JP2004042209A - 細穴加工方法とその装置 - Google Patents
細穴加工方法とその装置 Download PDFInfo
- Publication number
- JP2004042209A JP2004042209A JP2002204087A JP2002204087A JP2004042209A JP 2004042209 A JP2004042209 A JP 2004042209A JP 2002204087 A JP2002204087 A JP 2002204087A JP 2002204087 A JP2002204087 A JP 2002204087A JP 2004042209 A JP2004042209 A JP 2004042209A
- Authority
- JP
- Japan
- Prior art keywords
- oil hole
- hole
- torsion
- tool
- drill
- Prior art date
- Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
- Pending
Links
Images
Landscapes
- Drilling And Boring (AREA)
- Drilling Tools (AREA)
Abstract
【課題】油穴付きねじれ工具、例えば油穴付きねじれドリルによる細穴加工において、クーラント液不足を生じることなく加工面の高い面粗度や加工位置度精度を維持させた状態で効率良く加工できるようにした細穴加工方法とその装置を提供する。
【解決手段】主軸の先端部1Aに装着させた小径の油穴付きねじれドリルTDには、上記主軸1の回転時に10Mpa以上で14Mpa程度までの超高圧クーラント液Cを圧入するとともに、上記油穴付きねじれドリルTDの刃先に開口する油孔hからワ−ク加工穴内の穴あけ面に超高圧クーラント液Cを噴射させ、且つ穴あけ方向に送りをかける細穴加工方法である。
【選択図】 図8
【解決手段】主軸の先端部1Aに装着させた小径の油穴付きねじれドリルTDには、上記主軸1の回転時に10Mpa以上で14Mpa程度までの超高圧クーラント液Cを圧入するとともに、上記油穴付きねじれドリルTDの刃先に開口する油孔hからワ−ク加工穴内の穴あけ面に超高圧クーラント液Cを噴射させ、且つ穴あけ方向に送りをかける細穴加工方法である。
【選択図】 図8
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、小径の油穴付きねじれドリル等による細穴加工方法とその装置に係り、特にねじれドリルに対して、超高圧クーラント液を供給することで刃先へのクーラント液供給を可能とし、細穴加工が効率良く実施できるようにしたものである。
【0002】
【従来の技術】
従来の細穴加工方法は、放電加工機による加工のほか、油孔の明いた小径ガンドリルにクーラント液を供給しながら細穴加工するものが代表的な事例である。その小径ガンドリルの具体的な構成は、ガンドリルにクーラント用通路が形成さたものが使用される。このクーラント用通路のクーラント導入口は、ガンドリルの基端部に形成され、前記クーラント導出口は、ガンドリルの先端部に形成されている。前記クーラント導入口には、クーラント液供給装置から4〜7Mpa前後に高めた圧力クーラント液が供給され、ガンドリルの先端部に形成されているクーラント導出口から細穴加工面に噴射される。
【0003】
上記ガンドリルを使用した穴明け装置によると、クーラント液供給装置からの比較的に低い4〜7Mpa前後の圧力クーラント液でも、細穴加工内の切粉の排出性能が維持される。しかし、下記の諸条件における問題点がある。第1に、通常の油穴付きねじれドリルに比べて、3倍も高価であり、折損によるランニングコストが高く付くこと。第2に、ガンドリルは切刃の溝が真っ直ぐであるから、クーラント液の供給性や切粉の排出性に優れているものの切削性能に劣り、高速送りができないから切削能率が悪いこと。第3に、ガンドリルは切刃の溝が真っ直ぐであるから、大きな切削抵抗を受けて、工具寿命が短い上に、面粗度や加工精度が低いこと。等の課題が多くある。
【0004】
そこで、上記ガンドリルにおける問題解決のために、油穴付きねじれドリルによる細穴加工の可能性に係る各種加工の試みがなされている。しかし、油穴付きねじれドリルの油穴は、穴径が小さいとともに、長い螺旋経路を成しており、この経路内での圧力損失が大きくなるため、クーラント液供給装置から4〜7Mpa前後に高めた圧力クーラント液を供給しても、クーラント液が刃先まで供給されないことがある。例え、供給されても非常に弱い圧力クーラントとなる。この現象は、深穴加工・細穴加工に有効とされる粘性の高い不水溶性切削油剤のクーラント液を使用時において、その現象が顕徴に現われる。この解決策として、単に、油穴付きねじれドリルに7Mpa以上に高めた圧力クーラント液を供給する手段を構じただけだと、クーラント液の供給経路に液漏れ等の弊害が発生してしまい、到底実用化することができない。
【0005】
然るに、細穴加工及びこの深穴加工時において、油穴付きねじれドリルを使用すると、この刃先に、クーラン液の不足を来たして発熱し、切粉の排出性が阻害されて細穴・深穴加工を困難ならしめ、工具破損を早期に招いている。更に、クーラント液の不足は加工精度や加工面の面粗度を招いてしまっているという問題点がある。このため、従来は、油穴付きねじれドリルを使用しての細穴加工及びこの深穴加工は行われていなかった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記従来のガンドリルにおける問題や油穴付きねじれドリルによる細穴加工が持つ各種の問題点に鑑みてなされたもので、油穴付きねじれ工具、例えば油穴付きねじれドリルによる細穴加工において、クーラント液不足を生じることなく加工面の高い面粗度や加工位置度精度を維持させた状態で効率良く加工できるようにした細穴加工方法とその装置を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明の請求項1の細穴加工方法は、主軸の先端部に装着させた小径の油穴付きねじれ工具には、上記主軸の回転時に油穴付きねじれ工具の油穴に10Mpa以上で14Mpa程度までの超高圧クーラント液を圧入するとともに、油穴付きねじれ工具の刃先に開口する油穴からワ−ク加工穴内の穴あけ面に超高圧クーラント液を噴射させ、且つ穴あけ方向に送りをかけて穴あけ加工することを特徴とする。
【0008】
本発明の請求項2の細穴加工方法は、請求項1記載の細穴加工方法において、油穴付きねじれ工具の油穴は、工具のねじれに沿って挿通されるとともに、その先端が逃げ面に開口され、この開口からワ−ク加工穴内の穴あけ面に向けて超高圧クーラント液を噴射させることを特徴とする。
【0009】
本発明の請求項3の細穴加工方法は、請求項1または2記載の細穴加工方法において、超高圧クーラント液は、不水溶性切削油剤であることを特徴とする。
【0010】
本発明の請求項4の細穴加工方法は、請求項1または2記載の細穴加工方法において、油穴付きねじれ工具の送りは、数ミリ前後のペックフィードとしたことを特徴とする。
【0011】
本発明の請求項5の細穴加工方法は、請求項1から4項のいずれか1項記載の細穴加工方法において、油穴付きねじれ工具を、油穴付きねじれドリルとしたことを特徴とする。
【0012】
本発明の請求項6の細穴加工装置は、主軸の先端部に装着され油穴を挿通した小径の油穴付きねじれドリルと、上記油穴付きねじれドリルを主軸先端部に装着させるフランジに油孔を挿通した工具ホルダと、上記工具ホルダを装着するとともにフランジの油孔開口部と接続する油孔開口部を軸端面等に配置した主軸と、上記主軸の油孔開口部に連絡する主軸内の挿通孔に接続し10Mpa以上で14Mpa程度までの超高圧クーラント液を発生させる超高圧クーラント液供給手段と、上記主軸を回転自在に承持する主軸頭を少なくとも軸方向に進退制御する送り制御手段と、を装備したことを特徴とする。
【0013】
本発明の請求項7の細穴加工装置は、請求項6記載の細穴加工装置において、上記送り制御手段は、主軸に装着する油穴付きねじれドリルに対して、主軸の回転駆動時に軸方向に数ミリ前後のペックフィード制御を行なわせることを特徴とする。
【0014】
【作用】
上記請求項1の細穴加工方法によると、まず、主軸の先端部に装着させた小径の油穴付きねじれ工具の油穴には、10Mpa以上で14Mpa程度までの超高圧クーラント液が圧入される。これで、上記油穴付きねじれ工具の刃先に開口している油穴から、ワ−クの細穴となる穴あけ面に超高圧クーラント液が噴射される。上記超高圧クーラント液が噴射された状態において、油穴付きねじれ工具を回転させるとともに、穴あけ方向に送りをかて細穴明けが進められる。もし、油穴付きねじれ工具がドリルならば、深い細穴の加工となり、エンドミルであるならば、穴あけ方向に直角な方向に送りを掛けると、細穴溝の加工が進められる。
【0015】
