JP3955798B2 - 回転切削工具 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本願発明は、ダイヤモンドコンパクトからなる超硬質チップを用いて切刃を構成した、リーマ、ドリル等穿孔用回転切削工具に関し、さらに詳細に言えば、穿孔の際に生じる切粉すなわち切屑が微細化され、且つ切粉の工具切刃への溶着が起こり難い回転切削工具に関する。
【0002】
【従来の技術】
ダイヤモンド或はCBNコンパクトからなる超硬質チップを用いて切刃を構成した工具は、これらコンパクトの硬度が高く、また切刃への被削材の溶着が起こり難いので、特に高能率を要求される切削加工に広く使用されている。しかしこの工具は切削性に優れるところから連続した長い切粉が発生するために、リーマ、ドリル等の穿孔用工具では切粉の排出が困難になり、切粉により被削材の被加工面に傷が付けられるという問題がある。
【0003】
これに対処するものとして、工具の切刃に丸め処理を施し、切刃の鋭利性すなわち切削性を若干落とし、これにより切粉の微細化を図る技術が知られている。しかし、丸め処理を施すと切削抵抗が増大し、これにより切粉が切刃へ溶着し易くなり、この溶着した切粉により被削材が傷付けられる場合が生じる。特に切刃の径方向外側端部は孔の内周面を形成する部分であり、この部分に切粉が溶着すると、切削した孔の内周面を傷付けるばかりでなく、寸法精度にも影響を与える。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本願発明は上記従来技術における問題点に鑑みてなされたものであり、本願発明は、切粉が微細化してその排出が容易であり、且つ切粉の工具切刃への溶着が起こり難い回転切削工具を提供することをその課題とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、本発明に係る回転切削工具は、軸状のシャンクの一端側先端部にダイヤモンドコンパクトからなる超硬質チップを固着し、このチップの、シャンクの軸方向先端部に、シャンクの中心部側から径方向外方へ伸びる切刃を形成し、この切刃を、シャンクの中心部側から径方向外方所定の位置までの内方部と、シャンクの径方向においてこの内方部の外側に位置する外方部とで構成し、切刃の内方部は外方部よりその切削性が鈍化されている。そして外方部の切刃の長さを0.1mm乃至0.5mmとした。
【0006】
ある実施の形態では、切刃の内方部と外方部とは、シャンクの中心軸線に対する角度が異なるように形成されている。
【0007】
他の実施の形態では、切刃の外方部は、内方部より、シャンクの軸線方向においてシャンクの他端側へ後退した位置に形成されている。
【0008】
他の実施の形態では、切刃の内方部は、該切刃を丸めることによりその切削性が鈍化されている。
【0009】
さらに他の実施の形態では、切刃の内方部は、すくい面の内の、少なくとも切刃の内方部から所定の幅の範囲の切刃側すくい面を、該切刃側すくい面と逃がし面とが画成する角度が、外方部におけるすくい面と逃がし面とが画成する角度より大きくなるように、傾斜させることにより、その鋭利性が鈍化されている。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本願発明の実施の形態を説明するが、本願発明の範囲は、以下に説明される実施の形態に限定されるものではない。
【0011】
図1は本願発明の第1の実施の形態に係る回転切削工具、具体的にはリーマ1を示す図であり、(イ)は部分正面図、(ロ)はその側面図である。また、図2は図1(イ)におけるA部の拡大図である。
【0012】
図において、符号2は螺旋状の切粉排出溝3を備えた軸状のシャンクであり、その一端側先端部にはダイヤモンドコンパクトからなる超硬質チップ4が固着され、切刃5を構成している。切刃5はシャンク2の中心部から径方向外方へ、図示の通り斜めに延びて形成されている。以上の構成は公知であり、チップ4の形状も特に図示のものに限定されるものではなく、シャンク2の中心部側から径方向外方へ伸びる切刃5が形成されていればよい。
【0013】
