JP2004051956A - 樹脂シート - Google Patents
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Abstract
【解決手段】熱硬化性樹脂、光硬化性樹脂、樹脂硬化物及び熱可塑性樹脂からなる群より選択される少なくとも1種の樹脂100重量部と層状珪酸塩0.1〜100重量部とを含有する樹脂シートであって、表面に無電解メッキ、電気メッキ、スパッタリング又は真空蒸着により金属層を形成したときの前記金属層のはく離接着強度が3.9N/cm以上である樹脂シート。
【選択図】 なし
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、力学的物性、寸法安定性、耐熱性等に優れ、更に表面に金属層を形成したときに金属層の密着性に優れている樹脂シートに関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、電子機器に用いられる多層プリント基板は、複数層の絶縁基板により構成されており、この層間絶縁基板としては、例えば、脂環式炭化水素樹脂及びアクリル樹脂等からなる透明樹脂シートや、光硬化性樹脂シートや、フェノール樹脂や、エポキシ樹脂及び不飽和ポリエステル樹脂等からなる熱硬化性樹脂シートや、熱硬化性樹脂プリプレグや、熱硬化性樹脂をガラスクロスに含漬させた熱硬化性樹脂プリプレグ等が用いられている。
【0003】
近年、樹脂シートについてもダウンサイジングが要求されており、とりわけ多層プリント基板の分野では、基板の高密度化や薄型化に伴い、強度、耐熱性及び難燃性等の性能を向上させて高い信頼性を確保した薄厚の樹脂シートが要求されている。
これに対して、従来から樹脂に無機充填剤を添加して物性の向上を図る方法が広く行われている。例えば、無機充填剤を大量に配合した熱可塑性樹脂からなる樹脂シートや、ゴム(エラストマー)類やアクリル樹脂等で変性した熱硬化性樹脂からなる樹脂シート等が提案されている。
また、特許文献1には、高分子量エポキシ重合体及び多官能エポキシ樹脂等を主成分とするワニスに、所定の粒子径を有する無機充填剤を配合し、支持体に塗布して絶縁層とする多層絶縁基板の製造方法が開示されている。しかしながら、この製造方法による多層絶縁基板では、無機充填剤と高分子量エポキシ重合体や多官能エポキシ樹脂との界面面積が限られているため、機械的強度等の力学的物性を向上させるためには多量の無機充填剤を配合する必要があり、層間を薄くすることが困難であったり、加工工程が増える等の不具合が生じたりするという問題点があった。
【0004】
一方、工業用途に用いられる高分子材料は、近年、廃プラスチックの処理や環境ホルモンの問題から、環境に優しい材料であることが求められており、環境適応型材料への転換が望まれている。具体的には、例えば、燃焼時のダイオキシン発生等の問題に対処するために、含ハロゲン型難燃剤からノンハロゲン型難燃剤への転換が検討されている。また、含ハロゲン型難燃剤は、難燃化の効果が高く、成形性の低下や成形品の力学的物性の低下等も比較的少ないが、これを使用した場合、成形加工時や燃焼時に多量のハロゲン系ガスを発生する恐れがあり、発生したハロゲン系ガスにより機器が腐食したり、人体への好ましくない影響があるため、安全性の面からも含ハロゲン型難燃剤を使用しない、いわゆるノンハロゲン難燃化処理技術や処理方法の確立が強く望まれている。
【0005】
このため、近年、絶縁基板用材料に関しても、環境適応型材料への転換のために、ノンハロゲン型難燃剤を使用した材料の開発がなされている。しかし、ノンハロゲン型難燃剤の場合、必要な難燃性を発現させるためには大量の難燃剤を配合する必要があるため、耐熱性や寸法安定性等の点で、含ハロゲン型難燃剤を使用した従来の絶縁基板用材料に及ばないという問題点があった。
【0006】
更に、一般通信用、車載用に用いられるビルドアップ基板やプリント多層基板は、通常過酷な環境下で使用されることが多く、このような過酷な環境下でも高い信頼性を維持できることが求められている。しかし、樹脂シートに無電解メッキ、電気メッキ、スパッタリング又は真空蒸着により金属配線を形成した場合、金属配線と樹脂との密着性が低いために、ビルドアップ加工時に金属配線が樹脂からはずれてしまいショートや断線を起こすことがあるという問題があった。
【0007】
【特許文献1】
特開2000−183539号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記現状に鑑み、力学的物性、寸法安定性、耐熱性等に優れ、更に表面に金属配線を形成したときに金属配線の密着性に優れている樹脂シートを提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明は、熱硬化性樹脂、光硬化性樹脂、樹脂硬化物及び熱可塑性樹脂からなる群より選択される少なくとも1種の樹脂100重量部と層状珪酸塩0.1〜100重量部とを含有する樹脂シートであって、表面に無電解メッキ、電気メッキ、スパッタリング又は真空蒸着により金属層を形成したときの前記金属層のはく離接着強度が3.9N/cm以上である樹脂シートである。
以下に本発明を詳述する。
【0010】
本発明の樹脂シートは、熱硬化性樹脂、光硬化性樹脂、樹脂硬化物及び熱可塑性樹脂からなる群より選択される少なくとも1種の樹脂と層状珪酸塩とを含有する。なお、本明細書において、シートとは、平面状の材料を意味し、フィルムをも含むものである。
上記熱硬化性樹脂、光硬化性樹脂とは、常温では液状、半固形状又は固形状等であって常温下又は加熱下で流動性を示す比較的低分子量の物質が、硬化剤、触媒、熱又は光の作用によって硬化反応や架橋反応を起こして分子量を増大させながら網目状の三次元構造を形成してなる不溶不融性の樹脂となり得る樹脂を意味する。
また、上記樹脂硬化物とは、上記熱硬化性樹脂又は光硬化性樹脂が硬化してなる樹脂を意味する。
なお、熱硬化性樹脂又は光硬化性樹脂が半硬化又は硬化した樹脂組成物からなる樹脂をシート化した樹脂シートであることが好ましい。即ち、粗化に際しては樹脂硬化物であるが、粗化による樹脂の溶解が穏やかに進む傾向にあるため、粗化条件を調整しやすい。
【0011】
上記熱硬化性樹脂としては特に限定されず、例えば、エポキシ系樹脂、熱硬化型変性ポリフェニレンエーテル系樹脂、熱硬化型ポリイミド系樹脂、ユリア系樹脂、アリル樹脂、ケイ素樹脂、ベンゾオキサジン系樹脂、フェノール系樹脂、不飽和ポリエステル系樹脂、ビスマレイミドトリアジン樹脂、アルキド系樹脂、フラン系樹脂、メラミン系樹脂、ポリウレタン系樹脂、アニリン系樹脂等が挙げられる。なかでも、エポキシ系樹脂、熱硬化型変性ポリフェニレンエーテル系樹脂、熱硬化型ポリイミド樹脂、ユリア系樹脂、アリル樹脂、ケイ素樹脂、ベンゾオキサジン系樹脂、フェノール系樹脂、不飽和ポリエステル系樹脂、ビスマレイミドトリアジン樹脂等が好適である。
また、上記光硬化性樹脂としては、例えば、潜在性光カチオン重合開始剤を含むエポキシ樹脂等が挙げられる。
これらの熱硬化性樹脂又は光硬化性樹脂は、単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
なお、上記光硬化性樹脂を硬化させる場合には、光照射と同時に熱を加えることが好ましい。
【0012】
上記エポキシ樹脂とは、少なくとも1個のエポキシ基を有する有機化合物をいう。上記エポキシ樹脂中のエポキシ基の数としては、1分子当たり1個以上であることが好ましく、1分子当たり2個以上であることがより好ましい。ここで、1分子当たりのエポキシ基の数は、エポキシ樹脂中のエポキシ基の総数をエポキシ樹脂中の分子の総数で除算することにより求められる。
【0013】
上記エポキシ樹脂としては特に限定されず、従来公知のエポキシ樹脂を用いることができ、例えば、以下に示したエポキシ樹脂(1)〜エポキシ樹脂(11)等が挙げられる。これらのエポキシ樹脂は、単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0014】
上記エポキシ樹脂(1)としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂等のビスフェノール型エポキシ樹脂;フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂等のノボラック型エポキシ樹脂;トリスフェノールメタントリグリシジルエーテル等の芳香族エポキシ樹脂及びこれらの水添加物や臭素化物等が挙げられる。
【0015】
上記エポキシ樹脂(2)としては、例えば、3,4−エポキシシクロへキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、3,4−エポキシ−2−メチルシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシ−2−メチルシクロヘキサンカルボキシレート、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシル)アジペート、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチルアジペート、ビス(3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチル)アジペート、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル−5,5−スピロ−3,4−エポキシシクロヘキサノン−メタ−ジオキサン、ビス(2,3−エポキシシクロペンチル)エーテル等の脂環族エポキシ樹脂等が挙げられる。かかるエポキシ樹脂(2)のうち市販されているものとしては、例えば、商品名「EHPE−3150」(軟化温度71℃、ダイセル化学工業社製)等が挙げられる。
【0016】
上記エポキシ樹脂(3)としては、例えば、1,4−ブタンジオールのジグリシジルエーテル、1,6−へキサンジオールのジグリシジルエーテル、グリセリンのトリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンのトリグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールのジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールのジグリシジルエーテル、炭素数が2〜9(好ましくは2〜4)のアルキレン基を含むポリオキシアルキレングリコールやポリテトラメチレンエーテルグリコール等を含む長鎖ポリオールのポリグリシジルエーテル等の脂肪族エポキシ樹脂等が挙げられる。
【0017】
上記エポキシ樹脂(4)としては、例えば、フタル酸ジグリシジルエステル、テトラヒドロフタル酸ジグリシジルエステル、へキサヒドロフタル酸ジグリシジルエステル、ジグリシジル−p−オキシ安息香酸、サリチル酸のグリシジルエーテル−グリシジルエステル、ダイマー酸グリシジルエステル等のグリシジルエステル型エポキシ樹脂及びこれらの水添化物等が挙げられる。
【0018】
