JP2004051552A - シクロドデカトリエンのエポキシ化方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】シクロドデカトリエン(CDT)を過酸化水素により接触エポキシ化してエポキシシクロドデカジエン(ECD″)を製造する際に、目的化合物の生成捕集率及び原料化合物の回収率を向上させる。
【解決手段】CDTを、タングステン化合物、4級オニウム化合物及びリン酸化合物を含む触媒の存在下に、過酸化水素によりエポキシ化する際にその反応系中にフェノール化合物、例えば、4−t−ブチルカテコール、2,6−ジ−t−ブチル−P−クレゾールなどを、好ましくはCDTに対して、0.1ppm 〜0.1質量%含有させる。
【選択図】 なし
【解決手段】CDTを、タングステン化合物、4級オニウム化合物及びリン酸化合物を含む触媒の存在下に、過酸化水素によりエポキシ化する際にその反応系中にフェノール化合物、例えば、4−t−ブチルカテコール、2,6−ジ−t−ブチル−P−クレゾールなどを、好ましくはCDTに対して、0.1ppm 〜0.1質量%含有させる。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、1,5,9−シクロドデカトリエンを過酸化水素によりモノエポキシ化して1,2−エポキシ−5,9−シクロドデカジエンを製造する方法に関する。1,2−エポキシ−5,9−シクロドデカジエンは、塗料、及び接着剤などの樹脂の製造原料として用いられるばかりでなく、それをシクロドデカノンに変換すると、ラウロラクタム、ドデカン二酸などに容易に誘導されるため、ポリアミド、ポリエステル類の合成樹脂、合成繊維の中間原料となる重要な化合物である。
【0002】
【従来の技術】
1,5,9−シクロドデカトリエンは3個の二重結合を有する環状化合物であり、また、1,2−エポキシ−5,9−シクロドデカジエンは1個のエポキシ基と2個の二重結合を有する環状化合物である。本発明の発明者らは1,5,9−シクロドデカトリエンを、過酸化水素によりモノエポキシ化して1,2−エポキシ−5,9−シクロドデカジエンを製造する際に、反応混合物中に有機過酸化物が生成し、蒸留分離する際にこの過酸化物が重合開始剤的な役割を担うため、未反応の1,5,9−シクロドデカトリエンおよび/または生成した1,2−エポキシ−5,9−シクロドデカジエンが重合し、このためにそれぞれの蒸留捕集効率が低下することを見出した。
本発明者らは、この問題の対策として、エポキシ化反応の際に、このエポキシ化反応系中にフェノール化合物を含有させることにより、有機過酸化物の生成を抑制できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0003】
ところで、1,5,9−シクロドデカトリエンを過酸化水素によりモノエポキシ化して1,2−エポキシ−5,9−シクロドデカジエンを製造する方法として、セレン化合物を触媒として1,5,9−シクロドデカトリエンをモノエポキシ化する方法(特公昭45−13331号公報)、及びタングステン酸を触媒として用い、90%過酸化水素水を使用して1,5,9−シクロドデカトリエンをモノエポキシ化する方法(Bull.Chem.Soc.Jpn.,42.1604(1969))が知られている。しかしながら、これらの文献には、そのエポキシ化反応における有機過酸化物の生成についての記載は全くなく、従って、この現象を克服して、1,2−エポキシ−5,9−シクロドデカジエンの捕集効率及び未反応の1,5,9−シクロドデカトリエンの回収効率を向上させる手段についても全く知られていなかったのである。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、タングステン化合物、4級オニウム塩およびリン酸化合物を含む触媒存在下に、1,5,9−シクロドデカトリエンを過酸化水素でエポキシ化する反応において、エポキシ化反応混合物より、目的1,2−エポキシ−5,9−シクロドデカジエンを高収率で生成させ、かつ未反応1,5,9−シクロドデカトリエンを高い効率で回収することのできる、1,2−エポキシ−5,9−シクロドデカジエンの製造方法を提供しようとするものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記課題は、本発明の方法により解決することができる。