JP4751677B2 - 嗜好性原料の抽出方法 - Google Patents

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Description

本発明は、焙煎コーヒー豆又は茶葉よりなる嗜好性原料を抽出する嗜好性原料の抽出方法に関する。より詳しくは、エスプレッソ法で抽出されるような呈味や風味を有する濃厚な抽出液を工業的に製造可能な嗜好性原料の抽出方法に関する。
エスプレッソコーヒーは、一般に、旨みが凝縮されているため、ドリップコーヒーなどと比べて濃厚な味覚を呈する。このようなエスプレッソコーヒーは、通常、深煎りの細挽き豆を温水で抽出する際に、該温水に圧力を加えて強制的にコーヒー豆の粉末の間を短時間で通り抜けさせる方法により製造される。エスプレッソコーヒーを製造する場合、カフェインの抽出速度が他の成分に比べて相対的に遅いことから、エスプレッソコーヒー中のカフェイン量はドリップ法に比べて低い。また、エスプレッソコーヒーは、加圧抽出の影響から細密な泡が観察されるという外観的な特徴を有している(特許文献1の従来技術参照)。また、エスプレッソコーヒーは、本来高速抽出されるべきものであるが、このような高速抽出は、工業的な大量生産になじみにくいため、現状市販されているものは、味覚や食感をエスプレッソコーヒーに近似させるべく、従来の抽出手法の範囲内で様々に工夫が施されている(特許文献2の従来技術参照)。
例えば特許文献1には、ドリップコーヒーの製造方法を改良することにより、渋味、えぐみなどがないコーヒー感に優れたドリップコーヒー抽出液の製造方法が開示されている。この製造方法では、コーヒー豆層の下方又は側面から約80℃〜180℃の水蒸気を注入してコーヒー豆層の含水率を5重量%以上20重量%未満に高めた後、常圧下80℃〜100℃の水で抽出処理することを特徴としている。この製造方法のように、水蒸気を用いてコーヒー豆層の含水率を高める場合、コーヒー豆層の空隙構造の破壊を防止した状態でコーヒー豆層の温度及び含水率を上昇させることが可能となるため、抽出濾過抵抗が抑えられ、結果的に抽出速度の低下を抑えることが可能となる。水蒸気は、具体的には、コーヒー抽出機の下部抽出液排出口から、コーヒー豆層に対して注入される。
特許文献2には、工業的に抽出することが難しかったエスプレッソコーヒーなどの抽出を効果的に行い得る多機能抽出器を用いた抽出方法が開示されている。この抽出方法は、抽出に先立ち、多機能抽出器の容器本体内に蒸気を供給し、材料を活性化させる予備処理を行うことを特徴としているため、高い抽出速度を要求される工業レベルでの製造に適した方法となっている。蒸気の供給は、具体的には、多機能抽出器の下蓋部に形成された給気口を通して行われる。
特許文献3には、ドリップ抽出コーヒー及びエスプレッソ抽出コーヒーを選択的に製造可能なレギュラーコーヒー抽出装置が開示されている。この抽出装置は、シリンダと、フィルタブロックと、待機位置から移動してきてシリンダの中に上方から挿入される湯ノズル及び蒸気ノズルを備えたピストンと、湯ノズル及び蒸気ノズルを通じてシリンダ内に湯ないし蒸気を供給する温水/蒸気発生器と、エアポンプと組合せされたエアノズルとを具備してなる。この抽出装置を用いてエスプレッソ抽出コーヒーを製造する場合、シリンダ内に原料を投入する工程と、ピストンをシリンダ内に挿入し、原料の上方から蒸気を噴射して原料を蒸す工程と、湯ノズルより湯を供給する工程と、エアノズルよりシリンダ内に加圧空気を吹き込んでコーヒーを抽出する工程とが実施される。
特許文献4には、ブリュア内にコーヒー粉と湯とを供給した後、蒸気発生器からの蒸気によりブリュア内の湯を加圧してコーヒー粉に通すことにより、コーヒー飲料を抽出するエスプレッソコーヒーの抽出装置が開示されている。この抽出装置において、蒸気は、具体的には、ブリュア本体の肩部に配置された蒸気入口を通してブリュア本体内に導入される。
一方、特許文献5には、焙煎後のコーヒー豆又は製茶後の茶葉よりなる嗜好性原料に過熱水蒸気を接触させ、その接触後の蒸気を回収することにより、揮発性成分を得る方法が開示されている。この方法は、具体的には、抽出容器内に仕込まれたコーヒー豆の粉砕物の下方から過熱水蒸気を接触させ、該抽出容器の上端部から流出する蒸気を集めて冷却することにより、液状の揮発性成分を回収している(例えば同文献の試験例4参照)。さらに、同文献には、該製造方法により製造された揮発性成分と、過熱水蒸気を接触させた後の嗜好性原料を水抽出することにより得られる水抽出物とを含むコーヒー飲料のような飲食品も開示されている。
特開2004−49086号公報 特開2000−175823号公報 特開平11−120434号公報 特開2004−33383号公報 特開2005−137269号公報
特許文献1〜4では、エスプレッソ法で抽出されるような呈味や風味を有する濃厚な抽出液を工業的に製造するために、水蒸気が用いられている。具体的には、特許文献1〜3において、水蒸気は、コーヒー豆の層より離間した位置から、該コーヒー豆の層に向かって噴出される。また、特許文献4では、抽出装置内を加圧して抽出速度を高めるために水蒸気が用いられている。
本発明者らは、鋭意研究の結果、焙煎コーヒー豆や茶葉よりなる嗜好性原料を抽出するに際して、原料層より離間した位置からではなく、原料層の内部から飽和水蒸気を噴出させ、該飽和水蒸気をそれら嗜好性原料に直接接触させることにより、呈味及び風味に優れた極めて濃厚な抽出液を得ることに成功した。そして、これらの知見に基づいて本発明を完成するに至った。本発明の目的とするところは、嗜好性原料の濃厚な抽出液を容易に製造することができる嗜好性原料の抽出方法を提供することにある。
上記の目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、焙煎コーヒー豆又は茶葉よりなる嗜好性原料を抽出する方法であって、該方法は、前記嗜好性原料に抽出水を接触させて水抽出液を得る水抽出工程と、同嗜好性原料に飽和水蒸気を接触させて蒸気抽出物を得る蒸気抽出工程とを備え、該方法では、前記水抽出液及び前記蒸気抽出物が混合されてなる前記嗜好性原料の抽出液が得られ、前記蒸気抽出工程では、前記嗜好性原料よりなる原料層の内部から、前記飽和水蒸気を噴出させることにより、該飽和水蒸気を前記嗜好性原料に直接接触させ、前記蒸気抽出工程は、前記水抽出工程と同時に実施されることを要旨とする。
求項に記載の嗜好性原料の抽出方法は、請求項に記載の発明において、前記蒸気抽出工程に先立って、前記嗜好性原料を蒸らす工程を実施することを要旨とする。
