JP2004136299A - ろう材、クラッド材およびろう接構造物 - Google Patents
ろう材、クラッド材およびろう接構造物 Download PDFInfo
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Abstract
【課題】優れた冷間加工性を備え、Cuろう程度あるいはそれ以下の融点を有し、耐食性および耐酸化性、特に高温湿潤雰囲気での耐酸化性に優れたろう材、その他にクラッド材、ろう接構造物を提供する。
【解決手段】本発明のろう材は、mass%で、Mn:2.0〜29.0%、Ni:5.5〜15.0%、Al:1.0〜5.0%および残部がCuおよび不可避的不純物からなるCu基ろう合金で形成されたものである。前記Al量は2.0〜5.0%とすることが好ましく、また前記Mn量およびNi量はそれぞれMnを20.0〜29.0%、Niを7.0〜15.0%とすることが好ましい。また、ろう材の形態としては、ろう接作業性の容易さから、厚さが30〜100μm の箔状あるいはシート状に形成することが好ましい。
【選択図】 なし
【解決手段】本発明のろう材は、mass%で、Mn:2.0〜29.0%、Ni:5.5〜15.0%、Al:1.0〜5.0%および残部がCuおよび不可避的不純物からなるCu基ろう合金で形成されたものである。前記Al量は2.0〜5.0%とすることが好ましく、また前記Mn量およびNi量はそれぞれMnを20.0〜29.0%、Niを7.0〜15.0%とすることが好ましい。また、ろう材の形態としては、ろう接作業性の容易さから、厚さが30〜100μm の箔状あるいはシート状に形成することが好ましい。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明が属する技術分野】
本発明は、ラジエーター、ガスクーラーなどの熱交換器等のろう接構造物のろう接に使用されるろう材であって、特に高温湿潤雰囲気下における耐酸化性に優れるMn−Ni−Al−Cuろう合金からなるろう材に関する。
【0002】
【従来の技術】
種々の化学装置や排ガス処理装置などにおいて、エネルギーの有効利用などのために熱交換器が使用されている。高温雰囲気で使用される熱交換器は、主に耐食性、耐酸化性を備えたステンレス鋼によって形成された各部材がろう接によって接合され、組み立てられている。前記ろう接に使用されるろう材としては、高温での強度が確保されるように、例えばCuろう(融点1083℃)が使用されてきた。
【0003】
しかし、近年、使用環境がより厳しくなり、Cuろうでは耐食性、耐酸化性が劣るため、これらの要求を満足する各種ろう材が開発されている。これらのうち、比較的低コストで、融点がCuろう程度あるいはそれ以下である、ろう接作業性に優れたろう合金として、下記文献に記載されたMn−Ni−Cu系ろう合金がある。
【0004】
国際公開WO00/18537号(特許文献1)には、重量%でMn:18〜50%(50%を除く。)、Ni:3〜63%、Cu:0〜55%の範囲内の特定の領域のMn−Ni−Cu合金、あるいは更にAlを5%以下添加したろう合金が記載されている。
特開平8−206876号公報(特許文献2)には、CuとMnを主成分とし、20〜45重量%のMnと0〜15重量%のNiとを含む、浸炭処理時に溶融するものの、その後の焼き入れ処理時には溶融しないろう合金が記載されている。
特公昭60−7269号公報(特許文献3)には、重量比でMn:5〜20%、Ni:1〜5%、残部実質的にCuからなるステンレス鋼用ろう合金が記載されている。
特開昭52−4451号公報(特許文献4)には、Mn:10〜20%、Ni:2〜10%、Sn:0.5〜4.0%、In:0.5〜4.0%および残部Cuからなる耐熱ろう合金が記載されている。
また、特公昭56−5814号公報(特許文献5)には、鋳鉄肉盛り用合金ではあるが、Mn:10〜35%、Ni:3〜25%、Ca:0.1〜10%を含有し、それらの合計が30%以上であって、残部がCu及び不可避的不純物からなる肉盛り合金が記載されている。
【0005】
【特許文献1】
国際公開WO00/18537号(特許請求の範囲)
【特許文献2】
特開平8−206876号公報(特許請求の範囲)
【特許文献3】
特公昭60−7269号公報(特許請求の範囲)
【特許文献4】
特開昭52−4451号公報(特許請求の範囲)
【特許文献5】
特公昭56−5814号公報(特許請求の範囲)
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
近年、環境問題への関心が高まる中、エネルギーの有効利用のため、コージェネレーションシステムなどの発電システムにおいても積極的に排熱回収が行われるようになってきており、その熱回収は主としてSUS304等のステンレス鋼製の熱交換器によって行われる。前記発電システムにおいて、燃料として天然ガスが用いられる場合があり、このような燃料が用いられる発電システムでは、500℃程度の高温の排気ガス中に必然的に水蒸気が含まれる。
