JP2004028165A - 流体軸受装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】コスト低減
【解決手段】ハウジング7は、金属材料を射出成形して形成され、円筒状の側部7bと、側部7bの上端から内径側に一体に延びた環状のシール部7aとを備えている。底部材6は樹脂材料で形成され、ハウジング7の側部7bの下端に固定される。流体軸受装置1は、底部が開口した状態に形成されたハウジング7に軸受スリーブ8および底部材6を固定し、さらに軸部材2を装着することによって組み立てる。
【選択図】 図2
【解決手段】ハウジング7は、金属材料を射出成形して形成され、円筒状の側部7bと、側部7bの上端から内径側に一体に延びた環状のシール部7aとを備えている。底部材6は樹脂材料で形成され、ハウジング7の側部7bの下端に固定される。流体軸受装置1は、底部が開口した状態に形成されたハウジング7に軸受スリーブ8および底部材6を固定し、さらに軸部材2を装着することによって組み立てる。
【選択図】 図2
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、軸受隙間に生じる潤滑油の油膜で軸部材をラジアル方向に非接触支持する流体軸受装置に関する。この軸受装置は、情報機器、例えばHDD、FDD等の磁気ディスク装置、CD−ROM、CD−R/RW、DVD−ROM/RAM等の光ディスク装置、MD、MO等の光磁気ディスク装置などのスピンドルモータ、レーザビームプリンタ(LBP)のポリゴンスキャナモータ、あるいは電気機器、例えば軸流ファンなどの小型モータ用として好適である。
【0002】
【従来の技術】
上記各種モータには、高回転精度の他、高速化、低コスト化、低騒音化などが求められている。これらの要求性能を決定づける構成要素の一つに当該モータのスピンドルを支持する軸受があり、近年では、この種の軸受として、上記要求性能に優れた特性を有する流体軸受の使用が検討され、あるいは実際に使用されている。
【0003】
この種の流体軸受は、軸受隙間内の潤滑油に動圧を発生させる動圧発生手段を備えたいわゆる動圧軸受と、動圧発生手段を備えていないいわゆる真円軸受(軸受面が真円形状である軸受)とに大別される。
【0004】
例えば、HDD等のディスク装置のスピンドルモータやレーザビームプリンタ(LBP)のポリゴンスキャナモータに組込まれる流体軸受装置では、軸部材をラジアル方向に回転自在に非接触支持するラジアル軸受部と、軸部材をスラスト方向に回転自在に支持するスラスト軸受部とが設けられ、ラジアル軸受部として、軸受スリーブの内周面又は軸部材の外周面に動圧発生用の溝(動圧溝)を設けた動圧軸受が用いられる。スラスト軸受部としては、例えば、軸部材のフランジ部の両端面、又は、これに対向する面(軸受スリーブの端面や、ハウジングに固定されるスラスト部材の端面等)に動圧溝を設けた動圧軸受や、軸部材の一端面をスラストプレート等によって接触支持する構造の軸受(いわゆるピボット軸受)が用いられる。
【0005】
通常、軸受スリーブはハウジングの内周の所定位置に固定され、また、ハウジングの内部空間に注油した潤滑油が外部に漏れるのを防止するために、ハウジングの開口部にシール部材を配設する場合が多い。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
上記構成の流体軸受装置は、ハウジング、軸受スリーブ、軸部材、スラスト部材(又はスラストプレート)、及びシール部材といった部品で構成され、情報機器の益々の高性能化に伴って必要とされる高い軸受性能を確保すべく、各部品の加工精度や組立精度を高める努力がなされている。その一方で、情報機器の低価格化の傾向に伴い、この種の流体軸受装置に対するコスト低減の要求も益々厳しくなっている。
【0007】
本発明の課題は、より一層低コストな流体軸受装置を提供することである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため、本発明は、ハウジングと、ハウジングの内周に固定された軸受スリーブと、軸部材と、軸受スリーブの内周面と軸部材の外周面との間に設けられ、軸受隙間に生じる潤滑油の油膜で軸部材をラジアル方向に非接触支持するラジアル軸受部と、ハウジングの底部に設けられ、軸部材をスラスト方向に支持するスラスト軸受部とを備えた流体軸受装置において、ハウジングを金属材料の型成形により底部が開口した状態に形成すると共に、ハウジングの底部を樹脂製の底部材で形成した。
【0009】
また、上記課題を解決するため、本発明は、ハウジングと、ハウジングの内周に固定された軸受スリーブと、軸部材と、軸受スリーブの内周面と軸部材の外周面との間に設けられ、軸受隙間に生じる潤滑油の油膜で軸部材をラジアル方向に非接触支持するラジアル軸受部と、ハウジングの開口部に設けられ、軸部材の外周面との間にシール空間を形成するシール部とを備えた流体軸受装置において、ハウジングを金属材料の型成形により形成すると共に、シール部を樹脂製のシール部材で形成した。
【0010】
上記の金属材料として、例えばアルミ合金、マグネシウム合金、ステンレス鋼等を用いることができる。また、上記の型成形として、例えばダイキャスト成形、射出成形、金属板のプレス加工(板材又はパイプ材の絞り成形)等の成形法を採用することができる。
【0011】
