JP2004035928A - 溶融めっきの前処理用洗浄剤、これを用いた前処理方法および溶融めっき方法 - Google Patents

溶融めっきの前処理用洗浄剤、これを用いた前処理方法および溶融めっき方法 Download PDF

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Abstract

【課題】鉛を使用せず、低いエネルギーコストで、作業環境を改善でき、液管理が容易で、工程数が少なく、液寿命が長く、産業廃棄物を低減でき、しかも高い洗浄効果を有する溶融めっきの前処理用洗浄剤、これを用いた前処理方法および溶融めっき方法を提供することである。
【解決手段】無機電解質、油状物質および有機酸またはその塩を含有した水溶液またはエマルションである溶融めっきの前処理用洗浄剤である。また、溶融めっきに先立って、前記洗浄剤に金属を浸漬する溶融めっきの前処理方法である。さらに、前記洗浄剤に金属を浸漬し、この金属を水洗し乾燥させた後、この金属をめっき浴に浸漬して金属の表面にめっきを施す溶融めっき方法である。
【選択図】   なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、鋼線、鋼板、鋼管等の金属に溶融めっきを施す際の前処理洗浄に用いる溶融めっきの前処理用洗浄剤、これを用いた前処理方法および溶融めっき方法に関する。
【従来の技術】
【0002】
従来より、硬鋼線、軟鋼線、ピアノ線等の金属線材に溶融亜鉛めっきを施す際には、線材の伸延加工時の耐摩耗性、潤滑性の向上を目的として塗布されているリン酸塩皮膜(例えば、リン酸亜鉛皮膜等)、カルシウム石鹸皮膜(例えば、ステアリン酸カルシウム皮膜等)等を除去するための前処理として、金属の前処理洗浄が行われている。仮に、前処理洗浄において前記皮膜の洗浄が不十分であると、めっき不良が生じてしまうため、この前処理洗浄では高い洗浄効果が要求される。従来の溶融亜鉛めっきの前処理洗浄には、以下のようなものが知られている。
(1) 加温した溶融鉛中に浸漬する方法
430〜470℃程度に加熱された溶融鉛中に金属を浸漬して金属表面の脱脂(カルシウム石鹸の除去、下地のリン酸塩皮膜の除去)を行い、ついで約40℃に加温された塩酸中に浸漬して酸洗し、水洗する。
(2) 加温した苛性ソーダ水溶液に浸漬する方法
加温された苛性ソーダ水溶液中に金属を浸漬して脱脂し、ついで水洗し、さらに塩酸または硫酸中に浸漬して表面の錆、スケール等の酸化物を除去し、水洗する。
【0003】
しかしながら、上記のような洗浄方法のうち、(1)の方法では、(a)有害物質である鉛を使用するので、人体への有害性および廃水公害の点で好ましくない。また、(b)加熱された溶融鉛および塩酸を必要とするので、多くの熱エネルギーが必要であると共に、(c)鉛および塩化水素の蒸気が生じるので作業環境が悪くなり、さらに(d)鉛および塩化水素の蒸発量が多いため液の濃度管理を慎重に行う必要があり液管理が煩雑であるという問題があった。また、(e)3回の浸漬工程(脱脂→酸洗→水洗)が必要であるため、工程数の削減が要望されていた。さらに、(f)塩酸の液寿命が短いため、コストが増大し、しかも(g)多量の産業廃棄物が発生するという問題もあった。
【0004】
また、(2)の方法では、(h)加温された苛性ソーダ水溶液を必要とするので、多くの熱エネルギーが必要であるという問題があった。また、(i)4回の浸漬工程が必要であるため、工程数の削減が必要とされていた。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
したがって、本発明の主たる目的は、鉛を使用せず、しかも高い洗浄効果を有する溶融めっきの前処理用洗浄剤、これを用いた前処理方法および溶融めっき方法を提供することである。
