JP2004043922A - 冷却能に優れた熱交換体鋳物 - Google Patents
冷却能に優れた熱交換体鋳物 Download PDFInfo
- Publication number
- JP2004043922A JP2004043922A JP2002205306A JP2002205306A JP2004043922A JP 2004043922 A JP2004043922 A JP 2004043922A JP 2002205306 A JP2002205306 A JP 2002205306A JP 2002205306 A JP2002205306 A JP 2002205306A JP 2004043922 A JP2004043922 A JP 2004043922A
- Authority
- JP
- Japan
- Prior art keywords
- coating layer
- casting
- resistance
- pores
- cooling pipe
- Prior art date
- Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
- Pending
Links
Images
Classifications
-
- F—MECHANICAL ENGINEERING; LIGHTING; HEATING; WEAPONS; BLASTING
- F28—HEAT EXCHANGE IN GENERAL
- F28F—DETAILS OF HEAT-EXCHANGE AND HEAT-TRANSFER APPARATUS, OF GENERAL APPLICATION
- F28F21/00—Constructions of heat-exchange apparatus characterised by the selection of particular materials
- F28F21/08—Constructions of heat-exchange apparatus characterised by the selection of particular materials of metal
- F28F21/089—Coatings, claddings or bonding layers made from metals or metal alloys
-
- F—MECHANICAL ENGINEERING; LIGHTING; HEATING; WEAPONS; BLASTING
- F28—HEAT EXCHANGE IN GENERAL
- F28F—DETAILS OF HEAT-EXCHANGE AND HEAT-TRANSFER APPARATUS, OF GENERAL APPLICATION
- F28F21/00—Constructions of heat-exchange apparatus characterised by the selection of particular materials
- F28F21/08—Constructions of heat-exchange apparatus characterised by the selection of particular materials of metal
- F28F21/081—Heat exchange elements made from metals or metal alloys
- F28F21/087—Heat exchange elements made from metals or metal alloys from nickel or nickel alloys
Landscapes
- Engineering & Computer Science (AREA)
- Physics & Mathematics (AREA)
- Thermal Sciences (AREA)
- Mechanical Engineering (AREA)
- General Engineering & Computer Science (AREA)
- Blast Furnaces (AREA)
- Coating By Spraying Or Casting (AREA)
- Furnace Housings, Linings, Walls, And Ceilings (AREA)
Abstract
【課題】優れた耐酸化性、耐硫化腐食性、 耐浸炭性および表面亀裂抵抗性を同時に具備する冷却管を鋳包み、冷却能に優れ、かつ鋳物表面に発生した亀裂が冷却管に伝播しない熱交換体鋳物を提供する。
【解決手段】気孔を含み、質量%で、Cr:10〜30%、Ni:10〜50%を含み、さらにAl:20%以下およびY:2%以下のうちの少なくとも1種を含有し、残部がCoおよび不可避的不純物からなる組成を有する合金からなり、かつ表面および気孔の一部または全部が酸化クロムにより被覆かつ充填されてなる被覆層を外表面に備えた冷却管を鋳包む。被覆層の気孔率は、5〜25%とすることが好ましい。
【選択図】 図1
【解決手段】気孔を含み、質量%で、Cr:10〜30%、Ni:10〜50%を含み、さらにAl:20%以下およびY:2%以下のうちの少なくとも1種を含有し、残部がCoおよび不可避的不純物からなる組成を有する合金からなり、かつ表面および気孔の一部または全部が酸化クロムにより被覆かつ充填されてなる被覆層を外表面に備えた冷却管を鋳包む。被覆層の気孔率は、5〜25%とすることが好ましい。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、高炉用ステーブクーラー等に好適な熱交換体鋳物に関する。