請求項に記載の嗜好性原料の抽出方法は、請求項又は請求項に記載の発明において、前記蒸気抽出工程では、前記飽和水蒸気が前記抽出水の中でバブリングされるとともに、前記嗜好性原料が前記原料層内で対流することを要旨とする。
請求項に記載の嗜好性原料の抽出方法は、請求項から請求項のいずれか一項に記載の発明において、前記水抽出工程では、前記抽出水が前記飽和水蒸気と接触することにより、該抽出水の温度が5℃以上上昇することを要旨とする。
請求項に記載の嗜好性原料の抽出方法は、請求項1から請求項のいずれか一項に記載の発明において、前記水抽出工程及び前記蒸気抽出工程を脱酸素雰囲気下で実施することを要旨とする。
本発明によれば、嗜好性原料の濃厚な抽出液を容易に製造することができる嗜好性原料の抽出方法を提供することができる
以下、本発明の嗜好性原料の抽出方法及び装置を具体化した一実施形態を説明する。
本実施形態の嗜好性原料の抽出方法は、焙煎コーヒー豆又は茶葉よりなる嗜好性原料を抽出することにより、該嗜好性原料の抽出液を得る方法である。この抽出方法では、嗜好性原料に抽出水を接触させて水抽出することにより水抽出液を得る水抽出工程と、同嗜好性原料に飽和水蒸気を接触させて抽出することにより蒸気抽出物を得る蒸気抽出工程とが実施される。さらに、この抽出方法では、水抽出工程で得られた水抽出液と、蒸気抽出工程で得られた蒸気抽出物とが混合されることにより、両工程で得られた成分を含有する嗜好性原料の抽出液が得られるようになっている。
このため、本実施形態の抽出方法では、公知の水抽出工程に加えて、蒸気抽出工程が実施されることにより、呈味及び風味に優れたエスプレッソ風の濃厚なコーヒー飲料又は茶系飲料を製造することができる。本実施形態の抽出方法により得られる抽出液は、エスプレッソ法、特に直下式に近いエスプレッソ法で抽出されるような呈味や風味を有する濃厚な抽出液であって、例えばドリップ法などで抽出される焙煎コーヒー豆の水抽出液よりも低いカフェイン含量を有するという特徴を有している。また、本実施形態の抽出方法を嗜好性原料としての茶葉に適用する場合、得られる抽出液は、公知の水抽出により抽出される茶の水抽出液よりも高い抽出率を有するという特徴を有している。
嗜好性原料としては、焙煎コーヒー豆又は茶葉が用いられる。
焙煎コーヒー豆は、コーヒー生豆を遠赤外線焙煎、熱風焙煎、直火焙煎、炭焼焙煎、過熱水蒸気焙煎又はそれらの組合せによって焙煎することにより得られる。コーヒー豆の種類としては、呈味及び風味に優れていることから、アラビカ種、カネフォーラ種ロブスタ、カネフォーラ種コニュロン、リベリカ種又はそれらのブレンドが好適に用いられる。コーヒー豆の焙煎度L値は、15〜33であることが好ましく、15〜25であることが特に好ましく、15〜21(シティーロースト〜イタリアンロースト)であることが最も好ましい。また、焙煎コーヒー豆の形態は、水抽出可能な形態であれば特に限定されないが、抽出率を高めるために、破砕物又は粉砕物であることが好ましい。破砕物又は粉砕物の粒度やホール形状などは特に限定されない。
一方、茶葉としては、公知の製茶工程を経ることによって製造された茶葉、該茶葉を醗酵させた半醗酵茶葉や醗酵茶葉、焙じた茶葉や茶茎、各種植物体の葉や花などが用いられる。茶葉の種類としては、緑茶、半醗酵茶(ウーロン茶等)、紅茶、麦茶、ハト麦茶、玄米茶、ほうじ茶、ジャスミン茶、プアール茶、ルイボス茶、ハーブ等又はそれらをブレンドした茶が好適に用いられる。
水抽出工程では、嗜好性原料を抽出水に浸漬させ、該抽出水に溶出される成分を水抽出液として得る処理が行われる。なお、抽出水としては、通常、コーヒーや茶を抽出する際に用いられる水が使用される。また、この水抽出工程、特に茶系飲料を製造する場合の水抽出工程では、必要に応じて、抽出水や嗜好性原料をニーダーやプロペラなどで機械的に撹拌する操作を行ってもよい。
蒸気抽出工程では、嗜好性原料に飽和水蒸気を直接接触させ、その接触後の蒸気を回収する処理が行われる。但しこの場合、飽和水蒸気は、嗜好性原料よりなる原料層の内部から噴出される必要がある。即ち、この蒸気抽出工程では、原料層の外部(原料層から離間した上方、下方又は側方)から飽和水蒸気を噴出させるのではなく、原料層の内部から嗜好性原料に向かって飽和水蒸気を噴出させる操作が行われる。このため、この蒸気抽出工程では、原料層を構成する各嗜好性原料の隙間を通して、全ての嗜好性原料に対してムラなく飽和水蒸気を接触させることが可能となるため、呈味及び風味に優れたエスプレッソ風の濃厚な成分(蒸気抽出物)を極めて効率よく抽出することを可能にする。なお、蒸気抽出物は、嗜好性原料に接触した後の蒸気及び該蒸気を液化させた液体のいずれの形態で回収されても構わない。
蒸気抽出工程は、水抽出工程と同時に実施することが最も好ましいが、水抽出工程の前又は後に実施しても構わない。但し、蒸気抽出工程と水抽出工程とを同時に実施するとは、両工程の開始から終了までが全て一致する場合に加えて、各工程の少なくとも一部が同時に実施される場合も含まれることとする。各工程の少なくとも一部が同時に実施される場合としては、例えば、蒸気抽出工程の開始から終了までの間に水抽出工程を開始する場合、又は、水抽出工程の開始から終了までの間に蒸気抽出工程を開始する場合などが挙げられる。また、水抽出工程の開始から終了までの間に蒸気抽出工程を開始して終了させる場合、又は、蒸気抽出工程の開始から終了までの間に水抽出工程を開始して終了させる場合なども挙げられる。蒸気抽出工程と水抽出工程とを実施するタイミングに関して本実施形態で選択可能な実施パターンを下記表1にまとめて示す。
Figure 0004751677
表1に示す実施パターンA〜Jではいずれも、蒸気抽出工程により効率よく回収可能となる呈味及び風味に優れたエスプレッソ風の濃厚な成分(蒸気抽出物)が、水抽出工程における水抽出液と混合された状態で回収される。
一方、実施パターンKでは、蒸気抽出工程において嗜好性原料に接触した後の蒸気を回収して液化させたり、蒸気抽出工程後の原料層などから滴り落ちる液体を所定時間かけて回収したりすることにより、呈味及び風味に優れたエスプレッソ風の濃厚な成分(蒸気抽出物)が回収される。回収された蒸気抽出物は、水抽出液と混合されることにより、嗜好性原料の抽出液となる。なおこの場合、蒸気抽出工程後の原料層に対して、抽出水又は水抽出液を接触させて前記濃厚な成分を回収する操作が行われても構わない。また、実施パターンC,F,Gについては、前記実施パターンKの場合と同様にして、エスプレッソ風の濃厚な成分(蒸気抽出物)を回収することも可能である。ちなみに、蒸気抽出工程は、実施パターンD,E,F,Jにおいては、ドライな状態の嗜好性原料に対して、蒸らしを行う効果も発揮し得る。
