JP2004041170A - 食品素材の焙煎方法 - Google Patents
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Abstract
【構成】外部加熱手段を備えた焙煎容器(ロースター)に食品素材を投入して予備焙煎(蒸らし)工程及び本焙煎工程を経て、食品素材の焙煎を行う方法において、予備焙煎工程を過熱水蒸気の存在下で行うことを特徴とする。
【選択図】 図3
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、外部加熱手段を備えた焙煎容器(ロースター)に食品素材を投入して予備焙煎(蒸らし)工程及び本焙煎工程を経て、食品素材の焙煎を行う方法に関する。特に、コーヒー豆類、茶葉類等の飲料用素材の如く、焙煎態様によりそれらの風味・香りに影響を受けやすい食品素材に好適な食品素材の焙煎(ロースト)方法に関する。
【0002】
ここでは、コーヒー豆類を例に採り説明するが、他の茶葉類等の飲料用素材には勿論、麦、米、とうもろこし、豆等の穀類、にんにく等の野菜類等の焙煎にも本発明は適用可能である。
【0003】
【従来の技術】
コーヒー豆の焙煎は、その品質を決定する重要な工程の一つである。そして、焙煎の出来・不出来により、焙煎コーヒー豆から抽出されたコーヒーの風味・香りに大きな差異が生じることが分かっている。そして、コーヒー豆の焙煎は、通常、図1にモデル図として示すような焙煎機12を用いて下記の手順によって行われている。
【0004】
▲1▼まず、焙煎機12の上部側に設けられた豆投入口14より一定量の生コーヒー豆を焙煎容器(ロースター)16内へ投入する。なお、図示の焙煎容器16は縦回転ドラム型とされており、コーヒー豆の焙煎中は、コーヒー豆を流動させながら焙煎するために、焙煎条件に応じた速度で回転させておく。
【0005】
▲2▼次に、焙煎容器16の下部側に設けられた焙煎熱源室18の焙煎熱源(外部加熱手段)19により焙煎容器内を加熱して予備焙煎(蒸らし)を行う。焙煎熱源19としては、熱風、燃焼ガス、遠赤外線マイクロウエーブ等が使用可能であるが、ここでは燃焼ガスを用いたバーナーを使用している。通常、後述の本焙煎工程よりも弱い火力で予備焙煎が行われる。
【0006】
当該予備焙煎工程は、コーヒー豆中から水分を除去し、均一に乾燥する目的で行われるものである。コーヒー豆から除去された水分は、焙煎容器16の上部側に設けられた排気ダクト20を通り系外へ排出される。なお、排気量は、排気ダクト20に設けられた排気調整弁21により調整可能とされている。
【0007】
コーヒー豆中の残留水分は、本焙煎工程において後述の風味等の向上を伴う化学変化を妨げ、結果としてコーヒー抽出時の苦味・渋みの原因となる。また、残留水分が多いと、時間経過に伴う焙煎コーヒー豆の品質低下が促進される。よって、予備焙煎工程において、いかに水分を除去できるか、及び成分の保持ができるかがコーヒーの品質を決定することになる。即ち、コーヒー豆中の水分を抜き取る際の見極めが非常に重要であり、従来は、コーヒー豆の頃合を焙煎者が見て経験により判断していた。
【0008】
▲3▼上記予備焙煎工程の後、熱源(バーナー)19の火力を強くし、本焙煎を行う。当該本焙煎工程においては、コーヒー豆中でメイラード反応(アミノカルボニル反応、メラノイジン反応)といわれる化学反応が起こり、コーヒー豆の風味、香りが発生する。
【0009】
なお、メイラード反応とは、「アミノ酸と還元糖との混合水溶液を加熱するとき生ずるカッ変現象」である(共立出版株式会社発行(昭和39年3月15日)「化学大辞典9」参照)。
【0010】
▲4▼上記本焙煎工程後、図示しない冷却槽に焙煎後のコーヒー豆をあけて冷却する。
【0011】
上記焙煎工程は、使用するコーヒー豆の品種や量などにより異なるが、約20〜30分で全工程が完了する。
