JP2004035512A - フッ素化合物及び撥水剤 - Google Patents
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Abstract
【課題】長期間にわたって優れた撥水性を示し、低級アルコールや毒性の低い炭化水素系溶媒に可溶であるフッ素化合物及び撥水剤を提供する。
【解決手段】一般式(1)
R1CH{(CH2)1−aCOOR2}(CH2)aCOORf
−OCO(CH2)bCH{(CH2)1−bCOOR2}R1・・・(1)
(但し、上式中R1は脂肪族アルキル基又は脂肪族アルケニル基又は水素を表す。また、R2はフロロアルキル基、フロロアルケニル基または水素のいずれかを表す。また、Rfはパーフルオロポリエーテル基を表し、aとbはそれぞれ1または0である。)で示されるフッ素化合物と、それを含有する撥水剤。
【解決手段】一般式(1)
R1CH{(CH2)1−aCOOR2}(CH2)aCOORf
−OCO(CH2)bCH{(CH2)1−bCOOR2}R1・・・(1)
(但し、上式中R1は脂肪族アルキル基又は脂肪族アルケニル基又は水素を表す。また、R2はフロロアルキル基、フロロアルケニル基または水素のいずれかを表す。また、Rfはパーフルオロポリエーテル基を表し、aとbはそれぞれ1または0である。)で示されるフッ素化合物と、それを含有する撥水剤。
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、特定の構造を持つパーフルオロポリエーテルを含有する撥水剤に関し、特に、長期間にわたって優れた撥水性を示すと共に、溶媒への溶解性及び塗布される面への親和性が向上したフッ素化合物と、それを含有する操作性に優れた撥水剤に関する。
【0002】
【従来の技術】
特開昭62−45562号公報には、低温領域においても潤滑作用を示す化合物として、一般式(4)
Cn Fm CO2 Ca Xb ・・・(4)
(但し、上式中Xは水素原子、フッ素原子又はその両者であり、n≧6、m≦2n+1、a≧8、b≦2a+1である)で示されるペルフルオロカルボン酸エステルが開示されている。この公報には、nが大き過ぎると低温領域で凝固するようになることから、実用上はn≦10程度が好ましいことが記載されている。
【0003】
特開平6−316548号公報には、上記の式(4)で示されるペルフルオロカルボン酸エステルで11≦n≦20、6≦a≦24とした撥水剤が開示されている。m、bは特開昭62−45562号公報と同様に、m≦2n+1、b≦2a+1である。
【0004】
この公報には、nが11未満のときは撥水性が不足し、n、aを上記の範囲とすることにより、撥水作用が得られることが記載されている。この公報の実施例では、式(4)で示され、11≦n≦20、6≦a≦24であるペルフルオロカルボン酸エステルをエーテル、灯油、ヘキサン、トルエンまたはクロロホルムに溶解させ、撥水剤としての試験を行っている。
【0005】
また、特開平11−61046号公報には、含フッ素オルガノポリシロキサンを含有する撥水剤が開示されている。この撥水剤は油状化合物であり、実施例では溶媒で希釈せずに、鉄板に塗布されている。この撥水剤は、炭化水素系ワックスとの相溶性に優れ、特に自動車等の塗膜用の撥水剤、保護剤に適していることが記載されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
潤滑剤として使用される特開平6−316548号公報記載の化合物は、フッ素が表面を十分に覆うことができず、その結果十分な撥水性を得ることができなかった。また、撥水剤として用いられるパーフルオロポリエーテルはアルコール等の溶媒には溶けにくく、その扱いやすさ(操作性)や環境への負荷等の観点から問題を抱えていた。
【0007】