蒸気抽出工程と水抽出工程とを同時に実施する場合、蒸気抽出工程では、飽和水蒸気が抽出水の中でバブリングされることが好ましく、さらに嗜好性原料が原料層内で対流することが特に好ましい。このような場合、原料層内の嗜好性原料は、バブリングや対流によって適度に撹拌されるため、呈味及び風味に優れたエスプレッソ風の濃厚な成分の回収率を高めることを可能にする一方で、渋味成分やえぐみ成分が回収されることを効果的に抑えることを可能にする。特に、焙煎コーヒー豆に対してこのような蒸気抽出工程を実施する場合、バブリングや対流によって、該コーヒー豆の中心部まで水が浸透し易くなるため、エスプレッソ風の濃厚な成分の回収率を高めつつ、渋味成分やえぐみ成分の回収率を抑えることが容易となる。ただし、飽和水蒸気の蒸気量を多くしすぎると、嗜好性原料を取り巻く抽出液も攪拌されすぎるため、該抽出液の濃度勾配が均一になってしまい、抽出効率が低下する。
また、蒸気抽出工程と水抽出工程とを同時に実施する場合、蒸気抽出工程に先立って、嗜好性原料を蒸らす工程を実施することが好ましい。例えば、実施パターンA〜C、G〜Iでは、嗜好性原料が十分に蒸らされていないドライな状態で水抽出工程が開始される場合を含み得るが、このような場合、蒸気抽出工程に先立って、嗜好性原料を別途蒸らす工程を実施することにより、呈味及び風味に優れたエスプレッソ風の濃厚な成分の回収率を容易に高めることが可能となる。なお、蒸らす工程は、焙煎コーヒー豆や茶葉に対して通常の水抽出を行う際の初期操作で行われるような公知の方法に従って実施されればよい。
また、蒸気抽出工程と水抽出工程とを同時に実施する場合、該水抽出工程では、抽出水が高温の飽和水蒸気と接触することにより、該抽出水の温度が上昇する。この場合、抽出水の温度変化に伴って、嗜好性原料から水抽出される成分が刻々と変化することから、より多種類の成分を含む水抽出液の回収が可能となる。前記抽出水の温度上昇ΔTは、抽出水の融点と沸点との間であれば特に限定されないが、水抽出工程が常圧で実施される場合には5〜80℃の範囲内、加圧状態で実施される場合には5〜140℃の範囲内であることが好ましい。ちなみに、加圧状態で水抽出工程を実施する場合、加圧の状態により抽出水の温度上昇ΔTが140℃以上になることもあり得る。なお、抽出水の温度上昇ΔTは、水抽出工程の開始時に嗜好性原料に接触する抽出水の温度と、同水抽出工程における抽出水(水抽出液)の最高温度との差によって規定される。抽出水の温度上昇ΔTが5℃未満の場合、多種類の成分を水抽出液に溶出させる効果が低減する。また、水抽出工程で常温の抽出水を用いる場合、常圧では該抽出水の最も大きな温度上昇ΔTは概ね80℃となる。ちなみに、水抽出工程において、抽出水自体の温度を変化させることにより、上述したように前記温度上昇ΔTを5℃以上上昇させるようにしても構わない。
一方、上述した水抽出工程及び蒸気抽出工程は、いずれも脱酸素雰囲気下で実施されることが好ましい。これらの工程を脱酸素雰囲気下で実施する場合、各工程は、密閉容器内で実施されるとともに、該密閉容器内に窒素ガスや希ガスのような不活性ガスが充填された状態で実施される。この場合、回収される抽出液及びそこに含まれる各成分の酸化劣化が抑えられて、高い品質の抽出液を得ることが容易となる。さらにこの場合、脱酸素雰囲気下を継続的に維持することが容易であることから、各工程で用いられる抽出水及び飽和水蒸気は、溶存酸素を除去した水(いわゆる脱酸素水)を用いて作製されたものであることが特に好ましい。
次に、上記嗜好性原料の抽出方法の実施に適した装置について、図面を参照しながら説明する。
図1(a)に示すように、嗜好性原料の抽出装置11は、嗜好性原料を密閉状態で収容する処理タンク12(密閉容器)と、該処理タンク12内に抽出水を供給する水供給配管13と、同処理タンク12内から嗜好性原料の水抽出液を回収する回収配管14とを備えている。処理タンク12、水供給配管13及び回収配管14は、本実施形態の抽出方法における水抽出工程を実施するために主に設けられている。
水供給配管13は、処理タンク12内に抽出水を供給するために、図示しない抽出水の貯留部から、処理タンク12の上端部へと接続されている。処理タンク12の下端部には、抽出水によって嗜好性原料から抽出される水抽出液(抽出液の場合もある)を回収するための回収配管14が接続されている。回収配管14は、嗜好性原料の抽出液を保管しつつ調合するための図示しない調合タンクに接続されている。水供給配管13及び回収配管14の途中には、それらの配管内を流れる液体の流量を調節するためのバルブ13a,14aがそれぞれ設けられている。
処理タンク12は、有底有蓋円筒状に形成された耐圧容器からなり、内部を密閉状態にすることが可能であるうえ、常圧及び加圧のいずれの状態にも設定可能である。この処理タンク12は、有底円筒状をなす下部タンク21と、有蓋円筒状をなす上部タンク22とから構成されている。下部タンク21は、上部タンク22に対してクランプ23にて回動可能に接合されている。上部タンク22の内部には、嗜好性原料を収容するための収容部24が設けられている。
処理タンク12の上端には、嗜好性原料を投入するための原料投入口(図示略)と、該原料投入口を開閉可能に閉塞する原料投入蓋26とが設けられている。下部タンク21の上部には、処理タンク12内を上下に仕切るように水平面に沿って延びる濾過メッシュ28が設けられている。原料投入口から投入される嗜好性原料は、濾過メッシュ28の上面に層状に載置されて原料層を形成する。原料層は、上部タンク22の下端から上方に向かって収容部24内を埋めるように層状に配置される。そして、本実施形態の抽出方法の終了後には、下部タンク21を開き、処理タンク12内から濾過メッシュ28の上面の嗜好性原料が取り出されて廃棄される。
図1(a)、(b)に示すように、抽出装置11はさらに、飽和水蒸気を発生させる蒸気発生装置31と、該蒸気発生装置31から処理タンク12内へと延びる蒸気供給配管32とよりなる蒸気供給部33を備えている。蒸気供給部33は、処理タンク12内の収容部24に飽和水蒸気を供給することにより、本実施形態の蒸気抽出工程を実施するために設けられている。
蒸気発生装置31は、ボイラー又は電磁誘導加熱装置を備えており、液体の水を加熱して沸騰させることにより飽和水蒸気を発生させる。蒸気発生装置31から発生する飽和水蒸気の蒸気量は、飲食品原料1kgあたり好ましくは0.1〜30kg/h、より好ましくは0.2〜20kg/h、さらに好ましくは0.3〜10kg/hである。蒸気量が0.1kg/h未満の場合、蒸気抽出工程に時間を要することから蒸気抽出物(抽出液)の製造効率が低下し、逆に30kg/hを超える場合、蒸気発生装置31内の内圧が高くなることから、圧力制御を実施するための装置コストが高くなったり、大きな装置スペースが必要になったりする。