【0012】
上記の如く、最初、予備焙煎(蒸らし)工程により生コーヒー豆中の水分を除去して乾燥させ、続いて本焙煎工程によりコーヒー豆を煎りあげるという二段階工程を経由することで良質の焙煎コーヒー豆を得ることができる。
【0013】
なお、本発明の発明性に影響を与えるものではないが、コーヒー豆の焙煎において過熱水蒸気を用いる技術が、従来いくつか提案されている(特許文献1〜3参照)。これらの技術は、本発明の如く過熱水蒸気を補助的に使用するものではなく、過熱水蒸気を主熱源とするものであって、本発明とはその構成や条件が明らかに異なっている。
【0014】
【特許文献1】
特開平1−256347号公報
【特許文献2】
特開平6−46755号公報
【特許文献3】
特開平6−30754号公報
【0015】
【発明が解決しようとする課題】
上記の如く、焙煎は熟練者が「カン」と「コツ」をもとに行ういわゆる職人仕事である。特に予備焙煎工程における豆中の水分を抜く作業は、豆の硬さ、柔らかさやキリマンジャロ、ガテマラ等品種による含水率の差などがあり、排気による調整という職人技が要求される。また、この工程において、コーヒー豆内の残留水分が本焙煎工程時の化学変化を妨げ、これがコーヒーを抽出した際の苦味・渋みの原因となる。
【0016】
また、この残留水分が風味等の向上を伴う化学変化に支障をきたすことにより、焙煎コーヒー豆の品質保持期間に悪影響を及ぼすという問題点もあった。
【0017】
本発明は、上記にかんがみて、不慣れな焙煎作業者が焙煎作業を行っても、風味・香りが良好なコーヒーを得ることが可能な食品素材の焙煎方法を提供することを課題とする。即ち、予備焙煎工程において、生コーヒー豆中の水分除去がより均一に可能な食品素材の焙煎方法を提供することを課題とする。
【0018】
【課題を解決するための手段】
本発明の食品素材の焙煎方法は、上記課題を下記構成により解決するものである。
【0019】
外部加熱手段を備えた焙煎容器(ロースター)に食品素材を投入して予備焙煎(蒸らし)工程及び本焙煎工程を経て、食品素材の焙煎を行う方法において、
予備焙煎工程を過熱水蒸気の存在下で行うことを特徴とする。
【0020】
予備焙煎工程を、乾燥能力を有する過熱水蒸気(過熱蒸気)の存在下で行うことにより、より効率的かつ均一にコーヒー豆の乾燥を行うことができる。
【0021】
上記構成において、予備焙煎工程における過熱蒸気は、略常圧の水蒸気を焙煎熱源室に流入させ、該水蒸気を焙煎熱源室内の熱源で過熱蒸気化させる。
【0022】
焙煎熱源室内で過熱蒸気化させるため、従来の焙煎機に汎用ボイラー等の蒸気発生装置を付設するだけでよく、別途、大掛かりな過熱蒸気発生装置を使用する必要がなくなる。なお、汎用の過熱蒸気発生装置は、通常、飽和蒸気用及び過熱蒸気用と、大型のボイラーを二台必要とし、設置面積を取る。
【0023】
上記焙煎方法には、食品素材としてコーヒー豆類を好適に適用可能である。コーヒー豆類は、焙煎態様によりそれらの風味・香りに影響を受けやすい食品素材であるためである。
【0024】
そして、上記焙煎方法でコーヒー豆類の焙煎を行う場合には、焙煎容器内の相対湿度を30%以上、焙煎容器内温度170℃以上となるように水蒸気を流入させることが望ましい。焙煎容器内の相対湿度が低すぎると、予備焙煎工程におけるコーヒー豆の乾燥が不十分となる。
【0025】
なお、本願出願人が特願2001−195285で先に提案した下記構成の過熱蒸気発生装置から過熱蒸気を直接焙煎容器内に導入してもよい。
【0026】
常温水又は温水を噴霧する噴霧ノズルと、該噴霧ノズルから霧(微小水滴集合体)を導入・導出する1本又は複数本の伝熱管と、前記伝熱管を直接的に加熱する直接加熱手段とを構成要素として含むことを特徴とする。
【0027】
上記過熱蒸気発生装置は、伝熱管として伝熱管本体の内側に表面積増大加工が施された薄肉金属板が丸めて挿入されてなるものとすることが望ましい。コスト低減に寄与するためである。