本実施の形態でのリーマ1の切刃5は、シャンク2の中心部側から径方向外方所定の距離までの内方部5aと、その径方向外側の外方部5bとから構成される。本実施の形態では、切刃5の内方部5aと外方部5bとは連続して直線状に形成されているが、内方部5aと外方部5bとではその状態或いは構成が異なる。すなわち、外方部5bはきわめて鋭いエッジ状に形成されているが、内方部5aについては図2に斜線を施した部分において、その切刃5aの鋭利性を鈍化させる鈍化処理が施されている。これについて図3を参照して説明する。
【0014】
図3は図2のB―B線での断面端面図である。符号7はすくい面、8は逃がし面である。図に示されるように、切刃5の内方部5aには丸め処理が施され、これにより、破線で示される外方部5bに比して、その鋭利性が鈍化されている。この丸め処理は、例えばホーニングを利用したR加工により行うことができる。
【0015】
このように切刃5は、その内方部5aが丸められて鋭利性が鈍化され、外方部5bにおいては鋭いエッジの状態となっており、この構成を備えたリーマ1で穿孔加工をすると、内方部5aの作用により切粉が微細化され、長い連続したものとはならず、切粉の排出がきわめて容易となる。またこれにより、切粉により被削材を傷付けることがなくなる。一方、外方部5bは鋭いエッジに形成されており、高い切削性を有するので、この部分に切粉が溶着することがない。従って、所望通りの加工精度を得ることができるとともに、溶着物により被削材を傷付けることもない。本実施の形態では、切粉の排出溝3が螺旋状に形成されており、この構成も切粉の排出を容易にする点で効果がある。
【0016】
なお、超硬質チップ4としては鉄系の切削に適した CBN コンパクトの採用も考えられるが、本発明では非鉄系金属、樹脂等の切削に適したダイヤモンドコンパクトを採用した。また各部寸法はリーマ1の仕様に応じて適宜定めることができるが、外方部5bのエッジの断面の半径Rは20μm以下、好ましくは10μm以下が望ましい。またこの外方部5bの長さL(図2参照)は0.1乃至0.5mmが望ましい。また、内方部5aの丸め部分の半径は20μm乃至100μm、好ましくは30乃至50μmが望ましい。
【0017】
上記の実施の形態では、内方部5aの鈍化はその内方部5aを丸めることにより行われたが、鈍化処理はこの方法に限定されない。図4は、他の方法により内方部5aを鈍化させた第2の実施の形態を示す図であり、上述の第1の実施の形態での図3に対応する図である。
【0018】
この第2の実施の形態では、第1の実施の形態でのR加工に代わってチャンファ加工が施されている。すなわち、例えば図2で斜線で示した部分のような、すくい面7のうちの切刃6aから所定の幅の範囲である切刃側すくい面7aが、すくい面7の残余の部分に対して図示の通り所定の角度で傾斜して形成され、切刃側すくい面7aと逃がし面8との間で画成する角度が、図中点線で示された如く、外方部6においてすくい面7と逃がし面8との間に画成される角度より大きくなっており、これにより内方部5aが外方部5bに比してその切削性が鈍化されている。なお、切刃側すくい面7aの寸法はリーマの仕様により適宜定め得るが、図4における幅Mは50乃至200μm、角度αは5乃至25度が望ましい。
【0019】
図6は第3の実施の態様に係るリーマ31を示す図で、(イ)は部分正面図であり、(ロ)は(イ)でのC部の拡大図である。この実施の形態に係るリーマ31は、シャンク32の先端が平らな平頭型であり、また切粉排出溝33がシャンク32の軸線方向に真っ直ぐ伸びるタイプである。その先端に取付けられるチップ34の形状は、前述の第1及び第2の実施の形態のものと異なり、先端中心側が平らで、外方側が傾斜状になり、この傾斜部分が切刃35となっている。
【0020】
図の(ロ)を参照すると、切刃35は第1及び第2の実施例と同様に連続した形となっているが、本実施の形態での特徴は、切刃35の内方部35aに対して外方部35bが所定の角度で傾斜している。すなわち、シャンク32の軸線に対する、内方部35aと外方部35bの傾き角が異なり、外方部35bとシャンク32の軸線とが挟む角度の方が小さくなっている。
【0021】
