JP2004035490A - 芳香族ポリイソシアネートの製造装置および製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】芳香族ポリイソシアネートの製造のホスゲン化反応における熱交換器内での固着物の生成および熱交換器内の管の閉塞を防ぐことができ、長期間にわたり安定して芳香族ポリイソシアネートを得ることができる製造装置および製造方法を提供する。
【解決手段】本発明に係る芳香族ポリイソシアネートの製造方法は、芳香族ポリアミンとホスゲンとを反応させる工程と、反応器1から抜き出された気体を熱交換器2で冷却する工程と、冷却された流体を気液分離装置3で分離する工程と、分離された液体成分を前記反応器1へ再供給する工程とを有する芳香族ポリイソシアネートの製造方法であって、前記気体排出流路内に設けた溶媒散布装置13から、該反応器から芳香族ポリイソシアネートが飛散して前記熱交換器2に流入することを防止するための溶媒を散布しながら、溶媒中で芳香族ポリアミンとホスゲンとを反応させることを特徴としている。
【選択図】 図1
【解決手段】本発明に係る芳香族ポリイソシアネートの製造方法は、芳香族ポリアミンとホスゲンとを反応させる工程と、反応器1から抜き出された気体を熱交換器2で冷却する工程と、冷却された流体を気液分離装置3で分離する工程と、分離された液体成分を前記反応器1へ再供給する工程とを有する芳香族ポリイソシアネートの製造方法であって、前記気体排出流路内に設けた溶媒散布装置13から、該反応器から芳香族ポリイソシアネートが飛散して前記熱交換器2に流入することを防止するための溶媒を散布しながら、溶媒中で芳香族ポリアミンとホスゲンとを反応させることを特徴としている。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の技術分野】
本発明は、芳香族ポリイソシアネートの製造装置および製造方法に関する。さらに詳しくは、芳香族ポリイソシアネートの製造におけるホスゲン化反応を長期間にわたり安定して実施するための芳香族ポリイソシアネートの製造装置および製造方法に関する。
【0002】
【発明の技術的背景】
ポリウレタンの原料として重要なトリレンジイソシアネート(以下、TDIと略す)、ジフェニルメタンジイソシアネート(以下、MDIと略す)およびメチレン架橋ポリフェニレンポリイソシアネート(以下、ポリMDIと略す)などの芳香族ポリイソシアネートは、一般的には、芳香族ポリアミンを不活性溶媒中でホスゲンと反応させることにより製造される。たとえば、ポリMDIは、アニリンとホルムアルデヒドとを酸触媒存在下で反応させて得られるメチレン架橋ポリフェニレンポリアミン(以下、ポリMDAと略す)を、モノジクロロベンゼンやオルソジクロロベンゼンなどの溶媒中でホスゲンと反応させることにより製造される。通常、このような芳香族ポリアミンのホスゲン化反応は、図3に示すような製造装置を用いて実施される。
【0003】
まず、図3に示す製造装置について説明する。前記製造装置は、気液共存状態の溶媒中で芳香族ポリアミンとホスゲンとを反応させるための反応器1と、反応器1の上部に設けられた気体排出口8aから抜き出した気体を冷却して得られた液体成分を反応器1に還流する還流経路とを備えている。
前記還流経路は、反応器1内の気相を構成する気体を反応器外に抜き出すための気体排出口8aおよび配管8と、抜き出した気体を冷却するための熱交換器2と、冷却によって生じた凝縮液と凝縮しなかった気体成分との混合流体を気体成分と液体成分とに分離するための気液分離装置3と、この気液分離装置3から反応器1に凝縮液を供給するための配管10とから構成されている。
【0004】
反応器1には、芳香族ポリアミンまたは芳香族ポリアミンを含む溶液を供給するための配管5と、ホスゲンまたはホスゲンを含む溶液を供給するための配管6と、溶媒を供給するための配管7と、生成した芳香族ポリイソシアネートおよび溶媒を含む反応液を抜き出す配管11が接続されている。さらに、反応器1には、攪拌器4が装着されていることもある。
【0005】
また、気液分離装置3には、気体成分を排出するための配管9が接続されている。
次に、図3に示す製造装置を用いた芳香族ポリイソシアネートの製造方法を説明する。反応器1に、溶媒と、原料として芳香族ポリアミンおよびホスゲンとを供給する。供給された溶媒、芳香族ポリアミンおよびホスゲンを温度を調節しながら攪拌器4により攪拌することによって、芳香族ポリアミンとホスゲンとを反応させ、芳香族ポリイソシアネートを生成させる。このとき副生成物として塩化水素が生成する。生成した芳香族ポリイソシアネートは、溶媒およびホスゲンとともに抜き出され、配管11を通じて次工程へ送液される。
【0006】
芳香族ポリイソシアネートを連続的に製造する場合には、溶媒、芳香族ポリアミンおよびホスゲンを反応器に連続的に供給し、生成した芳香族ポリイソシアネートを連続的に反応器から抜き出す。
反応器1内の気相には、塩化水素と、気化したホスゲンおよび溶媒とが存在する。反応器1内の気相中の気体は、気体排出口8aより反応器外に抜き出し、配管8を通じて熱交換器2へ導入される。熱交換器2で冷却された流体は、気液分離装置3で、ホスゲンと塩化水素とを含む気体成分と、溶媒とホスゲンとを含む液体成分とに分離される。液体成分は配管10を通じて反応器1へ再供給され、気体成分は配管9を通じてホスゲン吸収塔へ供給される。
【0007】
上記のような芳香族ポリイソシアネートの製造において、反応器1内での攪拌や突沸などにより、反応器1内の液相を構成する液体が気相に飛散し、飛散した液体の一部が気相中の気体に同伴されて気体排出口8aから配管8を通じて熱交換器2に流入することがある。この液体が熱交換器2に流入すると、熱交換器2内の管の内壁に固体物が付着し、装置の長期間の運転においては熱交換器2内の管が閉塞するとともに、設備の管理に多大な手間を要するという問題があった。
