JP2004028063A - 内燃機関の予熱装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】本発明は、始動に関連する特定のタイミング要素の検出をトリガとして内燃機関を予熱する内燃機関の予熱装置において、始動前に確実に内燃機関を予熱することができる技術を提供することを課題とする。
【解決手段】本発明は、内燃機関の始動に関連する特定のタイミング要素が検出された場合に、始動に先駆けて内燃機関を予熱する装置を備えた内燃機関において、特定のタイミング要素が検出されないまま始動要求が発生した場合には、始動前に強制的に内燃機関を予熱することにより、始動性の向上、排気エミッションの向上、燃料消費率の向上を図ることを特徴とする。
【選択図】 図6
【解決手段】本発明は、内燃機関の始動に関連する特定のタイミング要素が検出された場合に、始動に先駆けて内燃機関を予熱する装置を備えた内燃機関において、特定のタイミング要素が検出されないまま始動要求が発生した場合には、始動前に強制的に内燃機関を予熱することにより、始動性の向上、排気エミッションの向上、燃料消費率の向上を図ることを特徴とする。
【選択図】 図6
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、自動車などに搭載される内燃機関に関し、特に内燃機関の始動に先駆けて該内燃機関を予熱する技術に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、自動車などに搭載される内燃機関では、始動に先駆けて内燃機関を予熱することにより、始動時及び始動後における排気エミッションや燃料消費率を向上させようとする技術の開発が進められている。
【0003】
上記したような技術としては、例えば、特開2002−38947号公報に記載されているような蓄熱装置を有する車両搭載用内燃機関が提案されている。
【0004】
この公報に記載されている内燃機関は、始動に関連する特定のタイミング要素を認識した場合に、蓄熱手段により蓄えられた熱を内燃機関の始動に先駆けて内燃機関へ供給することにより、内燃機関を予熱するよう構成されている。
【0005】
始動に関する特定のタイミング要素としては、内燃機関が搭載される車両に設けられた乗降用ドアの開扉、内燃機関が搭載される車両に設けられた運転座席への着座、内燃機関が搭載される車両の運転座席に備えられたシートベルトの着用、内燃機関が搭載される車両に設けられた制動装置の作動操作、内燃機関が搭載される車両に設けられたクラッチ機構(連動器)の作動、内燃機関が搭載される車両の乗降用ドアの解錠、内燃機関が搭載された車両に取り付けられた盗難防止装置の作動解除などが例示されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、内燃機関の始動にあたって上記したような特定のタイミング要素が検出されない場合も想定される。
【0007】
たとえば、車外からの遠隔操作により始動装置(スタータモータ)が作動される場合や、車両の乗降用ドアを開扉させずに窓越しに始動装置(スタータモータ)の作動操作がなされた場合などには、上記したような特定のタイミング要素が検出されないまま内燃機関が始動されることになる。
【0008】
このような場合には、内燃機関の始動に先駆けて該内燃機関を予熱することができず、始動時や始動後における排気エミッションや燃料消費率の向上を図ることが困難となる。
【0009】
本発明は、上記したような実情に鑑みてなされたものであり、始動に関連する特定のタイミング要素に従って内燃機関を予熱する機構を備えた内燃機関の予熱装置において、始動前に確実に内燃機関を予熱することができる技術を提供することにより、始動時およびまたは始動後における内燃機関の排気エミッションや燃料消費率の向上を図ることを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記した課題を解決するために以下のような手段を採用した。すなわち、本発明にかかる内燃機関の予熱装置は、
