JP2004044511A - 内燃機関の排気空燃比制御装置 - Google Patents

内燃機関の排気空燃比制御装置 Download PDF

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Abstract

【課題】閉ループ変調により排気空燃比を高い精度で強制変調できるとともに、閉ループ変調に起因するオーバシュートや収束遅れを防止して、これらの要因による弊害を未然に防止できる内燃機関の排気空燃比制御装置を提供する。
【解決手段】排気空燃比をリッチ側またはリーン側に変調させる場合、まず、開ループ変調により燃料噴射量を補正して、排気空燃比をオーバシュートや収束遅れを生じることなくリッチ側またはリーン側に瞬時に変調させ(ステップS4,10)、閉ループ禁止時間TRが経過した後に(ステップS6,12がYES)、閉ループ変調により目標空燃比に基づいてリニア空燃比センサの出力電圧から求めた実空燃比をフィードバック制御する(ステップS8,14)。
【選択図】   図2

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、内燃機関の排気空燃比制御装置に係り、詳しくは内燃機関の排気空燃比をリッチ側とリーン側とに周期的に変動させる排気空燃比制御装置に関するものである。
【0002】
【関連する背景技術】
近年、ストイキオを境界として内燃機関の排気空燃比をリッチ側とリーン側とに周期的に変動させる強制変調を実施し、これにより排ガス中に酸素成分を存在させて触媒浄化を促進するようにした排気空燃比制御装置が提案されている。この種の強制変調を開ループ変調により実施した場合には、吸気量の検出誤差や燃料噴射弁の特性バラツキ等の影響を受けて、実際の排気空燃比が所望の値から外れて制御誤差を増大させる問題がある。係る問題を解決するために、触媒の上流に空燃比センサを設けて、当該空燃比センサの出力を閉ループ変調でフィードバック制御して強制変調を実施することが考えられる。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、閉ループ変調による強制変調では以下の問題が懸念される。即ち、図4に示すように、目標空燃比がリッチ側とリーン側との間で切換えられたとき、目標空燃比と実際の空燃比との偏差に応じて燃料噴射量がフィードバック制御されるが、この偏差には、排気通路内の排ガスが空燃比センサに到達するまでの所要時間(ガス移送時間)や空燃比センサ自体の応答遅れ(センサ応答遅れ)等が含まれるため、これらの要因も含めた偏差に基づいて燃料噴射量が過補正されてオーバシュートを引き起こす場合がある。リッチ側へのオーバシュートはHCやCO増加、或いは点火プラグの燻りを発生し、リーン側へのオーバシュートはNOx増加、或いは失火を生じる上に、何れの場合もドライバビリティ悪化の要因となり得る。その対策として制御ゲインを縮小することも考えられるが、この場合には目標空燃比への実際の空燃比の収束が遅れるという別の問題が発生してしまう。
【0004】
また、触媒浄化を効果的に促進するには、矩形波の波形が望ましいことが判明しているが、上記空燃比のオーバシュートや収束遅れにより、排気空燃比の波形は矩形波から多少外れた鈍った波形となる。一方、例えば特開平10−47141号公報に記載の技術のように、排気空燃比を強制変調させたときの触媒下流の空燃比変動幅に基づいて、触媒の劣化を判定することもあるが、この場合でも、排気空燃比を矩形波とした方が触媒下流の空燃比波形も矩形波に近づくため、より的確に触媒劣化を判定できる。よって、上記閉ループ変調により排気空燃比の波形が矩形波から外れることは、触媒の浄化促進や触媒の劣化判定の点からも避ける必要がある。
【0005】
本発明の目的は、閉ループ変調により排気空燃比を高い精度で強制変調できるとともに、閉ループ変調に起因するオーバシュートや収束遅れを防止して、これらの要因による種々の弊害を未然に防止することができる内燃機関の排気空燃比制御装置を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、請求項1の発明は、内燃機関の排気通路に触媒を設け、内燃機関の排気空燃比をリッチ空燃比とリーン空燃比との間で所定の周期および振幅で変調させる内燃機関の排気空燃比制御装置において、内燃機関の燃料噴射量を増加補正または減少補正して、内燃機関の排気空燃比をリッチ空燃比またはリーン空燃比に変調させる開ループ変調手段と、排気通路における触媒の上流側に設けられた空燃比検出手段と、内燃機関の燃料噴射量を増加補正または減少補正するとともに、リッチ空燃比またはリーン空燃比を目標値として空燃比検出手段の出力に基づいて排気空燃比をフィードバック制御する閉ループ変調手段と、リッチ空燃比とリーン空燃比との間で排気空燃比を変調させるときに、開ループ変調手段と閉ループ変調手段とを作動させる変調制御手段とを備えたものである。