上記エポキシ樹脂(5)としては、例えば、トリグリシジルイソシアヌレート、環状アルキレン尿素のN,N’−ジグリシジル誘導体、p−アミノフェノールのN,N,O−トリグリシジル誘導体、m−アミノフェノールのN,N,O−トリグリシジル誘導体等のグリシジルアミン型エポキシ樹脂及びこれらの水添化物等が挙げられる。
【0019】
上記エポキシ樹脂(6)としては、例えば、グリシジル(メタ)アクリレートと、エチレン、酢酸ビニル、(メタ)アクリル酸エステル等のラジカル重合性モノマーとの共重合体等が挙げられる。なお、本明細書において、(メタ)アクリルとは、アクリル又はメタクリルを意味する。
【0020】
上記エポキシ樹脂(7)としては、例えば、エポキシ化ポリブタジエン等の共役ジエン化合物を主体とする重合体又はその部分水添物の重合体における不飽和炭素の二重結合をエポキシ化したもの等が挙げられる。
【0021】
上記エポキシ樹脂(8)としては、例えば、エポキシ化SBS等のような、ビニル芳香族化合物を主体とする重合体ブロックと、共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロック又はその部分水添物の重合体ブロックとを同一分子内にもつブロック共重合体における、共役ジエン化合物の不飽和炭素の二重結合をエポキシ化したもの等が挙げられる。
【0022】
上記エポキシ樹脂(9)としては、例えば、1分子当たり1個以上、好ましくは2個以上のエポキシ基を有するポリエステル樹脂等が挙げられる。
【0023】
上記エポキシ樹脂(10)としては、例えば、上記エポキシ樹脂(1)〜(9)の構造中にウレタン結合やポリカプロラクトン結合を導入した、ウレタン変成エポキシ樹脂やポリカプロラクトン変成エポキシ樹脂等が挙げられる。
【0024】
上記エポキシ樹脂(11)としては、例えば、上記エポキシ樹脂(1)〜(10)にNBR、CTBN、ポリブタジエン、アクリルゴム等のゴム成分を含有させたゴム変成エポキシ樹脂等が挙げられる。
また、エポキシ樹脂以外に、少なくとも1つのオキシラン環を有する樹脂又はオリゴマーが添加されていてもよい。
【0025】
上記エポキシ樹脂の硬化反応に用いる硬化剤としては特に限定されず、従来公知のエポキシ樹脂用の硬化剤を用いることができ、例えば、アミン化合物、アミン化合物から合成されるポリアミノアミド化合物等の化合物、3級アミン化合物、イミダゾール化合物、ヒドラジド化合物、メラミン化合物、酸無水物、フェノール化合物、熱潜在性カチオン重合触媒、光潜在性カチオン重合開始剤、ジシアンアミド及びその誘導体等が挙げられる。これらの硬化剤は、単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0026】
上記アミン化合物としては特に限定されず、例えば、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ポリオキシプロピレンジアミン、ポリオキシプロピレントリアミン等の鎖状脂肪族アミン及びその誘導体;メンセンジアミン、イソフォロンジアミン、ビス(4−アミノ−3−メチルシクロヘキシル)メタン、ジアミノジシクロへキシルメタン、ビス(アミノメチルシクロヘキサン、N−アミノエチルピペラジン、3,9−ビス(3−アミノプロピル)2,4,8,10−テトラオキサスピロ(5,5)ウンデカン等の環状脂肪族アミン及びその誘導体;m−キシレンジアミン、α−(m/pアミノフェニル)エチルアミン、m−フェニレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルフォン、α,α−ビス(4−アミノフェニル−p−ジイソプロピルベンゼン等の芳香族アミン及びその誘導体等が挙げられる。
【0027】
上記アミン化合物から合成される化合物としては特に限定されず、例えば、上記アミン化合物と、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカ二酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ジヒドロイソフタル酸、テトラヒドロイソフタル酸、ヘキサヒドロイソフタル酸等のカルボン酸化合物とから合成されるポリアミノアミド化合物及びその誘導体;上記アミン化合物と、ジアミノジフェニルメタンビスマレイミド等のマレイミド化合物とから合成されるポリアミノイミド化合物及びその誘導体;上記アミン化合物とケトン化合物とから合成されるケチミン化合物及びその誘導体;上記アミン化合物と、エポキシ化合物、尿素、チオ尿素、アルデヒド化合物、フェノール化合物、アクリル化合物等の化合物とから合成されるポリアミノ化合物及びその誘導体等が挙げられる。
【0028】
上記3級アミン化合物としては特に限定されず、例えば、N,N−ジメチルピペラジン、ピリジン、ピコリン、ベンジルジメチルアミン、2−(ジメチルアミノメチル)フェノール、2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、1,8−ジアザビスシクロ(5,4,0)ウンデセン−1及びその誘導体等が挙げられる。
【0029】
上記イミダゾール化合物としては特に限定されず、例えば、2−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−ウンデシルイミダゾール、2−ヘプタデシルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール及びその誘導体等が挙げられる。
【0030】
上記ヒドラジド化合物としては特に限定されず、例えば、1,3−ビス(ヒドラジノカルボエチル)−5−イソプロピルヒダントイン、7,11−オクタデカジエン−1,18−ジカルボヒドラジド、エイコサン二酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド及びその誘導体等が挙げられる。
【0031】
上記メラミン化合物としては特に限定されず、例えば、2,4−ジアミノ−6−ビニル−1,3,5−トリアジン及びその誘導体等が挙げられる。
【0032】
上記酸無水物としては特に限定されず、例えば、フタル酸無水物、トリメリット酸無水物、ピロメリット酸無水物、ベンゾフェノンテトラカルボン酸無水物、エチレングリコールビスアンヒドロトリメリテート、グリセロールトリスアンヒドロトリメリテート、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ナジック酸無水物、メチルナジック酸無水物、トリアルキルテトラヒドロ無水フタル酸、へキサヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、5−(2,5−ジオキソテトラヒドロフリル−3−メチル−3−シクロへキセン−1,2一ジカルボン酸無水物、トリアルキルテトラヒドロ無水フタル酸−無水マレイン酸付加物、ドデセニル無水コハク酸、ポリアゼライン酸無水物、ポリドデカン二酸無水物、クロレンド酸無水物及びその誘導体等が挙げられる。
【0033】
上記フェノール化合物としてば特に限定されず、例えば、フェノールノボラック、o−クレゾールノボラック、p−クレゾールノボラック、t−ブチルフェノールノボラック、ジシクロペンタジエンクレゾール及びその誘導体等が挙げられる。
【0034】
上記熱潜在性カチオン重合触媒としては特に限定されず、例えば、6フッ化アンチモン、6フッ化リン、4フッ化ホウ素等を対アニオンとした、ベンジルスルホニウム塩、ベンジルアンモニウム塩、ベンジルピリジニウム塩、ベンジルホスホニウム塩等のイオン性熱潜在性カチオン重合触媒;N−ベンジルフタルイミド、芳香族スルホン酸エステル等の非イオン熱潜在性カチオン重合触媒が挙げられる。
【0035】
上記光潜在性カチオン重合開始剤としては特に限定されず、例えば、6フッ化アンチモン、6フッ化リン、4フッ化ホウ素等を対アニオンとした、芳香族ジアゾニウム塩、芳香族ハロニウム塩及び芳香族スルホニウム塩等のオニウム塩類、並びに、鉄−アレン錯体、チタノセン錯体及びアリールシラノール−アルミニウム錯体等の有機金属錯体類等のイオン性光潜在性カチオン重合開始剤;ニトロベンジルエステル、スルホン酸誘導体、リン酸エステル、フェノールスルホン酸エステル、ジアゾナフトキノン、N−ヒドロキシイミドスルホナート等の非イオン性光潜在性カチオン重合開始剤が挙げられる。
【0036】
上記熱硬化型変性ポリフェニレンエーテル系樹脂としては特に限定されず、例えば、上記ポリフェニレンエーテル系樹脂をグリシジル基、イソシアネート基、アミノ基等の熱硬化性を有する官能基で変性した樹脂等が挙げられる。これらの熱硬化型変性ポリフェニレンエーテル系樹脂は、単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0037】
上記熱硬化性ポリイミド系樹脂としては、分子主鎖中にイミド結合を有する樹脂であれば特に限定されず、具体的には、例えば、芳香族ジアミンと芳香族テトラカルボン酸との縮合重合体、芳香族ジアミンとビスマレイミドとの付加重合体であるビスマレイミド樹脂、アミノ安息香酸ヒドラジドとビスマレイミドとの付加重合体であるポリアミノビスマレイミド樹脂、ジシアネート化合物とビスマレイミド樹脂とからなるビスマレイミドトリアジン樹脂等が挙げられる。なかでもビスマレイミドトリアジン樹脂が好適に用いられる。これらの熱硬化性ポリイミド系樹脂は、単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0038】
上記ユリア樹脂としては、尿素とホルムアルデヒドとの付加縮合反応で得られる熱硬化性樹脂であれば特に限定されない。上記ユリア樹脂の硬化反応に用いられる硬化剤としては特に限定されず、例えば、無機酸、有機酸、酸性硫酸ナトリウムのような酸性塩からなる顕在性硬化剤;カルボン酸エステル、酸無水物、塩化アンモニウム、リン酸アンモニウム等の塩類のような潜在性硬化剤が挙げられる。なかでも、貯蔵寿命等から潜在性硬化剤が好ましい。
【0039】
上記アリル樹脂としては、ジアリルフタレートモノマーの重合及び硬化反応によって得られるものであれば特に限定されない。上記ジアリルフタレートモノマーとしては、例えば、オルソ体、イソ体、テレ体が挙げられる。硬化反応の触媒としては特に限定されないが、例えば、t−ブチルパーベンゾエートとジ−t−ブチルパーオキシドとの併用が好適である。
【0040】
上記ケイ素樹脂としては、分子鎖中にケイ素−ケイ素結合、ケイ素−炭素結合、シロキサン結合又はケイ素−窒素結合を含むものであれば特に限定されず、具体的には、例えば、ポリシロキサン、ポリカルボシラン、ポリシラザン等が挙げられる。
【0041】
上記ベンゾオキサジン樹脂としては、ベンゾオキサジンモノマーのオキサジン環の開環重合によって得られるものであれば特に限定されない。上記ベンゾオキサジンモノマーとしてば特に限定されず、例えば、オキサジン環の窒素にフェニル基、メチル基、シクロヘキシル基等の官能基が結合したもの等が挙げられる。
【0042】