内燃機関の始動要求を入力する入力手段と、
前記入力手段が始動要求を入力したときに、前記内燃機関を始動させる始動手段と、
前記内燃機関の始動に関連する特定のタイミング要素を検出する検出手段と、前記入力手段が始動要求を入力する前に前記検出手段が特定のタイミング要素を検出した場合に、前記内燃機関を予熱する予熱手段と、
前記検出手段が特定のタイミング要素を検出する前に前記入力手段が始動要求を入力した場合に、前記始動手段の作動に先駆けて前記予熱手段を作動させる制御手段と、
を備える。
【0011】
この発明は、内燃機関の始動に関連する特定のタイミング要素が検出された場合に、始動に先駆けて内燃機関を予熱する装置を備えた内燃機関において、特定のタイミング要素が検出されない場合には、始動前に強制的に内燃機関を予熱することを最大の特徴としている。
【0012】
かかる内燃機関の予熱装置では、入力手段が始動要求を入力する前に検出手段が特定のタイミング要素を検出すると、予熱手段が内燃機関を予熱する。この場合、内燃機関が始動前に予め暖められることになる。
【0013】
一方、検出手段が特定のタイミング要素を検出する前に入力手段が始動要求を入力した場合は、制御手段が始動手段の作動に先駆けて予熱手段を強制的に作動させる。この場合も、内燃機関が始動前に予め暖められることになる。
【0014】
このように本発明に係る内燃機関の予熱装置では、内燃機関の始動に関連する特定のタイミング要素が検出される前に始動要求が発生した場合であっても内燃機関が確実に予熱されることになる。
【0015】
尚、制御手段は、検出手段が特定のタイミング要素を検出する前に入力手段が始動要求を入力した場合に、内燃機関の温度と相関のある温度が所定温度未満であることを条件に、始動手段の作動に先駆けて予熱手段を作動させることが好ましい。
【0016】
これは、内燃機関の温度が低い状況下(冷間状態)で内燃機関が始動される場合には始動時およびまたは始動後の排気エミッションや燃料消費率が悪化し易いが、内燃機関の温度が比較的高い状況下(温間状態)で内燃機関が始動される場合には始動時およびまたは始動後の排気エミッションや燃料消費率が悪化し難いからである。
【0017】
また、内燃機関の始動に関連する特定のタイミング要素としては、(1)内燃機関が搭載される車両の乗降用ドア(運転席の乗降用ドア)が開扉された時、(2)内燃機関が搭載される車両の運転座席への着座がなされた時、(3)内燃機関が搭載される車両の運転座席に設けられたシートベルトが着用された時、(4)内燃機関が搭載される車両に設けられた制動装置の作動操作がなされた時、(5)内燃機関と変速機との間に介在するクラッチ機構(連動器)の作動操作がなされた時、(6)内燃機関が搭載される車両の乗降用ドア(少なくとも運転席の乗降用ドア)の施錠が解除された時、(7)内燃機関が搭載される車両に取り付けられた盗難防止装置の作動が解除された時、(8)内燃機関が搭載される車両に設けられたキーシリンダへイグニッションキーが挿入された時などを例示することができる。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係る内燃機関の予熱装置の具体的な実施の形態について図面に基づいて説明する。
【0019】
図1は、本発明を適用する内燃機関の冷却水循環系の概略構成を示す図である。図1に示す内燃機関1は、水冷式のガソリン機関またはディーゼル機関であり、シリンダヘッド1aとシリンダブロック1bとを備えている。
【0020】
シリンダヘッド1aとシリンダブロック1bとには、冷却水が流通するためのヘッド側冷却水路2aとブロック側冷却水路2bとが各々形成され、それらヘッド側冷却水路2aとブロック側冷却水路2bが相互に連通している。
【0021】
ヘッド側冷却水路2aには、第1冷却水通路4が接続され、その第1冷却水通路4はラジエター5の冷却水流入口に接続されている。ラジエター5の冷却水流出口には第2冷却水通路6が接続されている。
【0022】