【0008】
このため、芳香族ポリイソシアネートの製造において、熱交換器2内の管の内壁への固体物の付着を防止した、芳香族ポリイソシアネートの製造装置および製造方法の開発が期待されていた。
【0009】
【発明の目的】
本発明は、上記のような従来技術に伴う問題を解決しようとするものであって、芳香族ポリイソシアネートの製造のホスゲン化反応における熱交換器内の管の閉塞を防ぎ、長期間にわたり安定して芳香族ポリイソシアネートを得るための製造装置および製造方法を提供することを目的としている。
【0010】
【発明の概要】
本願発明者らは、上記問題点を解決すべく鋭意研究し、熱交換器内の管の内壁に付着した固体物が、飛散した液体に含まれる芳香族ポリイソシアネートと塩化水素との反応生成物であり、反応器の気体排出流路内で溶媒を散布することにより、飛散した液体が気相中の気体に同伴されて気体排出口から配管を通じて熱交換器に流入することを防ぐことができることを見出し、熱交換器内の管の内壁への固体物の付着を防止することができることを見出した。
【0011】
すなわち、本発明に係る芳香族ポリイソシアネートの製造装置は、溶媒中で芳香族ポリアミンとホスゲンとを反応させるための反応器と、
前記反応器の上部に設けられた気体排出口から抜き出した気体を冷却して得られた液体成分を前記反応器に還流する還流経路とを備え、
前記還流経路が、
前記気体排出口から抜き出した気体を冷却するための熱交換器と、
前記熱交換器で冷却された流体を気体成分と液体成分とに分離するための気液分離装置と
を備える芳香族ポリイソシアネートの製造装置であって、
前記還流経路の気体排出口近傍の気体排出流路内に、該反応器から芳香族ポリイソシアネートが飛散して前記熱交換器に流入することを防止するための溶媒を散布する溶媒散布装置を備えることを特徴としている。
【0012】
前記溶媒散布装置は噴霧機能を備えていることが好ましい。前記噴霧機能を備えた溶媒散布装置は前記気体排出流路の径方向の略全面にわたって形成された複数の噴霧孔を有することが好ましい。
本発明に係る芳香族ポリイソシアネートの製造装置において、該製造装置に供給される全溶媒量のうちの0.1〜10%を、前記溶媒散布装置から散布することが好ましい。
【0013】
また、本発明に係る芳香族ポリイソシアネートの製造方法は、溶媒中に、少なくとも、芳香族ポリアミンと、ホスゲンとを供給し、該溶媒中で芳香族ポリアミンとホスゲンとを反応させる工程と、
反応器の上部に設けられた気体排出口から反応器内の気相を構成する気体を抜き出し、熱交換器に導入して該気体を冷却する工程と、
前記熱交換器で冷却された流体を気体成分と液体成分とに分離する工程と、
前記液体成分を前記反応器へ再供給する工程と
を有する芳香族ポリイソシアネートの製造方法であって、
前記気体排出口から反応器内の気体を抜き出すための気体排出流路内に設けた溶媒散布装置から、該反応器から芳香族ポリイソシアネートが飛散して前記熱交換器に流入することを防止するための溶媒を散布しながら、溶媒中で芳香族ポリアミンとホスゲンとを反応させることを特徴としている。
【0014】
前記溶媒は、噴霧機能を備えた前記溶媒散布装置から散布されることが好ましく、前記気体排出流路の径方向の略全面にわたって形成された複数の噴霧孔を有する前記噴霧機能を備えた溶媒散布装置から散布されることが好ましい。
本発明に係る芳香族ポリイソシアネートの製造方法において、反応系に供給する全溶媒量のうちの0.1〜10%を、前記溶媒散布装置から散布することが好ましい。
【0015】
【発明の具体的説明】
以下、本発明について具体的に説明する。
[芳香族ポリイソシアネートの製造装置]
まず、本発明に係る芳香族ポリイソシアネートの製造装置について、図1を用いて説明する。
【0016】
本発明に係る芳香族ポリイソシアネートの製造装置は、図1に示すように、溶媒中で芳香族ポリアミンとホスゲンとを反応させるための反応器1と、反応器1の上部に設けられた気体排出口8aから抜き出した気体を冷却して得られた液体成分を反応器1に還流する還流経路とを備えている。
前記還流経路は、気体排出口8aから抜き出した気体を冷却するための熱交換器2と、熱交換器2で冷却された流体を気体成分と液体成分とに分離するための気液分離装置3とを備えている。
【0017】
反応器1は、芳香族ポリイソシアネートの製造で用いられる一般的な反応器であれば特に制限されないが、芳香族ポリアミンまたは芳香族ポリアミンを含む溶液を供給するための配管5と、ホスゲンまたはホスゲンを含む溶液を供給するための配管6と、溶媒を供給するための配管7と、生成した芳香族ポリイソシアネートおよび溶媒を含む反応液を抜き出す配管11が接続されていることが好ましい。また、反応器1には、攪拌器4が装着されていることが好ましい。
【0018】
反応器1は、反応器1内の気相を構成する気体を排出するための気体排出口8aを有する。気体排出口8aは、反応器1から排出された気体を熱交換器2に導入するための配管8と接続されている。
図2に示すように配管8内の、気体排出口8a近傍の気体排出流路内には、反応器1から芳香族ポリイソシアネートが飛散して熱交換器2に流入することを防止するための溶媒を散布する溶媒散布装置13が設置されている。溶媒散布装置13は噴霧機能を備えていることが好ましい。噴霧機能を備えた溶媒散布装置13は気体排出流路の径方向の略全面にわたって形成された複数の噴霧孔を有することが好ましい。
【0019】
溶媒散布装置13を用いて反応器1内に溶媒を散布することにより、反応器1内での攪拌や突沸などによって飛散した液体が散布した溶媒と衝突して反応器1内の液相に落下し、配管8を通して熱交換器2へ流入することを防ぐことができる。