然るに、超高圧クーラント液が噴射された状態において、油穴付きねじれ工具で、L/D=10以上の深穴・細穴加工や細穴溝加工が実施できるから、油穴付きねじれ工具の刃先にクーラントが行き渡って発熱を抑制するとともに、切粉の排出性が促進される。この結果、細穴の加工面の面粗度及び加工位置度の精度が改善される。更に、摩擦抵抗の低減により、工具破損が無くなって工具寿命が改善されてランニングコストの低減が図れる。また、ガンドリルよりも約10倍程度の高速送りが可能となって加工能率が改善される。
【0016】
上記請求項2の細穴加工方法によると、油穴付きねじれ工具の油穴は、工具のねじれに沿って挿通されその先端が逃げ面に開口されているが、この開口からワ−ク加工穴内の穴あけ面に向けて超高圧クーラント液が噴射されるから、長い螺旋経路を成した経路内での圧力損失の影響を大きく受けない。
【0017】
然るに、油穴付きねじれ工具において、切粉の排出性が改善されて、クーラント液不足による工具刃先の発熱も少なく細穴加工・深穴加工・細穴溝加工等が円滑に実施でき、工具の寿命延長と加工面の面粗度や加工位置精度の改善が図れる。
【0018】
上記請求項3の細穴加工方法によると、超高圧クーラント液について、深穴加工・細穴加工・細穴溝加工に有効とされる粘性の高い不水溶性切削油剤ができる。これにより、ワークの深穴加工・細穴加工・細穴溝加工等が、加工面の高い面粗度や加工位置精度のもとに効率良く実施される。
【0019】
上記請求項4の細穴加工方法によると、油穴付きねじれ工具の送りは、数ミリ前後のペックフィードとしたから、ワークから削り出される切粉が連続せず、短冊状となって切粉の排出性が改善された穴明け加工を可能とする。また、油穴付きねじれ工具のペックフィードにおいて、ガンドリルより約数倍程度の高速送りが可能となって加工能率が改善される。
【0020】
上記請求項5の細穴加工方法によると、請求項1から4項のいずれか1項記載の細穴加工方法において、油穴付きねじれ工具を油穴付きねじれドリルとしたから、油穴付きねじれドリルにおいて、L/D=10以上の深穴・細穴加工がガンドリルよりも約10倍の高速送りが可能となって加工能率が改善される。更に、油穴付きねじれドリルの送りについて、数ミリ前後のペックフィードとすると、ワークから削り出される切粉が連続せず、短冊状となって切粉の排出性が改善されて連続した穴明け加工を可能とする。また、油穴付きねじれドリルのペックフィードにおいても、ガンドリルより約5倍程度の高速送りが可能となって加工能率が改善される。また、工具刃損してもガンドリルより低価格であり、ランニングコストも低く抑えられる。
【0021】
上記請求項6の細穴加工装置によると、主軸の先端部に装着され油穴を挿通した小径の油穴付きねじれドリルと、上記油穴付きねじれドリルを主軸先端部に装着させるフランジに油孔を挿通した工具ホルダと、上記工具ホルダを装着するとともにフランジの油孔開口部と接続する油孔開口部を軸端面等に配置した主軸と、上記主軸の油孔開口部に連絡する主軸内の挿通孔に接続し10Mpa以上で14Mpa程度までの超高圧クーラント液を発生させる超高圧クーラント液供給手段と、上記主軸を回転自在に承持する主軸頭を少なくとも軸方向に進退制御する送り制御手段と、を装備したものである。
【0022】
これにより、請求項1〜請求項4の細穴加工方法を円滑に実施させることができる。更に、主軸の回転時に上記油穴付きねじれドリルの油穴に10Mpa以上で14Mpa程度までの超高圧クーラント液が圧入でき、上記油穴付きねじれドリルの刃先に開口している油穴からワ−ク加工穴内の穴あけ面に超高圧クーラント液を噴射させられる。そして、上記超高圧クーラント液が噴射された状態において、油穴付きねじれドリルを穴あけ方向に送りをかて穴あけ加工を実施させることができる。
【0023】
上記請求項7の細穴加工装置によると、請求項6記載の細穴加工装置において、請求項5の細穴加工方法である主軸の回転駆動時に軸方向に数ミリ前後のペックフィード制御を行なわせることができる。
【0024】
これにより、油穴付きねじれドリルにおいて、ペックフィードを行わせても、ガンドリルより約5倍程度の高速送りを可能として加工能率を改善させることができる。
【0025】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係る細穴加工装置とその加工方法を、図面に示す実施形態により説明する。図1は細穴加工方法を実施するための細穴加工装置(工作機械)の右側面図、図2は工具ホルダと主軸の断面図、図3は工具ホルダと主軸端との接続状態の断面図、図4は主軸先端面と工具ホルダのフランジ端面との斜視図、図5と図6は工具ホルダの断面図、図7は主軸先端面と工具ホルダのフランジ端面との斜視図、図8は主軸の回転制御及びペックフィードを行う制御手段のブロック線図、図9は連続送りの説明図、図10はペックフィードの説明図である。図11と図12は油穴付きねじれドリルによる細穴加工方法を示す作用断面図である。
【0026】
図1と図2において、本発明に係る細穴加工方法を実施する細穴加工装置(工作機械)100は、一般的なマシニングセンタである。HPは超高圧クーラント発生装置(超高圧クーラント液供給手段)であり、超高圧クーラント液(10〜14Mpa)Cを発生させる。この装置は、既に市販されている公知のもので、適宜仕様のものが採用される。上記超高圧クーラント液Cは、配管Pにより主軸1の中心孔2に挿通したドローイングボルト3の尾端に接続される。ドローイングボルト3のセンター孔3Aを供給管路とし、途中で主軸1に明けた2本の供給管路6へと移り、主軸先端近くに内蔵した逆止弁V1,V2に至る。この逆止弁V1,V2は、超高圧クーラント液Cの圧力で開口し、圧力の消滅で閉口する。上記逆止弁V1,V2の出口側には、管状の2本のクーラント供給接続口8を軸心方向に移動可能に装嵌している。図1において、4は加工エリアで発生したミストの回収管であり、5はミスト吸引機である。
【0027】
上記クーラント供給接続口8は、図2と図3に示すように、逆止弁V1,V2に対面する側に大きな嵌合孔φDが明けられ、この内孔8aが嵌合孔φDと連続している。また、主軸先端面1Aから外部へ突出する先端側に小さな内孔φdが明けられている。これにより、クーラント供給接続口8は、この内部に超高圧クーラント液Cが供給されると、内孔φdから外部へ噴出するとともに、大きな嵌合孔φDで発生する大きな推進力Fによりクーラント供給接続口8が主軸先端方向へ移動される。図3と図4に示すように、上記主軸先端面1Aから覗いている2つのクーラント供給接続口8は、工具ホルダTH1のフランジ端面10Aに凹設した2つの対接面(凹面)10Bに推進力Fで当接する。工具ホルダTH1も、そのフランジ端面10Aを主軸先端面1Aに密着させて主軸1の穴1C内に装着される。以上の構成で、工具ホルダTH1のフランジ端面10Aに、超高圧クーラント液Cのサイドスルー(フランジスルー)20が形成される。
【0028】
上記サイドスルー(フランジスルー)20を備えた工具ホルダTH1は、マシニングセンタにおいて、使用されている通常の工具ホルダと同一規格のものである。即ち、工具ホルダTH1のフランジ10には、工具交換アームの2つの把持部Hに把持されるV溝環10Cを備えている。これにより、サイドスルー(フランジスルー)付工具ホルダTH1は、これを自動工具交換装置の工具マガジン内に混在又は単独に装備される。そして、工具交換された上記サイドスルー(フランジスルー)付工具ホルダTH1を主軸1への装着時に、主軸先端面1Aに設けたクーラント供給接続口8とサイドスルー(フランジスルー)付工具ホルダTH1のフランジ端面に設けた受給接続口11とが接続される。
【0029】
上記接続状態は、図2と図3に示すように、主軸1の先端面1Aにあけたクーラント供給接続口8と、フランジ端面10Aに設けた2つの対接面10Bの2つの受給接続口11が接合してサイドスルー(フランジスルー)20を形成する。上記工具ホルダTH1の受給接続口11と繋がる2つの供給通路13は、図5に示すように、細穴用工具T1のセンタースルーSに繋がるクーラント供給通路15と、工具ホルダ内で接続されている。尚、図5に示す上記工具ホルダTH1は、二面拘束タイプであり、このフランジにおけるフランジ端面10Aに、サイドスルー(フランジスルー)20を形成したものである。更に、図6に示すテーパーシャンク部31を備えた工具ホルダTH2においても、実施可能である。その詳細構成は、テーパーシャンク部31以外の構成が二面拘束タイプの工具ホルダTH1と同一につき、同一符号を附して説明を省略する。
【0030】
更に、上記各工具ホルダTH1,TH2において、図7に示すように、主軸先端面1Aに設けたクーラント供給接続口8の周囲を凹面1Bとし、フランジ端面10Aに設けた受給接続口11を平坦面上に開口させた構成に変更しても良い。上記工具ホルダTH1,TH2において、対接面から超高圧クーラント液Cが漏れたとしても、漏れは凹面1B又は10Bとの狭い領域内だけの漏れとなり、且つ加圧力Fもこの凹面内だけに制限される。このため、主軸先端面1Aとこれに対面するフランジ端面10Aの全周面に、超高圧クーラント液Cが漏れ渡って加圧力Fが波及することがなく、確実な保持が可能である。
【0031】