蒸気供給配管32は、1本の本体管32aと、複数の分岐管32bからなる蒸気噴出部41とを備え、蒸気発生装置31で発生される飽和水蒸気を処理タンク12内の適切な位置に供給する。本体管32aの基端は蒸気発生装置31に接続され、先端部は処理タンク12の内部に挿通されている。処理タンク12の外部に配置される本体管32aの部分には、該本体管32a内を流れる飽和水蒸気の温度を計測し、図示しない制御装置へと入力するための温度計42と、処理タンク12内への飽和水蒸気の供給量を調節するためのバルブ43とが設けられている。
ここで、本体管32aの断面積は、飽和水蒸気を1時間あたり100kg通過させる場合に、好ましくは100mm以上、より好ましくは100〜5000mm、さらに好ましくは200〜2000mmに設定されている。本体管32aの断面積が100mm未満の場合、本体管32aに高い圧力が加わるために好ましくなく、逆に5000mmを超える場合、配管が太くなり、広い設置スペースを要したり、装置の洗浄効率が悪くなったりするなどの問題がある。また、処理タンク12内において、蒸気供給配管32は、濾過メッシュ28を傷めないために、該濾過メッシュ28に対して50mm以上離間した上部に配置されている。
本体管32aの先端は、収容部24の下端部において、処理タンク12の水平断面(図1(b)参照)における中央部に配置されており、複数の分岐管32bを分岐させる分岐点Bとなっている。本実施形態の抽出装置11では、同じ形状を有する4本の分岐管32bが分岐点Bから等角度間隔で放射状に分岐している。各分岐管32bは、分岐点Bから水平方向に延びる第1分岐管46と、該第1分岐管46の先端から処理タンク12の周方向に沿うように延びる第2分岐管47とを備えており、平面L字状に形成されている。第2分岐管47は、第1分岐管46と同様に、水平方向に延設されている。即ち、4本の分岐管32bはいずれも、収容部24の下端部において、水平面に沿って延びる同一平面内に配置されている。
各第1分岐管46及び第2分岐管47の上部には、いずれも小孔からなる第1蒸気噴出ノズル46a及び第2蒸気噴出ノズル47aがそれぞれ設けられており、飽和水蒸気を収容部24内に噴出する。各蒸気噴出ノズル46a,47aはいずれも、図1(b)に白抜き太矢印で示される方向、即ち処理タンク12の周方向に沿うように飽和水蒸気を噴出する。さらに、各蒸気噴出ノズル46a,47aから噴出される飽和水蒸気は、いずれも水平面に対して同様な角度で傾斜するように斜め上方に向けて噴出される。その結果、各蒸気噴出ノズル46a,47aから噴出される飽和水蒸気は、収容部24内で螺旋を描くように旋回しながら、処理タンク12の上端部へと移動する。
各蒸気噴出ノズル46a,47aは、好ましくは1時間あたり200kg以下、より好ましくは0.1〜100kg、さらに好ましくは1〜50kgの飽和水蒸気を噴出する。各蒸気噴出ノズル46a,47aから噴出される飽和水蒸気の蒸気量が200kg/hを超える場合、収容部24内の嗜好性原料に対する飽和水蒸気の接触ムラが起こりやすくなる。逆に蒸気量が0.1kg/h未満の場合、分岐管32bの本数や蒸気噴出ノズル46a,47aの個数を増やさなければ、収容部24内全体に飽和水蒸気が行き渡り難くなるため、収容部24内の嗜好性原料に対する飽和水蒸気の接触ムラが起こりやすくなる。さらにこの場合、蒸気噴出ノズル46a,47aの数が増加するため、それらの洗浄にかかる手間などが増え、メンテナンス性も悪くなる。
また、各蒸気噴出ノズル46a,47aには、図示しない逆止弁が設けられている。各逆止弁は、嗜好性原料を収容部24内に投入する際には閉じた状態であり、飽和水蒸気を噴出する際に飽和水蒸気の圧力により開口する。このため、収容部24内に嗜好性原料を投入する際などに、該嗜好性原料が蒸気噴出ノズル46a,47a内に詰まることを防止することが可能となっている。
ここで、第2蒸気噴出ノズル47aは、第2分岐管47の先端部において、該第2分岐管47の延設方向に向けて飽和水蒸気を噴出するように設定されている。このため、第2蒸気噴出ノズル47aから噴出される飽和水蒸気は、第2分岐管47内での飽和水蒸気の流れをそのまま利用しているため、第1蒸気噴出ノズル46aから噴出される飽和水蒸気よりも勢いよく噴出される。また、蒸気噴出ノズル46a,47aは、処理タンク12の水平断面500cmあたりに1つ以上設けられていることが好ましい。この場合、収容部24内の嗜好性原料に対する飽和水蒸気の接触ムラが起こり難くなる。
次に、この抽出装置11を用いて、嗜好性原料の抽出液を連続的に製造する場合の一例について説明する。
本実施形態の抽出装置11を用いて嗜好性原料を抽出して抽出液を得る場合、まず、水供給配管13から処理タンク12内に抽出水を供給し、濾過メッシュ28の直上まで水張り(湯張り)する。続いて、原料投入口を通して処理タンク12内に嗜好性原料を投入した後、該嗜好性原料の上部をならすことにより原料層を形成させる。このとき、嗜好性原料は、処理タンク12の収容部24に収容されるとともに、蒸気噴出部41の周囲全体を取り囲むように配置される。なお、前記収容部24とは、処理タンク12の内部において嗜好性原料が充填された領域全体を指すものとする。本実施形態では、収容部24は、濾過メッシュ28の上方に位置する処理タンク12内の一部又は全体を指し、より具体的には上部タンク22内の一部又は全体を指す。
次に、処理タンク12内に窒素ガスなどの不活性ガスを充填することにより、処理タンク12内を脱酸素雰囲気下にする。なおこのとき、処理タンク12内を加圧状態に設定することにより、呈味及び風味に優れたエスプレッソ風の濃厚な成分の回収率を高めることが容易になる。続いて、必要に応じて、水供給配管13を通して処理タンク12の上部から収容部24内に抽出水(好ましくは湯)をシャワーにて供給し、収容部24内の嗜好性原料を蒸らす工程を実施する。その後、回収配管14から処理タンク12内の抽出水を徐々に抜き取りながら、調合タンク内へと移動させる。このとき、処理タンク12内の抽出水は、後述する各工程を実施している間中、連続的に調合タンク内へと移動される。
次に、水供給配管13を通して処理タンク12の上部から収容部24内に抽出水をシャワーにて供給することにより水抽出工程を実施するとともに、蒸気発生装置31を稼働させて飽和水蒸気を発生させることにより蒸気抽出工程を実施する。なお、蒸気抽出工程の開始及び終了のタイミングと、水抽出工程の開始及び終了のタイミングとは、上記表1に示される実施パターンA〜Iのいずれかに従って適宜選択される。
