JP2004044064A - 気相法炭素繊維の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】炭素化合物と触媒を加熱帯域で接触させることにより気相で炭素繊維を連続的に製造する方法。炭素化合物、該触媒の前駆体化合物および特定の添加成分(無機化合物、高沸点の有機化合物、一定分子量以上の有機化合物重合体など)を加熱帯域に供給し、加熱帯域において添加成分の少なくとも一部が固体または液体として存在するように温度、滞留時間などの反応条件を調整する。
【選択図】 なし
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、カーボンナノチューブ等の気相成長炭素繊維を効率的に製造する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
気相成長法により得られる炭素繊維はVGCF(気相成長炭素繊維)と総称され、高いアスペクト比を有するものを容易に得ることができる等の特徴を有するため、従来から盛んに研究されており、したがって製造方法に関する報告も数多い。近年、特に注目を集めているカーボンナノチューブ(すなわち、繊維径がナノメートルオーダーである炭素繊維)も、この気相成長法の応用で合成することが可能である。
【0003】
図1は、気相成長法によって炭素繊維を連続的に製造する反応装置の一例を示す模式断面図である。一般的な製造方法の一例を挙げると、原料炭化水素として、CO、メタン、アセチレン、エチレン、ベンゼン、トルエン等を用いる。原料炭化水素が常温で気体の場合には、ガスとしてキャリアーガスと混合して供給し、液体の場合には気化させてからキャリアーガスと混合して供給するかまたは液状で加熱帯域に噴霧する。キャリアーガスとしては不活性ガスである窒素ガスや還元性の水素ガス等が用いられる。触媒としてはアルミナ等の担体に金属を担持した担持型触媒やフェロセン等の有機金属化合物が使用される。担持型触媒を用いる場合は担持型触媒を予め反応ゾーンに設置して加熱して必要な前処理を行った後に原料炭化水素を供給して反応させたり(図1に示す例)、あるいは前処理した担持型触媒を系外から連続、またはパルス的に供給して反応を行う。また、均一型の触媒前駆体化合物であるフェロセン等の有機金属化合物を原料炭化水素とともに加熱帯域に連続的、あるいはパルス的にフィードして、触媒前駆体化合物の熱分解で発生した金属粒子を触媒として炭素繊維を生成させることもできる。生成物は加熱帯の内部やその末端の捕集器4に捕集され、所定時間の反応を終えた後、回収される。
【0004】
気相法による炭素繊維の製造方法を触媒または該触媒の前駆体化合物の供給方法によって大別すると、以下の3種類となる。
(a)触媒またはその前駆体化合物を担持したアルミナや黒鉛からなる基板やボートを加熱帯域に置いて、気相から供給する炭化水素ガスと接触させるもの;
(b)触媒またはその前駆体化合物の粒子を液体状の炭化水素等に分散させて系外から加熱帯域に連続またはパルス的に供給して炭化水素と高温で接触させるもの;および
(c)液体状の炭化水素中に溶解するメタロセンやカルボニル化合物を触媒前駆体化合物として使用し、この触媒前駆体化合物が溶解した炭化水素を加熱帯域に供給することにより、触媒と炭化水素を高温で接触させるもの。
【0005】
これらの中でも、特に上記(c)の方法による合成によれば、連続して安定的に生成物を得ることが可能であるため、本方法を用いることでVGCFの工業規模での生産も可能になっている。また、連続的な生産が可能である上記(b)の方法においては、炭化水素と触媒の供給量割合を安定化する目的で界面活性剤を添加した懸濁液を供給する方法や(特公平6−65765;特許文献1)、マイクロエマルションを利用して合成したナノオーダーの均一な粒径を有する触媒微粒子をトルエン等の炭化水素に懸濁した液を加熱帯域に連続的に供給して単層カーボンナノチューブの合成ができるといった報告もなされている(化学工業日報
2001.10.15;非特許文献1)。
【特許文献1】
特公平6−65765
【非特許文献1】
化学工業日報 2001.10.15
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記(a)の方法では、触媒またはその前駆体を基板に塗布し、必要に応じて還元等の前処理を施し、その後炭素繊維を製造し、降温後に取出すという独立に実施を要するプロセスがあるため、連続製造が困難で、したがって生産性が悪い。また、触媒の調製、基板への塗布、金属状態への還元前処理、炭素繊維の生成、炭素繊維の基板からの回収という多くの工程が必要であり、経済的でない。
【0007】
一方、上記の(b)および(c)の方法では、連続製造が可能ではあるものの、必要な量に比して大過剰に触媒またはその前駆体化合物を使用しないと充分な量の炭素繊維が得られない傾向がある。このため、高価な触媒または触媒前駆体化合物を浪費するのみならず、過剰に加えた触媒由来の副生物を除去する工程を要するために経済性を損なう原因になっている。このように気相成長炭素繊維を安価に大量に生産するプロセスは開発されておらず、気相成長炭素繊維の工業的規模での生産を阻む原因となっていた。
本発明の目的は、簡単な工程で、触媒の効率が高く、炭素繊維を安価に製造できる方法を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者は上記の課題を解決するため鋭意検討した結果、炭素繊維の原料となる炭素化合物と触媒前駆体化合物に加えて、特定の添加成分とともに一定の条件を選択して加熱帯域に供給した場合、少量の触媒量(従来の条件では不可能であったような量)を用いた場合でも、炭素繊維が高収率で得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
このような本発明のメカニズムについては未だ充分に解明されてはいないが、本発明者の知見によれば、加熱帯域において添加成分の少なくとも一部が固体または液体として存在し、触媒や触媒前駆体化合物と共存することにより加熱帯域で生成した触媒粒子の凝集や粗大化を抑制し、結果として炭素繊維を成長させるに必要な触媒活性を発現、維持することが可能になったと推定される。
本発明によれば、従来から実施されているような、アルミナ等の担体に粒子状(固体状態)の触媒を担持したものを事前に調製して、それを加熱帯域に供給する方法と比較して、触媒の調製工程、生成した炭素繊維と触媒担体との分離といった複数の煩雑な工程を必須とせず、特定の添加成分を添加することで、担持型の触媒を用いると同等以上の効果を単一の工程で得ることができるため、非常に経済的である。
【0009】
すなわち、本発明は、例えば以下の[1]〜[21]に関する。
[1] 炭素化合物と触媒および/または触媒前駆体化合物を加熱帯域で接触させることにより気相で炭素繊維を連続的に製造する方法であって;炭素化合物、触媒前駆体化合物および添加成分を加熱帯域に供給し、該加熱帯域において添加成分の少なくとも一部が固体または液体として存在する反応条件下で反応させることを特徴とする気相法炭素繊維の製造方法。
