JP2004049157A - 多孔質セラミック吸液芯 - Google Patents
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Abstract
【課題】優れた蒸散性能を得ることができるとともに、薬液容器の内圧上昇による薬液漏れや、薬液容器の転倒による薬液漏れを確実に防止することができ、更に、量産性にも優れた、例えば、吸上式加熱蒸散装置の吸液芯などとして好適に用いられる多孔質セラミック吸液芯を安価に提供すること。
【解決手段】ケイ酸質セラミック原料粉体を主成分として構成される多孔質セラミック成形品1aの表面に、パイプ状気孔1cの収縮により皺状凹凸1bbが形成されたことを特徴とする多孔質セラミック吸液芯。
【選択図】 図1
【解決手段】ケイ酸質セラミック原料粉体を主成分として構成される多孔質セラミック成形品1aの表面に、パイプ状気孔1cの収縮により皺状凹凸1bbが形成されたことを特徴とする多孔質セラミック吸液芯。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えば、吸上式加熱蒸散装置の吸液芯などとして好適に用いられる多孔質セラミック吸液芯に係り、特に、優れた蒸散性能を得ることができるとともに、薬液容器の内圧上昇による薬液漏れや、薬液容器の転倒による薬液漏れを確実に防止することができ、更に、量産性にも優れたものに関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、広く普及している薬液の蒸散方式として、薬液中に多孔質吸液芯の一部を浸漬させて、該吸液芯に薬液を供給するとともに、該吸液芯の上部を加熱することにより吸液された薬液を加熱蒸散させる、吸上式加熱蒸散装置がある。
【0003】
前記多孔質吸液芯としては、一般にクレーやマイカ等のケイ酸質セラミック原料を主成分として高温で焼結されてなる多孔質セラミック成形体や、クレー、タルク、カオリン、パーライト、ケイソウ土、石膏、ベントナイト、ガラスファイバー、石綿、シリカ、アルミナ、シリカアルミナ、ジルコニア、木粉、活性炭、セルロース、パルプ、リンター等の無機粉末や有機粉末をデンプン、カルボキシメチルセルロース等の糊剤で固着成形したものが用いられている。このような吸液芯は、微多孔質のものであって吸液特性も比較的良好な範囲にある。しかしながら、前記のような吸液芯を用いた場合、吸液芯と該吸液芯を薬液容器に保持するための中栓との密着性が高いと、気温や気圧の変化時に於いて薬液容器内の内圧が薬液の膨張によって高まり、その結果薬液が吸液芯中を通して押し上げられ薬液漏れ(以降液漏れと略称する)が発生する、という不具合がある。又、吸液芯と中栓の密着性が高いと蒸散性能が悪化し、蒸散の終了点が設計で意図した標準蒸散日数を大幅に上回ってしまうという不具合もある。
【0004】
このような不具合を改善するために、実公昭45−14913号公報や実開平3−50878号公報には、吸液芯を薬液容器に保持する中栓に切欠きや通気孔を設けて、薬液容器内外を連通させることが開示されている。このようにすれば、薬液容器の内圧が上昇して液漏れが発生することは無くなるし、蒸散性能は設計通り発揮され標準蒸散日数近傍で終了するが、使用時や保管時に薬液容器を誤って転倒させた場合、切欠きや通気孔より液漏れが発生し周囲を汚染したり薬液を早期に消費したりする、といった不具合が新たに生じている。
【0005】
更に、特開平10−245086号公報には、吸液芯の側面に縦溝が刻設されているものが開示されているが、多孔質吸液芯の場合は、機械的強度の面から製造段階での取り扱いに注意しないと溝が欠損し易く、又、中栓に挿入する時に溝の端が中栓を削ってしまう。これにより、前記した液漏れが発生したり、蒸散の終了点と設計で意図した標準蒸散日数が大きく異なるようになる、といった不具合が生じる。
【0006】
そこで、近年においては、前記のような不具合を解決するものとして、特開2001−86919号公報に開示された発明が提案されている。この公報によれば、多孔質吸液芯の外周面の少なくとも一部に上下に通じる微細な凹凸の通気孔を、シボ加工又はサンドブラストの表面加工をした金型により形成し、それにより蒸散性能の悪化や薬液容器の内圧上昇による液漏れ及び薬液容器の転倒による液漏れが防止できるとされている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、前記公報に開示された多孔質吸液芯には、次のような欠点がある。まず第一に、多孔質セラミック吸液芯の場合、表面に外力により部分的に切立った凹凸をつけることで、表面に存在している極薄いスキン層の状態が変化してしまう。これにより、多孔質吸液芯表面の気孔が不均一に顕現することになるため蒸散量がばらつく上、薬液が多孔質吸液芯から気体として蒸散されず、液体のまま溢れ出るといった蒸散性能の悪化をも引き起こすことになる。第二に、成形の際の金型は合わせ型を使うことになるが、硬質のセラミックを成形すると金型の摩耗が激しく、合わせ面に相当する部分の吸液芯の表面に凸状の筋が隆起してしまう。隆起の程度は摩耗の程度によって異なり、摩耗量が増加すると金型で意図した凹凸の大きさを遥かに超えてしまう場合がある。この場合、設計とは異なる薬液蒸散量となってしまう上、薬液容器が転倒した場合に液漏れが発生する原因ともなり得る。この問題を防ぐためには、硬質の金型を頻繁に交換しなければならず不経済である。第三に、通常棒状の成形体は、多孔質であっても押出成形を行うことにより生産性を向上させているが、金型成形の場合はバッチ作業のため連続押出成形に比べて著しく生産性に劣るため、製造コストが大幅に上昇してしまう。