【0007】
従って、内燃機関の排気空燃比はリッチ空燃比とリーン空燃比との間で所定の周期および振幅で変調されており、一方の空燃比から他方の空燃比に変調するには、開ループ変調手段により内燃機関の燃料噴射量が増加補正または減少補正されて、排気空燃比がリッチ空燃比またはリーン空燃比に変調され、閉ループ変調手段によりリッチ空燃比またはリーン空燃比を目標値として、空燃比検出手段の出力に基づいて排気空燃比がフィードバック制御される。
【0008】
開ループ変調手段による変調では、燃料噴射量が一義的に補正されるため、閉ループ変調手段によるフィードバック制御のように、排気空燃比の過補正によるオーバシュート、或いはオーバシュート対策として制御ゲインを縮小したときの排気空燃比の収束遅れ等を生じることなく、排気空燃比はリッチ空燃比またはリーン空燃比に切換えられる。
【0009】
また、閉ループ変調手段による変調では、フィードバック制御により排気空燃比が目標値に的確に収束するため、高い精度で強制変調が実施される。
一方、オーバシュートや収束遅れが防止される結果、排気空燃比は触媒浄化の促進に好適な矩形波に近似する波形で変調される。その結果、触媒のOストレージ機能を最大限に活かしてHC、CO、NOxを良好に浄化可能となるとともに、排気空燃比の強制変調を利用して触媒の劣化判定を行う場合には、触媒下流の空燃比波形も矩形波に近づくため、触媒下流の排気空燃比の変動状況をより的確に判定できる。
【0010】
請求項2の発明では、請求項1において、変調制御手段を、リッチ空燃比とリーン空燃比との間で排気空燃比を変調させるときに、排気空燃比を開ループ変調手段により変調した後、閉ループ変調手段によりフィードバック制御するように構成したものである。
従って、内燃機関の排気空燃比はリッチ空燃比とリーン空燃比との間で所定の周期および振幅で変調されており、一方の空燃比から他方の空燃比に変調するには、まず、開ループ変調手段により内燃機関の燃料噴射量が増加補正または減少補正されて、排気空燃比がリッチ空燃比またはリーン空燃比に変調され、その後、閉ループ変調手段によりリッチ空燃比またはリーン空燃比を目標値として、空燃比検出手段の出力に基づいて排気空燃比がフィードバック制御される。
【0011】
開ループ変調手段による変調では、燃料噴射量が一義的に補正されるため、閉ループ変調手段によるフィードバック制御のように、排気空燃比の過補正によるオーバシュート、或いはオーバシュート対策として制御ゲインを縮小したときの排気空燃比の収束遅れ等を生じることなく、排気空燃比は瞬時にリッチ空燃比またはリーン空燃比に切換えられる。
【0012】
また、その後の閉ループ変調手段による変調では、フィードバック制御により排気空燃比が目標値に的確に収束するため、高い精度で強制変調が実施される。一方、オーバシュートや収束遅れが防止される結果、排気空燃比は触媒浄化の促進に好適な矩形波に近似する波形で変調される。その結果、触媒のOストレージ機能を最大限に活かしてHC、CO、NOxを良好に浄化可能となるとともに、排気空燃比の強制変調を利用して触媒の劣化判定を行う場合には、触媒下流の空燃比波形も矩形波に近づくため、触媒下流の排気空燃比の変動状況をより的確に判定できる。
【0013】
請求項3の発明では、請求項2において、変調制御手段が、開ループ変調手段により排気空燃比がリッチ空燃比またはリーン空燃比に変調されたとき、空燃比検出手段の出力が変調後の空燃比相当値に平衡するまでの過渡状態にあるときには、閉ループ変調手段によるフィードバック制御の実行を禁止するものである。従って、開ループ変調手段により排気空燃比がリッチ空燃比またはリーン空燃比に変調されると、その排気空燃比の変化に追従して空燃比検出手段の出力が変化するが、空燃比検出手段の出力が変調後の空燃比相当値に平衡するまでの過渡状態にあるときには、閉ループ変調手段によるフィードバック制御の実行が禁止される。よって、過渡状態にある不適切な空燃比検出手段の出力に基づくフィードバック制御が未然に防止され、平衡後の正確な空燃比検出手段の出力に基づいて、閉ループ変調手段により高い精度で強制変調が実施される。
