JP2007169838A - 気相法炭素繊維およびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】気相法炭素繊維の製造方法において、触媒もしくは触媒前駆体の有効利用率を飛躍的に向上させて炭素繊維を効果的に生成し、結果として炭素繊維を安価に製造できる簡便かつ効果的な方法を提供する。
【解決手段】炭素源と触媒および/または触媒前駆体化合物とを少なくとも含む原料を加熱帯域1に導入することによって、気相で炭素繊維を製造する、気相法炭素繊維の製造方法であって、原料がさらに、下記の式を有する硫黄化合物を含むことを特徴とする、気相法炭素繊維の製造方法とする:
R1−Sn−R2
(nは、1〜5の整数であり、且つR1及びR2はそれぞれ独立に、水素、並びに炭素原子数1〜10の脂肪族炭化水素基及び芳香族炭化水素基からなる群より選択される炭化水素化合物である)。
【選択図】図2
【解決手段】炭素源と触媒および/または触媒前駆体化合物とを少なくとも含む原料を加熱帯域1に導入することによって、気相で炭素繊維を製造する、気相法炭素繊維の製造方法であって、原料がさらに、下記の式を有する硫黄化合物を含むことを特徴とする、気相法炭素繊維の製造方法とする:
R1−Sn−R2
(nは、1〜5の整数であり、且つR1及びR2はそれぞれ独立に、水素、並びに炭素原子数1〜10の脂肪族炭化水素基及び芳香族炭化水素基からなる群より選択される炭化水素化合物である)。
【選択図】図2
Description
本発明は、カーボンナノチューブ等の気相成長炭素繊維を効率的に製造する方法に関する。
気相成長法により得られる炭素繊維(気相法炭素繊維)は、比較的容易に大きいアスペクト比を有することができるため、従来盛んに研究されており、製造方法に関する報告も数多い。近年、特に注目を集めているカーボンナノチューブ(すなわち、繊維径がナノメートルオーダーである炭素繊維)も、この気相成長法の応用で合成することが可能である。
図1は、気相成長法によって炭素繊維を連続的に製造する反応装置の一例を示す模式図である。一般的な製造方法の一例を挙げると、炭素繊維の原料となる炭素源として、CO、メタン、アセチレン、エチレン、ベンゼン、トルエン等を用いる。炭素源が常温で気体である場合には、ガス状でキャリアーガスと混合して供給する。また炭素源が液体である場合には、気化器4で気化させてからキャリアーガスと混合して供給するか、または液状で加熱帯域1に噴霧する。キャリアーガスとしては不活性ガスである窒素ガスや還元性の水素ガス等が用いられる。真空に減圧した系内に炭素源を供給する場合もある。
この気相法炭素繊維製造法における触媒としてはアルミナ等の担体に金属を担持した担持型触媒やフェロセン等の有機金属化合物が使用される。担持型触媒を用いる場合は、担持型触媒を予め加熱帯域1に設置して加熱し、必要な前処理を行った後で、炭素源を供給して反応させる(図1に示す例)。あるいは、前処理した担持型触媒を系外から連続、またはパルス的に供給して反応を行う。また、炭素源に容易に溶解するフェロセン等の有機金属化合物を触媒前駆体として採用し、炭素源とともに加熱帯域に連続的、あるいはパルス的にフィードして、触媒前駆体化合物の熱分解で発生した金属粒子を触媒として炭素繊維を生成させることもできる。
図1で示される装置で行われる気相法炭素繊維製造法の生成物は、ヒーター2で加熱されている加熱帯域1の内部やその末端の捕集器3に捕集され、所定時間の反応を終えた後、回収される。
気相法による炭素繊維の製造方法を、触媒または該触媒の前駆体化合物の供給方法によって大別すると、以下の3種類となる。
(1)触媒またはその前駆体化合物を担持したアルミナや黒鉛からなる基板やボートを加熱帯域に置いて、気相で供給する炭素源のガスと接触させるもの;
(2)触媒またはその前駆体化合物の粒子を液体状の炭素源等に分散させ、系外から加熱帯域に連続またはパルス的に供給して、炭素源と高温で接触させるもの;および
(3)液体状の炭素源中に溶解するメタロセンやカルボニル化合物を触媒前駆体化合物として使用し、この触媒前駆体化合物が溶解した炭素源を加熱帯域に供給することにより、触媒と炭化水素等である炭素源とを高温で接触させるもの。
このような気相法炭素繊維製造法に関して、硫黄化合物の添加が、炭素繊維の生成効率を向上させることが報告されている。
例えば特許文献1では、気相法炭素繊維製造法で用いることができる助触媒として、ベンゾチオフェン、チオフェン等の含硫黄複素環式化合物及び硫化水素等の硫黄化合物を使用できることを開示している。この特許文献1の実施例では、硫黄化合物としてチオフェンを用いている。
特許文献2では、気相法炭素繊維製造法で用いることができる具体的な硫黄化合物として、硫化水素、エチルメルカプタン等のメルカプタン化合物、硫化メチル(またはジメチルスルフィド)等の硫化アルキル(またはアルキルスルフィド)、硫化ベンジル(またはジベンジルスルフィド)のような硫化アリール(またはアリールスルフィド)、チオフェン等の含硫黄環状化合物を挙げており、取り扱いの容易さ、コスト等の点で、硫化水素及びチオフェンの使用が好ましいとしている。この特許文献2の実施例では、硫黄化合物としてチオフェンを用いている。
特許文献3では、気相法炭素繊維製造法で用いることができる具体的な硫黄化合物として、メタンチオール、チオ尿素、二硫化炭素、チオ硫酸ナトリウム、チオフェン、チオアゾール、及びメチオニンを挙げている。この特許文献3では、発明の詳細な説明においてはその化合物がなぜよいのかは明示しておらず、硫黄添加の有効性のみ示している。
特許文献4では、気相法炭素繊維製造法で用いることができる具体的な硫黄化合物として、硫黄、チオフェン及び硫化水素を挙げている。
本発明の目的は、気相法炭素繊維の製造方法において、触媒もしくは触媒前駆体の有効利用率を飛躍的に向上させて炭素繊維を効果的に生成し、結果として炭素繊維を安価に製造できる簡便かつ効果的な方法を提供することにある。
本件発明者は上記の課題を解決するため鋭意検討した結果、高温の雰囲気下で炭素繊維を製造する気相法炭素繊維製造法において、特定の硫黄化合物を添加することにより、効果的に炭素繊維が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は以下の(1)〜(20)に関する。
