JP2005273815A - 動圧軸受装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】 動圧軸受装置における部品の発錆を防止すると同時に、防錆処理後の脱脂処理を不要にして工数削減を図る。
【解決手段】 ハウジング7の、内周面7c、固定面7d、及び固定面7eを除く表面には、フッ素系樹脂からなるコーティング被膜f1が形成されている。コーティング被膜f1の膜厚は、0.1〜1μmである。コーティング被膜f1は、ハウジング7の防錆を目的として形成されたものであり、部品の段階では、ハウジング7の全表面に形成されるが、組立に際して、内周面7c、固定面7d、及び固定面7eのコーティング被膜f3は剥離される。
【選択図】 図2
【解決手段】 ハウジング7の、内周面7c、固定面7d、及び固定面7eを除く表面には、フッ素系樹脂からなるコーティング被膜f1が形成されている。コーティング被膜f1の膜厚は、0.1〜1μmである。コーティング被膜f1は、ハウジング7の防錆を目的として形成されたものであり、部品の段階では、ハウジング7の全表面に形成されるが、組立に際して、内周面7c、固定面7d、及び固定面7eのコーティング被膜f3は剥離される。
【選択図】 図2
Description
本発明は、軸受隙間に生じる潤滑油の動圧作用で軸部材を回転自在に非接触支持する動圧軸受装置に関する。この軸受装置は、情報機器、例えばHDD、FDD等の磁気ディスク装置、CD−ROM、CD−R/RW、DVD−ROM/RAM等の光ディスク装置、MD、MO等の光磁気ディスク装置などのスピンドルモータ、レーザビームプリンタ(LBP)のポリゴンスキャナモータ、あるいは電気機器、例えば軸流ファンなどの小型モータ用として好適である。
上記各種モータには、高回転精度の他、高速化、低コスト化、低騒音化などが求められている。これらの要求性能を決定づける構成要素の一つに当該モータのスピンドルを支持する軸受があり、近年では、この種の軸受として、上記要求性能に優れた特性を有する動圧軸受の使用が検討され、あるいは実際に使用されている。
例えば、HDD等のディスク駆動装置のスピンドルモータに組込まれる動圧軸受装置では、軸部材をラジアル方向に非接触支持するラジアル軸受部と、軸部材をスラスト方向に非接触支持するスラスト軸受部とが設けられ、ラジアル軸受部として、軸受スリーブの内周面又は軸部材の外周面に動圧発生用の溝(動圧溝)を設けた動圧軸受が用いられる。スラスト軸受部としては、例えば、軸部材のフランジ部の両端面、又は、これに対向する面(軸受スリーブの端面や、ハウジングに固定されるスラスト部材の端面等)に動圧溝を設けた動圧軸受が用いられる(例えば、特許文献1〜3参照)。特許文献1の図1に示されている構成では、スラスト軸受部の動圧溝は、ハウジングの一端部に一体形成された底部の内底面に設けられ、特許文献2の図2や特許文献3の図2に示されている構成では、スラスト軸受部の動圧溝は、ハウジングの一端部に固定されたスラスト部材の端面に設けられている。また、特許文献3の図4に示されている構成では、スラスト軸受部は、軸部材の一端面をスラストプレートによって接触支持する構造(いわゆるピボット軸受)になっている。
通常、軸受スリーブはハウジングの内周の所定位置に固定され、また、ハウジングの内部空間に注油した潤滑油が外部に漏れるのを防止するために、ハウジングの他端の開口部にシール部を設ける場合が多い。このシール部は、特許文献3に示されているように、ハウジングの開口部に別体のシール部材を固定して構成され、あるいは、特許文献2に示されているように、ハウジングの開口部の側に一体形成される。
特開2000―291648号公報
特開2002−61641号公報
特開2003―336636号公報