【0014】
請求項4の発明では、請求項3において、変調制御手段が、開ループ変調手段による排気空燃比の変調後に所定時間が経過するまで、空燃比検出手段の出力が過渡状態にあると判定するものである。
従って、排気空燃比の変調後に所定時間が経過するまでは、空燃比検出手段の出力が過渡状態にあると判定されるため、閉ループ変調手段によるフィードバック制御の実行が禁止される。
【0015】
請求項5の発明では、請求項3において、変調制御手段が、開ループ変調手段による排気空燃比の変調後に、空燃比検出手段の出力変化量が所定値を下回るまで、空燃比検出手段の出力が過渡状態にあると判定するものである。
従って、排気空燃比の変調後に空燃比検出手段の出力変化量が所定値を下回るまでは、空燃比検出手段の出力が過渡状態にあると判定されるため、閉ループ変調手段によるフィードバック制御の実行が禁止される。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。
図1を参照すると、車両に搭載された本発明に係る排気空燃比制御装置の概略構成図が示されており、以下、同図に基づいて本発明に係る排気空燃比制御装置の構成を説明する。
【0017】
同図に示すように、エンジン本体(以下、単にエンジンという)1としては、例えば、燃料噴射モードを切換えることで吸気行程での燃料噴射(吸気行程噴射)とともに圧縮行程での燃料噴射(圧縮行程噴射)を実施可能な筒内噴射型火花点火式ガソリンエンジンが採用される。この筒内噴射型のエンジン1は、容易にして理論空燃比(ストイキオ)での運転やリッチ空燃比での運転(リッチ空燃比運転)の他、リーン空燃比での運転(リーン空燃比運転)が実現可能である。
【0018】
同図に示すように、エンジン1のシリンダヘッド2には、各気筒毎に点火プラグ4とともに電磁式の燃料噴射弁6が取り付けられており、これにより、燃料を燃焼室内に直接噴射可能である。
点火プラグ4には高電圧を出力する点火コイル8が接続されている。また、燃料噴射弁6には、燃料パイプ7を介して低圧燃料ポンプ、高圧燃料ポンプ、及び燃料タンクを擁した燃料供給装置(図示せず)が接続されている。
【0019】
シリンダヘッド2には、各気筒毎に略直立方向に吸気ポートが形成されており、各吸気ポートと連通するようにして吸気マニホールド10の一端がそれぞれ接続されている。また、シリンダヘッド2には、各気筒毎に略水平方向に排気ポートが形成されており、各排気ポートと連通するようにして排気マニホールド12の一端がそれぞれ接続されている。
【0020】
なお、当該筒内噴射型のエンジン1は既に公知のものであるため、その構成の詳細については説明を省略する。
同図に示すように、吸気マニホールド10には吸入空気量を調節する電磁式のスロットル弁14及び当該スロットル弁14の開度θthを検出するスロットルポジションセンサ(TPS)16が設けられており、さらに、スロットル弁14の上流には、吸入空気量Qを計測するエアフローセンサ18が介装されている。エアフローセンサ18としては、カルマン渦式エアフローセンサが使用される。
【0021】
一方、排気マニホールド12には排気管(排気通路)20が接続されており、この排気管20には、排気浄化触媒装置として三元触媒(触媒コンバータ)30が介装されている。
この三元触媒30は、担体に活性貴金属として銅(Cu),コバルト(Co),銀(Ag),白金(Pt)、パラジウム(Pd)、ロジウム(Rh)のいずれかを有している。
【0022】
なお、活性貴金属は、酸素吸蔵機能(Oストレージ機能)を有しており、つまり、排気空燃比がリーン空燃比である酸化雰囲気中において酸素(O)を吸着すると、排気空燃比がリッチ空燃比となり還元雰囲気となってもそのOを吸着し、これにより、当該三元触媒30は還元雰囲気状態においてもストレージOによりHC(炭化水素)やCO(一酸化炭素)を酸化除去可能である。即ち、当該三元触媒30は、酸化雰囲気でHC、COを浄化できるのは勿論のこと、吸蔵されたOにより還元雰囲気中においてもNOxの浄化のみならずHC、COを浄化可能である。但し、これらの活性貴金属は、セリア(Ce)等の酸素吸蔵物質ほどのOストレージ能力は有していない。このような三元触媒30を弱Oストレージ能力の触媒コンバータと呼ぶ。
