JP2004050353A - 硬質焼結体付ドリル - Google Patents
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Abstract
【課題】切屑排出性を良好に保ち、切刃強度を高くする。
【解決手段】軸線O回りに一定のねじれ角αでねじれる一対の切屑排出溝4,4の先端外周側に、ダイヤモンド焼結体6,6を取り付けて、切刃5,5の切刃外周部5A,5Aをダイヤモンド焼結体6,6上に形成する。切刃外周部5Aに連なる第1すくい面7A及び第2すくい面7Bに与えられるすくい角β1,β2を、切屑排出溝4のねじれ角αよりも小さく設定する。第1すくい面7Aのすくい角β1を、第2すくい面β2よりも小さく設定する。
【選択図】 図3
【解決手段】軸線O回りに一定のねじれ角αでねじれる一対の切屑排出溝4,4の先端外周側に、ダイヤモンド焼結体6,6を取り付けて、切刃5,5の切刃外周部5A,5Aをダイヤモンド焼結体6,6上に形成する。切刃外周部5Aに連なる第1すくい面7A及び第2すくい面7Bに与えられるすくい角β1,β2を、切屑排出溝4のねじれ角αよりも小さく設定する。第1すくい面7Aのすくい角β1を、第2すくい面β2よりも小さく設定する。
【選択図】 図3
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ドリル本体先端の切刃部分が、硬質焼結体によって形成された硬質焼結体付ドリルに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
一般に、穴明け加工に用いられるドリルは、例えば超硬合金やハイス鋼などの材料から構成され、軸線回りに回転される外形略円柱状のドリル本体の先端部外周に、一対の切屑排出溝が形成されているものである。
この切屑排出溝は、ドリル本体の先端逃げ面から後端側に向けて、軸線回りにドリル回転方向の後方側に一定のねじれ角でねじれる螺旋状をなしており、さらに、切屑排出溝のドリル回転方向を向く壁面と、先端逃げ面との交差稜線部に切刃が形成される。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、このような従来のドリルの切刃は、超硬合金やハイス鋼などのドリル本体と同一の材料で構成されるため、その硬度を十分に確保できないで、高い切刃強度を得ることができず、また、耐摩耗性に乏しいという欠点がある。
また、切屑排出溝のドリル回転方向を向く壁面の先端側部分が、切刃のすくい面をなすことになるため、この切刃に与えられるすくい角が、切屑排出溝のねじれ角と同一となってしまう。それゆえ、切屑排出性を確保するために、切屑排出溝のねじれ角にある程度の大きさの角度を設定してしまうと、これと同時に、切刃のすくい角も大きくなって刃先角が小さくなってしまい、この切刃が超硬合金やハイス鋼等の材料で構成されることとも相俟って、さらなる切刃強度の低下を招いてしまう。
とくに、深穴加工では、その切屑排出性が重要視されるために、切屑排出溝のねじれ角をより大きく設定したドリルが用いられることが多く、上記のような傾向が顕著になってしまっていた。
【0004】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたもので、切屑排出性を良好に保つとともに、切刃強度の高いドリルを提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決して、このような目的を達成するために、本発明は、軸線回りに回転される外形略円柱状のドリル本体の先端部外周に、前記軸線回りにねじれる切屑排出溝が形成され、この切屑排出溝のドリル回転方向を向く壁面の先端側の少なくとも外周部に硬質焼結体が設けられて、前記ドリル本体の先端中心部からこの硬質焼結体上を通って該ドリル本体の外周に達する切刃が形成されるとともに、前記硬質焼結体上を通る切刃のすくい角が、前記切屑排出溝のねじれ角よりも小さく、かつ、前記軸線方向の後端側に向けて大きくされていることを特徴とするものである。
このような構成とすると、切刃の少なくとも外周側部分が硬度の高い硬質焼結体によって形成されるため、その切刃強度を高く保つとともに、耐摩耗性の向上を図ることができる。なお、この硬質焼結体は、ダイヤモンド焼結体であることが好ましい。
また、硬質焼結体によって切刃の少なくとも外周側部分を構成すると、この切刃に連なるすくい面も硬質焼結体によって構成されることとなり、このすくい面のすくい角のみを適宜自由に設定することが可能となる。それゆえ、本発明では、硬質焼結体上を通る切刃のすくい角を、切屑排出溝のねじれ角よりも小さく設定したことにより、切屑排出性を良好に保つために切屑排出溝のねじれ角をある程度の大きさに設定したとしても、硬質焼結体上を通る切刃のすくい角がさほど大きくならないので、この切刃の刃先角を大きく確保できることとなって、高い切刃強度を得ることが可能となる。
さらに、硬質焼結体上を通る切刃のすくい角を、軸線方向の後端側に向けて大きくするように設定したことで、この切刃に近い部分では、適度に小さいすくい角を与えて、切刃強度を確保しながらも、この切刃から軸線方向の後端側に遠ざかった部分では、すくい角を大きくしていって、切屑排出性を良好に維持することに貢献できる。
