JP2004052140A - 布帛の縮絨処理と絞り模様描出法 - Google Patents
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Abstract
【課題】熱収縮性フイルムを被加工布帛に貼り合わせて加熱収縮させて被加工布帛を縮絨緻密化し、或いは、被加工布帛に絞り模様を描出する過程において、熱収縮性フイルムと被加工布帛に塗着した接着剤の乾燥工程を省き、効率的に被加工布帛を処理する。
【解決手段】熱収縮性フイルムに水を含んだ接着剤を塗着して被加工布帛に重ね合わせ、その接着剤の印捺塗膜の湿潤状態において重なり合う熱収縮性フイルムと被加工布帛をプレス装置に挟み込んで圧着し、その圧着状態において熱収縮性フイルムの熱収縮開始温度以上に加熱して熱収縮性フイルムに熱収縮応力を発生させ、プレス装置による圧着状態を解除して被加工布帛を縮絨緻密化し、或いは、熱収縮性フイルムと被加工布帛に絞り模様を発生させる。
【選択図】 図1
【解決手段】熱収縮性フイルムに水を含んだ接着剤を塗着して被加工布帛に重ね合わせ、その接着剤の印捺塗膜の湿潤状態において重なり合う熱収縮性フイルムと被加工布帛をプレス装置に挟み込んで圧着し、その圧着状態において熱収縮性フイルムの熱収縮開始温度以上に加熱して熱収縮性フイルムに熱収縮応力を発生させ、プレス装置による圧着状態を解除して被加工布帛を縮絨緻密化し、或いは、熱収縮性フイルムと被加工布帛に絞り模様を発生させる。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、布帛を縮絨緻密化する縮絨処理法、および、図柄を点描するようにセットされた細かい複数個の隆起によって布帛に描出する絞り模様描出法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
絞り模様描出法は、一般に“絞り”と称されている。古来周知の絞り技法によると、布帛の隆起を形成するべき箇所を一箇所づつ掴み上げ、その掴み上げられた尖端部分を糸条で縛ってセットし、その後、その糸条を解除すると、絞り模様が布帛に描出される。その絞り技法では、その一箇所づつ掴み上げて糸条で縛る作業も、その縛った糸条を解除する作業も手作業で行われるので能率が悪く、得られる絞り模様布帛も極めて高価なものとなる。そこで、“絞り”を効率的に行う種々の提案がなされている。その主な方法は、熱収縮性繊維を利用する方法であり、それを具体的に説明すると次の通りである。
【0003】
第1の方法は、熱収縮性繊維糸条を被加工布帛である非・低熱収縮性繊維布帛に縫い付け、加熱して熱収縮性繊維糸条を収縮し、その熱収縮性繊維糸条との熱収縮差によって縫目に沿った隆起を被加工布帛に発生させる縫目収縮法である(特開昭60−252792、特公昭61−43475)。第2の方法は、熱収縮性繊維布帛を被加工布帛に重ね合わせて模様状に縫合し、加熱して熱収縮性繊維布帛を熱縮させ、その熱収縮性繊維布帛との収縮差によって縫目に囲まれた隆起を被加工布帛に発生させる縫合収縮法である(特開昭60−252793、特公昭61−43476)。第3の方法は、上記第2の方法に準じて隆起を発生させるが、縫糸には水溶性糸条が使用され、被加工布帛に発生した隆起をセットしてから縫糸を溶解し、熱収縮性繊維布帛を剥離除去する収縮溶解法である(特許第3049058号)。第4の方法は、上記第2と第3の方法と同様に、熱収縮性繊維布帛と被加工布帛を模様状に接合して隆起を発生させるが、縫糸を使用せず、縫糸に代えて接着剤を模様状に塗着して熱収縮性繊維布帛と非・低熱収縮性繊維布帛を接着し、被加工布帛に発生した隆起をセットしてから接着剤を溶解し、熱収縮性繊維布帛を剥離除去する接着収縮法である(特開平6−240563、特許第2554981号)。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
縫目収縮法と縫合収縮法と収縮溶解法では、熱収縮性繊維を縫糸で接合するので、隆起が形成されるまで被加工布帛に確り固定される。しかし、隆起を形成すべき箇所を縫目によって細かく縁取るには特殊な刺繍ミシンを要し、広幅の被加工布帛には適用し難く、又、複雑な絞り模様では相当手間取る。接着収縮法では、グラビアロールや捺染スクリーンで接着剤を模様状に塗着すればよいので、広幅の被加工布帛にも適用し得る。しかし、そのためには、隆起ができるまで剥離しないように接着剤を十分に塗着しなければならず、そのためには緻密な熱収縮性繊維布帛が必要とされる。この点からして、熱収縮性繊維メッシュ布帛は、被加工布帛に十分に接着剤を塗着しても、接着が点接着になって剥離し易くなるので、熱収縮性繊維糸条によって目粗に織編されたポーラスなメッシュ布帛は、熱収縮性繊維布帛としては使用されない。
【0005】
接着収縮法に対し、縫合収縮法と収縮溶解法では、ポーラスなメッシュ布帛でも、縫糸によって被加工布帛に確り縫合されるので、それを熱収縮性繊維布帛として使用することが出来、それが目粗で目付けが少なければ使用後の廃棄物としての処理も楽になる。又、熱収縮性繊維布帛には、それが高い熱収縮性を示すのであれば、使用後は廃棄物として処理されるものであるから、熱収縮性の他に格別な物性品質は要求されず、安価なメッシュ布帛を使用して絞り模様布帛を経済的に得ることが出来る。
【0006】
そこで本発明者は、目付けが少なく、安価で使用後の処理も楽に行える熱収縮性メッシュ布帛を接着剤によって被加工布帛に確り接合し、絞り模様布帛を経済的に得る方法を発明し、特願2001−96000に開示している。この特願2001−96000に係る絞り模様描出法(以下、先願説明と言う。)は、熱収縮性メッシュ布帛をプラスチックフイルムに貼り合わせて用意し、接着剤を印捺して被加工布帛に貼り合わせ、熱収縮性メッシュ布帛を加熱収縮させて被加工布帛に絞り模様を発生させ、その絞り模様をセットしてから被加工布帛を剥離することを要旨とするものである。この方法では、熱収縮性メッシュ布帛は、それ自体が直接被加工布帛に強固に接着しなくても、プラスチックフイルムと被加工布帛の間に挟まれており、プラスチックフイルムを介して被加工布帛に接着されているので、熱収縮性メッシュ布帛が熱収縮して絞り模様が発生する過程で被加工布帛から剥離することがない。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
然るに、プラスチックフイルムと被加工布帛の何れに接着剤を印捺するにしても、プラスチックフイルムに接着剤を印捺するときは、その印捺面に介在する熱収縮性メッシュ布帛の繊維糸条に印捺塗膜の水分が吸収され、被加工布帛に接着剤を印捺するときは、その被加工布帛の繊維糸条に印捺塗膜の水分が吸収され、熱収縮性メッシュ布帛を被加工布帛に重ね合わせる前に印捺塗膜が粘着性を失って半乾き状態になり、熱収縮性メッシュ布帛と被加工布帛の接着が不十分になり、熱収縮性メッシュ布帛が熱収縮する過程で剥離し易くなる。そして、重ね合わせる前に印捺塗膜が粘着性を失って半乾き状態にならないようにするため接着剤の塗布量を多くすれば、印捺塗膜の乾燥に長時間を要し生産効率が損なわれ、又、熱収縮性メッシュ布帛と被加工布帛を重ね合わせるとき、印捺型際の周囲に接着剤が食み出て型際にダブりが生じ、絞り模様を鮮鋭に描出することは出来なくなる。
【0008】
【発明の目的】
そこで本発明は、印捺塗膜の乾燥を簡略化し、鮮鋭な絞り模様を効率的に描出することを第1の目的とする。本発明の第2の目的は、熱収縮性フイルムを使用して布帛を縮絨緻密化することである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