本発明の他の目的は、低いエネルギーコストで、作業環境を改善でき、液管理が容易で、工程数が少なく、液寿命が長く、しかも産業廃棄物を低減することができる溶融めっきの前処理用洗浄剤、これを用いた前処理方法および溶融めっき方法を提供することである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、無機電解質、油状物質および有機酸またはその塩を含有した水溶液またはエマルションである溶融めっきの前処理用洗浄剤を使用するときは、溶融鉛を使用せずに、常温下またはその近傍で高い洗浄効果が得られ、これによりめっき不良を低減することができるという新たな事実を見出し、本発明を完成するに至った。さらに、本発明の前処理用洗浄剤は、低いエネルギーコストで、作業環境を改善でき、液管理が容易で、工程数が少なく、液寿命が長く、しかも産業廃棄物を低減することができる。
【0007】
本発明の前処理用洗浄剤による洗浄機構は以下のようなものと推測される。なお、説明の便宜上、金属表面にはリン酸亜鉛皮膜が存在し、さらにこの表面にステアリン酸カルシウム皮膜が存在するものとする。まず、常温下またはその近傍で、本発明の前処理用洗浄剤中に金属を浸漬する。これにより、被洗浄物であるステアリン酸カルシウムに油状物質が接触し、皮膜への浸透作用、皮膜の膨潤作用等が生じ、ついには固化していた皮膜が溶解、液化する。このようにしてステアリン酸カルシウム皮膜が除去されると、下地のリン酸亜鉛皮膜に有機酸が接触し、皮膜への浸透作用、皮膜の膨潤作用等が生じ、ついにはリン酸亜鉛皮膜が剥離する。リン酸亜鉛皮膜が剥離して金属表面が露出すると、塩酸等の無機電解質と鉄との反応により水素ガスが発生し、これに伴って金属表面の残留物を完全に除去する。
【0008】
また、塩酸等の無機電解質が金属表面から除去されたステアリン酸カルシウムと反応してステアリン酸と塩化カルシウムとを生成する。生成したステアリン酸は油状物質の新たな構成成分となって、引き続き洗浄に利用される。これにより、長期間にわたって高い洗浄力を維持でき、連続使用が可能となる(液寿命が長くなる)。さらに、前記の反応で生成した塩化カルシウムが有機酸と反応して塩酸を再生させ、有機酸のカルシウム塩を沈降させる。したがって、少量の塩酸を洗浄剤中に含有させるだけで、洗浄を連続的に行うことができるようになる。なお、生成したカルシウム塩は適宜フィルター等で除去すればよい。
【0009】
上記のような洗浄機構は、被洗浄物がステアリン酸カルシウムおよびリン酸亜鉛である場合についてのものであるが、被洗浄物がオイル、樹脂皮膜、他のリン酸塩等の場合にも同様の洗浄機構で洗浄が行われるものと推測される。
【0010】
また、本発明の前処理用洗浄剤は、特に油状物質を水に可溶化ないし分散させた水溶液またはエマルションの形態であることが必要である。油状物質が無機電解質および有機酸の水溶液と分離した2層構造である場合には、以下のような問題が生じる。すなわち、上記2層のうち、水溶液層では、塩酸等の無機電解質が金属表面に過剰に作用して、金属表面の残留物を除去するだけでなく、鉄を侵食してしまうおそれがある。特に、炭素の含有量が多い硬鋼線の場合、上記のような侵食が生じると、炭素粉末が金属表面に残留し、表面が黒色に変色するとともに、めっき不良の原因ともなる。一方、油層中の油状物質が金属表面に局部的に付着して残留すると、その後工程である水洗では油状物質の除去が困難であるため、めっき不良の原因となる。
【0011】
これに対して、本発明のように油状物質が水に可溶化された水溶液または油状物質が水中に分散したエマルションである場合には、無機電解質と油状物質とが混在しているため、金属表面に対する無機電解質の作用を油状物質が適度に遮ることにより、鉄が過剰に侵食されることがない。しかも、洗浄剤が金属表面に付着して残留しても、その後工程である水洗により容易に除去できる。このため、めっき不良を低減できる。
【0012】
本発明にかかる溶融めっきの前処理方法は、溶融めっきに先立って、前記前処理用洗浄剤に金属を浸漬することを特徴とする。特に、この前処理方法では、上記洗浄剤を用いることにより洗浄を常温下またはその近傍(具体的には50℃以下)で行うことができる。
【0013】