上記熱可塑性樹脂としては特に限定されず、例えば、ポリフェニレンエーテル系樹脂、官能基変性されたポリフェニレンエーテル系樹脂;ポリフェニレンエーテル系樹脂又は官能基変性されたポリフェニレンエーテル系樹脂と、ポリスチレン系樹脂等のポリフェニレンエーテル系樹脂又は官能基変性されたポリフェニレンエーテル系樹脂と相溶し得る熱可塑性樹脂との混合物;脂環式炭化水素系樹脂、熱可塑性ポリイミド系樹脂、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)系樹脂、ポリエーテルサルフォン樹脂、ポリアミドイミド系樹脂、ポリエステルイミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリビニルアセタール系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、ポリ(メタ)アクリル酸エステル系樹脂、ポリオキシメチレン系樹脂等が挙げられる。なかでも、ポリフェニレンエーテル系樹脂、官能基変性されたポリフェニレンエーテル系樹脂、ポリフェニレンエーテル系樹脂又は官能基変性されたポリフェニレンエーテル系樹脂とポリスチレン系樹脂との混合物、脂環式炭化水素系樹脂、熱可塑性ポリイミド系樹脂、ポリエーテルエーテルケトン系樹脂、ポリエーテルサルフォン樹脂、ポリアミドイミド系樹脂及びポリエステルイミド系樹脂等が好適に用いられる。これらの熱可塑性樹脂は、単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0043】
上記ポリフェニレンエーテル系樹脂とは、下記式(1)に示した繰り返し単位からなるポリフェニレンエーテル単独重合体又はポリフェニレンエーテル共重合体である。
【0044】
【化1】
【0045】
上記式(1)中、R1、R2、R3及びR4は、水素原子、アルキル基、アラルキル基、アリール基又はアルコキシル基を表す。これらのアルキル基、アラルキル基、アリール基及びアルコキシル基は、それぞれ官能基で置換されていてもよい。
【0046】
上記ポリフェニレンエーテル単独重合体としては特に限定されず、例えば、ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2−メチル−6−エチル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2,6−ジエチル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2−エチル−6−n−プロピル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2,6−ジ−n−プロピル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2−エチル−6−n−ブチル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2−エチル−6−イソプロピル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2−メチル−6−ヒドロキシエチル−1,4−フェニレン)エーテル等が挙げられる。
【0047】
上記ポリフェニレンエーテル共重合体としては特に限定されず、例えば、上記ポリフェニレンエーテル単独重合体の繰り返し単位中に2,3,6−トリメチルフェノール等のアルキル三置換フェノール等を一部含有する共重合体や、これらのポリフェニレンエーテル共重合体に更にスチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン等のスチレン系モノマーの1種又は2種以上がグラフト共重合された共重合体等が挙げられる。これらのポリフェニレンエーテル系樹脂は、それぞれ単独で用いられてもよく、組成、成分、分子量等の異なるものが2種以上併用されてもよい。
【0048】
上記官能基変性されたポリフェニレンエーテル系樹脂としては特に限定されず、例えば、上記ポリフェニレンエーテル系樹脂が無水マレイン酸基、グリシジル基、アミノ基、アリル基等の官能基の1種又は2種以上で変性されたもの等が挙げられる。これらの官能基変性されたポリフェニレンエーテル系樹脂は、単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。上記官能基変性されたポリフェニレンエーテル系樹脂を熱可塑性樹脂として用いると、架橋反応することにより本発明の樹脂ワニス組成物の力学的物性、耐熱性、寸法安定性等をより向上させることができる。
【0049】
上記ポリフェニレンエーテル系樹脂又は官能基変性されたポリフェニレンエーテル系樹脂とポリスチレン系樹脂との混合物としてば特に限定されず、例えば、上記ポリフェニレンエーテル系樹脂又は上記官能基変性されたポリフェニレンエーテル系樹脂と、スチレン単独重合体;スチレンとα−メチルスチレン、エチルスチレン、t−ブチルスチレン、ビニルトルニン等のスチレン系モノマーの1種又は2種以上との共重合体;スチレン系エラストマー等のポリスチレン系樹脂との混合物等が挙げられる。上記ポリスチレン系樹脂は、単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。又、これらのポリフェニレンエーテル系樹脂又は官能基変性されたポリフェニレンエーテル系樹脂とポリスチレン系樹脂との混合物は、単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0050】
上記脂環式炭化水素系樹脂としては、高分子鎖中に環状の炭化水素基を有する炭化水素系樹脂であれば特に限定されず、例えば、環状オレフイン、すなわちノルボルネン系モノマーの単独重合体又は共重合体等が挙げられる。これらの脂環式炭化水素系樹脂は、単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0051】
上記環状オレフィンとしては特に限定されず、例えば、ノルボルネン、メタノオクタヒドロナフタレン、ジメタノオクタヒドロナフタレン、ジメタノドデカヒドロアントラセン、ジメタノデカヒドロアントラセン、トリメタノドデカヒドロアントラセン、ジシクロペンタジエン、2,3−ジヒドロシクロペンタジエン、メタノオクタヒドロベンゾインデン、ジメタノオクタヒドロベンゾインデン、メタノデカヒドロベンゾインデン、ジメタノデカヒドロベンゾインデン、メタノオクタヒドロフルオレン、ジメタノオクタヒドロフルオレンやこれらの置換体等が挙げられる。これらの環状オレフィンは、単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0052】
上記ノルボルネン等の置換体における置換基としては特に限定されず、例えば、アルキル基、アルキリデン基、アリール基、シアノ基、アルコキシカルボニル基、ピリジル基、ハロゲン原子等の公知の炭化水素基や極性基が挙げられる。これらの置換基は、単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0053】
上記ノルボルネン等の置換体としては特に限定されず、例えば、5−メチル−2−ノルボルネン、5,5−ジメチル−2−ノルボルネン、5−エチル−2−ノルボルネン、5−ブチル−2−ノルボルネン、5−エチリデン−2−ノルボルネン、5−メトキシカルボニル−2−ノルボルネン、5−シアノ−2−ノルボルネン、5−メチル−5−メトキシカルボニル−2−ノルボルネン、5−フェニル−2−ノルボルネン、5−フェニル−5−メチル−2−ノルボルネン等が挙げられる。これらのノルボルネン等の置換体は、単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0054】
上記脂環式炭化水素系樹脂のうち市販されているものとしては、例えば、ジェイエスアール(JSR)社製の商品名「アートン」シリーズや日本ゼオン社製の商品名「ゼオノア」シリーズ等が挙げられる。
【0055】
上記熱可塑性ポリイミド系樹脂としては特に限定されず、例えば、分子主鎖中にイミド結合とエーテル結合とを有するポリエーテルイミド樹脂、分子主鎖中にイミド結合とアミド結合とを有するポリアミドイミド樹脂、分子主鎖中にイミド結合とエステル結合とを有するポリエステルイミド樹脂等が挙げられる。これらの熱可塑性ポリイミド系樹脂は、単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0056】
上記ポリエーテルエーテルケトン樹脂としては特に限定されず、例えば、ジハロゲノベンゾフェノンとヒドロキノンとを重縮合して得られるもの等が挙げられる。
【0057】
本発明の樹脂シートは、層状珪酸塩を含有する。本明細書において、上記層状珪酸塩とは、層間に交換性金属カチオンを有する層状の珪酸塩鉱物を意味し、天然物であってもよく、合成物であってもよい。上記層状珪酸塩としては特に限定されず、例えば、モンモリロナイト、ヘクトライト、サポナイト、バイデライト、スティブンサイト及びノントロナイト等のスメクタイト系粘土鉱物、膨潤性マイカ、バーミキュライト、ハロイサイト等が挙げられる。なかでも、モンモリロナイト、ヘクトライト、膨潤性マイカからなる群より選択される少なくとも1種が好適に用いられる。なかでも、膨潤性フッ素マイカがより好適である。これらの層状珪酸塩は、単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0058】
上記層状珪酸塩としては、下記式(2)で定義される形状異方性効果の大きいスメクタイト系粘土鉱物や膨潤性マイカを用いることが好ましい。形状異方性効果の大きい層状珪酸塩を用いることにより、本発明の樹脂シートはより優れた力学的物性を有するものとなる。
形状異方性効果=結晶表面(A)の面積/結晶表面(B)の面積 (2)
式中、結晶表面(A)は層表面を意味し、結晶表面(B)は層側面を意味する。
【0059】
上記層状珪酸塩の形状としては特に限定されるものではないが、平均長さの好ましい下限は0.01μm、上限は3μm、厚さの好ましい下限は0.001μm、上限は1μm、アスペクト比の好ましい下限は20、上限は500であり、平均長さのより好ましい下限は0.05μm、上限は2μm、厚さのより好ましい下限は0.01μm、上限は0.5μm、アスペクト比のより好ましい下限は50、上限は200である。
【0060】
上記層状珪酸塩の層間に存在する交換性金属カチオンとは、層状珪酸塩の結晶表面上に存在するナトリウムやカルシウム等の金属イオンのことであり、これらの金属イオンは、カチオン性物質とのカチオン交換性を有するため、カチオン性を有する種々の物質を上記層状珪酸塩の結晶層間に挿入(インターカレート)することができる。
【0061】
上記層状珪酸塩のカチオン交換容量は、特に限定されるものではないが、好ましい下限が50ミリ等量/100g、上限が200ミリ等量/100gである。層状珪酸塩のカチオン交換容量が50ミリ等量/100g未満であると、カチオン交換により層状珪酸塩の結晶層間にインターカレートされるカチオン性物質の量が少なくなるために、結晶層間が充分に非極性化(疎水化)されないことがあり、200ミリ等量/100gを超えると、層状珪酸塩の結晶層間の結合力が強固になりすぎて、結晶薄片が剥離し難くなることがある。
【0062】
本発明において、熱可塑性樹脂、光硬化性樹脂又は熱硬化性樹脂として例えばポリフェニレンエーテル系樹脂等の低極性樹脂を用いる場合には、予め層状珪酸塩の層間をカチオン性界面活性剤でカチオン交換して、疎水化しておくことが好ましい。予め層状珪酸塩の層間を疎水化しておくことにより、樹脂との親和性が高まり、層状珪酸塩を低極性の樹脂中により均一に微分散させることができる。