【0010】
[2] 反応条件が加熱帯域の温度、滞留時間、添加成分の供給濃度、反応原料の供給方法から選ばれた1種以上である[1]に記載の気相法炭素繊維の製造方法。
【0011】
[3] 添加成分を液体状態、溶液状態または液体に分散させた状態で加熱帯域に供給する[1]または[2]に記載の気相法炭素繊維の製造方法。
[4] 触媒前駆体化合物および添加成分を、炭素供給源であってもよい同一の液体に溶解または分散させて加熱帯域に供給する[1]または[2]記載の気相法炭素繊維の製造方法。
[5] 触媒前駆体化合物を気体状態で、添加成分を炭素供給源であってもよい同一の液体に溶解または分散させて加熱帯域に供給する[1]または[2]に記載の気相法炭素繊維の製造方法。
[6]添加成分を含む液体成分を、反応管入口部に設置した噴霧ノズルを用いて供給する[3]〜[5]のいずれか一つに記載の気相法炭素繊維の製造方法。
[7]噴霧ノズルの吐出部の温度が200℃以下である[6]に記載の気相法炭素繊維の製造方法。
[8]噴霧ノズルの吐出部における、添加成分を含む液体成分およびキャリアガス等の気体成分の吐出速度が30m/min以下である[6]に記載の気相法炭素繊維の製造方法。
【0012】
[9] 添加成分が有機化合物または有機化合物重合体である[1]〜[8]のいずれか一つに記載の気相法炭素繊維の製造方法。
[10] 添加成分が下記の添加成分(1)〜添加成分(3)の群から選ばれる少なくとも1種の化合物である[1]〜[8]のいずれか一つに記載の気相法炭素繊維の製造方法。
添加成分(1):沸点または分解温度のいずれか低い方が180℃以上であ る無機化合物
添加成分(2):沸点または分解温度のいずれか低い方が180℃以上である有機化合物
添加成分(3):分子量が200以上である有機化合物重合体
【0013】
[11] 添加成分(1)が18族型元素周期律表でいう2〜15族元素からなる群から選ばれる少なくとも1種の元素を含む無機化合物である[10]に記載の気相法炭素繊維の製造方法。
[12] 添加成分(1)がMg、Ca、Sr、Ba、Y、La、Ti、Zr、Cr、Mo、W、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、B、Al、C、Si、Biからなる群から選ばれる少なくとも1種の元素を含む無機化合物である[10]に記載の気相法炭素繊維の製造方法。
[13] 添加成分(1)が粉末状の活性炭、グラファイト、シリカ、アルミナ、マグネシア、チタニア、ジルコニア、ゼオライト、燐酸カルシウム、燐酸アルミニウムまたはアスペクト比が1以上50以下で平均繊維径が10以上300nm以下の炭素繊維から選ばれた少なくとも一種である[10]に記載の気相法炭素繊維の製造方法。
【0014】
[14] 添加成分(2)が酸素、窒素、イオウ、リンからなる群から選ばれる少なくとも1種の元素を含む有機化合物である[10]に記載の気相法炭素繊維の製造方法。
[15] 添加成分(2)がハロゲン化エチレン類、ジエン類、アセチレン誘導体、スチレン誘導体、ビニルエステル誘導体、ビニルエーテル誘導体、ビニルケトン誘導体、アクリル酸誘導体、メタクリル酸誘導体、アクリル酸エステル誘導体、メタクリル酸エステル誘導体、アクリルアミド誘導体、メタクリルアミド誘導体、アクリロニトリル誘導体、メタクリロニトリル誘導体、マレイン酸誘導体、マレイミド誘導体、ビニルアミン誘導体、フェノール誘導体、メラミン類、尿素誘導体、アミン誘導体、カルボン酸誘導体、カルボン酸エステル誘導体、ジオール誘導体、ポリオール誘導体、イソシアナート誘導体、イソチオシアナート誘導体からなる群から選ばれる少なくとも1種の有機化合物である[10]に記載の気相法炭素繊維の製造方法。
【0015】
[16] 添加成分(3)が酸素、窒素、イオウ、リンからなる群から選ばれる少なくとも1種の元素を含む有機化合物重合体である[10]に記載の気相法炭素繊維の製造方法。
[17] 添加成分(3)がオレフィン類、ハロゲン化エチレン類、ジエン類、アセチレン誘導体、スチレン誘導体、ビニルエステル誘導体、ビニルエーテル誘導体、ビニルケトン誘導体、アクリル酸誘導体、メタクリル酸誘導体、アクリル酸エステル誘導体、メタクリル酸エステル誘導体、アクリルアミド誘導体、メタクリルアミド誘導体、アクリロニトリル誘導体、メタクリロニトリル誘導体、マレイン酸誘導体、マレイミド誘導体、ビニルアミン誘導体、フェノール誘導体、メラミン類・尿素誘導体、アミン誘導体、カルボン酸誘導体、カルボン酸エステル誘導体、ジオール誘導体、ポリオール誘導体、イソシアナート誘導体、イソチオシアナート誘導体、からなる群から選ばれる少なくとも1種の有機化合物の重合体である[10]に記載の気相法炭素繊維の製造方法。
【0016】
[18] 触媒前駆体化合物が加熱帯域において気体となりえる化合物である[1]に記載の気相法炭素繊維の製造方法。
[19] 触媒前駆体化合物が18族型元素周期律表でいう3、5、6、8、9、10族から選ばれる少なくとも1種の金属を含む[1]に記載の気相法炭素繊維の製造方法。
【0017】
[20] 添加成分と触媒前駆体化合物中の金属原子との質量比(添加成分/触媒前駆体化合物中の金属原子)が0.001〜10000である[19]に記載の気相法炭素繊維の製造方法。
[21] [1]〜[20]のいずれか一つに記載の製造方法により製造された気相成長炭素繊維。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、必要に応じて図面を参照しつつ本発明を更に具体的に説明する。以下の記載において量比を表す「部」および「%」は、特に断らない限り質量基準とする。
【0019】
(炭素化合物)
本発明の炭素繊維の製造方法において、炭素繊維の原料となる炭素化合物は特に制限されない。この炭素化合物としては、CCl4、CHCl3、CH2Cl2、CH3Cl、CO、CO2、CS2等のほか有機化合物全般が使用可能である。特に有用性の高い化合物としては、CO、CO2、脂肪族炭化水素および芳香族炭化水素を挙げることができる。また、これらの他、窒素、リン、酸素、硫黄、弗素、塩素、臭素、沃素等の元素を含んだ炭素化合物も使用することができる。
【0020】
好ましい炭素化合物の一例を挙げると、CO、CO2等の無機ガス;メタン、エタン、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン等のアルカン類;エチレン、プロピレン、ブタジエン等のアルケン類;アセチレン等のアルキン類;ベンゼン、トルエン、キシレン、スチレン等の単環式芳香族炭化水素;インデン、ナフタリン、アントラセン、フェナントレン等の縮合環を有する多環式化合物;シクロプロパン、シクロペンタン、シクロヘキサン等のシクロパラフィン類;シクロペンテン、シクロヘキセン、シクロペンタジエン、ジシクロペンタジエン等のシクロオレフィン類;ステロイド等の縮合環を有する脂環式炭化水素化合物等がある。更に、これらの炭化水素に酸素、窒素、硫黄、リン、ハロゲン等が含まれた誘導体、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等の含酸素化合物、メチルチオール、メチルエチルスルフィド、ジメチルチオケトン等の含硫黄脂肪族化合物、フェニルチオール、ジフェニルスルフィド等の含硫黄芳香族化合物、ピリジン、キノリン、ベンゾチオフェン、チオフェン等の含硫黄又は含窒素複素環式化合物、クロロホルム、四塩化炭素、クロルエタン、トリクロルエチレン等のハロゲン化炭化水素;また単体ではないが天然ガス、ガソリン、灯油、重油、クレオソート油、ケロシン、テレピン油、樟脳油、松根油、ギヤー油、シリンダ油等も使用することができる。これらの混合物を用いることももちろん可能である。
