JP2004036807A - 変速機の油圧制御装置 - Google Patents

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Mitsugi Yamashita
山下 貢
Sadai Tsuchiya
土屋 査大
Akira Suzuki
鈴木 明
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Abstract

【課題】コントロールバルブへの信号圧印加フェール時の係合要素のタイアップを防ぐ。
【解決手段】変速用係合要素を油圧サーボC1〜C3により制御する変速機の油圧制御装置は、それぞれの油圧サーボに対応し、個々に印加される信号圧に応じて油圧サーボへの供給油圧を制御するコントロールバルブ1〜3を備える。タイアップする関係にある2つの係合要素の一方の油圧サーボC2に対するコントロールバルブ2に、それに印加される信号圧に対向させて、他方の油圧サーボC1に供給される供給油圧を印加するキャンセル油路88を設けた。これにより、油圧サーボC1への油圧供給時は、油圧サーボC2への油圧供給がなくなり、これら2つの油圧サーボで操作されるクラッチのタイアップが回避される。
【選択図】    図3

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、変速機の油圧制御装置に関し、特に、変速機の係合要素を制御する油圧サーボへの油圧供給の制御技術に関する。
【0002】
【従来の技術】
車両用の変速機において、変速のために動力伝達経路の切換えを行なう係合要素は、一般に油圧サーボにより係脱制御される。この油圧サーボの制御を主たる目的として、変速機には電子制御される油圧制御装置が配設される。油圧制御装置における変速制御回路は、制御性の向上のために、近時、複数配置される各油圧サーボに対応させてライン圧を基圧とする油圧供給を制御する専用のコントロールバルブを備えるものとされ、各コントロールバルブは、それらに個々に対応する電子制御のリニアソレノイドバルブからの信号圧の印加に従って制御される。
【0003】
一方、係合要素の油圧サーボの集約配置のために、共通のシリンダに2つのピストンを入れ子状に配置し、シリンダとそれに対して内側の第1のピストンの間に第1の油圧サーボの油室を画定し、第1のピストンと第2のピストンの間に第2の油圧サーボの油室を画定する構成の多重配置の油圧サーボが、米国特許第4741422号明細書に開示されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上記一般的な従来技術のように、各油圧サーボを専用のコントロールバルブで制御する構成では、リニアソレノイドバルブに印加される電子信号のフェールやリニアソレノイドバルブ自体のスティックフェールにより、複数のリニアソレノイドバルブが並行してソレノイド圧出力状態になると、それらにより制御されるコントロールバルブを介する複数の油圧サーボへの並列的な油圧供給が生じる。そして、これら油圧サーボに対応する摩擦材が、同時係合により変速機構にタイアップを生じさせるものである場合、これを回避すべく、各コントロールバルブより下流の供給油路間に同時供給を妨げる各種のフェールセーフバルブを配設する構成が採られる。しかしながら、こうした構成では、油圧回路の複雑化が避けられない。
【0005】
また、前記米国特許第4741422号明細書に開示のような多重配置の油圧サーボ構成は、外側の油圧サーボに供給する油圧が内側の油圧サーボのピストンにも作用するため、両油圧サーボを作動させて係合要素の掴み替えを行なう場合の油圧制御が複雑になる。そこで、両油圧サーボのピストンの受圧面積を実質上等しく設定し、2つの油圧サーボに同時に油圧を供給することで内側の油圧サーボのピストンに作用する油圧をバランスさせて、内側の油圧サーボの油圧を排出させたと同様の作動を生じさせる方法が想起されるが、こうした方法は、2つの油圧サーボへの適用は可能であるが、3つの油圧サーボにおいてこの構成を採る場合に問題が生じる。この場合、各油圧サーボを順番に作動させることは可能であるが、飛び変速のために3つの油圧サーボの中間に挟まれる油圧サーボの作動を飛ばして、内側の油圧サーボへの油圧供給後に、外側の油圧サーボに油圧を供給したとき、これらの油圧サーボの作動により係合させる摩擦材の同時係合が生じてしまうことになるため、内外の油圧サーボの個別作動が不可能となる。
【0006】
本発明は、こうした従来技術の問題点に対処すべく案出されたものであり、上記のような構成からなる油圧制御装置において、そのコントロールバルブに信号圧を印加する回路のフェール時にも係合要素のタイアップを確実に防ぐことができる単純な回路を実現することを第1の目的とする。次に、本発明は、各係合要素を制御する油圧サーボを多重配置とする変速機において、簡単な回路構成で飛び変速を可能とすることを第2の目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記第1の目的を達成するため、本発明は、変速のための係合要素を油圧サーボにより制御する変速機であって、それぞれの油圧サーボに対応して設けられ、個々に印加される信号圧に応じて油圧サーボへの供給油圧を制御するコントロールバルブを備える変速機の油圧制御装置において、タイアップする関係にある2つの係合要素の一方の油圧サーボに対するコントロールバルブに、それに印加される信号圧に対向させて、他方の油圧サーボに供給される供給油圧を印加するキャンセル油路を設けたことを特徴とする。
【0008】
また、上記の構成において、前記コントロールバルブは、信号圧が印加される受圧部に対向する第1及び第2の受圧部を備え、第1の受圧部は、前記キャンセル油路により他方の油圧サーボに供給される供給油圧を印加される受圧部とされ、第2の受圧部は、前記一方の油圧サーボに供給される供給油圧を印加される受圧部とされ、第1の受圧部と第2の受圧部の面積比が、前記他方の油圧サーボにより制御される係合要素の単位油圧当りのトルク容量と前記一方の油圧サーボにより制御される係合要素の単位油圧当りのトルク容量の比と等しく設定された構成を採るのが有効である。