本発明にかかる溶融めっき方法は、前記前処理用洗浄剤に金属を浸漬し、この金属を水洗し乾燥させた後、めっき浴に浸漬して金属の表面にめっきを施すことを特徴とする。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の一実施形態を詳細に説明する。本発明の溶融めっきの前処理用洗浄剤は、無機電解質、油状物質および有機酸またはその塩を含有し、前記油状物質が可溶化された水溶液または前記油状物質が水中に分散したエマルションである。
【0015】
前記無機電解質としては、例えば硫酸、塩酸、リン酸、硝酸等の無機酸、塩化ナトリウム、塩化カリウム、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム等の無機塩が挙げられる。この無機電解質は、洗浄剤総量に対して3〜25重量%、好ましくは5〜15重量%の割合で水に添加される。無機電解質の添加量が3重量%よりも少ないときは、洗浄が不十分になり、めっき不良が発生するおそれがある。また、無機電解質の添加量が25重量%よりも多くなると、金属表面が水素脆化したり侵食されて、金属表面に炭素粉末が多く発生し、めっき不良が発生するおそれがある。
【0016】
前記油状物質としては、高級脂肪酸またはその塩、炭化水素油、非水溶性の有機溶媒等が使用できる。このうち、高級脂肪酸またはその塩としては、例えばステアリン酸、リノール酸、オレイン酸等の炭素数が7以上、好ましくは炭素数が11以上の飽和または不飽和高級脂肪酸またはその塩が挙げられ、特に常温で液状である不飽和高級脂肪酸またはその塩を使用するのが好ましい。また、炭化水素油としては、例えばミネラルスピリッツ、軽油、灯油、工業ガソリン、ナタネ油、アマニ油、綿実油、パラフィン系炭化水素油、オリーブ油等が挙げられる。非水溶性の有機溶媒としては、種々の有機溶媒が使用可能であり、例えばベンゼン、トルエン、キシレン、クメン、ナフタレン等の芳香族炭化水素、プロパン、ブタン、ヘプタン、オクタン、デカン等の脂肪族炭化水素、さらに石油エーテル、石油ナフサ、ソルベントナフサ等が挙げられる。これらの油状物質は2種以上を混合して用いてもよい。この油状物質は、洗浄剤総量に対して1〜30重量%、好ましくは5〜10重量%の割合で水に添加される。油状物質の添加量が1重量%よりも少ないときは、洗浄が不十分になるおそれがある。また、油状物質の添加量が30重量%よりも多くなると、油分の再付着により再脱脂洗浄を行わなければならなくなるおそれがある。
【0017】
有機酸またはその塩としては、例えば一塩基性若しくは二塩基性の低級カルボン酸、オキシカルボン酸、アミノカルボン酸等またはその塩が挙げられる。一塩基性の低級カルボン酸としては、例えば蟻酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸等の炭素数1〜6の飽和脂肪酸やアクリル酸、クロトン酸等の炭素数1〜6の不飽和脂肪酸等が挙げられる。また、二塩基性の低級カルボン酸としては、例えばシュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸等の炭素数1〜6の二塩基性低級カルボン酸が挙げられる。オキシカルボン酸としては、例えばクエン酸、グリコール酸、リンゴ酸、酒石酸、ヘプトン酸等が挙げられる。アミノカルボン酸としては、例えばエチレンジアミンテトラ酢酸、ジエチレントリアミンペンタ酢酸、ニトリロトリ酢酸等が挙げられる。これらの有機酸は2種以上を混合して使用してもよい。これらの有機酸またはその塩は、洗浄剤総量に対して10〜50重量%、好ましくは20〜30重量%の割合で水に添加される。有機酸またはその塩の添加量が10重量%よりも少ないと、洗浄効果が低下するおそれがあると共に、洗浄剤の寿命が極端に短くなるおそれがある。一方、有機酸またはその塩の添加量が50重量%よりも多くなると、BODが増加し、排水処理のコストが増大するおそれがある。
【0018】
