JP2004028926A - 多発性硬化症に対するインターフェロン・ベータ薬物治療の有効性予測方法 - Google Patents

多発性硬化症に対するインターフェロン・ベータ薬物治療の有効性予測方法 Download PDF

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Abstract

【課題】多発性硬化症の患者に対して、インターフェロン・ベータによる薬物治療を施した際に、薬効の有無を患者への負担を重くする事なく簡便かつ信頼性高く予測する方法を提供する。
【解決手段】インターフェロン・ベータ投与の薬効の有無と、インターフェロン誘導タンパク質、インターフェロン制御因子、ケモカインの遺伝子の発現量との相関が記録されたデータベースを用い、被験者の末梢血白血球由来のメッセンジャーRNAから、それらの遺伝子の発現量を測定することによりインターフェロン投与の薬効の有無を予測する。
【選択図】 図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、多発性硬化症に対するインターフェロン・ベータ薬物治療の有効性を判断する予測方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
多発性硬化症(Multiple Sclerosis、以下MSと略す)は、脳と脊髄の神経線維を覆う「ミエリン」と呼ばれる脂肪質のカバーが炎症を起こし、神経の情報がうまく伝わらなくなるために視覚障害運動障害、感覚低下、平衡障害等のさまざまな症状が出る疾患であり、未だ原因がはっきりせず、現代の医学では完全に治すことができない慢性病である。免疫系が誤って自分自身を攻撃してしまう「自己免疫疾患」のひとつだと考えられているが、その発症メカニズムの詳細は解明されていない。現在、日本国内には少なくとも5000人、世界中では、凡そ100万人にのぼる患者がいるといわれている。
MSの特徴の一つとして、大部分の患者が再発を何度もくり返すことが挙げられる。再発の大きさや長さは人によって違うが、急性期を過ぎて寛解期に入ると比較的よく回復する。このタイプを「再発寛解型」という。再発をくり返すたびに後遺症が増えていき、進行する患者もいる。一方、発病してから、実際に病気が進行していくことがあり、このタイプを「進行型」という。日本ではこのタイプは少ないといわれている。
MSの再発または進行を抑える治療として、遺伝子組み換え型のインターフェロン・ベータ・ベータに再発抑制の効果が認められて来ている。このインターフェロン・ベータ・ベータには、インターフェロン・ベータ1a(アボネックス)とインターフェロン・ベータ1b(ベタフェロン)が現在使われている。しかしながら、副作用として「インフルエンザ様症状」「注射部位反応」「頭痛」「疲労」「うつ」「乾癬」などがある上、薬物治療した患者群の2−3割に薬効が認められるものの、その他の患者群には薬効が認められないというのが現状である。すなわち、インターフェロン・ベータによる薬物治療によって、7−8割の患者群が再発頻度の減少、身体障害の進行遅延という効果が得られず単に副作用によって苦しめられるだけであるという大きな問題が残されている。治療開始後できるだけ早い時期に薬効の有無の予測ができれば、副作用に苦しむ患者の数を減らす事ができるようになり、そのような薬効の早期予測方法の開発が切に望まれていた。従来、予測検査方法として、磁気共鳴画像(MRI)検査、誘発電位検査、髄液検査等が用いられてきた。MRI検査は、造影剤の「ガドリニウム」を使うことで、活動している病巣と既に治った病巣の区別ができるなど非常に有用ではあるが、すべての病巣を写し出せるわけではない。誘発電位検査では、視覚、体性感覚、聴覚に刺激を与えた後神経伝達経路上を信号が伝わる速さと信号強度とを測定することで神経伝達経路上の病巣の有無を調べるものである。