すなわち、本発明のシクロドデカトリエンの製造方法は、タングステン化合物、4級オニウム塩およびリン酸化合物を含む触媒存在下に、シクロドデカトリエンを過酸化水素でエポキシ化する際に、このエポキシ化反応系中にフェノール化合物を含有させることを特徴とするものである。本発明方法により、有機過酸化物の生成を抑制し、エポキシ化反応混合物中におけるエポキシシクロドデカジエンを高い効率で生成捕集し、かつ未反応シクロドデカトリエンを高い効率で回収することが可能になる。
【0006】
【発明の実施の形態】
本発明の製造方法において、1,5,9−シクロドデカトリエンのエポキシ化反応用触媒に含まれるタングステン化合物は、タングステン原子を含有する無機酸の塩および、ヘテロポリ酸およびその塩から選ばれることが望ましく、例えば、タングステン酸ナトリウム、タングステン酸カリウム、タングステン酸リチウム、タングステン酸アンモニウム、リンタングステン酸、ケイタングステン酸、リンタングステン酸ナトリウム、ケイタングステン酸ナトリウムを用いることが好ましい。これらタングステン化合物は単一種で用いてもよく、或はその二種以上を混合して使用してもよい。
本発明の方法において、エポキシ化反応用触媒に使用されるタングステン化合物の量は、1,5,9−シクロドデカトリエンの使用量に対して、0.0007〜5質量%であることが好ましく、より好ましくは0.002〜3質量%である。
【0007】
本発明の方法において、エポキシ化反応用触媒に使用される4級オニウム塩としては、4級アンモニウムハライド類、例えば、トリオクチルメチルアンモニウムクロライド、トリデシルメチルアンモニウムクロライド、トリオクチルメチルアンモニウムブロマイド、セチルピリジニウムクロライド等、4級アンモニウム硫酸水素塩類、例えば、硫酸水素トリオクチルメチルアンモニウム等、4級アンモニウムリン酸二水素塩、例えば、リン酸二水素トリオクチルメチルアンモニウム等、並びに4級アンモニウム過塩素酸塩、例えば、過塩素酸トリオクチルメチルアンモニウム等が挙げられる。好ましくは4級アンモニウムハライド類が用いられ、より好ましくはトリオクチルメチルアンモニウムクロライド、およびトリデシルメチルアンモニウムクロライドが用いられる。これら4級オニウム塩は、単一種で用いられてもよく、あるいはその二種以上を混合して使用してもよい。本発明の方法において、使用される4級オニウム塩の量は、1,5,9−シクロドデカトリエンの使用質量に対して、0.0003〜4質量%であることが好ましく、より好ましくは0.003〜2.5質量%である。
【0008】
本発明の方法において、エポキシ化反応用触媒に使用されるリン酸化合物は、例えば、リン酸、無水リン酸、亜リン酸、ピロリン酸、ポリリン酸等が挙げられるが、好ましくはリン酸が用いられる。
これらリン酸化合物は、単一種で用いてもよく、或はその二種以上を混合して使用してもよい。
リン酸化合物の使用質量は、1,5,9−シクロドデカトリエンの使用質量に対して、0.001〜5質量%であることが好ましく、より好ましくは0.005〜3質量%である。
【0009】
本発明の方法において、1,5,9−シクロドデカトリエンのエポキシ化反応用過酸化水素は、その水溶液として用いられ、この水溶液における過酸化水素の濃度については格別の制限はないが、一般に取り扱い上の安全性および経済性を考慮すると、10〜70質量%の濃度の水溶液を使用することが好ましい。過酸化水素の使用量は、1,5,9−シクロドデカトリエンの質量に対して0.05〜1.2倍モルであることが好ましく、より好ましくは0.1〜1.0倍モルであり、さらに好ましくは0.25〜1.0倍モルである。
【0010】