【0002】
【従来の技術】
高炉の炉壁内面には、炉体の冷却用として鋳物製ステーブクーラーが設置されている。高炉のステーブクーラーとして利用される鋳物(熱交換体鋳物)は、鋳物母材に冷却媒体の通路となる冷却管を鋳包んで構成されている。高炉のステーブクーラーとして長時間使用されるに伴い、熱交換体鋳物は、熱亀裂、折損、溶損、摩耗等により次第に損耗する。しかし、熱交換体鋳物自体の冷却能が高くなればなるほど熱負荷が緩和されるため、この損耗が軽減される。また、熱交換体鋳物の冷却能が高くなるほど、高炉を安定して操業でき、高炉の炉寿命が長くなる。このようなことから、冷却能を向上させるために、熱交換体鋳物には、冷却管と母材との密着性がよく伝熱性に優れることが要求されている。
【0003】
また、熱交換体鋳物には、使用中に熱疲労や熱衝撃等により、上記したように鋳物母材表面に亀裂が発生する。この鋳物表面に発生した亀裂が進展し、鋳物内部に鋳包まれた冷却管まで伝播すると、水蒸気爆発等の大きな事故に繋がるため、熱交換体鋳物には、鋳物表面に発生した亀裂が冷却管に伝播しないことが要求されている。
【0004】
このような要求に対応する方法として、例えば、特公昭54−44650号公報、特公昭54−41966号公報には、耐火物を冷却管表面に被覆、または炎溶射して鋳包む方法が提案されている。また、特公昭58−49607号公報には、冷却管を二重管として鋳包む方法が提案されている。
しかしながら、特公昭54−44650号公報、特公昭54−41966号公報、特公昭58−49607号公報に記載された技術では、冷却管への亀裂の伝播を防止できるが、冷却管表面に耐火物や空隙が存在するため、冷却管と鋳物母材間の伝熱性が大幅に阻害され、熱交換体鋳物の冷却能が大幅に低下するという問題がある。
【0005】
このような問題に対し、例えば、特公平7−71731 号公報、特公平7−71732 号公報、特公平7−71733 号公報、特公平7−71734 号公報には、外表面に金属被覆層を備えた金属製冷却管を鋳包んでなる熱交換体鋳物が提案されている。特公平7−71731 号公報に記載された技術では、この金属被覆層を、Moと不可避的不純物からなるか、またはNiを50wt%以下を含み残部Moおよび不可避的不純物からなる合金とするとともに、気孔を有し、金属被覆層の表面および気孔の一部または全部が酸化クロムにより被覆かつ充填された被覆層としている。また、特公平7−71732 号公報に記載された技術では、この金属被覆層を、Niと不可避的不純物からなる、あるいはCrを70wt%以下含有し、残部がNiと不可避的不純物からなる合金とする、とともに気孔を有し、金属被覆層の表面および気孔の一部または全部が酸化クロムにより被覆かつ充填された被覆層としている。また、特公平7−71733 号公報に記載された技術では、この金属被覆層を、Crを10〜70wt%含有し、残部がCoと不可避的不純物からなる合金、あるいはCrを10〜70wt%含有し、20wt%以下のAlと2wt %以下のYの少なくとも一種を含有し、残部がCoと不可避的不純物からなる合金とするとともに気孔を有し、金属被覆層の表面および気孔の一部または全部が酸化クロムにより被覆かつ充填された被覆層としている。また、特公平7−71734 号公報に記載された技術では、この金属被覆層を、Niを15〜60wt%含有し、残部がCuと不可避的不純物からなる合金とするとともに気孔を有し、金属被覆層の表面および気孔の一部または全部が酸化クロムにより被覆かつ充填された被覆層としている。
【0006】
【発明の解決しようとする課題】
高炉用ステーブクーラーとして使用される熱交換体鋳物では、使用中に熱疲労、熱衝撃等により鋳物表面で亀裂が発生し、それら亀裂が進展し亀裂同士が交絡することにより鋳物が部分的に脱落したりする場合があり、このとき鋳物内部に鋳包まれている冷却管に曲げ応力が作用し冷却管に亀裂が発生したり、折損したりする事故や、冷却管が炉内雰囲気に直接晒されるという事態が生じる。
【0007】
高炉の炉内雰囲気は、炉内位置や状況の変化により、酸化性、硫化腐食性、浸炭性等の各種雰囲気となる。高炉寿命を一層向上させるために冷却管には、このような雰囲気に直接晒される場合を考慮して、耐酸化性、耐硫化腐食性、耐浸炭性をも具備することが、また、使用中に鋳物が脱落する際に曲げ応力が作用する場合を考慮して、曲げ応力が作用しても冷却管表面に亀裂が生じない、優れた表面亀裂抵抗性を具備することが要望されている。
【0008】
しかしながら、特公平7−71731 号公報、特公平7−71732 号公報、特公平7−71733 号公報、特公平7−71734 号公報に記載された技術では、上記したような特性を同時に満足するまでには至っていない。例えば、特公平7−71731 号公報に記載された熱交換体鋳物に使用された冷却管では、耐酸化性が不足し、特公平7−71732 号公報に記載された冷却管では、耐硫化腐食性が劣り、また、特公平7−71733 号公報に記載された冷却管では、耐酸化性、耐浸炭性が不足しまた表面亀裂抵抗性も不足し、また、特公平7−71734 号公報に記載された冷却管では、耐酸化性が不足し、また鋳物母材にCuが浸入し鋳物母材の熱劣化が増加するという問題がある。
【0009】
本発明は、上記した従来技術の問題を有利に解決し、優れた耐酸化性、耐硫化腐食性、 耐浸炭性および表面亀裂抵抗性を同時に具備する冷却管を有し、冷却能に優れ、かつ鋳物表面に発生した亀裂が冷却管に伝播しない熱交換体鋳物を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記した課題を達成するために、冷却管の外表面に形成する被覆層を合金製とし、その好ましい組成について鋭意検討した。その結果、被覆層を形成する合金を、Niを10〜50質量%、Crを10〜30質量%含有し、さらに20質量%以下のAlと2質量%以下のYのうちの少なくとも1種を含有するCo基合金とすることにより、冷却管の耐酸化性、耐硫化腐食性、耐浸炭性、および表面亀裂抵抗性が顕著に向上することを知見した。
