JP2004050032A - 排ガス処理触媒および排ガスの処理方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】排ガス中の有機ハロゲン化合物を分解する触媒であって、主触媒成分として銀の酸化物を含むことを特徴とする排ガス処理触媒および排ガス処理方法が開示されている。この排ガス処理触媒は、必要に応じてコバルトの酸化物を含むことも可能であり、銀の酸化物がAg2Oとして存在し、コバルトの酸化物がCo3O4として存在することが好ましい。
【選択図】 なし
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は排ガス処理触媒および排ガスの処理方法に関し、さらに詳しくは、例えば都市ごみ焼却炉、産業廃棄物焼却炉、化学プラント、製鉄所などから発生する排ガス中に含まれる人体に有害な有機ハロゲン化合物、例えばダイオキシン類や、ハロベンゼン類、ハロフェノール類などのダイオキシン前駆体等を分解、除去する触媒およびこの触媒を使用する排ガスの処理方法に関する。ここで、ダイオキシン類とは、ポリハロジベンゾ−パラ−ジオキシンおよびポリハロジベンゾフランおよびコプラナ−ポリハロビフェニルの総称である。
【0002】
【従来の技術】
従来、都市ごみ焼却炉等の排ガスに含有される有機ハロゲン化合物の処理には、活性炭による吸着除去や触媒による分解除去が行われている。触媒を利用した有機ハロゲン化合物の分解処理としては、これまでアンモニア等を還元剤として用いる脱硝触媒をそのまま、または一部改良して利用することにより、有機ハロゲン化合物とNOXを同時除去する方法が知られている。この場合、触媒自体は有機ハロゲン化合物とNOXの同時処理を前提に設計、製作されたものであり、有機ハロゲン化合物の接触酸化分解の目的に必ずしも最適化されたものではない。
【0003】
特許2633316号公報には、酸化チタン担体に五酸化バナジウムと三酸化タングステンを担持させた触媒を用いてポリ塩素化ジベンゾダイオキシンおよび/またはポリ塩素化ジベンゾフランを分解する技術が開示されている。
【0004】
さらに、特開平10−99646号公報には、担体としてチタニアを用い、バナジウム酸化物、タングステン酸化物および金、銀またはこれらの酸化物を含む触媒を用い、温度100〜350℃において0.5〜25体積%の酸素の存在下で塩素化有機化合物を含有するガスを接触させる塩素化有機化合物の分解方法の発明が提案されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
上記特許2633316号公報に開示された酸化チタン担体に五酸化バナジウムと三酸化タングステンを担持させた触媒は、有機ハロゲン化合物の分解に優れた性能を有するものとして公知の触媒である。上記特開平10−99646号公報では、この酸化チタン担体、五酸化バナジウムおよび三酸化タングステンの組合せに、さらに銀の酸化物(AgO)等を共存させることにより不純物への耐久性が向上する、とされている。このように、特開平10−99646号公報では、触媒の耐久性を向上させることが添加の主目的であり、添加された銀の酸化物等がそれ自体として有機ハロゲン化合物の分解触媒作用を持つかどうかは検討されていない。また、上記公報の実施例中では、AgOを含む場合と含まない場合についての比較は記載されているが、それ以外の酸化物形態については何ら言及されていない。
【0006】
以上のように、排ガス中の有機ハロゲン化合物を分解するための触媒はいくつか提案されているが、その種類は未だ限られており、触媒活性種の組合せによる触媒性能の差異についても十分に検討されているとは言えない。社会問題ともなっているダイオキシン類等の有機ハロゲン化合物の環境放出を防止する上では、有機ハロゲン化合物の分解目的に最適化され、優れた性能を持つ触媒の開発が望まれている。
【0007】
従って、本発明の課題は、ごみ焼却炉等から排出される排ガス中の有機ハロゲン化合物、特に塩素化および臭素化ダイオキシン類を分解、除去するために好適な触媒を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため、請求項1に記載の排ガス処理触媒の発明は、排ガス中の有機ハロゲン化合物を分解する触媒であって、主触媒成分として銀の酸化物を含むことを特徴とする。
