JP2004039151A - 光記録媒体用中間体および光記録媒体の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】中心部に装着用中心孔が形成されると共に表面に1種類以上の機能層が形成されて情報の記録および再生の少なくとも一方を実行可能な光記録媒体を製造するために先立って製造される光記録媒体用の中間体ME1であって、装着用中心孔よりも小径の仮中心孔THが、その中心部に形成されている。
【選択図】 図4
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、中心部に装着用中心孔が形成されると共に表面に1種類以上の機能層が形成されて情報の記録および再生の少なくとも一方を実行可能な光記録媒体を製造するための光記録媒体用中間体、およびその光記録媒体用中間体を利用した光記録媒体の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、この種の光記録媒体(例えば、CD(Compact Disc)やDVD(Digital Versatile Disc))の製造方法としては、まず、スタンパーがセットされた金型内に樹脂を射出することにより、図9に示す形状のディスク状基板DPを作製する。この際に、装着用中心孔(光記録媒体の装着用中心孔でもある)MHが、ディスク状基板DPの中心部に形成される。また、グルーブ等の微細凹凸(図示せず)が、ディスク状基板DPの一方の面(同図中の上面)における後述の各機能層の形成領域(記録エリアRA)内に形成される。また、リング状突起(いわゆるストックリング)SRが、ディスク状基板DPの他方の面(同図中の下面)に形成される。このリング状突起SRは、ディスク状基板DPの内周側において装着用中心孔MHに隣接して位置するチャッキングエリアCAと、記録エリアRAとの間の領域内に形成される。また、作製されたディスク状基板DPは、図11に示すように、その装着用中心孔MHにスタッカー51のスタックポール51aを挿入することによってスタッカー51に積層された状態でストックされる。この場合、各ディスク状基板DPは、各リング状突起SRによって相互間に隙間が生じた状態で積層される。したがって、この状態において振動が加わったとしても、各ディスク状基板DPの大きな傾きが防止されるため、互いの干渉が回避される結果、表面の損傷等の不具合が防止される。
【0003】
次いで、スタッカー51からディスク状基板DPを順次取り出して、ディスク状基板DPの一方の面における記録エリアRA内に、各種の機能層(反射層、記録層、保護層等)を順次形成することによって光記録媒体(図示せず)が完成する。次いで、完成した光記録媒体は、ディスク状基板DPと同様にして、スタッカー51を使用してストックされる。この場合、上記した各種機能層の一部(例えば、保護層)は、スピンコート法によって樹脂を塗布すると共に塗布した樹脂を所定の硬化処理によって硬化させて形成する。その際に、機能層(樹脂層)の層厚を特に半径方向にほぼ均一に制御することが容易なことから、図9,10に示すように、円盤状部材DIを使用して樹脂Rを塗布する方法も採用されている。この方法では、図9に示すように、装着用中心孔MHを覆うようにして円盤状部材DIをディスク状基板DP上に載置して、この円盤状部材DIの上にノズルNZから樹脂Rを滴下して回転塗布する。次いで、図10に示すように、円盤状部材DIを取り外して、表面の外縁にまで樹脂Rが達したディスク状基板DPを硬化処理の実施場所まで搬送する。搬送に際しては、樹脂Rが未硬化のため、円盤状部材DIによって覆われていた樹脂未塗布領域(装着用中心孔MHの隣接領域)を吸着装置(図示せず)によって吸着して搬送する方法、および機械式チャック装置(図示せず)によって装着用中心孔MHを利用して搬送する方法のいずれかが通常採用されている。
【0004】
