JP2004039563A - アーク安定化機能を備えた放電ランプ装置及びそれを用いたプロジェクタ - Google Patents
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Abstract
【課題】本発明は、放電ランプのアークジャンプやアークフリッカを電気的に制御することが可能な放電ランプ装置を提供する。
【解決手段】放電ランプ90と、電力供給回路30と、電力供給回路30から供給される電力に基づき放電ランプ90を交流駆動する駆動回路40と、放電ランプ90の電極間のアーク異常を検出する検出回路(ランプ電圧検出回路70、ランプ電流検出回路80)と、検出回路によって検出された検出結果に基づき駆動回路40を制御する制御回路60とを備えた放電ランプ装置。
【選択図】 図1
【解決手段】放電ランプ90と、電力供給回路30と、電力供給回路30から供給される電力に基づき放電ランプ90を交流駆動する駆動回路40と、放電ランプ90の電極間のアーク異常を検出する検出回路(ランプ電圧検出回路70、ランプ電流検出回路80)と、検出回路によって検出された検出結果に基づき駆動回路40を制御する制御回路60とを備えた放電ランプ装置。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、放電ランプのアークを安定化させるためのアーク安定化機能を備えた放電ランプ装置及びこれを用いたプロジェクタに関し、特に、液晶デバイスやDMD(Digital Mirror Device)を用いたプロジェクタの光源に用いられる放電ランプ装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
液晶デバイスやDMDを用いて画像を光学的に投射し表示させるプロジェクタの光源として、キセノンランプ、メタルハライドランプ、あるいは超高圧水銀ランプなどの放電ランプが用いられている。これらの放電ランプは、そのガスや金属によって分光分布、輝度分布、配光分布、電気特性等を異にし、プロジェクタの設計仕様に適したランプが選択される。
【0003】
放電ランプには、電極間にDC駆動電圧を印加する直流型ランプと、電極間にAC駆動電圧を印加する交流型ランプがある。直流型ランプは、電極の一方が陰極になり他方が陽極となる。陰極からの電子が常に陽極に衝突するために陽極の温度が上昇されやすく、そのため一般に陰極に比べて陽極の熱容量を大きくし温度上昇を抑制している。他方、交流型ランプは、両電極が交互に陽極と陰極になるため、電極の大きさは基本的に同じものが多い。
【0004】
放電ランプは、電極間のアーク距離を短くしたショートアークランプを用いることが望ましい。こうすることで、非常に高い放射輝度の光を発生させることが可能であり、発光される光も点光源に近似されるため、レンズやミラー等の光学部材を使用するときに、光の屈折や反射等の光学的精度を高めることができる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
プロジェクタにおいて、ランプの集光効率を上げるためには、ショートアークランプの光点を光学系に用い、狭い範囲に集光する必要がある。しかし、ショートアークランプでは、電極間にアークジャンプやアークフリッカ等を発生させるため、狭い範囲に集光することが困難であり、仮に狭い範囲に集光したとしても投影画像上で配光の均一性が崩れたり、チラツキが発生したりしてしまうという課題がある。
【0006】
図12に、交流駆動型放電ランプの電極部の構成を模式的に示す。放電ランプ400は、石英ガラス401内に陰極(または陽極)402と陽極(または陰極)403とを含む。パルス駆動電圧が電極402、403間に印加されると、陰極402から飛び出した熱電子は陽極402へ衝突し、電極間で放電が行われる。
【0007】
陰極402から放出される熱電子は、最短の距離でかつ同一の経路で陽極403へ到達することが望ましい。距離が短ければ、その分だけ抵抗も小さくなり、経路が同一であれば抵抗あるいは電流の変動もきわめて小さく、ランプの光量も安定化される。しかしながら、実際には陰極402の先端から放出される熱電子は、先端が尖った位置から放出され易い。これは、先端が尖った部分は電界が集中し、その分だけ他よりも温度の上昇が大きいためである。他方、陽極403においても、先端が尖った部分がその熱容量により他の部分よりも温度を高くする。その結果、陰極402からの熱電子は、いろんな経路で陽極403に衝突することがある。例えば図12に示すように、陰極402からの熱電子は、陽極403に巻回されたコイル部分の先端位置に衝突するルートA、陰極402と直面する角度が形成された位置に衝突するルートBまたはCをたどることになる。
【0008】
このように、陰極から放出される熱電子の衝突位置が異なって陰極から陽極への熱電子のルートが遷移することを一般にアークジャンプといい、そのような現象が比較的速い周期で繰り返されることをアークフリッカという。上記ルートA、B、Cで示すような突起物のある位置は、アークジャンプやアークフリッカの発生する可能性が高く、一般にアークフリッカはアークジャンプよりも発生頻度が高い。本明細書では、アークジャンプやアークフリッカを含む現象をアーク異常と定義する。
【0009】
本発明は、従来の放電ランプの課題を解決し、アークジャンプやアークフリッカ等のアーク異常の発生を抑制した放電ランプ装置を提供することを目的とする。
さらに本発明は、放電ランプのアークジャンプやアークフリッカ等のアーク異常を電気的に制御することが可能な放電ランプ装置を提供することを目的とする。
さらに本発明の目的は、投影画像のチラツキを抑制しかつその配光の均一性を改善したプロジェクタを提供することである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明に係る放電ランプ装置は、放電ランプと、直流電源と、前記直流電源から供給される電力に基づき前記放電ランプを交流駆動する駆動手段と、前記放電ランプの電極間のアーク異常を検出する検出手段と、前記検出手段によって検出された検出結果に基づき前記駆動手段を制御する制御手段とを備えたものである。
【0011】
請求項1に記載の発明によれば、検出手段が放電ランプの電極間のアーク異常を検出し、これによって駆動手段を制御するようにしたので、放電ランプにアーク異常(アークフリッカやアークジャンプ)が発生したときに、それを抑制するような駆動制御を電気的に行うことができる。
【0012】
好ましくは、検出手段は放電ランプの動作電圧の変動を検出するものである。例えば、検出手段は、放電ランプの電極と電気的に並列に接続された第1及び第2の抵抗と、第1の比較手段とを有する。第1の比較手段の第1の入力には第1及び第2の抵抗間に形成された接続ノードの電圧が供給され、第2の入力には基準電圧が供給される。そして第1の比較手段は、接続ノードの電圧と基準電圧とを比較し、その比較結果を制御手段へ出力する。アーク異常が発生すると、そのランプ動作電圧が変動する。これは、放電ランプの電極間において熱電子の経路が変化すると抵抗が変化するためである。例えばその経路が長くなると、それに伴い抵抗が大きくなる。検出手段は、抵抗の変化に伴い変化したランプ動作電圧を検出することでアーク異常を検出する。
【0013】
好ましくは検出手段は、放電ランプの動作電流の変動を検出する。例えば、検出手段は、放電ランプの少なくとも一方の電極と電気的に直列に接続された電流検出用抵抗と、第2の比較手段とを有する。第2の比較手段の第1の入力には電流検出用抵抗からの出力電圧が供給され、第2の入力には第2の基準電圧が供給される。第2の比較手段は、出力電圧と第2の基準電圧とを比較し、その比較結果を制御手段に出力する。アーク異常が発生すると、電極間の抵抗が変化するため放電ランプに流れる電流も変化する。検出手段によりランプ動作電流の変化を検出することでアーク異常を検出する。
【0014】
好ましくは、基準電圧または第2の基準電圧は、放電ランプの動作電圧または動作電流から生成される。放電ランプは、その使用年数や使用頻度により経年変化し、そのランプ動作電圧やランプ動作電流は初期状態のときから変化する。このため、アーク異常の検出に際し、基準電圧はそのような経年変化等に対応するものであることが望ましい。また、第1および第2の比較手段は、差動増幅器を含むものであっても良い。
【0015】
好ましくは検出手段は、放電ランプの発光の変動を検出する光センサーを含むものでもよい。光センサーは、フォトダイオードまたはフォトトランジスタを含み、フォトダイオードまたまフォトトランジスタを放電ランプの近傍に配することができる。アーク異常が発生すると、放電ランプでの発光あるいは発光量にチラツキ等の変化が生じる。光センサーにより光の変化量を検出することでアーク異常を検出する。