【0009】
上記の構成は、前記油圧サーボが、1つのシリンダに第1〜第3のピストンを入れ子状に嵌め合わせて、シリンダと第1のピストンとの間に第1の油圧サーボの油室、第1のピストンと第2のピストンとの間に第2の油圧サーボの油室、第2のピストンと第3のピストンとの間に第3の油圧サーボの油室を画定する多重配置の油圧サーボとされ、各油圧サーボは、第1の油圧サーボの油室から第3の油圧サーボの油室へ順次油圧供給を積み重ね、それとは逆順に油圧解放を積み重ねる繰返しにより、連続する変速段を順番に達成する配列とされ、前記一方及び他方の油圧サーボは、第1及び第3の油圧サーボとされた構成に適用可能である。
【0010】
この場合の前記キャンセル油路は、前記第2の目的も併せ達成するため、第1の油圧サーボに対するコントロールバルブに、それに印加される信号圧に対向させて、第3の油圧サーボに供給される供給油圧を印加するキャンセル油路とされるのが望ましい。上記の各構成における前記信号圧は、電気的に制御されるソレノイドバルブからの出力圧である。
【0011】
【発明の作用及び効果】
上記請求項1記載の構成では、キャンセル油路を介して、他方の油圧サーボを制御するコントロールバルブの信号圧に対向する油圧が一方の油圧サーボへの供給油路から印加されるため、信号圧の印加によるコントロールバルブの制御下での対応する油圧サーボへの油圧供給が阻止される。したがって、この構成によれば、同時に油圧供給されるべきでない2つの油圧サーボへの同時油圧供給が回避されるため、これら油圧サーボにより作動する係合要素のタイアップを防ぐことができる。
【0012】
次に、請求項2記載の構成では、解放側の油圧サーボに対応するコントロールバルブに信号圧が印加された状態においても、第1の受圧部と第2の受圧部の面積比の関係から、係合側となる他方の係合要素の油圧サーボの油圧の上昇に応じて、解放側となる一方の係合要素の油圧サーボの油圧が下降制御され、変速中も係合側と解放側双方の係合要素のトルク容量の和が常に一定に保たれる。このため、コントロールバルブの受圧面積比の設定のみにより、通常の順次の変速と同様の変速を掴み替えを要する変速の際にも実現することができる。したがって、この特質を利用した飛び変速が可能となる。
【0013】
次に、請求項3記載の構成では、多重配置により3つの油圧サーボをコンパクト化し、しかも各油圧サーボをそれらの並び順に個々に作動させるために単純な油圧の重畳供給を行なうようにした油圧サーボにおいて、中間の油圧サーボの作動を飛ばした作動も、格別の信号圧制御を要せずに可能となるため、単純な油圧制御による飛び変速が可能となる。また、この飛び変速の際に解放側となる係合要素の油圧サーボは、係合側となる係合要素の油圧サーボの油圧に応じて制御されるため、タイアップが防止されると共に、アンダラップによるエンジンの吹き上がりも防止される。
【0014】
また、請求項4記載の構成では、第1の油圧サーボと第3の油圧サーボについて、油圧の同時供給時には、常に第3の油圧サーボへの油圧供給が優先することになるため、飛び変速に際して、第1の油圧サーボへの単独の油圧供給時には、第1の油圧サーボの対応する係合要素が係合し、これに加えて第3の油圧サーボへの油圧供給を行なったときに、第3の油圧サーボの対応する係合要素が係合する間係になるため、全ての飛び変速を支障なく達成できる。
【0015】
更に、請求項5記載の構成では、コントロールバルブがフェールセーフバルブとしての機能も達成するため、コントロールバルブより下流の供給油路間に同時供給を妨げるフェールセーフバルブを配設することによる油圧回路の複雑化が避けられる。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、図面に沿い、本発明の実施形態を説明する。図1は本発明の適用に係る変速機のギヤトレーンの一例をスケルトンで示す。このギヤトレーンは、手動変速機を主体として構成され、複数の変速要素G1〜G8を有し、これら変速要素を通る並列な動力伝達流れの選択により複数の変速段を達成する主変速機(実施形態の説明において、M/T部という)M/Tと、プラネタリギヤセットPを変速要素とする副変速機(同じく、プラネタリ部という)S/Tと、プラネタリ部S/Tの異なる変速要素をM/T部の異なる変速要素に連結する内外2重の軸Y,Zを備える。
【0017】
この形態の場合、M/T部は、その変速要素として複数の常時噛合式の歯車対G1〜G8を包含し、変速要素を通る動力伝達流れを選択する2つのドッグクラッチH1,H2を有する。このM/T部は、2重の内軸Y及び外軸Zを入力軸とし、それらの軸上の各ドライブギヤG3,G7,G1,G5から出力軸O上の各ドリブンギヤG4,G8,G2,G6に平行軸で動力を伝達する構成とされている。外軸Z上の第1速及び第3速用のドライブギヤG1,G5とリバース用のドライブギヤGrは、外軸Zに一体回転可能に連結されている。これら第1速及び第3速用のドライブギヤG1,G5と対をなすそれぞれのドリブンギヤG2,G6は、出力軸O上に回転自在に支持され、それらの間に配置されたドッグクラッチH1の軸方向移動により出力軸Oに選択的に連結可能とされている。また、リバース用のドライブギヤGrとドッグクラッチH1の外周歯で構成されるリバース用のドリブンギヤは、カウンタギヤGcを介して相互に噛合い、ドッグクラッチH1の中立位置においてリバースギヤ列を通る動力伝達を可能としている。内軸Y上の第2速及び第4速用のドライブギヤG3,G7は内軸Yに回転自在に支持され、それらの間に配置されたドッグクラッチH2の軸方向移動により内軸Yに選択的に連結可能とされている。これら第2速及び第4速用のドライブギヤG3,G7と対をなすそれぞれのドリブンギヤG4,G8は、それぞれ出力軸Oに一体回転可能に連結されている。
【0018】