【0006】
また、硬質焼結体上を通る切刃のすくい角を軸線方向の後端側に向けて大きくするには、例えば、硬質焼結体上を通る切刃のすくい面が、軸線方向に配列される複数の面(第1すくい面、第2すくい面、…、第nすくい面)から構成された多段面状に形成することで可能である。
【0007】
また、切屑排出溝のねじれ角を大きく設定しすぎると、切り屑詰まりが発生してしまうおそれが生じるので、切屑排出溝のねじれ角は、40゜以下に設定されていることが好ましい。
さらに、切屑排出溝のねじれ角と、硬質焼結体上を通る切刃の最小すくい角との差を大きく設定しすぎてしまうと、硬質焼結体上を通る切刃のすくい角が小さくなりすぎ、この切刃に過大な切削抵抗がかかるので、切屑排出溝のねじれ角と、硬質焼結体上を通る切刃の最小すくい角との差は、30゜以下に設定されていることが好ましい。
【0008】
また、硬質焼結体は、ドリル本体における径方向での長さが、切刃の外径Dに対して、D/3以下に設定され、さらに、ドリル本体における軸線方向での長さが、切刃の外径Dに対して、1D以下に設定されていることが好ましい。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態を添付した図面を用いて説明する。
図1は本発明の実施形態による硬質焼結体付ドリルの側面図、図2は図1に示す硬質焼結体付ドリルを軸線方向の先端側から見た先端面図、図3は図2におけるA方向矢視図である。
【0010】
本実施形態による硬質焼結体付ドリルのドリル本体1は、超硬合金等の硬質材料によって軸線Oを中心とする外形略円柱状に形成されており、その後端側(図1において右側)がシャンク部2とされて、このシャンク部2が工作機械の回転軸に取り付けられることにより、図中に符号Tで示すドリル回転方向に回転させられて穴明け加工に使用される。
【0011】
また、ドリル本体1の先端部(図1において左側部分)は刃先部3とされ、この刃先部3の外周には、軸線Oを挟んで互いに反対側に一対の切屑排出溝4,4が、ドリル本体1の先端逃げ面1Aから刃先部3の全長に亘って軸線Oに対して対称となるように形成されている。なお、この刃先部3は、切屑排出溝4,4も含めて軸線Oに関して対称となるように形成されている。
【0012】
切屑排出溝4,4は、軸線Oに直交する断面において、ドリル回転方向Tを向く壁面4Aと、この壁面4Aに滑らかに接続され、ドリル回転方向Tの後方側を向いて、ドリル回転方向T側に凸となる断面曲線状をなす壁面4Bとから構成されている。そして、これら切屑排出溝4,4は、先端逃げ面1Aから後端側に向けてドリル回転方向Tの後方側に一定のねじれ角αでねじれる螺旋状をなしている。
このとき、切屑排出溝4,4のねじれ角αは、5゜≦α≦40゜の範囲に設定されており、本実施形態においては、α=35゜に設定されている。
【0013】
また、周方向において両切屑排出溝4,4間に画成される刃先部3の外周面は、周方向で両切屑排出溝4,4にそれぞれ隣接する部分が軸線Oを中心とした断面円弧状をなすマージン部とされるとともに、これらマージン部の間の部分は、このマージン部よりわずかに小径の軸線Oを中心とする断面円弧状とされた2番取り面が形成されている。
【0014】
一方、先端逃げ面1Aは、軸線Oを中心とした概略円錐面状とされるとともに、切屑排出溝4,4の開口部から軸線O回りにドリル回転方向Tの後方側に向かうにしたがい漸次後退するように形成されて、逃げが与えられている。
さらに、この先端逃げ面1Aと両切屑排出溝4,4のドリル回転方向Tを向く壁面4A,4Aとの交差稜線部、すなわち壁面4A,4Aの先端縁には、先端逃げ面1A上における軸線O周辺の先端中心部Cから外周側に向けて延びる略直線状の切刃5,5がそれぞれ形成されている。
【0015】
また、先端逃げ面1Aが概略円錐面状とされていることにより、切刃5,5は、先端逃げ面1A上の先端中心部Cから外周側に向かうにしたがい略直線状に後端側に向かうように傾斜させられ、これによって両切刃5,5には所定の先端角が与えられる。
【0016】
そして、これらの切刃5,5はその切刃外周部5A,5Aが、それぞれダイヤモンド焼結体6,6上(硬質焼結体)に形成されている。
すなわち、本実施形態では、切屑排出溝4のドリル回転方向Tを向く壁面4Aの先端外周側の部分に、この壁面4Aから一段凹んで先端逃げ面1A及び外周面に開口する凹部9が形成され、この凹部9に、略平板状をなす硬質焼結体としてのダイヤモンド焼結体6が、その一方の面7をドリル回転方向Tに向けた状態で、一方の面7に対向する他方の面8をドリル本体1にろう付けすることにより接合されて取り付けられている。
【0017】
このダイヤモンド焼結体6のドリル回転方向Tを向く一方の面7は、切刃外周部5Aのすくい面とされるとともに、ダイヤモンド焼結体6の軸線O方向の先端側を向く面は、先端逃げ面1Aと面一となるように逃げが与えられ、これらの面の交差稜線部に切刃外周部5Aが形成されているのである。
【0018】
