JP2004052934A - 転がり軸受 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】本発明の転がり軸受1は、複写機またはプリンターの定着部に使用されるヒートロールまたはプレッシャーロールを回転自在に支持する転がり軸受であって、転動体8と、内輪2と、外輪4のうち、少なくとも一つが、ステンレス鋼により構成されている。
【選択図】 図2
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、転がり軸受に関し、特に複写機、プリンターの定着部に使用されるヒートロールまたはプレッシャーロールを支持する転がり軸受に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、複写機、プリンターなどの定着部は、トナーが付着した紙を加熱するヒートロールと、紙を圧着するプレッシャーロールとの間に、複写する用紙を通すことにより、紙に付着したトナーが加熱されて定着されるように構成されている。この定着部に備えられたヒートロールは、ヒータによる加熱で、通常、160〜200℃程度の温度条件下になっている。
ヒートロールやプレッシャーロールに装着される転がり軸受は、その材質として、JISで規定されたSUJ2などの転がり軸受用の軸受鋼を使用している。また、内輪及び外輪の空隙部には、グリース等の潤滑剤を充填または封入している。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
上述したヒータによる加熱は、ヒートロールの軸部の外周に嵌合している軸受の内輪と、転動体及び外輪を介してハウジングに伝わる。その結果、軸受を介して外部に熱が逃げることで放熱される。
また、トナーの定着は、ヒートロールとプレッシャーロールとの間で行われるため、ヒートロールの熱がプレッシャーロールから多く放熱されてしまうと好ましくない。
したがって、ヒートロールやプレッシャーロールからの放熱を低減することは、ヒートロールの本来の機能、つまりヒートロールの加熱によるトナー定着の機能を効率良く高めることにつながる。このため、連続運転における省エネルギー化及び初期運転時の暖気運転の短縮化からも本質的な問題点として捉えられている。
【0004】
従来の転がり軸受は、複写機、プリンターの運転初期において、ヒータの熱が軸受を介してハウジング側に逃げやすい。そのため、ヒートロールが所定の温度に達するまでの暖気運転の時間が長いという状況にあった。
なお、従来の複写機などの定着部では、軸受の内輪とヒートロールの間に断熱ブッシュなどの部品を取り付けた態様が提案されている。しかし、この態様を採用した場合、部品点数が多くなってしまい、しかも構造が複雑になってしまうため、好ましくない。
【0005】
本発明は、ヒートロールまたはプレッシャーロールからの放熱を低減するためになされたものであり、ヒートロールの加熱によるトナー定着の機能を効率よく高めること及び連続運転時の省エネルギー化を図ることのできる転がり軸受を提供することを目的としている。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するための本発明の請求項1に記載の転がり軸受は、転動体と、内輪と、外輪とを備え、複写機またはプリンターの定着部に使用されるヒートロールまたはプレッシャーロールを回転自在に支持する転がり軸受において、転動体、内輪、外輪のうち、少なくとも一つが、ステンレス鋼により構成されていることを特徴とする。
【0007】
上記構成によれば、転動体、内輪、外輪のうちの少なくとも一つが、ステンレス鋼で構成されるので、従来の軸受鋼からなるものに比べ熱伝導率が約1/2、またはそれ以下になる。このため、ヒートロールからの放熱が低減されるので、ヒータで加熱した熱が効率よくヒートロールに伝わり、ヒートロールの本来の機能、つまりヒートロールの加熱によるトナー定着の機能を効率良く高めることができる。
また、連続運転の場合の省エネルギー化及び初期運転時の暖気運転の短縮化を図ることができる。
【0008】
上記目的を達成するための本発明の請求項2に記載の転がり軸受は、請求項1に記載の転がり軸受であって、ステンレス鋼が、オーステナイト系、フェライト系、マルテンサイト系または析出硬化系のいずれかであることを特徴とする。
【0009】