一方、特開平11−61046号公報記載の撥水剤は油状化合物であるため、繊維等に塗布する場合には、操作性の観点から、溶媒で希釈することが望ましいと考えられる。しかしながら、この撥水剤も極性の高い溶媒に対する溶解度が低く、工業用ガソリン等の脂肪族炭化水素や、キシレン、トルエン等の芳香族炭化水素あるいはエーテル等の溶媒を使用する必要がある。したがって、撥水剤が塗布された部分に残留した溶媒が人体に悪影響を及ぼしたり、あるいは、撥水剤を例えば濃色の繊維に使用した場合に、撥水剤の溶媒によって繊維の染料が溶解・遊離して色ムラを起こしたりする可能性がある。
【0008】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、したがって本発明は、長期間にわたって優れた撥水性を示し、低級アルコールや毒性の低い炭化水素系溶媒に可溶であるフッ素化合物からなる撥水剤を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するため、本発明のフッ素化合物は、一般式(1)
R1CH{(CH2)1−aCOOR2}(CH2)aCOORf
−OCO(CH2)bCH{(CH2)1−bCOOR2}R1・・・(1)
(但し、上式中R1は脂肪族アルキル基又は脂肪族アルケニル基又は水素を表す。また、R2はフロロアルキル基、フロロアルケニル基または水素のいずれかを表す。また、Rfはパーフルオロポリエーテル基を表し、aとbはそれぞれ1または0である。)で示される。
【0010】
また、本発明の撥水剤は式(1)で示されるフッ素化合物を含有する。本発明の撥水剤は、一般式(2)
R1−C4H3O3・・・(2)
(但し、上式中R1は脂肪族アルキル基又は脂肪族アルケニル基をあらわす)で示される少なくとも一種類のアルキルこはく酸無水物と、一般式(3)
HO−CH2CF2(CF2O)n(CF2CF2O)mCF2CH2−OH
・・・(3)
(但し、上式中n,mは1以上の整数である)で示される少なくとも1種類のフッ素化合物を原料とする。
【0011】
これにより、比較的毒性が低く、環境への負荷も少ないアルコール等の溶媒を用いて塗布できる撥水剤が得られる。また、本発明の撥水剤は、長期間にわたって撥水作用を示す。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明のフッ素化合物及び撥水剤の実施の形態について説明する。本発明のフッ素化合物は、一般式(1)
R1CH{(CH2)1−aCOOR2}(CH2)aCOORf
−OCO(CH2)bCH{(CH2)1−bCOOR2}R1・・・(1)
(但し、上式中R1は脂肪族アルキル基又は脂肪族アルケニル基又は水素を表す。また、R2はフロロアルキル基、フロロアルケニル基または水素のいずれかを表す。また、Rfはパーフルオロポリエーテル基を表し、aとbはそれぞれ1または0である。)で示される化合物であり、本発明の撥水剤は上式(1)で示される化合物を含有する。
【0013】
この物質は分子内にこはく酸由来の骨格とパーフルオロポリエーテル基を持つことを特徴とする。従来撥水剤として用いられていたペルフルオロカルボン酸は、低分子系のフッ素鎖が表面に対して角度を持っているため、十分に表面を被覆することができなかった。
【0014】
本発明のモノカルボン酸モノエステルは分子内にフッ素系高分子からなる部分をもつため、十分に表面を被覆することができる。また、パーフルオロポリエーテル基にアルキル基がつくことで、溶媒への溶解性が増し、扱いやすく、環境負荷の少ないものになっている。
【0015】
ここでR1で示されるアルキル基の炭素数nは6≦n≦30が望ましく、より望ましくは10≦n≦21である。n≦5のとき、撥水性が十分でなく、n≧22では溶解性が低下するという不具合が生じる。
また、R1で示されるアルキル基の水素数mは炭素数nに対してm=2n+1またはm=2n−1であることが望ましい。m=2n+1である場合、その形状は直鎖状または、炭素鎖に一つの枝分かれ構造を持つ分岐状構造を取ることが好ましい。
【0016】
また、Rfで示されるパーフルオロポリエーテルの平均分子量は500以上8000以下が望ましく、より望ましくは1000以上5000以下である。平均分子量が500以下のとき、撥水性が十分ではなく、8000を越えると溶解性が低下したり、基板への付着力が十分でなくなったりするおそれがある。
【0017】