しかしながら、上記した光記録媒体の製造方法では、使用する円盤状部材DIの管理(樹脂Rが付着した円盤状部材DIのクリーニング等)が煩雑であるため、本発明者は、中心部に装着用中心孔MHが形成されていない光記録媒体用の中間体を使用して光記録媒体を製造する方法を開発した。この光記録媒体の製造方法では、まず、ディスク状基板DPの製造方法と同様の方法によって図12に示すディスク状基板用の中間体MEを作製する。この際に、中間体MEには、装着用中心孔MHは形成されないが、ディスク状基板DPと同様にして、グルーブ等の微細凹凸(図示せず)が一方の面(同図中の上面)に形成されて、かつリング状突起SRが下方の面(同図中の下面)に形成される。次いで、中間体MEの一方の面における記録エリアRA内に、各種機能層(反射層、記録層、保護層等)を順次形成する。この機能層の形成に際して、樹脂Rをスピンコート法によって塗布する際には、図12に示すように、中間体MEの中心部にノズルNZから樹脂Rを滴下して回転塗布する。これにより、樹脂Rは、図13に示すように、半径方向に沿った膜厚がほぼ均一に塗布される。次いで、一方の面上にすべての機能層(以下、全機能層をまとめて「層FL」ともいう)が形成された中間体MEの中心部をプレス加工によって打ち抜いて装着用中心孔MHを形成する。これにより、図1に示すように、中心部に装着用中心孔MHが形成された光記録媒体1が完成する。この光記録媒体の製造方法によれば、スピンコート法を実施する際に円盤状部材DIを使用しないため、円盤状部材DIについての煩雑な管理を不要にすることができる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、この光記録媒体の製造方法には、以下の解決すべき点が存在する。すなわち、この製造方法では、装着用中心孔MHが形成されていない中間体MEを作製し、この中間体ME上に層FLを形成した後にプレス加工で装着用中心孔MHを形成している。このため、スピンコート法によって機能層を形成する工程において、未硬化の樹脂Rが全体に亘って塗布された中間体MEを硬化処理の実施場所まで搬送する際に、中心部に装着用中心孔MHが形成されていないために上記したような機械式チャック装置を使用することができず、また樹脂Rの未塗布領域が存在しないために上記した吸着搬送装置も使用することができない。この場合、例えば、樹脂Rを部分的に硬化させる装置を別途用意して中間体MEの中央部の樹脂Rを硬化させ、この樹脂Rが硬化した部分を吸着搬送装置で吸着させる方法も考えられるが、樹脂Rを部分的に硬化させる装置の費用が新たに必要となるという解決すべき点が生じる。さらに、樹脂Rを部分的に硬化させる工程が新たに増えるため、その分の製造時間を要する結果、単位時間当たりの光記録媒体1の生産量が低下して製造コストが高騰するという解決すべき点も生じる。
【0006】
また、この光記録媒体の製造方法では、最後のプレス加工を終了するまで装着用中心孔MHが形成されないため、作製した中間体MEをストックする際や、1つの処理工程を終えた中間体MEを次の処理工程が開始するまでストックしておく際に、従来から使用しているスタッカー51を使用することができない。この場合、この中間体MEをストックする他の方法として、図14に示すように、複数(一例として3本)のスタックポール61aを同一円周上に立設したスタッカー61を使用して、中間体MEを積層してストックする方法が考えられる。この場合、各スタックポール61a,61a,61a間に収納された中間体MEは、各スタックポール61a,61a,61aによってその外周縁が支持される。また、図示しないが、中間体MEの外周縁を挿入可能な溝が間隔を空けて複数並設された収納ケースを使用して、各中間体MEを縦置き状態で横方向に並列させてストックする方法も考えられる。しかしながら、前者のストック方法には、各スタックポール61a,61a,61aによって中間体MEの外周縁を支持しているだけのため、中間体MEを複数積層した状態で振動等が加わった際に、図15に示すように、中間体MEが崩れ易いという解決すべき点がある。また、後者のストック方法には、中間体MEのストック数に応じて横方向の占有面積が増加するため、スタッカー51,61を使用したストック方法と比較して、中間体MEのストック数が多いときには占有スペースの確保が大変となるという解決すべき点がある。
【0007】
本発明は、かかる解決すべき課題に鑑みてなされたものであり、円盤状部材を使用することなくスピンコート法によって樹脂を均一に塗布できると共に省スペース化を図りつつ安定した状態でストックでき、しかも塗布した樹脂が未硬化の状態あっても既存の搬送機構で搬送し得る光記録媒体用中間体を提供することを主目的とする。また、円盤状部材を使用することなくスピンコート法によって樹脂を均一に塗布でき、しかも塗布した樹脂が未硬化の状態あっても既存の搬送機構で光記録媒体用中間体を搬送し得る光記録媒体の製造方法を提供することを主目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成すべく本発明に係る光記録媒体用中間体は、中心部に装着用中心孔が形成されると共に表面に1種類以上の機能層が形成されて情報の記録および再生の少なくとも一方を実行可能な光記録媒体を製造するために先立って製造される光記録媒体用中間体であって、前記装着用中心孔よりも小径の仮中心孔が、その中心部に形成されている。