ハウジングを金属材料で型成形することにより、旋削加工等で形成する場合に比べて、製造コスト低減を図ることができる。また、底部を樹脂製の底部材で形成し、あるいは、シール部を樹脂製のシール部材で形成することにより、これら部材の製造コスト低減を図ることができると同時に、これら部材を例えばハウジングに超音波溶着、誘導加熱、圧入等によって固定することにより、組立工程を簡素化して、製造コスト低減を図ることができる。さらに、ハウジングの底部を樹脂製の底部材で形成した構成では、軸部材の端面を底部材でスラスト方向に支持することができるので、従来、ハウジングの底部に別途配置していた樹脂製のスラストプレートを不要にして、部品点数の削減を図ることができる。また、ハウジングの底部に動圧溝を形成して動圧軸受を構成する場合、該動圧溝を樹脂製の底部材と同時成形することにより、製造工程の簡略化を図ることができる。
【0012】
ハウジングを金属材料で射出成形する場合、成形方法として、メタル・インジェクション・モールディング(MIM:Metal Injection Molding)法やチクソモールディング法を採用することができる。MIM法は、一般に、金属粉末と樹脂バインダとを混練後、金型に射出して成形し、続いて脱脂してバインダを除いた成形体を焼結して完成品とする成形法であり(焼結後、必要に応じて後処理を行う。)、次のような特長を有している。すなわち、▲1▼複雑な形状の小物部品をニア・ネット・シェイプで形成することができ、▲2▼金型形状を転写し同一形状のものを量産することができ、▲3▼成型時の収縮率、脱脂・焼結時の収縮率などを見極めることにより、寸法精度の高い部品を生産することができ、▲4▼金型形状を転写するので、金型の仕上精度と同一の面精度(面粗度等)を確保することができ、▲5▼ステンレス鋼等の難加工材のニア・ネット・シェイプ化が可能である。また、チクソモールディング法は、マグネシウム合金等のチップをシリンダー内で半溶融状態まで加熱し、スクリューで攪拌してスラリー状としてノズルから射出成形するものである。チクソモールディング法は、寸法精度の高い部品を生産することができると共に、SF6ガスのような防燃ガスが不要であるため、地球環境にやさしいプロセスである。
【0013】
ハウジングを成形する金属材料として、マグネシウム合金を用いることにより流体軸受装置のより一層の軽量化を図ることができる。マグネシウム合金は、実用金属中、比重の最も小さい金属であり、その比重は約1.8で、鉄の約4分の1、アルミニウム合金と比べても約3分の2と軽量である。また、アルミニウム合金等と比較して、薄肉成形性に優れている。
【0014】
さらに、マグネシウム合金は放熱性が良く、マグネシウム合金からなるハウジングを備えた本発明の流体軸受装置は、特に情報機器に搭載されるスピンドルモータの回転支持部に好適である。例えばパソコンでは、CPU(中央演算処理装置)のクロック周波数が急速に向上していることに伴い、パソコン内部に熱がこもり易くなっており、ディスク駆動装置等に組み込まれる流体軸受装置の運転環境も厳しさを増している。また、ディスク駆動装置等の高速化に伴い、軸受自身の内部発熱量も多くなり易い傾向にある。一方、流体軸受装置の内部に熱が蓄積されると、潤滑油の劣化が促進され、軸受寿命の低下をきたす一因となる。流体軸受装置のハウジングを放熱性の良いマグネシウム合金で形成することにより、流体軸受装置の内部に熱が蓄積されるのを抑制して、軸受寿命の低下を防止することができる。
【0015】
また、マグネシウム合金は、再溶解、精錬することによって品質の低下は殆どなく、リサイクル性に優れている。従って、流体軸受装置のハウジングをマグネシウム合金で形成することは、環境負荷を軽減する点からも好ましい。
【0016】
以上の構成において、軸受スリーブは焼結金属で形成することができ、また、ラジアル軸受部は、軸受隙間内の潤滑油に動圧を発生させる動圧軸受とすることができる。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態について説明する。
【0018】
図1は、この実施形態に係る流体軸受装置1を組み込んだ情報機器用スピンドルモータの一構成例を示している。このスピンドルモータは、HDD等のディスク駆動装置に用いられるもので、軸部材2を回転自在に支持する流体軸受装置1と、軸部材2に装着されたディスクハブ3と、例えば半径方向のギャップを介して対向させたモータステータ4およびモータロータ5とを備えている。ステータ4はケーシング6の外周に取付けられ、ロータ5はディスクハブ3の内周に取付けられる。流体軸受装置1のハウジング7は、ケーシング6の内周に装着される。ディスクハブ3には、磁気ディスク等のディスクDが一又は複数枚保持される。ステータ4に通電すると、ステータ4とロータ5との間の励磁力でロータ5が回転し、それによって、ディスクハブ3および軸部材2が一体となって回転する。
【0019】
図2は、流体軸受装置(流体動圧軸受装置)1を示している。この流体軸受装置1は、ハウジング7と、軸受スリーブ8と、軸部材2と、ハウジング7の底部を形成する底部材6を構成部品して構成される。
【0020】
軸受スリーブ8の内周面8aと軸部材2の外周面2aとの間に第1ラジアル軸受部R1と第2ラジアル軸受部R2とが軸方向に離隔して設けられる。また、軸部材2の下側端面2bと底部材6の端面との間にスラスト軸受部S1が設けられる。尚、説明の便宜上、底部材6の側を下側、底部材6と反対の側を上側として説明を進める。
【0021】
軸部材2は、例えば、ステンレス鋼等の金属材で形成され、その下側端面2bは凸球状に形成される。
【0022】
軸受スリーブ8は、例えば、焼結金属からなる多孔質体、特に銅を主成分とする燒結金属の多孔質体で円筒状に形成される。この焼結金属で形成された軸受スリーブ8の内周面8aには、第1ラジアル軸受部R1と第2ラジアル軸受部R2のラジアル軸受面となる上下2つの領域が軸方向に離隔して設けられ、該2つの領域には、例えばヘリングボーン形状の動圧溝がそれぞれ形成される。尚、動圧溝の形状として、スパイラル形状や軸方向溝形状等を採用しても良い。