また、R2で示される部分フッ化アルキル基の炭素数nは6≦n≦30が望ましく、より望ましくは6≦n≦16である。n≦5のとき、撥水性が十分でなく、n≧17では溶解性が低下するという不具合が生じる。
R2が部分フッ化アルキル基であるとき、高さのあるフッ素膜が加わるため、撥水性は更に優れたものとなる。またR2が水素であるとき、一般式(1)で示される含フッ素化合物の吸着力(撥水剤が塗布される面への親和性)が大きくなるため、より耐久性に優れた撥水剤となる。
【0018】
このように一般式(1)で示される含フッ素化合物は、分子内に含まれるパーフルオロポリエーテルによって高い撥水作用を有し、単独で又は混合して、あるいは公知の撥水剤と組み合わせて撥水剤として使用することができる。
本発明により得られる撥水剤は以上のような優れた特長を有するので、撥水性や防汚性等の特に求められる用途に適する。
【0019】
例えば屋外の雨水に晒される用途に、本発明の撥水剤を使用できる。この場合、例えば自動車用のカーワックス、外壁の防汚剤、テント類、自動車カバー、二輪車カバー、トラック荷台用の幌、工事用被覆シート、雨傘、レインコート等の衣類、靴等の防水剤としての使用が可能である。また、本発明の撥水剤は優れた潤滑性を兼ね備えているため、AR(antireflection)フィルム等のディスプレイの防汚剤として使用することも可能である。
【0020】
【実施例】
更に、本発明を実施例及び比較例により詳細に説明するが、本発明はこれらによって制限されるものではない。
<合成例1>
まず、イソオクタデシルコハク酸無水物45gとFomblin Z−dol2000(Audimont社)150gを400ccのトルエンに溶解し、濃硫酸を触媒量添加して、3時間還流した。
【0021】
次いで、放冷後反応液を水洗し、硫酸マグネシウムを加えて乾燥させた後に濃縮した。カラムクロマトグラフィ(シリカゲル/酢酸エチル、トルエン混合溶媒)により原料を除去し、目的物を分取した。最後に、展開液を濃縮することにより、C9H19CH(C7H15)CH2CH(COOH)CH2COOCH2(CF2O)n(CF2CF2O)mCH2OCOCH2CH(COOH)CH2CH(C7H15)C9H19を160g得た。これを化合物1とする。
【0022】
<合成例2>
まず、撥水剤としてC9H19CH(C7H15)CH2CH(COOH)CH2COOC10H20C8F17を、以下に示すようにして合成した。
まず、9−デセン−1−オール(CH2=CH(CH2)8OH)15.6gと、パーフルオロオクチルアイオダイド(F(CF2)8I)54.6gとをフラスコに入れ窒素バブルを行った。
【0023】
次いで、AIBN(2,2’−Azobis−isobutyronitrile)0.05gを加え加熱還流し、8時間反応させた。反応終了後、減圧蒸留により原料を留去すると、残留物としてF(CF2)8CH2CHI(CH2)8OHを、56g得た。
次いで、残留物として得られた56gのF(CF2)8CH2CHI(CH2)8OHを400ccのエタノールに溶解し、濃塩酸40ccを添加して加熱した。そして、亜鉛粉末6gを少量ずつ加え、2時間還流した。さらに濃硫酸20ccを添加して、1時間還流した。反応終了後、溶液が熱いうちにろ過し、得られたろ液を濃縮した。
【0024】
次いで、濃縮したろ液に10%の水酸化ナトリウム水溶液200ccを加えて撹拌し、沈殿物を得た。その後、この沈殿をろ過、乾燥することにより、F(CF2)8CH2CH2(CH2)8OHを37g得た。
次いで、合成例1で得られた化合物1を160gと塩化チオニル25gを混合し、100度の油浴中で5時間還流した。放冷後、未反応の塩化チオニルを除去した。
【0025】
これに37gのF(CF2)8CH2CH2(CH2)8OHを加え、100度の油浴中で5時間加熱した。放冷後反応液を水洗し、硫酸マグネシウムを加えて乾燥させた後に濃縮した。カラムクロマトグラフィ(シリカゲル/酢酸エチル、トルエン混合溶媒)により原料を除去し、目的物を分取した。
【0026】