【0007】
上記のとおり、ステンレス鋼製の熱交換器のろう接は、Mn−Ni−Cu系ろう合金からなるろう材によって行われるようになってきたが、前記特許文献1に記載のMn−Ni−Cu系ろう合金ろう材は、総じて高温湿潤雰囲気下での耐酸化性に問題があることが明らかになってきた。この問題は、前記特許文献1に記載のろう合金において、Alを添加した場合においても同様である。
【0008】
もちろん、熱交換器のろう接に使用されるろう材には、高温湿潤雰囲気下での耐酸化性のみならず、高温乾燥雰囲気下での耐酸化性、耐食性も必要とされるが、前記特許文献2のろう材は基本的に耐食性、耐酸化性の改善を企図してなされたものでないため、これらの特性にも問題がある。また、前記特許文献3のろう合金では、耐食性にも問題がある。また、前記特許文献4では、Snが0.5〜4.0%含有するため、融点が低く、また冷間加工性が悪いため、ろう材として使用勝手の良い、箔状やシート状のものが得られないという問題がある。また、前記特許文献5では、ろう材とは用途が異なる上、鋳鉄とのぬれ性改善のため必須とされるCaが添加されているため、やはり冷間加工性に問題がある。
【0009】
このような高温湿潤雰囲気下での耐酸化性への要求は、上記熱交換器に用いられるろう材のみならず、化学反応装置、湿潤高温流体を送給する配管システムの管継手などの接合に使用されるろう材についても求められている課題である。
【0010】
本発明はかかる問題に鑑みなされたもので、優れた冷間加工性を備え、Cuろう程度あるいはそれ以下の融点を有し、耐食性および耐酸化性、特に高温湿潤雰囲気での耐酸化性に優れたろう材を提供すること、前記ろう材によって形成されたろう材層を有するクラッド材を提供すること及び前記ろう材によってろう接された接合構造物を提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、Mn−Ni−Cu合金において、高温湿潤雰囲気における酸化状態を子細に観察したところ、Cuを主成分とするマトリックス中にAl酸化物を微細に分散させることによって、マトリックス中のCuの腐食の進行を前記Al酸化物が効果的に阻止するため、高温湿潤雰囲気における耐酸化性が著しく改善されること、しかも特定量のAl含有量であれば冷間加工性を損なわないことを知見した。本発明はかかる知見を基に完成されたものである。
【0012】
すなわち、本発明のろう材は、mass%で、Mn:2.0〜29.0%、Ni:5.5〜15.0%、Al:1.0〜5.0%および残部がCuおよび不可避的不純物からなるCu基ろう合金で形成されたものである。前記Al量は2.0〜5.0%とすることが好ましく、また前記Mn量およびNi量はそれぞれMnを20.0〜29.0%、Niを7.0〜15.0%とすることが好ましい。また、ろう材の形態としては、ろう接作業性の容易さから、厚さが30〜100μm の箔状あるいはシート状に形成することが好ましい。
前記ろう材は、冷間圧延によって容易に減厚加工ができるなど、冷間加工性に優れる一方、Cuろう程度あるいはそれ以下の融点を有し、Niの所定量の含有により酸に対する耐食性にも優れ、さらにCuを主成分とするMn−Ni−Cu合金固溶体からなるマトリックス中にAl酸化物を微細分散した組織となるので、乾燥環境下は勿論、湿潤環境下においても優れた高温耐酸化性が得られる。
【0013】
また、本発明のクラッド材は、鉄鋼材で形成された金属基板と、この金属基板の少なくとも一方の表面に圧接されたろう材層とを備え、前記ろう材層が前記Cu基ろう合金によって形成されたものである。
前記Cu基ろう合金は、冷間加工性に優れるため、ステンレス鋼を含む鉄鋼材の表面にろう材層として、生産性に優れた冷間圧接によって容易にクラッド化することができる。かかるクラッド材は、金属基板をろう接構造物の接合部材として利用することができ、また別途準備したろう材を接合部材間に設置するといった煩雑な作業が必要でないので、ろう接作業性に優れる。
【0014】
また、本発明のろう接構造物は、鉄鋼材で形成された第1接合部材と、鉄鋼材で形成された第2接合部材とを備え、前記第1接合部材と前記第2接合部材とが前記Cu基ろう合金によって接合されたものである。
このろう接構造物は、ステンレス鋼を含む鉄鋼材で形成された前記第1接合部材と前記第2接合部材とが前記Cu基ろう合金によって接合されるので、ろう接部が前記Cu基ろう合金によって形成され、このろう合金の有する優れた特性を備えたものとなり、引いては耐久性に優れる。
【0015】
【発明の実施の形態】
本発明のろう材は、mass%で、Mn:2.0〜29.0%、Ni:5.5〜15.0%、Al:1.0〜5.0%および残部がCuおよび不可避的不純物からなるCu基ろう合金によって形成されたものである。前記Cu基ろう合金は、920〜1100℃程度の融点を有し、耐食性、耐酸化性、特に高温湿潤雰囲気下での耐酸化性に優れ、さらに優れた冷間加工性を有するものであり、その成分(単位mass%)は以下の理由によって限定される。
【0016】
Mn:2.0〜29.0%