【0008】
このように、特開2001−86919号公報に開示された多孔質吸液芯は、ばらつきの少ない優れた蒸散性能を得ることが困難であるとともに、液漏れが発生する可能性が有り、更に、生産性に劣り製造コストが上昇してしまうといった欠点を有している。
【0009】
本発明はこのような点に基づいてなされたもので、その目的とするところは、優れた蒸散性能を得ることができるとともに、薬液容器の内圧上昇による液漏れや、薬液容器の転倒による液漏れを確実に防止することができ、更に、量産性にも優れた多孔質セラミック吸液芯を安価に提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
前記目的を達成するべく、本発明による多孔質セラミック吸液芯は、ケイ酸質セラミック原料粉体を主成分として構成される多孔質セラミック成形品の表面に、パイプ状気孔の収縮により皺状凹凸が形成されたことを特徴とするものである。
【0011】
【発明の実施の形態】
多孔質セラミック成形品としては、一般にクレーやマイカ等のケイ酸質セラミック原料粉体を主成分として、各種の添加剤を配合し高温で焼成されたセラミック成形品などが使用可能である。ここで各種の添加剤としては、例えばチタン酸バリウム、釉薬、無機顔料、有機短繊維、タルク、ジルコニア、木粉、ナイロン樹脂、アクリル樹脂、ポリオレフィン樹脂、活性炭、カーボンブラック、木炭、黒鉛、コークス、タールピッチ、水ガラス、カルボキシメチルセルロース等の粉体などが挙げられる。
【0012】
本発明においては、前記多孔質セラミック成形品の表面に、パイプ状気孔の収縮により皺状凹凸が形成され、前記皺状凹凸とパイプ状気孔の2つの通気路によって、蒸散性能の悪化や、薬液容器の内圧上昇による液漏れ及び薬液容器の転倒による液漏れを防止している。
【0013】
ここで、多孔質セラミック成形品の表面に形成される皺状凹凸は、成形品の主成分と同じケイ酸質セラミック原料粉体に有機短繊維を配合し、それらを焼成することにより前記短繊維が焼失してパイプ状の気孔となり更に、その部分が強い収縮を受けることにより形成される。
【0014】
前記皺状凹凸の形状は、図1乃至図3に示すように、多孔質セラミック成形品1aの表面層1bにうねりのある凹凸部として1bbのように形成される。このように、焼成時に表面直下に気孔があると非加熱体として最も熱源に近いその部分は強い収縮を受け、前記パイプ状気孔の形状に相似の皺状凹凸1bbが形成される。この皺状凹凸は、配合する有機短繊維の非対称の形状ゆえに形成されるものであり、これが粒状の粉体の場合は、等方性が強いので皺状凹凸は形成されない。
【0015】
パイプ状気孔を形成するための有機短繊維としては例えば、木綿、麻等の天然繊維、ナイロン、ポリビニールアルコール、ポリエチレン、ポリエステル、ポリウレタン、ポリプロピレン、アラミド系等の合成繊維、アセテート等の半合成繊維、ビスコース、レーヨン等の再生繊維などが挙げられる。これらの中でも、混練と焼成後の発泡に適しているのは、親水性であっても水に溶解せず、練りに対しても弾力性のあるナイロン短繊維である。疎水性の繊維は、繊維同志がくっつき易く分散性が乏しいので均一な混練が難しい。ナイロン短繊維としては、太さが17〜72T(デシテックス)、長さが0.5〜2.2mmのものを用いるのが好ましい。太さが17Tより細いと混練中に丸まってしまいパイプ状気孔を形成することができず、72Tより太いと焼成時に爆発的に燃焼し大穴とクラックが発生してしまう。又、長さが0.5mmより短いと非対称の形状とならず等方性が強くなるため皺状凹凸が殆ど形成されず、2.2mmより長いと分散が悪くなり蒸散性能が悪化してしまう。
【0016】
又、パイプ状気孔を形成するための補助手段として、前記の有機短繊維の他に有機粉体を用いると表面の凹凸設計に対し自由度が大きくなり好ましく、その場合は前記と同様に親水性であっても水に溶解しないナイロン粉体が好ましい。
【0017】
前記の配合材料に水、アルコール、有機溶剤等から適宜に選択された混練用液体を適当量加えて混練した後、押出成形法等の方法により所定の形状に成形する。
【0018】
ここで、図1に示すように多孔質セラミック成形品1aをある原料配合とし、同図中の表面層1bは別な配合とし、二重押出成形法で所定の表面状態を得ることもできるが、装置が大型で高価になり製造条件も厳しくなるので得策ではない。従って、一般的には前記の多孔質セラミック成形品1aと表面層1bとは同一の原料配合で押出成形するのが好ましい。このような場合でも、原料の配合比率と焼成温度及び時間の組合せを調整することにより、多孔質セラミック成形品1aの気孔率を適切な状態に確保し、且つ、表面層1bの皺状凹凸1bbを適切な状態に確保することに何ら問題はない。
【0019】
このようにして押出成形された半製品は乾燥後、焼成温度1100℃以上1250℃以下の範囲で焼成することにより皺状凹凸のある表面を好適に形成することができる。ここで、焼成温度が1100℃未満の場合は、焼成時間を数日間というように大幅に延長しても所定の機械的強度を有する多孔質セラミック吸液芯を得るのは極めて困難となる。更に、皺状凹凸が殆どできないため、多孔質セラミック吸液芯と中栓の密着性が高くなって蒸散性能が悪化し、蒸散の終了点が設計で意図した標準蒸散日数を大幅に上回るようになってしまう。焼成温度が1250℃を超える場合は、焼成時間を大幅に短縮しても全体の収縮が激しく目標の気孔率をばらつき無く得ることができないので、所定の揮散日数を確保することは極めて困難となる。更に、皺状凹凸の段差が増加するため、該皺状凹凸の凹部が連続してしまう。このような皺状凹凸を有する多孔質セラミック吸液芯は、中栓に装着したときに薬液容器の内外に通じる通気路が形成されてしまうため、薬液容器の転倒時に容易に液漏れが発生してしまう。