【0016】
アーク異常は、放電ランプの電極間においてアークが所望の位置から離れた位置へジャンプするアークジャンプや、放電ランプの電極間においてアークが所定の経路から外れた経路へ遷移するアークフリッカを含む。
【0017】
好ましくは制御手段は、検出手段の検出結果に応じて駆動手段の交流駆動周波数を高くする。駆動周波数を高くすることによって電極間のアーク異常の発生を抑制することが判明している。
【0018】
好ましくは制御手段は、検出手段の検出結果に応じて駆動手段のパルス駆動電流のデューテイ比を可変するようにしてもよい。アーク異常の発生は、電極の温度と関係するため、デューテイ比を変えることにより電極の温度を調整し、アーク異常の発生を抑制する。
【0019】
好ましくは制御手段は、検出手段の検出結果に応じて前記駆動手段のパルス駆動電流の大きさを可変するようにしてもよい。例えば、パルス駆動電流の大きさは、パルス駆動電流の立ち下がりに同期して一定の期間だけパルス駆動電流を大きくするアーク安定化用のパルスを付加することができる。ランプ電流の立下り時にパルスを付加し、電極を瞬時に加熱することで、電極上に安定した放電場所を形成することによりアークジャンプやアークフリッカ等のアーク異常の発生を抑制することができる。
【0020】
好ましくは制御回路は、第1の比較手段の比較結果と第2の比較手段の比較結果を入力するオア回路を含み、第1の比較手段または第2の比較手段がアーク異常を検出したときに駆動手段を制御するようにしても良い。あるいは、制御回路は、第1の比較手段の比較結果と第2の比較手段の比較結果を入力するアンド回路を含み、第1の比較手段および第2の比較手段がアーク異常を検出したときに駆動手段を制御するようにしても良い。
【0021】
好ましくは駆動手段は、直流電圧を交流電圧に変換するスイッチングトランジスタを含むAC駆動回路と、放電ランプの起動時に放電ランプに高電圧を印加するイグナイタ回路とを含む。直流電源は、交流電源と、交流電源から供給される交流電圧を整流する整流回路とを含むものであってもよい。また、放電ランプは、放電ランプから発せられた光を反射させるリフレクターを一体に含むものであってもよい。
【0022】
本発明に係るプロジェクタは、放電ランプ装置と、放電ランプ装置からの光を光学的に変調する変調手段と、変調された光を投影する投影手段とを有する。そして、放電ランプ装置は、放電ランプと、直流電源と、前記直流電源から供給される電力に基づき前記放電ランプを交流駆動する駆動手段と、前記放電ランプの電極間のアーク異常を検出する検出手段と、前記検出手段によって検出された検出結果に基づき前記駆動手段を制御する制御手段とを備えている。
【0023】
このような放電ランプ装置を備えることにより、プロジェクタから投影される画像のチラツキを抑制し、かつ画像の配光の均一性をより向上させることができる。
【0024】
好ましくは変調手段は、放電ランプ装置からの光を少なくともR、G、Bの波長の光に分別する分別手段と、該分別手段によって分別された光を変調する変調素子とを含む。変調素子は、例えばDMDを含む。
【0025】
好ましくは分別手段は、R、G、Bのカラーフィルターを有す回転可能なカラーホイールを備え、カラーフィルターへ光を入射させることで順次R、G、Bの波長を有する光を出射させる。変調手段は、放電ランプ装置からの光を変調する液晶ライトバルブを含むものであってもよい。
【0026】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
図1は本発明の第1の実施の形態に係る放電ランプ装置の構成を示すブロック図である。放電ランプ装置1は、交流電源10と、交流電源10の交流電圧を直流電圧に整流する整流回路20と、放電ランプ90へ安定的な電力を供給する電力供給回路30と、放電ランプ90を駆動する駆動回路40と、電力供給回路30の電力供給を制御するPWM制御回路50と、駆動回路40等の各部を制御する制御回路60とを含む。放電ランプ装置1は、さらに電力供給回路30と駆動回路40との間の電源供給ライン間に介在されたランプ電圧検出回路70と、一方の電源供給ラインに接続されたランプ電流検出回路80とを含む。ランプ電圧検出回路70は放電ランプ90の動作電圧を検出し、その検出した出力をPWM制御回路50及び制御回路60にそれぞれ供給する。ランプ電流検出回路80は放電ランプ90の動作電流を検出し、その検出した出力をPWM制御回路50及び制御回路60にそれぞれ供給する。
【0027】
駆動回路40は、放電ランプ90を交流駆動(AC駆動)するためのAC駆動回路41と、放電ランプ90の起動時にランプに高電圧を印加するイグナイタ回路42とを有する。放電ランプ90は、例えばキセノンランプ、メタルハライドランプ、超高圧水銀ランプなどである。このような放電ランプ装置1は、液晶デバイスやDMDを用いたプロジェクタの光源に用いられる。
【0028】
図2は図1に示す放電ランプ装置の回路を示す図である。
電力供給回路30は、MOSトランジスタ31、パルストランス32、ダイオード33、インダクター(コイル)34、コンデンサ35を含む。MOSトランジスタ31のゲートはパルストランス32の二次側コイルに接続され、その一次側コイルはPWM制御回路50のPWM出力信号51に接続される。PWM出力信号51から出力されるパルス信号に応答してMOSトランジスタ31のオン・オフが制御され、直流電圧の降圧が行われる。インダクター34及びコンデンサ35は、変圧された直流電圧から脈動する成分を取り除き平滑化された直流電圧を供給する。
【0029】
電力供給回路30の電源供給ライン間にランプ電圧検出回路70が接続される。ランプ電圧検出回路70は、ライン間に直列に接続された抵抗R2、R3と、抵抗R3に並列に接続されたコンデンサとを含む。抵抗R2とR3との接続ノードはPWM制御回路50および制御回路60へ供給される。
【0030】
ランプ電流検出回路80は、電力供給回路30からの一方の電源供給ラインに直列接続されたランプ電流検出用の抵抗R1を含む。抵抗R1の出力は、PWM制御回路50および制御回路60へ供給される。
【0031】
PWM制御回路50は、スイッチSW1を閉じることによって動作を開始し、スイッチSW1は制御回路60から出力される制御信号61によって制御される。PWM制御回路60は、ランプ電圧検出回路70の出力およびランプ電流検出回路80の出力を入力し、これらの出力からランプ電力を演算し、放電ランプ90の動作に必要な電力が安定的に供給されるように電力供給回路30を制御する。
【0032】
AC駆動回路41は、電源供給ラインを介して電力供給回路30に接続され、直流電圧を交流電圧に変換するためのCMOSトランジスタQ1、Q2とQ3、Q4とを有する。CMOSトランジスタQ1、Q2と、CMOSトランジスタQ3、Q4により一対のCMOSインバータを構成し、それらのゲート電極は制御回路60からの駆動信号62を介して相補的に駆動される。従って、トランジスタQ1、Q4がオンするときトランジスタQ2、Q3がオフであり、反対にトランジスタQ2、Q3がオンするとき、トランジスタQ1、Q4がオフである。こうして電力供給回路30からの直流電圧は各インバータによって交流電圧に変換され、放電ランプ90に印加される。直流−交流の変換周波数は制御回路60からの駆動信号62のパルス周波数を可変することによって任意に選択することが可能である。さらに後述するように制御回路60は、駆動信号62のパルス駆動信号のデューテイ比を可変することも可能である。
【0033】
各インバータの出力は、イグナイタ回路42の電源供給ラインを介して放電ランプ90に接続される。イグナイタ回路42は、放電ランプ90の起動時に放電ランプ90に高電圧を印加し放電ランプ90にアーク放電を引き起こす。PWM制御回路50によって制御された電力供給回路30は、約250ないし370ボルトの電圧を電源供給ラインに出力し、この電圧はAC駆動回路41を介してイグナイタ回路42に供給される。AC駆動回路41の高電位側出力からダイオード121を介してコンデンサ122に電流が蓄積され、この電圧が一定値を超えるとトリガー素子123が導通し、トランス124の一次側コイルに電流が流され、これによって二次側コイルに発生された電流がダイオード125を介してコンデンサ126に充電される。コンデンサ126の電圧がバリスタ127のしきい値を越えると、トランス128の一次側コイルに電流が流れ、これによって二次側コイルに非常に高い十数キロボルトの電圧が発生される。そして、放電ランプ90の端子間に絶縁破壊が生じ、アーク放電が開始される。
【0034】