【0028】
さらに、直接加熱手段として焙煎熱源室における熱源を利用することが望ましい。過熱蒸気発生のための別熱源を必要としないためである。
【0029】
また、焙煎方法に適用する焙煎システムにおいて、焙煎機に接続されている水蒸気配管を焙煎機の排気口側にも接続する構成とすることが望ましい。
【0030】
当該構成により水蒸気が焙煎容器内に供給されないときであっても、焙煎機の排気経路に、通常配されている、焙煎容器から出るダスト(粒子)に湿り気を付与でき集塵効率(捕集効率)が向上するとともに、水蒸気発生機における過剰蒸気を常時逃がすことができ、水蒸気の焙煎容器への間欠的供給の安定化に寄与する。
【0031】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態について、図面に基づいて詳細に説明を行う。
【0032】
本発明の食品素材の焙煎方法は、外部加熱手段を備えた焙煎容器(ロースター)に食品素材を投入して予備焙煎(蒸らし)工程及び本焙煎工程を経て、食品素材の焙煎を行う方法において、
予備焙煎工程を過熱水蒸気の存在下で行うことを特徴とするものである。
【0033】
食品素材として好適に使用可能なコーヒー豆としては、ロブスタ種、アラビカ種、リベリカ種など、汎用のコーヒー豆であれば何れも適用可能である。
【0034】
具体的には、図2のモデル図に示す焙煎機12Aを使用して図3の如く焙煎を行うことができる。図2における焙煎機12Aは従来の焙煎機12に蒸気発生装置22および蒸気供給口24を設けただけの簡易な構造であるため、同一部分については同一図符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0035】
▲1▼焙煎機12Aの豆投入口14より一定量(例えば3〜5kg)の生コーヒー豆を焙煎容器(ロースター)16内へ投入する。なお、図示の焙煎容器16は図1の焙煎容器と同様、縦回転ドラム型とされており、生コーヒー豆投入後は、コーヒー豆を流動させながら焙煎するために、焙煎条件に応じた速度で回転させておく。
【0036】
この際のドラム回転速度は、例えば、ドラム内径:45cm、容量:0.063m3≒63Lの場合、通常、0.5〜5rpm、望ましくは1rpm前後とすることができる。ドラムを回転させて流動焙煎とするのは、流動状態の方が煎りあがったコーヒー豆がより均一な質になるからである。
【0037】
なお、本発明の焙煎方法には、焙煎容器16として、その他の構造のものを適用してもよい。例えば、横回転ドラムなどが使用可能である。ここまでは従来法と同じ工程である。
【0038】
▲2▼次に、焙煎熱源室18に配設された焙煎熱源(外部加熱手段)19により焙煎容器内を加熱して予備焙煎工程を行う。ここでは、生コーヒー豆中の水分を除去して系外へ排出し、コーヒー豆を乾燥させる。外部加熱手段(熱源)18としては、図示のガス直火(燃焼ガス)の他、温風、遠赤外線装置、炭などが使用可能である。そして、別途焙煎容器底部側に配した蒸気供給口(噴霧ノズル)24より焙煎熱源室18に図2に示す如く、水蒸気をガス炎に向けずに斜め上方、すなわち、焙煎容器16方向に噴出させ、実質的に焙煎容器16内で過熱蒸気化してもよいが、本実施形態では、図4〜5に示す如く、蒸気供給口(噴霧ノズル)24から水蒸気をガス炎25に向けて噴出し、焙煎熱源室18、すなわち焙煎容器外で過熱蒸気化させて、該過熱蒸気が焙煎容器16内へ流入するようにしてある。前者の場合は、水蒸気を直接ガス炎に向けないため火炎が安定しており、後者の場合は、水蒸気を直接ガス炎に向けるため火炎と水蒸気の接触効率が良好であり、過熱蒸気化の接触効率が良好である。
【0039】