前記油状物質を水中に可溶化または分散させるには、洗浄剤中にアルキルベンゼンスルホン酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩、アルカンスルホン酸塩、硫酸アルキル塩、硫酸アルキルポリオキシエチレン塩、リン酸アルキル塩等の陰イオン界面活性剤、アルキルポリオキシエチレンエーテル、脂肪酸ジエタノールアミド、アルキレングリコールモノアルキルエーテル、アルキレングリコールジアルキルエーテル等の非イオン界面活性剤、ジメチルアルキルアミンオキシド、N−アルキルベタイン、イミダゾリン誘導体等の両性界面活性剤、炭素数1〜11の低級アルコール、炭素数12以上の高級アルコール、グリコール、グリセリン等の多価アルコール等を添加し、必要に応じて撹拌する等すればよい。これらの界面活性剤等は2種以上を混合して使用してもよい。また、これらの界面活性剤等は、洗浄剤総量に対して、0.05〜10重量%、好ましくは0.1〜3重量%の割合で水に添加される。
【0019】
ここで、界面活性剤の添加量が多くなると、発泡し、作業性が低下する。また、界面活性剤の添加量が少なくなると、前記油状物質が十分に可溶化または分散せず、該油状物質と水溶液とが2層に分離して、前記したような不具合が生じるおそれがある。
【0020】
上記のような洗浄剤で金属の表面を洗浄すれば、溶融めっきの前処理に適した高い洗浄効果を得ることができる。前記金属としては、亜鉛めっきを施せる金属であれば特に限定されず、具体的には各種鋼線、鋼板、鋼管等を用いることができる。
【0021】
以下、硬鋼線に溶融亜鉛めっきを施す場合を例にあげて、本発明の前処理方法および溶融めっき方法を説明する。図1は、本発明の洗浄剤を用いた硬鋼線の前処理方法および溶融亜鉛めっき方法を示す概略図である。同図に示す方法では、まず、ロール11から引き出された硬鋼線12を粉拭い機13に通して硬鋼線12の表面に付着した異物や油分を大まかに拭い取る。ついで、この硬鋼線12を洗浄剤槽14中の本発明の洗浄剤に5〜10秒程度浸漬する。洗浄剤の温度は、5〜50℃、好ましくは20〜30℃に調節するのがよい。上記のようにして洗浄剤に浸漬した後、この硬鋼線12を水槽15中に3〜5秒程度浸漬して水洗する。これにより、硬鋼線12の表面は、溶融亜鉛めっきを施すのに十分な前処理洗浄がなされる。
【0022】
ついで、洗浄された硬鋼線12をフラックス電気めっき槽16中の加熱した塩化亜鉛アンモニウム水溶液または塩化アルミニウム水溶液(フラックス)に1〜2秒程度浸漬してフラックス皮膜を形成(フラックス処理)させる。このフラックス処理は、硬鋼線12表面の錆の発生を防止し、鉄と亜鉛の合金反応を促進させるための下地処理である。ついで、フラックス処理された硬鋼線12を炉17中で乾燥させる。この乾燥させた硬鋼線12を亜鉛めっき槽18中の溶融した亜鉛に浸漬し、硬鋼線12の表面にめっき皮膜を形成する。この後、必要に応じて、温水中での冷却、めっき付着量の測定等が行われる。
【0023】
また、本発明の洗浄剤を上記した溶融亜鉛めっきの前処理に用いて長期にわたって使用する場合には、中和滴定法により洗浄剤の洗浄性能を容易に管理することができる。中和滴定の試薬としては1N水酸化ナトリウム水溶液等を用いることができ、指示薬としてはメチルオレンジ等を用いることができる。例えば、溶融亜鉛めっきの前処理用洗浄剤としての十分な洗浄効果を得るためには、下記方法により滴定したときの滴定値が3.5〜7.5、好ましくは4.5〜5.5であるのがよい。
<滴定方法>
滴定対象の洗浄剤1mLに水99mLを加えて希釈する。ついで、この希釈液をフラスコに入れ、メチルオレンジを数滴添加する。ついで、スターラーで撹拌しながら、1N水酸化ナトリウム水溶液で滴定し、黄色に変色した点を中和点として、滴定値を求める。例えば、中和点における上記水酸化ナトリウム水溶液の滴下量が5.0mLのとき、滴定値は5.0となる。
【0024】