制御回路60は、スイッチSW1のオン、オフを制御する制御信号61と、AC駆動回路41の駆動を制御する駆動信号62とを出力する。さらに制御回路60は、比較回路63、64と、駆動制御回路65とを含む。比較回路63の一方の入力には、ランプ電圧検出回路70からの出力電圧が接続され、他方の入力には基準電圧が接続される。比較回路64の一方の入力には、ランプ電流検出回路80からの出力が接続され、他方の入力には基準電圧が接続される。比較回路63、64の出力は駆動制御回路65へ入力される。
【0035】
比較回路63は、ランプ電圧検出回路70からの出力電圧を基準電圧と比較し、放電ランプ90の電極間において発生されるアークジャンプやアークフリッカ等のアーク異常を検出する。アークジャンプやアークフリッカが発生すると、アークは定常の経路から外れた経路で放電するため、それによって抵抗が変化する。比較回路63の基準電圧を所定の値に選択することにより、ランプ動作電圧が一定の値よりも大きく変化した場合には、それをアーク異常と判定する。
【0036】
比較回路64は、ランプ電流検出回路80からの出力電圧を基準電圧と比較し、ランプ動作電流の変化が一定の値よりも大きい場合にはアーク異常と判定する。図3に比較回路63の詳細な構成を示す。比較回路63は、コンパレータ63aを含み、コンパレータ63aの入力Vinはランプ電圧検出回路70の出力に接続される。入力Vinは、抵抗R11およびコンデンサC1を含むRC回路に接続され、このRC回路の出力を基準電圧として非反転入力に供給する。また、入力Vinの信号は、抵抗R12を介して反転入力端子に接続され、コンパレータ63aがこれを基準電圧と比較し、その比較結果をVoutとして出力する。比較回路64も同様の構成を有する。
【0037】
駆動制御回路65は、比較回路63、64の出力を入力するオア回路を含み、比較回路63または比較回路64のいずれか一方からアーク異常を示す信号が入力された場合、駆動信号62のパルス駆動信号の周波数を高くする。駆動制御回路65は、アーク異常が検出されないとき、AC駆動回路41を周波数(H)で駆動し、アーク異常が検出されたとき、駆動周波数を予め設定された周波数(H1>H)に可変し、AC駆動回路41を駆動する。周波数を高くすることによりアーク異常の発生を抑制することができる。
【0038】
次に、本実施の形態に係る放電ランプ装置の動作について説明する。放電ランプ90に高電圧が印加される前、スイッチSW1は開いた状態にある。交流電源10からの交流電圧が整流・平滑化回路20により直流電圧に変換され、制御回路60からの制御信号61によりスイッチSW1がオンされると、PWM制御回路50からPWM出力信号51がパルストランス32へ出力され、これによってMOSトランジスタ31のオン・オフが制御され、電力供給回路30からは約250−370ボルトの直流電圧が供給される。
【0039】
AC駆動回路41は、制御回路60によりトランジスタQ2、Q3をオン状態にされており、イグナイタ回路42の動作により放電ランプ90の電極間に10キロ−20キロボルトの高電圧が印加され、アーク放電により電流が流れ始まる。
【0040】
PWM制御回路50は、放電初期時のランプ動作電圧が低いためランプが安全に動作できる電流制御を行い、その後、温度上昇と共にランプ動作電圧が上昇(例えば65ボルト)した時点で電力(ワット)制御に切り替える。他方、制御回路60は駆動信号61によりAC駆動回路41のインバータ駆動を開始させ、直流電圧を交流電圧に変換させる。これによって放電ランプ90の電極間には、図7(a)に示すようなランプ電流が印加される。またイグナイタ回路42は、そのトリガー素子123のしきい値電圧を200ボルト程度としているため、AC駆動回路41からの交流電流によって動作しない。
【0041】
放電ランプ90に、アークジャンプやアークフリッカ等のアーク異常が発生すると、ランプ動作電圧あるいはランプ動作電流が変動する。この様子を図4に示す。アークフリッカは、比較的早い周期でアーク経路を変動もしくは遷移させるため、それに応じてランプ電圧およびランプ電流の変化の周波数が比較的高い。これに対してアークジャンプは、アークが異なる経路を比較的遅い周期で行き来するため、ランプ電圧およびランプ電流の変化の周波数も比較的低くなる。
【0042】
ランプ電圧検出回路70は放電ランプ90の電極と並列に接続された関係にあり、ランプ動作電圧が変動すると、抵抗R2、R3の接続ノードからの検出電圧が変動する。図5に比較回路63の入力電圧Vinと出力電圧Voutの関係を示す。比較回路63の入力Vinに、図5に示すようなアークジャンプを伴う出力電圧が入力されると、RC回路によりその脈動(変動)成分が除去された電圧が基準電圧としてコンパレータ63aに入力される。他方、その反転入力端子には脈動成分を有する信号が入力されるため、その比較によりパルス信号が出力電圧Voutとして出力される。ランプ電圧検出回路70の出力から基準電圧を生成することで、ランプの経年変化等による動作電圧の変化(例えば電極の磨耗等により動作電圧が変化する)を考慮し的確にアーク異常の電圧を検出することが可能となる。こうして比較回路63によって検出されたアーク異常を示す信号が駆動制御回路65へ供給される。
【0043】
ランプ電流検出回路80は、放電ランプ90の一方の電極と直列に接続された電流検出用の抵抗R1を含み、ランプ動作電流が変動すると、抵抗R2の出力電圧が変動される。この出力電圧は比較回路64の入力電圧Vinとしてコンパレータ64aに供給され、上述した比較回路63と同様の動作が行われる。こうして比較回路64によって検出されたアーク異常を示す信号が駆動制御回路65へ出力される。
【0044】
なお、比較回路63、64は必ずしもコンパレータに限られるものではない。例えば、図6に示すような差動増幅器を用いて、アーク異常を検出することが可能なことは云うまでもない。この場合、検出結果から増幅された出力電圧を得ることができる。
【0045】
駆動制御回路65は、比較回路63または64のいずれか一方からアーク異常の通知を受けると、駆動信号61のパルス駆動周波数を可変する。放電ランプ90の駆動周波数を高くすることでアーク異常の発生が抑制されることが判明している。このため、駆動信号61のパルス駆動周波数を高くすることが望ましい。
【0046】
なお、駆動制御回路65は、比較回路63、64の出力を入力するオア回路を有するが、これに代えてアンド回路を用いてもよい。この場合には、ランプ動作電圧とランプ動作電流の双方の変動が一定値を超えアーク異常と判定された場合に、駆動制御回路65は駆動周波数を可変する。
【0047】
駆動制御岐路65は、ランプの駆動パルス信号の周波数を可変する以外に、パルス信号のデューテイ比を可変としてもよい。駆動信号62のパルス波形を図7に示す。同図(a)は、デューテイ比D1が50%(D1=T1/(T1+T2)、T1=T2)のパルス駆動信号を示し、同図(b)はデューテイ比D2がD1より大きいパルス駆動信号(T1>T2)を示す。
【0048】
ランプ電圧検出回路70あるいは/およびランプ電流検出回路80の検出結果に基づきアーク異常が検出された場合、駆動制御回路65は、パルス駆動信号のデューテイ比を、例えばD1からD2へ変更する。デューテイ比をD2へ変更することで、期間T1のランプ電流の印加を受ける電極は、期間T2のランプ電流の印加を受ける電極よりも温度を上昇される。例えば、一方の電極から放出される熱電子が不安定である場合には、当該一方の電極に期間T1のランプ電流を印加し、当該一方の電極の温度を高くすることで、熱電子の経路を安定化させ、アーク異常の発生を抑制することが可能である。デューテイ比の割合は、電極の熱設計や電極の温度状況に応じて適宜選択することが可能である。
【0049】
さらに駆動制御回路65は、上記のような駆動制御の他に、パルス駆動電流に重畳するようなパルス電流を付加してもよい。図8は、パルス駆動電流にアーク安定化用のパルス66を付加したランプ電流の波形を示す図である。アーク安定化用パルス66は、ランプ電流の立下りに同期しランプ電流の期間(T1またはT2)よりも小さい期間T3だけランプ電流の大きさ(絶対値)を大きくする。
【0050】
放電ランプ90の電極は、ランプ電流の極性がときに瞬間的に温度が下がり、それによってアーク異常の発生が引き起こされることがある。このため、ランプ電流の立下りに同期してアーク安定化用パルスを付加し、ランプ電流が切り替わるときの電極の温度を通常よりもやや高めに設定することで、ランプ電流の極性反転時における電極の温度の低下を抑制しアーク放電を安定化させ、アーク異常の発生を抑制する。
【0051】
