JP2004051828A - 導電性熱可塑性エラストマー組成物、導電性熱可塑性エラストマー組成物の製造方法、及び導電性ローラ - Google Patents
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Abstract
【解決手段】熱可塑性樹脂あるいは/及び熱可塑性エラストマー中に、架橋可能なゴムあるいは/及び熱可塑性エラストマーを動的架橋し分散させた熱可塑性エラストマー組成物(A)と、ポリエーテルを含むブロック共重合体樹脂及び金属塩を含むイオン導電性導電剤(B)と、カーボンブラック(C)とを含み、70℃、22時間の圧縮永久歪みが40%以下、かつ、1000Vで測定したときの体積固有抵抗値が10の8乗Ω・cm以下である導電性熱可塑性エラストマー組成物を用いて導電性ローラを作成する。
【選択図】 図1
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、導電性熱可塑性エラストマー組成物、導電性熱可塑性エラストマー組成物の製造方法、及び導電性ローラに関し、詳しくは、組成物の配合組成や配合方法を改良し、複写機、プリンター等の駆動ローラ等に有効な導電性ローラを得るものである。
【0002】
【従来の技術】
エラストマーに導電性を付与する方法としては、ポリマー中に金属酸化物の粉末やカーボンブラック等の導電性充填剤を配合した電子導電性ポリマー組成物を用いる方法と、ウレタンゴム、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)、エピクロルヒドリンゴム等のイオン導電性ポリマー組成物を用いる方法がある。
【0003】
電子導電性ポリマー組成物を導電性ローラに用いた場合、導電性充填剤の添加量のわずかな変化により電気抵抗が急激に変化する領域があるため、電気抵抗の制御が非常に困難になるという問題がある。その上、ポリマー中で導電性充填剤が均一に分散し難いことから、導電性ローラの周方向や幅方向で電気抵抗値がばらつきを持つという問題もある。
【0004】
また導電性充填剤を配合した電子導電性ポリマー組成物を用いた導電性ローラの電気抵抗値は印加電圧に依存する問題がある。特に導電性充填剤としてカーボンブラックを用いた場合これらの傾向が顕著に現れる。さらには、これらカーボンブラック等の導電性充填剤を配合しすぎると成形加工も行いにくくなる。
【0005】
電子導電性ポリマー組成物を用いた導電性ローラは、上記の様に電気抵抗値のばらつきの問題があることから、デジタル化、カラー化等、高画質化の技術のめざましい最近においては、電子導電性ポリマー組成物ではなく、イオン導電性ポリマー組成物の方が特に好んで用いられる傾向にある。
【0006】
イオン導電性ポリマー組成物で導電性ローラ用に実用化されているものは、加硫ゴム組成物がほとんどであり、エピクロルヒドリンゴムを使用した導電性ローラは低抵抗値及び良好な物性を有している。また一部導電性ローラとして実用化されているイオン導電性熱可塑性エラストマーは塩素系のものである。
【0007】
また、特開平8−183866号には、オレフィン系熱可塑性エラストマーに永久帯電防止剤を加えた熱可塑性エラストマーシ−ト状物が開示されている。その他、樹脂の帯電防止剤としては、導電性の可塑剤を用いたブリード型のものがある。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、加硫ゴム組成物はリサイクルできないという欠点がある。さらにエピクロルヒドリンゴム及び塩素系のイオン導電性熱可塑性エラストマーは塩素を含有しており、廃棄の時点で塩化水素等の有害ガスの発生や場合によってはダイオキシンが生成するという問題がある。塩素系のイオン導電性熱可塑性エラストマーは圧縮永久歪みも大きく、力学特性が十分ではない。
【0009】
そして上記の特開平8−183866号に記載の熱可塑性エラストマーシ−ト状物は電気抵抗値が高く、市販品の熱可塑性エラストマーをそのまま用いており、圧縮永久歪みが大きく、導電性ローラに使用するには性能が不十分である。また、永久帯電防止剤を配合することにより、体積固有抵抗値の低減ではなく、表面抵抗値を下げ帯電防止性能を実現するものであり、電気抵抗が高いという問題がある。また、圧縮永久ひずみが大きく、導電性ローラとして良好な物性値を得られないという問題がある。
【0010】
また、上記の導電性の可塑剤を用いたブリード型のものは機械的物性を損ない、圧縮永久歪みが悪化する上に感光体を激しく汚染してしまい、複写機やプリンタまわりの部品用に使用することができない。さらには内分泌かく乱物質の疑いがあるフタル酸エステル等のエステル系可塑剤を含有することにより柔軟性を発現している点にも問題がある。
【0011】
本発明は上記課題に鑑みてなされたもので、ゴムのような弾性、柔軟性と樹脂のような良好な成形性を併せ持つと共に、高い導電性を実現し、かつ成形加工性に優れた導電性熱可塑性エラストマー組成物及びその製造方法を提供することを課題とし、さらに電子写真機構の駆動ローラとして好適に用いられる導電性ローラの提供を課題としている。
【0012】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため、本発明は、熱可塑性樹脂あるいは/及び熱可塑性エラストマー中に、架橋可能なゴムあるいは/及び熱可塑性エラストマーを動的架橋し分散させた熱可塑性エラストマー組成物(A)と、
