JP2004041554A - ミシン制御装置、ミシン制御方法およびミシン制御プログラム - Google Patents

ミシン制御装置、ミシン制御方法およびミシン制御プログラム Download PDF

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Abstract

【課題】形成すべき縫目の長さに合わせて精度よく縫製対象を移動させることができるミシン制御装置を提供すること。
【解決手段】マイコンは、x軸方向の補正量「r」を決定する(s310)。ここでは、縫目が長いほど、また、回転速度が速いほど小さな値が補正量として決定される。次に、x軸モータの回転方向が逆方向になる場合(s320:YES)、第nのデータにおける補正量rに、第n−1のデータにおける補正量mxを加算する(s330)。これによって、x軸モータの回転方向が反転した直後の縫目の長さが短くなることを防止できる。そして、x軸方向の移動量を補正する(s360)。ここでは、第nのデータで特定される縫目の長さ(x軸成分)に補正量rが加算され、これによって、縫製枠の移動量が、主軸モータの回転速度および縫目の長さを示す値がそれぞれ小さいほど長くなるように補正される。
【選択図】図5

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ミシンを制御するミシン制御装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から、縫い針を上下方向に往復移動させると共に、形成すべき縫目の長さだけ、縫い針の移動方向と交差する水平方向へ縫製枠を移動させることによって、この縫製枠に取り付けられた縫製対象(例えば、布など)に縫目を形成するミシンが利用されている。
【0003】
この種のミシンにおいては、縫製枠の移動に伴って発生する摺動抵抗などが要因となり移動量が不足してしまうことがある。このような移動量の不足を防止するためには、あらかじめ一定の補正量を加算した状態で縫製枠を移動させることが考えられる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、移動量の不足分は、縫製枠の移動パターン(例えば、速度、加速度、これらの変化など)によって異なり一定にならないため、一定の補正量を加算する方法では、移動量の不足分を充分に補正できないことがあり、形成すべき縫目の長さに合わせて精度よく縫製対象を移動させることが難しかった。
【0005】
本発明は、形成すべき縫目の長さに合わせて精度よく縫製対象を移動させることができるミシン制御装置およびミシン制御方法を提供すること、さらに、これらにおいて利用可能なミシン制御用プログラムを提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段および発明の効果】
上記問題を解決するため請求項1に記載のミシン制御装置は、複数の縫目それぞれの長さおよび縫い順を示す縫製データに従って、縫い針を往復移動させながら、縫製対象を縫目毎に縫い針の移動方向と交差する平面に沿って順次移動させていくことによって、縫い針による複数の縫目を縫製対象に形成するようにミシンを制御するミシン制御装置であって、縫製対象を順次移動させる際の各移動区間における移動量を、縫い針の移動速度および縫目の長さを示す値がそれぞれ小さいほど長くなるように補正する補正手段を備えている。
【0007】
このように構成されたミシン制御装置によれば、補正手段によって、縫製対象の移動量を、縫い針の移動速度および縫目の長さを示す値がそれぞれ小さいほど長くなるように補正することができる。
通常、縫製対象の移動は、縫い針が縫製対象から抜けている間に行われるので、縫製対象の移動パターン(例えば、速度、加速度、これらの変化など)は、形成すべき縫目の長さに相当する距離を、縫い針が第1の針落ち位置から第2の針落ち位置に至るまでの時間(以降、到達時間とする)で移動するように決められる。よって、縫い針の移動速度が速い(遅い)ほど、到達時間が短くなるため、縫目の長さに相当する距離を、縫製対象が速い(遅い)移動速度で移動するような移動パターンに決められる。また、形成すべき縫目が長い(短い)ほど、縫製対象の単位時間当たりの移動量が長くなるため、縫目の長さに相当する距離を、縫製対象が速い(遅い)移動速度で移動するような移動パターンに決められる。
【0008】
このように、縫製対象が速い移動速度で移動するような移動パターンにおいては、縫製対象が停止するまでに大きな慣性力が発生するため、縫製対象の移動に伴って発生する摺動抵抗の影響が小さくなる。よって、このような移動パターンの場合、縫製対象が速い移動速度で移動するほど、つまり、縫い針の移動速度および縫目の長さを示す値がそれぞれ大きいほど、移動量の不足分が少なくなることになる。一方、縫製対象が遅い移動速度で移動するような移動パターンにおいては、縫製対象が停止するまでに大きな慣性力が発生することがないため、縫製対象の移動に伴って発生する摺動抵抗の影響が大きくなる。よって、このような移動パターンの場合、縫製対象が遅い移動速度で移動するほど、つまり、縫い針の移動速度および縫目の長さを示す値がそれぞれ小さいほど、移動量の不足分が多くなることになる。
【0009】
このことから、本ミシン制御装置のように、縫製対象の移動量を、縫い針の移動速度および縫目の長さを示す値がそれぞれ小さいほど長くなるように補正することによって、形成すべき縫目の長さに合わせて精度よく縫製対象を移動させることができる。
【0010】
なお、上記の補正手段が移動量を補正するための構成としては、例えば、請求項2に記載のように、前記補正手段は、縫い針の移動速度および縫目の長さと前記移動量を補正する際の補正量との対応関係を特定可能なデータテーブルを利用して、前記移動量を補正する際の補正量を決定するといった構成を考えることができる。
【0011】
このように構成されたミシン制御装置によれば、データテーブルから「縫い針の移動速度および縫目の長さ」に対応する補正量を検索するといった処理だけで、移動量を補正する際の補正量を決定することができる。
なお、上述のデータテーブルは、縫い針の移動速度および縫目の長さと補正量との対応関係を特定できればよく、例えば、縫い針の移動速度および縫目の長さそのものを示すパラメータと補正量とが対応づけられたデータテーブルであればよい。また、縫い針の移動速度および縫目の長さから求められるパラメータ(例えば、縫製対象の移動速度、加速度など)と補正量とが対応づけられたデータテーブルであってもよい。
【0012】
また、請求項3に記載のミシン制御装置は、縫製対象を縫製する際の縫製条件に応じて、前記補正手段が前記移動量を補正する際に利用するデータテーブルを、複数種類の縫製条件それぞれに対応する複数のデータテーブルの中から、該当する縫製条件に対応するデータテーブルに切り替える切替手段を備えている。
【0013】
このように構成されたミシン制御装置によれば、切替手段によって、移動量を補正する際に利用するデータテーブルを縫製条件に応じて切り替えることができる。
なお、上述の「縫製条件」とは、縫製対象の種類(例えば、形状、重量、材質などの違い)や、縫製対象が取り付けられる縫製枠の種類(例えば、形状、重量、材質などの違い)などを示すものであって、これらの縫製条件毎にあらかじめデータテーブルを用意しておけばよい。
【0014】
また、上記の補正手段が移動量を補正するための別の構成として、請求項4に記載のように、前記補正手段は、縫い針の移動速度および縫目の長さを示す値に基づいて、前記移動量を補正する際の補正量を算出するといった構成を考えることもできる。
【0015】
このように構成されたミシン制御装置によれば、縫い針の移動速度および縫目の長さを示す値に基づいて補正量を算出するため、データテーブルを利用して補正量を決定する構成のように、データテーブルを記憶させておくための記憶領域が必要ない。
【0016】
また、請求項5に記載のミシン制御装置では、前記補正手段は、縫製対象を順次移動させる際の各移動区間における移動速度を、縫い針の移動速度および縫目の長さに基づいて推定し、該推定した移動速度が遅いほど前記移動量が長くなるように補正する。
【0017】
このように構成されたミシン制御装置によれば、補正手段によって、縫製対象の移動量を、移動区間における移動速度が遅いほど長くなるように補正することができる。