上記構成の動圧軸受装置は、ハウジング、軸受スリーブ、軸部材、スラスト部材、及びシール部材といった部品で構成され、情報機器の益々の高性能化に伴って必要とされる高い軸受性能を確保すべく、各部品の加工精度や組立精度を高める努力がなされている。
ところで、近時の経済のグローバル化に伴い、例えば、動圧軸受装置の部品を日本国内で生産し、組立は海外で行うような場合がある。このような場合、各部品は長距離輸送を強いられることになり、輸送中に部品に錆が発生することがある。現在、この錆の発生を防止するために、部品に防錆油を塗布しているが、表面に動圧溝をプレス成形する部品(ここでのプレス成形とは、動圧溝の形状に対応した型形状を成形型に形成しておき、その成形型を部品の表面に加圧して、型形状を部品の表面に転写する成形方法である。)、例えば、スラスト軸受部を構成するスラスト部材では、表面に防錆油が塗布されたまま動圧溝のプレス成形を行うと、型形状の転写精度が著しく低下して、動圧溝が所要精度に仕上がらない。そのため、動圧溝のプレス成形を行う前に部品の脱脂を行う必要があり、工数増加の一因となる。また、防錆油の劣化等により、防錆油が部品表面に強固に付着して脱脂処理が困難になる場合もある。
本発明の課題は、この種の動圧軸受装置における部品の発錆を防止すると同時に、防錆処理後の脱脂処理を不要にして工数削減を図ることである。
上記課題を解決するため、本発明は、ハウジングと、ハウジングの内部に固定された軸受スリーブと、ハウジング及び軸受スリーブに対して相対回転する軸部材と、軸受スリーブと軸部材との間のラジアル軸受隙間に生じる潤滑油の動圧作用で軸部材をラジアル方向に非接触支持するラジアル軸受部とを備えた動圧軸受装置において、ハウジングは金属材料で形成されていると共に、その表面にフッ素系樹脂からなるコーティング被膜を有する構成を提供する。
真ちゅう等の金属材料からなるハウジングの表面にフッ素系樹脂からなるコーティング被膜を形成することにより、ハウジングの発錆を防止することができる。このコーティング被膜は、部品段階では、ハウジングの全表面に形成されていることが好ましいが、動圧軸受装置として組立てる段階では、他部材が固定される表面、例えば他部材が接着剤等で固定される表面は、所要の固定強度を確保するため、コーティング被膜が剥離されていることが好ましい。このような所定表面のコーティング被膜の剥離処理は、例えば金型を用いることにより容易に行うことができる。従って、動圧軸受装置として完成された状態では、ハンジングは上記の所定表面以外の表面にコーティング被膜を有することになる。尚、接着強度等の固定強度を確保する上で特に支障がない場合は、上記の所定表面を含めて、ハウジングの全表面にコーティング被膜をそのまま残しておくこともできる。
また、本発明は、ハウジングと、ハウジングの内部に固定された軸受スリーブと、ハウジング及び軸受スリーブに対して相対回転する軸部材と、ハウジングの一端部に固定されたスラスト部材と、軸受スリーブと軸部材との間のラジアル軸受隙間に生じる潤滑油の動圧作用で軸部材をラジアル方向に非接触支持するラジアル軸受部と、スラスト部材と軸部材との間のスラスト軸受隙間に生じる潤滑油の動圧作用で軸部材をスラスト方向に非接触支持するスラスト軸受部とを備えた動圧軸受装置において、スラスト部材は金属材料で形成されていると共に、その表面にフッ素系樹脂からなるコーティング被膜を有する構成を提供する。
真ちゅう等の金属材料からなるスラスト部材の表面にフッ素系樹脂からなるコーティング被膜を形成することにより、スラスト部材の発錆を防止することができる。このコーティング被膜は、部品段階では、スラスト部材の全表面に形成されていることが好ましいが、動圧軸受装置として組立てる段階では、ハウジングに固定される表面、例えばハウジングに接着固定等される表面は、所要の固定強度を確保するため、コーティング被膜が剥離されていることが好ましい。このような所定表面のコーティング被膜の剥離処理は、例えば金型を用いることにより容易に行うことができる。従って、動圧軸受装置として完成された状態では、スラスト部材は上記の所定表面以外の表面にコーティング被膜を有することになる。尚、接着強度等の固定強度を確保する上で特に支障がない場合は、上記の所定表面を含めて、スラスト部材の全表面にコーティング被膜をそのまま残しておくこともできる。
