JP2004034925A - エアバッグ展開制御方法およびエアバッグ展開制御装置 - Google Patents
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Abstract
【目的】エアバッグにおける、より高い安全保護性能を確保可能とする。
【構成】スライド位置情報と荷重情報とを適宜処理し、そのシート12への大人の着座が判別されたときのみ、エアバッグ20の膨張展開を許可する。そして、シートスライド位置がエアバッグ膨出エリア外L2と判別され、各情報に基づく重心位置が規定範囲内にあると判別されたときのみ、エアバッグ20の膨張展開形態として全展開を選択するとともに、シートスライド位置がエアバッグ膨出エリア内L1と判別されたとき、および、重心位置が規定範囲を外れたと判別されたとき、ならびに、重心位置が規定範囲内にあると判別されたにも拘らず、荷重情報に基づいて想定した座高重心位置がエアバッグ膨出エリア内L1にあると判別されたとき、エアバッグの膨張展開形態として段階的展開を選択するものとしている。
【選択図】 図8
【構成】スライド位置情報と荷重情報とを適宜処理し、そのシート12への大人の着座が判別されたときのみ、エアバッグ20の膨張展開を許可する。そして、シートスライド位置がエアバッグ膨出エリア外L2と判別され、各情報に基づく重心位置が規定範囲内にあると判別されたときのみ、エアバッグ20の膨張展開形態として全展開を選択するとともに、シートスライド位置がエアバッグ膨出エリア内L1と判別されたとき、および、重心位置が規定範囲を外れたと判別されたとき、ならびに、重心位置が規定範囲内にあると判別されたにも拘らず、荷重情報に基づいて想定した座高重心位置がエアバッグ膨出エリア内L1にあると判別されたとき、エアバッグの膨張展開形態として段階的展開を選択するものとしている。
【選択図】 図8
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、エアバッグの膨張展開形態を、その着座状況に応じて適宜選択可能とするエアバッグ展開制御方法およびエアバッグ展開制御装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
車両用乗員保護装置であるエアバッグは、その高い保護性能から、今や運転席のみならず助手席やリヤシート等にも標準的に装備されつつある。
【0003】
ここで、エアバッグは、シートベルトの装着を伴った着座を前提とした、補助的な保護装置として設けられていたため、このエアバッグに対する従来の展開制御方法は、特定以上の衝撃を検出したときにエアバッグを一定の展開形状(最大膨張形状)まで瞬時に展開(膨出)させるものとなっていた。
【0004】
しかしながら、この従来の展開制御では、着座者の前後位置やシートベルトの装着有無等を問わず、エアバッグの展開形状を最大膨張形状としているため、シートのスライド位置や着座者の上体傾斜位置等、つまり着座者の上体の前後位置によっては、エアバッグの膨張展開時における膨張力が着座者に衝撃として過剰に付勢されることに起因する、その加害性も指摘されている。
【0005】
そこで、エアバッグの膨張展開を2段階等の多段階としたり、膨張内圧を制御すること等により、着座の有無やシートベルト装着の有無等の検出結果に応じてエアバッグの展開制御を行うことが、近年提案されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
ここで、従来では、着座の有無やその着座者の種別、あるいはシートベルトの装着有無等を、エアバッグの展開制御に対する主な判断材料としている。しかしながら、特に、シートベルトの装着のない場合における着座姿勢はさまざまであり、また、シートベルトを装着していたとしても、上体の前傾、後傾等によってその着座姿勢は異なるため、これらの判断材料だけでは、着座姿勢自体を一義的に捉えることは難しい。
【0007】
つまり、着座の有無やその着座者の種別、あるいはシートベルトの装着有無等の他に、着座姿勢をある程度推定し、それに対応したエアバッグ展開制御を行うことが望ましいと考えられる。しかし、このような着座姿勢を判別すること自体、現時点では行われていない。
【0008】
この発明は、より高い安全保護性能を確保可能としたエアバッグ展開制御方法およびエアバッグ展開制御装置の提供を目的としている。
【0009】
【課題を解決するための手段】
この目的を達成するために、請求項1に示すこの発明のエアバッグ展開制御方法によれば、エアバッグの最大膨張形状に基づいて、シートスライド範囲をエアバッグ膨出エリア内とエアバッグ膨出エリア外とに分離規定するとともに、エアバッグの膨張展開形態を、その最大膨張形状まで一度に膨張する全展開と、その最大膨張形状まで段階的に膨張する段階的展開との2種から、適宜選択するものとしている。そして、スライド位置検出手段により検出した、シートの前後位置に関わるスライド位置情報と、荷重検出手段により検出した、シートヘの入力荷重に関わる荷重情報とを適宜処理し、予め設定された判別値との比較のもとで、そのシートへの大人の着座が判別されたときのみ、いずれかの膨張展開形態によるエアバッグの膨張展開を許可するものとしている。
【0010】
さらに、この展開許可に加えて、そのシートスライド位置がエアバッグ膨出エリア外と判別され、なおかつスライド位置情報、および荷重情報に基づいて算出した重心位置が、シートクッションの表面上で予め規定した規定範囲内にあると判別されたときのみ、エアバッグの膨張展開形態として全展開を選択するとともに、シートスライド位置がエアバッグ膨出エリア内と判別されたとき、および、重心位置がシートクッション表面上の規定範囲を外れたと判別されたとき、ならびに、重心位置がシートクッション表面上の規定範囲内にあると判別されたにも拘らず、荷重情報に基づいて想定した座高重心位置がエアバッグ膨出エリア内にあると判別されたとき、エアバッグの膨張展開形態として段階的展開を選択するものとしている。
【0011】
また、この発明の請求項2においては、荷重情報に基づいて算出した算出重心位置を座標上に置き換え、その前後方向の、所定の基点からの移動量をスライド位置に相当するY軸成分から減算することで、この算出重心位置に対する補正とするものとして具体化している。
【0012】
さらに、この発明の請求項3においては、シートスライド範囲に規定されたエアバッグ膨出エリア内とエアバッグ膨出エリア外との境界点を、シートスライド位置とは別に検出するものとしている。
【0013】
そして、この発明の請求項4においては、シートベルトの装着の有無を検出し、シートベルトの装着のないとき、それを着座者に告知する表示を所定の表示手段により行うとともに、シートへの大人の着座を判別したとき、このシートベルトの装着の有無に拘らず、いずれかの膨張展開形態によるエアバッグの膨張展開許可をなすものとしている。
【0014】
また、請求項5に示すこの発明のエアバッグ展開制御装置によれば、シートへの入力荷重を、少なくとも前後個別に検出する荷重検出手段と、シートのスライド位置を検出するスライド位置検出手段と、エアバッグの最大膨張形状に基づいて分離規定したエアバッグ膨出エリア内とエアバッグ膨出エリア外との境界点を検出するエリア検出手段とを備えるとともに、荷重検出手段からの荷重情報と、スライド位置検出手段、およびエリア検出手段からのスライド位置情報とを適宜処理して、エアバッグの膨張展開形態を、その最大膨張形状まで一度に膨張する全展開、およびその最大膨張形状まで段階的に膨張する段階的展開から選択する情報処理手段を、さらに備えている。
【0015】
そして、情報処理手段において、そのシートへの大人の着座が判別されたときのみ、エアバッグの膨張展開を許可するものとし、この展開許可に加えて、そのシートスライド位置がエアバッグ膨出エリア外と判別され、なおかつスライド位置情報、および荷重情報に基づいて算出した重心位置が、シートクッションの表面上で予め規定した規定範囲内にあると判別されたときのみ、エアバッグの膨張展開形態として全展開を選択するとともに、シートスライド位置がエアバッグ膨出エリア内と判別されたとき、および、重心位置がシートクッション表面上の規定範囲を外れたと判別されたとき、ならびに、重心位置がシートクッション表面上の規定範囲内にあると判別されたにも拘らず、荷重情報に基づいて想定した座高重心位置がエアバッグ膨出エリア内にあると判別されたとき、エアバッグの膨張展開形態として段階的展開を選択するものとして、このエアバッグ展開制御装置は構成されている。
【0016】
また、この発明の請求項6においては、シートベルトの装着を検出するシートベルトスイッチと、所定の告知表示を可能とする表示手段とをさらに具備するものとして、エアバッグ展開制御装置が具体化され、シートベルトの装着のないことを含む各種告知を、表示手段によって着座者に告知するものとしている。
【0017】
さらに、この発明の請求項7においては、スライド可能なシートが、シートの移動方向に連なった等間隔毎の一連の検出対象孔を、その固定の磁性部材に有するとともに、スライド位置検出手段が、検出対象孔との上下非整列位置にある磁石体と、検出対象孔との上下整列位置に並置された2つのホール素子とを、磁性板上に一体的に配してなる磁気センサ本体を備えたものとしてなり、この磁気センサ本体の各ホール素子が、異なる2相のパルスを同期出力可能に検出対象孔に対するその通過タイミングを変えてそれぞれ配設されたものとして具体化されている。
【0018】
また、この発明の請求項8においては、エリア検出手段が、固定のエリア規定部材の有無を検出可能に配されたホール素子として具体化されている。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照しながらこの発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0020】
図1、図2に示すように、この発明に係るエアバッグ展開制御装置10は、シート12に付加された荷重を検出可能とする荷重検出手段14と、シートのスライド位置を検出可能とするスライド位置検出手段16とを備えている。そして、これら荷重検出手段14、およびスライド位置検出手段16からの各種情報を情報処理手段18において適宜処理し、その処理結果に基づいてエアバッグ20に対する展開制御を行うものとして、このエアバッグ展開制御装置10は構成されている。
【0021】
図2に示すように、エアバッグ20は、通常、その収縮状態で小さく折り畳まれ、ガス発生/点火手段22を有したエアバッグユニット24として、シート12の前方配置部材、たとえば、運転席(ドライバーシート)のステアリングホイール26に内設されている。そして、このエアバッグユニット24は、車体への衝撃の入力を検出する衝撃センサ(図示しない)を有する、たとえばSRSユニット28に接続され、このSRSユニットからの出力信号によるガス発生/点火手段の作動制御により、エアバッグに対する展開制御が行われる。
【0022】
ここで、この発明においては、エアバッグ20が、所定の段階を経ることなくその最大膨張形状まで一度に、かつ瞬時に膨張する全展開と、その最大膨張形状まで段階的、たとえば2段階等の段階を経て膨張する段階的展開との2種の膨張展開形態を持つものとして具体化される。そして、エアバッグ20の段階的展開としては、たとえば、ガス発生/点火手段22によるガスの段階的な発生によるものが例示できる。
【0023】
なお、このような、エアバッグ20を段階的に展開させること自体は、たとえば特開平11−20607号公報等に開示されている通り公知であり、また、その構成、および手法自体はこの発明の趣旨でないため、このエアバッグの段階的展開に対する詳細な説明は、ここでは省略する。
【0024】
そして、この発明のエアバッグ展開制御装置10は、その不展開制御、つまりは展開不許可を含めたエアバッグ20の全展開/段階的展開を制御するものとして構成され、その制御基準として、シート12への入力荷重、およびシートのスライド位置をそれぞれ荷重情報、およびスライド位置情報として適宜検出するものとしている。
【0025】
図2を見るとわかるように、このエアバッグ展開制御装置10は、シートスライド装置30をシート12、つまりはシートクッション32の下部に備えた、いわゆるスライドシートをもとに構成される。そして、シート12への入力荷重を検出する荷重検出手段14が、シートクッション32の座面32aに対する上方からの荷重を受動可能に、シートスライド装置の下部位置に配設されている。
【0026】
なお、このシートスライド装置自体の基本構成は公知であり、それ自体はこの発明の趣旨でないため、この基本構成に対する詳細な説明はここでは省略するが、図2、および図3に示すように、この種のシートスライド装置30においては、後述のベース部材34を介して床体36に固定的に連結、支持されるロアレール38に対し、シート側のアッパレール40が、スチールボール42、およびローラ44等の転動子を介してその長手方向にスライド可能に組み付けられている。
【0027】
そして、図3を見るとわかるように、この発明の実施の形態においては、荷重検出手段14が、たとえば起歪部材46に歪みゲージ48を組み合わせたものとして具体化されている。
【0028】
起歪部材46は、入力荷重に応じた歪曲を繰り返し可能とする、たとえばばね鋼材等のような、復元力を持った可歪性素材からなる長手形状体として形成されており、図3(B)に示すように、その長手側面の形状は、たとえば、肉薄部としてなる易歪部46aを挟んだ一方を高段部46b、および他方を低段部46cとした、いわゆる離間段差形状として具体化されている。
【0029】
この起歪部材の高段部46bは、シート側部材、たとえばシートスライド装置のロアレール38の載置、固定される固定部として機能し、たとえば前後一対(図3(B)中の左右一対)の固定ピン(カシメピン)50により、この高段部、ロアレール間が一体的に連結、固定されている。また、図3に示すように、この起歪部材の低段部46cは、その短手方向での枢軸52の貫通により、固定のベース部材34に回動自在に連結、支持されている。
【0030】
図2、および図3に加えて図4を見るとわかるように、ベース部材34は、ロアレール38に沿って延びた長手のレール状体としてなり、たとえば、上面の開口された正面略コ字形状の本体34−1の前後端部が、レッグ34−2F,34−2Rを介して床体36にそれぞれ固定されている。そして、図3(A)に示すように、枢軸52は、ベース部材本体34−1の、たとえば対向縦壁34−1a間に離脱不能に架設された枢支ピン(ボルト)として具体化でき、対向縦壁の挿通孔に嵌着した一対のブッシュ54により、この対向縦壁間における起歪部材46の支持位置が規定されている。
【0031】
このような構成においては、シートスライド装置30、つまりシート12が、起歪部材46を介してベース部材34に連結、支持されることになる。そして、シート12からの荷重がこの起歪部材46に入力すると、高段部46bがその荷重のもとでほぼ平行に下降(昇降)しようとするのに対し、低段部46cは枢軸52を支点として上下方向に回動しようとするため、その移動軌跡のずれが歪みとなってその間の肉薄部、つまりは易歪部46aに現われる。そこで、図3に示すように、この荷重検出手段14においては、この易歪部46aでの起歪部材46の歪みを検出可能に、歪みゲージ48が易歪部の上下いずれかの面、たとえば下面に、接着、貼着等のもとで固定的に配設されている。
【0032】
歪みゲージ48として、たとえば可撓性のある電気絶縁薄板内に金属抵抗線を内設、固定してなる、いわゆる抵抗線ゲージが利用できる。
【0033】
ここで、図2ないし図4に示すように、この荷重検出手段14は、シートスライド装置のロアレール38に対する前部、後部にそれぞれ配設される。そして、このシートスライド装置30がシート12、つまりシートクッション32の左右離間位置に並置されることから、図5に示すように、この発明の実施の形態においては、荷重検出手段14(#1〜#4)がシートの前後、左右の4ヶ所に離間配置されることになる。
【0034】
