインのNo.とドーズライン間隔の関係を示す図である。
【図11】図10の場合に形成されたブレーズ形状をプローブ顕微鏡により観察した側面図である。
【図12】従来の直線状のつなぎラインによるつなぎ部分を示す図である。
【図13】図12のように従来の直線状のつなぎラインによる場合のドーズラインのNo.とドーズライン間隔の関係を示す図である。
【図14】図12の従来の直線状のつなぎラインによる場合に形成されたブレーズ形状をプローブ顕微鏡により観察した側面図である。
【図15】円の中心と多角形頂点を結ぶ直線上で始点と終点の計算を行う従来の方法を説明するための図である。
【符号の説明】
90 電子ビーム描画装置
170 制御部
1 ドーズライン
2〜7 始点、終点
Δd ドーズライン間隔
Claims (11)
- ビームを照射し走査することでビーム描画を行うビーム描画方法であって、
直線と直線とをつなぐようにして前記ビームを走査するときに、前記各直線の始点と終点のつなぎ位置の計算を非直線上で行うことを特徴とするビーム描画方法。 - ビームを照射し走査することでビーム描画を行うビーム描画方法であって、
直線と直線とをつなぐようにして前記ビームを走査するときに、前記各直線の始点と終点のつなぎ位置の計算を周期関数により行うことを特徴とするビーム描画方法。 - 前記ビームの走査間隔を算出し、前記走査間隔の分布のばらつきの周期性に基づいて前記周期関数の係数を選定することで前記つなぎ位置を決定することを特徴とする請求項2に記載のビーム描画方法。
- 前記走査間隔の分布のばらつきの周期性を、ビーム径または近接効果を考慮したパラメータとして決定した加算走査ライン数分の走査間隔の積算値または平均値に基づいて判断することを特徴とする請求項3に記載のビーム描画方法。
- 前記積算値の変極点または前記積算値と前記積算値の設計値との差の値の符号の切り替わり間隔から最大周期を求め、その最大周期の値が一定以下となるように前記周期関数の係数を選定することで前記つなぎ位置を決定することを特徴とする請求項4に記載のビーム描画方法。
- 前記各直線の始点と終点の位置の計算を三角関数を基に算出することを特徴とする請求項2乃至5のいずれか1項に記載のビーム描画方法。
- ビームを照射し走査することでビーム描画を行うビーム描画方法であって、
直線と直線とをつなぐようにして前記ビームを走査するときに、前記各直線の始点と終点のつなぎ位置の計算を乱数を基に行うことを特徴とするビーム描画方法。 - 前記ビーム描画により3次元パターンを形成することを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載のビーム描画方法。
- 前記3次元パターンの集合体により円形のパターンを形成することを特徴とする請求項8に記載のビーム描画方法。
- 前記円形のパターンは曲面上に形成されることを特徴とする請求項9に記載のビーム描画方法。
- 前記円形のパターンは回折ブレーズであることを特徴とする請求項9または10に記載のビーム描画方法。
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