接着剤は、凡そ、その保有する溶媒溶液の半分以上を失って半乾き状態になると、プラスチックフイルムや被加工布帛への印捺が不可能になる。又、被加工布帛とプラスチックフイルムを重ね合わせて印捺塗膜を乾燥固化する過程において、熱収縮性メッシュ布帛が収縮し始めると、被加工布帛とプラスチックフイルムが剥離状態になり接着不良になる。しかし、一般の非熱収縮性の布帛と布帛を貼り合わせる場合は、印捺塗膜を乾燥固化する過程において、接着剤の印捺箇所がズレ動くことがなく、印捺塗膜が半乾き状態になった時点で、実用上差し障りのない程度に布帛と布帛が接着され、剥離したり接着不良になることはない。
【0010】
その点に配慮すれば、熱収縮性フイルムを被加工布帛に強く圧着すれば、その間の摩擦抗力によって熱収縮性フイルムの熱収縮が抑えられるので、被加工布帛と熱収縮性フイルムを重ね合わせて印捺塗膜を乾燥固化する過程において、高温加熱しても接着剤の印捺箇所がズレ動くことがなく、印捺塗膜が半乾き状態になった時点では、その後剥離しない程度に被加工布帛と熱収縮性フイルムが強く接着する、と言うことになる。そして、その印捺塗膜が半乾き状態になった時点で被加工布帛と熱収縮性フイルムをフリーにすれば、印捺塗膜が半乾き状態になる過程で加熱されて熱収縮性フイルムに発生していた熱収縮応力が一気に顕在化し、熱収縮性フイルムが収縮して被加工布帛に絞り模様が一気に発生する。その状態において、被加工布帛の形状をセットしてから熱収縮性繊維布帛を剥離すれば絞り模様布帛が得られることになる。
【0011】
本発明に係る布帛の縮絨処理と絞り模様描出法は、かかる知見を得て完成されたものであり、熱収縮性フイルムに溶媒溶液を含んだ接着剤を塗着して被加工布帛に重ね合わせ、その接着剤の印捺塗膜の膨潤状態において重なり合う熱収縮性フイルムと被加工布帛をプレス装置に挟み込んで圧着し、その圧着状態において熱収縮性フイルムの熱収縮開始温度以上に加熱して熱収縮性フイルムに熱収縮応力を発生させ、プレス装置による圧着状態を解除して熱収縮性フイルムと共に被加工布帛を収縮させ、被加工布帛の収縮状態をセット(固定)した後、熱収縮性フイルムと被加工布帛を剥離することを第1の特徴とするものであり、布帛の縮絨処理においては、熱収縮性フイルムの全面に溶媒溶液を含んだ接着剤を塗着することとし、絞り模様を描出する場合は、熱収縮性フイルムに溶媒溶液を含んだ接着剤を部分的に塗着(印捺)し、プレス装置による圧着状態を解除して熱収縮性フイルムと被加工布帛に絞り模様を発生させ、被加工布帛の絞り模様をセット(固定)した後、熱収縮性フイルムと被加工布帛を剥離する。
【0012】
本発明に係る布帛の縮絨処理と絞り模様描出法の第2の特徴は、上記第1の特徴に加えて、上記熱収縮性フイルムの熱収縮開始温度が100℃以下である点にある。
【0013】
本発明に係る布帛の縮絨処理と絞り模様描出法の第3の特徴は、上記第1および第2の何れかの特徴に加えて、プレス装置における加熱時に、被加工布帛側を高温にし、熱収縮性フイルム側を低温にし、被加工布帛側から熱収縮性フイルム側へと伝熱する点にある。
【0014】
本発明に係る布帛の縮絨処理と絞り模様描出法の第4の特徴は、上記第1、第2および第3の何れかの特徴に加えて、接着剤の水分含有率(N重量%)と、接着剤の膨潤時塗布量(Mg/m2 )と、熱収縮性フイルムの表面積Aに占める接着剤の印捺塗膜の面積Bの割合(印捺塗膜面積占有率;P%=100×B/A)と、被加工布帛の目付け(Fg/m2 )を、N×M×P×10−4÷(M×(100−N)×10−2+F)≦0.40となる関係式を満たすように設定する点にある。
【0015】
本発明に係る布帛の縮絨処理と絞り模様描出法の第5の特徴は、上記第1、第2、第3および第4の何れかの特徴に加えて、プレス装置の被加工布帛との接触面を有機質物質で被覆する点にある。
【0016】
【発明の実施の形態】
熱収縮性フイルムは、そのフイルム自体が熱収縮性を有するものであってもよく、又、殊更熱収縮性を有しない通常のフイルムに熱収縮性メッシュ布帛を貼り合わせた特願2001−96000に係るものであってもよい。熱収縮性フイルムには、比較的低温域の60℃前後で熱収縮を開始し、70℃〜100℃においてフイルムに熱収縮応力が顕在化し、10%〜40%の熱収縮率を示す熱収縮性ポリエステル・フイルム(東洋紡株式会社製品S7200)、熱収縮性オルト・ポリプロピレン・フイルム(大倉工業株式会社製品OPシュリンY)、および、熱収縮性ポリ塩化ビニル・フイルム(三菱樹脂株式会社製品SA10−F)を使用するとよい。接着剤には、環境衛生の点からして水系エマルジョン樹脂、例えば酢酸ビニル・エマルジョン樹脂、塩化ビニル・エマルジョン樹脂、アクリル・エマルジョン樹脂、ポリウレタン・エマルジョン樹脂、スチレン・ブタジエン、ブチルゴム、アクリロニトリルゴム等のラテックス・エマルジョン樹脂を用いることが望ましいが、それらの樹脂をメタノール、エタノール、メチルエチルケトン、アセトン等の有機溶剤に溶解した有機溶剤溶解樹脂を使用することも出来る。従って、本発明において「溶媒溶液」とは、接着剤の主成分である樹脂を分散或いは溶解する液体を意味し、接着剤の「膨潤状態」とは、接着剤が溶媒溶液を含んだ状態を意味し、接着剤の「膨潤時塗布量」とは、印捺或いは塗布直後の溶媒溶液を含んだ状態にある接着剤の塗布量を意味し、接着剤の印捺塗膜の「乾燥」とは、印捺塗膜から溶媒溶液が蒸発ないし揮発して印捺塗膜に含まれる溶媒溶液の含有量が減少することを意味する。
【0017】
接着剤の塗膜を乾燥させることなく、その塗着直後の膨潤状態において被加工布帛を重ねて加圧し、熱収縮性フイルムの熱収縮開始温度以上に加熱する理由は、前記の通り、熱収縮性フイルムを被加工布帛に強く圧着すれば、その間の摩擦抗力によって熱収縮性フイルムの熱収縮が抑えられ、被加工布帛と熱収縮性フイルムを重ね合わせて印捺塗膜を乾燥固化する過程で高温加熱しても接着剤の印捺箇所がズレ動かず、印捺塗膜が半乾き状態になった時点で剥離しない程度に被加工布帛と熱収縮性フイルムが強く接着し、その半乾き状態になった時点で被加工布帛と熱収縮性フイルムをフリーにすれば、熱収縮性フイルムに蓄積されていた熱収縮応力が一気に顕在化して布帛が縮絨緻密化され、又、絞り模様が一気に形成されるからである。
【0018】
更に詳しく説明すると、一般に、粘稠に調製されて塗布可能な接着剤が、その含有する溶媒溶液を20%以上失うと延展性がなくなって塗布することが困難になり、その溶媒溶液を50%以上失うと膠状の固体になって接着剤としては使用し得なくなる。しかし、被加工布帛に重ね合わせた後で溶媒溶液を50%以上失う時は、容易には剥離し得ない膠状固体になって接着力を発揮する。そこで、溶媒溶液を吸収し易い被加工布帛にではなく、溶媒溶液を全く吸収しない熱収縮性フイルムに接着剤を印捺し、被加工布帛に重ね合わせる前に印捺塗膜が溶媒溶液を失って粘着力を失わないようにし、重ね合わされてから溶媒溶液が被加工布帛に吸収されて接着力を発揮するようにする。被加工布帛について言えば、一般に、遠心脱水機を使用しても染浴や洗浴に浸漬した布帛をピックアップ率が50%以下になるように絞ることは困難であり、又、寝起き直後の寝具類では吸湿して10重量%前後の水分を保有していても湿潤状態にあるとは感じられず、乾燥状態にあると感じられることからしても分かるように、印捺塗膜の水分を重ね合わされた被加工布帛が吸収したとしても乾燥状態にあると感じられるものであり、その吸湿量が少なければ、その吸収した溶媒溶液によって印捺塗膜の膠状固化が損なわれず、溶媒溶液を失うにつれて印捺塗膜に接着力が生じる。
【0019】
