JP2004031731A - 積層樹脂配線基板及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】本発明の積層樹脂配線基板11は、金属板12、配線層31,32、樹脂絶縁層21,22を備える。金属板12は、銅よりも熱膨張係数の低い導電性金属材料からなる。配線層31,32は、金属板12の第1主面13及び第2主面14のうちの少なくともいずれかの側に位置し、銅よりも熱膨張係数の低い導電性金属材料からなる。樹脂絶縁層21,22は、金属板12と配線層31,32との間に介在する。
【選択図】 図1
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は積層樹脂配線基板及びその製造方法に係り、特には金属板をコア材またはベース材として用いた積層樹脂配線基板及びその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、電気機器、電子機器等の小型化に伴い、これらの機器に搭載される配線基板等にも小型化や高密度化が要求されている。かかる市場の要求に応えるべく、配線基板の多層化技術が検討されている。多層化の方法としては、コア材に対して絶縁層と配線層とを交互に積層一体化する、いわゆるビルドアップ法が一般的に採用されている。また、従来この種の配線基板におけるコア材としては、放熱性の向上や基板全体の熱膨張係数の低減のため、銅合金やFe−Ni系合金などからなる金属板を用いることが多い(特開2000−133913号公報参照)。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記従来の積層樹脂配線基板の場合、コア材については熱膨張係数が比較的低い金属を材料として用いている反面、配線層については現状のところ熱膨張係数が比較的高い銅を材料として用いている。このため、基板全体の熱膨張係数の低減という効果を得る目的で上記コア材を使用しているにもかかわらず、銅の使用によってその効果が相殺されてしまうという問題があった。それゆえ、基板全体の熱膨張係数の低減を確実に達成することができず、寸法安定性や信頼性に優れた積層樹脂配線基板を得ることが従来では難しかった。
【0004】
なお、今後現状よりもさらにビルドアップ層の多層化・高密度化が進み、基板内の配線層の存在比率(即ち銅の使用比率)がいっそう高くなるとすれば、この問題が顕著になることも十分に予想される。
【0005】
本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、基板全体の熱膨張係数の低減を確実に達成することで寸法安定性や信頼性に優れた積層樹脂配線基板及びその製造方法を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段、作用及び効果】
上記の課題を解決するための解決手段は、第1主面及び第2主面を有し、銅よりも熱膨張係数の低い導電性金属材料からなる金属板と、前記第1主面及び前記第2主面のうちの少なくともいずれかの側に位置し、銅よりも熱膨張係数の低い導電性金属材料からなる配線層と、前記金属板と前記配線層との間に介在する樹脂絶縁層とを備えることを特徴とする積層樹脂配線基板をその要旨とする。
【0007】
また、他の解決手段は、第1主面及び第2主面を有し、銅よりも熱膨張係数の低い導電性金属材料からなる金属板と、前記金属板の第1主面側及び第2主面側に位置し、銅よりも熱膨張係数の低い導電性金属材料からなる複数の配線層と、前記金属板と前記配線層との間、または前記金属板と前記配線層との間及び前記配線層間に介在する複数の樹脂絶縁層とを備えることを特徴とする積層樹脂配線基板をその要旨とする。
【0008】
そして、上記発明によると、金属板の形成材料のみならず配線層の形成材料についても、銅よりも熱膨張係数の低い導電性金属材料が使用されている。このため、従来の積層樹脂配線基板に比べて金属板と配線層との熱膨張係数差が小さくなり、配線層があったとしても、基板全体の熱膨張係数の低減という効果が相殺されにくくなる。よって、基板全体の熱膨張係数の低減が確実に達成され、寸法安定性や信頼性に優れた積層樹脂配線基板を得ることができる。
【0009】