プラネタリ部S/Tは、図示しないエンジンE/GのフライホイールダンパF/Wに連結する入力軸Xと、入力軸Xと同軸配置の内外二重軸でM/T部入力軸としての内軸Y及び外軸Zに連結する出力軸を備える。プラネタリ部S/Tは、ダブルピニオン構成とされている。すなわち、プラネタリギヤセットPのサンギヤSは、内軸Yに連結され、この内軸Yがクラッチ(C−1)を介して入力軸Xに連結され、キャリアCは、外軸Zに連結されると共に、クラッチ(C−2)を介して入力軸Xに連結されている。リングギヤRは、クラッチ(C−3)を介して入力軸Xに連結されている。
【0019】
こうした構成からなる変速機は、図2にその作動を図表化して示す(図において○印は油圧の供給と押付力の作用(クラッチ係合)を表し、括弧付の○印はクラッチ係合に関与しない油圧供給状態を表す)ようなクラッチ作動で、1〜4速の合計7速の変速段を達成する。
【0020】
図1に戻って、M/T部の第1歯車対G1,G2をドッグクラッチH1で出力軸Oに連結し、プラネタリ部S/Tのクラッチ(C−2)を係合することで第1速を達成する。この状態で、エンジンE/Gの回転がプラネタリ部S/Tのクラッチ(C−2)経由でキャリアCを通して外軸ZからM/T部のドライブギヤG1に入力され、第1歯車対G1,G2で減速され、ドッグクラッチH1を経て出力軸Oに伝達される。このときの変速比は、最小径のドライブギヤG1と最大径のドリブンギヤG2のギヤ比に従う第1速の変速比となる。
【0021】
次に、第1.5速は、M/T部の第1歯車対G1,G2をドッグクラッチH1で出力軸Oに連結すると共に、第2歯車対G3,G4をドッグクラッチH2で出力軸Oに連結し、プラネタリ部S/Tのクラッチ(C−3)を係合することで達成される。この状態が前変速段を第1速とする1→1.5変速で生じる場合、両ドッグクラッチH1,H2の係合により第1歯車対G1,G2と第2歯車対G3,G4が共に出力軸Oに連結された状態となることで、第1歯車対G1,G2のドライブギヤG1と第2歯車対G3,G4のドライブギヤG3に連結する外軸Zと内軸Yは、第1歯車対G1,G2のギヤ比と第2歯車対G3,G4のギヤ比となり、内軸Yに連結するプラネアリギヤセットPのサンギヤSと外軸Zに連結するキャリアCの回転関係が定まる。この状態でのサンギヤSの回転は、エンジン回転と等しい回転であるのに対して、キャリアCの回転はそれより減速された回転となり、リングギヤRはこれらの回転に規制されて空転している。この状態でクラッチ(C−2)を解放し、クラッチ(C−3)の係合に移行して、空転中のリングギヤRにエンジンE/G回転が入力されることで、予め生成された前記中間のギヤ比に従うリングギヤRからキャリアCへのトルク伝達と、リングギヤRからキャリアC経由でサンギヤSへのトルク伝達が並列的に生じ、これらのトルクが外軸Zと内軸Y経由で両歯車対G1,G2,G3,G4を介して出力軸Oに伝達されて第1.5速の変速段が達成される。
【0022】
第2速は、M/T部の第2歯車対G3,G4をドッグクラッチH2で出力軸Oに連結し、プラネタリ部S/Tのクラッチ(C−1)を係合することで達成される。この状態で、エンジンE/Gの回転がクラッチ(C−1)経由で内軸Yに入力され、その回転がドッグクラッチH2を経て第2歯車対G3,G4に伝達され、そこで第2歯車対G3,G4のギヤ比で減速されて出力軸Oに伝達される。
【0023】
第2.5速は、M/T部の第2歯車対G3,G4をドッグクラッチH2で出力軸Oに連結すると共に、第3歯車対G5,G6をドッグクラッチH1で出力軸Oに連結し、プラネタリ部S/Tのクラッチ(C−3)を係合することで達成される。この状態が前変速段を第2速とする2→2.5変速で生じる場合、両ドッグクラッチH1,H2の係合により第2歯車対G3,G4と第3歯車対G5,G6が共に出力軸Oに連結された状態となることで、第2歯車対G3,G4のドライブギヤG3と第3歯車対G5,G6のドライブギヤG5に連結する内軸Yと外軸Zは、第2歯車対G3,G4のギヤ比と第3歯車対G5,G6のギヤ比となり、内軸Yに連結するプラネアリギヤセットPのサンギヤSと外軸Zに連結するキャリアCの回転関係が定まる。この状態でのキャリアCの回転は、エンジンE/G回転と等しい回転であるのに対して、サンギヤSの回転はそれより増速された回転となり、リングギヤRはこれらの回転に規制されて空転している。この状態でクラッチ(C−1)を解放し、クラッチ(C−3)の係合に移行して、空転中のリングギヤRにエンジンE/G回転が入力されることで、予め生成された前記中間のギヤ比に従うリングギヤRからキャリアCへのトルク伝達と、リングギヤRからキャリアC経由でサンギヤSへのトルク伝達が並列的に生じ、これらのトルクが内軸Yと外軸Z経由で両歯車対G3,G4,G5,G6を介して出力軸Oに伝達されて第2.5速の変速段が達成される。
【0024】
第3速は、M/T部の第3歯車対G5,G6をドッグクラッチH1で出力軸Oに連結し、プラネタリ部S/Tのクラッチ(C−2)を係合することで達成される。この状態で、エンジンE/Gの回転がクラッチ(C−2)及びキャリアC経由で外軸Zに入力され、その回転が第3歯車対G5,G6に伝達され、そこで第3歯車対G5,G6のギヤ比で増速され、ドッグクラッチH1を経て出力軸Oに伝達される。
【0025】
第3.5速は、M/T部の第3歯車対G5,G6をドッグクラッチH1で出力軸Oに連結すると共に、第4歯車対G7,G8をドッグクラッチH2で出力軸Oに連結し、プラネタリ部S/Tのクラッチ(C−3)を係合することで達成される。この状態が前変速段を第3速とする3→3.5変速で生じる場合、両ドッグクラッチH1,H2の係合により第3歯車対G5,G6と第4歯車対G7,G8が共に出力軸Oに連結された状態となることで、第3歯車対G5,G6のドライブギヤG5と第4歯車対G7,G8のドライブギヤG7に連結する外軸Zと内軸Yは、第3歯車対G5,G6のギヤ比と第4歯車対G7,G8のギヤ比となり、内軸Yに連結するプラネアリギヤセットPのサンギヤSと外軸Zに連結するキャリアCの回転関係が定まる。この状態でのキャリアCの回転は、エンジンE/G回転と等しい回転であるのに対して、サンギヤSの回転はそれより増速された回転となり、リングギヤRはこれらの回転に規制されて空転している。この状態でクラッチ(C−2)を解放し、クラッチ(C−3)の係合に移行して、空転中のリングギヤRにエンジンE/G回転が入力されることで、予め生成された前記中間のギヤ比に従うリングギヤRからキャリアCへのトルク伝達と、リングギヤRからキャリアC経由でサンギヤSへのトルク伝達が並列的に生じ、これらのトルクが内軸Yと外軸Z経由で両歯車対G5,G6,G7,G8を介して出力軸Oに伝達されて第3.5速の変速段が達成される。