接着剤の溶媒溶液含有率(N重量%)と、接着剤の膨潤時塗布量(Mg/m2 )と、熱収縮性フイルムの表面積Aに占める接着剤塗膜の面積Bの割合(接着剤塗膜面積占有率;P%=100×B/A)と、被加工布帛の目付け(Fg/m2 )との関係式・N×M×P×10−4÷(M×(100−N)×10−2+F)≦0.40は、接着剤塗膜の膨潤状態において重なり合う熱収縮性フイルムと被加工布帛をプレス装置に挟み込んで圧着し、熱収縮性フイルムの熱収縮開始温度以上に加熱するとき、接着剤塗膜から被加工布帛への溶媒溶液の移行が停止して平衡状態に達し、接着剤塗膜が膠状固化して接着力を発揮するに至った時点での接着剤塗膜と被加工布帛の溶媒溶液含有率(Q)を示すものである。
【0020】
その時点における接着剤塗膜と被加工布帛の溶媒溶液含有率(Q=N×M×P×10−4÷(M×(100−N)×10−2+F)が少なければ少ないほど、接着剤塗膜を介して熱収縮性フイルムと被加工布帛が強固に接着し、プレス装置から解放された時点で意図する絞り模様が被加工布帛に発生する。従って、接着剤が部分的に印捺され、熱収縮性フイルムと被加工布帛とが線点接着となり、その線状や点状をなす接着箇所に剥離応力が集中作用する絞り模様を描出するための本発明の好ましい実施態様では、接着剤塗膜が膠状固化して接着力を発揮するに至った時点での接着剤塗膜と被加工布帛の溶媒溶液含有率(Q)を、0.2以下、0.1以下、更には、0.05以下にすることである。具体的に説明すると、溶媒溶液含有率が50重量%以下になるように接着剤を調製し、その膨潤時塗布量を100g/m2 以下にし、熱収縮性フイルムの表面積Aに占める接着剤の接着剤塗膜の面積Bの割合を20%以下(B/A≦0.2)にし、被加工布帛の目付けは50g/m2 以上にする。そうすると、接着剤塗膜の膨潤状態において重なり合う熱収縮性フイルムと被加工布帛をプレス装置に挟み込んで圧着し、熱収縮性フイルムの熱収縮開始温度以上に加熱するとき、接着剤塗膜から被加工布帛へと溶媒溶液が移行し、接着剤塗膜と被加工布帛の溶媒溶液含有率(Q)が0.17(17重量%)になり、接着剤塗膜から被加工布帛への溶媒溶液の移行が止まる。被加工布帛を縮絨緻密化する場合、接着剤は熱収縮性フイルムに全面均一に塗布すればよく、剥離応力が局部的に集中作用せず熱収縮性フイルムと被加工布帛の全面に均等に分散するので、接着剤塗膜が膠状固化して接着力を発揮するに至った時点での接着剤塗膜と被加工布帛の溶媒溶液含有率Qを0.2以上(0.4以下)にしてもよい。
【0021】
そのように、プレス装置内において加熱されて接着剤塗膜と被加工布帛の溶媒溶液含有率(Q重量%)が0.4以下になるようにするには、接着剤を、線状やドット状に、その線と線、或いは、ドットとドットの間に線やドットに比して広い隙間を開けて粗く印捺し、熱収縮性フイルムの表面積Aに占める接着剤塗膜の面積Bの割合を少なくするとよい。又、プレス装置において加熱されて接着剤塗膜と被加工布帛の溶媒溶液含有率(Q重量%)が0.2以下になるようにするには、被加工布帛の目付け(Fg/m2 )を増やせばよい。目付けが80g/m2 以下の薄手の被加工布帛を使用するときは、熱収縮性フイルム11に重ね合わせた被加工布帛13の上に当て布17を重ね合わせ、その当て布17によって被加工布帛13の目付けを実質的に増やし、接着剤塗膜14の溶媒溶液が被加工布帛13を透過して当て布17へと移行し拡散するようにするとよい。接着剤の樹脂固形分含有率を増やして接着剤の溶媒溶液含有率(N重量%)を少なくするには、接着剤に溶媒溶液分散型の接着性樹脂粉末を配合すればよい。このようにして、プレス装置内で加熱された接着剤塗膜と被加工布帛の溶媒溶液含有率(Q重量%)を0.2以下、0.1以下、更には、0.05以下にすることも出来る。
【0022】
熱収縮性フイルム11に塗布された接着剤塗膜14との接着性を高めるためには、被加工布帛13の熱収縮性フイルム11との貼合面に剥離可能な塗膜や水洗除去可能な塗膜を塗布積層し、その貼合面の毛羽を抑えて被加工布帛の表面を平滑に前処理しておくとよく、そうすることによって、初期接着力の弱い接着剤12を使用することが出来、接着剤の膨潤時塗布量(Mg/m2 )を少なくすることも出来、加工後の接着剤塗膜14の被加工布帛13からの洗浄除去も容易になり、絞り模様を効率的に描出することが出来る。
【0023】
接着剤12は、グラビアロール16、ロールスクリーン、フラットスクリーン等によって熱収縮性フイルム11に塗着する。冷間エンボス加工等による凹凸が表面に形成された熱収縮性フイルムでは、フラットロールによって接着剤を印捺することも出来る。接着剤がフラットロールの周面全体に厚みが均一な塗膜を形成していても、熱収縮性フイルムの表面に突き出た凸部の頂点にだけ接着剤が塗着し、凹部には塗着しないからである。接着剤12を被加工布帛にではなく熱収縮性フイルムに印捺するのは、それが極く短時間であっても接着剤塗膜14に含まれている水分が失われることなく、被加工布帛に重ね合わされる直前まで接着剤塗膜14の粘着力が保持されるようにするためである。被加工布帛13には、熱収縮性フイルム11と重ね合わせる前に、熱収縮性フイルム11の印捺塗膜14に同調したプリントを施しておくことが出来る。
【0024】
プレス装置15においては、加熱されて接着剤塗膜の溶媒溶液が被加工布帛13や当て布17に移行し、接着剤塗膜の溶媒溶液含有率と被加工布帛や当て布の溶媒溶液含有率が等しくなり、溶媒溶液の分布状態が平衡状態に達した時点で、熱収縮開始温度以上に熱収縮性フイルム11が加熱されるようにする。そのためには、熱板18の上に当て布17を載せ、その当て布の上に被加工布帛13を載せ、その上に接着剤12の印捺された熱収縮性フイルム11を、その接着剤塗膜14を被加工布帛に向けて載せ、その熱収縮性フイルム11の上から熱板18に向けて押さえ部材19によって加圧するとよい。そうすると、被加工布帛13と当て布17の断熱作用により、被加工布帛13と当て布17を介して熱板18から熱収縮性フイルム11に熱が伝わり、溶媒溶液の分布状態が平衡状態に達した時点で熱収縮性フイルム11が熱収縮開始温度以上に加熱される。熱収縮性フイルム11の急激な加熱を避けるためには、当て布17に代えて布、紙、耐熱性プラスチック、木材等の低熱伝導率の有機物質で熱板や加熱シリンダー18の表面を被覆することが出来る。
【0025】
パイル布帛、人工皮革、起毛布帛、フェルト等の高目付けの布帛や厚手の布帛を使用する場合、それらの被加工布帛13による断熱作用が大きいので、当て布17は必ずしも必要とされない。当て布17はエンドレスベルトのように循環させ、冷却ゾーン20を通して冷却し、熱板18へと送り出すようにするとよい。被加工布帛13による断熱効果を高めるには、当て布17と同様に、被加工布帛を冷却ゾーンを通して冷却してからプレス装置15に送り込むとよい。プレス装置は、熱収縮性フイルム11と被加工布帛13を間欠的に加圧し加熱するバッチ式のものであっても、連続して加圧し加熱する連続式のものであってもよい。連続式プレス装置15では、熱板18を加熱シリンダーによって構成し、押さえ部材19はエンドレスベルトのように循環させ、加熱シリンダー18と押さえ部材19の間に被加工布帛と熱収縮性フイルムを送り込んで加圧し加熱する。バッチ式プレス装置では、貼り合わせた被加工布帛と熱収縮性フイルムを取り出す度に熱板(18)の表面を冷却する。加圧力は200〜300g/cm2 程度でよい。熱収縮性フイルムの熱収縮開始温度に達するまでの加圧時間は30秒間以内、好ましくは10〜20秒間前後にする。
【0026】