ポリエーテルを含むブロック共重合体樹脂及び金属塩を含むイオン導電性導電剤(B)と、
カーボンブラック(C)とを含み、
70℃、22時間の圧縮永久歪みが40%以下、かつ、1000Vで測定したときの体積固有抵抗値が10の8乗Ω・cm以下であることを特徴とする導電性熱可塑性エラストマー組成物を提供している。
【0013】
本発明者は、鋭意研究の結果、熱可塑性樹脂あるいは/及び熱可塑性エラストマー中に、架橋可能なゴムあるいは/及び熱可塑性エラストマーを動的架橋させて得た熱可塑性エラストマー組成物(A)のマトリクス中に、ポリエーテルを含むブロック共重合体樹脂と金属塩を含むイオン導電性導電剤(B)を分散させると共に、カーボンブラック(C)を含有させることにより、ゴムのような耐久性、弾性、柔軟性と樹脂のような成形性を併せ持つと共に、非常に高い導電性を有する導電性熱可塑性エラストマー組成物を得られることを見出した。
【0014】
具体的には、動的架橋されたドメインには上記イオン導電性導電剤(B)は混入されにくく、主として上記熱可塑性エラストマー組成物(A)のマトリクス成分に上記イオン導電性導電剤(B)の導電剤が偏在する。よって、上記イオン導電性導電剤の添加によりゴムの架橋は影響を受けず、物性の低下(圧縮永久歪みの低下等)を抑制でき、良好な成形加工性を実現できる。さらには、カーボンブラック(C)を添加しているので、導電性をより高めることができる。
【0015】
詳細には、上記イオン導電性導電剤(B)とカーボンブラック(C)とを組み合わせると、例えば、ごく少量のカーボンブラックを配合することによっても、導電性を大きく高めるできる。また、カーボンブラックの配合が少量であれば、圧縮永久歪み、流動性も悪化しにくく、硬くなりにくい。
【0016】
すなわち本発明の導電性熱可塑性エラストマー組成物では、高価なイオン導電性導電剤を増量することなく、少量のカーボンブラックを配合することにより、導電性を大きく改善できる。よってコスト的にも有利に、かつ容易に低抵抗値の導電性ローラを製造できる。また本発明の導電性熱可塑性エラストマー組成物は熱可塑性を有しているのでリサイクルも可能である上に、流動性にも富んでいるため、成形加工性にも優れている。
【0017】
よって、上記構成により、本発明の導電性熱可塑性エラストマー組成物は、70℃、22時間の圧縮永久歪みが40%以下であり、かつ、1000Vで測定したときの体積固有抵抗値が10の8乗Ω・cm以下とすることができる。
【0018】
JISK6262に記載の加硫ゴムの永久歪み試験法において、測定温度70℃、測定時間22時間で測定した圧縮永久歪みの大きさが40%以下としているのは、上記圧縮永久ひずみの値が40%より大きいと、導電性ローラ等を成形した時の寸法変化が大きくなりすぎて実用に適さないためである。なお、好ましくは30%以下であり、小さければ小さいほど良い。
【0019】
印加電圧1000Vのもとで測定したJIS K6911に記載の体積固有抵抗値が10の8乗[Ω・cm]以下であるのは、10の8乗Ωcmより大きいと、導電性ローラ、特に高導電性が要求される駆動ローラ等に用いる際に、実用に適さなくなるという問題があるためである。また、体積固有抵抗値は、10の6乗Ωcm以下であるのが好ましい。
なお、体積固有抵抗値の測定条件は、23℃相対湿度55%の恒温恒湿条件下、印加電圧1000Vのもとであり、JIS K6911に記載の体積固有抵抗値としている。
【0020】
組成物の全重量に対して、上記イオン導電性導電剤(B)を5重量%以上45重量%以下の割合で配合していることが好ましい。
上記範囲としているのは、上記範囲より少ないと電気抵抗値低減の効果が生じにくいためである。一方、上記範囲より多いと硬くなりやすいためであり、またイオン導電性導電剤はあるレベル以上添加しても導電性はほとんど変化しなくなり、却って、イオン導電性導電剤が高価であるためコスト的に不利になることがあるためである。より好ましくは10重量%以上30重量%以下である。
また、上記熱可塑性エラストマー組成物(A)中のマトリクス成分100重量部に対して、上記イオン導電性導電剤(B)は10重量部以上150重量部以下が好ましい。
なお、上記同様の理由により、上記イオン導電性導電剤(B)は、体積分率で8%以上45%以下、好ましくは10%以上40%以下、より好ましくは15%以上40%以下、さらに好ましくは20%以上40%以下の割合で含んでいるのが良い。ここで言う体積分率とは、導電性熱可塑性エラストマー組成物中の樹脂マトリクス相中の体積%である。樹脂マトリクス中の体積%は動的架橋により架橋してドメインを形成するゴムや熱可塑性エラストマーを除き、樹脂マトリクスになり得る組成を全体として考えたときの比率である。
【0021】
また、組成物の全重量に対して、上記カーボンブラック(C)を1.0重量%以上10.0重量%以下の割合で配合していることが好ましい。
上記範囲としているのは、上記範囲より少ないと電気抵抗値低減の効果が生じにくいためである。一方、上記範囲より多いと、成形時の流動性が悪化したり、硬度が硬くなったり、圧縮永久歪み・加工性の悪化等、物性に問題が生じやすいためである。より好ましくは2重量%以上5重量%以下である。
また、上記熱可塑性エラストマー組成物(A)中のマトリクス成分100重量部に対して、上記カーボンブラック(C)は2重量部以上25重量部以下が好ましい。
【0022】