本例では、アーク安定化用パルス66をランプ電流の立下りに同期して付加したが、これに加えて立上り時にもパルスを付加してもよい。アーク安定化用パルス66の期間T3や大きさは、電極の熱設計および電極の熱に応じて適宜選択すればよい。
【0052】
図9は本発明の第2の実施の形態に係る放電ランプ装置のブロック図である。同図に示すように、本例では、放電ランプ90の光量を検出する光検出部200を有する。光検出部200は、放電ランプ90からの光の変動をチェックし、この結果を制御回路60へ供給する。アーク異常が発生すると、そのランプ電圧あるいは/およびランプ電流が変動するため、結果として放電ランプ90から発せられる光にチラツキ等が生じる。光検出部200は、好ましくはフォトダイオードやフォトトランジスタ等の光電変換素子を含み、放電ランプ90の光量の変化に応じた電気信号を制御回路60へ与える。
【0053】
制御回路60は、光検出部200の検出結果からアーク異常を判定し、駆動制御回路65により駆動周波数を可変したり、デューテイ比を変更したり、あるいはアーク安定化用パルスを付加する。なお、制御回路60は、光検出部200からの出力を基準電位と比較するための第3の比較回路を備えるようにしてもよい。第3の比較回路の出力は、比較回路63,64の出力とともに駆動制御回路65のオア回路に入力させ、ランプ電圧検出回路70、ランプ電流検出回路90、あるいは光検出部200のいずれかにおいてアーク異常が検出されたときにアーク異常と判定し、駆動制御回路65がAC駆動回路41の動作を制御するようにしてもよい。あるいは、オア回路の代わりにアンド回路を用い、すべての検出部においてアーク異常が検出されたときにのみアーク異常と判定しAC駆動回路41の動作を制御するようにしてもよい。第3の比較回路に図3および図6に示す回路を適用することも可能である。
【0054】
図10は図9に示す光検出部200の取り付け例を示す図である。放電ランプ90は、回転楕円面鏡あるいは回転放物面鏡を有するリフレクター91の光軸に取り付けられ、好ましくは一対の電極の中心がリフレクターの焦点にくるように配される。リフレクター91の開放端はガラス92によって封止され、ガラス92の対向する位置に光導波路93が配される。光導波路93は、例えば、ライトトンネルあるいはライトインテグレータである。さらにガラス92と対向する位置にフォトダイオード94が配置され、リフレクター91によって反射された光の一部がフォトダイオード94を照射する。こうして、放電ランプ90にアーク異常が発生されると、フォトダイオード94からその異常を示す電気信号95が制御回路60へ与えられる。
【0055】
第2の実施の態様では光検出部としてフォトダイオードを用いたが、これに限らず他のフォトトランジスタ等の検出素子を用いることも可能である。また取り付け位置も、ガラスと対向する位置以外に、例えばリフレクターに溝または凹部を形成し、そこに一体的にフォトダイオードを取り付けるようにしてもよい。
【0056】
以上説明した放電ランプ装置は、プロジェクタ用の光源として用いることができる。放電ランプ装置をDLP(Digital Light Processing)方式のプロジェクタに適用した例を図11に示す。
【0057】
プロジェクタ300は、放電ランプ装置301と、放電ランプ装置301から発せられた光を伝送するライトトンネル302と、R、G、B(またはW)のカラーフィルターを配列させ回転駆動される円盤状のカラーホイール303と、カラーホイール303によって順次R、G、Bの波長の光に分別された光をDMD305上へ投射する投射光学系304と、半導体基板上に二次元的に配列させた複数のマイクロミラー素子からなる画像領域を有するDMD305と、DMD305によって光学的に変調された光をスクリーン上へ投射する投射光学系306とを有する。本実施の形態に係る放電ランプ装置301を用いることにより投射画像のチラツキを抑制しかつ配光の均一性を担保することができる。
【0058】
以上、本発明の好ましい実施の形態について詳述したが、本発明は係る特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【0059】
本実施の形態では、交流電源を直流電源に変換するが、これに限らず直流電源をそのまま用いるものであっても良い。ランプ電圧検出回路70及びランプ電流検出回路80は、必ずしも電力供給回路30と駆動回路40との間に接続することに限らずこれ以外の位置に接続するものであっても良い。駆動回路40は、イグナイタ回路42を含むものとしたが、必ずしもイグナイタ回路42を包含する必要はない。さらにイグナイタ回路42において必要に応じてインダクター電流経路にインダクターを介在させて駆動パルス信号の立ち上がりおよび立下りを急峻にするようにしても良い。
【0060】
【発明の効果】
本発明に係る放電ランプ装置によれば放電ランプの電極間に発生されるアーク異常を検出し、この検出結果に基づき放電ランプの駆動を制御するようにしたので、アークジャンプやアークフリッカの発生を電子的に抑制することができ、その結果、放電ランプのチラツキを抑制しかつ配光の均一性を向上させることが可能となる。このような放電ランプ装置をプロジェクタの光源に用いれば、投射される画像のチラツキを抑制し高品位の画像を提供することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る放電ランプ装置の構成を示すブロック図である。
【図2】図1に示す放電ランプ装置の回路構成を示す図である。
【図3】比較回路63、64の詳細を示す回路図である。
【図4】アークジャンプおよびアークフリッカの信号波形を示す図である。
【図5】比較回路の入力および出力電圧波形を示す図である。
【図6】比較回路63、64に差増増幅器を適用した回路図である。
【図7】放電ランプに印加されるランプ電流の波形を示し、同図(a)はデューテイ比が等しい場合を示し、同図(b)はデューテイ比を可変した場合を示す。
【図8】放電ランプに印加されるランプ電流の波形を示す図である。
【図9】本発明の第2の実施の形態に係る放電ランプ装置の構成を示すブロック図である。
【図10】図9に示す光検出部を放電ランプに取り付けた状態を示す図である。
【図11】本発明に係る放電ランプ装置をプロジェクタに適用した例を示すブロック図である。
【図12】放電ランプの電極間のアーク異常の状態を説明する図である。
【符号の説明】
30:電力供給回路、 40:駆動回路、
41:AC駆動回路、 42:イグナイタ回路、
50:PWM制御回路、 60:制御回路、
63、64:比較回路、 65:駆動制御回路、
70:ランプ電圧検出回路、 80:ランプ電流検出回路、
90:放電ランプ、 200:光検出部
【発明の属する技術分野】
本発明は、放電ランプのアークを安定化させるためのアーク安定化機能を備えた放電ランプ装置及びこれを用いたプロジェクタに関し、特に、液晶デバイスやDMD(Digital Mirror Device)を用いたプロジェクタの光源に用いられる放電ランプ装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
液晶デバイスやDMDを用いて画像を光学的に投射し表示させるプロジェクタの光源として、キセノンランプ、メタルハライドランプ、あるいは超高圧水銀ランプなどの放電ランプが用いられている。これらの放電ランプは、そのガスや金属によって分光分布、輝度分布、配光分布、電気特性等を異にし、プロジェクタの設計仕様に適したランプが選択される。
【0003】
放電ランプには、電極間にDC駆動電圧を印加する直流型ランプと、電極間にAC駆動電圧を印加する交流型ランプがある。直流型ランプは、電極の一方が陰極になり他方が陽極となる。陰極からの電子が常に陽極に衝突するために陽極の温度が上昇されやすく、そのため一般に陰極に比べて陽極の熱容量を大きくし温度上昇を抑制している。他方、交流型ランプは、両電極が交互に陽極と陰極になるため、電極の大きさは基本的に同じものが多い。
【0004】
放電ランプは、電極間のアーク距離を短くしたショートアークランプを用いることが望ましい。こうすることで、非常に高い放射輝度の光を発生させることが可能であり、発光される光も点光源に近似されるため、レンズやミラー等の光学部材を使用するときに、光の屈折や反射等の光学的精度を高めることができる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
プロジェクタにおいて、ランプの集光効率を上げるためには、ショートアークランプの光点を光学系に用い、狭い範囲に集光する必要がある。しかし、ショートアークランプでは、電極間にアークジャンプやアークフリッカ等を発生させるため、狭い範囲に集光することが困難であり、仮に狭い範囲に集光したとしても投影画像上で配光の均一性が崩れたり、チラツキが発生したりしてしまうという課題がある。