本発明方法において、そのエポキシ化反応系に含有せしめるようフェノール化合物としては、例えば、4−t−ブチルカテコール、2,6−ジ−t−ブチル−P−クレゾール、ブチル化ヒドロキシアニソール、2−メチルヒドロキノン、ステアリル−β−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、及び2,2‘−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)の1種以上を使用することができるが、本発明方法の所望効果を存するものである限りこれらに限定されるものではない。
フェノール化合物の使用量は1,5,9−シクロドデカトリエンの使用質量に対して、0.1ppm 〜0.1質量%であることが好ましく、より好ましくは1ppm 〜0.03質量%である。
【0011】
本発明の方法において使用される1,5,9−シクロドデカトリエンは、市販品をそのまま用いてもよく、あるいは精製したものを用いてもよい。また、1,5,9−シクロドデカトリエンはシス、トランス、トランス体、トランス、トランス、トランス体、トランス、シス、シス体のいずれであってもよく、あるいはこれら異性体の混合物であってもよい。
【0012】
本発明方法のエポキシ化反応において、反応溶媒は使用しなくてもよいが、必要により有機溶媒を使用してもよい。この有機溶媒は、水と均一に混ざり合わず、かつ、反応を阻害しないものであれば、何でもよいが、例えば、クロロホルム、ジクロロメタン、四塩化炭素などの脂肪族ハロゲン化炭素、シクロヘキサン、n−ヘプタンなどの脂肪族炭化水素、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素を用いることができる。これらは単一種でもよく、或はその二種以上を混合して使用してもよい。
前記有機溶媒の使用量は、1,5,9−シクロドデカトリエンの使用質量に対し、0〜20質量倍であることが好ましく、より好ましくは0〜10質量倍である。
【0013】
本発明方法におけるエポキシ化反応において、1,5,9−シクロドデカトリエンが空気により酸化されて、有機過酸化物を生成し易いため、不活性ガス、例えば、アルゴン、ヘリウム、及び本発明方法のエポキシ化反応系に対し、非反応性のガス、例えば窒素、炭酸ガスなどの雰囲気において実施することが好ましい。反応圧力については、特に制限はないが、通常は常圧で行われる。反応温度は20〜120℃であることが好ましく、より好ましくは30〜120℃である。
【0014】
本発明方法において、エポキシ化反応混合物中の有機過酸化物含有量を測定するには、エポキシ化反応により得られたエポキシ化反応混合物の有機相(油相部)1gについて、ヨウ素滴定法によりそれに含有されている活性酸素量を分析し、得られた分析結果において、活性酸素1ミリ当量を過酸化物の1ミリモル(mmol)として計算する。
【0015】
本発明において、エポキシ化反応混合物から未反応の1,5,9−シクロドデカトリエンを回収するには、反応混合物から、水相フラクションを分離した後、有機相フラクションを不活性ガス雰囲気下において、減圧蒸留して、未反応の1,5,9−シクロドデカトリエンを分離する。エポキシ化反応液より、未反応の1,5,9−シクロドデカトリエンを蒸留分離するときの条件は、圧力が0.13〜53.3kPa 、温度が50〜230℃であることが好ましい。更に好ましくは圧力が4.0〜37.3kPa 、温度が130〜200℃である。
蒸留装置としては、通常のスニーダー型蒸留装置、充填塔型蒸留装置、多孔板塔型蒸留装置、及び泡鐘塔型蒸留装置を用いることができる。
【0016】
【実施例】
本発明方法を下記実施例によりさらに詳細に説明する。
【0017】
実施例1