上記ポリエーテルを含むブロック共重合体樹脂と金属塩とを含むイオン導電性導電剤(B)は、ポリエーテル構造を有することにより、金属塩等のイオンを安定化し、電気抵抗を下げる効果が著しく大きい。また、ブロック中のポリエーテル以外の他の構造により、基材ポリマーとある程度の相容性を確保することができるため、基材の熱可塑性エラストマー組成物の良好な物性を悪化させにくく、良好な物性と成形加工性を得ることができる。このように、上記ポリエーテルを含むブロック共重合体樹脂と金属塩とを含むイオン導電性導電剤(B)は、その他の各種帯電防止剤に比べ、電気抵抗を低下させる効果が著しく大きい上に、基材となる導電性熱可塑性エラストマー組成物の良好な物性を保持することができる。
【0023】
上記イオン導電性導電剤(B)中のポリエーテルを含むブロック共重合体樹脂が、ポリエーテルブロックアミド共重合体樹脂、ポリエーテルエステルアミド樹脂の変性物、及びポリエーテルブロックポリオレフィン樹脂からなる群から選択される1種以上であることが好ましい。これにより、導電性熱可塑性エラストマー組成物を高温で混練後、射出成形や押し出し成形で導電性ローラ等を成形する際に、オレフィン系樹脂等のマトリクス樹脂中に通電に有利な構造(パーコレーション構造)が作製され、電気抵抗値を従来以上に低減することができる。
【0024】
また、上記金属塩の金属としては、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム塩等が挙げられ、中でもリチウムやナトリウムがイオン解離しやすいため好ましく用いられる。
【0025】
上記イオン導電性導電剤(B)としては、ポリエーテルブロックアミド共重合体樹脂と金属塩とを含むイオン導電性導電剤がより好ましく、このポリエーテルブロックアミド共重合体樹脂としては、ポリエーテルブロックナイロン樹脂がより好ましく、さらに詳細にはポリエーテルブロックナイロン11樹脂、ポリエーテルブロックナイロン12樹脂あるいはポリエーテルブロックナイロン6樹脂が最も好適である。
【0026】
上記カーボンブラック(C)が、導電性カーボンブラックであることが好ましい。導電性カーボンブラックとしては、具体的には、ケッチェンブラックEC、ケッチェンブラックEC−600JD等が挙げられるが、その他、アセチレンブラック等の種々の導電性カーボンブラックを用いることができる。アセチレンブラックの一例としては、デンカブラック(電気化学工業(株))が挙げられる。
【0027】
上記熱可塑性エラストマー組成物(A)は、上記動的架橋により分散される架橋可能なゴムあるいは/及び熱可塑性エラストマーとしてエチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)、ブチルゴム(IIR)、ハロゲン化ブチルゴム(X−IIR)、アクリルゴム、BIMS(イソブチレンとp−メチルスチレンの共重合体を臭素化したゴム)、フッ素ゴム、シリコンゴムから選択される1種以上のゴム成分を用い、
上記熱可塑性樹脂あるいは/及び熱可塑性エラストマーとしてスチレン系熱可塑性エラストマー及びオレフィン樹脂を用いていることが好ましい。
【0028】
上記ゴム成分としては、その他、クロロプレンゴム(CR)、天然ゴム(NR)、ブタジエンゴム(BR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、イソプレンゴム(IR)、アクリロニトリル−ブタジエンゴム(NBR)、エチレンプロピレンゴム、クロロスルフォン化ポリエチレンゴム等を用いることもできる。
特に、EPDMやBIMSを用いることが好ましい。EPDMやBIMSは、主鎖が飽和炭化水素からなり、主鎖に二重結合を含まないため、高濃度オゾン雰囲気、光線照射等の環境下に長時間曝されても、分子主鎖切断が起こりにくい。よって、耐オゾン性と耐熱性を向上することができる。
上記動的架橋により分散される架橋可能なゴムあるいは/及び熱可塑性エラストマーとしては、上記ゴム成分以外にも、スチレン−イソプレン−スチレン共重合体、スチレン−ブタジエン−スチレン共重合体、スチレン−ビニルイソプレン−スチレン共重合体等が挙げられる。
【0029】
また、上記ゴム成分100重量部に対して、スチレン系熱可塑性エラストマーを25重量部以上400重量部以下の割合で含有していることが好ましい。
上記範囲としているのは、25重量部より少ないと流動性が乏しく加工しにくいために、動的架橋するとボロボロになり成形が困難なためである。一方、400重量部より多いと圧縮永久ひずみが大きくなりやすいためである。より好ましくは30重量部以上150重量部以下である。
【0030】
上記熱可塑性エラストマー組成物(A)は、上記ゴム成分100重量部に対して、軟化剤を500重量部以下含有していることが好ましい。これにより、適度な柔軟性と弾性を得ることができる。500重量部より多いと動的架橋物の表面から軟化剤がブリードしてきたり、あるいは軟化剤が架橋阻害を起こして、ゴム分が十分に架橋されず、物性が低下しやすいためである。
より好ましくは10重量部以上150重量部以下である。
【0031】
上記熱可塑性エラストマー組成物(A)は、上記ゴム成分100重量部に対して、オレフィン系樹脂を50重量部以下含有していることが好ましい。これにより、表面強度を向上させたり、流動性を良くすることができる。50重量部より多いと導電性ローラ等とした時の硬度が高くなりやすく、圧縮永久ひずみが大きくなりやすいためである。