最後に、展開液を濃縮することにより、C9H19CH(C7H15)CH2CH(COOC10H20C8F18)CH2COOCH2(CF2O)n(CF2CF2O)mCH2OCOCH2CH(COOC10H20C8F18)CH2CH(C7H15)C9H19を180g得た。これを化合物2とする。
【0027】
また、上記化合物1、2と同様な合成方法によって、化合物1、2とは異なる撥水剤として、下記表1に示す8種の化合物3〜化合物10を合成した。また、比較例として下記表2に示す4種類の化合物11〜化合物14を合成した。尚、表2中、m、nは1以上の整数をそれぞれ表す。
【0028】
【表1】
【0029】
【表2】
【0030】
表1に示す化合物1〜10の2重量%エタノール溶液(実施例1〜10)及び表2に示す化合物11〜14の2重量%エタノール溶液(比較例1〜4)を調製した。また、化合物1〜14のいずれも含まないエタノールを比較例5とした。これらの溶液をガラス基板上に滴下し、塗り広げた。
【0031】
乾燥後、脱脂綿で基板表面を磨いて基板上に膜を形成させた後、3時間以内にこの膜の水との接触角を接触角計〔協和界面科学社製,CA−D〕で測定した。また、ばねばかりにとりつけた10gの銅片をガラス基板上で走行させ、摩擦係数を測定した。作成したガラス基板を60℃90%RHの恒温槽で3ヶ月間保存後、同様の測定を行った。
【0032】
一方、上記の化合物1〜10の2重量%エタノール溶液(実施例1〜10)、化合物11〜14の2重量%エタノール溶液(比較例1〜4)及び化合物を含まないエタノール(比較例5)に木綿生地を浸した後乾燥させ、JIS−D−1092−1977に従って撥水性を評価し、下記表3に示されるような数字で表示した。評価はサンプル作成から3時間以内に行った。また、作成した布地を60℃90%RHの恒温槽で3ヶ月間保存後、同様の測定を行った。
【0033】
【表3】
【0034】
上記の接触角、摩擦係数及び撥水性の測定結果を表4及び表5に示す。
【0035】
【表4】
【0036】
【表5】
【0037】
表4及び表5から、構造式(1)で示される化合物を撥水剤に用いたガラス基板および布地は優れた撥水性を示し、また保存による特性の劣化が少ないことが分かった。
一方、比較例1では分子内にコハク酸由来の骨格を持たないため、撥水性、潤滑性のどちらにも効果は見られなかった。
【0038】
比較例2ではアルキル基の炭素数とフッ素基の炭素数が適切でなかったため、溶解度が小さく、撥水剤溶液を調整することが出来ない場合があった。また、比較例3ではアルキル基の炭素数とフッ素基の炭素数が適切でなかったため、撥水性、潤滑性のどちらにも著しい効果は見られなかった。
【0039】
比較例4では、溶媒に溶けにくいパーフルオロポリエーテル誘導体をエステル化せずに用いているため、撥水剤溶液を調整することができなかった。比較例5では、撥水剤を用いなかったため、撥水性、潤滑性のどちらにも著しい効果は見られなかった。
【0040】
以上のように、本発明のフッ素化合物は優れた撥水性を示すと共に、低級アルコールに対する溶解性及び塗布面への親和性に優れている。また、これらの化合物を含有する本発明の撥水剤は、高い撥水作用を示し、操作性及び製膜性に優れている。したがって、本発明の撥水剤は、繊維製品等を含む様々な物体の防水処理やワックス、防汚剤等に撥水剤として添加するのに有効である。
【0041】
【発明の効果】
本発明のフッ素化合物及びそれを含む撥水剤によれば、長期間にわたって優れた撥水性が得られると共に、低級アルコール等の低毒性で環境負荷の少ない溶媒を用いて撥水剤を塗布することが可能となる。
【発明の属する技術分野】
本発明は、特定の構造を持つパーフルオロポリエーテルを含有する撥水剤に関し、特に、長期間にわたって優れた撥水性を示すと共に、溶媒への溶解性及び塗布される面への親和性が向上したフッ素化合物と、それを含有する操作性に優れた撥水剤に関する。
【0002】
【従来の技術】
特開昭62−45562号公報には、低温領域においても潤滑作用を示す化合物として、一般式(4)
Cn Fm CO2 Ca Xb ・・・(4)