【0023】
ハウジング7は、例えば、マグネシウム合金等の金属材料を射出成形(メタル・インジェクション・モールディング又はチクソモールディング)して形成され、円筒状の側部7bと、側部7bの上端から内径側に一体に延びた環状のシール部7aとを備えている。シール部7aの内周面7a1は、軸部材2の外周面2a1と所定のシール空間を介して対向する。尚、この実施形態では、シール部7aの内周面7a1と対向してシール空間を形成する軸部材2の外周面2a1を、上方(ハウジング7の外方向)に向かって漸次縮径するテーパ形状に形成している。軸部材2の回転時、テーパ形状の外周面2a1は、いわゆる遠心力シールとしても機能する。
【0024】
底部材6は樹脂材料で形成され、ハウジング7の側部7bの下端に固定される。
【0025】
この実施形態の流体軸受装置1は、上記の型成形により底部が開口した状態に形成されたハウジング7に軸受スリーブ8および底部材6を固定し、さらに軸部材2を装着することによって組み立てることができる。
【0026】
まず、軸受スリーブ8をハウジング7の開口した底部から側部7bの内周面に装着し、上側端面がシール部7aの内面と当接するまで推し進める。そして、その位置で、軸受スリーブ8を接着、圧入、レーザビーム溶接、高周波パルス接合等の適宜の手段でハウジング7に固定する。つぎに、ハウジング7の側部7bの下端に樹脂製の底部材6を適宜の手段で固定する。この実施形態では、側部7bの下端に環状のリブ7b1を形成すると共に、底部材6の端面に環状の凹部6aを形成し、凹部6aをリブ7b1に嵌合させた状態で、底部材6を側部7bの下端に装着し、超音波溶着又は誘導加熱によって固着している。尚、底部材6の固着状態を強固ならしめるため、リブ7b1の内周面及び外周面のうち少なくとも一方にねじ状の凹凸やローレット加工等による凹凸を形成しておくのが好ましい。また、リブ7b1と凹部6aは相互に嵌合するものであれば、円周方向に非連続なものであってもよい。その後、軸部材2を軸受スリーブ8の内周面8aに挿入して、その下側端面2bを底部材6の端面に接触させる。そして、シール部7aで密封されたハウジング7の内部空間に潤滑油を給油する。
【0027】
軸部材2の回転時、軸受スリーブ8の内周面8aのラジアル軸受面となる領域(上下2箇所の領域)は、それぞれ、軸部材2の外周面2aとラジアル軸受隙間を介して対向する。そして、軸部材2の回転に伴い、上記ラジアル軸受隙間に潤滑油の動圧が発生し、軸部材2が上記ラジアル軸受隙間内に形成される潤滑油の油膜によってラジアル方向に回転自在に非接触支持される。これにより、軸部材2をラジアル方向に回転自在に非接触支持する第1ラジアル軸受部R1と第2ラジアル軸受部R2とが構成される。同時に、軸部材2の下側端面2bが底部材6によって接触支持される。これにより、軸部材2をスラスト方向に回転自在に支持するスラスト軸受部S1が構成される。
【0028】
図3は、図2に示す実施形態の変形例を示している。この変形例では、樹脂製の底部材9をハウジング7の側部7bの下端内周に圧入固定している。
【0029】
図4は、他の実施形態に係る流体軸受装置11を示している。この実施形態の流体軸受装置11が図2に示す流体軸受装置1と異なる点は、ハウジング17に底部17cを一体形成している点、軸部材2の下側端面2bをスラストプレート20によって接触支持している点、ハウジング17の上端開口部に樹脂製のシール部材10を装着している点である。シール部材10は、軸部材2の外周面2a1と対向してシール空間を形成する内周面10bを備えている。
【0030】
ハウジング17は、例えば、マグネシウム合金等の金属材料を射出成形(メタル・インジェクション・モールディング又はチクソモールディング)して形成され、円筒状の側部17bと、側部17bの下端と一体に連続した底部17cとを備えている。
【0031】
スラストプレート20は、低摩擦材、例えば樹脂材で形成され、ハウジング17の底部17cに配置される。
【0032】
この実施形態の流体軸受装置11は、上記の型成形により上端が開口した状態に形成されたハウジング17に軸受スリーブ8およびシール部材10を固定し、さらにスラストプレート20および軸部材2を装着することによって組み立てることができる。
【0033】
まず、軸受スリーブ8をハウジング17の上端開口部から側部17bの内周面に装着し、下側端面が底部17cの内面と当接するまで推し進める。そして、その位置で、軸受スリーブ8を接着、圧入、レーザビーム溶接、高周波パルス接合等の適宜の手段でハウジング17に固定する。つぎに、ハウジング17の側部17bの上端に樹脂製のシール部材10を適宜の手段で固定する。この実施形態では、側部17bの上端に環状のリブ17b1を形成すると共に、シール部材10の端面に環状の凹部10aを形成し、凹部10aをリブ17b1に嵌合させた状態で、シール部材10を側部17bの上端に装着し、超音波溶着又は誘導加熱によって固着している。尚、シール部材10の固着状態を強固ならしめるため、リブ17b1の内周面及び外周面のうち少なくとも一方にねじ状の凹凸やローレット加工等による凹凸を形成しておくのが好ましい。また、リブ17b1と凹部10aは相互に嵌合するものであれば、円周方向に非連続なものであってもよい。その後、ハウジング17の底部17cにスラストプレート20を装着し、さらに軸部材2を軸受スリーブ8の内周面8aに挿入して、その下側端面2bをスラストプレート20の端面に接触させる。そして、シール部材10で密封されたハウジング17の内部空間に潤滑油を給油する。
【0034】
図5は、他の実施形態に係る流体軸受装置21を示している。この流体軸受装置21は、ハウジング27と、軸受スリーブ28と、軸部材22と、ハウジング27の底部を構成する底部材26を構成部品して構成される。