この4ヶ所の荷重検出手段14(#1〜#4)、つまりその各歪みゲージ48は、図1、図2に示すように、情報処理手段18にそれぞれ接続されている。
【0035】
情報処理手段18は、その中枢となるCPU56を備えた、いわゆるECU(電子制御装置)の一種としてなり、荷重検出手段14(#1〜#4)毎の歪みゲージ48からの出力信号が、このCPUにおいて監視されている。そして、この各歪みゲージ48からの出力値をもとにした各種演算処理によって荷重情報を得るとともに、それに対応した出力を適宜行うものとして、このCPU56、つまりECU(情報処理種手段)18は構成されている。
【0036】
なお、図1に示すように、この実施の形態においては、ECU18に設けられたチャンネル切換回路58によって、検出対象となる荷重検出手段14(#1〜#4)を順次切換え、このチャンネル切換回路によって切換えられた荷重検出手段毎に、その出力をCPU56において順次監視するものとしている。
【0037】
この、シートクッション24の離間4ヵ所に荷重検出手段14(#1〜#4)を配設したこの構成においては、通常、各荷重検出手段による検出荷重の合計(総和)を、この荷重検出手段により検出したシート12への入力荷重としてみなすものとしている。また、荷重検出手段14(#1〜#4)毎の検出荷重を比較すれば、シート12における荷重分布を推定することも、この構成によれば容易に可能となる。
【0038】
そして、この発明のエアバッグ制御装置10は、この荷重検出手段14(#1〜#4)により検出した検出荷重をもとにして、たとえば着座者の種別の概略的な判別を行うように構成されている。
【0039】
たとえば、図6に示すように、子供と大人とをその入力荷重、つまり体重で判別する際のしきい値WTHが、ECUのCPU56に予め設定される。そして、荷重検出手段14(#1〜#4)による検出荷重の総和Wttとしきい値WTHとを比較するによって、シート12への入力荷重をもとにした着座者種別の判別が行われる。
【0040】
また、この発明のエアバッグ展開制御装置10においては、上述したように、シート12のスライド位置を検出可能とするスライド位置検出16が、この荷重検出手段14(#1〜#4)に加えて設けられている。
【0041】
図4に示すように、この発明におけるスライド位置検出手段16においては、シート12のスライド方向に連なる等間隔毎の一連の検出対象孔60が、固定の磁性部材、たとえばシートスライド装置のロアレール38に形成されるとともに、この磁性部材に沿って離間配置される磁気センサ本体62が、シートと同期移動する可動のシート側部材、たとえばシートスライド装置のアッパレール40に一体的に固定されている。
【0042】
ここで、この実施の形態におけるシートスライド装置30としては、たとえば、マニュアル式のロックを有する、いわゆるアニュアルロック式が例示でき、このマニュアルロック式のシートスライド装置、つまりマニュアルスライドにおいては、図3、および図4に示すように、アッパレール40に配設された可動のロック爪(図示しない)の挿入、係合される一連のロック孔60が、ロアレール38の、たとえば側面に設けられている。
【0043】
そして、マニュアルスライド(シートスライド装置)30のマニュアルロックとして設けられるこのロック孔60が、図3(B)に示すような、ロアレール38に対するアッパレール40のスライド方向、つまりはシート12のスライド方向に連なる一連の等間隔孔であり、このロック孔の設けられるロアレールが、金属等からなる磁性部材であることから、この実施の形態においては、固定の磁性部材に設けられた一連の検出対象孔として、このロアレールのロック孔を利用するものとし、このロック孔に対する通過を検出可能に、磁気センサ本体62が構成、配設されている。
【0044】
図4に示すように、磁気センサ本体62は、ロアレール38の側面(磁性部材)に沿って離間配置されるものであり、ロック孔(検出対象孔)60との上下非整列位置にある磁石体64と、ロック孔との上下整列位置に並置された2つのホール素子66−1,66−2とを、たとえば折曲可能なフレキシブル基盤68で連結し、これを、ロアレールの側面を部分的に被装可能とする端面形状に折曲形成された磁性板70の内面70aに一体的に配することにより、この磁気センサ本体は概略形成されている。
【0045】
図示のように、この磁性板の内面70aは、たとえば、樹脂材料等の絶縁素材からなるインシュレータ(絶縁部材)72によって覆われる。そして、シート12と同期移動する可動のシート側部材、たとえばアッパレール40への、このインシュレータ72を介在させた、止めねじ74等によるその基部70bの固定のもとで、この磁性板70は、ロアレール38に対する移動を可能に固定、配設されている。
【0046】
この磁気センサ本体62、特にその磁石体64、およびホール素子66−1,66−2は、ロアレール38の側面に対し、その非接触状態での移動を可能に配設、保持される。そこで、ロアレール38の側面に対する離間距離の安定化を目的として、ロアレールに摺接可能な突起76をインシュレータ72のその対向面に部分的に設けることが好ましい。
【0047】
なお、図4に示す参照符号78は、ホール素子66−1,66−2を支持する台座プレートであり、この台座プレートは、磁性板70と同様の磁性部材として形成されている。
【0048】
このような構成の磁気センサ本体62を配設したマニュアルスライド30においては、図4(A)に破線矢印で示すように、たとえば磁石体64、磁性板70、台座プレート78、ホール素子66−1,66−2、そしてロアレール38の順のループ状磁路80が形成される。そして、ロック孔60とのホール素子66−1,66−2の整列位置における開ループ、およびその非整列位置における閉ループによって、そのループ状磁路80での磁気抵抗はそれぞれ異なるため、各ホール素子からの出力値をそれぞれ監視することにより、一連のロック孔に対する各ホール素子の整列位置、非整列位置を区別し検出することが可能となる。
【0049】
そこで、図1、および図2に示すように、この発明においては、磁気センサ本体62の2つのホール素子66−1,66−2が、荷重検出手段の歪みゲージ48と同様に、ECU18にそれぞれ接続されている。
【0050】
図1を見るとわかるように、このECU18は、たとえば、ホール素子66−1,66−2からの入力信号をパルス化するパルス整形回路82を備えている。そして、このパルス整形回路82を経た、ホール素子66−1,66−2からの入力信号、たとえば出力パルスとそこで検出したパルスエッジとをCPU56において監視し、このCPUにおける、これらをもとにした各種演算処理等のもとで、これら入力信号、つまりスライド情報に基づいた情報処理、ならびに出力を行うものとして、このECU18は概略構成されている。
【0051】
CPU56からの出力は、ECU18に設けられた通信回線82を介して外部に接続される。
【0052】
なお、図4の参照符号84は、フレキシブル基盤68からの端子を有するカプラであり、このカプラを介して、ホール素子66−1,66−2、つまり磁気センサ本体62はECU18に電気的に接続される。
【0053】
ここで、図7(A)に示すように、この発明の実施の形態においては、ホール素子66−1,66−2の横幅が、一連のロック孔60の1ピッチの、たとえば1/6幅として規定されている。そして、前側(図中左側)のホール素子66−1がその1/6−1位置にあるときに後側(図中右側)のホール素子66−2を1/6−5位置に配置するように、この2つのホール素子の位置関係は設定されている。
【0054】
さらに、この実施の形態では、ロアレール38に対するアッパレール40のロック位置において、前側のホール素子66−1がロック孔1ピッチの1/6−1位置に位置するものとして規定する。
【0055】
つまり、ロアレール38に対するアッパレール40のロック位置においては、前側のホール素子66−1がロック孔60との整列位置にあるため、このホール素子66−1を含むループ状磁路80はその出力レベルをLoとする開ループとなり、また、そのロック位置においては、後側のホール素子66−2がロック孔との非整列位置にあるから、このホール素子66−2を含むループ状磁路はその出力レベルをHiとする閉ループとなる。
【0056】
また、図示のように、前側のホール素子66−1がロック孔1ピッチの1/6−1位置にあり、また、後側のホール素子66−2がその1/6−5位置にあるため、ロアレール38に対するアッパレール40のスライドに伴うロック孔60の側端縁までの距離が、各ホール素子毎に異なるものとなっている。
【0057】
このように、この発明においては、ホール素子66−1,66−2が、異なる2相のパルスを同期出力可能に、ロック孔60に対するその通過タイミングを変えて並置されている。
【0058】
なお、このホール素子66−1,66−2を有する磁気センサ本体62は、通常は、マニュアルロックをなすアッパレール側のロック爪に対する後部位置で、アッパレール40に配設される。つまり、ロアレール38に対するアッパレール40のスライドリアモーストにおいては、図7(B)に示すように、ホール素子66−1,66−2が共にロック孔60から外れた、ロック孔との非整列位置に保持されるものとなるため、このスライドリアモーストでのロック位置においては、この点において他の通常のロック位置と異なるものとなっている。そして、この発明においては、この他の通常のロック位置と異なるスライドリアモーストでのロック位置を、ロアレール38に対するアッパレール40のスライド量の決定基準となるカウントの基点として規定している。
【0059】
ここで、図8を見るとわかるように、エアバッグ20は、シート12の前方位置に膨出されるものであるため、エアバッグの持つ最大膨張形状から、シートのスライド範囲L0に対するエアバッグ膨出エリアA1は推定される。そこで、この発明においては、シート12のスライド範囲L0を、エアバッグ20の膨出エリアA1にシート12が侵入したとみなされるエアバッグ膨出エリア内L1と、エアバッグの膨出エリアからシートが外れているとみなされるエアバッグ膨出エリア外L2とに予め区分し、それぞれの範囲内に対応させたエアバッグの展開制御を可能に、エアバッグ制御装置10は構成されている。
【0060】
なお、その際の着座者としては、たとえば小柄な女性を想定することが望ましい。
【0061】
図9を見るとわかるように、この発明においては、シート12がエアバッグ膨出エリア内L1にあるときに、エアバッグ20を段階的展開とし、シートがエアバッグ膨出エリア外L2にあるときのみ、エアバッグの全展開が可能となっている。
【0062】
なお、このエアバッグ膨出エリア内L1とエアバッグ膨出エリア外L2との境界点を、ここではk点として表す。
【0063】
ここで、図3、図4、および図10に示すように、この発明の実施の形態においては、磁気センサ本体62に設けたエリア検出手段86によって、シート12のスライド範囲L0のエアバッグ膨出エリア内L1とエアバッグ膨出エリア外L2とを検出するように構成されている。
【0064】
たとえば、エアバッグ膨出エリア内L1を規定する、このエアバッグ膨出エリア内L1に相当する長さのエリア規定部材88が、ロアレール38の上面に一体的に固着されている。このエリア規定部材88は、たとえば、ロアレール38等と同様の磁性部材としてなり、この上面に沿って移動可能に、たとえばホール素子からなるエリア検出手段86が、磁気センサ本体の磁性板70ヘの固着のもとで配設されている。
【0065】
このホールセンサ86を磁気センサ本体62に配したマニュアルスライド30においては、図4(A)に破線矢印で示すように、ホール素子66−1,66−2側と同様に、たとえば磁石体64、磁性板70、ホール素子86、エリア規定部材88、そしてロアレール38の順のループ状磁路90が形成される。そして、エリア規定部材88にホール素子86の整列された閉ループ、およびその非整列位置における開ループによって、そのループ状磁路90での磁気抵抗はそれぞれ異なるため、ホール素子86からの出力値を監視することにより、エリア規定部材の有無、つまりはスライド範囲L0におけるエアバッグ膨出エリア内L1を検出し規定することが可能となる。
【0066】
図1、図2を見るとわかるように、この、エリア検出手段となるホール素子86も、スライド位置検出手段のホール素子66−1,66−2と同様に、ECU18のCPU56に接続され、このCPUにおいて、このホール素子86からの出力値が、スライド位置情報の一部となるエリア情報として処理されるものとなっている。
【0067】
なお、エリア規定部材88にホール素子86の整列された閉ループにおいてはその出力レベルがLoとなり、また、その非整列位置における開ループにおいてはその出力レベルがHiとなるため、これによってスライド範囲L0におけるエアバッグ膨出エリア内L1、エアバッグ膨出エリア外L2の明確化がはかられる。
【0068】
また、図1、および図2を見るとわかるように、この発明のエアバッグ制御装置10においては、シートベルトの装着を検出するシートベルトスイッチ92が、ECU内のCPU56に接続されている。つまり、この発明においては、荷重検出手段14により検出されるシート12への入力荷重、スライド位置検出手段16とエリア検出手段(ホール素子)86とにより検出されるシートのスライド位置、およびシートベルトスイッチ92により検出されるシートベルト装着の有無が、エアバッグ20に対する展開制御のための主な判断材料となっている。
【0069】
そして、このエアバッグ制御装置のECU18は、エアバッグ20のためのSRSユニット28に、ECU内の通信回線82を介して接続され、このECUからの出力信号によるSRSユニットの作動制御のもとで、エアバッグ20の展開、非展開が制御されている。
【0070】
さらに、このエアバッグ制御装置のECU18は、その通信回線82を介して表示手段、たとえばディスプレイ94にも接続されている。このディスプレイ(表示手段)88においては、荷重検出手段14、スライド位置検出手段16、エリア検出手段86、およびシートベルトスイッチ94等の各種情報入力手段での異常の発生に対する警告、告知、あるいは着座者に対する各種メッセージの表示等が行われる。
【0071】
上述したこの発明のエアバッグ展開制御装置10によるエアバッグ展開制御方法を、図11ないし図15のフローチャートをもとに、図16のタイミングチャートを参照しながら、以下に説明する。
【0072】
なお、この実施の形態においては、図16(f)で点P1として示すロック位置(同図(f)参照)を、ロアレール38に対するアッパレール40の初期位置、つまりはシート12のスライド初期位置として仮定する。
【0073】
図11に示すメインルーチンを見るとわかるように、このエアバッグ展開制御方法においては、まず、イニシャライズ、つまりCPU56内部の初期化が行われ(102)、次に、スライド位置検出ルーチンにおける処理のもとで、位置検出手段16によるシート12のスライド位置検出が適宜行われる(104)。
【0074】
図12に示すように、このスライド位置検出ルーチンにおいては、まず、前回のスライドにより設定されたシート12のスライド位置(初期位置P1)が、スライドカウンター値Csiとして認識される(202)(図16(f)参照)。
【0075】
このスライドカウンター値Csiは、所定の基点、つまり図16(f)で点P2として示す、ロアレール38に対するアッパレール40のスライドリアモーストからのロック孔60のカウント数として認識される。そして、図12に示すように、(202)におけるカウンター値Csiの認識の後は、ホール素子66−1,66−2からのエッジパルスの発生の有無が判断される(204)。
【0076】
たとえば、シート12が、図16(f)の初期位置P1のようなロック位置、つまりは停止位置にあれば、図16(c)で示すようにエッジパルスの発生はないため、シートのスライド位置が初期位置P1であれば、この図12の(204)においてはNoと判断されて、次に、そのときのホール素子66−1,66−2毎のパルスレベルが判別される(206)。
【0077】