(1)炭素源と触媒および/または触媒前駆体化合物とを少なくとも含む原料を加熱帯域に導入することによって、気相で炭素繊維を製造する、気相法炭素繊維の製造方法であって、
前記原料がさらに、下記の式を有する硫黄化合物を含むことを特徴とする、気相法炭素繊維の製造方法:
R1−Sn−R2
(nは、1〜5の整数であり、且つR1及びR2はそれぞれ独立に、水素、並びに炭素原子数1〜10の脂肪族炭化水素基及び芳香族炭化水素基からなる群より選択される炭化水素化合物である)。
前記原料がさらに、下記の式を有する硫黄化合物を含むことを特徴とする、気相法炭素繊維の製造方法:
R1−Sn−R2
(nは、1〜5の整数であり、且つR1及びR2はそれぞれ独立に、水素、並びに炭素原子数1〜10の脂肪族炭化水素基及び芳香族炭化水素基からなる群より選択される炭化水素化合物である)。
(2)前記硫黄化合物が、硫化水素、ジメチルスルフィド、メチルエチルスルフィド、ジエチルスルフィド、ジメチルジスルフィド、メチルエチルジスルフィド及びジエチルジスルフィドからなる群より選択される少なくとも一種の硫黄化合物を含むことを特徴とする、上記(1)項に記載の気相法炭素繊維の製造方法。
(3)前記硫黄化合物がジメチルスルフィドである、上記(2)項に記載の気相法炭素繊維の製造方法。
(4)nが2又は3である、上記(1)又は(2)項に記載の方法。
(5)R1及びR2がそれぞれ独立に、メチル基、エチル基、プロピル基及びブチル基からなる群より選択される、上記(1)、(2)又は(4)項に記載の方法。
(6)前記原料中のイオウ元素の原子数と、前記原料中の触媒となる原子の数との比率が、
(イオウ元素の原子数)/(触媒となる元素の原子数)
=100〜0.001
である、上記(1)〜(5)項のいずれかに記載の気相法炭素繊維の製造方法。
(イオウ元素の原子数)/(触媒となる元素の原子数)
=100〜0.001
である、上記(1)〜(5)項のいずれかに記載の気相法炭素繊維の製造方法。
(7)前記炭素源が、一酸化炭素、二酸化炭素、メタン、エタン、プロパン、ブタン、ヘプタン、ヘキサン、シクロヘキサン、エチレン、プロピレン、ブテン、ブタジエン、アセチレン、ベンゼン、トルエン、キシレンからなる郡より選ばれる少なくとも一種の化合物である、上記(1)〜(6)項のいずれかに記載の気相法炭素繊維の製造方法。
(8)前記炭素源が少なくともメタンを含む、上記(1)〜(7)項のいずれかに記載の気相法炭素繊維の製造方法。
(9)前記原料中のメタン濃度が、15mol%以上100mol%未満であり、且つ前記加熱帯域の高温部分の温度が1100℃〜1500℃である、上記(8)項に記載の気相法炭素繊維の製造方法。
(10)前記加熱帯域の導入部の温度が700℃以下である、上記(1)〜(9)項のいずれかに記載の気相法炭素繊維の製造方法。
(11)前記加熱帯域の高温部分に達する前に、600℃〜1000℃の温度の前記加熱帯域の低温部分に0.05秒間以上にわたって滞留する、上記(1)〜(10)項のいずれかに記載の気相法炭素繊維の製造方法。
(12)前記加熱帯域において、1100℃以上の温度での滞留時間が0.001秒以上である、上記(1)〜(11)項のいずれかに記載の気相法炭素繊維の製造方法。
(13)前記原料中のメタン以外の炭素源に含まれる炭素原子の総量が、メタンに含まれる炭素原子の総量の60%以下である、上記(1)〜(12)項のいずれかに記載の気相法炭素繊維の製造方法。
(14)前記原料中のメタン以外の炭素源に含まれる炭素原子の総量が、メタンに含まれる炭素原子の総量の10%以下である、上記(1)〜(13)項のいずれかに記載の気相法炭素繊維の製造方法。
(15)前記原料中の触媒となる元素の原子数と、前記原料中の全ての炭素原子の数との比率が、
(触媒となる元素の原子数)/(全ての炭素原子の数)
=0.000005〜0.0015
である、上記(1)〜(14)項のいずれかに記載の気相法炭素繊維の製造方法。
(触媒となる元素の原子数)/(全ての炭素原子の数)
=0.000005〜0.0015
である、上記(1)〜(14)項のいずれかに記載の気相法炭素繊維の製造方法。
(16)反応後のガスの全てまたは一部を循環し、再使用する、上記(1)〜(15)項のいずれかに記載の気相法炭素繊維の製造方法。
(17)平均繊維径が10nm以上である炭素繊維を製造する、上記(1)〜(16)項のいずれかに記載の気相法炭素繊維の製造方法。
(18)上記(1)〜(17)項のいずれかに記載の気相法炭素繊維の製造方法により製造された気相法炭素繊維。
(19)平均繊維長が10μm以上である、上記(18)項に記載の気相法炭素繊維。
(20)平均繊維長が13μm以上である、上記(19)項に記載の気相法炭素繊維。
本発明の気相法炭素繊維製造法によれば、高温の雰囲気下で炭素繊維を製造する場合に、特定の硫黄化合物を添加することにより、一般的に使用されているチオフェンを使用した場合に比べ、不純物である球状の生成物を飛躍的に減少させ、高い炭素回収率を得ることができた。
本発明の気相法炭素繊維の製造方法は、炭素源と触媒および/または触媒前駆体化合物とを少なくとも含む原料を加熱帯域に導入することによって、気相で炭素繊維を製造する、気相法炭素繊維の製造方法であって、この原料にさらに、特定の硫黄化合物を含むことを特徴とする方法である。
以下では、本発明の構成要素について更に具体的に説明する。
(硫黄化合物)
本発明において用いる硫黄化合物は、構造式R1−Sn−R2を有する硫黄化合物である(nは、1〜5、特に1〜3の整数、且つR1及びR2はそれぞれ独立に、水素、並びに炭素原子数1〜10の脂肪族炭化水素基及び芳香族炭化水素基特に炭素原子数1〜4の脂肪族炭化水素からなる群より選択される炭化水素化合物)。このような硫黄化合物の使用によって本発明の効果がもたらされるメカニズムについては未だ充分にわかってはいないが以下のようなことが考えられる。すなわち、気相法炭素繊維の製造において一般的に硫黄化合物として用いられるチオフェンのような化合物は、共役構造を有し、従って比較的安定である。これに対して、本発明で用いられる硫黄化合物は、それほど安定な構造は持っておらず、従って比較的低温で分解することが予想される。そのため、本発明の方法では、比較的低温から硫黄が触媒に作用し、触媒を高活性な状態にできるのではないかと思われる。またこのように触媒が低温から高活性であることにより、低温から炭素繊維が生成し、触媒利用効率も高まり、繊維状以外の状態の炭素固形分の生成を抑制できるものと考えられる。