髄液検査は脳と脊髄の周囲を流れている脳脊髄液を採取して、髄液内のリンパ球や抗体(免疫グロブリンG ; IgG)、ミエリン塩基性タンパクの量を測定する事で病巣の有無を調べるものであり非常に有用ではあるが、背中に針を刺す必要があるなど患者に多大な負担をかけるものである。従来の予測検査方法では、インターフェロン・ベータによる薬物治療の初期における薬効の有無を簡便に調べることは、検出感度、患者への負担を考えると、非常に困難であった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、多発性硬化症の患者に対して、インターフェロン・ベータによる薬物治療を施した際に、薬効の有無を患者への負担を重くする事なく簡便かつ信頼性高く予測する方法を提供することにある。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意検討を行った結果、患者の末梢血由来の白血球中における特定の遺伝子群の発現量をDNAチップ等の簡便な方法で測定することにより薬効の有無を予測できる方法を見出し、本発明の完成に至った。
以下、具体的な課題の解決手段を説明する。
本発明は、多発性硬化症に対するインターフェロン・ベータ薬物治療の有効性予測方法において、被験者の末梢血白血球由来のメッセンジャーRNAから、インターフェロン誘導タンパク質、インターフェロン制御因子、ケモカインの、遺伝子の発現量を測定し、インターフェロン・ベータ投与の薬効の有無とインターフェロン誘導タンパク質、インターフェロン制御因子、ケモカインの遺伝子の発現量との相関が記録されたデータベースを用い、前記発現量の測定結果から、インターフェロン投与の薬効の有無を予測する予測方法である。
また、本発明は、前記インターフェロン誘導タンパク質の遺伝子のシンボル名がIFIT1、IFIT4、G1P3、ISG15から選択されるいずれかの遺伝子、前記インターフェロン制御因子の遺伝子のシンボル名がIRF1、IRF2、IRF3、IRF4、IRF5、IRF6、IRF7から選択されるいずれかの遺伝子、前記ケモカインのシンボル名がSCYA2、SCYA22、SCYA5、SCYB14、CCR5、CXCR3、CCR4、CCR3、CCR8、CXCR5、MIP−1α、MIG、IP−10、TARC、MDC、SDF−1から選択されるいずれかの遺伝子である、前記予測方法である。
また、本発明は、シンボル名がIL4、IL10、IL12A、IL12B、IL18から選択されるいずれかのインターロイキンの遺伝子、シンボル名がTGFA、TGFB1、TGFB2、TGFB3から選択されるいずれかのトランスフォーミング・グロース・ファクターの遺伝子に加えて、前記インターフェロン誘導タンパク質、インターフェロン制御因子、ケモカインの遺伝子の発現量を基に、前記薬物治療の効果を予測する事を特徴とする、前記予測方法である。
MSは、自己免疫疾患であり、免疫システムの誤動作が原因と推測されている。これに対して、インターフェロン・ベータは免疫システムの異常を修復するものと考えられており、サプレッサーT細胞の機能の改善、サイトカインの一種であるリンホトキシン、腫瘍壊死因子(TNF)、インターフェロン・ガンマ(INFγ)の産生を抑制し、反対に、トランスホーミンググロースファクター・ベータ(TGFβ)の産生を促進することがわかっている。サプレッサーT細胞はリンパ球の一種で、MSの患者ではその機能が低下している。T細胞、B細胞を中心に、それら複数の細胞間の信号のやり取りがネットワーク状に広がっている極めて複雑系である免疫システムの異常及びその修復状況を、前記サプレッサーT細胞、リンホトキシン、TNF、INFγ、TGFβ等の個々の動きを見ただけで判断する事は非常に危険であると考えられる。そこで、発明者らは、より広範に遺伝子群の動きを見ることで免疫システムの状況を知る方法の開発を行った。