更に好ましい炭素化合物として、CO、メタン、エタン、プロパン、ブタン、エチレン、プロピレン、ブタジエン、アセチレン、ベンゼン、トルエン、キシレンおよびこれらの混合物が挙げられる。
【0021】
(触媒)
本発明における触媒は、炭素繊維の成長を促進する物質である限り、特に制限されない。この触媒としては、例えば、IUPACが1990年に勧告した18族型元素周期表でいう3〜12族からなる群から選ばれる少なくとも1種の金属が挙げられる。更には3、5、6、8、9、10族からなる群から選ばれる少なくとも1種の金属が好ましく、鉄、ニッケル、コバルト、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、白金および希土類元素が特に好ましい。
【0022】
(触媒前駆体化合物)
触媒前駆体化合物とは、加熱帯域において熱分解し、場合によっては更に還元されて、上記触媒を与える化合物のことである。例えば、触媒前駆体化合物であるフェロセンは加熱帯域において熱分解し、触媒である鉄微粒子を生成する。よって、触媒前駆体化合物としては上記のような金属を与える化合物が好適に使用可能である。より具体的には例えば、触媒前駆体化合物として、3〜12族からなる群から選ばれる少なくとも1種の元素を含む金属化合物、更には3、5、6、8、9、10族からなる群から選ばれる少なくとも1種の元素を含む化合物が好ましく、鉄、ニッケル、コバルト、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、白金および希土類元素を含む化合物が最も好ましい。
【0023】
また、該触媒前駆体化合物は加熱帯域で気体となりえるものが好ましいことから、フェロセン等の有機金属化合物や、カルボニル化合物、塩化物等が好適に用いられる。また、これら主成分に1〜17族からなる群から選ばれる少なくとも1種の元素を含む金属化合物を触媒の修飾成分(いわゆる助触媒)として加えて、主成分である金属の触媒性能を修飾することも可能である。この修飾成分についても加熱帯域では気体となりえるものが好ましい。
これらの触媒前駆体化合物の加熱帯域への供給方法は特に限定されないが、ガス状、あるいは溶媒等に溶解し液体状で供給することができる。使用する溶媒に特に制限はないが、供給したい量の触媒前駆体化合物を溶解することのできるものを適宜選択すればよく、水、アルコール、炭化水素、ケトン、エステル等を用いることができる。ベンゼン、トルエン、キシレン等の炭素化合物を用いると、溶媒自体を炭素源である炭素化合物として活用できるために好ましい。
【0024】
溶媒に実質的に溶けない固体状の触媒前駆体化合物をガスあるいは液体に分散させて加熱帯域に供給することも可能である。この場合、界面活性剤等を添加して良好な懸濁液にすることは推奨されている。ただし、固体状の触媒前駆体化合物は一般的に加熱帯域でガス状になりにくいため、この点からは好適さの程度はやや低くなる傾向がある。加熱帯域において気体となりえる触媒前駆体化合物を用いると、触媒が該添加成分に均一に分散して吸着または内包されるために望ましい。
【0025】
触媒前駆体化合物の添加量としては、原料中の全炭素原子モル数(すなわち、炭素化合物等の原料中の炭素原子モル数)との比率として0.000001〜1が好ましく、0.00001〜0.1が更に好ましく、0.0001〜0.005が最適である。0.000001より少ないと、触媒が不足し繊維数が減少したり繊維径が増大するため好ましくない。この比が1より大きいと、経済的でないばかりか、触媒として機能しなかった粗大化した触媒粒子が繊維に混在するため好ましくない。なお、上記の原料中の全炭素原子モル数比率の計算において、全炭素原子モル数の計算には、炭素化合物のみならず、触媒前駆体化合物や添加成分、溶媒に由来する炭素原子も含める。
【0026】
(固相または液相として存在する条件)
本発明の特徴は、炭素化合物および触媒前駆体化合物以外に、特定の添加成分を(加熱帯域で少なくとも一部が固相または液相として存在するように条件を設定して)加熱帯域に供給する点にある。添加成分を共存させることで非常に微量の触媒でも有意な量の炭素繊維が成長し、また、繊維径分布等の得られる繊維の質的向上を期待することもできる。
この添加成分の役割は必ずしも明らかではないが、触媒粒子が加熱帯域で凝集して粗大化をすることを抑制し、結果として触媒の活性を効果的に発現、維持することを可能にしているものと推測される。
このような本発明の効果により、従来では炭素繊維の得られなかったような少量の触媒でも炭素繊維を高収率で得ることが可能になる。作用メカニズムについては以下のような推定が可能である。すなわち、加熱帯域で触媒前駆体化合物から生成した触媒粒子が該添加物の表面に吸着するかまたは該添加物に取り込まれることによって、触媒粒子同士が衝突して凝集、粗大化することが阻害される。したがって、添加成分がない場合には有意な数の触媒粒子を与えられないようなごく少量の触媒量でも充分な量の繊維が生成する。
【0027】
また、本発明では従来から実施されているような炭素繊維を生成する触媒能を有する鉄やコバルトといった金属をアルミナ等の担体に担持してから反応器に供給する方法は含まない。微粉のアルミナ等を添加成分として用いることも可能であるが、本発明は故意にアルミナ上に触媒前駆体化合物を担持するといった触媒前駆体化合物を担体上に固定化するための行為は行わず、基本的に触媒前駆体化合物は添加成分に吸着や内包さらには化学結合を形成するなどの化学的インターラクションによって固定化されるのではなく、各々が独立した状態で反応器の加熱帯域に供給することに特徴がある。例えば、触媒前駆体化合物としてフェロセンを、添加成分として活性炭を用いて両方を溶媒としてベンゼンに分散して反応器に供給するといった場合にもフェロセンが活性炭に選択的に吸着して濃縮されるといったことはなく、あくまで両者が均一にベンゼン中に分散されている状態で使用する。
【0028】
(原料の供給方法)
原料の供給方法は、特に制限されない。すなわち、原料の供給方法としては、(a)溶媒中に触媒前駆体化合物と添加成分とをともに溶解あるいは分散した状態で供給したり、あるいは(b)触媒前駆体化合物は気化させて気相で、添加成分は溶媒中に溶解または分散した状態で供給したり、更には(c)触媒前駆体化合物はガス状態で添加成分は固相で供給したりと、種々の実施形態が可能である。本発明においては、前の2者(すなわち、(a)法または(b)法)が好ましい。