上記発明では、金属板の形成材料及び配線層の形成材料として、銅よりも熱膨張係数の低い導電性金属材料を使用する必要がある。銅の熱膨張係数(30℃−300℃)は17ppm/℃程度であるため、金属板の形成材料及び配線層の形成材料としては、17ppm/℃未満の金属または合金が使用される必要がある。この場合、14ppm/℃未満の金属または合金が使用されること(言い換えると銅の熱膨張係数よりも3ppm/℃以上熱膨張係数が低い金属または合金が使用されること)が望ましい。さらには11ppm/℃未満の金属または合金が使用されること(言い換えると銅の熱膨張係数よりも6ppm/℃以上熱膨張係数が低い金属または合金が使用されること)が望ましい。特には6ppm/℃未満の金属または合金が使用されること(言い換えると銅の熱膨張係数よりも11ppm/℃以上熱膨張係数が低い金属または合金が使用されること)が望ましい。その理由は、金属板及び配線層の熱膨張係数の絶対値が小さくなればなるほど寸法安定性が高くなるからである。また、金属板及び配線層の熱膨張係数が、ICチップの形成材料として通常よく用いられるシリコンの熱膨張係数(約2.8ppm/℃,30℃−300℃)に近づくほど、チップとの接続信頼性が向上するからである。なお、銅よりも熱膨張係数の低い金属材料は、導電性を有している必要がある。その理由は、配線層は電気を効率よく流すことを主目的として形成される層だからである。
【0010】
金属板を構成する導電性金属材料としては、銅よりも熱膨張係数が低いという条件を満たしていれば、銅合金、銅以外の金属単体及びその合金の中から適宜選択することができる。配線層を構成する導電性金属材料についても基本的には同じである。銅以外の金属の合金の好適例としては、Fe−Ni系合金を挙げることができる。
【0011】
配線層を構成する導電性金属材料と、金属板を構成する導電性金属材料との差は、6ppm/℃以下であることが望ましく、さらには2ppm/℃以下であることが望ましく、特には1ppm/℃以下であることが望ましい。その理由は、両者の熱膨張係数差が小さければ基板内部に熱応力が発生しにくくなるため、基板全体の熱膨張係数の低減という効果が相殺されず、寸法安定性及び信頼性が確実に向上するからである。
【0012】
ここで前記配線層及び前記金属板はともに同種の金属からなることが望ましく、特にはともにFe−Ni系合金からなることが望ましい。
【0013】
同種の金属であれば熱膨張係数差がゼロもしくはあったとしても極僅かであるため、寸法安定性及び信頼性の向上を達成するうえで非常に好都合だからである。また、Fe−Ni系合金の多くのものは、銅よりも熱膨張係数が低いという性質を有しているため、それを金属板及び配線層として用いることにより基板全体の熱膨張係数の低減をより確実に達成できるからである。また、Fe−Ni系合金は銅には劣るものの好適な導電性を有しているため、配線層として好適であり、しかも配線層と接続導通することでグランド層や電源層として機能させることができるからである。さらに、Fe−Ni系合金は銅には劣るものの好適な熱伝導性を有しているため、それを金属板等として用いることにより高放熱化を図ることができるからである。
【0014】
前記Fe−Ni系合金の具体例としては、42アロイ(Fe−42%Ni)、50アロイ(Fe−50%Ni)、アンバー(Fe−36%Ni)、スーパーアンバー(Fe−31%Ni−5%Co)、コバール(Fe−29%Ni−17%Co)などがある。もっとも、銅よりも熱膨張係数が小さいという条件を満たすものであれば、上記組成以外のFe−Ni系合金であっても構わない。例えば、ニッケルを40%、45%、55%または60%含むものを選択してもよい。
【0015】
なお、ここでいうFe−Ni系合金とは、合金組成中に鉄及びニッケル(または鉄、ニッケル及びコバルト)を主成分として含むものを指す。それら以外の元素(例えば炭素、けい素、マンガンなど)を少量含むものも、ここでいうFe−Ni系合金の範疇に入るものとする。
【0016】
前記金属板の厚さは特に限定されないが、強いて言えば150μm以上であることがよく、さらには150μm〜500μm、特には150μm〜300μmであることがよい。金属板の厚さが150μm未満であると、金属板自体の剛性が低くなる結果、製造工程中において皺や折キズが生じやすくなって取扱性が低下し、さらには歩留まりの低下につながるからである。逆に、厚さが500μmであると、剛性に関して何ら問題は生じない反面、積層樹脂配線基板が厚肉化するばかりでなく、孔加工が困難になるからである。なお、厚さ150μm以上の金属板である場合には、圧延金属板を用いることがよい。
【0017】