具体的には、焙煎熱源室18は、矩形状とされ断熱材18aで囲繞され、内部には、3本のガス供給部28aを連結させた横「日」形状のガス供給管28が配され、各ガス供給部28にそれぞれ3個ずつのガスバーナ30が配されている。
【0040】
他方、ガス供給部28a、28a間に、それぞれ、水蒸気供給部30aが位置するに枝分かれ水蒸気供給管30が配されている。そして、水蒸気供給部30には、ガスバーナ30の炎に向かって水蒸気噴出可能に下方斜め方向に(中心軸を挟んで60°)一対の噴出口24、24が形成されている。なお、水蒸気供給管30の位置が、炎発生位置より低い場合は、噴出口24の方向は斜め上方となる。
【0041】
また、この予備焙煎工程においては、排気調整弁21を「閉」にしておく。これにより、コーヒー豆中の味・香りの成分が豆中に残るようになる。
【0042】
水蒸気供給においては、略常圧の水蒸気を焙煎熱源室18に流入させ(噴出方向斜め下方:点線矢印)、前記焙煎熱源室18内で過熱蒸気化させて焙煎容器16内に流入させて得る。ここで水蒸気を直接、焙煎熱源(炎)19に噴霧することにより、容易に過熱蒸気がエネルギー効率良好に得易い。
【0043】
より具体的には、水蒸気を90〜120℃、望ましくは100℃前後で焙煎熱源室18内に供給し、焙煎熱源室18内で加熱して150℃以上、望ましくは170℃以上の過熱水蒸気とする。焙煎熱源室18内で過熱蒸気化させることで、大掛かりな過熱蒸気発生装置を用いる必要がない。
【0044】
過熱水蒸気の温度が低すぎると、予備焙煎工程において充分なコーヒー豆の乾燥を行うことが出来ない。過熱水蒸気の温度の上限は、特に規定しないが、高すぎると、焙煎機の材質(SUSや鉄)等に悪影響を及ぼす可能性があり、通常200℃以下とすることが望ましい。
【0045】
なお、水蒸気は霧状にして焙煎容器16内に導入することが望ましい。水滴が微小となるため、過熱蒸気化が促進される。勿論霧状にしなくてもよい。
【0046】
また、過熱蒸気発生装置を用いてあらかじめ過熱蒸気を発生させ、当該過熱蒸気を焙煎容器16内に流入させてもよい。この場合は、通常の過熱蒸気発生装置では、大掛かりな大型ボイラーを2つ必要とするものが多い。このたため、本願出願人が特願2001−195285で先に提案した下記構成のものを使用することが、大型ボイラーのような取り扱い免許を必要とせず、設置面積も格段に少なくて済むため望ましい(図7参照)。
【0047】
当該過熱蒸気発生装置は、常温水又は温水を噴霧する噴霧ノズル38と、該噴霧ノズル38から霧(微小水滴集合体)を導入・導出する複数本の伝熱管35からなる伝熱管群38と、伝熱管群38を直接的に加熱する直接加熱手段42とを構成要素として含むものである。なお、図例中、32は水導入ホース、40は過熱蒸気導出管である。
【0048】
そして、伝熱管としては、伝熱面積を増大させたもの、例えば、図8(A)、(B)に示す如く、扁平管からなる伝熱管本体36の内部に、又は、円筒パイプからなる伝熱管本体36Aの内部に波状フィン37、37Aを挿入したもの35、35A、又は、図8(C)に示す如く、円筒状の伝熱管本体35Bの内側に表面積増大加工が施された薄肉金属板、例えば、ステンレスのメッシュ板37Bが丸めて挿入されてなるもの35Bとする。前者は伝熱効率が良好である、後者は、生産工数が削減できる、各長所を有する。
【0049】
なお、図8(C)の構成の場合、例えば、伝熱管本体40aの肉厚:3mm、メッシュ板40dの肉厚:0.1mmとする。
【0050】
また直接加熱手段として、図例の如く、電気炉としてもよいが、焙煎熱源室の焙煎熱源をそのまま利用してもよい。
【0051】
なお、上記焙煎方法における全体フロー(流図)は、図9に示す如く、水蒸気発生機と焙煎機が接続され、焙煎機からの排気は排気ダクト20を介して集塵機器および煙突を経て大気へ排出されるものとなる。
【0052】