スラスト軸受部を構成するスラスト部材の表面に動圧溝を形成する場合、該表面にコーティング被膜が形成されている状態でプレス成形を行っても、動圧溝を比較的精度良く成形することができる。従って、動圧溝をプレス成形するに際して、従来のような脱脂処理は不要である。また、フッ素系樹脂からなるコーティング被膜があるため、プレス成形後の成形型の離型性も良くなる。特に、コーティング被膜の膜厚を1μm以下にすることにより、プレス成形の際、成形型の型形状の転写精度を精度良く維持して、動圧溝を精度良く仕上げることができる。一方、コーティング被膜の膜厚が0.1μm未満になると、期待する防錆効果が得られない場合があるので、コーティング被膜の膜厚は0.1μm以上にすることが好ましい。
また、本発明は、ハウジングと、ハウジングの内部に固定された軸受スリーブと、ハウジング及び軸受スリーブに対して相対回転する軸部材と、ハウジングの他端部に固定されたシール部材と、軸受スリーブと軸部材との間のラジアル軸受隙間に生じる潤滑油の動圧作用で軸部材をラジアル方向に非接触支持するラジアル軸受部とを備えた動圧軸受装置において、シール部材は金属材料で形成されていると共に、その表面にフッ素系樹脂からなるコーティング被膜を有する構成を提供する。
真ちゅう等の金属材料からなるシール部材の表面にフッ素系樹脂からなるコーティング被膜を形成することにより、シール部材の発錆を防止することができる。このコーティング被膜は、部品段階では、シール部材の全表面に形成されていることが好ましいが、動圧軸受装置として組立てる段階では、ハウジングに固定される表面、例えばハウジングに接着固定等される表面は、所要の固定強度を確保するため、コーティング被膜が剥離されていることが好ましい。このような所定表面のコーティング被膜の剥離処理は、例えば金型を用いることにより容易に行うことができる。従って、動圧軸受装置として完成された状態では、シール部材は上記の所定表面以外の表面にコーティング被膜を有することになる。尚、接着強度等の固定強度を確保する上で特に支障がない場合は、上記の所定表面を含めて、シール部材の全表面にコーティング被膜をそのまま残しておくこともできる。
本発明によれば、この種の動圧軸受装置における部品の発錆を防止すると同時に、防錆処理後の脱脂処理を不要にして工数削減を図ることができる。
以下、本発明の実施形態について説明する。
図1は、この実施形態に係る動圧軸受装置1を組み込んだ情報機器用スピンドルモータの一構成例を概念的に示している。このスピンドルモータは、HDD等のディスク駆動装置に用いられるもので、軸部材2を回転自在に非接触支持する動圧軸受装置1と、軸部材2に装着されたロータ(ディスクハブ)3と、例えば半径方向のギャップを介して対向させたステータ4およびロータマグネット5とを備えている。ステータ4はブラケット6の外周に取付けられ、ロータマグネット5はディスクハブ3の内周に取付けられる。動圧軸受装置1のハウジング7は、ブラケット(保持部材)6の内周に装着される。ディスクハブ3には、磁気ディスク等のディスクDが一又は複数枚保持される。ステータ4に通電すると、ステータ4とロータマグネット5との間の電磁力でロータマグネット5が回転し、それによって、ディスクハブ3および軸部材2が一体となって回転する。
図2は、動圧軸受装置1を示している。この動圧軸受装置1は、ハウジング7と、ハウジング7に固定された軸受スリーブ8およびスラスト部材10と、軸部材2とを構成部品して構成される。