【0009】
この場合、前記仮中心孔の内径を直径2mm以上に形成するのが好ましく、直径3mm以上に形成するのがより好ましい。
【0010】
また、その外径が前記装着用中心孔よりも小径であってその内径が前記仮中心孔の孔径以上で、かつその中心軸が当該仮中心孔の中心と等しい円筒状リングを前記機能層の形成面に突設するのが好ましい。
【0011】
この場合、前記円筒状リングの外径を直径10mm以下に形成するのが好ましく、直径7mm以下に形成するのがより好ましい。
【0012】
また、前記機能層の前記形成面からの突出長が0.5mm以上となるように前記円筒状リングを形成するのが好ましく、1.0mm以上に形成するのがより好ましい。さらに、前記円筒状リングの内径を前記仮中心孔の前記孔径と等しく形成するのが好ましい。
【0013】
また、上記目的を達成すべく本発明に係る光記録媒体の製造方法は、中心部に装着用中心孔が形成されると共に表面に1種類以上の機能層が形成されて情報の記録および再生の少なくとも一方を実行可能な光記録媒体を製造する製造方法であって、請求項1から9のいずれかに記載の光記録媒体用中間体を樹脂成型によって作製する中間体作製工程と、作製された前記光記録媒体用中間体の表面に前記機能層を形成する機能層形成工程と、前記1種類以上の機能層が形成された前記光記録媒体用中間体に前記装着用中心孔を形成する中心孔形成工程とを少なくとも含む。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、添付図面を参照して、本発明に係る光記録媒体用中間体および光記録媒体の製造方法の好適な実施の形態について説明する。なお、上記した光記録媒体1および中間体MEと同一構造の構成要素については、同一の符号を付して重複した説明を省略する。
【0015】
最初に、本発明に係る光記録媒体の製造方法によって製造される光記録媒体1の構成について、図1を参照して説明する。
【0016】
光記録媒体1は、ディスク状基板DPの一方の面(同図中の上面)上に層FLを形成して構成されている。この場合、ディスク状基板DPは、例えば、透明樹脂(一例としてポリカーボネイト)で厚み1.1mm程度、直径120mm程度の円板形状に形成されている。また、ディスク状基板DPの中心部には、直径15mm程度の装着用中心孔MHが形成され、ディスク状基板DPの一方の面における記録エリアRA内には、グルーブ等の微細凹凸が形成されている。また、ディスク状基板DPの他方の面(同図中の下面)には、直径38mm程度のリング状突起SRが形成されている。一方、層FLは、例えば、ディスク状基板DP側から順次積層された反射層、記録層、および保護層(カバー層)等の各種の機能層で構成され、全体として厚み0.1mm程度に形成されている。この場合、少なくともスピンコート法によって形成される機能層としては、ディスク状基板DPの一方の面全体に亘って樹脂(光透過性樹脂)によって形成される保護層が該当する。一方、スパッタリング法によって形成される機能層は、記録エリアRA内に形成され、Ag,Au,Al等によって形成されている反射層がこれに該当する。また、記録層が相変化材料によって形成される場合には、記録層もこの機能層に該当する。
【0017】
次いで、光記録媒体1の製造方法について説明する。
【0018】
まず、グルーブ等の微細凹凸形成用のパターンが表面に形成されたスタンパー(図示せず)を金型装置(図示せず)内にセットし、金型装置のキャビティ内に樹脂を射出して光記録媒体1用の中間体ME1を成型する(中間体作製工程)。この場合、中間体ME1は、図4に示すように、透明樹脂(一例としてポリカーボネイト)で厚み1.1mm程度、直径120mm程度の円板形状に形成される。また、中間体ME1の中心部には、光記録媒体1の装着用中心孔MHよりも小径の仮中心孔THが形成されている。この仮中心孔THは、中間体ME1を搬送する際に、図2に示すように、機械式チャック装置41の各チャック43,43,43を挿入するために使用される。また、仮中心孔THは、図3に示すように、中間体ME1をスタッカー51にストックする際にスタックポール51aを挿入するためにも使用される。なお、スタックポール51aの直径は、仮中心孔THの孔径よりも若干小径に設定されている。この場合、チャック43やスタックポール51aの強度を考慮すると、これらの小型化、小径化には限界がある。したがって、仮中心孔THの孔径は、直径2mm以上、好ましくは直径3mm以上に設定する。本実施の形態に係る中間体ME1では、一例として、仮中心孔THの孔径は直径4mmに設定されている。