上記構成において、過熱蒸気源となる水蒸気発生機からの水蒸気配管が前記焙煎機の排気口側と集塵機の導入口側(排気ダクト20との接続口とは限らない。)との間に接続されている構成とすることが望ましい。ここで、通常は、▲1▼焙煎熱源室への供給および▲2▼排気ダクト20または集塵機への供給は、切替弁(図示せず)で行う。
【0053】
水蒸気を焙煎機の排気口側と集塵機の入口側との間で導入することにより、水蒸気が焙煎容器内に供給されないときであっても、通常配されている、集塵器に湿り気を付与でき集塵効率が安定する。また、水蒸気発生機における過剰蒸気を常時逃がすことができ、水蒸気の焙煎容器への間欠的供給の安定化に寄与する。
【0054】
実験データとしては、4kgの豆を焙煎したときに水蒸気量は水分量に換算して10cc以上、焙煎容器16内の相対湿度25%以上、望ましくは30〜50%、さらに望ましくは35〜45%とする。水蒸気量が多すぎても少なすぎても、焙煎コーヒー豆の品質が低下する。
【0055】
予備焙煎時間は、コーヒー豆の処理量や過熱水蒸気の温度、相対湿度等により異なるが、例えば約10分弱とすることができる。時間が長いと本焙煎工程における豆の「ハゼ」が小さくなり、豆にシワがよる可能性がある。逆に時間が短いとコーヒー豆の乾燥が不充分となる。
【0056】
なお、焙煎容器16内の酸素濃度は通常15%程度であるが、水蒸気を供給することにより12%程度まで酸素濃度が低下する。このため、焙煎時におけるコーヒー豆中の油脂などの酸化を防止することができる。
【0057】
上記の如く過熱水蒸気を使用することで、焙煎処理効率の向上、煎りムラの減少等の効果が見られ、焙煎コーヒー豆の品質が向上する。これは、過熱水蒸気の持つ乾燥能力を応用したものである。過熱水蒸気が外部加熱手段(熱源)18に対して補助的な作用を奏し、均一に、きれいにコーヒー豆中から水分が抜けるようになる。
【0058】
即ち、水蒸気の熱容量は空気の熱容量よりも大きいため、コーヒー豆の中まですばやく熱が伝わるようになり、コーヒー豆中の水分がすばやく抜けるようになる。今までの焙煎は「職人仕事」であり、コーヒー豆中の水分の抜き方は焙煎人の腕にかかっていたが、過熱水蒸気を加えることにより、作業者による焙煎コーヒー豆の品質ばらつきがなくなり、誰でも高品質のコーヒーが焙煎できるようになる。なお、コーヒー豆の水分の抜け具合は、含水率、豆の内外の温度、写真による目視等で判定可能である。
【0059】
上述の如く、焙煎コーヒー豆中に残った残留水分はコーヒー抽出時の苦味・渋みの成分となる。また、残留水分は本焙煎工程において風味等の向上に寄与する化学変化を妨げ、焙煎コーヒー豆の品質を低下させる。よって、水分が抜けることによりうまみ成分の多い高品質なコーヒー焙煎ができ、香りなどの品質が長時間維持可能となる。
【0060】
さらに、水蒸気の熱容量は空気の熱容量よりも大きいことから、排気を最小限に抑えながらコーヒー豆に熱を加えることが出来る。排気を抑えることで従来の焙煎方法では飛んでしまう香りの成分が多く残ることになる。
【0061】
なお、予備焙煎工程において、コーヒー豆から除去された水分は焙煎容器16の上部に配された排気ダクト20を通り、煙突等を介して系外(大気中)へ排出される。
【0062】
通常、排気ダクト20と煙突の途中には図9に示す如くサイクロンなどの集塵機が設置されている。これは、焙煎容器16から焙煎により発生する微小粒子(ダスト:主としてコーヒー豆の渋皮(シルバースキン))を回収するための設備である。
【0063】
そして、今回、過熱蒸気を用いた焙煎により、上記焙煎容器16からのダストは湿り気が与えられて(水分を吸収して)、比重が増大して集塵機の捕集効率(回収率)が増大する効果を奏する。
【0064】
また、集塵機の出口側の排気ダクトに堆積する捕集されなかった微粒子は、従来、渋皮(核)の周りにワタ状物が付着した形態であったものが、本発明ではワタ状物も吸湿して固形化した形態となるため、排気ダクトの堆積量が減少する。