図7(A)を見るとわかるように、アッパレール40のロック位置においては、前側のホール素子66−1を含むループ状磁路80が開ループ、および後側のホール素子66−2を含むループ状磁路が閉ループとなるため、シート12の初期位置P1での各ホール素子におけるパルスレベルは、図16(a),(b)に示すように、前側のホール素子66−1ではLo(66−1=Lo)、また、後側のホール素子66−2 ではHi(66−2=Hi)となるため、図16(f)に示すこのシートの初期位置P1においては、図12の(206)でYesと判断されて、エッジパルスの発生まで待機される。
【0078】
なお、ここでは、図16(f)に示す初期位置P1においての説明としているが、同図(f)で示すロック位置(スライドリアモーストの点P2を除く)であれば、同様の判断が行われる。
【0079】
また、エッジパルスの発生がなく、図12の(204)においてNoと判断されたにも拘らず、前出の「66−1=Lo&66−2=Hi」の関係が否定された場合においては、次段の(206)においてNoと判断されて、次に、ホール素子66−1,66−2のパルスレベルが「66−1=Hi&66−2=Hi」の関係を満たしているか否かが判断される(208)。そして、この(208)でNoと判断されれば、マニュアルスライド30の非ロック状態と認識されて、エッジパルスの発生まで再び待機され、この(208)でYesと判断されれば、図16(f)で点P2として示すスライドリアモーストでのロック位置にあると認識されて、図12の(210)において、スライドカウンター値Csiがリセット「0」される。
【0080】
次に、たとえば、図16(f)の初期位置P1からシート12を前後のいずれかにスライドさせると、ロック孔60に対するホール素子66−1,66−2の移動のもとで(図7(A)参照)、図16(c)に示すようなエッジパルスが発生する。この、エッジパルスが発生すると、図12の(204)においてYesと判断されるため、次にこのエッジパルス間におけるホール素子66−1,66−2のパルスレベルが判別される(212)。
【0081】
たとえば、図16(f)で点P3として示すように、シート12を初期位置P1から前方にスライドさせれば、図16(a),(b)のように、ホール素子66−1,66−2のパルスレベルが「66−1=Hi&66−2=Hi」の関係を満たすため、この点P3では、図12の(212)においてYesと判断される。
【0082】
このように、この発明においては、この(212)におけるYesとの判断を、シート12の前進判別とし、(212)においてYesと判断した後に、ホール素子66−1のパルス数を1パルスカウントし(214)、そのスライドカウンター値Csiに「1」を加算する(216)。
【0083】
また、エッジパルスの発生が検出されて、図12の(204)でYesと判断されても、図16(f)の点P4のような初期位置P1からの後退位置であれば、図16(a),(b)のようにホール素子66−1,66−2のパルスレベルは「66−1=Hi&66−2=Hi」の関係を満たしていないため、図12の(212)においてNoと判断されて、次に、ホール素子66−1,66−2のパルスレベルが「66−1=Lo&66−2=Lo」の関係を満たしているか否かが判断される(218)。
【0084】
この発明においては、この(218)における判断をシート12の後退判別とし、図16(f)で点P4として示すスライド位置でのパルスレベル(図16(a),(b))のように、前側のホール素子66−1のパルスレベルがLo(66−1=Lo)、また、後側のホール素子66−2 のパルスレベルがLo(66−2=Lo)であれば、この図12の(218)における関係を満たすものとして、この(218)でYes、つまりはシートの後退と判別される。そして、その後、ホール素子66−2のパルス数を1パルスカウントし(220)、スライドカウンター値Csiから「1」を減算する(222)。
【0085】
このように、この発明においては、このスライドカウンター値Csiに対する加算、減算により、カウントの基点、つまりスライドリアモーストからのシート12のスライド位置を検出、認識している。そして、シート12のスライド位置を決定し、ロック手段により所定のロック位置にロックすれば、図12の(204)におけるNo、および同図(206)におけるYesの判断により図11のメインルーチンに戻され、次に、図13ないし図15のエアバッグ展開判断ルーチンにおける処理のもとで、各種入力情報に基づいたエアバッグ20の展開制御が適宜行われる(106)。
【0086】
図13を見るとわかるように、このエアバッグ展開判断ルーチンにおいては、まず、荷重情報として、4ヶ所の荷重検出手段14(#1〜#4)において検出した検出荷重Wti(#1〜#4)が各荷重検出手段毎に読み込まれて認識されるとともに、この各荷重検出手段毎の検出荷重の総和Wttが、別の荷重情報としてさらに算出、認識される(302)。そして、次に、この検出荷重の総和Wttがしきい値WTHより大きいか否かが判断される(304)。
【0087】
図6に示すように、この発明においては、このしきい値WTHを基準として大人の着座か子供の着座かを判別し、検出荷重の総和Wttがしきい値WTHより小さい場合、つまり子供の着座を判別した場合は、エアバッグ20の展開を不許可とする制御を行うため、図13の(304)においてNoと判断されると、図15に示すように、エアバッグ展開不許可の指示設定がなされる(306)。
【0088】
なお、ここでは、シート12への入力荷重の具体例として、着座者からの荷重、つまりは体重をあげているが、体重以外の荷重、つまりはシートクッション上に載置した荷物等の重量も、4ヶ所の荷重検出手段14(#1〜#4)において検出される。そして、その検出した重量がしきい値WTH以下であれば、同様の判断によりエアバッグ展開不許可の指示設定がなされる。
【0089】
また、4ヶ所の荷重検出手段14(#1〜#4)により検出した検出荷重の総和Wttがしきい値WTHより大きく、着座者が大人であると判別されると、図13の(304)においてYesと判断されて、次に、ホール素子66−1,66−2により検出したシート12のスライド位置、およびホール素子86により検出したシートのスライドエリアが、スライド位置情報としてそれぞれ読み込まれる(308)。
【0090】
たとえば、シート12が図16(f)の初期位置P1にあると仮定すると、この初期位置P1に相当するスライドカウンター値Csiがそのスライド位置として読み込まれるとともに、ホール素子86によるその位置での出力データから、シートの位置するスライドエリアがエアバッグ膨出エリア内L1、あるいはエアバッグ膨出エリア外L2として読み込まれる。
【0091】
なお、図16(d)を見るとわかるように、シート12の初期位置P1においては、ホール素子86の出力レベルがLoであるため、そのスライドエリアはエアバッグ膨出エリア外L2と判別される(図9参照)。
【0092】
図13の(308)においてスライド位置情報が読み込まれると、次に、このスライド位置情報、および先に読み込んだ荷重情報に基づいて、そのときの重心位置(CG位置)の算出/補正がなされる(310)。
【0093】
ここでいう重心位置の算出/補正とは、シート12上における着座者の重心位置を推定し、それを、たとえばシートクッション32の平面上での位置として捉えるためのものであり、ここでは、この重心位置を、図17で示すような座標上で捉えるものとしている。
【0094】
この重心位置の算出にあたっては、まず、荷重検出手段14(#1〜#4)のうちの#1,#2,#4を頂点とする三角形と、#1,#3,#4を頂点とする三角形とを、座標上においてそれぞれ仮定し、次に、その各重心点F(Xf,Yf)、I(Xi,Yi)を求める。そして、この各三角形の重心点F(Xf,Yf)、I(Xi,Yi)の内分比から、荷重検出手段14(#1〜#4)を頂点とする四角形の重心位置CG(Xg,Yg)が算出される。
【0095】
この重心位置の算出結果、つまり算出重心位置CG(Xg,Yg)は、床体36に対して平面上で固定的に配された4ヶ所の荷重検出手段14(#1〜#4)に対する平面位置として算出されたにすぎず、シート12のスライド位置を加味したものでないため、これをシートクッション32の平面上での位置として捉えることはできない。そこで、次に、この重心位置の算出結果、つまり算出重心位置CG(Xg,Yg)に対して、シート12のスライド位置情報に基づく補正がなされる。
【0096】
この、スライド位置情報に基づく補正においては、算出重心位置CG(Xg,Yg)から、その前後方向の移動量、つまりスライドリアモーストからのスライド量をスライド位置に相当するY軸成分から減算することが行われる。つまり、補正重心位置CG′(Xg′,Yg′)は、Xg′=Xg、Yg′=Yg−Csi×Piとして算出される(Pi:ロック位置間の距離)。
【0097】
なお、補正重心位置CG′(Xg′,Yg′)は、図5に示すように、基点、つまりスライドリアモーストに位置するシートクッション32の平面上での位置として仮定される。
【0098】
このような重心位置の算出/補正が行われると、図14に示すように、次に、シートベルトの装着の有無が判断される(312)。
【0099】
たとえば、シートベルトスイッチ92のON等によってその装着が認められると、この(312)においてYesと判断され、また、シートベルトスイッチのOFF等もとでのその装着が確認されなければ、この(312)においてNoと判断される。そして、たとえば、シートベルトが装着されておらず、この(312)においてNoと判断されると、まず、「シートベルトを締めて下さい」等のコメントが表示されて(314)、次に、シート12のスライド位置がエアバッグ膨出エリア内L1にあるか否かが判断される(316)。
【0100】
たとえば、シート12のスライド位置が図16(f)に示す初期位置P1にあると仮定すると、同図(d)を見るとわかるように、この初期位置P1ではホール素子86のパルスレベルがLoであり、即ち、シートがエアバッグ膨出エリア外L2にあることを指していることに他ならないため、この場合においては、図14の(316)においてNoと判断されるが、たとえば、ホール素子86のパルスレベルがHiとなる点P5(図16(f)参照)より前方にシート12が位置していれば、シートのスライド位置がエアバッグ膨出エリア内L1と判別されて、図14の(316)においてYesと判断される。すると、図15に示すように、エアバッグ20の段階的展開の指示設定がなされる(318)。
【0101】
つまり、シートベルトの挿着のない場合で、なおかつシート12のスライド位置がエアバッグ膨出エリア内L1であった場合は、エアバッグ20は、その段階的制御のもとで段階的に膨張展開される。このようなエアバッグ20の段階的な膨張展開であれば、たとえ着座者の上体がエアバッグ膨出エリア内L1にあっても、その膨出に伴う衝撃は、着座者に十分に抑制されて伝達されるため、着座者の安全性確保が十分にはかられるものとなる。
【0102】
ここで、前出のように、シート12のスライド位置が、図16(f)に示す初期位置P1等の、ホール素子86のパルスレベルをLoとするエアバッグ膨出エリア外L2にある場合においては、図15の(316)においてNoと判断される。そして、ここでNoと判断されると、次に、補正重心位置CG′が規定範囲内にあるか否かが判断される(320)。
【0103】
この(320)での判断は、適切な着座姿勢と認定できる範囲内に補正重心位置CG′があるか否かを判断するものであり、たとえば、シートクッション32の平面領域を図5のように区分した場合のA1〜A5エリア、およびB0〜B6エリアが、ここでの規定範囲として特定化される。
【0104】
たとえば、図5において仮定した補正重心位置CG′であれば、そのエリアはA3B4であるから規定範囲内とみなされるから、図14の(320)においてYesと判断されて、図15に示すように、エアバッグの全展開許可の指示設定がなされる(322)。
【0105】
つまり、シートベルトの装着のない場合であっても、シート12のスライド位置がエアバッグ膨出エリア外L2にあり、なおかつ着座姿勢が正常であると判別できれば、エアバッグ20は全展開される。このように、この発明においては、着座者の着座状況を判別した上でその全展開をはかるため、この点においても着座者の安全性確保が十分にはかられるものとなる。
【0106】
なお、シート12のスライド位置がエアバッグ膨出エリア外L2にあった場合であっても、極端な前傾姿勢、後傾姿勢、あるいはドアにもたれかかる等の変則姿勢等のもとで補正重心位置CG′が規定範囲外と判断されれば、図14の(320)においてNoと判断され、「正しく座りましょう」等のコメントが表示された後(324)、図15に示すように、エアバッグ20の段階的展開の指示設定がなされる(318)。
【0107】
つまり、この発明おいては、シート12のスライド位置がエアバッグ膨出エリア外L2にあっても、その着座姿勢が正常であると判別できなければ、エアバッグ20の全展開は自制される。従って、この点においても、着座者の安全性確保が十分にはかられる。
【0108】
ここで、シートベルトが装着されて図14の(312)においてYesと判断されれば、既表示のコメントは消去されて(326)、次に、シート12のスライド位置がエアバッグ膨出エリア内L1にあるか否かが判断される(328)。
【0109】
たとえば、シート12が、図16(f)で示すスライド位置P5より前方の位置にあれば、図14の(328)においてYesと判断されて、図15に示すように、エアバッグ20の段階的展開の指示設定がなされる(318)。
【0110】
そして、シート12が、図16(f)で示す初期位置P1等の、k点(点P5)より後方の位置にあれば、図14の(328)においてNoと判断されて、次に、補正重心位置CG′が規定範囲内にあるか否かが判断される(330)。
【0111】
この規定範囲は、図14の(320)における説明の部分と重複するため、ここでは省略するが、補正重心位置CG′が変則姿勢等のもとで規定範囲から外れれば、この(330)においてNoと判断されて、(320)の場合と同様に、「正しく座りましょう」等のコメントの表示の後(324)、図15に示すように、エアバッグ20の段階的展開の指示設定がなされる(318)。
【0112】
ところで、シートベルトの装着があり、補正重心位置CG′が規定範囲内で、なおかつシート12のスライド位置がエアバッグ膨出エリア外L2に位置していたとしても、シートに深く座った状態からの上体の前傾等によって、その上体の一部がエアバッグ膨出エリア内L1に侵入していないとは断定できない。特に、着座者の座高の高低によって、上体前後揺動に伴った重心位置CG位置の移動量が異なるため、着座者の上体の位置を推定するためには、着座者の座高をある程度推定することが必要となる。
【0113】
そこで、この発明においては、荷重検出手段14(#1〜#4)による検出荷重の総和Wttから着座者の体重を推定し、その体重、および体重に対応した補正係数から、その着座者の座高を推定するものとしている。
【0114】
図14を見るとわかるように、この発明においては、まず、荷重検出手段14(#1〜#4)では検出できない非検出荷重成分の修正を行なうための補正係数Ksを読み込んでいる(332)。
【0115】
ここでいう、荷重検出手段14(#1〜#4)では検出できない非検出荷重成分とは、シート12を経ることなく床体36に直接的に作用する、たとえば足元荷重、あるいはステアリングホイール等に作用する逃避荷重等を指す。つまり、図18に示すように、着座者のヒップポイント(H.P)が同位置であっても、前方スライド位置でのシート12に深く腰掛けた、(a)のような正常な着座姿勢の場合と、後方スライド位置でのシートに浅く腰掛けただけの、(b)のような場合とでは、その足元荷重に大きな差異が生じ、当然、荷重検出手段14(#1〜#4)に作用する荷重にも大小の差が発生するため、これを補正するためのものとして、補正係数Ksが用いられる。
【0116】
この補正係数Ksは、たとえば、シート12の前後方向でのエリア毎にまとめられる。そして、補正重心位置CG′の位置する前後エリアから、それに相当する補正係数Ksが抽出されて読み込まれる。