【0026】
第4速は、M/T部の第4歯車対G7,G8をドッグクラッチH2で出力軸Oに連結し、プラネタリ部S/Tのクラッチ(C−1)を係合することで達成される。この状態で、エンジンE/Gの回転がクラッチ(C−1)経由で内軸Yに入力され、その回転がドッグクラッチH2を経て第4歯車対G7,G8に伝達され、そこで第4歯車対G7,G8のギヤ比で増速されて出力軸Oに伝達される。
【0027】
なお、図2の図表には示されていないが、リバースは、M/T部のドッグクラッチH1を中立として、リバースギヤ列Gr,Gcを出力軸Oに連結し、プラネタリ部S/Tのクラッチ(C−2)を係合することで達成される。この状態で、エンジンE/Gの回転がクラッチ(C−2)及びキャリアC経由で外軸Zに入力され、その回転がリバースギヤ列で減速且つカウンタギヤGc経由で前記各変速段とは逆転されて出力軸Oに伝達される。
【0028】
以上の各変速段達成の経緯から分かるように、この変速機では、各整数の変速段がプラネタリギヤセットPの変速要素を変速に関与しない単なる動力伝達部材として達成されるのに対して、各端数付きの変速段は、プラネタリギヤセットPの変速要素を機能させて達成される。しかも、これら各端数付きの変速段は、それを挟む整数の変速段の達成時に連結される2つの歯車対の同時連結により達成される。そして、端数付きの変速段は、M/T部の第1〜第4歯車対により本来達成可能な整数変速段に対する中間段としてのギヤ比で、隣り合う整数変速段を達成する歯車対による同時動力伝達により達成されるもので、隣り合う整数の変速段に対する経過段としても機能するものである。したがって、この変速機では、従来形式の常時噛合式の4速変速機に対して、歯車対を増やさずに各変速段の中間に、ギヤ比ステップを密にする形態で3速の変速段が付加されている。
【0029】
しかも、この変速機では、シフト中も前変速段を達成していた何れかの歯車対による動力伝達状態が継続することで、変速の間にニュートラル期間が存在しないため、トルク抜けによる加速度0の期間が生じず、速度増加も連続した滑らかなものとなる。
【0030】
次に示す図3は、こうした構成からなる変速機を制御する油圧制御装置の3つのクラッチの制御部分の回路構成を示す。この回路は、ライン圧(オイルポンプの吐出圧を図示しないプライマリモジュレータバルブにより車両の各時点での走行負荷に応じて調圧した油圧、すなわち、係合要素の係合維持に十分対応可能な油圧)PL とソレノイドモジュレータ圧(この油圧は、ライン圧を基圧として、図示しないソレノイドモジュレータバルブによりリニアソレノイドバルブの調圧ゲインに合わせて減圧された油圧であり、以下、実施形態の説明においてモジュレータ圧という。)PM を基圧として、3つのクラッチの油圧サーボC1〜C3を制御する回路を構成する。この回路には、それぞれの油圧サーボC1,C2,C3に対応して設けられ、個々に印加される信号圧に応じて各油圧サーボへの供給油圧を制御するコントロールバルブ1,2,3が設けられており、これら各コントロールバルブ1,2,3に対応して、それらを制御する専用のリニアソレノイドバルブ4,5,6が設けられている。
【0031】
各コントロールバルブ1,2,3は、3ポート形スプール弁で構成されている。弁体を構成するスプールは、両端にランドを有し、ランドの一端に更に拡径部を備える。この弁体が摺動自在に嵌挿された弁孔には、アウトポートを挟んでインポートとドレーンポートが開口し、拡径部の外端側に当る孔部には、信号圧ポートが開口している。ランドの他端側に当る孔部には、フィードバックポートが開口し、リターンスプリングが配設されている。これら各コントロールバルブ1,2,3は、インポートをライン圧油路80、アウトポートを各油圧サーボへの供給油路81,82,83、ドレーンポートをドレーン油路87、信号圧ポートをソレノイド圧油路84,85,86、フィードバックポートを各供給油路81,82,83にそれぞれ接続されている。こうした配置と油路接続関係から各コントロールバルブ1,2,3は、スプリング負荷とフィドバック圧に抗してソレノイド圧を印加することで、スプール両端のランドによりアウトポートのインポートとドレーンポートへの連通度合を調整して、アウトポートの油圧を調圧する。
【0032】
各リニアソレノイドバルブ4,5,6は、3ポート形スプール弁で構成されている。弁体を構成するスプールは、両端にランドを有し、ランドの一端に更に縮径部を備える。この弁体が摺動自在に嵌挿された弁孔には、アウトポートを挟んでインポートとドレーンポートが開口し、縮径部とランドとの径差部に対応する孔部には、フィードバックポートが開口している。この弁の一端側には、スプールに対向させてリニアソレノイドが配設され、そのプランジャがランドの他端に当接し、縮径部の外端側に対応する孔部にはリターンスプリングが配設されている。これらリニアソレノイドバルブ4,5,6は、インポートをモジュレータ圧PM の油路、アウトポートをソレノイド圧油路84,85,86、ドレーンポートをドレーンEX油路、フィードバックポートをソレノイド圧油路84,85,86にそれぞれ接続されている。こうした配置と油路接続関係から各リニアソレノイドバルブ4,5,6は、スプリング負荷とフィドバック圧に抗してソレノイド負荷を印加することで、スプール両端のランドによりアウトポートのインポートとドレーンポートへの連通度合を調整して、アウトポートの油圧(ソレノイド圧)を調圧する。
【0033】
こうした構成からなる制御回路では、図示しない電子制御装置による各リニアソレノイドバルブ4,5,6のソレノイドに印加する信号電流を増加させ、プランジャを押出してスプールを変位させることで、ドレーンポートを絞りながらインポートを開放していく作動が生じ、それによりソレノイド圧が0からモジュレータ圧PM と等しくなる最大出力圧まで上昇する。そして、このソレノイド圧が印加される各コントロールバルブ1,2,3には、ドレーンポートを絞りながらインポートを開放していく作動が生じ、それにより供給圧が0からライン圧PL と等しくなる最大出力まで上昇する。こうした作動により各油圧サーボは、そのピストンのシリンダからの押出しにより係合要素を押圧して各クラッチの摩擦材を係合させる。