(但し、上式中Xは水素原子、フッ素原子又はその両者であり、n≧6、m≦2n+1、a≧8、b≦2a+1である)で示されるペルフルオロカルボン酸エステルが開示されている。この公報には、nが大き過ぎると低温領域で凝固するようになることから、実用上はn≦10程度が好ましいことが記載されている。
【0003】
特開平6−316548号公報には、上記の式(4)で示されるペルフルオロカルボン酸エステルで11≦n≦20、6≦a≦24とした撥水剤が開示されている。m、bは特開昭62−45562号公報と同様に、m≦2n+1、b≦2a+1である。
【0004】
この公報には、nが11未満のときは撥水性が不足し、n、aを上記の範囲とすることにより、撥水作用が得られることが記載されている。この公報の実施例では、式(4)で示され、11≦n≦20、6≦a≦24であるペルフルオロカルボン酸エステルをエーテル、灯油、ヘキサン、トルエンまたはクロロホルムに溶解させ、撥水剤としての試験を行っている。
【0005】
また、特開平11−61046号公報には、含フッ素オルガノポリシロキサンを含有する撥水剤が開示されている。この撥水剤は油状化合物であり、実施例では溶媒で希釈せずに、鉄板に塗布されている。この撥水剤は、炭化水素系ワックスとの相溶性に優れ、特に自動車等の塗膜用の撥水剤、保護剤に適していることが記載されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
潤滑剤として使用される特開平6−316548号公報記載の化合物は、フッ素が表面を十分に覆うことができず、その結果十分な撥水性を得ることができなかった。また、撥水剤として用いられるパーフルオロポリエーテルはアルコール等の溶媒には溶けにくく、その扱いやすさ(操作性)や環境への負荷等の観点から問題を抱えていた。
【0007】
一方、特開平11−61046号公報記載の撥水剤は油状化合物であるため、繊維等に塗布する場合には、操作性の観点から、溶媒で希釈することが望ましいと考えられる。しかしながら、この撥水剤も極性の高い溶媒に対する溶解度が低く、工業用ガソリン等の脂肪族炭化水素や、キシレン、トルエン等の芳香族炭化水素あるいはエーテル等の溶媒を使用する必要がある。したがって、撥水剤が塗布された部分に残留した溶媒が人体に悪影響を及ぼしたり、あるいは、撥水剤を例えば濃色の繊維に使用した場合に、撥水剤の溶媒によって繊維の染料が溶解・遊離して色ムラを起こしたりする可能性がある。
【0008】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、したがって本発明は、長期間にわたって優れた撥水性を示し、低級アルコールや毒性の低い炭化水素系溶媒に可溶であるフッ素化合物からなる撥水剤を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するため、本発明のフッ素化合物は、一般式(1)
R1CH{(CH2)1−aCOOR2}(CH2)aCOORf
−OCO(CH2)bCH{(CH2)1−bCOOR2}R1・・・(1)
(但し、上式中R1は脂肪族アルキル基又は脂肪族アルケニル基又は水素を表す。また、R2はフロロアルキル基、フロロアルケニル基または水素のいずれかを表す。また、Rfはパーフルオロポリエーテル基を表し、aとbはそれぞれ1または0である。)で示される。
【0010】
また、本発明の撥水剤は式(1)で示されるフッ素化合物を含有する。本発明の撥水剤は、一般式(2)
R1−C4H3O3・・・(2)
(但し、上式中R1は脂肪族アルキル基又は脂肪族アルケニル基をあらわす)で示される少なくとも一種類のアルキルこはく酸無水物と、一般式(3)
HO−CH2CF2(CF2O)n(CF2CF2O)mCF2CH2−OH
・・・(3)
(但し、上式中n,mは1以上の整数である)で示される少なくとも1種類のフッ素化合物を原料とする。
【0011】
これにより、比較的毒性が低く、環境への負荷も少ないアルコール等の溶媒を用いて塗布できる撥水剤が得られる。また、本発明の撥水剤は、長期間にわたって撥水作用を示す。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明のフッ素化合物及び撥水剤の実施の形態について説明する。本発明のフッ素化合物は、一般式(1)