【0011】
まず、本発明の基礎となった実験結果について説明する。
高温配管用炭素鋼管(C:0.12質量%、外径:65mmφ、肉厚:7.3 mm)の外表面にプラズマ溶射法により10質量%Cr−0 〜80質量%Ni−3質量%Al−0.4 質量%Y−残部Co組成の合金を200 μm厚さ被覆し冷却管とした。この被覆層の表面および気孔の一部にクロム酸水溶液をスプレーで塗布し含浸させたのち、大気雰囲気中の550 ℃で2h加熱した。これにより、被覆層表面に酸化クロムの被膜が0.5 μm形成され、気孔の80%以上が酸化クロムで充填された。
【0012】
得られた冷却管から、 試験片を採取し、高炉ガス雰囲気中における耐浸炭性、耐食性、 および表面亀裂抵抗性を調査した。
耐浸炭性、耐食性試験は、高炉ガス雰囲気とし、温度:800 ℃とした腐食試験装置に試験片(寸法:φ75mm×100mm )を装入し、暴露時間:5000h保持したのち、表面から深さ方向にC分析を行い、浸炭深さを求め、 耐浸炭性を評価した。なお、浸炭深さは、C量が0.15%以下となるまでの表面からの深さとした。また、暴露後の試験片について、 腐食減量を求め、耐食性を評価した。
【0013】
表面亀裂抵抗性は曲げ試験で評価した。冷却管から短冊状試験片(10mm幅×150mm 長さ)を採取し、3点曲げ試験を実施し、被覆層に亀裂が発生するまでの曲げ角を測定し、表面亀裂抵抗性を評価した。
得られた結果を、 被覆層中のNi含有量との関係で図1に示す。
図1から、被覆層中のNi含有量を10〜50質量%の範囲(←→の範囲)とすることにより、浸炭深さ、腐食減量が少なくなり、しかも、曲げ角度も大きく、高炉ガス雰囲気での耐浸炭性、および耐食性、 並びに表面亀裂抵抗性がともに優れた冷却管(被膜層)となることがわかった。
【0014】
本発明は、上記した知見に基づき、さらに検討を加えて完成されたものである。すなわち、本発明は、外表面に被覆層を備えた金属製冷却管を鋳包んでなる熱交換体鋳物であって、前記被覆層が、気孔を含み、質量%で、Cr:10〜30%、Ni:10〜50%を含み、さらにAl:20%以下およびY:2%以下のうちの少なくとも1種を含有し、残部がCoおよび不可避的不純物からなる組成を有する合金からなり、かつ前記被覆層の表面および前記気孔の一部または全部が酸化クロムにより被覆かつ充填されてなることを特徴とする冷却能に優れた熱交換体鋳物であり、本発明では、前記被覆層の気孔率が、体積率で5〜25%であることが好ましく、また、本発明では、前記被覆層の厚みが、50〜400 μmであることが好ましい。
【0015】
【発明の実施の形態】
本発明の熱交換体鋳物は、金属製冷却管を内部(鋳物母材)に鋳包んでなる鋳物である。鋳包まれる冷却管は、外表面に被覆層を有する。被覆層は、母材溶湯と冷却管とが直接溶着しないために設けられるが、本発明では冷却管の伝熱性を向上させるために熱伝導性のよい合金を用いる。
【0016】
本発明における被覆層は、質量%で、Cr:10〜30%、Ni:10〜50%を含み、さらにAl:20%以下およびY:2%以下のうちの少なくとも1種を含有し、残部がCoおよび不可避的不純物からなる組成を有するCo基合金を用いて構成される。
Co基合金は、耐熱性に優れ溶湯鋳込み時の熱衝撃に対し抵抗性を有する。本発明では、耐熱性、耐酸化性を向上させるために、Co基合金にCrを10〜30質量%含有する。Cr含有量が10質量%未満では、耐熱性が不十分となり鋳物母材との溶着が発生しやすくなる。一方、Crを30質量%を超えて含有すると、耐熱衝撃性が低下し、鋳込み時に亀裂や剥離を発生しやすくなる。このため、Crは10〜30質量%の範囲に限定した。
【0017】
さらに、本発明は、極めて優れた耐酸化性、耐硫化腐食性、 耐浸炭性並びに曲げ応力発生時の優れた表面亀裂抵抗性を同時に具備する被覆層とするために、被覆層にNiを10〜50質量%含有することを特徴とする。図1に示すように、Niが10質量%未満では、耐浸炭性および表面亀裂抵抗性が低下する。一方、Niを50質量%を超えて含有すると、耐硫化腐食性が低下する。なお、Niが10〜50質量%であれば優れた表面亀裂抵抗性を確保できる。このため、Niは10〜50質量%の範囲に限定した。
【0018】
また、本発明では、被覆層に、Al:20%以下およびY:2%以下のうちの少なくとも1種を含有する。Al、Yはともに、酸化物形成傾向が強く、熱処理時に被覆層表面、あるいは気孔内面に酸化物を形成し、後述する酸化クロムの作用を助長する効果を有している。Alを20質量%を超えて含有すると、上記した効果が飽和するうえ、合金の融点が低下する。このため、Alは20質量%以下に限定した。なお、Alは2〜15質量%とすることが好ましい。また、2質量%を超えてYを含有すると、上記した効果が飽和し、含有量に見合う効果が期待できず、Yが高価な元素であるため経済的に不利となる。このため、Yは2質量%以下に限定した。なお、Yは0.2 〜1.5 質量%とすることが好ましい。
【0019】
上記した成分以外の残部はCoおよび不可避的不純物である。
しかし、被覆層が合金のみでは冷却管と母材 (鋳物)との溶着性がよく母材に生じた亀裂が冷却管へ伝播するのを阻止できない。このため、本発明では被覆層を、気孔を含む上記した組成の合金で構成するとともに、被覆層の表面および気孔の少なくとも一部に酸化クロムを被覆しかつ充填する。
【0020】