【0065】
上記作用効果は、図9の如く水蒸気バイパスを設けることによりより顕著となることが期待できる。
【0066】
▲3▼上記予備焙煎工程の後、水蒸気の供給を止めて、火力を強くし、本焙煎を行う。本焙煎工程においては、コーヒー豆中でメイラード反応と呼ばれる化学反応が起こり、コーヒー豆の風味、香りが発生する。
【0067】
本焙煎工程における焙煎容器16内の温度は、コーヒー豆の種類や処理量、相対湿度等により異なるが、例えば200℃以上とすることができる。即ち、焙煎容器16内の温度を上記範囲に保つように外部加熱手段18の火力調整を行う。
【0068】
本焙煎工程は、従来法に準じて行えばよく、本焙煎の終了は、焙煎コーヒー豆の色の変色具合を見て判断する。即ち、前述のメイラード反応により焙煎コーヒー豆がカッ変するため、目視により、焙煎終了の目安とすることができる。具体的には、15〜20分前後となる。
【0069】
▲4▼本焙煎工程終了後、従来と同様、図示しない冷却槽にコーヒー豆をあけて冷却する。冷却は通常、空冷で行う。
【0070】
【発明の効果】
本発明の食品素材の焙煎方法は、外部加熱手段を備えた焙煎容器(ロースター)に食品素材を投入して予備焙煎(蒸らし)工程及び本焙煎工程を経て、食品素材の焙煎を行う方法において、予備焙煎工程を過熱水蒸気の存在下で行うことにより、食品素材中の含水分の抜けが良くなり、焙煎後の食品素材(コーヒー豆など)の品質が向上し、品質保持期限が長くなる。
【0071】
また、略常圧の水蒸気を焙煎熱源室内に流入させ、焙煎熱源で過熱蒸気化させることで、より簡易な焙煎機で、効率よく食品素材の焙煎を行うことが可能となる。
【0072】
そして、付随的効果として、水蒸気が排気ダクト内にも供給されて、焙煎容器から発生するダストの比重が増大して、集塵機による捕集効率が向上する。また、食品素材(コーヒー豆など)中のビタミン類も壊れにくくなる。
【0073】
【実施例】
以下、本発明の効果を確認するために行った実施例について説明する。本実施例においては下記手順により、コーヒー豆の焙煎を行った。
【0074】
▲1▼図2のモデル図に示す構造を有する焙煎機12Aの焙煎容器16を、外部加熱手段(焙煎熱源:ガスバーナ)18を用いて予備加熱した(但し、焙煎熱源室は図5〜6に示す構造とした。)。本実施例においては、焙煎機12Aとして、富士珈機販売製フジローヤル3kgを使用した。なお、焙煎容器16は縦回転ドラム型であり、焙煎中は約1rpm/sで回転させておいた。
【0075】
また、この予備焙煎時には、排気調整弁を「閉」にしておく。ただし、不完全燃焼防止のため若干の空気の流れはある。これにより、コーヒー豆中の味・香りの成分が豆中に残るようになる。
【0076】
▲2▼焙煎容器16内の温度が、約170℃となった時点で、生コーヒー豆3kgを豆投入口14から焙煎容器16内へ投入した。なお、生コーヒー豆を投入したことにより焙煎容器16内の温度が一旦100℃付近まで下降した。
【0077】
▲3▼一旦下降した焙煎容器16内の温度が再び上昇を始めたら、蒸気供給口24より、水蒸気を焙煎熱源室18内に水蒸気供給管30の蒸気噴出口24から、ガスバーナ19aからのガス炎(火炎)に向かって噴出させる。噴出された蒸気はガス炎により焙煎熱源室18内で過熱蒸気化されて焙煎容器16内に流入する。このため、この状態で10分程度予備焙煎を行い、コーヒー豆中の水分を除去した。水蒸気は、ドラム内の相対湿度30%以上となるように供給したが、ここでの総水蒸気量は25cc(水に換算)であった。
【0078】
▲4▼10分程度の予備焙煎が終了したら水蒸気の供給を止め、ガスバーナの火力を強くして本焙煎を行った。この時の焙煎容器16内の温度は焙煎具合によっても異なるが、ここでは、約200℃とした。
【0079】