前記配線層は、金属板における第1主面及び第2主面の両側に位置していてもよく、第1主面側のみまたは第2主面側のみに位置していてもよい。かかる配線層の形成手法は、導電性や樹脂絶縁層との密着性などを考慮して適宜選択されることができる。即ち、サブトラクティブ法、セミアディティブ法、フルアディティブ法などといった公知の手法によって形成されることができる。具体的にいうと、例えば、金属層のエッチング、無電解めっきあるいは電解めっきなどの手法を用いることができる。なお、スパッタやCVD等の手法により金属層を形成した後にエッチングを行うことで配線層を形成したり、導電性ペースト等の印刷により配線層を形成したりすることも可能である。
【0018】
金属板と配線層との間に介在する樹脂絶縁層は、絶縁性、耐熱性、耐湿性等を考慮して適宜選択することができる。樹脂絶縁層形成用材料の好適例としては、EP樹脂(エポキシ樹脂)、PI樹脂(ポリイミド樹脂)、BT樹脂(ビスマレイミド−トリアジン樹脂)、PPE樹脂(ポリフェニレンエーテル樹脂)等が挙げられる。そのほか、これらの樹脂とガラス繊維(ガラス織布やガラス不織布)やポリアミド繊維等の有機繊維との複合材料、あるいは、連続多孔質PTFE等の三次元網目状フッ素系樹脂基材にエポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂を含浸させた樹脂−樹脂複合材料等を使用してもよい。
【0019】
また、金属板における主面上に形成された樹脂絶縁層の表面にはさらに樹脂絶縁層が1層または2層以上形成されていてもよく、各層の樹脂絶縁層上には配線層が形成されていてもよい。別の言い方をすると、上記の積層樹脂配線基板は、金属板と配線層との間に介在する樹脂絶縁層のみを備えるものでもよいほか、金属板と配線層との間及び異層の配線層間に介在する複数の樹脂絶縁層を備えるものでもよい。
【0020】
前記樹脂絶縁層には、配線層と金属板との間を接続導通するビアホール導体(第1のビアホール導体)が形成されていてもよい。かかるビアホール導体があると、導電性を有する前記金属板をグランド層や電源層として機能させることが可能となる。また、最も内層に位置する配線層と金属板との間を接続導通するビアホール導体のみならず、それよりも外層側に位置する配線層と金属板との間を接続導通するビアホール導体が形成されていてもよい。また、異なる層の配線層同士を接続導通するビアホール導体が形成されていてもよい。
【0021】
なお、ビアホール導体を構成するビア導体は、例えば無電解銅めっき、無電解ニッケルめっき、無電解Fe−Ni合金めっき等によって形成される。それらの中でも、配線層及び金属板との熱膨張係数の整合という観点からすれば、配線層及び金属板と同様に銅よりも熱膨張係数の低い金属の無電解めっきを用いることがよく、特には無電解Fe−Ni合金めっきを用いることが好ましい。
【0022】
前記金属板における第1主面及び第2主面の両側に配線層及び樹脂絶縁層が存在する場合、金属板には第1主面及び第2主面を連通させる金属板貫通孔が形成されるとともに、その内部には樹脂充填体が充填されることがよい。
【0023】
ここで樹脂充填体としては、絶縁性、耐熱性、耐湿性等を考慮して適宜選択することができる。樹脂充填体を形成する樹脂材料の好適例としては、EP樹脂、PI樹脂、BT樹脂、PPE樹脂等が挙げられる。つまり、上述した樹脂絶縁層形成用の樹脂材料として使用可能なものであれば、樹脂充填体形成用の樹脂材料として問題なく使用することができる。なお、樹脂絶縁層形成用の樹脂材料として使用したものを、そのまま樹脂充填体形成用の樹脂材料として流用することが、コスト性や生産性の観点からみて好ましい。
【0024】
前記樹脂絶縁層及び前記樹脂充填体には、金属板との間で絶縁を保ちつつ第1主面側の配線層と第2主面側の配線層との間を接続導通するビアホール導体(即ち第2のビアホール導体である金属板絶縁ビアホール導体)が形成されていてもよい。また、金属板との間で接続導通状態を保ちつつ両主面側の配線層同士を接続導通するビアホール導体(即ち金属板導通ビアホール導体)が形成されていてもよい。
【0025】
前記金属板貫通孔を形成する手法としては、特に限定されることはなく、従来公知の各種の孔あけ法を採用することができる。かかる手法の例としては、エッチング、レーザ加工、パンチ加工などが挙げられるが、板厚が厚い金属板については、エッチング(とりわけ両面同時エッチング)を採用することが望ましい。さらにはフォトエッチングを採用することが望ましく、この場合には形成される貫通孔の位置精度を高くすることができ、歩留まりの向上を図ることが可能となる。
【0026】