より好ましくは5重量部以上20重量部以下である。
【0032】
上記オレフィン系樹脂としては、市販のオレフィン系樹脂であれば使用でき、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレンエチルアクリレート樹脂、エチレンビニルアセテート樹脂、エチレンメタクリル酸樹脂、アイオノマー樹脂、ポリエステル系樹脂、塩素化ポリエチレン等が挙げられ、1種または2種以上をブレンドしても良い。また、その他種々の熱可塑性樹脂を用いることもできる。中でも、流動性と相容化能力、適度な耐擦傷性を付与できるという理由によりポリプロピレンが好ましい。
【0033】
なお、本出願中、ゴム成分の重量部とは、ゴムが非油展ゴムの場合、非油展ゴムの重量部を表し、ゴムが油展ゴムの場合は、油展ゴムからオイル成分の重量を差し引いたゴム成分のみの重量で重量部を表す。また、ゴムが油展ゴムと非油展ゴムの混合物の場合は、油展ゴムからオイル成分を差し引いたゴム成分のみの重量と非油展ゴムの重量との合計の重量で重量部を表す。また、良好な機械的物性を得るためには、分子量が極力大きいものが好ましい。
【0034】
上記軟化剤としては、オイル、可塑剤が挙げられる。オイルとしては、例えばパラフィン系、ナフテン系、芳香族系等の鉱物油や炭化水素系オリゴマーからなるそれ自体公知の合成油、またはプロセスオイルを用いることができる。合成油としては、例えば、α−オレフィンとのオリゴマー、ブテンのオリゴマー、エチレンとα−オレフィンとの非晶質オリゴマーが好ましい。可塑剤としては、例えば、ジオクチルフタレート(DOP)、ジブチルフタレート(DBP)、ジオクチルセパケート(DOS)、ジオクチルアジペート(DOA)等を用いることができる。
【0035】
上記動的架橋が樹脂架橋剤を用いて行われているのが好ましい。樹脂架橋剤は加熱等によってゴムに架橋反応を起こさせる合成樹脂であり、硫黄と加硫促進剤とを併用する場合に比べ、ブルームが生じにくく圧縮永久ひずみも小さく、物性低下も小さく、精度維持や耐久性に優れる点で好ましい。さらに、硫黄架橋系に比べ架橋時間が短いため、押出機内に滞留している短い時間内に動的架橋を進行させることができる。特に、フェノール樹脂が好ましい。
【0036】
その他の樹脂架橋剤としては、メラミン・ホルムアルデヒド樹脂、トリアジン・ホルムアルデヒド縮合物、ヘキサメトキシメチル・メラミン樹脂等が挙げられ、特に上記フェノール樹脂が好適である。
フェノール樹脂の具体例としては、フェノール、アルキルフェノール、クレゾール、キシレノール、レゾルシン等のフェノール類と、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、フルフラール等のアルデヒド類との反応により合成される各種フェノール樹脂が挙げられる。特に、ベンゼンのオルト位又はパラ位にアルキル基が結合したアルキルフェノールと、ホルムアルデヒドとの反応によって得られるアルキルフェノール・ホルムアルデヒド樹脂が、ゴムとの相溶性に優れるとともに、反応性に富んでいて架橋反応開始時間を比較的早くできるので好ましい。アルキルフェノール・ホルムアルデヒド樹脂のアルキル基は、通常、炭素数が1から10のアルキル基であり、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等が挙げられる。また、硫化−p−第三ブチルフェノールとアルデヒド類とを付加縮合させた変性アルキルフェノール樹脂や、アルキルフェノール・スルフィド樹脂も樹脂架橋剤として使用可能である。樹脂架橋剤の配合量は、
上記ゴム成分100重量部に対して、2重量部以上20重量部以下、さらには5重量部以上15重量部以下が好ましい。
【0037】
上記スチレン系熱可塑性エラストマーは、水素添加スチレン系熱可塑性エラストマーであるのが好ましい。水素添加スチレン系熱可塑性エラストマーは水素添加により二重結合が飽和されており、低硬度で耐久性に優れている。このように、二重結合が無くなっているために、動的架橋に際して架橋剤と反応して架橋されることがないのでゴムの架橋を阻害せず、動的架橋後のエラストマー組成物が所望の可塑性を発現することができる。従って、本発明には動的架橋に際して架橋されない程度に水素添加されているスチレン系熱可塑性エラストマーを用いるのが好ましい。また、機械的強度の点から、分子量は8万以上が好ましい。なお、加工性を失わない範囲で、水添されていない熱可塑性エラストマー(SBS、SIS等)を加えることもできる。
【0038】
上記水素添加スチレン系熱可塑性エラストマーとしては、例えばスチレン−エチレン−エチレン/プロピレン−スチレン共重合体(SEEPS)、スチレン−エチレン/プロピレン−スチレン共重合体(SEPS)、スチレン−エチレン/ブチレン−スチレン共重合体(SEBS)が挙げられる。なお、(ポリ)スチレン系以外にも、ポリオレフィン系、ポリエステル系、ポリアミド系、ポリウレタン系等の種々の熱可塑性エラストマーを用いることができる。
【0039】
架橋反応を適切に行うために架橋活性剤を用いてもよい。架橋活性剤としては金属酸化物が使用され、特に酸化亜鉛、炭酸亜鉛が好ましい。
【0040】
上記動的架橋は、上記樹脂架橋以外に、ブルームを起こし難く、圧縮永久歪みが小さい等の理由により過酸化物架橋も好ましく行われる。なお、硫黄架橋とすることもできる。
【0041】