また、図1及び図3に示すように(図3においては、主要部だけを示しており、先端逃げ面等は示していない)、ダイヤモンド焼結体6におけるドリル回転方向Tを向いて切刃外周部5Aのすくい面とされる一方の面7は、軸線O方向に沿って配列された複数の面から構成された多段面状をなしており、本実施形態においては、この切刃外周部5Aのすくい面が、軸線O方向の先端側から後端側に向けて順に配列された、第1すくい面7A及び第2すくい面7Bの2つの面によって構成された多段面状をなしている。
なお、第1すくい面7Aと第2すくい面7Bとの交差稜線部は、軸線O方向に直交する方向に延びる略直線状をなしている(軸線O方向に沿って配列された複数の面同士の交差稜線部が、軸線O方向に直交する方向に延びる略直線状をなしている)。
【0019】
これら第1すくい面7A,第2すくい面7Bについては、第1すくい面7Aに与えられるすくい角β1(軸方向すくい角)が、第2すくい面7Bに与えられるすくい角β2(軸方向すくい角)よりも小さくなっていて(β2>β1)、本実施形態においては、例えば、β1=15゜、β2=25゜に設定されている。
つまり、切刃外周部5Aのすくい面(第1すくい面7A,第2すくい面7B)に与えられるすくい角(β1,β2)が、軸線O方向の後端側に向けて大きくなるように設定されているのである。
【0020】
さらに、これら第1すくい面7Aのすくい角β1及び第2すくい面7Bのすくい角β2は、切屑排出溝4のねじれ角αよりも小さく(α>β2>β1)、かつ、α−β1≦30゜となるように設定されており、本実施形態においては、α−β1=20゜に設定されている。
つまり、切刃外周部5Aのすくい面における最小すくい角(第1すくい面7Aのすくい角β1)と、切屑排出溝4のねじれ角αとの差が、30゜以下に設定されているのである。
【0021】
また、このダイヤモンド焼結体6の大きさについて説明すれば、ドリル本体1における径方向の長さa、すなわち、図2に示すように、軸線O方向の先端側から見たときにおいて、ダイヤモンド焼結体6の、ドリル本体1の径方向における最大長さが、切刃5の外径D(マージン部を円弧とする仮想の円の直径)に対して、3/D以下となるように設定され、さらに、ダイヤモンド焼結体6のドリル本体1の軸線O方向の長さb、すなわち、図1に示すように、軸線Oに直交する方向から見たときにおいて、ダイヤモンド焼結体6の、ドリル本体1の軸線O方向での最大長さが、切刃5の外径Dに対して、1D以下となるように設定されている。
【0022】
一方、切屑排出溝4のドリル回転方向Tを向く壁面4Aと、ドリル回転方向Tの後方側を向く壁面4Bとの交差部分の先端側には、図2に示すように、これら壁面4A,4Bに対して鈍角に交差して先端側に向かうにしたがい軸線O側に向けて傾斜するシンニング面10が、ドリル本体1の先端中心部Cに向けて形成されている。
【0023】
このシンニング面10は、その先端逃げ面1Aとの交差稜線部、すなわち、シンニング面10の先端逃げ面1A側の開口縁が、軸線O方向の先端側から見たときに、図2に示すように、軸線Oに向けて凸となる曲線を描いて軸線Oに接近する略円弧状の部分から、その両端が、切屑排出溝4のドリル回転方向Tの後方側を向く壁面4Bと、ドリル回転方向Tを向く壁面4Aとに略直線状に切れ上がっており、この開口縁の切屑排出溝4のドリル回転方向Tを向く壁面4Aに略直線状に切れ上がる部分が、切刃5の切刃内周部5Bの一部を構成している。
【0024】
これにより、切刃5は、シンニング面10の開口縁及び切屑排出溝4のドリル回転方向Tを向く壁面4Aと先端逃げ面1Aとの交差稜線部に形成された形成された切刃内周部5Bと、この切刃内周部5Bに連続して、ダイヤモンド焼結体6上に形成された切刃外周部5Aとによって構成されて、先端中心部Cからドリル本体1の外周まで達することになる。
また、両切刃5,5の切刃内周部5B,5Bは、軸線O方向の先端側から見て軸線Oを越えて反対側に突き出すことはなく、これら切刃内周部5B,5B間には軸線Oに交差するチゼル部が画成されている。
【0025】
上述のような構成とされた本実施形態による硬質焼結体付ドリルによれば、切刃外周部5Aがダイヤモンド焼結体6上に形成されており、このダイヤモンド焼結体6が一般的な工具材料として用いられる超硬合金やハイス綱などの比べて高硬度であって耐摩耗性に優れるという性質を有することから、切刃外周部5Aに高い切刃強度を与えるとともに、その耐摩耗性を向上させることができて、ドリル本体1の寿命を延長させることができる。
【0026】
また、本実施形態のように、ダイヤモンド焼結体6によって切刃外周部5Aが構成され、この切刃外周部5Aに連なるすくい面(第1すくい面7A,第2すくい面7B)もダイヤモンド焼結体6によって構成される場合には、切屑排出溝4のねじれ角αの大きさに関わらず、このすくい面(第1すくい面7A,第2すくい面7B)のすくい角(β1,β2)のみを適宜自由に設定することが可能となる。
【0027】
それゆえ、ドリル本体1の切屑排出溝4のねじれ角αは、切屑排出性を考慮して設定し、切刃外周部5Aの第1すくい面7A及び第2すくい面7Bのすくい角β1,β2は、切屑排出溝4のねじれ角αよりも小さく設定することにより、切屑排出性を良好に保ちつつも、ダイヤモンド焼結体6上を通る切刃外周部5Aのすくい角β1,β2をさほど大きく設定せずに、切刃外周部5Aの刃先角を大きく確保できることとなり、切刃外周部5Aに対して、より高い切刃強度を与えることが可能となる。