【0019】
また、中間体ME1の一方の面には、図2に示すように、円筒状リングRIが形成されており、この円筒状リングRIの中心軸は、仮中心孔THの中心と等しくなるように(同心状に)規定されている。本実施の形態では、円筒状リングRIは、その内径が仮中心孔THの孔径と同一(直径4mm)に設定されて、仮中心孔THの口縁に突設されている。この円筒状リングRIは、中間体ME1の中心部をプレス加工によって打ち抜いて装着用中心孔MHを形成する際に、同時に打ち抜かれる。したがって、円筒状リングRIの外径は、最大でも装着用中心孔MHの孔径以下(15mm以下)に設定する必要がある。また、中間体ME1の一方の面にスピンコート法によって樹脂Rを塗布する場合、ノズルNZから円筒状リングRIの外面近傍に樹脂Rを滴下する必要がある。この際に、少なくとも記録エリアRA内における樹脂Rの膜厚のバラツキを約5μm以内に抑えてほぼ均一に塗布するためには、中間体ME1の中心から直径約10mm以内の範囲内に樹脂Rを滴下する必要があることが実験で判明している。さらに、記録エリアRA内における樹脂Rの膜厚のバラツキを約3μm以内に抑えて、より均一に塗布するためには、中間体ME1の中心から直径約7mm以内の範囲内に樹脂Rを滴下する必要があることも実験で判明している。したがって、円筒状リングRIの外径は、直径約10mm以下、好ましくは直径約7mm以下に設定する。本実施の形態に係る中間体ME1では、一例として、円筒状リングRIの外径は直径6mmに設定されている。
【0020】
また、円筒状リングRIの一方の面からの突出長は、必要量の樹脂Rを滴下でき、しかも滴下した樹脂Rの仮中心孔TH内への侵入を防止して記録エリアRA内における樹脂Rの膜厚のバラツキを低減できるように、0.5mm以上に設定する必要があり、余裕を考慮した場合には、1mm以上に設定するのが好ましい。本実施の形態に係る中間体ME1では、一例として、円筒状リングRIの突出長は2mmに設定されている。
【0021】
また、中間体ME1では、プレス加工によって打ち抜かれる中心部以外の他の部位は、光記録媒体1における対応部位と同一に構成されている。したがって、中間体ME1の一方の面における記録エリアRA内には、グルーブ等の微細凹凸が形成されている。また、中間体ME1の他方の面には、リング状突起SRが形成されている。このようにして作製された中間体ME1は、図3に示すように、スタッカー51を利用して縦方向に積層した状態でストックされる。この場合、ストック状態では、円筒状リングRIおよびリング状突起SRのうちの突出長の長い方が隣接する中間体ME1の表面に当接することにより、互いに隣接する中間体ME1,ME1の相互間に隙間が形成される。
【0022】
次いで、図5に示すように、スパッタリング法またはスピンコート法によって、中間体ME1の一方の面上に複数の機能層からなる層FLを形成する(機能層形成工程)。この場合、スパッタリング法によって形成される機能層(例えば、反射層や相変化材料で形成される記録層)は、内周マスクおよび外周マスクを使用して、記録エリアRA内に形成される。なお、より小径の内周マスクを使用して、記録エリアRAよりも内周側に機能層をスパッタリング法によって形成することもできる。一方、スピンコート法によって形成される機能層(保護層など)は、図6に示すように、ノズルNZから樹脂Rを円筒状リングRIの外面近傍に直接滴下し、その後に、中間体ME1を回転させることによって樹脂Rを中間体ME1の外縁部まで引き伸ばして(延伸して)、硬化させることによって形成される。この場合、円筒状リングRIの外径が直径約10mm以下に設定されているため、円盤状部材DIを使用することなく中間体ME1の中心に近い位置に樹脂Rを滴下することができる。しかも、円筒状リングRIによって、滴下した樹脂Rの仮中心孔TH内への漏れ出しが阻止されつつ必要量の樹脂Rを滴下することができる。このように、必要量の樹脂Rを中心に近い位置に滴下することにより、機能層は、樹脂Rによる塗膜の膜厚分布がスピンコート法によってほぼ均一に形成される。また、樹脂Rが塗布された中間体ME1を次の工程(硬化処理)の実施場所まで搬送する際には、図2に示す機械式チャック装置41を使用して中間体ME1を保持して搬送する。