次に、他の解決手段は、第1主面及び第2主面を有し、銅よりも熱膨張係数の低い導電性金属材料からなる金属板と、前記第1主面及び前記第2主面のうちの少なくともいずれかの側に位置し、銅よりも熱膨張係数の低い導電性金属材料からなる配線層と、前記金属板と前記配線層との間に介在する樹脂絶縁層とを備える積層樹脂配線基板の製造方法であって、前記金属板における前記第1主面及び前記第2主面のうちの少なくともいずれかの側に、樹脂絶縁層形成用材料を介して、銅よりも熱膨張係数の低い導電性金属材料からなる金属箔を積層する工程と、積層された前記金属箔をエッチングして前記配線層を形成する工程とを含むことを特徴とする積層樹脂配線基板の製造方法をその要旨とする。
【0027】
従って、上記の製造方法によると、積層された上記金属箔のエッチングにより、即ちサブトラクティブ法により、配線層のパターン形成が行われることになる。よって、アディティブ法によりパターン形成を行う場合に比べて、短時間かつ低コストで上記構成の積層樹脂配線基板を製造することができる。
【0028】
前記金属箔としては、電解法により形成された箔(電解金属箔)及び圧延法により形成された箔(圧延金属箔)のいずれを使用してもよいが、強いて言えば圧延金属箔を使用することが好ましい。その理由は、圧延金属箔は電解金属箔に比べて緻密な結晶組織を有しているため、剛性や導電性等の観点からして電解金属箔よりも有利であると考えられるからである。
【0029】
特に、金属板が圧延金属板である場合において同種の金属からなる金属箔を選択すること(例えば、金属板として圧延Fe−Ni合金板を選択し、金属箔として圧延Fe−Ni系合金箔を選択すること等)が望ましい。その理由は、ともに圧延法により形成された金属同士であれば、基本的に性状が等しいため、熱膨張係数差を殆どゼロにすることが可能だからである。
【0030】
使用される金属箔の厚さは5μm〜70μmであることがよく、さらには5μm〜35μmであることがよく、特には10μm〜18μmであることがよい。金属箔の厚さが5μm未満であると、取扱性の大幅な低下は言うまでもなく、箔の製造自体も困難になるおそれがあるからである。逆に、金属板の厚さが70μmを超えると、もはや箔とは言い難くなり、板に近い性状になってしまうからである。
【0031】
積層された金属箔をエッチングして配線層を形成する工程では、例えば金属箔を溶解除去しうるエッチャントを用いて金属箔を化学的にエッチングすることが行われる。この場合のエッチャントとしては特に限定されることはなく、従来公知のものを使用することができるが、その一例を挙げるとすると塩化第二鉄などがある。
【0032】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を具体化した一実施形態の積層樹脂配線基板(いわゆるメタルコア基板)を図1〜図13に基づき詳細に説明する。
【0033】
図1には、本実施形態の積層樹脂配線基板11が概略的に示されている。この積層樹脂配線基板11は、Fe−Ni系圧延合金からなる金属板12をコア材として備えている。図1において金属板12の上面(即ち第1主面)13及び下面(即ち第2主面)14には、それぞれビルドアップ層が形成されている。
【0034】
金属板12の厚さは0.25mmに設定されていて、その所定箇所には上面13及び下面14を連通させる0.30mmφの金属板貫通孔15が多数透設されている。
【0035】
上面13の側のビルドアップ層は、樹脂絶縁層21,41,61と配線層31,51とを交互に積層した構造を有している。下面14の側のビルドアップ層は、樹脂絶縁層22,42,62と配線層32,52とを交互に積層した構造を有している。即ち、本実施形態では積層樹脂配線基板11の両側において配線層31,32,51,52の層数が等しくなっている。
【0036】
第1層めの樹脂絶縁層21,22及び第2層めの樹脂絶縁層41,42は、その厚さが30μmであって、連続多孔質PTFEにエポキシ樹脂を含浸させた樹脂−樹脂複合材料からなる。第1層めの樹脂絶縁層21,22は、金属板12の上面13及び下面14の上に形成されている。第2層めの樹脂絶縁層41,42は、第1層めの樹脂絶縁層21,22上にそれぞれ形成されている。なお、金属板貫通孔15内には、前記樹脂−樹脂複合材料に由来するエポキシ樹脂が充填されることにより、樹脂充填体23が形成されている。
【0037】
第1層めの配線層31,32はいずれも厚さ約15μmのFe−Ni系合金からなり、第1層めの樹脂絶縁層21,22上にそれぞれ形成されている。第1層めの樹脂絶縁層21,22には直径70μmのビアホール形成用孔33が形成されている。ビアホール形成用孔33の内部には無電解Fe−Ni合金めっきによりビア導体35が形成され、これによりブラインドビアホール導体34が構成されている。そして、このブラインドビアホール導体34を介して、金属板12−配線層31間、金属板12−配線層32間がそれぞれ接続導通されている。