また、本発明は、熱可塑性樹脂あるいは/及び熱可塑性エラストマー中に、架橋可能なゴムあるいは/及び熱可塑性エラストマーを動的架橋し分散させた熱可塑性エラストマー組成物(A)と、
ポリエーテルを含むブロック共重合体樹脂及び金属塩を含むイオン導電性導電剤(B)と、
カーボンブラック(C)とを含む導電性熱可塑性エラストマー組成物の製造方法であって、
少なくとも、上記熱可塑性エラストマー組成物(A)と上記イオン導電性導電剤(B)との混合前に、上記熱可塑性エラストマー組成物(A)の動的架橋を行っていることを特徴とする導電性熱可塑性エラストマー組成物の製造方法を提供している。
【0042】
本発明者は、鋭意研究の結果、上記イオン導電性導電剤(B)は、動的架橋したドメイン相の方には入りにくく、マトリクス相の方に選択的に混入されるという特徴を持つことを見出した。このため、上記製法によれば、導電性熱可塑性エラストマー組成物のマトリクスの方にイオン導電性導電剤(B)が選択的に配置されることとなり、イオン導電性導電剤(B)を、マトリクスとなる熱可塑性樹脂あるいは/及び熱可塑性エラストマー中に偏在させることができる。その結果、イオン導電性導電剤(B)を配合してもゴムの架橋度に影響を与えないので、圧縮永久ひずみの増大を抑制することができ、かつ、不必要にイオン導電性導電剤(B)の使用量を増やすことがなく、このため硬度の上昇を抑えることができ、かつ、原材料コストを抑えることができる。これにより表面側に上記イオン導電性導電剤(B)を配置することもできる。
【0043】
上記イオン導電性導電剤(B)と上記カーボンブラック(C)を熱可塑性エラストマー組成物(A)に混練する際に、上記イオン導電性導電剤(B)と上記カーボンブラック(C)を同時に投入することも可能であるが、
上記イオン導電性導電剤(B)と上記カーボンブラック(C)とを混練りし、イオン導電性導電剤(B)中にカーボンブラック(C)を均一に分散させて導電性複合体を得た後に、上記導電性複合体と上記熱可塑性エラストマー組成物(A)とを混練していることが好ましい。
【0044】
予めイオン導電性導電剤(B)とカーボンブラック(C)とを混練することにより、イオン導電性導電剤(B)中にカーボンブラック(C)が分散し、より少量のカーボンブラックで導電性を向上させることができる。
【0045】
動的架橋時の加熱温度は160℃〜200℃、加熱時間は1〜20分であるのが良い。また、上記イオン導電性導電剤混入時の加熱温度は160℃〜220℃、加熱時間は1〜20分であるのが良い。上記動的架橋により得られた熱可塑性エラストマー組成物(A)は、後工程のために、ペレット状とするのが良い。これにより、良好な成形性を得ることができる。
【0046】
動的架橋や混練には、2軸押出機、バンバリーミキサー、ニーダー等を使用可能である。なお、イオン導電性導電剤を含有させた状態で動的架橋することもできる。
【0047】
さらに、本発明は、本発明の導電性熱可塑性エラストマー組成物を成形して得られることを特徴とする導電性ローラを提供している。
本発明の導電性熱可塑性エラストマー組は、非常に低い体積固有抵抗を有し、かつ圧縮永久ひずみが小さく、低硬度である点で優れているので、これを用いた導電性ローラにおいては、電気抵抗値が低いため、プリンター、静電式複写機、ファクシミリ装置、ATM等の電子写真装置に用いられる。特に、カラー用の転写ローラや帯電ローラ、トナー供給ローラや現像ローラ、駆動ローラ等、低い電気抵抗値が要求される場合に、好適に用いられる。
【0048】
中でも、電子写真装置の画像形成機構における駆動ローラとして最適である。駆動ローラとは、電子写真装置の画像形成機構の転写ベルトを内側から駆動するためのローラで、低圧縮永久ひずみであり、高精度であることが要求される。
【0049】
本発明の導電性熱可塑性エラストマー組成物は、流動性に優れるため、チューブ状に押し出したり、射出成形も可能であり、成形加工性に非常に優れている。上記導電性ローラ等は従来公知の方法により作製することができ、具体的には、以下のような方法が挙げられる。
本発明の導電性熱可塑性エラストマー組成物をペレット化し、該ペレットを射出(インジェクション)成形機により射出成形してチューブ状に成形する。この成形品の表面を研磨した後、所要寸法にカットして導電性ローラとしている。なお、射出成形機のかわりに樹脂用単軸押出機等によってチューブ状に押し出し、必要に応じて研摩し、それをカットすることによってローラとすることもできる。
【0050】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態を図面を参照して説明する。
本実施形態の導電性ローラ1は図2に示される様に導電性熱可塑性エラストマー組成物を円筒状のローラに成形し、その中空部に軸芯2を圧入するか、あるいは両者を接着剤で接合して固定している。
【0051】
そして、この導電性熱可塑性エラストマー組成物は、熱可塑性樹脂あるいは/及び熱可塑性エラストマー中に、架橋可能なゴムあるいは/及び熱可塑性エラストマーを動的架橋し分散させた熱可塑性エラストマー組成物(A)と、ポリエーテルを含むブロック共重合体樹脂及び金属塩を含むイオン導電性導電剤(B)と、カーボンブラック(C)とを含み、70℃、22時間の圧縮永久歪みが22%、かつ、1000Vで測定したときの体積固有抵抗値が10の6乗Ω・cm以下である。また、組成物の全重量に対して、イオン導電性導電剤(B)を15.0重量%、カーボンブラック(C)を2.3重量%の割合で配合している。