移動区間を移動する縫製対象は、移動区間における移動速度が遅いと、停止するまでに大きく減速する必要がなく、減速に伴って大きな慣性力が発生することもないため、縫製対象の移動に伴って発生する摺動抵抗の影響が大きくなる。よって、移動速度が遅いほど、移動量の不足分が多くなることになる。
【0018】
このことから、本ミシン制御装置のように、縫製対象の移動量を、移動速度が遅いほど移動量が長くなるように補正することによって、形成すべき縫目の長さに合わせて精度よく縫製対象を移動させることができる。
なお、この補正手段は、各移動区間における移動速度を推定する際に、例えば、縫い針の移動速度および縫目の長さに基づいて決まる縫製対象の移動パターンから推定するように構成すればよく、具体的には、この移動パターンで縫製対象が移動区間を移動する際の平均速度や最高速度を推定するように構成すればよい。また、縫製対象の移動量が不足することは、縫製対象の減速に伴う慣性力の大きさに起因するため、縫製対象が減速を開始した以降の移動速度を推定することが望ましい。このような移動速度は、縫製対象の減速に伴う慣性力の大きさを反映しているため、この移動速度に基づいて移動量を補正すれば、形成すべき縫目の長さに合わせてより精度よく縫製対象を移動させることが期待できる。
【0019】
そこで、縫製対象が減速を開始した以降の移動速度を推定するために、例えば、請求項6に記載のように、前記補正手段は、縫製対象が各移動区間において停止する所定期間前の移動速度を推定するように構成するとよい。
このように構成されたミシン制御装置によれば、補正手段によって、縫製対象が各移動区間において停止する所定期間前の移動速度を推定することができる。ここで、「所定期間前」として、縫製対象が減速を開始した以降であって、縫製対象が停止する所定時間前のタイミングを設定しておけば、補正手段によって、縫製対象が減速する過程における移動速度に基づいて移動量を補正することができるため、形成すべき縫目の長さに合わせてより精度よく縫製対象を移動させることができる。
【0020】
なお、上述の「所定期間前」としては、縫製対象が停止する所定距離前のタイミング(例えば、形成すべき縫目の長さに対して所定の割合まで移動した時点など)としてもよい。
また、請求項7に記載のミシン制御装置では、前記補正手段は、縫製対象を順次移動させる際の各移動区間における加速度を、縫い針の移動速度および縫目の長さに基づいて推定し、該推定した加速度が小さいほど前記移動量が長くなるように補正する。
【0021】
このように構成されたミシン制御装置によれば、補正手段によって、縫製対象の移動量を、移動区間における加速度が小さいほど長くなるように補正することができる。
移動区間を移動する縫製対象は、移動区間における加速度が小さいと、停止するまでの減速に伴い大きな慣性力が発生することがないため、縫製対象の移動に伴って発生する摺動抵抗の影響が大きくなる。よって、加速度が小さいほど、移動量の不足分が多くなることになる。
【0022】
このことから、本ミシン制御装置のように、縫製対象の移動量を、加速度が小さいほど移動量が長くなるように補正することによって、形成すべき縫目の長さに合わせて精度よく縫製対象を移動させることができる。
なお、この補正手段は、各移動区間における加速度を推定する際に、例えば、縫い針の移動速度および縫目の長さに基づいて決まる縫製対象の移動パターンから推定するように構成すればよく、具体的には、この移動パターンで縫製対象が移動区間を移動する際の最大加速度などを推定するように構成すればよい。また、縫製対象の移動量が不足することは、縫製対象の減速に伴う慣性力の大きさに起因するため、縫製対象が減速を開始した以降の加速度(減速度)を推定することが望ましい。このような加速度は、縫製対象の減速に伴う慣性力の大きさを反映しているため、この加速度に基づいて移動量を補正すれば、形成すべき縫目の長さに合わせてより精度よく縫製対象を移動させることが期待できる。
【0023】
そこで、縫製対象が減速を開始した以降の加速度を推定するために、例えば、請求項8に記載のように、前記補正手段は、縫製対象が各移動区間において停止する所定期間前の加速度を推定するように構成すればよい。
このように構成されたミシン制御装置によれば、補正手段によって、縫製対象が各移動区間において停止する所定期間前の加速度を推定することができる。ここで、「所定期間前」として、縫製対象が減速を開始した以降であって、縫製対象が停止する所定時間前のタイミングを設定しておけば、補正手段によって、縫製対象が減速する過程における加速度に基づいて移動量を補正することができるため、形成すべき縫目の長さに合わせてより精度よく縫製対象を移動させることができる。
【0024】
なお、上述の「所定期間前」としては、縫製対象が停止する所定距離前のタイミング(例えば、形成すべき縫目の長さに対して所定の割合まで移動した時点など)としてもよい。
ところで、上述の縫製対象を移動させるための構成としては、一般的に、モータからなる移動手段によって移動させるといった構成が利用されている。このような構成において、縫製対象の移動量を補正した場合、モータは、補正量に相当する回転量だけ余分に第1方向へ回転して、この回転による力が摺動抵抗など縫製対象の移動を妨げる力と釣り合った状態で停止する。
【0025】
この状態からモータを第1方向と反対の第2方向へ回転させる場合、モータが補正量に相当する分だけ余分に回転していることから、この回転による力が解放された、つまり、モータの回転が前述の補正量に相当する回転量だけ戻った以降でなければ、縫製対象は移動を開始しない。そのため、モータの回転方向が反転するような動作状態においては、モータが反転した直後に形成される縫目の長さが短くなってしまう恐れがある。
【0026】
そこで、請求項9に記載のように、縫製対象はモータからなる移動手段によって移動させられるように構成されており、前記補正手段は、第n−1(1≦n)番目の縫目を形成した際に前記移動量が補正されていて、第n番目の縫目を形成する際の前記モータの回転方向が第n番目の縫目を形成したときと逆方向である場合、第n番目の縫目を形成する際の前記移動量に、第n−1番目の縫目を形成する際に補正した補正量を加算するように構成するとよい。
【0027】
このように構成されたミシン制御装置によれば、第n番目の縫目を形成する際のモータの回転方向が第n−1番目の縫目を形成したときと逆方向である場合には、第n番目の縫目を形成する際の移動量に第n−1番目の縫目を形成する際に補正した補正量が加算される。よって、モータの回転方向が反転するような動作状態においても、モータが反転した直後に形成される縫目の長さが短くなってしまうといったことを防止できる。
【0028】
また、請求項10に記載のミシン制御方法は、複数の縫目それぞれの長さおよび縫い順を示す縫製データに従って、縫い針を往復移動させながら、縫製対象を縫い針の移動方向と交差する平面に沿って順次移動させていくことによって、縫い針による複数の縫目を縫製対象に形成するようにミシンを制御するためのミシン制御方法であって、縫製対象を順次移動させる際の各移動区間における移動量を、縫い針の移動速度および縫目の長さを示す値がそれぞれ小さいほど長くなるように補正することを特徴とする。
【0029】
このような方法によってミシンを制御するミシン制御装置は、請求項1に記載のミシン制御装置の一部を構成することができ、請求項1と同様に、形成すべき縫目の長さに合わせて精度よく縫製対象を移動させることができる。
また、このミシン制御方法においては、移動量を補正する際、請求項2、請求項4から請求項9のいずれかに記載の補正手段と同様に移動量を補正してもよく、このようにミシンを制御するミシン制御装置は、請求項2、請求項4から請求項9のいずれかに記載のミシン制御装置の一部を構成することができ、同ミシン制御装置と同様の作用・効果を得ることができる。
【0030】
また、このミシン制御方法においては、請求項3に記載の切替手段のように、移動量を補正する際に利用するデータテーブルを切り替えるようにしてもよく、このようにミシンを制御するミシン制御装置は、請求項3に記載のミシン制御装置の一部を構成することができ、同ミシン制御装置と同様の作用・効果を得ることができる。
【0031】