【0023】
この場合、機械式チャック装置41は、一例として、図2に示すように、アクチュエータ42と、アクチュエータ42の下面から下方に延出する3本のチャック43,43,43とを備えている。この場合、各チャック43,43,43は、同一円周上に等間隔で配置されると共に、径方向に沿って回動可能に各上端側がアクチュエータ42にそれぞれ取り付けられている。アクチュエータ42は、その上端を支点として各チャック43,43,43を回動させることにより、図7に示すように、各チャック43,43,43を、仮中心孔THの孔径よりも小径になる縮径状態(同図中のA)と、仮中心孔THの孔径よりも大径になる拡径状態(同図中のB)との間を移動させる機能を備えている。
【0024】
次いで、この機械式チャック装置41の動作を説明する。この機械式チャック装置41では、まず、図2に示すように、縮径状態で各チャック43,43,43が仮中心孔TH内に挿入される。次いで、アクチュエータ42によって各チャック43,43,43が拡径状態に向けて回動される。この際に、各チャック43,43,43は、仮中心孔THの内面に当接した時点(図7におけるCの位置)で外方への移動が規制されるが、その後も、アクチュエータ42から外方への駆動力が付与され続けるため、仮中心孔THの内面をそれぞれ押圧し続ける。したがって、機械式チャック装置41は、各チャック43,43,43の表面と仮中心孔THの内面との間に生じる摩擦力によって中間体ME1を落下させることなく搬送可能に保持する。このため、機械式チャック装置41や中間体ME1に振動等の外力が加わったとしても機械式チャック装置41によって中間体ME1が確実に保持され続けるようにするためには、各チャック43,43,43の表面と仮中心孔THの内面との接触面積を大きくするのが好ましい。この点に関して、この中間体ME1では、仮中心孔THの孔径と円筒状リングRIの内径とが同一に設定されているため、各チャック43,43,43は、仮中心孔THの内面のみならず、円筒状リングRIの内面にも接触する。したがって、各チャック43,43,43の表面と中間体ME1との間に生じる摩擦力が大きいため、機械式チャック装置41や中間体ME1に振動等の外力が加わったとしても、中間体ME1は、機械式チャック装置41によって、より確実に保持され続ける。一方、中間体ME1の保持を解除する際には、この機械式チャック装置41では、アクチュエータ42が各チャック43,43,43を拡径状態から縮径状態に回動させる。これにより、各チャック43,43,43による中間体ME1の保持が解除される。
【0025】
次いで、プレス加工によって、中間体ME1およびその一方の面上に形成されえた層FLにおける中心部(中間体ME1の中心軸を中心とした直径約15mmの範囲)を打ち抜く(中心孔形成工程)。これにより、円筒状リングRIおよび仮中心孔THが除去されるのと同時に装着用中心孔MHが新たに形成されるため、図1に示す光記録媒体1が製造される。
【0026】
このように、このディスク状基板DPの中間体ME1によれば、装着用中心孔MHよりも小径の仮中心孔THを中心部に形成したことにより、円盤状部材DIを使用することなく中間体ME1の中心に近い位置に樹脂Rを滴下することができる結果、樹脂Rによる塗膜をスピンコート法によってほぼ均一な膜厚に形成することができる。また、この仮中心孔THを利用して、従来、一般的に使用されている機械式チャック装置41によって中間体ME1を確実に保持することができる。また、その外径が装着用中心孔MHよりも小径で、かつその内径が仮中心孔THの孔径以上の円筒状リングRIを、機能層FLが形成される表面に、中心軸を仮中心孔THの中心に等しくして突設したことにより、円筒状リングRIの外面に沿って樹脂Rを滴下することで、装着用中心孔MHの孔径よりも中間体ME1の中心に近い位置において、仮中心孔TH内に漏れ出させることなく必要量の樹脂Rを滴下することができる。したがって、スピンコート法によって形成された樹脂Rの塗膜の膜厚分布をより均一化することができる。さらに、円筒状リングRIの内径を仮中心孔THの孔径と同一に設定したことにより、仮中心孔THの内面のみならず、円筒状リングRIの内面にも各チャック43,43,43を接触させることができる。したがって、各チャック43,43,43の表面と中間体ME1との間に生じる摩擦力を大きくすることができる結果、機械式チャック装置41や中間体ME1に振動等に起因して一層大きな外力が加わった場合であっても、機械式チャック装置41による中間体ME1の保持を安定して維持し続けることができる。