最近、DNAアレイあるいはDNAチップとよばれる、配列の異なる多数のDNA断片を基板のそれぞれ異なる個所に固定したものに、遺伝子の発現状態を調べたい細胞から取り出したメッセンジャーRNAの逆転写物(蛍光標識あるいはラジオアイソトープ標識をしたもの)をふりかけ、ハイブリダイゼーションを行った後、それぞれの配列のDNA断片固定箇所にどの程度逆転写物がハイブリダイゼーションしたかを調べ、試料細胞中の遺伝子発現を調べる方法が注目されている。発明者らは、このDNAアレイの技術を用いて、インターフェロン・ベータによる薬物治療により発現量が変動する遺伝子群を網羅的に調べた。
【0005】
サンプルとして免疫システムを担う白血球を末梢血より採取する事にした。末梢血より得られるサンプルを用いる事は、被験者の負担を大きく緩和する意味で重要である。MRI検査、誘発電位検査、髄液検査及び臨床所見により総合的に判断して再発寛解型MSと認められた患者群10名の協力を仰ぎ、インターフェロン・ベータによる薬物治療前後の発現量が変動する遺伝子群をDNAチップを用いて網羅的に調べた。DNAチップとして、サイトカイン、信号伝達、グロースファクター、オンコジーン、アポトーシス等に関連するヒト遺伝子約1260種類を搭載したDNAチップ(日立製作所社製薬物応答解析用DNAチップ)を使用した。患者群からの採血の時期は、治療開始前、治療開始後3ヵ月後、及び治療開始後6ヵ月後の3点とした。一方、健常者のボランティアを3名募り、患者の場合と同様に末梢血を採取して白血球よりRNAサンプルを抽出した後、3名のサンプルを混合し、これをインビトロ・トランスクリプションを利用してRNA増幅反応を行い、増幅したRNAを参照サンプルとした。この参照サンプルは、すべての患者サンプルに対する共通の参照サンプルとして用いた。
【0006】
患者群からの採血により得られた白血球からトライゾール(ライフテック社製)を用いてトータルRNAを抽出し、Cy5−dCTPを用いた逆転写反応によりCy5で標識したcDNAを合成した。一方、健常者由来の参照サンプルについてはCy3−dCTPを用いた逆転写反応によりCy3で標識したcDNAを合成した。これらのcDNAを等量混合した後、前記DNAチップにかけてハイブリダイゼーションを62℃、12時間行った。洗浄後スキャナー(GSI−Lumonics社製ScanArray 5000)により各スポットの蛍光強度を測定し、患者由来サンプルと参照サンプルとの各遺伝子における発現量の比を求めた。すべてのDNAチップを用いた発現比較実験では、共通の参照サンプルに対する発現量の比を求めているため、患者間あるいは同一患者における採血時期による発現量の変化を求める事が容易にできる。
【0007】
解析の方法は次の通りである。各患者群において、治療開始前に比べてインターフェロン・ベータによる薬物治療を開始した後(3ヵ月後及び6ヵ月後)に発現量が変化した遺伝子群を抽出した。同様に、治療開始後3ヵ月後と6ヵ月後の比較においても、変動遺伝子群を抽出した。抽出方法としては、時系列の異なる各10サンプルの2群間においてT検定を行い、個人間(サンプル間)の差を考慮しても2群間で統計的に有意に発現変動している遺伝子群を選び出すという方法を用いた。T検定には、A. Longらがジャーナル・オブ・バイオケミストリー276巻19937−19944頁(2001年)に報告しているベイズ推定法とT検定を組み合わせた方法を用い、偽陽性の許容値は0.25とした。その結果を表1にまとめて示す。 前記各2群間で有意な発現量の差が認められた遺伝子群を合わせて変動遺伝子群を選び出した。選び出した変動遺伝子群を表2に示す。選び出された遺伝子をみると、インターフェロン誘導タンパク質、インターフェロン制御因子、ケモカイン関連の遺伝子が選び出されている事が分かる。これらの遺伝子群が、インターフェロン・ベータによって顕著に影響を受けてその発現量を変化させたものと判断される。
【0008】
【表1】
Figure 2004028926
【表2】
Figure 2004028926