【0117】
そして、図14に示すように、補正係数Ksを読み込んだ後には、荷重検出手段14(#1〜#4)において検出した検出荷重の総和Wttに基づいて、シート12に作用する荷重、つまり着座者の体重の推定/算出が行われる(334)。
【0118】
この体重WTの推定(算出)は、たとえば、WT=Wtt/(1−Ks)により行われる。
【0119】
体重と座高との関係例を、たとえば図19(A)に示す。このようなグラフをもとにすれば、推定体重WTからその着座者の座高が概略推定でき、この推定座高、あるいは推定体重から、たとえば同図(B)に示すように、その推定座高に応じた補正係数Kwを算出することができる。
【0120】
なお、この図19(B)に示すグラフは、推定体重WTと補正係数Kwとの関係例を示すものである。
【0121】
そして、図15に示すように、推定体重WTから、それに応じたKwを読み込み(338)、次に、推定座高を考慮した重心位置(座高重心位置)を示すエアバッグ展開制御の判断値、いわゆるD−value(略称D値)を算出する。
【0122】
このD値は、たとえば、D=k+Kw×CGとして算出され、これによれば、シート12のスライド位置と座高に応じたCG移動量とを加味した上での上体位置、つまりは座高重心位置が推定できる。
【0123】
このD値が0であるか否かによって、着座者の身体の一部がk点より前方にあるか否か、つまりエアバッグ膨出エリア内L1にあるか否かが判断される(340)。
【0124】
たとえば、算出したD値が0より大きければ、そのときの仮想上体位置がk点より前方、つまりエアバッグ膨出エリア内L1にあるものとみなされて、(340)でのYesとの判断により、エアバッグ20の段階的展開の指示設定がなされる(318)。
【0125】
また、算出したD値が0未満であれば、そのときの仮想上体位置がk点より後方、つまりエアバッグ膨出エリア外L2にあるものとみなされて、(340)でのNoとの判断により、エアバッグ20の全展開許可の指示設定がなされる(322)。
【0126】
上記のように、この発明のエアバッグ展開制御方法によれば、エアバッグ20の最大膨張形状に基づいて、シートスライド範囲L0をエアバッグ膨出エリア内L1とエアバッグ膨出エリア外L2とに分離規定し、シートスライド位置がこのエアバッグ膨出エリア内にあると判別されたとき、および荷重情報に基づいて想定した座高重心位置がエアバッグ膨出エリア内にあると判別されたとき、エアバッグの膨張展開形態として段階的展開を選択するものとしている。つまり、想定上でも、着座者の身体(上体)の一部がエアバッグ膨出エリア内L1にあると判別されれば、エアバッグ20の全展開を自制し、その段階的展開を行うため、たとえ着座者の上体がエアバッグ膨出エリア内L1にあっても、その膨出に伴う衝撃は、着座者に十分に抑制されて伝達される。
【0127】
そして、その段階を経た後に、エアバッグ20は最大膨張形状まで膨張展開されるため、段階的展開であっても、着座者に対する保護性能は十分、かつ適切に確保される。
【0128】
従って、この発明によれば、エアバッグ20の膨張展開による安全保護性能ばかりでなく、エアバッグ膨出時における高い安全性能をも確実に得ることが可能となる。
【0129】
また、この発明においては、着座者の体重からその座高を推定し、その推定座高に基づく座高重心位置によって着座者の上体位置の推定を行っている。これによれば、荷重の検出だけでは得られない着座者の上体位置が、より明確に推定でき、これをもとにして、エアバッグ20の展開制御をはかることから、エアバッグ膨出時における高い安全性能の確保が、この点においても確実、かつ適切に得られる。
【0130】
さらに、この発明の実施の形態においては、荷重情報に基づいて算出した算出重心位置CG′を座標上に置き換え、その前後方向の、スライドリアモーストからの移動量をスライド位置に相当するY軸成分から減算し補正している。つまり、算出重心位置CG′からスライド位置成分を除く補正によりその重心位置を捉えているため、重心位置のスライド位置依存性を排除することが、これによれば可能となる。つまり、着座位置の推定精度、および着座者の体重推定精度が、いずれも向上することから、エアバッグ膨出エリア内外に対する重心位置、および座高重心位置の見極め性能が確実に向上し、それにより、その安全性能が一層向上される。
【0131】
そして、この発明のエアバッグ展開制御装置10によれば、上記エアバッグ展開制御方法が構成の複雑化を伴うことなく適切に遂行可能となる。
【0132】
なぜならば、この発明においては、着座者の座高を実測により認識するのではなく、荷重検出手段14により検出した着座者の体重、つまり荷重情報をもとにして、その座高を推定しているにすぎないため、装置自体の構成の複雑化が確実に防止されるわけである。
【0133】
また、荷重検出手段14によってシート12への入力荷重を、また、スライド位置検出手段16によってシートのスライド位置を、それぞれ検出すれば足りるため、この点からも、その構成の簡素化が確実にはかられる。
【0134】
ここで、この発明の実施の形態においては、シート12を、マニュアルスライド30を備えたマニュアルスライドシートとして具体化しているが、シートが前後方向にスライド可能であれば足りるため、これに限定されず、たとえば、モータを備えたパワースライドシートにも、この発明は応用できる。
【0135】
なお、パワースライドシートであれば、シートのスライド位置を検出する手段をいずれかの形態で持つのが一般的であるため、このような既存のスライド位置検出手段を有する場合においては、この発明におけるスライド位置検出手段としてそれを兼用することも可能である。
【0136】
また、ここでは、スライド位置検出手段16として、磁石体と2つのホール素子とを磁性板上に一体的に配してなる磁気センサ本体を備えた構成を具体化しているが、シート12のスライド位置を電気的に、つまりは電気信号として検出できる構成であれば足りるため、スライド位置検出手段はこれに限定されず、他の構成として、このスライド位置検出手段を具体化してもよい。
【0137】
しかしながら、この実施の形態において示すスライド位置検出手段16であれば、モータを持たないマニュアルスライド30に対する適用、装着が容易に可能であるため、マニュアルスライドシートへの適応性に優れたエアバッグ展開制御装置10が容易に確保可能となる。
【0138】
また、この実施の形態においては、エリア検出手段86としてホール素子を利用しているが、シートスライド範囲のエアバッグ膨出エリア内L1とエアバッグ膨出エリア外L2とを明確に検出、区分可能であれば足りるため、これに限定されるものではなく、たとえば、シート位置検出手段16からのシート位置情報をもとに、そのエリア検出を行う構成としてもよい。
【0139】
しかしながら、この実施の形態のように、シート位置検出手段16とは別のエリア検出手段86を設ければ、たとえシート位置検出手段にその検出誤差が生じても、その誤差がエリア検出に何等及ばないため、エリア検出、つまりはエアバッグ20の展開制御に対する判断の確実性が一層向上する。
【0140】
また、この発明の実施の形態においては、シートベルトの装着の有無を検出して、それに対応した告知をディスプレイ94等で着座者に行ったり、変則姿勢等に応じた警告等を、同じくディスプレイ等で着座者に行ったりしている。このような告知、あるいは警告を着座者に行えば、着座者に適正姿勢での着座を事前に促すことが容易に可能となる。そして、適正姿勢での着座であれば、エアバッグ20の膨張展開による安全保護性能が十分に高く確保できるため、この点においても、着座者の安全性が一層向上される。
【0141】
なお、ここではディスプレイ94を表示手段として具体化しているが、これに限定されず、たとえばLEDや音声等での表示を可能とするそれぞれの対応手段を、ここでいう表示手段として設けてもよい。
【0142】
この実施の形態でいうシート12としては、自動車等のドライバーシート、あるいはアシスタントシート等のフロントシートを具体的に例示できるが、シートスライド装置を備えた前後移動の可能なシートであれば足りるため、自動車等のフロントシートに限定されず、そのリヤシートやバス、トラック等の他の自動車用シートに、この発明を応用してもよい。更に、自動車等に限定されず、電車、飛行機、船舶等の他の乗り物用シートに、この発明を応用してもよい。
【0143】
上述した実施の形態は、この発明を説明するためのものであり、この発明を何等限定するものでなく、この発明の技術範囲内で変形、改造等の施されたものも全てこの発明に包含されることはいうまでもない。
【0144】
【発明の効果】
上記のように、この発明のエアバッグ展開制御方法によれば、エアバッグの最大膨張形状に基づいて、シートスライド範囲をエアバッグ膨出エリア内とエアバッグ膨出エリアとに分離規定し、シートスライド位置がこのエアバッグ膨出エリア内にあると判別されたとき、および荷重情報に基づいて想定した座高重心位置がエアバッグ膨出エリア内にあると判別されたとき、エアバッグの膨張展開形態として段階的展開を選択するものとしている。つまり、想定上でも、着座者の身体(上体)の一部がエアバッグ膨出エリアにあると判別されれば、エアバッグの全展開を自制し、その段階的展開を行うため、たとえ着座者の上体がエアバッグ膨出エリア内にあっても、その膨出に伴う衝撃は、着座者に十分に抑制されて伝達される。
【0145】
そして、その段階を経た後に、エアバッグは最大膨張形状まで膨張展開されるため、段階的展開であっても、着座者に対する保護性能は十分、かつ適切に確保される。
【0146】
従って、この発明によれば、エアバッグの膨張展開による安全保護性能ばかりでなく、エアバッグ膨出時における高い安全性能をも確実に得ることが可能となる。
【0147】
また、この発明においては、着座者の体重からその座高を推定し、その推定座高に基づく座高重心位置によって着座者の上体位置の推定を行っている。これによれば、荷重の検出だけでは得られない着座者の上体位置が、より明確に推定でき、これをもとにして、エアバッグの展開制御をはかることから、エアバッグ膨出時における高い安全性能の確保が、この点においても確実、かつ適切に得られる。
【0148】
さらに、荷重情報に基づいて算出した算出重心位置を座標上に置き換え、その前後方向の、所定の基点からの移動量をスライド位置に相当するY軸成分から減算することで、この算出重心位置に対する補正とすれば、重心位置のスライド位置依存性を排除できるため、着座位置の推定精度、および着座者の体重推定精度が、いずれも向上する。従って、エアバッグ膨出エリア内外に対する重心位置、および座高重心位置の見極め性能が確実に向上し、それにより、その安全性能が一層向上される。
【0149】
そして、この発明のエアバッグ展開制御装置によれば、上記エアバッグ展開制御方法が構成の複雑化を伴うことなく適切に遂行可能となる。
【0150】
さらに、荷重検出手段によってシートへの入力荷重を、また、スライド位置検出手段によってシートのスライド位置を、それぞれ検出すれば足りるため、この点からも、その構成の簡素化が確実にはかられる。
【0151】
また、スライド位置検出手段として、磁石体と2つのホール素子とを磁性板上に一体的に配してなる磁気センサ本体を備えた構成を利用すれば、モータを持たないマニュアルスライドに対する適用、装着が容易に可能であるため、マニュアルスライドシートへの適応性に優れたエアバッグ展開制御装置が容易に確保可能となる。
【0152】
そして、エリア検出手段をシート位置検出手段とは別に設ければ、たとえシート位置検出手段にその検出誤差が生じても、その誤差がエリア検出に何等及ばないため、エリア検出、つまりはエアバッグの展開制御に対する判断の確実性が一層向上する。
【0153】
さらに、シートベルトの装着の有無を検出して、それに対応した告知を表示手段で着座者に行ったり、変則姿勢等に応じた警告等を、同じく表示手段で着座者に行えば、着座者に適正姿勢での着座を事前に促すことが容易に可能となる。そして、適正姿勢での着座であれば、エアバッグの膨張展開による安全保護性能が十分に高く確保できるため、この点においても、着座者の安全性が一層向上される。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明に係るエアバッグ展開制御装置の概略ブロック図である。
【図2】エアバッグ、およびエアバッグ展開制御装置を備えたスライドシートの概略側面図である。
【図3】荷重検出手段を示す、シートスライド装置(マニュアルスライド)の正面図、およびその部分縦断面図である。
【図4】スライド位置検出手段を示す、シートスライド装置の縦断面図、およびその概略部分側面図である。
【図5】シートクッションの概略平面図をもとにした、この発明に係るエアバッグ展開制御方法での基準マップである。
【図6】エアバッグの展開許可/不許可を示す、入力荷重をもとにしたチャートである。
【図7】スライド位置検出手段における、ホール素子とロック孔(検出対象孔)との位置関係を示す各模式図である。
【図8】エアバッグ膨出エリアとシートのスライド範囲との関係を示す、シートの概略側面図である。
【図9】スライド範囲内におけるエアバッグの段階的展開エリア、およびエアバッグの全展開エリアを示すチャートである。
【図10】シートスライド装置をその主とした概略の部分側面図である。
【図11】エアバッグ展開制御方法でのフローチャートである。
【図12】エアバッグ展開制御方法での、スライド位置検出ルーチンである。
【図13】エアバッグ展開制御方法での、エアバッグ展開判断ルーチンである。
【図14】エアバッグ展開制御方法での、エアバッグ展開判断ルーチンである。
【図15】エアバッグ展開制御方法での、エアバッグ展開判断ルーチンである。
【図16】スライド位置検出手段におけるタイミングチャートである。
【図17】エアバッグ展開制御方法において使用する、重心位置の算出座標である。
【図18】非検出荷重成分の相違例を示す、各着座姿勢での概略側面図である。
【図19】体重と座高との関係例を示す特性グラフ、および推定体重と補正係数との関係例を示す特性グラフである。
【符号の説明】
10 エアバッグ展開制御装置
12 シート(マニュアルスライドシート)
14 荷重検出手段
16 スライド位置検出手段
18 情報処理手段
20 エアバッグ
30 シートスライド装置
60 検出対象孔
62 磁気センサ本体
64 磁石体
66−1,66−2 ホール素子
86 エリア検出手段(ホール素子)
92 シートベルトスイッチ
94 表示手段
【発明の属する技術分野】
この発明は、エアバッグの膨張展開形態を、その着座状況に応じて適宜選択可能とするエアバッグ展開制御方法およびエアバッグ展開制御装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
車両用乗員保護装置であるエアバッグは、その高い保護性能から、今や運転席のみならず助手席やリヤシート等にも標準的に装備されつつある。
【0003】
ここで、エアバッグは、シートベルトの装着を伴った着座を前提とした、補助的な保護装置として設けられていたため、このエアバッグに対する従来の展開制御方法は、特定以上の衝撃を検出したときにエアバッグを一定の展開形状(最大膨張形状)まで瞬時に展開(膨出)させるものとなっていた。
【0004】
しかしながら、この従来の展開制御では、着座者の前後位置やシートベルトの装着有無等を問わず、エアバッグの展開形状を最大膨張形状としているため、シートのスライド位置や着座者の上体傾斜位置等、つまり着座者の上体の前後位置によっては、エアバッグの膨張展開時における膨張力が着座者に衝撃として過剰に付勢されることに起因する、その加害性も指摘されている。
【0005】
そこで、エアバッグの膨張展開を2段階等の多段階としたり、膨張内圧を制御すること等により、着座の有無やシートベルト装着の有無等の検出結果に応じてエアバッグの展開制御を行うことが、近年提案されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