熱収縮性フイルムに伝わる加熱温度が、熱収縮性フイルムの熱収縮開始温度に達してから被加工布帛13と熱収縮性フイルム11を取り出すまでの加熱時間は30秒間以内、好ましくは5秒間前後にする。そのように加熱時間を設定するのは、加圧状態で長時間熱収縮開始温度以上に高温加熱すると、熱収縮性フイルムに生じた熱収縮応力によって、熱収縮性フイルム自体の分子構造に変化が生じ、熱収縮性フイルムが未延伸の非熱収縮性フイルムに変質し、加熱されて一旦熱収縮性フイルムに生じた熱収縮応力(熱収縮機能)が消失し、プレス装置内での加圧状態から解放された時点で熱収縮性フイルム11が収縮せず、被加工布帛13に絞り模様21を発生させることが出来なくなるからである。
【0027】
プレス装置15から解放された後の絞り模様21の形状セット(固定)は、被加工布帛に樹脂溶液を付与し、或いは、化学的に処理して被加工布帛を構成している繊維高分子の分子構造を変え、又、被加工布帛が熱可塑性合成繊維によって構成されているものでは、その合成繊維の軟化点に達する程度に被加工布帛を高温加熱して行う。図2において、10は、熱収縮性フイルム11と被加工布帛13をプレス装置15から取り出すためのベルトコンベアである。
【0028】
【実施例1】
熱収縮性ポリエステル・フイルム(東洋紡株式会社製品S7200・厚み30μm)に、仁丹柄の120メッシュ(100μm)捺染スクリーンを用いてポリウレタン系エマルジョン樹脂(中央技研工業株式会社製品FB−1000・固形分40重量%・溶媒溶液含有率N=60重量%・粘度12000c.p.s.)を印捺し、直ちに、ポリエステル繊維ブロード布帛(目付けF=100g/m2 )を重ね合わせ、同時に、熱収縮性ポリエステル・フイルムとポリエステル繊維ブロード布帛をアップダウン式プレス装置に挟み込み、圧力170g/cm2 ×温度100℃にて5秒間加熱圧着した。そのプレス装置による圧着状態を解除すると、熱収縮性ポリエステル・フイルムとポリエステル繊維ブロード布帛に絞り模様を発生した。その後、温度180℃にて1分間加熱してポリエステル繊維ブロード布帛の絞り模様をヒートセット(固定)し、熱収縮性ポリエステル・フイルムを剥離し、縦横それぞれ25%収縮して絞り模様のセットされたポリエステル繊維ブロード布帛を得た。尚、捺染スクリーンの仁丹柄は、直径1mmの円形ドットを0.5mmの距離をおき、60度方向を変えて三角形の枡目を描くように3方に放射状に繰り返し配列して構成され、それによる接着剤塗膜面積占有率Pは40%であり、接着剤の膨潤時塗布量Mは100g/m2 であり、接着剤塗膜が膠状固化して接着力を発揮するに至った時点での接着剤塗膜と被加工布帛の溶媒溶液含有率Qは0.17であった。
【0029】
【実施例2】
熱収縮性ポリ塩化ビニル・フイルム(三菱樹脂式会社製品SA10−F・厚み30μm)に、格子柄の120メッシュ(100μm)捺染スクリーンを用いてアクリル樹脂系エマルジョン樹脂(中央技研工業株式会社製品A−SR・固形分70重量%・溶媒溶液含有率N=30重量%・粘度12000c.p.s.)を印捺し、直ちに、ポリエステル繊維・綿繊維タフタ布帛(目付けF=70g/m2 )を重ね合わせ、実施例1と同様にアップダウン式プレス装置に挟み込み、圧力170g/cm2 ×温度100℃にて5秒間加熱圧着して後、温度180℃にて1分間加熱し、25%収縮して絞り模様のセットされたポリエステル繊維・綿繊維タフタ布帛を得た。尚、捺染スクリーンの格子柄は、太さ1mmの直線を19mmの距離をおき、縦横に繰り返し配列して構成され、それによる接着剤塗膜面積占有率Pは10%であり、接着剤の膨潤時塗布量Mは100g/m2 であり、接着剤塗膜が膠状固化して接着力を発揮するに至った時点での接着剤塗膜と被加工布帛の溶媒溶液含有率Qは0.02であった。
【0030】
【実施例3】
熱収縮性オルト・ポリプロピレン・フイルム(大倉工業株式会社製品OPシュリンY・厚み100μm)に、彫刻深さ100μmの蜘蛛の巣柄のクラビアロールを用いて溶剤型ウレタン樹脂接着剤(大日本インキ化学株式会社製品クリスボンOCS−45・固形分50重量%・溶媒溶液含有率N=50重量%・粘度6000c.p.s.)を印捺し、直ちに綿繊維ブロード布帛(目付けF=80g/m2 )を重ね合わせ、実施例1と同様にアップダウン式プレス装置に挟み込み、圧力170g/cm2 ×温度130℃にて5秒間加熱圧着した後、プレス装置による圧着状態を解除すると、熱収縮性オルト・ポリプロピレン・フイルムと綿繊維ブロード布帛に絞り模様が発生した。次いで、熱収縮性オルト・ポリプロピレン・フイルムと貼り合わされた状態の綿繊維ブロード布帛を、繊維素反応型樹脂(住友化学工業株式会社製品・グリオキザール・スミテックスレジンZ−5)20重量部と縮合型樹脂用触媒(住友化学工業株式会社製品・スミテチェフスアクセレーターACX)5重量部と水溶性ウレタン樹脂(第一工業製薬株式会社製品エラストロンMF−25)20重量部とウレタン樹脂用触媒(第一工業製薬株式会社製品カタリスト64)2重量部と水53重量部とに成るセット液に浸漬・絞液し、温度180℃にて1分間加熱乾燥し、更に、温度160℃にて1分間加熱処理して綿繊維ブロード布帛に発生した絞り模様をセットした。尚、クラビアロールの蜘蛛の巣柄は、多角形を太さ2mmの直線によって同心円状に四重に描いた外径8cmの単位図形を1cmの隙間を設け、三方に繰り返し配列して構成され、それによる接着剤塗膜面積占有率Pは10%であり、接着剤の膨潤時塗布量Mは100g/m2 であり、接着剤塗膜が膠状固化して接着力を発揮するに至った時点での接着剤塗膜と被加工布帛の溶媒溶液含有率Qは0.04であった。
【0031】
【実施例4】
熱収縮性ポリ塩化ビニル・フイルム(三菱樹脂式会社製品SA10−F・厚み30μm)に、120メッシュ(100μm)捺染スクリーン(ベタ塗り無地)を用いてポリエチレン樹脂系エマルジョン樹脂(中央技研工業株式会社製品FB−1000・固形分40重量%・溶媒溶液含有率N=60重量%・粘度12000c.p.s.)をベタ塗り塗着し、人工皮革(カネボウ合繊株式会社製品ベルセイム・目付けF=130g/m2 )を重ね合わせ、同時に、熱収縮性ポリエステル・フイルムとポリエステル繊維ブロード布帛をアップダウン式プレス装置に挟み込み、圧力270g/cm2 ×温度150℃にて5秒間加熱圧着した。そのプレス装置による圧着状態を解除すると、熱収縮性ポリ塩化ビニル・フイルムと共に人工皮革が収縮して緻密化した。その後、温度180℃にて1分間加熱して人工皮革をヒートセット(固定)した後、熱収縮性ポリ塩化ビニル・フイルムを剥離し、縦横それぞれ25%収縮して絞り模様のセットされたポリエステル繊維ブロード布帛を得た。尚、捺染スクリーンによる接着剤塗膜面積占有率Pは100%であり、接着剤の膨潤時塗布量Mは100g/m2 であり、接着剤塗膜が膠状固化して接着力を発揮するに至った時点での接着剤塗膜と被加工布帛の溶媒溶液含有率Qは0.35であった。
【0032】
【発明の効果】
本発明によると、塗着した接着剤塗膜の乾燥工程が省かれるので、効率的に布帛を縮絨緻密化することが出来、又、絞り模様布帛を効率的に得ることが出来る。そして、従来加熱乾燥が困難で使用し得なかった低温熱収縮性フイルムの使用も可能になるので、本発明は実利的である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る被加工布帛の熱収縮性フイルムの貼合状態での平面図である。
【図2】本発明に係るプレス装置の側面図である。
【符号の説明】
10 ベルトコンベア
11 熱収縮性フイルム
12 接着剤
13 被加工布帛
14 接着剤塗膜
15 プレス装置
16 グラビアロール
17 当て布
18 熱板(熱シリンダー)
19 押さえ部材
20 冷却ゾーン
21 絞り模様
【発明の属する技術分野】