【0063】
上記カチオン性界面活性剤としては特に限定されず、例えば、4級アンモニウム塩、4級ホスホニウム塩等が挙げられる。なかでも、層状珪酸塩の結晶層間を充分に非極性化(疎水化)し得ることから、炭素数6以上のアルキル鎖を有する4級アンモニウム塩(炭素数6以上のアルキルアンモニウム塩)が好適に用いられる。
【0064】
上記4級アンモニウム塩としては特に限定されず、例えば、トリメチルアルキルアンモニウム塩、トリエチルアルキルアンモニウム塩、トリブチルアルキルアンモニウム塩、ジメチルジアルキルアンモニウム塩、ジブチルジアルキルアンモニウム塩、メチルベンジルジアルキルアンモニウム塩、ジベンジルジアルキルアンモニウム塩、トリアルキルメチルアンモニウム塩、トリアルキルエチルアンモニウム塩、トリアルキルブチルアンモニウム塩、芳香環を有する4級アンモニウム塩、トリメチルフェニルアンモニウム等の芳香族アミン由来の4級アンモニウム塩、ポリエチレングリコール鎖を二つ有するジアルキル4級アンモニウム塩、ポリプロピレングリコール鎖を二つ有するジアルキル4級アンモニウム塩、ポリエチレングリコール鎖を一つ有するトリアルキル4級アンモニウム塩、ポリプロピレングリコール鎖を一つ有するトリアルキル4級アンモニウム塩が挙げられる。この中でも特にラウリルトリメチルアンモニウム塩、ステアリルトリメチルアンモニウム塩、トリオクチルメチルアンモニウム塩、ジステアリルジメチルアンモニウム塩、ジ硬化牛脂ジメチルアンモニウム塩、ジステアリルジベンジルアンモニウム塩、N−ポリオキシエチレン−N−ラウリル−N,N−ジメチルアンモニウム塩等が好適である。これらの4級アンモニウム塩は、単独で用いられても良いし、2種類以上が併用されても良い。
【0065】
上記4級ホスホニウム塩としては特に限定されず、例えば、ドデシルトリフェニルホスホニウム塩、メチルトリフェニルホスホニウム塩、ラウリルトリメチルホスホニウム塩、ステアリルトリメチルホスホニウム塩、トリオクチルホスホニウム塩、トリオクチルメチルホスホニウム塩、ジステアリルジメチルホスホニウム塩、ジステアリルジベンジルホスホニウム塩等が挙げられる。これらの4級ホスホニウム塩は、単独で用いられても良いし、2種類以上が併用されても良い。
【0066】
本発明で用いられる層状珪酸塩は、上述のような化学処理によって樹脂中への分散性を向上させることができる。
上記化学処理は、カチオン性界面活性剤によるカチオン交換法(以下、化学修飾(1)法ともいう)に限定されるものではなく、例えば、以下に示す化学修飾
(2)〜化学修飾(6)法の各種化学処理法によっても実施することができる。これらの化学修飾法は、単独で用いられても良いし、2種類以上が併用されても良い。なお、化学修飾(1)法を含め、以下に示す各種化学処理法によって樹脂中への分散性を向上させた層状珪酸塩を、以下、「有機化層状珪酸塩」ともいう。
【0067】
化学修飾(2)法は、化学修飾(1)法で化学処理された有機化層状珪酸塩の結晶表面に存在する水酸基を、これと化学結合し得る官能基、又は、化学結合はしなくとも化学的親和性の大きい官能基を分子末端に1個以上有する化合物で化学処理する方法である。
【0068】
化学修飾(3)法は、化学修飾(1)法で化学処理された有機化層状珪酸塩の結晶表面に存在する水酸基を、これと化学結合し得る官能基、又は、化学結合はしなくとも化学的親和性の大きい官能基及び反応性官能基を分子末端に1個以上有する化合物で化学処理する方法である。
【0069】
化学修飾(4)法は、化学修飾(1)法で化学処理された有機化層状珪酸塩の結晶表面を、アニオン性界面活性を有する化合物で化学処理する方法である。
【0070】
化学修飾(5)法は、化学修飾(4)法において、アニオン性界面活性を有する化合物の分子鎖中のアニオン部位以外に反応性官能基を1個以上有する化合物で化学処理する方法である。
【0071】
化学修飾(6)法は、上記化学修飾(1)法〜化学修飾(5)法のいずれかの方法で化学処理された有機化層状珪酸塩に、更に、例えば、無水マレイン酸変性ポリフェニレンエーテル系樹脂のような層状珪酸塩と反応可能な官能基を有する樹脂を添加した組成物を用いる方法である。
【0072】
上記化学修飾(2)法における、水酸基と化学結合し得る官能基、又は、化学結合はしなくとも化学的親和性の大きい官能基としては特に限定されず、例えば、アルコキシ基、グリシジル基、カルボキシル基(二塩基性酸無水物も包含する)、水酸基、イソシアネート基、アルデヒド基等の官能基や、水酸基との化学的親和性が高いその他の官能基等が挙げられる。また、上記水酸基と化学結合し得る官能基、又は、化学結合はしなくとも化学的親和性の大きい官能基を有する化合物としては、特に限定されるものではないが、例えば、上記に例示した官能基を有するシラン化合物、チタネート化合物、グリシジル化合物、カルボン酸類、アルコール類等が挙げられる。これらの化合物は、単独で用いられても良いし、2種類以上が併用されても良い。
【0073】
上記シラン化合物としては特に限定されず、例えば、ビニルトリメトキシシラン、
ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アミノプロピルジメチルメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、γ−アミノプロピルジメチルエトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、トリメチルメトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、ヘキシルトリエトキシシラン、N−β−(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β−(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β−(アミノエチル)γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、オクタデシルトリメトキシシラン、オクタデシルトリエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。これらのシラン化合物は、単独で用いられても良いし、2種類以上が併用されても良い。
【0074】
化学修飾(4)法及び化学修飾(5)法における、アニオン性界面活性を有する化合物、アニオン性界面活性を有し分子鎖中のアニオン部位以外に反応性官能基を1個以上有する化合物としては、イオン相互作用により層状珪酸塩を化学処理できるものであれば特に限定されず、例えば、ラウリル酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、オレイン酸ナトリウム、高級アルコール硫酸エステル塩、第2級高級アルコール硫酸エステル塩、不飽和アルコール硫酸エステル塩等が挙げられる。これらの化合物は、単独で用いられても良いし、2種類以上が併用されても良い。
【0075】
上記層状珪酸塩は、広角X線回折測定法により測定した(001)面の平均層間距離が3nm以上であり、かつ、一部又は全部が5層以下に分散していることが好ましい。上記層状珪酸塩が平均層間距離が3nm以上であり、かつ、一部又は全部が5層以下にて分散することにより、熱硬化性樹脂、光硬化性樹脂及び熱可塑性樹脂からなる群より選択される少なくとも1種の樹脂と、層状珪酸塩との界面面積は充分に大きく、かつ、層状珪酸塩の薄片状結晶間の距離は適度なものとなり、層状珪酸塩の分散による充分な効果が得られ、樹脂材料において、通常の無機充填材を用いたときよりも大きな力学物性、難燃性の改善効果が得られる。
【0076】
上記平均層間距離の好ましい上限は5nmである。5nmを超えると、層状珪酸塩の結晶薄片が層毎に分離して相互作用が無視できるほど弱まるので、燃焼時の被膜形成が遅くなり、難燃性の向上が充分に得られないことがある。なお、本明細書において層状珪酸塩の平均層間距離とは、層状珪酸塩の微細薄片状結晶を層とした場合の平均の層間距離を意味し、X線回折ピーク及び透過型電子顕微鏡撮影、即ち、広角X線回折測定法により算出することができる。
【0077】
上記層状珪酸塩の一部又は全部が5層以下に分散するとは、具体的には、層状珪酸塩の薄片状結晶間の相互作用が弱められて薄片状結晶の積層体の一部又は全部が分散していることを意味する。好ましくは、層状珪酸塩の10%以上が5層以下の積層体として分散しており、層状珪酸塩の20%以上が5層以下の積層体として分散していることがより好ましい。なお、5層以下の積層体として分散している層状珪酸塩の割合は、本発明の樹脂シートを透過型電子顕微鏡により5万〜10万倍に拡大して観察し、一定面積中において観察できる層状珪酸塩の積層体の全層数X及び5層以下の積層体として分散している積層体の層数Yを計測することにより、下記式(3)から算出することができる。
5層以下に分散している層状珪酸塩の割合(%)=(Y/X)×100 (3)
【0078】
層状珪酸塩の積層数は、5層以下に分層していることが好ましく、そのことにより、上記効果を得ることができるが、より好ましくは3層以下に分層していることであり、特に好ましくは単層状に薄片化していることである。
【0079】
上記樹脂材料は、樹脂と層状珪酸塩との界面面積が充分に大きいことにより、樹脂と層状珪酸塩の表面との相互作用が大きくなるので、溶融粘度、溶液粘度が高まり成形性が向上することに加え、常温から高温までの広い温度領域で弾性率等の力学的物性が向上し、樹脂のガラス転移点又は融点以上の高温でも力学的物性を保持することができ、高温時の線膨張率も低く抑えることができる。かかる理由は明らかではないが、ガラス転移点又は融点以上の領域においても、微分散状態の層状珪酸塩が一種の疑似架橋点として作用しているためにこれら物性が発現すると考えられる。
一方、層状珪酸塩の薄片状結晶間の距離が適度なものとなると、上記樹脂材料は、燃焼時に、層状珪酸塩の薄片状結晶が移動して難燃被膜となり得る焼結体を形成しやすくなる。この焼結体は、燃焼時の早い段階で形成されるので、外界からの酸素の供給を遮断するのみならず、燃焼により発生する可燃性ガスをも遮断することができ、樹脂材料は優れた難燃性を発現する。従って、本発明の樹脂シートは、燃焼時の形状保持効果による優れた難燃性を有する。
【0080】
更に、上記樹脂材料は、樹脂中を拡散する際に気体分子は無機物を迂回しながら拡散するので、ガスバリア性が向上する。同様にして気体分子以外に対するバリア性も向上し、耐溶剤性、吸湿性、吸水性等が向上する。これにより、例えば、本発明の樹脂シートを用いてなる多層プリント配線板での銅回路からの銅のマイグレーションを抑制することができる。更に、樹脂中の微量添加物が表面にブリードアウトしてメッキ不良等の不具合が発生することを抑制することもできる。
【0081】
本発明の樹脂シートにおいて、上記熱可塑性樹脂及び/又は熱硬化性樹脂との混合物100重量部に対する上記層状珪酸塩の配合量の下限は0.1重量部、上限は100重量部である。0.1重量部未満であると、難燃性や力学物性の改善効果が小さくなり、100重量部を超えると、樹脂シートの密度(比重)が高くなり、また、機械的強度も低下することから実用性に乏しくなる。好ましい下限は1重量部、上限は50重量部である。1重量部未満であると、樹脂シートを薄く成形する際に充分な難燃効果が得られないことがあり、50重量部を超えると、成形性が低下することがある。より好ましい下限は5重量部、上限は20重量部である。この範囲内であると、機械物性、工程適性に問題となる領域はなく、充分な難燃効果が得られる。