容量3リットルのガラス製フラスコ中に、4−t−ブチルカテコール22.5mg(10ppm )とトリオクチルメチルアンモニウムクロライド0.56g(250ppm )とを溶解した1,5,9−シクロドデカトリエン2250g(13.9mol )を仕込み、この混合物を窒素気流下で撹拌しながら75℃まで昇温した。上記混合物の反応温度が75℃に到達した後、タングステン酸ソーダ0.57g(250ppm )とリン酸0.57g(250ppm )とを60質量%過酸化水素196.5g(3.45mol )に溶解した溶液を25分間かけて滴下し、その後、75℃で90分間反応させた。
反応終了後、反応混合物についてGC分析した結果、1,5,9−シクロドデカトリエンの転化率は23.2%であり、分液した油相フラクション中の過酸化物濃度をヨードメトリーにより分析したところ、過酸化物濃度は0.0024mmol/gであった。
次に、この有機相(油相フラクション)から未反応の1,5,9−シクロドデカトリエンを回収する為に、油相フラクション500gをスニーダー型蒸留装置で蒸留した。
蒸留条件は、1,5,9−シクロドデカトリエンの留出温度が76℃/0.25kPa になるように実施した。
その結果、未反応の1,5,9−シクロドデカトリエンの回収率は、99.6%であった。
【0018】
実施例2
実施例1と同様にしてエポキシ化反応および未反応の1,5,9−シクロドデカトリエンの回収をおこなった。但し、実施例1における窒素気流下を空気雰囲気下に変更した。
油相フラクションの過酸化物濃度は0.0060mmol/gであり、未反応の1,5,9−シクロドデカトリエンの回収率は、99.2%であった。
【0019】
比較例1
実施例2と同様に反応を行った。但し、4−t−ブチルカテコールを添加していない1,5,9−シクロドデカトリエン2250gを使用した。反応終了後、分液した油相フラクション中の過酸化物をヨードメトリーにより分析したところ、過酸化物濃度は0.0126mmol/gであった。
次に、この油相フラクションから未反応の1,5,9−シクロドデカトリエンを回収する為に、実施例1と同様の蒸留回収を行った。
その結果、未反応の1,5,9−シクロドデカトリエンの回収率は97.2%であった。
【0020】
【発明の効果】
本発明により、タングステン化合物、4級オニウム塩およびリン酸化合物を含む触媒存在下に、1,5,9−シクロドデカトリエンを過酸化水素でエポキシ化する反応によって1,2−エポキシ−5,9−シクロドデカジエンを製造する際に、その反応混合物から1,2−エポキシ−5,9−シクロドデカジエンを高い効率で捕集し、かつ未反応1,5,9−シクロドデカトリエンを高い効率で回収することが可能になった。
【発明の属する技術分野】
本発明は、1,5,9−シクロドデカトリエンを過酸化水素によりモノエポキシ化して1,2−エポキシ−5,9−シクロドデカジエンを製造する方法に関する。1,2−エポキシ−5,9−シクロドデカジエンは、塗料、及び接着剤などの樹脂の製造原料として用いられるばかりでなく、それをシクロドデカノンに変換すると、ラウロラクタム、ドデカン二酸などに容易に誘導されるため、ポリアミド、ポリエステル類の合成樹脂、合成繊維の中間原料となる重要な化合物である。
【0002】
【従来の技術】
1,5,9−シクロドデカトリエンは3個の二重結合を有する環状化合物であり、また、1,2−エポキシ−5,9−シクロドデカジエンは1個のエポキシ基と2個の二重結合を有する環状化合物である。本発明の発明者らは1,5,9−シクロドデカトリエンを、過酸化水素によりモノエポキシ化して1,2−エポキシ−5,9−シクロドデカジエンを製造する際に、反応混合物中に有機過酸化物が生成し、蒸留分離する際にこの過酸化物が重合開始剤的な役割を担うため、未反応の1,5,9−シクロドデカトリエンおよび/または生成した1,2−エポキシ−5,9−シクロドデカジエンが重合し、このためにそれぞれの蒸留捕集効率が低下することを見出した。
本発明者らは、この問題の対策として、エポキシ化反応の際に、このエポキシ化反応系中にフェノール化合物を含有させることにより、有機過酸化物の生成を抑制できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0003】