また、飛散した液体が溶媒散布装置13に衝突して、配管8を通して熱交換器2へ流入することを防ぎ、衝突により溶媒散布装置13に付着した液体成分を、溶媒を散布することにより取り除くこともできる。
【0020】
本発明に係る芳香族ポリイソシアネートの製造装置において、該製造装置に供給される全溶媒量のうちの0.1〜10%、好ましくは0.1〜8%を溶媒散布装置13から散布することが好ましい。前記散布する溶媒の割合は、散布する溶媒量が反応器1から芳香族ポリイソシアネートが飛散して熱交換器2に流入することを防止できる量であれば、小さい方が好ましい。
【0021】
熱交換器2は、反応器1の気体排出口8aから排出された気体を冷却するために用いられ、芳香族ポリイソシアネートの製造で用いられる一般的な熱交換器であれば特に制限されず、たとえば、多管型熱交換器が挙げられる。多管型熱交換器は、熱交換器内に多数の管が設けられ、この管を冷却水などの冷媒と接触させることにより、管内を通過する流体が冷却される。熱交換器2は、配管8と接続されている。
【0022】
気液分離装置3は、熱交換器2で冷却された流体を、気体成分と液体成分とに分離するために用いられ、気体成分と液体成分とを分離して取り出すことができる装置であれば特に制限されない。気液分離装置3には、液体成分を反応器1へ再供給するための配管10が接続されている。さらに、気体成分を排出するための配管9が接続されていることが好ましい。
【0023】
配管10は、前記液体成分を反応器1へ再供給できるものであれば特に制限されないが、気液分離装置3と反応器1との間の配管10に、前記液体成分を反応器1へ再供給するための、ポンプなどの送液手段を設置してもよい。
[芳香族ポリイソシアネートの製造方法]
次に、本発明に係る芳香族ポリイソシアネートの製造方法について説明する。
【0024】
本発明に係る芳香族ポリイソシアネートの製造方法は、溶媒中に、少なくとも、芳香族ポリアミンと、ホスゲンとを供給し、該溶媒中で芳香族ポリアミンとホスゲンとを反応させる工程と、反応器の上部に設けられた気体排出口から反応器内の気相を構成する気体を抜き出し、熱交換器に導入して該気体を冷却する工程と、前記熱交換器で冷却された流体を気体成分と液体成分とに分離する工程と、前記液体成分を前記反応器へ再供給する工程とを有する芳香族ポリイソシアネートの製造方法であって、前記気体排出口から反応器内の気体を抜き出すための気体排出流路内に設けた溶媒散布装置から、該反応器から芳香族ポリイソシアネートが飛散して前記熱交換器に流入することを防止するための溶媒を散布しながら、溶媒中で芳香族ポリアミンとホスゲンとを反応させることを特徴とする芳香族ポリイソシアネートの製造方法である。
【0025】
このような芳香族ポリイソシアネートの製造方法は、上述した本発明に係る芳香族ポリイソシアネートの製造装置を用いて実施されることが望ましいが、前記気体排出流路内で溶媒を散布できる装置を有する製造装置であれば特に制限されない。
<芳香族ポリアミン>
本発明で用いることができる芳香族ポリアミンは、通常の芳香族ポリイソシアネートの製造で用いることができるものであれば特に制限されず、トリレンジアミン、ジフェニルメタンジアミンおよびメチレン架橋ポリフェニレンポリアミンなどが挙げられる。前記芳香族ポリアミンは、通常の方法で製造されたものであればよく、たとえば、メチレン架橋ポリフェニレンポリアミンは、塩酸などの酸触媒の存在下でアニリンとホルムアルデヒドを反応させることにより製造することができる。
【0026】
また、前記芳香族ポリアミンは、芳香族ポリアミンのホスゲン化反応で用いられる溶媒に溶解して用いることができる。
<ホスゲン>
本発明で用いることができるホスゲンは、通常の芳香族ポリイソシアネートの製造で用いられるものであれば特に制限されず、ホスゲン化反応に影響を与えない範囲であれば、塩化水素を含有していてもよい。
【0027】
また前記ホスゲンは、芳香族ポリアミンのホスゲン化反応で用いられる溶媒に溶解して用いることができる。
<溶媒>
本発明で用いることができる溶媒は、通常の芳香族ポリアミンのホスゲン化反応で用いられるものであれば特に制限されない。たとえば、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素、クロロトルエン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼンなどのハロゲン化炭化水素、酢酸ブチル、酢酸アミルなどのエステル類およびメチルイソブチルケトン、メチルエチルケトンなどのケトン類などが挙げられる。
【0028】
また、反応器から芳香族ポリイソシアネートが飛散して熱交換器に流入することを防止するために用いられる溶媒は、芳香族ポリアミンとホスゲンとの反応工程において用いられる溶媒と同じ溶媒を用いることが好ましい。
<芳香族ポリイソシアネートの製造方法>
以下、本発明に係る芳香族ポリイソシアネートの製造方法について、図1を用いて説明する。
【0029】
まず、原料の芳香族ポリアミンまたは芳香族ポリアミンを含む溶液を配管5より、原料のホスゲンまたはホスゲンを含む溶液を配管6より、溶媒を配管7より、反応器1に供給する。また、溶媒を溶媒散布装置13から配管8内の気体排出口近傍の気体排出流路内で散布する。溶媒は、噴霧機能を備えた溶媒散布装置13から散布されることが好ましく、気体排出流路の径方向の略全面にわたって形成された複数の噴霧孔を有する噴霧機能を備えた溶媒散布装置13から散布されることがより好ましい。
【0030】