また、請求項11に記載のミシン制御プログラムは、複数の縫目それぞれの長さおよび縫い順を示す縫製データに従って、縫い針を往復移動させながら、縫製対象を縫い針の移動方向と交差する平面に沿って順次移動させていくことによって、縫い針による複数の縫目を縫製対象に形成するようにミシンを制御する各種手順を、コンピュータシステムに実行させるためのミシン制御プログラムであって、縫製対象を順次移動させる際の各移動区間における移動量を、縫い針の移動速度および縫目の長さを示す値がそれぞれ小さいほど長くなるように補正する補正手順が含まれていることを特徴とする。
【0032】
このようなプログラムによってミシンを制御するコンピュータシステムは、請求項1に記載のミシンの一部を構成することができ、請求項1と同様に、形成すべき縫目の長さに合わせて精度よく縫製対象を移動させることができる。
また、このミシン制御プログラムにおいては、補正手順を、請求項2、請求項4から請求項9のいずれかに記載の補正手段と同様に機能するようにしてもよく、このプログラムによってミシンを制御するコンピュータシステムは、請求項2、請求項4から請求項9のいずれかに記載のミシン制御装置の一部を構成することができ、同ミシン制御装置と同様の作用・効果を得ることができる。
【0033】
また、請求項3に記載のミシンが備える切替手段のように機能する手順が含まれていてもよく、このプログラムによってミシンを制御するコンピュータシステムは、請求項3に記載のミシン制御装置の一部を構成することができ、同ミシン制御装置と同様の作用・効果を得ることができる。
【0034】
なお、上述したミシン制御プログラムは、例えば、FD、CD−ROMなどの記録媒体やインターネットなどの通信回線網を介して、ミシン、ミシン制御装置自身、コンピュータシステム、または、これらを利用する利用者に提供されるものである。
【0035】
また、上述したミシン制御プログラムを実行するコンピュータシステムとしては、例えば、ミシンやミシン制御装置に内蔵されたコンピュータシステム、ミシンやミシン制御装置に無線または有線の通信路を介してデータ通信可能に接続されたコンピュータシステムなどを利用することができる。
【0036】
【発明の実施の形態】
次に本発明の実施の形態について例を挙げて説明する。
[第1実施形態]
ミシン1は、複数の縫い針100で同時に縫製動作を行うことができる多頭ミシンであって、図1に示すように、複数の縫い針駆動部10、縫製対象駆動部20、制御部30などからなる。
【0037】
縫い針駆動部10は、縫い針100を保持する針棒11、針棒11をz軸方向(上下方向)に往復移動させる主軸モータ12、主軸モータ12を駆動する主軸駆動回路13、針棒11にセットされている糸を切断する切断機構16、切断機構16を駆動する切断駆動回路17、主軸モータ12の回転に伴いエンコーダ信号を出力するエンコーダ18などを備えている。これらのうち、各駆動回路13、16は、制御部30からの制御信号を受けて各駆動対象(主軸モータ12、切断機構16)を駆動する。
【0038】
縫製対象駆動部20は、複数の縫製対象200を取り付ける縫製枠21、縫製枠21をx軸方向に移動させるx軸ステッピングモータ(以降、x軸モータとする)22、x軸モータ22を駆動するx軸駆動回路23、縫製枠21をy軸方向に移動させるy軸ステッピングモータモータ(以降、y軸モータとする)24、y軸モータ24を駆動するy軸駆動回路25などを備えている。
【0039】
これらのうち、各駆動回路23、25は、制御部30からの制御信号を受けて各モータ22、24にパルス信号を印加することにより各モータ22、24を駆動する。
また、各モータ22、24は、パルス信号を印加される毎に所定の角度回転し、所定量だけ縫製枠21を移動させるため、縫製枠21を所望する距離だけ移動させるときには、所望する距離の各軸方向に相当する数のパルス信号を各モータ22、24に順次印加することになる。このとき、パルス信号を各モータ22、24に印加する周期(周波数)を変更することによって、モータ22、24の回転速度が変化するため、これによって、縫製枠21の移動速度を制御することができる。なお、モータ22、24に印加されるパルス信号の周期が短い(周波数が高い)ほど、モータ22、24は短時間に大きな角度回転するため、縫製枠21の移動速度が速くなる。
【0040】
制御部30は、マイクロコンピュータ(以降、マイコンとする)31、記憶装置32、表示パネル33、入力パネル34、記録用ディスク300を介してデータを入出力可能なディスクドライブ35などを備えている。
これらのうち、マイコン31は、縫い針駆動部10のエンコーダ18から出力されたエンコーダ信号のカウント値に基づいて、縫い針100が往復移動する過程においていずれの位置にあるかを検出することができる。
【0041】
また、マイコン31は、記憶装置32に記憶されている縫製データ、または、ディスクドライブ35を介して記録用ディスク300から入力された縫製データに従い後述する縫製処理(図3)を実行することによってミシン1の動作を制御する。縫製データは、縫製模様における各縫目の縫い順および各縫目の長さを示すデータであって、各縫目の長さを特定可能なデータを縫い順に沿って並べたデータの集合(第1のデータから第kのデータまで)である。
【0042】
また、記憶装置32には、縫目を形成する際の主軸モータ12の回転速度が、各縫目の長さそれぞれに対応づけられた状態で登録されている主軸テーブルが記憶されている。この主軸テーブルは、後述する縫製処理(図3)において主軸モータ12の回転速度を決定する際に利用されるものであって、長い縫目ほど対応する回転速度が遅くなっている。なお、主軸モータ12は縫い針100および針棒11の往復移動と同期して回転するため、主軸モータ12の回転速度は、縫い針100の移動速度と同義である。
【0043】
さらに、記憶装置32には、図2に示すように、縫目の長さおよび主軸モータ12の回転速度と、これらの条件の場合に縫製枠21の移動量を補正すべき量(補正量)とが対応づけられたデータテーブルである補正テーブルが記憶されている。この補正テーブルは、後述する移動量補正処理(図5)において縫製枠21の移動量を補正する際に利用されるものであって、縫目の長さおよび主軸モータ12の回転速度を示す値がそれぞれ大きいほど、これらに対応する補正量が小さくなっている。
○マイコン31による縫製処理
以下に、制御部30のマイコン31が実行する縫製処理を図3に基づいて説明する。この縫製処理は、入力パネル34によって縫製を開始するための操作が行われた際に開始される。
【0044】
まず、マイコン31は、縫製枠21を所定の初期位置に移動させる(s110)。この処理においては、縫製枠21を一定速度で所定の初期位置まで移動させるための制御信号が各駆動回路23、25に出力される。この制御信号を入力した各駆動回路23、25は、各モータ22、24に一定周期でパルス信号を順次印加し、これにより縫製枠21が一定速度で初期位置まで移動する。
【0045】
次に、マイコン31は、変数N、Mx、Myを初期化する(s120)。この処理においては、変数Nに「1」がセット(1→N)され、変数Mx、Myにそれぞれ「0」がセット(0→Mx、0→My)される。変数Nは、縫製データで示される各縫目の縫い順を示す値がセットされる変数であって、変数Mx、Myは、後述する移動量補正処理(s170の処理;図5)において利用される変数である。なお、以降に記載の「n」、「mx」、「my」、は変数N、Mx、Myにセットされた値を示すものとする。
【0046】
次に、マイコン31は、縫製データに従った全ての縫製動作が終了したかどうかをチェックする(s130)。この処理においては、変数Nにセットされている値「n」をチェックすることによって、「n」が縫製データを構成するデータの最後尾を示す「k」以下(n≦k)であれば、縫製データに従った全ての縫製動作が終了していないと判定される。一方、「n」が「k」より大きければ(k<n)、縫製データに従った全ての縫製動作が終了したと判定される。
【0047】
このs130の処理で、縫製データに従った全ての縫製動作が終了していなければ(s130:NO)、マイコン31は、縫製データを構成する第nのデータを読み出す(s140)。
次に、マイコン31は、主軸モータ12の回転速度を決定する(s150)。この処理においては、主軸テーブルに登録されている回転速度のうち、s140の処理で読み出された第nのデータで示される縫目の長さに対応する回転速度が、主軸モータ12の回転速度として決定される。ここでは、縫目が長いほど遅い回転速度が決定される。
【0048】