本発明において用いる硫黄化合物は、構造式R1−Sn−R2を有する硫黄化合物である(nは、1〜5、特に1〜3の整数、且つR1及びR2はそれぞれ独立に、水素、並びに炭素原子数1〜10の脂肪族炭化水素基及び芳香族炭化水素基特に炭素原子数1〜4の脂肪族炭化水素からなる群より選択される炭化水素化合物)。このような硫黄化合物の使用によって本発明の効果がもたらされるメカニズムについては未だ充分にわかってはいないが以下のようなことが考えられる。すなわち、気相法炭素繊維の製造において一般的に硫黄化合物として用いられるチオフェンのような化合物は、共役構造を有し、従って比較的安定である。これに対して、本発明で用いられる硫黄化合物は、それほど安定な構造は持っておらず、従って比較的低温で分解することが予想される。そのため、本発明の方法では、比較的低温から硫黄が触媒に作用し、触媒を高活性な状態にできるのではないかと思われる。またこのように触媒が低温から高活性であることにより、低温から炭素繊維が生成し、触媒利用効率も高まり、繊維状以外の状態の炭素固形分の生成を抑制できるものと考えられる。
また、本発明において用いる硫黄化合物としては、硫化水素、ジメチルスルフィド、メチルエチルスルフィド、ジエチルスルフィド、ジメチルジスルフィド、メチルエチルジスルフィド及びジエチルジスルフィドからなる群より選択される少なくとも一種の硫黄化合物を挙げることができ、特にジメチルスルフィドを挙げることができる。
また、本発明において用いる硫黄化合物としては、上記構造式においてnが2又は3である硫黄化合物を挙げることができる。このような硫黄化合物、すなわちジ又はトリスルフィドは従来、硫黄と硫黄との結合(−S−S−)結合を有することから十分な硫黄の利用効率が得られないと考えられており、気相法炭素繊維の製造においては使用されていなかった。しかしながら、これらは予想外に硫黄の利用効率を低下させなかった。またこれらのジ又はトリスルフィドは、取り扱いが比較的容易である点で好ましい。
本発明において用いる硫黄化合物としては、上記構造式においてR1及びR2がそれぞれ独立に、メチル基、エチル基、プロピル基及びブチル基からなる群より選択される硫黄化合物を挙げることができる。これらの硫黄化合物は一般に常温で液体又は固体であり、比較的取り扱いが容易な点で好ましい。
これらの化合物は、ガス状で供給すること又は溶媒に溶解させて供給することができる。硫黄の使用量は硫黄化合物中の硫黄元素の原子の数と触媒となる元素の原子の数との比率として100〜0.001、好ましくは10〜0.01、更に好ましくは2〜0.1であることが望ましい。供給する硫黄の量が多すぎると、経済的でないばかりか、炭素繊維の成長を妨げる原因となるため好ましくない。供給する硫黄の量が多すぎることは、得られる炭素繊維における硫黄濃度に関しても好ましくないことがある。また、供給する硫黄の量が少なすぎても添加効果が十分でなく、好ましくない。
(炭素源)
炭素源として使用できる化合物は、炭素原子を含有しているものであれば特に制限は無い。有用性の高い炭素化合物の一例を挙げると、一酸化炭素、二酸化炭素等の無機ガス、メタン、エタン、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン等のアルカン類;エチレン、プロピレン、ブテン、ブタジエン等のアルケン類;アセチレン等のアルキン類;ベンゼン、トルエン、キシレン、スチレン等の単環式芳香族炭化水素;インデン、ナフタリン、アントラセン、フェナントレン等の縮合環を有する多環式化合物;シクロプロパン、シクロペンタン、シクロヘキサン等のシクロパラフィン類;シクロペンテン、シクロヘキセン、シクロペンタジエン、ジシクロペンタジエン等のシクロオレフィン類;ステロイド等の縮合環を有する脂環式炭化水素化合物などが挙げられる。これらは条件を満たすものであれば、硫黄化合物または触媒前駆体化合物のための溶媒としても使用することが可能である。
炭素源として使用できる化合物は、炭素原子を含有しているものであれば特に制限は無い。有用性の高い炭素化合物の一例を挙げると、一酸化炭素、二酸化炭素等の無機ガス、メタン、エタン、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン等のアルカン類;エチレン、プロピレン、ブテン、ブタジエン等のアルケン類;アセチレン等のアルキン類;ベンゼン、トルエン、キシレン、スチレン等の単環式芳香族炭化水素;インデン、ナフタリン、アントラセン、フェナントレン等の縮合環を有する多環式化合物;シクロプロパン、シクロペンタン、シクロヘキサン等のシクロパラフィン類;シクロペンテン、シクロヘキセン、シクロペンタジエン、ジシクロペンタジエン等のシクロオレフィン類;ステロイド等の縮合環を有する脂環式炭化水素化合物などが挙げられる。これらは条件を満たすものであれば、硫黄化合物または触媒前駆体化合物のための溶媒としても使用することが可能である。
更に、これらの炭素源に酸素、窒素、硫黄、リン、ハロゲン等が含まれた化合物も使用することができる。これらの混合物を用いることももちろん可能である。特に、ここで例示した含硫黄化合物は炭素源であると同時に後述の硫黄源としても作用する。
炭素繊維生成能、コストの点から更に好ましい炭素源として、一酸化炭素、二酸化炭素、メタン、エタン、プロパン、ブタン、ヘプタン、ヘキサン、シクロヘキサン、エチレン、プロピレン、ブテン、ブタジエン、アセチレン、ベンゼン、トルエン、キシレンおよびこれらの混合物が挙げられる。特に好ましい炭素源としてはメタンを挙げることができる。
炭素源としてメタンを用いる場合、供給原料中のメタン濃度は、15mol%以上100mol%未満が好ましく、30mol%〜95mol%がより好ましく、45mol%〜90mol%がさらに好ましい。原料中のメタン濃度が低すぎると、炭素繊維の生産性が低くなる。メタン濃度が高いと、非繊維状の生成物が生じることがある。ここで言う供給原料とは、炭素源と触媒および/または触媒前駆体化合物にさらに後述するキャリアーガス等を含めた組成物のことであり、加熱帯域に供給する全ての成分を含む。