【0034】
次に示す図4〜図6は、本形態に特有の多重配置の油圧サーボの構成を模式化して示す。この配置は、先に変速機のギヤトレーン構成をスケルトンを参照して述べたように、3つのクラッチが軸方向に並べて隣接配置されることから、各クラッチ作動のための油圧サーボを集約させて、コンパクト化することを意図して採られる配置である。この配列における油圧サーボは、1つのシリンダ70に第1〜第3のピストン71〜73を入れ子状に嵌め合わせて、シリンダ70と第1のピストン72との間に第1の油圧サーボC2の油室、第1のピストン72と第2のピストン73との間に第2の油圧サーボC3の油室、第2のピストン73と第3のピストン71との間に第3の油圧サーボC1の油室を画定する多重配置の油圧サーボとされている。この多重配置の油圧サーボにおける各油圧サーボC1,C2,C3は、先の図2を参照して、クラッチ(C−2)用の第1の油圧サーボC2の油室からクラッチ(C−1)用の第3の油圧サーボC1の油室へ順次油圧供給を積み重ね、それとは逆順に油圧解放を積み重ねる繰返しにより、連続する変速段を順番に達成する配列とされている。したがって、この配列はクラッチの摩擦材の配列とは異なるものである。この油圧供給における図2に括弧付の○印で示す油圧供給は、係合要素の係合に直接関与しない油圧供給となる。
【0035】
図4〜図6を参照して、これらの図における黒矢印は油圧の印加と押圧力の作用状態を表し、白矢印は油圧の解放と押圧力の解放状態を表す。先ず図4を参照して、全クラッチの解放状態から、クラッチ(C−2)のサーボ油室に油圧を供給すると、ピストン72は、その受圧面としての正面側(図上で右側面、他のピストンについて同じ)に油圧が作用し、背面側(図上で左側面、他のピストンについて同じ)には油圧が作用しないため、図示しないリターンスプリングの荷重に抗して油圧でシリンダ70から押出され、クラッチ(C−2)の摩擦材に押付力を作用させ、クラッチ(C−2)だけが係合する。この状態における変速段は、ギヤ対の選択により定まり、先の図2の係合図表を参照して、第1速又は第3速となる。
【0036】
次に、図5を参照して、上記の油圧供給状態を維持したまま、クラッチ(C−3)のサーボ油室に油圧を供給すると、上記ピストン72の場合と同様の作用で、ピストン73がシリンダ70から押し出され、クラッチ(C−3)の摩擦材に押付力が作用しクラッチ(C−3)が係合する。このとき、油圧はピストン73の正面側に印加されるとともに、ピストン72の背面側にも同様に印加される。この作用によりピストン72には、その正面と背面の両面に同様の油圧が印加されることになり、受圧面積が実質上同様であることで、ピストン72は受圧バランス状態となる。したがって、ピストン72は図示しないそのリターンスプリングの荷重負荷で押し戻され、この作用でクラッチ(C−2)は、先のコントロールバルブ2による制御に関わりなく解放される。この状態における変速段も、ギヤ対の選択により定まり、先の図2の係合図表を参照して、第1.5速又は第3.5速となる。
【0037】
更に、図6を参照して、上記の油圧供給状態を維持したまま、クラッチ(C−1)のサーボ油室に油圧を供給すると、ピストン71の正面側の受圧で、ピストン71がシリンダ70から押し出され、クラッチ(C−1)の摩擦材に押付力が作用し、クラッチ(C−1)が係合する。このとき、油圧はピストン71の正面側に印加されるとともに、ピストン73の背面側にも同様に印加される。この作用によりピストン73には、先のピストン72の場合と全く同様の理由で、正面と背面の両面の受圧バランスが成立し、ピストン73への油圧による荷重負荷は実質上解放された状態となる。したがって、ピストン73はそのリターンスプリングによる荷重負荷で押し戻され、この作用でクラッチ(C−3)は、コントロールバルブ2,3による制御に関わりなく解放される。この状態における変速段も、ギヤ対の選択により定まり、先の図2の係合図表を参照して、第2速又は第4速となる。
【0038】
こうした関係は、油圧を順次抜いていく場合についても同様である。上記3つの油圧サーボへの同時供給状態から、参照を図5に戻して、クラッチ(C−1)のサーボ油室の油圧のみ解放すると、正面側への油圧負荷が無くなったピストン71が、リターンスプリングの荷重負荷で押し戻され、クラッチ(C−1)の摩擦材の押付力が解放されて、クラッチC−1が解放される。このとき、クラッチ(C−3)のピストン73の正面と背面の受圧にアンバランスが生じるため、代わってピストン73がシリンダ70から押出され、クラッチ(C−3)の係合が生じる。この場合第1のピストン72は、先述の理由でそのままの戻り位置状態を維持する。こうしてこの状態における変速段も、ギヤ対の選択により定まり、先の図2の係合図表を参照して、第1.5速又は第3.5速となる。
【0039】
次に、上記2つの油圧サーボへの同時供給状態から、クラッチ(C−3)のサーボ油室の油圧を解放した場合も同様であり、図4に参照を戻して、ピストン73がリターンスプリングの荷重負荷で押し戻され、クラッチ(C−3)の摩擦材の押付力が解放されて、クラッチ(C−3)が解放される。このときも、先の場合と同様の理由から、クラッチ(C−2)のピストン72の受圧にアンバランスが生じるため、代わってクラッチ(C−2)の係合が生じる。こうしてこの状態における変速段も、ギヤ対の選択により定まり、先の図2の係合図表を参照して、第1速又は第3速となる。
【0040】
