JP2004035738A - 光硬化性樹脂組成物 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】(I)分子末端及び/又は側鎖に不飽和基を有するウレタン化合物を含有する光硬化性樹脂組成物であって、前記(I)分子末端及び/又は側鎖に不飽和基を有するウレタン化合物は、(i)ヒドロキシル基含有ウレタン化合物を、該化合物のヒドロキシル基が封鎖されるように、(ii)分子中に1個のイソシアネート基を有する不飽和化合物でウレタン化させてなる化合物であり、前記(i)ヒドロキシル基含有ウレタン化合物は、(a)分子中に少なくとも2個のヒドロキシル基を有するポリカーボネート化合物、(b)トリオール化合物及び/又はトリオール化合物誘導体、(c)ジオール化合物及び(d)ヒドロキシル基含有不飽和化合物と、(e)ジイソシアネート化合物と、を反応させてなる化合物であることを特徴とする光硬化性樹脂組成物。
【選択図】 なし
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、光硬化性樹脂組成物、該光硬化性樹脂組成物を光硬化してなる樹脂硬化物、該光硬化性樹脂組成物を含むことを特徴とする光硬化性塗料及び分子末端及び/又は側鎖に不飽和基を有するウレタン化合物を含有する光硬化性樹脂組成物の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
光硬化型樹脂組成物及びそれを用いた塗料は1液型でポットライフを長くでき、硬化時間を短くすることも可能なため、木工、プラスチック、紙及び金属基材等の塗装や加熱成形保護シート等に適用した場合に、生産性の飛躍的な向上が期待されている。しかし、光硬化型樹脂組成物の多くは、オリゴマーと総称される分子量の低いアクリル酸エステル化合物(エポキシアクリレート、ウレタンアクリレート、オリゴエステルアクリレート等)や反応性希釈モノマーと総称される液状の光硬化性化合物が混合されているため、光硬化するまでの塗膜は、液状若しくは表面が未乾燥の状態である。したがって、塗装工程中にゴミや粉塵が塗膜に付着し外観不良を引き起こす問題があった。そして、成形加工シートに使用した場合はカバーシートで被覆する必要があり、また、樹脂のガラス転移温度(Tg)や軟化点温度以下の保冷保管が必要になっていた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
これらを解決することを目的に高分子量ポリウレタンアクリレート等を使用することが検討されているが、未だに硬化前の不粘着性と硬化後の機械強度特性、耐薬品性並びに耐汚染性を満足するには至っていない。
【0004】
本発明は、かかる従来技術の問題点に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、溶剤等の揮発成分の揮発後の未硬化塗膜表面を非粘着状態にでき、ゴミや粉塵の付着を防止することが可能であるのみならず、シート状に加工した際もカバーシート等の被覆なしに重ね合わせることが可能で、硬化後には機械強度、耐薬品性及び耐汚染性等に優れた硬化物を与える光硬化型樹脂組成物を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、分子末端及び/又は側鎖に不飽和基を有するウレタン化合物であって、特定の化学構造を有する化合物を含有する光硬化性樹脂組成物により、上記目的が達成可能であることを見出し、本発明を完成させた。
【0006】
すなわち、本発明は、(I)分子末端及び/又は側鎖に不飽和基を有するウレタン化合物を含有する光硬化性樹脂組成物(以下「I成分」という。)であって、(I成分は、(i)ヒドロキシル基含有ウレタン化合物(以下「i成分」という。)を、該化合物のヒドロキシル基が封鎖されるように、(ii)分子中に1個のイソシアネート基を有する不飽和化合物(以下「ii成分」という。)でウレタン化させてなる化合物であり、上記i成分は、(a)分子中に少なくとも2個のヒドロキシル基を有するポリカーボネート化合物(以下「a成分」という。)、(b)トリオール化合物及び/又はトリオール化合物誘導体(以下「b成分」という。)、(c)ジオール化合物(以下「c成分」という。)及び(d)ヒドロキシル基含有不飽和化合物(以下「d成分」という。)と、(e)ジイソシアネート化合物(以下「e成分」という。)と、を反応させてなる化合物であることを特徴とする光硬化性樹脂組成物を提供するものである。
【0007】
本発明の光硬化性樹脂組成物は上記構成を有するため、未硬化塗膜表面を非粘着状態にでき、ゴミや粉塵の付着を防止することが可能であるのみならず、シート状に加工した際もカバーシート等の被覆なしに重ね合わせることが可能になる。また、硬化物は、機械強度、耐薬品性及び耐汚染性等に優れるようになる。
【0008】
未硬化状態及び硬化後の上記特性を更に向上させる観点からは、上記I成分は、重量平均分子量が10,000以上の化合物であることが好ましく、上記a成分は、下記一般式(1)で表される化合物(以下「化合物1」という。)及び/又は下記一般式(2)で表される化合物(以下「化合物2」という。)を含むことが好ましく、上記トリオール化合物がグリセリンであり、上記トリオール化合物誘導体は下記一般式(3)で表される化合物(以下「化合物3」という。)であることが好ましい。なお、化合物2におけるR1は、−CH2C6H10CH2−が特に好ましい。
【化6】
[式中、nは1〜10の整数を示す。]
【化7】
[式中、R1は−CH2C6H10CH2−、−CH2CH(CH3)C6H12−、−C9H18−又は−C4H8−、R2は−CH2C6H10CH2−、−C6H12−、−C5H10−又は−C4H8−、p及びqはp+qが2〜20になるように選ばれる正の整数、をそれぞれ示す。但し、R1及びR2は同時に−CH2C6H10CH2−又は−C4H8−ではない。]
【化8】
[式中、kは1〜10の整数を示す。]