このとき、処理タンク12内に供給される抽出水は、水抽出工程を通して、各嗜好性原料から抽出される成分を溶出しながら、原料層の上部から下部へと向かって嗜好性原料間の隙間を通って移動した後、回収配管14を通って調合タンク内へと連続的に送り込まれる。なおこのとき、水抽出工程を実施している間中、原料層の少なくとも下部は、抽出水に浸漬された状態となっていることが好ましく、原料層(収容部24)全体が抽出水に浸漬された状態となっていることが特に好ましい。
一方、蒸気発生装置31で発生する飽和水蒸気は、蒸気抽出工程を通して、本体管32aを通りながら処理タンク12の内部に移動した後、分岐点Bで分岐して各分岐管32b内へと送り込まれる。続いて、前記飽和水蒸気は、各分岐管32bの第1及び第2蒸気噴出ノズル46a,47aを通して処理タンク12内へと噴出される。このとき、飽和水蒸気は、処理タンク12の周方向に沿うように斜め上方に向けて各蒸気噴出ノズル46a,47aから噴出される。その結果、各蒸気噴出ノズル46a,47aから噴出した飽和水蒸気は、斜め上方に移動しながら全体として徐々に上方へと移動する。
ここで、蒸気抽出工程では、水抽出工程と同時に実施されている間中、より具体的には原料層の少なくとも下部が抽出水に浸漬された状態となっている間中、各蒸気噴出ノズル46a,47aから収容部24(原料層)内に噴出される飽和水蒸気は、該収容部24内を満たす抽出水に対してバブリングされるとともに、嗜好性原料を原料層内で対流させる。その結果、原料層内の嗜好性原料は、バブリングや対流によって適度な撹拌作用を受けるため、コーヒー豆などの嗜好性原料へ抽出水が浸透し易くなり、呈味及び風味に優れたエスプレッソ風の濃厚な成分の回収率が高められる一方で、飽和水蒸気の導入量に依存して渋味成分やえぐみ成分の回収率が高められないようになる。
さらに、水抽出工程では、蒸気抽出工程と同時に実施されている間中、処理タンク12内の抽出水が高温の飽和水蒸気と接触することにより、該抽出水の温度が徐々に上昇する。その結果、この水抽出工程では、抽出水の温度変化に伴って、嗜好性原料から水抽出される成分が時間の経過とともに変化するため、一定の温度で水抽出工程を実施する場合よりも多種類の成分の回収が可能となる。この水抽出工程における抽出温度は、飽和水蒸気の蒸気量と、抽出水の温度及び量とによって適宜変更することが可能である。
なお、上述した各工程を実施する際の処理タンク12(収容部24)内の温度は、20〜120℃に設定されていることが好ましい。但し、嗜好性原料として焙煎コーヒー豆を用いる場合、処理タンク12(収容部24)内は85〜95℃に設定されていることが好ましく、嗜好性原料として茶葉を用いる場合、処理タンク12(収容部24)内は60〜90℃に設定されていることが好ましい。
調合タンク内に溜められた嗜好性原料の抽出液は、必要に応じて副原料を添加するとともに、水でゲージアップされる。最後に、抽出液は、殺菌後に缶やペットボトルなどに充填及び密封されるか、或いは缶やペットボトルなどに充填及び密封後にレトルト殺菌される。
前記実施形態によって発揮される効果について、以下に記載する。
(1) 本実施形態の嗜好性原料の抽出方法は、水抽出工程及び蒸気抽出工程を備え、それら両工程で得られた水抽出液及び蒸気抽出物が混合されてなる嗜好性原料の抽出液を得る方法である。さらに、蒸気抽出工程では、原料層の内部(収容部24内)から飽和水蒸気を噴出させることにより、該飽和水蒸気を嗜好性原料に直接接触させるようになっている。即ち、本実施形態の抽出方法では、原料層の内部から該原料層内の嗜好性原料に対して飽和水蒸気が噴出されるため、原料層の外部から噴出される場合と比較して、原料層内の各嗜好性原料に対する飽和水蒸気の接触ムラを大幅に低減することを可能にする。このため、蒸気抽出工程により、呈味及び風味に優れたエスプレッソ風の濃厚な成分(蒸気抽出物)を短時間で効率的かつ多量に回収することを容易にする。その結果、得られる嗜好性原料の抽出液は、呈味及び風味に優れた極めて濃厚なものとなる。
(2) 本実施形態では、水抽出工程と蒸気抽出工程とを同時に実施することにより、蒸気抽出工程により回収可能な成分を抽出水に移行(混合)させて回収することが極めて容易となるため、呈味及び風味に優れたエスプレッソ風の濃厚な成分の回収率を飛躍的に向上させることが可能である。さらにこのとき、蒸気抽出工程に先立って、嗜好性原料を蒸らす工程を実施することにより、水抽出工程及び蒸気抽出工程の両工程で回収可能な成分の量をより一層高めることが可能となる。
加えて、飽和水蒸気を抽出水の中でバブリングさせるとともに、嗜好性原料を原料層内で対流させることにより、嗜好性原料に対して適度な撹拌作用が発揮されることから、呈味及び風味に優れたエスプレッソ風の濃厚な成分の回収率をさらに容易に高めることが可能となる。またこのとき、飽和水蒸気が抽出水内に噴出されるため、該抽出水が飽和水蒸気の熱量の一部を奪って温度を上昇させる。即ち、蒸気抽出工程を実施している間中、抽出水の温度は刻々と変化するため、水抽出工程全体では、各温度で抽出可能な多種類の成分を回収することが可能となる。よって、本実施形態の方法によれば、一定の温度で水抽出工程を実施する場合と比較して、多種類の成分を含む水抽出液を得ることが可能となるため、呈味及び風味に優れたエスプレッソ風の濃厚な抽出液を提供することを容易にする。
(3) 本実施形態の抽出装置11は、水抽出工程を実施するための処理タンク12、水供給配管13及び回収配管14と、蒸気抽出工程を実施するための蒸気供給部33とを備えている。蒸気供給部33は、蒸気発生装置31及び蒸気供給配管32とよりなり、該蒸気供給配管32の先端部には、処理タンク12の収容部24内に配置される蒸気噴出ノズル46a,47aが設けられている。即ち、この抽出装置11を用いて蒸気抽出工程を実施する際には、各蒸気噴出ノズル46a,47aが嗜好性原料の中に埋没した状態で行われる。このため、収容部24の外部から収容部24内の嗜好性原料に向けて飽和水蒸気を噴出する場合よりも、熱効率が良好になるとともに、嗜好性原料中で飽和水蒸気が拡散しやすくなるため、嗜好性原料全体をムラなく蒸気抽出工程することが容易になる。よって、この抽出装置11を用いて本実施形態の抽出方法を実施する場合には、原料層の内部(収容部24内)から飽和水蒸気を噴出させるという操作を確実に実施することが可能となる。従って、上記(1)と同様の効果を発揮する。