【0038】
第2層めの配線層51,52はいずれも厚さ約15μmのFe−Ni系合金からなり、第2層めの樹脂絶縁層41,42上にそれぞれ形成されている。第2層めの樹脂絶縁層41,42には直径70μmのビアホール形成用孔53が形成されている。ビアホール形成用孔53の内部には無電解Fe−Ni合金めっきによりビア導体55が形成され、これによりブラインドビアホール導体54が構成されている。そして、このブラインドビアホール導体54を介して、配線層31−配線層51間、配線層32−配線層52間がそれぞれ接続導通されている。
【0039】
最外層に位置する第3層めの樹脂絶縁層61,62は、その厚さが20μmであって、感光性エポキシ樹脂を用いて第2層めの樹脂絶縁層41,42上に形成されている。第3層めの樹脂絶縁層61,62にはビアホール形成用孔63,64が透設されている。ビアホール形成用孔63,64内には、Fe−Ni合金めっき層、ニッケルめっき層及び金フラッシュめっき層(いずれも図示しない)という3層の導体からなるすり鉢状のパッド71,72が形成されている。パッド71の底部は第2層めの配線層51に対して接続導通されていて、パッド72の底部は第2層めの配線層52に対して接続導通されている。なお、これらのパッド71,72は、図示しないICチップやマザーボード等の接続端子に対し、はんだ付け等により接続されるようになっている。第3層めの樹脂絶縁層61,62は、ソルダレジスト層としての役割も有している。
【0040】
第1層めの樹脂絶縁層21,22及び樹脂充填体23には、それらを貫通する直径0.15mmのビアホール形成用孔25が形成されている。ビアホール形成用孔25の内部には無電解Fe−Ni合金めっきによりビア導体27が形成され、その結果として金属板絶縁ビアホール導体26が構成されている。金属板絶縁ビアホール導体26は、金属板12の金属板貫通孔15の内壁面との間で絶縁を保ちつつ、上面側の配線層31,51と下面側の配線層32,52との間を接続導通している。なお、金属板絶縁ビアホール導体26は、第1層めの樹脂絶縁層21,22及び樹脂充填体23のみならず、第2層めの樹脂絶縁層41,42をも貫通するようなものであってもよい。
【0041】
そして、このような積層樹脂配線基板11に図示しないICチップ等を搭載すれば、いわゆるメタルコアパッケージを得ることができる。かかるパッケージに対して通電を行った場合、金属板12は、ブラインドビアホール導体34を通じて所定の電位(接地電位または電源電位など)となり、グランド層または電源層として機能するようになっている。
【0042】
次に、上記構成の積層樹脂配線基板11を製造する手順について説明する。
【0043】
まず、厚さ0.25mmの金属板12を用意する(図2参照)。本実施形態では、具体的には実施例として、図13の表に示すように、5種類の金属板12(即ち圧延42アロイ板、圧延50アロイ板、圧延アンバー板、圧延スーパーアンバー板、圧延コバール板)を用いた。そして、この金属板12の上面13及び下面14の上に、感光性レジストを形成し、露光・現像を行うことにより、所定パターンのマスク81を形成する。マスク81において金属板貫通孔15が形成されるべき箇所には、開口部82が設けられる(図3参照)。
【0044】
この状態で、Fe−Ni系合金を溶解しうるエッチャント(具体的には塩化第二鉄)により金属板12をエッチングすると、上面13及び下面14の両方から金属板12が侵蝕され、結果として開口部82のある位置に金属板貫通孔15が形成される(図4参照)。その後、不要となったマスク81を専用の剥離液で溶解除去する(図5参照)。
【0045】
続いて、前記金属板12に対し、第1層めの樹脂絶縁層21,22及び樹脂充填体23を形成する。ここでは、まず、前記金属板12の上面13及び下面14に、それぞれ連続多孔質PTFEに半硬化のエポキシ樹脂を含浸させたプリプレグ(図示略)を介して、Fe−Ni系圧延合金からなる厚さ12μmの金属箔83,84を重ね合わせる。そして、このような積層物を真空熱プレス機(図示しない)によって真空熱圧着することにより、半硬化状態であったプリプレグを本硬化させ、これにより厚さ30μmの樹脂絶縁層21,22を各々形成する。図6において破線で示す金属板貫通孔15内には、プリプレグから滲出したエポキシ樹脂が充填される結果、樹脂充填体23が形成される。
【0046】
なお、具体的には図13の表に示すように、実施例については、5種類のFe−Ni系圧延合金からなる金属箔83,84(即ち圧延42アロイ箔、圧延50アロイ箔、圧延アンバー箔、圧延スーパーアンバー箔、圧延コバール箔)を用いた。一方、比較例(即ち従来例)については銅箔を用いた。
