以下、図面を参照しながら、本発明の表示装置について説明する。図1は本発明の一実施例における表示装置の斜視図である。また、図7は、その等価回路図である。ただし、説明に不要な部分は省略し、また、説明を容易にするために誇張あるいは縮小等して図示した部分がある。以上のことは以下の図面に対しても同様である。
基板11(以下、アレイ基板と呼ぶ)上にはマトリックス状に画素電極51が形成されている。画素電極51にはそれぞれスイッチング素子としてのTFT61が接続されている。TFT61の一端はコンデンサ64および画素電極51に接続されている。画素電極51とストライプ状電極41の間に液晶53が狭持されている。コンデンサ64の他方の電極は共通電極63である。共通電極63は全画素のコンデンサ64の一方の電極に共通である。TFT61はゲート信号線G1〜Gmおよびソース信号線S1〜Snに印加された信号により動作する。ゲートドライブ回路14はゲート信号線Gi(ただし、iは1からm)の一端に接続される。ゲートドライブ回路14はTFT61を動作状態(以下、オンと呼ぶ)および非動作状態(以下、オフと呼ぶ)させる信号を出力する。一方、ソースドライブ回路15は映像信号をサンプリングし、ソース信号線S1〜Snに出力をする。
C1〜Cmはストライプ状電極41であり、対向基板12上でかつ液晶層53と接する面に形成されている。前記電極14の平面図を図4(a)に示す。通常ITOで形成される。ストライプ状電極41は少なくとも有効表示領域13の一端から他端までの長さがあり、その形成ピッチは画素ピッチと同一である。
ストライプ状電極41の一端は対向ドライブ回路16に接続されている。なお、ストライプ状電極41は対向ドライブ回路16の信号線とみなすことができ、信号線と呼ぶ際には対向信号線C1〜Cmと呼ぶ。ITOは比較的抵抗値が高いため、対向ドライブ回路16の接続点より非接続端に電圧降下が生じる可能性がある。この対策としては図4(b)のごとく金属薄膜42を形成すればよい。金属薄膜42はクロムなどを用いる。開口部43は画素電極と対面する位置に位置し、金属薄膜42はTFT、ゲートおよびソース信号線上を遮光するように配置する。つまり、金属薄膜42はブラックマトリックスの遮光効果とストライプ状電極の低抵抗化の2つの効果をあわせもつ。
画素の平面図を図6(a)に示す。画素電極51とTFT61が接続されている。画素電極51の下層に共通電極63が形成されている。共通電極63と画素電極51の間は絶縁膜で絶縁されている。
ドライブ回路14、15、16は具体的にはICであり、前記ICの信号端子電極部にメッキ技術またはネイルヘッドボンディング技術を用いて数μmから100μmの高さの金(Au)からなる突起電極(図示せず)が形成されている。前記突起電極と各信号線とが導電性接合層(図示せず)を介して電気的に接続されている。導電性接合層は接着剤としてエポキシ系、フェノール系等を主剤とし、銀(Ag)、金(Au)、ニッケル(Ni)、カーボン(C)、酸化すず(SnO2)などのフレークを混ぜた物、あるいは紫外線硬化樹脂などである。導電性接合層は、転写等の技術で突起電極上に形成する。
なお、図1ではドライブICを基板上に積載するように図示または説明したが、これに限定するものではない。たとえば、アレイ基板が高温ポリシリコンあるいは低温ポリシリコン技術を用いて作製されている場合は、直接半導体技術を用いて基板上に前記ドライブICを形成してもよいことは言うまでもない。また、基板11上にICを積載せず、フィルムキャリヤ技術を用いて、ICを積載したポリイミドフィルム等を用いて信号線と接続しても良い。
図5は本発明の一実施例における表示装置の表示部の断面図である。画素電極51の対向する位置にストライプ状電極が配置されている。金属薄膜を形成する場合には、図5の如く斜線部に位置するようにする。ストライプ状電極とストライプ状電極との形成間隔は可能な限り狭い方がよい。あまり広いと画素の開口率を低下させる。TN液晶パネルにストライプ状電極を形成した場合は、隣接したストライプ状電極41間に横電界が発生する。したがって、液晶分子が異常配向し、光ぬけが発生する。PD液晶の場合は横電界により液晶分子が配向し、入射光がより散乱するため問題が少ない。また、PD液晶はTN液晶のように配向処理が必要でない。そのため、PD液晶ではストライプ状電極間で配向みだれが生じることは当然のことながら発生しない。
隣接したストライプ状電極41間に電位差があると、2つのストライプ状電極間に電気力線が発生する。このように基板11に対して平行な方向に発生する電界を横電界と呼ぶ。
横電界があると、光変調層内の液晶分子は横電界に沿って配向する。光変調層が高分子液晶の場合、配向した液晶はPまたはS偏光のうち一方を散乱し、他方を透過する。つまり、横電界が発生した箇所に入射した光がパネルを出射した際には偏光依存性を持つ。PまたはS偏光のうち一方を透過する(光抜け)ため、表示コントラストを低下させる。
これを防止するため、図5の点線で示すように、低誘電体膜54aを形成する事は効果がある。低誘電体膜とは光変調層53の比誘電率よりも低い比誘電率材料で形成した薄膜あるいは厚膜をいう。形成状態としては土手状が例示される。材料としては、SiO2あるいは高分子液晶のポリマー381等が例示される。SiO2及びポリマーの比誘電率は4から5程度であり、液晶の比誘電率の15から30に比較して充分小さい。
低誘電体膜54aが形成されていると電気力線は液晶層53中を通過する。従って、横電界は発生しにくくなる。つまり、横電界に起因する光抜けがなくなり、表示コントラストは向上する。
画素電極51と信号線52間にも横電界は発生する。したがって、信号線52上に低誘電体膜54bを形成する事は効果があることは明らかであろう。
低誘電体膜54aと54bは分離して形成する必要はなく、例えば、低誘電体膜54aと54bを一体化し柱状に形成してもよい。なお、低誘電体膜の膜厚は厚いほど横電界防止効果があることは言うまでもない。
前記ストライプ状電極の間隔間と対面する位置にゲート信号線52が位置するように、対向基板12とアレイ基板11は位置あわせして貼り付けられる。画素電極51とストライプ状電極41間には高分子分散液晶53が狭持される。
本発明の表示装置の液晶層53に用いる液晶材料としては、ネマティック液晶、スメクティック液晶、コレステリック液晶が好ましく、単一もしくは2種類以上の液晶性化合物や液晶性化合物以外の物質も含んだ混合物であっても良い。なお、先に述べた液晶材料のうち、シアノビフェニル系のネマティック液晶またはクロル系のネマティック液晶が好ましい。中でも、クロル系のネマティック液晶は光による分解等が少なく安定である。また、液晶層の電荷保持率も90%以上と高く作製することができ、耐熱性も良好で好ましい。本発明ではクロル系の液晶を用いている。
樹脂材料としては透明な高分子が好ましく、熱可そ性樹脂、熱硬化性樹脂、光硬化性樹脂のいずれかであっても良いが、製造工程の容易さ、液晶との分離等の点より紫外線硬化タイプの樹脂を用いるのが好ましい。具体的な例として紫外線硬化性アクリル系樹脂が例示され、特に紫外線照射によって重合硬化するアクリルモノマー、アクリルオリゴマーを含有するものが好ましい。これらは、紫外線を照射することによって樹脂のみ重合反応を起こして高分子となり、液晶のみが相分離する。本発明では紫外線硬化タイプの樹脂を用いている。なお、先行文献米国特許公報4435047号の液晶表示装置は熱硬化型の樹脂を用いている。
このような高分子形成モノマーとしては、2−エチルヘキシルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、ネオペンチルグリコールドアクリレート、ヘキサンジオールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールアクリレート等々である。
オリゴマーもしくはプレポリマーとしては、ポリエステルアクリレート、エポキシアクリレート、ポリウレタンアクリレート等が挙げられる。
また、重合を速やかに行う為に重合開始剤を用いても良く、この例として、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン−(メルク社製「ダロキュア1173」)、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン(メルク社製「ダロキュア1116」)、1−ビドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(チバガイキ−社製「イルガキュア651」)等が該当する。その他に任意成分として連鎖移動剤、光増感剤、染料、架橋剤等を適宜併用してもよい。