【0029】
また、本発明では触媒成分の添加成分への吸着や内包といった化学的インターラクションを形成するプロセスは反応器の中で行うことに意味がある。すなわち、あらかじめ担体に担持する場合には触媒の粒径や粒度分布は担持の条件や細孔分布等の担体自体の特徴に大きく依存するし、また、煩雑な触媒調製工程や触媒の水素還元等の触媒の前処理工程を設ける必要が生じる。これに対して本発明では、触媒調製や前処理工程を省けるのに加えて、炭素繊維の成長に有効なサイズの触媒粒子をより効率的に生成させることができる結果、少量の触媒でも大量の炭素繊維を製造することが可能になる。
【0030】
(加熱帯域における反応)
該添加成分の具備すべき特性として、炭素繊維を製造する反応器の加熱帯域で少なくとも一部が固相または液相で存在するということがある。更に、本添加成分の役割は反応初期において触媒粒子の凝集を抑制することにあり、一旦炭素繊維の成長が始まれば触媒粒子は炭素繊維に内包されるために、添加成分の役割は終わる。したがって、反応後期においては気化したり、分解したりしても差し支えないものと考えられる。
通常の場合、炭素化合物を炭素繊維に転換する反応は1000℃程度の高温下、水素等の特殊なキャリアーガス雰囲気で秒オーダーの滞留時間で行われる。このため、こうした条件下でもその一部が固体または液体で存在することのできる化合物を添加成分として選択し、加熱帯域においてその添加成分の少なくとも一部が固体または液体として存在し得るように加熱帯域の温度や滞留時間、雰囲気等の反応条件を調節する必要がある。この反応条件は用いる炭素化合物や目的とする生成物の種類等によって様々に変化するために一義的に決めることはできない。
【0031】
反応条件の通常の範囲を例示すると、温度:500〜1500℃、滞留時間:0.001〜100秒、雰囲気(キャリアーガス):窒素、アルゴン等の不活性ガスまたは還元性を有する水素ガスである。必要に応じて微量の酸素を添加することも可能である。重要なことは特殊な雰囲気で一般的感覚からすれば非常に短い滞留時間における相が問題であるため、反応温度以上の沸点を有する化合物が当てはまることは言うまでもないが、たとえ反応温度以下の沸点や分解温度を有する化合物であっても、その滞留時間内に完全に気化したり、分解したりしなければ必要条件を満たしていることになる。よって、沸点や蒸気圧といったパラメーターはある程度参考にはなるが、絶対的尺度にはなりにくい。むしろ、実際の反応条件下で化合物が如何なる状態で存在するかを観察した方が実際的である。これには化合物自体またはそれを水等の適当な溶媒(炭化物が残留しないという意味で水が好ましい)に溶解あるいは分散したものを実際の反応条件に設定された雰囲気に曝して回収ゾーンに固体または液体が残留することを確認することが好ましい。そうした条件に曝しても気化したり分解したりすることなく一部でもよいから固体または液体として残留する化合物を本発明で有効な添加成分と規定できる。
一旦気化したものでも温度が低下すれば再度液化または固化することもあり得るので回収ゾーンは加熱帯域の直近、例えば温度が100℃以上、できれば200℃以上に保たれている部分に設ける必要がある。ただし、添加成分が水溶性でなく、溶媒として炭化水素系のものを使用した場合、溶媒自体も炭化し固体として残留するため、添加成分の残留物との区別が困難となることある。このように上記テストで添加成分がすべて気化していないことを判断することが困難な場合もあるが、基本的には本方法が最もその化合物が有効に機能するか否かを判別する指標を与える。
【0032】
更に、同一の添加成分であっても後述の実施例4、比較例2に示すように添加成分を溶媒に溶解した状態で加熱帯域にスプレーして導入した場合には効果が認められるのに対し、気化ゾーンを設けてそこに添加成分を含む液を供給して気化させた後、反応器に導入した場合には効果が認められないという場合もあることから、原料の供給方法を含む反応条件下での状態が問題となる。
【0033】
化学便覧基礎編 改定4版 日本化学会偏(丸善株式会社、平成5年発行)やCRC Handbook of Chemistry and Physics (CRC Press Inc.)等に記載されている化合物の沸点や分解温度等は本発明に適する添加成分を判別するための目安としては非常に有用である。例えば、常圧での沸点または10mg程度のサンプルを熱分析装置を用い不活性ガス雰囲気中10℃/minで昇温させた場合に50%の重量減少が生じる温度(分解温度)のいずれか低い方が180℃以上、好ましくは300℃以上、更に好ましくは450℃以上、最も好ましくは500℃以上である無機化合物、常圧での沸点または、分解温度のいずれか低い方が180℃以上、好ましくは300℃以上、更に好ましくは350℃以上、最も好ましくは400℃以上の有機化合物、分子量(重合後の数平均分子量)が200以上、好ましくは300以上、更に好ましくは400以上有機化合物重合体等を本発明の添加成分として用いることができる。また、添加成分は加熱により分解して沸点または分解温度のいずれか低い方が180℃以上、好ましくは300℃以上、更に好ましくは450℃以上、最も好ましくは500℃以上である無機化合物に転化する化合物であってもよい。
(分解温度の測定)
上記した分解温度の測定においては、例えば、後述する実施例に示すように、示差熱分析計(Seiko Instruments製DTA−TG SSC/5200)を用いて、窒素ガス流量200cc/minで試料約10mgを10℃/minの昇温速度で600℃まで加熱し、この時50質量%の重量減少が生じたときの温度を読み取って分解温度とすることができる。
【0034】
(添加成分(1))
添加成分(1)として有用な無機化合物の一例としては18族型元素周期律表でいう2〜15族元素からなる群から選ばれる少なくとも1種の元素を含む無機化合物、更に好ましくはMg、Ca、Sr、Ba、Y、La、Ti、Zr、Cr、Mo、W、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、B、Al、C、Si、Biからなる群から選ばれる少なくとも1種を含む無機化合物が好適に使用可能である。これらの金属を単体で用いることも可能であるが、一般に不安定であり、ハンドリングや安定性に問題があるため、酸化物、窒化物、硫化物、炭化物やそれらの複塩として用いることが推奨される。更に加熱により分解し、これらの化合物となりうる硫酸塩、硝酸塩、酢酸塩、水酸化物等が挙げられる。更に、炭素を単体で用いてもよく、活性炭やグラファイト等も有効に用いることができる。更に、炭素繊維自体を添加成分として用いることも可能であるが、供給時の簡便性を考慮するとアスペクト比が大きいものは適当ではなく、アスペクト比が1以上50以下で、かつ、平均繊維径が10nm以上300nm以下であるものが好ましい。アスペクト比は電子顕微鏡写真を用い、100個以上の繊維について繊維径と繊維長を測定し、繊維長/繊維径の平均値で求めることができる。
【0035】