軸受スリーブ8の内周面8aと軸部材2の軸部2aの外周面2a1との間に第1ラジアル軸受部R1と第2ラジアル軸受部R2とが軸方向に離隔して設けられる。また、軸受スリーブ8の下側端面8cと軸部材2のフランジ部2bの上側端面2b1との間に第1スラスト軸受部T1が設けられ、スラスト部材10の端面10aとフランジ部2bの下側端面2b2との間に第2スラスト軸受部T2が設けられる。尚、説明の便宜上、スラスト部材10の側を下側、スラスト部材10と反対の側を上側として説明を進める。
ハウジング7は、例えば、真ちゅう(黄銅)等の軟質金属材料で形成され、円筒状の側部7bと、側部7bの上端から内径側に一体に延びた環状のシール部7aとを備えている。側部7bの下端部内周にはスラスト部材10を固定するための固定面7dが形成され、また、側部7bの外周には、ブラケット(保持部材)6の内周に接着剤により(又は圧入により、あるいは、接着剤と圧入の併用により)固定される固定面7eが形成されている。固定面7eの軸方向長さは、ブラケット6に対する固定強度を考慮して、所定寸法に設定されている。シール部7aの内周面7a1は、軸部2aの外周に設けられたテーパ面2a2と所定のシール空間Sを介して対向する。尚、軸部2aのテーパ面2a2は上側(ハウジング7に対して外部側)に向かって漸次縮径し、軸部材2の回転により遠心力シールとしても機能する。
また、ハウジング7の、内周面7c、固定面7d、及び固定面7eを除く表面(図面において太線で示されている部分)には、フッ素系樹脂からなるコーティング被膜f1が形成されている。コーティング被膜f1の膜厚は、0.1〜1μmである。コーティング被膜f1は、ハウジング7の防錆を目的として形成されたものであり、部品の段階では、ハウジング7の全表面に形成される。
軸部材2は、例えば、ステンレス鋼等の金属材料で形成され、あるいは、金属と樹脂とのハイブリッド構造とされ、軸部2aと、軸部2aの下端に一体又は別体に設けられたフランジ部2bとを備えている。
軸受スリーブ8は、例えば、焼結金属からなる多孔質体、特に銅を主成分とする燒結金属の多孔質体で円筒状に形成され、ハウジング7の内周面7cの所定位置に固定される。
この焼結金属で形成された軸受スリーブ8の内周面8aには、第1ラジアル軸受部R1と第2ラジアル軸受部R2のラジアル軸受面となる上下2つの領域が軸方向に離隔して設けられ、該2つの領域には、例えば図3(a)に示すようなヘリングボーン形状の動圧溝8a1、8a2がそれぞれ形成される。上側の動圧溝8a1は、軸方向中心m(上下の傾斜溝間領域の軸方向中央)に対して軸方向非対称に形成されており、軸方向中心mより上側領域の軸方向寸法X1が下側領域の軸方向寸法X2よりも大きくなっている。また、軸受スリーブ8の外周面8dには、1又は複数本の軸方向溝8d1が軸方向全長に亙って形成される。この例では、3本の軸方向溝8d1を円周方向等間隔に形成している。
第1スラスト軸受部T1のスラスト軸受面となる、軸受スリーブ8の下側端面8cには、例えば図3(b)に示すようなスパイラル形状の動圧溝8c1が形成される。
図3(c)に示すように、軸受スリーブ8の上側端面8bは、半径方向の略中央部に設けられた円周溝8b1により、内径側領域8b2と外径側領域8b3に区画され、内径側領域8b2には、1又は複数本の半径方向溝8b21が形成される。この例では、3本の半径方向溝8b21が円周等間隔に形成されている。
スラスト部材10は、例えば、真ちゅう(黄銅)等の軟質金属材料で形成され、ハウジング7の下端部の固定面7dに固定される。図4に示すように、第2スラスト軸受部T2のスラスト軸受面となる、スラスト部材10の端面10aには、例えばヘリングボーン形状の動圧溝10a1が形成される。尚、動圧溝の形状として、スパイラル形状や放射溝形状等を採用しても良い。