本発明は、布帛を縮絨緻密化する縮絨処理法、および、図柄を点描するようにセットされた細かい複数個の隆起によって布帛に描出する絞り模様描出法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
絞り模様描出法は、一般に“絞り”と称されている。古来周知の絞り技法によると、布帛の隆起を形成するべき箇所を一箇所づつ掴み上げ、その掴み上げられた尖端部分を糸条で縛ってセットし、その後、その糸条を解除すると、絞り模様が布帛に描出される。その絞り技法では、その一箇所づつ掴み上げて糸条で縛る作業も、その縛った糸条を解除する作業も手作業で行われるので能率が悪く、得られる絞り模様布帛も極めて高価なものとなる。そこで、“絞り”を効率的に行う種々の提案がなされている。その主な方法は、熱収縮性繊維を利用する方法であり、それを具体的に説明すると次の通りである。
【0003】
第1の方法は、熱収縮性繊維糸条を被加工布帛である非・低熱収縮性繊維布帛に縫い付け、加熱して熱収縮性繊維糸条を収縮し、その熱収縮性繊維糸条との熱収縮差によって縫目に沿った隆起を被加工布帛に発生させる縫目収縮法である(特開昭60−252792、特公昭61−43475)。第2の方法は、熱収縮性繊維布帛を被加工布帛に重ね合わせて模様状に縫合し、加熱して熱収縮性繊維布帛を熱縮させ、その熱収縮性繊維布帛との収縮差によって縫目に囲まれた隆起を被加工布帛に発生させる縫合収縮法である(特開昭60−252793、特公昭61−43476)。第3の方法は、上記第2の方法に準じて隆起を発生させるが、縫糸には水溶性糸条が使用され、被加工布帛に発生した隆起をセットしてから縫糸を溶解し、熱収縮性繊維布帛を剥離除去する収縮溶解法である(特許第3049058号)。第4の方法は、上記第2と第3の方法と同様に、熱収縮性繊維布帛と被加工布帛を模様状に接合して隆起を発生させるが、縫糸を使用せず、縫糸に代えて接着剤を模様状に塗着して熱収縮性繊維布帛と非・低熱収縮性繊維布帛を接着し、被加工布帛に発生した隆起をセットしてから接着剤を溶解し、熱収縮性繊維布帛を剥離除去する接着収縮法である(特開平6−240563、特許第2554981号)。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
縫目収縮法と縫合収縮法と収縮溶解法では、熱収縮性繊維を縫糸で接合するので、隆起が形成されるまで被加工布帛に確り固定される。しかし、隆起を形成すべき箇所を縫目によって細かく縁取るには特殊な刺繍ミシンを要し、広幅の被加工布帛には適用し難く、又、複雑な絞り模様では相当手間取る。接着収縮法では、グラビアロールや捺染スクリーンで接着剤を模様状に塗着すればよいので、広幅の被加工布帛にも適用し得る。しかし、そのためには、隆起ができるまで剥離しないように接着剤を十分に塗着しなければならず、そのためには緻密な熱収縮性繊維布帛が必要とされる。この点からして、熱収縮性繊維メッシュ布帛は、被加工布帛に十分に接着剤を塗着しても、接着が点接着になって剥離し易くなるので、熱収縮性繊維糸条によって目粗に織編されたポーラスなメッシュ布帛は、熱収縮性繊維布帛としては使用されない。
【0005】
接着収縮法に対し、縫合収縮法と収縮溶解法では、ポーラスなメッシュ布帛でも、縫糸によって被加工布帛に確り縫合されるので、それを熱収縮性繊維布帛として使用することが出来、それが目粗で目付けが少なければ使用後の廃棄物としての処理も楽になる。又、熱収縮性繊維布帛には、それが高い熱収縮性を示すのであれば、使用後は廃棄物として処理されるものであるから、熱収縮性の他に格別な物性品質は要求されず、安価なメッシュ布帛を使用して絞り模様布帛を経済的に得ることが出来る。
【0006】
そこで本発明者は、目付けが少なく、安価で使用後の処理も楽に行える熱収縮性メッシュ布帛を接着剤によって被加工布帛に確り接合し、絞り模様布帛を経済的に得る方法を発明し、特願2001−96000に開示している。この特願2001−96000に係る絞り模様描出法(以下、先願説明と言う。)は、熱収縮性メッシュ布帛をプラスチックフイルムに貼り合わせて用意し、接着剤を印捺して被加工布帛に貼り合わせ、熱収縮性メッシュ布帛を加熱収縮させて被加工布帛に絞り模様を発生させ、その絞り模様をセットしてから被加工布帛を剥離することを要旨とするものである。この方法では、熱収縮性メッシュ布帛は、それ自体が直接被加工布帛に強固に接着しなくても、プラスチックフイルムと被加工布帛の間に挟まれており、プラスチックフイルムを介して被加工布帛に接着されているので、熱収縮性メッシュ布帛が熱収縮して絞り模様が発生する過程で被加工布帛から剥離することがない。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
然るに、プラスチックフイルムと被加工布帛の何れに接着剤を印捺するにしても、プラスチックフイルムに接着剤を印捺するときは、その印捺面に介在する熱収縮性メッシュ布帛の繊維糸条に印捺塗膜の水分が吸収され、被加工布帛に接着剤を印捺するときは、その被加工布帛の繊維糸条に印捺塗膜の水分が吸収され、熱収縮性メッシュ布帛を被加工布帛に重ね合わせる前に印捺塗膜が粘着性を失って半乾き状態になり、熱収縮性メッシュ布帛と被加工布帛の接着が不十分になり、熱収縮性メッシュ布帛が熱収縮する過程で剥離し易くなる。そして、重ね合わせる前に印捺塗膜が粘着性を失って半乾き状態にならないようにするため接着剤の塗布量を多くすれば、印捺塗膜の乾燥に長時間を要し生産効率が損なわれ、又、熱収縮性メッシュ布帛と被加工布帛を重ね合わせるとき、印捺型際の周囲に接着剤が食み出て型際にダブりが生じ、絞り模様を鮮鋭に描出することは出来なくなる。
【0008】
【発明の目的】
そこで本発明は、印捺塗膜の乾燥を簡略化し、鮮鋭な絞り模様を効率的に描出することを第1の目的とする。本発明の第2の目的は、熱収縮性フイルムを使用して布帛を縮絨緻密化することである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
接着剤は、凡そ、その保有する溶媒溶液の半分以上を失って半乾き状態になると、プラスチックフイルムや被加工布帛への印捺が不可能になる。又、被加工布帛とプラスチックフイルムを重ね合わせて印捺塗膜を乾燥固化する過程において、熱収縮性メッシュ布帛が収縮し始めると、被加工布帛とプラスチックフイルムが剥離状態になり接着不良になる。しかし、一般の非熱収縮性の布帛と布帛を貼り合わせる場合は、印捺塗膜を乾燥固化する過程において、接着剤の印捺箇所がズレ動くことがなく、印捺塗膜が半乾き状態になった時点で、実用上差し障りのない程度に布帛と布帛が接着され、剥離したり接着不良になることはない。
【0010】
その点に配慮すれば、熱収縮性フイルムを被加工布帛に強く圧着すれば、その間の摩擦抗力によって熱収縮性フイルムの熱収縮が抑えられるので、被加工布帛と熱収縮性フイルムを重ね合わせて印捺塗膜を乾燥固化する過程において、高温加熱しても接着剤の印捺箇所がズレ動くことがなく、印捺塗膜が半乾き状態になった時点では、その後剥離しない程度に被加工布帛と熱収縮性フイルムが強く接着する、と言うことになる。そして、その印捺塗膜が半乾き状態になった時点で被加工布帛と熱収縮性フイルムをフリーにすれば、印捺塗膜が半乾き状態になる過程で加熱されて熱収縮性フイルムに発生していた熱収縮応力が一気に顕在化し、熱収縮性フイルムが収縮して被加工布帛に絞り模様が一気に発生する。その状態において、被加工布帛の形状をセットしてから熱収縮性繊維布帛を剥離すれば絞り模様布帛が得られることになる。
【0011】