【0082】
上記樹脂中に上記層状珪酸塩を分散させる方法としては特に限定されず、例えば、上記有機化層状珪酸塩を用いる方法;樹脂と層状珪酸塩とを常法により混合した後に発泡させる方法;分散剤を用いる方法等が挙げられる。これらの分散方法を用いることにより、樹脂中に層状珪酸塩をより均一かつ微細に分散させることができる。
【0083】
上記樹脂と層状珪酸塩とを常法により混合した後に発泡させる方法は、発泡剤を用いて樹脂を発泡させ、その発泡エネルギーを層状珪酸塩の分散エネルギーに転換する方法である。
上記発泡剤としては特に限定されず、例えば、気体状発泡剤、易揮発性液状発泡剤、加熱分解型固体状発泡剤等が挙げられる。これらの発泡剤は、単独で用いられても良いし、2種類以上が併用されても良い。
【0084】
層状珪酸塩の存在下で樹脂を発泡させることにより層状珪酸塩を樹脂中に分散せしめる具体的な方法としては特に限定されず、例えば、樹脂100重量部及び層状珪酸塩0.1〜100重量部とからなる樹脂組成物に対し、気体状発泡剤を高圧下で含浸させた後、この気体状発泡剤を上記樹脂組成物内で気化させることにより、発泡体を形成せしめることによる方法;層状珪酸塩の層間に予め加熱分解型発泡剤を含有させ、その加熱分解型発泡剤を加熱により分解させて、発泡体を形成せしめることによる方法等が挙げられる。
【0085】
本発明の樹脂シートは、実質的にハロゲン系組成物を含有しない難燃剤を含有することが好ましい。なお、実質的にハロゲン系組成物を含有しないとは、難燃剤の製造工程上の都合等により微量のハロゲンが混入することはかまわないということを意味する。
【0086】
上記難燃剤としては特に限定されず、例えば、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、ドーソナイト、アルミン酸化カルシウム、2水和石こう、水酸化カルシウム等の金属水酸化物;赤リンやポリリン酸アンモニウム等のリン系化合物;メラミン、メラミンシアヌレート、メラミンイソシアヌレート、リン酸メラミン及びこれらに表面処理が施されたもののようなメラミン誘導体等の窒素系化合物、ハイドロタルサイト等の層状複水和物等が挙げられる。なかでも金属水酸化物及びメラミン誘導体が好適に用いられる。
【0087】
上記金属水酸化物のなかでも、特に水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウムが好ましく、これらは各種の表面処理剤により表面処理が施されているものであってもよい。上記表面処理剤としては特に限定されず、例えば、シランカップリング剤、チタネート系カップリング剤、PVA系表面処理剤、エポキシ系表面処理剤等が挙げられる。これらの難燃剤は、単独で用いられても良いし、2種類以上が併用されても良い。
【0088】
上記難燃剤の熱硬化性樹脂、光硬化性樹脂及び熱可塑性樹脂からなる群より選択される少なくとも1種の樹脂100重量部に対する好ましい含有量の下限は0.1重量部、上限は100重量部である。0.1重量部未満であると、これらを含有することによる難燃化効果が充分には得られず、100重量部を超えると、樹脂シートの密度(比重)が高くなりすぎて、実用性が乏しくなり、柔軟性や伸度が極端に低下してしまう。好ましい下限は5重量部、上限は80重量部である。5重量部未満であると、樹脂シートを薄くすると充分な難燃化効果が得られないことがあり、80重量部を超えると、高温での工程中に膨れ等による不良率が高くなることがある。より好ましい下限は10重量部、上限は70重量部である。この範囲であると、機械物性、電気物性、工程適性に問題となる領域がなく、充分な難燃性を発現するので好適である。
【0089】
本発明の樹脂シートには、本発明の課題達成を阻害しない範囲で特性を改質することを目的に、必要に応じて、無機フィラー、熱可塑性エラストマー類、架橋ゴム、オリゴマー類、造核剤、酸化防止剤(老化防止剤)、熱安定剤、光安定剤、紫外線吸収剤、滑剤、難燃助剤、帯電防止剤、防曇剤、充填剤、軟化剤、可塑剤、着色剤等の添加物が配合されてもよい。これらはそれぞれ単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0090】
上記熱可塑性エラストマー類としては特に限定されず、例えば、スチレン系エラストマー、オレフィン系エラストマー、ウレタン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー等が挙げられる。樹脂との相容性を高めるために、これらの熱可塑性エラストマーを官能基変性したものであってもよい。これらの熱可塑性エラストマー類は、単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0091】
上記架橋ゴムとしては特に限定されず、例えば、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、1,2−ポリブタジエン、スチレン−ブタジエンゴム、ニトリルゴム、ブチルゴム、エチレン−プロピレンゴム、シリコーンゴム、ウレタンゴム等が挙げられる。樹脂との相容性を高めるために、これらの架橋ゴムを官能基変性したものであることが好ましい。上記官能基変性した架橋ゴムとしては特に限定されず、例えば、エポキシ変性ブタジエンゴムやエポキシ変性ニトリルゴム等が挙げられる。これらの架橋ゴム類は単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0092】
上記オリゴマー類としては特に限定されず、例えば、無水マレイン酸変性ポリエチレンオリゴマー等が挙げられる。これらのオリゴマー類は、単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0093】
本発明の樹脂シートは、表面に無電解メッキ、電気メッキ、スパッタリング又は真空蒸着により金属層を形成したときの金属層のはく離接着強度が3.9N/cm以上である。3.9N/cm未満であると、本発明の樹脂シートを用いて多層プリント基板を作製した場合に、ビルドアップ加工時や製品を過酷な環境下で使用したときに金属配線が樹脂からはずれてしまいショートや断線を起こすことがある。好ましくは4.9N/cm以上、より好ましくは6.9N/cm以上である。
なお、上記はく離接着強度は、例えば、表面に形成した厚さ22μm、電極幅1cm程度の銅電極を剥離速度50mm/分の条件で90度剥離測定を行うことにより測定することができる。
【0094】
このような性能を達成するためには、シートの表面に粗化処理を施すことが好ましい。粗化処理を施し表面に凹凸を形成することにより、表面に無電解メッキ、電気メッキ、スパッタリング又は真空蒸着により形成した金属配線との密着力を飛躍的に向上させることができる。
【0095】
上記粗化処理の方法としては特に限定されないが、過マンガン酸ナトリウムや過マンガン酸カリウム等の過マンガン酸塩等の酸化剤により粗化する方法が好適である。本発明の樹脂シートは、表面のエポキシ樹脂硬化物からなる樹脂部分を過マンガン酸塩等の酸化剤により溶解することにより表面に凹凸が発生する、即ち粗化されるが、それに加えて、本発明のエポキシ樹脂シートは層状珪酸塩や難燃剤、必要に応じて無機フィラーを含有することから、表面樹脂が酸化溶解された際に、層状珪酸塩、難燃剤、無機フィラーが表出し、表面凹凸を更に大きくすることができる。
具体的には、例えば、まず樹脂シート表面を膨潤させ、過マンガン酸ナトリウム等の酸化剤により樹脂を酸化させて樹脂シートの表面を粗化するが、60〜70g/L過マンガン酸溶液、40〜80g/L水酸化ナトリウム溶液を用いて、処理温度70〜85℃で1又は2回処理する方法が好ましい。処理の回数が多い方が粗化効果も大きいが、処理を繰り返すと層状珪酸塩や難燃剤も削られていくため、3回以上行っても実質的な効果は変わらないか、又は、明確な凹凸が得られにくくなることがある。
【0096】
しかしながら、熱硬化性樹脂、光硬化性樹脂、樹脂硬化物及び熱可塑性樹脂からなる群より選択される少なくとも1種の樹脂中に層状珪酸塩がナノスケールで分散しているシートは、吸水率が極めて低く、かつ、耐薬品性が極めて高いため、上述のように過マンガン酸ナトリウム又は酸化剤を用いて粗化処理を行おうとしても充分に粗化されないことがある。
このような場合には、層状珪酸塩としてアスペクト比の大きなものを用いる、又は、シートの表面の層状珪酸塩の割合だけを減らし樹脂の割合を多くすることが好ましい。すなわち、上述の吸水率や耐薬品性は層状珪酸塩が樹脂中に微分散していることに起因するものであることから、少なくとも表面における層状珪酸塩の含有量が小さくなれば、相対的に過マンガン酸ナトリウム等の酸化剤による粗化処理効果も大きなものとなる。
【0097】
層状珪酸塩としてアスペクト比の大きなものを用いる場合には、より少量の添加でも充分な微分散の効果を得ることができることから、層状珪酸塩の配合量を減らすことができ、過マンガン酸ナトリウム等の酸化剤による粗化処理効果も大きくなる。このような層状珪酸塩としては、例えば、膨潤性フッ素マイカ等が挙げられる。この場合、樹脂100重量部に対する膨潤性フッ素マイカの配合量の下限は0.1重量部、好ましい上限は10重量部である。0.1重量部未満であると、層状珪酸塩を配合する効果が得られず、10重量部を超えると、過マンガン酸ナトリウム又は酸化剤による粗化処理では充分に表面を粗化できないことがある。より好ましい上限は5重量部である。
また、シートの表面にのみ、上記アスペクト比の大きい層状珪酸塩が含有されるようにすることによっても同様の効果が得られる。
【0098】
また、このような効果は、層状珪酸塩以外の添加成分を少なくし、シートの表面の樹脂の割合を多くすることによっても達成できる。すなわち、金属層を形成する表面部分を、有機成分比率が全体の平均の有機成分比率以上であるようにすれば、表面部分における層状珪酸塩の含有割合が相対的に小さくなり、過マンガン酸ナトリウム等の酸化剤による粗化処理効果も大きくなる。
上記表面部分とは、表面から2μm以上、20μm以下の深さであることが好ましい。2μmであると、上述の効果が得られないことがあり、20μmを超えると、樹脂シート全体の物性が劣ることがある。
また、表面部分の有機成分比率は、全体平均の1.02倍以上であることが好ましい。1.02倍未満であると、上述の効果が得られないことがある。より好ましくは1.05倍以上である。
なお、上記有機成分比率は、有機成分/(有機成分+無機成分)で表される値である。
【0099】
シートの表面の樹脂の割合を多くする方法としては、樹脂シートを多層構造にする方法の他に、塗工後、ゆっくりと乾燥させることで、無機フィラー等を沈降させる方法や、塗布するフィルムに接している面に静電的相互作用により樹脂を偏在させる方法等が挙げられる。具体的には、表面処理がなされ、表面エネルギーの低いPETフィルム上に塗布すると、樹脂が塗布フィルム面に偏在したシートを得ることができる。