【0028】
さらに、このとき、切刃外周部5Aの第1すくい面7Aと第2すくい面7Bとに与えられるすくい角β1,β2が、β1<β2とされて、軸線O方向の後端側に向けて大きくされていることから、切刃外周部5Aに近い部分である第1すくい面7Aには、切れ味を考慮しつつも適度に小さいすくい角β1を与えて、その切刃強度を確保し、切刃外周部5Aから遠ざかった部分である第2すくい面7Bには、適度に大きいすくい角β2を与えて、切屑排出性を良好に維持することに貢献できるのである。
【0029】
これにより、本実施形態による硬質焼結体付ドリルが、深穴加工に用いられるドリルのように、切屑排出性を重要視して、切屑排出溝4のねじれ角αを大きく設定した強ねじれの場合であったとしても、その切刃外周部5Aの強度を十分に確保することが可能となって、切屑排出性を良好に維持することと切刃強度を高く保つことの両立を図ることができる。
【0030】
ここで、切屑排出溝4のねじれ角αが小さくなりすぎると、良好な切屑排出性を得ることができなくなり、また、逆にねじれ角αが大きくなりすぎると、切り屑詰まりが発生してしまうおそれが生じるので、この切屑排出溝のねじれ角αは、40゜以下に設定することが好ましい。
さらに、切屑排出溝4のねじれ角αと、切刃外周部5Aの第1すくい面7Aのすくい角β1(最小すくい角)との差α−β1が大きくなりすぎると、切刃外周部5Aのすくい角βが小さくなりすぎることとなって、切刃外周部5Aに過大な切削抵抗が加わってしまうので、このねじれ角αとすくい角β1との差α−β1は、30゜以下に設定することが好ましい。
【0031】
また、ダイヤモンド焼結体6は、ドリル本体1における径方向での長さaが、切刃5の外径Dに対して、D/3以下に設定され、さらに、ドリル本体1における軸線O方向での長さbが、切刃の外径Dに対して、D/3+5mm以下に設定されていることにより、比較的量の多い切り屑が生成される切刃外周部5Aにおいて、切刃強度と切屑排出性を必要十分に確保して、高価であるダイヤモンド焼結体6を無駄に使用することがなく、コストを低減させることができる。
【0032】
なお、本実施形態においては、ダイヤモンド焼結体6上を通る切刃外周部5Aのすくい面を、第1すくい面7A及び第2すくい面7Bの2つの面によって構成しているが、これに限定されることなく、例えば、切刃外周部5Aのすくい面を、軸線O方向に配列される3つ以上の面(第1すくい面,第2すくい面,…,第nすくい面)によって構成し、それらのすくい角(β1,β2,…,βn)を軸線O方向の後端側に向けて順次大きくするようにしてもよいし、また、切刃外周部5Aのすくい面を、そのすくい角を軸線O方向の後端側に向けて連続的に大きくするようにしてもよい。
さらに、本実施形態においては、硬質焼結体として、ダイヤモンド焼結体6を用いているが、これに限定されることなく、cBN焼結体等の他の硬質焼結体を用いることも可能である。
【0033】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、硬質焼結体上を通る少なくとも切刃の外周側部分を硬度の高い硬質焼結体によって形成したため、その切刃強度を高く保つとともに、耐摩耗性の向上を図ることができる
しかも、硬質焼結体によって形成された切刃の少なくとも外周側部分に与えられるすくい角が、切屑排出溝のねじれ角よりも小さく設定されていることに加えて、後端側に向けて大きくなるように設定されていることから、切屑排出溝のねじれ角を切屑排出性を良好に保つためにある程度の大きさに設定しながらも、硬質焼結体上を通る切刃の刃先角が大きく確保できるので、切刃の少なくとも外周側部分が硬質焼結体によって形成されていることとも相俟って、より高い切刃強度を得ることが可能となり、ドリル本体の一層の寿命の延長を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態による硬質焼結体付ドリルの側面図である。
【図2】図1に示す硬質焼結体付ドリルを軸線方向の先端側から見た先端面図である。
【図3】図2におけるA方向矢視図である。
【符号の説明】
1 ドリル本体
1A 先端逃げ面
3 刃先部
4 切屑排出溝
4A 切屑排出溝のドリル回転方向を向く壁面
5 切刃
5A 切刃外周部
6 ダイヤモンド焼結体(硬質焼結体)
7 ダイヤモンド焼結体の一方の面
7A 第1すくい面
7B 第2すくい面
a ダイヤモンド焼結体の径方向の長さ
b ダイヤモンド焼結体の軸線方向の長さ
O 軸線
T ドリル回転方向
α 切屑排出溝のねじれ角
β1 第1すくい面のすくい角
β2 第2すくい面のすくい角
【発明の属する技術分野】
本発明は、ドリル本体先端の切刃部分が、硬質焼結体によって形成された硬質焼結体付ドリルに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
一般に、穴明け加工に用いられるドリルは、例えば超硬合金やハイス鋼などの材料から構成され、軸線回りに回転される外形略円柱状のドリル本体の先端部外周に、一対の切屑排出溝が形成されているものである。