酸化クロムは化学的に安定であり溶融母材(溶湯)と濡れにくいことから鋳物母材と被覆層との完全な溶着 (合金化)を防止でき、亀裂の冷却管への伝播を防止できる。酸化クロムの存在により被覆層と鋳物母材とは部分的に軽度な拡散接合部を形成しており、鋳物母材からの亀裂伝播を防止しつつ、冷却管と鋳物母材との十分な伝熱性を維持することができる。さらに、被覆層の気孔には酸化クロムが充填されることにより、気孔の存在による保熱効果を低下でき、被覆層の熱伝導性が向上し、冷却管と鋳物母材との伝熱性を向上できる。また、酸化クロムを充填された気孔は、鋳物母材で発生した亀裂の先端応力を分散、開放する作用を有し、鋳物母材で発生した亀裂が冷却管へ伝播するのを防止できる。
【0021】
なお、被覆層の気孔率は、体積率で5〜25%とすることが好ましい。被覆層の気孔率が5体積%未満では、十分なクラック伝播阻止効果を得ることができない。一方、25体積%を超えて多くなると、十分な伝熱性を確保できなくなる。
上記したような構成を有する被覆層の厚みは、50〜400 μmとすることが好ましい。被覆層の厚みが50μm未満では、十分な亀裂伝播防止効果を得ることができない。一方、400 μmを超えて厚くなると、冷却管と鋳物母材と間の伝熱性が、また表面亀裂抵抗性が低下する。このため、被覆層の厚みは、50〜400 μmの範囲に限定することが好ましい。
【0022】
冷却管の外表面に上記した合金組成を有し気孔を含む被覆層を形成する方法としては、溶射法、とくに上記した組成のNi−Cr−Al,Y−Co 合金粉末を溶射材料とするプラズマ溶射法が好ましい。これにより、気泡を含む合金からなる被覆層を容易に形成することができる。なお、気孔率を上記した範囲内に調整するために、合金粉末粒度を10〜75μmとすることが好ましい。
【0023】
また、被覆層の表面および気孔の少なくとも一部に酸化クロムを被覆かつ充填する方法としては、無水クロム酸、塩化クロム、クロム酸アンモニウム等の可溶性クロム化合物の溶液を減圧雰囲気あるいは大気雰囲気下で、被覆層に塗布または浸漬し、溶液を気孔に含浸させたのち、大気雰囲気等酸化雰囲気中で熱処理し、クロム化合物を酸化クロムに変化させる方法が好ましい。これにより、被覆層の少なくとも一部の表面に酸化クロム被膜を形成でき、さらに気孔内に酸化クロムを充填できる。可溶性クロム化合物の濃度は15〜65vol %とすることが好ましい。また塗布、 浸漬後の熱処理は、クロム化合物を酸化クロムとすることができる、250 〜600 ℃の温度範囲内の温度で0.5 〜2hとすることが好ましい。この熱処理により、被覆層表面に0.1 〜5μmの酸化クロム被膜を形成できる。酸化クロム被膜の厚さが5μmを超えると、被膜剥離という問題があり、また、0.1 μm未満では金属融着防止の効果が認められない。
【0024】
【実施例】
高温配管用炭素鋼管(C:0.12質量%、外径:65mmφ、肉厚:7.3mm )の外表面に、プラズマ溶射法により表1に示す組成の合金からなる被覆層を、表1に示す厚みとなるように形成した。この被覆層は気孔を含み、表1に示す値の気孔率を有していた。なお、被覆層の気孔率は断面組織を400 倍の顕微鏡で撮影し、気孔の面積率を測定した。
【0025】
ついで、この被覆層の表面および気孔の一部にクロム酸水溶液をスプレーで塗布し含浸させたのち、大気中の550 ℃で2h加熱する熱処理を施した。この熱処理により、被覆層表面に酸化クロムの被膜が0.5 μm形成され、気孔の80%以上が酸化クロムで充填された。なお、酸化クロムの被膜厚さは試料を切断し断面を顕微鏡観察することにより測定した。
【0026】
【表1】
【0027】
これら被覆層を備えた各鋼管を冷却管として、球状黒鉛鋳鉄溶湯で鋳包み、厚さ300 mmの熱交換体鋳物を製造した。なお、球状黒鉛鋳鉄溶湯の鋳込み温度は1280℃とした。得られた熱交換体鋳物から、鋳包まれた各鋼管1本ごとに外径120mm φの円筒状試料を採取した。
得られた円筒状試料を用いて伝熱特性を調査した。
【0028】
鋳包まれた鋼管の内面を600 ℃に加熱保持し、鋳鉄内部の温度分布を測定した。測温結果から、鋼管内面から被覆層を介し鋳鉄内部に2.5mm 入った位置までの見掛けの熱伝導率を計算した。計算結果を表2に示す。
【0029】
【表2】
【0030】
本発明例は、いずれも高い見掛けの熱伝導率を有しており、冷却能の優れた熱交換体鋳物となっている。本発明の範囲を外れる従来例(No. 3)では、見掛けの熱伝導率は低い値となっている。また、いずれの冷却管も鋳物母材から容易に剥離でき、亀裂伝播に繋がる強固な溶着はみられなかった。
【0031】
【発明の効果】
本発明によれば、冷却管と鋳物母材との高い伝熱性を有し、冷却能に優れ、かつ鋳物表面に発生した亀裂が冷却管に伝播しない熱交換体鋳物を、 安定して安価に製造でき、産業上格段の効果を奏する。また、本発明によれば、冷却管が耐酸化性、耐硫化腐食性、 耐浸炭性を有し、更に冷却管表面の被覆層が優れた表面亀裂抵抗性を具備し、熱交換体鋳物の寿命延長を達成できるという効果もある。
【図面の簡単な説明】
【図1】冷却管外表面に形成される被覆層の、耐浸炭性、耐食性および表面亀裂抵抗性に及ぼすNi含有量の影響を示すグラフである。
【発明の属する技術分野】
本発明は、高炉用ステーブクーラー等に好適な熱交換体鋳物に関する。
【0002】
【従来の技術】
高炉の炉壁内面には、炉体の冷却用として鋳物製ステーブクーラーが設置されている。高炉のステーブクーラーとして利用される鋳物(熱交換体鋳物)は、鋳物母材に冷却媒体の通路となる冷却管を鋳包んで構成されている。高炉のステーブクーラーとして長時間使用されるに伴い、熱交換体鋳物は、熱亀裂、折損、溶損、摩耗等により次第に損耗する。しかし、熱交換体鋳物自体の冷却能が高くなればなるほど熱負荷が緩和されるため、この損耗が軽減される。また、熱交換体鋳物の冷却能が高くなるほど、高炉を安定して操業でき、高炉の炉寿命が長くなる。このようなことから、冷却能を向上させるために、熱交換体鋳物には、冷却管と母材との密着性がよく伝熱性に優れることが要求されている。