第2冷却水通路6は、サーモスタットバルブ7に接続されている。サーモスタットバルブ7には、前記した第2冷却水通路6に加え、第3冷却水通路8とバイパス通路9とが接続されている。
【0023】
サーモスタットバルブ7は、該サーモスタットバルブ7を流れる冷却水の温度が所定の開弁温度:T1未満であるときは第2冷却水通路6を遮断して第3冷却水通路8とバイパス通路9とを導通させ、該サーモスタットバルブ7を流れる冷却水の温度が前記開弁温度:T1以上であるときはバイパス通路9を遮断して第2冷却水通路6と第3冷却水通路8とを導通させるよう構成されている。
【0024】
前記第3冷却水通路8は、機械式ウォーターポンプ10の冷却水吸込口に接続されている。機械式ウォーターポンプ10は、内燃機関1の図示しない出力軸(クランクシャフト)の回転トルクを駆動源として冷却水の流れを発生させるものであり、前記した冷却水吸込口から冷却水を吸い込むとともに、吸い込んだ冷却水を冷却水吐出口から吐出するよう構成されている。前記機械式ウォーターポンプ10の冷却水吐出口は、ブロック側冷却水路2bに接続されている。
【0025】
前記したバイパス通路9は、前記した第1冷却水通路4、ラジエター5、及び第2冷却水通路6を迂回する通路であり、ヘッド側冷却水路2aと接続されている。
【0026】
次に、前記した第1冷却水通路4の途中には、ヒータホース11が接続されている。このヒータホース11は、前記した第3冷却水通路8の途中に接続されている。
【0027】
前記ヒータホース11の途中には、室内暖房用空気と冷却水との間で熱交換を行うヒータコア12が設けられている。
【0028】
前記ヒータコア12と前記第3冷却水通路8との間に位置するヒータホース11の途中には、第1バイパス通路13aが接続されている。第1バイパス通路13aは、電動ウォーターポンプ14の冷却水吸込口に接続されている。
【0029】
前記電動ウォーターポンプ14は、バッテリ25から出力される電力を駆動源として冷却水の流れを発生させるよう構成され、前記冷却水吸込口から冷却水を吸い込むとともに、吸い込んだ冷却水を冷却水吐出口から吐出する。
【0030】
前記電動ウォーターポンプ14の冷却水吐出口には、第2バイパス通路13bが接続されている。第2バイパス通路13bは、蓄熱容器15の冷却水入口15aに接続されている。
【0031】
前記蓄熱容器15は、冷却水を蓄熱状態で貯蔵する容器であり、前記冷却水入口15aから冷却水が流入した場合に、それと入れ代わりに該蓄熱容器15内に元々貯蔵されていた冷却水を冷却水出口15bから排出するよう構成されている。
【0032】
前記蓄熱容器15の冷却水出口15bには、第3バイパス通路13cが接続されている。前記第3バイパス通路13cは、前記第1冷却水通路4と前記ヒータコア12との間に位置するヒータホース11の途中に接続されている。
【0033】
なお以下では、第1冷却水通路4とヒータコア12との間に位置するヒータホース11において、前記第3バイパス通路13cとの接続部位を基準にして第1冷却水通路4側の部位を第1ヒータホース11aと称し、ヒータコア12側の部位を第2ヒータホース11bと称する。ヒータコア12と第3冷却水通路8との間に位置するヒータホース11において、第1バイパス通路13aとの接続部位を基準にしてヒータコア12側の部位を第3ヒータホース11cと称し、第3冷却水通路8側の部位を第4ヒータホース11dと称するものとする。
【0034】
前記した第1ヒータホース11aと第2ヒータホース11bと第3バイパス通路13cとの接続部位には、流路切換弁16が設けられている。流路切換弁16は、電動モータ等によって駆動され、第1ヒータホース11aと第2ヒータホース11bと第3バイパス通路13cとの何れか一を遮断するよう構成されている。
【0035】
また、前記第3バイパス通路13cにおいて蓄熱容器15の冷却水出口15bの近傍には、蓄熱容器15から排出される冷却水の温度(以下、容器出口水温と称する)に対応した電気信号を出力する容器出口水温センサ17が設けられており、前記第1冷却水通路4においてヘッド側冷却水路2aとの接続部位の近傍には、該第1冷却水通路4を流通する冷却水の温度(以下、機関側水温と称する)に対応した電気信号を出力する機関側水温センサ18が設けられている。