【0047】
次に、YAGレーザまたは炭酸ガスレーザを用いたレーザ孔あけ加工を実施することにより、第1層めの樹脂絶縁層21,22、樹脂充填体23、金属箔83,84を穿孔し、直径70μmのビアホール形成用孔25,33を形成する(図7参照)。なお、本実施形態では、金属板12を穿孔しないような条件にレーザ出力等を設定する必要がある。
【0048】
次に、従来公知の手法によって、ビアホール形成用孔33内にビア導体35を形成し、かつビアホール形成用孔25内にビア導体27を形成する。その結果、ブラインドビアホール導体34及び金属板絶縁ビアホール導体26が形成される(図8参照)。また、従来公知の手法に従って、第1層めの樹脂絶縁層21の上、及び樹脂絶縁層22の下面の上に、それぞれ第1層めの配線層31,32をパターン形成する。具体的には、無電解Fe−Ni合金めっきの後、露光・現像を行って所定パターンのめっきレジストを形成する。この状態で無電解Fe−Ni合金めっき層を共通電極として電解Fe−Ni合金めっきを施した後、まずレジストを溶解除去して、さらに不要な無電解Fe−Ni合金めっき層を例えば塩化第二鉄などを用いたエッチングにて除去する。
【0049】
次に、ブラインドビアホール導体34及び金属板絶縁ビアホール導体26の内部にエポキシ樹脂を充填し、これを硬化させることにより、プラグ体28を形成する。さらに、第1層めの樹脂絶縁層21,22の上にプリプレグを介して金属箔83,84を重ね合わせ、真空熱プレスにより圧着硬化させる。その結果、第2層めの樹脂絶縁層41,42及び金属箔83,84を積層形成する(図9参照)。
【0050】
次に、YAGレーザまたは炭酸ガスレーザを用いたレーザ孔あけ加工を実施することにより、第1層めの樹脂絶縁層21,22、第2層めの樹脂絶縁層41,42、樹脂充填体23、金属箔83,84を穿孔し、直径70μmのビアホール形成用孔25,53を形成する(図10参照)。
【0051】
次に、従来公知の手法によって、ビアホール形成用孔53内にビア導体55を形成し、かつビアホール形成用孔25内にビア導体27を形成する。その結果、ブラインドビアホール導体54及び金属板絶縁ビアホール導体26が形成される(図11参照)。また、従来公知の手法によって、第2層めの樹脂絶縁層41の上、及び樹脂絶縁層42の下面の上に、それぞれ第2層めの配線層51,52をパターン形成する。具体的な形成方法としては、ブラインドビアホール導体34、金属板絶縁ビアホール導体26、第1層めの配線層31,32の形成方法と同様である。
【0052】
次に、ブラインドビアホール導体54及び金属板絶縁ビアホール導体26内にエポキシ樹脂を充填し、それを硬化させることにより、プラグ体28を形成する。その後、第2層めの樹脂絶縁層41,42の上に感光性エポキシ樹脂を被着し、露光・現像を行うことにより、ビアホール形成用孔63,64を有する第3層めの樹脂絶縁層61,62を形成する。このとき、ビアホール形成用孔63,64の底部に、それぞれ第2層めの配線層51,52を露出させる(図12参照)。
【0053】
次に、第3層めの樹脂絶縁層61,62の上に、従来公知の手法を用いて、無電解Fe−Ni合金めっきの後、エッチング処理、無電解ニッケルめっき、無電解金めっきを順次施すことにより、パッド71,72を形成する。以上の結果、図1に示す積層樹脂配線基板11が完成する。
【0054】
従って、本実施形態によれば以下のような効果を得ることができる。
【0055】
(1)この積層樹脂配線基板11では、金属板12の形成材料のみならず全ての配線層31,32,51,52の形成材料についても、銅よりも熱膨張係数の低いFe−Ni系合金が使用されている。このため、従来の積層樹脂配線基板に比べて、金属板12と配線層31,32,51,52との熱膨張係数差が極めて小さくなっている(図13の表1参照)。具体的にいうと、比較例では熱膨張係数差が12.9ppm/℃(30℃−300℃)であるのに対し、実施例1〜14では熱膨張係数差が0〜5.8ppm/℃(30℃−300℃)になっている。従って、たとえ複数の配線層31,32,51,52があったとしても、基板全体の熱膨張係数の低減という効果が相殺されにくくなる。よって、基板全体の熱膨張係数の低減が確実に達成され、寸法安定性や信頼性に優れた積層樹脂配線基板11を比較的容易にかつ確実に得ることができる。
【0056】