(4) 本実施形態では、各蒸気噴出ノズル46a,47aが収容部24内に設けられているため、該収容部24内の嗜好性原料全体に飽和水蒸気をムラなく行き渡らせることが容易である。ちなみに、各蒸気噴出ノズル46a,47aが収容部24の下部に設置される場合、それらの蒸気噴出ノズル46a,47aを上方に向けることにより、嗜好性原料全体に飽和水蒸気が行き渡りやすくなる。
(5) 本実施形態の抽出装置11には、蒸気供給配管32の先端部に複数の分岐管32bが設けられているため、それら分岐管32bによって収容部24内全体にムラなく飽和水蒸気を行き渡らせることを容易にする。さらに、各分岐管32bは、分岐点Bを中心に放射状に分岐しているため、本体管32a内を通過してきた飽和水蒸気を全ての分岐管32bに均等に分配することを容易にする。加えて、分岐点Bが処理タンク12の水平断面における中央部に位置しているため、全ての分岐管32bに対して飽和水蒸気を均等に分配しやすくなる。
なお、本実施形態は、次のように変更して具体化することも可能である。
・ 上記実施形態では、本体管32aは1本の配管により構成されていたが、複数本の配管を束ねることによって本体管32aを構成してもよい。
・ 処理タンク12は耐圧容器でなくてもよい。この場合、水抽出工程及び蒸気抽出工程はいずれも常圧で実施される。
・ 図2(a)に示すように、蒸気供給配管32の先端部を平面十字状に形成してもよい。この形態の蒸気噴出部41は、処理タンク12内に配置される本体管32aと、分岐点Bから分岐する3本の分岐管61とよりなる。処理タンク12内に位置する本体管32aの上部及び各分岐管61の上部には、飽和水蒸気を噴出するための蒸気噴出ノズル62がそれぞれ設けられている。なお、各蒸気噴出ノズル62は、飽和水蒸気を斜め上方に向けて噴出する構成、並びに真上、真下、側方及び斜め下方に向けて噴出する構成のいずれであってもよい。
・ 図2(b)に示すように、図2(a)に示す蒸気噴出部41において、分岐管61の途中にさらに別の分岐管63を設けてもよい。また、同図に示すように、前記分岐管63の途中にさらに別の分岐管64を設けてもよい。
・ 図2(c)に示すように、図2(a)に示す蒸気噴出部41において、分岐管61の途中にさらに平面井桁状又は四角環状をなす別の分岐管66を設けることにより、蒸気噴出部41を平面格子状に形成してもよい。
・ 図2(d)に実線で示すように、分岐点Bから等角度間隔で放射状に延びる3本の分岐管61を設けるとともに、各分岐管61の先端に円環状をなす別の分岐管68を設けることにより、蒸気噴出部41をステアリングホイール状に形成してもよい。また、前記図2(d)に実線で示す形態の蒸気噴出部41において、各分岐管61の途中に円環状をなす別の分岐管68a(同図の点線参照)をさらに設けてもよい。
・ 上記実施形態では、分岐点Bにおいて4本の分岐管32bが分岐していたが、前記分岐点Bにさらに1本以上、好ましくは4本の分岐管32bを分岐させてもよい。
・ 上記実施形態における4本の分岐管32bは、全て同じ高さに配置されている必要はなく、1本又は複数本の分岐管32bをその他の分岐管32bとは異なる高さに配置してもよい。この場合、各蒸気噴出ノズル46a,47aの高さも、対応する分岐管32bの高さに応じて変更され得る。
・ 各蒸気噴出ノズル46a,47aは、分岐管32bの周面に開口された小孔により形成されている必要はなく、例えば、分岐管32bの周面から突出する別の配管の先端又はその配管の周面に開口された小孔により形成されていてもよい。
・ 分岐管32bを全て省略するとともに、処理タンク12内の本体管32aに蒸気噴出ノズルを設けてもよい。
・ 各蒸気噴出ノズル46a,47aは、処理タンク12の周壁に沿うように飽和水蒸気を噴出する必要はなく、処理タンク12の中心部又は外側部に向かって飽和水蒸気を噴出する構成であってもよい。また、各蒸気噴出ノズル46a,47aは、斜め上方に向かって飽和水蒸気を噴出する必要はなく、例えば、斜め下方、上方、下方又は側方に向かって飽和水蒸気を噴出する構成であってもよい。
・ 各蒸気噴出ノズル46a,47aは、収容部24の下部に配置されている必要はなく、例えば、収容部24内(原料層の内部に埋設される位置)であれば、該収容部24の上部又は中央高さに配置されていてもよく、より好ましくは上部に配置される。なお、蒸気噴出ノズル46a,47aを収容部24の上部又は中央高さに配置する場合、該蒸気噴出ノズル46a,47aから噴出する飽和水蒸気は、上方、斜め上方、下方、斜め下方及び側方のいずれの方向に向かって噴出されてもよい。ちなみに、蒸気噴出ノズル46a,47aを収容部24の上部に設けた場合、嗜好原料全体に飽和水蒸気を行き渡らせるために、それら蒸気噴出ノズル46a,47aから下方又は斜め下方に向かって飽和水蒸気を噴出することが特に好ましい。
・ 処理タンク12は、円筒状に形成される必要はなく、例えば、楕円筒状、又は四角筒状や六角筒状のような多角筒状に形成されていてもよい。また、上記実施形態の処理タンク12は、縦置き円筒状に配置されていたが、該処理タンク12を90°回転させることにより、横置き円筒状に配置してもよい。
・ 例えば、水供給配管13を処理タンク12の下端部に接続し、回収配管14を処理タンク12の上端部に接続する構成であってもよい。
・ 処理タンク12の内部に、プロペラ、ニーダーなどの攪拌機を設置することにより、処理タンク12内の抽出水(水抽出液)や嗜好性原料を機械的に撹拌するような構成を採用してもよい。
・ 上記実施形態の抽出方法において、嗜好性原料に過熱水蒸気抽出を実施してもよい。過熱水蒸気抽出は、嗜好性原料に対して過熱水蒸気を接触させ、その接触後の蒸気を回収する処理である。過熱水蒸気抽出を実施する場合、実施のタイミングは特に限定されないが、水抽出工程の前に実施されることが好ましく、水抽出工程及び蒸気抽出工程の前に実施されることが特に好ましい。また、過熱水蒸気抽出は、蒸らす工程の前に実施されることが好ましい。水抽出工程の前に過熱水蒸気抽出を実施する場合、過熱水蒸気と接触した後の蒸気は、水抽出工程で回収される水抽出液とともに回収可能であるが、該蒸気を回収するための配管や、該蒸気を液化するためのコンデンサなどを別途設けることにより回収することも可能である。なお、配管の途中にコンデンサを設ける場合、処理タンク12より回収される蒸気は、コンデンサにて60℃程度の温度に冷却して分留された後、配管を通して調合タンク内へと送り込まれる。