【0006】
図12に、交流駆動型放電ランプの電極部の構成を模式的に示す。放電ランプ400は、石英ガラス401内に陰極(または陽極)402と陽極(または陰極)403とを含む。パルス駆動電圧が電極402、403間に印加されると、陰極402から飛び出した熱電子は陽極402へ衝突し、電極間で放電が行われる。
【0007】
陰極402から放出される熱電子は、最短の距離でかつ同一の経路で陽極403へ到達することが望ましい。距離が短ければ、その分だけ抵抗も小さくなり、経路が同一であれば抵抗あるいは電流の変動もきわめて小さく、ランプの光量も安定化される。しかしながら、実際には陰極402の先端から放出される熱電子は、先端が尖った位置から放出され易い。これは、先端が尖った部分は電界が集中し、その分だけ他よりも温度の上昇が大きいためである。他方、陽極403においても、先端が尖った部分がその熱容量により他の部分よりも温度を高くする。その結果、陰極402からの熱電子は、いろんな経路で陽極403に衝突することがある。例えば図12に示すように、陰極402からの熱電子は、陽極403に巻回されたコイル部分の先端位置に衝突するルートA、陰極402と直面する角度が形成された位置に衝突するルートBまたはCをたどることになる。
【0008】
このように、陰極から放出される熱電子の衝突位置が異なって陰極から陽極への熱電子のルートが遷移することを一般にアークジャンプといい、そのような現象が比較的速い周期で繰り返されることをアークフリッカという。上記ルートA、B、Cで示すような突起物のある位置は、アークジャンプやアークフリッカの発生する可能性が高く、一般にアークフリッカはアークジャンプよりも発生頻度が高い。本明細書では、アークジャンプやアークフリッカを含む現象をアーク異常と定義する。
【0009】
本発明は、従来の放電ランプの課題を解決し、アークジャンプやアークフリッカ等のアーク異常の発生を抑制した放電ランプ装置を提供することを目的とする。
さらに本発明は、放電ランプのアークジャンプやアークフリッカ等のアーク異常を電気的に制御することが可能な放電ランプ装置を提供することを目的とする。
さらに本発明の目的は、投影画像のチラツキを抑制しかつその配光の均一性を改善したプロジェクタを提供することである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明に係る放電ランプ装置は、放電ランプと、直流電源と、前記直流電源から供給される電力に基づき前記放電ランプを交流駆動する駆動手段と、前記放電ランプの電極間のアーク異常を検出する検出手段と、前記検出手段によって検出された検出結果に基づき前記駆動手段を制御する制御手段とを備えたものである。
【0011】
請求項1に記載の発明によれば、検出手段が放電ランプの電極間のアーク異常を検出し、これによって駆動手段を制御するようにしたので、放電ランプにアーク異常(アークフリッカやアークジャンプ)が発生したときに、それを抑制するような駆動制御を電気的に行うことができる。
【0012】
好ましくは、検出手段は放電ランプの動作電圧の変動を検出するものである。例えば、検出手段は、放電ランプの電極と電気的に並列に接続された第1及び第2の抵抗と、第1の比較手段とを有する。第1の比較手段の第1の入力には第1及び第2の抵抗間に形成された接続ノードの電圧が供給され、第2の入力には基準電圧が供給される。そして第1の比較手段は、接続ノードの電圧と基準電圧とを比較し、その比較結果を制御手段へ出力する。アーク異常が発生すると、そのランプ動作電圧が変動する。これは、放電ランプの電極間において熱電子の経路が変化すると抵抗が変化するためである。例えばその経路が長くなると、それに伴い抵抗が大きくなる。検出手段は、抵抗の変化に伴い変化したランプ動作電圧を検出することでアーク異常を検出する。
【0013】
好ましくは検出手段は、放電ランプの動作電流の変動を検出する。例えば、検出手段は、放電ランプの少なくとも一方の電極と電気的に直列に接続された電流検出用抵抗と、第2の比較手段とを有する。第2の比較手段の第1の入力には電流検出用抵抗からの出力電圧が供給され、第2の入力には第2の基準電圧が供給される。第2の比較手段は、出力電圧と第2の基準電圧とを比較し、その比較結果を制御手段に出力する。アーク異常が発生すると、電極間の抵抗が変化するため放電ランプに流れる電流も変化する。検出手段によりランプ動作電流の変化を検出することでアーク異常を検出する。
【0014】
好ましくは、基準電圧または第2の基準電圧は、放電ランプの動作電圧または動作電流から生成される。放電ランプは、その使用年数や使用頻度により経年変化し、そのランプ動作電圧やランプ動作電流は初期状態のときから変化する。このため、アーク異常の検出に際し、基準電圧はそのような経年変化等に対応するものであることが望ましい。また、第1および第2の比較手段は、差動増幅器を含むものであっても良い。
【0015】
好ましくは検出手段は、放電ランプの発光の変動を検出する光センサーを含むものでもよい。光センサーは、フォトダイオードまたはフォトトランジスタを含み、フォトダイオードまたまフォトトランジスタを放電ランプの近傍に配することができる。アーク異常が発生すると、放電ランプでの発光あるいは発光量にチラツキ等の変化が生じる。光センサーにより光の変化量を検出することでアーク異常を検出する。
【0016】
アーク異常は、放電ランプの電極間においてアークが所望の位置から離れた位置へジャンプするアークジャンプや、放電ランプの電極間においてアークが所定の経路から外れた経路へ遷移するアークフリッカを含む。
【0017】
好ましくは制御手段は、検出手段の検出結果に応じて駆動手段の交流駆動周波数を高くする。駆動周波数を高くすることによって電極間のアーク異常の発生を抑制することが判明している。
【0018】
好ましくは制御手段は、検出手段の検出結果に応じて駆動手段のパルス駆動電流のデューテイ比を可変するようにしてもよい。アーク異常の発生は、電極の温度と関係するため、デューテイ比を変えることにより電極の温度を調整し、アーク異常の発生を抑制する。
【0019】
好ましくは制御手段は、検出手段の検出結果に応じて前記駆動手段のパルス駆動電流の大きさを可変するようにしてもよい。例えば、パルス駆動電流の大きさは、パルス駆動電流の立ち下がりに同期して一定の期間だけパルス駆動電流を大きくするアーク安定化用のパルスを付加することができる。ランプ電流の立下り時にパルスを付加し、電極を瞬時に加熱することで、電極上に安定した放電場所を形成することによりアークジャンプやアークフリッカ等のアーク異常の発生を抑制することができる。
【0020】
好ましくは制御回路は、第1の比較手段の比較結果と第2の比較手段の比較結果を入力するオア回路を含み、第1の比較手段または第2の比較手段がアーク異常を検出したときに駆動手段を制御するようにしても良い。あるいは、制御回路は、第1の比較手段の比較結果と第2の比較手段の比較結果を入力するアンド回路を含み、第1の比較手段および第2の比較手段がアーク異常を検出したときに駆動手段を制御するようにしても良い。
【0021】
好ましくは駆動手段は、直流電圧を交流電圧に変換するスイッチングトランジスタを含むAC駆動回路と、放電ランプの起動時に放電ランプに高電圧を印加するイグナイタ回路とを含む。直流電源は、交流電源と、交流電源から供給される交流電圧を整流する整流回路とを含むものであってもよい。また、放電ランプは、放電ランプから発せられた光を反射させるリフレクターを一体に含むものであってもよい。
【0022】
本発明に係るプロジェクタは、放電ランプ装置と、放電ランプ装置からの光を光学的に変調する変調手段と、変調された光を投影する投影手段とを有する。そして、放電ランプ装置は、放電ランプと、直流電源と、前記直流電源から供給される電力に基づき前記放電ランプを交流駆動する駆動手段と、前記放電ランプの電極間のアーク異常を検出する検出手段と、前記検出手段によって検出された検出結果に基づき前記駆動手段を制御する制御手段とを備えている。
【0023】
このような放電ランプ装置を備えることにより、プロジェクタから投影される画像のチラツキを抑制し、かつ画像の配光の均一性をより向上させることができる。
【0024】
好ましくは変調手段は、放電ランプ装置からの光を少なくともR、G、Bの波長の光に分別する分別手段と、該分別手段によって分別された光を変調する変調素子とを含む。変調素子は、例えばDMDを含む。
【0025】