この排ガス処理触媒の発明によれば、主触媒成分が銀の酸化物であるため、後記実施例に示すように有機ハロゲン化合物に対する優れた分解活性を有する。
【0009】
すなわち、本発明の触媒は、排ガス中の有機ハロゲン化合物を非常に高効率に分解、除去することができる。したがって、都市ごみ焼却炉などの排ガス中に含まれる有機塩素化合物(塩素化ダイオキシンン類、塩素化ベンゼン類、塩素化フェノール類)や、家電製品などの廃プラスチックの焼却処理設備排ガスに含まれる有機臭素化合物(臭素化ダイオキシン、臭素化ベンゼン類、臭素化フェノール類)などの無害化処理に最適化された触媒である。
【0010】
請求項2に記載の排ガス処理触媒の発明は、排ガス中の有機ハロゲン化合物を分解する触媒であって、主触媒成分として銀の酸化物およびコバルトの酸化物を含むことを特徴とする。
この排ガス処理触媒の発明によれば、主触媒成分として銀の酸化物とコバルトの酸化物とを組合せて用いることにより、後記実施例に示すように有機ハロゲン化合物に対して優れた分解活性を有するものとなる。つまり、活性種として銀の酸化物にコバルトの酸化物を組合せることにより、他の金属酸化物との組合せでは得られない良好な分解性能を奏する。
【0011】
すなわち、本発明の触媒は、排ガス中の有機ハロゲン化合物を非常に高効率に分解、除去することができる。したがって、都市ごみ焼却炉などの排ガス中に含まれる有機塩素化合物(塩素化ダイオキシンン類、塩素化ベンゼン類、塩素化フェノール類)や、家電製品などの廃プラスチックの焼却処理設備排ガスに含まれる有機臭素化合物(臭素化ダイオキシン、臭素化ベンゼン類、臭素化フェノール類)などの無害化処理に最適化された触媒である。
【0012】
請求項3に記載の排ガス処理触媒の発明は、排ガス中の有機ハロゲン化合物を分解する触媒であって、主触媒成分としてコバルトの酸化物を含み、助触媒成分として銀の酸化物を含むこと特徴とする。
この排ガス処理触媒の発明によれば、主触媒成分としてのコバルトの酸化物に、助触媒成分としての銀の酸化物を組合せて用いることにより、後記実施例に示すようにコバルトの触媒性能を高め、有機ハロゲン化合物に対する分解活性を向上させることができる。
【0013】
請求項4に記載の排ガス処理触媒の発明は、請求項2または請求項3において、前記銀の酸化物が酸化銀Ag2Oとして存在し、前記コバルトの酸化物が酸化コバルトCo3O4として存在することを特徴とする。
この特徴によれば、銀の酸化物がAg2Oとして存在し、コバルトの酸化物がCo3O4として存在することにより、特に良好な触媒性能が奏される。
すなわち、コバルトの酸化物の中でも、Co3O4は特にダイオキシン類等の有機ハロゲン化合物に対して優れた触媒分解作用を示し、また、銀の酸化物の中でもAg2Oは通常排ガスの処理を行う200℃前後の温度域でダイオキシン類等の有機ハロゲン化合物に対して優れた触媒分解作用を発揮する。従って、Ag2OとCo3O4とを選択的に組合せることによって顕著な分解作用が得られるようになる。
【0014】
請求項5に記載の排ガス処理触媒の発明は、排ガス中の有機ハロゲン化合物を分解する触媒であって、助触媒成分として酸化銀Ag2Oを含むことを特徴とする。
この特徴によれば、酸化銀Ag2Oは、排ガス中の有機ハロゲン化合物に対して優れた分解触媒作用を奏するため、これを助触媒成分として、他の金属酸化物と組合せることによっても、有機ハロゲン化合物の分解を促進し、分解率を向上させることが可能になる。
【0015】
請求項6に記載の排ガスの処理方法の発明は、請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の排ガス処理触媒を用い、有機ハロゲン化合物を含有する排ガスを処理することを特徴とする。
この特徴によれば、請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の排ガス処理触媒を用いて有機ハロゲン化合物を含有する排ガスを処理することによって、排ガス中の有機ハロゲン化合物を効率良く分解し、毒性を低減できる。
【0016】
【発明の実施の形態】
本発明の処理対象は、都市ごみ焼却炉等から発生する有機ハロゲン化合物含有排ガスであり、特にダイオキシン類や、ハロベンゼン類、ハロフェノール類などのダイオキシン類前駆体などに代表される1環もしくは多環の芳香族有機塩素化合物や芳香族有機臭素化合物等を含有する排ガスである。