この切屑排出溝は、ドリル本体の先端逃げ面から後端側に向けて、軸線回りにドリル回転方向の後方側に一定のねじれ角でねじれる螺旋状をなしており、さらに、切屑排出溝のドリル回転方向を向く壁面と、先端逃げ面との交差稜線部に切刃が形成される。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、このような従来のドリルの切刃は、超硬合金やハイス鋼などのドリル本体と同一の材料で構成されるため、その硬度を十分に確保できないで、高い切刃強度を得ることができず、また、耐摩耗性に乏しいという欠点がある。
また、切屑排出溝のドリル回転方向を向く壁面の先端側部分が、切刃のすくい面をなすことになるため、この切刃に与えられるすくい角が、切屑排出溝のねじれ角と同一となってしまう。それゆえ、切屑排出性を確保するために、切屑排出溝のねじれ角にある程度の大きさの角度を設定してしまうと、これと同時に、切刃のすくい角も大きくなって刃先角が小さくなってしまい、この切刃が超硬合金やハイス鋼等の材料で構成されることとも相俟って、さらなる切刃強度の低下を招いてしまう。
とくに、深穴加工では、その切屑排出性が重要視されるために、切屑排出溝のねじれ角をより大きく設定したドリルが用いられることが多く、上記のような傾向が顕著になってしまっていた。
【0004】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたもので、切屑排出性を良好に保つとともに、切刃強度の高いドリルを提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決して、このような目的を達成するために、本発明は、軸線回りに回転される外形略円柱状のドリル本体の先端部外周に、前記軸線回りにねじれる切屑排出溝が形成され、この切屑排出溝のドリル回転方向を向く壁面の先端側の少なくとも外周部に硬質焼結体が設けられて、前記ドリル本体の先端中心部からこの硬質焼結体上を通って該ドリル本体の外周に達する切刃が形成されるとともに、前記硬質焼結体上を通る切刃のすくい角が、前記切屑排出溝のねじれ角よりも小さく、かつ、前記軸線方向の後端側に向けて大きくされていることを特徴とするものである。
このような構成とすると、切刃の少なくとも外周側部分が硬度の高い硬質焼結体によって形成されるため、その切刃強度を高く保つとともに、耐摩耗性の向上を図ることができる。なお、この硬質焼結体は、ダイヤモンド焼結体であることが好ましい。
また、硬質焼結体によって切刃の少なくとも外周側部分を構成すると、この切刃に連なるすくい面も硬質焼結体によって構成されることとなり、このすくい面のすくい角のみを適宜自由に設定することが可能となる。それゆえ、本発明では、硬質焼結体上を通る切刃のすくい角を、切屑排出溝のねじれ角よりも小さく設定したことにより、切屑排出性を良好に保つために切屑排出溝のねじれ角をある程度の大きさに設定したとしても、硬質焼結体上を通る切刃のすくい角がさほど大きくならないので、この切刃の刃先角を大きく確保できることとなって、高い切刃強度を得ることが可能となる。
さらに、硬質焼結体上を通る切刃のすくい角を、軸線方向の後端側に向けて大きくするように設定したことで、この切刃に近い部分では、適度に小さいすくい角を与えて、切刃強度を確保しながらも、この切刃から軸線方向の後端側に遠ざかった部分では、すくい角を大きくしていって、切屑排出性を良好に維持することに貢献できる。
【0006】
また、硬質焼結体上を通る切刃のすくい角を軸線方向の後端側に向けて大きくするには、例えば、硬質焼結体上を通る切刃のすくい面が、軸線方向に配列される複数の面(第1すくい面、第2すくい面、…、第nすくい面)から構成された多段面状に形成することで可能である。
【0007】
また、切屑排出溝のねじれ角を大きく設定しすぎると、切り屑詰まりが発生してしまうおそれが生じるので、切屑排出溝のねじれ角は、40゜以下に設定されていることが好ましい。
さらに、切屑排出溝のねじれ角と、硬質焼結体上を通る切刃の最小すくい角との差を大きく設定しすぎてしまうと、硬質焼結体上を通る切刃のすくい角が小さくなりすぎ、この切刃に過大な切削抵抗がかかるので、切屑排出溝のねじれ角と、硬質焼結体上を通る切刃の最小すくい角との差は、30゜以下に設定されていることが好ましい。
【0008】
また、硬質焼結体は、ドリル本体における径方向での長さが、切刃の外径Dに対して、D/3以下に設定され、さらに、ドリル本体における軸線方向での長さが、切刃の外径Dに対して、1D以下に設定されていることが好ましい。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態を添付した図面を用いて説明する。
図1は本発明の実施形態による硬質焼結体付ドリルの側面図、図2は図1に示す硬質焼結体付ドリルを軸線方向の先端側から見た先端面図、図3は図2におけるA方向矢視図である。
【0010】
本実施形態による硬質焼結体付ドリルのドリル本体1は、超硬合金等の硬質材料によって軸線Oを中心とする外形略円柱状に形成されており、その後端側(図1において右側)がシャンク部2とされて、このシャンク部2が工作機械の回転軸に取り付けられることにより、図中に符号Tで示すドリル回転方向に回転させられて穴明け加工に使用される。
【0011】