【0035】
軸受スリーブ28の内周面28aと軸部材22の軸部22aの外周面22a1との間に第1ラジアル軸受部R21と第2ラジアル軸受部R22とが軸方向に離隔して設けられる。また、軸受スリーブ28の下側端面28cと軸部材22のフランジ部22bの上側端面22b1との間に第1スラスト軸受部S21が設けられ、底部材26の端面26aとフランジ部22bの下側端面22b2との間に第2スラスト軸受部S22が設けられる。
【0036】
軸部材22は、例えば、ステンレス鋼等の金属材で形成され、軸部22aと、軸部22aの下端に一体又は別体に設けられたフランジ部22bとを備えている。
【0037】
軸受スリーブ28は、例えば、焼結金属からなる多孔質体、特に銅を主成分とする燒結金属の多孔質体で円筒状に形成される。
【0038】
この焼結金属で形成された軸受スリーブ28の内周面28aには、第1ラジアル軸受部R21と第2ラジアル軸受部R22のラジアル軸受面となる上下2つの領域が軸方向に離隔して設けられ、該2つの領域には、例えばヘリングボーン形状の動圧溝がそれぞれ形成される。尚、動圧溝の形状として、スパイラル形状や軸方向溝形状等を採用しても良い。
【0039】
また、第1スラスト軸受部S21のスラスト軸受面となる、軸受スリーブ28の下側端面28cには、例えばスパイラル形状の動圧溝が形成される。尚、動圧溝の形状として、ヘリングボーン形状や放射溝形状等を採用しても良い。
【0040】
ハウジング27は、例えば、マグネシウム合金等の金属材料を射出成形(メタル・インジェクション・モールディング又はチクソモールディング)して形成され、円筒状の側部27bと、側部27bの上端から内径側に一体に延びた環状のシール部27aとを備えている。シール部27aの内周面27a1は、軸部材22の外周面22a1と所定のシール空間を介して対向する。尚、この実施形態では、シール部27aの内周面27a1と対向してシール空間を形成する軸部材22の外周面22a1を、上方(ハウジング27の外方向)に向かって漸次縮径するテーパ形状に形成している。
【0041】
底部材26は樹脂材料で形成され、ハウジング27の側部27bの下端に固定される。第2スラスト軸受部S22のスラスト軸受面となる、底部材26の端面26aには、例えばヘリングボーン形状の動圧溝が形成される。底部材26を樹脂の射出成形で形成する場合、端面26aの動圧溝を成形と同時に形成(成形金型で転写)することができる。また、動圧溝の形状として、スパイラル形状や放射溝形状等を採用しても良い。尚、底部材26のハウジング27に対する固定は、図2に示す実施形態と同様の態様で行うことができる。あるいは、図3に示す実施形態と同様の態様で行うこともできる。
【0042】
軸部材22の軸部22aは軸受スリーブ28の内周面28aに挿入され、フランジ部22bは軸受スリーブ28の下側端面28cと底部材26の端面26aとの間の空間部に収容される。また、シール部27aで密封されたハウジング27の内部空間には潤滑油が給油される。
【0043】
軸部材22の回転時、軸受スリーブ28の内周面28aのラジアル軸受面となる領域(上下2箇所の領域)は、それぞれ、軸部22aの外周面22a1とラジアル軸受隙間を介して対向する。また、軸受スリーブ28の下側端面28cのスラスト軸受面となる領域はフランジ部22bの上側端面22b1とスラスト軸受隙間を介して対向し、底部材26の端面26aのスラスト軸受面となる領域はフランジ部22bの下側端面22b2とスラスト軸受隙間を介して対向する。そして、軸部材22の回転に伴い、上記ラジアル軸受隙間に潤滑油の動圧が発生し、軸部材22の軸部22aが上記ラジアル軸受隙間内に形成される潤滑油の油膜によってラジアル方向に回転自在に非接触支持される。これにより、軸部材22をラジアル方向に回転自在に非接触支持する第1ラジアル軸受部R21と第2ラジアル軸受部R22とが構成される。同時に、上記スラスト軸受隙間に潤滑油の動圧が発生し、軸部材22のフランジ部22bが上記スラスト軸受隙間内に形成される潤滑油の油膜によって両スラスト方向に回転自在に非接触支持される。これにより、軸部材22をスラスト方向に回転自在に非接触支持する第1スラスト軸受部S21と第2スラスト軸受部S22とが構成される。
【0044】
尚、スラスト軸受部に動圧軸受を採用した流体軸受装置に対して、図4に示す実施形態に準じて、ハウジングの上端開口部に樹脂製のシール部材を固定する構成を適用することもできる。
【0045】
【発明の効果】
本発明によれば、より一層低コストで軽量な流体軸受装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態に係る流体軸受装置を有するスピンドルモータの断面図である。
【図2】本発明の実施形態に係る流体軸受装置を示す断面図である。
【図3】図2に示す実施形態の変形例に係る流体軸受装置を示す断面図である。
【図4】本発明の他の実施形態に係る流体軸受装置を示す断面図である。
【図5】本発明の他の実施形態に係る流体軸受装置を示す断面図である。
【符号の説明】
1、11、21 流体軸受装置
2、22 軸部材
7、17、27 ハウジング
8、28 軸受スリーブ
R1、R21 第1ラジアル軸受部
R2、R22 第2ラジアル軸受部
S1、S21、S22 スラスト軸受部
6、26 底部材
10 シール部材
【発明の属する技術分野】
本発明は、軸受隙間に生じる潤滑油の油膜で軸部材をラジアル方向に非接触支持する流体軸受装置に関する。この軸受装置は、情報機器、例えばHDD、FDD等の磁気ディスク装置、CD−ROM、CD−R/RW、DVD−ROM/RAM等の光ディスク装置、MD、MO等の光磁気ディスク装置などのスピンドルモータ、レーザビームプリンタ(LBP)のポリゴンスキャナモータ、あるいは電気機器、例えば軸流ファンなどの小型モータ用として好適である。