次に、マイコン31は、s150の処理で決定した回転速度での主軸モータ12の回転を開始させる(s160)。この処理においては、s150の処理で決定した回転速度で主軸モータ12を回転させるための制御信号が各縫い針駆動部10の主軸駆動回路13に出力される。この制御信号を入力した主軸駆動回路13は、s150の処理で決定した回転速度での主軸モータ12の回転を開始させる。なお、このs160の処理が本縫製処理を開始してから2回目以降に行われる場合には、このs160の処理において各縫い針駆動部10の主軸モータ12の回転速度が変更されることになる。
【0049】
次に、マイコン31は、移動量補正処理を行う(s170)。この処理は、以降の処理(s200の処理)で縫製枠21を移動させる際の移動量を、s140の処理で読み出された第nのデータで特定される縫目の各方向成分(xおよびy軸成分)について補正する処理である。なお、このs170の処理の詳細な処理手順は、後述の[マイコン31の移動量補正処理](図5)において説明する。
【0050】
次に、マイコン31は、縫製枠21の移動パターンを決定する(s180)。移動パターンは、第nのデータにおける移動区間(特定される縫目の長さ)に対して、縫製枠21をどのような移動速度の変化で移動させるかを、各モータ22、24に印加するパルス信号の周波数を時間経過と共に変化させるパターンで示したものである。具体的には、図4に示すように、縫製枠21の移動を開始させて加速する際に各モータ22、24に印加するパルス信号の周波数を増加させていき(図4におけるt1からt2参照:加速期間)、縫製枠21を停止させる際に各モータ22、24に印加するパルス信号の周波数を減少させていく(図4におけるt2からt3参照:減速期間)といったパターンになる。この処理においては、縫製枠21が、縫目の長さに相当する距離を、縫い針100が第1の針落ち位置から第2の針落ち位置に至るまでの時間(以降、到達時間とする)で移動するようなパターンが決められる。よって、s140の処理で読み出された第nのデータで特定される縫目の長さが長い(短い)ほど、縫製枠21の単位時間当たりの移動量が長くなるため、縫製枠21が速い(遅い)移動速度(および移動速度の変化)で移動するような移動パターンに決められる。また、s150の処理で決定された主軸モータ12の回転速度が速い(遅い)ほど、到達時間が短くなるため、縫目の長さに相当する距離を、縫製枠21が速い(遅い)移動速度(および移動速度の変化)で移動するような移動パターンに決められる。
【0051】
次に、マイコン31は、縫製枠21を移動させるタイミングとなるまで待機する(s190:NO)。縫製枠21は、縫い針100が下死点から上死点に戻る過程において縫い針100が縫製対象200から離れたタイミングで移動を開始させる必要がある。そのため、この処理においては、エンコーダ信号のカウント値に基づいて、縫い針100が縫製対象200から離れたことが検出されるまで待機することになる。
【0052】
このs190の処理で、縫製枠21を移動させるタイミングとなったら(s190:YES)、マイコン31は、縫製枠21を移動させる(s200)。この処理においては、s180の処理で決定された移動パターンで、s170の処理で補正された移動量だけ縫製枠21を移動させるための制御信号が、各駆動回路23、25に出力される。この制御信号を入力した各駆動回路23、25は、s180の処理で決定された移動パターンで、s170の処理で補正された移動量だけ縫製枠21を移動させるためにパルス信号を順次各モータ22、24に印加し、これにより縫製枠21が移動する。こうして、各縫い針駆動部10の縫い針100がz軸方向に沿って往復移動しながら、縫製枠21がs170の処理で補正された移動量に相当する区間を移動することによって、縫製枠21に取り付けられた各縫製対象200それぞれに各縫い針100による縫目が形成される。
【0053】
次に、マイコン31は、変数Nに「1」を加算(n+1→N)した後(s210)、s130の処理へ戻る。
こうして、s130からs210の処理を繰り返し行った後、s130の処理で、縫製データに従った全ての縫製動作が終了していれば(s130:YES)、マイコン31は、縫い針100にセットされている糸を切断する(s220)。この処理においては、縫い針100にセットされている糸を切断機構16により切断させるための制御信号が各縫い針駆動部10の切断駆動回路17へ出力され、これによって、各縫い針100それぞれにセットされている糸が切断される。
【0054】
そして、マイコン31は、縫製枠21を所定の初期位置へ移動させた後(s230)、本縫製処理を終了する。このs230の処理は、s110の処理と同様の処理である。
○マイコン31の移動量補正処理
以下に、制御部30のマイコン31が実行する移動量補正処理を図5に基づいて説明する。この移動量補正処理は、図2におけるs170の処理の詳細な処理手順である。
【0055】
まず、マイコン31は、x軸方向の補正量「r」を決定する(s310)。この処理においては、まず、補正テーブルに登録されている補正量のうち、図3におけるs140の処理で読み出された第nのデータで特定される縫目の長さ(x軸成分)、および、s150の処理で決定された主軸モータ12の回転速度に対応する補正量が、x軸方向の補正量「r」として決定される。ここでは、縫目が長いほど、また、回転速度が速いほど小さな値が補正量として決定される。
【0056】
次に、マイコン31は、第nのデータで縫目を形成するときのx軸モータ22の回転方向が第n−1のデータで縫い目を形成したときと逆方向になる(反転する)かどうかをチェックする(s320)。ここでは、x軸モータ22の回転方向をチェックすることによって、第nのデータで縫い目を形成する際のx軸に沿った縫製枠21の移動方向が、第n−1のデータで縫い目を形成した際の移動方向と逆方向になるかどうかをチェックしていることになる。
【0057】
このs320の処理で、x軸モータ22の回転方向が逆方向になる場合(s320:YES)、マイコン31は、s310の処理で決定された補正量「r」と変数Mxの値「mx」との加算値を変数Lにセット(r+mx→L)する(s330)。なお、変数Mxには以前に実行された本移動量補正処理で利用された補正量(第n−1のデータにおける補正量)がセットされている(後述のs370の処理参照)。そのため、この処理では、s310の処理で決定された補正量(第nのデータにおける補正量)に、以前に実行された本移動量補正処理で利用された補正量(第n−1のデータにおける補正量)が加算される。
【0058】
以前に実行された本移動量補正処理で移動量が補正されている場合、x軸モータ22は、補正量に相当する回転量だけ余分に回転して、この回転による力が摺動抵抗など縫製枠21の移動を妨げる力と釣り合った状態で停止する。この状態から、x軸モータ22を回転方向を反転させる場合、x軸モータ22が補正量に相当する分だけ余分に回転していることから、この回転による力が解放された、つまり、補正量に相当する回転量だけ戻った以降でなければ、縫製枠21は移動を開始しない。そのため、x軸モータ22の回転方向が反転するような動作状態においては、x軸モータ22が反転した直後に形成される縫目の長さが短くなってしまう恐れがある。このs330の処理は、このようなx軸モータ22の回転方向が反転した直後の縫目の長さが短くなることを防止するために行われる処理である。
【0059】
また、s320の処理で、x軸モータ22の回転方向が逆方向にならない場合(s320:NO)、マイコン31は、s310の処理で決定された補正量「r」から変数Mxの値「mx」を減算した値を、新たに変数Lにセット(r−mx→L)する(s350)。この処理においては、以前に実行された本移動量補正処理で利用された補正量「mx」から、s310の処理で決定された補正量「r」が減算される。
【0060】
こうして、s330またはs350の処理を終えた後、マイコン31は、x軸方向の移動量を補正する(s360)。この処理においては、x軸方向の移動量、つまり、図2におけるs140の処理で読み出された第nのデータで特定される縫目の長さ(x軸成分)が、この縫目の長さに変数Lの値(「r+mx」または、「r−mx」)を加算した値に補正される。
【0061】
次に、マイコン31は、変数Mxにs310の処理で決定された補正量「r」をセット(r→Mx)し直す(s370)。こうして、本移動量補正処理で移動量の補正に利用した補正量rが変数Mxにセットされる。