この際、高分子樹脂分と比較して液晶の量が少ない場合には独立した粒子状の水滴状液晶が形成されるし、一方、液晶の量が多い場合には、樹脂マトリクスが液晶材料中に粒子状、または、ネットワーク状に存在し、液晶が連続層を成すように形成される。この際に水滴状液晶の粒子径、もしくはポリマーネットワークの孔径がある程度均一で、かつ、大きさとしては0.5μm〜数μmの範囲でなければ入射光の散乱性能が悪くコントラストが上がらない。なお、好ましくは水滴状液晶の平均粒子径もしくはポリマーネットワークの平均孔径は0.8μm〜3.0μmの範囲がよい。この為にも紫外線硬化樹脂のように短時間で硬化が終了しうる材料でなければならない。また、液晶材料と高分子材料の配向比は90:10〜30:70であり、中でも50:50〜90:10の範囲が好ましい。
なお、本発明は光変調層53として高分子分散液晶を用いるとして説明をする。しかし、光変調層として高分子分散液晶に限定するものではない。たとえばツイストネマティック液晶、スーパーツイストネマティック液晶等を用いてもよい。ただし、後ほど説明する2次散乱光を防止して表示コントラストを向上させる本発明の表示装置では、特許請求の範囲の限定事項として、「光変調層は光散乱状態の変化として光学像を形成するもの」である必要がある。この光散乱状態の変化として光学像を形成するものとして、例えば熱書き込みモード、動的散乱モード(DSM)、強誘電性液晶が例示される。液晶以外ではPLZTも例示される。本発明の技術的思想は以上の例を含むものである。また、TFTにより画素電極に信号を書き込む液晶表示装置のみに限定されるものではなく、本明細書の特許請求の範囲に示す表示装置の技術的思想は光書き込み型の表示装置にもおよぶ。
図1に示す表示装置の構成は対向基板12上に対向ドライブ回路16を積載している。しかし、基板12および基板13の両方にIC14、15、16を積載する必要があるため、パネルの製造に多少困難性を伴う。そこでアレイ基板11上にIC14、15、16を積載した表示装置を図2に示す。
対向ドライブ回路16はアレイ基板11上に積載している。したがって、前記回路16の出力信号を対向基板11上のストライプ状電極41に伝達する必要がある。伝達の方法および構成について以下に説明する。
各ドライブ回路は、アレイ基板11上に配置されている。当然、ポリシリコン技術を用いて、アレイ基板11上に直接形成してもよい。図3は対向ドライブ回路16の信号出力端子34とストライプ状電極41の一端子33との接続部の断面図である。端子34は対向ドライブ回路16の信号線の一端である。端子33、34は金属薄膜で形成されている。前記金属薄膜はメッキ技術等を用いて比較的厚く形成されている。液晶層53の膜厚は10μm強であるから、一例として端子33、34の金属薄膜の膜厚は1μm以上4μm以下とする。
31は導電ビーズであり、前記ビーズは樹脂コアにNiメッキをほどこし、前記Niメッキ上にAuメッキをほどこしたものである。導電ビーズ31の直径は、液晶層53の膜厚以下であり、端子33と端子34間に狭持された時に、初期直径の70%以下につぶれるような直径であることが好ましい。したがって、5μmから10μm以下であることが好ましい。導電ビーズ31は絶縁性の接着剤32中に分散されている。前記導電ビーズ31は端子33と34に狭持された場合(導電ビーズ31b)は端子33と34間を電気的に接続する。他の場合(導電ビーズ31a)は接着剤により絶縁状態となる。なお、ビーズ31に限定するものではなく、ファイバーであってもよい。
ゲートドライブ回路14、ソースドライブ回路15および対向ドライブ回路16はポリシリコン技術を用いればアレイ基板11上に形成できる。この場合、基板上にドライブ回路を実装する必要でないので低コスト化が望める。
図7に示す構成は画素構造が図6(a)に示す共通電極方式と呼ばれるものである。ストライプ状電極41の構成は図8に示す前段ゲート方式と呼ばれる方式にも採用できる。図8に示す構成ではコンデンサはゲート信号線Gi(iは1からm)と画素電極51間に形成されている。画素の構成を図6(b)に示す。TFT61は画素電極51と接続されている。画素電極とゲート信号線52上には絶縁膜(図示せず)が形成され、前記絶縁膜上に画素電極51が重ねられてコンデンサ64が構成されている。
図10は本発明の表示装置に係る駆動回路の一実施例のブロック図である。図10において、101はビデオ信号を所定レベルまで増幅するアンプ、102は正極性と負極性のビデオ信号を作成する位相分割回路である。なお、正極性とは対向電極の電位(以下、コモン電圧と呼ぶ)に対して高電位を、負極性とは低電位を指す。しかし、本発明の表示装置では対向電極とはストライプ状電極41を意味する。前記ストライプ状電極41の電位は対向ドライブ回路16により第1の電位と第2の電位は変化する。以下、コモン電圧とは第1の電位と第2の電位の平均値とみなして説明をする。
103はフィールドもしくは1水平走査(1H)期間ごとに極性が反転した交流ビデオ信号を出力する出力切り換え回路、105は液晶パネル、104はソースドライブ回路15、ゲートドライブ回路14および対向ドライブ回路16の同期制御を行うための制御回路である。
以下、本実施例の表示装置の駆動回路の動作について説明する。まず、アンプ101では、ビデオ信号の振幅が液晶53の電気光学特性に対応するように利得調整が行われる。次に、利得調整されたビデオ信号は位相分割回路102に入り、コモン電圧に対して正極性と負極性の2つのビデオ信号が作られる。2つのビデオ信号は出力切り換え回路103に入力される。出力切り換え回路103は1フィールドもしくは1H期間ごとに極性を反転したビデオ信号を出力する。このように信号の極性を反転させるのは、液晶53に交流電圧を印加するためである。液晶53は直流電圧が印加されると、分解、劣化するからである。
次に、出力切り換え回路103からのビデオ信号はソースドライブ回路15に入力される。制御回路104はソースドライブ回路15、ゲートドライブ回路14および対向ドライブ回路16と同期をとる。
図11は一画素に注目したときの信号波形である。ただし、モデル的に描いている。実際の駆動方法ではTFT等の寄生容量等があり図11とは多少異なる。なお、印加電圧等は概念的に例にあげて説明する。
111はストライプ状電極に印加される信号波形、112はソース信号線に印加される信号波形、113はゲート信号線に印加される信号波形である。ここでは説明を容易にするため、画素とは図7の画素71、ストライプ状電極41とはC1を、ゲート信号線とはG1を、ソース信号線とはS1として説明をする。
対向ドライブ回路16は、+Vaおよび−Vaの電位を出力する。また、テレビ信号の第1フィールド(1F)での出力電位は対向信号線C2i(ただし、iは整数)に+Vaを、C2i+1に−Vaとなるように電圧を出力する。次の第2フィールド(2F)では対向信号線C2i+1に+Vaを、C2iに−Vaとなるように電圧を出力する。これらの電位となるように駆動するためには、対向信号線に印加する電圧を一走査期間(1H)ごとに書きかえていけばよい。つまり、対向信号線C2iが+Va電圧、C2i+1が−Va電圧の時を例にあげれば、対向信号線C1を+Vaに変化させ、1H後にC2を−Vaに変化させ、さらに1H後、C3を+Vaというふうに変化させればよい。以上のように電圧を変化させていけば1フィールド後には全対向信号線の電位は反転する。次のフィールドでは再び、対向信号線C1に−Vaに反転させる。
なお、電圧Vaは液晶の立ち上がり電圧以下である。液晶の立ち上がり電圧とは、TN液晶では液晶の配向状態が変化し始める電圧を、高分子液晶では透過状態となり始める電圧をいう。立ち上がり電圧以下の電圧が液晶層に印加されても入射光は変調されない。つまり、高分子液晶ではVa電圧が液晶の立ち上がり電圧以下であれば、画素電極に映像信号が印加されていない状態つまり画素電極に保持されている電圧が0(V)の時、液晶層が透過状態となることはない。
一方、ソースドライブ回路15も1Hごとに信号の極性を変化させる。図11ではソース信号線は−Vbと+Vbの電圧を出力している例である。ただし、これはラスター表示の時であって、液晶パネルに動画を表示する場合は、図11のように±Vbのように一定電圧の出力とならないことは言うまでもない。
1HごとにソースドライブICの出力信号の極性を変化させる駆動方法は1H反転駆動と呼ぶ。
1H反転駆動を模式的に示すと図13のようになる。図13では一画素71を四角で示す。前記画素71に正極性の電圧が書き込まれている状態を+で表示し、負極性の電圧が書き込まれている状態を−で表示している。あるフィールドにおいて電圧の書き込み状態を図13(a)とすると、1フィールド後の電圧の書き込み状態は図13(b)で示される。
ゲートドライブ回路14はソース信号線からの電圧を確実に画素電極に書き込めるように、最大出力電圧よりも高い電圧(以下、オン電圧と呼ぶ)を出力し、また、ソース信号線からの最小出力電圧でもTFTがオン状態とならないように低い電圧(以下、オフ電圧と呼ぶ)を出力する。