MnはCuおよびNiと固溶体を形成する元素であり、耐酸化性を向上させるとともに、Ni添加によって生じる融点の上昇を抑え、Cuろう並みの融点を確保するために添加される。2.0%未満では過少であり、融点が高くなり、ろう接温度の上昇を来す。一方、29.0%を超えると、耐食性および耐酸化性を損なうようになる。このため、Mn量の下限を2.0%、上限を29.0%とし、好ましくはNi量が7.0〜15.0%の下で、20.0〜29.0%とするのがよい。
【0017】
Ni:5.5〜15.0%
NiはMnおよびCuとともに固溶体を形成し、耐食性を向上させるために添加される。5.5%未満では耐食性が劣化し、一方15.0%を超えると融点の上昇を来たすと共にコスト高を招来する。このため、Ni量の下限を5.5%、好ましくは7.0%とし、上限を15.0%とする。Ni量を7.0〜15.0%とする場合は、Mn量を20.0〜29.0%とすることが融点制御の観点から好ましい。
【0018】
Al:1.0〜5.0%
Alは冷間加工性を損なうことなく、高温域における耐食性、耐酸化性、特にCuを主成分とするマトリックスにおける高温湿潤雰囲気での耐酸化性の改善に必須の元素である。Alはマトリックスにほとんど固溶せず、微細なAl2O3粒子となってマトリックス中に分散する。このため、マトリックス中のCuやMnが腐食しても、その腐食の伸展が分散したAl2O3粒子によって抑止されるため、高温湿潤雰囲気での耐酸化性の改善に寄与するものと推察される。1.0%未満ではかかる効果が過少であり、一方5.0%を超えると冷間加工性が劣化する。このため、Al量の下限を1.0%、好ましくは2.0%、上限を5.0%とする。なお、Alの内部酸化粒(Al2O3粒)のマトリックス中における分散は、EPMAによって観察することができる。また、耐酸化性向上元素としては、SiやCrなどの酸化物形成元素も考えられるが、発明者の研究によると、これらの元素は冷間加工性を著しく劣化させるものであり、本発明においては不適な元素であり、不純物である。
【0019】
本発明にかかるCu基ろう合金は上記成分の他、残部Cuおよび不可避的不純物で形成される。不純物として、冷間加工性を劣化させるCr、Si、Sn、Caは少ない程好ましく、合計量で0.1%未満にすることが望ましい。
【0020】
前記Cu基ろう合金は、冷間加工性に極めて優れるため、冷間圧延により十分薄い厚さに減厚することができ、ろう材として使用しやすい箔状やシート状に加工することができる。ろう材の厚さとしては、一般的に、30〜100μm 程度が好ましい。30μm 未満ではろう材量が少ないので、接合部材の接合表面において部分的にろう材不足が生じ、ろう接性に劣る。一方、100μm を超えると、ろう材が過多となり、ろう接部から流れ出て外観不良が生じ、またコスト高を招来する。
【0021】
前記箔状あるいはシート状のろう材を用いた場合、ろう接構造物を構成する接合部材同士を簡単容易にろう接することができる。すなわち、隣接する接合部材の間にろう材を挟持し、目的の形状に組み立て、これを適宜の加熱炉でろう材の融点以上、通常は融点+20〜30℃程度の温度に加熱保持し、ろう材を溶融させればよい。前記加熱は、真空等の非酸化性雰囲気で行うことが好ましい。
前記接合部材は、ステンレス鋼材を含む鉄鋼材によって形成され、これらの鉄鋼材はろう接後、好ましくは800〜900℃程度の温度で焼鈍される。本発明のろう材は、かかる温度では溶融しないため、低い焼鈍温度での長時間焼鈍を行う必要がないため、焼鈍作業を円滑に行うことができる。
【0022】
上記のとおり、本発明のろう材を構成するCu基ろう合金は冷間加工性に優れるので、適宜の鉄鋼材、例えばステンレス鋼で形成された金属基板に容易に接合一体化することができる。図1は、このように金属基板2の一方の表面に前記Cu基ろう合金によって形成されたろう材層3が接合一体化されたクラッド材1を示している。
【0023】
前記クラッド材1は、前記金属基板2の素材を形成する基板シートと、前記ろう材層3の素材を形成するろう材シートとを重ね合わせ、これを一対の圧接ロールに通して両シートを冷間で圧接し、これによって得られた金属基板とろう材層とが圧接された接合シートを拡散焼鈍することによって製造される。圧接の際のロール圧下率は50〜70%程度とされ、拡散焼鈍温度は700〜850℃程度とされる。このクラッド材1のろう材層3も30〜100μm 程度とすることが好ましい。
【0024】
このクラッド材1によれば、鉄鋼材で形成された金属基板2と、これをろう接するためのろう材層3とが一体的に接合されているため、前記金属基板2を接合部材として、別途にろう材を準備することなく、クラッド材1のろう材層3を用いて接合部材同士を容易にろう接することができ、ろう接作業性に優れる。
【0025】
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はかかる実施例によって限定的に解釈されるものではない。
【0026】
【実施例】