【0017】
触媒は一般に主触媒(触媒活性物質)、助触媒(主触媒の活性、選択性などを高めるもの)、担体から構成される。本発明においては、主に有機ハロゲン化合物を分解する活性点を与える金属酸化物種が主触媒であり、主触媒の活性を高める機能を与える金属酸化物種が助触媒である。ここで担体とは、主触媒の特性(触媒の活性、選択性、寿命、機械強度など)を高める作用を持ち、かつ担体自体は活性を示さないか少なくとも主触媒よりも活性が低い物質であり、かつ助触媒よりも含有量が多い成分である(触媒学会編「触媒講座第5巻、触媒設計」、1985、講談社)。また、主触媒、助触媒、担体は、後述の触媒調製法のいかんによらず、調製された触媒におけるそれぞれの構成化学種の性能、含有量、分布状態などに基づいて区別される。
【0018】
本発明触媒における必須の触媒成分は、銀の酸化物である。本発明の触媒は、銀の酸化物を、主触媒成分または助触媒成分として含有することができる。 銀の酸化物としては、例えば酸化銀(I)(すなわち、Ag2O)や酸化銀(II)(すなわち、AgO)などが挙げられる。酸化銀は一般に不安定であり、所定温度まで昇温すると酸素を放出して銀に変化する。上記酸化銀(I)は、酸素の放出温度が200℃前後であり、酸化銀(II)は120℃前後であるとされている。従って、排ガスの処理温度に応じて酸化銀の種類を選択できる。酸化銀による有機ハロゲン化合物分解の作用機構は完全に解明されていないが、排ガスの処理過程では、酸化銀から放出された酸素原子が有機ハロゲン化合物に作用し、有機ハロゲン化合物の酸化分解に寄与するものと推測される。従って、酸化銀(II)に比較して酸化物の形態を高温まで維持できる酸化銀(I)の方が有利であり、特にダイオキシン類などの有機ハロゲン化合物を含有する排ガスの触媒による処理は、通常200℃前後で行われるため、触媒性能の点から当該温度まで酸化物の形態を維持できる酸化銀(I)を用いることが好ましい。
【0019】
本発明の排ガス処理触媒において銀の酸化物と組合せて使用することが可能な金属酸化物としては、コバルトの酸化物、バナジウムの酸化物、タングステンの酸化物、クロムの酸化物、ニッケルの酸化物等を挙げることができる。これらの中でも、後記実施例に示すように優れた有機ハロゲン化合物の分解性能を有する点でコバルトの酸化物との組合せが最も好ましい。
【0020】
コバルトの酸化物(すなわち酸化コバルト)としては、種々の結晶構造のものが存在するが、触媒性能の面から特にスピネル構造の酸化コバルトCo3O4を用いることが好ましい。
【0021】
また、銀の酸化物とコバルトの酸化物の両方を主触媒成分とする場合には、銀の酸化物とコバルトの酸化物のモル比を1:1付近に設定することが好ましい。これは、触媒中で銀の酸化物のAg原子とコバルトの酸化物のCo原子が近接した状態にある方が共に酸素を放出しやすくなると考えられるためである。
【0022】
銀の酸化物とコバルトの酸化物を含む触媒の場合、結晶構造中に二種の金属を含む複合酸化物の形態でもよいが、銀の酸化物とコバルトの酸化物とが区別できる状態(酸化物として混在した状態)の方がより好ましい。
【0023】
触媒中の銀の酸化物の含有量は、銀の酸化物を主触媒成分とする場合は、触媒全体の0.5〜10重量%とすることが好ましく、1〜10重量%がより好ましく、3〜10重量%とすることが望ましい。ここで、10重量%という上限は主に経済的観点によるものであり、実用上は10重量%を超えて使用することを妨げない。銀の酸化物と他の金属酸化物を共に主触媒成分とする場合には、合計量が触媒全体の20重量%以内となるようにすることが好ましく、両者をそれぞれ0.5〜10重量%ずつにすることが好ましく、1〜10重量%ずつがより好ましく、3〜10重量%ずつが望ましい。他の金属酸化物がコバルトの酸化物である場合は、前記したように銀の酸化物とのモル比を1:1付近に設定することが好ましい
銀の酸化物をコバルトの酸化物等の他の金属酸化物との組合せにおいて助触媒とする場合は、銀の酸化物の担持量は0.5〜2重量%とすることが好ましく、この場合のコバルトの酸化物等の主触媒成分の担持量は、2〜20重量%が好ましく、5重量%〜15重量%の範囲がより好ましい。
【0024】