【0003】
また、熱交換体鋳物には、使用中に熱疲労や熱衝撃等により、上記したように鋳物母材表面に亀裂が発生する。この鋳物表面に発生した亀裂が進展し、鋳物内部に鋳包まれた冷却管まで伝播すると、水蒸気爆発等の大きな事故に繋がるため、熱交換体鋳物には、鋳物表面に発生した亀裂が冷却管に伝播しないことが要求されている。
【0004】
このような要求に対応する方法として、例えば、特公昭54−44650号公報、特公昭54−41966号公報には、耐火物を冷却管表面に被覆、または炎溶射して鋳包む方法が提案されている。また、特公昭58−49607号公報には、冷却管を二重管として鋳包む方法が提案されている。
しかしながら、特公昭54−44650号公報、特公昭54−41966号公報、特公昭58−49607号公報に記載された技術では、冷却管への亀裂の伝播を防止できるが、冷却管表面に耐火物や空隙が存在するため、冷却管と鋳物母材間の伝熱性が大幅に阻害され、熱交換体鋳物の冷却能が大幅に低下するという問題がある。
【0005】
このような問題に対し、例えば、特公平7−71731 号公報、特公平7−71732 号公報、特公平7−71733 号公報、特公平7−71734 号公報には、外表面に金属被覆層を備えた金属製冷却管を鋳包んでなる熱交換体鋳物が提案されている。特公平7−71731 号公報に記載された技術では、この金属被覆層を、Moと不可避的不純物からなるか、またはNiを50wt%以下を含み残部Moおよび不可避的不純物からなる合金とするとともに、気孔を有し、金属被覆層の表面および気孔の一部または全部が酸化クロムにより被覆かつ充填された被覆層としている。また、特公平7−71732 号公報に記載された技術では、この金属被覆層を、Niと不可避的不純物からなる、あるいはCrを70wt%以下含有し、残部がNiと不可避的不純物からなる合金とする、とともに気孔を有し、金属被覆層の表面および気孔の一部または全部が酸化クロムにより被覆かつ充填された被覆層としている。また、特公平7−71733 号公報に記載された技術では、この金属被覆層を、Crを10〜70wt%含有し、残部がCoと不可避的不純物からなる合金、あるいはCrを10〜70wt%含有し、20wt%以下のAlと2wt %以下のYの少なくとも一種を含有し、残部がCoと不可避的不純物からなる合金とするとともに気孔を有し、金属被覆層の表面および気孔の一部または全部が酸化クロムにより被覆かつ充填された被覆層としている。また、特公平7−71734 号公報に記載された技術では、この金属被覆層を、Niを15〜60wt%含有し、残部がCuと不可避的不純物からなる合金とするとともに気孔を有し、金属被覆層の表面および気孔の一部または全部が酸化クロムにより被覆かつ充填された被覆層としている。
【0006】
【発明の解決しようとする課題】
高炉用ステーブクーラーとして使用される熱交換体鋳物では、使用中に熱疲労、熱衝撃等により鋳物表面で亀裂が発生し、それら亀裂が進展し亀裂同士が交絡することにより鋳物が部分的に脱落したりする場合があり、このとき鋳物内部に鋳包まれている冷却管に曲げ応力が作用し冷却管に亀裂が発生したり、折損したりする事故や、冷却管が炉内雰囲気に直接晒されるという事態が生じる。
【0007】
高炉の炉内雰囲気は、炉内位置や状況の変化により、酸化性、硫化腐食性、浸炭性等の各種雰囲気となる。高炉寿命を一層向上させるために冷却管には、このような雰囲気に直接晒される場合を考慮して、耐酸化性、耐硫化腐食性、耐浸炭性をも具備することが、また、使用中に鋳物が脱落する際に曲げ応力が作用する場合を考慮して、曲げ応力が作用しても冷却管表面に亀裂が生じない、優れた表面亀裂抵抗性を具備することが要望されている。
【0008】
しかしながら、特公平7−71731 号公報、特公平7−71732 号公報、特公平7−71733 号公報、特公平7−71734 号公報に記載された技術では、上記したような特性を同時に満足するまでには至っていない。例えば、特公平7−71731 号公報に記載された熱交換体鋳物に使用された冷却管では、耐酸化性が不足し、特公平7−71732 号公報に記載された冷却管では、耐硫化腐食性が劣り、また、特公平7−71733 号公報に記載された冷却管では、耐酸化性、耐浸炭性が不足しまた表面亀裂抵抗性も不足し、また、特公平7−71734 号公報に記載された冷却管では、耐酸化性が不足し、また鋳物母材にCuが浸入し鋳物母材の熱劣化が増加するという問題がある。
【0009】
本発明は、上記した従来技術の問題を有利に解決し、優れた耐酸化性、耐硫化腐食性、 耐浸炭性および表面亀裂抵抗性を同時に具備する冷却管を有し、冷却能に優れ、かつ鋳物表面に発生した亀裂が冷却管に伝播しない熱交換体鋳物を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記した課題を達成するために、冷却管の外表面に形成する被覆層を合金製とし、その好ましい組成について鋭意検討した。その結果、被覆層を形成する合金を、Niを10〜50質量%、Crを10〜30質量%含有し、さらに20質量%以下のAlと2質量%以下のYのうちの少なくとも1種を含有するCo基合金とすることにより、冷却管の耐酸化性、耐硫化腐食性、耐浸炭性、および表面亀裂抵抗性が顕著に向上することを知見した。
【0011】
まず、本発明の基礎となった実験結果について説明する。