ここで、従来では、着座の有無やその着座者の種別、あるいはシートベルトの装着有無等を、エアバッグの展開制御に対する主な判断材料としている。しかしながら、特に、シートベルトの装着のない場合における着座姿勢はさまざまであり、また、シートベルトを装着していたとしても、上体の前傾、後傾等によってその着座姿勢は異なるため、これらの判断材料だけでは、着座姿勢自体を一義的に捉えることは難しい。
【0007】
つまり、着座の有無やその着座者の種別、あるいはシートベルトの装着有無等の他に、着座姿勢をある程度推定し、それに対応したエアバッグ展開制御を行うことが望ましいと考えられる。しかし、このような着座姿勢を判別すること自体、現時点では行われていない。
【0008】
この発明は、より高い安全保護性能を確保可能としたエアバッグ展開制御方法およびエアバッグ展開制御装置の提供を目的としている。
【0009】
【課題を解決するための手段】
この目的を達成するために、請求項1に示すこの発明のエアバッグ展開制御方法によれば、エアバッグの最大膨張形状に基づいて、シートスライド範囲をエアバッグ膨出エリア内とエアバッグ膨出エリア外とに分離規定するとともに、エアバッグの膨張展開形態を、その最大膨張形状まで一度に膨張する全展開と、その最大膨張形状まで段階的に膨張する段階的展開との2種から、適宜選択するものとしている。そして、スライド位置検出手段により検出した、シートの前後位置に関わるスライド位置情報と、荷重検出手段により検出した、シートヘの入力荷重に関わる荷重情報とを適宜処理し、予め設定された判別値との比較のもとで、そのシートへの大人の着座が判別されたときのみ、いずれかの膨張展開形態によるエアバッグの膨張展開を許可するものとしている。
【0010】
さらに、この展開許可に加えて、そのシートスライド位置がエアバッグ膨出エリア外と判別され、なおかつスライド位置情報、および荷重情報に基づいて算出した重心位置が、シートクッションの表面上で予め規定した規定範囲内にあると判別されたときのみ、エアバッグの膨張展開形態として全展開を選択するとともに、シートスライド位置がエアバッグ膨出エリア内と判別されたとき、および、重心位置がシートクッション表面上の規定範囲を外れたと判別されたとき、ならびに、重心位置がシートクッション表面上の規定範囲内にあると判別されたにも拘らず、荷重情報に基づいて想定した座高重心位置がエアバッグ膨出エリア内にあると判別されたとき、エアバッグの膨張展開形態として段階的展開を選択するものとしている。
【0011】
また、この発明の請求項2においては、荷重情報に基づいて算出した算出重心位置を座標上に置き換え、その前後方向の、所定の基点からの移動量をスライド位置に相当するY軸成分から減算することで、この算出重心位置に対する補正とするものとして具体化している。
【0012】
さらに、この発明の請求項3においては、シートスライド範囲に規定されたエアバッグ膨出エリア内とエアバッグ膨出エリア外との境界点を、シートスライド位置とは別に検出するものとしている。
【0013】
そして、この発明の請求項4においては、シートベルトの装着の有無を検出し、シートベルトの装着のないとき、それを着座者に告知する表示を所定の表示手段により行うとともに、シートへの大人の着座を判別したとき、このシートベルトの装着の有無に拘らず、いずれかの膨張展開形態によるエアバッグの膨張展開許可をなすものとしている。
【0014】
また、請求項5に示すこの発明のエアバッグ展開制御装置によれば、シートへの入力荷重を、少なくとも前後個別に検出する荷重検出手段と、シートのスライド位置を検出するスライド位置検出手段と、エアバッグの最大膨張形状に基づいて分離規定したエアバッグ膨出エリア内とエアバッグ膨出エリア外との境界点を検出するエリア検出手段とを備えるとともに、荷重検出手段からの荷重情報と、スライド位置検出手段、およびエリア検出手段からのスライド位置情報とを適宜処理して、エアバッグの膨張展開形態を、その最大膨張形状まで一度に膨張する全展開、およびその最大膨張形状まで段階的に膨張する段階的展開から選択する情報処理手段を、さらに備えている。
【0015】
そして、情報処理手段において、そのシートへの大人の着座が判別されたときのみ、エアバッグの膨張展開を許可するものとし、この展開許可に加えて、そのシートスライド位置がエアバッグ膨出エリア外と判別され、なおかつスライド位置情報、および荷重情報に基づいて算出した重心位置が、シートクッションの表面上で予め規定した規定範囲内にあると判別されたときのみ、エアバッグの膨張展開形態として全展開を選択するとともに、シートスライド位置がエアバッグ膨出エリア内と判別されたとき、および、重心位置がシートクッション表面上の規定範囲を外れたと判別されたとき、ならびに、重心位置がシートクッション表面上の規定範囲内にあると判別されたにも拘らず、荷重情報に基づいて想定した座高重心位置がエアバッグ膨出エリア内にあると判別されたとき、エアバッグの膨張展開形態として段階的展開を選択するものとして、このエアバッグ展開制御装置は構成されている。
【0016】
また、この発明の請求項6においては、シートベルトの装着を検出するシートベルトスイッチと、所定の告知表示を可能とする表示手段とをさらに具備するものとして、エアバッグ展開制御装置が具体化され、シートベルトの装着のないことを含む各種告知を、表示手段によって着座者に告知するものとしている。
【0017】
さらに、この発明の請求項7においては、スライド可能なシートが、シートの移動方向に連なった等間隔毎の一連の検出対象孔を、その固定の磁性部材に有するとともに、スライド位置検出手段が、検出対象孔との上下非整列位置にある磁石体と、検出対象孔との上下整列位置に並置された2つのホール素子とを、磁性板上に一体的に配してなる磁気センサ本体を備えたものとしてなり、この磁気センサ本体の各ホール素子が、異なる2相のパルスを同期出力可能に検出対象孔に対するその通過タイミングを変えてそれぞれ配設されたものとして具体化されている。
【0018】
また、この発明の請求項8においては、エリア検出手段が、固定のエリア規定部材の有無を検出可能に配されたホール素子として具体化されている。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照しながらこの発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0020】
図1、図2に示すように、この発明に係るエアバッグ展開制御装置10は、シート12に付加された荷重を検出可能とする荷重検出手段14と、シートのスライド位置を検出可能とするスライド位置検出手段16とを備えている。そして、これら荷重検出手段14、およびスライド位置検出手段16からの各種情報を情報処理手段18において適宜処理し、その処理結果に基づいてエアバッグ20に対する展開制御を行うものとして、このエアバッグ展開制御装置10は構成されている。
【0021】
図2に示すように、エアバッグ20は、通常、その収縮状態で小さく折り畳まれ、ガス発生/点火手段22を有したエアバッグユニット24として、シート12の前方配置部材、たとえば、運転席(ドライバーシート)のステアリングホイール26に内設されている。そして、このエアバッグユニット24は、車体への衝撃の入力を検出する衝撃センサ(図示しない)を有する、たとえばSRSユニット28に接続され、このSRSユニットからの出力信号によるガス発生/点火手段の作動制御により、エアバッグに対する展開制御が行われる。
【0022】
ここで、この発明においては、エアバッグ20が、所定の段階を経ることなくその最大膨張形状まで一度に、かつ瞬時に膨張する全展開と、その最大膨張形状まで段階的、たとえば2段階等の段階を経て膨張する段階的展開との2種の膨張展開形態を持つものとして具体化される。そして、エアバッグ20の段階的展開としては、たとえば、ガス発生/点火手段22によるガスの段階的な発生によるものが例示できる。
【0023】
なお、このような、エアバッグ20を段階的に展開させること自体は、たとえば特開平11−20607号公報等に開示されている通り公知であり、また、その構成、および手法自体はこの発明の趣旨でないため、このエアバッグの段階的展開に対する詳細な説明は、ここでは省略する。
【0024】
そして、この発明のエアバッグ展開制御装置10は、その不展開制御、つまりは展開不許可を含めたエアバッグ20の全展開/段階的展開を制御するものとして構成され、その制御基準として、シート12への入力荷重、およびシートのスライド位置をそれぞれ荷重情報、およびスライド位置情報として適宜検出するものとしている。
【0025】
図2を見るとわかるように、このエアバッグ展開制御装置10は、シートスライド装置30をシート12、つまりはシートクッション32の下部に備えた、いわゆるスライドシートをもとに構成される。そして、シート12への入力荷重を検出する荷重検出手段14が、シートクッション32の座面32aに対する上方からの荷重を受動可能に、シートスライド装置の下部位置に配設されている。
【0026】
なお、このシートスライド装置自体の基本構成は公知であり、それ自体はこの発明の趣旨でないため、この基本構成に対する詳細な説明はここでは省略するが、図2、および図3に示すように、この種のシートスライド装置30においては、後述のベース部材34を介して床体36に固定的に連結、支持されるロアレール38に対し、シート側のアッパレール40が、スチールボール42、およびローラ44等の転動子を介してその長手方向にスライド可能に組み付けられている。
【0027】
そして、図3を見るとわかるように、この発明の実施の形態においては、荷重検出手段14が、たとえば起歪部材46に歪みゲージ48を組み合わせたものとして具体化されている。
【0028】
起歪部材46は、入力荷重に応じた歪曲を繰り返し可能とする、たとえばばね鋼材等のような、復元力を持った可歪性素材からなる長手形状体として形成されており、図3(B)に示すように、その長手側面の形状は、たとえば、肉薄部としてなる易歪部46aを挟んだ一方を高段部46b、および他方を低段部46cとした、いわゆる離間段差形状として具体化されている。
【0029】
この起歪部材の高段部46bは、シート側部材、たとえばシートスライド装置のロアレール38の載置、固定される固定部として機能し、たとえば前後一対(図3(B)中の左右一対)の固定ピン(カシメピン)50により、この高段部、ロアレール間が一体的に連結、固定されている。また、図3に示すように、この起歪部材の低段部46cは、その短手方向での枢軸52の貫通により、固定のベース部材34に回動自在に連結、支持されている。
【0030】
図2、および図3に加えて図4を見るとわかるように、ベース部材34は、ロアレール38に沿って延びた長手のレール状体としてなり、たとえば、上面の開口された正面略コ字形状の本体34−1の前後端部が、レッグ34−2F,34−2Rを介して床体36にそれぞれ固定されている。そして、図3(A)に示すように、枢軸52は、ベース部材本体34−1の、たとえば対向縦壁34−1a間に離脱不能に架設された枢支ピン(ボルト)として具体化でき、対向縦壁の挿通孔に嵌着した一対のブッシュ54により、この対向縦壁間における起歪部材46の支持位置が規定されている。
【0031】
このような構成においては、シートスライド装置30、つまりシート12が、起歪部材46を介してベース部材34に連結、支持されることになる。そして、シート12からの荷重がこの起歪部材46に入力すると、高段部46bがその荷重のもとでほぼ平行に下降(昇降)しようとするのに対し、低段部46cは枢軸52を支点として上下方向に回動しようとするため、その移動軌跡のずれが歪みとなってその間の肉薄部、つまりは易歪部46aに現われる。そこで、図3に示すように、この荷重検出手段14においては、この易歪部46aでの起歪部材46の歪みを検出可能に、歪みゲージ48が易歪部の上下いずれかの面、たとえば下面に、接着、貼着等のもとで固定的に配設されている。
【0032】
歪みゲージ48として、たとえば可撓性のある電気絶縁薄板内に金属抵抗線を内設、固定してなる、いわゆる抵抗線ゲージが利用できる。
【0033】
ここで、図2ないし図4に示すように、この荷重検出手段14は、シートスライド装置のロアレール38に対する前部、後部にそれぞれ配設される。そして、このシートスライド装置30がシート12、つまりシートクッション32の左右離間位置に並置されることから、図5に示すように、この発明の実施の形態においては、荷重検出手段14(#1〜#4)がシートの前後、左右の4ヶ所に離間配置されることになる。
【0034】
この4ヶ所の荷重検出手段14(#1〜#4)、つまりその各歪みゲージ48は、図1、図2に示すように、情報処理手段18にそれぞれ接続されている。
【0035】
情報処理手段18は、その中枢となるCPU56を備えた、いわゆるECU(電子制御装置)の一種としてなり、荷重検出手段14(#1〜#4)毎の歪みゲージ48からの出力信号が、このCPUにおいて監視されている。そして、この各歪みゲージ48からの出力値をもとにした各種演算処理によって荷重情報を得るとともに、それに対応した出力を適宜行うものとして、このCPU56、つまりECU(情報処理種手段)18は構成されている。
【0036】
なお、図1に示すように、この実施の形態においては、ECU18に設けられたチャンネル切換回路58によって、検出対象となる荷重検出手段14(#1〜#4)を順次切換え、このチャンネル切換回路によって切換えられた荷重検出手段毎に、その出力をCPU56において順次監視するものとしている。
【0037】
この、シートクッション24の離間4ヵ所に荷重検出手段14(#1〜#4)を配設したこの構成においては、通常、各荷重検出手段による検出荷重の合計(総和)を、この荷重検出手段により検出したシート12への入力荷重としてみなすものとしている。また、荷重検出手段14(#1〜#4)毎の検出荷重を比較すれば、シート12における荷重分布を推定することも、この構成によれば容易に可能となる。
【0038】
そして、この発明のエアバッグ制御装置10は、この荷重検出手段14(#1〜#4)により検出した検出荷重をもとにして、たとえば着座者の種別の概略的な判別を行うように構成されている。
【0039】
たとえば、図6に示すように、子供と大人とをその入力荷重、つまり体重で判別する際のしきい値WTHが、ECUのCPU56に予め設定される。そして、荷重検出手段14(#1〜#4)による検出荷重の総和Wttとしきい値WTHとを比較するによって、シート12への入力荷重をもとにした着座者種別の判別が行われる。
【0040】
また、この発明のエアバッグ展開制御装置10においては、上述したように、シート12のスライド位置を検出可能とするスライド位置検出16が、この荷重検出手段14(#1〜#4)に加えて設けられている。
【0041】
図4に示すように、この発明におけるスライド位置検出手段16においては、シート12のスライド方向に連なる等間隔毎の一連の検出対象孔60が、固定の磁性部材、たとえばシートスライド装置のロアレール38に形成されるとともに、この磁性部材に沿って離間配置される磁気センサ本体62が、シートと同期移動する可動のシート側部材、たとえばシートスライド装置のアッパレール40に一体的に固定されている。
【0042】
ここで、この実施の形態におけるシートスライド装置30としては、たとえば、マニュアル式のロックを有する、いわゆるアニュアルロック式が例示でき、このマニュアルロック式のシートスライド装置、つまりマニュアルスライドにおいては、図3、および図4に示すように、アッパレール40に配設された可動のロック爪(図示しない)の挿入、係合される一連のロック孔60が、ロアレール38の、たとえば側面に設けられている。
【0043】
そして、マニュアルスライド(シートスライド装置)30のマニュアルロックとして設けられるこのロック孔60が、図3(B)に示すような、ロアレール38に対するアッパレール40のスライド方向、つまりはシート12のスライド方向に連なる一連の等間隔孔であり、このロック孔の設けられるロアレールが、金属等からなる磁性部材であることから、この実施の形態においては、固定の磁性部材に設けられた一連の検出対象孔として、このロアレールのロック孔を利用するものとし、このロック孔に対する通過を検出可能に、磁気センサ本体62が構成、配設されている。