また、スラスト部材10の、外周面10bを除く表面には、フッ素系樹脂からなるコーティング被膜f2が形成されている。コーティング被膜f2の膜厚は、0.1〜1μmである。コーティング被膜f2は、スラスト部材10の防錆を目的として形成されたものであり、部品の段階では、スラスト部材10の全表面に形成される。スラスト部材10の端面10aの動圧溝10a1は、端面10aにコーティング被膜f2が形成されている状態で前述したプレス成形により形成される。端面10aにコーティング被膜f2が形成されている状態でプレス成形を行っても、動圧溝10a1を精度良く成形することができる。また、動圧溝10a1をプレス成形するに際して、従来のような脱脂処理は不要である。さらに、コーティング被膜f2があるため、プレス成形後の成形型の離型性も良くなる。
この実施形態の動圧軸受装置1は、例えば、次のような工程で組立てる。
まず、組立に際して、ハウジング7の内周面7c、固定面7d、及び固定面7eのコーティング被膜f1を剥離する。コーティング被膜f1の剥離は、例えば金型を用いることにより容易に行うことができる。尚、固定面7eのコーティング被膜f1は、組立が完了した後、例えば動圧軸受装置1をブラケット6に固定する前に剥離するようにしても良い。さらに、スラスト部材10の外周面10bのコーティング被膜f2を剥離する。コーティング被膜f2の剥離も、例えば金型を用いることにより容易に行うことができる。
つぎに、軸受スリーブ8をハウジング7の内周面7cに挿入し、その上側端面8bをシール部7aの内側面7a2に当接させる。これにより、ハウジング7に対する軸受スリーブ8の軸方向位置が決まる。軸受スリーブ8のハウジング7に対する固定は、次の複数の手段、すなわち、軸受スリーブ8の外周面8dをハウジング7の内周面7cに接着剤で固定する手段、軸受スリーブ8の外周面8dをハウジング7の内周面7cに圧入して固定する手段、上記の接着剤と圧入とを併用して固定する手段の中から、任意の手段を選択して行うことができる。
つぎに、軸部材2を軸受スリーブ8に装着し、その後、スラスト部材10をハウジング7の下端部の固定面7dに装着する。スラスト部材10のハウジング7に対する固定は、次の複数の手段、すなわち、スラスト部材10の外周面10bをハウジング7の固定面7dに接着剤で固定する手段、スラスト部材10の外周面10bをハウジング7の固定面7dに圧入して固定する手段、上記の接着剤と圧入とを併用して固定する手段の中から、任意の手段を選択して行うことができる。
上記のようにして組立が完了すると、軸部材2の軸部2aは軸受スリーブ8の内周面8aに挿入され、フランジ部2bは軸受スリーブ8の下側端面8cとスラスト部材10の端面10aとの間の空間部に収容された状態となる。その後、シール部7aで密封されたハウジング7の内部空間は、軸受スリーブ8の内部気孔を含め、潤滑油で充満される。潤滑油の油面は、シール空間Sの範囲内に維持される。
軸部材2の回転時、軸受スリーブ8の内周面8aのラジアル軸受面となる領域(上下2箇所の領域)は、それぞれ、軸部2aの外周面2a1とラジアル軸受隙間を介して対向する。また、軸受スリーブ8の下側端面8cのスラスト軸受面となる領域はフランジ部2bの上側端面2b1とスラスト軸受隙間を介して対向し、スラスト部材10の端面10aのスラスト軸受面となる領域はフランジ部2bの下側端面2b2とスラスト軸受隙間を介して対向する。そして、軸部材2の回転に伴い、上記ラジアル軸受隙間に潤滑油の動圧が発生し、軸部材2の軸部2aが上記ラジアル軸受隙間内に形成される潤滑油の油膜によってラジアル方向に回転自在に非接触支持される。これにより、軸部材2をラジアル方向に回転自在に非接触支持する第1ラジアル軸受部R1と第2ラジアル軸受部R2とが構成される。同時に、上記スラスト軸受隙間に潤滑油の動圧が発生し、軸部材2のフランジ部2bが上記スラスト軸受隙間内に形成される潤滑油の油膜によって両スラスト方向に回転自在に非接触支持される。これにより、軸部材2をスラスト方向に回転自在に非接触支持する第1スラスト軸受部T2と第2スラスト軸受部T2とが構成される。