【0002】
【従来の技術】
上記各種モータには、高回転精度の他、高速化、低コスト化、低騒音化などが求められている。これらの要求性能を決定づける構成要素の一つに当該モータのスピンドルを支持する軸受があり、近年では、この種の軸受として、上記要求性能に優れた特性を有する流体軸受の使用が検討され、あるいは実際に使用されている。
【0003】
この種の流体軸受は、軸受隙間内の潤滑油に動圧を発生させる動圧発生手段を備えたいわゆる動圧軸受と、動圧発生手段を備えていないいわゆる真円軸受(軸受面が真円形状である軸受)とに大別される。
【0004】
例えば、HDD等のディスク装置のスピンドルモータやレーザビームプリンタ(LBP)のポリゴンスキャナモータに組込まれる流体軸受装置では、軸部材をラジアル方向に回転自在に非接触支持するラジアル軸受部と、軸部材をスラスト方向に回転自在に支持するスラスト軸受部とが設けられ、ラジアル軸受部として、軸受スリーブの内周面又は軸部材の外周面に動圧発生用の溝(動圧溝)を設けた動圧軸受が用いられる。スラスト軸受部としては、例えば、軸部材のフランジ部の両端面、又は、これに対向する面(軸受スリーブの端面や、ハウジングに固定されるスラスト部材の端面等)に動圧溝を設けた動圧軸受や、軸部材の一端面をスラストプレート等によって接触支持する構造の軸受(いわゆるピボット軸受)が用いられる。
【0005】
通常、軸受スリーブはハウジングの内周の所定位置に固定され、また、ハウジングの内部空間に注油した潤滑油が外部に漏れるのを防止するために、ハウジングの開口部にシール部材を配設する場合が多い。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
上記構成の流体軸受装置は、ハウジング、軸受スリーブ、軸部材、スラスト部材(又はスラストプレート)、及びシール部材といった部品で構成され、情報機器の益々の高性能化に伴って必要とされる高い軸受性能を確保すべく、各部品の加工精度や組立精度を高める努力がなされている。その一方で、情報機器の低価格化の傾向に伴い、この種の流体軸受装置に対するコスト低減の要求も益々厳しくなっている。
【0007】
本発明の課題は、より一層低コストな流体軸受装置を提供することである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため、本発明は、ハウジングと、ハウジングの内周に固定された軸受スリーブと、軸部材と、軸受スリーブの内周面と軸部材の外周面との間に設けられ、軸受隙間に生じる潤滑油の油膜で軸部材をラジアル方向に非接触支持するラジアル軸受部と、ハウジングの底部に設けられ、軸部材をスラスト方向に支持するスラスト軸受部とを備えた流体軸受装置において、ハウジングを金属材料の型成形により底部が開口した状態に形成すると共に、ハウジングの底部を樹脂製の底部材で形成した。
【0009】
また、上記課題を解決するため、本発明は、ハウジングと、ハウジングの内周に固定された軸受スリーブと、軸部材と、軸受スリーブの内周面と軸部材の外周面との間に設けられ、軸受隙間に生じる潤滑油の油膜で軸部材をラジアル方向に非接触支持するラジアル軸受部と、ハウジングの開口部に設けられ、軸部材の外周面との間にシール空間を形成するシール部とを備えた流体軸受装置において、ハウジングを金属材料の型成形により形成すると共に、シール部を樹脂製のシール部材で形成した。
【0010】
上記の金属材料として、例えばアルミ合金、マグネシウム合金、ステンレス鋼等を用いることができる。また、上記の型成形として、例えばダイキャスト成形、射出成形、金属板のプレス加工(板材又はパイプ材の絞り成形)等の成形法を採用することができる。
【0011】
ハウジングを金属材料で型成形することにより、旋削加工等で形成する場合に比べて、製造コスト低減を図ることができる。また、底部を樹脂製の底部材で形成し、あるいは、シール部を樹脂製のシール部材で形成することにより、これら部材の製造コスト低減を図ることができると同時に、これら部材を例えばハウジングに超音波溶着、誘導加熱、圧入等によって固定することにより、組立工程を簡素化して、製造コスト低減を図ることができる。さらに、ハウジングの底部を樹脂製の底部材で形成した構成では、軸部材の端面を底部材でスラスト方向に支持することができるので、従来、ハウジングの底部に別途配置していた樹脂製のスラストプレートを不要にして、部品点数の削減を図ることができる。また、ハウジングの底部に動圧溝を形成して動圧軸受を構成する場合、該動圧溝を樹脂製の底部材と同時成形することにより、製造工程の簡略化を図ることができる。
【0012】
ハウジングを金属材料で射出成形する場合、成形方法として、メタル・インジェクション・モールディング(MIM:Metal Injection Molding)法やチクソモールディング法を採用することができる。MIM法は、一般に、金属粉末と樹脂バインダとを混練後、金型に射出して成形し、続いて脱脂してバインダを除いた成形体を焼結して完成品とする成形法であり(焼結後、必要に応じて後処理を行う。)、次のような特長を有している。すなわち、▲1▼複雑な形状の小物部品をニア・ネット・シェイプで形成することができ、▲2▼金型形状を転写し同一形状のものを量産することができ、▲3▼成型時の収縮率、脱脂・焼結時の収縮率などを見極めることにより、寸法精度の高い部品を生産することができ、▲4▼金型形状を転写するので、金型の仕上精度と同一の面精度(面粗度等)を確保することができ、▲5▼ステンレス鋼等の難加工材のニア・ネット・シェイプ化が可能である。また、チクソモールディング法は、マグネシウム合金等のチップをシリンダー内で半溶融状態まで加熱し、スクリューで攪拌してスラリー状としてノズルから射出成形するものである。チクソモールディング法は、寸法精度の高い部品を生産することができると共に、SF6ガスのような防燃ガスが不要であるため、地球環境にやさしいプロセスである。