【0052】
具体的には、熱可塑性樹脂あるいは/及び熱可塑性エラストマーとしては、ポリプロピレン(PP)及びスチレン−エチレン−エチレン/プロピレン−スチレン共重合体(SEEPS)を用い、架橋可能なゴムあるいは/及び熱可塑性エラストマーとしてエチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)を用いている。また、所要量の軟化剤を配合すると共に、樹脂架橋剤により動的架橋されている。
【0053】
また、上記イオン導電性導電剤(B)としては、チバスペシャルティケミカルズ製のイルガスタットP18を使用した。これは、ベース樹脂がポリアミド12であり、この中にポリアミド12とエーテルのブロック共重合体及び金属塩として過塩素酸ナトリウムを含んでいる。
【0054】
カーボンブラック(C)としては、導電剤カーボンブラックであるケッチェンブラックECを使用している。
【0055】
以下、導電性熱可塑性エラストマー組成物の製造方法について詳述する。
熱可塑性エラストマー組成物(A)の作製において、オイルを含ませたSEEPS、PP、EPDM、架橋剤(タッキロール)、ZnOを2軸1軸押出機に投入し、200℃、200rpmで混練し、出てきた樹脂をペレタイズしている。この時点で、既に、動的架橋は行われている。
また、これとは別に上記イオン導電性導電剤(B)及び上記カーボンブラック(C)を200℃で混練りし、イオン導電性導電剤(B)中にカーボンブラック(C)を均一に分散させて、導電性複合物を得る。
その後に、この導電性複合物を、動的架橋の済んだ上記熱可塑性エラストマー組成物(A)に添加して、200℃、200rpmで、混練りすることにより、本実施形態の導電性熱可塑性エラストマー組成物を製造している。
【0056】
この導電性熱可塑性エラストマー組成物を通常の方法により成形して本実施形態の導電性ローラを製造している。すなわち、導電性熱可塑性エラストマー組成物を押し出し機にてチューブ状に押し出しローラを成形している。
【0057】
このように、導電性ローラ1は、本発明の導電性熱可塑性エラストマー組成物より成形されているため、ゴムのような耐久性、弾性、柔軟性と樹脂のような成形性を併せ持つと共に、高導電性を実現することができる。また、硫黄を含んでおらず、廃棄時に有害ガスを発生することもないため、環境に優しく、かつ、熱可塑性を有するためリサイクル性にも優れている。また、流動性に富んでいるため、成形加工性にも優れている。よって、電子写真装置の駆動ローラとして特に好適に用いることができる。
【0058】
以下、本発明の実施例及び比較例について詳述する。
【0059】
(実施例1)
水素添加スチレン系熱可塑性エラストマーであるクラレ(株)製のセプトン4077(SEEPS)32重量部及びオレフィン樹脂であるポリプロピレン(PP)11重量部に、軟化剤であるパラフィンオイル57重量部を添加して、一晩置き、これをアイペック社製の2軸1軸押出機で、180℃、200rpmで押し出して、ペレット化した。
【0060】
これに酸化亜鉛3.5重量部、樹脂架橋剤を12重量部(田岡化学製のタッキロール201を9重量部とタッキロール250−IIIを3重量部)、ポリプロピレン(PP)を15重量部、さらに住友化学製のエスプレン670F(油展EPDM)を200重量部(この200重量部中、オイル100重量部を含む)、加えて、同上の2軸1軸押出機に供給し、200℃、200rpmで動的架橋を行い、熱可塑性エラストマー組成物(A)を得た。
【0061】
一方、上記イオン導電性導電剤(B)である帯電防止剤(チバスペシャルティケミカルズのイルガスタットP18(ベース樹脂ポリアミド12):この中にポリアミド12とエーテルのブロック共重合体と金属塩を含む)100重量部と、カーボンブラック(C)であるケッチェンブラックEC15重量部とを練って、イオン導電性導電剤(B)中にカーボンブラック(C)を均一に分散させて導電性複合体を得た。
【0062】
この導電性複合体69重量部と、上記の様に既に作成していた熱可塑性エラストマー組成物(A)330.5重量部とを神戸製鋼社製の2軸押出機で200℃、200rpmで混練りした。このようにして、本発明の導電性熱可塑性エラストマー組成物を得た。この組成物の全重量に対して、イオン導電性導電剤(B)は15.0重量%、カーボンブラック(C)は2.3重量%であった。
【0063】
こうして得られた材料を使用し、射出成形で抵抗測定用の平板を作成した。また、この材料を成形して、圧縮永久歪み測定用のサンプルを作成した。圧縮永久ひずみは25%、体積固有抵抗値は10の6乗Ω・cm以下であった。
【0064】
(実施例2)
イオン導電性導電剤(B)であるイルガスタットP18 100重量部に、カーボンブラック(C)であるケッチェンブラックEC 10重量部を練って、均一に分散させて得られる導電性複合体の66重量部と、実施例1に記載の様に既に作成していた熱可塑性エラストマー組成物(A)330.5重量部を神戸製鋼社製の2軸押出機で混練りした以外は実施例1と同様とした。
この組成物の全重量に対して、イオン導電性導電剤(B)は15.1重量%、カーボンブラック(C)は1.5重量%であった。圧縮永久ひずみは23%、体積固有抵抗値は10の6.5乗Ω・cmであった。
【0065】
(実施例3)