【0036】
このように構成された内燃機関1の冷却水循環系には、該冷却水循環系における冷却水の流れを制御するための電子制御ユニット(ECU:Electronic Control Unit)20が併設されている。このECU20は、CPU、ROM、RAM、バックアップRAMなどから構成される算術論理演算回路であり、バッテリ25の電力を駆動源として作動するよう構成されている。尚、ECU20は、乃値機関1の運転状態を制御するためのECUと独立して設けられるようにしてもよく、或いは、内燃機関1を制御するためのECUと兼用されるようにしてもよい。
【0037】
前記ECU20には、前述した容器出口水温センサ17及び機関側水温センサ18に加え、内燃機関1を搭載した車両の室内に設けられたイグニッションスイッチ21とスタータスイッチ22とヒータスイッチ23が接続されるとともに、内燃機関1を搭載した車両に設けられた乗降用ドア(好ましくは、運転座席の乗降用ドア)の開扉を検出するドアスイッチ24が接続されている。
【0038】
また、前記ECU20には、電動ウォーターポンプ14と流路切換弁16とが電気的に接続され、ECU20が電動ウォーターポンプ14及び流路切換弁16を制御することが可能となっている。
【0039】
例えば、ECU20は、内燃機関1が冷間始動後の暖機運転状態にある場合のように、機関側水温センサ18の出力信号(機関側水温)がサーモスタットバルブ7の開弁温度:T1より低い場合には、電動ウォーターポンプ14を停止させるべくバッテリ25から電動ウォーターポンプ14への電力供給を遮断するとともに、第1ヒータホース11aを遮断すべく流路切換弁16を制御する。
【0040】
この場合、電動ウォーターポンプ14が作動せずに機械式ウォーターポンプ10が作動するとともに、サーモスタットバルブ7が第2冷却水通路6を遮断し且つ第3冷却水通路8とバイパス通路9を導通させるため、図2に示されるように、機械式ウォーターポンプ10→ブロック側冷却水路2b→ヘッド側冷却水路2a→バイパス通路9→サーモスタットバルブ7→第3冷却水通路8→機械式ウォーターポンプ10の順に冷却水が流れる循環回路が成立する。
【0041】
図2に示されるような循環回路が成立すると、ヘッド側冷却水路2a及びブロック側冷却水路2bから流出した冷却水がラジエター5を迂回して流れるため、比較的低温の冷却水がラジエター5によって不要に冷却されることがなく、その結果、内燃機関1の暖機が妨げられることがない。
【0042】
その後、内燃機関1の暖機が進行して機関側水温センサ18の出力信号(機関側水温)がサーモスタットバルブ7の開弁温度:T1以上まで上昇すると、ECU20は、機関側水温がサーモスタットバルブ7の開弁温度:T1未満である場合と同様に、電動ウォーターポンプ14を停止させるべくバッテリ25から電動ウォーターポンプ14への電力供給を遮断するとともに、第1ヒータホース11aを遮断すべく流路切換弁16を制御する。
【0043】
この場合、電動ウォーターポンプ14が作動せずに機械式ウォーターポンプ10が作動するとともに、サーモスタットバルブ7がバイパス通路9を遮断し且つ第2冷却水通路6と第3冷却水通路8を導通させるため、図3に示されるように、機械式ウォーターポンプ10→ブロック側冷却水路2b→ヘッド側冷却水路2a→第1冷却水通路4→ラジエター5→第2冷却水通路6→サーモスタットバルブ7→第3冷却水通路8→機械式ウォーターポンプ10の順に冷却水が流れる循環回路が成立する。
【0044】
図3に示されるような循環回路が成立すると、内燃機関1が発生する熱を吸収した比較的高温な冷却水がラジエター5を流通することになるため、冷却水の熱がラジエター5において大気中へ放出され、それにより冷却水の吸熱能力が再生されるとともに冷却水の温度が低下する。ラジエター5において吸熱能力が再生された冷却水は、内燃機関1のヘッド側冷却水路2a及びブロック側冷却水路2bへ再流入して内燃機関1が発生する熱を好適に吸収する。この結果、内燃機関1の過熱が防止される。