また、この積層樹脂配線基板11であれば、今後さらにビルドアップ層の多層化・高密度化が進み、基板内の配線層31,32,51,52の存在比率(即ち銅の使用比率)がいっそう高くなったとしても、基板全体の熱膨張係数の低減を確実に達成することが可能である。つまり、本実施形態の積層樹脂配線基板11の構造は多層化・高密度化に適したものであるということができる。
【0057】
(2)また、本実施形態の製造方法では、積層された金属箔12のエッチング(即ちサブトラクティブ法)により、配線層31,32,51,52のパターン形成を行うようにしている。よって、アディティブ法によりパターン形成を行う場合に比べて、短時間かつ低コストで上記構成の積層樹脂配線基板11を製造することができる。
【0058】
なお、本発明の実施形態は以下のように変更してもよい。
【0059】
・前記実施形態では複数ある配線層31,32,51,52の全てを同じ金属材料(Fe−Ni系合金)を用いて形成していたが、これに限定されなくてもよい。例えば、配線層31,32のみについてFe−Ni系合金を用い、配線層51,52については銅よりも熱膨張係数の低いFe−Ni系合金以外の金属材料を用いてもよい。
【0060】
・ビアホール導体26,34,53は、前記実施形態のように無電解Fe−Ni合金めっきにより形成してもよいほか、例えば無電解銅めっきにより形成することも可能である。また、無電解めっき以外の手法(例えば導電性ペーストの充填など)により、かかるビアホール導体26,34,53を形成してもよい。
【0061】
・本発明は、金属板12−配線層31間あるいは金属板12−配線層32間を接続導通するビアホール導体34(第1のビアホール導体)を省略した態様にて具体化されてもよい。また本発明は、金属板12との間で絶縁を保ちつつ金属板12の上下の配線層31,32,51,52間を接続導通するビアホール導体26(第2のビアホール導体)を省略した態様にて具体化されてもよい。
【0062】
・上記実施形態では、金属板12をコア材として1枚のみ使用した積層樹脂配線基板11の具体例を示した。本発明は勿論このような態様のみに限定されることはない。例えば、金属板12を2枚またはそれ以上の枚数使用した積層樹脂配線基板として具体化することも可能である。
【0063】
・上記実施形態では、コア材である金属板12の上下にそれぞれ同数の樹脂絶縁層21,22,41,42,61,62及び配線層31,32,51,52を形成したが、これに限定されることはなく、上下にて異なる数にしても勿論よい。
【0064】
・上記実施形態では、金属板12をコア材として用い、その上下にビルドアップ層を有する積層樹脂配線基板11の具体例を示した。本発明は勿論このような態様のみに限定されることはない。例えば、前記金属板12をベース材として用い、その上下いずれか片面のみにビルドアップ層を有する積層樹脂配線基板(いわゆるメタルベース基板)として具体化することも可能である。
【0065】
次に、特許請求の範囲に記載された技術的思想のほかに、前述した実施形態によって把握される技術的思想を以下に列挙する。
【0066】
(1)前記配線層を構成する導電性金属材料の熱膨張係数と、前記金属板を構成する導電性金属材料の熱膨張係数との差は6ppm/℃以下(好ましくは2ppm/℃以下、特に好ましくは1ppm/℃以下)であることを特徴とする請求項1または2に記載の積層樹脂配線基板。
【0067】
(2)前記配線層を構成する導電性金属材料の熱膨張係数、及び、前記金属板を構成する導電性金属材料の熱膨張係数は、ともに14ppm/℃未満(好ましくは11ppm/℃未満、特に好ましくは6ppm/℃未満)であることを特徴とする請求項1または2に記載の積層樹脂配線基板。
【0068】
(3)前記配線層及び前記金属板は、同種の金属からなることを特徴とする請求項1または2に記載の積層樹脂配線基板。
【0069】
(4)前記配線層は金属箔をエッチングして形成されたものであることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の積層樹脂配線基板。
【0070】
(5)前記金属板は圧延金属板であり、前記配線層は圧延金属箔をエッチングして形成されたものであることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の積層樹脂配線基板。
【0071】
(6)複数ある前記配線層の全てがFe−Ni系合金からなることを特徴とする請求項2または3に記載の積層樹脂配線基板。
【0072】
(7)前記配線層と前記金属板との間または前記配線層同士を接続導通するビアホール導体を備えるとともに、そのビアホール導体は、銅よりも熱膨張係数の低い導電性金属の無電解めっきにより形成されたものであることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の積層樹脂配線基板。