反応器1内の液相を攪拌器4により攪拌しながら、反応器1内を加熱または冷却して所望の温度に調節する。これにより芳香族ポリアミンとホスゲンが反応して、反応器1内の液相に芳香族ポリイソシアネートが生成する。前記ホスゲン化反応の温度および圧力は、芳香族ポリアミンをホスゲン化するための通常の温度および圧力であれば特に制限されない。反応により得られた芳香族ポリイソシアネートは、溶媒およびホスゲンとともに抜き出され、配管11を通じて次工程へ送液される。
【0031】
芳香族ポリイソシアネートを連続的に製造する場合には、溶媒、芳香族ポリアミンおよびホスゲンを反応器に連続的に供給し、生成した芳香族ポリイソシアネートを連続的に反応器から抜き出すことが好ましい。
反応器1内では、攪拌や突沸などにより液相の液体が気相に飛散するが、溶媒を前記気体排出流路内で散布することにより、飛散した液体が散布した溶媒と衝突して反応器1内の液相に落下し、配管8を通して熱交換器2に流入することを防ぎ、熱交換器2内の管の閉塞を防止することができる。
【0032】
また、飛散した液体が溶媒散布装置13に衝突して、配管8を通して熱交換器2へ流入することを防ぎ、衝突により溶媒散布装置13に付着した液体成分を、溶媒を散布することにより取り除くこともできる。
溶媒散布装置13から散布する溶媒量は、反応系に供給される全溶媒量のうちの0.1〜10%、好ましくは0.1〜8%の量が望ましい。前記散布する溶媒の割合は、散布する溶媒量が反応器1から芳香族ポリイソシアネートが飛散して熱交換器2に流入することを防止できる量であれば、小さい方が好ましい。
【0033】
このホスゲン化反応では、副生成物として塩化水素が生成する。生成した塩化水素は反応器1の気相に存在する。また、反応器1の気相には、気化した溶媒およびホスゲンも存在する。反応器1内の気相中の気体を、気体排出口8aより反応器外に抜き出し、配管8を通じて熱交換器2へ導入し冷却する。
次いで、気体排出口8aより抜き出した気体を熱交換器2で冷却する。熱交換器2での冷却によって、気体のうちの溶媒とホスゲンの少なくとも一部が液体成分に凝縮される。この冷却された流体を気液分離装置3に導入する。
【0034】
気液分離装置3では、導入された流体が、ホスゲンと塩化水素を含む気体成分と、溶媒とホスゲンとを含む液体成分とに分離される。液体成分は配管10を通じて反応器1へ再供給され、気体成分は配管9を通じてホスゲン吸収塔へ供給される。
【0035】
【実施例】
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明は、この実施例により何ら限定されるものではない。
[メチレン架橋ポリフェニレンポリアミンの調製]
97%アニリンと37%ホルムアルデヒド水溶液とを35%塩酸の存在下、温度30〜120℃で縮合反応させた。得られた反応液に32%水酸化ナトリウム水溶液を加えて中和し、オイル相を取り出した。取り出したオイル相を湯洗した後、減圧蒸留によって、水および未反応のアニリンを留去し、メチレン架橋ポリフェニレンポリアミン(以下、ポリMDAと略す)を得た。
[メチレン架橋ポリフェニレンポリイソシアネートの製造]
図1に示す製造装置を用いてメチレン架橋ポリフェニレンポリイソシアネート(以下、ポリMDIと略す)の製造を実施した。反応器1に20質量%のポリMDAのオルソジクロロベンゼン(以下、ODCBと略す)溶液を27.6kg/h、ホスゲンを23.7kg/h、溶媒としてODCBを18.7kg/hを供給した。反応温度はジャケットおよび外部加熱器により80℃に維持し、圧力は5.0kg/cm2(ゲージ圧)に維持した。配管12を通して溶媒散布装置13にODCBを1.6kg/h供給し、配管8内の気体排出口8a近傍の気体排出流路内でODCBを散布した。反応器1内の反応液を連続的に取り出し、生成したポリMDIを回収した。上記操作を長期間継続して実施しても、熱交換器2内の管の閉塞は認められなかった。
【0036】
【比較例】
[メチレン架橋ポリフェニレンポリイソシアネートの製造]
図3に示す製造装置を用い、ポリMDIの製造を実施した。溶媒散布装置を用いず、反応器1に溶媒としてODCBを20.3kg/h供給した以外は、実施例と同様にしてポリMDIの製造を実施した。
【0037】
操作開始後、3〜4ヶ月を経過した時点で、熱交換器2内の管の閉塞が認められた。
【0038】
【発明の効果】
本発明に係る芳香族ポリイソシアネートの製造装置および製造方法によると、芳香族ポリイソシアネートの製造のホスゲン化反応における熱交換器内での固着物の生成および熱交換器内の管の閉塞を防ぐことができ、長期間にわたり安定して芳香族ポリイソシアネートを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る芳香族ポリイソシアネートの製造装置の概略図である。
【図2】図1に示す気体排出口近傍の拡大図である。
【図3】従来の芳香族ポリイソシアネートの製造装置の概略図である。
【符号の説明】
1 反応器
2 熱交換器
3 気液分離装置
4 攪拌器
5〜12 配管
8a 気体排出口
13 溶媒散布装置
【発明の技術分野】
本発明は、芳香族ポリイソシアネートの製造装置および製造方法に関する。さらに詳しくは、芳香族ポリイソシアネートの製造におけるホスゲン化反応を長期間にわたり安定して実施するための芳香族ポリイソシアネートの製造装置および製造方法に関する。
【0002】
【発明の技術的背景】
ポリウレタンの原料として重要なトリレンジイソシアネート(以下、TDIと略す)、ジフェニルメタンジイソシアネート(以下、MDIと略す)およびメチレン架橋ポリフェニレンポリイソシアネート(以下、ポリMDIと略す)などの芳香族ポリイソシアネートは、一般的には、芳香族ポリアミンを不活性溶媒中でホスゲンと反応させることにより製造される。たとえば、ポリMDIは、アニリンとホルムアルデヒドとを酸触媒存在下で反応させて得られるメチレン架橋ポリフェニレンポリアミン(以下、ポリMDAと略す)を、モノジクロロベンゼンやオルソジクロロベンゼンなどの溶媒中でホスゲンと反応させることにより製造される。通常、このような芳香族ポリアミンのホスゲン化反応は、図3に示すような製造装置を用いて実施される。