好ましくは分別手段は、R、G、Bのカラーフィルターを有す回転可能なカラーホイールを備え、カラーフィルターへ光を入射させることで順次R、G、Bの波長を有する光を出射させる。変調手段は、放電ランプ装置からの光を変調する液晶ライトバルブを含むものであってもよい。
【0026】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
図1は本発明の第1の実施の形態に係る放電ランプ装置の構成を示すブロック図である。放電ランプ装置1は、交流電源10と、交流電源10の交流電圧を直流電圧に整流する整流回路20と、放電ランプ90へ安定的な電力を供給する電力供給回路30と、放電ランプ90を駆動する駆動回路40と、電力供給回路30の電力供給を制御するPWM制御回路50と、駆動回路40等の各部を制御する制御回路60とを含む。放電ランプ装置1は、さらに電力供給回路30と駆動回路40との間の電源供給ライン間に介在されたランプ電圧検出回路70と、一方の電源供給ラインに接続されたランプ電流検出回路80とを含む。ランプ電圧検出回路70は放電ランプ90の動作電圧を検出し、その検出した出力をPWM制御回路50及び制御回路60にそれぞれ供給する。ランプ電流検出回路80は放電ランプ90の動作電流を検出し、その検出した出力をPWM制御回路50及び制御回路60にそれぞれ供給する。
【0027】
駆動回路40は、放電ランプ90を交流駆動(AC駆動)するためのAC駆動回路41と、放電ランプ90の起動時にランプに高電圧を印加するイグナイタ回路42とを有する。放電ランプ90は、例えばキセノンランプ、メタルハライドランプ、超高圧水銀ランプなどである。このような放電ランプ装置1は、液晶デバイスやDMDを用いたプロジェクタの光源に用いられる。
【0028】
図2は図1に示す放電ランプ装置の回路を示す図である。
電力供給回路30は、MOSトランジスタ31、パルストランス32、ダイオード33、インダクター(コイル)34、コンデンサ35を含む。MOSトランジスタ31のゲートはパルストランス32の二次側コイルに接続され、その一次側コイルはPWM制御回路50のPWM出力信号51に接続される。PWM出力信号51から出力されるパルス信号に応答してMOSトランジスタ31のオン・オフが制御され、直流電圧の降圧が行われる。インダクター34及びコンデンサ35は、変圧された直流電圧から脈動する成分を取り除き平滑化された直流電圧を供給する。
【0029】
電力供給回路30の電源供給ライン間にランプ電圧検出回路70が接続される。ランプ電圧検出回路70は、ライン間に直列に接続された抵抗R2、R3と、抵抗R3に並列に接続されたコンデンサとを含む。抵抗R2とR3との接続ノードはPWM制御回路50および制御回路60へ供給される。
【0030】
ランプ電流検出回路80は、電力供給回路30からの一方の電源供給ラインに直列接続されたランプ電流検出用の抵抗R1を含む。抵抗R1の出力は、PWM制御回路50および制御回路60へ供給される。
【0031】
PWM制御回路50は、スイッチSW1を閉じることによって動作を開始し、スイッチSW1は制御回路60から出力される制御信号61によって制御される。PWM制御回路60は、ランプ電圧検出回路70の出力およびランプ電流検出回路80の出力を入力し、これらの出力からランプ電力を演算し、放電ランプ90の動作に必要な電力が安定的に供給されるように電力供給回路30を制御する。
【0032】
AC駆動回路41は、電源供給ラインを介して電力供給回路30に接続され、直流電圧を交流電圧に変換するためのCMOSトランジスタQ1、Q2とQ3、Q4とを有する。CMOSトランジスタQ1、Q2と、CMOSトランジスタQ3、Q4により一対のCMOSインバータを構成し、それらのゲート電極は制御回路60からの駆動信号62を介して相補的に駆動される。従って、トランジスタQ1、Q4がオンするときトランジスタQ2、Q3がオフであり、反対にトランジスタQ2、Q3がオンするとき、トランジスタQ1、Q4がオフである。こうして電力供給回路30からの直流電圧は各インバータによって交流電圧に変換され、放電ランプ90に印加される。直流−交流の変換周波数は制御回路60からの駆動信号62のパルス周波数を可変することによって任意に選択することが可能である。さらに後述するように制御回路60は、駆動信号62のパルス駆動信号のデューテイ比を可変することも可能である。
【0033】
各インバータの出力は、イグナイタ回路42の電源供給ラインを介して放電ランプ90に接続される。イグナイタ回路42は、放電ランプ90の起動時に放電ランプ90に高電圧を印加し放電ランプ90にアーク放電を引き起こす。PWM制御回路50によって制御された電力供給回路30は、約250ないし370ボルトの電圧を電源供給ラインに出力し、この電圧はAC駆動回路41を介してイグナイタ回路42に供給される。AC駆動回路41の高電位側出力からダイオード121を介してコンデンサ122に電流が蓄積され、この電圧が一定値を超えるとトリガー素子123が導通し、トランス124の一次側コイルに電流が流され、これによって二次側コイルに発生された電流がダイオード125を介してコンデンサ126に充電される。コンデンサ126の電圧がバリスタ127のしきい値を越えると、トランス128の一次側コイルに電流が流れ、これによって二次側コイルに非常に高い十数キロボルトの電圧が発生される。そして、放電ランプ90の端子間に絶縁破壊が生じ、アーク放電が開始される。
【0034】
制御回路60は、スイッチSW1のオン、オフを制御する制御信号61と、AC駆動回路41の駆動を制御する駆動信号62とを出力する。さらに制御回路60は、比較回路63、64と、駆動制御回路65とを含む。比較回路63の一方の入力には、ランプ電圧検出回路70からの出力電圧が接続され、他方の入力には基準電圧が接続される。比較回路64の一方の入力には、ランプ電流検出回路80からの出力が接続され、他方の入力には基準電圧が接続される。比較回路63、64の出力は駆動制御回路65へ入力される。
【0035】
比較回路63は、ランプ電圧検出回路70からの出力電圧を基準電圧と比較し、放電ランプ90の電極間において発生されるアークジャンプやアークフリッカ等のアーク異常を検出する。アークジャンプやアークフリッカが発生すると、アークは定常の経路から外れた経路で放電するため、それによって抵抗が変化する。比較回路63の基準電圧を所定の値に選択することにより、ランプ動作電圧が一定の値よりも大きく変化した場合には、それをアーク異常と判定する。
【0036】
比較回路64は、ランプ電流検出回路80からの出力電圧を基準電圧と比較し、ランプ動作電流の変化が一定の値よりも大きい場合にはアーク異常と判定する。図3に比較回路63の詳細な構成を示す。比較回路63は、コンパレータ63aを含み、コンパレータ63aの入力Vinはランプ電圧検出回路70の出力に接続される。入力Vinは、抵抗R11およびコンデンサC1を含むRC回路に接続され、このRC回路の出力を基準電圧として非反転入力に供給する。また、入力Vinの信号は、抵抗R12を介して反転入力端子に接続され、コンパレータ63aがこれを基準電圧と比較し、その比較結果をVoutとして出力する。比較回路64も同様の構成を有する。
【0037】
駆動制御回路65は、比較回路63、64の出力を入力するオア回路を含み、比較回路63または比較回路64のいずれか一方からアーク異常を示す信号が入力された場合、駆動信号62のパルス駆動信号の周波数を高くする。駆動制御回路65は、アーク異常が検出されないとき、AC駆動回路41を周波数(H)で駆動し、アーク異常が検出されたとき、駆動周波数を予め設定された周波数(H1>H)に可変し、AC駆動回路41を駆動する。周波数を高くすることによりアーク異常の発生を抑制することができる。
【0038】
次に、本実施の形態に係る放電ランプ装置の動作について説明する。放電ランプ90に高電圧が印加される前、スイッチSW1は開いた状態にある。交流電源10からの交流電圧が整流・平滑化回路20により直流電圧に変換され、制御回路60からの制御信号61によりスイッチSW1がオンされると、PWM制御回路50からPWM出力信号51がパルストランス32へ出力され、これによってMOSトランジスタ31のオン・オフが制御され、電力供給回路30からは約250−370ボルトの直流電圧が供給される。
【0039】
AC駆動回路41は、制御回路60によりトランジスタQ2、Q3をオン状態にされており、イグナイタ回路42の動作により放電ランプ90の電極間に10キロ−20キロボルトの高電圧が印加され、アーク放電により電流が流れ始まる。
【0040】