R1CH{(CH2)1−aCOOR2}(CH2)aCOORf
−OCO(CH2)bCH{(CH2)1−bCOOR2}R1・・・(1)
(但し、上式中R1は脂肪族アルキル基又は脂肪族アルケニル基又は水素を表す。また、R2はフロロアルキル基、フロロアルケニル基または水素のいずれかを表す。また、Rfはパーフルオロポリエーテル基を表し、aとbはそれぞれ1または0である。)で示される化合物であり、本発明の撥水剤は上式(1)で示される化合物を含有する。
【0013】
この物質は分子内にこはく酸由来の骨格とパーフルオロポリエーテル基を持つことを特徴とする。従来撥水剤として用いられていたペルフルオロカルボン酸は、低分子系のフッ素鎖が表面に対して角度を持っているため、十分に表面を被覆することができなかった。
【0014】
本発明のモノカルボン酸モノエステルは分子内にフッ素系高分子からなる部分をもつため、十分に表面を被覆することができる。また、パーフルオロポリエーテル基にアルキル基がつくことで、溶媒への溶解性が増し、扱いやすく、環境負荷の少ないものになっている。
【0015】
ここでR1で示されるアルキル基の炭素数nは6≦n≦30が望ましく、より望ましくは10≦n≦21である。n≦5のとき、撥水性が十分でなく、n≧22では溶解性が低下するという不具合が生じる。
また、R1で示されるアルキル基の水素数mは炭素数nに対してm=2n+1またはm=2n−1であることが望ましい。m=2n+1である場合、その形状は直鎖状または、炭素鎖に一つの枝分かれ構造を持つ分岐状構造を取ることが好ましい。
【0016】
また、Rfで示されるパーフルオロポリエーテルの平均分子量は500以上8000以下が望ましく、より望ましくは1000以上5000以下である。平均分子量が500以下のとき、撥水性が十分ではなく、8000を越えると溶解性が低下したり、基板への付着力が十分でなくなったりするおそれがある。
【0017】
また、R2で示される部分フッ化アルキル基の炭素数nは6≦n≦30が望ましく、より望ましくは6≦n≦16である。n≦5のとき、撥水性が十分でなく、n≧17では溶解性が低下するという不具合が生じる。
R2が部分フッ化アルキル基であるとき、高さのあるフッ素膜が加わるため、撥水性は更に優れたものとなる。またR2が水素であるとき、一般式(1)で示される含フッ素化合物の吸着力(撥水剤が塗布される面への親和性)が大きくなるため、より耐久性に優れた撥水剤となる。
【0018】
このように一般式(1)で示される含フッ素化合物は、分子内に含まれるパーフルオロポリエーテルによって高い撥水作用を有し、単独で又は混合して、あるいは公知の撥水剤と組み合わせて撥水剤として使用することができる。
本発明により得られる撥水剤は以上のような優れた特長を有するので、撥水性や防汚性等の特に求められる用途に適する。
【0019】
例えば屋外の雨水に晒される用途に、本発明の撥水剤を使用できる。この場合、例えば自動車用のカーワックス、外壁の防汚剤、テント類、自動車カバー、二輪車カバー、トラック荷台用の幌、工事用被覆シート、雨傘、レインコート等の衣類、靴等の防水剤としての使用が可能である。また、本発明の撥水剤は優れた潤滑性を兼ね備えているため、AR(antireflection)フィルム等のディスプレイの防汚剤として使用することも可能である。
【0020】
【実施例】
更に、本発明を実施例及び比較例により詳細に説明するが、本発明はこれらによって制限されるものではない。
<合成例1>
まず、イソオクタデシルコハク酸無水物45gとFomblin Z−dol2000(Audimont社)150gを400ccのトルエンに溶解し、濃硫酸を触媒量添加して、3時間還流した。
【0021】
次いで、放冷後反応液を水洗し、硫酸マグネシウムを加えて乾燥させた後に濃縮した。カラムクロマトグラフィ(シリカゲル/酢酸エチル、トルエン混合溶媒)により原料を除去し、目的物を分取した。最後に、展開液を濃縮することにより、C9H19CH(C7H15)CH2CH(COOH)CH2COOCH2(CF2O)n(CF2CF2O)mCH2OCOCH2CH(COOH)CH2CH(C7H15)C9H19を160g得た。これを化合物1とする。