【0003】
まず、図3に示す製造装置について説明する。前記製造装置は、気液共存状態の溶媒中で芳香族ポリアミンとホスゲンとを反応させるための反応器1と、反応器1の上部に設けられた気体排出口8aから抜き出した気体を冷却して得られた液体成分を反応器1に還流する還流経路とを備えている。
前記還流経路は、反応器1内の気相を構成する気体を反応器外に抜き出すための気体排出口8aおよび配管8と、抜き出した気体を冷却するための熱交換器2と、冷却によって生じた凝縮液と凝縮しなかった気体成分との混合流体を気体成分と液体成分とに分離するための気液分離装置3と、この気液分離装置3から反応器1に凝縮液を供給するための配管10とから構成されている。
【0004】
反応器1には、芳香族ポリアミンまたは芳香族ポリアミンを含む溶液を供給するための配管5と、ホスゲンまたはホスゲンを含む溶液を供給するための配管6と、溶媒を供給するための配管7と、生成した芳香族ポリイソシアネートおよび溶媒を含む反応液を抜き出す配管11が接続されている。さらに、反応器1には、攪拌器4が装着されていることもある。
【0005】
また、気液分離装置3には、気体成分を排出するための配管9が接続されている。
次に、図3に示す製造装置を用いた芳香族ポリイソシアネートの製造方法を説明する。反応器1に、溶媒と、原料として芳香族ポリアミンおよびホスゲンとを供給する。供給された溶媒、芳香族ポリアミンおよびホスゲンを温度を調節しながら攪拌器4により攪拌することによって、芳香族ポリアミンとホスゲンとを反応させ、芳香族ポリイソシアネートを生成させる。このとき副生成物として塩化水素が生成する。生成した芳香族ポリイソシアネートは、溶媒およびホスゲンとともに抜き出され、配管11を通じて次工程へ送液される。
【0006】
芳香族ポリイソシアネートを連続的に製造する場合には、溶媒、芳香族ポリアミンおよびホスゲンを反応器に連続的に供給し、生成した芳香族ポリイソシアネートを連続的に反応器から抜き出す。
反応器1内の気相には、塩化水素と、気化したホスゲンおよび溶媒とが存在する。反応器1内の気相中の気体は、気体排出口8aより反応器外に抜き出し、配管8を通じて熱交換器2へ導入される。熱交換器2で冷却された流体は、気液分離装置3で、ホスゲンと塩化水素とを含む気体成分と、溶媒とホスゲンとを含む液体成分とに分離される。液体成分は配管10を通じて反応器1へ再供給され、気体成分は配管9を通じてホスゲン吸収塔へ供給される。
【0007】
上記のような芳香族ポリイソシアネートの製造において、反応器1内での攪拌や突沸などにより、反応器1内の液相を構成する液体が気相に飛散し、飛散した液体の一部が気相中の気体に同伴されて気体排出口8aから配管8を通じて熱交換器2に流入することがある。この液体が熱交換器2に流入すると、熱交換器2内の管の内壁に固体物が付着し、装置の長期間の運転においては熱交換器2内の管が閉塞するとともに、設備の管理に多大な手間を要するという問題があった。
【0008】
このため、芳香族ポリイソシアネートの製造において、熱交換器2内の管の内壁への固体物の付着を防止した、芳香族ポリイソシアネートの製造装置および製造方法の開発が期待されていた。
【0009】
【発明の目的】
本発明は、上記のような従来技術に伴う問題を解決しようとするものであって、芳香族ポリイソシアネートの製造のホスゲン化反応における熱交換器内の管の閉塞を防ぎ、長期間にわたり安定して芳香族ポリイソシアネートを得るための製造装置および製造方法を提供することを目的としている。
【0010】
【発明の概要】
本願発明者らは、上記問題点を解決すべく鋭意研究し、熱交換器内の管の内壁に付着した固体物が、飛散した液体に含まれる芳香族ポリイソシアネートと塩化水素との反応生成物であり、反応器の気体排出流路内で溶媒を散布することにより、飛散した液体が気相中の気体に同伴されて気体排出口から配管を通じて熱交換器に流入することを防ぐことができることを見出し、熱交換器内の管の内壁への固体物の付着を防止することができることを見出した。
【0011】
すなわち、本発明に係る芳香族ポリイソシアネートの製造装置は、溶媒中で芳香族ポリアミンとホスゲンとを反応させるための反応器と、
前記反応器の上部に設けられた気体排出口から抜き出した気体を冷却して得られた液体成分を前記反応器に還流する還流経路とを備え、
前記還流経路が、
前記気体排出口から抜き出した気体を冷却するための熱交換器と、
前記熱交換器で冷却された流体を気体成分と液体成分とに分離するための気液分離装置と
を備える芳香族ポリイソシアネートの製造装置であって、
前記還流経路の気体排出口近傍の気体排出流路内に、該反応器から芳香族ポリイソシアネートが飛散して前記熱交換器に流入することを防止するための溶媒を散布する溶媒散布装置を備えることを特徴としている。
【0012】
前記溶媒散布装置は噴霧機能を備えていることが好ましい。前記噴霧機能を備えた溶媒散布装置は前記気体排出流路の径方向の略全面にわたって形成された複数の噴霧孔を有することが好ましい。
本発明に係る芳香族ポリイソシアネートの製造装置において、該製造装置に供給される全溶媒量のうちの0.1〜10%を、前記溶媒散布装置から散布することが好ましい。
【0013】
また、本発明に係る芳香族ポリイソシアネートの製造方法は、溶媒中に、少なくとも、芳香族ポリアミンと、ホスゲンとを供給し、該溶媒中で芳香族ポリアミンとホスゲンとを反応させる工程と、
反応器の上部に設けられた気体排出口から反応器内の気相を構成する気体を抜き出し、熱交換器に導入して該気体を冷却する工程と、