【0020】
焼成温度としては、1150℃以上1200℃以下の範囲が特に好ましい。この範囲であれば、強い機械的強度、液漏れの発生や蒸散性能の悪化が無い好適な皺状凹凸、優れた蒸散性能に必要な気孔率、といった面について高いレベルでバランスの取れた多孔質セラミック吸液芯を得ることができる。
【0021】
前記皺状凹凸は数μmから100μm程度の角の滑らかな段差を生じるが、凹凸についてはばらつきを考慮して前記値の中央である数十μmを設計中心にするのが得策である。又、皺の幅は0.1〜0.3mm程度、長さは1〜5mmの断片状であり、皺同志の配置はランダムである。従って、薬液容器内外の気体の通路となるべき皺状凹凸の凹部が吸液芯の上から下まで連続している場所は殆どないので、中栓を装着した場合の薬液容器内外の通気性は全く不十分である。
【0022】
しかしながら、図3に示すように皺状凹凸1bbの凸部には、セラミック本来の微細孔や前記有機粉体の焼失によって形成される粒状気孔1dが多数存在しており、これらは相互に接触しているし、又、前記皺状凹凸1bbの凸部の中にあるパイプ状気孔1cにも接触している。又、前記パイプ状気孔1cと粒状気孔1dの一部は、前記皺状凹凸1bbの凸部のあらゆる部分からその断面を覗かせている。従って、本発明による多孔質セラミック吸液芯に中栓が装着された場合、吸液芯表面の皺状凹凸の凹部によって形成される通気路が連続していなくても、薬液容器内部の圧力は直接皺状凹凸の凸部の中に存在しているパイプ状気孔を通してか、或いは前記の微細孔や粒状気孔を経由してパイプ状気孔に至り、そこを通して薬液容器外部へ解放される。
【0023】
即ち、本発明によれば、薬液容器内部の圧力は、皺状凹凸によって形成される隙間と、前記皺状凹凸の凸部の中に形成されるパイプ状気孔及び粒状気孔の二つの通気路によって解放されるのが大きな特徴であり、薬液容器の内圧上昇によって液漏れが発生する問題は起こらない。又、皺状凹凸によって形成される連続的な通気路の数は非常に少なく、形成される隙間も非常に狭いので、使用時に誤って薬液容器を転倒させた場合でも薬液が漏れて床にシミがつくような問題は起こらない。
【0024】
このようにして得られた多孔質セラミック吸液芯は、薬液容器内外の圧力を解放することより蒸散性能は設計された目標値に極めて近い値を得ることができる。
【0025】
図4に、本発明にかかる多孔質セラミック吸液芯を用いるのに好適な吸上式加熱蒸散装置の一例を示す。図4において、符号3は薬液4を入れた薬液容器であり、器具本体2内に着脱可能に収納、保持されている。薬液容器3には多孔質セラミック吸液芯1が中栓5により保持されており、多孔質セラミック吸液芯1上部の周囲には環状の発熱体6が配設されている。符号7は電源コードであり、この電源コード7を通して通電することにより環状の発熱体6で多孔質セラミック吸液芯1上部を加熱し、毛細管現象により吸上げられた薬液4を器具本体2の上部に設けられた天面開口部8から蒸散させるようになっている。
【0026】
尚、本発明による多孔質セラミック吸液芯は、従来例(特開2001―86919号公報に開示された吸液芯)と比べ、次の点で異なっている。
(1)パイプ状気孔の収縮によってできる皺状凹凸と、その部分に存在するパイプ状気孔の二つが気体の通気路になるので、皺状凹凸の凹部によってできる通気路は連続していなくても、蒸散性能の悪化や液漏れの発生は起こらない。
(2)表面の皺状凹凸の大きさや高さ及び、パイプ状気孔の大きさや数は、有機短繊維の配合量と焼成温度によって微細に変化させることができるので、本発明は金型やサンドブラストによる凹凸形成よりも、液漏れや蒸散性能について柔軟に対応することができる。
(3)従来例の金型合わせ面の摩耗によってできるセラミック表面の筋状突起のような表面の隆起は本質的にあり得ない。
(4)成形には、連続的押出成形法を使うことができるので経済的である。
【0027】
【実施例】
以下、本発明の実施例を説明する。尚、この実施例で使用した配合材料の詳細は表1に示す通りである。
【0028】
【表1】
【0029】
実施例1乃至実施例3、比較例1及び比較例2
以下の条件で多孔質セラミック吸液芯を製造した。まず、表2に示した配合材料を十分に混合した後、混練用液体として水とPVA溶液を加え混練機で混練した。次いで、この混練物を焼成後の直径が7.0mmφとなる適切なノズルを有する真空押出成形機で丸棒状に押出成形した。得られた丸棒状成形物を長さ80mmに切断し、1時間自然乾燥後、更に、赤外線ランプで15分間乾燥した。そして、この棒状成形物を焼成炉内に横置状態で配置し、焼成した。焼成は、まず、450℃で2時間の脱媒を行い、900℃で2時間保持した後、更に、表2に示すピーク焼成温度で2時間保持して降温した。昇降温のレートは1時間当たり360℃であり、焼成雰囲気は全て大気中である。
【0030】
比較例3
表2に示した配合材料を混練し、押出成形した後、直ちに約50メッシュの金網の上で転がし金網で凹部跡を形成した多孔質セラミック吸液芯を製造した。その他の条件については、比較例1と同様とした。
【0031】
【表2】
【0032】
ここで、このようにして得られた6種類の多孔質セラミック吸液芯の構造的特性(皺状凹凸の平均高さ、機械的強度(曲げ強度)、気孔率)を測定した。結果を表3に示す。
【0033】
【表3】
【0034】