高温配管用炭素鋼管(C:0.12質量%、外径:65mmφ、肉厚:7.3 mm)の外表面にプラズマ溶射法により10質量%Cr−0 〜80質量%Ni−3質量%Al−0.4 質量%Y−残部Co組成の合金を200 μm厚さ被覆し冷却管とした。この被覆層の表面および気孔の一部にクロム酸水溶液をスプレーで塗布し含浸させたのち、大気雰囲気中の550 ℃で2h加熱した。これにより、被覆層表面に酸化クロムの被膜が0.5 μm形成され、気孔の80%以上が酸化クロムで充填された。
【0012】
得られた冷却管から、 試験片を採取し、高炉ガス雰囲気中における耐浸炭性、耐食性、 および表面亀裂抵抗性を調査した。
耐浸炭性、耐食性試験は、高炉ガス雰囲気とし、温度:800 ℃とした腐食試験装置に試験片(寸法:φ75mm×100mm )を装入し、暴露時間:5000h保持したのち、表面から深さ方向にC分析を行い、浸炭深さを求め、 耐浸炭性を評価した。なお、浸炭深さは、C量が0.15%以下となるまでの表面からの深さとした。また、暴露後の試験片について、 腐食減量を求め、耐食性を評価した。
【0013】
表面亀裂抵抗性は曲げ試験で評価した。冷却管から短冊状試験片(10mm幅×150mm 長さ)を採取し、3点曲げ試験を実施し、被覆層に亀裂が発生するまでの曲げ角を測定し、表面亀裂抵抗性を評価した。
得られた結果を、 被覆層中のNi含有量との関係で図1に示す。
図1から、被覆層中のNi含有量を10〜50質量%の範囲(←→の範囲)とすることにより、浸炭深さ、腐食減量が少なくなり、しかも、曲げ角度も大きく、高炉ガス雰囲気での耐浸炭性、および耐食性、 並びに表面亀裂抵抗性がともに優れた冷却管(被膜層)となることがわかった。
【0014】
本発明は、上記した知見に基づき、さらに検討を加えて完成されたものである。すなわち、本発明は、外表面に被覆層を備えた金属製冷却管を鋳包んでなる熱交換体鋳物であって、前記被覆層が、気孔を含み、質量%で、Cr:10〜30%、Ni:10〜50%を含み、さらにAl:20%以下およびY:2%以下のうちの少なくとも1種を含有し、残部がCoおよび不可避的不純物からなる組成を有する合金からなり、かつ前記被覆層の表面および前記気孔の一部または全部が酸化クロムにより被覆かつ充填されてなることを特徴とする冷却能に優れた熱交換体鋳物であり、本発明では、前記被覆層の気孔率が、体積率で5〜25%であることが好ましく、また、本発明では、前記被覆層の厚みが、50〜400 μmであることが好ましい。
【0015】
【発明の実施の形態】
本発明の熱交換体鋳物は、金属製冷却管を内部(鋳物母材)に鋳包んでなる鋳物である。鋳包まれる冷却管は、外表面に被覆層を有する。被覆層は、母材溶湯と冷却管とが直接溶着しないために設けられるが、本発明では冷却管の伝熱性を向上させるために熱伝導性のよい合金を用いる。
【0016】
本発明における被覆層は、質量%で、Cr:10〜30%、Ni:10〜50%を含み、さらにAl:20%以下およびY:2%以下のうちの少なくとも1種を含有し、残部がCoおよび不可避的不純物からなる組成を有するCo基合金を用いて構成される。
Co基合金は、耐熱性に優れ溶湯鋳込み時の熱衝撃に対し抵抗性を有する。本発明では、耐熱性、耐酸化性を向上させるために、Co基合金にCrを10〜30質量%含有する。Cr含有量が10質量%未満では、耐熱性が不十分となり鋳物母材との溶着が発生しやすくなる。一方、Crを30質量%を超えて含有すると、耐熱衝撃性が低下し、鋳込み時に亀裂や剥離を発生しやすくなる。このため、Crは10〜30質量%の範囲に限定した。
【0017】
さらに、本発明は、極めて優れた耐酸化性、耐硫化腐食性、 耐浸炭性並びに曲げ応力発生時の優れた表面亀裂抵抗性を同時に具備する被覆層とするために、被覆層にNiを10〜50質量%含有することを特徴とする。図1に示すように、Niが10質量%未満では、耐浸炭性および表面亀裂抵抗性が低下する。一方、Niを50質量%を超えて含有すると、耐硫化腐食性が低下する。なお、Niが10〜50質量%であれば優れた表面亀裂抵抗性を確保できる。このため、Niは10〜50質量%の範囲に限定した。
【0018】
また、本発明では、被覆層に、Al:20%以下およびY:2%以下のうちの少なくとも1種を含有する。Al、Yはともに、酸化物形成傾向が強く、熱処理時に被覆層表面、あるいは気孔内面に酸化物を形成し、後述する酸化クロムの作用を助長する効果を有している。Alを20質量%を超えて含有すると、上記した効果が飽和するうえ、合金の融点が低下する。このため、Alは20質量%以下に限定した。なお、Alは2〜15質量%とすることが好ましい。また、2質量%を超えてYを含有すると、上記した効果が飽和し、含有量に見合う効果が期待できず、Yが高価な元素であるため経済的に不利となる。このため、Yは2質量%以下に限定した。なお、Yは0.2 〜1.5 質量%とすることが好ましい。
【0019】
上記した成分以外の残部はCoおよび不可避的不純物である。
しかし、被覆層が合金のみでは冷却管と母材 (鋳物)との溶着性がよく母材に生じた亀裂が冷却管へ伝播するのを阻止できない。このため、本発明では被覆層を、気孔を含む上記した組成の合金で構成するとともに、被覆層の表面および気孔の少なくとも一部に酸化クロムを被覆しかつ充填する。
【0020】
酸化クロムは化学的に安定であり溶融母材(溶湯)と濡れにくいことから鋳物母材と被覆層との完全な溶着 (合金化)を防止でき、亀裂の冷却管への伝播を防止できる。酸化クロムの存在により被覆層と鋳物母材とは部分的に軽度な拡散接合部を形成しており、鋳物母材からの亀裂伝播を防止しつつ、冷却管と鋳物母材との十分な伝熱性を維持することができる。さらに、被覆層の気孔には酸化クロムが充填されることにより、気孔の存在による保熱効果を低下でき、被覆層の熱伝導性が向上し、冷却管と鋳物母材との伝熱性を向上できる。また、酸化クロムを充填された気孔は、鋳物母材で発生した亀裂の先端応力を分散、開放する作用を有し、鋳物母材で発生した亀裂が冷却管へ伝播するのを防止できる。