前述したように、第1ラジアル軸受部R1の動圧溝8a1は、軸方向中心mに対して軸方向非対称に形成されており、軸方向中心mより上側領域の軸方向寸法X1が下側領域の軸方向寸法X2よりも大きくなっている{図3(a)}。そのため、軸部材2の回転時、動圧溝8a1による潤滑油の引き込み力(ポンピング力)は上側領域が下側領域に比べて相対的に大きくなる。そして、この引き込み力の差圧によって、軸受スリーブ8の内周面8aと軸部2aの外周面2a1との間の隙間に満たされた潤滑油が下方に流動し、第1スラスト軸受部T1のスラスト軸受隙間→軸方向溝8d1→シール部7aの内側面7a2の外径側領域と軸受スリーブ8の上側端面8bの外径側領域8b3との間の環状隙間→軸受スリーブ8の上側端面8bの円周溝8b1→軸受スリーブ8の上側端面8bの半径方向溝8b21という経路を循環して、第1ラジアル軸受部R1のラジアル軸受隙間に再び引き込まれる。このように、潤滑油がハウジング7の内部空間を流動循環するように構成することで、内部空間内の潤滑油の圧力が局部的に負圧になる現象を防止して、負圧発生に伴う気泡の生成、気泡の生成に起因する潤滑油の漏れや振動の発生等の問題を解消することができる。また、何らかの理由で潤滑油中に気泡が混入した場合でも、気泡が潤滑油に伴って循環する際にシール空間S内の潤滑油の油面(気液界面)から外気に排出されるので、気泡による悪影響はより一層効果的に防止される。
図5は、他の実施形態に係る動圧軸受装置1’を示している。この動圧軸受装置1’が図2に示す動圧軸受装置1と実質的に異なる点は、シール部を別体のシール部材12で構成した点である。シール部材12の内周面12aは、軸部2aの外周に設けられたテーパ面2a2と所定のシール空間Sを介して対向する。また、シール部材12の内側面12bは、軸受スリーブ8の上側端面8bの内径側領域と部分的に接触する。
シール部材12は、例えば、真ちゅう(黄銅)等の軟質金属材料で形成され、ハウジング7の内周面7cの上端部に固定される。シール部材12のハウジング7に対する固定は、次の複数の手段、すなわち、シール部材12の外周面12cをハウジング7の内周面7cに接着剤で固定する手段、シール部材12の外周面12cをハウジング7の内周面7cに圧入して固定する手段、上記の接着剤と圧入とを併用して固定する手段の中から、任意の手段を選択して行うことができる。
また、シール部材12の、外周面12cを除く表面には、フッ素系樹脂からなるコーティング被膜f3が形成されている。コーティング被膜f3の膜厚は、0.1〜1μmである。コーティング被膜f3は、シール部材12の防錆を目的として形成されたものであり、部品の段階では、シール部材12の全表面に形成されるが、組立に際して、外周面12cのコーティング被膜f3は剥離される。その他の事項は、前述した実施形態に準じるので、重複する説明を省略する。
尚、以上の実施形態では、接着剤等で固定する際の固定強度を考慮して、ハウジング7の内周面7c、固定面7d、及び固定面7e、スラスト部材10の外周面10b、シール部材12の外周面12cはコーティング被膜を剥離しているが、接着強度等の固定強度を確保する上で特に支障がない場合は、ハウジング7、スラスト部材10、及びシール部材12のうち少なくとも一つの部品は、全表面にコーティング被膜をそのまま残しておくこともできる。また、本発明は、以上の実施形態に限定されず、例えば、スラスト部材をハウジングと一体形成(ハウジングを有底筒状に一体形成)した形態の動圧軸受装置にも同様に適用することができる。また、本発明は、スラスト軸受部として、軸部材の一端面をスラストプレートによって接触支持する構造(いわゆるピボット軸受)を採用した動圧軸受装置にも同様に適用することができる。