本実施例の多孔質セラミック吸液芯と比較例の多孔質セラミック吸液芯を比べると、本実施例の皺状凹凸の平均高さは29〜65μmで、数十μmのオーダーとなっており、製造条件により高さを制御できそうな値を示している。これに対し、比較例1では表面層に皺状凹凸は殆ど見られず、平均高さも4.3μmとかなり低い値となっていた。比較例2では、表面層の皺状凹凸が成長しすぎて、平均高さが235μmとかなり高い値となっていた。比較例3では、パイプ状気孔による皺状凹凸は比較例1と同様に殆ど見られなかったが、金網によって形成された深さ50μm〜200μm程度の連続的凹部が全面にわたり形成されており、従来例(特開2001―86919号公報)に類似の通気路が確保されていた。尚、表3における比較例3の皺状凹凸の平均高さは、金網によって形成された凹部の平均深さを示している。
【0035】
曲げ強度は、実施例1乃至実施例3及び比較例2では、実用上差し支えない程度の強度を有していたが、焼成温度が低すぎる比較例1と比較例3は、製造工程中や使用中に折れ易い強度となっていた。
【0036】
気孔率は、実施例1乃至実施例3、比較例1及び比較例3では約50%となっており蒸散性能に支障を来す値ではないが、焼成温度が高すぎる比較例2では、気孔率が低くなっていた。
【0037】
本実施例では更に、これらの多孔質セラミック吸液芯を市販の薬液を入れた薬液容器に装着し、図4に示すような吸上式加熱蒸散装置に組込んで性能評価試験(液漏れ試験、蒸散試験)を行った。まず、液漏れ試験は、保管時を想定した正立試験及び倒立試験の2種類を行った。正立試験は、吸上式加熱蒸散装置を正立させた状態で常温で24時間保持し、その後40℃雰囲気中で2時間保持を2回繰り返して液漏れの重量を測定した。倒立試験は、吸上式加熱蒸散装置を30度傾斜させた状態で5℃の雰囲気中2時間保持し、40℃で2時間保持を2サイクル繰返して液漏れの重量を測定した。
【0038】
蒸散試験は、10時間通電した後に2時間無通電にするというサイクルを1日分として、薬液が無くなるまでの日数を測定した。使用した薬液は市販の水性殺蚊剤(標準蒸散日数60日)である。結果を表4に示す。
【0039】
【表4】
【0040】
正立試験での液漏れ量については、本実施例、比較例ともに同程度であり、薬液容器の内圧上昇による液漏れは問題無い量であった。
【0041】
倒立試験での液漏れ量については、実施例1乃至実施例3及び比較例1による液漏れ量は比較例2及び比較例3に比べるとかなり少なく、薬液容器が転倒しても問題ない量であった。これに対し、比較例2の液漏れ量6.5gは床にシミを残すレベルであったため問題である。これは、焼成温度が高かったことで皺状凹凸の段差が増加して該皺状凹凸の凹部が連続してしまい、薬液容器の内外に通じる通気路が形成されてしまったことから、その通気路を通して液漏れが発生していたためである。又、比較例3の液漏れ量3.2gも床にシミを残すレベルであったため問題である。これは、金網によって形成された連続的凹部が全面にわたり形成されていたことから、その連続的凹部を通して液漏れが発生していたためである。
【0042】
蒸散試験については、実施例1乃至実施例3では、標準蒸散日数に近く、蒸散日数を設計する上で非常に広い自由度が確保されている。これに対し、比較例1では、標準蒸散日数をはるかに越えても薬液を全て蒸散することができず、88日の段階で薬液が残っているのに蒸散しなくなってしまった。これは、焼成温度が低かったことで皺状凹凸が殆どできず、多孔質セラミック吸液芯と中栓の密着性が高くなってしまい、蒸散性能が悪化したためである。比較例2では、35日の段階で多孔質セラミック吸液芯が目詰まりを起こし、蒸散しなくなってしまった。これは、焼成温度が高かったことで気孔率が減少する、即ち、薬液の通路が減少することから、目詰まりを容易に起こすようになってしまうためである。比較例3では、途中で蒸散しなくなるようなことはなかったが、標準蒸散日数よりも早く薬液を蒸散してしまい、蒸散日数を設計することが困難であることが確認された。
【0043】
【発明の効果】
以上、詳述したように本発明によれば多孔質セラミック成形品の表面に形成された皺状凹凸と、その部分に内在する各種気孔の2つの通気路により、薬液容器の内圧上昇による液漏れや薬液容器転倒による液漏れを確実に防止できるとともに、優れた蒸散性能を得ることができる。更に、本発明による多孔質セラミック成形品は、従来のような金型による成形ではなく量産性に優れた押出成形法により成形することができ、製造コストを大幅に低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例を示す図で、多孔質セラミック吸液芯の構造を示す上面図である。
【図2】本発明の一実施例を示す図で、多孔質セラミック吸液芯の構造を示す側面図である。
【図3】本発明の一実施例を示す図で、多孔質セラミック吸液芯の表面に形成されたパイプ状気孔と皺状凹凸の構造を示す断面拡大図である。
【図4】本発明の一実施例を示す図で、多孔質セラミック吸液芯を適用し得る吸上式加熱蒸散装置の構造を示す概略断面図である。
【符号の説明】
1 多孔質セラミック吸液芯
1a 多孔質セラミック成形品
1b 表面層
1bb 皺状凹凸
1c パイプ状気孔
1d 粒状気孔
2 器具本体
3 薬液容器
4 薬液
5 中栓
6 発熱体
7 電源コード
8 天面開口部
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えば、吸上式加熱蒸散装置の吸液芯などとして好適に用いられる多孔質セラミック吸液芯に係り、特に、優れた蒸散性能を得ることができるとともに、薬液容器の内圧上昇による薬液漏れや、薬液容器の転倒による薬液漏れを確実に防止することができ、更に、量産性にも優れたものに関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、広く普及している薬液の蒸散方式として、薬液中に多孔質吸液芯の一部を浸漬させて、該吸液芯に薬液を供給するとともに、該吸液芯の上部を加熱することにより吸液された薬液を加熱蒸散させる、吸上式加熱蒸散装置がある。