上記触媒成分は、担体に担持させることも可能である。担体としては、例えば酸化チタンや酸化ケイ素を主成分とする触媒担体を挙げることができる。また、酸化アルミニウムや酸化ジルコニウムも担体組成として有効である。ここで、担体に触媒成分を「担持」させることには、例えば触媒成分と担体成分を混合するなど、後述する種々の手法あるいはそれらと類似の手法によって、担持触媒効果を得る手段の全てが含まれる。
【0025】
本発明触媒の調製は、例えば、混練法、含浸法、共沈法、ゾル−ゲル法などの手法により行うことが可能である。
混練法の場合には、平均粒径が1μm以下の、好ましくは0.1μm以下の、さらに好ましくは0.01μm以下の原料粒子を用い、主触媒成分および/または助触媒成分並びに担体とを成形助剤・バインダー等の各種添加剤とともに混練し、成形・焼成して触媒の調製を行う。また、主触媒成分等は、焼成時に酸化物に変化するような原料物質、例えば金属(または金属酸イオン)の水酸化物、ハロゲン化物、アンモニウム塩、硫酸塩、炭酸塩、酢酸塩、アルコキシド、アセチルアセトナート等の錯化合物などを用いることもできる。
【0026】
含浸法の場合には、担体として平均分子粒径が1μm以下の、好ましくは0.1μm以下の、さらに好ましくは0.01μm以下の原料粒子かまたはその成形体を用い、主触媒成分および/または助触媒成分を与える金属酸化物種を含浸する。含浸は、焼成時に酸化物に変化するような原料物質、例えばこれらの金属(または金属酸イオン)の水酸化物、ハロゲン化物、アンモニウム塩、硫酸塩、炭酸塩、酢酸塩、アルコキシド、アセチルアセトナート等の錯化合物などの溶液を用いて行う。
【0027】
共沈法の場合には、担体成分の水溶液と1種または複数種の主触媒成分および/または助触媒成分を与える成分の水溶液に、沈殿剤を加えて共沈殿を作成し、その後洗浄、成形し、焼成を行う。この方法で一つの触媒成分を担持し、のちに別の方法で別の触媒成分を担持することもできる。
【0028】
さらに、主触媒成分および/または助触媒成分並びに担体成分を、単独または同時にゾル−ゲル法を利用して調製することもできる。ゾル−ゲル法では、それぞれの成分の金属アルコキシド、またはアセチルアセトナートなどの錯体を所定有機溶媒に所定量溶かしたゾル状溶液に、所定量の酸またはアルカリおよび水を添加してゲル状高分子を形成させ、これを成形後焼成して目的の酸化物を調製する。本触媒調製に当たっては、主触媒成分および/または担体成分をゾル状溶液段階において所定割合で予め混合しておき、これをゲル化成形・焼成する方法や、2種の触媒成分のゾル状混合溶液を担体成分に含浸させてからゲル化・焼成する方法、ゾル−ゲル法によってそれぞれの酸化物微粒子を単独に調製し、これらを混練・成形・焼成する方法などが利用できる。
【0029】
本発明の排ガス処理触媒の使用温度は、120℃以上が好ましく、150℃以上であればより好ましく、望ましくは150℃〜250℃の範囲である、また、反応雰囲気ガスの組成には、水分を含んでいることが好ましく、水分量が1体積%以上であればより好ましく、10体積%以上であることが望ましい。同様に、被処理排ガス組成には、酸素を含んでいることが好ましく、酸素濃度0.1体積%以上がより好ましく、酸素濃度5体積%以上が望ましい。
【0030】
【作用】
本発明において、銀の酸化物が有機ハロゲン化合物の分解に優れた触媒作用を示す機構については充分に解明されていないが、銀の酸化物は他の金属酸化物種に比べて比較的不安定である(すなわち、銀原子と酸素原子との間の結合が切れ易い)ため、有機ハロゲン化合物が活性点に吸着した際に、酸素原子を、触媒活性点から有機ハロゲン化合物分子に放出しやすく、有機ハロゲン化合物の酸化分解が著しく促進されているものと推察される。また、200℃前後(例えば150℃〜250℃)の温度域で排ガス処理を行う場合には、酸化銀は特にAg2Oの形態では不安定で酸素を放出し易い状態になっており、有機ハロゲン化合物分子への酸素原子の供給(有機ハロゲン化合物分子の酸化分解)に有利な上、酸素原子を供給した後には排ガス中に豊富に含まれる酸素分子(前記のように、排ガス中の酸素濃度は、0.1体積%以上が好ましく、酸素濃度5体積%以上が望ましい。これに対して有機ハロゲン化合物は通常ppmレベルの濃度以下である)により触媒が再酸化され、常に高い触媒活性を維持できるものと考えている。
【0031】
また、触媒成分として、酸化銀(Ag2O)とコバルト(Co3O4)の酸化物を組合せる場合、モル比を1:1付近にすることにより、特に高い分解率が得られることも、上記の観点から合理的に説明できる。