下記表1に示す組成のCu基ろう合金を真空誘導炉で溶解し、その鋳造片(厚さ100mm)を仕上温度800℃程度で熱間圧延を行い、厚さ8mmの熱延板を得て、これを800℃程度で焼鈍後、冷間圧延および中間焼鈍を繰り返して50μm のシート状ろう材を得た。このろう材からを試料を採取し、高温湿潤雰囲気下での耐酸化性、高温乾燥雰囲気下での耐酸化性および耐食性を下記の各試験により調べた。これらの調査結果を表1に示す。
【0027】
同表には試料ろう材の融点も併記した。融点が1100℃以下のろう材はカーボンまたはセラミックス系耐火材の炉材、カーボンヒータを備えた汎用加熱炉を用いてろう接を行うことができ、工業用材料として好適である。融点の評価基準については、融点≦1000℃ではろう接性が特に優れるので◎、1000℃<融点≦1100℃は○、1100℃<融点のろう材は汎用の加熱炉では炉材、発熱材の負担が過大となり、炉の寿命が著しく短くなり、工業的生産性に適さないので、×とした。汎用材として、実用上許容されるのは◎、○である。
【0028】
(1) 高温湿潤雰囲気下での耐酸化試験
ステンレス鋼(SUS304)によって形成された基板(サイズ:50mm角、2.0mm厚)の上にほぼ同寸法に切断した各試料のろう材を重ね合わせ、ろう材の融点+20℃で加熱し、ろう材をステンレス鋼板の全面に濡れ広がるように溶融させ、冷却して試験片を作製した。各試験片の重量とろう材の溶着部の面積を測定した後、これらを坩堝に入れ、加熱炉にて、14 vol%O2 −3 vol%CO2−6 vol%H2O−残部N2 の高温湿潤雰囲気中で500℃で200hr保持し、冷却後、再び試験片の重量を測定し、試験片の酸化増量を求め、これによって耐酸化性を評価した。なお、酸化増量は下記式によって算出した。酸化皮膜が脱落した場合、その脱落した皮膜も含めて重量測定を行った。
酸化増量(mg/cm2)={加熱後重量(mg)−加熱前重量(mg)}/面積(cm2)
高温湿潤雰囲気下での耐酸化性の評価基準は、酸化増量が基板(SUS304)の酸化増量(0.15mg/cm2)を基準として、その10倍まで(1.5mg/cm2未満)を◎、10倍以上20倍まで(1.5mg/cm2以上、3.0mg/cm2未満)を○、20倍以上を×とした。実用上、良好な耐酸化性を有するものとして許容される範囲は◎、○である。
【0029】
(2) 高温乾燥雰囲気下での耐酸化試験
上記と同様にして試験片を作製し、これを加熱炉にて大気中で500℃で120hr保持し、加熱後の酸化増量を求め、これによって評価した。評価基準は、酸化増量が基板(SUS304)の酸化増量(0.1mg/cm2)を基準として、その10倍まで(1.0mg/cm2未満)を◎、10倍以上20倍まで(1.0mg/cm2以上、2.0mg/cm2未満)を○、20倍超を×とした。実用上、許容される範囲は◎、○である。
【0030】
(3) 耐食試験
上記耐酸化試験と同様にして試験片を作製した。発電機の駆動用エンジンは、天然ガスのほか、石油燃料を用いるものが主流であるので、ディーゼルエンジンの排ガス凝縮液を模擬した下記組成の腐食液(社団法人自動車技術会の部品腐食試験分科会において規格化された排ガス模擬凝縮液)に試験片を浸漬し、恒温放置(80℃×500hr)後、腐食したろう材表面部分の面積率を求めた。評価基準は、酸化増量が基板(SUS304)の腐食面積率(0.05%)を基準として、その10倍まで(0.5%未満)を◎、10倍以上20倍まで(0.5%以上、1.0%未満)を○、20倍超を×とした。実用上、許容される範囲は◎、○である。
・腐食液組成(単位ppm 、pH=4.0)
Cl− :100、NO3 − :20、SO3 2−:600、
SO4 2−:600、CH3COO−:800
【0031】
【表1】
【0032】
表1の結果より、発明例のろう材は融点が900〜1100℃の範囲内であり、耐食試験結果も最大で0.6%に止まっている。また、湿潤下、乾燥下のいずれの酸化試験結果も良好である。特に、Alを2.0%以上含む試料No. 1〜5および9〜14は耐酸化性に優れている。さらに、Mnが20〜29%、Niが7.0〜15%の試料No. 9〜14では融点が1000℃以下であり、ろう接性も優れている。一方、試料No. 21〜28は、Ni量が過少であるため、総じて耐食性が劣化しており、またAl量が1.0%未満と過少なNo. 28〜35および38は、高温湿潤雰囲気下での耐酸化性が劣っている。また、Alが1.0%以上含有していても、Mn量が本発明範囲超の試料No. 36および37は、やはり高温湿潤雰囲気下での耐酸化性が劣化している。
【0033】
【発明の効果】
本発明のろう材は、Mn:2.0〜29.0%、Ni:5.5〜15.0%、Al:1.0〜5.0%および残部50%以上のCuからなる、Mn−Ni−Al−Cu合金で形成したので、CuリッチのMn−Ni−Cuマトリックス中にAl酸化物を微細に分散させることができ、乾燥環境下のみならず特に湿潤環境下での高温耐酸化性に優れる。さらに、冷間加工性に優れ、融点も1100℃以下であり、耐食性にも優れるため、これらの特性が総合的に要求される熱交換器等の鉄鋼製ろう接構造物のろう接に使用されるろう材として優れる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のクラッド材の断面図を示す。