【0023】
また、排気管20の三元触媒30の上流には、リニア空燃比センサ24(空燃比検出手段)が配設され、当該リニア空燃比センサ24は、触媒上流の排ガスの空燃比に応じた電圧を出力する。
また、入出力装置、記憶装置(ROM、RAM、不揮発性RAM等)、中央処理装置(CPU)、タイマカウンタ等を備えたECU(電子コントロールユニット)40が設置されており、このECU40により、エンジン1を含めた燃焼制御装置の総合的な制御が行われる。
【0024】
ECU40の入力側には、上述したTPS16、エアフローセンサ18、リニア空燃比センサ24等の各種センサ類が接続されており、これらセンサ類からの検出情報が入力される。一方、ECU40の出力側には、上述の燃料噴射弁6や点火コイル8等の各種出力デバイスが接続されており、これら各種出力デバイスには各種センサ類からの検出情報に基づき演算された燃料噴射量、燃料噴射時期、点火時期等がそれぞれ出力され、これにより、燃料噴射弁6から適正量の燃料が適正なタイミングで噴射され、点火プラグ4により適正なタイミングで火花点火が実施される。
【0025】
以下、このように構成された本発明に係る排気空燃比制御装置の作用を説明する。
本実施例の排気空燃比制御装置では、三元触媒30の能力を十分発揮するために、通常運転時には、ECU40によってストイキオを境界として排気空燃比をリッチ側とリーン側とに周期的に変動させる強制変調を実施している。つまり、ここでは、図3に示すように、排気空燃比を一定期間に亘りリッチ空燃比とした後に一定期間に亘ってリーン空燃比とし、この処理を繰り返してリッチ空燃比とリーン空燃比の間で周期的に切換えて、排気空燃比を矩形波の波形で変調させている。
【0026】
これにより、排気空燃比がリーン空燃比のときにはHC、COが良好に浄化されるとともに三元触媒30のOストレージ機能によりOが吸蔵され、排気空燃比がリッチ空燃比のときにはNOxが良好に浄化されるとともに吸蔵されたOによってHC、COが継続的に浄化され続ける。
本実施形態では、排気空燃比の強制変調を実行するために開ループ変調と閉ループ変調とを併用しており、以下、その詳細を説明する。
【0027】
ECU40は図2に示す排気空燃比変調ルーチンを所定の制御インターバルで実行し、まず、ステップS2で排気空燃比をリッチ側に変調させるべきリッチ期間か否かを判定する。判定がYES(肯定)のときにはステップS4に移行して、排気空燃比をリッチ側に変調させるための開ループ変調を実行する。即ち、図3に示すように、強制変調時の排気空燃比はストイキオを基準としてリッチ側に変動量α、リーン側に変動量βで変調されるが、ステップS4ではリッチ側への空燃比変動量αに相当する燃料量を基本燃料噴射量に加算し、加算後の燃料噴射量を燃料噴射制御に適用する(開ループ変調手段)。
【0028】
ECU40は続くステップS6で、排気空燃比のリーン側からリッチ側への変調後に、所定のリッチ閉ループ禁止時間TRが経過したか否かを判定する。判定がNO(否定)のときにはルーチンを終了し、リッチ閉ループ禁止時間TRの経過によりステップS6の判定がYESになると、ステップS8で排気空燃比のリッチ側への制御において閉ループ変調を実行する(変調制御手段)。
【0029】
閉ループ変調では、上記した空燃比変動量αに相当する燃料噴射量の増加補正を継続する一方、エンジン1の運転状態から求めた目標空燃比に基づいてリニア空燃比センサ24の出力電圧から求めた実空燃比をフィードバック制御する。即ち、目標空燃比と実空燃比との偏差から求めたF/B補正量により燃料噴射量を補正することで、実空燃比を目標空燃比に収束させる(閉ループ変調手段)。
【0030】
一方、リッチ期間TRが経過して、排気空燃比をリーン側に変調させるべきリーン期間になると、ECU40は上記ステップS2でNOの判定を下し、ステップS10で排気空燃比をリーン側に変調させるための開ループ変調を実行し、リーン側への空燃比変動量βに相当する燃料量を基本燃料噴射量から減算し、減算後の燃料噴射量を燃料噴射制御に適用する(開ループ変調手段)。
【0031】
所定のリーン閉ループ禁止時間TLの経過により、続くステップS12の判定がYESになると、ステップS14で排気空燃比のリーン側への制御において閉ループ変調を実行し(変調制御手段)、空燃比変動量βに相当する燃料噴射量の減少補正を継続する一方、目標空燃比に基づいて実空燃比をフィードバック制御する(閉ループ変調手段)。