【0022】
<合成例2>
まず、撥水剤としてC9H19CH(C7H15)CH2CH(COOH)CH2COOC10H20C8F17を、以下に示すようにして合成した。
まず、9−デセン−1−オール(CH2=CH(CH2)8OH)15.6gと、パーフルオロオクチルアイオダイド(F(CF2)8I)54.6gとをフラスコに入れ窒素バブルを行った。
【0023】
次いで、AIBN(2,2’−Azobis−isobutyronitrile)0.05gを加え加熱還流し、8時間反応させた。反応終了後、減圧蒸留により原料を留去すると、残留物としてF(CF2)8CH2CHI(CH2)8OHを、56g得た。
次いで、残留物として得られた56gのF(CF2)8CH2CHI(CH2)8OHを400ccのエタノールに溶解し、濃塩酸40ccを添加して加熱した。そして、亜鉛粉末6gを少量ずつ加え、2時間還流した。さらに濃硫酸20ccを添加して、1時間還流した。反応終了後、溶液が熱いうちにろ過し、得られたろ液を濃縮した。
【0024】
次いで、濃縮したろ液に10%の水酸化ナトリウム水溶液200ccを加えて撹拌し、沈殿物を得た。その後、この沈殿をろ過、乾燥することにより、F(CF2)8CH2CH2(CH2)8OHを37g得た。
次いで、合成例1で得られた化合物1を160gと塩化チオニル25gを混合し、100度の油浴中で5時間還流した。放冷後、未反応の塩化チオニルを除去した。
【0025】
これに37gのF(CF2)8CH2CH2(CH2)8OHを加え、100度の油浴中で5時間加熱した。放冷後反応液を水洗し、硫酸マグネシウムを加えて乾燥させた後に濃縮した。カラムクロマトグラフィ(シリカゲル/酢酸エチル、トルエン混合溶媒)により原料を除去し、目的物を分取した。
【0026】
最後に、展開液を濃縮することにより、C9H19CH(C7H15)CH2CH(COOC10H20C8F18)CH2COOCH2(CF2O)n(CF2CF2O)mCH2OCOCH2CH(COOC10H20C8F18)CH2CH(C7H15)C9H19を180g得た。これを化合物2とする。
【0027】
また、上記化合物1、2と同様な合成方法によって、化合物1、2とは異なる撥水剤として、下記表1に示す8種の化合物3〜化合物10を合成した。また、比較例として下記表2に示す4種類の化合物11〜化合物14を合成した。尚、表2中、m、nは1以上の整数をそれぞれ表す。
【0028】
【表1】
【0029】
【表2】
【0030】
表1に示す化合物1〜10の2重量%エタノール溶液(実施例1〜10)及び表2に示す化合物11〜14の2重量%エタノール溶液(比較例1〜4)を調製した。また、化合物1〜14のいずれも含まないエタノールを比較例5とした。これらの溶液をガラス基板上に滴下し、塗り広げた。
【0031】
乾燥後、脱脂綿で基板表面を磨いて基板上に膜を形成させた後、3時間以内にこの膜の水との接触角を接触角計〔協和界面科学社製,CA−D〕で測定した。また、ばねばかりにとりつけた10gの銅片をガラス基板上で走行させ、摩擦係数を測定した。作成したガラス基板を60℃90%RHの恒温槽で3ヶ月間保存後、同様の測定を行った。
【0032】
一方、上記の化合物1〜10の2重量%エタノール溶液(実施例1〜10)、化合物11〜14の2重量%エタノール溶液(比較例1〜4)及び化合物を含まないエタノール(比較例5)に木綿生地を浸した後乾燥させ、JIS−D−1092−1977に従って撥水性を評価し、下記表3に示されるような数字で表示した。評価はサンプル作成から3時間以内に行った。また、作成した布地を60℃90%RHの恒温槽で3ヶ月間保存後、同様の測定を行った。
【0033】
【表3】
【0034】
上記の接触角、摩擦係数及び撥水性の測定結果を表4及び表5に示す。
【0035】
【表4】
【0036】
【表5】
【0037】