図7において、TFT61がオンすると画素71に−Vb電圧が書き込まれる。その際、対向信号線C1は+Va電圧に保持される。次のフィールドでは画素71には+Vb電圧が書き込まれる。その時、対向信号線C1は−Va電圧に保持される。以上の変化を1フィールドごとに繰り返す。したがって、画素71にはVc=Va+Vbとなる電圧が印加されることになる。対向信号線C1の変化は+Vaもしくは−Vaの2値である。TFT61により画素に書き込まれる電圧は表示画像(映像信号)により変化する。
対向電極をストライプ状にすることにより、高電圧を画素に印加できる。しかし、TFTの動作中心に考えれば従来の1H反転駆動を行なっているにすぎない。したがって、ソースドライブICおよびゲートドライブICも従来のものを用いることができる。また、TFT51の耐電圧性能を向上させる必要もない。
たとえばVa=4(V)とし、ソースドライブICの最大の出力電圧Vmを6(V)とすればVc=Va+Vm4+6=10(V)の駆動が可能である。従来の高分子分散液晶では、膜厚が10μmでほぼ透過状態にできる電圧は6(V)である。10μmでは散乱特性は低く、良好な表示コントラストは望めない。10(V)を液晶層53に印加できれば、液晶層53の膜厚は15μm近傍にすることができ、散乱特性は飛躍的に向上する。したがって、良好な表示コントラストを実現できる。しかし、出力電圧Vmを10(V)にする必要がある。これは、本発明の表示装置で容易に実現できる。本発明によれば、アレイ基板12側は従来のものをそのまま(TFT、ドライブ回路等)で用いることができる。製造コストもさほど高くなることはなく、また、Vmが6(V)と従来のままであるから、TFT61が電圧ストレスにより劣化することもない。
なお、図11において、対向ドライブ回路16は+Vaおよび−Vaの電位を出力し、ソースドライブ回路15は+Vbおよび−Vbの電位を出力するとしたが、本発明の駆動方法はこれに限定されるものではない。以下、本発明の他の駆動方法の実施例について図16を用いて説明する。
理解を容易にするため、まず、図14を用いて先に説明した駆動方法について説明しておく。画素のTFT61はスイッチング素子であるからスイッチとみなすことができ、これをS2とする。また、液晶層53はコンデンサClcとみなせる。なお、Caはコンデンサ64である。対向信号線Ciは+Vaと−Vaの電位が印加されるから、2つの電位はスイッチS1で切りかえるのと同等とみなせる。今、液晶層53に印加される電圧をV1、コンデンサ64に印加される電圧をV2とする。
ゲート信号線にオン電圧が印加されるとTFT61は動作状態となり、ソースドライブ回路15からの信号を画素電極51に印加する。前記信号が負極性の−Vbであり、対向信号線41の電位が+Vaであれば、液晶53に印加される電圧V1はVa+Vbとなる。正極性の+Vaの信号であれば、スイッチS1をa端子に切りかえ、対向信号線41の電位を−Vaにすれば、同様に液晶53に印加される電圧はVa+Vbとなる。したがって、ソースドライブ回路15から出力される信号がVbであっても、液晶に印加される電圧V1は対向信号線の電位Vaが加えられて、液晶には高電圧(Va+Vm)を印加することができる。なお、対向信号線41に印加された電位が+Vaの時、画素電極51に印加する信号が正極性であってもよい。ただし、+Va電圧以下という条件は満足させる必要がある。画素電極51に印加された電圧が+Vaであり、対向信号線41に印加された電位が+Vaであれば、液晶にはVa−Va=0(V)となり全く電圧を印加しない状態にできるからである。したがって、画素電極51に印加する電圧は対向信号線41が+Vaの時は+Va以下に、対向信号41が−Vaの時には−Va以上にすればよい。
次に本発明の表示装置の他の駆動方法について説明をする。図16は対向ドライブ回路16がコモン電圧(理解を容易にするために0(V)=GNDとする)電位と、+Vaおよび−Vaの3つの電位の信号を出力できる場合の説明である。
まず、図16(a)に示すように、対向信号線41の電位をGNDにした状態で画素電極51に電圧Vxを書きこむ。液晶53に印加される電圧はV1=Vxとなる。一水平走査期間(1H)後は次のゲート信号線にオン電圧が印加されており、先にオン状態のTFTはオフ状態となる(S2オープン)。この時の等価回路図を図14(b)に示す。TFTがオフとなると同時にスイッチS1を端子aまたはcに切りかえる。画素電極51に印加されている信号の電位が正極性の場合は、端子cに(+Vaに)、負極性の場合は端子a(−Va)にする。対向信号線41に印加される電圧が+Vaまたは−Vaにされるわけであるから、前記電圧はClcとCaに分圧されて印加される。分圧されClcに印加される割合rは、
r=Ca/(Clc+Ca)(数5)
となる。高分子分散液晶表示装置の液晶膜厚はTN液晶表示装置の液晶膜厚が5μmに対し、10μm以上と厚く、また液晶の比誘導電率εは低い。したがって、液晶の容量Clcは小さい。その分、コンデンサCaの値は大きくする必要がある。一例としてClc:Ca=1:9である。
前記ClcとCaの値を(数5)に代入すると、r=0.9となり、対向信号線の電圧変化分の90%が液晶層53に印加されることとなる。したがって、電圧変化に対する液晶に印加できる電圧効率(以後、電圧効率と呼ぶ)が非常によい。これはTN液晶表示装置と異なり、高分子分散液晶表示装置に特有の事項である。
以上のようにTFTがオフした後、画素電極51に正極性の電圧が印加されている場合は対向信号線41に正電圧を印加する。画素電極51に負極性の電圧が印加されている場合は対向信号線41に負電圧を印加する。これが本発明の第2の実施例の駆動方法である。
なお、1H後、すぐに対向信号線41の電位を切り換える必要はなく、多少の時間は遅延後であってもよい。ただし、遅延が長いほど液晶に印加される実効電圧は低下する。
以上は対向基板12にストライプ状電極41を形成した構成の表示装置の駆動方法であった。以下に、段落(0024)でも記載しているように画素電極が形成された基板側にストライプ状電極(コンデンサ信号線)が配置された、本発明の他の表示装置の構成および駆動方法について説明をする。
図9は本発明の第2の実施例における表示装置の等価回路図である。一画素は図6(a)に示す形状である。液晶53は画素電極51と対向電極91間に狭持される。対向電極91は有効表示領域の全画素71に共通である。コンデンサ64は画素電極51と共通電極63とで形成される。前記共通電極63は画素行にそって形成される。前記共通電極63の一端はコンデンサ駆動回路92に接続されている。ここで、共通電極63をコンデンサ駆動回路92の信号線とみなし、コンデンサ信号線Di(iは1からm)と呼ぶことにする。他の構成は図7と同様であり、駆動回路も図10の対向ドライブ回路16をコンデンサ駆動回路92におきかえればよいので説明を省略する。なお、コンデンサ駆動回路92の動作は対向駆動回路16の動作とほぼ同様である。
以下、図9に示す表示装置の駆動方法について説明をする。図15は駆動方法の説明図である。なお、説明を容易にするためにコンデンサ駆動回路92はVbp、VbnとGND電圧をDi信号線に出力できるものとする。本来GND電圧とはコモン電圧よりも低い電圧にするが、ここでは0(V)と考えた方が理解しやすいため、0(V)として説明をする。また、Vbnは負極性の電圧、Vbpは正極性の電圧とする。
まず、コンデンサ駆動回路92はコンデンサ信号線Diの電位をGNDにする。ソースドライブ回路15は画素電極51に正極性の電圧Vpを書き込む。したがって、液晶53に印加される電圧はV1=Vpとなる。一水平走査期間(1H)後、コンデンサ駆動回路92はコンデンサDiに負極性の電圧にVbnを出力する。先の実施例でも述べたように、ClcはCaに比較して小さく、一例としてClc:Ca=1:9である。負極性の電圧Vbnは(式1)により分圧されてClcとCaに印加されるが、その大部分はClcに印加される。したがって、Clcに印加される電圧はほぼVp+Vbnとなる。
画素電極51に負極性の電圧Vnを書き込む場合は、まず、コンデンサ駆動回路92はコンデンサ信号線DiにGND電圧を出力する。次に、一水平走査期間(1H)後、コンデンサ駆動回路92はコンデンサ信号線Diに正極性の電圧Vbpを出力する。つまり、画素電極51には、ほぼVn+Vbpの電圧が印加されることになる。
画素電極51には1フィールド周期でVn+VbpとVp+Vbnの電圧が印加される。つまり、交流駆動される。