このように、本発明の適用に係るこの実施形態の多重油圧サーボでは、各ピストン72,73,71について次々と油圧の印加を追加し、又は逐次油圧の印加を解除していくことで、各クラッチの掴み替えが可能である。したがって、この特性を利用し、シリンダ70と各ピストン72,73,71により画定される各サーボ油室を、変速機が達成する変速段の順序と同順に並べることで、シフトアップ又はシフトダウンの際に、従来複雑な油圧制御を必要とした掴み替え変速を簡単な油圧制御で行なうことができる。このように、上記油圧サーボの多重配置と、それに合わせた油圧供給により、連続する変速(シフトアップ及びシフトダウン)については、常に単一の油圧サーボに対するコントロールバルブの制御で可能となる反面、飛び変速を想定した場合、第1の油圧サーボC2への油圧供給状態で中間の第2の油圧サーボC3に対する油圧供給なしで第3の油圧サーボC1へ油圧供給した場合、又は第1〜第3の全ての油圧サーボへの油圧供給状態で中間の第2の油圧サーボ73の油圧を排出した場合、第1のクラッチ(C−2)と第3のクラッチ(C−1)の同時係合状態が生じる。この同時係合は、先に例示のギヤトレーンの作動としてみた場合、従来の自動変速機のようにギヤロック等を生じる性質のものではないが、先に説明した経過段としての端数付変速段を経ない飛び変速では、従来の自動変速機のいわゆる係合要素の掴み換えに相当するクラッチ操作によりトルク抜けの防止が望ましく、これに備えて、両クラッチの同時係合は回避されなければならない。
【0041】
そこで、本発明の特徴に従い、図3に破線示すように、タイアップする関係にある2つの係合要素(C−2,C−1)の一方の油圧サーボ(本形態においてクラッチC−2の油圧サーボC2)に対するコントロールバルブ2に、それに印加される信号圧に対向させて、他方の油圧サーボ(本形態においてクラッチC−1の油圧サーボC1)に供給される供給油圧を印加するキャンセル油路88を設けている。具体的には、この油路は、油圧サーボC1への供給油路81とコントロールバルブ2の一方のランドと大径部間の段差部22に対応する弁孔部とを連通する油路とされている。
【0042】
このように、本形態では、キャンセル油路88は、第1の油圧サーボC2に対するコントロールバルブ2に、それに印加される信号圧(ソレノイド圧)に対向させて、第3の油圧サーボC1に供給される供給油圧を印加するキャンセル油路88とされているが、タイアップ防止のみの観点から見れば、供給圧のキャンセル信号圧としての印加は、油圧サーボC1に対するコントロールバルブ1に、それに印加される信号圧に対向させて、第1の油圧サーボC2に供給される供給油圧を印加する逆の関係であってもよい。しかしながら、この形態のギヤトレーンの場合、油圧サーボの配列順序の関係から、最外側の油圧サーボC1への油圧供給がなされた場合に、その供給を優先させることで、全ての飛び変速にも対応できる油路接続となる上記キャンセル油路構成を採っている。
【0043】
ところで、本形態では、コントロールバルブ2の受圧部は、次に述べるような面積関係に設定される。図7に拡大して示すコントロールバルブの力のバランスを考慮すると、図示のようにスプールの大径受圧部(図3における信号圧受圧部21)の面積をSSLC2、大径受圧部とランド部との径差部(同じくクラッチ(C−1)の供給圧受圧部22)の面積をSC1、ランド部(同じくフィードバック圧受圧部23)の面積をSC2、これら各部に印加される油圧をそれぞれ上記の順にPSLC2、PC1、PC2とし、スプリング力をFC2として、
SLC2・SSLC2=PC1・SC1+PC2・SC2+FC2
の関係が成立するので、この関係をPC2で表すと、
C2=(SSLC2/SC2)・PSLC2−(SC1/SC2)・PC1−FC2/SC2
・・・(1)
となる。
【0044】
次に、図8に示すクラッチ掴み替え時の信号圧とトルク容量の関係を参照して、クラッチ(C−1)のトルク容量をTC1、クラッチ(C−2)のトルク容量をTC2、このクラッチ(C−2)の油圧サーボにキャンセル油圧PC1が作用しない場合のトルク容量をTC2’とすると、
C2=TC2’−TC1 ・・・(2)
とすることで、TC1の増加に応じてTC2を減少させることができる。ここで、これらクラッチの単位油圧当りのトルク容量をそれぞれkTC1、kTC2とすると、
C1=kTC1−PC1
C2=kTC2−PC2  }・・・(3)
C2’=kTC2−PC2
の関係が成立するので、(2)式と(3)式の関係から、
kTC2・PC2=(kTC1/kTC2)・PC1
となる。これを変形して、トルク容量比で表すと、
(PC2’−PC2)/PC1=kTC1/kTC2 ・・・(4)
となる。ここで、PC2’はPC1がSC1に作用しない場合であるから、
C2’=(SSLC2/SC2)・PSLC2−FC2/SC2 ・・・(5)
となる。そこで(4)式の左辺に先の(1)式とこの(5)式を代入して整理すると、
(PC2’−PC2)/PC1=SC1/SC2
となる。以上の関係から、
C1/SC2=kTC1/kTC2
とすればよいことが分かる。すなわち、図3を参照して、スプールの径差受圧部22とフィードバック圧受圧部23の面積比SC1/SC2を両クラッチ(C−1,C−2)の単位油圧当りのトルク容量比kTC1/kTC2に合わせる設定で、コントロールバルブの受圧バランスを得ることができる。なお、この形態では、信号圧(ソレノイド圧)の受圧面(大径受圧部)の面積と供給油圧の受圧面(径差受圧部)22の面積の関係については、100%出力時のソレノイド圧がライン圧PL の1/2に設定されていることから、拡径部端面の面積に対する径差部の面積は、1/2とされている。
【0045】
以上の構成からなる油圧制御装置において、前記1→2又は3→4飛び変速の際のクラッチ(C−2)とクラッチ(C−1)の間のトルク移管の状況を図9にタイムチャートで示す。図示実線で示すように、変速前では、クラッチ(C−2)の伝達トルクは、そのときのエンジントルクによって定まり、このクラッチの解放とクラッチ(C−1)の係合を入替えるトルク相においては、この伝達トルクの低下に入替わってクラッチ(C−1)の伝達トルクが上昇していく。このトルク相における両クラッチの伝達トルクの和は一定となる。そしてクラッチ(C−2)が完全解放に至ったところで、クラッチ(C−1)を経た駆動系の回転がエンジン回転と同期するイナーシャ相での慣性力によるイナーシャトルクが生じ、同期完了によりこれがなくなることでクラッチ(C−1)の伝達トルクがエンジントルクと等しくなる。このトルク移管に対して、クラッチ(C−2)のトルク容量は、変速指令が発せられるまでの期間は、実際にクラッチが伝達するトルクより高いトルク容量としてスリップを防止するために高いライン圧を供給されることで図に点線で示すように高い状態に保たれ、変速指令の成立により一旦クラッチ(C−1)の伝達トルクまで下げられた後に伝達トルクと等しいトルク変化となる。また、クラッチ(C−1)のトルク容量も、係合完了後も一定期間イナーシャトルクによってもスリップを生じないトルク容量に維持され、その後このイナーシャトルク分の容量より更に高いトルク容量としてスリップを防止するために高いライン圧を供給されることで図に点線で示すように変化する。