前記熱交換器で冷却された流体を気体成分と液体成分とに分離する工程と、
前記液体成分を前記反応器へ再供給する工程と
を有する芳香族ポリイソシアネートの製造方法であって、
前記気体排出口から反応器内の気体を抜き出すための気体排出流路内に設けた溶媒散布装置から、該反応器から芳香族ポリイソシアネートが飛散して前記熱交換器に流入することを防止するための溶媒を散布しながら、溶媒中で芳香族ポリアミンとホスゲンとを反応させることを特徴としている。
【0014】
前記溶媒は、噴霧機能を備えた前記溶媒散布装置から散布されることが好ましく、前記気体排出流路の径方向の略全面にわたって形成された複数の噴霧孔を有する前記噴霧機能を備えた溶媒散布装置から散布されることが好ましい。
本発明に係る芳香族ポリイソシアネートの製造方法において、反応系に供給する全溶媒量のうちの0.1〜10%を、前記溶媒散布装置から散布することが好ましい。
【0015】
【発明の具体的説明】
以下、本発明について具体的に説明する。
[芳香族ポリイソシアネートの製造装置]
まず、本発明に係る芳香族ポリイソシアネートの製造装置について、図1を用いて説明する。
【0016】
本発明に係る芳香族ポリイソシアネートの製造装置は、図1に示すように、溶媒中で芳香族ポリアミンとホスゲンとを反応させるための反応器1と、反応器1の上部に設けられた気体排出口8aから抜き出した気体を冷却して得られた液体成分を反応器1に還流する還流経路とを備えている。
前記還流経路は、気体排出口8aから抜き出した気体を冷却するための熱交換器2と、熱交換器2で冷却された流体を気体成分と液体成分とに分離するための気液分離装置3とを備えている。
【0017】
反応器1は、芳香族ポリイソシアネートの製造で用いられる一般的な反応器であれば特に制限されないが、芳香族ポリアミンまたは芳香族ポリアミンを含む溶液を供給するための配管5と、ホスゲンまたはホスゲンを含む溶液を供給するための配管6と、溶媒を供給するための配管7と、生成した芳香族ポリイソシアネートおよび溶媒を含む反応液を抜き出す配管11が接続されていることが好ましい。また、反応器1には、攪拌器4が装着されていることが好ましい。
【0018】
反応器1は、反応器1内の気相を構成する気体を排出するための気体排出口8aを有する。気体排出口8aは、反応器1から排出された気体を熱交換器2に導入するための配管8と接続されている。
図2に示すように配管8内の、気体排出口8a近傍の気体排出流路内には、反応器1から芳香族ポリイソシアネートが飛散して熱交換器2に流入することを防止するための溶媒を散布する溶媒散布装置13が設置されている。溶媒散布装置13は噴霧機能を備えていることが好ましい。噴霧機能を備えた溶媒散布装置13は気体排出流路の径方向の略全面にわたって形成された複数の噴霧孔を有することが好ましい。
【0019】
溶媒散布装置13を用いて反応器1内に溶媒を散布することにより、反応器1内での攪拌や突沸などによって飛散した液体が散布した溶媒と衝突して反応器1内の液相に落下し、配管8を通して熱交換器2へ流入することを防ぐことができる。
また、飛散した液体が溶媒散布装置13に衝突して、配管8を通して熱交換器2へ流入することを防ぎ、衝突により溶媒散布装置13に付着した液体成分を、溶媒を散布することにより取り除くこともできる。
【0020】
本発明に係る芳香族ポリイソシアネートの製造装置において、該製造装置に供給される全溶媒量のうちの0.1〜10%、好ましくは0.1〜8%を溶媒散布装置13から散布することが好ましい。前記散布する溶媒の割合は、散布する溶媒量が反応器1から芳香族ポリイソシアネートが飛散して熱交換器2に流入することを防止できる量であれば、小さい方が好ましい。
【0021】
熱交換器2は、反応器1の気体排出口8aから排出された気体を冷却するために用いられ、芳香族ポリイソシアネートの製造で用いられる一般的な熱交換器であれば特に制限されず、たとえば、多管型熱交換器が挙げられる。多管型熱交換器は、熱交換器内に多数の管が設けられ、この管を冷却水などの冷媒と接触させることにより、管内を通過する流体が冷却される。熱交換器2は、配管8と接続されている。
【0022】
気液分離装置3は、熱交換器2で冷却された流体を、気体成分と液体成分とに分離するために用いられ、気体成分と液体成分とを分離して取り出すことができる装置であれば特に制限されない。気液分離装置3には、液体成分を反応器1へ再供給するための配管10が接続されている。さらに、気体成分を排出するための配管9が接続されていることが好ましい。
【0023】
配管10は、前記液体成分を反応器1へ再供給できるものであれば特に制限されないが、気液分離装置3と反応器1との間の配管10に、前記液体成分を反応器1へ再供給するための、ポンプなどの送液手段を設置してもよい。
[芳香族ポリイソシアネートの製造方法]
次に、本発明に係る芳香族ポリイソシアネートの製造方法について説明する。
【0024】
本発明に係る芳香族ポリイソシアネートの製造方法は、溶媒中に、少なくとも、芳香族ポリアミンと、ホスゲンとを供給し、該溶媒中で芳香族ポリアミンとホスゲンとを反応させる工程と、反応器の上部に設けられた気体排出口から反応器内の気相を構成する気体を抜き出し、熱交換器に導入して該気体を冷却する工程と、前記熱交換器で冷却された流体を気体成分と液体成分とに分離する工程と、前記液体成分を前記反応器へ再供給する工程とを有する芳香族ポリイソシアネートの製造方法であって、前記気体排出口から反応器内の気体を抜き出すための気体排出流路内に設けた溶媒散布装置から、該反応器から芳香族ポリイソシアネートが飛散して前記熱交換器に流入することを防止するための溶媒を散布しながら、溶媒中で芳香族ポリアミンとホスゲンとを反応させることを特徴とする芳香族ポリイソシアネートの製造方法である。