本発明の細穴加工装置100において、その要部構成となる主軸の回転制御及びペックフィードを行うペックフィード制御手段200を、図8に示すブロック線図により説明する。まず、主軸先端部1Aは、油穴を挿通した小径の油穴付きねじれドリルTDが工具ホルダTH1,TH2を介して装着されている。上記油穴付きねじれドリルTDは、主軸先端部に装着させた工具ホルダのフランジに油孔を挿通している。これで、上記工具ホルダを装着する主軸との間でフランジの油孔開口部と油孔開口部が着脱可能に接続されている。超高圧クーラント発生装置(超高圧クーラント液供給手段)HPは、10Mpa以上で14Mpa程度までの超高圧クーラント液Cを発生させることができ、上記主軸の油孔開口部に連絡するように、主軸内の挿通孔(センタースルー)に接続されている。しかして、図11と図12に示すように、ワークWに正対する油穴付きねじれドリルTDの油孔hを通して刃先30に開口する噴射口h1から超高圧クーラント液Cが噴射される。
【0032】
本発明の細穴加工方法に使用される油穴付きねじれドリルTDは、その外径φDがφ1.0前後〜φ2.5前後の外径領域の細い小径ドリルが効果的である。更に、使用されるクーラント液は、粘性が比較的に高い不水溶性切削油剤が最適である。具体的には、カストロール社製の「アイロカット334:動粘度9.5mm2/sec(40℃)、密度0.87g/ml(20℃)、塩素含有量0%。アイロカット734:動粘度13.7mm2/sec(40℃)、密度0.88g/ml(20℃)、塩素含有量0%。その他のアイロカット系の不水溶性切削油剤や他の分類系の切削油」が使用される。更に、一般の切削加工に使用される切削油も使用可能である。
【0033】
上記油穴付きねじれドリルTDを装着する主軸1は、ドライバーDDからの指令で起動する主軸モータM1により回転駆動される。上記主軸1を自在に承持する主軸頭SHは、軸方向(Z軸方向)に進退制御するZ軸送り制御手段SZにより、Z軸送りモータM2が制御される。上記Z軸送り制御手段SZは、主軸1に装着する油穴付きねじれドリルTDに対して、主軸1の回転駆動時にZ軸方向に連続送り(図9を参照)又は数ミリ前後のペックフィード制御(図10を参照))を任意に切換えて行なわせる。上記ドライバーDDとZ軸送り制御手段SZとは、NC制御装置50により、総括的に制御されるとともに、予め入力されているプログラムにより、自動運転される。尚、油穴付きねじれドリルTDは、X軸方向への送りを、X軸送り制御手段SXがX軸送りモータ(図示なし)の駆動制御で行い、Y軸方向への送りを、Y軸送り制御手段SYがY軸送りモータ(図示なし)の駆動制御で行われる。
【0034】
本発明の細穴加工装置100は、上記構成からなり、本発明の細穴加工方法について、図8〜図12により作用を説明する。本発明の細穴加工方法に使用される細穴加工装置100は、まず、図8に示すように、油穴付きねじれドリルTDの油穴hに超高圧クーラント発生装置(超高圧クーラント液供給手段)HPから10Mpa以上で14Mpa程度までの超高圧クーラント液Cが供給される。また、油穴付きねじれドリルTDを装着する主軸1は、ドライバーDDからの指令で起動する主軸モータM1により回転駆動される。続いて、主軸1に装着する油穴付きねじれドリルTDに対して、Z軸送り制御手段SZがZ軸送りモータM2を駆動制御してZ軸方向に進退制御することで、ワークWに対する細穴加工が始まる。上記ワークWに対する細穴加工は、図9に示すように、主軸1の回転駆動時にZ軸方向に連続送りして、穴深さLの細穴が明けられる穴あけ工程制御によって効率良く行われる。また、ドリルTDへの切屑の巻付きを防止したい場合は、図10に示すように、Z軸送り制御手段SZによりZ軸送りモータM2を正逆駆動し、Z軸方向に進退制御させることで数ミリ前後のペックフィードの送り量L1にてペックフィード制御し、穴深さLの細穴が明けられる穴あけ工程制御とが任意に切換えて行なれる。
【0035】
上記油穴付きねじれドリルTDによるワークWに対する細穴加工の詳細作用は、図11(穴あけの初期)から図12(穴あけの末期)に示すようにして進められる。高速回転する油穴付きねじれドリルTDにおいて、超高圧クーラント液Cは、ねじれ溝に沿って明けられた長い螺旋経路の油孔hの経路内での圧力損失を起こしつつも、10Mpa以上で14Mpa程度まで高められているから、この超高圧クーラント液Cが刃先30の逃げ面に到達する。ここで、超高圧クーラント液Cは、逃げ面に明けた開口h1からワークWの細穴W1の切削面に向けて強く噴射される。この結果、超高圧クーラント液Cは、ワークWにあけられる細穴W1の深部まで確実に供給伝達されるから、クーラント液の不足による刃先の発熱とこれに伴なう刃先摩耗や位置精度・面租度の低下を生じさせることがなくなり、効率の良い細穴加工が進められる。更に、油穴付きねじれドリルTDの刃先から創出される切粉Eは、極めて狭い細穴W1内に有るものの、14Mpa程度まで高めた超高圧クーラント液Cにより、確実且つ効率良く細穴外へ排出される。
【0036】
【実施例】
続いて、上記細穴加工装置100を使用した細穴加工方法による加工例を、図13〜図16により説明する。まず、図13は従来技術で、通常のクーラント圧力となる「5Mpa」とした場合の加工データを示し、図14は本発明の超高圧クーラント液である「10Mpa以上で14Mpa程度」まで高めた場合の加工データを示している。図13と図14とはクーラント圧力以外を、同一の加工条件とした。その数値は、使用工具:φ2.4x75xφ3、被削材(ワーク):SUS304(HRB80)、切削条件:周速V=35m/min、送りF=0.05mm/rev、加工深さ30mm(L/D=12.5)、ペック3mm、クーラント液(切削油材):アイロカット334とした。尚、クーラント圧力が5Mpaの時は、毎分165CCの吐出油量となり、クーラント圧力が14Mpaの時は、毎分390CCの吐出油量となった。
【0037】
上記同一の加工条件において、ワークWに対して、1〜153個の細穴加工を進めながら、プログラム上の位置と実際の位置、内径と真円度、X軸とY軸の「位置のズレ」、位置度、直角度、面租度(Rz)のデータ取りを行った。このデータによると、面租度(Rz)は「穴数95において、4.4732。穴数153において、5.3169」であり、クーラント圧力が「14Mpa」の場合の面租度(Rz)は「穴数95において、2.6256。穴数153において、2.6757」である。上記データの比較から、クーラント圧力を「14Mpa」に高くすると面租度(Rz)の改善が大幅に行われることが立証されている。更に、X軸とY軸の「位置のズレ」、位置度の改善効果も認められる。
【0038】
上記「深穴加工での位置度精度」について、図15に示すように、Y軸における各位置での変化を図表化した。この図表からわかるように、クーラント圧力が「5Mpa」の場合の「位置度」は、「0.048〜0.16」の範囲に分散しているのに対し、クーラント圧力が「14Mpa」の場合の「位置度」は、「0.00〜0.098」の範囲に分散している。この図表の比較から、クーラント圧力を「14Mpa」に高くすると「位置度」の改善が大幅に行われることが立証されている。
【0039】
更に、図16は、使用工具:φ2.4x75xφ3の刃先摩耗状態を、クーラント圧力との関係で対比した外観写真により示している。クーラント圧力が「5Mpa」で150穴目の刃先摩耗量m1に対し、クーラント圧力が「14Mpa」で150穴目の刃先摩耗量m2の方が、摩耗が微量であることが確認できる。
【0040】
尚、本発明の細穴加工方法の実施例は、超高圧クーラント液の圧力を14Mpaに設定した場合におけるデータの説明であった。しかし、実際に超高圧クーラント液の圧力を14Mpaから低下させて行き、10Mpa前後の圧力においても、上記作用・効果が維持されていることを確認した。一方、超高圧クーラント液の圧力を14Mpa以上に高めることは、超高圧クーラント発生装置(超高圧クーラント液供給手段)HPの大型化による設備費の増大と電力量の増大を招き、細穴加工装置100の実用的・経済的な領域から外れる。更には、小径工具を14Mpa以上の超高圧クーラント液では歪ませてしまい、希望する加工精度を保った細穴加工が不可能になる。
【0041】
処で、本発明の細穴加工方法に使用される工具は、油穴付きねじれドリルTDに限定されない。例えば、ワークの深穴加工・細穴加工に止まらず、細穴溝加工を行いたい場合は、図17に示す油穴付きねじれエンドミルEMが、本発明の細穴加工方法に使用できる。この油穴付きねじれエンドミルEMは、例えば、3枚の刃を持ち、その軸心方向には3本の通孔hがあけられ、先端の逃げ面に開口h1している。上記油穴付きねじれエンドミルEMにより、ワークWに対する細穴W1の加工に続いて、溝方向の送りをかけて「細穴溝W2の加工」を行う。この細穴溝加工のはじめの工程となる「細穴加工時」には、外径がφ2.5以下の小径になると、上記油穴付きねじれドリルTDと同様な加工条件で加工することで、同様な作用・効果が発揮される。勿論、溝方向の送りの工程においても、同様な作用・効果が発揮される。
【0042】
以上のように、本発明の細穴加工方法に使用される工具は、油穴付きねじれドリルTDや油穴付きねじれエンドミルEMが最適な作用・効果を発揮する。しかし、これらの工具に止まらず、その他の類似工具においても同様な作用・効果が期待できる。
【0043】
【発明の効果】