【0009】
そして、ii成分は、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアネート、下記式(4)で表される化合物(以下「化合物4」という。)及び下記一般式(5)で表される化合物(以下「化合物5」という。)からなる群より選ばれる少なくとも1つの化合物であることが好ましく、a成分は融点が20℃以上の化合物であることが好ましい。
【化9】
【化10】
[式中、R0は、水素原子、−CH3、−C2H5又は−C3H7を示す。]
【0010】
上記と同様の観点からは、a成分、c成分及びd成分それぞれの水酸基当量と、b成分の水酸基当量の2/3との合計当量をXとし、e成分のイソシアネート当量をYとしたときに、Y/Xが1/1〜1/1.2であることが好ましく、b成分の水酸基当量をx1、a成分の水酸基当量をx2、c成分の水酸基当量をx3、d成分の水酸基当量をx4としたときに、x1/(x2+x3+x4)が10/90〜65/35であることが好ましい。
【0011】
本発明の光硬化性樹脂組成物には、(II)分子中に不飽和基を1個以上有する光重合性化合物(以下「II成分」という。)及び/又は(III)光重合開始剤を(以下「III成分」という。)更に含有させることもできる。II成分の添加により、紫外線や可視光線等により光硬化性樹脂組成物を硬化させることが可能になり、III成分の添加により硬化物の柔軟性等の特性を容易に制御できるようになる。なお、本発明の光硬化性樹脂組成物は、光硬化前の乾燥皮膜が20℃で非粘着性であることが好ましい。かかる温度で非粘着性を示すことにより硬化前の皮膜の取扱い性が格段に向上する。
【0012】
本発明はまた、上記本発明の光硬化性樹脂組成物を光硬化してなる樹脂硬化物、並びに、上記本発明の光硬化性樹脂組成物を含むことを特徴とする光硬化性塗料を提供する。
【0013】
本発明は更に、a成分、b成分、c成分及びd成分と、e成分と、を反応させてi成分を得る工程と、i成分とii成分とを、i成分のヒドロキシル基がii成分で封鎖されるようにウレタン化させて、I成分を得る工程と、を含むことを特徴とする、分子末端及び/又は側鎖に不飽和基を有するウレタン化合物を含有する光硬化性樹脂組成物の製造方法を提供する。かかる製造方法により上記光硬化性樹脂組成物を製造することが可能になる。
【0014】
【発明の実施の形態】
本発明の光硬化性樹脂組成物はI成分を必須成分として含み、当該I成分は、a成分、b成分、c成分及びd成分と、e成分と、を反応させてなるi成分を、該成分のヒドロキシル基が封鎖されるように、ii成分でウレタン化させてなる化合物である。
【0015】
本発明においては、特定のヒドロキシル化合物を組み合わせ(a成分、b成分、c成分及びd成分)、それをジイソシアネート化合物(e成分)と反応させていること、更にはかかる反応で得られるウレタン化合物(i成分)を、特定の化合物(ii成分)と反応させることにより、ウレタン化合物の分子末端及び/又は側鎖に不飽和基を導入していること、が特徴であり、かかる構造により、未硬化塗膜表面を非粘着状態にでき、硬化物の機械強度、耐薬品性及び耐汚染性を向上させることができる。かかる特性は、上記成分の組み合わせにより達成されるものであり、例えば、a成分又はii成分が欠如した場合は、未硬化状態での非粘着性及び硬化後の機械強度や耐溶剤性を達成することが困難となる。また、d成分が欠如した場合は、硬化後の特性が全般的に低下し、c成分は硬化後の機械強度を調整する上で必須である。
【0016】
以下、本発明の光硬化性樹脂組成物を構成する各成分の好適な実施形態について説明する。
【0017】
(a成分)
a成分は、分子中に少なくとも2個のヒドロキシル基を有するポリカーボネート化合物であるが、分子中に2個のヒドロキシル基を有するポリカーボネート化合物であることが好ましい。かかる化合物は、脂肪族2価アルコールと炭酸エステルとのエステル交換反応や、脂肪族2価アルコールとクロロギ酸エステル又はホスゲンとの反応で得ることができる。かかる場合において、脂肪族2価アルコールは同一であっても2種以上の異なっているものであってもよい。なお、a成分は、環状炭酸エステルの開環重合でも得ることができ、かかる場合において、環状炭酸エステルは同一であっても2種以上の異なっているものであってもよい。
【0018】
脂肪族2価アルコールとしては、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、2,4−ヘプタンジオール、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール、2−メチル−2−プロピル−1,3−プロパンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール等のアルキレン基がトリメチレン基である脂肪族2価アルコール;1,4−ブタンジオール等のアルキレン基がテトラメチレン基である脂肪族2価アルコール;1,5−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,5−ヘキサンジオール等のアルキレン基がペンタメチレン基である脂肪族2価アルコール;1,6−ヘキサンジオール、2−エチル−1,6−ヘキサンジオール等のアルキレン基がヘキサメチレン基である脂肪族2価アルコール;1,7−ヘプタンジオール等のアルキレン基がヘプタメチレン基である脂肪族2価アルコール;1,8−オクタンジオール、2−メチル−1,8−オクタンジオールのアルキレン基がオクタメチレン基である脂肪族2価アルコール;1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,11−ウンデカンジオール、1,12−ドデカンジオール、1,20−エイコサンジオールが挙げられる。
【0019】