【0003】
前記多孔質吸液芯としては、一般にクレーやマイカ等のケイ酸質セラミック原料を主成分として高温で焼結されてなる多孔質セラミック成形体や、クレー、タルク、カオリン、パーライト、ケイソウ土、石膏、ベントナイト、ガラスファイバー、石綿、シリカ、アルミナ、シリカアルミナ、ジルコニア、木粉、活性炭、セルロース、パルプ、リンター等の無機粉末や有機粉末をデンプン、カルボキシメチルセルロース等の糊剤で固着成形したものが用いられている。このような吸液芯は、微多孔質のものであって吸液特性も比較的良好な範囲にある。しかしながら、前記のような吸液芯を用いた場合、吸液芯と該吸液芯を薬液容器に保持するための中栓との密着性が高いと、気温や気圧の変化時に於いて薬液容器内の内圧が薬液の膨張によって高まり、その結果薬液が吸液芯中を通して押し上げられ薬液漏れ(以降液漏れと略称する)が発生する、という不具合がある。又、吸液芯と中栓の密着性が高いと蒸散性能が悪化し、蒸散の終了点が設計で意図した標準蒸散日数を大幅に上回ってしまうという不具合もある。
【0004】
このような不具合を改善するために、実公昭45−14913号公報や実開平3−50878号公報には、吸液芯を薬液容器に保持する中栓に切欠きや通気孔を設けて、薬液容器内外を連通させることが開示されている。このようにすれば、薬液容器の内圧が上昇して液漏れが発生することは無くなるし、蒸散性能は設計通り発揮され標準蒸散日数近傍で終了するが、使用時や保管時に薬液容器を誤って転倒させた場合、切欠きや通気孔より液漏れが発生し周囲を汚染したり薬液を早期に消費したりする、といった不具合が新たに生じている。
【0005】
更に、特開平10−245086号公報には、吸液芯の側面に縦溝が刻設されているものが開示されているが、多孔質吸液芯の場合は、機械的強度の面から製造段階での取り扱いに注意しないと溝が欠損し易く、又、中栓に挿入する時に溝の端が中栓を削ってしまう。これにより、前記した液漏れが発生したり、蒸散の終了点と設計で意図した標準蒸散日数が大きく異なるようになる、といった不具合が生じる。
【0006】
そこで、近年においては、前記のような不具合を解決するものとして、特開2001−86919号公報に開示された発明が提案されている。この公報によれば、多孔質吸液芯の外周面の少なくとも一部に上下に通じる微細な凹凸の通気孔を、シボ加工又はサンドブラストの表面加工をした金型により形成し、それにより蒸散性能の悪化や薬液容器の内圧上昇による液漏れ及び薬液容器の転倒による液漏れが防止できるとされている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、前記公報に開示された多孔質吸液芯には、次のような欠点がある。まず第一に、多孔質セラミック吸液芯の場合、表面に外力により部分的に切立った凹凸をつけることで、表面に存在している極薄いスキン層の状態が変化してしまう。これにより、多孔質吸液芯表面の気孔が不均一に顕現することになるため蒸散量がばらつく上、薬液が多孔質吸液芯から気体として蒸散されず、液体のまま溢れ出るといった蒸散性能の悪化をも引き起こすことになる。第二に、成形の際の金型は合わせ型を使うことになるが、硬質のセラミックを成形すると金型の摩耗が激しく、合わせ面に相当する部分の吸液芯の表面に凸状の筋が隆起してしまう。隆起の程度は摩耗の程度によって異なり、摩耗量が増加すると金型で意図した凹凸の大きさを遥かに超えてしまう場合がある。この場合、設計とは異なる薬液蒸散量となってしまう上、薬液容器が転倒した場合に液漏れが発生する原因ともなり得る。この問題を防ぐためには、硬質の金型を頻繁に交換しなければならず不経済である。第三に、通常棒状の成形体は、多孔質であっても押出成形を行うことにより生産性を向上させているが、金型成形の場合はバッチ作業のため連続押出成形に比べて著しく生産性に劣るため、製造コストが大幅に上昇してしまう。
【0008】
このように、特開2001−86919号公報に開示された多孔質吸液芯は、ばらつきの少ない優れた蒸散性能を得ることが困難であるとともに、液漏れが発生する可能性が有り、更に、生産性に劣り製造コストが上昇してしまうといった欠点を有している。
【0009】
本発明はこのような点に基づいてなされたもので、その目的とするところは、優れた蒸散性能を得ることができるとともに、薬液容器の内圧上昇による液漏れや、薬液容器の転倒による液漏れを確実に防止することができ、更に、量産性にも優れた多孔質セラミック吸液芯を安価に提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
前記目的を達成するべく、本発明による多孔質セラミック吸液芯は、ケイ酸質セラミック原料粉体を主成分として構成される多孔質セラミック成形品の表面に、パイプ状気孔の収縮により皺状凹凸が形成されたことを特徴とするものである。
【0011】
【発明の実施の形態】
多孔質セラミック成形品としては、一般にクレーやマイカ等のケイ酸質セラミック原料粉体を主成分として、各種の添加剤を配合し高温で焼成されたセラミック成形品などが使用可能である。ここで各種の添加剤としては、例えばチタン酸バリウム、釉薬、無機顔料、有機短繊維、タルク、ジルコニア、木粉、ナイロン樹脂、アクリル樹脂、ポリオレフィン樹脂、活性炭、カーボンブラック、木炭、黒鉛、コークス、タールピッチ、水ガラス、カルボキシメチルセルロース等の粉体などが挙げられる。
【0012】