【0032】
なお、リッチ側とリーン側の空燃比変動量α,βは、三元触媒30のOストレージ機能が良好に発揮される値とすることが望ましく、双方の値は同一値でも異なる値でもよい。
また、リッチ閉ループ禁止時間TRとリーン閉ループ禁止時間TLは、図3に破線で示すように、リッチ側やリーン側への排気空燃比の変調に対してリニア空燃比センサ24の出力電圧が追従する過渡状態を経た後、出力電圧が変調後の排気空燃比に相当する値付近に平衡するまでの所要時間以上に設定されている。リッチ閉ループ禁止時間TRとリーン閉ループ禁止時間TLは同一値でもよいし、センサ応答特性がリッチ側とリーン側で異なる場合には、それぞれの特性に対応して異なる値に設定してもよい。
【0033】
そして、リッチ閉ループ禁止時間TRとリーン閉ループ禁止時間TLが適切に設定されることで、リニア空燃比センサ24の出力電圧が過渡状態にあるときには、閉ループ変調によるフィードバック制御が禁止されるため、過渡状態にある不適切なリニア空燃比センサ24の出力電圧に基づいて閉ループ変調のフィードバック制御が行われる事態が未然に防止される。その結果、平衡後の正確なリニア空燃比センサ24の出力電圧に基づいて、閉ループ変調により高い精度で強制変調が実施される。
【0034】
以上のECU40の制御により、図3に示すように内燃機関の排気空燃比はリッチ期間に亘ってリッチ空燃比(ストイキオ−α)に保たれた後、リーン期間に亘ってリーン空燃比(ストイキオ+β)に保たれ、この処理が繰り返されることによりリッチ側とリーン側との間で周期的に切換えられる。
そして、排気空燃比のリッチ側或いはリーン側への切換は開ループ変調により行われ、閉ループ禁止時間TR,TLが経過した後に閉ループ変調が実行される。開ループ変調では、予め設定された空燃比変動量α,βに相当する燃料量により燃料噴射量が一義的に補正されるため、閉ループ変調で発生する不具合、つまり、ガス移送時間やセンサ応答遅れ等に起因して排気空燃比が過補正されたときのオーバシュート、或いはオーバシュート対策として制御ゲインを縮小したときの排気空燃比の収束遅れ等を発生することなく、排気空燃比が瞬時にリッチ側或いはリーン側の所定の空燃比に切換えられる。よって、HCやCO増加、点火プラグ4の燻りや失火、ドライバビリティの悪化等のような閉ループ変調による弊害を未然に防止することができる。
【0035】
また、その後の閉ループ変調では、実空燃比が目標空燃比にフィードバック制御されるため、吸気量の検出誤差や燃料噴射弁6の特性バラツキ等に影響されることなく、排気空燃比は目標空燃比に的確に収束し、もって強制変調の精度を向上させることができる。
一方、上記のように排気空燃比のオーバシュートや収束遅れが防止されることで、排気空燃比は触媒浄化の促進に好適な矩形波に近似する波形で変調される。その結果、三元触媒30のOストレージ機能を最大限に活かしてHC、CO、NOxを良好に浄化でき、高い浄化性能を発揮させることができる。
【0036】
以上で実施形態の説明を終えるが、本発明の態様はこの実施形態に限定されるものではない。例えば上記実施形態では、筒内噴射型のエンジン1の排気空燃比制御装置に具体化して、三元触媒30の浄化性能を向上させるために排気空燃比の強制変調を実施したが、対象となるエンジンの種別や強制変調の目的はこれに限ることはない。例えば吸気管噴射型エンジンに適用してもよいし、或いは、三元触媒30等のように排気管20に設けられた触媒の劣化判定に強制変調を利用してもよい。
【0037】
以下、触媒の劣化判定に用いた場合について簡単に述べると、触媒の劣化は、排気空燃比の強制変調に対応して、触媒下流に設けた図示しないリニア空燃比センサの出力電圧(即ち、触媒下流の排気空燃比)が変動したときの変動幅に基づいて判定される。上記実施形態で述べたように触媒上流の排気空燃比が矩形波に近似すると、リニア空燃比センサの出力電圧も矩形波に近づくため、その変動幅を検出し易くなる。従って、一般的な強制変調に比較して触媒の劣化判定を的確に実施することができる。
【0038】
また、上記実施形態では、空燃比変調の波形を矩形波としたが、これに限るものではなく、例えば台形波であってもよく、矩形波、台形波或いはこれら組合せに近い任意の波形でもよい。また、開ループ変調手段による変調幅と閉ループ変調手段による変調幅は同一であってもよいし、異なる値であってもよい。