同時に使用するメタン以外の炭素源は、使用量が多いとメタンの特性を阻害するので、多すぎるのは好ましくない。メタン以外の炭素源は、それらの含有する炭素原子の総量が、メタンの含有する炭素原子の総量の好ましくは60%以下、より好ましくは40%以下、更により好ましくは20%以下、また更により好ましくは10%以下、最も好ましくは5%以下になる量で用いる。メタン以外の炭素源の使用量が過剰であると、非繊維状の固形物の生成量が急激に増加する。ただし、この場合には一酸化炭素および二酸化炭素は、それら以外の炭素源とは異なる挙動を示すので、炭素源には含めない。
(触媒)
本発明における触媒は、炭素繊維の成長を促進する物質である限り、特に制限されない。この触媒としては、例えば、IUPACが1990年に勧告した18族型元素周期表でいう3〜12族からなる群から選ばれる少なくとも1種の金属、特にそれらの微粒子が挙げられる。更には3、5、6、8、9、10族からなる群から選ばれる少なくとも1種の金属が好ましく、鉄、ニッケル、コバルト、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、白金および希土類元素が特に好ましい。
本発明における触媒は、炭素繊維の成長を促進する物質である限り、特に制限されない。この触媒としては、例えば、IUPACが1990年に勧告した18族型元素周期表でいう3〜12族からなる群から選ばれる少なくとも1種の金属、特にそれらの微粒子が挙げられる。更には3、5、6、8、9、10族からなる群から選ばれる少なくとも1種の金属が好ましく、鉄、ニッケル、コバルト、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、白金および希土類元素が特に好ましい。
(触媒前駆体化合物)
「触媒前駆体化合物」は、加熱することにより熱分解し、場合によっては更に還元されて、上記触媒を与える化合物を意味する。触媒前駆体化合物としては、有機金属化合物、金属塩等が挙げられる。例えば、触媒前駆体化合物であるフェロセンは加熱することにより熱分解し、触媒である鉄微粒子を生成する。よって、触媒前駆体化合物としては上記のような金属を与える化合物が好適に使用可能である。より具体的には例えば、触媒前駆体化合物として、3〜12族からなる群から選ばれる少なくとも1種の元素を含む金属化合物、更には3、5、6、8、9、10族からなる群から選ばれる少なくとも1種の元素を含む化合物が好ましく、鉄、ニッケル、コバルト、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、白金および希土類元素を含む化合物が最も好ましい。
「触媒前駆体化合物」は、加熱することにより熱分解し、場合によっては更に還元されて、上記触媒を与える化合物を意味する。触媒前駆体化合物としては、有機金属化合物、金属塩等が挙げられる。例えば、触媒前駆体化合物であるフェロセンは加熱することにより熱分解し、触媒である鉄微粒子を生成する。よって、触媒前駆体化合物としては上記のような金属を与える化合物が好適に使用可能である。より具体的には例えば、触媒前駆体化合物として、3〜12族からなる群から選ばれる少なくとも1種の元素を含む金属化合物、更には3、5、6、8、9、10族からなる群から選ばれる少なくとも1種の元素を含む化合物が好ましく、鉄、ニッケル、コバルト、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、白金および希土類元素を含む化合物が最も好ましい。
また、これら主成分に1〜17族からなる群から選ばれる少なくとも1種の元素を含む金属化合物を触媒の修飾成分(いわゆる助触媒)として加えて、主成分である金属の触媒性能を修飾することも可能である。
(担体)
上記した触媒および/または触媒前駆体化合物を、必要に応じて担体に担持して用いることも可能である。これらの担体としては、加熱帯域で安定な化合物が好ましく、これらの化合物の一例として、アルミナ、シリカ、ゼオライト、マグネシア、チタニア、ジルコニア、グラファイト、活性炭、炭素繊維などが挙げられる。ただし、これらは反応炉内にあらかじめ仕込んでおくのではなく、加熱された炉内に炭素源などと共に導入することが好ましい。
上記した触媒および/または触媒前駆体化合物を、必要に応じて担体に担持して用いることも可能である。これらの担体としては、加熱帯域で安定な化合物が好ましく、これらの化合物の一例として、アルミナ、シリカ、ゼオライト、マグネシア、チタニア、ジルコニア、グラファイト、活性炭、炭素繊維などが挙げられる。ただし、これらは反応炉内にあらかじめ仕込んでおくのではなく、加熱された炉内に炭素源などと共に導入することが好ましい。
(触媒等の使用量)
触媒または触媒前駆体化合物の使用量は、触媒となる元素(例えばFe)の原子の数と炭素源中の炭素原子の数との比率として、0.000005〜0.0015が好ましく、0.00001〜0.001がより好ましく、0.00002〜0.0005が更に好ましく、0.00004〜0.0004が最適である。0.000005より少ないと、触媒が不足して繊維数が減少したり、繊維径が増大することがある。またこの比が0.0015より大きいと、経済的でないばかりか、触媒として機能しない粗大化した触媒粒子が繊維に混在することがある。原料中の炭素源の炭素原子の総数は、触媒前駆体化合物が炭素を含有していれば、その炭素原子も含まれ、すなわち供給原料中の一酸化炭素および二酸化炭素の含有する炭素を除く全ての炭素原子の総量である。
触媒または触媒前駆体化合物の使用量は、触媒となる元素(例えばFe)の原子の数と炭素源中の炭素原子の数との比率として、0.000005〜0.0015が好ましく、0.00001〜0.001がより好ましく、0.00002〜0.0005が更に好ましく、0.00004〜0.0004が最適である。0.000005より少ないと、触媒が不足して繊維数が減少したり、繊維径が増大することがある。またこの比が0.0015より大きいと、経済的でないばかりか、触媒として機能しない粗大化した触媒粒子が繊維に混在することがある。原料中の炭素源の炭素原子の総数は、触媒前駆体化合物が炭素を含有していれば、その炭素原子も含まれ、すなわち供給原料中の一酸化炭素および二酸化炭素の含有する炭素を除く全ての炭素原子の総量である。