【0046】
こうしたトルク容量を得るべく、図10に示すように、解放側のリニアソレノイドバルブ5に出力させるソレノイド圧PSLC2は、破線で示すように、変速指令成立時に一旦伝達トルクに見合った供給圧PC2が得られるように低減され、それに従う油圧サーボC2への供給圧PC2は、実線で示すように棚圧が生じる変化となる。これに対して、係合側のリニアソレノイドバルブ4に出力させるソレノイド圧PSLC1は、供給圧PC2の低下開始に合わせて上昇制御され、それに応じて供給圧PC1もトルク相からイナーシャ相にかけて上昇して、実線で示すように変化する。この際、リニアソレノイドバルブ5に出力させるソレノイド圧PSLC2は、本来、次の図11に破線で示すようにトルク相を通じて降下させるべきであるが、本発明のキャンセル油路88の作用で、リニアソレノイドバルブ4にソレノイド圧PSLC1を出力させ始めると、それにより上昇していく供給圧PC1が、一定圧のソレノイド圧PSLC2を相殺して、コントロールバルブ2が供給圧PC2を降下させる作用をするため、ソレノイド圧PSLC2を降下させる制御は不要となる。この状況が図10において、水平な破線で示されている。こうしてこの実施形態の回路構成によれば、油圧回路上でコントロールバルブ2の作動によりクラッチ(C−2)の供給圧の解放がなされるため、リニアソレノイドバルブ5への印加電流のクラッチ解放のための経時的制御を省略することができる。
【0047】
ところで、一般の自動変速機の油圧制御装置の場合、コントロールバルブは専ら油圧サーボへの供給圧の調圧に用いられ、摩擦材係合後の係合状態保持のためのライン圧の供給は、供給圧の上昇により作動するリレーバルブを介して行なわれる。これに対して、本形態のコントロールバルブは、このリレーバルブの機能も持たせるように、リターンスプリングの荷重設定と、受圧部の面積設定で、低い信号圧ではスプールの変位が開始しない(インポートとアウトポートが連通しない)ようにし、フル信号圧に達する前にフルストロークする(ドレーンポートを全閉し、インポートとアウトポートを全通させる)ようにしている。最後に示す図12は、本形態に特有の各コントロールバルブの調圧特性を示す。
【0048】
詳しくは、油圧サーボへの供給圧(以下、クラッチ圧という)をPC 、ソレノイド圧をPSL、コントロールバルブのソレノイド圧受圧面(図3に示すコントロールバルブ2の場合、受圧面)の面積をSSL、同じくフィードバック圧受圧面(スプールのランド端面)の面積をSC 、リターンスプリングのスプリング力をFSPとして、
C =(SSL/SC )×PSL−FSP/SC 
の関係が成り立つのに対して、次のような設定を行なっている。すなわち、リニアソレノイドに電流値β(A)以上通電したとき、コントロールバルブが非調圧状態(SSL×PSL>最大作動時FSP)、例えばスプリングのコイルが相互に当接してそれ以上偏倚できない状態になることで、スプールがそれ以上変位しなくなるようにしている。これによりクラッチ圧PC がライン圧PL に等しくなる。また、リニアソレノイドに電流値α(A)以下通電したとき、コントロールバルブが非調圧状態(SSL×PSL<取付時FSP)、例えばスプリングがプリロード以下の荷重負荷状態になることで、スプールがそれ以上変位しなくなるようにしている。これによりクラッチ圧PC が0になる。
【0049】
こうした設定により、図12を参照して、リニアソレノイドへの印加電流値(図に電流と表記)の変化によりソレノイド圧PSLが電流に比例して調圧範囲内で変化するのに対して、クラッチ圧PC のソレノイド圧PSLに比例する調圧範囲は、電流値α〜βの範囲に狭められ、電流値上で上下の非調圧領域(PC =0及びPC =PL )とクラッチ圧PC の調圧範囲との間に印加電流に対する圧力変化が生じない頭打ちの領域を設定することができる。その結果、定常時(変速過渡制御を行なっていないとき)のクラッチ圧の状態(完全係合又は完全解放)をリレーバルブの追加なして行うことができる。
【0050】
以上詳述したように、本実施形態によれば、キャンセル油路88を介して、クラッチ(C−2)の油圧サーボC2を制御するコントロールバルブ2のソレノイド圧に対向する油圧がクラッチ(C−1)の油圧サーボC1への供給油路81から印加されるため、ソレノイド圧の印加によるコントロールバルブ2の制御下での対応する油圧サーボC2への油圧供給が阻止される。したがって、同時に油圧供給されるべきでない2つの油圧サーボC1,C2への同時油圧供給が回避されるため、これら油圧サーボにより作動するクラッチのタイアップを防ぐことができる。
【0051】
また、解放側の油圧サーボC2に対応するコントロールバルブ2にソレノイド圧が印加された状態においても、第1の受圧部22と第2の受圧部23の面積比の関係から、係合側となるクラッチ(C−1)の油圧サーボC1の油圧の上昇に応じて、解放側となるクラッチ(C−2)の油圧サーボC2の油圧が下降制御され、変速中も係合側と解放側双方のクラッチのトルク容量の和が常に一定に保たれる。このため、コントロールバルブ2の受圧面積比の設定のみにより、通常の順次の変速と同様の変速を掴み替えを要する変速の際にも実現することができる。したがって、この特質を利用した飛び変速が可能となる。この際に、コントロールバルブ2に印加されるソレノイド圧による力と、キャンセル油路88を介して対向印加される供給圧による力がクラッチ(C−1)の係合完了時にはバランスするため、このコントロールバルブ2の制御下での対応する油圧サーボC2への油圧供給を完全になくして、クラッチ(C−2)をコントロールバルブ2の正規のソレノイド圧の非印加時と同様に完全解放させることができる。