請求項1によると、高圧クーラント液が噴射された状態において、深穴加工・細穴加工の他に細穴溝加工等が実施できるから、油穴付きねじれ工具の刃先にクーラントが行き渡って発熱が抑制できるとともに、切粉の排出性が促進できる。しかして、油穴付きねじれ工具で、L/D=10以上の深穴加工が可能である。更に、細穴の加工精度や加工面の面粗度が改善され、早期の工具破損が無くなって工具寿命が改善されランニングコストの低減が図れるとともに、ガンドリルよりも約10倍程度の高速送りが可能である。
【0044】
上記請求項2の細穴加工方法によると、油穴付きねじれ工具の油穴は、工具のねじれに沿って挿通されその先端が逃げ面に開口されこの開口からワ−ク加工穴内の穴あけ面に向けて高圧クーラント液が噴射されるから、長い螺旋経路を成した経路内での圧力損失の影響を大きく受けず、切粉の排出性が改善されて、クーラント不足による工具刃先の発熱も少なく細穴・深穴加工が円滑に実施でき、工具の寿命延長と加工精度や加工面の面粗度の改善ができる。油穴付きねじれ工具において、L/D=10以上の深穴加工が可能である。
【0045】
上記請求項3の細穴加工方法によると、高圧クーラント液について、深穴加工・細穴加工の他に細穴溝加工等に有効とされる粘性の高い不水溶性切削油剤を使用したから、ワークの深穴加工・細穴加工等が高い加工精度や加工面の面粗度のもとに効率良く実施できる。
【0046】
上記請求項4の細穴加工方法によると、油穴付きねじれ工具の送りは、数ミリ前後のペックフィードとしたから、ワークから削り出される切粉が連続せず、短冊状となって切粉の排出性が改善されて連続した穴明け加工を可能にできる。更に、油穴付きねじれ工具のペックフィードによるときも、ガンドリルより約数倍程度の高速送りが可能となり、穴あけ作業効率が改善できる。
【0047】
上記請求項5の細穴加工方法によると、請求項1から4項のいずれか1項記載の細穴加工方法において、油穴付きねじれ工具を油穴付きねじれドリルとしたから、従来は困難であったL/D=10以上の深穴加工・細穴加工が可能である。また、ガンドリルよりも約10倍程度の高速送りが可能である。更に、油穴付きねじれドリルの送りについて、数ミリ前後のペックフィードとすることでワークから削り出される切粉が連続せず、短冊状となって切粉の排出性が改善されて連続した穴明け加工が可能である。また、油穴付きねじれドリルのペックフィードにおいて、ガンドリルより約5倍程度の高速送りが可能となって加工能率が改善される。また、工具刃損してもガンドリルより低価格であり、ランニングコストも低く抑えられる。
【0048】
上記請求項6の細穴加工装置によると、主軸先端部に装着され油穴を挿通した小径の油穴付きねじれドリルと、上記油穴付きねじれドリルを主軸先端部に装着させるフランジに油孔を挿通した工具ホルダと、上記工具ホルダを装着するとともにフランジの油孔開口部と接続する油孔開口部を軸端面等に配置した主軸と、上記主軸の油孔開口部に連絡する主軸内の挿通孔に接続し10Mpa以上で14Mpa程度までの高圧クーラントを発生させる高圧クーラント液供給手段と、上記主軸を回転自在に承持する主軸頭を少なくとも軸方向に進退制御する送り制御手段と、を装備した。これにより、請求項1〜3項までの細穴加工方法を円滑に実施することができる。更に、上記高圧クーラント液が噴射された状態において、油穴付きねじれドリルを穴あけ方向に送りをかて穴あけ加工を実施できる。
【0049】
上記請求項7の細穴加工装置によると、送り制御手段は、主軸に装着する油穴付きねじれドリルに対して、主軸の回転駆動時に軸方向に数ミリ前後のペックフィード制御を行なわせるから、請求項4の細穴加工方法について、油穴付きねじれドリルのペックフィードにてガンドリルより約5倍程度の高速送りを行わせることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の細穴加工方法を実施する工作機械の右側面図である。
【図2】本発明の主軸と工具ホルダの断面図である。
【図3】主軸と工具ホルダとの接続作用の断面図である。
【図4】主軸と工具ホルダとの接続部の斜視図である。
【図5】二面拘束工具ホルダの断面図である。
【図6】テーパーシャンク工具ホルダの断面図である。
【図7】主軸と工具ホルダとの接続部の斜視図である。
【図8】主軸の回転制御及びペックフィード制御手段のブロック線図である。
【図9】油穴付きねじれドリルによる連続送りを示す説明図である。
【図10】油穴付きねじれドリルによるペックフィードを示す説明図である。
【図11】油穴付きねじれドリルによる細穴加工方法を示す作用断面図である。
【図12】油穴付きねじれドリルによる細穴加工方法を示す作用断面図である。
【図13】クーラント圧力とドリルの刃先摩耗の端面・刃先を写真で示す外観図である。
【図14】細穴加工での低いクーラント圧力と面租度の関係を示す特性図である。
【図15】細穴加工での高いクーラント圧力と面租度の関係を示す特性図である。
【図16】深穴加工でのクーラント圧力と位置度精度との関係の精度分布図である。
【図17】油穴付きねじれエンドミルの外観図である。
【図18】油穴付きねじれエンドミル細穴溝加工の外観図である。
【符号の説明】
1 主軸
1A 主軸先端面
1B 対接面(凹面)
1C 穴
3 ドローイングボルト
3A センター孔
4 回収管
5 ミスト吸引機
6 供給管路
8 クーラント供給接続口
8a 内孔
10 フランジ
10A フランジ端面
10B 対接面(凹面)
10C V溝環
11 受給接続口
20 サイドスルー(フランジスルー)
30 刃先
31 テーパーシャンク部
50 NC制御装置
100 細穴加工装置(工作機械)
200 ペックフィード制御手段
C 超高圧クーラント液
φD 嵌合孔
φd 内孔
DD ドライバー
E 切粉
EM 油穴付きねじれエンドミル
F 推進力
L1 ペックフィードの送り量
L 穴深さ
M1 主軸モータ
M2 Z軸送りモータ
m1,m2 刃先摩耗量
h 油孔
h1 噴射口、開口
HP 超高圧クーラント発生装置(高圧クーラント液供給手段)
P 配管
SH 主軸頭
SX X軸送り制御手段
SY Y軸送り制御手段
SZ Z軸送り制御手段
TD 油穴付きねじれドリル
TH1 二面拘束工具ホルダ
TH2 テーパーシャンク工具ホルダ
V1.V2 逆止弁
W ワーク
W1 細穴
【発明の属する技術分野】
本発明は、小径の油穴付きねじれドリル等による細穴加工方法とその装置に係り、特にねじれドリルに対して、超高圧クーラント液を供給することで刃先へのクーラント液供給を可能とし、細穴加工が効率良く実施できるようにしたものである。
【0002】
【従来の技術】
従来の細穴加工方法は、放電加工機による加工のほか、油孔の明いた小径ガンドリルにクーラント液を供給しながら細穴加工するものが代表的な事例である。その小径ガンドリルの具体的な構成は、ガンドリルにクーラント用通路が形成さたものが使用される。このクーラント用通路のクーラント導入口は、ガンドリルの基端部に形成され、前記クーラント導出口は、ガンドリルの先端部に形成されている。前記クーラント導入口には、クーラント液供給装置から4〜7Mpa前後に高めた圧力クーラント液が供給され、ガンドリルの先端部に形成されているクーラント導出口から細穴加工面に噴射される。
【0003】
上記ガンドリルを使用した穴明け装置によると、クーラント液供給装置からの比較的に低い4〜7Mpa前後の圧力クーラント液でも、細穴加工内の切粉の排出性能が維持される。しかし、下記の諸条件における問題点がある。第1に、通常の油穴付きねじれドリルに比べて、3倍も高価であり、折損によるランニングコストが高く付くこと。第2に、ガンドリルは切刃の溝が真っ直ぐであるから、クーラント液の供給性や切粉の排出性に優れているものの切削性能に劣り、高速送りができないから切削能率が悪いこと。第3に、ガンドリルは切刃の溝が真っ直ぐであるから、大きな切削抵抗を受けて、工具寿命が短い上に、面粗度や加工精度が低いこと。等の課題が多くある。
【0004】
そこで、上記ガンドリルにおける問題解決のために、油穴付きねじれドリルによる細穴加工の可能性に係る各種加工の試みがなされている。しかし、油穴付きねじれドリルの油穴は、穴径が小さいとともに、長い螺旋経路を成しており、この経路内での圧力損失が大きくなるため、クーラント液供給装置から4〜7Mpa前後に高めた圧力クーラント液を供給しても、クーラント液が刃先まで供給されないことがある。例え、供給されても非常に弱い圧力クーラントとなる。この現象は、深穴加工・細穴加工に有効とされる粘性の高い不水溶性切削油剤のクーラント液を使用時において、その現象が顕徴に現われる。この解決策として、単に、油穴付きねじれドリルに7Mpa以上に高めた圧力クーラント液を供給する手段を構じただけだと、クーラント液の供給経路に液漏れ等の弊害が発生してしまい、到底実用化することができない。
【0005】