【0045】
また、内燃機関1が暖機完了後の通常運転状態にあるときにヒータスイッチ23がオフからオンへ切り換えられると、ECU20は、電動ウォーターポンプ14を停止させるべくバッテリ25から電動ウォーターポンプ14への電力供給を遮断するとともに、第3バイパス通路13cを遮断すべく流路切換弁16を制御する。
【0046】
この場合、電動ウォーターポンプ14が作動せずに機械式ウォーターポンプ10のみが作動し、サーモスタットバルブ7がバイパス通路9を遮断し且つ第2冷却水通路6と第3冷却水通路8を導通させ、さらに流路切換弁16が第1ヒータホース11aと第2ヒータホース11bを導通させるため、図4に示されるように、機械式ウォーターポンプ10→ブロック側冷却水路2b→ヘッド側冷却水路2a→第1冷却水通路4→ラジエター5→第2冷却水通路6→サーモスタットバルブ7→第3冷却水通路8→機械式ウォーターポンプ10の順に冷却水が流れる第1の循環回路が成立すると同時に、機械式ウォーターポンプ10→ブロック側冷却水路2b→ヘッド側冷却水路2a→第1冷却水通路4→第1ヒータホース11a→第2ヒータホース11b→ヒータコア12→第3ヒータホース11c→第4ヒータホース11d→第3冷却水通路8→機械式ウォーターポンプ10の順に冷却水が流れる第2の循環回路が成立する。
【0047】
図4に示されるような第2の循環回路が成立すると、内燃機関1が発生する熱を吸収した高温な冷却水が第1冷却水通路4→第1ヒータホース11a→第2ヒータホース11bを介してヒータコア12へ流入するため、ヒータコア12において冷却水の熱が室内暖房用空気へ伝達され、その結果、室内暖房用空気が暖められる。
【0048】
ところで、内燃機関1が冷間状態で始動される場合は、図示しない吸気ポート周辺や燃焼室周辺の温度が低いため、燃料噴射弁から噴射された燃料が霧化(あるいは気化)し難く、吸気ポートの壁面や燃焼室の壁面へ付着し易くなるため、燃焼室内に可燃性の高い混合気を形成し難くなり、その結果、始動性の悪化や、始動時及び始動後における未燃燃料成分の排出量増加(排気エミッションの悪化)などが誘発される可能性がある。更に、内燃機関1が冷間始動される場合には、動弁機構、ピストン、コネクティングロッド、クランクシャフト等の各摺動部におけるクリアランスが適正でないため、フリクションロスが増大し、始動性の悪化や燃料消費率の悪化が誘発される可能性もある。
【0049】
これに対し、ECU20は、スタータスイッチ22がオフからオンへ切り換えられる前に内燃機関1の始動に関連した特定のタイミング要素が検出されると、始動に先駆けて内燃機関1を暖める予熱処理を実行する。
【0050】
内燃機関1の始動と関連する特定のタイミング要素としては、例えば、(1)内燃機関1を搭載する車両の乗降用ドア(運転席の乗降用ドア)が開扉された時、(2)内燃機関1を搭載する車両の運転座席への着座がなされた時、(3)内燃機関1を搭載する車両の運転座席に設けられたシートベルトが着用された時、(4)内燃機関1を搭載する車両に設けられた制動装置の作動操作がなされた時、(5)内燃機関1と変速機との間に介在するクラッチ機構の作動操作がなされた時、(6)内燃機関1を搭載する車両の乗降用ドア(少なくとも運転席の乗降用ドア)の施錠が解除された時、(7)内燃機関1を搭載する車両に取り付けられた盗難防止装置の作動が解除された時、(8)内燃機関1を搭載する車両に設けられたキーシリンダにイグニッションキーが挿入された時などを例示することができる。
【0051】
上記したような特定のタイミング要素が検出されると、ECU20は、機関側水温センサ18の出力信号(機関側水温)を読み込み、その機関側水温が所定温度未満であるか否かを判別する。
【0052】
上記した所定温度は、内燃機関1の暖機完了後における冷却水温度を基準にして、始動性、排気エミッション、燃料消費率等が悪化しない範囲で定められる温度であり、例えば、50℃程度に設定される。