【0027】
なお、本発明は、上記した発明の実施の形態に限らず、適宜変更が可能である。例えば、本発明の実施の形態では、中間体ME1側から反射層、記録層、保護層等の機能層を順次形成して光記録媒体を製造する例を挙げて説明したが、中間体ME1側から記録層、反射層、保護層等の機能層を順次形成して光記録媒体を製造することもできる。また、上記したスピンコート法によって形成される機能層としては、保護層のみに限らず、例えば、色素によって形成される記録層も該当する。また、円筒状リングRIの内径を仮中心孔THの孔径と同一に設定した例を挙げて説明したが、図8に示すように、各チャック43,43,43の表面と仮中心孔THの内面との間に生じる摩擦力で十分に中間体ME2を保持できる限り、円筒状リングRIの内径を仮中心孔THの孔径よりも大径に形成することができる。また、上記実施の形態では、円筒状リングRIを設けた例について説明したが、仮中心孔THのみを設ける構成を採用することができる。ただし、仮中心孔THへの樹脂Rの漏れ出しを阻止しつつ必要量の樹脂Rを中間体ME1の中心により近い位置に滴下するためには、円筒状リングRIを設けるのが好ましい。
【0028】
【発明の効果】
以上のように、本発明に係る光記録媒体用中間体によれば、光記録媒体に形成される装着用中心孔よりも小径の仮中心孔を中心部に形成したことにより、スピンコート法を行う際に、円盤状部材を使用することなく光記録媒体用中間体の中心に近い位置に樹脂を滴下することができる結果、樹脂による塗膜の膜厚をほぼ均一化することができる。したがって、円盤状部材を不要とすることができるため、円盤状部材についてのクリーニング等の管理を不要にできる結果、円盤状部材の製造費および管理費を削減することができる。また、この仮中心孔を利用して、従来から一般的に使用されている機械式チャック装置で光記録媒体用中間体を保持することができる。このため、光記録媒体用中間体を搬送するための新たな装置の導入を回避することができる結果、設備投資に関するコストを削減することができる。
【0029】
この場合、仮中心孔の内径を直径2mm以上、好ましくは直径3mm以上に設定したことにより、光記録媒体用中間体の搬送に使用する機械式チャック装置におけるチャックの板厚や、光記録媒体用中間体のストックに使用されるスタッカーにおけるスタックポールの直径を、光記録媒体用中間体を保持するのに必要とされる最低限の強度を確保できる寸法に設定することができる。
【0030】
また、外径が装着用中心孔よりも小径であって内径が仮中心孔の孔径以上の円筒状リングを、その中心軸が仮中心孔の中心と等しくなるように機能層の形成面に突設したことにより、円筒状リングの外面に沿って樹脂を滴下することができる。したがって、装着用中心孔の孔径よりも光記録媒体用中間体の中心に近い位置において、必要量の樹脂を仮中心孔内に漏れ出させることなく滴下することができる。この結果、スピンコート法によって形成された樹脂の塗膜の膜厚分布をより均一化することができる。
【0031】
また、円筒状リングの外径を直径10mm以下に設定したことにより、スピンコート法によって樹脂を塗布する際に、例えば、光記録媒体用中間体における記録エリア内の樹脂の膜厚のバラツキを約5μm以内に抑えて樹脂をほぼ均一に塗布することができる。さらに、直径7mm以下に設定することにより、例えば、樹脂の膜厚のバラツキを約3μm以内に抑えて樹脂をより均一に塗布することができる。
【0032】
また、円筒状リングの機能層が形成される表面からの突出長を0.5mm以上、好ましくは1.0mm以上に設定したことにより、スピンコート法を実施する際に、必要量の樹脂を滴下でき、しかも滴下した樹脂の仮中心孔内への侵入を防止することができる結果、樹脂の膜厚のバラツキをより低減して均一に塗布することができる。
【0033】
さらに、円筒状リングの内径を仮中心孔の孔径と同一に設定したことにより、仮中心孔の内面のみならず、円筒状リングの内面にも機械式チャック装置のチャックを接触させることができる。したがって、チャックの表面と光記録媒体用中間体との間に生じる摩擦力を大きくすることができる結果、機械式チャック装置による光記録媒体用中間体の保持を安定させることができる。
【0034】