また、ドリル本体1の先端部(図1において左側部分)は刃先部3とされ、この刃先部3の外周には、軸線Oを挟んで互いに反対側に一対の切屑排出溝4,4が、ドリル本体1の先端逃げ面1Aから刃先部3の全長に亘って軸線Oに対して対称となるように形成されている。なお、この刃先部3は、切屑排出溝4,4も含めて軸線Oに関して対称となるように形成されている。
【0012】
切屑排出溝4,4は、軸線Oに直交する断面において、ドリル回転方向Tを向く壁面4Aと、この壁面4Aに滑らかに接続され、ドリル回転方向Tの後方側を向いて、ドリル回転方向T側に凸となる断面曲線状をなす壁面4Bとから構成されている。そして、これら切屑排出溝4,4は、先端逃げ面1Aから後端側に向けてドリル回転方向Tの後方側に一定のねじれ角αでねじれる螺旋状をなしている。
このとき、切屑排出溝4,4のねじれ角αは、5゜≦α≦40゜の範囲に設定されており、本実施形態においては、α=35゜に設定されている。
【0013】
また、周方向において両切屑排出溝4,4間に画成される刃先部3の外周面は、周方向で両切屑排出溝4,4にそれぞれ隣接する部分が軸線Oを中心とした断面円弧状をなすマージン部とされるとともに、これらマージン部の間の部分は、このマージン部よりわずかに小径の軸線Oを中心とする断面円弧状とされた2番取り面が形成されている。
【0014】
一方、先端逃げ面1Aは、軸線Oを中心とした概略円錐面状とされるとともに、切屑排出溝4,4の開口部から軸線O回りにドリル回転方向Tの後方側に向かうにしたがい漸次後退するように形成されて、逃げが与えられている。
さらに、この先端逃げ面1Aと両切屑排出溝4,4のドリル回転方向Tを向く壁面4A,4Aとの交差稜線部、すなわち壁面4A,4Aの先端縁には、先端逃げ面1A上における軸線O周辺の先端中心部Cから外周側に向けて延びる略直線状の切刃5,5がそれぞれ形成されている。
【0015】
また、先端逃げ面1Aが概略円錐面状とされていることにより、切刃5,5は、先端逃げ面1A上の先端中心部Cから外周側に向かうにしたがい略直線状に後端側に向かうように傾斜させられ、これによって両切刃5,5には所定の先端角が与えられる。
【0016】
そして、これらの切刃5,5はその切刃外周部5A,5Aが、それぞれダイヤモンド焼結体6,6上(硬質焼結体)に形成されている。
すなわち、本実施形態では、切屑排出溝4のドリル回転方向Tを向く壁面4Aの先端外周側の部分に、この壁面4Aから一段凹んで先端逃げ面1A及び外周面に開口する凹部9が形成され、この凹部9に、略平板状をなす硬質焼結体としてのダイヤモンド焼結体6が、その一方の面7をドリル回転方向Tに向けた状態で、一方の面7に対向する他方の面8をドリル本体1にろう付けすることにより接合されて取り付けられている。
【0017】
このダイヤモンド焼結体6のドリル回転方向Tを向く一方の面7は、切刃外周部5Aのすくい面とされるとともに、ダイヤモンド焼結体6の軸線O方向の先端側を向く面は、先端逃げ面1Aと面一となるように逃げが与えられ、これらの面の交差稜線部に切刃外周部5Aが形成されているのである。
【0018】
また、図1及び図3に示すように(図3においては、主要部だけを示しており、先端逃げ面等は示していない)、ダイヤモンド焼結体6におけるドリル回転方向Tを向いて切刃外周部5Aのすくい面とされる一方の面7は、軸線O方向に沿って配列された複数の面から構成された多段面状をなしており、本実施形態においては、この切刃外周部5Aのすくい面が、軸線O方向の先端側から後端側に向けて順に配列された、第1すくい面7A及び第2すくい面7Bの2つの面によって構成された多段面状をなしている。
なお、第1すくい面7Aと第2すくい面7Bとの交差稜線部は、軸線O方向に直交する方向に延びる略直線状をなしている(軸線O方向に沿って配列された複数の面同士の交差稜線部が、軸線O方向に直交する方向に延びる略直線状をなしている)。
【0019】
これら第1すくい面7A,第2すくい面7Bについては、第1すくい面7Aに与えられるすくい角β1(軸方向すくい角)が、第2すくい面7Bに与えられるすくい角β2(軸方向すくい角)よりも小さくなっていて(β2>β1)、本実施形態においては、例えば、β1=15゜、β2=25゜に設定されている。
つまり、切刃外周部5Aのすくい面(第1すくい面7A,第2すくい面7B)に与えられるすくい角(β1,β2)が、軸線O方向の後端側に向けて大きくなるように設定されているのである。
【0020】
さらに、これら第1すくい面7Aのすくい角β1及び第2すくい面7Bのすくい角β2は、切屑排出溝4のねじれ角αよりも小さく(α>β2>β1)、かつ、α−β1≦30゜となるように設定されており、本実施形態においては、α−β1=20゜に設定されている。
つまり、切刃外周部5Aのすくい面における最小すくい角(第1すくい面7Aのすくい角β1)と、切屑排出溝4のねじれ角αとの差が、30゜以下に設定されているのである。
【0021】