また、1,3−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、シクロヘキサン−1,4−ジメタノール、シクロヘキサン−1,4−ジエタノール、2,2−ビス(4−ヒドロキシシクロヘキシル)プロパン、2,7−ノルボルナンジオール等のアルキレン基が有する置換基が環を形成している脂肪族2価アルコール;ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等のアルキレン基の内部の炭素原子が酸素原子で置換されている脂肪族2価アルコール;2,5−テトラヒドロフランジメタノール、1,4−ビス(ヒドロキシエトキシ)シクロヘキサン等のアルキレン基の内部の炭素原子が酸素原子で置換されていると共にアルキレン基が有する置換基が環を形成している脂肪族2価アルコール等が挙げられる。
【0020】
a成分の分子量は300〜5000が好ましく、より好ましくは300〜2000である。分子量が5000を越すと基材への塗工作業性が劣る傾向にあり、得られた硬化物の特性が全般的に低下する傾向にある。
【0021】
a成分の融点は20℃以上であることが好ましく、より好ましくは走査式熱量計での融点もしくはガラス転移温度が30℃以上である。また、a成分を上記のような方法で得る場合、脂肪族2価アルコールに、p−キシリレンジオール、p−テトラクロロキシリレンジオール、1,4−ビス(ヒドロキシエトキシ)ベンゼン、2,2−ビス[(4−ヒドロキシエトキシ)フェニル]プロパン等の芳香族ジオール化合物や、1,1,1−トリメチロールエタン、1,1,1−トリメチロールプロパン、1,2,6−ヘキサントリオール等の多価アルコールを、全ジオール化合物(脂肪族2価アルコール+芳香族ジオール化合物+多価アルコール)中の25重量%以下、好ましくは20重量%以下、更に好ましくは15重量%以下含有させてもよい。
【0022】
a成分としては、化合物1及び/又は化合物2を含有することが特に好ましい。化合物1におけるnは1〜8であることがより好ましく、化合物1の分子量は300〜3000が特に好ましい。化合物2におけるR1は−CH2C6H10CH2−(1,4−シクロヘキサンジメタノール残基等のシクロヘキサンジメタノール残基)がより好ましく、R2は−C6H12−、−C5H10−がより好ましく、R1が−CH2C6H10CH2−(1,4−シクロヘキサンジメタノール残基)でありR2が−C6H12−であることが特に好ましい。更に、化合物2におけるp及びqはp+qが2〜18になるように選ばれる正の整数であることがより好ましい。
【0023】
(b成分)
b成分は、トリオール化合物及び/又はトリオール化合物誘導体である。なお、b成分であるトリオール化合物及び/又はトリオール化合物誘導体は、分子内にカーボネート構造を有しない化合物であり、この点においてa成分と異なる化合物である。トリオール化合物誘導体としてはトリオール多量体が好ましく、例えば、トリオール化合物がグリセリンである場合は、トリオール化合物誘導体としては、ジグリセリンや上記化合物3(化合物3におけるkは、1〜3の整数がより好ましい。)が挙げられる。
【0024】
トリオール化合物としては、更に、1,2,6−ヘキサントリオール、1,2,3−ヘプタントリオール、1,2,4−ブタントリオール、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、カシリトール、ピロガロール、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートが挙げられ、ε−カプロラクトン、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイドが付加重合した3官能ポリオール類なども例示可能である。
【0025】
なお、未硬化状態及び硬化後の上記特性を更に向上させる観点からは、トリオールの3つのヒドロキシル基のうち1つが、他の2つと比べてc成分との反応性が異なるものであることが好ましい。かかるトリオールとしては、グリセリン及びグリセリン誘導体が挙げられる。なお、b成分は単独で使用しても2種以上を併用してもよい。
【0026】
(c成分)
c成分は、ジオール化合物である。なお、c成分であるジオール化合物は、分子内にカーボネート構造を有しない化合物であり、この点においてa成分と異なる化合物である。
【0027】
c成分としては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリカプロラクトンポリオール、エチレンオキサイド変性ビスフェノール、プロピレンオキサイド変性ビスフェノール、エチレンオキサイドとプロピレンオキサイドとの共重合で得られるポリグリコールや2価アルコールと2塩基酸との脱水縮合反応で得られるポリエステルポリオール等が挙げられる。これらは単独で使用しても2種以上を併用してもよい。
【0028】
(d成分)
d成分は、ヒドロキシル基含有ウレタン不飽和化合物である。かかる化合物における不飽和基は(メタ)アクリロイル基由来であることが好ましい。また、ヒドロキシル基含有ウレタン不飽和化合物は、分子末端に1個のヒドロキシル基を有していることが好ましい。かかる化合物を用いることによりi成分の末端に不飽和基を導入することが可能となり、光硬化性樹脂組成物の硬化物の強靭性を向上させることが可能になる。
【0029】
d成分としては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート類及びこれらのエチレンオキサイド変性物、プロピレンオキサイド変性物、カプロラクトン変性物、テトラヒドロキシ変性物などを挙げることができる。これらは単独で使用しても2種以上を併用してもよい。なお、本発明において、(メタ)アクリレートはアクリレート又はメタクリレートを意味し、(メタ)アクリロイル等についてもこれと同様に取り扱う。
【0030】
(e成分)