【0025】
このような芳香族ポリイソシアネートの製造方法は、上述した本発明に係る芳香族ポリイソシアネートの製造装置を用いて実施されることが望ましいが、前記気体排出流路内で溶媒を散布できる装置を有する製造装置であれば特に制限されない。
<芳香族ポリアミン>
本発明で用いることができる芳香族ポリアミンは、通常の芳香族ポリイソシアネートの製造で用いることができるものであれば特に制限されず、トリレンジアミン、ジフェニルメタンジアミンおよびメチレン架橋ポリフェニレンポリアミンなどが挙げられる。前記芳香族ポリアミンは、通常の方法で製造されたものであればよく、たとえば、メチレン架橋ポリフェニレンポリアミンは、塩酸などの酸触媒の存在下でアニリンとホルムアルデヒドを反応させることにより製造することができる。
【0026】
また、前記芳香族ポリアミンは、芳香族ポリアミンのホスゲン化反応で用いられる溶媒に溶解して用いることができる。
<ホスゲン>
本発明で用いることができるホスゲンは、通常の芳香族ポリイソシアネートの製造で用いられるものであれば特に制限されず、ホスゲン化反応に影響を与えない範囲であれば、塩化水素を含有していてもよい。
【0027】
また前記ホスゲンは、芳香族ポリアミンのホスゲン化反応で用いられる溶媒に溶解して用いることができる。
<溶媒>
本発明で用いることができる溶媒は、通常の芳香族ポリアミンのホスゲン化反応で用いられるものであれば特に制限されない。たとえば、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素、クロロトルエン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼンなどのハロゲン化炭化水素、酢酸ブチル、酢酸アミルなどのエステル類およびメチルイソブチルケトン、メチルエチルケトンなどのケトン類などが挙げられる。
【0028】
また、反応器から芳香族ポリイソシアネートが飛散して熱交換器に流入することを防止するために用いられる溶媒は、芳香族ポリアミンとホスゲンとの反応工程において用いられる溶媒と同じ溶媒を用いることが好ましい。
<芳香族ポリイソシアネートの製造方法>
以下、本発明に係る芳香族ポリイソシアネートの製造方法について、図1を用いて説明する。
【0029】
まず、原料の芳香族ポリアミンまたは芳香族ポリアミンを含む溶液を配管5より、原料のホスゲンまたはホスゲンを含む溶液を配管6より、溶媒を配管7より、反応器1に供給する。また、溶媒を溶媒散布装置13から配管8内の気体排出口近傍の気体排出流路内で散布する。溶媒は、噴霧機能を備えた溶媒散布装置13から散布されることが好ましく、気体排出流路の径方向の略全面にわたって形成された複数の噴霧孔を有する噴霧機能を備えた溶媒散布装置13から散布されることがより好ましい。
【0030】
反応器1内の液相を攪拌器4により攪拌しながら、反応器1内を加熱または冷却して所望の温度に調節する。これにより芳香族ポリアミンとホスゲンが反応して、反応器1内の液相に芳香族ポリイソシアネートが生成する。前記ホスゲン化反応の温度および圧力は、芳香族ポリアミンをホスゲン化するための通常の温度および圧力であれば特に制限されない。反応により得られた芳香族ポリイソシアネートは、溶媒およびホスゲンとともに抜き出され、配管11を通じて次工程へ送液される。
【0031】
芳香族ポリイソシアネートを連続的に製造する場合には、溶媒、芳香族ポリアミンおよびホスゲンを反応器に連続的に供給し、生成した芳香族ポリイソシアネートを連続的に反応器から抜き出すことが好ましい。
反応器1内では、攪拌や突沸などにより液相の液体が気相に飛散するが、溶媒を前記気体排出流路内で散布することにより、飛散した液体が散布した溶媒と衝突して反応器1内の液相に落下し、配管8を通して熱交換器2に流入することを防ぎ、熱交換器2内の管の閉塞を防止することができる。
【0032】
また、飛散した液体が溶媒散布装置13に衝突して、配管8を通して熱交換器2へ流入することを防ぎ、衝突により溶媒散布装置13に付着した液体成分を、溶媒を散布することにより取り除くこともできる。
溶媒散布装置13から散布する溶媒量は、反応系に供給される全溶媒量のうちの0.1〜10%、好ましくは0.1〜8%の量が望ましい。前記散布する溶媒の割合は、散布する溶媒量が反応器1から芳香族ポリイソシアネートが飛散して熱交換器2に流入することを防止できる量であれば、小さい方が好ましい。
【0033】
このホスゲン化反応では、副生成物として塩化水素が生成する。生成した塩化水素は反応器1の気相に存在する。また、反応器1の気相には、気化した溶媒およびホスゲンも存在する。反応器1内の気相中の気体を、気体排出口8aより反応器外に抜き出し、配管8を通じて熱交換器2へ導入し冷却する。
次いで、気体排出口8aより抜き出した気体を熱交換器2で冷却する。熱交換器2での冷却によって、気体のうちの溶媒とホスゲンの少なくとも一部が液体成分に凝縮される。この冷却された流体を気液分離装置3に導入する。
【0034】
気液分離装置3では、導入された流体が、ホスゲンと塩化水素を含む気体成分と、溶媒とホスゲンとを含む液体成分とに分離される。液体成分は配管10を通じて反応器1へ再供給され、気体成分は配管9を通じてホスゲン吸収塔へ供給される。
【0035】
【実施例】
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明は、この実施例により何ら限定されるものではない。
[メチレン架橋ポリフェニレンポリアミンの調製]