【0100】
また、シートの表面又は全体に、過マンガン酸ナトリウムや過マンガン酸カリウム等の過マンガン酸塩等の酸化剤により比較的酸化されやすい樹脂を用いると、シートの表面に粗化による凹凸を容易に付与することができる。上記酸化剤により比較的酸化されやすい樹脂としては、例えば、ポリブタジエン骨格等のように分子内に二重結合を有するエポキシ樹脂、ゴム等が挙げられる。
従って、酸化剤により比較的酸化されやすい樹脂を用いる場合は、上記熱可塑性樹脂及び/又は熱硬化性樹脂との混合物100重量部に対する上記層状珪酸塩の配合量が多いものであっても、充分にシートの表面を粗化することができる。
このような場合、上記層状珪酸塩の割合は高くなってもよく、上記熱可塑性樹脂及び/又は熱硬化性樹脂との混合物100重量部に対する上記層状珪酸塩の配合量の好ましい上限は90重量部、より好ましい上限は50重量部である。
なお、上記層状珪酸塩を20重量部以上配合しても、充分にシートの表面を粗化することができる。
【0101】
後述するような樹脂ワニス組成物を乾燥させて樹脂シートを作製する場合、乾燥条件を制御することで、シートの表面に凹凸を付与することができる。
この場合、過マンガン酸ナトリウムや過マンガン酸カリウム等の過マンガン酸塩等の酸化剤により粗化する方法を用いなくても、電気メッキにより形成した銅配線との間で優れた密着強度を実現することができる。このように、乾燥条件を制御して、表面に凹凸を付与した後、酸化剤により粗化する方法を実施すると、表面に凹凸がなかった場合と比較して、密着強度を更に向上させることができる。
【0102】
また、予め層状珪酸塩、又は、難燃剤として金属水酸化物が粒子径0.5μm以上になるように分散した熱硬化性樹脂及び/又は熱可塑性樹脂からなる樹脂からなる層を樹脂シート上に形成しておき、その表面に上記粗化処理を施すことも好ましい。粒子径の大きな層状珪酸塩や難燃剤を表出させることにより、より大きな凹凸を形成することができ、樹脂シートと金属配線との密着力をより向上することができる。
なお、上記層状珪酸塩又は難燃剤が粒子径0.5μm以上で分散した層の厚さは、5μm以下であることが好ましい。5μmを超えると、本発明の樹脂シート全体に占める該層の割合が大きくなり、本発明の樹脂シートの力学的強度、難燃性等が充分に発揮できないことがある。
【0103】
過マンガン酸ナトリウムや過マンガン酸カリウム等の過マンガン酸塩等の酸化剤により粗化する方法では、シートの表面を極性化することで、電気メッキによる銅配線との密着強度を向上させることができる。
シートの表面を極性化する方法としては、そのほかに、コロナ処理、プラズマ処理等も有効である。
【0104】
酸化剤による粗化、コロナ処理又はプラズマ処理を行った場合、シートの表面を極性化する効果以外にも、シートの表層の不純物や未反応物を取り除く効果を有することがある。このような場合、処理時間が短くなり、スパッタリングや電気メッキにより形成した銅配線との密着強度を向上させることができる。
【0105】
本発明の樹脂シートは、ASTM E 1354に準拠した燃焼試験において、50kW/m2の輻射加熱条件下で30分間加熱することにより燃焼させた燃焼残渣を速度0.1cm/sで圧縮した際の降伏点応力が4.9kPa以上であることが好ましい。4.9kPa未満であると、微小な力で燃焼残渣の崩壊が起こり易くなって、難燃性が不充分となることがある。即ち、本発明の樹脂シートにおいて、焼結体が難燃被膜としての機能を充分に発現するためには、燃焼終了時まで焼結体がその形状を保持していることが好ましい。より好ましくは15.0kPa以上である。
【0106】
本発明の樹脂シートを作製する方法としては特に限定されないが、例えば、樹脂、層状珪酸塩及び有機溶媒を混合した樹脂ワニス組成物を作製し、この樹脂ワニス組成物から有機溶媒を留去して樹脂シートを作製し、更にこの樹脂シートの表面を粗化処理する方法等が挙げられる。
本発明の樹脂シートを製造する方法であって、熱硬化性樹脂、光硬化性樹脂、樹脂硬化物及び熱可塑性樹脂からなる群より選択される少なくとも1種の樹脂100重量部に対して層状珪酸塩0.1〜100重量部及び有機溶媒30〜1000重量部を混合して樹脂ワニス組成物を作製する工程と、樹脂ワニス組成物から有機溶媒を留去する工程とを有する樹脂シートの製造方法もまた、本発明の1つである。
【0107】
上記有機溶媒としては特に限定されず、例えば、ヘキサン、シクロヘキサン、四塩化炭素、クロロホルム、ジクロロメタン、ジエチルエーテル、1,2−ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、酢酸エチル、N,N−ジメチルホルムアミド、ヘキサメチルホスホルアミド、酢酸、アセトン、メチルエチルケトン、メタノール、エタノール、ニトロメタン、ジメチルスルホキシド、スルホラン、ベンゼン、トルエン、キシレン、ナフタレン、クロロベンゼン、アニソール、ジフェニルエーテル、ピリジン、ニトロベンゼン等が挙げられる。なかでも、層状珪酸塩を分散するには極性有機溶媒が好ましく、より好ましくは非プロトン性の極性有機溶媒である。非プロトン性の極性有機溶媒とは、強い水素結合の形成に適した水素を持たない極性有機溶媒を意味し、具体的には、アセトン、メチルエチルケトン、アセトニトリル、ジメチルスルホキシド、n,n−ジメチルホルムアミド、ヘキサメチルホスホルアミド等が挙げられる。これら有機溶媒は、単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0108】
上記有機溶媒の配合量としては、上記樹脂、層状珪酸塩の配合量及び有機溶媒の種類により最適量は異なるが、一般に樹脂濃度、層状珪酸塩濃度共に低い方が好ましく、樹脂100重量部及び層状珪酸塩0.01〜100重量部に対して30〜1000重量部が混合される。30重量部未満であると、樹脂組成物の溶液粘度が高すぎて、キャストが困難である。1000重量部を超えると、溶液キャスト時の塗工不良が生じたり、厚膜化が困難となったりすることがある。上記有機溶媒の配合量の好ましい下限は100重量部、より好ましい下限は150重量部以上であり、層状珪酸塩よりも多く配合されることが好ましい。
【0109】
上記樹脂ワニス組成物を作製する方法としては、層状珪酸塩と有機溶媒とをあらかじめ混合しておき、得られた混合物と樹脂又は樹脂溶液とを混合する方法が好ましい。上記混合には、流星式撹拌装置、ホモジナイザー、メカノケミカル撹拌機等を用いることが好ましい。
【0110】
次いで、上記樹脂ワニス組成物から上記有機溶媒を留去することにより樹脂シートが得られる。上記留去の方法としては特に限定されず、樹脂ワニス組成物の組成に応じて選択される。
【0111】
また、片面のみが相対的に樹脂の割合が多い樹脂シートを作製する方法としては特に限定されず、例えば、比重の重い層状珪酸塩を用いたり、溶液キャスト速度を遅くしたりして、層状珪酸塩を沈降させてシート厚み方向での有機成分比率の異なるシートを作製する方法;有機成分比率の異なるシートを積層する方法等が挙げられる。
【0112】
本発明の樹脂シートは、熱硬化性樹脂、光硬化性樹脂、樹脂硬化物及び熱可塑性樹脂からなる群より選択される少なくとも1種の樹脂中に層状珪酸塩がナノスケールで分散していることにより、優れた力学物性や透明性、耐湿性等を有し、分子鎖の拘束によるガラス転移点温度や耐熱変形温度の上昇に基づく耐熱性の向上や熱線膨張率の低減、結晶形成における層状珪酸塩の造核効果や耐湿性の向上等に伴う膨潤抑制効果等に基づく寸法安定性の向上等が図られている。また、燃焼時には層状珪酸塩による焼結体が形成されるので燃焼残渣の形状が保持され、延焼を防止することができ、優れた難燃性を発現する。更に、金属水酸化物等のノンハロゲン難燃剤と組み合わせることで、環境にも配慮しつつ、高い力学的物性等と高い難燃性とを両立することができる。上記樹脂シートにおいては、層状珪酸塩が通常の無機充填剤のように多量に配合しなくとも優れた力学的物性等を付与することから薄い成形体に加工でき、多層プリント基板の高密度化、薄型化に対応して厚さの薄い本発明の樹脂シートが得られる。本発明の樹脂シートからなる絶縁基板用材料は、優れた難燃性、力学的物性、高温物性、耐熱性、寸法安定性等の諸性能を発現できる。
【0113】
更に、本発明の樹脂シートは、表面に粗化加工を施すことにより、表面に無電解メッキ、電気メッキ、スパッタリング又は真空蒸着により形成した金属配線との密着力が飛躍的に向上している。これにより、ビルドアップ加工時や製品を過酷な環境下で使用したときでも金属配線が樹脂からはずれることがなく、高い信頼性を確保できる。
本発明の樹脂シートは、プリント多層基板、ビルドアップ基板、樹脂基板等に好適に用いることができる。
【0114】
【実施例】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。
【0115】
(実施例1)
ビスフェノールF型エポキシ樹脂(大日本インキ化学工業社製、エビクロン830LVP)57.7重量部、BTレジン(三菱瓦斯化学社製、BT2100B)15.7重量部及びネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル15.7重量部からなるエポキシ樹脂組成物89.1重量部、カップリング剤としてγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(日本ユニカー社製、A−187)2.1重量部、硬化触媒としてアセチルアセトン鉄(日本化学産業社製)1.1重量部、層状珪酸塩としてジステアリルジメチル4級アンモニウム塩で有機化処理が施された膨潤性フッ素マイカ(コープケミカル社製、ソマシフMAE−100)7.7重量部、難燃剤として水酸化マグネシウム(協和化学工業社製、キスマ5J)70重量部、及び、有機溶媒としてメチルエチルケトン(和光純薬社製、特級)200重量部をビーカーに加え、攪拌機にて1時間攪拌した後、脱泡し、樹脂ワニスを得た。
【0116】
得られた樹脂ワニスを鋳型に入れた状態で60℃で3時間加熱して溶媒を留去した後、110℃で3時間加熱し、更に160℃で3時間加熱して硬化させ、厚さ2mm及び100μmの板状成形体を作製した。
【0117】
別に、得られた樹脂ワニスをドクターブレード法により、ポリエチレンテレフタレートフィルム上に塗工し、乾燥させて厚さ24μmのシー卜を得た。なお、ドクターブレード条件は、乾燥温度=70℃、スピード=0.3m/minとした。
得られたシートをコア材(厚さ0.6mm:利昌工業社製)の両面に、90℃、10sec、圧力1kg/cm2の条件で真空ラミネートした。ラミネート後、ポリエチレンテレフタレートフィルムを取り除き、170℃、60minで熱硬化して、基板を得た。
【0118】
得られた基板に、以下のそれぞれの条件により粗化処理を施した。
条件1:基板を80℃に設定した膨潤液(アドテック社製、スウェリングディップ セキュリ ガントP)にて5分間膨潤させた後、80℃に設定した粗化液(50g/L過マンガン酸ナトリウム、30g/L水酸化ナトリウムを含有する溶液)に15分浸漬した(処理回数1回)。