これらの無機化合物としては、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、酸化カルシウム、酸化クロム(II、III、VI)、酸化コバルト(II、III)、酸化コバルト(II)アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化イットリウム、二酸化珪素、酸化ストロンチウム、酸化タングステン(IV、VI)、酸化チタン(II、III、IV)、酸化鉄(II、III)、酸化鉄(III)亜鉛、酸化鉄(III)コバルト(II)、酸化鉄(III)鉄(II)、酸化鉄(III)銅(II)、酸化銅(I、II)、酸化鉄(III)バリウム、酸化ニッケル、酸化ニッケル(II)鉄(III)、酸化バリウム、酸化バリウムアルミニウム、酸化ビスマス(III)、酸化ビスマス(IV)二水和物、酸化ビスマス(V)、酸化ビスマス(V)一水和物、酸化マグネシウム、酸化マグネシウムアルミニウム、酸化マグネシウム鉄(III)、酸化モリブデン(IV、VI)、酸化ランタン、酸化ランタン鉄、窒化亜鉛、窒化アルミニウム、窒化カルシウム、窒化クロム、窒化ジルコニウム、窒化チタン、窒化鉄、窒化銅、窒化硼素、硫化亜鉛、硫化アルミニウム、硫化カルシウム、硫化クロム(II、III)、硫化コバルト(II、III)、硫化チタン、硫化鉄、硫化銅(I、II)、硫化ニッケル、硫化バリウム、硫化ビスマス、硫化モリブデン、硫酸亜鉛、硫酸亜鉛アンムニウム、硫酸アルミニウム、硫酸アンモニウムアルミニウム、硫酸アンモニウムクロム、硫酸イットリウム、硫酸カルシウム、硫酸クロム(II、III)、硫酸コバルト(II)、硫酸チタン(III、IV)、硫酸鉄(II、III)、硫酸鉄アンモニウム、硫酸銅、硫酸ニッケル、硫酸ニッケルアンモニウム、硫酸バリウム、硫酸ビスマス、硫酸マグネシウム、硝酸亜鉛、硝酸アルミニウム、硝酸イットリウム、硝酸カルシウム、硝酸クロム、硝酸コバルト、硝酸ジルコニウム、硝酸ビスマス、硝酸鉄(II、III)、硝酸銅、硝酸ニッケル、硝酸バリウム、硝酸マグネシウム、硝酸マンガン、水酸化亜鉛、水酸化アルミニウム、水酸化イットリウム、水酸化カルシウム、水酸化クロム(II、III)、水酸化コバルト、水酸化ジルコニウム、水酸化鉄(II、III)、水酸化銅(I、II)、水酸化ニッケル、水酸化バリウム、水酸化ビスマス、水酸化マグネシウム、酢酸亜鉛、酢酸コバルト、酢酸銅、酢酸ニッケル、酢酸鉄、活性炭、グラファイト、炭素繊維、ゼオライト(アルミノシリケート)、リン酸カルシウム、リン酸アルミニウム等が挙げられる。
【0036】
(加熱帯域への供給)
このような無機化合物を連続的に反応器の加熱帯域に供給するには、例えば平均粒子径が100μm以下の微粉を溶媒中に分散させて反応器中に噴霧する方法で行うことができる。また、触媒粒子が吸着するのに充分な有効面積を確保するためにも粒子径は小さいことが好ましい。平均粒子径は好ましくは100μm以下、より好ましくは50μm以下、更に好ましくは30μm以下、最も好ましくは10μm以下であることが推奨される。また、最大径についても同様に小さい方がよく200μm以下、より好ましくは100μm以下、更に好ましくは50μm以下、最も好ましくは30μm以下であることが推奨される(この「平均粒子径」の定義ないし測定方法の詳細については、例えば文献:化学工学便覧(P657、丸善、昭和39年第4版)を参照することができる)。
【0037】
最も好ましい添加成分の一例を挙げると、工業的に入手が容易な粉末状で好ましくは平均粒子径が100μm以下の活性炭、グラファイト、シリカ、アルミナ、マグネシア、チタニア、ジルコニア、ゼオライト、燐酸カルシウム、燐酸アルミ、およびアスペクト比が50以下の炭素繊維といったものである。
【0038】
(添加成分(2)および(3))
添加成分(2)の有機化合物および添加成分(3)の有機化合物重合体を用いる場合には、触媒前駆体化合物との親和性等もその効果を高めるための重要な因子となり得る。したがって、上記した沸点や分解温度、分子量に加えて酸素、窒素、イオウ、リンといったヘテロ原子を有する有機化合物が単なる炭化水素よりも有効である場合が多い。更に、炭素繊維の炭素源としてベンゼンやトルエンといった常温で液状の炭化水素を用いる場合にはこうした炭化水素に溶解し得る有機化合物であれば供給が容易なために好ましい。
【0039】
添加成分(2)として使用可能な有機化合物および添加物(3)の有機化合物重合体の一例を挙げると、炭素数が10以上の飽和、不飽和炭化水素類および高級アルコール、オレフィン類;ハロゲン化エチレン類;ジエン類;アセチレン誘導体、スチレン誘導体、ビニルエステル誘導体、ビニルエーテル誘導体、ビニルケトン誘導体、アクリル酸・メタクリル酸誘導体、アクリル酸エステル誘導体、メタクリル酸エステル誘導体、アクリルアミド・メタクリルアミド誘導体、アクリロニトリル・メタクリロニトリル誘導体、マレイン酸・マレイミド誘導体、ビニルアミン誘導体、フェノール誘導体、メラミン類・尿素誘導体、アミン誘導体、カルボン酸・カルボン酸エステル誘導体、ジオール・ポリオール誘導体、イソシアナート・イソチオシアナート誘導体、からなる群から選ばれる少なくとも1種の有機化合物およびそれらの重合体である。
【0040】
経済性、汎用性の点から更に好ましい化合物として、オクチルアルコール、デシルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、オレイン酸、ステアリン酸、アジピン酸、リノール酸、エルカ酸、ベヘン酸、ミリスチン酸、ラウリン酸、カプリン酸、カプリル酸、ヘキサン酸およびそれらのナトリウム、カリウム塩;マロン酸ジメチル、マレイン酸ジメチル、フタル酸ジブチル、フタル酸エチルヘキシル、フタル酸ジイソノニル、フタル酸ジイソデシル、フタル酸ジウンデシル、フタル酸ジトリデシル、フタル酸ジブトキシエチル、フタル酸エチルヘキシルベンジル、アジピン酸エチルヘキシル、アジピン酸ジイソノニル、アジピン酸ジイソデシル、アジピン酸ジブトキシエチル、トリメリット酸エチルヘキシル;ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリオキシエチレングリコールモノメチルエーテル、ポリオキシエチレングリコールジメチルエーテル、ポリオキシエチレングリコールグリセリンエーテル、ポリオキシエチレングリコールラウリルエーテル、ポリオキシエチレングリコールトリデシルエーテル、ポリオキシエチレングリコールセチルエーテル、ポリオキシエチレングリコールステアリルエーテル、ポリオキシエチレングリコールオレイルエーテル、ポリプロピレングリコールジアリルエーテル、ポリオキシエチレングリコールノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレングリコールオクチルエーテル、ステアリン酸ポリプロピレングリコール;ジ2−エチルヘキシルスルホコハク酸ナトリウム、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、ポリアセタール、ポリテトラヒドロフラン、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸メチル、ポリメタクリル酸メチル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリウレタン、不飽和ポリエステル、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリカーボネイト、ポリアミド、ポリフェニレンオキシド、ポリアクリロニトリル、ポリビニルピロリドン等が挙げられる。