然るに、細穴加工及びこの深穴加工時において、油穴付きねじれドリルを使用すると、この刃先に、クーラン液の不足を来たして発熱し、切粉の排出性が阻害されて細穴・深穴加工を困難ならしめ、工具破損を早期に招いている。更に、クーラント液の不足は加工精度や加工面の面粗度を招いてしまっているという問題点がある。このため、従来は、油穴付きねじれドリルを使用しての細穴加工及びこの深穴加工は行われていなかった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記従来のガンドリルにおける問題や油穴付きねじれドリルによる細穴加工が持つ各種の問題点に鑑みてなされたもので、油穴付きねじれ工具、例えば油穴付きねじれドリルによる細穴加工において、クーラント液不足を生じることなく加工面の高い面粗度や加工位置度精度を維持させた状態で効率良く加工できるようにした細穴加工方法とその装置を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明の請求項1の細穴加工方法は、主軸の先端部に装着させた小径の油穴付きねじれ工具には、上記主軸の回転時に油穴付きねじれ工具の油穴に10Mpa以上で14Mpa程度までの超高圧クーラント液を圧入するとともに、油穴付きねじれ工具の刃先に開口する油穴からワ−ク加工穴内の穴あけ面に超高圧クーラント液を噴射させ、且つ穴あけ方向に送りをかけて穴あけ加工することを特徴とする。
【0008】
本発明の請求項2の細穴加工方法は、請求項1記載の細穴加工方法において、油穴付きねじれ工具の油穴は、工具のねじれに沿って挿通されるとともに、その先端が逃げ面に開口され、この開口からワ−ク加工穴内の穴あけ面に向けて超高圧クーラント液を噴射させることを特徴とする。
【0009】
本発明の請求項3の細穴加工方法は、請求項1または2記載の細穴加工方法において、超高圧クーラント液は、不水溶性切削油剤であることを特徴とする。
【0010】
本発明の請求項4の細穴加工方法は、請求項1または2記載の細穴加工方法において、油穴付きねじれ工具の送りは、数ミリ前後のペックフィードとしたことを特徴とする。
【0011】
本発明の請求項5の細穴加工方法は、請求項1から4項のいずれか1項記載の細穴加工方法において、油穴付きねじれ工具を、油穴付きねじれドリルとしたことを特徴とする。
【0012】
本発明の請求項6の細穴加工装置は、主軸の先端部に装着され油穴を挿通した小径の油穴付きねじれドリルと、上記油穴付きねじれドリルを主軸先端部に装着させるフランジに油孔を挿通した工具ホルダと、上記工具ホルダを装着するとともにフランジの油孔開口部と接続する油孔開口部を軸端面等に配置した主軸と、上記主軸の油孔開口部に連絡する主軸内の挿通孔に接続し10Mpa以上で14Mpa程度までの超高圧クーラント液を発生させる超高圧クーラント液供給手段と、上記主軸を回転自在に承持する主軸頭を少なくとも軸方向に進退制御する送り制御手段と、を装備したことを特徴とする。
【0013】
本発明の請求項7の細穴加工装置は、請求項6記載の細穴加工装置において、上記送り制御手段は、主軸に装着する油穴付きねじれドリルに対して、主軸の回転駆動時に軸方向に数ミリ前後のペックフィード制御を行なわせることを特徴とする。
【0014】
【作用】
上記請求項1の細穴加工方法によると、まず、主軸の先端部に装着させた小径の油穴付きねじれ工具の油穴には、10Mpa以上で14Mpa程度までの超高圧クーラント液が圧入される。これで、上記油穴付きねじれ工具の刃先に開口している油穴から、ワ−クの細穴となる穴あけ面に超高圧クーラント液が噴射される。上記超高圧クーラント液が噴射された状態において、油穴付きねじれ工具を回転させるとともに、穴あけ方向に送りをかて細穴明けが進められる。もし、油穴付きねじれ工具がドリルならば、深い細穴の加工となり、エンドミルであるならば、穴あけ方向に直角な方向に送りを掛けると、細穴溝の加工が進められる。
【0015】
然るに、超高圧クーラント液が噴射された状態において、油穴付きねじれ工具で、L/D=10以上の深穴・細穴加工や細穴溝加工が実施できるから、油穴付きねじれ工具の刃先にクーラントが行き渡って発熱を抑制するとともに、切粉の排出性が促進される。この結果、細穴の加工面の面粗度及び加工位置度の精度が改善される。更に、摩擦抵抗の低減により、工具破損が無くなって工具寿命が改善されてランニングコストの低減が図れる。また、ガンドリルよりも約10倍程度の高速送りが可能となって加工能率が改善される。
【0016】
上記請求項2の細穴加工方法によると、油穴付きねじれ工具の油穴は、工具のねじれに沿って挿通されその先端が逃げ面に開口されているが、この開口からワ−ク加工穴内の穴あけ面に向けて超高圧クーラント液が噴射されるから、長い螺旋経路を成した経路内での圧力損失の影響を大きく受けない。
【0017】
然るに、油穴付きねじれ工具において、切粉の排出性が改善されて、クーラント液不足による工具刃先の発熱も少なく細穴加工・深穴加工・細穴溝加工等が円滑に実施でき、工具の寿命延長と加工面の面粗度や加工位置精度の改善が図れる。
【0018】
上記請求項3の細穴加工方法によると、超高圧クーラント液について、深穴加工・細穴加工・細穴溝加工に有効とされる粘性の高い不水溶性切削油剤ができる。これにより、ワークの深穴加工・細穴加工・細穴溝加工等が、加工面の高い面粗度や加工位置精度のもとに効率良く実施される。
【0019】
上記請求項4の細穴加工方法によると、油穴付きねじれ工具の送りは、数ミリ前後のペックフィードとしたから、ワークから削り出される切粉が連続せず、短冊状となって切粉の排出性が改善された穴明け加工を可能とする。また、油穴付きねじれ工具のペックフィードにおいて、ガンドリルより約数倍程度の高速送りが可能となって加工能率が改善される。
【0020】
上記請求項5の細穴加工方法によると、請求項1から4項のいずれか1項記載の細穴加工方法において、油穴付きねじれ工具を油穴付きねじれドリルとしたから、油穴付きねじれドリルにおいて、L/D=10以上の深穴・細穴加工がガンドリルよりも約10倍の高速送りが可能となって加工能率が改善される。更に、油穴付きねじれドリルの送りについて、数ミリ前後のペックフィードとすると、ワークから削り出される切粉が連続せず、短冊状となって切粉の排出性が改善されて連続した穴明け加工を可能とする。また、油穴付きねじれドリルのペックフィードにおいても、ガンドリルより約5倍程度の高速送りが可能となって加工能率が改善される。また、工具刃損してもガンドリルより低価格であり、ランニングコストも低く抑えられる。
【0021】
上記請求項6の細穴加工装置によると、主軸の先端部に装着され油穴を挿通した小径の油穴付きねじれドリルと、上記油穴付きねじれドリルを主軸先端部に装着させるフランジに油孔を挿通した工具ホルダと、上記工具ホルダを装着するとともにフランジの油孔開口部と接続する油孔開口部を軸端面等に配置した主軸と、上記主軸の油孔開口部に連絡する主軸内の挿通孔に接続し10Mpa以上で14Mpa程度までの超高圧クーラント液を発生させる超高圧クーラント液供給手段と、上記主軸を回転自在に承持する主軸頭を少なくとも軸方向に進退制御する送り制御手段と、を装備したものである。
【0022】
これにより、請求項1〜請求項4の細穴加工方法を円滑に実施させることができる。更に、主軸の回転時に上記油穴付きねじれドリルの油穴に10Mpa以上で14Mpa程度までの超高圧クーラント液が圧入でき、上記油穴付きねじれドリルの刃先に開口している油穴からワ−ク加工穴内の穴あけ面に超高圧クーラント液を噴射させられる。そして、上記超高圧クーラント液が噴射された状態において、油穴付きねじれドリルを穴あけ方向に送りをかて穴あけ加工を実施させることができる。
【0023】
上記請求項7の細穴加工装置によると、請求項6記載の細穴加工装置において、請求項5の細穴加工方法である主軸の回転駆動時に軸方向に数ミリ前後のペックフィード制御を行なわせることができる。
【0024】
これにより、油穴付きねじれドリルにおいて、ペックフィードを行わせても、ガンドリルより約5倍程度の高速送りを可能として加工能率を改善させることができる。
【0025】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係る細穴加工装置とその加工方法を、図面に示す実施形態により説明する。図1は細穴加工方法を実施するための細穴加工装置(工作機械)の右側面図、図2は工具ホルダと主軸の断面図、図3は工具ホルダと主軸端との接続状態の断面図、図4は主軸先端面と工具ホルダのフランジ端面との斜視図、図5と図6は工具ホルダの断面図、図7は主軸先端面と工具ホルダのフランジ端面との斜視図、図8は主軸の回転制御及びペックフィードを行う制御手段のブロック線図、図9は連続送りの説明図、図10はペックフィードの説明図である。図11と図12は油穴付きねじれドリルによる細穴加工方法を示す作用断面図である。
【0026】
図1と図2において、本発明に係る細穴加工方法を実施する細穴加工装置(工作機械)100は、一般的なマシニングセンタである。HPは超高圧クーラント発生装置(超高圧クーラント液供給手段)であり、超高圧クーラント液(10〜14Mpa)Cを発生させる。この装置は、既に市販されている公知のもので、適宜仕様のものが採用される。上記超高圧クーラント液Cは、配管Pにより主軸1の中心孔2に挿通したドローイングボルト3の尾端に接続される。ドローイングボルト3のセンター孔3Aを供給管路とし、途中で主軸1に明けた2本の供給管路6へと移り、主軸先端近くに内蔵した逆止弁V1,V2に至る。この逆止弁V1,V2は、超高圧クーラント液Cの圧力で開口し、圧力の消滅で閉口する。上記逆止弁V1,V2の出口側には、管状の2本のクーラント供給接続口8を軸心方向に移動可能に装嵌している。図1において、4は加工エリアで発生したミストの回収管であり、5はミスト吸引機である。
【0027】