PWM制御回路50は、放電初期時のランプ動作電圧が低いためランプが安全に動作できる電流制御を行い、その後、温度上昇と共にランプ動作電圧が上昇(例えば65ボルト)した時点で電力(ワット)制御に切り替える。他方、制御回路60は駆動信号61によりAC駆動回路41のインバータ駆動を開始させ、直流電圧を交流電圧に変換させる。これによって放電ランプ90の電極間には、図7(a)に示すようなランプ電流が印加される。またイグナイタ回路42は、そのトリガー素子123のしきい値電圧を200ボルト程度としているため、AC駆動回路41からの交流電流によって動作しない。
【0041】
放電ランプ90に、アークジャンプやアークフリッカ等のアーク異常が発生すると、ランプ動作電圧あるいはランプ動作電流が変動する。この様子を図4に示す。アークフリッカは、比較的早い周期でアーク経路を変動もしくは遷移させるため、それに応じてランプ電圧およびランプ電流の変化の周波数が比較的高い。これに対してアークジャンプは、アークが異なる経路を比較的遅い周期で行き来するため、ランプ電圧およびランプ電流の変化の周波数も比較的低くなる。
【0042】
ランプ電圧検出回路70は放電ランプ90の電極と並列に接続された関係にあり、ランプ動作電圧が変動すると、抵抗R2、R3の接続ノードからの検出電圧が変動する。図5に比較回路63の入力電圧Vinと出力電圧Voutの関係を示す。比較回路63の入力Vinに、図5に示すようなアークジャンプを伴う出力電圧が入力されると、RC回路によりその脈動(変動)成分が除去された電圧が基準電圧としてコンパレータ63aに入力される。他方、その反転入力端子には脈動成分を有する信号が入力されるため、その比較によりパルス信号が出力電圧Voutとして出力される。ランプ電圧検出回路70の出力から基準電圧を生成することで、ランプの経年変化等による動作電圧の変化(例えば電極の磨耗等により動作電圧が変化する)を考慮し的確にアーク異常の電圧を検出することが可能となる。こうして比較回路63によって検出されたアーク異常を示す信号が駆動制御回路65へ供給される。
【0043】
ランプ電流検出回路80は、放電ランプ90の一方の電極と直列に接続された電流検出用の抵抗R1を含み、ランプ動作電流が変動すると、抵抗R2の出力電圧が変動される。この出力電圧は比較回路64の入力電圧Vinとしてコンパレータ64aに供給され、上述した比較回路63と同様の動作が行われる。こうして比較回路64によって検出されたアーク異常を示す信号が駆動制御回路65へ出力される。
【0044】
なお、比較回路63、64は必ずしもコンパレータに限られるものではない。例えば、図6に示すような差動増幅器を用いて、アーク異常を検出することが可能なことは云うまでもない。この場合、検出結果から増幅された出力電圧を得ることができる。
【0045】
駆動制御回路65は、比較回路63または64のいずれか一方からアーク異常の通知を受けると、駆動信号61のパルス駆動周波数を可変する。放電ランプ90の駆動周波数を高くすることでアーク異常の発生が抑制されることが判明している。このため、駆動信号61のパルス駆動周波数を高くすることが望ましい。
【0046】
なお、駆動制御回路65は、比較回路63、64の出力を入力するオア回路を有するが、これに代えてアンド回路を用いてもよい。この場合には、ランプ動作電圧とランプ動作電流の双方の変動が一定値を超えアーク異常と判定された場合に、駆動制御回路65は駆動周波数を可変する。
【0047】
駆動制御岐路65は、ランプの駆動パルス信号の周波数を可変する以外に、パルス信号のデューテイ比を可変としてもよい。駆動信号62のパルス波形を図7に示す。同図(a)は、デューテイ比D1が50%(D1=T1/(T1+T2)、T1=T2)のパルス駆動信号を示し、同図(b)はデューテイ比D2がD1より大きいパルス駆動信号(T1>T2)を示す。
【0048】
ランプ電圧検出回路70あるいは/およびランプ電流検出回路80の検出結果に基づきアーク異常が検出された場合、駆動制御回路65は、パルス駆動信号のデューテイ比を、例えばD1からD2へ変更する。デューテイ比をD2へ変更することで、期間T1のランプ電流の印加を受ける電極は、期間T2のランプ電流の印加を受ける電極よりも温度を上昇される。例えば、一方の電極から放出される熱電子が不安定である場合には、当該一方の電極に期間T1のランプ電流を印加し、当該一方の電極の温度を高くすることで、熱電子の経路を安定化させ、アーク異常の発生を抑制することが可能である。デューテイ比の割合は、電極の熱設計や電極の温度状況に応じて適宜選択することが可能である。
【0049】
さらに駆動制御回路65は、上記のような駆動制御の他に、パルス駆動電流に重畳するようなパルス電流を付加してもよい。図8は、パルス駆動電流にアーク安定化用のパルス66を付加したランプ電流の波形を示す図である。アーク安定化用パルス66は、ランプ電流の立下りに同期しランプ電流の期間(T1またはT2)よりも小さい期間T3だけランプ電流の大きさ(絶対値)を大きくする。
【0050】
放電ランプ90の電極は、ランプ電流の極性がときに瞬間的に温度が下がり、それによってアーク異常の発生が引き起こされることがある。このため、ランプ電流の立下りに同期してアーク安定化用パルスを付加し、ランプ電流が切り替わるときの電極の温度を通常よりもやや高めに設定することで、ランプ電流の極性反転時における電極の温度の低下を抑制しアーク放電を安定化させ、アーク異常の発生を抑制する。
【0051】
本例では、アーク安定化用パルス66をランプ電流の立下りに同期して付加したが、これに加えて立上り時にもパルスを付加してもよい。アーク安定化用パルス66の期間T3や大きさは、電極の熱設計および電極の熱に応じて適宜選択すればよい。
【0052】
図9は本発明の第2の実施の形態に係る放電ランプ装置のブロック図である。同図に示すように、本例では、放電ランプ90の光量を検出する光検出部200を有する。光検出部200は、放電ランプ90からの光の変動をチェックし、この結果を制御回路60へ供給する。アーク異常が発生すると、そのランプ電圧あるいは/およびランプ電流が変動するため、結果として放電ランプ90から発せられる光にチラツキ等が生じる。光検出部200は、好ましくはフォトダイオードやフォトトランジスタ等の光電変換素子を含み、放電ランプ90の光量の変化に応じた電気信号を制御回路60へ与える。
【0053】
制御回路60は、光検出部200の検出結果からアーク異常を判定し、駆動制御回路65により駆動周波数を可変したり、デューテイ比を変更したり、あるいはアーク安定化用パルスを付加する。なお、制御回路60は、光検出部200からの出力を基準電位と比較するための第3の比較回路を備えるようにしてもよい。第3の比較回路の出力は、比較回路63,64の出力とともに駆動制御回路65のオア回路に入力させ、ランプ電圧検出回路70、ランプ電流検出回路90、あるいは光検出部200のいずれかにおいてアーク異常が検出されたときにアーク異常と判定し、駆動制御回路65がAC駆動回路41の動作を制御するようにしてもよい。あるいは、オア回路の代わりにアンド回路を用い、すべての検出部においてアーク異常が検出されたときにのみアーク異常と判定しAC駆動回路41の動作を制御するようにしてもよい。第3の比較回路に図3および図6に示す回路を適用することも可能である。
【0054】
図10は図9に示す光検出部200の取り付け例を示す図である。放電ランプ90は、回転楕円面鏡あるいは回転放物面鏡を有するリフレクター91の光軸に取り付けられ、好ましくは一対の電極の中心がリフレクターの焦点にくるように配される。リフレクター91の開放端はガラス92によって封止され、ガラス92の対向する位置に光導波路93が配される。光導波路93は、例えば、ライトトンネルあるいはライトインテグレータである。さらにガラス92と対向する位置にフォトダイオード94が配置され、リフレクター91によって反射された光の一部がフォトダイオード94を照射する。こうして、放電ランプ90にアーク異常が発生されると、フォトダイオード94からその異常を示す電気信号95が制御回路60へ与えられる。
【0055】
第2の実施の態様では光検出部としてフォトダイオードを用いたが、これに限らず他のフォトトランジスタ等の検出素子を用いることも可能である。また取り付け位置も、ガラスと対向する位置以外に、例えばリフレクターに溝または凹部を形成し、そこに一体的にフォトダイオードを取り付けるようにしてもよい。
【0056】
以上説明した放電ランプ装置は、プロジェクタ用の光源として用いることができる。放電ランプ装置をDLP(Digital Light Processing)方式のプロジェクタに適用した例を図11に示す。
【0057】