すなわち、両成分のモル比を1:1付近にすると、触媒中で酸化銀と酸化コバルトが最も近接した状態を形成することが可能となり、その状態では酸化銀側が酸素を酸化コバルト側へ押し出そうとする力が逆向きの力よりも強いため、酸化コバルト側が酸素過剰傾向になり、酸化コバルト側も通常状態よりも不安定化されることにより、酸素を放出しやすくなり酸化能(触媒活性)が向上しているものと考えられる。
【0032】
【実施例】
次に、実施例等を挙げ、本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれらによって制約されるものではない。
【0033】
実施例、比較例における触媒の調製は、以下の方法により行った。
【0034】
触媒の調製(1):
触媒は、酸化チタンを担体として、これに触媒活性種を混練法で担持し、成型・焼成して調製した。具体的方法は、以下の通りである。
原料となる金属酸化物粉末は、市販の粉末試薬[酸化チタンTiO2は、和光純薬社製:型番207−11121アナターゼ型、酸化コバルトCo3O4は、関東化学社製の型番08120−08、酸化銀Ag2Oは、和光純薬社製:型番199−00882、酸化バナジウムV2O5は、和光純薬社製、型番222−00122、酸化タングステンWO3は、和光純薬社製:型番200−03465、酸化クロムCr2O3は、和光純薬社製:型番038−08505、酸化ニッケルNiOは、和光純薬社製:型番144−01155]を用いた。
【0035】
調製する前に各試薬を遊星ボールミルで30分間にわたり250rpmで粉砕・整粒して、これを出発原料とした。成型性を向上させるためシランカップリング剤(信越シリコーン社製:KBM603)により表面処理を行った。また、バインダーとしてメチルセルロース50g、可塑剤としてグリセリン75g、滑剤としてステアリン酸エマルジョン10g、蒸留水85〜160gを添加した。成型・焼成の手順は、まず酢酸またはアンモニア水によって所定のpHに調製した水溶液にシランカップリング剤を入れて撹拌し、その後24時間室温下で静置した。この静置した液と所定の重量比に配合した原料金属酸化物をホモジナイザーで混合し、混合液を80℃で水分が無くなるまで乾燥させた。その後、粉砕分級してから、バインダー等の各種添加剤および蒸留水を混合し、混練した後再び静置した。一定時間静置した後、さらに再度混練してから成形を行った。成形は押し出し治具を用いてハニカム状に成形した。成形後、再び乾燥させた後、酸素雰囲気下、所定温度で所定時間焼成した。
【0036】
触媒の性能評価:
以上のようにして得られた触媒を下記のように評価した。
【0037】
固定床流通式マイクロリアクターを用い、反応温度200℃の範囲で、SV(空間速度)5000hr−1、反応ガスは指標物質濃度300ppm、酸素濃度10体積%、水分35体積%、窒素バランスとして、有機ハロゲン化合物の分解に対する触媒の性能評価試験を行った。ここでは、有機ハロゲン化合物の一例として、ダイオキシン類の代替指標物質となるo−クロロフェノールおよびo−ブロモフェノールを用いた。用いた指標物質については、稲葉ら:第8回廃棄物学会研究発表会講演論文集p558、神田ら:平成9年度触媒学会研究発表会講演予稿集p114、田中ら:日本機械学会第8回環境工学総合シンポジウム’98講演論文集p182などの研究から、ダイオキシン類と分解特性が類似することが明かになっている。
【0038】
触媒性能は、指標物質の分解除去率を指標として評価した。分解除去率は、下式に基づき算出した。
【0039】
分解除去率=(指標物質初期濃度−指標物質残留濃度)/指標物質初期濃度
実施例A−1〜A−3、比較例A−1〜A−3
担体として酸化チタン(TiO2)を用い、酸化銀(Ag2O)を活性金属種とした触媒を調製し、性能評価試験を行った。また、比較のため、触媒活性金属種を酸化バナジウムに替える以外は同様にして調製した触媒についても試験を行った。性能評価試験の結果を表1に示す。
【0040】
【表1】
【0041】
実施例A−1、A−2、A−3と比較例A−1、A−2、A−3とをそれぞれ比較すると、実施例の方が比較例に比べて分解率が高いことがわかる。この結果より、銀の酸化物を主触媒成分とした場合には、バナジウムの酸化物を主触媒成分とした場合よりも高い触媒性能が得られることが示された。