e成分はジイソシアネート化合物である。かかる化合物としては、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、イソフォロンジイソシアネート、ノルボルネンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、水素添加されたトリレンジイソシアネート、水素添加されたキシリレンジイソシアネート、水素添加されたジフェニルメタンジイソシアネート、上記記載のジイソシアネートからなるウレチジオン化合物などが挙げられる。これらの化合物は単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
【0031】
光硬化性樹脂組成物の硬化物の特性を考慮すると、e成分はイソフォロンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、水素添加されたキシリレンジイソシアネート、水素添加されたジフェニルメタンジイソシアネートが好ましい。かかるジイソシアネートの使用により硬化物の機械強度、特に引っ張り伸び率が高く強靱で可とう性が向上する傾向にある。
【0032】
(i成分)
i成分は、上述したa〜e成分を反応させてなるヒドロキシル基含有ウレタン化合物であり、該化合物は分子末端及び/又は側鎖にヒドロキシル基を有したウレタン化合物である。硬化物の機械的強度の観点からは、i成分は分子末端及び側鎖にヒドロキシル基を有していることが好ましい。
【0033】
(ii成分)
ii成分は分子中に1個のイソシアネート基を有する不飽和化合物であるが、イソシアネート基は分子の片末端に存在することが好ましい。ii成分としては、2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネート(昭和電工(株)カレンズMOI)、ジメチル メタ−イソイソプロペニル ベンジルイソシアネート(上記化合物4、製造元:CYTEC社、販売元:三井武田ケミカル社のものが、製品名TMIとして使用可能である。)、及び/又は上記化合物5(アクリロイルイソシアネート、日本ペイント社のものが使用可能である。)を用いることが好ましい。なお、化合物5におけるR0は水素原子又はCH3が好ましい。
【0034】
ii成分としては、また、分子中に1個以上の(メタ)アクリロイル基と1個のヒドロキシル基とを含有するヒドロキシル基含有アクリレートと、分子中にイソシアネート基を2個有するジイソシアネート化合物とを、好ましくはヒドロキシル基当量/イソシアネート当量=0.5/1〜0.82/1でウレタン化反応させて得られる化合物を使用することもできる。
【0035】
ここで用いられるヒドロキシル基含有(メタ)アクリレートとしては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキルアクリレート類及びこれらのエチレンオキサイド変性物、プロピレンオキサイド変性物、カプロラクトン変性物、テトラヒドロキシ変性物等を挙げることができる。
【0036】
分子中にイソシアネート基を2個有するジイソシアネート化合物としては、例えば、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、イソフォロンジイソシアネート、水素添加されたトリレンジイソシアネート、水素添加されたキシリレンジイソシアネート、水素添加されたジフェニルメタンジイソシアネートを挙げることができる。なかでも、得られるii成分の粘度が低いことから、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、イソフォロンジイソシアネート、水素添加されたトリレンジイソシアネート、水素添加されたキシリレンジイソシアネートから選ばれる単独のジイソシアネート化合物が好ましい。
【0037】
(I成分)
I成分は、分子末端及び/又は側鎖に不飽和基を有するウレタン化合物であり、上記i成分を、該成分のヒドロキシル基が封鎖されるようにii成分でウレタン化させてなる化合物(すなわち、i成分のヒドロキシル基とii成分のイソシアネート基を反応させてなる化合物)である。I成分は分子末端及び側鎖に不飽和基を有するウレタン化合物であることが好ましく、かかる化合物は、i成分として、分子末端及び側鎖にヒドロキシル基を有しているウレタン化合物を用いることにより得ることができる。
【0038】
I成分は、硬化前の不粘着性及び硬化後の強靱性、耐薬品性、耐汚染性の観点から、重量平均分子量が10,000以上であることが好ましく、20,000〜100,000であることがより好ましい。10,000未満の場合は硬化前の非粘着性に劣る傾向にあり、150,000を超すと基材への塗工性及び硬化物の特性が全般的に低下する傾向にある。
【0039】
(各成分の比率)
a成分の水酸基当量、c成分の水酸基当量、d成分の水酸基当量、及び、b成分の水酸基当量の2/3との合計当量をXとし、e成分のイソシアネート当量をYとしたときに、Y/Xが1/1〜1/1.2であることが好ましく、1/1〜1/1.1であることがより好ましい。
【0040】
また、b成分の水酸基当量をx1、a成分の水酸基当量をx2、c成分の水酸基当量をx3、d成分の水酸基当量をx4としたときに、x1/(x2+x3+x4)が10/90〜65/35であることが好ましく、15/85〜40/60であることがより好ましい。そして、a成分、c成分及びd成分の割合については、これらのヒドロキシル基の総量に対して、それぞれのヒドロキシル基が10〜85モル%となるようにすることが好ましい。
【0041】
各成分の比率を上記の範囲内にした場合は、未硬化塗膜表面における非粘着性や、硬化物の機械強度、耐薬品性及び耐汚染性を更に向上させることが可能になる。
【0042】
(光硬化性樹脂組成物におけるI成分以外の添加成分)
本発明の光硬化性樹脂組成物は、I成分以外にも、上記II成分及び/又はIII成分を添加することもできる。
【0043】