さらに、上記実施形態では、リッチ閉ループ禁止時間TRやリーン閉ループ禁止時間TLが経過したときに閉ループ変調を実行したが、時間経過に代えて、リニア空燃比センサ24の出力電圧の変化状態に基づいて実行してもよい。即ち、図3に破線で示すように、リニア空燃比センサ24の出力電圧は、排気空燃比の変調に追従する過渡状態を経て平衡するに従って変化量が減少することから、出力電圧の時間当たり変化量(絶対値)が所定値を下回ったときに、過渡状態を終えたと見なして閉ループ変調を実行する。この場合でも閉ループ禁止時間TR,TLに基づく場合と同様に、過渡状態の不適切なリニア空燃比センサ24の出力電圧に基づくフィードバック制御を未然に防止することができる。
【0039】
【発明の効果】
以上説明したように請求項1および2の発明の内燃機関の排気空燃比制御装置によれば、閉ループ変調により排気空燃比を高い精度で強制変調できるとともに、閉ループ変調に起因するオーバシュートや収束遅れを防止して、これらの要因による種々の弊害を未然に防止することができる。
【0040】
請求項3ないし5の発明の内燃機関の排気空燃比制御装置によれば、請求項1の発明に加えて、過渡状態にある不適切な空燃比センサの出力に基づくフィードバック制御を防止して、閉ループ変調手段による高い精度の強制変調を確実に実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】車両に搭載された本発明に係る排気空燃比制御装置の概略構成図である。
【図2】ECUが実行する排気空燃比変調ルーチンを示すフローチャートである。
【図3】実施形態の強制変調の実行状態を示すタイムチャートである。
【図4】従来技術の強制変調の実行状態を示すタイムチャートである。
【符号の説明】
1  エンジン
20 排気管(排気通路)
24 空燃比センサ(空燃比検出手段)
30 三元触媒
40 ECU(開ループ変調手段、閉ループ変調手段、変調制御手段)

Claims (5)

  1. 内燃機関の排気通路に触媒を設け、該内燃機関の排気空燃比をリッチ空燃比とリーン空燃比との間で所定の周期および振幅で変調させる内燃機関の排気空燃比制御装置において、
    上記内燃機関の燃料噴射量を増加補正または減少補正して、該内燃機関の排気空燃比を上記リッチ空燃比またはリーン空燃比に変調させる開ループ変調手段と、
    上記排気通路における上記触媒の上流側に設けられた空燃比検出手段と、
    上記内燃機関の燃料噴射量を増加補正または減少補正するとともに、上記リッチ空燃比またはリーン空燃比を目標値として上記空燃比検出手段の出力に基づいて上記排気空燃比をフィードバック制御する閉ループ変調手段と、
    上記リッチ空燃比とリーン空燃比との間で上記排気空燃比を変調させるときに、上記開ループ変調手段と上記閉ループ変調手段とを作動させる変調制御手段と
    を備えたことを特徴とする内燃機関の排気空燃比制御装置。
  2. 上記変調制御手段は、上記リッチ空燃比とリーン空燃比との間で上記排気空燃比を変調させるときに、該排気空燃比を上記開ループ変調手段により変調した後、上記閉ループ変調手段によりフィードバック制御するように構成されていることを特徴とする請求項1記載の内燃機関の排気空燃比制御装置。
  3. 上記変調制御手段は、上記開ループ変調手段により上記排気空燃比がリッチ空燃比またはリーン空燃比に変調されたとき、上記空燃比検出手段の出力が変調後の空燃比相当値に平衡するまでの過渡状態にあるときには、上記閉ループ変調手段によるフィードバック制御の実行を禁止することを特徴とする請求項2記載の内燃機関の排気空燃比制御装置。
  4. 上記変調制御手段は、上記開ループ変調手段による上記排気空燃比の変調後に所定時間が経過するまで、上記空燃比検出手段の出力が過渡状態にあると判定することを特徴とする請求項3記載の内燃機関の排気空燃比制御装置。
  5. 上記変調制御手段は、上記開ループ変調手段による上記排気空燃比の変調後に、上記空燃比検出手段の出力変化量が所定値を下回るまで、上記空燃比検出手段の出力が過渡状態にあると判定することを特徴とする請求項3記載の内燃機関の排気空燃比制御装置。
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