【0053】
特定のタイミング要素が検出された時点における機関側水温が前記所定温度未満である場合には、ECU20は、以下に示すような予熱処理を実行する。
【0054】
すなわち、ECU20は、電動ウォーターポンプ14を作動させるべくバッテリ25から電動ウォーターポンプ14へ駆動電力を供給させるとともに、第2ヒータホース11bを遮断すべく流路切換弁16を制御する。
【0055】
この場合、機械式ウォーターポンプ10が作動せずに電動ウォーターポンプ14のみが作動するとともに、第1ヒータホース11aと第3バイパス通路13cとが導通するため、図5に示されるように、電動ウォーターポンプ14→第2バイパス通路13b→蓄熱容器15→第3バイパス通路13c→流路切換弁16→第1ヒータホース11a→第1冷却水通路4→ヘッド側冷却水路2a→ブロック側冷却水路2b→機械式ウォーターポンプ10→第3冷却水通路8→第4ヒータホース11d→第1バイパス通路13a→電動ウォーターポンプ14の順に冷却水が流れる循環回路が成立する。
【0056】
図5に示されるような循環回路が成立すると、電動ウォーターポンプ14から吐出された冷却水が第2バイパス通路13bを介して蓄熱容器15へ流入する。蓄熱容器15へ冷却水が流入すると、それと入れ代わりに蓄熱容器15内に元々貯蔵されていた高温な温水(以下、蓄熱温水と称する)が該蓄熱容器15から流出する。
【0057】
蓄熱容器15から流出した蓄熱温水は、第3バイパス通路13c→流路切換弁16→第1ヒータホース11a→第1冷却水通路4を介してヘッド側冷却水路2aへ流入し、次いでヘッド側冷却水路2aからブロック側冷却水路2bへ流入する。
【0058】
蓄熱容器15からの蓄熱温水がヘッド側冷却水路2a及びブロック側冷却水路2bへ流入すると、ヘッド側冷却水路2a及びブロック側冷却水路2bに元々滞留していた低温の冷却水がヘッド側冷却水路2a及びブロック側冷却水路2bから流出する。
【0059】
このようにしてヘッド側冷却水路2a及びブロック側冷却水路2bに蓄熱温水が充満すると、蓄熱温水の熱がヘッド側冷却水路2a及びブロック側冷却水路2bの壁面を介して内燃機関1へ伝達され、内燃機関1が好適に昇温する。
【0060】
この結果、内燃機関1の燃焼室周りの温度が高められるため、燃料の霧化が促進されるとともに壁面付着燃料量が減少し、始動性の向上と未燃燃料成分の排出量減少が図られる。更に、内燃機関1の昇温により、動弁機構、ピストン、コネクティングロッド、クランクシャフト等の各摺動部におけるクリアランスが適正値に近似するため、フリクションロスが低下して始動性の向上や燃料消費率の向上が図られる。
【0061】
尚、通常の燃料噴射制御では、内燃機関1の始動時および始動後において壁面付着燃料を見越して燃料噴射量を増量補正する制御が行われるが、予熱処理が実行された場合に従来通りの増量補正が行われると、混合気が燃料過濃な状態となり、却って燃焼安定性の悪化や未燃燃料成分の排出量増加を招く原因となる。
【0062】
これに対し、上記したような予熱処理が実行された場合には、ECU20は、始動時の燃料噴射制御にかかる増量補正量、及び始動後の燃料噴射制御にかかる増量補正量を減衰することが好ましい。その際、増量補正量の減衰率は、予熱処理が開始される時の蓄熱温水の温度(具体的には、容器出口水温センサ17が検出する容器出口水温)と機関側水温との温度差が大きくなるほど高く設定するとよい。
【0063】
また、特定のタイミング要素が検出された際の機関側水温が所定温度以上である場合は、ECU20は、内燃機関1の温度が始動性の悪化、排気エミッションの悪化、燃料消費率の悪化などの不具合を生じない程度に高いと判定して、上記したような予熱処理の実行を見合わせる。
【0064】
ところで、内燃機関1が搭載された車両の外部からの遠隔操作によりスタータスイッチ22がオフからオンへ切換操作される場合や、乗降用ドアを開扉せずに車窓越しにスタータスイッチ22がオフからオンへ切換操作される場合などは、上記したような特定のタイミング要素が検出されることなくスタータスイッチ22がオフからオンへ切り換えられる(すなわち、内燃機関1の始動が図られる)ことになるため、始動性の向上や、始動時及び始動後における排気エミッションと燃料消費率との向上を図ることが困難となる。