II成分としては、単官能性または多官能性のアクリレート系化合物等を好ましく用いることができる。このような化合物としては、エポキシアクリレート、ウレタンアクリレート、アクリル樹脂アクリレート等の光重合性を有する樹脂、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、メトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド付加トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、N−ビニルピロリドン、アクリロイルモルフォリン、N−ビニルカプロラクタム、ヘキサヒドロフタルイミドアクリレートが挙げられる。
【0044】
更には、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、メトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシエチル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−メトキシエトキシ(メタ)アクリレート、2−エトキシエトキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシジプロピレングリコール(メタ)アクリレート、オクタフルオロペンチル(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、1,3−ブタンジオール(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオール(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオール(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸エステルネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、1,3−ビス(ヒドロキシエチル)−5,5−ジメチルヒダントイン、3−メチルペンタンジオール(メタ)アクリレート、α,ω−ジ(メタ)アクリルビスジエチレングリコールフタレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリトリット(メタ)アクリレート、ペンタエリトリットヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリトリットモノヒドロキシペンタ(メタ)アクリレート、α,ω−テトラアリルビストリメチロールプロパンテトラヒドロフタレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリロイルフォスフェート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコール(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ジ(メタ)アクリロキシエチルフォスフェート等が挙げられる。
【0045】
これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。II成分は、I成分との総和を基準として好ましくは0〜70質量部配合され、特に好ましくは50質量部以内で配合される。この量が70質量部を超えると硬化前の塗膜表面の非粘着性が低下する傾向にある。
【0046】
III成分としては、例えば、カルボニル系の光重合開始剤、例えば、ベンゾフェノン、ジアセチル、ベンジル、ベンゾイン、ω−ブロモアセトフェノン、クロロアセトン、アセトフェノン、2,2−ジエトキシアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトン、p−ジメチルアミノアセトフェノン、p−ジメチルアミノプロピオフェノン、2−クロロベンゾフェノン、p,p’−ビスジエチルアミノベンゾフェノン、ミヒラーケトン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾイン−n−ブチルエーテル、ベンジルジメチルケタール、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−オン、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、メチルベンゾイルホルメート、2,2−ジエトキシアセトフェノン、4−N,N’−ジメチルアセトフェノン類等、2,2−ジエトキシアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトン、p−ジメチルアミノアセトフェノン、p−ジメチルアミノプロピオフェノン、p,p′−ビスジエチルアミノベンゾフェノン、ミヒラーケトン、ベンゾインメチルエーテル、ベンジルジメチルケタール、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾフェノン、メチルベンゾイルホルメート、2,2−ジエトキシアセトフェノン、4−N,N′−ジメチルアセトフェノン類、2−メチル−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノ−1−プロパノン、2−4−ジエチルチオキサントン、オリゴ[2−ヒドロキシ−2−メチル−1−[4−(1−メチルビニル)フェニル]プロパノン、スルフィド系の光重合開始剤、例えば、ジフェニルジスルフィド、ジベンジルジスルフィド等、キノン系の光重合開始剤、例えば、ベンゾキノン、アントラキノン等、アゾ系の光重合開始剤、例えば、アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビスプロパン、ヒドラジン等、スルホクロリド系の光重合開始剤、例えば、チオキサントン等、過酸化物系の光重合開始剤、例えば、過酸化ベンゾイル、ジ−t−ブチルペルオキシド等、その他o−ジメチルアミノ安息香酸イソアミル等が挙げられる。