本発明においては、前記多孔質セラミック成形品の表面に、パイプ状気孔の収縮により皺状凹凸が形成され、前記皺状凹凸とパイプ状気孔の2つの通気路によって、蒸散性能の悪化や、薬液容器の内圧上昇による液漏れ及び薬液容器の転倒による液漏れを防止している。
【0013】
ここで、多孔質セラミック成形品の表面に形成される皺状凹凸は、成形品の主成分と同じケイ酸質セラミック原料粉体に有機短繊維を配合し、それらを焼成することにより前記短繊維が焼失してパイプ状の気孔となり更に、その部分が強い収縮を受けることにより形成される。
【0014】
前記皺状凹凸の形状は、図1乃至図3に示すように、多孔質セラミック成形品1aの表面層1bにうねりのある凹凸部として1bbのように形成される。このように、焼成時に表面直下に気孔があると非加熱体として最も熱源に近いその部分は強い収縮を受け、前記パイプ状気孔の形状に相似の皺状凹凸1bbが形成される。この皺状凹凸は、配合する有機短繊維の非対称の形状ゆえに形成されるものであり、これが粒状の粉体の場合は、等方性が強いので皺状凹凸は形成されない。
【0015】
パイプ状気孔を形成するための有機短繊維としては例えば、木綿、麻等の天然繊維、ナイロン、ポリビニールアルコール、ポリエチレン、ポリエステル、ポリウレタン、ポリプロピレン、アラミド系等の合成繊維、アセテート等の半合成繊維、ビスコース、レーヨン等の再生繊維などが挙げられる。これらの中でも、混練と焼成後の発泡に適しているのは、親水性であっても水に溶解せず、練りに対しても弾力性のあるナイロン短繊維である。疎水性の繊維は、繊維同志がくっつき易く分散性が乏しいので均一な混練が難しい。ナイロン短繊維としては、太さが17〜72T(デシテックス)、長さが0.5〜2.2mmのものを用いるのが好ましい。太さが17Tより細いと混練中に丸まってしまいパイプ状気孔を形成することができず、72Tより太いと焼成時に爆発的に燃焼し大穴とクラックが発生してしまう。又、長さが0.5mmより短いと非対称の形状とならず等方性が強くなるため皺状凹凸が殆ど形成されず、2.2mmより長いと分散が悪くなり蒸散性能が悪化してしまう。
【0016】
又、パイプ状気孔を形成するための補助手段として、前記の有機短繊維の他に有機粉体を用いると表面の凹凸設計に対し自由度が大きくなり好ましく、その場合は前記と同様に親水性であっても水に溶解しないナイロン粉体が好ましい。
【0017】
前記の配合材料に水、アルコール、有機溶剤等から適宜に選択された混練用液体を適当量加えて混練した後、押出成形法等の方法により所定の形状に成形する。
【0018】
ここで、図1に示すように多孔質セラミック成形品1aをある原料配合とし、同図中の表面層1bは別な配合とし、二重押出成形法で所定の表面状態を得ることもできるが、装置が大型で高価になり製造条件も厳しくなるので得策ではない。従って、一般的には前記の多孔質セラミック成形品1aと表面層1bとは同一の原料配合で押出成形するのが好ましい。このような場合でも、原料の配合比率と焼成温度及び時間の組合せを調整することにより、多孔質セラミック成形品1aの気孔率を適切な状態に確保し、且つ、表面層1bの皺状凹凸1bbを適切な状態に確保することに何ら問題はない。
【0019】
このようにして押出成形された半製品は乾燥後、焼成温度1100℃以上1250℃以下の範囲で焼成することにより皺状凹凸のある表面を好適に形成することができる。ここで、焼成温度が1100℃未満の場合は、焼成時間を数日間というように大幅に延長しても所定の機械的強度を有する多孔質セラミック吸液芯を得るのは極めて困難となる。更に、皺状凹凸が殆どできないため、多孔質セラミック吸液芯と中栓の密着性が高くなって蒸散性能が悪化し、蒸散の終了点が設計で意図した標準蒸散日数を大幅に上回るようになってしまう。焼成温度が1250℃を超える場合は、焼成時間を大幅に短縮しても全体の収縮が激しく目標の気孔率をばらつき無く得ることができないので、所定の揮散日数を確保することは極めて困難となる。更に、皺状凹凸の段差が増加するため、該皺状凹凸の凹部が連続してしまう。このような皺状凹凸を有する多孔質セラミック吸液芯は、中栓に装着したときに薬液容器の内外に通じる通気路が形成されてしまうため、薬液容器の転倒時に容易に液漏れが発生してしまう。
【0020】
焼成温度としては、1150℃以上1200℃以下の範囲が特に好ましい。この範囲であれば、強い機械的強度、液漏れの発生や蒸散性能の悪化が無い好適な皺状凹凸、優れた蒸散性能に必要な気孔率、といった面について高いレベルでバランスの取れた多孔質セラミック吸液芯を得ることができる。
【0021】
前記皺状凹凸は数μmから100μm程度の角の滑らかな段差を生じるが、凹凸についてはばらつきを考慮して前記値の中央である数十μmを設計中心にするのが得策である。又、皺の幅は0.1〜0.3mm程度、長さは1〜5mmの断片状であり、皺同志の配置はランダムである。従って、薬液容器内外の気体の通路となるべき皺状凹凸の凹部が吸液芯の上から下まで連続している場所は殆どないので、中栓を装着した場合の薬液容器内外の通気性は全く不十分である。
【0022】
しかしながら、図3に示すように皺状凹凸1bbの凸部には、セラミック本来の微細孔や前記有機粉体の焼失によって形成される粒状気孔1dが多数存在しており、これらは相互に接触しているし、又、前記皺状凹凸1bbの凸部の中にあるパイプ状気孔1cにも接触している。又、前記パイプ状気孔1cと粒状気孔1dの一部は、前記皺状凹凸1bbの凸部のあらゆる部分からその断面を覗かせている。従って、本発明による多孔質セラミック吸液芯に中栓が装着された場合、吸液芯表面の皺状凹凸の凹部によって形成される通気路が連続していなくても、薬液容器内部の圧力は直接皺状凹凸の凸部の中に存在しているパイプ状気孔を通してか、或いは前記の微細孔や粒状気孔を経由してパイプ状気孔に至り、そこを通して薬液容器外部へ解放される。