【0041】
添加成分として有機化合物を用いる場合には、それ自体も炭素で構成されているために反応初期においては固相または液相として存在して触媒粒子の凝集を抑制し、かつ、反応後期またはその後の熱処理で気化したり、分解して揮発したり、あるいは炭素繊維として生成物に取り込まれたりすることを期待できる場合もある。こうした化合物を選択すると特段の精製処理を行うことなく不純物の少ない、あるいは実質的に含まない繊維を得ることができるため非常に有利である。アルミナ等の担体に金属を担持した触媒を用いることでも触媒粒子の凝集を抑制することは可能であるが、本発明の方法によれば適正な粒径を有する触媒を反応器内で生成させ、更に、その状態を維持するのに加え、担体としての痕跡を残さないという効果もあることから従来の担持触媒を利用する方法よりはるかに効率的であり、効果的である。
【0042】
(添加成分の添加量)
添加成分の添加量は、触媒中の金属に対する質量比にして0.001〜10000が好ましく、0.01〜1000が更に好ましく、0.1〜100が最適である。0.001より少ないと炭素繊維の生成量が減少し、10000より多く添加してもその効果は増加せず、逆に粉状の生成物が増加したりするために好ましくない。
【0043】
なお、本発明でいう添加成分には炭素源となる炭素化合物、触媒前駆体は含まれないことはいうまでもない。
【0044】
該炭素化合物、該触媒前駆体化合物、該添加成分は、各々単独で反応系に導入することも可能であるが、混合、溶解することにより組成物として反応器へ同時に供給することが好ましい。
【0045】
(キャリアーガス)
本発明の気相法炭素繊維の製造においてはこれらの、成分、あるいは組成物に加えて、キャリアーガスを使用することが推奨さる。キャリアーガスとしては水素、窒素、二酸化炭素、ヘリウム、アルゴン、クリプトン、またはこれらの混合ガスを用いることができる。しかし、空気等の酸素分子(すなわち、分子状態の酸素:O2 )を含有するガスは適さない。本発明で用いる触媒前駆体化合物は酸化状態にある場合があり、こうした場合にはキャリアーガスとして水素を含有するガスを用いることが好ましい。しがたって、好ましいキャリアーガスとしては水素を1vol%以上、更には30vol%以上、最も好ましくは85vol%以上含んだガスであり、例えば100vol%水素や水素を窒素で希釈したガスである。
【0046】
(イオウ化合物)
更に、これらに炭素繊維径制御に効果があるとされているイオウ化合物を併用してもよい。イオウ、チオフェン、硫化水素等の化合物をガス状あるいは、溶媒に溶解させて供給してもよい。もちろん該炭素化合物、該触媒前駆体化合物、該添加物中にイオウを含有する物質を用いても良い。供給するイオウの総モル数は触媒の金属モル数の1000倍以下、好ましくは100倍以下、更に好ましくは10倍以下であることが望ましい。供給するイオウの量が多すぎると経済的でないばかりか、炭素繊維の成長を妨げる原因となるため好ましくない。
【0047】
(炭素繊維の合成)
気相法炭素繊維の合成は、これまで説明した原料および必要に応じてキャリアーガスとを加熱帯域に供給して加熱下で接触させることにより達成される。反応器(加熱炉)としては、所定の滞留時間、加熱温度が得られるものであれば特に限定されないが、縦型あるいは横型の管状炉が原料供給、滞留時間制御の面で好ましい。添加成分の少なくとも一部が固体または液体として存在するように、添加成分を選定するのみならず、反応条件を適切に調整することが必要である。このような反応条件としては、添加成分の揮発、分解性を変化させられる条件であれば特に規定されないが、一般的には、加熱帯域の温度、滞留時間、添加成分の供給濃度、供給方法等である。
【0048】
加熱帯域の温度は使用する炭素化合物、添加成分の種類によって大きく異なるが、一般的に500℃以上1500℃以下であることが望ましく、更に望ましくは600℃以上1350℃以下である。温度が低すぎると炭素繊維が成長せず、高すぎると、添加成分が加熱帯域で気体となり添加効果が得られないばかりか、繊維が成長しなかったり、あるいは太い繊維しか得られなかったりする。
【0049】
滞留時間は加熱帯域の長さとキャリアーガスの流量により調整する。使用する反応装置、炭素化合物の種類によって、大きく異なるが、一般的には0.0001秒〜2時間以内がよく、0.001〜100秒が更に好ましく、0.01〜30秒が最も好ましい。滞留時間が短すぎると、炭素繊維が成長せず、長すぎると、添加成分が加熱帯域で気体となり、添加効果が得られなかったり、太い繊維しか得られなかったりする。
【0050】
添加成分の供給濃度は、キャリアーガスの流量と炭素化合物の供給速度によって調整される。使用する反応装置、添加成分、炭素化合物の種類等他の条件に応じて適宜選定すれば良い。好ましい濃度をキャリアーガス中の添加成分質量として表すと0.0000001〜100g/NLがよく、0.000001〜10g/NLが更によく、0.00001〜1g/NLが最もよい。ここでキャリアーガスの体積は標準状態換算のもので表している。供給濃度が低すぎると、添加成分が加熱帯域で気体となり、添加した効果が得られ難い傾向がある。
添加成分の供給方法としては、使用する添加成分、添加濃度等の反応条件に応じて、加熱帯域において添加成分の少なくとも一部が固体または液体として存在するように適宜調製すればよく、特に限定されない。好ましい適用例は、添加成分を液体状態、溶液状態または液体に分散させた状態で加熱帯域に供給する方法や、触媒前駆体化合物および添加成分を炭素供給源であってもよい同一の液体に溶解または分散させて加熱帯域に供給する方法、更に、触媒前駆体化合物を気体状態で、添加成分を炭素供給源であってもよい同一の液体に溶解または分散させて加熱帯域に供給する方法が挙げられる。これらの添加成分を含有する液体成分は反応管に設置された噴霧ノズルを用いて供給するのが好ましい。
(噴霧ノズル)
噴霧ノズルの形状については、特に限定されないが、多重管方式、1流体方式、2流体方式等の構造の物が使用でき、更に、液体成分とキャリアーガス等の気体成分をノズル内で混合する内部混合方式、ノズル外で混合する外部混合方式のいずれの構造の物でも使用できる。特に、多重管構造の物として、図5、および図6に示すような、2重管構造(図5)、3重管構造(図6)のものが、好ましい。
噴霧ノズルは、反応管の入口、中間部等、いずれの場所に設置することも、可能であり、噴霧ノズルの吐出部を反応管内に挿入することも可能である。いずれの場合においても、添加成分の少なくとも一部を加熱帯域で固体または液体の状態に保持するために、吐出ノズルの先端温度、添加成分を含む液体成分およびキャリアーガス等の気体成分の吐出速度を制御することが重要である。