また、このダイヤモンド焼結体6の大きさについて説明すれば、ドリル本体1における径方向の長さa、すなわち、図2に示すように、軸線O方向の先端側から見たときにおいて、ダイヤモンド焼結体6の、ドリル本体1の径方向における最大長さが、切刃5の外径D(マージン部を円弧とする仮想の円の直径)に対して、3/D以下となるように設定され、さらに、ダイヤモンド焼結体6のドリル本体1の軸線O方向の長さb、すなわち、図1に示すように、軸線Oに直交する方向から見たときにおいて、ダイヤモンド焼結体6の、ドリル本体1の軸線O方向での最大長さが、切刃5の外径Dに対して、1D以下となるように設定されている。
【0022】
一方、切屑排出溝4のドリル回転方向Tを向く壁面4Aと、ドリル回転方向Tの後方側を向く壁面4Bとの交差部分の先端側には、図2に示すように、これら壁面4A,4Bに対して鈍角に交差して先端側に向かうにしたがい軸線O側に向けて傾斜するシンニング面10が、ドリル本体1の先端中心部Cに向けて形成されている。
【0023】
このシンニング面10は、その先端逃げ面1Aとの交差稜線部、すなわち、シンニング面10の先端逃げ面1A側の開口縁が、軸線O方向の先端側から見たときに、図2に示すように、軸線Oに向けて凸となる曲線を描いて軸線Oに接近する略円弧状の部分から、その両端が、切屑排出溝4のドリル回転方向Tの後方側を向く壁面4Bと、ドリル回転方向Tを向く壁面4Aとに略直線状に切れ上がっており、この開口縁の切屑排出溝4のドリル回転方向Tを向く壁面4Aに略直線状に切れ上がる部分が、切刃5の切刃内周部5Bの一部を構成している。
【0024】
これにより、切刃5は、シンニング面10の開口縁及び切屑排出溝4のドリル回転方向Tを向く壁面4Aと先端逃げ面1Aとの交差稜線部に形成された形成された切刃内周部5Bと、この切刃内周部5Bに連続して、ダイヤモンド焼結体6上に形成された切刃外周部5Aとによって構成されて、先端中心部Cからドリル本体1の外周まで達することになる。
また、両切刃5,5の切刃内周部5B,5Bは、軸線O方向の先端側から見て軸線Oを越えて反対側に突き出すことはなく、これら切刃内周部5B,5B間には軸線Oに交差するチゼル部が画成されている。
【0025】
上述のような構成とされた本実施形態による硬質焼結体付ドリルによれば、切刃外周部5Aがダイヤモンド焼結体6上に形成されており、このダイヤモンド焼結体6が一般的な工具材料として用いられる超硬合金やハイス綱などの比べて高硬度であって耐摩耗性に優れるという性質を有することから、切刃外周部5Aに高い切刃強度を与えるとともに、その耐摩耗性を向上させることができて、ドリル本体1の寿命を延長させることができる。
【0026】
また、本実施形態のように、ダイヤモンド焼結体6によって切刃外周部5Aが構成され、この切刃外周部5Aに連なるすくい面(第1すくい面7A,第2すくい面7B)もダイヤモンド焼結体6によって構成される場合には、切屑排出溝4のねじれ角αの大きさに関わらず、このすくい面(第1すくい面7A,第2すくい面7B)のすくい角(β1,β2)のみを適宜自由に設定することが可能となる。
【0027】
それゆえ、ドリル本体1の切屑排出溝4のねじれ角αは、切屑排出性を考慮して設定し、切刃外周部5Aの第1すくい面7A及び第2すくい面7Bのすくい角β1,β2は、切屑排出溝4のねじれ角αよりも小さく設定することにより、切屑排出性を良好に保ちつつも、ダイヤモンド焼結体6上を通る切刃外周部5Aのすくい角β1,β2をさほど大きく設定せずに、切刃外周部5Aの刃先角を大きく確保できることとなり、切刃外周部5Aに対して、より高い切刃強度を与えることが可能となる。
【0028】
さらに、このとき、切刃外周部5Aの第1すくい面7Aと第2すくい面7Bとに与えられるすくい角β1,β2が、β1<β2とされて、軸線O方向の後端側に向けて大きくされていることから、切刃外周部5Aに近い部分である第1すくい面7Aには、切れ味を考慮しつつも適度に小さいすくい角β1を与えて、その切刃強度を確保し、切刃外周部5Aから遠ざかった部分である第2すくい面7Bには、適度に大きいすくい角β2を与えて、切屑排出性を良好に維持することに貢献できるのである。
【0029】
これにより、本実施形態による硬質焼結体付ドリルが、深穴加工に用いられるドリルのように、切屑排出性を重要視して、切屑排出溝4のねじれ角αを大きく設定した強ねじれの場合であったとしても、その切刃外周部5Aの強度を十分に確保することが可能となって、切屑排出性を良好に維持することと切刃強度を高く保つことの両立を図ることができる。
【0030】
ここで、切屑排出溝4のねじれ角αが小さくなりすぎると、良好な切屑排出性を得ることができなくなり、また、逆にねじれ角αが大きくなりすぎると、切り屑詰まりが発生してしまうおそれが生じるので、この切屑排出溝のねじれ角αは、40゜以下に設定することが好ましい。
さらに、切屑排出溝4のねじれ角αと、切刃外周部5Aの第1すくい面7Aのすくい角β1(最小すくい角)との差α−β1が大きくなりすぎると、切刃外周部5Aのすくい角βが小さくなりすぎることとなって、切刃外周部5Aに過大な切削抵抗が加わってしまうので、このねじれ角αとすくい角β1との差α−β1は、30゜以下に設定することが好ましい。
【0031】
また、ダイヤモンド焼結体6は、ドリル本体1における径方向での長さaが、切刃5の外径Dに対して、D/3以下に設定され、さらに、ドリル本体1における軸線O方向での長さbが、切刃の外径Dに対して、D/3+5mm以下に設定されていることにより、比較的量の多い切り屑が生成される切刃外周部5Aにおいて、切刃強度と切屑排出性を必要十分に確保して、高価であるダイヤモンド焼結体6を無駄に使用することがなく、コストを低減させることができる。