【0023】
即ち、本発明によれば、薬液容器内部の圧力は、皺状凹凸によって形成される隙間と、前記皺状凹凸の凸部の中に形成されるパイプ状気孔及び粒状気孔の二つの通気路によって解放されるのが大きな特徴であり、薬液容器の内圧上昇によって液漏れが発生する問題は起こらない。又、皺状凹凸によって形成される連続的な通気路の数は非常に少なく、形成される隙間も非常に狭いので、使用時に誤って薬液容器を転倒させた場合でも薬液が漏れて床にシミがつくような問題は起こらない。
【0024】
このようにして得られた多孔質セラミック吸液芯は、薬液容器内外の圧力を解放することより蒸散性能は設計された目標値に極めて近い値を得ることができる。
【0025】
図4に、本発明にかかる多孔質セラミック吸液芯を用いるのに好適な吸上式加熱蒸散装置の一例を示す。図4において、符号3は薬液4を入れた薬液容器であり、器具本体2内に着脱可能に収納、保持されている。薬液容器3には多孔質セラミック吸液芯1が中栓5により保持されており、多孔質セラミック吸液芯1上部の周囲には環状の発熱体6が配設されている。符号7は電源コードであり、この電源コード7を通して通電することにより環状の発熱体6で多孔質セラミック吸液芯1上部を加熱し、毛細管現象により吸上げられた薬液4を器具本体2の上部に設けられた天面開口部8から蒸散させるようになっている。
【0026】
尚、本発明による多孔質セラミック吸液芯は、従来例(特開2001―86919号公報に開示された吸液芯)と比べ、次の点で異なっている。
(1)パイプ状気孔の収縮によってできる皺状凹凸と、その部分に存在するパイプ状気孔の二つが気体の通気路になるので、皺状凹凸の凹部によってできる通気路は連続していなくても、蒸散性能の悪化や液漏れの発生は起こらない。
(2)表面の皺状凹凸の大きさや高さ及び、パイプ状気孔の大きさや数は、有機短繊維の配合量と焼成温度によって微細に変化させることができるので、本発明は金型やサンドブラストによる凹凸形成よりも、液漏れや蒸散性能について柔軟に対応することができる。
(3)従来例の金型合わせ面の摩耗によってできるセラミック表面の筋状突起のような表面の隆起は本質的にあり得ない。
(4)成形には、連続的押出成形法を使うことができるので経済的である。
【0027】
【実施例】
以下、本発明の実施例を説明する。尚、この実施例で使用した配合材料の詳細は表1に示す通りである。
【0028】
【表1】
【0029】
実施例1乃至実施例3、比較例1及び比較例2
以下の条件で多孔質セラミック吸液芯を製造した。まず、表2に示した配合材料を十分に混合した後、混練用液体として水とPVA溶液を加え混練機で混練した。次いで、この混練物を焼成後の直径が7.0mmφとなる適切なノズルを有する真空押出成形機で丸棒状に押出成形した。得られた丸棒状成形物を長さ80mmに切断し、1時間自然乾燥後、更に、赤外線ランプで15分間乾燥した。そして、この棒状成形物を焼成炉内に横置状態で配置し、焼成した。焼成は、まず、450℃で2時間の脱媒を行い、900℃で2時間保持した後、更に、表2に示すピーク焼成温度で2時間保持して降温した。昇降温のレートは1時間当たり360℃であり、焼成雰囲気は全て大気中である。
【0030】
比較例3
表2に示した配合材料を混練し、押出成形した後、直ちに約50メッシュの金網の上で転がし金網で凹部跡を形成した多孔質セラミック吸液芯を製造した。その他の条件については、比較例1と同様とした。
【0031】
【表2】
【0032】
ここで、このようにして得られた6種類の多孔質セラミック吸液芯の構造的特性(皺状凹凸の平均高さ、機械的強度(曲げ強度)、気孔率)を測定した。結果を表3に示す。
【0033】
【表3】
【0034】
本実施例の多孔質セラミック吸液芯と比較例の多孔質セラミック吸液芯を比べると、本実施例の皺状凹凸の平均高さは29〜65μmで、数十μmのオーダーとなっており、製造条件により高さを制御できそうな値を示している。これに対し、比較例1では表面層に皺状凹凸は殆ど見られず、平均高さも4.3μmとかなり低い値となっていた。比較例2では、表面層の皺状凹凸が成長しすぎて、平均高さが235μmとかなり高い値となっていた。比較例3では、パイプ状気孔による皺状凹凸は比較例1と同様に殆ど見られなかったが、金網によって形成された深さ50μm〜200μm程度の連続的凹部が全面にわたり形成されており、従来例(特開2001―86919号公報)に類似の通気路が確保されていた。尚、表3における比較例3の皺状凹凸の平均高さは、金網によって形成された凹部の平均深さを示している。
【0035】
曲げ強度は、実施例1乃至実施例3及び比較例2では、実用上差し支えない程度の強度を有していたが、焼成温度が低すぎる比較例1と比較例3は、製造工程中や使用中に折れ易い強度となっていた。
【0036】
気孔率は、実施例1乃至実施例3、比較例1及び比較例3では約50%となっており蒸散性能に支障を来す値ではないが、焼成温度が高すぎる比較例2では、気孔率が低くなっていた。
【0037】
本実施例では更に、これらの多孔質セラミック吸液芯を市販の薬液を入れた薬液容器に装着し、図4に示すような吸上式加熱蒸散装置に組込んで性能評価試験(液漏れ試験、蒸散試験)を行った。まず、液漏れ試験は、保管時を想定した正立試験及び倒立試験の2種類を行った。正立試験は、吸上式加熱蒸散装置を正立させた状態で常温で24時間保持し、その後40℃雰囲気中で2時間保持を2回繰り返して液漏れの重量を測定した。倒立試験は、吸上式加熱蒸散装置を30度傾斜させた状態で5℃の雰囲気中2時間保持し、40℃で2時間保持を2サイクル繰返して液漏れの重量を測定した。