条件2:基板を80℃に設定した膨潤液(アドテック社製、スウェリングディップ セキュリガントP)にて5分間膨潤させた後、80℃に設定した粗化液(75g/L過マンガン酸ナトリウム、50g/L水酸化ナトリウムを含有する溶液)に15分浸漬した(処理回数1回)。
条件3:基板を80℃に設定した膨潤液(アドテック社製、スウェリングディップ セキュリガントP)にて5分間膨潤させた後、80℃に設定した粗化液(75g/L過マンガン酸ナトリウム、50g/L水酸化ナトリウムを含有する溶液)に15分浸漬した(処理回数2回)。
条件4:基板を80℃に設定した膨潤液(アドテック社製、スウェリングディップ セキュリガントP)にて5分間膨潤させた後、80℃に設定した粗化液(75g/L過マンガン酸ナトリウム、50g/L水酸化ナトリウムを含有する溶液)に15分浸漬した(処理回数3回)。
【0119】
粗化処理を行った基板上に、パラジウム触媒、無電解銅メッキ液を用いて35℃、10分の条件で無電解メッキを行い、厚さ0.8μmの無電解メッキ銅層を形成した。
更に、この上に、2A/dm2、70分の条件で電気メッキを行い、厚さ24μmの電気メッキ銅層を形成した。
【0120】
(実施例2)
ビスフェノールF型エポキシ樹脂(大日本インキ化学工業社製、エピクロン830LVP)57.7重量部、BTレジン(三菱瓦斯化学社製、BT2100B)15.7重量部及びネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル15.7重量部からなるエポキシ樹脂組成物89.1重量部、カップリング剤としてγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(日本ユニカー社製、A−187)2.1重量部、硬化触媒としてアセチルアセトン鉄(日本化学産業社製)1.1重量部、層状珪酸塩としてジステアリルジメチル4級アンモニウム塩で有機化処理が施された天然モンモリロナイト(粒子径=1μm)7.7重量部、難燃剤として水酸化マグネシウム(粒子径=1μm)70重量部、及び、有機溶媒としてメチルエチルケトン(和光純薬社製、特級)200重量部をビーカーに加え、攪拌機にて1時間攪拌した後、脱泡し、樹脂ワニス1を得た。
【0121】
一方、ビスフェノールF型エポキシ樹脂(大日本インキ化学工業社製、エピクロン830LVP)57.7重量部、BTレジン(三菱瓦斯化学社製、BT2100B)15.7重量部及びネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル15.7重量部からなるエポキシ樹脂組成物89.1重量部、カップリング剤としてγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(日本ユニカー社製、A−187)2.1重量部、硬化触媒としてアセチルアセトン鉄(日本化学産業社製)1.1重量部、層状珪酸塩としてジステアリルジメチル4級アンモニウム塩で有機化処理が施された膨潤性フッ素マイカ(粒子径=0.1μm)7.7重量部、難燃剤として水酸化マグネシウム(粒子径=0.1μm)70重量部、及び、有機溶媒としてメチルエチルケトン(和光純薬社製、特級)200重量部をビーカーに加え、攪拌機にて1時間攪拌した後、脱泡し、樹脂ワニス2を得た。
【0122】
得られた樹脂ワニス2を鋳型に入れた状態で60℃で3時間加熱して溶媒を留去した後、110℃で3時間加熱し、更に160℃で3時間加熱して硬化させ、厚さ2mm及び100μmの板状成形体を作製した。
【0123】
別に、得られた樹脂ワニス1をドクターブレード法により、ポリエチレンテレフタレートフィルム上に塗工し、乾燥させて厚さ4μmのシー卜を得た。なお、ドクターブレード条件は、乾燥温度=70℃、スピード=0.3m/minとした。
次に、樹脂ワニス2を同様の条件のドクターブレード法により、樹脂ワニス1からなるシート上に塗工し、乾燥させて厚さ20μmのシー卜を得た。
得られたシートをコア材(厚さ0.6mm:利昌工業社製)の両面に、90℃、10sec、圧力1kg/cm2の条件で真空ラミネートした。ラミネート後、ポリエチレンテレフタレートフィルムを取り除き、170℃、60minで熱硬化して、基板を得た。
【0124】
得られた基板に、実施例1の条件2により粗化処理を施した。
粗化処理を行った基板上に、パラジウム触媒、無電メッキ液35℃、10分の条件で無電解メッキを行い、厚さ0.8μmの無電解メッキ銅層を形成した。
更に、この上に、2A/dm2、70分の条件で電気メッキを行い、厚さ24μmの電気メッキ銅層を形成した。
【0125】
(実施例3)
膨潤性フッ素マイカ(コープケミカル社製、ソマシフMAE−100)7.7重量部を0.5重量部とした以外は実施例1と同様にして、樹脂ワニスを調製し、これを用いて厚さ2mm及び100μmの板状成形体を作製した。
【0126】
別に、得られた樹脂ワニス1をドクターブレード法により、ポリエチレンテレフタレートフィルム上に塗工し、乾燥させて厚さ4μmのシー卜を得た。なお、ドクターブレード条件は、乾燥温度=70℃、スピード=0.3m/minとした。
次に、樹脂ワニス2を同様の条件のドクターブレード法により、樹脂ワニス1からなるシート上に塗工し、乾燥させて厚さ20μmのシー卜を得た。
得られたシートをコア材(厚さ0.6mm:利昌工業社製)の両面に、90℃、10sec、圧力1kg/cm2の条件で真空ラミネートした。ラミネート後、ポリエチレンテレフタレートフィルムを取り除き、170℃、60minで熱硬化して、基板を得た。
【0127】
得られた基板に、以下の条件により粗化処理を施した。
基板を80℃に設定した膨潤液(アドテック社製、スウェリングディップ セキュリガントP)にて5分間膨潤させた後、80℃に設定した粗化液(50g/L過マンガン酸ナトリウム、30g/L水酸化ナトリウムを含有する溶液)に浸漬した。
【0128】
粗化処理を行った基板上に、パラジウム触媒、無電解銅メッキ液を用いて35℃、10分の条件で無電解メッキを行い、厚さ0.8μmの無電解メッキ銅層を形成した。
更に、この上に、2A/dm2、70分の条件で電気メッキを行い、厚さ24μmの電気メッキ銅層を形成した。
【0129】
(実施例4)
メチルエチルケトン(和光純薬社製、特級)200重量部を100重量部とした以外は実施例1と同様にして、樹脂ワニスを調製し、これを用いて厚さ2mm及び100μmの板状成形体を作製した。
【0130】
別に、得られた樹脂ワニス1をドクターブレード法により、ポリエチレンテレフタレートフィルム上に塗工し、乾燥させて厚さ4μmのシー卜を得た。なお、ドクターブレード条件は、乾燥温度=70℃、スピード=0.3m/minとした。
次に、樹脂ワニス2を同様の条件のドクターブレード法により、樹脂ワニス1からなるシート上に塗工し、乾燥させて厚さ20μmのシー卜を得た。
得られたシートをコア材(厚さ0.6mm:利昌工業社製)の両面に、90℃、10sec、圧力1kg/cm2の条件で真空ラミネートした。ラミネート後、ポリエチレンテレフタレートフィルムを取り除き、170℃、60minで熱硬化して、基板を得た。
【0131】
得られた基板に、実施例3と同様の条件により粗化処理を施した。
粗化処理を行った基板上に、パラジウム触媒、無電解銅メッキ液を用いて35℃、10分の条件で無電解メッキを行い、厚さ0.8μmの無電解メッキ銅層を形成した。
更に、この上に、2A/dm2、70分の条件で電気メッキを行い、厚さ24μmの電気メッキ銅層を形成した。
【0132】
(実施例5)
難燃剤として水酸化マグネシウム(協和化学工業社製、キスマ5J)70重量部を用いなかった以外は実施例1と同様にして、樹脂ワニスを調製し、これを用いて厚さ2mm及び100μmの板状成形体を作製した。
【0133】
別に、得られた樹脂ワニスをドクターブレード法により、ポリエチレンテレフタレートフィルム上に塗工し、乾燥させて厚さ24μmのシー卜を得た。なお、ドクターブレード条件は、乾燥温度=70℃、スピード=0.3m/minとした。
得られたシートをコア材(厚さ0.6mm:利昌工業社製)の両面に、90℃、10sec、圧力1kg/cm2の条件で真空ラミネートした。ラミネート後、ポリエチレンテレフタレートフィルムを取り除き、170℃、60minで熱硬化して、基板を得た。
【0134】
得られた基板に、実施例1の条件2により粗化処理を施した。
粗化処理を行った基板上に、パラジウム触媒、無電解銅メッキ液を用いて35℃、10分の条件で無電解メッキを行い、厚さ0.8μmの無電解メッキ銅層を形成した。
更に、この上に、2A/dm2、70分の条件で電気メッキを行い、厚さ24μmの電気メッキ銅層を形成した。
【0135】
(実施例6)
N,N−ジメチルホルムアミド(和光純薬社製)243.9重量部に、合成ヘクトライト(コープケミカル社製ルーセンタイトSTN−A)20重量部、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(東都化成社製エポトートYD−8125)40重量部、フェノキシ樹脂(東都化成社製フェノトートYP−55)40重量部、ジシアンジアミド(旭電化工業社製アデカハードナーEH−3636)2.8重量部及び変性イミダゾール(旭電化工業社製アデカハードナーEH−3366)1.2重量部を添加し、撹拌機にて2時間撹拌混合した後、脱泡し、樹脂溶液を得た
。
【0136】
別に、得られた樹脂ワニスをドクターブレード法により、ポリエチレンテレフタレートフィルム上に塗工し、乾燥させて厚さ40μmのシー卜を得た。なお、ドクターブレード条件は、乾燥温度=100℃、スピード=0.3m/minとした。
得られたシートをコア材(厚さ0.6mm:利昌工業社製)の両面に、90℃、10sec、圧力1kg/cm2の条件で真空ラミネートした。ラミネート後、ポリエチレンテレフタレートフィルムを取り除き、170℃、60minで熱硬化して、基板を得た。
また、得られた基板にコロナ放電処理機(サイリスター・インバーター方式、 HFS402、春日電機社製)を用い、空気中でコロナ放電処理(処理条件:印加エネルギー6000J/m2、処理速度20m/分、温度20℃)を行った。
【0137】
このようにして得られた基板に、以下の条件により粗化処理を施した。
基板を80℃に設定した膨潤液(アドテック社製、スウェリングディップ セキュリガントP)にて5分間膨潤させた後、80℃に設定した粗化液(50g/L過マンガン酸ナトリウム、30g/L水酸化ナトリウムを含有する溶液)に浸漬した。
【0138】
粗化処理を行った基板上に、パラジウム触媒、無電解銅メッキ液を用いて35℃、10分の条件で無電解メッキを行い、厚さ0.8μmの無電解メッキ銅層を形成した。
更に、この上に、2A/dm2、70分の条件で電気メッキを行い、厚さ24μmの電気メッキ銅層を形成した。
【0139】
(実施例7)
N,N−ジメチルホルムアミド(和光純薬社製)1110.9重量部に、合成ヘクトライト(コープケミカル社製ルーセンタイトSTN−A)84.31重量部、エポキシ変性ブタジエンゴム(日本曹達社製EPB−13)384重量部、フェノールノボラック樹脂(大日本インキ社製、フェノライトLA−1356)93.75重量部および合成シリカ(アドマテックス社製アドマファインSO−E2)55.88重量部を添加し、撹拌機にて2時間撹拌混合した後、脱泡し樹脂溶液を得た。
【0140】