図(ロ)中において斜線を施した部分は、切刃36のうちの内方部36aの切削性を鈍化させるための鈍化処理を施してある部分である。この鈍化処理は、第1の実施の形態で説明した方法と、第2の実施の形態で説明した方法とのいずれであっても良く、その際の各部寸法は所望に応じて適宜決定することができる。外方部35bは勿論内方部35aより鋭いエッジ状に形成されており、切削性に優れている。すなわち、本実施の形態が第1、第2の実施の形態と異なる主たる点は、内方部35aと外方部35bとがそれぞれシャンク32の軸線に対する角度が異なる点である。この実施の形態では、上述の如く内方部35aと外方部35bとが角度を変えて形成されているが、この形状の形成は比較的に容易に行うことができ、製造コストは高くならない。
【0022】
図5は第4の実施の形態に係るリーマ41を示す図で、(イ)は部分正面図、(ロ)は(イ)の符号D部の拡大図である。このリーマ41のシャンク42は第1、第2の実施の形態でのそれと同様に尖頭型であるが、その切粉排出溝43は第3の実施の形態と同じく、直線型である。そして、チップ44の形状は概略第1及び第2の実施の形態のそれと同じであるが、切刃45の形状は第3の実施の形態のそれに似ており、内方部45aに対して外方部45bが所定の角度で傾斜しており、すなわち、それぞれの部分のシャンク42の軸線に対する傾き角が異なっている。
【0023】
図7は第5の実施の形態に係るリーマ51を示す部分正面図である。このリーマ51はその切粉排出溝53が螺旋状に形成されている以外は、図6の実施の形態と同じである。図中符号Eで示された部分の詳細も、図6の(ロ)に示されたものと同じで良いので、その図示を省略する。
【0024】
図8は第6の実施の形態に係るリーマ61を示す部分正面図である。このリーマ61はその切粉排出溝63が螺旋状に形成されている以外は、図5の実施の形態と同じである。図中符号Fで示された部分の詳細も、図5の(ロ)に示されたものと同じで良いので、その図示を省略する。
【0025】
図9は第7の実施の形態に係るリーマ71を示す図で、(イ)は部分正面図、(ロ)は(イ)の符号Gで示される部分の拡大図である。この実施の形態の特徴は、切刃75の内方部75aと外方部75bとが連続して形成されていない点である。すなわち、外方部75bは、内方部75aに対して、シャンク72の軸線方向において後退した、すなわちシャンク72のチップ74の取付けられた一端側から遠ざかる方向に、内方部75aから所定の距離を隔てて形成されている。内方部75aと外方部75bとのシャンク72の軸線に対する傾きは本実施の形態では同じとしてあるが、これに限定はされない。なお図の(ロ)において斜線を施した内方部75aの鈍化処理部分は、前述した図3、4に示したいずれかの処理が施してある。また、図(ロ)から明らかなとおり、外方部75bのシャンク72の径方向内側端部に隣接した部分において、逃げ79が形成されている。また、切粉の排出溝73は直線型である。この実施の形態では、外方部75bの長さL或いはL‘の寸法を正確に出すことができる。
【0026】
図10は第8の実施の形態に係るリーマ81を示す図で、(イ)は部分正面図、(ロ)は(イ)の符号Hで示す部分の拡大図である。このリーマ81を第7の実施の形態と比較すると、シャンク82が尖頭型であること、内方部85aと外方部85bの傾き角度が第7の例と異なる点を除き、第7の実施の形態と同じである。
【0027】
図11と12はそれぞれ第9及び10の実施の形態を示す図で、図9、10の例にそれぞれ対応して示されており、それぞれ、切粉の排出溝93、103が螺旋型であり、外方部95b、105bの内側端部に隣接して逃がしが形成されていない点で、図9、10の例と異なるだけである。
【0028】
図13は、さらに第11の実施の形態に係るリーマ111を示す図であり、シャンク112の先端部の、チップ114を取付けた部分のみを示す部分拡大図である。この実施の形態の特徴は、チップ114として、内側チップ114aと114bの二つが図示のごとく取付けられ、それぞれ、シャンク112の径方向内側と外側に位置する内側切刃115と外側切刃116とを構成している点である。図示の通り、内側切刃115と外側切刃116のいずれも、シャンク112の径方向中心部側から外方へ延びる切刃となっている。外側切刃116は内側切刃115に対して、シャンク112の先端から遠ざかる方向に所定の距離だけ離れて形成されている。