なお、コンデンサ駆動回路はまず、GND電圧を出力し、一水平走査期間(1H)後、VpnまたはVbp電圧を出力するとしたが、一水平走査期間に限定するものではない。たとえば、二水平走査期間(2H)後であってもよい。ただし、その場合、画素電極に印加される実効電圧は多少低くなる。また、まずGND電圧をコンデンサ信号線Diに出力して、次にVbnまたはVbp電圧を出力するとしたが、これに限定するものではない。たとえば、画素電極51に正極性の電圧Vpを書き込む場合、コンデンサ信号線Diに正極性の電圧Vbpを印加しておき、一水平走査期間後コンデンサ信号線Diに負極性の電圧Vbnを印加してもよい。この場合、GND電圧を出力することは不要となる。ただし、電圧制御はやりにくくなるであろう。
以上の実施例は液晶層53の膜厚を厚くして表示コントラストを向上させる方法であった。つまり、液晶層53の膜厚を厚くする→液晶層53を透明状態にするのに比較的高い電圧が必要→ストライプ状電極等の構造を採用→高電圧を液晶層に印加できる→表示コントラストが向上する。という方法あるいは表示装置の発明であった。
高分子分散液晶表示装置は表示コントラストが低いという課題に対して、我々は2次散乱光を防止する構成あるいは方法も発明した。以下、2次散乱光を防止する方法、構成について説明する。
まず、理解を容易にするため本発明の表示装置のモデルについて説明をしよう。本発明の一実施例である表示装置の説明図を図17に示す。入射側基板178と出射側基板179の間に光変調層53が狭持されているものとする。出射側基板179はアレイ基板11に透明板(ガラス基板など)を光学的結合させたものと考えてもよい。なお、光学的に結合とは、基板と基板間を、前記基板の屈折率とほぼ等しい透明材料で接着あるいは接合することをいう。
光変調層53に電圧を印加しないで、表示領域内の点Aを中心とする微小領域171だけに細い平行光を照射する場合について考える。微小領域172に入射した光は散乱光173aとなり散乱する。散乱光は出射面176に達する。出射面176と散乱光173aとの角度θ0が臨界角以下の時は透過光線174となる。臨界角以上の時は反射光線175となる。反射光線175は再び光変調層53に入射し、再び散乱光173bが前方に出射する。これは光変調層53に2次光源が形成されたことに相当する。このように反射光線175が、再び光変調層53に入射し、散乱することを2次散乱と呼び、その光を2次散乱光と呼ぶ。
光変調層53からの再出射光の輝度分布は微小領域172を中心として回転対称となる。再出射光の輝度分布は図18に示す光リング181となる。
光リング181は微小領域172から出射され、出射面176と臨界角θで反射され、再び光変調層53にもどる位置近傍に出現する。これは、臨界角以下のとき、光は透過光174となり、臨界角より十分大きい角度の反射光の発生割合が少ないことから直感的にも推測される。今、基板179の屈折率nが1.52とすれば、空気の屈折率は1.0であるから臨界角θはθ=sin−1(1/n)=sin−1(1/1.52)=42度となる。
図18に示すように基板179の厚みが比較的薄いときは光リング181の直径2rは有効表示領域182の対角長dより小さい。したがって、有効表示領域182内に光リング181が発生するから表示コントラストを低下させる。図19に示すように、基板179の厚みが厚い時は光リング181の直径2rは有効表示領域の対角長dよりも大きくなる。つまり、反射光175は有効表示領域以外の領域(以後、無効領域と呼ぶ)に形成された光吸収膜171に入射し、そして吸収される。光吸収膜171とは黒色塗料等が例示される。
光リング181の直径が有効表示領域の対角長dより大きくなる条件は、基板179の厚みをtとすれば
(t/d)≧(1/4)√(n2−1)(数6)
である。(数6)にn=1.52を代入すればt/d≒0.3となる。
実際にその効果をたしかめた結果を図27に示す。図27(a)に示すようにパネルに平行光線を照射し、出射側から光変調層の輝度を測定する。輝度Bとは出射側基板179の厚みtが、有効表示領域の対角長dに対して極めて薄い時である。具体的にはd=55(mm)に対してt=1(mm)である。Beは基板厚tを変化させた時の輝度である。図27(b)は縦軸を輝度比(Be/B)とし、横軸を相対基板厚(t/d)としている。図27(b)よりt/d=0.3で一定となり、t/d<0.3の時、輝度比(Be/B)の低下割合が大きいことがわかる。
輝度比が小さいことは表示コントラストが高いことを示す。図27(b)によればt/d=0.25〜0.3以上でコントラスト向上効果は十分であり、先のt/dの1/2であるt/d=0.15でも実用域であることがわかる。したがって、基板の屈折率n=1.52の時t/dは0.15以上が好ましく、さらには(t/d)は0.3以上が好ましい。以上のことから(数6)の条件の1/2であっても実用上支障がない。したがって基板179の厚みtと有効表示領域の対角長dの関係は次の(数7)を満たせばよい。
(t/d)≧(1/8)√(n2−1)(数7)
ある画素からでた散乱光が本来黒表示となるべき画素にも他の画素に入射すると、そこに拡散反射による2次光源が形成されるので、本来黒表示となるべき画素の輝度が高くなってしまう。この2次散乱光を黒色塗料171で吸収すれば表示コントラストを向上できる。本発明はこの技術的思想を透明基板212等で実現する。
以上から、光散乱により変調を行なう表示装置をライトバルブとして用いた投写型表示装置の投写画像のコントラストが良くないという問題点は、光変調層53の散乱特性が小さいという点も原因の1つであるが、上記メカニズムが原因となっている。出射側基板179の厚さtが厚くなるほど、2次散乱光による輝度の上昇は小さくなる。従って、出射側基板179の厚さを厚くすれば、表示画像のコントラストが向上する。
以上の説明は出射側基板179に関する説明であるが、微小領域172に入射し、入射側に反射した光についても同様のことが論じれる。つまり反射光は、入射側基板178の光入射面に戻る。この場合は、入射側基板178の厚みを厚くすれば2次散乱光の発生を防止できる。以上の記述は特願平4−145297号にてさらに詳しく説明されているので参照されたい。
次に、出射側基板179の出射側面が凹面の場合について説明する。出射側基板179の材質を同一として、出射面176だけを凹面に変え、図20に示すように、光変調層53に電圧を印加しないで表示領域内の点Aを中心とする微小領域172だけに入射側から細い平行光を照射する。光変調層53上の点Aから出て凹面176上の点Bで反射し光変調層53上の点Cに入射する光線を考えると、出射面176が平面から凹面に変わることにより、点Bに入射する光線の入射角が大きくなるから、光リング181の直径2rは大きくなる。従って、出射側基板176の出射面176を平面から凹面に変えることにより、再出射光の輝度を低減することができ、表示画像のコントラストを向上させることができる。このことは、出射側基板179の出射面が凹面の場合、出射面が平面の場合と比較して、中心厚tが薄くてもコントラスト向上の効果が大きいことを意味する。したがって、(数7)には制約されない。
212は透明基板であり、対向基板12およびアレイ基板11と光学的結合されている。光学的結合材料としては紫外線硬化型接着剤が例示される。前記接着剤は対向基板212を構成するガラスの屈折率に近いものが多く、この用途に十分である。また、紫外線硬化型接着剤だけに限定されるものではなく、透明シリコーン樹脂なども用いることができる。他にエボキシ系透明接着剤、エチレングリコール等の液体等も用いることができる。留意すべき点は対向基板12等に透明基板212を接着する際、光学的結合層に空気が混入しないようにすることである。空気層があると屈折率差により画質異常を生じる。なお、透明基板212と対向基板12等とを光学的に結合させることをオプティカルカップリングと呼ぶ。
透明基板212は対向基板12と同一材質のガラス基板を用いることが好ましい。他にアクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂等の透明樹脂なども用いる事ができる。これらにガラスの屈折率に近いものが得られ、比較的安価であり、また、プレス加工等により任意の形状を容易に形成できる。
透明基板212の側面には黒色塗料等を用いて光吸収膜171が形成されている。前記光吸収膜171は側面に限定されるものではなく、光の入出射面以外の無効領域にできるだけ広い領域にわたり形成することが好ましい。
透明基板212aの空気に接する面から光変調層53までの距離tは透明板の屈折率n、光変調パネルの有効表示領域の最大径をdとして、(数7)を満足するようにする。