【0047】
これらのうち2−ヒドロキシ−2−メチル−1−オン、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン等が硬化時の黄変が少なく好ましい。これらは、単独で用いてもよく2種以上併用してもよい。III成分は、I成分とII成分との総和100質量部に対して、1〜10質量部、特に3〜5質量部の量で使用されるのが好ましい。この量が1質量部未満であると光硬化性が充分でなくなる傾向にあり、10質量部を超えると得られた塗膜の物性が全般的に低下する傾向にある。
【0048】
本発明の光硬化性樹脂組成物は、更に、炭化水素系有機溶剤、エステル系有機溶剤、ケトン系有機溶剤を含有していてもよい。また、必要に応じ重合禁止剤、レベリング剤、充填剤又は顔料、その他の改質剤を含有していてもよい。
【0049】
重合禁止剤としては、例えば、ハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、ベンゾキノン、p−t−ブチルカテコール、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール等が挙げられる。レベリング剤としては、例えば、ポリエーテル変性ジメチルポリシロキサン共重合物、ポリエステル変性ジメチルポリシロキサン共重合物、ポリエーテル変性メチルアルキルポリシロキサン共重合物、アラルキル変性メチルアルキルポリシロキサン共重合物、ポリエーテル変性メチルアルキルポリシロキサン共重合物等が挙げられる。充填剤又は顔料としては、炭酸カルシウム、タルク、マイカ、クレー、シリカパウダー、コロイダルシリカ、硫酸バリウム、水酸化アルミニウム、ステアリン酸亜鉛、亜鉛華、ベンガラ、アゾ顔料等が挙げられる。その他の改質剤としては、ポリオレフィン系樹脂、塩素化変性ポリオレフィン系樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、ビニルウレタン樹脂、ビニルエステルウレタン樹脂、ポリイソシアネート、ポリエポキシド、エポキシ末端ポリオキサゾリドン、アクリル樹脂類、アルキド樹脂類、尿素樹脂類、メラミン樹脂類、ポリジエン系エラストマー、飽和ポリエステル類、飽和ポリエーテル類、ニトロセルロース、セルロースアセテートブチレート等のセルロース誘導体、アマニ油、桐油、大豆油、ヒマシ油、エポキシ化油等の油脂類等の天然及び合成高分子物質が挙げられる。
【0050】
(光硬化性樹脂組成物の製造方法)
上記本発明の光硬化性樹脂組成物は、a成分、b成分、c成分及びd成分と、e成分と、を反応させてi成分を得る工程と、i成分とii成分とを、i成分のヒドロキシル基がii成分で封鎖されるようにウレタン化させて、I成分を得る工程と、を含む方法により製造することが好ましい。
【0051】
i成分を得る工程においては、a成分、b成分、c成分及びd成分並びに重合禁止剤及びウレタン化触媒をフラスコに仕込み、好ましくは40〜70℃に加温し、e成分を滴下する方法を採用することができる。反応の完結は、IR測定により2270cm−1のNCO特性吸収帯の痕跡がなくなるまで保温を持続することにより達成できる。ウレタン化触媒としては、錫系、アミン系等の公知のウレタン化触媒を使用できる。
【0052】
I成分を得る工程においては、例えば、i成分とウレタン化触媒とをフラスコに仕込み、40〜70℃に加温し、ii成分を滴下する方法を採用することができる。ウレタン化触媒としては、錫系、アミン系等の公知のウレタン化触媒を使用できる。
【0053】
かかる製造方法においても、a成分、c成分及びd成分それぞれの水酸基当量と、b成分の水酸基当量の2/3との合計当量をXとし、e成分のイソシアネート当量をYとしたときに、Y/Xが1/1〜1/1.2であることが好ましく、b成分の水酸基当量をx1、a成分の水酸基当量をx2、c成分の水酸基当量をx3、d成分の水酸基当量をx4としたときに、x1/(x2+x3+x4)が10/90〜65/35であることが好ましい。
【0054】
(光硬化性樹脂組成物の用途等)
本発明の光硬化性樹脂組成物は、紫外線又は電子線の照射によって硬化可能であり、硬化物は機械強度、耐薬品性及び耐汚染性等に優れるため、プラスチック、木工基材、金属、無機基材、CD・DVD情報記録材等の光硬化性塗料、光硬化性接着剤、光硬化性印刷インキ、光硬化性ニス用バインダ、光硬化性保護フィルム等として有用である。光硬化性塗料として用いる場合は、本発明の光硬化性樹脂組成物に光開始剤、レべリング剤、シランカップリング剤、ポリイソシアネート硬化剤等の公知の塗料用配合剤を添加してもよい。
【0055】
【実施例】
次に、本発明を実施例及び比較例により詳細に説明するが、本発明はこれらによって制限されるものではない。なお、以下において、特に断りのない限り、部は重量部を意味し、また、%は重量%を意味する。
【0056】
(合成例1:ii成分の合成)
撹拌機、温度計、冷却管及び空気ガス導入管を備えたガラス製の反応容器に空気ガスを導入した後、イソフォロンジイソシアネート222部を仕込み、70℃に昇温後70〜75℃に保温し、2−ヒドロキシエチルアクリレート116部、ハイドロキノンモノメチルエーテル0.17部、ジブチルスズジラウレート0.05部の混合液体を2時間で均一に滴下し反応させた。滴下完了後約4時間反応を継続し、イソシアネート量が12.0%のii成分を得た(以下「化合物B」という。)。
【0057】
(実施例1:I成分の合成)
撹拌機、温度計、冷却管及び空気ガス導入管を備えた1Lのガラス製反応容器に空気ガスを導入した後、以下の表1に示す製造例1の配合1を759.05重量節込み、70℃に昇温後70〜75℃に保温し、製造例1の配合2(241重量部)を3時間で均一に滴下し反応させた。滴下完了後約6時間反応を継続し、IR測定によりイソシアネートが消失したことを確認して反応を終了し、重量平均分子量が25、000、ヒドロキシル価9.5mgKOH/gのヒドロキシル基含有ウレタン化合物(i成分)を得た。続けて70〜75℃に保温を継続し、製造例1の配合3(97.6重量部)を2時間で均一に滴下し反応させた。滴下終了後約6時間反応を継続し、IR測定によりイソシアネートが消失したことを確認して反応を終了し、重量平均分子量が27,000の両末端及び側鎖に不飽和基(ラジカル重合性不飽和基)を含有するウレタン化合物(I成分)を得た。