【0073】
(8)前記配線層と前記金属板との間または前記配線層同士を接続導通するビアホール導体を備えるとともに、そのビアホール導体は無電解Fe−Ni合金めっきにより形成されたものであることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の積層樹脂配線基板。
【0074】
(9)第1主面及び第2主面を有する厚さ150μm以上の圧延Fe−Ni系合金材からなる金属板と、前記金属板の第1主面側及び第2主面側に位置し、圧延Fe−Ni系合金箔のエッチングによって形成された複数の配線層と、前記金属板と前記配線層との間、または前記金属板と前記配線層との間及び前記配線層間に介在する複数の樹脂絶縁層と、前記樹脂絶縁層に形成され、前記配線層と前記金属板との間を接続導通する第1のビアホール導体と、前記金属板の前記第1主面及び前記第2主面を連通させる金属板貫通孔内に充填された樹脂充填体と、前記樹脂充填体を貫通するビアホール形成用孔内に形成され、前記金属板との間で絶縁を保ちつつ前記第1主面側の配線層と前記第2主面側の配線層との間を接続導通する第2のビアホール導体とを備えたことを特徴とする積層樹脂配線基板。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明を具体化した実施形態の積層樹脂配線基板を示す部分断面概略図。
【図2】同配線基板の構成部材である金属板を示す部分断面概略図。
【図3】金属板にフォトエッチング用マスクを形成した状態を示す部分断面概略図。
【図4】フォトエッチングにより金属板貫通孔を形成した状態を示す部分断面概略図。
【図5】フォトエッチング用マスクを除去した状態を示す部分断面概略図。
【図6】第1層めの樹脂絶縁層及び金属箔を積層した状態を示す部分断面概略図。
【図7】第1層めの樹脂絶縁層にビアホール形成用孔を形成した状態を示す部分断面概略図。
【図8】ブラインドビアホール導体を形成した状態を示す部分断面概略図。
【図9】第2層めの樹脂絶縁層及び金属箔を積層した状態を示す部分断面概略図。
【図10】第2層めの樹脂絶縁層等にビアホール形成用孔を形成した状態を示す部分断面概略図。
【図11】ブラインドビアホール導体及び金属板絶縁ビアホール導体を形成した状態を示す部分断面概略図。
【図12】第3層めの樹脂絶縁層を形成した状態を示す部分断面概略図。
【図13】各実施例及び比較例について、金属板及び配線層を構成する金属箔に用いられる金属材料の組合せを示した表。
【符号の説明】
11…積層樹脂配線基板
12…金属板
13…第1主面である上面
14…第2主面である下面
21,22,41,42,61,62…樹脂絶縁層
31,32,51,52…配線層
83,84…金属箔
Claims (4)
- 第1主面及び第2主面を有し、銅よりも熱膨張係数の低い導電性金属材料からなる金属板と、前記第1主面及び前記第2主面のうちの少なくともいずれかの側に位置し、銅よりも熱膨張係数の低い導電性金属材料からなる配線層と、前記金属板と前記配線層との間に介在する樹脂絶縁層とを備えることを特徴とする積層樹脂配線基板。
- 第1主面及び第2主面を有し、銅よりも熱膨張係数の低い導電性金属材料からなる金属板と、前記金属板の第1主面側及び第2主面側に位置し、銅よりも熱膨張係数の低い導電性金属材料からなる複数の配線層と、前記金属板と前記配線層との間、または前記金属板と前記配線層との間及び前記配線層間に介在する複数の樹脂絶縁層とを備えることを特徴とする積層樹脂配線基板。
- 前記配線層及び前記金属板は、ともにFe−Ni系合金からなることを特徴とする請求項1または2に記載の積層樹脂配線基板。
- 第1主面及び第2主面を有し、銅よりも熱膨張係数の低い導電性金属材料からなる金属板と、前記第1主面及び前記第2主面のうちの少なくともいずれかの側に位置し、銅よりも熱膨張係数の低い導電性金属材料からなる配線層と、前記金属板と前記配線層との間に介在する樹脂絶縁層とを備える積層樹脂配線基板の製造方法であって、
前記金属板における前記第1主面及び前記第2主面のうちの少なくともいずれかの側に、樹脂絶縁層形成用材料を介して、銅よりも熱膨張係数の低い導電性金属材料からなる金属箔を積層する工程と、
積層された前記金属箔をエッチングして前記配線層を形成する工程と
を含むことを特徴とする積層樹脂配線基板の製造方法。
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