内側切刃115と外側切刃116は、それぞれ前述した第7乃至第10の実施の形態での切刃の構成と同様の構成をしており、シャンク112の軸方向で所定の距離だけ離れて配置された、内方部115a、116aと、外方部115b、116bとで構成されており、内方部115a、116aには前述した鈍化処理が施され、その切削性がそれぞれ外方部115b、116bに対して若干劣るように構成されている。この実施の形態は、例えば径の異なる二段に形成される孔を同時に加工する場合などに適用するときわめて好都合である。
なお、上記の説明においては回転切削工具としてリーマを例として説明したが、上記した各構成は例えばドリル等他の回転切削工具にも適用可能である。その際に、各工具に適応するように、上述した各構成に、本願発明の技術的本質を維持したまま、改変を加えることは可能である。
【0029】
【発明の効果】
上記の通り、本願発明においては、ダイヤモンドコンパクトからなる超硬質チップにより形成した切刃を、シャンクの径方向で見て内方の内方部と、外側の外方部とで構成し、内方部の切刃に丸め加工その他の加工を施すことにより、その切削性を鈍化した。したがって、その内方部の作用により切粉は微細化される。したがって、切粉の排出性に優れ、切粉により被削材が傷付けられることが防止される。また、外方部の切刃は鋭いエッジ状態が維持され、その切削性が維持されているので、切刃に被削物が溶着することが防止され、溶着物により被削材が傷付けられることはなく、加工寸法精度も優れたものとなる。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1の実施の形態に係る回転切削工具、リーマを示す図である。
【図2】切刃部分の拡大図である。
【図3】図2のB−B線での断面端面図である。
【図4】第2の実施の形態を示す図で、第1の形態の図3に対応する図である。
【図5】第3の実施の形態に係るリーマを示す図である。
【図6】第4の実施の形態に係るリーマを示す図である。
【図7】第5の実施の形態に係るリーマを示す図である。
【図8】第6の実施の形態に係るリーマを示す図である。
【図9】第7の実施の形態に係るリーマを示す図である。
【図10】第8の実施の形態に係るリーマを示す図である。
【図11】第9の実施の形態に係るリーマを示す図である。
【図12】第10の実施の形態に係るリーマを示す図である。
【図13】第11の実施の形態に係るリーマを示す図である。
【符号の説明】
1 回転切削工具
2 シャンク
3 切粉排出溝
4 超硬質チップ
5 切刃
5a 内方部切刃
5b 外方部切刃
7 すくい面
8 逃がし面
Claims (5)
- 軸状のシャンクの一端側先端部にダイヤモンドコンパクトからなる超硬質チップを固着し、前記チップの前記シャンクの軸方向先端部に、前記シャンクの中心部側から径方向外方へ伸びる切刃を形成した回転切削工具において、前記切刃は、前記シャンクの中心部側から径方向外方所定の位置までの内方部と、シャンクの径方向において前記内方部の外側に位置する外方部とで構成され、前記切刃の内方部は前記外方部よりその切削性が鈍化され、前記外方部の切刃の長さが0.1mm乃至0.5mmであることを特徴とする、回転切削工具。
- 請求項1記載の回転切削工具において、前記切刃の内方部と外方部とは、前記シャンクの中心軸線に対する角度が異なるように形成されていることを特徴とする、回転切削工具。
- 請求項1記載の回転切削工具において、前記切刃の外方部は、前記内方部より、前記シャンクの軸線方向において前記シャンクの他端側へ後退した位置に形成されていることを特徴とする、回転切削工具。
- 請求項1乃至3のいずれか1に記載の回転切削工具において、前記切刃の内方部は、該切刃を丸めることによりその切削性が鈍化されていることを特徴とする、回転切削工具。
- 請求項1乃至3のいずれか1に記載の回転切削工具において、前記切刃の内方部は、すくい面のうちの、少なくとも前記内方部から所定の幅の範囲の切刃側すくい面を、該切刃側すくい面と逃がし面とが画成する角度が、前記外方部におけるすくい面と逃がし面とが画成する角度より大きくなるように、傾斜させることにより、その鋭利性が鈍化されていることを特徴とする、回転切削工具。
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