イオン導電性導電剤(B)であるイルガスタットP18 100重量部に、カーボンブラック(C)であるケッチェンブラックEC 7.5重量部を練って、均一に分散させて得られる複合体の64.5重量部と、実施例1に記載の様に既に作成していた熱可塑性エラストマー組成物(A)330.5重量部を神戸製鋼社製の2軸押出機で混練りした以外は実施例1と同様とした。
この組成物の全重量に対して、イオン導電性導電剤(B)は15.2重量%、カーボンブラック(C)は1.1重量%であった。圧縮永久ひずみは23%、体積固有抵抗値は10の7.3乗Ω・cmであった。
【0066】
(実施例4)
実施例1で得た導電性熱可塑性エラストマー組成物を1軸押出機で押し出し、直径21mmのパイプにはめて、外径を23mmに研磨し、導電性ローラを得た。
【0067】
(比較例1)
カーボンブラックを添加しないイルガスタットP18の60重量部と、実施例1に記載の様に既に作成していた熱可塑性エラストマー組成物(A)330.5重量部を神戸製鋼社製の2軸押出機で混練りした以外は実施例1と同様とした。即ち、カーボンブラック(C)を含まなかった。
この組成物の全重量に対して、イオン導電性導電剤(B)は15.4重量%、であった。圧縮永久ひずみは20%、体積固有抵抗値は10の8.6乗Ω・cmであった。
【0068】
(比較例2)
100重量部のイルガスタットP18に、5重量部のケッチェンブラックECを練って、均一に分散させて得られる導電性複合体の63重量部と、実施例1に記載の様に既に作成していた熱可塑性エラストマー組成物(A)330.5重量部を神戸製鋼社製の2軸押出機で混練りした以外は実施例1と同様とした。
この組成物の全重量に対して、イオン導電性導電剤(B)は15.2重量%、カーボンブラック(C)は0.8重量%であった。圧縮永久ひずみは21%、体積固有抵抗値は10の8.3乗Ω・cmであった。
【0069】
(比較例3)
ケッチェンブラックEC 25重量部と、実施例1に記載の様に既に作成していた熱可塑性エラストマー組成物(A)330.5重量部を神戸製鋼社製の2軸押出機で混練りした以外は実施例1と同様とした。
即ち、イオン導電性導電剤(B)を含まなかった。
この組成物の全重量に対して、カーボンブラック(C)は7.0重量%、であった。圧縮永久ひずみは38%、体積固有抵抗値は10の6乗Ω・cm以下であった。
【0070】
上記実施例1〜実施例3及び比較例1〜比較例3の導電性熱可塑性エラストマー組成物、実施例4の導電性ローラを、以下の各々の項目に関して、各々以下の様に測定および試験を行った。
【0071】
(体積固有抵抗値の測定)
アドバンテストコーポレーション製のデジタル超高抵抗微少電流計R−8340Aを用いて、23℃相対湿度55%の恒温恒湿条件下、印加電圧1000Vとして、JIS K6911に記載の体積抵抗率(体積固有抵抗値)ρV[Ω・cm]を測定した。
なお、表中には、体積固有抵抗値を常用対数値で示している。
【0072】
(圧縮永久歪みの測定)
JIS K6262「加硫ゴムの永久ひずみ試験方法」の記載に従い、測定温度70℃、測定時間22時間で測定した。
【0073】
(加工性)
モンサントプロセサビリティーテスターを用いて200℃で押し出すことにより、加工性を調べた。
【0074】
そして実施例1の材料をモンサントプロセサビリティーテスターで200℃で押し出すと、細く表面肌のきれいなストランドが得られたことから、熱可塑性であることが確認できた。実施例2の材料もモンサントプロセサビリティーテスターで押出性があった。実施例3の材料も1軸押出機での押出性が良好であった。このように、実施例1〜3は、流動性に富むため、いずれも非常にきれいな肌のチューブを押し出すことができ成形加工性に優れると共に、リサイクル性を有していた。即ち、高価なイオン導電性導電剤を増量することなく、少量のカーボンブラックを添加することにより、抵抗値を大きく下げることができるので、コスト的にも有利であり、かつ、カーボンブラックの添加は少量であるので、流動性や圧縮永久歪み等の物性は悪化しなかった。
【0075】
実施例4の導電性ローラは、表面は十分スムーズな仕上がりとなり、これを複写機内に取り付けて転写ベルト用の駆動ローラとして使用したところ、滑ることもなく、問題なく使用できた。
【0076】
一方、カーボンブラックが配合されていない比較例1の体積抵抗が10の8.6乗であり、高導電性を得ることができなかった。また、100重量部のイルガスタットP18に、5重量部しかカーボンブラックが配合されていない比較例2の体積抵抗は10の8.3乗で、10の8乗より大きく、抵抗値の低減が不十分であり、高導電性を実現できなかった。比較例3は、体積抵抗は測定限界以下であり、圧縮永久歪みも38%であったが、1軸押出機でゆっくりとチューブを押し出したところ、温度が上がりすぎ、また、肌も荒れて、きれいなチューブが得られず、成形加工性が悪かった。
【0077】
実施例1〜3の導電性熱可塑性エラストマー組成物は、高価なイオン導電剤を増量することなく、少量のカーボンブラックを配合することにより、導電性を大きく改善でき、1000Vで測定したときの体積固有抵抗値を10の8乗Ω・cm以下、さらに好ましくは10の6乗以下とすることができた。よって、コスト的に有利であり、かつ熱可塑性であるのでリサイクルも可能であった。また、カーボンブラックは少量しか配合していないので、圧縮永久歪みや硬度も悪化しにくかった。本実施例1〜3では、さらに、流動性にも優れていたので、導電性ローラの製造が容易であった。
【0078】
【発明の効果】