なお、過熱水蒸気抽出を実施する場合、一例として、蒸気供給配管32の途中に、バーナー、電気ヒーター又は電磁誘導加熱装置よりなる第2の加熱装置を別途設け、該第2の加熱装置により蒸気発生装置31で発生する飽和水蒸気をさらに加熱する方法が採用可能である。この場合、第2の加熱装置を通過することにより発生する過熱水蒸気は、蒸気供給配管32を通って処理タンク12内に導入される。なお、過熱水蒸気の温度は、常圧で120〜250℃、より好ましくは常圧で120〜220℃、より一層好ましくは常圧で140〜200℃程度であり、過熱水蒸気抽出の抽出時間は、好ましくは1〜30分間、より好ましくは6〜30分間、さらに好ましくは7〜20分間であるとよい。このように構成した場合、嗜好性原料に含まれる香気性の高い揮発性成分を効率よく回収することが可能となるため、得られる嗜好性原料の抽出液に高い香気性を付与することが極めて容易となる。
<焙煎コーヒー豆からの抽出液の製造1>
(実施例1)
焙煎コーヒー豆10kgを上記実施形態の抽出装置11の処理タンク12の収容部24内に投入した後、水供給配管13を通して処理タンク12内に95℃の抽出水を24Lシャワーにて供給し、5分間そのままの状態を保持することにより蒸らす工程を実施した。その後、常圧にて水抽出工程及び蒸気抽出工程を同時に開始した。水抽出工程は、水供給配管13を通して、1時間あたり120Lの流量で95℃の抽出水を処理タンク12内に供給しながら、回収配管14から水抽出液を毎分2Lの割合で23分間抜き取ることにより実施した。蒸気抽出工程は、1時間あたり6kgの飽和水蒸気を処理タンク12内に最初の5分間導入することにより実施した。その結果、46Lの抽出液が調合タンク内に回収された。回収後の抽出液の可溶性固形分濃度(Brix)を測定するとともに、抽出率を求めた。結果を下記表2に示す。
(実施例2)
水抽出工程において、処理タンク12内を0.05MPaに加圧し、その加圧状態を、処理タンク12内に導入される飽和水蒸気及び窒素ガスにて保圧しながら操作を実施したこと以外は、上記実施例1と同様に嗜好性原料の抽出方法を実施した。その結果、抽出液を毎分2Lの割合で処理タンク12内から抜き取ることにより、46Lの抽出液が回収された。回収後の抽出液の可溶性固形分濃度を測定するとともに、抽出率を求めた。結果を下記表2に示す。
(比較例1)
蒸気抽出工程を実施しないこと以外は、実施例1と同様にして水抽出工程を実施した。その結果、水抽出液を毎分2Lの割合で処理タンク12内から抜き取ることにより、46Lの水抽出液が回収された。回収後の水抽出液の可溶性固形分濃度及び抽出率を求めた。結果を下記表2に示す。
(比較例2)
焙煎コーヒー豆10kgを抽出装置11の処理タンク12の収容部24内に投入した後、水供給配管13を通して処理タンク12内に95℃の抽出水を24Lシャワーにて供給し、5分間そのままの状態を保持することにより蒸らす工程を実施した。その後、常圧にて水抽出工程を開始した。水抽出工程の開始と同時に、蒸気噴出部41を嗜好性原料に直接接触しない様に処理タンク12の上部に設置した状態で、該処理タンク12の上部より下方に向かって飽和水蒸気を噴出させた。
なお、水抽出工程は、水供給配管13を通して、1時間あたり120Lの流量で95℃の抽出水を処理タンク12内に供給しながら、回収配管14から水抽出液を23分間抜き取ることにより実施した。また、飽和水蒸気は、1時間あたり6kgの蒸気量で、処理タンク12内に水抽出工程の開始から終了まで導入した。その結果、水抽出液を毎分2Lの割合で処理タンク12内から抜き取ることにより、46Lの水抽出液が調合タンク内に回収された。回収後の水抽出液の可溶性固形分濃度(Brix)を測定するとともに、抽出率を求めた。結果を下記表2に示す。
(比較例3)
処理タンク12内を0.05MPaに加圧したこと以外は、比較例2と同様に実施した。なお、処理タンク12内を加圧する方法は、実施例2と同様である。その結果、水抽出液を毎分2Lの割合で処理タンク12内から抜き取ることにより、46Lの水抽出液が回収された。回収後の水抽出液の可溶性固形分濃度及び抽出率を求めた。結果を下記表2に示す。
Figure 0004751677
表2の結果より、飽和水蒸気を直接嗜好性原料に接触させることにより、抽出される可溶性固形分の量が増加するとともに、それに伴って抽出率の向上が可能であることが分った。さらに、同表に示すように、嗜好性原料に対して間接的に飽和水蒸気を接触させたり(比較例2)、処理タンク12内を加圧したり(比較例3)しても、抽出される可溶性固形分量及び抽出率に関して、ほとんど有意な効果が認められなかった。
<焙煎コーヒー豆からの抽出液の製造2;カフェイン含量の測定>
(実施例3)
焙煎コーヒー豆10kgを上記実施形態の抽出装置11の処理タンク12の収容部24内に投入した後、水供給配管13を通して処理タンク12内に95℃の抽出水を24Lシャワーにて供給し、5分間そのままの状態を保持することにより蒸らす工程を実施した。その後、常圧にて水抽出工程及び蒸気抽出工程を同時に開始した。水抽出工程は、水供給配管13を通して、1時間あたり120Lの流量で95℃の抽出水を処理タンク12内に供給しながら、回収配管14から水抽出液を38分間抜き取ることにより実施した。蒸気抽出工程は、1時間あたり6kgの飽和水蒸気を処理タンク12内に最初の5分間導入することにより実施した。その結果、抽出液を毎分2Lの割合で処理タンク12内から抜き取ることにより、76Lの抽出液が調合タンク内に回収された。回収後の抽出液の可溶性固形分濃度(Brix)を測定するとともに、カフェイン濃度及び抽出率を求めた。結果を下記表3に示す。
(比較例4)
蒸気抽出工程を実施しないこと以外は、実施例3と同様に水抽出工程を実施した。その結果、水抽出液を毎分2Lの割合で処理タンク12内から抜き取ることにより、水抽出液が76L回収された。回収後の水抽出液の可溶性固形分濃度、カフェイン濃度及び抽出率を求めた。その結果を表3に示す。
Figure 0004751677
以上の結果より、飽和水蒸気を直接嗜好性原料に接触させることにより、抽出される可溶性固形分の量を効果的にアップさせ、且つ、可溶性固形分あたりに含まれるカフェインの量を低減させることができた。
<茶葉からの抽出液の製造1>
(実施例4)
製茶後の緑茶葉1.33kgを上記実施形態の抽出装置11の処理タンク12の収容部24内に投入した後、水供給配管13を通して処理タンク12内に21℃の抽出水を20Lシャワーにて供給し、水抽出工程を開始した。その直後、1時間あたり29kgの飽和水蒸気を処理タンク12内に5分間導入することにより、蒸気抽出工程を実施した。蒸気抽出工程の終了後、回収配管14から抽出液を回収したところ、18Lの抽出液が調合タンク内に回収された。また、蒸気抽出工程の終了時点では、処理タンク12内の抽出液の温度は80℃を示していた。回収後の抽出液の可溶性固形分濃度(Brix)を測定するとともに、抽出率を求めた。結果を下記表4に示す。