上記構成の転がり軸受によれば、複写機、プリンターの温度環境等の使用条件に合わせた選択ができる。また、従来の軸受鋼よりも耐熱性、耐摩耗性を高めることができるので、摩耗によるトルクの増加が抑えられ、長期寿命も可能になる。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係る転がり軸受の一実施形態を図1及び図2に基づいて説明する。図1は、本発明に係る転がり軸受が適用される定着部の一例を示す概略斜視図、図2は、図1に示すヒートロールまたはプレッシャーロールを支持するための本発明に係る転がり軸受一実施形態を示す概略断面図である。
【0011】
まず、本実施形態の転がり軸受が適用される定着部の一例を説明する。
図1に示すように、複写機の感光ドラム11の近傍には、複数の帯電部12及びトナー供給部13が配置されている。ここでは、トナー供給部13から用紙14に対して供給されたトナーを、感光ドラム11及び帯電部12によって用紙14に付着させる。
また、感光ドラム11の下流側には、トナーを用紙14に定着させるためのヒートロール16と、プレッシャーロール17が設けられている。ヒートロール16には、ヒートロール16を所望の温度に加熱するためのヒータ15が設けられている。
なお、複写機、プリンターの定着部の構成は、図示の場合に限らず、本発明の目的に適合する構成であれば適宜の変更が可能である。例えば、ヒートロール16の近部に、図示しないプレヒータやバックアップロールを配置することが可能である。
【0012】
次に、上述したヒートロール16またはプレッシャーロール17を支持するための本実施形態の転がり軸受について説明する。
図2に示すように、本実施形態の転がり軸受1は、シールド形の小径玉軸受である。この転がり軸受1は、内輪2が、ヒートロール16(図1参照)の軸部3の外周に嵌合し、外輪4がハウジング5に固定されるようになっている。なお、転がり軸受1は、プレッシャーロール17の軸部に嵌合されていても良い。
また、内輪3と外輪4の間には、空隙部6が形成され、保持器7により内輪3と外輪4の間で転動自在に保持された複数の転動体8が配設されている。
さらに、転がり軸受1の両端面側には、内輪2と外輪4の間に異物が侵入することを防止するシールド板9,9が設けられている。そして、内輪2、外輪4及びシールド板9,9によって囲まれた空隙部6には、グリース等からなる潤滑剤10が充填されている。この潤滑剤10は、一般的に使用されている鉱油、シリコン油、ジェステル油などが適用される。またこの潤滑剤10には、金属石鹸、シリカゲル、ポリウレア等の無機または有機の増粘剤や酸化防止剤、防錆剤等の添加剤を、本発明の目的を損なわない範囲で、適宜併せて配合することが可能である。
【0013】
また、転がり軸受1は、内輪2、外輪4、転動体8のうちの少なくとも一つが、ステンレス鋼から構成されている。
ステンレス鋼を採用することにより、転がり軸受1の熱伝導率を低く抑えて、耐放熱性を向上させることができる。これにより、ヒートロール16からの放熱を従来の軸受鋼よりも低減でき、またヒートロール16の本来の機能を効率良く高めることができる。したがって、ヒートロール16の加熱によるトナーの定着性が向上する。
【0014】
また、ステンレス鋼は、定着部の構成や用途などによって、オーステナイト系、フェライト系、マルテンサイト系、または析出硬化系から適宜選択すればよい。
以下に示す表1は、従来の軸受鋼(SUJ2)に対して各種ステンレス鋼の熱伝導率を比較したものである。
【0015】
【表1】
【0016】
表1に示すように、オーステナイト系としてSUS304、フェライト系としてSUS430、マルテンサイト系としてSUS440C、析出硬化系としてSUS630,631の熱伝導率をそれぞれ示す。いずれのステンレス鋼においても、軸受鋼(SUJ2)と比較して、熱伝導率が約1/2、または1/2以下である。このようなステンレス鋼を、転がり軸受1の主要構成部品である内輪2、外輪4、転動体8の材料として用いることにより、転がり軸受1の熱伝導率を低く抑えることができる。
【0017】
なお、本発明に係る転がり軸受1は、上記実施形態の形状及び構成に限定されるものではなく、転がり軸受の形状、種類等は、本発明の主旨に基づいて適宜変更可能である。例えば、小径玉軸受に代えて、円錐ころ軸受、円筒ころ軸受、アンギュラ玉軸受等に変更してもよい。
【0018】
(実施例)
以下に、本発明に係る転がり軸受を用いて運転時の温度変化を調査した実施例について、図3及び図4を用いて説明する。
転動体の材質を、ステンレス鋼とした場合と、従来の軸受鋼(SUJ2)とした場合について、軸受運転時の内輪及び外輪の経時温度変化を比較評価した。