以上の説明より明らかなように、本発明によれば、熱可塑性樹脂あるいは/及び熱可塑性エラストマー中に、架橋可能なゴムあるいは/及び熱可塑性エラストマーを動的架橋させて得た熱可塑性エラストマー組成物(A)のマトリクス中に、ポリエーテルを含むブロック共重合体樹脂及び金属塩を含むイオン導電性導電剤(B)を分散させると共に、カーボンブラック(C)を含有させることにより、ゴムのような耐久性、弾性、柔軟性と樹脂のような成形性を併せ持つと共に、非常に高い導電性を有する導電性熱可塑性エラストマー組成物を得ることができる。
【0079】
また、イオン導電性導電剤とカーボンブラックとを配合することにより、導電性を高めると共に、組成物としての良好な流動性も得ることができ、成形加工性をも向上することができる。さらには、環境に優しく、かつ熱可塑性を有するためリサイクル性も確保でき、製造コストも低減することができる。
【0080】
よって、本発明の導電性ローラは、デジタル用、カラー用、高画質用のレーザービームプリンター、複写機、ファクシミリなどのOA機器における電子写真装置の導電性機構に使用される導電性ローラ、特に中間転写ベルトの駆動に使用される駆動ローラなどに極めて有用である。
【0081】
さらに、本発明の製造方法によれば、イオン導電性導電剤の配合による物性の低下(硬度の上昇や圧縮永久ひずみの増大)を抑制することができる。また、不必要にイオン導電性導電剤の使用量を増やすことがないため、原材料コストを抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の導電性ローラの概略図である。
【符号の説明】
1 導電性ゴムローラ
2 軸芯
Claims (11)
- 熱可塑性樹脂あるいは/及び熱可塑性エラストマー中に、架橋可能なゴムあるいは/及び熱可塑性エラストマーを動的架橋し分散させた熱可塑性エラストマー組成物(A)と、
ポリエーテルを含むブロック共重合体樹脂及び金属塩を含むイオン導電性導電剤(B)と、
カーボンブラック(C)とを含み、
70℃、22時間の圧縮永久歪みが40%以下、かつ、1000Vで測定したときの体積固有抵抗値が10の8乗Ω・cm以下であることを特徴とする導電性熱可塑性エラストマー組成物。 - 上記イオン導電性導電剤(B)中のポリエーテルを含むブロック共重合体樹脂が、ポリエーテルブロックアミド共重合体樹脂、ポリエーテルエステルアミド樹脂の変性物、及びポリエーテルブロックポリオレフィン樹脂からなる群から選択される1種以上である請求項1に記載の導電性熱可塑性エラストマー組成物。
- 上記カーボンブラック(C)が、導電性カーボンブラックである請求項1または請求項2に記載の導電性熱可塑性エラストマー組成物。
- 上記熱可塑性エラストマー組成物(A)は、
上記動的架橋により分散される架橋可能なゴムあるいは/及び熱可塑性エラストマーとしてEPDM、ブチルゴム、ハロゲン化ブチルゴム、アクリルゴム、BIMS(イソブチレンとp−メチルスチレンの共重合体を臭素化したゴム)、フッ素ゴム、シリコンゴムから選択される1種以上のゴム成分を用い、
上記熱可塑性樹脂あるいは/及び熱可塑性エラストマーとしてスチレン系熱可塑性エラストマー及びオレフィン樹脂を用いている請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の導電性熱可塑性エラストマー組成物。 - 上記ゴム成分はEPDM、ブチルゴム、ハロゲン化ブチルゴム、BIMSから選択される1種以上のゴム成分である請求項4に記載の導電性熱可塑性エラストマー組成物。
- 上記熱可塑性エラストマー組成物(A)は、上記ゴム成分100重量部に対して、スチレン系熱可塑性エラストマーを25重量部以上400重量部以下、軟化剤を500重量部以下、オレフィン系樹脂を50重量部以下の割合で含有している請求項4または請求項5に記載の導電性熱可塑性エラストマー組成物。
- 上記動的架橋は、樹脂架橋剤を用いて行われている請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載の導電性熱可塑性エラストマー組成物。
- 熱可塑性樹脂あるいは/及び熱可塑性エラストマー中に、架橋可能なゴムあるいは/及び熱可塑性エラストマーを動的架橋し分散させた熱可塑性エラストマー組成物(A)と、
ポリエーテルを含むブロック共重合体樹脂及び金属塩を含むイオン導電性導電剤(B)と、
カーボンブラック(C)とを含む導電性熱可塑性エラストマー組成物の製造方法であって、
少なくとも、上記熱可塑性エラストマー組成物(A)と上記イオン導電性導電剤(B)との混合前に、上記熱可塑性エラストマー組成物(A)の動的架橋を行っていることを特徴とする導電性熱可塑性エラストマー組成物の製造方法。 - 上記イオン導電性導電剤(B)と上記カーボンブラック(C)とを混練りし、イオン導電性導電剤(B)中にカーボンブラック(C)を均一に分散させて導電性複合体を得た後に、
上記導電性複合体と上記熱可塑性エラストマー組成物(A)とを混練している請求項8に記載の導電性熱可塑性エラストマー組成物の製造方法。 - 請求項1乃至請求項7のいずれか1項に記載の導電性熱可塑性エラストマー組成物を成形して得られることを特徴とする導電性ローラ。
- 電子写真装置の駆動ローラとして用いられる請求項10に記載の導電性ローラ。
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