▲5▼コーヒー豆の色合いを見て豆取出口26から焙煎コーヒー豆を取り出し、焙煎を終了した。
【0080】
また、比較例として、水蒸気を供給しない以外は実施例と同様の条件でコーヒー豆の焙煎を行った。
【0081】
実施例、比較例において得られた10分後(予備焙煎終了後)のコーヒー豆断面図を図4に示す。また、それぞれのコーヒー豆について、焙煎前に対する質量減少割合を表1に示す。
【0082】
【表1】
図4及び表1の結果より、予備焙煎工程において水蒸気を供給した実施例においては、水分の抜けが良好であり、コーヒー豆がふっくらした形状となった。また、表面の色もほぼ均一で、コーヒー豆表面のしわの伸びがよいことが確認できた。
【0083】
一方、予備焙煎工程において水蒸気を供給しない比較例においては、コーヒー豆の形状からも、質量変化からも若干残留水分が実施例に比して多いことが分かる。また、コーヒー豆が硬く、表面のしわが目立つことが確認できた。
【0084】
なお、本発明者らは、さらに焙煎終了後のコーヒー豆をコーヒーミルで粉砕した後コーヒーを抽出し、味覚チェック、抽出物の成分分析、香りのガス成分分析を行った結果、本発明の焙煎方法で焙煎を行った場合に旨み成分の多い高品質なコーヒーを得ることができることを確認している。
【図面の簡単な説明】
【図1】従来の焙煎機を示すモデル図である。
【図2】本発明の焙煎方法に適用可能な焙煎機の一例を示すモデル図である。
【図3】本発明の焙煎方法を示す流れ図である。
【図4】実施例及び比較例における焙煎後のコーヒー豆の断面図である。
【図5】本発明に一実施形態における焙煎熱源室の平面断面図である。
【図6】図6の6−6線矢視図である。
【図7】本発明に適用するのに好適な過熱蒸気発生装置の原理図である。
【図8】(A),(B)、(C)はそれぞれ、図7の過熱蒸気発生装置に好適な伝熱管の各例を示す断面図である。
【図9】本発明における焙煎システムのフロー図である。
【符号の説明】
12、12A:焙煎機
14:豆投入口
16:焙煎容器(ロースター)
18:焙煎熱源室
19:焙煎熱源(外部加熱手段)
20:排気ダクト
21:排気調整弁
22:蒸気発生装置
24:蒸気供給口
26:豆取出口
35:伝熱管
Claims (8)
- 外部加熱手段を備えた焙煎容器(ロースター)に食品素材を投入して予備焙煎(蒸らし)工程及び本焙煎工程を経て、食品素材の焙煎を行う方法において、
前記予備焙煎工程を過熱水蒸気の存在下で行うことを特徴とする食品素材の焙煎方法。 - 前記予備焙煎工程を、略常圧の水蒸気を焙煎熱源室に流入させ、該水蒸気を前記焙煎熱源室の熱源で過熱蒸気化させることを特徴とする請求項1記載の食品素材の焙煎方法。
- 前記食品素材がコーヒー豆類であることを特徴とする請求項1又は2記載の食品素材の焙煎方法。
- 前記焙煎容器内の相対湿度を30%以上、焙煎容器内温度170℃以上となるように前記水蒸気を流入させることを特徴とする請求項3記載の食品素材の焙煎方法。
- 請求項1において予備焙煎工程に使用する過熱蒸気を発生させる装置であって、
常温水又は温水を噴霧する噴霧ノズルと、該噴霧ノズルから霧(微小水滴集合体)を導入・導出する1本又は複数本の伝熱管と、前記伝熱管を直接的に加熱する直接加熱手段とを構成要素として含むことを特徴とする過熱蒸気発生装置。 - 前記伝熱管が伝熱管本体の内側に表面積増大加工が施された薄肉金属板が丸めて挿入されてなるものであることを特徴とする請求項5記載の過熱蒸気発生装置
- 前記直接加熱手段が前記焙煎熱源室における熱源であることを特徴とする請求項5又は6記載の過熱蒸気発生装置。
- 請求項1の焙煎方法に適用する焙煎システムにおいて、
焙煎機に接続されている水蒸気配管が前記焙煎機の排気口側にも接続されていることを特徴とする食品素材の焙煎システム。
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