また、本発明に係る光記録媒体の製造方法によれば、上記したいずれかの光記録媒体用中間体を樹脂成型によって作製する中間体作製工程と、作製された光記録媒体用中間体の表面に機能層を形成する機能層形成工程と、すべての機能層が形成された光記録媒体用中間体に装着用中心孔を形成する中心孔形成工程とを実施して光記録媒体を製造することにより、スピンコート法を行う際に、円盤状部材を使用することなく光記録媒体用中間体の中心に近い位置に樹脂を滴下することができるため、樹脂による塗膜の膜厚をほぼ均一化することができる。したがって、円盤状部材を不要にできるため、円盤状部材についてのクリーニング等の管理を不要にできる結果、円盤状部材の製造費および管理費を削減することができる。また、この仮中心孔を利用して、従来から一般的に使用されている機械式チャック装置で光記録媒体用中間体を保持することができる。このため、光記録媒体用中間体を搬送するための新たな装置の導入を回避することができる結果、設備投資に関するコストを削減することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態に係る中間体ME1を使用して製造した光記録媒体1の構成を示す側面断面図である。
【図2】機械式チャック装置41を使用した中間体ME1の搬送を説明するための斜視図である。
【図3】スタッカー51を使用した中間体ME1のストック方法を説明するための斜視図である。
【図4】本発明の実施の形態に係る中間体ME1の側面断面図である。
【図5】図4に示す中間体ME1上に層FLを形成した状態の側面断面図である。
【図6】図4に示す中間体ME1上に樹脂Rを滴下した状態の側面断面図である。
【図7】機械式チャック装置41の保持動作を説明するための説明図である。
【図8】本発明の実施の形態に係る他の中間体ME2の側面断面図である。
【図9】載置した円盤状部材DI上に樹脂Rを滴下したディスク状基板DPの側面断面図である。
【図10】図9に示すディスク状基板DP上に樹脂Rの塗膜をスピンコート法によって形成した状態のディスク状基板DPの側面断面図である。
【図11】ディスク状基板DPをスタッカー51にストックした状態の断面図である。
【図12】本発明者が開発した他の中間体MEを使用して光記録媒体1を製造する方法を説明するための説明図であって、中央部に樹脂Rを塗布した状態の中間体MEの側面断面図である。
【図13】図12に示す中間体ME上にスピンコート法によって樹脂Rを塗布した状態の中間体MEの側面断面図である。
【図14】中間体MEをスタッカー61にストックした状態の斜視図である。
【図15】スタッカー61に積層された中間体MEが振動等によって崩れた状態を示す側面断面図である。
【符号の説明】
1 光記録媒体
FL 層
ME1,ME2 中間体
MH 装着用中心孔
RI 円筒状リング
TH 仮中心孔
Claims (7)
- 中心部に装着用中心孔が形成されると共に表面に1種類以上の機能層が形成されて情報の記録および再生の少なくとも一方を実行可能な光記録媒体を製造するために先立って製造される光記録媒体用中間体であって、
前記装着用中心孔よりも小径の仮中心孔が、その中心部に形成されている光記録媒体用中間体。 - 前記仮中心孔は、その内径が直径2mm以上に形成されている請求項1記載の光記録媒体用中間体。
- その外径が前記装着用中心孔よりも小径であってその内径が前記仮中心孔の孔径以上で、かつその中心軸が当該仮中心孔の中心と等しい円筒状リングが、前記機能層の形成面に突設されている請求項1または2記載の光記録媒体用中間体。
- 前記円筒状リングは、前記外径が直径10mm以下に形成されている請求項3記載の光記録媒体用中間体。
- 前記円筒状リングは、前記機能層の前記形成面からの突出長が0.5mm以上に形成されている請求項3または4記載の光記録媒体用中間体。
- 前記円筒状リングは、前記内径が前記仮中心孔の前記孔径と等しく形成されている請求項3から5のいずれかに記載の光記録媒体用中間体。
- 中心部に装着用中心孔が形成されると共に表面に1種類以上の機能層が形成されて情報の記録および再生の少なくとも一方を実行可能な光記録媒体を製造する製造方法であって、
請求項1から6のいずれかに記載の光記録媒体用中間体を樹脂成型によって作製する中間体作製工程と、
作製された前記光記録媒体用中間体の表面に前記機能層を形成する機能層形成工程と、
前記1種類以上の機能層が形成された前記光記録媒体用中間体に前記装着用中心孔を形成する中心孔形成工程とを少なくとも含む光記録媒体の製造方法。
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