吐出ノズル先端部の温度は、使用する添加成分の種類、噴霧ノズルの形式にも依存するが、200℃以下であることが好ましく、150℃以下が更に好ましく、100℃以下が最適である。このような温度条件を維持するために、噴霧ノズルの設置位置を調整したり、噴霧ノズルに冷却機構を設けたりするのが好ましい。冷却機構については、ノズル吐出部の温度を所定の温度に維持できれば、特に限定されないが、例えば、噴霧ノズルの外部に冷却用ジャケットを設置し、ジャケット内に、水や各種不活性ガス等の媒体を流通させることによって、冷却させるのが好ましい。ノズル吐出部の温度が200℃を超えると、球状の炭素粒子が製品中に混入するため好ましくない。
ノズル吐出部からの吹き出し速度は、1流体ノズルの場合には容易に求められるものの、多重管ノズル等のような、複雑な構造を有する場合には、求めることが困難である。このような場合にも、液体成分、キャリアーガス成分の各々の吐出速度は噴霧状態を予想するのに、非常に有用である。各々の吐出速度は、例えば、図5、図6に示したような、多重管ノズルでは、キャリアーガスおよび添加成分を含む液体成分の流量を各々の流路の断面積で除することによって求められる。特に図5で示したような、内部混合型のノズルの場合、液体成分はキャリアーガスに同伴されて吐出されるため、液体成分の吐出速度は内部混合されるキャリアーガスの吐出速度と同一であるものと推定される。特に内部混合型の噴霧ノズルの場合、このように算出された吐出速度のいずれもが、30m/s以下であることが好ましく。10m/s以下が最適である。吐出速度が30m/sを超えると球状の炭素粒子が製品中に混入する傾向が増大するため好ましくない。
【0051】
【実施例】
以下、実施例をあげて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0052】
以下の実施例・比較例で使用した試薬等は、次の通りである。
〔試薬類〕
1.炭素化合物
ベンゼン:和光純薬工業(株)製特級試薬
2.触媒前駆体化合物
フェロセン:日本ゼオン(株)製
FeCl3:和光純薬工業(株)製試薬
CoCl2:和光純薬工業(株)製試薬
3.添加成分
ポリプロピレングリコール:日本油脂(株)製 D−250(分子量:250、分解温度220℃)、D−400(分子量:400、分解温度290℃)
AOT(ジ−2―エチルヘキシルスルホコハク酸ナトリウム):
日光ケミカルズ(株)製 DTP−100(分子量:444、分解温度290℃)
ヒュームドシリカ: CABOT製 HS−5(分子量:60、沸点:2230℃)
フタル酸ジブチル:和光純薬工業(株)(分子量:278、沸点:339℃)
炭素繊維:昭和電工(株)製 VGCF−Cを振動ミルで粉砕後アルゴン中で2800℃で黒鉛化したもの、平均繊維径150nm、平均アスペクト比:5
活性炭:クラレ(株)製クラレコール製 YP−17(分解温度 600℃以上)
4.その他成分
イオウ(粉末) :関東化学(株)製 試薬
【0053】
[分解温度の測定]
添加成分の分解温度は示差熱分析計(Seiko Instruments製DTA−TG SSC/5200)にて、窒素ガス流量200cc/minで試料約10mgを10℃/minの昇温速度で600℃まで加熱した。この時50質量%の重量減少が生じたときの温度を読み取り、分解温度とした。600℃まで加熱しても重量減少が50質量%に満たない場合は「600℃以上」とした。
【0054】
〔炭素繊維の合成〕
<実施例1〜7>
図2に示した石英製反応管2(内径31mm、外径36mm、加熱帯域の長さ約400mm)を備えた縦型炉にて、N2気流中で1250℃に昇温し、その後、N2の供給を絶ち、代わって、反応管内に1NL/minでキャリアーガスとしてH2を流した。温度が安定した後に、表1に示した反応液(溶媒または分散媒兼炭素化合物としてベンゼンを使用)を小型ポンプを用いて0.11g/minの流速で10分の間原料噴霧ノズル1から供給した。キャリアガスは図6に示した構造の噴霧ノズルの外側と内側にそれぞれ、0.3NL/min、0.7NL/minの割合で供給した。噴霧ノズルの流路の断面積から吐出速度を求めるとそれぞれ、3m/S、60m/Sであった。噴霧ノズルの吐出部の温度は75℃であった。尚、表中の仕込み組成はベンゼン溶液中の質量%で表記した。実施例2の酢酸エチルはFeCl3のベンゼンへの溶解性を高めるために添加した。
【0055】
反応の結果、反応管底部に灰色を帯びた蜘蛛の巣状の堆積物が生成した。降温後、この堆積物を回収し、回収量を使用したベンゼン量で除して炭素回収率を求めた。また、走査型電子顕微鏡で繊維状の生成物を観察した。その結果を後述の表2に示した。また、各実施例で、添加成分以外の成分を水に置換し、添加成分を水に溶解分散させて、各実施例と同一の条件で反応管内へ噴霧したところ、回収部において、当該添加成分が液体または固体状態で回収されていることを確認した。
【0056】
<実施例8>
図3に示した反応装置を用い、ポリプロピレングリコール(D−400):硫黄:ベンゼン=0.30:0.03:99.67質量%の反応液Aを小型ポンプを用いて0.11g/minで原料噴霧ノズル1にて供給し、フェロセン:ベンゼン=3.33:96.67質量%の反応液Bを小型ポンプを用いて0.003g/minで200℃に加熱された気化器7に導入し、フェロセンとごく一部のベンゼンは気体でキャリアーガスに同伴させて供給した。キャリアーガス(H2)流量は反応液A側は0.7NL/min、反応液B側は各0.3NL/minとした。原料噴霧ノズル1は図6に示した3重管構造の物を使用し、キャリアガス流量は外側、内側それぞれ、0.2NL/min、0.5NL/minで、吐出速度はそれぞれ、2m/s、43m/sであった。噴霧ノズルの吐出部の温度は75℃であった。上記条件以外は実施例1〜7と同様の操作を行った。その結果を後述の表2に示した。
【0057】
<比較例1>
表1に示した反応液を用いた以外は実施例1と同様にして合成を行った。
【0058】
その結果、反応生成物はその大部分は球状のカーボン粉末であり、繊維状の生成物はごくわずかであった。
【0059】
<比較例2>
反応器として図4に示したように図2の反応装置の原料導入部に、気化ヒーター5とプレート6を設置した装置を使用した。気化ヒーター5の温度を300℃とし、反応組成物(反応液)を完全に気化させた後、加熱帯域に導入した点を除いて実施例4と同様の操作を行った。得られた反応生成物は大部分が球状のカーボン粉末であり、回収率は37%、繊維状の生成物はごくわずかであった。
【0060】
<実施例9、比較例3>
図2に示した原料噴霧ノズルの反応管中への挿入位置を変えることで、噴霧ノズルの吐出部の温度を表1に示した温度とした以外は、実施例1と同様の条件で反応を行った。
<実施例10、11、比較例4>
図5で示した2重管型ノズルを用い、総キャリアガス量は1NL/minの一定とし、表1に示した条件となるようにキャリアガスを噴霧ノズルの外側と内側およびノズルを経由せず直接反応管へ供給した。表1に示した条件以外は実施例1と同様に反応を行った。