(原料の供給方法)
原料の供給方法は、特に制限されない。炭素源、触媒および/または触媒前駆体化合物を溶解または懸濁した溶媒は、気化してからガス状で供給してもよく、それらの一部または全てを液状で供給してもよい。推奨される供給方法としては、炭素繊維生成を効率よく行うために、炭素繊維の生成が開始する前にこれら原料を気化してから供給する方法であり、その溶液または懸濁液を気化したガスと炭素源を十分混合した後、供給することが特に好ましい。
原料の供給方法は、特に制限されない。炭素源、触媒および/または触媒前駆体化合物を溶解または懸濁した溶媒は、気化してからガス状で供給してもよく、それらの一部または全てを液状で供給してもよい。推奨される供給方法としては、炭素繊維生成を効率よく行うために、炭素繊維の生成が開始する前にこれら原料を気化してから供給する方法であり、その溶液または懸濁液を気化したガスと炭素源を十分混合した後、供給することが特に好ましい。
(キャリアーガス)
本発明の気相法炭素繊維の製造においてはこれら組成物に加えて、キャリアーガスを使用することが推奨さる。キャリアーガスとしては水素、窒素、ヘリウム、アルゴン、クリプトン、またはこれらの混合ガスを用いることができる。しかし、空気等の酸素分子(すなわち、分子状態の酸素:O2 )を含有するガスは適さない。本発明で用いる触媒前駆体化合物は酸化状態にある場合があり、こうした場合にはキャリアーガスとして水素を含有するガスを用いることが好ましい。したがって、好ましいキャリアーガスは、水素を1vol%以上、更には30vol%以上、最も好ましくは85vol%以上含んだガスであり、例えば100vol%水素や水素を窒素で希釈したガスである。ここに示した水素ガス濃度は、炭素源やガス化した触媒および/または触媒前駆体化合物などは含まず、キャリアーガスのみを考慮したときの濃度である。
本発明の気相法炭素繊維の製造においてはこれら組成物に加えて、キャリアーガスを使用することが推奨さる。キャリアーガスとしては水素、窒素、ヘリウム、アルゴン、クリプトン、またはこれらの混合ガスを用いることができる。しかし、空気等の酸素分子(すなわち、分子状態の酸素:O2 )を含有するガスは適さない。本発明で用いる触媒前駆体化合物は酸化状態にある場合があり、こうした場合にはキャリアーガスとして水素を含有するガスを用いることが好ましい。したがって、好ましいキャリアーガスは、水素を1vol%以上、更には30vol%以上、最も好ましくは85vol%以上含んだガスであり、例えば100vol%水素や水素を窒素で希釈したガスである。ここに示した水素ガス濃度は、炭素源やガス化した触媒および/または触媒前駆体化合物などは含まず、キャリアーガスのみを考慮したときの濃度である。
(炭素繊維の合成)
気相法炭素繊維の合成は、これまで説明した原料および必要に応じてキャリアーガスを加熱帯域に供給して、加熱下で接触させることにより達成される。反応器(加熱帯域)としては、所定の滞留時間、加熱温度が得られるものであれば特に限定されないが、縦型あるいは横型の管状炉が、原料供給、滞留時間制御の面で好ましい。
気相法炭素繊維の合成は、これまで説明した原料および必要に応じてキャリアーガスを加熱帯域に供給して、加熱下で接触させることにより達成される。反応器(加熱帯域)としては、所定の滞留時間、加熱温度が得られるものであれば特に限定されないが、縦型あるいは横型の管状炉が、原料供給、滞留時間制御の面で好ましい。
加熱帯域の温度が低すぎると炭素繊維ばかりでなく、固体の生成物が全く生成しないか、生成する量が極端に少なくなる。また、加熱帯域の温度が高すぎると、炭素繊維が成長しなかったり、あるいは太い繊維しか得られなかったりする。そこで、特に炭素源としてメタンを用いる場合、加熱帯域の高温部分の温度は1100℃以上1500℃以下であることが望ましく、更に望ましくは1150℃以上1350℃以下である。
炭素源として主としてメタンを用いる場合、反応後のガス中の炭素化合物はメタンが主成分であり、メタンは炭素源となりうる化合物である。そこで、この反応後のガスはその全てまたは一部をそのまま、または炭素源および/またはキャリアーガス等を追加して、再び過熱帯域へ供給することにより、循環、再使用できる。
反応装置の一例を示すと、図2のようになる。ここでは、加熱帯域として機能する石英製反応管1は、ヒーター2を備え、上部にキャリアーガス、メタン等の原料成分、ならびに触媒および/または触媒前駆体化合物を含有する原料液成分を混合して供給する供給ラインを有する。この供給ラインには、気化器4が配置されている。また、反応管1の下部には、生成した炭素繊維を捕集する受け器3がある。このような装置を用い、ヒーター2を1100℃以上の所定温度にし、導入ライン4から原料を導入して反応させる。
原料をいきなり高温部へ導入すると炭素源が急激に分解し、炭素繊維生成に寄与する前に非繊維状の固形分に変化してしまう。それを避けるには、反応管、すなわち加熱帯域への原料導入部の温度は、加熱帯域の高温部分よりも低温に保持する必要がある。特に炭素源としてメタンを用いる場合、この原料導入部の温度としては、700℃以下が好ましく、600℃以下がより好ましく、400℃以下がさらに好ましい。原料を低温域に導入することにより、1000℃以下での滞留時間をある程度保持することが必要である。特に600℃〜1000℃での滞留時間が重要であり、その温度範囲に0.05秒以上、特に0.5秒以上、より特に1.0秒〜30秒間にわたって滞留するようにすることが望ましい。特に炭素原としてメタンのようなベンゼン環又は共役環を有さない炭化水素を用いる場合、この低温領域での反応が重要であり、本発明の方法でのように比較的分解しやすい硫黄化合物を用いることによって、このような比較的低温の反応領域における反応を促進することができる。
このような領域における実際のガス温度を測定することは困難である。したがって、ここで示す温度は例えば1000℃以上の温度も測定可能な白金−白金・13%ロジウム合金熱電対を加熱帯域に挿入し、示される値である。この測定値は正しくは輻射の影響を受け、ガス温度とは必ずしも一致しないが、本発明の望ましい条件を規定するには十分な指標と成りえる。