【0058】
【表1】
【0059】
(実施例2:I成分の合成)
表1における製造例2の配合1、2及び3を使用した以外は、実施例1と同様に合成を行い、重量平均分子量が77,000の両末端及び側鎖に不飽和基(ラジカル重合性不飽和基)を含有するウレタン化合物(I成分)を得た。
【0060】
(比較例1)
撹拌機、温度計、冷却管及び空気ガス導入管を備えた1Lのガラス製反応容器に空気ガスを導入した後、表1における製造例3の配合1を759.05重量部込み、70℃に昇温後70〜75℃に保温し、製造例3の配合2(241重量部)を3時間で均一に滴下し反応させた。滴下完了後約6時間反応を継続し、IR測定によりイソシアネートが消失したことを確認して反応を終了し、重量平均分子量が25、000、ヒドロキシル価9.5mgKOH/gの両末端に不飽和基(ラジカル重合性不飽和基)を含有するウレタン化合物を得た。
【0061】
(比較例2)
表1における製造例4の配合1及び2を使用した以外は、比較例1と同様に合成を行い、重量平均分子量が15,000、ヒドロキシル価6.7mgKOH/gの両末端に不飽和基(ラジカル重合性不飽和基)を含有するウレタン化合物を得た。
【0062】
(比較例3)
撹拌機、温度計、冷却管及び空気ガス導入管を備えた1Lのガラス製反応容器に空気ガスを導入した後、製造例5の配合1を733.8重量節込み、70℃に昇温後70〜75℃に保温し、製造例5の配合2(266.2重量部)を3時間で均一に滴下し反応させた。滴下完了後約6時間反応を継続し、IR測定によりイソシアネートが消失したことを確認して反応を終了し、重量平均分子量が23、000、ヒドロキシル価18.3mgKOH/gのヒドロキシル基含有ウレタン化合物(A)を得た。続けて70〜75℃に保温を継続し、製造例5の配合3(110重量部)を2時間で均一に滴下し反応させた。滴下終了後約6時間反応を継続し、IR測定によりイソシアネートが消失したことを確認して反応を終了し、重量平均分子量が26,000の両末端及び側鎖に不飽和基(ラジカル重合性不飽和基)を含有するウレタン化合物を得た。
【0063】
(光硬化性樹脂組成物の配合例)
実施例1〜2及び比較例1〜3のラジカル重合性不飽和基を含有するウレタン化合物と光重合開始剤として1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(チバスペシャリィティーケミカル社製、イルガキュア184)を樹脂固形分に対して5重量%溶解させて光重合性樹脂組成物を調整した。
【0064】
(光硬化性樹脂組成物の性能評価)
バーコータNo.20を用いて、上記で得られた光硬化性樹脂組成物を、ガラス板(150m×70mm×2mm)に塗布し、70℃に加温した熱風乾燥機内で約10分間乾燥した後、紫外線照射装置(6kw、80w/cm高圧水銀灯×2灯)で、高圧水銀灯1灯により、照射距離15cm、コンベア速度10m/分(1回の照射量約250mJ/cm2 )の条件で紫外線を照射して形成した塗膜について、耐フェルトペン汚染性、耐溶剤性、鉛筆硬さ、引張強度、引張伸び率及び硬化前非粘着性を以下のようにして調べた。評価結果を以下の表2に示す。
【0065】
(耐フェルトペン汚染性)
赤及び黒の油性フェルトペンを用いて塗膜を汚染させた後常温に6時間放置せしめた後n−ブタノールで拭き取り塗膜の汚染の程度と状態を総合的に目視により判定した。
【0066】
(耐溶剤性)
キシレンを染み込ませた脱脂綿を使用して、塗膜表面をラビングした。塗膜表面に異常が発生するまでのラビング回数(一往復を1回とする。)を比較した。
【0067】
(鉛筆硬さ)
JISK5400に準拠して塗膜表面にキズ跡が残らない鉛筆硬さと、塗膜が破壊しないまでの鉛筆硬さを評価した。
【0068】
(引張強度及び引張伸び率)
アプリケータNo.200(スガ試験機社製)を用いて、得られた光硬化性樹脂組成物をガラス板上に塗布し、70℃に加温した熱風乾燥機内で約10分間乾燥した後、紫外線照射装置(6kw、80w/cm高圧水銀灯×2灯)で、高圧水銀灯1灯により、照射距離15cm、コンベア速度10m/分(1回の照射量約250mJ/cm2)の条件で紫外線を照射して形成した塗膜を引き剥がし、厚さ約50μmの硬化フィルムを作製して、引張強度及び引張伸び率を次のようにして評価した。
【0069】
引張伸び率:作成した硬化フィルムを5℃の環境温度で長さ100mm、幅10mmの短冊形に切り出して作製した試験片を、1元・2元冷凍機式恒温槽内で25℃の環境温度においてテストスパン50mmで引張速度10mm/分で硬化フィルムが破断するまで引っ張り、破断時の伸び(mm)から、以下の式により求めた。
伸び率(%)=100×(破断時の伸び/50)
【0070】
引張強度:引張伸び率の試験において、破断強さ(N)から、以下の式により求めた。但し、Aは試験片の幅(cm)、Bは試験片の厚さ(cm)を意味する。
抗張力=破断強さ/A×B
【0071】
(硬化前非粘着性)
バーコータNo.16を用いて、得られた光硬化性樹脂組成物を、ブリキ板上に塗布し70℃に加温した熱風乾燥機内で約10分間乾燥させ、乾燥膜厚が約10μmの塗膜を得た。次いで、塗膜表面上に50mm四方のガーゼ(日本薬局法に規定されているもの)を置きガーゼの中央に直径40mm、重量約500gの分銅を載せ、40℃に加温した熱風乾燥機内に約30分間放置させた。その後、23℃に放冷させ塗膜表面からガーゼを除き塗膜表面のガーゼの網目模様の跡を目視観察した。
【0072】
【表2】