ところで、1,5,9−シクロドデカトリエンを過酸化水素によりモノエポキシ化して1,2−エポキシ−5,9−シクロドデカジエンを製造する方法として、セレン化合物を触媒として1,5,9−シクロドデカトリエンをモノエポキシ化する方法(特公昭45−13331号公報)、及びタングステン酸を触媒として用い、90%過酸化水素水を使用して1,5,9−シクロドデカトリエンをモノエポキシ化する方法(Bull.Chem.Soc.Jpn.,42.1604(1969))が知られている。しかしながら、これらの文献には、そのエポキシ化反応における有機過酸化物の生成についての記載は全くなく、従って、この現象を克服して、1,2−エポキシ−5,9−シクロドデカジエンの捕集効率及び未反応の1,5,9−シクロドデカトリエンの回収効率を向上させる手段についても全く知られていなかったのである。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、タングステン化合物、4級オニウム塩およびリン酸化合物を含む触媒存在下に、1,5,9−シクロドデカトリエンを過酸化水素でエポキシ化する反応において、エポキシ化反応混合物より、目的1,2−エポキシ−5,9−シクロドデカジエンを高収率で生成させ、かつ未反応1,5,9−シクロドデカトリエンを高い効率で回収することのできる、1,2−エポキシ−5,9−シクロドデカジエンの製造方法を提供しようとするものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記課題は、本発明の方法により解決することができる。すなわち、本発明のシクロドデカトリエンの製造方法は、タングステン化合物、4級オニウム塩およびリン酸化合物を含む触媒存在下に、シクロドデカトリエンを過酸化水素でエポキシ化する際に、このエポキシ化反応系中にフェノール化合物を含有させることを特徴とするものである。本発明方法により、有機過酸化物の生成を抑制し、エポキシ化反応混合物中におけるエポキシシクロドデカジエンを高い効率で生成捕集し、かつ未反応シクロドデカトリエンを高い効率で回収することが可能になる。
【0006】
【発明の実施の形態】
本発明の製造方法において、1,5,9−シクロドデカトリエンのエポキシ化反応用触媒に含まれるタングステン化合物は、タングステン原子を含有する無機酸の塩および、ヘテロポリ酸およびその塩から選ばれることが望ましく、例えば、タングステン酸ナトリウム、タングステン酸カリウム、タングステン酸リチウム、タングステン酸アンモニウム、リンタングステン酸、ケイタングステン酸、リンタングステン酸ナトリウム、ケイタングステン酸ナトリウムを用いることが好ましい。これらタングステン化合物は単一種で用いてもよく、或はその二種以上を混合して使用してもよい。
本発明の方法において、エポキシ化反応用触媒に使用されるタングステン化合物の量は、1,5,9−シクロドデカトリエンの使用量に対して、0.0007〜5質量%であることが好ましく、より好ましくは0.002〜3質量%である。
【0007】
本発明の方法において、エポキシ化反応用触媒に使用される4級オニウム塩としては、4級アンモニウムハライド類、例えば、トリオクチルメチルアンモニウムクロライド、トリデシルメチルアンモニウムクロライド、トリオクチルメチルアンモニウムブロマイド、セチルピリジニウムクロライド等、4級アンモニウム硫酸水素塩類、例えば、硫酸水素トリオクチルメチルアンモニウム等、4級アンモニウムリン酸二水素塩、例えば、リン酸二水素トリオクチルメチルアンモニウム等、並びに4級アンモニウム過塩素酸塩、例えば、過塩素酸トリオクチルメチルアンモニウム等が挙げられる。好ましくは4級アンモニウムハライド類が用いられ、より好ましくはトリオクチルメチルアンモニウムクロライド、およびトリデシルメチルアンモニウムクロライドが用いられる。これら4級オニウム塩は、単一種で用いられてもよく、あるいはその二種以上を混合して使用してもよい。本発明の方法において、使用される4級オニウム塩の量は、1,5,9−シクロドデカトリエンの使用質量に対して、0.0003〜4質量%であることが好ましく、より好ましくは0.003〜2.5質量%である。