【0042】
また、実施例A−1、A−2、A−3同士の比較では、活性成分担持量と分解率の関係から、活性成分は10重量%以下でも十分に高い分解活性が得られることが判る。
【0043】
実施例B−1〜B−3、比較例B−1〜B−3
酸化チタン(TiO2)を担体とし、助触媒としての酸化銀(Ag2O)に主触媒成分として酸化コバルト(Co3O4)、酸化バナジウム(V2O5)、酸化タングステン(WO3)を組合せた触媒について、触媒性能を評価した。その結果を表2に示す。また、比較のため、触媒活性金属種として酸化コバルト、酸化バナジウム、酸化タングステンを含み、助触媒成分を含まない触媒についても試験を行った。その結果を表2に示した。
【0044】
【表2】
【0045】
実施例B−1、B−2、B−3と、比較例B−1、B−2、B−3とをそれぞれ比較すると、実施例の方が比較例に比べていずれも分解率が高いことがわかる。従って、銀の酸化物を助触媒として加えることにより、触媒性能が向上することがわかる。
【0046】
実施例C−1〜C−3
担体として酸化チタン(TiO2)を用い、主触媒成分として酸化銀(Ag2O)と酸化コバルト(Co3O4)の配合比率を変えた触媒をそれぞれ調製し、性能評価試験を行った。結果を表3に示す。
【0047】
【表3】
【0048】
実施例C−1、C−2、C−3と比較例A−1、A−2、A−3とをそれぞれ比較すると、実施例の方が比較例に比べて分解率が高いことがわかる。この結果より、銀の酸化物とコバルトの酸化物を組合せて主触媒成分とした場合には、バナジウム酸化物を主触媒成分とした場合よりも高い触媒性能が得られることが示された。
【0049】
実施例D−1、D−2
酸化チタン(TiO2)を担体とし、助触媒としての酸化銀(Ag2O)に主触媒成分として酸化クロム(Cr2O3)、酸化ニッケル(NiO)をそれぞれ組合せた触媒について、触媒性能を評価した。その結果を表4に示す。
【0050】
【表4】
【0051】
実施例B−1、B−2、B−3と比較例D−1、D−2とを総合的に比較すると、実施例B−1が最も分解率が高いことが判り、主触媒成分としてのコバルトの酸化物と助触媒成分としての銀の酸化物の組合せは、クロムの酸化物、ニッケルの酸化物、バナジウムの酸化物またはタングステンの酸化物と銀の酸化物との組合せに比べて高い触媒性能が得られることがわかる。
【0052】
【発明の効果】
本発明の触媒は、焼却炉から排出される排ガス中の有機ハロゲン化合物を非常に高効率に分解、除去することができる。したがって、都市ごみ焼却炉などの排ガス中に含まれる有機塩素化合物(塩素化ダイオキシンン類、塩素化ベンゼン類、塩素化フェノール類)や、家電製品などの廃プラスチックの焼却処理設備排ガスに含まれる有機臭素化合物(臭素化ダイオキシン、臭素化ベンゼン類、臭素化フェノール類)などの無害化処理に最適な触媒である。
Claims (6)
- 排ガス中の有機ハロゲン化合物を分解する触媒であって、主触媒成分として銀の酸化物を含むことを特徴とする、排ガス処理触媒。
- 排ガス中の有機ハロゲン化合物を分解する触媒であって、主触媒成分として銀の酸化物およびコバルトの酸化物を含むことを特徴とする、排ガス処理触媒。
- 排ガス中の有機ハロゲン化合物を分解する触媒であって、主触媒成分としてコバルトの酸化物を含み、助触媒成分として銀の酸化物を含むこと特徴とする、排ガス処理触媒。
- 請求項2または請求項3において、前記銀の酸化物が酸化銀Ag2Oとして存在し、前記コバルトの酸化物が酸化コバルトCo3O4として存在することを特徴とする、排ガス処理触媒。
- 排ガス中の有機ハロゲン化合物を分解する触媒であって、助触媒成分として酸化銀Ag2Oを含むことを特徴とする、排ガス処理触媒。
- 請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の排ガス処理触媒を用い、有機ハロゲン化合物を含有する排ガスを処理することを特徴とする、排ガスの処理方法。
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2002
- 2002-07-19 JP JP2002210515A patent/JP2004050032A/ja active Pending
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