【0021】
なお、被覆層の気孔率は、体積率で5〜25%とすることが好ましい。被覆層の気孔率が5体積%未満では、十分なクラック伝播阻止効果を得ることができない。一方、25体積%を超えて多くなると、十分な伝熱性を確保できなくなる。
上記したような構成を有する被覆層の厚みは、50〜400 μmとすることが好ましい。被覆層の厚みが50μm未満では、十分な亀裂伝播防止効果を得ることができない。一方、400 μmを超えて厚くなると、冷却管と鋳物母材と間の伝熱性が、また表面亀裂抵抗性が低下する。このため、被覆層の厚みは、50〜400 μmの範囲に限定することが好ましい。
【0022】
冷却管の外表面に上記した合金組成を有し気孔を含む被覆層を形成する方法としては、溶射法、とくに上記した組成のNi−Cr−Al,Y−Co 合金粉末を溶射材料とするプラズマ溶射法が好ましい。これにより、気泡を含む合金からなる被覆層を容易に形成することができる。なお、気孔率を上記した範囲内に調整するために、合金粉末粒度を10〜75μmとすることが好ましい。
【0023】
また、被覆層の表面および気孔の少なくとも一部に酸化クロムを被覆かつ充填する方法としては、無水クロム酸、塩化クロム、クロム酸アンモニウム等の可溶性クロム化合物の溶液を減圧雰囲気あるいは大気雰囲気下で、被覆層に塗布または浸漬し、溶液を気孔に含浸させたのち、大気雰囲気等酸化雰囲気中で熱処理し、クロム化合物を酸化クロムに変化させる方法が好ましい。これにより、被覆層の少なくとも一部の表面に酸化クロム被膜を形成でき、さらに気孔内に酸化クロムを充填できる。可溶性クロム化合物の濃度は15〜65vol %とすることが好ましい。また塗布、 浸漬後の熱処理は、クロム化合物を酸化クロムとすることができる、250 〜600 ℃の温度範囲内の温度で0.5 〜2hとすることが好ましい。この熱処理により、被覆層表面に0.1 〜5μmの酸化クロム被膜を形成できる。酸化クロム被膜の厚さが5μmを超えると、被膜剥離という問題があり、また、0.1 μm未満では金属融着防止の効果が認められない。
【0024】
【実施例】
高温配管用炭素鋼管(C:0.12質量%、外径:65mmφ、肉厚:7.3mm )の外表面に、プラズマ溶射法により表1に示す組成の合金からなる被覆層を、表1に示す厚みとなるように形成した。この被覆層は気孔を含み、表1に示す値の気孔率を有していた。なお、被覆層の気孔率は断面組織を400 倍の顕微鏡で撮影し、気孔の面積率を測定した。
【0025】
ついで、この被覆層の表面および気孔の一部にクロム酸水溶液をスプレーで塗布し含浸させたのち、大気中の550 ℃で2h加熱する熱処理を施した。この熱処理により、被覆層表面に酸化クロムの被膜が0.5 μm形成され、気孔の80%以上が酸化クロムで充填された。なお、酸化クロムの被膜厚さは試料を切断し断面を顕微鏡観察することにより測定した。
【0026】
【表1】
【0027】
これら被覆層を備えた各鋼管を冷却管として、球状黒鉛鋳鉄溶湯で鋳包み、厚さ300 mmの熱交換体鋳物を製造した。なお、球状黒鉛鋳鉄溶湯の鋳込み温度は1280℃とした。得られた熱交換体鋳物から、鋳包まれた各鋼管1本ごとに外径120mm φの円筒状試料を採取した。
得られた円筒状試料を用いて伝熱特性を調査した。
【0028】
鋳包まれた鋼管の内面を600 ℃に加熱保持し、鋳鉄内部の温度分布を測定した。測温結果から、鋼管内面から被覆層を介し鋳鉄内部に2.5mm 入った位置までの見掛けの熱伝導率を計算した。計算結果を表2に示す。
【0029】
【表2】
【0030】
本発明例は、いずれも高い見掛けの熱伝導率を有しており、冷却能の優れた熱交換体鋳物となっている。本発明の範囲を外れる従来例(No. 3)では、見掛けの熱伝導率は低い値となっている。また、いずれの冷却管も鋳物母材から容易に剥離でき、亀裂伝播に繋がる強固な溶着はみられなかった。
【0031】
【発明の効果】
本発明によれば、冷却管と鋳物母材との高い伝熱性を有し、冷却能に優れ、かつ鋳物表面に発生した亀裂が冷却管に伝播しない熱交換体鋳物を、 安定して安価に製造でき、産業上格段の効果を奏する。また、本発明によれば、冷却管が耐酸化性、耐硫化腐食性、 耐浸炭性を有し、更に冷却管表面の被覆層が優れた表面亀裂抵抗性を具備し、熱交換体鋳物の寿命延長を達成できるという効果もある。
【図面の簡単な説明】
【図1】冷却管外表面に形成される被覆層の、耐浸炭性、耐食性および表面亀裂抵抗性に及ぼすNi含有量の影響を示すグラフである。
Claims (3)
- 外表面に被覆層を備えた金属製冷却管を鋳包んでなる熱交換体鋳物であって、前記被覆層が、気孔を含み、質量%で、Cr:10〜30%、Ni:10〜50%を含み、さらにAl:20%以下およびY:2%以下のうちの少なくとも1種を含有し、残部がCoおよび不可避的不純物からなる組成を有する合金からなり、かつ前記被覆層の表面および前記気孔の一部または全部が酸化クロムにより被覆かつ充填されてなることを特徴とする冷却能に優れた熱交換体鋳物。
- 前記被覆層の気孔率が、体積率で 5〜25%であることを特徴とする請求項1に記載の冷却能に優れた熱交換体鋳物。