【0008】
本発明の方法において、エポキシ化反応用触媒に使用されるリン酸化合物は、例えば、リン酸、無水リン酸、亜リン酸、ピロリン酸、ポリリン酸等が挙げられるが、好ましくはリン酸が用いられる。
これらリン酸化合物は、単一種で用いてもよく、或はその二種以上を混合して使用してもよい。
リン酸化合物の使用質量は、1,5,9−シクロドデカトリエンの使用質量に対して、0.001〜5質量%であることが好ましく、より好ましくは0.005〜3質量%である。
【0009】
本発明の方法において、1,5,9−シクロドデカトリエンのエポキシ化反応用過酸化水素は、その水溶液として用いられ、この水溶液における過酸化水素の濃度については格別の制限はないが、一般に取り扱い上の安全性および経済性を考慮すると、10〜70質量%の濃度の水溶液を使用することが好ましい。過酸化水素の使用量は、1,5,9−シクロドデカトリエンの質量に対して0.05〜1.2倍モルであることが好ましく、より好ましくは0.1〜1.0倍モルであり、さらに好ましくは0.25〜1.0倍モルである。
【0010】
本発明方法において、そのエポキシ化反応系に含有せしめるようフェノール化合物としては、例えば、4−t−ブチルカテコール、2,6−ジ−t−ブチル−P−クレゾール、ブチル化ヒドロキシアニソール、2−メチルヒドロキノン、ステアリル−β−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、及び2,2‘−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)の1種以上を使用することができるが、本発明方法の所望効果を存するものである限りこれらに限定されるものではない。
フェノール化合物の使用量は1,5,9−シクロドデカトリエンの使用質量に対して、0.1ppm 〜0.1質量%であることが好ましく、より好ましくは1ppm 〜0.03質量%である。
【0011】
本発明の方法において使用される1,5,9−シクロドデカトリエンは、市販品をそのまま用いてもよく、あるいは精製したものを用いてもよい。また、1,5,9−シクロドデカトリエンはシス、トランス、トランス体、トランス、トランス、トランス体、トランス、シス、シス体のいずれであってもよく、あるいはこれら異性体の混合物であってもよい。
【0012】
本発明方法のエポキシ化反応において、反応溶媒は使用しなくてもよいが、必要により有機溶媒を使用してもよい。この有機溶媒は、水と均一に混ざり合わず、かつ、反応を阻害しないものであれば、何でもよいが、例えば、クロロホルム、ジクロロメタン、四塩化炭素などの脂肪族ハロゲン化炭素、シクロヘキサン、n−ヘプタンなどの脂肪族炭化水素、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素を用いることができる。これらは単一種でもよく、或はその二種以上を混合して使用してもよい。
前記有機溶媒の使用量は、1,5,9−シクロドデカトリエンの使用質量に対し、0〜20質量倍であることが好ましく、より好ましくは0〜10質量倍である。
【0013】
本発明方法におけるエポキシ化反応において、1,5,9−シクロドデカトリエンが空気により酸化されて、有機過酸化物を生成し易いため、不活性ガス、例えば、アルゴン、ヘリウム、及び本発明方法のエポキシ化反応系に対し、非反応性のガス、例えば窒素、炭酸ガスなどの雰囲気において実施することが好ましい。反応圧力については、特に制限はないが、通常は常圧で行われる。反応温度は20〜120℃であることが好ましく、より好ましくは30〜120℃である。
【0014】
本発明方法において、エポキシ化反応混合物中の有機過酸化物含有量を測定するには、エポキシ化反応により得られたエポキシ化反応混合物の有機相(油相部)1gについて、ヨウ素滴定法によりそれに含有されている活性酸素量を分析し、得られた分析結果において、活性酸素1ミリ当量を過酸化物の1ミリモル(mmol)として計算する。