【0032】
なお、本実施形態においては、ダイヤモンド焼結体6上を通る切刃外周部5Aのすくい面を、第1すくい面7A及び第2すくい面7Bの2つの面によって構成しているが、これに限定されることなく、例えば、切刃外周部5Aのすくい面を、軸線O方向に配列される3つ以上の面(第1すくい面,第2すくい面,…,第nすくい面)によって構成し、それらのすくい角(β1,β2,…,βn)を軸線O方向の後端側に向けて順次大きくするようにしてもよいし、また、切刃外周部5Aのすくい面を、そのすくい角を軸線O方向の後端側に向けて連続的に大きくするようにしてもよい。
さらに、本実施形態においては、硬質焼結体として、ダイヤモンド焼結体6を用いているが、これに限定されることなく、cBN焼結体等の他の硬質焼結体を用いることも可能である。
【0033】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、硬質焼結体上を通る少なくとも切刃の外周側部分を硬度の高い硬質焼結体によって形成したため、その切刃強度を高く保つとともに、耐摩耗性の向上を図ることができる
しかも、硬質焼結体によって形成された切刃の少なくとも外周側部分に与えられるすくい角が、切屑排出溝のねじれ角よりも小さく設定されていることに加えて、後端側に向けて大きくなるように設定されていることから、切屑排出溝のねじれ角を切屑排出性を良好に保つためにある程度の大きさに設定しながらも、硬質焼結体上を通る切刃の刃先角が大きく確保できるので、切刃の少なくとも外周側部分が硬質焼結体によって形成されていることとも相俟って、より高い切刃強度を得ることが可能となり、ドリル本体の一層の寿命の延長を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態による硬質焼結体付ドリルの側面図である。
【図2】図1に示す硬質焼結体付ドリルを軸線方向の先端側から見た先端面図である。
【図3】図2におけるA方向矢視図である。
【符号の説明】
1 ドリル本体
1A 先端逃げ面
3 刃先部
4 切屑排出溝
4A 切屑排出溝のドリル回転方向を向く壁面
5 切刃
5A 切刃外周部
6 ダイヤモンド焼結体(硬質焼結体)
7 ダイヤモンド焼結体の一方の面
7A 第1すくい面
7B 第2すくい面
a ダイヤモンド焼結体の径方向の長さ
b ダイヤモンド焼結体の軸線方向の長さ
O 軸線
T ドリル回転方向
α 切屑排出溝のねじれ角
β1 第1すくい面のすくい角
β2 第2すくい面のすくい角
Claims (7)
- 軸線回りに回転される外形略円柱状のドリル本体の先端部外周に、前記軸線回りにねじれる切屑排出溝が形成され、
この切屑排出溝のドリル回転方向を向く壁面の先端側の少なくとも外周部に硬質焼結体が設けられて、前記ドリル本体の先端中心部からこの硬質焼結体上を通って該ドリル本体の外周に達する切刃が形成されるとともに、
前記硬質焼結体上を通る切刃のすくい角が、前記切屑排出溝のねじれ角よりも小さく、かつ、前記軸線方向の後端側に向けて大きくされていることを特徴とする硬質焼結体付ドリル。 - 請求項1に記載の硬質焼結体付ドリルにおいて、
前記硬質焼結体上を通る切刃のすくい面が、前記軸線方向に配列される複数の面から構成された多段面状となっていることを特徴とする硬質焼結体付ドリル。 - 請求項1または請求項2に記載の硬質焼結体付ドリルにおいて、
前記切屑排出溝のねじれ角が、40゜以下に設定されていることを特徴とする硬質焼結体付ドリル。 - 請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の硬質焼結体付ドリルにおいて、
前記切屑排出溝のねじれ角と、前記硬質焼結体上を通る切刃の最小すくい角との差が、30゜以下に設定されていることを特徴とする硬質焼結体付ドリル。 - 請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の硬質焼結体付ドリルにおいて、
前記硬質焼結体は、前記ドリル本体における径方向での長さが、前記切刃の外径Dに対して、D/3以下に設定されていることを特徴とする硬質焼結体付ドリル。 - 請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の硬質焼結体付ドリルにおいて、
前記硬質焼結体は、前記ドリル本体における軸線方向での長さが、前記切刃の外径Dに対して、1D以下に設定されていることを特徴とする硬質焼結体付ドリル。 - 請求項1乃至請求項6に記載の硬質焼結体付ドリルにおいて、
前記硬質焼結体が、ダイヤモンド焼結体であることを特徴とする硬質焼結体付ドリル。
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-
2002
- 2002-07-19 JP JP2002211268A patent/JP2004050353A/ja active Pending
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