【0073】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、溶剤等の揮発成分の揮発後の未硬化塗膜表面を非粘着状態にでき、ゴミや粉塵の付着を防止することが可能であるのみならず、シート状に加工した際もカバーシート等の被覆なしに重ね合わせることが可能で、硬化後には機械強度、耐薬品性及び耐汚染性等に優れた硬化物を与える光硬化型樹脂組成物を提供することが可能になる。また、かかる光硬化性樹脂組成物を光硬化してなる樹脂硬化物、かかる光硬化性樹脂組成物を含む光硬化性塗料、並びに光硬化性樹脂組成物の製造方法を提供することが可能になる。
Claims (17)
- (I)分子末端及び/又は側鎖に不飽和基を有するウレタン化合物を含有する光硬化性樹脂組成物であって、
前記(I)分子末端及び/又は側鎖に不飽和基を有するウレタン化合物は、
(i)ヒドロキシル基含有ウレタン化合物を、該化合物のヒドロキシル基が封鎖されるように、(ii)分子中に1個のイソシアネート基を有する不飽和化合物でウレタン化させてなる化合物であり、
前記(i)ヒドロキシル基含有ウレタン化合物は、
(a)分子中に少なくとも2個のヒドロキシル基を有するポリカーボネート化合物、(b)トリオール化合物及び/又はトリオール化合物誘導体、(c)ジオール化合物及び(d)ヒドロキシル基含有不飽和化合物と、(e)ジイソシアネート化合物と、を反応させてなる化合物であることを特徴とする光硬化性樹脂組成物。 - 前記(I)分子末端及び/又は側鎖に不飽和基を有するウレタン化合物は、重量平均分子量が10,000以上の化合物であることを特徴とする請求項1記載の光硬化性樹脂組成物。
- 前記(a)分子中に少なくとも2個のヒドロキシル基を有するポリカーボネート化合物は、下記一般式(1)で表される化合物及び/又は下記一般式(2)で表される化合物を含むことを特徴とする請求項1又は2記載の光硬化性樹脂組成物。
- 前記R1が、−CH2C6H10CH2−であることを特徴とする請求項3記載の光硬化性樹脂組成物。
- 前記(a)分子中に少なくとも2個のヒドロキシル基を有するポリカーボネート化合物は、融点が20℃以上の化合物であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の光硬化性樹脂組成物。
- 前記(a)分子中に少なくとも2個のヒドロキシル基を有するポリカーボネート化合物、前記(c)ジオール化合物及び前記(d)ヒドロキシル基含有不飽和化合物それぞれの水酸基当量と、(b)トリオール化合物及び/又はトリオール化合物誘導体の水酸基当量の2/3との合計当量をXとし、前記(e)ジイソシアネート化合物のイソシアネート当量をYとしたときに、Y/Xが1/1〜1/1.2であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の光硬化性樹脂組成物。
- 前記(b)トリオール化合物及び/又はトリオール化合物誘導体の水酸基当量をx1、前記(a)分子中に少なくとも2個のヒドロキシル基を有するポリカーボネート化合物の水酸基当量をx2、前記(c)ジオール化合物の水酸基当量をx3、前記(d)ヒドロキシル基含有不飽和化合物の水酸基当量をx4としたときに、x1/(x2+x3+x4)が10/90〜65/35であることを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載の光硬化性樹脂組成物。
- (II)分子中に不飽和基を1個以上有する光重合性化合物を更に含有することを特徴とする請求項1〜9のいずれか一項に記載の光硬化性樹脂組成物。
- (III)光重合開始剤を更に含有することを特徴とする請求項1〜10のいずれか一項に記載の光硬化性樹脂組成物。
- 光硬化前の乾燥皮膜が20℃で非粘着性であることを特徴とする請求項1〜11のいずれか一項に記載の光硬化性樹脂組成物。
- 請求項1〜12のいずれか一項に記載の光硬化性樹脂組成物を光硬化してなる樹脂硬化物。
- 請求項1〜12のいずれか一項に記載の光硬化性樹脂組成物を含むことを特徴とする光硬化性塗料。
- (a)分子中に少なくとも2個のヒドロキシル基を有するポリカーボネート化合物、(b)トリオール化合物及び/又はトリオール化合物誘導体、(c)ジオール化合物及び(d)ヒドロキシル基含有不飽和化合物と、(e)ジイソシアネート化合物とを反応させて、(i)ヒドロキシル基含有ウレタン化合物を得る工程と、
前記(i)ヒドロキシル基含有ウレタン化合物と(ii)分子中に1個のイソシアネート基を有する不飽和化合物とを、該(i)ヒドロキシル基含有ウレタン化合物のヒドロキシル基が該(ii)分子中に1個のイソシアネート基を有する不飽和化合物で封鎖されるようにウレタン化させて、(I)分子末端及び/又は側鎖に不飽和基を有するウレタン化合物を得る工程と、を含むことを特徴とする、分子末端及び/又は側鎖に不飽和基を有するウレタン化合物を含有する光硬化性樹脂組成物の製造方法。 - 前記(a)分子中に少なくとも2個のヒドロキシル基を有するポリカーボネート化合物、前記(c)ジオール化合物及び前記(d)ヒドロキシル基含有不飽和化合物それぞれの水酸基当量と、(b)トリオール化合物及び/又はトリオール化合物誘導体の水酸基当量の2/3との合計当量をXとし、前記(e)ジイソシアネート化合物のイソシアネート当量をYとしたときに、Y/Xが1/1〜1/1.2であることを特徴とする請求項15記載の製造方法。
- 前記(b)トリオール化合物及び/又はトリオール化合物誘導体の水酸基当量をx1、前記(a)分子中に少なくとも2個のヒドロキシル基を有するポリカーボネート化合物の水酸基当量をx2、前記(c)ジオール化合物の水酸基当量をx3、前記(d)ヒドロキシル基含有不飽和化合物の水酸基当量をx4としたときに、x1/(x2+x3+x4)が10/90〜65/35であることを特徴とする請求項15又は16記載の製造方法。
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