上記クーラント供給接続口8は、図2と図3に示すように、逆止弁V1,V2に対面する側に大きな嵌合孔φDが明けられ、この内孔8aが嵌合孔φDと連続している。また、主軸先端面1Aから外部へ突出する先端側に小さな内孔φdが明けられている。これにより、クーラント供給接続口8は、この内部に超高圧クーラント液Cが供給されると、内孔φdから外部へ噴出するとともに、大きな嵌合孔φDで発生する大きな推進力Fによりクーラント供給接続口8が主軸先端方向へ移動される。図3と図4に示すように、上記主軸先端面1Aから覗いている2つのクーラント供給接続口8は、工具ホルダTH1のフランジ端面10Aに凹設した2つの対接面(凹面)10Bに推進力Fで当接する。工具ホルダTH1も、そのフランジ端面10Aを主軸先端面1Aに密着させて主軸1の穴1C内に装着される。以上の構成で、工具ホルダTH1のフランジ端面10Aに、超高圧クーラント液Cのサイドスルー(フランジスルー)20が形成される。
【0028】
上記サイドスルー(フランジスルー)20を備えた工具ホルダTH1は、マシニングセンタにおいて、使用されている通常の工具ホルダと同一規格のものである。即ち、工具ホルダTH1のフランジ10には、工具交換アームの2つの把持部Hに把持されるV溝環10Cを備えている。これにより、サイドスルー(フランジスルー)付工具ホルダTH1は、これを自動工具交換装置の工具マガジン内に混在又は単独に装備される。そして、工具交換された上記サイドスルー(フランジスルー)付工具ホルダTH1を主軸1への装着時に、主軸先端面1Aに設けたクーラント供給接続口8とサイドスルー(フランジスルー)付工具ホルダTH1のフランジ端面に設けた受給接続口11とが接続される。
【0029】
上記接続状態は、図2と図3に示すように、主軸1の先端面1Aにあけたクーラント供給接続口8と、フランジ端面10Aに設けた2つの対接面10Bの2つの受給接続口11が接合してサイドスルー(フランジスルー)20を形成する。上記工具ホルダTH1の受給接続口11と繋がる2つの供給通路13は、図5に示すように、細穴用工具T1のセンタースルーSに繋がるクーラント供給通路15と、工具ホルダ内で接続されている。尚、図5に示す上記工具ホルダTH1は、二面拘束タイプであり、このフランジにおけるフランジ端面10Aに、サイドスルー(フランジスルー)20を形成したものである。更に、図6に示すテーパーシャンク部31を備えた工具ホルダTH2においても、実施可能である。その詳細構成は、テーパーシャンク部31以外の構成が二面拘束タイプの工具ホルダTH1と同一につき、同一符号を附して説明を省略する。
【0030】
更に、上記各工具ホルダTH1,TH2において、図7に示すように、主軸先端面1Aに設けたクーラント供給接続口8の周囲を凹面1Bとし、フランジ端面10Aに設けた受給接続口11を平坦面上に開口させた構成に変更しても良い。上記工具ホルダTH1,TH2において、対接面から超高圧クーラント液Cが漏れたとしても、漏れは凹面1B又は10Bとの狭い領域内だけの漏れとなり、且つ加圧力Fもこの凹面内だけに制限される。このため、主軸先端面1Aとこれに対面するフランジ端面10Aの全周面に、超高圧クーラント液Cが漏れ渡って加圧力Fが波及することがなく、確実な保持が可能である。
【0031】
本発明の細穴加工装置100において、その要部構成となる主軸の回転制御及びペックフィードを行うペックフィード制御手段200を、図8に示すブロック線図により説明する。まず、主軸先端部1Aは、油穴を挿通した小径の油穴付きねじれドリルTDが工具ホルダTH1,TH2を介して装着されている。上記油穴付きねじれドリルTDは、主軸先端部に装着させた工具ホルダのフランジに油孔を挿通している。これで、上記工具ホルダを装着する主軸との間でフランジの油孔開口部と油孔開口部が着脱可能に接続されている。超高圧クーラント発生装置(超高圧クーラント液供給手段)HPは、10Mpa以上で14Mpa程度までの超高圧クーラント液Cを発生させることができ、上記主軸の油孔開口部に連絡するように、主軸内の挿通孔(センタースルー)に接続されている。しかして、図11と図12に示すように、ワークWに正対する油穴付きねじれドリルTDの油孔hを通して刃先30に開口する噴射口h1から超高圧クーラント液Cが噴射される。
【0032】
本発明の細穴加工方法に使用される油穴付きねじれドリルTDは、その外径φDがφ1.0前後〜φ2.5前後の外径領域の細い小径ドリルが効果的である。更に、使用されるクーラント液は、粘性が比較的に高い不水溶性切削油剤が最適である。具体的には、カストロール社製の「アイロカット334:動粘度9.5mm2/sec(40℃)、密度0.87g/ml(20℃)、塩素含有量0%。アイロカット734:動粘度13.7mm2/sec(40℃)、密度0.88g/ml(20℃)、塩素含有量0%。その他のアイロカット系の不水溶性切削油剤や他の分類系の切削油」が使用される。更に、一般の切削加工に使用される切削油も使用可能である。
【0033】
上記油穴付きねじれドリルTDを装着する主軸1は、ドライバーDDからの指令で起動する主軸モータM1により回転駆動される。上記主軸1を自在に承持する主軸頭SHは、軸方向(Z軸方向)に進退制御するZ軸送り制御手段SZにより、Z軸送りモータM2が制御される。上記Z軸送り制御手段SZは、主軸1に装着する油穴付きねじれドリルTDに対して、主軸1の回転駆動時にZ軸方向に連続送り(図9を参照)又は数ミリ前後のペックフィード制御(図10を参照))を任意に切換えて行なわせる。上記ドライバーDDとZ軸送り制御手段SZとは、NC制御装置50により、総括的に制御されるとともに、予め入力されているプログラムにより、自動運転される。尚、油穴付きねじれドリルTDは、X軸方向への送りを、X軸送り制御手段SXがX軸送りモータ(図示なし)の駆動制御で行い、Y軸方向への送りを、Y軸送り制御手段SYがY軸送りモータ(図示なし)の駆動制御で行われる。
【0034】
本発明の細穴加工装置100は、上記構成からなり、本発明の細穴加工方法について、図8〜図12により作用を説明する。本発明の細穴加工方法に使用される細穴加工装置100は、まず、図8に示すように、油穴付きねじれドリルTDの油穴hに超高圧クーラント発生装置(超高圧クーラント液供給手段)HPから10Mpa以上で14Mpa程度までの超高圧クーラント液Cが供給される。また、油穴付きねじれドリルTDを装着する主軸1は、ドライバーDDからの指令で起動する主軸モータM1により回転駆動される。続いて、主軸1に装着する油穴付きねじれドリルTDに対して、Z軸送り制御手段SZがZ軸送りモータM2を駆動制御してZ軸方向に進退制御することで、ワークWに対する細穴加工が始まる。上記ワークWに対する細穴加工は、図9に示すように、主軸1の回転駆動時にZ軸方向に連続送りして、穴深さLの細穴が明けられる穴あけ工程制御によって効率良く行われる。また、ドリルTDへの切屑の巻付きを防止したい場合は、図10に示すように、Z軸送り制御手段SZによりZ軸送りモータM2を正逆駆動し、Z軸方向に進退制御させることで数ミリ前後のペックフィードの送り量L1にてペックフィード制御し、穴深さLの細穴が明けられる穴あけ工程制御とが任意に切換えて行なれる。
【0035】
上記油穴付きねじれドリルTDによるワークWに対する細穴加工の詳細作用は、図11(穴あけの初期)から図12(穴あけの末期)に示すようにして進められる。高速回転する油穴付きねじれドリルTDにおいて、超高圧クーラント液Cは、ねじれ溝に沿って明けられた長い螺旋経路の油孔hの経路内での圧力損失を起こしつつも、10Mpa以上で14Mpa程度まで高められているから、この超高圧クーラント液Cが刃先30の逃げ面に到達する。ここで、超高圧クーラント液Cは、逃げ面に明けた開口h1からワークWの細穴W1の切削面に向けて強く噴射される。この結果、超高圧クーラント液Cは、ワークWにあけられる細穴W1の深部まで確実に供給伝達されるから、クーラント液の不足による刃先の発熱とこれに伴なう刃先摩耗や位置精度・面租度の低下を生じさせることがなくなり、効率の良い細穴加工が進められる。更に、油穴付きねじれドリルTDの刃先から創出される切粉Eは、極めて狭い細穴W1内に有るものの、14Mpa程度まで高めた超高圧クーラント液Cにより、確実且つ効率良く細穴外へ排出される。
【0036】
【実施例】
続いて、上記細穴加工装置100を使用した細穴加工方法による加工例を、図13〜図16により説明する。まず、図13は従来技術で、通常のクーラント圧力となる「5Mpa」とした場合の加工データを示し、図14は本発明の超高圧クーラント液である「10Mpa以上で14Mpa程度」まで高めた場合の加工データを示している。図13と図14とはクーラント圧力以外を、同一の加工条件とした。その数値は、使用工具:φ2.4x75xφ3、被削材(ワーク):SUS304(HRB80)、切削条件:周速V=35m/min、送りF=0.05mm/rev、加工深さ30mm(L/D=12.5)、ペック3mm、クーラント液(切削油材):アイロカット334とした。尚、クーラント圧力が5Mpaの時は、毎分165CCの吐出油量となり、クーラント圧力が14Mpaの時は、毎分390CCの吐出油量となった。
【0037】