次に、マイコン31は、y軸方向の補正量「r」を決定する(s410)。この処理においては、まず、補正テーブルに登録されている補正量のうち、図3におけるs140の処理で読み出された第nのデータで特定される縫目の長さ(y軸成分)、および、s150の処理で決定された主軸モータ12の回転速度に対応する補正量が、y軸方向の補正量「r」として決定される。ここでは、縫目が長いほど、また、回転速度が速いほど小さな値が補正量として決定される。
【0062】
次に、マイコン31は、第nのデータで縫目を形成するときのy軸モータ24の回転方向が第n−1のデータで縫い目を形成したときと逆方向になる(反転する)かどうかをチェックする(s420)。ここでは、y軸モータ24の回転方向をチェックすることによって、第nのデータで縫い目を形成する際のy軸に沿った縫製枠21の移動方向が、第n−1のデータで縫い目を形成した際の移動方向と逆方向になるかどうかをチェックしていることになる。
【0063】
このs420の処理で、y軸モータ24の回転方向が逆方向になる場合(s420:YES)、マイコン31は、s410の処理で決定された補正量「r」と変数Myの値「my」の加算値を変数Lにセット(r+my→L)する(s430)。なお、変数Myには以前に実行された本移動量補正処理で利用された補正量(第n−1のデータにおける補正量)がセットされている(後述のs470の処理参照)。そのため、この処理では、s410の処理で決定された補正量(第nのデータにおける補正量)に、以前に実行された本移動量補正処理で利用された補正量(第n−1のデータにおける補正量)が加算される。なお、このs420の処理は、s330の処理と同様に、y軸モータ24の回転方向が反転した直後の縫目の長さが短くなることを防止するために行われる。
【0064】
また、s420の処理で、y軸モータ24の回転方向が逆方向にならない場合(s420:NO)、マイコン31は、s410の処理で決定された補正量「r」から変数Myの値「my」を減算した値を、新たに変数Lにセット(r−my→L)する(s450)。この処理においては、以前に実行された本移動量補正処理で利用された補正量「my」が、s410の処理で決定された補正量「r」から減算される。
【0065】
こうして、s430またはs450の処理を終えた後、マイコン31は、y軸方向の移動量を補正する(s460)。この処理においては、y軸方向の移動量、つまり、図2におけるs140の処理で読み出された第nのデータで特定される縫目の長さ(y軸成分)が、この縫目の長さに変数Lの値(「r+my」または「r−my」)を加算した値に補正される。
【0066】
そして、マイコン31は、変数Myにs410の処理で決定された補正量「r」をセット(r→My)し直す(s470)。こうして、本移動量補正処理で移動量の補正に利用した補正量rが変数Myにセットされる。
[第1実施形態の効果]
このように構成されたミシン1によれば、図5の移動量補正処理によって、縫製枠21(縫製対象200)の移動量を、主軸モータ12の回転速度(縫い針100の移動速度)、および、第nのデータで示される縫目の長さを示す値がそれぞれ小さいほど長くなるように補正することができる。
【0067】
縫製枠21の移動パターンは、s180の処理において、第nのデータで特定される縫目の長さが長い(短い)ほど、かつ、主軸モータ12の回転速度が速い(遅い)ほど、縫製枠21が速い(遅い)移動速度(および移動速度の変化)で移動するようなパターンに決められる。
【0068】
このように、縫製枠21が速い移動速度で移動するような移動パターンにおいては、縫製枠21が停止するまでに大きな慣性力が発生するため、縫製枠21の移動に伴って発生する摺動抵抗の影響が小さくなる。よって、このような移動パターンの場合、縫製枠21が速い移動速度で移動するほど、つまり、主軸モータ12の回転速度および縫目の長さを示す値がそれぞれ大きいほど、移動量の不足分が少なくなることになる。一方、縫製枠21が遅い移動速度で移動するような移動パターンにおいては、縫製枠21が停止するまでに大きな慣性力が発生することもないため、縫製枠21の移動に伴って発生する摺動抵抗の影響が大きくなる。よって、このような移動パターンの場合、縫製枠21が遅い移動速度で移動するほど、つまり、主軸モータ12および縫目の長さを示す値がそれぞれ小さいほど、移動量の不足分が多くなることになる。
【0069】
このことから、図5の移動量補正処理において、縫製枠21の移動量を、主軸モータ12の回転速度および縫目の長さを示す値がそれぞれ小さいほど長くなるように補正することによって、形成すべき縫目の長さに合わせて精度よく縫製枠21(縫製対象200)を移動させることができる。
【0070】
また、図5におけるs310、s410の処理において、補正テーブルから「主軸モータ12の回転速度および縫目の長さ」に対応する補正量を検索するといった処理だけで、s360、s460の処理で移動量を補正する際に利用する補正量を決定することができる。
【0071】
また、図5におけるs320、s420の処理で、各モータ22、24の回転方向が、第n−1のデータで縫目を形成したときと逆方向になる場合には、s330、s430の処理において第nのデータで縫目を生成する際に利用する補正量(r)に、第n−1のデータで縫目を形成した際に利用された補正量(mx)が加算される。これによって、第n−1のデータで縫目を形成したときに移動量が補正され、x軸モータ22が補正量に相当する分だけ余分に回転している場合には、この回転による力が解放される、つまり、補正量に相当する回転量を戻すように第n−1のデータにおける補正量が加算される。よって、各モータ22、24の回転方向が反転するような動作状態においても、反転した直後に形成される縫目の長さが短くなってしまうといったことを防止できる。
【0072】
[第2実施形態]
ミシン2は、第1実施形態におけるミシン1と同様の構成であって、移動量補正処理(図5)の処理手順が異なっているだけであるため、この相違点について詳述する。
○マイコン31の移動量補正処理
以下に、制御部30のマイコン31が実行する移動量補正処理を図6に基づいて説明する。
【0073】
まず、マイコン31は、第nのデータで縫目を形成するときのx軸モータ22の回転方向が第n−1のデータで縫い目を形成したときと逆方向になる(反転する)かどうかをチェックする(s510)。この処理は、第1実施形態の図5におけるs320の処理と同様の処理である。
【0074】
このs510の処理で、x軸モータ22の回転方向が逆方向になる場合(s510:YES)、マイコン31は、x軸モータ22の回転方向をチェックする(s520)。この処理においては、第nのデータに対して縫目を形成する際に、x軸モータ22が正方向、正方向と反対の方向である負方向とのいずれに回転することになるかがチェックされる。
【0075】
このs520の処理で、x軸モータ22の回転方向が正方向であれば(s520:YES)、マイコン31は、x軸方向の補正量を決定する(s530)。この処理においては、第1実施形態の図5におけるs310の処理と同様に、補正テーブルに登録されている補正量のうち、第nのデータで特定される縫目の長さ(x軸成分)および主軸モータ12の回転速度に対応する補正量が、x軸方向の補正量として決定される。
【0076】
次に、マイコン31は、x軸方向の移動量、つまり、図3におけるs140の処理で読み出された第nのデータで特定される縫目の長さ(x軸成分)を、この縫目の長さにs530の処理で決定された補正量を加算した値に補正する(s540)。
【0077】
次に、マイコン31は、s530の処理で決定された補正量の値「r」を変数Mxにセット(r→Mx)する(s550)。こうして、本移動量補正処理で移動量の補正に利用した補正量が変数Mxにセットされる。
また、s520の処理で、x軸モータ22の回転方向が負方向であれば(s520:NO)、マイコン31は、x軸方向の移動量、つまり、図3におけるs140の処理で読み出された第nのデータで特定される縫目の長さ(x軸成分)を、この縫目の長さに変数Mxの値「mx」を加算した値に補正する(s560)。ここで、変数Mxには以前に実行された本移動量補正処理で利用された補正量(第n−1のデータにおける補正量)がセットされている(s550または後述のs570の処理参照)。そのため、この処理では、x軸方向の移動量が、以前に実行された本移動量補正処理で利用された補正量(第n−1のデータにおける補正量)を加算した値に補正される。なお、この処理は、第1実施形態の図5におけるs330の処理と同様に、x軸モータ22の回転方向が反転した直後の縫目の長さが短くなることを防止するために行われる。