本発明に係る布帛の縮絨処理と絞り模様描出法は、かかる知見を得て完成されたものであり、熱収縮性フイルムに溶媒溶液を含んだ接着剤を塗着して被加工布帛に重ね合わせ、その接着剤の印捺塗膜の膨潤状態において重なり合う熱収縮性フイルムと被加工布帛をプレス装置に挟み込んで圧着し、その圧着状態において熱収縮性フイルムの熱収縮開始温度以上に加熱して熱収縮性フイルムに熱収縮応力を発生させ、プレス装置による圧着状態を解除して熱収縮性フイルムと共に被加工布帛を収縮させ、被加工布帛の収縮状態をセット(固定)した後、熱収縮性フイルムと被加工布帛を剥離することを第1の特徴とするものであり、布帛の縮絨処理においては、熱収縮性フイルムの全面に溶媒溶液を含んだ接着剤を塗着することとし、絞り模様を描出する場合は、熱収縮性フイルムに溶媒溶液を含んだ接着剤を部分的に塗着(印捺)し、プレス装置による圧着状態を解除して熱収縮性フイルムと被加工布帛に絞り模様を発生させ、被加工布帛の絞り模様をセット(固定)した後、熱収縮性フイルムと被加工布帛を剥離する。
【0012】
本発明に係る布帛の縮絨処理と絞り模様描出法の第2の特徴は、上記第1の特徴に加えて、上記熱収縮性フイルムの熱収縮開始温度が100℃以下である点にある。
【0013】
本発明に係る布帛の縮絨処理と絞り模様描出法の第3の特徴は、上記第1および第2の何れかの特徴に加えて、プレス装置における加熱時に、被加工布帛側を高温にし、熱収縮性フイルム側を低温にし、被加工布帛側から熱収縮性フイルム側へと伝熱する点にある。
【0014】
本発明に係る布帛の縮絨処理と絞り模様描出法の第4の特徴は、上記第1、第2および第3の何れかの特徴に加えて、接着剤の水分含有率(N重量%)と、接着剤の膨潤時塗布量(Mg/m2 )と、熱収縮性フイルムの表面積Aに占める接着剤の印捺塗膜の面積Bの割合(印捺塗膜面積占有率;P%=100×B/A)と、被加工布帛の目付け(Fg/m2 )を、N×M×P×10−4÷(M×(100−N)×10−2+F)≦0.40となる関係式を満たすように設定する点にある。
【0015】
本発明に係る布帛の縮絨処理と絞り模様描出法の第5の特徴は、上記第1、第2、第3および第4の何れかの特徴に加えて、プレス装置の被加工布帛との接触面を有機質物質で被覆する点にある。
【0016】
【発明の実施の形態】
熱収縮性フイルムは、そのフイルム自体が熱収縮性を有するものであってもよく、又、殊更熱収縮性を有しない通常のフイルムに熱収縮性メッシュ布帛を貼り合わせた特願2001−96000に係るものであってもよい。熱収縮性フイルムには、比較的低温域の60℃前後で熱収縮を開始し、70℃〜100℃においてフイルムに熱収縮応力が顕在化し、10%〜40%の熱収縮率を示す熱収縮性ポリエステル・フイルム(東洋紡株式会社製品S7200)、熱収縮性オルト・ポリプロピレン・フイルム(大倉工業株式会社製品OPシュリンY)、および、熱収縮性ポリ塩化ビニル・フイルム(三菱樹脂株式会社製品SA10−F)を使用するとよい。接着剤には、環境衛生の点からして水系エマルジョン樹脂、例えば酢酸ビニル・エマルジョン樹脂、塩化ビニル・エマルジョン樹脂、アクリル・エマルジョン樹脂、ポリウレタン・エマルジョン樹脂、スチレン・ブタジエン、ブチルゴム、アクリロニトリルゴム等のラテックス・エマルジョン樹脂を用いることが望ましいが、それらの樹脂をメタノール、エタノール、メチルエチルケトン、アセトン等の有機溶剤に溶解した有機溶剤溶解樹脂を使用することも出来る。従って、本発明において「溶媒溶液」とは、接着剤の主成分である樹脂を分散或いは溶解する液体を意味し、接着剤の「膨潤状態」とは、接着剤が溶媒溶液を含んだ状態を意味し、接着剤の「膨潤時塗布量」とは、印捺或いは塗布直後の溶媒溶液を含んだ状態にある接着剤の塗布量を意味し、接着剤の印捺塗膜の「乾燥」とは、印捺塗膜から溶媒溶液が蒸発ないし揮発して印捺塗膜に含まれる溶媒溶液の含有量が減少することを意味する。
【0017】
接着剤の塗膜を乾燥させることなく、その塗着直後の膨潤状態において被加工布帛を重ねて加圧し、熱収縮性フイルムの熱収縮開始温度以上に加熱する理由は、前記の通り、熱収縮性フイルムを被加工布帛に強く圧着すれば、その間の摩擦抗力によって熱収縮性フイルムの熱収縮が抑えられ、被加工布帛と熱収縮性フイルムを重ね合わせて印捺塗膜を乾燥固化する過程で高温加熱しても接着剤の印捺箇所がズレ動かず、印捺塗膜が半乾き状態になった時点で剥離しない程度に被加工布帛と熱収縮性フイルムが強く接着し、その半乾き状態になった時点で被加工布帛と熱収縮性フイルムをフリーにすれば、熱収縮性フイルムに蓄積されていた熱収縮応力が一気に顕在化して布帛が縮絨緻密化され、又、絞り模様が一気に形成されるからである。
【0018】
更に詳しく説明すると、一般に、粘稠に調製されて塗布可能な接着剤が、その含有する溶媒溶液を20%以上失うと延展性がなくなって塗布することが困難になり、その溶媒溶液を50%以上失うと膠状の固体になって接着剤としては使用し得なくなる。しかし、被加工布帛に重ね合わせた後で溶媒溶液を50%以上失う時は、容易には剥離し得ない膠状固体になって接着力を発揮する。そこで、溶媒溶液を吸収し易い被加工布帛にではなく、溶媒溶液を全く吸収しない熱収縮性フイルムに接着剤を印捺し、被加工布帛に重ね合わせる前に印捺塗膜が溶媒溶液を失って粘着力を失わないようにし、重ね合わされてから溶媒溶液が被加工布帛に吸収されて接着力を発揮するようにする。被加工布帛について言えば、一般に、遠心脱水機を使用しても染浴や洗浴に浸漬した布帛をピックアップ率が50%以下になるように絞ることは困難であり、又、寝起き直後の寝具類では吸湿して10重量%前後の水分を保有していても湿潤状態にあるとは感じられず、乾燥状態にあると感じられることからしても分かるように、印捺塗膜の水分を重ね合わされた被加工布帛が吸収したとしても乾燥状態にあると感じられるものであり、その吸湿量が少なければ、その吸収した溶媒溶液によって印捺塗膜の膠状固化が損なわれず、溶媒溶液を失うにつれて印捺塗膜に接着力が生じる。
【0019】
接着剤の溶媒溶液含有率(N重量%)と、接着剤の膨潤時塗布量(Mg/m2 )と、熱収縮性フイルムの表面積Aに占める接着剤塗膜の面積Bの割合(接着剤塗膜面積占有率;P%=100×B/A)と、被加工布帛の目付け(Fg/m2 )との関係式・N×M×P×10−4÷(M×(100−N)×10−2+F)≦0.40は、接着剤塗膜の膨潤状態において重なり合う熱収縮性フイルムと被加工布帛をプレス装置に挟み込んで圧着し、熱収縮性フイルムの熱収縮開始温度以上に加熱するとき、接着剤塗膜から被加工布帛への溶媒溶液の移行が停止して平衡状態に達し、接着剤塗膜が膠状固化して接着力を発揮するに至った時点での接着剤塗膜と被加工布帛の溶媒溶液含有率(Q)を示すものである。
【0020】
その時点における接着剤塗膜と被加工布帛の溶媒溶液含有率(Q=N×M×P×10−4÷(M×(100−N)×10−2+F)が少なければ少ないほど、接着剤塗膜を介して熱収縮性フイルムと被加工布帛が強固に接着し、プレス装置から解放された時点で意図する絞り模様が被加工布帛に発生する。従って、接着剤が部分的に印捺され、熱収縮性フイルムと被加工布帛とが線点接着となり、その線状や点状をなす接着箇所に剥離応力が集中作用する絞り模様を描出するための本発明の好ましい実施態様では、接着剤塗膜が膠状固化して接着力を発揮するに至った時点での接着剤塗膜と被加工布帛の溶媒溶液含有率(Q)を、0.2以下、0.1以下、更には、0.05以下にすることである。具体的に説明すると、溶媒溶液含有率が50重量%以下になるように接着剤を調製し、その膨潤時塗布量を100g/m2 以下にし、熱収縮性フイルムの表面積Aに占める接着剤の接着剤塗膜の面積Bの割合を20%以下(B/A≦0.2)にし、被加工布帛の目付けは50g/m2 以上にする。そうすると、接着剤塗膜の膨潤状態において重なり合う熱収縮性フイルムと被加工布帛をプレス装置に挟み込んで圧着し、熱収縮性フイルムの熱収縮開始温度以上に加熱するとき、接着剤塗膜から被加工布帛へと溶媒溶液が移行し、接着剤塗膜と被加工布帛の溶媒溶液含有率(Q)が0.17(17重量%)になり、接着剤塗膜から被加工布帛への溶媒溶液の移行が止まる。被加工布帛を縮絨緻密化する場合、接着剤は熱収縮性フイルムに全面均一に塗布すればよく、剥離応力が局部的に集中作用せず熱収縮性フイルムと被加工布帛の全面に均等に分散するので、接着剤塗膜が膠状固化して接着力を発揮するに至った時点での接着剤塗膜と被加工布帛の溶媒溶液含有率Qを0.2以上(0.4以下)にしてもよい。