図22は本発明の表示装置の断面図である。対向基板12上には、対向電極91およびブラックマトリックス221が形成されている。ブラックマトリックス221はTFT61、ゲート信号線(図示せず)およびソース信号線(図示せず)に対面するように配置される。一方、アレイ基板11上には画素電極51およびTFT221が形成されている。また、TFT上には遮光膜222が形成されている。遮光膜222として、アクリル系樹脂にカーボンを分散させた薄膜構成、あるいはTFT61上に絶縁膜(図示せず)を形成し、その上に金属薄膜を形成した構成が例示される。遮光膜222は液晶層53内で散乱した光がTFT61の半導体層に入射することを防止する。遮光膜222は、図1、図2の表示装置でも採用している。アレイ基板11および対向基板12の周辺は封止樹脂223で封止され、前記基板間に光変調層53としての高分子分散液晶が狭持されている。同様に透明基板212bの中心膜tも(数7)を満足するようにする。なお、先にも述べたように透明基板212が凹レンズの場合は(数7)の条件を満足する必要はない。
次に、透明基板212の効果についてさらに述べる。透明基板212がない場合、光変調層53で散乱した入射光CはA2およびB2で示される。散乱光A2は対向基板12内で反射を繰り返し、再び光変調層53に入射する。前記入射光は再び散乱するから2次光源となり表示コントラストを低下させる。散乱光B2はアレイ基板11と空気と接する面で反射し、TFT61の半導体層に入射する。TFT61の半導体層は前記入射光により励起され、ホトコンダクタ現象が発生する。するとTFT61はリーク状態となり、これも表示コントラストの原因となる。
透明基板212a、212bが設けられていると、散乱光A2およびB2はなくなり、散乱光A1およびB1となる。散乱光A1およびB1は光吸収膜171で吸収されるから、ホトコンダクタ現象が発生することも2次散乱光となることになく表示コントラストを向上できる。
図22では透明基板212は円柱あるいは板上として説明した。透明基板212は図20で示すように平凹レンズとしてもよい。また、前記平凹レンズに正レンズを組み合わせる構成も考えられる。
本発明の表示装置には、多くの変形が考えられる。変形として考えられる構成の例を図21(a)〜図21(k)に示す。いずれも、図面の右側が入射側であり、透明基板212、平凹レンズ214は透明接着剤により液晶パネル211に光学的に結合されている。また、透明基板212、平凹レンズ214の無効領域には光吸収膜171が塗布されている。平凹レンズ214を用いる場合には、正レンズ213を組み合わせることができる。なお、表示装置の入射側には、投写画像の周辺部を明るくするためにフィールドレンズを配置するのがよいが、液晶パネル211の入射側に平凹レンズ214を用い、その入射側に正レンズ213を近接配置する場合には、その正レンズ213はフィールドレンズとして機能することになる。
図21(a)〜図21(k)に示したいずれの構成も、前述の実施例と同様に良好な画像表示が得られる。なお、表示装置の液晶層53から空気と接する面までを1つの材料で構成してもよいし、複数の材料を組み合わせてもよい。
平凹レンズ214の光出射面もしくは光入射面には反射防止膜が形成される。平凹レンズ214はアクリル樹脂を用い、成型加工により作製している。成型加工は金型があれば、同一のレンズを作製できるので、量産性がよい。本発明の表示装置を用いて投写型表示装置を構成する場合は、平凹レンズ214等を組み合わせた状態で、光変調層53上の光学像がスクリーン上で結像するようにすればよい。図20に示すように、透明基板212を平凹レンズに構成することにより透明基板212の厚みは(数7)によらず、薄い厚みで十分に2次散乱光を防止することができる。
たとえば図21(k)では平凹レンズ214に正レンズ213が近接して配置されている。正レンズ213の一方の凸面の曲率半径は、平凹レンズ214の凹面の曲率半径と等しい。前記凹面と凸面間に薄い空気間隔を設けている。平凹レンズの凹面および両凸レンズの両凸面には反射防止膜が蒸着されている。先と同様に本発明の表示装置を用いて投写型表示装置を構成する場合は投写レンズを、平凹レンズ214、正レンズ213を組み合わせた状態で、光変調層53上の光学像スクリーン上に結像するようにする。
高分子分散液晶のように光散乱状態の変化として光学像を形成する光変調層53を有するライトバルブは、光変調層が完全散乱状態に近いほど表示コントラストは向上する。
以上のように基板厚tと有効表示領域の対角長dとは重要な関係があることがわかった。我々はさらに検討を進め、光変調層53の散乱特性を所定値以上とすることにより、2次散乱光の防止効果を大幅に向上できることを発見した。
図17において散乱光173aが出射面176で反射し、再び光変調層53に入射して2次散乱が生じる。光変調層53の散乱特性が悪いと2次散乱も生じにくい。つまり、2次光源となることはない。
光変調層53が完全散乱状態に近くなると2次散乱の発生割合も多くなる。したがって、出射側基板179の厚みtが(数7)の条件を満足することが必須になる。本発明者らは種々の実験を繰り返し、光変調層53に電圧無印加状態で、入射側基板179より微小領域172への入射光の照度をL、出射基板179より微小領域172から測定した輝度をBとしたとき(数8)で示されるGが1.5以下、好ましくは1.0以下のとき、2次散乱光の防止効果が顕著であることを確認した。なお、(数8)においてπは円周率である。
G=πB/L(数8)
以下、(数8)のGを1.5以下とすることの根拠について説明をする。そのためには光変調層53の特性の評価手法について説明しなければならない。図23および図24は光変調層の特性の評価手法の説明図である。
図23、図24において、211は透明基板212を取り付けない状態の表示装置であり、224は表示装置211に透明基板212を取り付けた表示装置214である。231は平行光光源であり、略平行光の光を表示装置に照射する。232は輝度計であり、光変調層53の微小領域の輝度を測定するものである。
平行光光源231より表示装置211、224に照射する。輝度計232は角度θを変化させながら、光変調層の微小領域の輝度を測定する。なお、距離xは十分長くとる。なぜならば、透明基板の厚みにより図23と図24のxの光学的距離に差が生じるのを防止するためである。前記測定結果を図25)に示す。251は図24(a)の表示装置の輝度(B)−角度(θ)曲線(以下、B−θ曲線と呼ぶ)、252は図24(b)の表示装置のB−θ曲線である。図24(b)の表示装置では輝度(B)が低下することがわかる。この原因は透明基板212により2次散乱光が抑制されているためである。B−θ曲線251と252の差は光変調層53の散乱特性がよくなるほど大きくなる。
前述のB−θ曲線でθ=0度のときの輝度Bとライトバルブの光入射面で測定した照度Lを用いて、(数8)によりパネルゲイン(G)を計算する。
次に、θ=0のときの図23の表示装置の輝度B1と図24の表示装置の輝度B2との比、B2/B1をとり、輝度低下割合D(=B2/B1)を計算する。前記輝度低下割合DとパネルゲインGの関係曲線(以下、D−G曲線と呼ぶ)を描くと図26の傾向になる。
図26ではパネルゲインGが1.5以上では輝度低下割合(D)が小さく、パネルゲインGが1.0以下で急激に輝度低下割合(D)が大きくなることを示している。つまり、パネルゲインGは1.5以下にすることが好ましく、さらには1.0以下にすることが好ましい。
本発明の表示装置をライトバルブとして用い、投写型表示装置を構成した際、コントラストCRは次の(数9)で示される。
CR=(2F)2T/G(数9)
(数9)において、パネルゲインGは(数8)で求められる。また、Fは投写レンズの有効F番号(以後FNoと呼ぶ)、Tはライトバルブの光変調層53に最大電圧が印加されたときの光の透過率である。前記透過率Tは通常0.7〜0.9である。透過率を低減させているのは、対向電極を構成するITOの反射率および光変調層の光の吸収率等である。
(数8)(数9)の導出については少し説明が必要である。まず(数8)について説明する。ここで(数8)および(数9)について簡単に説明しておこう。
平行光を表示装置の光変調層53に入射させ、その時の光変調層53の照度をLとする。輝度Bは前記照度Lを円周率πで除算したものである。また、光変調層53の光散乱による輝度低下割合をパネルゲインGとして定義する。パネルゲインGは散乱特性が良好なほど小さくなる。以上のことから、光変調層53の輝度Bは
B=GL/π(数10)
となる。(数10)式を変形すれば(数8)が求まる。
次に(数9)について説明をする。輝度B0の発光体を、FNoがFの投写レンズでスクリーン(像面)に投写する。そのスクリーン照度(像面照度)Lは一般的な光学理論式より、
L=(πB0)/(4F2)(数11)
である。(数10)よりパネルの輝度はB=GL/πである。したがって、光変調層53が光散乱状態の時の、光変調層53の輝度Bは(数10)に(数11)を代入して
B=(GB0)/(4F2)(数12)
となる。
光変調層53が透明状態の時、また、その光透過率をTとすれば、光変調層53の輝度Btは