(実施例5)
製茶後の緑茶葉2.86kgを上記実施形態の抽出装置11の処理タンク12の収容部24内に投入した後、水供給配管13を通して処理タンク12内に21℃の抽出水を20Lシャワーにて供給し、水抽出工程を開始した。その直後、1時間あたり21kgの飽和水蒸気を処理タンク12内に5分間導入することにより、蒸気抽出工程を実施した。蒸気抽出工程の終了後、回収配管14から抽出液を回収したところ、13.5Lの抽出液が調合タンク内に回収された。また、蒸気抽出工程の終了時点では、処理タンク内の抽出液の温度は76℃を示していた。回収後の抽出液の可溶性固形分濃度、抽出率を求めた。結果を下記表4に示す。
(比較例5)
ニーダーに緑茶葉1.33kgを投入した後、70℃の抽出水を20L満たすことにより、水抽出工程を実施した。該水抽出工程は、緑茶葉を機械的に撹拌しながら、5分間行った。水抽出工程の終了後、固液分離を実施することにより、8.1Lの水抽出液を回収した。回収後の水抽出液の可溶性固形分濃度、抽出率を求めた。結果を下記表4に示す。
(比較例6)
ニーダーに緑茶葉2.86kgを投入した後、70℃の抽出水を20L満たすことにより、水抽出工程を実施した。該水抽出工程は、緑茶葉を機械的に撹拌しながら、5分間行った。水抽出工程の終了後、固液分離を実施することにより、7.5Lの水抽出液を回収した。回収後の水抽出液の可溶性固形分濃度、抽出率を求めた。結果を下記表4に示す。
Figure 0004751677
表4より、各実施例では、水抽出工程と蒸気抽出工程とを同時に実施することにより、抽出液中に抽出される抽出率が高められた。よって、この嗜好性原料の抽出方法によれば、嗜好性原料の濃厚な抽出液を容易に製造することができることが示された。
<茶葉からの抽出液の製造2>
(実施例6)
製茶後の緑茶葉2kgを上記実施形態の抽出装置11の処理タンク12の収容部24内に投入した後、水供給配管13を通して25℃の抽出水を1分間あたり4Lの供給量で処理タンク12内に6分間導入することにより、水抽出工程を開始した。水抽出工程の開始直後、回収配管14から水抽出液を徐々に排出しながら、1時間あたり20kgの飽和水蒸気を処理タンク12内に6.5分間導入することにより、蒸気抽出工程を実施した。その結果、蒸気抽出工程の終了までに、回収配管14を通して処理タンク12内から回収された抽出液は、18.9Lであった。また、蒸気抽出工程の終了時点では、処理タンク内の抽出液の温度は62℃を示していた。次に、回収配管14のバルブ14aを4.5分間開放させ、処理タンク12内の抽出液の全てを調合タンク内に回収したところ、最終的に49Lの抽出液が調合タンク内に回収された。回収後の抽出液の可溶性固形分濃度(Brix)及びタンニン量(酒石酸鉄法)を測定するとともに、抽出率及び回収よく比を求めた。結果を下記表5に示す。
(比較例7)
ニーダーに緑茶葉544gを投入した後、62℃の抽出水を19L満たすことにより、水抽出工程を実施した。該水抽出工程は、緑茶葉を機械的に撹拌しながら、12分間行った。水抽出工程の終了後、固液分離を実施することにより、16.3Lの水抽出液を回収した。回収後の水抽出液の可溶性固形分濃度、タンニン量、抽出率及び回収よく比を求めた。結果を下記表5に示す。
(比較例8)
製茶後の緑茶葉2kgを抽出装置11の処理タンク12の収容部24内に投入した後、水供給配管13より48℃の抽出水を1分間あたり4Lの供給量で処理タンク12内に6分間導入することにより、水抽出工程を開始した。水抽出工程開始直後、回収配管14から水抽出液を徐々に排出しながら、処理タンク12の上部に蒸気噴出部41を設置した状態で、該処理タンク12の上部より嗜好性原料に飽和水蒸気が直接接触しない様に1時間当たり30kgの飽和水蒸気を7.5分間導入した。飽和水蒸気の導入の終了時点では、処理タンク12内の水抽出液の温度は62℃を示していた。処理タンク12内の水抽出液の全てを調合タンクに回収したところ、最終的に52Lの水抽出液が調合タンク内に回収された。回収後の水抽出液の可溶性固形分濃度及びタンニン量を測定するとともに、抽出率及び回収よく比を求めた。結果を下記表5に示す。
Figure 0004751677
表5より、水抽出工程と蒸気抽出工程とを同時に実施することにより、回収よく比を低く抑えつつも、抽出液中に抽出される抽出率及びタンニン量をともに高めることができた。よって、この抽出方法によれば、嗜好性原料の濃厚な抽出液を容易に製造することができることが示された。更に、嗜好性原料に対して間接的に飽和水蒸気を接触させた比較例8では、実施例6ほどには抽出率をアップさせることが出来ないことが分った。
(a)は実施形態の抽出装置の側断面を示す模式図、(b)は図1(a)の1b−1b線における平断面図。 (a)〜(d)はいずれも別の形態の抽出装置の処理タンクを示す平断面図。
符号の説明
11…抽出装置、12…処理タンク、13…水供給配管、14…回収配管、24…収容部、31…蒸気発生装置、32…蒸気供給配管、46a,47a,62…蒸気噴出ノズル。

Claims (5)

  1. 焙煎コーヒー豆又は茶葉よりなる嗜好性原料を抽出する方法であって、
    該方法は、前記嗜好性原料に抽出水を接触させて水抽出液を得る水抽出工程と、同嗜好性原料に飽和水蒸気を接触させて蒸気抽出物を得る蒸気抽出工程とを備え、
    該方法では、前記水抽出液及び前記蒸気抽出物が混合されてなる前記嗜好性原料の抽出液が得られ、
    前記蒸気抽出工程では、前記嗜好性原料よりなる原料層の内部から、前記飽和水蒸気を噴出させることにより、該飽和水蒸気を前記嗜好性原料に直接接触させ
    前記蒸気抽出工程は、前記水抽出工程と同時に実施されることを特徴とする嗜好性原料の抽出方法。
  2. 前記蒸気抽出工程に先立って、前記嗜好性原料を蒸らす工程を実施することを特徴とする請求項に記載の嗜好性原料の抽出方法。
  3. 前記蒸気抽出工程では、前記飽和水蒸気が前記抽出水の中でバブリングされるとともに、前記嗜好性原料が前記原料層内で対流することを特徴とする請求項又は請求項に記載の嗜好性原料の抽出方法。
  4. 前記水抽出工程では、前記抽出水が前記飽和水蒸気と接触することにより、該抽出水の温度が5℃以上上昇することを特徴とする請求項から請求項のいずれか一項に記載の嗜好性原料の抽出方法。
  5. 前記水抽出工程及び前記蒸気抽出工程を脱酸素雰囲気下で実施することを特徴とする請求項1から請求項のいずれか一項に記載の嗜好性原料の抽出方法。
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