【0021】
そのように、プレス装置内において加熱されて接着剤塗膜と被加工布帛の溶媒溶液含有率(Q重量%)が0.4以下になるようにするには、接着剤を、線状やドット状に、その線と線、或いは、ドットとドットの間に線やドットに比して広い隙間を開けて粗く印捺し、熱収縮性フイルムの表面積Aに占める接着剤塗膜の面積Bの割合を少なくするとよい。又、プレス装置において加熱されて接着剤塗膜と被加工布帛の溶媒溶液含有率(Q重量%)が0.2以下になるようにするには、被加工布帛の目付け(Fg/m2 )を増やせばよい。目付けが80g/m2 以下の薄手の被加工布帛を使用するときは、熱収縮性フイルム11に重ね合わせた被加工布帛13の上に当て布17を重ね合わせ、その当て布17によって被加工布帛13の目付けを実質的に増やし、接着剤塗膜14の溶媒溶液が被加工布帛13を透過して当て布17へと移行し拡散するようにするとよい。接着剤の樹脂固形分含有率を増やして接着剤の溶媒溶液含有率(N重量%)を少なくするには、接着剤に溶媒溶液分散型の接着性樹脂粉末を配合すればよい。このようにして、プレス装置内で加熱された接着剤塗膜と被加工布帛の溶媒溶液含有率(Q重量%)を0.2以下、0.1以下、更には、0.05以下にすることも出来る。
【0022】
熱収縮性フイルム11に塗布された接着剤塗膜14との接着性を高めるためには、被加工布帛13の熱収縮性フイルム11との貼合面に剥離可能な塗膜や水洗除去可能な塗膜を塗布積層し、その貼合面の毛羽を抑えて被加工布帛の表面を平滑に前処理しておくとよく、そうすることによって、初期接着力の弱い接着剤12を使用することが出来、接着剤の膨潤時塗布量(Mg/m2 )を少なくすることも出来、加工後の接着剤塗膜14の被加工布帛13からの洗浄除去も容易になり、絞り模様を効率的に描出することが出来る。
【0023】
接着剤12は、グラビアロール16、ロールスクリーン、フラットスクリーン等によって熱収縮性フイルム11に塗着する。冷間エンボス加工等による凹凸が表面に形成された熱収縮性フイルムでは、フラットロールによって接着剤を印捺することも出来る。接着剤がフラットロールの周面全体に厚みが均一な塗膜を形成していても、熱収縮性フイルムの表面に突き出た凸部の頂点にだけ接着剤が塗着し、凹部には塗着しないからである。接着剤12を被加工布帛にではなく熱収縮性フイルムに印捺するのは、それが極く短時間であっても接着剤塗膜14に含まれている水分が失われることなく、被加工布帛に重ね合わされる直前まで接着剤塗膜14の粘着力が保持されるようにするためである。被加工布帛13には、熱収縮性フイルム11と重ね合わせる前に、熱収縮性フイルム11の印捺塗膜14に同調したプリントを施しておくことが出来る。
【0024】
プレス装置15においては、加熱されて接着剤塗膜の溶媒溶液が被加工布帛13や当て布17に移行し、接着剤塗膜の溶媒溶液含有率と被加工布帛や当て布の溶媒溶液含有率が等しくなり、溶媒溶液の分布状態が平衡状態に達した時点で、熱収縮開始温度以上に熱収縮性フイルム11が加熱されるようにする。そのためには、熱板18の上に当て布17を載せ、その当て布の上に被加工布帛13を載せ、その上に接着剤12の印捺された熱収縮性フイルム11を、その接着剤塗膜14を被加工布帛に向けて載せ、その熱収縮性フイルム11の上から熱板18に向けて押さえ部材19によって加圧するとよい。そうすると、被加工布帛13と当て布17の断熱作用により、被加工布帛13と当て布17を介して熱板18から熱収縮性フイルム11に熱が伝わり、溶媒溶液の分布状態が平衡状態に達した時点で熱収縮性フイルム11が熱収縮開始温度以上に加熱される。熱収縮性フイルム11の急激な加熱を避けるためには、当て布17に代えて布、紙、耐熱性プラスチック、木材等の低熱伝導率の有機物質で熱板や加熱シリンダー18の表面を被覆することが出来る。
【0025】
パイル布帛、人工皮革、起毛布帛、フェルト等の高目付けの布帛や厚手の布帛を使用する場合、それらの被加工布帛13による断熱作用が大きいので、当て布17は必ずしも必要とされない。当て布17はエンドレスベルトのように循環させ、冷却ゾーン20を通して冷却し、熱板18へと送り出すようにするとよい。被加工布帛13による断熱効果を高めるには、当て布17と同様に、被加工布帛を冷却ゾーンを通して冷却してからプレス装置15に送り込むとよい。プレス装置は、熱収縮性フイルム11と被加工布帛13を間欠的に加圧し加熱するバッチ式のものであっても、連続して加圧し加熱する連続式のものであってもよい。連続式プレス装置15では、熱板18を加熱シリンダーによって構成し、押さえ部材19はエンドレスベルトのように循環させ、加熱シリンダー18と押さえ部材19の間に被加工布帛と熱収縮性フイルムを送り込んで加圧し加熱する。バッチ式プレス装置では、貼り合わせた被加工布帛と熱収縮性フイルムを取り出す度に熱板(18)の表面を冷却する。加圧力は200〜300g/cm2 程度でよい。熱収縮性フイルムの熱収縮開始温度に達するまでの加圧時間は30秒間以内、好ましくは10〜20秒間前後にする。
【0026】
熱収縮性フイルムに伝わる加熱温度が、熱収縮性フイルムの熱収縮開始温度に達してから被加工布帛13と熱収縮性フイルム11を取り出すまでの加熱時間は30秒間以内、好ましくは5秒間前後にする。そのように加熱時間を設定するのは、加圧状態で長時間熱収縮開始温度以上に高温加熱すると、熱収縮性フイルムに生じた熱収縮応力によって、熱収縮性フイルム自体の分子構造に変化が生じ、熱収縮性フイルムが未延伸の非熱収縮性フイルムに変質し、加熱されて一旦熱収縮性フイルムに生じた熱収縮応力(熱収縮機能)が消失し、プレス装置内での加圧状態から解放された時点で熱収縮性フイルム11が収縮せず、被加工布帛13に絞り模様21を発生させることが出来なくなるからである。
【0027】
プレス装置15から解放された後の絞り模様21の形状セット(固定)は、被加工布帛に樹脂溶液を付与し、或いは、化学的に処理して被加工布帛を構成している繊維高分子の分子構造を変え、又、被加工布帛が熱可塑性合成繊維によって構成されているものでは、その合成繊維の軟化点に達する程度に被加工布帛を高温加熱して行う。図2において、10は、熱収縮性フイルム11と被加工布帛13をプレス装置15から取り出すためのベルトコンベアである。
【0028】
【実施例1】