また、洗浄剤中の鉄分濃度を測定することでも洗浄剤の洗浄効果(劣化の程度)を管理することができる。鉄分の測定方法としては、比色滴定や原子吸光分析等が挙げられる。例えば、溶融亜鉛めっきの前処理用洗浄剤としての十分な洗浄効果を得るためには、鉄分濃度が0〜50000mg/L、好ましくは0〜35000mg/Lであるのがよい。
【0025】
以上の本発明方法の説明では、溶融亜鉛めっきを施す場合について説明したが、本発明方法は溶融亜鉛−アルミニウム合金めっき、溶融アルミニウムめっき、溶融ターン(鉛−錫合金)めっき等の他の溶融めっきにも適用することができる。
【0026】
【実施例】
以下、実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0027】
実施例1
本発明の洗浄剤の洗浄効果を確認するために硬鋼線(直径3.2mm)の洗浄試験を行った。硬鋼線は、表面にリン酸亜鉛皮膜が形成され、ステアリン酸カルシウムおよびステアリン酸ナトリウムの潤滑剤を使って伸線したものを用いた。洗浄は、図1に示すように、ロール11から引き出した硬鋼線12を粉拭い機13に通して表面に付着した異物や油分を大まかに拭い取り、ついで洗浄剤槽14および水槽15の順に浸漬させることによって行った。使用した洗浄剤は、下記に示す塩酸、ステアリン酸および酒石酸の各所定量を水に加え、界面活性剤にて分散させてエマルションとしたものである。この洗浄剤の1N水酸化ナトリウム水溶液による滴定値は、前記滴定方法により測定すると約5.0であった。
<洗浄剤の配合>
塩酸:10重量%
ステアリン酸:20重量%
酒石酸:40重量%
水:30重量%
<洗浄条件>
洗浄剤槽14中の洗浄剤の温度:25℃
洗浄剤槽14への浸漬時間:5秒
水槽15への浸漬時間:3秒
【0028】
実施例2
洗浄剤として、下記に示す塩化カリウム、ステアリン酸および酒石酸の各所定量を水に加え、界面活性剤にて可溶化させた水溶液を用いた他は、実施例1と同様にして硬鋼線の洗浄を行った。この洗浄剤の1N水酸化ナトリウム水溶液による滴定値は、前記滴定方法により測定すると約4.0であった。
<洗浄剤の配合>
塩化カリウム:10重量%
ステアリン酸:10重量%
酒石酸:30重量%
水:50重量%
【0029】
実施例3
洗浄剤として、下記に示すリン酸、オレイン酸およびエチレンジアミンテトラ酢酸の各所定量を水に加え、界面活性剤にて可溶化させた水溶液を用いた他は、実施例1と同様にして硬鋼線の洗浄を行った。この洗浄剤の1N水酸化ナトリウム水溶液による滴定値は、前記滴定方法により測定すると約5.0であった。
<洗浄剤の配合>
リン酸:20重量%
オレイン酸:10重量%
エチレンジアミンテトラ酢酸:30重量%
水:40重量%
【0030】
比較例1
洗浄剤として、下記に示す塩酸、ステアリン酸および酒石酸の各所定量を水に加え、水層と油層の2層に分離したものを用いた他は、実施例1と同様にして硬鋼線の洗浄を行った。なお、比較例1では、2層に分離した上記洗浄剤を撹拌することによって水に混和しない油状物質をコロイド状に分散させた状態で硬鋼線の洗浄を行った。
<洗浄剤の配合>
塩酸:10重量%
ステアリン酸:20重量%
酒石酸:40重量%
水:30重量%
【0031】
比較例2
洗浄剤として、下記に示す硝酸、オレイン酸、リノール酸およびコハク酸の各所定量を水に加え、水層と油層の2層に分離したものを用いた他は、実施例1と同様にして硬鋼線の洗浄を行った。なお、比較例2では、2層に分離した上記洗浄剤を撹拌することによって水に混和しない油状物質をコロイド状に分散させた状態で硬鋼線の洗浄を行った。
<洗浄剤の配合>
硝酸:3.5重量%
オレイン酸:9.5
リノール酸:4.0重量%
コハク酸:34.5重量%
水:48.5重量%
【0032】
実施例1〜実施例3、比較例1および比較例2について、それぞれの洗浄前後の硬鋼線の表面をエネルギー分散方式の蛍光X線分析装置(日立製作所社製S−2600N)を用いて分析した結果を、図2(実施例1〜3および比較例1,2の洗浄前)、図3(実施例1の洗浄後)、図4(実施例2の洗浄後)、図5(実施例3の洗浄後)、図6(比較例1の洗浄後)および図7(比較例2の洗浄後)に示す。