【0065】
そこで、本実施の形態における内燃機関1の予熱装置では、ECU20は、内燃機関1の始動に関連した特定のタイミング要素が検出される前にスタータスイッチ22がオフからオンへ切り換えられた場合には、図示しないスタータモータの作動を禁止しつつ上記したような予熱処理を実行するようにした。
【0066】
この場合、内燃機関1の始動時期が多少遅延するものの、始動性の向上、始動時及び始動後における排気エミッションと燃料消費率との向上を確実に図ることが可能となる。
【0067】
以下、本実施の形態における予熱処理について図6に沿って説明する。ここでは、内燃機関1の始動に関連した特定のタイミング要素として車両の乗降用ドアが開扉された時を例に挙げて説明する。
【0068】
図6は、予熱制御ルーチンを示すフローチャート図である。予熱制御ルーチンは、予めECU20のROMに記憶されているルーチンであり、始動に関連する特定のタイミング要素が検出された時、あるいは、スタータスイッチ22がオフからオンへ切り換えられた時にECU20が実行するルーチンである。
【0069】
予熱制御ルーチンでは、ECU20は、先ずS601においてECU20は、ドアスイッチ24がオフからオンへ切り換えられたか否かを判別する。すなわち、ECU20は、内燃機関1が搭載された車両の乗降用ドアが開扉されたか否かを判別する。
【0070】
前記S601においてドアスイッチ24がオフからオンへ切り換えられたと判定された場合は、ECU20は、S602へ進み、機関側水温センサ18の出力信号(機関側水温)を読み込む。
【0071】
S603では、ECU20は、前記S602で読み込まれた機関側水温が所定温度未満であるか否かを判別する。前記所定温度は、前述したように、内燃機関1の始動性、排気エミッション、燃料消費率等が悪化しない範囲で設定される温度であり、例えば、50℃程度に設定される。
【0072】
前記S603において機関側水温が所定温度以上であると判定された場合は、ECU20は、内燃機関1の温度が始動性の悪化、排気エミッションの悪化、燃料消費率の悪化等を招かない程度に高いため、予熱処理を実行する必要がないとみなし、本ルーチンの実行を終了する。
【0073】
前記S603において機関側水温が所定温度未満であると判定された場合は、ECU20は、内燃機関1の温度が始動性の悪化、排気エミッションの悪化、燃料消費率の悪化等を誘発する程度に低いため、予熱処理を実行する必要があるとみなし、S604へ進む。
【0074】
S604では、ECU20は、予熱処理を実行する。予熱処理では、ECU20は、電動ウォーターポンプ14を作動させるべくバッテリ25から電動ウォーターポンプ14へ駆動電力を供給させるとともに、第2ヒータホース11bを遮断すべく流路切換弁16を制御することにより、前述した図5の説明で述べたような循環回路を成立させる。
【0075】
この場合、蓄熱容器15に貯蔵されていた蓄熱温水が内燃機関1のヘッド側冷却水路2a及びブロック側冷却水路2bに供給されるとともに、ヘッド側冷却水路2a及びブロック側冷却水路2bに元々滞留していた低温の冷却水がヘッド側冷却水路2a及びブロック側冷却水路2bから流出するため、内燃機関1の温度が速やかに上昇する。
【0076】
その後、スタータスイッチ22がオフからオンへ切り換えられると、内燃機関1は昇温した状態で始動されることになるため、燃料の霧化が促進されるとともに壁面付着燃料量が減少し、始動性の向上と未燃燃料成分の排出量減少が図られる。更に、内燃機関1の昇温により、動弁機構、ピストン、コネクティングロッド、クランクシャフト等の各摺動部におけるクリアランスが適正値に近似するため、フリクションロスが低下して始動性の向上と燃料消費率の向上とが図られる。
【0077】