【0013】
ハウジングを成形する金属材料として、マグネシウム合金を用いることにより流体軸受装置のより一層の軽量化を図ることができる。マグネシウム合金は、実用金属中、比重の最も小さい金属であり、その比重は約1.8で、鉄の約4分の1、アルミニウム合金と比べても約3分の2と軽量である。また、アルミニウム合金等と比較して、薄肉成形性に優れている。
【0014】
さらに、マグネシウム合金は放熱性が良く、マグネシウム合金からなるハウジングを備えた本発明の流体軸受装置は、特に情報機器に搭載されるスピンドルモータの回転支持部に好適である。例えばパソコンでは、CPU(中央演算処理装置)のクロック周波数が急速に向上していることに伴い、パソコン内部に熱がこもり易くなっており、ディスク駆動装置等に組み込まれる流体軸受装置の運転環境も厳しさを増している。また、ディスク駆動装置等の高速化に伴い、軸受自身の内部発熱量も多くなり易い傾向にある。一方、流体軸受装置の内部に熱が蓄積されると、潤滑油の劣化が促進され、軸受寿命の低下をきたす一因となる。流体軸受装置のハウジングを放熱性の良いマグネシウム合金で形成することにより、流体軸受装置の内部に熱が蓄積されるのを抑制して、軸受寿命の低下を防止することができる。
【0015】
また、マグネシウム合金は、再溶解、精錬することによって品質の低下は殆どなく、リサイクル性に優れている。従って、流体軸受装置のハウジングをマグネシウム合金で形成することは、環境負荷を軽減する点からも好ましい。
【0016】
以上の構成において、軸受スリーブは焼結金属で形成することができ、また、ラジアル軸受部は、軸受隙間内の潤滑油に動圧を発生させる動圧軸受とすることができる。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態について説明する。
【0018】
図1は、この実施形態に係る流体軸受装置1を組み込んだ情報機器用スピンドルモータの一構成例を示している。このスピンドルモータは、HDD等のディスク駆動装置に用いられるもので、軸部材2を回転自在に支持する流体軸受装置1と、軸部材2に装着されたディスクハブ3と、例えば半径方向のギャップを介して対向させたモータステータ4およびモータロータ5とを備えている。ステータ4はケーシング6の外周に取付けられ、ロータ5はディスクハブ3の内周に取付けられる。流体軸受装置1のハウジング7は、ケーシング6の内周に装着される。ディスクハブ3には、磁気ディスク等のディスクDが一又は複数枚保持される。ステータ4に通電すると、ステータ4とロータ5との間の励磁力でロータ5が回転し、それによって、ディスクハブ3および軸部材2が一体となって回転する。
【0019】
図2は、流体軸受装置(流体動圧軸受装置)1を示している。この流体軸受装置1は、ハウジング7と、軸受スリーブ8と、軸部材2と、ハウジング7の底部を形成する底部材6を構成部品して構成される。
【0020】
軸受スリーブ8の内周面8aと軸部材2の外周面2aとの間に第1ラジアル軸受部R1と第2ラジアル軸受部R2とが軸方向に離隔して設けられる。また、軸部材2の下側端面2bと底部材6の端面との間にスラスト軸受部S1が設けられる。尚、説明の便宜上、底部材6の側を下側、底部材6と反対の側を上側として説明を進める。
【0021】
軸部材2は、例えば、ステンレス鋼等の金属材で形成され、その下側端面2bは凸球状に形成される。
【0022】
軸受スリーブ8は、例えば、焼結金属からなる多孔質体、特に銅を主成分とする燒結金属の多孔質体で円筒状に形成される。この焼結金属で形成された軸受スリーブ8の内周面8aには、第1ラジアル軸受部R1と第2ラジアル軸受部R2のラジアル軸受面となる上下2つの領域が軸方向に離隔して設けられ、該2つの領域には、例えばヘリングボーン形状の動圧溝がそれぞれ形成される。尚、動圧溝の形状として、スパイラル形状や軸方向溝形状等を採用しても良い。
【0023】
ハウジング7は、例えば、マグネシウム合金等の金属材料を射出成形(メタル・インジェクション・モールディング又はチクソモールディング)して形成され、円筒状の側部7bと、側部7bの上端から内径側に一体に延びた環状のシール部7aとを備えている。シール部7aの内周面7a1は、軸部材2の外周面2a1と所定のシール空間を介して対向する。尚、この実施形態では、シール部7aの内周面7a1と対向してシール空間を形成する軸部材2の外周面2a1を、上方(ハウジング7の外方向)に向かって漸次縮径するテーパ形状に形成している。軸部材2の回転時、テーパ形状の外周面2a1は、いわゆる遠心力シールとしても機能する。
【0024】
底部材6は樹脂材料で形成され、ハウジング7の側部7bの下端に固定される。
【0025】
この実施形態の流体軸受装置1は、上記の型成形により底部が開口した状態に形成されたハウジング7に軸受スリーブ8および底部材6を固定し、さらに軸部材2を装着することによって組み立てることができる。
【0026】