【0033】
図2に示すように、洗浄前には硬鋼線12の表面に存在する前記リン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウムおよびステアリン酸ナトリウムに起因してCa、Zn、NaおよびPが検出された。これに対して洗浄後は、図3〜図7に示すように、Ca、Zn、NaおよびPは検出されなかったことから、実施例1〜実施例3、比較例1および比較例2の洗浄剤による洗浄によってリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウムおよびステアリン酸ナトリウムが完全に除去されたことがわかる。
【0034】
一方、比較例1および比較例2では、洗浄後の硬鋼線12の表面が黒色に変色し、表面に粉状のものが付着していた。また、実施例1〜実施例3と比較してC(炭素)が多く検出された。これは、比較例1および比較例2の洗浄剤中の無機電解質が金属表面に過剰に作用して鉄を侵食したことによるものであると考えられる。一方、実施例1〜実施例3では、洗浄後の硬鋼線12の表面が黒色に変色することはなく、C(炭素)の検出量も比較例1および比較例2より明らかに少なかった。
【0035】
【発明の効果】
本発明の洗浄剤によれば、金属表面のリン酸亜鉛皮膜やステアリン酸カルシウム皮膜等を油状物質、有機酸および無機電解質が効果的に除去するので、高い洗浄効果を得ることができ、従ってめっき不良を低減させることができる。また、本発明の前処理用洗浄剤は、有害な鉛を使用しないので、安全である。また、該洗浄剤は常温下またはその近傍で使用可能であるので、エネルギーコストを低減すると共に、作業環境を改善することができ、しかも蒸発量が少ないので液管理が容易である。さらに、該洗浄剤を使用すると工程数を削減でき、しかも該洗浄剤は液寿命も長いので、産業廃棄物を削減することができるという効果がある。
【0036】
本発明の溶融めっきの前処理方法は、上記前処理用洗浄剤を使用して前処理を行うので、溶融めっきにより金属の表面にめっきを施すに際して、めっき不良を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の洗浄剤を用いた硬鋼線の洗浄方法および溶融亜鉛めっき方法を示す概略図である。
【図2】洗浄前の硬鋼線表面の蛍光X線分析結果を示すスペクトル図である。
【図3】実施例1において、洗浄後の硬鋼線表面の蛍光X線分析結果を示すスペクトル図である。
【図4】実施例2において、洗浄後の硬鋼線表面の蛍光X線分析結果を示すスペクトル図である。
【図5】実施例3において、洗浄後の硬鋼線表面の蛍光X線分析結果を示すスペクトル図である。
【図6】比較例1において、洗浄後の硬鋼線表面の蛍光X線分析結果を示すスペクトル図である。
【図7】比較例2において、洗浄後の硬鋼線表面の蛍光X線分析結果を示すスペクトル図である。
【符号の説明】
11 ロール
12 硬鋼線
13 粉拭い機
14 洗浄剤槽
15 水槽
16 フラックス電気めっき槽
17 炉
18 亜鉛めっき槽

Claims (6)

  1. 無機電解質、油状物質および有機酸またはその塩を含有した水溶液またはエマルションであることを特徴とする溶融めっきの前処理用洗浄剤。
  2. 前記無機電解質が無機酸である請求項1記載の前処理用洗浄剤。
  3. 前記油状物質が高級脂肪酸若しくはその塩、炭化水素油または非水溶性の有機溶媒である請求項1または2記載の前処理用洗浄剤。
  4. 溶融めっきに先立って、請求項1〜3のいずれかに記載の前処理用洗浄剤に金属を浸漬することを特徴とする溶融めっきの前処理方法。
  5. 浸漬が常温下またはその近傍で行われる請求項4記載の前処理方法。
  6. 請求項1〜3のいずれかに記載の前処理用洗浄剤に金属を浸漬し、この金属を水洗し乾燥させた後、めっき浴に浸漬して金属の表面にめっきを施すことを特徴とする溶融めっき方法。
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