上記同一の加工条件において、ワークWに対して、1〜153個の細穴加工を進めながら、プログラム上の位置と実際の位置、内径と真円度、X軸とY軸の「位置のズレ」、位置度、直角度、面租度(Rz)のデータ取りを行った。このデータによると、面租度(Rz)は「穴数95において、4.4732。穴数153において、5.3169」であり、クーラント圧力が「14Mpa」の場合の面租度(Rz)は「穴数95において、2.6256。穴数153において、2.6757」である。上記データの比較から、クーラント圧力を「14Mpa」に高くすると面租度(Rz)の改善が大幅に行われることが立証されている。更に、X軸とY軸の「位置のズレ」、位置度の改善効果も認められる。
【0038】
上記「深穴加工での位置度精度」について、図15に示すように、Y軸における各位置での変化を図表化した。この図表からわかるように、クーラント圧力が「5Mpa」の場合の「位置度」は、「0.048〜0.16」の範囲に分散しているのに対し、クーラント圧力が「14Mpa」の場合の「位置度」は、「0.00〜0.098」の範囲に分散している。この図表の比較から、クーラント圧力を「14Mpa」に高くすると「位置度」の改善が大幅に行われることが立証されている。
【0039】
更に、図16は、使用工具:φ2.4x75xφ3の刃先摩耗状態を、クーラント圧力との関係で対比した外観写真により示している。クーラント圧力が「5Mpa」で150穴目の刃先摩耗量m1に対し、クーラント圧力が「14Mpa」で150穴目の刃先摩耗量m2の方が、摩耗が微量であることが確認できる。
【0040】
尚、本発明の細穴加工方法の実施例は、超高圧クーラント液の圧力を14Mpaに設定した場合におけるデータの説明であった。しかし、実際に超高圧クーラント液の圧力を14Mpaから低下させて行き、10Mpa前後の圧力においても、上記作用・効果が維持されていることを確認した。一方、超高圧クーラント液の圧力を14Mpa以上に高めることは、超高圧クーラント発生装置(超高圧クーラント液供給手段)HPの大型化による設備費の増大と電力量の増大を招き、細穴加工装置100の実用的・経済的な領域から外れる。更には、小径工具を14Mpa以上の超高圧クーラント液では歪ませてしまい、希望する加工精度を保った細穴加工が不可能になる。
【0041】
処で、本発明の細穴加工方法に使用される工具は、油穴付きねじれドリルTDに限定されない。例えば、ワークの深穴加工・細穴加工に止まらず、細穴溝加工を行いたい場合は、図17に示す油穴付きねじれエンドミルEMが、本発明の細穴加工方法に使用できる。この油穴付きねじれエンドミルEMは、例えば、3枚の刃を持ち、その軸心方向には3本の通孔hがあけられ、先端の逃げ面に開口h1している。上記油穴付きねじれエンドミルEMにより、ワークWに対する細穴W1の加工に続いて、溝方向の送りをかけて「細穴溝W2の加工」を行う。この細穴溝加工のはじめの工程となる「細穴加工時」には、外径がφ2.5以下の小径になると、上記油穴付きねじれドリルTDと同様な加工条件で加工することで、同様な作用・効果が発揮される。勿論、溝方向の送りの工程においても、同様な作用・効果が発揮される。
【0042】
以上のように、本発明の細穴加工方法に使用される工具は、油穴付きねじれドリルTDや油穴付きねじれエンドミルEMが最適な作用・効果を発揮する。しかし、これらの工具に止まらず、その他の類似工具においても同様な作用・効果が期待できる。
【0043】
【発明の効果】
請求項1によると、高圧クーラント液が噴射された状態において、深穴加工・細穴加工の他に細穴溝加工等が実施できるから、油穴付きねじれ工具の刃先にクーラントが行き渡って発熱が抑制できるとともに、切粉の排出性が促進できる。しかして、油穴付きねじれ工具で、L/D=10以上の深穴加工が可能である。更に、細穴の加工精度や加工面の面粗度が改善され、早期の工具破損が無くなって工具寿命が改善されランニングコストの低減が図れるとともに、ガンドリルよりも約10倍程度の高速送りが可能である。
【0044】
上記請求項2の細穴加工方法によると、油穴付きねじれ工具の油穴は、工具のねじれに沿って挿通されその先端が逃げ面に開口されこの開口からワ−ク加工穴内の穴あけ面に向けて高圧クーラント液が噴射されるから、長い螺旋経路を成した経路内での圧力損失の影響を大きく受けず、切粉の排出性が改善されて、クーラント不足による工具刃先の発熱も少なく細穴・深穴加工が円滑に実施でき、工具の寿命延長と加工精度や加工面の面粗度の改善ができる。油穴付きねじれ工具において、L/D=10以上の深穴加工が可能である。
【0045】
上記請求項3の細穴加工方法によると、高圧クーラント液について、深穴加工・細穴加工の他に細穴溝加工等に有効とされる粘性の高い不水溶性切削油剤を使用したから、ワークの深穴加工・細穴加工等が高い加工精度や加工面の面粗度のもとに効率良く実施できる。
【0046】
上記請求項4の細穴加工方法によると、油穴付きねじれ工具の送りは、数ミリ前後のペックフィードとしたから、ワークから削り出される切粉が連続せず、短冊状となって切粉の排出性が改善されて連続した穴明け加工を可能にできる。更に、油穴付きねじれ工具のペックフィードによるときも、ガンドリルより約数倍程度の高速送りが可能となり、穴あけ作業効率が改善できる。
【0047】
上記請求項5の細穴加工方法によると、請求項1から4項のいずれか1項記載の細穴加工方法において、油穴付きねじれ工具を油穴付きねじれドリルとしたから、従来は困難であったL/D=10以上の深穴加工・細穴加工が可能である。また、ガンドリルよりも約10倍程度の高速送りが可能である。更に、油穴付きねじれドリルの送りについて、数ミリ前後のペックフィードとすることでワークから削り出される切粉が連続せず、短冊状となって切粉の排出性が改善されて連続した穴明け加工が可能である。また、油穴付きねじれドリルのペックフィードにおいて、ガンドリルより約5倍程度の高速送りが可能となって加工能率が改善される。また、工具刃損してもガンドリルより低価格であり、ランニングコストも低く抑えられる。
【0048】
上記請求項6の細穴加工装置によると、主軸先端部に装着され油穴を挿通した小径の油穴付きねじれドリルと、上記油穴付きねじれドリルを主軸先端部に装着させるフランジに油孔を挿通した工具ホルダと、上記工具ホルダを装着するとともにフランジの油孔開口部と接続する油孔開口部を軸端面等に配置した主軸と、上記主軸の油孔開口部に連絡する主軸内の挿通孔に接続し10Mpa以上で14Mpa程度までの高圧クーラントを発生させる高圧クーラント液供給手段と、上記主軸を回転自在に承持する主軸頭を少なくとも軸方向に進退制御する送り制御手段と、を装備した。これにより、請求項1〜3項までの細穴加工方法を円滑に実施することができる。更に、上記高圧クーラント液が噴射された状態において、油穴付きねじれドリルを穴あけ方向に送りをかて穴あけ加工を実施できる。
【0049】
上記請求項7の細穴加工装置によると、送り制御手段は、主軸に装着する油穴付きねじれドリルに対して、主軸の回転駆動時に軸方向に数ミリ前後のペックフィード制御を行なわせるから、請求項4の細穴加工方法について、油穴付きねじれドリルのペックフィードにてガンドリルより約5倍程度の高速送りを行わせることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の細穴加工方法を実施する工作機械の右側面図である。
【図2】本発明の主軸と工具ホルダの断面図である。
【図3】主軸と工具ホルダとの接続作用の断面図である。
【図4】主軸と工具ホルダとの接続部の斜視図である。
【図5】二面拘束工具ホルダの断面図である。
【図6】テーパーシャンク工具ホルダの断面図である。
【図7】主軸と工具ホルダとの接続部の斜視図である。
【図8】主軸の回転制御及びペックフィード制御手段のブロック線図である。
【図9】油穴付きねじれドリルによる連続送りを示す説明図である。
【図10】油穴付きねじれドリルによるペックフィードを示す説明図である。
【図11】油穴付きねじれドリルによる細穴加工方法を示す作用断面図である。
【図12】油穴付きねじれドリルによる細穴加工方法を示す作用断面図である。
【図13】クーラント圧力とドリルの刃先摩耗の端面・刃先を写真で示す外観図である。
【図14】細穴加工での低いクーラント圧力と面租度の関係を示す特性図である。
【図15】細穴加工での高いクーラント圧力と面租度の関係を示す特性図である。
【図16】深穴加工でのクーラント圧力と位置度精度との関係の精度分布図である。
【図17】油穴付きねじれエンドミルの外観図である。
【図18】油穴付きねじれエンドミル細穴溝加工の外観図である。
【符号の説明】
1 主軸
1A 主軸先端面
1B 対接面(凹面)
1C 穴
3 ドローイングボルト
3A センター孔
4 回収管
5 ミスト吸引機
6 供給管路
8 クーラント供給接続口
8a 内孔
10 フランジ
10A フランジ端面
10B 対接面(凹面)
10C V溝環
11 受給接続口
20 サイドスルー(フランジスルー)
30 刃先
31 テーパーシャンク部
50 NC制御装置
100 細穴加工装置(工作機械)
200 ペックフィード制御手段
C 超高圧クーラント液
φD 嵌合孔
φd 内孔
DD ドライバー
E 切粉
EM 油穴付きねじれエンドミル
F 推進力
L1 ペックフィードの送り量
L 穴深さ
M1 主軸モータ
M2 Z軸送りモータ
m1,m2 刃先摩耗量