【0078】
次に、マイコン31は、変数Mxに「0」をセット(0→Mx)する(s570)。
こうして、s550またはs570の処理を終えた後、または、s510の処理でx軸モータ22の回転方向が逆方向にならない場合(s510:NO)、マイコン31は、第nのデータで縫目を形成するときのy軸モータ24の回転方向が第n−1のデータで縫い目を形成したときと逆方向になる(反転する)かどうかをチェックする(s610)。この処理は、第1実施形態の図5におけるs420の処理と同様の処理である。
【0079】
このs610の処理で、y軸モータ24の回転方向が逆方向になる場合(s610:YES)、マイコン31は、y軸モータ24の回転方向をチェックする(s620)。この処理においては、第nのデータで縫目を形成する際に、y軸モータ24が正方向、正方向と反対の方向である負方向とのいずれに回転することになるかがチェックされる。
【0080】
このs620の処理で、y軸モータ24の回転方向が正方向であれば(s620:YES)、マイコン31は、y軸方向の補正量を決定する(s630)。この処理においては、第1実施形態の図4におけるs410の処理と同様に、補正テーブルに登録されている補正量のうち、第nのデータで特定される縫目の長さ(y軸成分)および主軸モータ12の回転速度に対応する補正量が、y軸方向の補正量として決定される。
【0081】
次に、マイコン31は、y軸方向の移動量、つまり、図3におけるs140の処理で読み出された第nのデータで特定される縫目の長さ(y軸成分)を、この縫目の長さにs630の処理で決定された補正量を加算した値に補正する(s640)。
【0082】
次に、マイコン31は、s630の処理で決定された補正量の値「r」を変数Myにセット(r→My)する(s650)。こうして、本移動量補正処理で移動量の補正に利用した補正量が変数Myにセットされる。
また、s620の処理で、y軸モータ24の回転方向が負方向であれば(s620:NO)、マイコン31は、y軸方向の移動量、つまり、図3におけるs140の処理で読み出された第nのデータで特定される縫目の長さ(y軸成分)を、この縫目の長さに変数Myの値「my」を加算した値に補正する(s660)。ここで、変数Myには以前に実行された本移動量補正処理で利用された補正量(第n−1のデータにおける補正量)がセットされている(s650または後述のs670の処理参照)。そのため、この処理では、y軸方向の移動量が、以前に実行された本移動量補正処理で利用された補正量(第n−1のデータにおける補正量)を加算した値に補正される。なお、この処理は、第1実施形態の図5におけるs430の処理と同様に、y軸モータ24の回転方向が反転した直後の縫目の長さが短くなることを防止するために行われる。
【0083】
次に、マイコン31は、変数Myに「0」をセット(0→My)する(s670)。
こうして、s650またはs670の処理を終えた後、または、s610の処理でy軸モータ24の回転方向が逆方向にならない場合(s610:NO)、本移動量補正処理を終了する。
【0084】
[第2実施形態の効果]
このように構成されたミシン2によれば、図6におけるs530、s630の処理において、補正テーブルから「主軸モータ12の回転速度および縫目の長さ」に対応する補正量を検索するといった処理だけで、s540、s640の処理で移動量を補正する(補正量を加算する)際に利用する補正量を決定することができる。
【0085】
また、図6におけるs520、s620の処理で、各モータ22、24の回転方向が、負方向から正方向に反転する場合、s540、s640の処理において第nのデータで縫目を生成する際の移動量に、第n−1のデータで縫目を形成した際に利用された補正量(mx)が加算される。これによって、第n−1のデータで縫目を形成したときに移動量が補正され、各モータ22、24が補正量に相当する分だけ余分に回転している場合には、この回転による力が解放される、つまり、補正量に相当する回転量を戻すように第n−1のデータにおける補正量が加算される。よって、各モータ22、24の回転方向が反転するような動作状態においても、反転した直後に形成される縫目の長さが短くなってしまうといったことを防止できる。
【0086】
また、このミシン2においては、図6におけるs510、s610の処理で、各モータ22、24の回転方向が反転しない場合には、移動量の補正が行われない。移動量の不足分は、各モータ22、24の回転方向が反転するような動作状態のときに大きくなりやすい。つまり、各モータ22、24の回転方向が反転しないような動作状態のときは、回転方向が反転するときよりも移動量の不足分が少ないため、移動量の補正をしなくても、縫製対象200に形成される縫製模様の精度が大幅に低下しないことが予想される。そのため、縫製模様に高い精度が要求されない場合には、本ミシン2のように、各モータ22、24の回転方向が反転する場合のみ移動量の補正を行うように構成してもよく、この場合、補正量を決定する処理や移動量を補正する処理に拘わる負荷を軽減することができるため好適である。
【0087】
特に、このミシン2においては、各モータ22、24の回転方向が反転する場合であっても、各モータ22、24の回転方向が負方向から正方向に反転する場合でなければ(s520、s620の処理)、移動量の補正が行われない。このように、縫製模様の精度を低くする代わりに、補正量を決定する処理や移動量を補正する処理に関わる負荷をさらに軽減することができる。
【0088】
[本発明との対応関係]
以上説明したミシン1、2の備える制御部30は、本発明におけるミシン制御装置を構成するものである。
また、第1実施形態(第2実施形態)において図5(図6)の移動量補正処理を実行するマイコン31は、本実施形態における補正手段である。
【0089】
また、縫製対象駆動部20の備えるx軸モータ22、y軸モータ24、縫製枠21は、本発明における移動手段を構成するものである。
[変形例]
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記の具体的な実施形態に限定されず、このほかにも様々な形態で実施することができる。
【0090】
例えば、上記実施形態においては、ミシン1、2が複数の縫い針100で同時に縫製動作を行うことができる多頭ミシンであるものを例示した。しかし、ミシン1、2は、縫い針駆動部10を一つだけ備えたミシンであってもよく、また、それぞれ色の異なる糸がセットされた複数の縫い針100を選択的に使用しながら縫製対象200を縫製する多針ミシン(または、多頭・多針ミシン)であってもよい。
【0091】
また、上記実施形態においては、縫製対象駆動部20の各モータ22、24がステッピングモータであるものを例示したが、各モータ22、24を、ステッピングモータ以外のモータ(例えば、サーボモータ)でミシン1、2を構成してもよい。
【0092】
また、上記実施形態においては、縫製データが記憶装置32に記憶されている、または、記録用ディスク300から入力されるように構成されたものを例示した。しかし、制御部30が無線または有線の通信路を介して他のコンピュータシステムなどとデータ通信可能に構成されていれば、縫製データが通信路経由で入力されるように構成してもよい。
【0093】
また、上記実施形態においては、補正テーブルが記憶装置32に記憶されているものを例示した。しかし、補正テーブルは、マイコン31に内蔵されたメモリに記憶されていてもよい。また、制御部30が無線または有線の通信路を介して他のコンピュータシステムなどとデータ通信可能に構成されていれば、補正テーブルが通信路経由で入力されるように構成してもよい。
【0094】
また、上記実施形態においては、図3の縫製処理、図5、図6の移動量補正処理を制御部30の備えるマイコン31が実行するように構成されたものを例示した。しかし、これらの各処理の一部または全部を、無線または有線の通信路を介してミシン1、2とデータ通信可能に接続された他のコンピュータシステムが実行するように構成してもよい。
【0095】