まず、軸受スリーブ8をハウジング7の開口した底部から側部7bの内周面に装着し、上側端面がシール部7aの内面と当接するまで推し進める。そして、その位置で、軸受スリーブ8を接着、圧入、レーザビーム溶接、高周波パルス接合等の適宜の手段でハウジング7に固定する。つぎに、ハウジング7の側部7bの下端に樹脂製の底部材6を適宜の手段で固定する。この実施形態では、側部7bの下端に環状のリブ7b1を形成すると共に、底部材6の端面に環状の凹部6aを形成し、凹部6aをリブ7b1に嵌合させた状態で、底部材6を側部7bの下端に装着し、超音波溶着又は誘導加熱によって固着している。尚、底部材6の固着状態を強固ならしめるため、リブ7b1の内周面及び外周面のうち少なくとも一方にねじ状の凹凸やローレット加工等による凹凸を形成しておくのが好ましい。また、リブ7b1と凹部6aは相互に嵌合するものであれば、円周方向に非連続なものであってもよい。その後、軸部材2を軸受スリーブ8の内周面8aに挿入して、その下側端面2bを底部材6の端面に接触させる。そして、シール部7aで密封されたハウジング7の内部空間に潤滑油を給油する。
【0027】
軸部材2の回転時、軸受スリーブ8の内周面8aのラジアル軸受面となる領域(上下2箇所の領域)は、それぞれ、軸部材2の外周面2aとラジアル軸受隙間を介して対向する。そして、軸部材2の回転に伴い、上記ラジアル軸受隙間に潤滑油の動圧が発生し、軸部材2が上記ラジアル軸受隙間内に形成される潤滑油の油膜によってラジアル方向に回転自在に非接触支持される。これにより、軸部材2をラジアル方向に回転自在に非接触支持する第1ラジアル軸受部R1と第2ラジアル軸受部R2とが構成される。同時に、軸部材2の下側端面2bが底部材6によって接触支持される。これにより、軸部材2をスラスト方向に回転自在に支持するスラスト軸受部S1が構成される。
【0028】
図3は、図2に示す実施形態の変形例を示している。この変形例では、樹脂製の底部材9をハウジング7の側部7bの下端内周に圧入固定している。
【0029】
図4は、他の実施形態に係る流体軸受装置11を示している。この実施形態の流体軸受装置11が図2に示す流体軸受装置1と異なる点は、ハウジング17に底部17cを一体形成している点、軸部材2の下側端面2bをスラストプレート20によって接触支持している点、ハウジング17の上端開口部に樹脂製のシール部材10を装着している点である。シール部材10は、軸部材2の外周面2a1と対向してシール空間を形成する内周面10bを備えている。
【0030】
ハウジング17は、例えば、マグネシウム合金等の金属材料を射出成形(メタル・インジェクション・モールディング又はチクソモールディング)して形成され、円筒状の側部17bと、側部17bの下端と一体に連続した底部17cとを備えている。
【0031】
スラストプレート20は、低摩擦材、例えば樹脂材で形成され、ハウジング17の底部17cに配置される。
【0032】
この実施形態の流体軸受装置11は、上記の型成形により上端が開口した状態に形成されたハウジング17に軸受スリーブ8およびシール部材10を固定し、さらにスラストプレート20および軸部材2を装着することによって組み立てることができる。
【0033】
まず、軸受スリーブ8をハウジング17の上端開口部から側部17bの内周面に装着し、下側端面が底部17cの内面と当接するまで推し進める。そして、その位置で、軸受スリーブ8を接着、圧入、レーザビーム溶接、高周波パルス接合等の適宜の手段でハウジング17に固定する。つぎに、ハウジング17の側部17bの上端に樹脂製のシール部材10を適宜の手段で固定する。この実施形態では、側部17bの上端に環状のリブ17b1を形成すると共に、シール部材10の端面に環状の凹部10aを形成し、凹部10aをリブ17b1に嵌合させた状態で、シール部材10を側部17bの上端に装着し、超音波溶着又は誘導加熱によって固着している。尚、シール部材10の固着状態を強固ならしめるため、リブ17b1の内周面及び外周面のうち少なくとも一方にねじ状の凹凸やローレット加工等による凹凸を形成しておくのが好ましい。また、リブ17b1と凹部10aは相互に嵌合するものであれば、円周方向に非連続なものであってもよい。その後、ハウジング17の底部17cにスラストプレート20を装着し、さらに軸部材2を軸受スリーブ8の内周面8aに挿入して、その下側端面2bをスラストプレート20の端面に接触させる。そして、シール部材10で密封されたハウジング17の内部空間に潤滑油を給油する。
【0034】
図5は、他の実施形態に係る流体軸受装置21を示している。この流体軸受装置21は、ハウジング27と、軸受スリーブ28と、軸部材22と、ハウジング27の底部を構成する底部材26を構成部品して構成される。
【0035】
軸受スリーブ28の内周面28aと軸部材22の軸部22aの外周面22a1との間に第1ラジアル軸受部R21と第2ラジアル軸受部R22とが軸方向に離隔して設けられる。また、軸受スリーブ28の下側端面28cと軸部材22のフランジ部22bの上側端面22b1との間に第1スラスト軸受部S21が設けられ、底部材26の端面26aとフランジ部22bの下側端面22b2との間に第2スラスト軸受部S22が設けられる。
【0036】
軸部材22は、例えば、ステンレス鋼等の金属材で形成され、軸部22aと、軸部22aの下端に一体又は別体に設けられたフランジ部22bとを備えている。
【0037】
軸受スリーブ28は、例えば、焼結金属からなる多孔質体、特に銅を主成分とする燒結金属の多孔質体で円筒状に形成される。
【0038】
この焼結金属で形成された軸受スリーブ28の内周面28aには、第1ラジアル軸受部R21と第2ラジアル軸受部R22のラジアル軸受面となる上下2つの領域が軸方向に離隔して設けられ、該2つの領域には、例えばヘリングボーン形状の動圧溝がそれぞれ形成される。尚、動圧溝の形状として、スパイラル形状や軸方向溝形状等を採用しても良い。
【0039】
また、第1スラスト軸受部S21のスラスト軸受面となる、軸受スリーブ28の下側端面28cには、例えばスパイラル形状の動圧溝が形成される。尚、動圧溝の形状として、ヘリングボーン形状や放射溝形状等を採用しても良い。