【0052】
また、多重配置により3つの油圧サーボC1〜C3をコンパクト化し、しかも各油圧サーボをそれらの並び順C2,C3,C1に個々に作動させるために単純な油圧の重畳供給を行なうようにした油圧サーボにおいて、中間の油圧サーボC3の作動を飛ばした作動も、格別の信号圧制御を要せずに可能となるため、単純な油圧制御、すなわち単一の油圧サーボ制御による飛び変速が可能となる。また、この飛び変速の際に解放側となるクラッチの油圧サーボ(C2又はC1)は、係合側となるクラッチの油圧サーボ(C1又はC2)の油圧に応じて制御されるため、タイアップが防止されると共に、アンダラップによるエンジンの吹き上がりも防止される。
【0053】
更に、第1の油圧サーボC2と第3の油圧サーボC1について、油圧の同時供給時には、常に第3の油圧サーボC1への油圧供給が優先することになるため、飛び変速に際して、クラッチ(C−2)の油圧サーボC2への単独の油圧供給時には、クラッチ(C−2)が係合し、これに加えてクラッチ(C−1)の油圧サーボC1への油圧供給を行なったときに、クラッチ(C−1)が係合する関係になるため、図2を参照して、1−2、2−3、3−4全ての飛び変速(アップシフト及びダウンシフト)を支障なく達成できる。
【0054】
以上、本発明の理解のために適用対象を手動変速機とし、3つのクラッチの油圧サーボを重合させた実施形態を挙げて説明したが、本発明は、例示の実施形態に限定されるものではなく、適用対象を一般的な自動変速機とする実施も可能なものであり、この場合のフェールセーフを目的とする場合、油圧サーボは、必ずしも重合させたものに限るものではない。要するに本発明は、特許請求の範囲の個々の請求項に記載の事項の範囲内で種々に具体的な構成を変更して実施することができるものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の適用に係る変速機のギヤトレーンを示すスケルトン図である。
【図2】変速機のクラッチ作動と変速段の関係を示す作動図表である。
【図3】本発明を一実施形態に係る油圧制御装置の変速制御回路を示す油圧回路図である。
【図4】実施形態の多重油圧サーボの油圧供給と作動の第1段階の関係を示す模式図である。
【図5】多重油圧サーボの油圧供給と作動の第2段階の関係を示す模式図である。
【図6】多重油圧サーボの油圧供給と作動の第3段階の関係を示す模式図である。
【図7】油圧制御装置のコントロールバルブを拡大して示す模式図である。
【図8】クラッチ掴み換え時の信号圧とトルク容量の関係を示すタイムチャートである。
【図9】変速機の飛び変速のためのクラッチ掴み換えによるトルク移管を示すタイムチャートである。
【図10】クラッチ掴み換えによるトルク移管のための油圧制御特性を示すタイムチャートである。
【図11】本発明を適用しない場合のクラッチ掴み換えによるトルク移管のための油圧制御特性を示すタイムチャートである。
【図12】実施形態の油圧制御装置におけるコントロールバルブの調圧特性を示すグラフである。
【符号の説明】
C−1,C−2,C−3 クラッチ(係合要素)
C1 他方の油圧サーボ
C2 一方の油圧サーボ
C3 油圧サーボ
1,2,3 コントロールバルブ
21 信号圧受圧部
22 供給圧受圧面(第1の受圧部)
23 フィードバック圧受圧部(第2の受圧部)
70 シリンダ
72 第1のピストン
73 第2のピストン
71 第3のピストン
88 キャンセル油路

Claims (5)

  1. 変速のための係合要素を油圧サーボにより制御する変速機であって、それぞれの油圧サーボに対応して設けられ、個々に印加される信号圧に応じて油圧サーボへの供給油圧を制御するコントロールバルブを備える変速機の油圧制御装置において、
    タイアップする関係にある2つの係合要素の一方の油圧サーボに対するコントロールバルブに、それに印加される信号圧に対向させて、他方の油圧サーボに供給される供給油圧又は他方の油圧サーボへの供給油圧を制御する他方のコントロールバルブに印加される他方の信号圧を印加するキャンセル油路を設けたことを特徴とする変速機の油圧制御装置。
  2. 前記コントロールバルブは、信号圧が印加される受圧部に対向する第1及び第2の受圧部を備え、第1の受圧部は、前記キャンセル油路により他方の油圧サーボに供給される供給油圧を印加される受圧部とされ、第2の受圧部は、前記一方の油圧サーボに供給される供給油圧を印加される受圧部とされ、
    第1の受圧部と第2の受圧部の面積比が、前記他方の油圧サーボにより制御される係合要素の単位油圧当りのトルク容量と前記一方の油圧サーボにより制御される係合要素の単位油圧当りのトルク容量の比と等しく設定された、請求項1記載の変速機の油圧制御装置。
  3. 前記油圧サーボは、1つのシリンダに第1〜第3のピストンを入れ子状に嵌め合わせて、シリンダと第1のピストンとの間に第1の油圧サーボの油室、第1のピストンと第2のピストンとの間に第2の油圧サーボの油室、第2のピストンと第3のピストンとの間に第3の油圧サーボの油室を画定する多重配置の油圧サーボとされ、各油圧サーボは、第1の油圧サーボの油室から第3の油圧サーボの油室へ順次油圧供給を積み重ね、それとは逆順に油圧解放を積み重ねる繰返しにより、連続する変速段を順番に達成する配列とされ、
    前記一方及び他方の油圧サーボは、第1及び第3の油圧サーボとされた、請求項1又は2記載の変速機の油圧制御装置。
  4. 前記キャンセル油路は、第1の油圧サーボに対するコントロールバルブに、それに印加される信号圧に対向させて、第3の油圧サーボに供給される供給油圧を印加するキャンセル油路とされた、請求項3記載の変速機の油圧制御装置。
  5. 前記信号圧は、電気的に制御されるソレノイドバルブからの出力圧である、請求項1〜4のいずれか1項記載の変速機の油圧制御装置。
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