【0038】
蒸散試験は、10時間通電した後に2時間無通電にするというサイクルを1日分として、薬液が無くなるまでの日数を測定した。使用した薬液は市販の水性殺蚊剤(標準蒸散日数60日)である。結果を表4に示す。
【0039】
【表4】
【0040】
正立試験での液漏れ量については、本実施例、比較例ともに同程度であり、薬液容器の内圧上昇による液漏れは問題無い量であった。
【0041】
倒立試験での液漏れ量については、実施例1乃至実施例3及び比較例1による液漏れ量は比較例2及び比較例3に比べるとかなり少なく、薬液容器が転倒しても問題ない量であった。これに対し、比較例2の液漏れ量6.5gは床にシミを残すレベルであったため問題である。これは、焼成温度が高かったことで皺状凹凸の段差が増加して該皺状凹凸の凹部が連続してしまい、薬液容器の内外に通じる通気路が形成されてしまったことから、その通気路を通して液漏れが発生していたためである。又、比較例3の液漏れ量3.2gも床にシミを残すレベルであったため問題である。これは、金網によって形成された連続的凹部が全面にわたり形成されていたことから、その連続的凹部を通して液漏れが発生していたためである。
【0042】
蒸散試験については、実施例1乃至実施例3では、標準蒸散日数に近く、蒸散日数を設計する上で非常に広い自由度が確保されている。これに対し、比較例1では、標準蒸散日数をはるかに越えても薬液を全て蒸散することができず、88日の段階で薬液が残っているのに蒸散しなくなってしまった。これは、焼成温度が低かったことで皺状凹凸が殆どできず、多孔質セラミック吸液芯と中栓の密着性が高くなってしまい、蒸散性能が悪化したためである。比較例2では、35日の段階で多孔質セラミック吸液芯が目詰まりを起こし、蒸散しなくなってしまった。これは、焼成温度が高かったことで気孔率が減少する、即ち、薬液の通路が減少することから、目詰まりを容易に起こすようになってしまうためである。比較例3では、途中で蒸散しなくなるようなことはなかったが、標準蒸散日数よりも早く薬液を蒸散してしまい、蒸散日数を設計することが困難であることが確認された。
【0043】
【発明の効果】
以上、詳述したように本発明によれば多孔質セラミック成形品の表面に形成された皺状凹凸と、その部分に内在する各種気孔の2つの通気路により、薬液容器の内圧上昇による液漏れや薬液容器転倒による液漏れを確実に防止できるとともに、優れた蒸散性能を得ることができる。更に、本発明による多孔質セラミック成形品は、従来のような金型による成形ではなく量産性に優れた押出成形法により成形することができ、製造コストを大幅に低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例を示す図で、多孔質セラミック吸液芯の構造を示す上面図である。
【図2】本発明の一実施例を示す図で、多孔質セラミック吸液芯の構造を示す側面図である。
【図3】本発明の一実施例を示す図で、多孔質セラミック吸液芯の表面に形成されたパイプ状気孔と皺状凹凸の構造を示す断面拡大図である。
【図4】本発明の一実施例を示す図で、多孔質セラミック吸液芯を適用し得る吸上式加熱蒸散装置の構造を示す概略断面図である。
【符号の説明】
1 多孔質セラミック吸液芯
1a 多孔質セラミック成形品
1b 表面層
1bb 皺状凹凸
1c パイプ状気孔
1d 粒状気孔
2 器具本体
3 薬液容器
4 薬液
5 中栓
6 発熱体
7 電源コード
8 天面開口部
Claims (1)
- ケイ酸質セラミック原料粉体を主成分として構成される多孔質セラミック成形品の表面に、パイプ状気孔の収縮により皺状凹凸が形成されたことを特徴とする多孔質セラミック吸液芯。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP2002213477A JP2004049157A (ja) | 2002-07-23 | 2002-07-23 | 多孔質セラミック吸液芯 |
Applications Claiming Priority (1)
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JP2002213477A JP2004049157A (ja) | 2002-07-23 | 2002-07-23 | 多孔質セラミック吸液芯 |
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Cited By (3)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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JP2008239445A (ja) * | 2007-03-28 | 2008-10-09 | Kyocera Corp | 吸液芯 |
GB2492240A (en) * | 2011-06-24 | 2012-12-26 | Reckitt & Colman Overseas | Devices and Methods for Emanating Liquids |
WO2015079743A1 (ja) * | 2013-11-28 | 2015-06-04 | エステー株式会社 | 揮散装置 |
-
2002
- 2002-07-23 JP JP2002213477A patent/JP2004049157A/ja active Pending
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