BT=B0T(数13)
となる。表示コントラストCRは、B(黒表示)、BT(白表示)の比であるから、
CR=BT/B=4F2T/G(数14)
となり、(数9)が求まる。
パネルゲインG=0.5とは、透過型光変調パネルが完全拡散状態となった時の値である。G=0.5の時、輝度低下割合が仮に0.5であれば実効的なパネルゲインは0.5×0.5=0.25となることを示している。以後、透明基板等の2次散乱防止効果により輝度低下割合Dを考慮したパネルゲインを実効パネルゲインG’と呼ぶ。
パネルゲインGが1.5以下、好ましくは1.0以下の時、輝度低下割合Dが大きくなり、実効パネルゲインG’が小さくなる。前記実効パネルゲインG’は(数9)においてG=G’とおきかえることができるから、表示コントラストを向上できることになる。
パネルゲインGを1.5以下にするためには、光変調層53の散乱特性をより完全拡散状態にしなければならない。完全拡散状態に近づける方法としては、(1)光変調層53の材料開発により散乱特性を向上させる方法。(2)光変調層53の膜厚を厚くする方法がある。(1)の方法は光変調層53の膜厚および駆動電圧を変化させず散乱特性を向上するものであるから好ましいが、材料開発はそうたやすいものではない。(2)の方法は膜厚を厚くするだけであるから容易である。しかし、膜厚を厚くするほど光変調層を透過状態にするのに要する電圧は高くなる。一例として高分子分散液晶のポリマーと液晶との比率が約4:6で、かつ、液晶にネマティック液晶を用いた場合、液晶膜厚が12(μm)の時、パネルゲインGは約1.8であり、駆動電圧は6(V)である。液晶膜厚が20μmの時、パネルゲインG=約0.8強であり、駆動電圧は10(V)であった。駆動電圧VとパネルゲインGの関係の一例を図28に示す。
印加電圧の1つの目安として±6〜7(V)以内という制約がある。この制約の一原因は画素電極への映像信号を出力するソースドライブIC15の駆動能力の問題である。
パネルゲインGを1.5以下にしようとすると駆動電圧は7(V)以上、パネルゲインGを1.0以下とするには駆動電圧は9(V)以上必要である。図1または図2に示す本発明の表示装置および、本発明の表示装置の駆動方法を用いれば、液晶層53に10(V)程度の電圧を印加することは容易である。したがって、図1または図2等のストライプ状電極41を形成することにより駆動電圧を10(V)以上にできるから、パネルゲインGを1.5以下にできる。さらに、図22に示すような透明基板212をパネルにオプティカルカップリングすることにより、実効パネルゲインG’の低減効果を得られる。つまり本発明の表示装置は良好な表示コントラストを実現できることになる。当然のことながらストライプ状電極の構成を採用せずとも、パネルゲイン1.5以下を実現できれば、良好な表示コントラストを実現できる。また、図9に示す構成でも液晶層53に高電圧を印加でき、良好な表示コントラストを実現できる。
図1等に示すようにストライプ状電極41を有する構成を採用することにより、液晶層53に高電圧を印加できるようになる。多少の困難性があるが図6(b)に示すような前段ゲート方式でも、10V程度の高電圧印加を実現できる。ただし、ゲート信号線への印加電圧が高くなるから、TFT61の耐圧による劣化は生じる可能性はある。図1の表示装置では耐圧による劣化は生じない。
前段ゲート方式の等価回路図は図8で示される。ただし、対向ドライブ回路16は必要なく、ストライプ状電極41は全画素共通の対向電極91(図示せず)とする。
図12は図8の構成で液晶層53に高電圧を印加するための説明図である。実線はTFT61のゲートの電圧波形、点線はコンデンサ64を形成する前段のゲート電圧波形である。TFT61オフ直後に突き抜けによって電圧dV1およびdV4だけ低下し、次に点線で示す補償電圧Ve(+)、Ve(−)でそれぞれdV2、dV5だけ補償される。同一の電位に設定した対向電圧Vtと信号電圧の中心Vscを中心に正負V*(+)、V*(−)だけ対称にバイアスされる。
ゲートドライブIC14は、通常駆動のTFT61オン・オフレベルに加えて、TFT61の寄生容量によって発生する突き抜け電圧を補償する二つのVe(+)、Ve(−)を持つ4レベルの信号を出力する。二つの補償電圧の中間レベル最適化でソース信号の電位中心と画素電位の電位中心と対向電位(固定)が同電位で駆動できる。
また、2つの補償電圧間の振幅(V*=Ve(+)+Ve(−))は、液晶53にバイアス電圧を印加する効果がある。これを最適値に設定すればソース信号の最大振幅6(V)で十分なコントラストを得られる。たとえば、液晶53に±10(V)の電圧を印加するためにはVe(+)+Ve(−)により±4(V)分バイアスさせれば、ソース信号線の最大振幅は6(V)でよい。以上のような駆動方法をバイアス駆動と呼ぶ。
他に比較的高電圧を液晶層53に印加できる方法として1H対向反転駆動があげられる。前記駆動は1水平走査期間(1H)ごとに一行の画素列に信号を書き込むと同時に対向電極91の電位の極性を反転させるものである。対向電極の消費電力が大きくなる点、パネルの寿命が短くなるという欠点があるが、1H対向反転駆動を本発明の表示装置の駆動方式として採用することも可能である。
以上のように、ストライプ状電極41の構成を採用せずとも、液晶層53に比較的高い電圧を印加する方法(バイアス駆動、一H対向反転駆動)は存在する。前述の駆動と図21に例示する構成と(数8)のG<1.5の条件を満足させることにより良好な表示コントラストを実現できる。
本発明の表示装置では光変調に偏光板を用いないため、高輝度表示を実現できる。また、容易に液晶層53に高電圧を印加できる構成を採用すること、あるいは透明基板179の効果により高コントラスト表示を実現できる。当然のことながら高電圧を印加できる構成を採用し、かつ、透明基板179の2次散乱光の防止効果両方によりさらに表示コントラストを向上できることはいうまでもない。
透明基板179は2次散乱光防止効果をもつ。ただし、2次散乱防止効果の利益を十分に得ようとするとパネルゲインGは1.5以下に好ましくは1.0以下にする必要がある。後ほど説明をするが、実用上十分なコントラストCRを得るためにも、パネルゲインGは1.5以下を実現する必要がある。パネルGを1.5以下を実現しようとすると、液晶層53に少なくとも7(V)以上の電圧を印加せねばならない。図1等に示す本発明の表示装置はストライプ状電極41を形成しているため、ソースドライブ回路15の信号振幅を大きくすることなく、液晶層53に高電圧を印加できる。
以上のように本明細書では、大きく考えて3つの表示装置の発明の記載がある。第1番目はストライプ状電極を形成した表示装置、第2番目は透明基板179を有し、かつパネルゲインG<1.5を実現した表示装置、第3番目は第1番目と第2番目の表示装置を組み合わせた表示装置である。
以下、図面を参照しながら本発明の投写型表示装置について説明する。図32は本発明の投写型表示装置の構成図である。ただし、説明に不要な構成要素は省略している。
図32において、321は集光光学系であり、内部に凹面鏡および光発生手段としてのメタルハライドランプあるいはキセノンランプを配置している。前記ランプはアーク長が3(mm)以上6(mm)以下のものを用いる。メタルハライドランプは250(W)クラスのものでアーク長は略6.5(mm)、150(W)クラスのものでアーク長は略5(mm)である。凹面鏡はランプのアーク長にあわせて適正値に設計する。凹面鏡は楕円面鏡あるいは放物面鏡を用いる。322は赤外線および紫外線を反射させて有視光のみを透過させるUVIRカットフィルタである。また、323aはB光を反射させるダイクロイックミラー(以下、BDMと呼ぶ)、323bはG光を反射させるダイクロイックミラー(以下、GDMと呼ぶ)、323cはR光を反射させるダイクロイックミラー(以下、RDMと呼ぶ)である。なお、BDM323aからRDM323cの配置は同図の順序に限定するものではない。また、最後のRDM323cは全反射ミラーにおきかえてもよいことは言うまでもない。
212は図1または図2に示す本発明の表示装置である。なお、光変調層53に高分子分散液晶を用いる場合は、R光を変調する光変調層53を、他のGおよびB光を変調する光変調層53に比較して水滴状液晶粒子径を大きく、もしくは液晶膜厚を厚めにして構成する。これは光が長波長になるほど散乱特性が低下しコントラストが低くなってしまうためである。水滴状液晶の粒子径は、重合させるときの紫外線光を制御すること、あるいは使用材料を変化させることにより制御できる。液晶膜厚は液晶層53のビーズ径を変化することにより調整できる。324はレンズ、326は投写レンズ、325はしぼりとしてのアパーチャである。なお、324、325および326で投写光学系を構成している。なお、アパーチャ325は、投写型表示装置の動作の説明上図示したものである。アパーチャ325は投写レンズの集光角を規定するものであるから、投写レンズの機能に含まれるものとして考えればよい。つまりFNoが大きければアパーチャ325の穴径は小さいと考えることができる。高コントラスト表示を得るためには投写レンズのFNoは大きいほどよい。しかし、大きくなると白表示の輝度は低下する。