また、上記実施形態においては、記憶装置32に記憶されている補正テーブルが、主軸モータ12の回転速度および縫目の長さと補正量とが対応づけられた状態で登録されているものを例示した。しかし、補正テーブルは、主軸モータ12の回転速度および縫目の長さと補正量との対応関係を特定できればよく、例えば、主軸モータ12の回転速度および縫目の長さから求められるパラメータ(例えば、縫製枠21の移動速度、加速度など)と補正量とが対応づけられた状態で登録されているものでもよい。この場合、図5におけるs310、s410、図6におけるs530、s630の処理で補正量を決定する際には、まず、主軸モータ12の回転速度および縫目の長さからパラメータを算出して、このパラメータに対応する補正量を、移動量を補正する際の補正量として決定するように構成すればよい。
【0096】
また、上記実施形態において、縫製対象200の種類(形状、重量、材質など)や、縫製枠21の種類(形状、重量、材質など)などの違いによる縫製条件それぞれに対応する補正テーブルを用意しておき、図3の縫製処理でいずれの補正テーブルを利用して補正量を補正するかを選択できるように構成するとよい。具体的な構成としては、例えば、図7に示すように、縫製条件を利用者に入力させる処理(s102)と、この処理で入力された縫製条件に対応する補正テーブルを、図5の移動補正処理で移動量を補正する際に利用する補正テーブルとして決定する処理(s104)を、図3におけるs110の処理の前に追加すればよい。または、入力パネル34に、縫製条件を切り替えるための切替スイッチなどを設けておき、図5におけるs310、s410、図6におけるs530、s630の処理で補正量を決定する際、切替スイッチにより切り替えられている縫製条件に基づいて、この縫製条件に対応する補正テーブルを利用するように構成すればよい。
【0097】
このように構成すれば、上述の追加した処理(s102、s104の処理)または切替スイッチによって、移動量を補正する際に利用する補正テーブルを縫製条件に応じて切り替えることができる。特に、切替スイッチを設けた構成であれば、縫製処理が実行されている間であっても、移動量を補正する際に利用される補正テーブルを任意のタイミングで切り替えることができる。なお、この構成において、追加した処理(s102、s104の処理)または切替スイッチは、本発明における切替手段として機能するものである。
【0098】
また、上記実施形態においては、図5、図6の移動量補正処理として、各モータ22、24の回転方向が反転するかどうかによって異なる処理が行われるように構成されたものを例示した。しかし、この移動量補正処理において、各モータ22、24の回転方向に拘わらず同一の処理を行うように構成してもよい。具体的には、図5の移動量補正処理においては、s310の処理の直後にs330の処理を行うようにして、s410の処理の直後にs430の処理を行うようにすればよい。また、図6の移動量補正処理においては、始めにs530の処理を行うようにして、s550の処理の直後にs630の処理を行うようにすればよい。
【0099】
また、上記実施形態においては、図5におけるs310、s410、図6におけるs530、s630の処理で、補正テーブルを利用して補正量を決定するように構成されたものを例示した。しかし、これらの処理においては、主軸モータ12の回転速度および縫目の長さを示す値に基づいて数式から補正量を算出するように構成してもよい。具体的な数式の例としては、主軸モータ12の回転速度v、縫目の長さd、補正量の最大値rmax(例えば、0.5mm)および基準パラメータpから補正量rを算出する数式「r=rmax*(p−v*d)/p」が考えられる。なお、基準パラメータpは、基準となる回転速度vref(例えば、1000rpm)と、基準となる縫目の長さdref(例えば、6mm)との積により決まる値(p=vref*dref;p=1000*6=6000)である。例えば、主軸モータ12の回転速度が500rpm、縫目の長さが6mmの場合、補正量rは、0.25(=0.5*(6000−500*6)/6000)mmとなる。
【0100】
このように構成すれば、主軸モータ12の回転速度および縫目の長さを示す値に基づいて補正量を算出するため、補正テーブルを利用して補正量を決定する構成のように、補正テーブルを記憶させておくための記憶領域が必要ない。
また、上記第1、第2実施形態においては、図5におけるs310、s410、図6におけるs530、s630の処理で、主軸モータ12の回転速度および縫目の長さに基づいて補正量を決定するように構成されたものを例示した。しかし、これらの処理において、以降の処理(図3におけるs200の処理)で縫製枠21が移動する際の移動速度を、主軸モータ12の回転速度および縫目の長さに基づいて推定し、この推定した移動速度に基づいて、移動速度が遅いほど大きな値を補正量として決定するように構成してもよい。ここで、縫製枠21の移動速度を推定するためには、図3におけるs180の処理と同様に、縫製枠21の移動パターンを仮決定し、この移動パターンにおける最高速度、平均速度、所定タイミングでの移動速度などを算出すればよい。また、こうして推定した移動速度に基づいて補正量を決定するためには、移動速度と補正量とを対応づけたデータテーブルとして、移動速度が大きいほど、この移動速度に対応する補正量が小さくなっているものを利用すればよい。
【0101】
このように構成すれば、図5におけるs310、s410、図6におけるs530、s630の処理によって、縫製枠21の移動量を移動速度が遅いほど長くなるように補正することができる。また、縫製データを構成する各データ毎の移動区間を移動する縫製枠21は、移動区間における移動速度が遅いと、停止するまでに大きく減速する必要がなく、減速に伴って大きな慣性力が発生することもないため、縫製枠21の移動に伴って発生する摺動抵抗の影響が大きくなる。よって、移動速度が遅いほど、移動量の不足分が多くなることになる。このことから、縫製枠21の移動量を、移動速度が遅いほど移動量が長くなるように補正することによって、形成すべき縫目の長さに合わせて精度よく縫製枠21を移動させることができる。
【0102】
また、この構成において、図5におけるs310、s410、図6におけるs530、s630の処理で移動速度を推定する際、図3におけるs180の処理と同様に仮決定された移動パターンについて、縫製枠21が減速を開始した以降の移動速度を推定するように構成することが望ましい。縫製枠21の移動量が不足することは、縫製枠21の減速に伴う慣性力の大きさに起因するため、縫製枠21が減速を開始した以降の移動速度は、縫製枠21の減速に伴う慣性力の大きさを反映していることになる。このため、縫製枠21が減速を開始した以降の移動速度を推定し、この移動速度に基づいて移動量を補正することができれば、形成すべき縫目の長さに合わせてより精度よく縫製枠21を移動させることが期待できる。そこで、図5におけるs310、s410、図6におけるs530、s630の処理で、移動速度を推定する際に、縫製データを構成する各データ毎の移動区間のうち、縫製枠21が停止する所定期間前の移動速度を推定するように構成するとよい。このように構成すれば、図5におけるs310、s410、図6におけるs530、s630の処理によって、縫製枠21が停止する所定期間前の移動速度を推定することができる。ここで、「所定期間前」として、縫製枠21が減速を開始した以降であって、縫製枠21が停止する所定時間Δt前のタイミングを設定しておけば(図4参照)、図5におけるs360、s460、図6におけるs540、s640の処理で、縫製枠21が減速する過程における移動速度に基づいて移動量を補正することができるため、形成すべき縫目の長さに合わせてより精度よく縫製枠21を移動させることができる。なお、「所定期間前」としては、縫製対象が停止する所定距離前のタイミング(例えば、移動区間において減速期間(50%以上)となる割合まで移動した時点など)としてもよい。
【0103】