- 前記被覆層の厚みが、50〜400 μmであることを特徴とする請求項1または2に記載の冷却能に優れた熱交換体鋳物。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2002205306A JP2004043922A (ja) | 2002-07-15 | 2002-07-15 | 冷却能に優れた熱交換体鋳物 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2002205306A JP2004043922A (ja) | 2002-07-15 | 2002-07-15 | 冷却能に優れた熱交換体鋳物 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2004043922A true JP2004043922A (ja) | 2004-02-12 |
Family
ID=31710645
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2002205306A Pending JP2004043922A (ja) | 2002-07-15 | 2002-07-15 | 冷却能に優れた熱交換体鋳物 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP2004043922A (ja) |
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
CN103397124A (zh) * | 2013-07-25 | 2013-11-20 | 济南金萃冶金技术有限公司 | 一种高炉冷却壁防护方法及防护涂层 |
-
2002
- 2002-07-15 JP JP2002205306A patent/JP2004043922A/ja active Pending
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
CN103397124A (zh) * | 2013-07-25 | 2013-11-20 | 济南金萃冶金技术有限公司 | 一种高炉冷却壁防护方法及防护涂层 |
Similar Documents
Publication | Publication Date | Title |
---|---|---|
JP3354922B2 (ja) | Ni基耐熱ろう材 | |
JP3168158B2 (ja) | ぬれ性・耐食性に優れたNi基耐熱ろう材 | |
JPWO2009128174A1 (ja) | 鉄基耐熱耐食ろう材 | |
JP2005514522A (ja) | 冶金炉のための冷却板及びかかる冷却板を製造する方法 | |
JP2004043922A (ja) | 冷却能に優れた熱交換体鋳物 | |
JPH0771734B2 (ja) | 冷却能に優れた熱交換体鋳物及びその製造方法 | |
JP3715184B2 (ja) | ステーブクーラおよびそれに用いる二重管の製造方法 | |
JP2003055726A (ja) | 熱電対と、その保護管材料およびその材料の使用方法 | |
JPH108218A (ja) | 排ガス伝熱部材用フェライト系ステンレス鋼及び製造方法 | |
JPH02151378A (ja) | 酸化雰囲気中で接合可能なCr含有材料の液相拡散接合用合金箔 | |
JP2000064060A (ja) | 非鉄金属溶湯用部材 | |
JP3751429B2 (ja) | アルミニウム合金接合用ろう材及びそれを使用したクラッド材 | |
JP4207199B2 (ja) | 高温用熱交換器 | |
JPH0517292B2 (ja) | ||
JP2002146508A (ja) | 水冷式鉄鋼製構造物 | |
JPH0261544B2 (ja) | ||
RU2206632C2 (ru) | Двухслойная коррозионно-стойкая сталь | |
JPH03264153A (ja) | 冷却能に優れた熱交換体鋳物及びその製造方法 | |
JP2018145498A (ja) | Niろう付け性に優れたフェライト系ステンレス鋼 | |
JP2018077107A (ja) | 熱電対およびその製造方法ならびに熱電対製造用構造体およびその製造方法 | |
JP2004136299A (ja) | ろう材、クラッド材およびろう接構造物 | |
JP2004091812A (ja) | 製造性に優れるマルテンサイト系ステンレス熱延鋼帯 | |
JPH10102227A (ja) | 耐高温腐食性に優れた溶射用粉末材料 | |
JP2003136279A (ja) | 肉盛用Cr−Ni−Nb−Fe基合金 | |
JP5960625B2 (ja) | 耐高温腐食部材及び熱交換器 |
Legal Events
Date | Code | Title | Description |
---|---|---|---|
A621 | Written request for application examination |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621 Effective date: 20040924 |
|
A977 | Report on retrieval |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007 Effective date: 20050517 |
|
A131 | Notification of reasons for refusal |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131 Effective date: 20050524 |
|
A02 | Decision of refusal |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A02 Effective date: 20051011 |