以下、本発明の投写型表示装置の動作について説明する。なお、R、G、B光のそれぞれの変調系については、ほぼ同一動作であるのでB光の変調系について例にあげて説明する。まず、集光光学系321から白色光が照射され、この白色光のB光成分はBDM323aにより反射される。このB光は表示装置212aに入射する。表示装置212aは、図38(a)、(b)に示すように画素電極に印加された信号により入射した光の散乱と透過状態とを制御し、光を変調する。
散乱した光はアパーチャ325aで遮光される。平行光または所定角度内の光はアパーチャ325aを通過する。変調された光は投写レンズ326aによりスクリーン(図示せず)に拡大投写される。以上のようにして、スクリーンには画像のB光成分が表示される。同様に表示装置212bはG光成分の光を変調し、また、表示装置212cはR光成分の光を変調する。3つの表示装置が変調した光によりスクリーン上にはカラー画像が表示される。図35は図32の表示装置212を図21に示す表示装置224におきかえた投写型表示装置である。他の構成は図32と同様であるので説明を省略する。ただし、表示装置224の透明基板212が平凹レンズ214等の場合は、前記レンズの屈折角度等を考慮して投写光学系を形成する。なお、表示装置224は図17または図21に示すものでもよいことは言うまでもない。
図32は3つの投写レンズ326によりスクリーンに拡大投映する方式であるが、一つの投写レンズで拡大投写する方式もある。その構成図を図33に示す。なお、表示装置212R、212G、212Bは図32で用いたものと同様のものを用いる。
ここでは説明を容易にするため、212GをG光の映像を表示する表示装置、212RをR光の映像を表示する表示装置、212BをB光の映像を表示する表示装置とする。したがって、各ダイクロイックミラーを透過および反射する光の波長は、以下のとおりである。ダイクロイックミラー332aはR光を反射し、G光とB光を透過する。ダイクロイックミラー332cはG光を反射し、R光を透過させる。ダイクロイックミラー332bはB光を透過し、G光を反射させる。また、ダイクロイックミラー332dはB光を反射させ、G光およびR光を透過する。
メタルハライドランプから出射された光は全反射ミラー331aにより反射され、光の方向を変化させられる。次に前記光はUVIRカットフィルタ332により紫外線領域および赤外線領域の波長の光がカットされる。紫外線および赤外線をカットされた光はダイクロイックミラー332a、332bによりR・G・B光の3原色の光路に分離され、R光はフィールドレンズ333Rに、G光はフィールドレンズ333Gに、B光はフィールドレンズ333Bに入射する。各フィールドレンズ333は各光を集光し、表示装置212はそれぞれ映像信号に対応して液晶の配向を変化させ、光を変調する。このように変調されたR・G・B光はダイクロイックミラー332c、332dにより合成され、投映レンズ334によりスクリーン(図示せず)に拡大投映される。
図36は図33の表示装置212を図21に示す表示装置224におきかえた投写型表示装置である。他の構成は図33と同様であるので説明を省略する。ただし、表示装置224の透明基板212が平凹レンズ214等の場合は前記レンズの屈折角度等を考慮して投写レンズ334を設計をする。なお、表示装置224は図17または図21に示すものでもよいことは言うまでもない。
図34は反射型の投写型表示装置の一実施例の構成図である。345は反射型の表示装置である。図1等に示す表示装置の画素電極51を金属薄膜等を用いて反射電極として形成すれば、反射型の表示装置を実現できる。光源341はランプ341a、凹面鏡341b、UVIRカットフィルタ341cで構成される。ランプ341aはメタルハライドランプである。凹面鏡341bはガラス製で、反射面に可視光を反射し赤外光を反射する多層膜を蒸着したものである。ランプ341aからの放射光に含まれる可視光は、凹面鏡341bの反射面により反射する。凹面鏡341bから出射する反射光は、フィルタ341cにより赤外線と紫外線とが除去されて出射する。
投写レンズ342は、表示装置345側の第1レンズ群342bとスクリーン側の第2レンズ群342aとで構成され、第1レンズ群342bと第2レンズ群342aとの間には平面ミラー343が配置されている。表示装置の画面中心にある画素から出射する散乱光は、第1レンズ群342bを透過した後、約半分が平面ミラー343に入射し、残りが平面ミラー343に入射せずに第2レンズ群342aに入射する。平面ミラー343の反射面の放線は投写レンズ342の光軸346に対して45゜傾いている。
光源341からの光は、平面ミラー343で反射されて第1レンズ群342bを透過し、表示装置345に入射する。表示装置345からの反射光は、第1レンズ群342b、第2レンズ群342aの順に透過してスクリーン347に到達する。投写レンズ342の絞りの中心から出て表示装置345に向かう光線は、液晶層53にほぼ垂直に入射するように、つまりテレセントリックとしている。
ここでは説明を容易にするために、345bをG光を変調する表示装置、345cをB光を変調する表示装置、345aをR光を変調する表示装置であるとして説明する。
図34において、344はダイクロイックミラーであるが、これは色合成系と色分離系を兼用している。光源からの出射された白色光は平面ミラー343により折り曲げられ、投写レンズ342の第1群に入射する。この際フィルタ341cにより不要なB光およびR光はカットされる。フィルタ341cの帯域は半値幅の値で430nm〜690nmである。以後、光の帯域を記述する際は半値幅で表現する。ダイクロイックミラー344aはG光を反射し、R光およびB光を透過させる。G光はダイクロイックミラー344cで帯域制限され、表示装置345bに入射する。G光の帯域は510〜570nmにする。一方ダイクロイックミラー344bはB光を反射し、R光を透過させる。B光は表示装置345cに、R光は表示装置345aに入射する。
入射するB光の帯域は430nm〜490nm、R光の帯域は600nm〜690nmである。表示装置はそれぞれの映像信号に応じて散乱状態の変化として光学像が形成する。表示装置で形成された光学像はダイクロイックミラー344で色合成され、投写レンズ342に入射し、スクリーン347上に拡大投写される。なお、これらのR、G、B光等の帯域は本発明の投写型表示装置でほぼ共通の値である。
図37は図34の表示装置345を表示装置371におきかえた投写型表示装置である。表示装置345の光入射面に透明基板179をオプティカルカップリングしている。他の構成は図34の構成と同様であるので説明を省略する。
このように反射型の表示装置を用いれば、図32または図33の投写型表示装置と比較して、コントラストも良好であり、画素開口率も高く、高輝度表示を行うことができる。その上、表示装置の裏面には障害物がないのでパネル冷却が容易である。たとえば、裏面からの強制空冷を容易に行え、また、裏面にヒートシンク等も容易に取り付けることができる。
本発明の投写型表示装置において、ダイクロイックミラーによってR光、G光およびB光の3原色の光に分離するとしたが、これに限定するものではなく、たとえばダイクロイックフィルタ、ダイクロイックプリズム等を用いてもよい。
以下、本発明の投写型表示装置の共通事項について説明をする。まずは、ランプのアーク長・消費電力、パネルサイズ、コントラスト等について設計に必要な事項について順次説明をする。
表示装置の液晶層53を±10Vの電圧で駆動するとすれば、パネルゲインG=0.8以下のものを作製することが可能である。パネルゲインG=0.8のパネルに透明基板179等を取り付け、輝度低下割合Dを考慮すると、実効パネルゲインG’=0.5近くのものを得ることができる。実効パネルゲインG’の表示装置を用いて投写型表示装置を構成すると、コントラストCRは次式で示される。
CR=(2F)2T/G’(数15)
(数15)よりFNoと表示コントラストの関係をグラフ化したものを図31に示す。ただしT=0.75としている。
(数15)より、投写光学系の有効F値が5以上であればCR=150以上、7以上であればCR=250以上となる。