次に、抽出した遺伝子群に対して、各患者ごと、各採血時期における発現量を並べることでマトリックスを形成し、これを基に10名の患者群をグループ分けするクラスタ解析を試みた。解析には、クラスタ間の重み無し平均ユークリッド距離を基にした凝集型と分離型階層クラスタリング法を用いた。得られた樹状図を図1に示す。縦軸(height)は、クラスタ間の距離の目安となるものである。図1より明らかのように、いずれのアルゴリズムを用いた場合でも、患者No.10だけが他9名の患者群と階層が異なっている事がわかる。臨床データと照合してみると、患者No.10だけが、臨床的に見て治療効果が顕著に認められていることがわかった。したがって、インターフェロン・ベータによる薬物治療によって統計的に見て有意に発現が変動する遺伝子群をマーカーとして、クラスタ解析する事で、治療効果が顕著に認められる患者を選別できたことが明白である。
【0009】
さらに、多発性硬化症が自己免疫疾患と考えられる事から、マーカー遺伝子群に、CCR5、CXCR3、CCR4、CCR3、CCR8、CXCR5、MIP−1α、IP−10、TARC、MDC、SDF−1のケモカインのリガンド、レセプター類の遺伝子、及びIL4、IL10、IL12A、IL12B、IL18のインターロイキン遺伝子、さらに、TGFA、TGFB1、TGFB2、TGFB3のトランスフォーミング・グロース・ファクター遺伝子を追加して、前記と同様に10名の患者群をクラスタリングする事を試みた。結果を図2に示す。患者群の階層分けの結果は、やはり、患者No.10だけが他9名の患者群と異なっているという前記クラスタリングの結果と変化はないが、クラスタリングの階層分けがどれだけ明瞭にできたかを現す指標である凝集係数(Agglomerative coefficient)や分割係数(Divisive coefficient)は、ケモカイン類、インターロイキン類、及びトランスフォーミング・グロース・ファクター類の遺伝子を追加する事でより1に近づいている事から、より一層階層分けが明瞭にできるようになっていることが判明した。以上述べたように、特定の遺伝子群をマーカーとして、患者群の遺伝子発現変動を統計的に解析する事によって、明瞭に、インターフェロン・ベータによる薬物治療の薬効の有無を明確に判断出来ることが明らかとなった。本発明は、上記実験結果に基づき完成されたものである。本発明の概念図を図3に示す。本発明では、被験者の抹消血を採取しRNAを抽出して、その発現プロファイルを調べることでインターフェロン・ベータによる薬物治療の薬効の有無を調べるものである。採取する血液量は、2cc程度でも、RNA増幅反応を行えば十分に解析できる。本発明で用いられる、遺伝子の発現量を調べる方法は、DNAチップに限られるものではなく、定量的PCR法、ノーザンブロット法等も使用できる事は明白である。
データの解析方法としては、クラスタリングに限定されるものではなく、サポートベクターマシン等の機械学習のアルゴリズムも使用できる。解析方法が教師付きアルゴリズムか教師無しアルゴリズムかにかかわらず、本発明では、発現データと臨床データを結びつけたデータベースを参照することで被験者の薬効の有無を判断するため、被験者のデータを随時追加することでデータベースがより一層充実したものになり、薬効の有無をより一層正確に判断することができるようになる。この点も、本発明の予測方法の大きな特徴である。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の形態について、以下具体例を示して詳細に説明する。
(実施例1)
薬効の有無が臨床的に明確になった患者群のデータをデータベースとして持ち、薬効の有無をこれから予測しようとする被験者の発現解析結果を、前記データベースと照らし合わせて解析する事で、被験者の薬効予測を行った例を記す。