【0044】
図4に示すように、磁気センサ本体62は、ロアレール38の側面(磁性部材)に沿って離間配置されるものであり、ロック孔(検出対象孔)60との上下非整列位置にある磁石体64と、ロック孔との上下整列位置に並置された2つのホール素子66−1,66−2とを、たとえば折曲可能なフレキシブル基盤68で連結し、これを、ロアレールの側面を部分的に被装可能とする端面形状に折曲形成された磁性板70の内面70aに一体的に配することにより、この磁気センサ本体は概略形成されている。
【0045】
図示のように、この磁性板の内面70aは、たとえば、樹脂材料等の絶縁素材からなるインシュレータ(絶縁部材)72によって覆われる。そして、シート12と同期移動する可動のシート側部材、たとえばアッパレール40への、このインシュレータ72を介在させた、止めねじ74等によるその基部70bの固定のもとで、この磁性板70は、ロアレール38に対する移動を可能に固定、配設されている。
【0046】
この磁気センサ本体62、特にその磁石体64、およびホール素子66−1,66−2は、ロアレール38の側面に対し、その非接触状態での移動を可能に配設、保持される。そこで、ロアレール38の側面に対する離間距離の安定化を目的として、ロアレールに摺接可能な突起76をインシュレータ72のその対向面に部分的に設けることが好ましい。
【0047】
なお、図4に示す参照符号78は、ホール素子66−1,66−2を支持する台座プレートであり、この台座プレートは、磁性板70と同様の磁性部材として形成されている。
【0048】
このような構成の磁気センサ本体62を配設したマニュアルスライド30においては、図4(A)に破線矢印で示すように、たとえば磁石体64、磁性板70、台座プレート78、ホール素子66−1,66−2、そしてロアレール38の順のループ状磁路80が形成される。そして、ロック孔60とのホール素子66−1,66−2の整列位置における開ループ、およびその非整列位置における閉ループによって、そのループ状磁路80での磁気抵抗はそれぞれ異なるため、各ホール素子からの出力値をそれぞれ監視することにより、一連のロック孔に対する各ホール素子の整列位置、非整列位置を区別し検出することが可能となる。
【0049】
そこで、図1、および図2に示すように、この発明においては、磁気センサ本体62の2つのホール素子66−1,66−2が、荷重検出手段の歪みゲージ48と同様に、ECU18にそれぞれ接続されている。
【0050】
図1を見るとわかるように、このECU18は、たとえば、ホール素子66−1,66−2からの入力信号をパルス化するパルス整形回路82を備えている。そして、このパルス整形回路82を経た、ホール素子66−1,66−2からの入力信号、たとえば出力パルスとそこで検出したパルスエッジとをCPU56において監視し、このCPUにおける、これらをもとにした各種演算処理等のもとで、これら入力信号、つまりスライド情報に基づいた情報処理、ならびに出力を行うものとして、このECU18は概略構成されている。
【0051】
CPU56からの出力は、ECU18に設けられた通信回線82を介して外部に接続される。
【0052】
なお、図4の参照符号84は、フレキシブル基盤68からの端子を有するカプラであり、このカプラを介して、ホール素子66−1,66−2、つまり磁気センサ本体62はECU18に電気的に接続される。
【0053】
ここで、図7(A)に示すように、この発明の実施の形態においては、ホール素子66−1,66−2の横幅が、一連のロック孔60の1ピッチの、たとえば1/6幅として規定されている。そして、前側(図中左側)のホール素子66−1がその1/6−1位置にあるときに後側(図中右側)のホール素子66−2を1/6−5位置に配置するように、この2つのホール素子の位置関係は設定されている。
【0054】
さらに、この実施の形態では、ロアレール38に対するアッパレール40のロック位置において、前側のホール素子66−1がロック孔1ピッチの1/6−1位置に位置するものとして規定する。
【0055】
つまり、ロアレール38に対するアッパレール40のロック位置においては、前側のホール素子66−1がロック孔60との整列位置にあるため、このホール素子66−1を含むループ状磁路80はその出力レベルをLoとする開ループとなり、また、そのロック位置においては、後側のホール素子66−2がロック孔との非整列位置にあるから、このホール素子66−2を含むループ状磁路はその出力レベルをHiとする閉ループとなる。
【0056】
また、図示のように、前側のホール素子66−1がロック孔1ピッチの1/6−1位置にあり、また、後側のホール素子66−2がその1/6−5位置にあるため、ロアレール38に対するアッパレール40のスライドに伴うロック孔60の側端縁までの距離が、各ホール素子毎に異なるものとなっている。
【0057】
このように、この発明においては、ホール素子66−1,66−2が、異なる2相のパルスを同期出力可能に、ロック孔60に対するその通過タイミングを変えて並置されている。
【0058】
なお、このホール素子66−1,66−2を有する磁気センサ本体62は、通常は、マニュアルロックをなすアッパレール側のロック爪に対する後部位置で、アッパレール40に配設される。つまり、ロアレール38に対するアッパレール40のスライドリアモーストにおいては、図7(B)に示すように、ホール素子66−1,66−2が共にロック孔60から外れた、ロック孔との非整列位置に保持されるものとなるため、このスライドリアモーストでのロック位置においては、この点において他の通常のロック位置と異なるものとなっている。そして、この発明においては、この他の通常のロック位置と異なるスライドリアモーストでのロック位置を、ロアレール38に対するアッパレール40のスライド量の決定基準となるカウントの基点として規定している。
【0059】
ここで、図8を見るとわかるように、エアバッグ20は、シート12の前方位置に膨出されるものであるため、エアバッグの持つ最大膨張形状から、シートのスライド範囲L0に対するエアバッグ膨出エリアA1は推定される。そこで、この発明においては、シート12のスライド範囲L0を、エアバッグ20の膨出エリアA1にシート12が侵入したとみなされるエアバッグ膨出エリア内L1と、エアバッグの膨出エリアからシートが外れているとみなされるエアバッグ膨出エリア外L2とに予め区分し、それぞれの範囲内に対応させたエアバッグの展開制御を可能に、エアバッグ制御装置10は構成されている。
【0060】
なお、その際の着座者としては、たとえば小柄な女性を想定することが望ましい。
【0061】
図9を見るとわかるように、この発明においては、シート12がエアバッグ膨出エリア内L1にあるときに、エアバッグ20を段階的展開とし、シートがエアバッグ膨出エリア外L2にあるときのみ、エアバッグの全展開が可能となっている。
【0062】
なお、このエアバッグ膨出エリア内L1とエアバッグ膨出エリア外L2との境界点を、ここではk点として表す。
【0063】
ここで、図3、図4、および図10に示すように、この発明の実施の形態においては、磁気センサ本体62に設けたエリア検出手段86によって、シート12のスライド範囲L0のエアバッグ膨出エリア内L1とエアバッグ膨出エリア外L2とを検出するように構成されている。
【0064】
たとえば、エアバッグ膨出エリア内L1を規定する、このエアバッグ膨出エリア内L1に相当する長さのエリア規定部材88が、ロアレール38の上面に一体的に固着されている。このエリア規定部材88は、たとえば、ロアレール38等と同様の磁性部材としてなり、この上面に沿って移動可能に、たとえばホール素子からなるエリア検出手段86が、磁気センサ本体の磁性板70ヘの固着のもとで配設されている。
【0065】
このホールセンサ86を磁気センサ本体62に配したマニュアルスライド30においては、図4(A)に破線矢印で示すように、ホール素子66−1,66−2側と同様に、たとえば磁石体64、磁性板70、ホール素子86、エリア規定部材88、そしてロアレール38の順のループ状磁路90が形成される。そして、エリア規定部材88にホール素子86の整列された閉ループ、およびその非整列位置における開ループによって、そのループ状磁路90での磁気抵抗はそれぞれ異なるため、ホール素子86からの出力値を監視することにより、エリア規定部材の有無、つまりはスライド範囲L0におけるエアバッグ膨出エリア内L1を検出し規定することが可能となる。
【0066】
図1、図2を見るとわかるように、この、エリア検出手段となるホール素子86も、スライド位置検出手段のホール素子66−1,66−2と同様に、ECU18のCPU56に接続され、このCPUにおいて、このホール素子86からの出力値が、スライド位置情報の一部となるエリア情報として処理されるものとなっている。
【0067】
なお、エリア規定部材88にホール素子86の整列された閉ループにおいてはその出力レベルがLoとなり、また、その非整列位置における開ループにおいてはその出力レベルがHiとなるため、これによってスライド範囲L0におけるエアバッグ膨出エリア内L1、エアバッグ膨出エリア外L2の明確化がはかられる。
【0068】
また、図1、および図2を見るとわかるように、この発明のエアバッグ制御装置10においては、シートベルトの装着を検出するシートベルトスイッチ92が、ECU内のCPU56に接続されている。つまり、この発明においては、荷重検出手段14により検出されるシート12への入力荷重、スライド位置検出手段16とエリア検出手段(ホール素子)86とにより検出されるシートのスライド位置、およびシートベルトスイッチ92により検出されるシートベルト装着の有無が、エアバッグ20に対する展開制御のための主な判断材料となっている。
【0069】
そして、このエアバッグ制御装置のECU18は、エアバッグ20のためのSRSユニット28に、ECU内の通信回線82を介して接続され、このECUからの出力信号によるSRSユニットの作動制御のもとで、エアバッグ20の展開、非展開が制御されている。
【0070】
さらに、このエアバッグ制御装置のECU18は、その通信回線82を介して表示手段、たとえばディスプレイ94にも接続されている。このディスプレイ(表示手段)88においては、荷重検出手段14、スライド位置検出手段16、エリア検出手段86、およびシートベルトスイッチ94等の各種情報入力手段での異常の発生に対する警告、告知、あるいは着座者に対する各種メッセージの表示等が行われる。
【0071】
上述したこの発明のエアバッグ展開制御装置10によるエアバッグ展開制御方法を、図11ないし図15のフローチャートをもとに、図16のタイミングチャートを参照しながら、以下に説明する。
【0072】
なお、この実施の形態においては、図16(f)で点P1として示すロック位置(同図(f)参照)を、ロアレール38に対するアッパレール40の初期位置、つまりはシート12のスライド初期位置として仮定する。
【0073】
図11に示すメインルーチンを見るとわかるように、このエアバッグ展開制御方法においては、まず、イニシャライズ、つまりCPU56内部の初期化が行われ(102)、次に、スライド位置検出ルーチンにおける処理のもとで、位置検出手段16によるシート12のスライド位置検出が適宜行われる(104)。
【0074】
図12に示すように、このスライド位置検出ルーチンにおいては、まず、前回のスライドにより設定されたシート12のスライド位置(初期位置P1)が、スライドカウンター値Csiとして認識される(202)(図16(f)参照)。
【0075】
このスライドカウンター値Csiは、所定の基点、つまり図16(f)で点P2として示す、ロアレール38に対するアッパレール40のスライドリアモーストからのロック孔60のカウント数として認識される。そして、図12に示すように、(202)におけるカウンター値Csiの認識の後は、ホール素子66−1,66−2からのエッジパルスの発生の有無が判断される(204)。
【0076】
たとえば、シート12が、図16(f)の初期位置P1のようなロック位置、つまりは停止位置にあれば、図16(c)で示すようにエッジパルスの発生はないため、シートのスライド位置が初期位置P1であれば、この図12の(204)においてはNoと判断されて、次に、そのときのホール素子66−1,66−2毎のパルスレベルが判別される(206)。
【0077】
図7(A)を見るとわかるように、アッパレール40のロック位置においては、前側のホール素子66−1を含むループ状磁路80が開ループ、および後側のホール素子66−2を含むループ状磁路が閉ループとなるため、シート12の初期位置P1での各ホール素子におけるパルスレベルは、図16(a),(b)に示すように、前側のホール素子66−1ではLo(66−1=Lo)、また、後側のホール素子66−2 ではHi(66−2=Hi)となるため、図16(f)に示すこのシートの初期位置P1においては、図12の(206)でYesと判断されて、エッジパルスの発生まで待機される。
【0078】
なお、ここでは、図16(f)に示す初期位置P1においての説明としているが、同図(f)で示すロック位置(スライドリアモーストの点P2を除く)であれば、同様の判断が行われる。
【0079】
また、エッジパルスの発生がなく、図12の(204)においてNoと判断されたにも拘らず、前出の「66−1=Lo&66−2=Hi」の関係が否定された場合においては、次段の(206)においてNoと判断されて、次に、ホール素子66−1,66−2のパルスレベルが「66−1=Hi&66−2=Hi」の関係を満たしているか否かが判断される(208)。そして、この(208)でNoと判断されれば、マニュアルスライド30の非ロック状態と認識されて、エッジパルスの発生まで再び待機され、この(208)でYesと判断されれば、図16(f)で点P2として示すスライドリアモーストでのロック位置にあると認識されて、図12の(210)において、スライドカウンター値Csiがリセット「0」される。
【0080】
次に、たとえば、図16(f)の初期位置P1からシート12を前後のいずれかにスライドさせると、ロック孔60に対するホール素子66−1,66−2の移動のもとで(図7(A)参照)、図16(c)に示すようなエッジパルスが発生する。この、エッジパルスが発生すると、図12の(204)においてYesと判断されるため、次にこのエッジパルス間におけるホール素子66−1,66−2のパルスレベルが判別される(212)。
【0081】
たとえば、図16(f)で点P3として示すように、シート12を初期位置P1から前方にスライドさせれば、図16(a),(b)のように、ホール素子66−1,66−2のパルスレベルが「66−1=Hi&66−2=Hi」の関係を満たすため、この点P3では、図12の(212)においてYesと判断される。
【0082】
このように、この発明においては、この(212)におけるYesとの判断を、シート12の前進判別とし、(212)においてYesと判断した後に、ホール素子66−1のパルス数を1パルスカウントし(214)、そのスライドカウンター値Csiに「1」を加算する(216)。
【0083】
また、エッジパルスの発生が検出されて、図12の(204)でYesと判断されても、図16(f)の点P4のような初期位置P1からの後退位置であれば、図16(a),(b)のようにホール素子66−1,66−2のパルスレベルは「66−1=Hi&66−2=Hi」の関係を満たしていないため、図12の(212)においてNoと判断されて、次に、ホール素子66−1,66−2のパルスレベルが「66−1=Lo&66−2=Lo」の関係を満たしているか否かが判断される(218)。
【0084】