【符号の説明】
1 クラッド材
2 金属基板
3 ろう材層
【発明が属する技術分野】
本発明は、ラジエーター、ガスクーラーなどの熱交換器等のろう接構造物のろう接に使用されるろう材であって、特に高温湿潤雰囲気下における耐酸化性に優れるMn−Ni−Al−Cuろう合金からなるろう材に関する。
【0002】
【従来の技術】
種々の化学装置や排ガス処理装置などにおいて、エネルギーの有効利用などのために熱交換器が使用されている。高温雰囲気で使用される熱交換器は、主に耐食性、耐酸化性を備えたステンレス鋼によって形成された各部材がろう接によって接合され、組み立てられている。前記ろう接に使用されるろう材としては、高温での強度が確保されるように、例えばCuろう(融点1083℃)が使用されてきた。
【0003】
しかし、近年、使用環境がより厳しくなり、Cuろうでは耐食性、耐酸化性が劣るため、これらの要求を満足する各種ろう材が開発されている。これらのうち、比較的低コストで、融点がCuろう程度あるいはそれ以下である、ろう接作業性に優れたろう合金として、下記文献に記載されたMn−Ni−Cu系ろう合金がある。
【0004】
国際公開WO00/18537号(特許文献1)には、重量%でMn:18〜50%(50%を除く。)、Ni:3〜63%、Cu:0〜55%の範囲内の特定の領域のMn−Ni−Cu合金、あるいは更にAlを5%以下添加したろう合金が記載されている。
特開平8−206876号公報(特許文献2)には、CuとMnを主成分とし、20〜45重量%のMnと0〜15重量%のNiとを含む、浸炭処理時に溶融するものの、その後の焼き入れ処理時には溶融しないろう合金が記載されている。
特公昭60−7269号公報(特許文献3)には、重量比でMn:5〜20%、Ni:1〜5%、残部実質的にCuからなるステンレス鋼用ろう合金が記載されている。
特開昭52−4451号公報(特許文献4)には、Mn:10〜20%、Ni:2〜10%、Sn:0.5〜4.0%、In:0.5〜4.0%および残部Cuからなる耐熱ろう合金が記載されている。
また、特公昭56−5814号公報(特許文献5)には、鋳鉄肉盛り用合金ではあるが、Mn:10〜35%、Ni:3〜25%、Ca:0.1〜10%を含有し、それらの合計が30%以上であって、残部がCu及び不可避的不純物からなる肉盛り合金が記載されている。
【0005】
【特許文献1】
国際公開WO00/18537号(特許請求の範囲)
【特許文献2】
特開平8−206876号公報(特許請求の範囲)
【特許文献3】
特公昭60−7269号公報(特許請求の範囲)
【特許文献4】
特開昭52−4451号公報(特許請求の範囲)
【特許文献5】
特公昭56−5814号公報(特許請求の範囲)
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
近年、環境問題への関心が高まる中、エネルギーの有効利用のため、コージェネレーションシステムなどの発電システムにおいても積極的に排熱回収が行われるようになってきており、その熱回収は主としてSUS304等のステンレス鋼製の熱交換器によって行われる。前記発電システムにおいて、燃料として天然ガスが用いられる場合があり、このような燃料が用いられる発電システムでは、500℃程度の高温の排気ガス中に必然的に水蒸気が含まれる。
【0007】
上記のとおり、ステンレス鋼製の熱交換器のろう接は、Mn−Ni−Cu系ろう合金からなるろう材によって行われるようになってきたが、前記特許文献1に記載のMn−Ni−Cu系ろう合金ろう材は、総じて高温湿潤雰囲気下での耐酸化性に問題があることが明らかになってきた。この問題は、前記特許文献1に記載のろう合金において、Alを添加した場合においても同様である。
【0008】
もちろん、熱交換器のろう接に使用されるろう材には、高温湿潤雰囲気下での耐酸化性のみならず、高温乾燥雰囲気下での耐酸化性、耐食性も必要とされるが、前記特許文献2のろう材は基本的に耐食性、耐酸化性の改善を企図してなされたものでないため、これらの特性にも問題がある。また、前記特許文献3のろう合金では、耐食性にも問題がある。また、前記特許文献4では、Snが0.5〜4.0%含有するため、融点が低く、また冷間加工性が悪いため、ろう材として使用勝手の良い、箔状やシート状のものが得られないという問題がある。また、前記特許文献5では、ろう材とは用途が異なる上、鋳鉄とのぬれ性改善のため必須とされるCaが添加されているため、やはり冷間加工性に問題がある。
【0009】
このような高温湿潤雰囲気下での耐酸化性への要求は、上記熱交換器に用いられるろう材のみならず、化学反応装置、湿潤高温流体を送給する配管システムの管継手などの接合に使用されるろう材についても求められている課題である。
【0010】