600℃〜1000℃の温度範囲での滞留時間は、反応装置入り口側において上記のようにして測定された温度が600℃から1000℃に上昇するまでの領域を、原料ガスが通過する時間である。ここでは、この領域において原料ガスが押出流れ(プラグフロー)であり、上記のようにして測定された温度に原料ガスが昇温されていると仮定して、滞留時間を算出する。また、加熱帯域上流端の温度または加熱帯域に比べて例えば5分の1よりも細い内径を持つ配管で加熱帯域に挿入されたノズル等の噴出部の温度が600℃を超えている場合には、滞留時間は加熱帯域上流端またはノズル等の噴出部から1000℃に上昇するまでの領域での滞留時間である。ここでは、この領域において原料ガスが押出流れであり、上記のようにして測定された温度に原料ガスが昇温されていると仮定して、滞留時間を算出する。
また1100℃以上の温度における滞留時間は、600℃〜1000℃の温度範囲での滞留時間と同様にして求めることができる。特に炭素源としてメタンを用いる場合、この1100℃以上の温度における滞留時間は、例えば0.001秒以上、特に0.01秒以上、より特に0.1〜30秒である。ただしこの1100℃以上の温度における滞留時間は、所望とされる繊維太さ、原料濃度、高温部分の温度等に依存して任意に決定することができる。
(炭素繊維の形状等)
炭素源としてメタンを用いる場合、本発明で製造する炭素繊維は、1100℃以上の高温を用いることにより、太い繊維となる。したがって、シングルウォールやデュアルウォールといった非常に外径の小さな炭素繊維の製造によりも、比較的太い繊維の製法に非常に適している。すなわち、繊維の平均外径が10nm以上、さらには50nm以上、80nm以上、最も好ましくは100nm以上の炭素繊維の製造方法として最適である。ここで言う炭素繊維の外径は例えば、SEMの写真から100本程度の繊維の外径を測定することによって求めることができる。
炭素源としてメタンを用いる場合、本発明で製造する炭素繊維は、1100℃以上の高温を用いることにより、太い繊維となる。したがって、シングルウォールやデュアルウォールといった非常に外径の小さな炭素繊維の製造によりも、比較的太い繊維の製法に非常に適している。すなわち、繊維の平均外径が10nm以上、さらには50nm以上、80nm以上、最も好ましくは100nm以上の炭素繊維の製造方法として最適である。ここで言う炭素繊維の外径は例えば、SEMの写真から100本程度の繊維の外径を測定することによって求めることができる。
さらに本発明の特徴は、生産性の高い製造法でありながら、繊維長の長い炭素繊維を製造できることである。すなわち、繊維長の平均が10μm以上、さらには13μm以上、最も好ましくは15μm以上の炭素繊維の製造方法として最適である。ここで言う炭素繊維の長さは例えば外径同様にSEMの写真から100本程度の繊維の外径を測定することによって求めることができる。
本発明によれば、触媒もしくは触媒前駆体の利用効率を著しく向上することができる。すなわち、少ない触媒量でも効率よく炭素繊維を得ることができる。通常の方法で製造された炭素繊維には一般に、50000質量ppm程度の触媒(鉄など)が残留している。したがって製造された炭素繊維は物性の向上のため、焼成(1500℃前後)や不活性ガス下での黒鉛化処理(2000〜3000℃)がなされる。この処理によって、触媒である鉄などの一部が気化、蒸散するため、黒鉛化処理後の炭素繊維では触媒残量は減少する。一方、本発明の製造方法によれば、炭素繊維中に含まれる触媒の含有量を、焼成、黒鉛化等の処理をしない状態でも極端に少なくできる。例えば焼成、黒鉛化等の処理がなされない状態で、触媒の含有量が5000ppm以下、好ましい条件下では500ppm以下の炭素繊維を得ることができ、用途によっては黒鉛化処理が不要となる。
また、本発明の方法では、炭素源、例えばメタンに対する触媒および/または触媒前駆体化合物の比率を変えることによって、得られる繊維の平均外径が変化する傾向が認められる。つまり、触媒および/または触媒前駆体化合物の比率を増やすと繊維径は小さくなり、逆に比率を減らすと繊維径が大きくなる。このことは反応装置や条件を細かく変更することなく、単に原料の炭素源と触媒の組成を変えるだけで、得られる炭素繊維の平均外径を制御できることを示している。例えば繊維外径が80〜150nmの範囲の炭素繊維を、非常に簡単に製造することが可能となる。
以下、実施例をあげて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
以下の実施例及び比較例で使用した試薬等は、次の通りである。
〔試薬類〕
1.炭素源
メタン:高千穂商事(株)
ベンゼン:和光純薬工業(株)
2.触媒前駆体化合物
フェロセン:日本ゼオン(株)
3.その他成分
ジメチルスルフィド:和光純薬工業(株)
ジメチルジスルフィド:和光純薬工業(株)
ジエチルスルフィド:和光純薬工業(株)
チオフェン:和光純薬工業(株)
二硫化炭素:和光純薬工業(株)
〔試薬類〕
1.炭素源
メタン:高千穂商事(株)
ベンゼン:和光純薬工業(株)
2.触媒前駆体化合物
フェロセン:日本ゼオン(株)
3.その他成分
ジメチルスルフィド:和光純薬工業(株)
ジメチルジスルフィド:和光純薬工業(株)
ジエチルスルフィド:和光純薬工業(株)
チオフェン:和光純薬工業(株)
二硫化炭素:和光純薬工業(株)
〔炭素繊維の合成〕
<実施例1>
図2に示した石英製反応管の加熱帯域1(内径31mm、外径36mm、加熱帯域の長さ約400mm)を備えた縦型炉にて、N2気流中で加熱帯域1を1200℃に昇温し、その後、N2の供給を絶ち、代わって、加熱帯域1内に1NL/minでキャリアーガスとしてH2を流した。温度が安定した後に、ベンゼン、フェロセンおよびジメチルスルフィドを溶解混合し、その液を小型ポンプを用いて、それぞれの成分が表1に示した導入量になるようにして、200℃に加熱された気化器4に導入・気化し、H2に同伴させた。この状態では、固体の生成物は生成しなかった。その後、H2の流量を0.5NL/minに下げ、メタンを0.5NL/minの流量で水素に混合した。このようにして、全ての化合物をガス状で反応管内に供給した。ここで単位「NL」は、標準状態(0℃、1気圧)での体積(リットル)を示している。