この発明においては、この(218)における判断をシート12の後退判別とし、図16(f)で点P4として示すスライド位置でのパルスレベル(図16(a),(b))のように、前側のホール素子66−1のパルスレベルがLo(66−1=Lo)、また、後側のホール素子66−2 のパルスレベルがLo(66−2=Lo)であれば、この図12の(218)における関係を満たすものとして、この(218)でYes、つまりはシートの後退と判別される。そして、その後、ホール素子66−2のパルス数を1パルスカウントし(220)、スライドカウンター値Csiから「1」を減算する(222)。
【0085】
このように、この発明においては、このスライドカウンター値Csiに対する加算、減算により、カウントの基点、つまりスライドリアモーストからのシート12のスライド位置を検出、認識している。そして、シート12のスライド位置を決定し、ロック手段により所定のロック位置にロックすれば、図12の(204)におけるNo、および同図(206)におけるYesの判断により図11のメインルーチンに戻され、次に、図13ないし図15のエアバッグ展開判断ルーチンにおける処理のもとで、各種入力情報に基づいたエアバッグ20の展開制御が適宜行われる(106)。
【0086】
図13を見るとわかるように、このエアバッグ展開判断ルーチンにおいては、まず、荷重情報として、4ヶ所の荷重検出手段14(#1〜#4)において検出した検出荷重Wti(#1〜#4)が各荷重検出手段毎に読み込まれて認識されるとともに、この各荷重検出手段毎の検出荷重の総和Wttが、別の荷重情報としてさらに算出、認識される(302)。そして、次に、この検出荷重の総和Wttがしきい値WTHより大きいか否かが判断される(304)。
【0087】
図6に示すように、この発明においては、このしきい値WTHを基準として大人の着座か子供の着座かを判別し、検出荷重の総和Wttがしきい値WTHより小さい場合、つまり子供の着座を判別した場合は、エアバッグ20の展開を不許可とする制御を行うため、図13の(304)においてNoと判断されると、図15に示すように、エアバッグ展開不許可の指示設定がなされる(306)。
【0088】
なお、ここでは、シート12への入力荷重の具体例として、着座者からの荷重、つまりは体重をあげているが、体重以外の荷重、つまりはシートクッション上に載置した荷物等の重量も、4ヶ所の荷重検出手段14(#1〜#4)において検出される。そして、その検出した重量がしきい値WTH以下であれば、同様の判断によりエアバッグ展開不許可の指示設定がなされる。
【0089】
また、4ヶ所の荷重検出手段14(#1〜#4)により検出した検出荷重の総和Wttがしきい値WTHより大きく、着座者が大人であると判別されると、図13の(304)においてYesと判断されて、次に、ホール素子66−1,66−2により検出したシート12のスライド位置、およびホール素子86により検出したシートのスライドエリアが、スライド位置情報としてそれぞれ読み込まれる(308)。
【0090】
たとえば、シート12が図16(f)の初期位置P1にあると仮定すると、この初期位置P1に相当するスライドカウンター値Csiがそのスライド位置として読み込まれるとともに、ホール素子86によるその位置での出力データから、シートの位置するスライドエリアがエアバッグ膨出エリア内L1、あるいはエアバッグ膨出エリア外L2として読み込まれる。
【0091】
なお、図16(d)を見るとわかるように、シート12の初期位置P1においては、ホール素子86の出力レベルがLoであるため、そのスライドエリアはエアバッグ膨出エリア外L2と判別される(図9参照)。
【0092】
図13の(308)においてスライド位置情報が読み込まれると、次に、このスライド位置情報、および先に読み込んだ荷重情報に基づいて、そのときの重心位置(CG位置)の算出/補正がなされる(310)。
【0093】
ここでいう重心位置の算出/補正とは、シート12上における着座者の重心位置を推定し、それを、たとえばシートクッション32の平面上での位置として捉えるためのものであり、ここでは、この重心位置を、図17で示すような座標上で捉えるものとしている。
【0094】
この重心位置の算出にあたっては、まず、荷重検出手段14(#1〜#4)のうちの#1,#2,#4を頂点とする三角形と、#1,#3,#4を頂点とする三角形とを、座標上においてそれぞれ仮定し、次に、その各重心点F(Xf,Yf)、I(Xi,Yi)を求める。そして、この各三角形の重心点F(Xf,Yf)、I(Xi,Yi)の内分比から、荷重検出手段14(#1〜#4)を頂点とする四角形の重心位置CG(Xg,Yg)が算出される。
【0095】
この重心位置の算出結果、つまり算出重心位置CG(Xg,Yg)は、床体36に対して平面上で固定的に配された4ヶ所の荷重検出手段14(#1〜#4)に対する平面位置として算出されたにすぎず、シート12のスライド位置を加味したものでないため、これをシートクッション32の平面上での位置として捉えることはできない。そこで、次に、この重心位置の算出結果、つまり算出重心位置CG(Xg,Yg)に対して、シート12のスライド位置情報に基づく補正がなされる。
【0096】
この、スライド位置情報に基づく補正においては、算出重心位置CG(Xg,Yg)から、その前後方向の移動量、つまりスライドリアモーストからのスライド量をスライド位置に相当するY軸成分から減算することが行われる。つまり、補正重心位置CG′(Xg′,Yg′)は、Xg′=Xg、Yg′=Yg−Csi×Piとして算出される(Pi:ロック位置間の距離)。
【0097】
なお、補正重心位置CG′(Xg′,Yg′)は、図5に示すように、基点、つまりスライドリアモーストに位置するシートクッション32の平面上での位置として仮定される。
【0098】
このような重心位置の算出/補正が行われると、図14に示すように、次に、シートベルトの装着の有無が判断される(312)。
【0099】
たとえば、シートベルトスイッチ92のON等によってその装着が認められると、この(312)においてYesと判断され、また、シートベルトスイッチのOFF等もとでのその装着が確認されなければ、この(312)においてNoと判断される。そして、たとえば、シートベルトが装着されておらず、この(312)においてNoと判断されると、まず、「シートベルトを締めて下さい」等のコメントが表示されて(314)、次に、シート12のスライド位置がエアバッグ膨出エリア内L1にあるか否かが判断される(316)。
【0100】
たとえば、シート12のスライド位置が図16(f)に示す初期位置P1にあると仮定すると、同図(d)を見るとわかるように、この初期位置P1ではホール素子86のパルスレベルがLoであり、即ち、シートがエアバッグ膨出エリア外L2にあることを指していることに他ならないため、この場合においては、図14の(316)においてNoと判断されるが、たとえば、ホール素子86のパルスレベルがHiとなる点P5(図16(f)参照)より前方にシート12が位置していれば、シートのスライド位置がエアバッグ膨出エリア内L1と判別されて、図14の(316)においてYesと判断される。すると、図15に示すように、エアバッグ20の段階的展開の指示設定がなされる(318)。
【0101】
つまり、シートベルトの挿着のない場合で、なおかつシート12のスライド位置がエアバッグ膨出エリア内L1であった場合は、エアバッグ20は、その段階的制御のもとで段階的に膨張展開される。このようなエアバッグ20の段階的な膨張展開であれば、たとえ着座者の上体がエアバッグ膨出エリア内L1にあっても、その膨出に伴う衝撃は、着座者に十分に抑制されて伝達されるため、着座者の安全性確保が十分にはかられるものとなる。
【0102】
ここで、前出のように、シート12のスライド位置が、図16(f)に示す初期位置P1等の、ホール素子86のパルスレベルをLoとするエアバッグ膨出エリア外L2にある場合においては、図15の(316)においてNoと判断される。そして、ここでNoと判断されると、次に、補正重心位置CG′が規定範囲内にあるか否かが判断される(320)。
【0103】
この(320)での判断は、適切な着座姿勢と認定できる範囲内に補正重心位置CG′があるか否かを判断するものであり、たとえば、シートクッション32の平面領域を図5のように区分した場合のA1〜A5エリア、およびB0〜B6エリアが、ここでの規定範囲として特定化される。
【0104】
たとえば、図5において仮定した補正重心位置CG′であれば、そのエリアはA3B4であるから規定範囲内とみなされるから、図14の(320)においてYesと判断されて、図15に示すように、エアバッグの全展開許可の指示設定がなされる(322)。
【0105】
つまり、シートベルトの装着のない場合であっても、シート12のスライド位置がエアバッグ膨出エリア外L2にあり、なおかつ着座姿勢が正常であると判別できれば、エアバッグ20は全展開される。このように、この発明においては、着座者の着座状況を判別した上でその全展開をはかるため、この点においても着座者の安全性確保が十分にはかられるものとなる。
【0106】
なお、シート12のスライド位置がエアバッグ膨出エリア外L2にあった場合であっても、極端な前傾姿勢、後傾姿勢、あるいはドアにもたれかかる等の変則姿勢等のもとで補正重心位置CG′が規定範囲外と判断されれば、図14の(320)においてNoと判断され、「正しく座りましょう」等のコメントが表示された後(324)、図15に示すように、エアバッグ20の段階的展開の指示設定がなされる(318)。
【0107】
つまり、この発明おいては、シート12のスライド位置がエアバッグ膨出エリア外L2にあっても、その着座姿勢が正常であると判別できなければ、エアバッグ20の全展開は自制される。従って、この点においても、着座者の安全性確保が十分にはかられる。
【0108】
ここで、シートベルトが装着されて図14の(312)においてYesと判断されれば、既表示のコメントは消去されて(326)、次に、シート12のスライド位置がエアバッグ膨出エリア内L1にあるか否かが判断される(328)。
【0109】
たとえば、シート12が、図16(f)で示すスライド位置P5より前方の位置にあれば、図14の(328)においてYesと判断されて、図15に示すように、エアバッグ20の段階的展開の指示設定がなされる(318)。
【0110】
そして、シート12が、図16(f)で示す初期位置P1等の、k点(点P5)より後方の位置にあれば、図14の(328)においてNoと判断されて、次に、補正重心位置CG′が規定範囲内にあるか否かが判断される(330)。
【0111】
この規定範囲は、図14の(320)における説明の部分と重複するため、ここでは省略するが、補正重心位置CG′が変則姿勢等のもとで規定範囲から外れれば、この(330)においてNoと判断されて、(320)の場合と同様に、「正しく座りましょう」等のコメントの表示の後(324)、図15に示すように、エアバッグ20の段階的展開の指示設定がなされる(318)。
【0112】
ところで、シートベルトの装着があり、補正重心位置CG′が規定範囲内で、なおかつシート12のスライド位置がエアバッグ膨出エリア外L2に位置していたとしても、シートに深く座った状態からの上体の前傾等によって、その上体の一部がエアバッグ膨出エリア内L1に侵入していないとは断定できない。特に、着座者の座高の高低によって、上体前後揺動に伴った重心位置CG位置の移動量が異なるため、着座者の上体の位置を推定するためには、着座者の座高をある程度推定することが必要となる。
【0113】
そこで、この発明においては、荷重検出手段14(#1〜#4)による検出荷重の総和Wttから着座者の体重を推定し、その体重、および体重に対応した補正係数から、その着座者の座高を推定するものとしている。
【0114】
図14を見るとわかるように、この発明においては、まず、荷重検出手段14(#1〜#4)では検出できない非検出荷重成分の修正を行なうための補正係数Ksを読み込んでいる(332)。
【0115】
ここでいう、荷重検出手段14(#1〜#4)では検出できない非検出荷重成分とは、シート12を経ることなく床体36に直接的に作用する、たとえば足元荷重、あるいはステアリングホイール等に作用する逃避荷重等を指す。つまり、図18に示すように、着座者のヒップポイント(H.P)が同位置であっても、前方スライド位置でのシート12に深く腰掛けた、(a)のような正常な着座姿勢の場合と、後方スライド位置でのシートに浅く腰掛けただけの、(b)のような場合とでは、その足元荷重に大きな差異が生じ、当然、荷重検出手段14(#1〜#4)に作用する荷重にも大小の差が発生するため、これを補正するためのものとして、補正係数Ksが用いられる。
【0116】
この補正係数Ksは、たとえば、シート12の前後方向でのエリア毎にまとめられる。そして、補正重心位置CG′の位置する前後エリアから、それに相当する補正係数Ksが抽出されて読み込まれる。
【0117】
そして、図14に示すように、補正係数Ksを読み込んだ後には、荷重検出手段14(#1〜#4)において検出した検出荷重の総和Wttに基づいて、シート12に作用する荷重、つまり着座者の体重の推定/算出が行われる(334)。
【0118】
この体重WTの推定(算出)は、たとえば、WT=Wtt/(1−Ks)により行われる。
【0119】
体重と座高との関係例を、たとえば図19(A)に示す。このようなグラフをもとにすれば、推定体重WTからその着座者の座高が概略推定でき、この推定座高、あるいは推定体重から、たとえば同図(B)に示すように、その推定座高に応じた補正係数Kwを算出することができる。
【0120】
なお、この図19(B)に示すグラフは、推定体重WTと補正係数Kwとの関係例を示すものである。
【0121】
そして、図15に示すように、推定体重WTから、それに応じたKwを読み込み(338)、次に、推定座高を考慮した重心位置(座高重心位置)を示すエアバッグ展開制御の判断値、いわゆるD−value(略称D値)を算出する。
【0122】
このD値は、たとえば、D=k+Kw×CGとして算出され、これによれば、シート12のスライド位置と座高に応じたCG移動量とを加味した上での上体位置、つまりは座高重心位置が推定できる。
【0123】
このD値が0であるか否かによって、着座者の身体の一部がk点より前方にあるか否か、つまりエアバッグ膨出エリア内L1にあるか否かが判断される(340)。
【0124】
たとえば、算出したD値が0より大きければ、そのときの仮想上体位置がk点より前方、つまりエアバッグ膨出エリア内L1にあるものとみなされて、(340)でのYesとの判断により、エアバッグ20の段階的展開の指示設定がなされる(318)。
【0125】
また、算出したD値が0未満であれば、そのときの仮想上体位置がk点より後方、つまりエアバッグ膨出エリア外L2にあるものとみなされて、(340)でのNoとの判断により、エアバッグ20の全展開許可の指示設定がなされる(322)。
【0126】
上記のように、この発明のエアバッグ展開制御方法によれば、エアバッグ20の最大膨張形状に基づいて、シートスライド範囲L0をエアバッグ膨出エリア内L1とエアバッグ膨出エリア外L2とに分離規定し、シートスライド位置がこのエアバッグ膨出エリア内にあると判別されたとき、および荷重情報に基づいて想定した座高重心位置がエアバッグ膨出エリア内にあると判別されたとき、エアバッグの膨張展開形態として段階的展開を選択するものとしている。つまり、想定上でも、着座者の身体(上体)の一部がエアバッグ膨出エリア内L1にあると判別されれば、エアバッグ20の全展開を自制し、その段階的展開を行うため、たとえ着座者の上体がエアバッグ膨出エリア内L1にあっても、その膨出に伴う衝撃は、着座者に十分に抑制されて伝達される。
【0127】
そして、その段階を経た後に、エアバッグ20は最大膨張形状まで膨張展開されるため、段階的展開であっても、着座者に対する保護性能は十分、かつ適切に確保される。
【0128】
従って、この発明によれば、エアバッグ20の膨張展開による安全保護性能ばかりでなく、エアバッグ膨出時における高い安全性能をも確実に得ることが可能となる。
【0129】
また、この発明においては、着座者の体重からその座高を推定し、その推定座高に基づく座高重心位置によって着座者の上体位置の推定を行っている。これによれば、荷重の検出だけでは得られない着座者の上体位置が、より明確に推定でき、これをもとにして、エアバッグ20の展開制御をはかることから、エアバッグ膨出時における高い安全性能の確保が、この点においても確実、かつ適切に得られる。