また、上記実施形態においては、図5におけるs310、s410、図6におけるs530、s630の処理で、主軸モータ12の回転速度および縫目の長さに基づいて補正量を決定するように構成されたものを例示した。しかし、これらの処理において、以降の処理(図3におけるs200の処理)で縫製枠21が移動する際の加速度を、主軸モータ12の回転速度および縫目の長さに基づいて推定し、この推定した加速度に基づいて、加速度が大きいほど大きな値を補正量として決定するように構成してもよい。ここで、縫製枠21の加速度を推定するためには、図3におけるs180の処理と同様に、縫製枠21の移動パターンを仮決定し、この移動パターンにおける最大加速度、所定タイミングでの加速度などを算出すればよい。また、こうして推定した加速度に基づいて補正量を決定するためには、加速度と補正量とを対応づけたデータテーブルとして、加速度が大きいほど、この加速度に対応する補正量が小さくなっているものを利用すればよい。
【0104】
このように構成すれば、図5におけるs310、s410、図6におけるs530、s630の処理によって、縫製枠21の移動量を加速度が小さいほど長くなるように補正することができる。また、縫製データを構成する各データ毎の移動区間を移動する縫製枠21は、移動区間における加速度が小さいと、減速に伴って大きな慣性力が発生することがないため、縫製枠21の移動に伴って発生する摺動抵抗の影響が大きくなる。よって、加速度が小さいほど、移動量の不足分が多くなることになる。このことから、縫製枠21の移動量を、加速度が小さいほど移動量が長くなるように補正することによって、形成すべき縫目の長さに合わせて精度よく縫製枠21を移動させることができる。
【0105】
また、この構成において、図5におけるs310、s410、図6におけるs530、s630の処理で加速度を推定する際、図3におけるs180の処理と同様に仮決定された移動パターンについて、縫製枠21が減速を開始した以降の加速度(減速度)を推定するように構成することが望ましい。縫製枠21の移動量が不足することは、縫製枠21の減速に伴う慣性力の大きさに起因するため、縫製枠21が減速を開始した以降の加速度は、縫製枠21の減速に伴う慣性力の大きさを反映していることになる。このため、縫製枠21が減速を開始した以降の加速度を推定し、この加速度に基づいて移動量を補正することができれば、形成すべき縫目の長さに合わせてより精度よく縫製枠21を移動させることが期待できる。そこで、図5におけるs310、s410、図6におけるs530、s630の処理で加速度を推定する際に、縫製データを構成する各データ毎の移動区間のうち、縫製枠21が停止する所定期間前の加速度を推定するように構成するとよい。このように構成すれば、図5におけるs310、s410、図6におけるs530、s630の処理によって、縫製枠21が停止する所定期間前の加速度を推定することができる。ここで、「所定期間前」として、縫製枠21が減速を開始した以降であって、縫製枠21が停止する所定時間Δt前のタイミングを設定しておけば(図4参照)、図5におけるs360、s460、図6におけるs540、s640の処理で、縫製枠21が減速する過程における加速度に基づいて移動量を補正することができるため、形成すべき縫目の長さに合わせてより精度よく縫製枠21を移動させることができる。なお、「所定期間前」としては、縫製対象が停止する所定距離前のタイミング(例えば、移動区間において減速期間(50%以上)となる割合まで移動した時点など)としてもよい。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施の形態におけるミシンの制御系統を示すブロック図
【図2】補正テーブルのデータ構造を示す図
【図3】第1実施形態における縫製処理の処理手順を示すフローチャート
【図4】縫製枠を移動させる際の移動パターンを示すグラフ
【図5】第1実施形態における移動量補正処理の処理手順を示すフローチャート
【図6】第2実施形態における移動量補正処理の処理手順を示すフローチャート
【図7】別の実施の形態における縫製処理の処理手順を示すフローチャート
【符号の説明】
1、2・・・ミシン、10・・・縫い針駆動部、11・・・針棒、12・・・主軸モータ、13・・・主軸駆動回路、16・・・切断機構、17・・・切断駆動回路、18・・・エンコーダ、20・・・縫製対象駆動部、21・・・縫製枠、22・・・x軸ステッピングモータ、23・・・x軸駆動回路、24・・・y軸ステッピングモータ、25・・・y軸駆動回路、30・・・制御部、31・・・マイクロコンピュータ、32・・・記憶装置、33・・・表示パネル、34・・・入力パネル、35・・・ディスクドライブ。

Claims (11)

  1. 複数の縫目それぞれの長さおよび縫い順を示す縫製データに従って、縫い針を往復移動させながら、縫製対象を縫目毎に縫い針の移動方向と交差する平面に沿って順次移動させていくことによって、縫い針による複数の縫目を縫製対象に形成するようにミシンを制御するミシン制御装置であって、
    縫製対象を順次移動させる際の各移動区間における移動量を、縫い針の移動速度および縫目の長さを示す値がそれぞれ小さいほど長くなるように補正する補正手段を備えていることを特徴とするミシン制御装置。
  2. 前記補正手段は、縫い針の移動速度および縫目の長さと前記移動量を補正する際の補正量との対応関係を特定可能なデータテーブルを利用して、前記移動量を補正する際の補正量を決定することを特徴とする請求項1に記載のミシン制御装置。
  3. 縫製対象を縫製する際の縫製条件に応じて、前記補正手段が前記移動量を補正する際に利用するデータテーブルを、複数種類の縫製条件それぞれに対応する複数のデータテーブルの中から、該当する縫製条件に対応するデータテーブルに切り替える切替手段を備えていることを特徴とする請求項2に記載のミシン制御装置。
  4. 前記補正手段は、縫い針の移動速度および縫目の長さを示す値に基づいて、前記移動量を補正する際の補正量を算出することを特徴とする請求項1に記載のミシン制御装置。
  5. 前記補正手段は、縫製対象を順次移動させる際の各移動区間における移動速度を、縫い針の移動速度および縫目の長さに基づいて推定し、該推定した移動速度が遅いほど前記移動量が長くなるように補正することを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載のミシン制御装置。
  6. 前記補正手段は、縫製対象が各移動区間において停止する所定期間前の移動速度を推定することを特徴とする請求項5に記載のミシン制御装置。
  7. 前記補正手段は、縫製対象を順次移動させる際の各移動区間における加速度を、縫い針の移動速度および縫目の長さに基づいて推定し、該推定した加速度が小さいほど前記移動量が長くなるように補正することを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載のミシン制御装置。
  8. 前記補正手段は、縫製対象が各移動区間において停止する所定期間前の加速度を推定することを特徴とする請求項7に記載のミシン制御装置。
  9. 縫製対象はモータからなる移動手段によって移動させられるように構成されており、前記補正手段は、第n−1(1≦n)番目の縫目を形成した際に前記移動量が補正されていて、第n番目の縫目を形成する際の前記モータの回転方向が第n−1番目の縫目を形成したときと逆方向である場合、第n番目の縫目を形成する際の前記移動量に、第n−1番目の縫目を形成する際に補正した補正量を加算することを特徴とする請求項1から請求項8のいずれかに記載のミシン制御装置。
  10. 複数の縫目それぞれの長さおよび縫い順を示す縫製データに従って、縫い針を往復移動させながら、縫製対象を縫い針の移動方向と交差する平面に沿って順次移動させていくことによって、縫い針による複数の縫目を縫製対象に形成するようにミシンを制御するためのミシン制御方法であって、
    縫製対象を順次移動させる際の各移動区間における移動量を、縫い針の移動速度および縫目の長さを示す値がそれぞれ小さいほど長くなるように補正することを特徴とするミシン制御方法。
  11. 複数の縫目それぞれの長さおよび縫い順を示す縫製データに従って、縫い針を往復移動させながら、縫製対象を縫い針の移動方向と交差する平面に沿って順次移動させていくことによって、縫い針による複数の縫目を縫製対象に形成するようにミシンを制御する各種手順を、コンピュータシステムに実行させるためのミシン制御プログラムであって、
    縫製対象を順次移動させる際の各移動区間における移動量を、縫い針の移動速度および縫目の長さを示す値がそれぞれ小さいほど長くなるように補正する補正手順が含まれていることを特徴とするミシン制御プログラム。
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