1、1’ 動圧軸受装置
2 軸部材
7 ハウジング
8 軸受スリーブ
R1、R2 ラジアル軸受部
T1、T2 スラスト軸受部
10 スラスト部材
12 シール部材
f1、f2、f3 コーティング被膜
2 軸部材
7 ハウジング
8 軸受スリーブ
R1、R2 ラジアル軸受部
T1、T2 スラスト軸受部
10 スラスト部材
12 シール部材
f1、f2、f3 コーティング被膜
Claims (5)
- ハウジングと、該ハウジングの内部に固定された軸受スリーブと、前記ハウジング及び前記軸受スリーブに対して相対回転する軸部材と、前記軸受スリーブと前記軸部材との間のラジアル軸受隙間に生じる潤滑油の動圧作用で前記軸部材をラジアル方向に非接触支持するラジアル軸受部とを備えた動圧軸受装置において、
前記ハウジングは金属材料で形成されていると共に、その表面にフッ素系樹脂からなるコーティング被膜を有することを特徴とする動圧軸受装置。 - ハウジングと、該ハウジングの内部に固定された軸受スリーブと、前記ハウジング及び前記軸受スリーブに対して相対回転する軸部材と、前記ハウジングの一端部に固定されたスラスト部材と、前記軸受スリーブと前記軸部材との間のラジアル軸受隙間に生じる潤滑油の動圧作用で前記軸部材をラジアル方向に非接触支持するラジアル軸受部と、前記スラスト部材と前記軸部材との間のスラスト軸受隙間に生じる潤滑油の動圧作用で前記軸部材をスラスト方向に非接触支持するスラスト軸受部とを備えた動圧軸受装置において、
前記スラスト部材は金属材料で形成されていると共に、その表面にフッ素系樹脂からなるコーティング被膜を有することを特徴とする動圧軸受装置。 - 前記スラスト軸受部を構成する前記スラスト部材の表面に動圧溝が形成されており、該表面に前記コーティング被膜が形成されていることを特徴とする請求項2に記載の動圧軸受装置。
- ハウジングと、該ハウジングの内部に固定された軸受スリーブと、前記ハウジング及び前記軸受スリーブに対して相対回転する軸部材と、前記ハウジングの他端部に固定されたシール部材と、前記軸受スリーブと前記軸部材との間のラジアル軸受隙間に生じる潤滑油の動圧作用で前記軸部材をラジアル方向に非接触支持するラジアル軸受部とを備えた動圧軸受装置において、
前記シール部材は金属材料で形成されていると共に、その表面にフッ素系樹脂からなるコーティング被膜を有することを特徴とする動圧軸受装置。 - 前記コーティング被膜の膜厚が0.1〜1μmであることを特徴とする請求項1から4の何れかに記載の動圧軸受装置。
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JP (1) | JP2005273815A (ja) |
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
US8128289B2 (en) | 2006-06-28 | 2012-03-06 | Ntn Corporation | Fluid dynamic bearing device |
-
2004
- 2004-03-25 JP JP2004089704A patent/JP2005273815A/ja not_active Withdrawn
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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US8128289B2 (en) | 2006-06-28 | 2012-03-06 | Ntn Corporation | Fluid dynamic bearing device |
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