【0040】
ハウジング27は、例えば、マグネシウム合金等の金属材料を射出成形(メタル・インジェクション・モールディング又はチクソモールディング)して形成され、円筒状の側部27bと、側部27bの上端から内径側に一体に延びた環状のシール部27aとを備えている。シール部27aの内周面27a1は、軸部材22の外周面22a1と所定のシール空間を介して対向する。尚、この実施形態では、シール部27aの内周面27a1と対向してシール空間を形成する軸部材22の外周面22a1を、上方(ハウジング27の外方向)に向かって漸次縮径するテーパ形状に形成している。
【0041】
底部材26は樹脂材料で形成され、ハウジング27の側部27bの下端に固定される。第2スラスト軸受部S22のスラスト軸受面となる、底部材26の端面26aには、例えばヘリングボーン形状の動圧溝が形成される。底部材26を樹脂の射出成形で形成する場合、端面26aの動圧溝を成形と同時に形成(成形金型で転写)することができる。また、動圧溝の形状として、スパイラル形状や放射溝形状等を採用しても良い。尚、底部材26のハウジング27に対する固定は、図2に示す実施形態と同様の態様で行うことができる。あるいは、図3に示す実施形態と同様の態様で行うこともできる。
【0042】
軸部材22の軸部22aは軸受スリーブ28の内周面28aに挿入され、フランジ部22bは軸受スリーブ28の下側端面28cと底部材26の端面26aとの間の空間部に収容される。また、シール部27aで密封されたハウジング27の内部空間には潤滑油が給油される。
【0043】
軸部材22の回転時、軸受スリーブ28の内周面28aのラジアル軸受面となる領域(上下2箇所の領域)は、それぞれ、軸部22aの外周面22a1とラジアル軸受隙間を介して対向する。また、軸受スリーブ28の下側端面28cのスラスト軸受面となる領域はフランジ部22bの上側端面22b1とスラスト軸受隙間を介して対向し、底部材26の端面26aのスラスト軸受面となる領域はフランジ部22bの下側端面22b2とスラスト軸受隙間を介して対向する。そして、軸部材22の回転に伴い、上記ラジアル軸受隙間に潤滑油の動圧が発生し、軸部材22の軸部22aが上記ラジアル軸受隙間内に形成される潤滑油の油膜によってラジアル方向に回転自在に非接触支持される。これにより、軸部材22をラジアル方向に回転自在に非接触支持する第1ラジアル軸受部R21と第2ラジアル軸受部R22とが構成される。同時に、上記スラスト軸受隙間に潤滑油の動圧が発生し、軸部材22のフランジ部22bが上記スラスト軸受隙間内に形成される潤滑油の油膜によって両スラスト方向に回転自在に非接触支持される。これにより、軸部材22をスラスト方向に回転自在に非接触支持する第1スラスト軸受部S21と第2スラスト軸受部S22とが構成される。
【0044】
尚、スラスト軸受部に動圧軸受を採用した流体軸受装置に対して、図4に示す実施形態に準じて、ハウジングの上端開口部に樹脂製のシール部材を固定する構成を適用することもできる。
【0045】
【発明の効果】
本発明によれば、より一層低コストで軽量な流体軸受装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態に係る流体軸受装置を有するスピンドルモータの断面図である。
【図2】本発明の実施形態に係る流体軸受装置を示す断面図である。
【図3】図2に示す実施形態の変形例に係る流体軸受装置を示す断面図である。
【図4】本発明の他の実施形態に係る流体軸受装置を示す断面図である。
【図5】本発明の他の実施形態に係る流体軸受装置を示す断面図である。
【符号の説明】
1、11、21 流体軸受装置
2、22 軸部材
7、17、27 ハウジング
8、28 軸受スリーブ
R1、R21 第1ラジアル軸受部
R2、R22 第2ラジアル軸受部
S1、S21、S22 スラスト軸受部
6、26 底部材
10 シール部材
Claims (6)
- ハウジングと、該ハウジングの内周に固定された軸受スリーブと、軸部材と、前記軸受スリーブの内周面と前記軸部材の外周面との間に設けられ、軸受隙間に生じる潤滑油の油膜で前記軸部材をラジアル方向に非接触支持するラジアル軸受部と、前記ハウジングの底部に設けられ、前記軸部材をスラスト方向に支持するスラスト軸受部とを備えた流体軸受装置において、
前記ハウジングを金属材料の型成形により底部が開口した状態に形成すると共に、前記ハウジングの底部を樹脂製の底部材で形成したことを特徴とする流体軸受装置。 - ハウジングと、該ハウジングの内周に固定された軸受スリーブと、軸部材と、前記軸受スリーブの内周面と前記軸部材の外周面との間に設けられ、軸受隙間に生じる潤滑油の油膜で前記軸部材をラジアル方向に非接触支持するラジアル軸受部と、前記ハウジングの開口部に設けられ、前記軸部材の外周面との間にシール空間を形成するシール部とを備えた流体軸受装置において、
前記ハウジングを金属材料の型成形により形成すると共に、前記シール部を樹脂製のシール部材で形成したことを特徴とする流体軸受装置。 - 前記ハウジングを金属材料の射出成形により形成したことを特徴とする請求項1又は2に記載の流体軸受装置。
- 前記金属材料がマグネシウム合金であることを特徴とする請求項1から3の何れかに記載の流体軸受装置。
- 前記軸受スリーブが焼結金属で形成されていることを特徴とする請求項1から4の何れかに記載の流体軸受装置。
- 前記ラジアル軸受部が、前記軸受隙間内の潤滑油に動圧を発生させる動圧軸受であることを特徴とする請求項1から5の何れかに記載の流体軸受装置。
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