【0015】
本発明において、エポキシ化反応混合物から未反応の1,5,9−シクロドデカトリエンを回収するには、反応混合物から、水相フラクションを分離した後、有機相フラクションを不活性ガス雰囲気下において、減圧蒸留して、未反応の1,5,9−シクロドデカトリエンを分離する。エポキシ化反応液より、未反応の1,5,9−シクロドデカトリエンを蒸留分離するときの条件は、圧力が0.13〜53.3kPa 、温度が50〜230℃であることが好ましい。更に好ましくは圧力が4.0〜37.3kPa 、温度が130〜200℃である。
蒸留装置としては、通常のスニーダー型蒸留装置、充填塔型蒸留装置、多孔板塔型蒸留装置、及び泡鐘塔型蒸留装置を用いることができる。
【0016】
【実施例】
本発明方法を下記実施例によりさらに詳細に説明する。
【0017】
実施例1
容量3リットルのガラス製フラスコ中に、4−t−ブチルカテコール22.5mg(10ppm )とトリオクチルメチルアンモニウムクロライド0.56g(250ppm )とを溶解した1,5,9−シクロドデカトリエン2250g(13.9mol )を仕込み、この混合物を窒素気流下で撹拌しながら75℃まで昇温した。上記混合物の反応温度が75℃に到達した後、タングステン酸ソーダ0.57g(250ppm )とリン酸0.57g(250ppm )とを60質量%過酸化水素196.5g(3.45mol )に溶解した溶液を25分間かけて滴下し、その後、75℃で90分間反応させた。
反応終了後、反応混合物についてGC分析した結果、1,5,9−シクロドデカトリエンの転化率は23.2%であり、分液した油相フラクション中の過酸化物濃度をヨードメトリーにより分析したところ、過酸化物濃度は0.0024mmol/gであった。
次に、この有機相(油相フラクション)から未反応の1,5,9−シクロドデカトリエンを回収する為に、油相フラクション500gをスニーダー型蒸留装置で蒸留した。
蒸留条件は、1,5,9−シクロドデカトリエンの留出温度が76℃/0.25kPa になるように実施した。
その結果、未反応の1,5,9−シクロドデカトリエンの回収率は、99.6%であった。
【0018】
実施例2
実施例1と同様にしてエポキシ化反応および未反応の1,5,9−シクロドデカトリエンの回収をおこなった。但し、実施例1における窒素気流下を空気雰囲気下に変更した。
油相フラクションの過酸化物濃度は0.0060mmol/gであり、未反応の1,5,9−シクロドデカトリエンの回収率は、99.2%であった。
【0019】
比較例1
実施例2と同様に反応を行った。但し、4−t−ブチルカテコールを添加していない1,5,9−シクロドデカトリエン2250gを使用した。反応終了後、分液した油相フラクション中の過酸化物をヨードメトリーにより分析したところ、過酸化物濃度は0.0126mmol/gであった。
次に、この油相フラクションから未反応の1,5,9−シクロドデカトリエンを回収する為に、実施例1と同様の蒸留回収を行った。
その結果、未反応の1,5,9−シクロドデカトリエンの回収率は97.2%であった。
【0020】
【発明の効果】
本発明により、タングステン化合物、4級オニウム塩およびリン酸化合物を含む触媒存在下に、1,5,9−シクロドデカトリエンを過酸化水素でエポキシ化する反応によって1,2−エポキシ−5,9−シクロドデカジエンを製造する際に、その反応混合物から1,2−エポキシ−5,9−シクロドデカジエンを高い効率で捕集し、かつ未反応1,5,9−シクロドデカトリエンを高い効率で回収することが可能になった。
Claims (1)
- タングステン化合物、4級オニウム塩およびリン酸化合物を含む触媒の存在下に、シクロドデカトリエンを過酸化水素によってエポキシ化する際に、このエポキシ化反応系中に、フェノール化合物をさらに含有させることを特徴とするシクロドデカトリエンのエポキシ化方法。
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