【0130】
さらに、この発明の実施の形態においては、荷重情報に基づいて算出した算出重心位置CG′を座標上に置き換え、その前後方向の、スライドリアモーストからの移動量をスライド位置に相当するY軸成分から減算し補正している。つまり、算出重心位置CG′からスライド位置成分を除く補正によりその重心位置を捉えているため、重心位置のスライド位置依存性を排除することが、これによれば可能となる。つまり、着座位置の推定精度、および着座者の体重推定精度が、いずれも向上することから、エアバッグ膨出エリア内外に対する重心位置、および座高重心位置の見極め性能が確実に向上し、それにより、その安全性能が一層向上される。
【0131】
そして、この発明のエアバッグ展開制御装置10によれば、上記エアバッグ展開制御方法が構成の複雑化を伴うことなく適切に遂行可能となる。
【0132】
なぜならば、この発明においては、着座者の座高を実測により認識するのではなく、荷重検出手段14により検出した着座者の体重、つまり荷重情報をもとにして、その座高を推定しているにすぎないため、装置自体の構成の複雑化が確実に防止されるわけである。
【0133】
また、荷重検出手段14によってシート12への入力荷重を、また、スライド位置検出手段16によってシートのスライド位置を、それぞれ検出すれば足りるため、この点からも、その構成の簡素化が確実にはかられる。
【0134】
ここで、この発明の実施の形態においては、シート12を、マニュアルスライド30を備えたマニュアルスライドシートとして具体化しているが、シートが前後方向にスライド可能であれば足りるため、これに限定されず、たとえば、モータを備えたパワースライドシートにも、この発明は応用できる。
【0135】
なお、パワースライドシートであれば、シートのスライド位置を検出する手段をいずれかの形態で持つのが一般的であるため、このような既存のスライド位置検出手段を有する場合においては、この発明におけるスライド位置検出手段としてそれを兼用することも可能である。
【0136】
また、ここでは、スライド位置検出手段16として、磁石体と2つのホール素子とを磁性板上に一体的に配してなる磁気センサ本体を備えた構成を具体化しているが、シート12のスライド位置を電気的に、つまりは電気信号として検出できる構成であれば足りるため、スライド位置検出手段はこれに限定されず、他の構成として、このスライド位置検出手段を具体化してもよい。
【0137】
しかしながら、この実施の形態において示すスライド位置検出手段16であれば、モータを持たないマニュアルスライド30に対する適用、装着が容易に可能であるため、マニュアルスライドシートへの適応性に優れたエアバッグ展開制御装置10が容易に確保可能となる。
【0138】
また、この実施の形態においては、エリア検出手段86としてホール素子を利用しているが、シートスライド範囲のエアバッグ膨出エリア内L1とエアバッグ膨出エリア外L2とを明確に検出、区分可能であれば足りるため、これに限定されるものではなく、たとえば、シート位置検出手段16からのシート位置情報をもとに、そのエリア検出を行う構成としてもよい。
【0139】
しかしながら、この実施の形態のように、シート位置検出手段16とは別のエリア検出手段86を設ければ、たとえシート位置検出手段にその検出誤差が生じても、その誤差がエリア検出に何等及ばないため、エリア検出、つまりはエアバッグ20の展開制御に対する判断の確実性が一層向上する。
【0140】
また、この発明の実施の形態においては、シートベルトの装着の有無を検出して、それに対応した告知をディスプレイ94等で着座者に行ったり、変則姿勢等に応じた警告等を、同じくディスプレイ等で着座者に行ったりしている。このような告知、あるいは警告を着座者に行えば、着座者に適正姿勢での着座を事前に促すことが容易に可能となる。そして、適正姿勢での着座であれば、エアバッグ20の膨張展開による安全保護性能が十分に高く確保できるため、この点においても、着座者の安全性が一層向上される。
【0141】
なお、ここではディスプレイ94を表示手段として具体化しているが、これに限定されず、たとえばLEDや音声等での表示を可能とするそれぞれの対応手段を、ここでいう表示手段として設けてもよい。
【0142】
この実施の形態でいうシート12としては、自動車等のドライバーシート、あるいはアシスタントシート等のフロントシートを具体的に例示できるが、シートスライド装置を備えた前後移動の可能なシートであれば足りるため、自動車等のフロントシートに限定されず、そのリヤシートやバス、トラック等の他の自動車用シートに、この発明を応用してもよい。更に、自動車等に限定されず、電車、飛行機、船舶等の他の乗り物用シートに、この発明を応用してもよい。
【0143】
上述した実施の形態は、この発明を説明するためのものであり、この発明を何等限定するものでなく、この発明の技術範囲内で変形、改造等の施されたものも全てこの発明に包含されることはいうまでもない。
【0144】
【発明の効果】
上記のように、この発明のエアバッグ展開制御方法によれば、エアバッグの最大膨張形状に基づいて、シートスライド範囲をエアバッグ膨出エリア内とエアバッグ膨出エリアとに分離規定し、シートスライド位置がこのエアバッグ膨出エリア内にあると判別されたとき、および荷重情報に基づいて想定した座高重心位置がエアバッグ膨出エリア内にあると判別されたとき、エアバッグの膨張展開形態として段階的展開を選択するものとしている。つまり、想定上でも、着座者の身体(上体)の一部がエアバッグ膨出エリアにあると判別されれば、エアバッグの全展開を自制し、その段階的展開を行うため、たとえ着座者の上体がエアバッグ膨出エリア内にあっても、その膨出に伴う衝撃は、着座者に十分に抑制されて伝達される。
【0145】
そして、その段階を経た後に、エアバッグは最大膨張形状まで膨張展開されるため、段階的展開であっても、着座者に対する保護性能は十分、かつ適切に確保される。
【0146】
従って、この発明によれば、エアバッグの膨張展開による安全保護性能ばかりでなく、エアバッグ膨出時における高い安全性能をも確実に得ることが可能となる。
【0147】
また、この発明においては、着座者の体重からその座高を推定し、その推定座高に基づく座高重心位置によって着座者の上体位置の推定を行っている。これによれば、荷重の検出だけでは得られない着座者の上体位置が、より明確に推定でき、これをもとにして、エアバッグの展開制御をはかることから、エアバッグ膨出時における高い安全性能の確保が、この点においても確実、かつ適切に得られる。
【0148】
さらに、荷重情報に基づいて算出した算出重心位置を座標上に置き換え、その前後方向の、所定の基点からの移動量をスライド位置に相当するY軸成分から減算することで、この算出重心位置に対する補正とすれば、重心位置のスライド位置依存性を排除できるため、着座位置の推定精度、および着座者の体重推定精度が、いずれも向上する。従って、エアバッグ膨出エリア内外に対する重心位置、および座高重心位置の見極め性能が確実に向上し、それにより、その安全性能が一層向上される。
【0149】
そして、この発明のエアバッグ展開制御装置によれば、上記エアバッグ展開制御方法が構成の複雑化を伴うことなく適切に遂行可能となる。
【0150】
さらに、荷重検出手段によってシートへの入力荷重を、また、スライド位置検出手段によってシートのスライド位置を、それぞれ検出すれば足りるため、この点からも、その構成の簡素化が確実にはかられる。
【0151】
また、スライド位置検出手段として、磁石体と2つのホール素子とを磁性板上に一体的に配してなる磁気センサ本体を備えた構成を利用すれば、モータを持たないマニュアルスライドに対する適用、装着が容易に可能であるため、マニュアルスライドシートへの適応性に優れたエアバッグ展開制御装置が容易に確保可能となる。
【0152】
そして、エリア検出手段をシート位置検出手段とは別に設ければ、たとえシート位置検出手段にその検出誤差が生じても、その誤差がエリア検出に何等及ばないため、エリア検出、つまりはエアバッグの展開制御に対する判断の確実性が一層向上する。
【0153】
さらに、シートベルトの装着の有無を検出して、それに対応した告知を表示手段で着座者に行ったり、変則姿勢等に応じた警告等を、同じく表示手段で着座者に行えば、着座者に適正姿勢での着座を事前に促すことが容易に可能となる。そして、適正姿勢での着座であれば、エアバッグの膨張展開による安全保護性能が十分に高く確保できるため、この点においても、着座者の安全性が一層向上される。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明に係るエアバッグ展開制御装置の概略ブロック図である。
【図2】エアバッグ、およびエアバッグ展開制御装置を備えたスライドシートの概略側面図である。
【図3】荷重検出手段を示す、シートスライド装置(マニュアルスライド)の正面図、およびその部分縦断面図である。
【図4】スライド位置検出手段を示す、シートスライド装置の縦断面図、およびその概略部分側面図である。
【図5】シートクッションの概略平面図をもとにした、この発明に係るエアバッグ展開制御方法での基準マップである。
【図6】エアバッグの展開許可/不許可を示す、入力荷重をもとにしたチャートである。
【図7】スライド位置検出手段における、ホール素子とロック孔(検出対象孔)との位置関係を示す各模式図である。
【図8】エアバッグ膨出エリアとシートのスライド範囲との関係を示す、シートの概略側面図である。
【図9】スライド範囲内におけるエアバッグの段階的展開エリア、およびエアバッグの全展開エリアを示すチャートである。
【図10】シートスライド装置をその主とした概略の部分側面図である。
【図11】エアバッグ展開制御方法でのフローチャートである。
【図12】エアバッグ展開制御方法での、スライド位置検出ルーチンである。
【図13】エアバッグ展開制御方法での、エアバッグ展開判断ルーチンである。
【図14】エアバッグ展開制御方法での、エアバッグ展開判断ルーチンである。
【図15】エアバッグ展開制御方法での、エアバッグ展開判断ルーチンである。
【図16】スライド位置検出手段におけるタイミングチャートである。
【図17】エアバッグ展開制御方法において使用する、重心位置の算出座標である。
【図18】非検出荷重成分の相違例を示す、各着座姿勢での概略側面図である。
【図19】体重と座高との関係例を示す特性グラフ、および推定体重と補正係数との関係例を示す特性グラフである。
【符号の説明】
10 エアバッグ展開制御装置
12 シート(マニュアルスライドシート)
14 荷重検出手段
16 スライド位置検出手段
18 情報処理手段
20 エアバッグ
30 シートスライド装置
60 検出対象孔
62 磁気センサ本体
64 磁石体
66−1,66−2 ホール素子
86 エリア検出手段(ホール素子)
92 シートベルトスイッチ
94 表示手段
Claims (8)
- 前後方向にスライド可能なスライドシートにおけるエアバッグ展開制御方法であり、
エアバッグの最大膨張形状に基づいて、シートスライド範囲をエアバッグ膨出エリア内とエアバッグ膨出エリア外とに分離規定するとともに、エアバッグの膨張展開形態を、その最大膨張形状まで一度に膨張する全展開と、その最大膨張形状まで段階的に膨張する段階的展開との2種から、適宜選択するものとし、
スライド位置検出手段により検出した、シートの前後位置に関わるスライド位置情報と;荷重検出手段により検出した、シートヘの入力荷重に関わる荷重情報と;を適宜処理し、予め設定された判別値との比較のもとで、そのシートへの大人の着座が判別されたときのみ、いずれかの膨張展開形態によるエアバッグの膨張展開が許可され、
この展開許可に加えて、そのシートスライド位置がエアバッグ膨出エリア外と判別され、なおかつスライド位置情報、および荷重情報に基づいて算出した重心位置が、シートクッションの表面上で予め規定した規定範囲内にあると判別されたときのみ、エアバッグの膨張展開形態として全展開を選択するとともに、
シートスライド位置がエアバッグ膨出エリア内と判別されたとき、および、重心位置がシートクッション表面上の規定範囲を外れたと判別されたとき、ならびに、重心位置がシートクッション表面上の規定範囲内にあると判別されたにも拘らず、荷重情報に基づいて想定した座高重心位置がエアバッグ膨出エリア内にあると判別されたとき、エアバッグの膨張展開形態として段階的展開を選択するエアバッグ展開制御方法。 - 荷重情報に基づいて算出した算出重心位置を座標上に置き換え、その前後方向の、所定の基点からの移動量をスライド位置に相当するY軸成分から減算することで、この算出重心位置に対する補正とする請求項1記載のエアバッグ展開制御方法。
- シートスライド範囲に規定されたエアバッグ膨出エリア内とエアバッグ膨出エリア外との境界点を、シートスライド位置とは別に検出する請求項1または2記載のエアバッグ展開制御方法。
- シートベルトの装着の有無を検出し、シートベルトの装着のないとき、それを着座者に告知する表示を所定の表示手段により行うとともに、
シートへの大人の着座を判別したとき、このシートベルトの装着の有無に拘らず、いずれかの膨張展開形態によるエアバッグの膨張展開許可をなす請求項1ないし3のいずれか記載のエアバッグ展開制御方法。 - エアバッグの、少なくとも展開、非展開を制御可能とするエアバッグ展開制御装置において、
シートへの入力荷重を、少なくとも前後個別に検出する荷重検出手段と;
シートのスライド位置を検出するスライド位置検出手段と;
エアバッグの最大膨張形状に基づいて分離規定したエアバッグ膨出エリア内とエアバッグ膨出エリア外との境界点を検出するエリア検出手段と;
荷重検出手段からの荷重情報と、スライド位置検出手段、およびエリア検出手段からのスライド位置情報とを適宜処理して、エアバッグの膨張展開形態を、その最大膨張形状まで一度に膨張する全展開、およびその最大膨張形状まで段階的に膨張する段階的展開から選択する情報処理手段と;
を具備し、
情報処理手段において、そのシートへの大人の着座が判別されたときのみ、エアバッグの膨張展開を許可するものとし、この展開許可に加えて、そのシートスライド位置がエアバッグ膨出エリア外と判別され、なおかつスライド位置情報、および荷重情報に基づいて算出した重心位置が、シートクッションの表面上で予め規定した規定範囲内にあると判別されたときのみ、エアバッグの膨張展開形態として全展開を選択するとともに、
シートスライド位置がエアバッグ膨出エリア内と判別されたとき、および、重心位置がシートクッション表面上の規定範囲を外れたと判別されたとき、ならびに、重心位置がシートクッション表面上の規定範囲内にあると判別されたにも拘らず、荷重情報に基づいて想定した座高重心位置がエアバッグ膨出エリア内にあると判別されたとき、エアバッグの膨張展開形態として段階的展開を選択することを特徴としたエアバッグ展開制御装置。 - シートベルトの装着を検出するシートベルトスイッチと;
所定の告知表示を可能とする表示手段と;
をさらに備え、
シートベルトの装着のないことを含む各種告知を、表示手段によって着座者に告知可能とした請求項5記載のエアバッグ展開制御装置。 - スライド可能なシートが、シートの移動方向に連なった等間隔毎の一連の検出対象孔を、その固定の磁性部材に有し、
スライド位置検出手段が、検出対象孔との上下非整列位置にある磁石体と;検出対象孔との上下整列位置に並置された2つのホール素子と;を磁性板上に一体的に配してなる磁気センサ本体を備え、この磁気センサ本体の各ホール素子が、異なる2相のパルスを同期出力可能に検出対象孔に対するその通過タイミングを変えてそれぞれ配設された請求項5または6記載のエアバッグ展開制御装置。 - エリア検出手段が、固定のエリア規定部材の有無を検出可能に配されたホール素子である請求項5ないし7のいずれか記載のエアバッグ展開制御装置。
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