別に、得られた樹脂ワニスをドクターブレード法により、ポリエチレンテレフタレートフィルム上に塗工し、乾燥させて厚さ40μmのシー卜を得た。なお、ドクターブレード条件は、乾燥温度=100℃、スピード=0.3m/minとした。
得られたシートをコア材(厚さ0.6mm:利昌工業社製)の両面に、90℃、10sec、圧力1kg/cm2の条件で真空ラミネートした。ラミネート後、ポリエチレンテレフタレートフィルムを取り除き、170℃、60minで熱硬化して、基板を得た。
【0141】
次に、得られた基板に、以下の条件により粗化処理を施した。
基板を80℃に設定した膨潤液(アドテック社製、スウェリングディップ セキュリガントP)にて5分間膨潤させた後、80℃に設定した粗化液(50g/L過マンガン酸ナトリウム、30g/L水酸化ナトリウムを含有する溶液)に浸漬した。
【0142】
粗化処理を行った基板上に、パラジウム触媒、無電解銅メッキ液を用いて35℃、10分の条件で無電解メッキを行い、厚さ0.8μmの無電解メッキ銅層を形成した。
更に、この上に、2A/dm2、70分の条件で電気メッキを行い、厚さ24μmの電気メッキ銅層を形成した。
【0143】
(比較例1)
膨潤性フッ素マイカ(コープケミカル社製、ソマシフMAE−100)7.7重量部の代わりに平均粒子径50μmの炭酸カルシウム7.7重量部を用いたこと以外は実施例1と同様にして、樹脂ワニスを調製し、これを用いて厚さ2mm及び100μmの板状成形体を作製した。
【0144】
別に、得られた樹脂ワニスをドクターブレード法により、ポリエチレンテレフタレートフィルム上に塗工し、乾燥させて厚さ24μmのシー卜を得た。なお、ドクターブレード条件は、乾燥温度=70℃、スピード=0.3m/minとした。
得られたシートをコア材(厚さ0.6mm:利昌工業社製)の両面に、90℃、10sec、圧力1kg/cm2の条件で真空ラミネートした。ラミネート後、ポリエチレンテレフタレートフィルムを取り除き、170℃、60minで熱硬化して、基板を得た。
【0145】
得られた基板に、実施例1の条件2により粗化処理を施した。
粗化処理を行った基板上に、パラジウム触媒、無電解銅メッキ液を用いて35℃、10分の条件で無電解メッキを行い、厚さ0.8μmの無電解メッキ銅層を形成した。
更に、この上に、2A/dm2、70分の条件で電気メッキを行い、厚さ24μmの電気メッキ銅層を形成した。
【0146】
実施例1〜7及び比較例1で作製した板状成形体について下記の方法により、層状珪酸塩の平均層間距離、5層以下に分散している層状珪酸塩の割合、燃焼時形状保持性、最大発熱速度、燃焼残渣の被膜強度を評価した。また、得られた銅層形成前の基板の表面の粗化状態、銅層を形成した基板の銅層のはく離接着強度を下記の方法により評価した。
結果を表1に示した。
【0147】
(1)層状珪酸塩の平均層間距離
X線回折測定装置(リガク社製、RINT1100)を用いて、厚さ2mmの板状成形体中の層状珪酸塩の積層面の回折より得られる回折ピークの2θを測定し、下記式(4)のブラックの回折式により、層状珪酸塩の(001)面間隔(d)を算出し、得られたdを平均層間距離(nm)とした。
λ=2dsinθ (4)
式中、λは0.154であり、dは層状珪酸塩の面間隔を表し、θは回折角を表す。
【0148】
(2)5層以下に分散している層状珪酸塩の割合
透過型電子顕微鏡を用いて5万〜10万倍で観察して、一定面積中において観察できる層状珪酸塩の積層集合体の全層数(X)のうち5層以下で分散している層状珪酸塩の層数(Y)を計測し、下記式(3)により5層以下に分散している層状珪酸塩の割合(%)を算出した。
5層以下に分散している層状珪酸塩の割合(%)=(Y/X)×100 (3)
【0149】
(3)燃焼時形状保持性
ASTM E 1354「建築材料の燃焼性試験方法」に準拠して、100mm×100mmに裁断した厚さ2mmの板状成形体にコーンカロリーメーターによって50kW/m2の熱線を照射して燃焼させた。このとき燃焼前後の板状成形体の形状の変化を目視で観察し、下記判定基準により燃焼時形状保持性を評価した。
○:形状変化は微少であった。
×:形状変化が激しかった。
【0150】
(4)最大発熱速度及び燃焼残渣の被膜強度
ASTM E 1354「建築材料の燃焼性試験方法」に準拠して、100mm×100mmに裁断した厚さ2mmの板状成形体にコーンカロリーメーターによって50kW/m2の熱線を照射して燃焼させた。このときの最大発熱速度(kW/m2)を測定した。また、強度測定装置を用いて、燃焼残渣を速度0.1cm/sで圧縮し、燃焼残渣の被膜強度(kPa)を測定した。
【0151】
(5)粗化状態
断面を走査形電子顕微鏡(SEM)を用いて観察することにより、表面の凹凸を測定し、凸部の高さの平均値を求めた。
【0152】
(6)はく離接着強度
カッターを用いて基板表面に形成された銅層を1cm幅でカットし、引張速度50m/minの条件ではく離接着強度を測定した。
【0153】
【表1】
【0154】
表1より、実施例1〜7で作製した板状成形体は、いずれも含有する層状珪酸塩の平均層間距離が3mm以上であり、かつ、5層以下の積層体として分散している層状珪酸塩の割合が10%以上であり、燃焼時の形状保持性に優れていた。また、難燃被膜となる焼結体を形成しやすかったことから、最大発熱速度が遅く、燃焼残渣の被膜強度も4.9kPa以上であった。これに対し、層状珪酸塩の代わりに炭酸カルシウムを用いて作製した比較例1の板状成形体は、炭酸カルシウムが層状に分散しておらず、燃焼時の形状保持性が悪く、最大発熱速度がかなり速く、燃焼残渣の被膜強度が極端に低かった。
更に、表面に粗化処理を施した場合、実施例1〜7で作製した基板の粗化状態は、いずれも1μm以上の凹凸があり、はく離接着強度も3.9N/cm以上と優れていた。これに対して、比較例1で作製した基板では、形成された凹凸も小さく、はく離接着強度も低かった。
【0155】
【発明の効果】
本発明によれば、力学的物性、寸法安定性、耐熱性等に優れ、特に燃焼時の形状保持効果による優れた難燃性を有し、更に表面に金属配線を形成したときに金属配線の密着性に優れている樹脂シートを提供できる。
Claims (18)
- 熱硬化性樹脂、光硬化性樹脂、樹脂硬化物及び熱可塑性樹脂からなる群より選択される少なくとも1種の樹脂100重量部と層状珪酸塩0.1〜100重量部とを含有する樹脂シートであって、
表面に無電解メッキ、電気メッキ、スパッタリング又は真空蒸着により金属層を形成したときの前記金属層のはく離接着強度が3.9N/cm以上であることを特徴とする樹脂シート。 - 硬化した樹脂硬化物を含む硬化性樹脂又は硬化した樹脂硬化物からなる樹脂100重量部と層状珪酸塩0.1〜100重量部とを含有する樹脂シートであって、
表面に無電解メッキ、電気メッキ、スパッタリング又は真空蒸着により金属層を形成したときの前記金属層のはく離接着強度が3.9N/cm以上であることを特徴とする請求項1記載の樹脂シート。 - 熱硬化性樹脂は、エポキシ樹脂、熱硬化型変性ポリフェニレンエーテル系樹脂、熱硬化性ポリイミド樹脂、ユリア樹脂、アリル樹脂、ケイ素樹脂、ベンゾオキサジン系樹脂、フェノール樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、及び、ビスマレイミドトリアジン樹脂からなる群より選択される少なくとも1種であることを特徴とする請求項1又は2記載の樹脂シート。
- 熱可塑性樹脂は、ポリフェニレンエーテル系樹脂、官能基が変性されたポリフェニレンエーテル系樹脂、ポリフェニレンエーテル系樹脂又は官能基が変性されたポリフェニレンエーテル系樹脂とポリスチレン系樹脂との混合物、脂環式炭化水素系樹脂、熱可塑性ポリイミド系樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリエーテルサルフォン樹脂、ポリアミドイミド樹脂、及び、ポリエステルイミド樹脂からなる群より選択される少なくとも1種であることを特徴とする請求項1又は3記載の樹脂シート。
- 層状珪酸塩は、モンモリロナイト、ヘクトライト及び膨潤性マイカからなる群より選択される少なくとも1種であることを特徴とする請求項1、2、3又は4記載の樹脂シート。
- 層状珪酸塩は膨潤性フッ素マイカであることを特徴とする請求項1、2、3、4又は5記載の樹脂シート。
- 層状珪酸塩は、炭素数6以上のアルキルアンモニウムイオンを含有するものであることを特徴とする請求項1、2、3、4、5又は6記載の樹脂シート。
- 層状珪酸塩は、広角X線回折測定法により測定される(001)面の平均層間距離が3nm以上であり、かつ、一部又は全部が5層以下に分散していることを特徴とする請求項1、2、3、4、5、6又は7記載の樹脂シート。
- 更に、ハロゲン系組成物を含有しない難燃剤0.1〜100重量部を含有することを特徴とする請求1、2、3、4、5、6、7又は8記載の樹脂シート。
- 難燃剤は、金属水酸化物であることを特徴とする請求項9記載の樹脂シート。
- 50kW/m2の輻射加熱条体で30分間加熱することにより燃焼させた燃焼残渣を速度0.1cm/sで圧縮した際の降伏点応力が4.9kPa以上であることを特徴とする請求項1、2、3、4、5、6、7、8、9又は10記載の樹脂シート。
- 少なくとも一方の面の表面部分は、有機成分比率が全体の平均の有機成分比率以上であることを特徴とする請求項1、2、3、4、5、6、7、8、9、10又は11記載の樹脂シート。
- 請求項1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11又は12記載の樹脂シートを製造する方法であって、
熱硬化性樹脂、光硬化性樹脂、樹脂硬化物及び熱可塑性樹脂からなる群より選択される少なくとも1種の樹脂100重量部1に対して層状珪酸塩0.1〜100重量部及び有機溶媒30〜1000重量部を混合して樹脂ワニス組成物を作製する工程と、
前記樹脂ワニス組成物から前記有機溶媒を留去する工程と
を有することを特徴とする樹脂シートの製造方法。 - 更に、樹脂シートの表面を酸化剤により粗化する工程を有することを特徴とする請求項13記載の樹脂シートの製造方法。
- 樹脂シートの表面を酸化剤により粗化する工程は、60〜70g/L過マンガン酸溶液又は過マンガン酸塩溶液、40〜80g/L水酸化ナトリウム溶液を用いて、処理温度70〜85℃で1回又は2回処理することにより行うことを特徴とする請求項14記載の樹脂シートの製造方法。
- 予め樹脂シート上に層状珪酸塩又は難燃剤として金属水酸化物が粒子径0.5μm以上になるように分散した熱硬化性樹脂、光硬化性樹脂、樹脂硬化物及び熱可塑性樹脂からなる群より選択される少なくとも1種の樹脂からなる層を形成しておくことを特徴とする請求項14又は15記載の樹脂シートの製造方法。
- 請求項1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11又は12記載の樹脂シートを用いてなることを特徴とするプリント多層基板。
- 請求項1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11又は12記載の樹脂シートを用いてなることを特徴とするビルドアップ基板。
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