プロジェクタ300は、放電ランプ装置301と、放電ランプ装置301から発せられた光を伝送するライトトンネル302と、R、G、B(またはW)のカラーフィルターを配列させ回転駆動される円盤状のカラーホイール303と、カラーホイール303によって順次R、G、Bの波長の光に分別された光をDMD305上へ投射する投射光学系304と、半導体基板上に二次元的に配列させた複数のマイクロミラー素子からなる画像領域を有するDMD305と、DMD305によって光学的に変調された光をスクリーン上へ投射する投射光学系306とを有する。本実施の形態に係る放電ランプ装置301を用いることにより投射画像のチラツキを抑制しかつ配光の均一性を担保することができる。
【0058】
以上、本発明の好ましい実施の形態について詳述したが、本発明は係る特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【0059】
本実施の形態では、交流電源を直流電源に変換するが、これに限らず直流電源をそのまま用いるものであっても良い。ランプ電圧検出回路70及びランプ電流検出回路80は、必ずしも電力供給回路30と駆動回路40との間に接続することに限らずこれ以外の位置に接続するものであっても良い。駆動回路40は、イグナイタ回路42を含むものとしたが、必ずしもイグナイタ回路42を包含する必要はない。さらにイグナイタ回路42において必要に応じてインダクター電流経路にインダクターを介在させて駆動パルス信号の立ち上がりおよび立下りを急峻にするようにしても良い。
【0060】
【発明の効果】
本発明に係る放電ランプ装置によれば放電ランプの電極間に発生されるアーク異常を検出し、この検出結果に基づき放電ランプの駆動を制御するようにしたので、アークジャンプやアークフリッカの発生を電子的に抑制することができ、その結果、放電ランプのチラツキを抑制しかつ配光の均一性を向上させることが可能となる。このような放電ランプ装置をプロジェクタの光源に用いれば、投射される画像のチラツキを抑制し高品位の画像を提供することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る放電ランプ装置の構成を示すブロック図である。
【図2】図1に示す放電ランプ装置の回路構成を示す図である。
【図3】比較回路63、64の詳細を示す回路図である。
【図4】アークジャンプおよびアークフリッカの信号波形を示す図である。
【図5】比較回路の入力および出力電圧波形を示す図である。
【図6】比較回路63、64に差増増幅器を適用した回路図である。
【図7】放電ランプに印加されるランプ電流の波形を示し、同図(a)はデューテイ比が等しい場合を示し、同図(b)はデューテイ比を可変した場合を示す。
【図8】放電ランプに印加されるランプ電流の波形を示す図である。
【図9】本発明の第2の実施の形態に係る放電ランプ装置の構成を示すブロック図である。
【図10】図9に示す光検出部を放電ランプに取り付けた状態を示す図である。
【図11】本発明に係る放電ランプ装置をプロジェクタに適用した例を示すブロック図である。
【図12】放電ランプの電極間のアーク異常の状態を説明する図である。
【符号の説明】
30:電力供給回路、 40:駆動回路、
41:AC駆動回路、 42:イグナイタ回路、
50:PWM制御回路、 60:制御回路、
63、64:比較回路、 65:駆動制御回路、
70:ランプ電圧検出回路、 80:ランプ電流検出回路、
90:放電ランプ、 200:光検出部
Claims (25)
- 放電ランプと、直流電源と、前記直流電源から供給される電力に基づき前記放電ランプを交流駆動する駆動手段と、前記放電ランプの電極間のアーク異常を検出する検出手段と、前記検出手段によって検出された検出結果に基づき前記駆動手段を制御する制御手段とを備えた放電ランプ装置。
- 前記検出手段は、前記放電ランプの動作電圧の変動を検出する請求項1に記載の放電ランプ装置。
- 前記検出手段は、放電ランプの電極と電気的に並列に接続された第1及び第2の抵抗と、第1の比較手段とを有し、前記第1の比較手段の第1の入力には前記第1及び第2の抵抗間に形成された接続ノード電圧が供給され、第2の入力には基準電圧が供給され、前記第1の比較手段は前記接続ノード電圧を前記基準電圧と比較し、その比較結果を前記制御手段に出力する、請求項2に記載の放電ランプ装置。
- 前記検出手段は、前記放電ランプの動作電流の変動を検出する請求項1に記載の放電ランプ装置。
- 前記検出手段は、前記放電ランプの少なくとも一方の電極と電気的に直列に接続された電流検出用抵抗と、第2の比較手段とを有し、第2の比較手段の第1の入力には前記電流検出用抵抗からの出力電圧が供給され、第2の入力には第2の基準電圧が供給され、前記第2の比較手段は前記出力電圧と前記第2の基準電圧とを比較し、その比較結果を前記制御手段に出力する、請求項4に記載の放電ランプ装置。
- 前記基準電圧または第2の基準電圧は、前記放電ランプの動作電圧または動作電流から生成される請求項2ないし5いずれかに記載の放電ランプ装置。
- 前記第1および第2の比較手段は、差動増幅器を含む、請求項2ないし5いずれかに記載の放電ランプ装置。
- 前記検出手段は、前記放電ランプの光量の変動を検出する光センサーを含む請求項1に記載の放電ランプ装置。
- 前記光センサーは、フォトダイオードまたはフォトトランジスタを含み、該フォトダイオードまたはフォトトランジスタは放電ランプの近傍に配される請求項8に記載の放電ランプ装置。
- 前記アーク異常は、放電ランプの電極間においてアークが所望の位置から離れた位置へジャンプするアークジャンプを含む、請求項1ないし9いずれかに記載の放電ランプ装置。
- 前記アーク異常は、放電ランプの電極間においてアークが所定の経路から外れた経路へ遷移するアークフリッカを含む、請求項1ないし10いずれかに記載の放電ランプ装置。
- 前記制御手段は、前記検出手段の検出結果に応じて前記駆動手段の交流駆動周波数を大きくする、請求項1ないし11いずれかに記載の放電ランプ装置。
- 前記制御手段は、前記検出手段の検出結果に応じて前記駆動手段のパルス駆動電流のデューテイ比を可変する、請求項1ないし11いずれかに記載の放電ランプ装置。
- 前記制御手段は、前記検出手段の検出結果に応じて前記駆動手段のパルス駆動電流の大きさを可変する、請求項1ないし11いずれかに記載の放電ランプ装置。
- 前記制御手段は、パルス駆動電流の立ち下がりに同期して一定の期間だけパルス駆動電流を大きくするパルスを付加する、請求項14に記載の放電ランプ装置。
- 前記制御回路は、前記第1の比較手段の比較結果と前記第2の比較手段の比較結果を入力するオア回路を含み、前記第1の比較手段または前記第2の比較手段がアーク異常を検出したときに前記駆動手段を制御する請求項2ないし15いずれかに記載の放電ランプ装置。
- 前記制御回路は、前記第1の比較手段の比較結果と前記第2の比較手段の比較結果を入力するアンド回路を含み、前記第1の比較手段および前記第2の比較手段がアーク異常を検出したときに前記駆動手段を制御する請求項2ないし15いずれかに記載の放電ランプ装置。
- 前記駆動手段は、直流電圧を交流電圧に変換するスイッチングトランジスタを含むAC駆動回路と、放電ランプの起動時に放電ランプに高電圧を印加するイグナイタ回路とを含む、請求項1に記載の放電ランプ装置。
- 前記直流電源は、交流電源と、交流電源から供給される交流電圧を整流する整流回路とを含む、請求項1に記載の放電ランプ装置。
- 前記放電ランプは、放電ランプから発せられた光を反射させるリフレクターを一体に含む、請求項1に記載の放電ランプ装置。
- 放電ランプ装置と、放電ランプ装置からの光を光学的に変調する変調手段と、変調された光を投影する投影手段とを有するプロジェクタであって、
前記放電ランプ装置は、放電ランプと、直流電源と、前記直流電源から供給される電力に基づき前記放電ランプを交流駆動する駆動手段と、前記放電ランプの電極間のアーク異常を検出する検出手段と、前記検出手段によって検出された検出結果に基づき前記駆動手段を制御する制御手段とを備えている、プロジェクタ。 - 前記変調手段は、放電ランプ装置からの光を少なくともR、G、Bの波長の光に分別する分別手段と、該分別手段によって分別された光を変調する変調素子とを含む、請求項21に記載のプロジェクタ。
- 前記変調素子は、DMDを含む請求項22に記載のプロジェクタ。
- 前記分別手段は、R、G、Bのカラーフィルターを有する回転可能なカラーホイールを備え、前記カラーフィルターへ光を入射させることで順次R、G、Bの波長を有する光を出射させる、請求項22に記載のプロジェクタ。
- 前記変調手段は、放電ランプ装置からの光を変調する液晶ライトバルブを含む、請求項21に記載のプロジェクタ。
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