事前のデータには、前記課題を解決するための手段で述べた10名のデータを用い、インターフェロン・ベータによる治療を開始した5名について薬効予測を行った。新規被験者である5名については、MRI検査、誘発電位検査、髄液検査及び臨床所見により総合的に判断して再発寛解型MSと認められる患者で、治療前、治療開始後3ヶ月の採血時期がいずれも寛解期にあたり、比較的症状の落ち着いている時期にあたる患者に協力していただいた。各患者から末梢血を2ミリリットル、PAXgene Blood RNA System(キアゲン社製)を用いて採取し、トータルRNAを抽出した。トータルRNAの収量は、5−10マイクログラムであった。
次に、トータルRNA5マイクログラムに対して、T7プロモータ配列を付加したオリゴ(dT)24プライマーをアニールさせ、まず、First strand DNA合成を行った。次に、このFirst strand DNAを鋳型にして、T7プロモータ配列を有するSecond strand DNAを合成した。最後にSecond strand DNAを鋳型にして、T7 RNA polymeraseによるRNA合成を行った。
次に、前記増幅したRNA6マイクログラムに対し、ランダムヘキサマーをアニールさせ逆転写酵素反応を行い、Cy5−dCTPを鎖中に取り込ませることで蛍光標識した。
コントロールサンプルは次のようにして作製した。健常者3名のボランティアを募り、各ボランティアから末梢血を4ミリリットル、PAXgene Blood RNA System(キアゲン社製)を用いて採血し、トータルRNAを抽出した。3名のトータルRNA各10マイクログラムを混合した後、前記RNA増幅反応及び逆転写反応により、Cy3で蛍光標識をしたcDNAを合成し、共通のコントロールサンプルとした。
それぞれの患者サンプルから作製したCy5−cDNAと、共通コントロールサンプルのCy3−cDNAを4マイクログラムずつ等量混合した後、前記DNAチップ(日立製作所社製薬物応答解析用DNAチップ)にかけハイブリダイゼーションを62℃のもと12時間行った。洗浄後スキャナー(GSI−Lumonics社製ScanArray 5000)により各スポットの蛍光強度を測定し、数値化ソフトウエア(GSI−Lumonics社製QuantArray)を用いて各遺伝子におけるコントロールサンプルと各患者サンプルとの発現強度比を求めた。
【0011】
これら5名の被験者のデータと、前記
【課題を解決するための手段】で述べた10名のデータを合わせて、総サンプル数15に対して、表1に記載した遺伝子に加え、CCR5、CXCR3、CCR4、CCR3、CCR8、CXCR5、MIP−1α、IP−10、TARC、MDC、SDF−1、IL4、IL10、IL12A、IL12B、IL18、TGFA、TGFB1、TGFB2、TGFB3の遺伝子の発現量の経時変化を指標として、凝集型階層クラスタリング解析を行った。用いたデータは、採血時期が治療前と治療後3ヶ月後のものである。結果を図4に示す。患者の識別番号は、前記課題を解決するための手段で述べた10名については、そのままNo.1からNo.10と表記し、新たな被験者5名については、A、B、C、D、Eと表記した。図4から明らかなように、新たな被験者5名中DだけがNo.10と非常に近いグループに分けられており、他の4名は異なるグループに分けられている。前記課題を解決するための手段で述べたように、すでに、No.10の患者には十分な薬効が認められている事から、新たな被験者5名中Dの患者に対してもインターフェロン・ベータの薬効が有るものと予測される。
【0012】
一方、新たな被験者5名についての、MRI検査及び臨床所見によると、患者Dについてのみ、インターフェロン・ベータ治療開始後6ヶ月の時点において、症状の改善が著しい事が分かった。
【0013】
以上のように、遺伝子発現による薬効予測は、MRI検査及び臨床所見による結果と非常によい一致を示し、本発明の有効性が非常に高い事が示された。
【0014】
【発明の効果】