97%アニリンと37%ホルムアルデヒド水溶液とを35%塩酸の存在下、温度30〜120℃で縮合反応させた。得られた反応液に32%水酸化ナトリウム水溶液を加えて中和し、オイル相を取り出した。取り出したオイル相を湯洗した後、減圧蒸留によって、水および未反応のアニリンを留去し、メチレン架橋ポリフェニレンポリアミン(以下、ポリMDAと略す)を得た。
[メチレン架橋ポリフェニレンポリイソシアネートの製造]
図1に示す製造装置を用いてメチレン架橋ポリフェニレンポリイソシアネート(以下、ポリMDIと略す)の製造を実施した。反応器1に20質量%のポリMDAのオルソジクロロベンゼン(以下、ODCBと略す)溶液を27.6kg/h、ホスゲンを23.7kg/h、溶媒としてODCBを18.7kg/hを供給した。反応温度はジャケットおよび外部加熱器により80℃に維持し、圧力は5.0kg/cm2(ゲージ圧)に維持した。配管12を通して溶媒散布装置13にODCBを1.6kg/h供給し、配管8内の気体排出口8a近傍の気体排出流路内でODCBを散布した。反応器1内の反応液を連続的に取り出し、生成したポリMDIを回収した。上記操作を長期間継続して実施しても、熱交換器2内の管の閉塞は認められなかった。
【0036】
【比較例】
[メチレン架橋ポリフェニレンポリイソシアネートの製造]
図3に示す製造装置を用い、ポリMDIの製造を実施した。溶媒散布装置を用いず、反応器1に溶媒としてODCBを20.3kg/h供給した以外は、実施例と同様にしてポリMDIの製造を実施した。
【0037】
操作開始後、3〜4ヶ月を経過した時点で、熱交換器2内の管の閉塞が認められた。
【0038】
【発明の効果】
本発明に係る芳香族ポリイソシアネートの製造装置および製造方法によると、芳香族ポリイソシアネートの製造のホスゲン化反応における熱交換器内での固着物の生成および熱交換器内の管の閉塞を防ぐことができ、長期間にわたり安定して芳香族ポリイソシアネートを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る芳香族ポリイソシアネートの製造装置の概略図である。
【図2】図1に示す気体排出口近傍の拡大図である。
【図3】従来の芳香族ポリイソシアネートの製造装置の概略図である。
【符号の説明】
1 反応器
2 熱交換器
3 気液分離装置
4 攪拌器
5〜12 配管
8a 気体排出口
13 溶媒散布装置
Claims (8)
- 溶媒中で芳香族ポリアミンとホスゲンとを反応させるための反応器と、
前記反応器の上部に設けられた気体排出口から抜き出した気体を冷却して得られた液体成分を前記反応器に還流する還流経路とを備え、
前記還流経路が、
前記気体排出口から抜き出した気体を冷却するための熱交換器と、
前記熱交換器で冷却された流体を気体成分と液体成分とに分離するための気液分離装置と
を備える芳香族ポリイソシアネートの製造装置であって、
前記還流経路の気体排出口近傍の気体排出流路内に、該反応器から芳香族ポリイソシアネートが飛散して前記熱交換器に流入することを防止するための溶媒を散布する溶媒散布装置を備えることを特徴とする芳香族ポリイソシアネートの製造装置。 - 前記溶媒散布装置が、噴霧機能を備えていることを特徴とする請求項1に記載の芳香族ポリイソシアネートの製造装置。
- 前記噴霧機能を備えた溶媒散布装置が、前記気体排出流路の径方向の略全面にわたって形成された複数の噴霧孔を有することを特徴とする請求項2に記載の芳香族ポリイソシアネートの製造装置。
- 芳香族ポリイソシアネートの製造装置に供給される全溶媒量のうちの0.1〜10%を、前記溶媒散布装置から散布することを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の芳香族ポリイソシアネートの製造装置。
- 溶媒中に、少なくとも、芳香族ポリアミンと、ホスゲンとを供給し、該溶媒中で芳香族ポリアミンとホスゲンとを反応させる工程と、
反応器の上部に設けられた気体排出口から反応器内の気相を構成する気体を抜き出し、熱交換器に導入して該気体を冷却する工程と、
前記熱交換器で冷却された流体を気体成分と液体成分とに分離する工程と、
前記液体成分を前記反応器へ再供給する工程と
を有する芳香族ポリイソシアネートの製造方法であって、
前記気体排出口から反応器内の気体を抜き出すための気体排出流路内に設けた溶媒散布装置から、該反応器から芳香族ポリイソシアネートが飛散して前記熱交換器に流入することを防止するための溶媒を散布しながら、溶媒中で芳香族ポリアミンとホスゲンとを反応させることを特徴とする芳香族ポリイソシアネートの製造方法。 - 前記溶媒散布装置が、噴霧機能を備えていることを特徴とする請求項5に記載の芳香族ポリイソシアネートの製造方法。
- 前記噴霧機能を備えた溶媒散布装置が、前記気体排出流路の径方向の略全面にわたって形成された複数の噴霧孔を有することを特徴とする請求項6に記載の芳香族ポリイソシアネートの製造方法。
- 反応系に供給する全溶媒量のうちの0.1〜10%を、前記溶媒散布装置から散布することを特徴とする請求項5から7のいずれかに記載の芳香族ポリイソシアネートの製造方法。
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JP2008534273A (ja) * | 2005-04-08 | 2008-08-28 | ハンツマン・インターナショナル・エルエルシー | スパイラルミキサーノズル、2種以上の流体の混合方法、およびイソシアネートの製造方法 |
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2002
- 2002-07-04 JP JP2002196179A patent/JP2004035490A/ja active Pending
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