熱収縮性ポリエステル・フイルム(東洋紡株式会社製品S7200・厚み30μm)に、仁丹柄の120メッシュ(100μm)捺染スクリーンを用いてポリウレタン系エマルジョン樹脂(中央技研工業株式会社製品FB−1000・固形分40重量%・溶媒溶液含有率N=60重量%・粘度12000c.p.s.)を印捺し、直ちに、ポリエステル繊維ブロード布帛(目付けF=100g/m2 )を重ね合わせ、同時に、熱収縮性ポリエステル・フイルムとポリエステル繊維ブロード布帛をアップダウン式プレス装置に挟み込み、圧力170g/cm2 ×温度100℃にて5秒間加熱圧着した。そのプレス装置による圧着状態を解除すると、熱収縮性ポリエステル・フイルムとポリエステル繊維ブロード布帛に絞り模様を発生した。その後、温度180℃にて1分間加熱してポリエステル繊維ブロード布帛の絞り模様をヒートセット(固定)し、熱収縮性ポリエステル・フイルムを剥離し、縦横それぞれ25%収縮して絞り模様のセットされたポリエステル繊維ブロード布帛を得た。尚、捺染スクリーンの仁丹柄は、直径1mmの円形ドットを0.5mmの距離をおき、60度方向を変えて三角形の枡目を描くように3方に放射状に繰り返し配列して構成され、それによる接着剤塗膜面積占有率Pは40%であり、接着剤の膨潤時塗布量Mは100g/m2 であり、接着剤塗膜が膠状固化して接着力を発揮するに至った時点での接着剤塗膜と被加工布帛の溶媒溶液含有率Qは0.17であった。
【0029】
【実施例2】
熱収縮性ポリ塩化ビニル・フイルム(三菱樹脂式会社製品SA10−F・厚み30μm)に、格子柄の120メッシュ(100μm)捺染スクリーンを用いてアクリル樹脂系エマルジョン樹脂(中央技研工業株式会社製品A−SR・固形分70重量%・溶媒溶液含有率N=30重量%・粘度12000c.p.s.)を印捺し、直ちに、ポリエステル繊維・綿繊維タフタ布帛(目付けF=70g/m2 )を重ね合わせ、実施例1と同様にアップダウン式プレス装置に挟み込み、圧力170g/cm2 ×温度100℃にて5秒間加熱圧着して後、温度180℃にて1分間加熱し、25%収縮して絞り模様のセットされたポリエステル繊維・綿繊維タフタ布帛を得た。尚、捺染スクリーンの格子柄は、太さ1mmの直線を19mmの距離をおき、縦横に繰り返し配列して構成され、それによる接着剤塗膜面積占有率Pは10%であり、接着剤の膨潤時塗布量Mは100g/m2 であり、接着剤塗膜が膠状固化して接着力を発揮するに至った時点での接着剤塗膜と被加工布帛の溶媒溶液含有率Qは0.02であった。
【0030】
【実施例3】
熱収縮性オルト・ポリプロピレン・フイルム(大倉工業株式会社製品OPシュリンY・厚み100μm)に、彫刻深さ100μmの蜘蛛の巣柄のクラビアロールを用いて溶剤型ウレタン樹脂接着剤(大日本インキ化学株式会社製品クリスボンOCS−45・固形分50重量%・溶媒溶液含有率N=50重量%・粘度6000c.p.s.)を印捺し、直ちに綿繊維ブロード布帛(目付けF=80g/m2 )を重ね合わせ、実施例1と同様にアップダウン式プレス装置に挟み込み、圧力170g/cm2 ×温度130℃にて5秒間加熱圧着した後、プレス装置による圧着状態を解除すると、熱収縮性オルト・ポリプロピレン・フイルムと綿繊維ブロード布帛に絞り模様が発生した。次いで、熱収縮性オルト・ポリプロピレン・フイルムと貼り合わされた状態の綿繊維ブロード布帛を、繊維素反応型樹脂(住友化学工業株式会社製品・グリオキザール・スミテックスレジンZ−5)20重量部と縮合型樹脂用触媒(住友化学工業株式会社製品・スミテチェフスアクセレーターACX)5重量部と水溶性ウレタン樹脂(第一工業製薬株式会社製品エラストロンMF−25)20重量部とウレタン樹脂用触媒(第一工業製薬株式会社製品カタリスト64)2重量部と水53重量部とに成るセット液に浸漬・絞液し、温度180℃にて1分間加熱乾燥し、更に、温度160℃にて1分間加熱処理して綿繊維ブロード布帛に発生した絞り模様をセットした。尚、クラビアロールの蜘蛛の巣柄は、多角形を太さ2mmの直線によって同心円状に四重に描いた外径8cmの単位図形を1cmの隙間を設け、三方に繰り返し配列して構成され、それによる接着剤塗膜面積占有率Pは10%であり、接着剤の膨潤時塗布量Mは100g/m2 であり、接着剤塗膜が膠状固化して接着力を発揮するに至った時点での接着剤塗膜と被加工布帛の溶媒溶液含有率Qは0.04であった。
【0031】
【実施例4】
熱収縮性ポリ塩化ビニル・フイルム(三菱樹脂式会社製品SA10−F・厚み30μm)に、120メッシュ(100μm)捺染スクリーン(ベタ塗り無地)を用いてポリエチレン樹脂系エマルジョン樹脂(中央技研工業株式会社製品FB−1000・固形分40重量%・溶媒溶液含有率N=60重量%・粘度12000c.p.s.)をベタ塗り塗着し、人工皮革(カネボウ合繊株式会社製品ベルセイム・目付けF=130g/m2 )を重ね合わせ、同時に、熱収縮性ポリエステル・フイルムとポリエステル繊維ブロード布帛をアップダウン式プレス装置に挟み込み、圧力270g/cm2 ×温度150℃にて5秒間加熱圧着した。そのプレス装置による圧着状態を解除すると、熱収縮性ポリ塩化ビニル・フイルムと共に人工皮革が収縮して緻密化した。その後、温度180℃にて1分間加熱して人工皮革をヒートセット(固定)した後、熱収縮性ポリ塩化ビニル・フイルムを剥離し、縦横それぞれ25%収縮して絞り模様のセットされたポリエステル繊維ブロード布帛を得た。尚、捺染スクリーンによる接着剤塗膜面積占有率Pは100%であり、接着剤の膨潤時塗布量Mは100g/m2 であり、接着剤塗膜が膠状固化して接着力を発揮するに至った時点での接着剤塗膜と被加工布帛の溶媒溶液含有率Qは0.35であった。
【0032】
【発明の効果】
本発明によると、塗着した接着剤塗膜の乾燥工程が省かれるので、効率的に布帛を縮絨緻密化することが出来、又、絞り模様布帛を効率的に得ることが出来る。そして、従来加熱乾燥が困難で使用し得なかった低温熱収縮性フイルムの使用も可能になるので、本発明は実利的である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る被加工布帛の熱収縮性フイルムの貼合状態での平面図である。
【図2】本発明に係るプレス装置の側面図である。
【符号の説明】
10 ベルトコンベア
11 熱収縮性フイルム
12 接着剤
13 被加工布帛
14 接着剤塗膜
15 プレス装置
16 グラビアロール
17 当て布
18 熱板(熱シリンダー)
19 押さえ部材
20 冷却ゾーン
21 絞り模様
Claims (5)
- 熱収縮性フイルムに溶媒溶液を含んだ接着剤を塗着して被加工布帛に重ね合わせ、その接着剤の印捺塗膜の膨潤状態において重なり合う熱収縮性フイルムと被加工布帛をプレス装置に挟み込んで圧着し、その圧着状態において熱収縮性フイルムの熱収縮開始温度以上に加熱して熱収縮性フイルムに熱収縮応力を発生させ、プレス装置による圧着状態を解除して熱収縮性フイルムと共に被加工布帛を収縮させ、被加工布帛の収縮状態をセット(固定)した後、熱収縮性フイルムと被加工布帛を剥離する布帛の縮絨処理と絞り模様描出法。
- 熱収縮性フイルムの熱収縮開始温度が100℃以下である前掲請求項1に記載の布帛の縮絨処理と絞り模様描出法。
- プレス装置における加熱時に、被加工布帛側を高温にし、熱収縮性フイルム側を低温にし、被加工布帛側から熱収縮性フイルム側へと伝熱する前掲請求項1および請求項2に記載の布帛の縮絨処理と絞り模様描出法。
- 接着剤の水分含有率(N重量%)と、接着剤の膨潤時塗布量(Mg/m2 )と、熱収縮性フイルムの表面積Aに占める接着剤の印捺塗膜の面積Bの割合(印捺塗膜面積占有率;P%=100×B/A)と、被加工布帛の目付け(Fg/m2 )を、N×M×P×10−4÷(M×(100−N)×10−2+F)≦0.40となる関係式を満たすように設定する前掲請求項1、請求項2および請求項3に記載の布帛の縮絨処理と絞り模様描出法。
- プレス装置の被加工布帛との接触面を有機質物質で被覆する前掲請求項1、請求項2、請求項3および請求項4に記載の布帛の縮絨処理と絞り模様描出法。
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