表4及び表5から、構造式(1)で示される化合物を撥水剤に用いたガラス基板および布地は優れた撥水性を示し、また保存による特性の劣化が少ないことが分かった。
一方、比較例1では分子内にコハク酸由来の骨格を持たないため、撥水性、潤滑性のどちらにも効果は見られなかった。
【0038】
比較例2ではアルキル基の炭素数とフッ素基の炭素数が適切でなかったため、溶解度が小さく、撥水剤溶液を調整することが出来ない場合があった。また、比較例3ではアルキル基の炭素数とフッ素基の炭素数が適切でなかったため、撥水性、潤滑性のどちらにも著しい効果は見られなかった。
【0039】
比較例4では、溶媒に溶けにくいパーフルオロポリエーテル誘導体をエステル化せずに用いているため、撥水剤溶液を調整することができなかった。比較例5では、撥水剤を用いなかったため、撥水性、潤滑性のどちらにも著しい効果は見られなかった。
【0040】
以上のように、本発明のフッ素化合物は優れた撥水性を示すと共に、低級アルコールに対する溶解性及び塗布面への親和性に優れている。また、これらの化合物を含有する本発明の撥水剤は、高い撥水作用を示し、操作性及び製膜性に優れている。したがって、本発明の撥水剤は、繊維製品等を含む様々な物体の防水処理やワックス、防汚剤等に撥水剤として添加するのに有効である。
【0041】
【発明の効果】
本発明のフッ素化合物及びそれを含む撥水剤によれば、長期間にわたって優れた撥水性が得られると共に、低級アルコール等の低毒性で環境負荷の少ない溶媒を用いて撥水剤を塗布することが可能となる。
Claims (3)
- 一般式(1)
R1CH{(CH2)1−aCOOR2}(CH2)aCOORf
−OCO(CH2)bCH{(CH2)1−bCOOR2}R1・・・(1)
(但し、上式中R1は脂肪族アルキル基又は脂肪族アルケニル基又は水素を表す。また、R2はフロロアルキル基、フロロアルケニル基または水素のいずれかを表す。また、Rfはパーフルオロポリエーテル基を表し、aとbはそれぞれ1または0である。)
で示されるフッ素化合物。 - 一般式(1)
R1CH{(CH2)1−aCOOR2}(CH2)aCOORf
−OCO(CH2)bCH{(CH2)1−bCOOR2}R1・・・(1)
(但し、上式中R1は脂肪族アルキル基又は脂肪族アルケニル基又は水素を表す。また、R2はフロロアルキル基、フロロアルケニル基または水素のいずれかを表す。また、Rfはパーフルオロポリエーテル基を表し、aとbはそれぞれ1または0である。)
で示されるフッ素化合物を含有してなる撥水剤。 - 一般式(2)
R1−C4H3O3・・・(2)
(但し、上式中R1は脂肪族アルキル基又は脂肪族アルケニル基をあらわす)で示される少なくとも一種類のアルキルこはく酸無水物と、
一般式(3)
HO−CH2CF2(CF2O)n(CF2CF2O)mCF2CH2−OH
・・・(3)
(但し、上式中n,mは1以上の整数である)で示される少なくとも1種類のフッ素化合物を原料とする
請求項2記載の撥水剤。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2002197961A JP2004035512A (ja) | 2002-07-05 | 2002-07-05 | フッ素化合物及び撥水剤 |
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Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP (1) | JP2004035512A (ja) |
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
CN102226073A (zh) * | 2011-05-11 | 2011-10-26 | 株洲合一建材有限责任公司 | 一种水性渗透型防水材料及其制备方法 |
-
2002
- 2002-07-05 JP JP2002197961A patent/JP2004035512A/ja active Pending
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