投写型表示装置を家庭用テレビとして商品化するための重要な項目に消費電力がある。家庭用の現行のNTSC対応直視テレビでは30インチクラスで200W以下である。本発明の投写型表示装置は、現行のNTSC直視テレビよりもっと大画面表示の実現を商品化目標としているが、やはり消費電力は300W以下にしなければならない。ランプの消費電力は、映像信号処理回路などで消費する電力を考慮すると250W以下、好ましくは150W程度にしなければならない。
ランプの制約にアーク長の問題もある。松下電子工業(株)が開発しているメタルハライドランプ250Wはアーク長6.5(mm)である。また、岩崎電気(株)が開発しているメタルハライドランプ等は150Wでアーク長5.0(mm)強のものがある。これらのランプのアーク輝度は、およそ1.2×108(nt)である。ランプの消費電力を一定にしてアーク長を短くすればアーク輝度は上昇するがランプ寿命は短くなる。
家庭用テレビとして投写型表示装置を導入するとすればメタルハライドランプの交換は容易に行うことができないから、ランプの長寿命化は重要である。アーク輝度1.2×108(nt)のメタルハライドランプは徐々に長寿命化の傾向にあるが、短アークにして長寿命化の実現できるめどは現在のところない。
次に照明光の光広がり角(FNo)について考慮する。なお、照明光の光広がり角とは表示装置に入射する光のF番号(FNo)である。仮定として、(1)ライトバルブ面、スクリーン面共に均一照明分布として扱う。
(2)ランプのアーク発光体は長さdL、太さdWの完全拡散円筒光源とする。(3)スクリーン到達光系φS、ランプ全光束φLとした場合に、光透過効率t、光集光能力ηを用いて、φS=t・η・φLとする。ただし、光透過効率tは界面損失,液晶パネルの透過率,ダイクロイックミラー等の色分離効率で決まる値、光集光能力ηは光透過効率t=1.0とした場合に、光学系が集光できる能力である。
光束に着目したときスクリーン照度ESはランプの全光束をφL(lm)、パネルの有効対角長をd(m)、面積係数をK(パネルの画面サイズが4:3の時はK=0.48、16:9の時はK=0.43)、拡大倍率をm、光集光能力をη、光透過効率をtとしたとき、(数16)で示される。
ES=(tηφL)/(m2KD)(数16)
一方、発光体輝度に着目してスクリーン照度ES’は、発光体輝度をBL(nt)照明光の有効F値をF0とすれば(数17)で示される。
Es’=(πBLt)/(4m2Fo2)(数17)
また、発光体の輝度BLは発光体有効長をdW、発光体有効幅をdLとしたとき、(数18)で示される。
BL=φL/(π2dLdW)(数18)
以上の(数16)(数17)および(数18)より照明光の有効FNo(F0)は(数19)で示される。
F0 2=(KD2)/(4πηdWdL)(数19)
照明光の光の広がり角(FNo)を投写レンズの集光角(FNo)は略一致させなければ光利用率は低下する。これは、FNoが大きい方に制約を受けるからである。本発明の投写型表示装置の照明光のFNoと投写レンズのFNoは一致させている。
図30は照明光の有効F値とランプのアーク長つまり発光体長およびパネルの対角長dとの関係を示している。図30は(式9)を用いて算出している。なお、k=0.43、η=0.5とする。また、アーク長は150(W)、アーク長5(mm)ランプのdW=2(mm)、dL=5(mm)を基準としている。他のアーク長はdW:dLのアスペクトに比例して算出している。
図30において、パネルサイズが小さくなるほど、同一アーク長であればパネルサイズdが小さくなる。したがってパネルサイズdを小さくすれば照明光のFNoは小さくする必要がある。パネルサイズが大きくなると投写型表示装置のシステムサイズは大きくなり好ましくない。また、パネルサイズdが小さくなればパネルの表示領域に入射する単位面積あたりの光束が増大し、パネルを加熱して好ましくない。したがって、実用上の観点からパネルの対角長は2インチ以上4インチ以下にしなければならない。
発光体輝度をランプ寿命を考慮して1.2×108(nt)とすると、アーク長とランプの消費電力は比例すると考えられる。アーク長3(mm)のランプは50(W)、アーク長4(mm)のランプは100(W)、アーク長5(mm)のランプは150(W)程度となる。メタルハライドランプの効率は80(lm/W)である。50(W)のランプの全光束は4000(lm)、100(W)のランプの全光束は8000(lm)、150(W)のランプの全光束は12000(lm)となる。ランプのアーク長とランプ消費電力には相関があり、アーク長とFNoとは相関があり、ランプの消費電力とランプの全光束は相関があるから、この関係を図示すると図29になる。ただし、スクリーン光束はランプの全光束の5%としている。
以上のことから、投写型表示装置に最適な仕様範囲が定まってくる。以下、最適な仕様について説明をする。投写型表示装置において投写画像の画面サイズが40インチ以上で、かつ実用域の視野特性を得るためには300〜400(lm)以上の光束が必要である。したがって、ランプの光利用率が4%程度とすると、100(W)以上のランプを用いなければならない。このことから、表示コントラスト(CR)を良好に得るためだけであればアーク長3(mm)のランプを用いることができるが、十分な投写画像の輝度を得るためには100(W)以上のメタルハライドランプが必要である。
また、パネルサイズも小さいと十分な表示輝度を得ることができない。パネルサイズはアーク長が5(mm)、照明光の有効F値を7とすると、3.5インチ前後の大きさが必要である。
アーク長が5(mm)程度、パネルサイズが2インチ強であれば、照明光の有効F値は5弱となる。この場合、表示輝度は実用域となるが、良好な表示コントラスト(CR)は望めない。
以上のことから、照明光の有効F値が5以上であれば実用域の表示輝度が得られる。しかし、良好な表示輝度と表示コントラストおよび適正な消費電力かつランプ寿命を得るためには照明光の有効F値(=投写光の有効F値)は7前後、ランプのアーク長は5(mm)前後、ランプのWは150W前後を用いなければならない。
投写レンズのFNoを低下させるとスクリーンに到達するスクリーン光束は高くなる。それにともない、ランプの消費電力も大きくしなければならない。また、ランプの長寿命化の観点からランプの消費電力が大きくなると、アーク輝度を一定と考えると長アークになる。当然、表示コントラスト(CR)は(数15)で示されるからFNoが小さくなると表示コントラストは悪くなる。逆に投写光学系のFNoを大きくすると表示コントラストは高くなるが、スクリーン光束は小さくなる。
以上のことから、ランプに関してはアーク長は良好な表示コントラストを得るために3(mm)以上6(mm)以下でなければならない。また、消費電力の点から250(W)以下でなければならない。かつ、スクリーン輝度を得るために100(W)以上のメタルハラドランプを用いなければならない。さらに好ましくは、スクリーン輝度および表示コントラストを考慮するとアーク長は3(mm)以上6(mm)以下でなければならない。
パネルの有効表示領域の対角長はシステムサイズの点から4インチ以下でなければならない。また、光利用効率の点から2インチ以上でなければならない。中でも十分な光集光効率を得、かつコンパクトにするためには好ましくは3インチ以上4インチ以下にしなければならない。
投写レンズのFNo、広義には投写光学系のFNoは、良好なコントラスト(CR)を得るために5以上でなければならない。また、十分なスクリーン輝度を得るために9以下でなければならない。さらに前述のランプのアーク長を考慮すればFNoは6以上8以下でなければならない。また、投写レンズのFNoと照明光学系のFNoと略一致させなければ光損失が生じ、光利用効率は低下する。
以上の値あるいは値の範囲は高分子分散液晶表示装置をライトバルブとして用いる投写型表示装置として重要な事項である。これらの事項はまだ、他社等から開示されている事項ではない。
なお、本発明の投写型表示装置において、表示装置の光変調層53として高分子分散液晶を用いるとしたが、散乱状態の変化を用いるものであれば同様の効果を得られる。たとえば、高分子分散液晶を用いた光書き込み型液晶パネル、相変化液晶を用いた熱書き込み液晶パネル、散乱状態の変化を用いる強誘電性液晶パネル、DSM液晶パネル、PLZTなどを用いる表示パネル等が該当する。また、ストライプ状電極構成は、光変調層として散乱により光変調を行なうものに限定するものではなく、ツイストネマティック液晶パネルにも応用できる。また、偏光方式の光書き込み液晶パネルにも応用できるであろう。
また、本発明の表示装置のアレイ基板11または対向基板12もしくは前記両方の基板に透明基板を貼りつけるとしたが、前記アレイ基板11または対向基板12もしくは両方の基板を厚くして(数7)の条件を満足できれば、あえて透明基板を貼りつける必要がないことは明らかである。また、アレイ基板11もしくは対向基板を凹レンズ状にできれば、基板に凹レンズを貼りつける必要がないことも明らかである。