本発明はかかる問題に鑑みなされたもので、優れた冷間加工性を備え、Cuろう程度あるいはそれ以下の融点を有し、耐食性および耐酸化性、特に高温湿潤雰囲気での耐酸化性に優れたろう材を提供すること、前記ろう材によって形成されたろう材層を有するクラッド材を提供すること及び前記ろう材によってろう接された接合構造物を提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、Mn−Ni−Cu合金において、高温湿潤雰囲気における酸化状態を子細に観察したところ、Cuを主成分とするマトリックス中にAl酸化物を微細に分散させることによって、マトリックス中のCuの腐食の進行を前記Al酸化物が効果的に阻止するため、高温湿潤雰囲気における耐酸化性が著しく改善されること、しかも特定量のAl含有量であれば冷間加工性を損なわないことを知見した。本発明はかかる知見を基に完成されたものである。
【0012】
すなわち、本発明のろう材は、mass%で、Mn:2.0〜29.0%、Ni:5.5〜15.0%、Al:1.0〜5.0%および残部がCuおよび不可避的不純物からなるCu基ろう合金で形成されたものである。前記Al量は2.0〜5.0%とすることが好ましく、また前記Mn量およびNi量はそれぞれMnを20.0〜29.0%、Niを7.0〜15.0%とすることが好ましい。また、ろう材の形態としては、ろう接作業性の容易さから、厚さが30〜100μm の箔状あるいはシート状に形成することが好ましい。
前記ろう材は、冷間圧延によって容易に減厚加工ができるなど、冷間加工性に優れる一方、Cuろう程度あるいはそれ以下の融点を有し、Niの所定量の含有により酸に対する耐食性にも優れ、さらにCuを主成分とするMn−Ni−Cu合金固溶体からなるマトリックス中にAl酸化物を微細分散した組織となるので、乾燥環境下は勿論、湿潤環境下においても優れた高温耐酸化性が得られる。
【0013】
また、本発明のクラッド材は、鉄鋼材で形成された金属基板と、この金属基板の少なくとも一方の表面に圧接されたろう材層とを備え、前記ろう材層が前記Cu基ろう合金によって形成されたものである。
前記Cu基ろう合金は、冷間加工性に優れるため、ステンレス鋼を含む鉄鋼材の表面にろう材層として、生産性に優れた冷間圧接によって容易にクラッド化することができる。かかるクラッド材は、金属基板をろう接構造物の接合部材として利用することができ、また別途準備したろう材を接合部材間に設置するといった煩雑な作業が必要でないので、ろう接作業性に優れる。
【0014】
また、本発明のろう接構造物は、鉄鋼材で形成された第1接合部材と、鉄鋼材で形成された第2接合部材とを備え、前記第1接合部材と前記第2接合部材とが前記Cu基ろう合金によって接合されたものである。
このろう接構造物は、ステンレス鋼を含む鉄鋼材で形成された前記第1接合部材と前記第2接合部材とが前記Cu基ろう合金によって接合されるので、ろう接部が前記Cu基ろう合金によって形成され、このろう合金の有する優れた特性を備えたものとなり、引いては耐久性に優れる。
【0015】
【発明の実施の形態】
本発明のろう材は、mass%で、Mn:2.0〜29.0%、Ni:5.5〜15.0%、Al:1.0〜5.0%および残部がCuおよび不可避的不純物からなるCu基ろう合金によって形成されたものである。前記Cu基ろう合金は、920〜1100℃程度の融点を有し、耐食性、耐酸化性、特に高温湿潤雰囲気下での耐酸化性に優れ、さらに優れた冷間加工性を有するものであり、その成分(単位mass%)は以下の理由によって限定される。
【0016】
Mn:2.0〜29.0%
MnはCuおよびNiと固溶体を形成する元素であり、耐酸化性を向上させるとともに、Ni添加によって生じる融点の上昇を抑え、Cuろう並みの融点を確保するために添加される。2.0%未満では過少であり、融点が高くなり、ろう接温度の上昇を来す。一方、29.0%を超えると、耐食性および耐酸化性を損なうようになる。このため、Mn量の下限を2.0%、上限を29.0%とし、好ましくはNi量が7.0〜15.0%の下で、20.0〜29.0%とするのがよい。
【0017】
Ni:5.5〜15.0%
NiはMnおよびCuとともに固溶体を形成し、耐食性を向上させるために添加される。5.5%未満では耐食性が劣化し、一方15.0%を超えると融点の上昇を来たすと共にコスト高を招来する。このため、Ni量の下限を5.5%、好ましくは7.0%とし、上限を15.0%とする。Ni量を7.0〜15.0%とする場合は、Mn量を20.0〜29.0%とすることが融点制御の観点から好ましい。
【0018】
Al:1.0〜5.0%
Alは冷間加工性を損なうことなく、高温域における耐食性、耐酸化性、特にCuを主成分とするマトリックスにおける高温湿潤雰囲気での耐酸化性の改善に必須の元素である。Alはマトリックスにほとんど固溶せず、微細なAl2O3粒子となってマトリックス中に分散する。このため、マトリックス中のCuやMnが腐食しても、その腐食の伸展が分散したAl2O3粒子によって抑止されるため、高温湿潤雰囲気での耐酸化性の改善に寄与するものと推察される。1.0%未満ではかかる効果が過少であり、一方5.0%を超えると冷間加工性が劣化する。このため、Al量の下限を1.0%、好ましくは2.0%、上限を5.0%とする。なお、Alの内部酸化粒(Al2O3粒)のマトリックス中における分散は、EPMAによって観察することができる。また、耐酸化性向上元素としては、SiやCrなどの酸化物形成元素も考えられるが、発明者の研究によると、これらの元素は冷間加工性を著しく劣化させるものであり、本発明においては不適な元素であり、不純物である。