本発明は、多発性硬化症の患者の末梢血由来の白血球中における特定の遺伝子群の発現量をDNAチップ等の簡便な方法で測定することにより薬効の有無を予測できる方法に関する検討結果をもとに完成されたものであって、本発明の予測方法を用いることで、簡便で、精度良くインターフェロン・ベータによる治療の有効性を予測することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】階層クラスタリングの解析結果。
【図2】階層クラスタリングの解析結果。
【図3】本発明の概念図。
【図4】階層クラスタリングの解析結果。

Claims (6)

  1. 被験者の末梢血白血球由来のメッセンジャーRNAサンプルを蛍光標識し、
    前記蛍光標識されたサンプルを、インターフェロン誘導タンパク質、インターフェロン制御因子、ケモカインの遺伝子のプローブと混合してハイブリダイゼーションを行い、
    前記サンプルの、前記インターフェロン誘導タンパク質、インターフェロン制御因子、ケモカインの遺伝子発現量を、前記蛍光を検出することにより測定し、インターフェロン・ベータ投与の薬効と、前記インターフェロン誘導タンパク質、インターフェロン制御因子、ケモカインの遺伝子の発現量との相関データを有するデータベースを参照し、
    前記発現量の測定結果と前記相関データとにより、前記被験者のインターフェロン・ベータ投与の薬効を予測することを特徴とする薬効予測方法。
  2. 前記インターフェロン誘導タンパク質の遺伝子のシンボル名がIFIT1、IFIT4、G1P3、ISG15から選択されるいずれかの遺伝子、前記インターフェロン制御因子の遺伝子のシンボル名がIRF1、IRF2、IRF3、IRF4、IRF5、IRF6、IRF7から選択されるいずれかの遺伝子、前記ケモカインのシンボル名がSCYA2、SCYA22、SCYA5、SCYB14、CCR5、CXCR3、CCR4、CCR3、CCR8、CXCR5、MIP−1α、MIG、IP−10、TARC、MDC、SDF−1から選択されるいずれかの遺伝子である、請求項1記載の薬効予測方法。
  3. 前記プローブが、更に、シンボル名がIL4、IL10、IL12A、IL12B、IL18から選択されるいずれかのインターロイキンの遺伝子、シンボル名がTGFA、TGFB1、TGFB2、TGFB3から選択されるいずれかのトランスフォーミング・グロース・ファクターの遺伝子を有し、
    前記データベースが、更に、インターフェロン・ベータ投与の薬効と、前記インターロイキンの遺伝子、トランスフォーミング・グロース・ファクターの遺伝子の発現量との相関データを有することを特徴とする、請求項2記載の薬効予測方法。
  4. インターフェロン・ベータ投与により発現量の変化する、インターフェロン誘導タンパク質の遺伝子、インターフェロン制御因子の遺伝子、ケモカインの遺伝子のプローブを基板に固定したことを特徴とする、インターフェロン・ベータ投与の薬効を予測するためのオリゴヌクレオチドアレイ。
  5. 前記インターフェロン誘導タンパク質の遺伝子のシンボル名がIFIT1、IFIT4、G1P3、ISG15から選択されるいずれかの遺伝子、前記インターフェロン制御因子の遺伝子のシンボル名がIRF1、IRF2、IRF3、IRF4、IRF5、IRF6、IRF7から選択されるいずれかの遺伝子、前記ケモカインのシンボル名がSCYA2、SCYA22、SCYA5、SCYB14、CCR5、CXCR3、CCR4、CCR3、CCR8、CXCR5、MIP−1α、MIG、IP−10、TARC、MDC、SDF−1から選択されるいずれかの遺伝子である、請求項4記載のオリゴヌクレオチドアレイ。
  6. 請求項5記載のオリゴヌクレオチドアレイにおいて、さらに、シンボル名がIL4、IL10、IL12A、IL12B、IL18から選択されるいずれかのインターロイキンの遺伝子、シンボル名がTGFA、TGFB1、TGFB2、TGFB3から選択されるいずれかのトランスフォーミング・グロース・ファクターの遺伝子を固定していることを特徴とするオリゴヌクレオチドアレイ。
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