【表1】
【0061】
【表2】
【0062】
【発明の効果】
上述したように本発明によれば、触媒をあらかじめ担持する等の前処理を必須とせず、特定の添加成分を反応系に供給し、条件を調製するだけで、触媒粒子の凝集、粗大化を抑制でき、担持法と比較して、大幅な工程短縮が可能となり経済的であるのみならず、極めて少量の触媒量で高収率に炭素繊維を得ることができ、安価に炭素繊維を製造することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】気相法炭素繊維を製造するための横型反応装置の一般例を示す模式断面図である。
【図2】実施例1〜7、9〜11、比較例1、3、4で気相法炭素繊維を製造した反応装置を示す模式断面図である。
【図3】実施例8で気相法炭素繊維を製造した反応装置を示す模式断面図である。
【図4】比較例2で使用した原料導入部に加熱ヒーターを有する気相法炭素繊維を製造するための反応装置を示す模式断面図である。
【図5】実施例10、11、比較例4で使用した2重管ノズルを示す模式断面図である。
【図6】実施例1〜7、9、比較例1、3で使用した3重管ノズルを示す模式断面図である。
【符号の説明】
1…原料噴霧ノズル
2…石英製反応管
3…ヒーター
4…捕集器
5…気化ヒーター
6…プレート
7…気化器
8…キャリアガス(内側)
9…反応液
10…キャリアガス(外側)
11…内管
12…外管
13…中管
Claims (21)
- 炭素化合物と触媒および/または触媒前駆体化合物を加熱帯域で接触させることにより気相で炭素繊維を連続的に製造する方法であって;
炭素化合物、触媒前駆体化合物および添加成分を加熱帯域に供給し、該加熱帯域において添加成分の少なくとも一部が固体または液体として存在する反応条件下で反応させることを特徴とする気相法炭素繊維の製造方法。 - 反応条件が加熱帯域の温度、滞留時間、添加成分の供給濃度、反応原料の供給方法から選ばれた1種以上である請求項1に記載の気相法炭素繊維の製造方法。
- 添加成分を液体状態、溶液状態または液体に分散させた状態で加熱帯域に供給する請求項1または2に記載の気相法炭素繊維の製造方法。
- 触媒前駆体化合物および添加成分を、炭素供給源であってもよい同一の液体に溶解または分散させて加熱帯域に供給する請求項1または2に記載の気相法炭素繊維の製造方法。
- 触媒前駆体化合物を気体状態で、添加成分を炭素供給源であってもよい同一の液体に溶解または分散させて加熱帯域に供給する請求項1または2に記載の気相法炭素繊維の製造方法。
- 添加成分を含む液体成分を、反応管に設置した噴霧ノズルを用いて供給する請求項3〜5のいずれか一つに記載の気相法炭素繊維の製造方法。
- 噴霧ノズルの吐出部の温度が200℃以下である請求項6に記載の気相法炭素繊維の製造方法。
- 噴霧ノズルの吐出部における、添加成分を含む液体成分およびキャリアガス等の気体成分の吐出速度が30m/min以下である請求項6に記載の気相法炭素繊維の製造方法。
- 添加成分が有機化合物または有機化合物重合体である請求項1〜8のいずれか一つに記載の気相法炭素繊維の製造方法。
- 添加成分が下記の添加成分(1)〜添加成分(3)の群から選ばれる少なくとも1種の化合物である請求項1〜8のいずれか一つに記載の気相法炭素繊維の製造方法。
添加成分(1):沸点または分解温度のいずれか低い方が180℃以上である無機化合物
添加成分(2):沸点または分解温度のいずれか低い方が180℃以上である有機化合物
添加成分(3):分子量が200以上である有機化合物重合体 - 添加成分(1)が18族型元素周期律表でいう2〜15族元素からなる群から選ばれる少なくとも1種の元素を含む無機化合物である請求項10に記載の気相法炭素繊維の製造方法。
- 添加成分(1)がMg、Ca、Sr、Ba、Y、La、Ti、Zr、Cr、Mo、W、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、B、Al、C、Si、Biからなる群から選ばれる少なくとも1種の元素を含む無機化合物である請求項10に記載の気相法炭素繊維の製造方法。
- 添加成分(1)が粉末状の活性炭、グラファイト、シリカ、アルミナ、マグネシア、チタニア、ジルコニア、ゼオライト、燐酸カルシウム、燐酸アルミまたはアスペクト比が1以上50以下で平均繊維径が10以上300nm以下の炭素繊維から選ばれた少なくとも一種である請求項10に記載の気相法炭素繊維の製造方法。
- 添加成分(2)が酸素、窒素、イオウ、リンからなる群から選ばれる少なくとも1種の元素を含む有機化合物である請求項10に記載の気相法炭素繊維の製造方法。
- 添加成分(2)がハロゲン化エチレン類、ジエン類、アセチレン誘導体、スチレン誘導体、ビニルエステル誘導体、ビニルエーテル誘導体、ビニルケトン誘導体、アクリル酸誘導体、メタクリル酸誘導体、アクリル酸エステル誘導体、メタクリル酸エステル誘導体、アクリルアミド誘導体、メタクリルアミド誘導体、アクリロニトリル誘導体、メタクリロニトリル誘導体、マレイン酸誘導体、マレイミド誘導体、ビニルアミン誘導体、フェノール誘導体、メラミン類、尿素誘導体、アミン誘導体、カルボン酸誘導体、カルボン酸エステル誘導体、ジオール誘導体、ポリオール誘導体、イソシアナート誘導体、イソチオシアナート誘導体からなる群から選ばれる少なくとも1種の有機化合物である請求項10に記載の気相法炭素繊維の製造方法。
- 添加成分(3)が酸素、窒素、イオウ、リンからなる群から選ばれる少なくとも1種の元素を含む有機化合物重合体である請求項10に記載の気相法炭素繊維の製造方法。
- 添加成分(3)がオレフィン類、ハロゲン化エチレン類、ジエン類、アセチレン誘導体、スチレン誘導体、ビニルエステル誘導体、ビニルエーテル誘導体、ビニルケトン誘導体、アクリル酸誘導体、メタクリル酸誘導体、アクリル酸エステル誘導体、メタクリル酸エステル誘導体、アクリルアミド誘導体、メタクリルアミド誘導体、アクリロニトリル誘導体、メタクリロニトリル誘導体、マレイン酸誘導体、マレイミド誘導体、ビニルアミン誘導体、フェノール誘導体、メラミン類・尿素誘導体、アミン誘導体、カルボン酸誘導体、カルボン酸エステル誘導体、ジオール誘導体、ポリオール誘導体、イソシアナート誘導体、イソチオシアナート誘導体、からなる群から選ばれる少なくとも1種の有機化合物の重合体である請求項10に記載の気相法炭素繊維の製造方法。
- 触媒前駆体化合物が加熱帯域において気体となりえる化合物である請求項1に記載の気相法炭素繊維の製造方法。
- 触媒前駆体化合物が18族型元素周期律表でいう3、5、6、8、9、10族から選ばれる少なくとも1種の金属を含む請求項1に記載の気相法炭素繊維の製造方法。
- 添加成分と触媒前駆体化合物中の金属原子との質量比(添加成分/触媒前駆体化合物中の金属原子)が0.001〜10000である請求項19に記載の気相法炭素繊維の製造方法。
- 請求項1〜20のいずれか一つに記載の製造方法により製造された気相成長炭素繊維。
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