<実施例1>
図2に示した石英製反応管の加熱帯域1(内径31mm、外径36mm、加熱帯域の長さ約400mm)を備えた縦型炉にて、N2気流中で加熱帯域1を1200℃に昇温し、その後、N2の供給を絶ち、代わって、加熱帯域1内に1NL/minでキャリアーガスとしてH2を流した。温度が安定した後に、ベンゼン、フェロセンおよびジメチルスルフィドを溶解混合し、その液を小型ポンプを用いて、それぞれの成分が表1に示した導入量になるようにして、200℃に加熱された気化器4に導入・気化し、H2に同伴させた。この状態では、固体の生成物は生成しなかった。その後、H2の流量を0.5NL/minに下げ、メタンを0.5NL/minの流量で水素に混合した。このようにして、全ての化合物をガス状で反応管内に供給した。ここで単位「NL」は、標準状態(0℃、1気圧)での体積(リットル)を示している。
滞留時間を求めるために1NL/minのHe気流中で1200℃に昇温し、温度が安定したところで、白金−白金・13%ロジウム合金熱電対を用いて石英管の内部温度を測定した。その結果、石英管上端から24cmのところが600℃であり29cmのところが1000℃であった。その間の滞留時間を求めたところ、0.59秒であった。また、石英管上端から33cmのところで1100℃を超え、60cmのところで1100℃を下回った。その間の滞留時間を求めたところ、2.25秒であった。
反応の結果、反応管底部から捕集器3の間に、灰色を帯びた蜘蛛の巣状の堆積物が生成した。降温後、この堆積物を回収し、回収量を当初使用した炭素源に含まれる炭素量で除して炭素回収率を求めたところ、44%であった。実験の条件および結果を表1に示す。
尚、表1のメタンの濃度(mol%)は、以下の式より求めた:
メタンの濃度(mol%)=[メタンの導入量(mmol/min)]÷[供給原料の導入量(mmol/min)]×100
供給原料の導入量(mmol/min)=メタンの導入量(mmol/min)+キャリアーガスの導入量(mmol/min)+メタン以外の炭素源の導入量(mmol/min)+フェロセンの導入量(mmol/min)+硫黄化合物の導入量(mmol/min)
メタンの濃度(mol%)=[メタンの導入量(mmol/min)]÷[供給原料の導入量(mmol/min)]×100
供給原料の導入量(mmol/min)=メタンの導入量(mmol/min)+キャリアーガスの導入量(mmol/min)+メタン以外の炭素源の導入量(mmol/min)+フェロセンの導入量(mmol/min)+硫黄化合物の導入量(mmol/min)
また実験の条件に関して、供給原料中の硫黄元素の原子数と触媒となる原子の数との比率(原子比)を以下の式から求め、表2に示した:
供給原料中の硫黄元素の原子数と触媒となる原子の数との比率(原子比)=
[硫黄化合物中の硫黄原子数(mmol/min]/[フェロセン中の鉄原子数(mmol/min)]
供給原料中の硫黄元素の原子数と触媒となる原子の数との比率(原子比)=
[硫黄化合物中の硫黄原子数(mmol/min]/[フェロセン中の鉄原子数(mmol/min)]
さらに、供給原料中のメタンに含まれる炭素原子の総量に対する供給原料中のメタン以外の炭素源に含まれる炭素原子の総量の比率(%)を以下の式から求め、表2に示した:
供給原料中のメタンに含まれる炭素原子の総量に対する供給原料中のメタン以外の炭素源に含まれる炭素原子の総量の比率(%)=
[キャリアーガス中の炭素原子数(mmol/min)+メタン以外の炭素源中の炭素原子数(mmol/min)+フェロセン中の炭素原子数(mmol/min)+硫黄化合物中の炭素数(mmol/min)]÷[メタン中の炭素原子数(mmol/min)]×100
供給原料中のメタンに含まれる炭素原子の総量に対する供給原料中のメタン以外の炭素源に含まれる炭素原子の総量の比率(%)=
[キャリアーガス中の炭素原子数(mmol/min)+メタン以外の炭素源中の炭素原子数(mmol/min)+フェロセン中の炭素原子数(mmol/min)+硫黄化合物中の炭素数(mmol/min)]÷[メタン中の炭素原子数(mmol/min)]×100
供給原料中の触媒となる元素の原子数と、全ての炭素原子の数との比率(原子比)を以下の式から求め、表2に示した:
供給原料中の触媒となる元素の原子数と、全ての炭素原子の数との比率(原子比)= [フェロセン中の鉄原子数(mmol/min)]/[キャリアーガス中の炭素原子数(mmol/min)+メタン中の炭素原子数(mmol/min)+メタン以外の炭素源中の炭素原子数(mmol/min)+フェロセン中の炭素原子数(mmol/min)+硫黄化合物中の炭素数(mmol/min)]
供給原料中の触媒となる元素の原子数と、全ての炭素原子の数との比率(原子比)= [フェロセン中の鉄原子数(mmol/min)]/[キャリアーガス中の炭素原子数(mmol/min)+メタン中の炭素原子数(mmol/min)+メタン以外の炭素源中の炭素原子数(mmol/min)+フェロセン中の炭素原子数(mmol/min)+硫黄化合物中の炭素数(mmol/min)]
また、走査型電子顕微鏡で蜘蛛の巣状の生成物を観察したところ、生成物はほとんど球状物の見られない繊維状物であった。繊維状物の中で、100本程度の平均外径と平均の長さを調べると、それぞれ250nm、32μmであった。
<実施例2>
ジメチルスルフィドの代わりにジメチルジスルフィドを用いたこと以外は実施例1の方法にしたがって反応を行った。実験の条件および結果を表1に示す。炭素回収率は45%であり、生成物は、ほとんど球状物の見られない繊維状物であった。繊維状物の平均外径および平均の長さがそれぞれ200nmおよび18μmの繊維状物であった。
ジメチルスルフィドの代わりにジメチルジスルフィドを用いたこと以外は実施例1の方法にしたがって反応を行った。実験の条件および結果を表1に示す。炭素回収率は45%であり、生成物は、ほとんど球状物の見られない繊維状物であった。繊維状物の平均外径および平均の長さがそれぞれ200nmおよび18μmの繊維状物であった。