図3は、本実施例の温度試験の形態を示す概略図、図4は、本実施例の試験結果を示すグラフである。
【0019】
図3に示すように、本実施例の試験では、円筒状発熱体18の外周に転がり軸受を嵌合させて装着し軸受を運転させた。また、軸受の運転中に適宜内輪2及び外輪4の温度を測定できるように、内輪2及び外輪4には熱電対20を介して温度記録装置19を接続した。
この試験に用いた軸受は、日本精工株式会社の小径玉軸受(型番608;内径φ8mm,外径φ22mm,幅7mm)である。
【0020】
本発明に係る実施例の軸受には、ステンレス鋼(SUS440C)の転動体8を用いた。
また、比較例として、転動体8の材質が軸受鋼(SUJ2)である軸受を用意した。なお、内輪及び外輪の材質は、実施例、比較例ともに軸受鋼(SUJ2)である。
実施例と比較例の双方において、円筒状発熱体18を同様に加熱して、等しい回転速度で軸受を運転し、28分間の試験を行った。また、温度計測は1分ごとに行った。この試験結果を図4に示す。
【0021】
図4に示すグラフにおいて、(A),(B)は本発明に係る実施例の結果である。(A)は内輪の温度変化を示し、(B)は外輪の温度変化を示す。また、(C),(D)は比較例の結果である。(C)は内輪の温度変化を示し、(D)は外輪の温度変化を示す。
図4に示すように、内輪2における温度変化では、(A)と(C)では殆んど差がなかったのに対し、外輪4における温度変化では、(B)が(D)に対して明らかな有意差が認められた。
この結果により、転動体8の材質を従来の軸受鋼(SUJ2)からステンレス鋼(SUS440C)に変更することで、転動体8を伝わる熱量を抑えて、内輪から外輪への熱伝導の低減を行うことができることが確認された。したがって、本発明により円筒状発熱体18から軸受外部への放熱量が低減できることが判った。
【0022】
また、別の比較試験では、内輪2、外輪4及び転動体8をステンレス鋼(SUS630)とした試験軸受を測定した。その結果、内輪2及び外輪4は、ともに従来のものより低温度を示した。これにより、円筒状発熱体18から軸受外部への放熱は、明らかに低減されていることを確認した。
【0023】
【発明の効果】
以上説明したように本発明に係る転がり軸受によれば、従来の軸受鋼に対してヒートロールまたはプレッシャーロールからの放熱が低減されるので、トナー定着の機能を効率良く高めることができる。さらに、連続運転時における省エネルギー化、及び初期運転時の暖気運転の短縮化も達成できる。そして、断熱ブッシュも不要であるため、複写機などの定着部の構成を複雑にすることがない。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る転がり軸受が適用される定着部の一例を示す概略斜視図である。
【図2】図1に示すヒートロールまたはプレッシャーロールを支持するための本発明に係る転がり軸受一実施形態を示す概略断面図である。
【図3】実施例の温度試験の形態を示す概略図である。
【図4】実施例の試験結果を示すグラフである。
【符号の説明】
1 転がり軸受
2 内輪
3 軸部
4 外輪
5 ハウジング
6 空隙部
7 保持器
8 転動体
9 シールド板
10 潤滑剤
11 感光ドラム
12 帯電部
13 トナー供給部
14 用紙
15 ヒータ
16 ヒートロール
17 プレッシャーロール
Claims (2)
- 転動体と、内輪と、外輪とを備え、複写機またはプリンターの定着部に使用されるヒートロールまたはプレッシャーロールを回転自在に支持する転がり軸受において、
前記転動体、前記内輪、前記外輪のうち、少なくとも一つが、ステンレス鋼により構成されていることを特徴とする転がり軸受。 - 前記ステンレス鋼は、オーステナイト系、フェライト系、マルテンサイト系または析出硬化系のいずれかであることを特徴とする請求項1記載の転がり軸受。
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JP2002212556A JP2004052934A (ja) | 2002-07-22 | 2002-07-22 | 転がり軸受 |
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- 2002-07-22 JP JP2002212556A patent/JP2004052934A/ja active Pending
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