【0019】
本発明にかかるCu基ろう合金は上記成分の他、残部Cuおよび不可避的不純物で形成される。不純物として、冷間加工性を劣化させるCr、Si、Sn、Caは少ない程好ましく、合計量で0.1%未満にすることが望ましい。
【0020】
前記Cu基ろう合金は、冷間加工性に極めて優れるため、冷間圧延により十分薄い厚さに減厚することができ、ろう材として使用しやすい箔状やシート状に加工することができる。ろう材の厚さとしては、一般的に、30〜100μm 程度が好ましい。30μm 未満ではろう材量が少ないので、接合部材の接合表面において部分的にろう材不足が生じ、ろう接性に劣る。一方、100μm を超えると、ろう材が過多となり、ろう接部から流れ出て外観不良が生じ、またコスト高を招来する。
【0021】
前記箔状あるいはシート状のろう材を用いた場合、ろう接構造物を構成する接合部材同士を簡単容易にろう接することができる。すなわち、隣接する接合部材の間にろう材を挟持し、目的の形状に組み立て、これを適宜の加熱炉でろう材の融点以上、通常は融点+20〜30℃程度の温度に加熱保持し、ろう材を溶融させればよい。前記加熱は、真空等の非酸化性雰囲気で行うことが好ましい。
前記接合部材は、ステンレス鋼材を含む鉄鋼材によって形成され、これらの鉄鋼材はろう接後、好ましくは800〜900℃程度の温度で焼鈍される。本発明のろう材は、かかる温度では溶融しないため、低い焼鈍温度での長時間焼鈍を行う必要がないため、焼鈍作業を円滑に行うことができる。
【0022】
上記のとおり、本発明のろう材を構成するCu基ろう合金は冷間加工性に優れるので、適宜の鉄鋼材、例えばステンレス鋼で形成された金属基板に容易に接合一体化することができる。図1は、このように金属基板2の一方の表面に前記Cu基ろう合金によって形成されたろう材層3が接合一体化されたクラッド材1を示している。
【0023】
前記クラッド材1は、前記金属基板2の素材を形成する基板シートと、前記ろう材層3の素材を形成するろう材シートとを重ね合わせ、これを一対の圧接ロールに通して両シートを冷間で圧接し、これによって得られた金属基板とろう材層とが圧接された接合シートを拡散焼鈍することによって製造される。圧接の際のロール圧下率は50〜70%程度とされ、拡散焼鈍温度は700〜850℃程度とされる。このクラッド材1のろう材層3も30〜100μm 程度とすることが好ましい。
【0024】
このクラッド材1によれば、鉄鋼材で形成された金属基板2と、これをろう接するためのろう材層3とが一体的に接合されているため、前記金属基板2を接合部材として、別途にろう材を準備することなく、クラッド材1のろう材層3を用いて接合部材同士を容易にろう接することができ、ろう接作業性に優れる。
【0025】
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はかかる実施例によって限定的に解釈されるものではない。
【0026】
【実施例】
下記表1に示す組成のCu基ろう合金を真空誘導炉で溶解し、その鋳造片(厚さ100mm)を仕上温度800℃程度で熱間圧延を行い、厚さ8mmの熱延板を得て、これを800℃程度で焼鈍後、冷間圧延および中間焼鈍を繰り返して50μm のシート状ろう材を得た。このろう材からを試料を採取し、高温湿潤雰囲気下での耐酸化性、高温乾燥雰囲気下での耐酸化性および耐食性を下記の各試験により調べた。これらの調査結果を表1に示す。
【0027】
同表には試料ろう材の融点も併記した。融点が1100℃以下のろう材はカーボンまたはセラミックス系耐火材の炉材、カーボンヒータを備えた汎用加熱炉を用いてろう接を行うことができ、工業用材料として好適である。融点の評価基準については、融点≦1000℃ではろう接性が特に優れるので◎、1000℃<融点≦1100℃は○、1100℃<融点のろう材は汎用の加熱炉では炉材、発熱材の負担が過大となり、炉の寿命が著しく短くなり、工業的生産性に適さないので、×とした。汎用材として、実用上許容されるのは◎、○である。
【0028】
(1) 高温湿潤雰囲気下での耐酸化試験
ステンレス鋼(SUS304)によって形成された基板(サイズ:50mm角、2.0mm厚)の上にほぼ同寸法に切断した各試料のろう材を重ね合わせ、ろう材の融点+20℃で加熱し、ろう材をステンレス鋼板の全面に濡れ広がるように溶融させ、冷却して試験片を作製した。各試験片の重量とろう材の溶着部の面積を測定した後、これらを坩堝に入れ、加熱炉にて、14 vol%O2 −3 vol%CO2−6 vol%H2O−残部N2 の高温湿潤雰囲気中で500℃で200hr保持し、冷却後、再び試験片の重量を測定し、試験片の酸化増量を求め、これによって耐酸化性を評価した。なお、酸化増量は下記式によって算出した。酸化皮膜が脱落した場合、その脱落した皮膜も含めて重量測定を行った。