<実施例3>
ジメチルスルフィドの代わりにジエチルスルフィドを用いたこと以外は実施例1の方法にしたがって反応を行った。実験の条件および結果を表1に示す。炭素回収率は44%であり、生成物は、ほとんど球状物の見られない繊維状物であった。繊維状物の平均外径はそれぞれ250nmであった。
ジメチルスルフィドの代わりにジエチルスルフィドを用いたこと以外は実施例1の方法にしたがって反応を行った。実験の条件および結果を表1に示す。炭素回収率は44%であり、生成物は、ほとんど球状物の見られない繊維状物であった。繊維状物の平均外径はそれぞれ250nmであった。
<比較例1>
ジメチルスルフィドの代わりにチオフェンを用いたこと以外は実施例1の方法にしたがって反応を行った。実験の条件および結果を表1に示す。炭素回収率は38%であり、生成物は、繊維状物と球状物の混合物であった。繊維状物の平均外径および平均の長さはそれぞれ170nmおよび15μmであった。
ジメチルスルフィドの代わりにチオフェンを用いたこと以外は実施例1の方法にしたがって反応を行った。実験の条件および結果を表1に示す。炭素回収率は38%であり、生成物は、繊維状物と球状物の混合物であった。繊維状物の平均外径および平均の長さはそれぞれ170nmおよび15μmであった。
<比較例2>
ジメチルスルフィドの代わりに二硫化炭素を用いたこと以外は実施例1の方法にしたがって反応を行った。実験の条件および結果を表1に示す。炭素回収率は39%であり、生成物は、多くは繊維状物であったが少量の球状物も一緒に観測された。繊維状物の平均外径は250nmであった。
ジメチルスルフィドの代わりに二硫化炭素を用いたこと以外は実施例1の方法にしたがって反応を行った。実験の条件および結果を表1に示す。炭素回収率は39%であり、生成物は、多くは繊維状物であったが少量の球状物も一緒に観測された。繊維状物の平均外径は250nmであった。
1 石英製反応管
2 ヒーター
3 捕集器
4 気化器
2 ヒーター
3 捕集器
4 気化器
Claims (20)
- 炭素源と触媒および/または触媒前駆体化合物とを少なくとも含む原料を加熱帯域に導入することによって、気相で炭素繊維を製造する、気相法炭素繊維の製造方法であって、
前記原料がさらに、下記の式を有する硫黄化合物を含むことを特徴とする、気相法炭素繊維の製造方法:
R1−Sn−R2
(nは、1〜5の整数であり、且つR1及びR2はそれぞれ独立に、水素、並びに炭素原子数1〜10の脂肪族炭化水素基及び芳香族炭化水素基からなる群より選択される炭化水素炭化水素化合物である)。 - 前記硫黄化合物が、硫化水素、ジメチルスルフィド、メチルエチルスルフィド、ジエチルスルフィド、ジメチルジスルフィド、メチルエチルジスルフィド及びジエチルジスルフィドからなる群より選択される少なくとも一種の硫黄化合物を含むことを特徴とする、請求項1に記載の気相法炭素繊維の製造方法。
- 前記硫黄化合物がジメチルスルフィドである、請求項2に記載の気相法炭素繊維の製造方法。
- nが2又は3である、請求項1又は2に記載の方法。
- R1及びR2がそれぞれ独立に、メチル基、エチル基、プロピル基及びブチル基からなる群より選択される、請求項1、2又は4に記載の方法。
- 前記原料中のイオウ元素の原子数と、前記原料中の触媒となる原子の数との比率が、
(イオウ元素の原子数)/(触媒となる元素の原子数)
=100〜0.001
である、請求項1〜5のいずれかに記載の気相法炭素繊維の製造方法。 - 前記炭素源が、一酸化炭素、二酸化炭素、メタン、エタン、プロパン、ブタン、ヘプタン、ヘキサン、シクロヘキサン、エチレン、プロピレン、ブテン、ブタジエン、アセチレン、ベンゼン、トルエン、キシレンからなる郡より選ばれる少なくとも一種の化合物である、請求項1〜6のいずれかに記載の気相法炭素繊維の製造方法。
- 前記炭素源が少なくともメタンを含む、請求項1〜7のいずれかに記載の気相法炭素繊維の製造方法。
- 前記原料中のメタン濃度が、15mol%以上100mol%未満であり、且つ前記加熱帯域の高温部分の温度が1100℃〜1500℃である、請求項8に記載の気相法炭素繊維の製造方法。
- 前記加熱帯域の導入部の温度が700℃以下である、請求項1〜9のいずれかに記載の気相法炭素繊維の製造方法。
- 前記加熱帯域の高温部分に達する前に、600℃〜1000℃の温度の前記加熱帯域の低温部分に0.05秒間以上にわたって滞留する、請求項1〜10のいずれかに記載の気相法炭素繊維の製造方法。
- 前記加熱帯域において、1100℃以上の温度での滞留時間が0.001秒以上である、請求項1〜11のいずれかに記載の気相法炭素繊維の製造方法。
- 前記原料中のメタン以外の炭素源に含まれる炭素原子の総量が、メタンに含まれる炭素原子の総量の60%以下である、請求項1〜12のいずれかに記載の気相法炭素繊維の製造方法。
- 前記原料中のメタン以外の炭素源に含まれる炭素原子の総量が、メタンに含まれる炭素原子の総量の10%以下である、請求項1〜13のいずれかに記載の気相法炭素繊維の製造方法。
- 前記原料中の触媒となる元素の原子数と、前記原料中の全ての炭素原子の数との比率が、
(触媒となる元素の原子数)/(全ての炭素原子の数)
=0.000005〜0.0015
である、請求項1〜14のいずれかに記載の気相法炭素繊維の製造方法。 - 反応後のガスの全てまたは一部を循環し、再使用する、請求項1〜15のいずれかに記載の気相法炭素繊維の製造方法。
- 平均繊維径が10nm以上である炭素繊維を製造する、請求項1〜16のいずれかに記載の気相法炭素繊維の製造方法。
- 請求項1〜17のいずれかに記載の気相法炭素繊維の製造方法により製造された気相法炭素繊維。
- 平均繊維長が10μm以上である、請求項18に記載の気相法炭素繊維。
- 平均繊維長が13μm以上である、請求項19に記載の気相法炭素繊維。
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-
2005
- 2005-12-22 JP JP2005370261A patent/JP2007169838A/ja active Pending
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