h 油孔
h1 噴射口、開口
HP 超高圧クーラント発生装置(高圧クーラント液供給手段)
P 配管
SH 主軸頭
SX X軸送り制御手段
SY Y軸送り制御手段
SZ Z軸送り制御手段
TD 油穴付きねじれドリル
TH1 二面拘束工具ホルダ
TH2 テーパーシャンク工具ホルダ
V1.V2 逆止弁
W ワーク
W1 細穴
Claims (7)
- 主軸の先端部に装着させた小径の油穴付きねじれ工具には、上記主軸の回転時に油穴付きねじれ工具の油穴に10Mpa以上で14Mpa程度までの超高圧クーラント液を圧入するとともに、油穴付きねじれ工具の刃先に開口する油穴からワ−ク加工穴内の穴あけ面に超高圧クーラント液を噴射させ、且つ穴あけ方向に送りをかけて穴あけ加工することを特徴とする細穴加工方法。
- 上記油穴付きねじれ工具の油穴は、工具のねじれに沿って挿通されるとともに、その先端が逃げ面に開口され、この開口からワ−ク加工穴内の穴あけ面に向けて超高圧クーラント液を噴射させることを特徴とする請求項1記載の細穴加工方法。
- 上記超高圧クーラント液は、不水溶性切削油剤であることを特徴とする請求項1または2記載の細穴加工方法。
- 上記油穴付きねじれ工具の送りは、数ミリ前後のペックフィードとしたことを特徴とする請求項1または2記載の細穴加工方法。
- 上記油穴付きねじれ工具を、油穴付きねじれドリルとしたことを特徴とする請求項1から4項のいずれか1項記載の細穴加工方法。
- 主軸の先端部に装着され油穴を挿通した小径の油穴付きねじれドリルと、上記油穴付きねじれドリルを主軸先端部に装着させるフランジに油孔を挿通した工具ホルダと、上記工具ホルダを装着するとともにフランジの油孔開口部と接続する油孔開口部を軸端面等に配置した主軸と、上記主軸の油孔開口部に連絡する主軸内の挿通孔に接続し10Mpa以上で14Mpa程度までの超高圧クーラント液を発生させる超高圧クーラント液供給手段と、上記主軸を回転自在に承持する主軸頭を少なくとも軸方向に進退制御する送り制御手段と、を装備したことを特徴とする細穴加工装置。
- 上記送り制御手段は、主軸に装着する油穴付きねじれドリルに対して、主軸の回転駆動時に軸方向に数ミリ前後のペックフィード制御を行なわせることを特徴とする請求項6記載の細穴加工装置。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2002204087A JP2004042209A (ja) | 2002-07-12 | 2002-07-12 | 細穴加工方法とその装置 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2002204087A JP2004042209A (ja) | 2002-07-12 | 2002-07-12 | 細穴加工方法とその装置 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2004042209A true JP2004042209A (ja) | 2004-02-12 |
Family
ID=31709783
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2002204087A Pending JP2004042209A (ja) | 2002-07-12 | 2002-07-12 | 細穴加工方法とその装置 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP2004042209A (ja) |
Cited By (3)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
US20100135740A1 (en) * | 2007-03-22 | 2010-06-03 | G.R.G. Patents Ltd. | Cutter apparatus and method |
KR101053191B1 (ko) | 2003-06-03 | 2011-08-01 | 히다치 비아 메카닉스 가부시키가이샤 | 구멍뚫기 가공방법 |
CN112139577A (zh) * | 2019-06-28 | 2020-12-29 | 株式会社泰珂洛 | 切削工具 |
-
2002
- 2002-07-12 JP JP2002204087A patent/JP2004042209A/ja active Pending
Cited By (6)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
KR101053191B1 (ko) | 2003-06-03 | 2011-08-01 | 히다치 비아 메카닉스 가부시키가이샤 | 구멍뚫기 가공방법 |
US20100135740A1 (en) * | 2007-03-22 | 2010-06-03 | G.R.G. Patents Ltd. | Cutter apparatus and method |
CN112139577A (zh) * | 2019-06-28 | 2020-12-29 | 株式会社泰珂洛 | 切削工具 |
JP2021007986A (ja) * | 2019-06-28 | 2021-01-28 | 株式会社タンガロイ | 切削工具 |
US11407044B2 (en) * | 2019-06-28 | 2022-08-09 | Tungaloy Corporation | Cutting tool |
CN112139577B (zh) * | 2019-06-28 | 2023-05-26 | 株式会社泰珂洛 | 切削工具 |
Similar Documents
Publication | Publication Date | Title |
---|---|---|
KR101826001B1 (ko) | 심공 드릴 가공 시스템 | |
US5378091A (en) | Method and apparatus for machining a workpiece | |
JP3842300B2 (ja) | 雌ネジ切り工具 | |
US4640652A (en) | Coolant delivery system | |
JP5292045B2 (ja) | 深穴切削装置 | |
JP5735237B2 (ja) | ドリルモータ用工具貫通冷媒アダプタ | |
CN111715918B (zh) | 航空壳体小直径深孔的加工方法 | |
JPH10225814A (ja) | 切削加工方法 | |
WO2016074322A1 (zh) | 一种深孔加工机构 | |
JP2894924B2 (ja) | 切削加工方法および装置 | |
JP2004042209A (ja) | 細穴加工方法とその装置 | |
CN210755378U (zh) | 一种新型金刚石微钻头 | |
JP2525893Y2 (ja) | 切削工具 | |
JPH0453647A (ja) | 旋盤加工時の切削油供給方法及びこの際に用する旋盤用シャンク | |
JP4227377B2 (ja) | 深穴切削装置 | |
JP2511368B2 (ja) | ク―ラント供給方法および装置 | |
JP2003001511A (ja) | セミドライ加工具およびセミドライ加工装置 | |
CN210359429U (zh) | 一种便于排屑的钻头 | |
JP4435513B2 (ja) | 切削工具 | |
JPH0553812U (ja) | 深穴加工工具 | |
JP2002178207A (ja) | 細穴加工方法とこれに使用する工具ホルダ及びマシニングセンタ | |
JPH10235507A (ja) | 穴あけ加工方法及び穴あけ加工装置 | |
JP2021094632A (ja) | 内径ギヤ溝加工装置 | |
CN219561522U (zh) | 一种平底钻头 | |
JP2003053605A (ja) | 加工制御方法およびその装置 |
Legal Events
Date | Code | Title | Description |
---|---|---|---|
A621 | Written request for application examination |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621 Effective date: 20050706 |
|
A977 | Report on retrieval |
Effective date: 20071212 Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007 |
|
A131 | Notification of reasons for refusal |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131 Effective date: 20071214 |
|
A02 | Decision of refusal |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A02 Effective date: 20080513 |