酸化増量(mg/cm2)={加熱後重量(mg)−加熱前重量(mg)}/面積(cm2)
高温湿潤雰囲気下での耐酸化性の評価基準は、酸化増量が基板(SUS304)の酸化増量(0.15mg/cm2)を基準として、その10倍まで(1.5mg/cm2未満)を◎、10倍以上20倍まで(1.5mg/cm2以上、3.0mg/cm2未満)を○、20倍以上を×とした。実用上、良好な耐酸化性を有するものとして許容される範囲は◎、○である。
【0029】
(2) 高温乾燥雰囲気下での耐酸化試験
上記と同様にして試験片を作製し、これを加熱炉にて大気中で500℃で120hr保持し、加熱後の酸化増量を求め、これによって評価した。評価基準は、酸化増量が基板(SUS304)の酸化増量(0.1mg/cm2)を基準として、その10倍まで(1.0mg/cm2未満)を◎、10倍以上20倍まで(1.0mg/cm2以上、2.0mg/cm2未満)を○、20倍超を×とした。実用上、許容される範囲は◎、○である。
【0030】
(3) 耐食試験
上記耐酸化試験と同様にして試験片を作製した。発電機の駆動用エンジンは、天然ガスのほか、石油燃料を用いるものが主流であるので、ディーゼルエンジンの排ガス凝縮液を模擬した下記組成の腐食液(社団法人自動車技術会の部品腐食試験分科会において規格化された排ガス模擬凝縮液)に試験片を浸漬し、恒温放置(80℃×500hr)後、腐食したろう材表面部分の面積率を求めた。評価基準は、酸化増量が基板(SUS304)の腐食面積率(0.05%)を基準として、その10倍まで(0.5%未満)を◎、10倍以上20倍まで(0.5%以上、1.0%未満)を○、20倍超を×とした。実用上、許容される範囲は◎、○である。
・腐食液組成(単位ppm 、pH=4.0)
Cl− :100、NO3 − :20、SO3 2−:600、
SO4 2−:600、CH3COO−:800
【0031】
【表1】
【0032】
表1の結果より、発明例のろう材は融点が900〜1100℃の範囲内であり、耐食試験結果も最大で0.6%に止まっている。また、湿潤下、乾燥下のいずれの酸化試験結果も良好である。特に、Alを2.0%以上含む試料No. 1〜5および9〜14は耐酸化性に優れている。さらに、Mnが20〜29%、Niが7.0〜15%の試料No. 9〜14では融点が1000℃以下であり、ろう接性も優れている。一方、試料No. 21〜28は、Ni量が過少であるため、総じて耐食性が劣化しており、またAl量が1.0%未満と過少なNo. 28〜35および38は、高温湿潤雰囲気下での耐酸化性が劣っている。また、Alが1.0%以上含有していても、Mn量が本発明範囲超の試料No. 36および37は、やはり高温湿潤雰囲気下での耐酸化性が劣化している。
【0033】
【発明の効果】
本発明のろう材は、Mn:2.0〜29.0%、Ni:5.5〜15.0%、Al:1.0〜5.0%および残部50%以上のCuからなる、Mn−Ni−Al−Cu合金で形成したので、CuリッチのMn−Ni−Cuマトリックス中にAl酸化物を微細に分散させることができ、乾燥環境下のみならず特に湿潤環境下での高温耐酸化性に優れる。さらに、冷間加工性に優れ、融点も1100℃以下であり、耐食性にも優れるため、これらの特性が総合的に要求される熱交換器等の鉄鋼製ろう接構造物のろう接に使用されるろう材として優れる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のクラッド材の断面図を示す。
【符号の説明】
1 クラッド材
2 金属基板
3 ろう材層
Claims (6)
- mass%で、
Mn:2.0〜29.0%、
Ni:5.5〜15.0%、
Al:1.0〜5.0%
および残部がCuおよび不可避的不純物からなるCu基ろう合金で形成された、ろう材。 - Al量が2.0〜5.0%である請求項1に記載したろう材。
- Mnが20.0〜29.0%、Niが7.0〜15.0%である請求項1または2に記載したろう材。
- 厚さが30〜100μm の箔状あるいはシート状に形成された、請求項1〜3のいずれか1項に記載したろう材。
- 鉄鋼材で形成された金属基板と、この金属基板の少なくとも一方の表面に圧接されたろう材層とを備え、
前記ろう材層が請求項1〜3のいずれか1項に記載したCu基ろう合金によって形成された、クラッド材。 - 鉄鋼材で形成された第1接合部材と、鉄鋼材で形成された第2接合部材とを備え、前記第1接合部材と前記第2接合部材とが請求項1〜3のいずれか1項に記載したCu基ろう合金によってろう接された、ろう接構造物。
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-
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