一方、前記したS601においてドアスイッチ24がオフからオンへ切り換えられていないと判定された場合には、ECU20は、S605へ進み、スタータスイッチ22がオフからオンへ切り換えられたか否かを判別する。
【0078】
前記S605においてスタータスイッチ22がオフからオンへ切り換えられていないと判定された場合は、ECU20は、前述したS601以降の処理を再度実行する。
【0079】
前記S605においてスタータスイッチ22がオフからオンへ切り換えられたと判定された場合は、ECU20は、内燃機関1の始動に関連する特定のタイミング要素(この場合は、乗降用ドアの開扉)が検出されないまま始動要求が発生したとみなし、S606へ進む。
【0080】
S606では、ECU20は、機関側水温センサ18の出力信号(機関側水温)を読み込む。
【0081】
S607では、ECU20は、前記S606で読み込まれた機関側水温が所定温度未満であるか否かを判別する。
【0082】
前記S607において前記機関側水温が所定温度以上であると判定された場合は、ECU20は、予熱処理を実行する必要がないとみなし、S608及びS609の処理をスキップしてS610へ進む。
【0083】
S610では、ECU20は、スタータモータの作動を許可し、内燃機関1を直ちに始動させる。
【0084】
一方、前記S607において前記機関側水温が所定温度未満であると判定された場合は、ECU20は、S608へ進み、スタータモータの作動を禁止する。次いで、ECU20は、S609へ進み、前述したS604と同様の予熱処理を実行する。
【0085】
ECU20は、前記S609の予熱処理を実行し終えると、S610へ進み、スタータモータの作動を許可して内燃機関1を始動させる。
【0086】
この場合、蓄熱容器15に貯蔵されていた蓄熱温水が内燃機関1の始動前にヘッド側冷却水路2a及びブロック側冷却水路2bへ供給されるため、内燃機関1が昇温した状態で始動されることになる。
【0087】
この結果、内燃機関1の始動時及び始動後において、燃料の霧化、壁面付着燃料量の減少、各部クリアランスの適正化等が図られることとなり、以て始動性の向上、排気エミッションの向上、及び燃料消費率の向上を実現することが可能となる。
【0088】
以上述べたように、本実施の形態に係る内燃機関の予熱装置によれば、内燃機関1の始動に関連した特定のタイミング要素が検出されないまま内燃機関1の始動要求が発生した場合であっても、内燃機関1の始動前に予熱処理を実行することが可能となるため、始動性の向上を図ることが可能になるとともに、始動時及び始動後における排気エミッションの向上及び燃料消費率の向上を図ることが可能となる。
【0089】
尚、本実施の形態では、本発明に係る予熱手段として、第1バイパス通路13a、第2バイパス通路13b、第3バイパス通路13c、電動ウォーターポンプ14、蓄熱容器15、及び流路切換弁16からなる蓄熱機構を例に挙げて説明したが、これに限られるものではなく、例えば、(1)内燃機関1の潤滑油を蓄熱状態で貯蔵しておくとともに貯蔵された潤滑油を内燃機関1の始動前に内燃機関1へ供給する機構、(2)内燃機関1と独立した燃焼室を有し、その燃焼室から排出される高温な燃焼ガスを内燃機関1の始動前に内燃機関1の吸気通路やブローバイガス通路などに供給する機構などであってもよい。
【0090】
【発明の効果】
本発明によれば、内燃機関の始動前に始動に関連する特定のタイミング要素を検出して内燃機関を予熱する内燃機関の予熱装置において、特定のタイミング要素が検出される前に始動要求が発生した場合であっても、内燃機関を確実に予熱することが可能となるため、内燃機関の始動性の向上が図られるとともに、内燃機関の始動時およびまたは始動後における排気エミッションや燃料消費率の向上が図られることとなる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明を適用する内燃機関の冷却水循環系の概略構成を示す図
【図2】内燃機関が冷間状態で運転されているときの冷却水の流れを示す図
【図3】内燃機関の暖機完了後における冷却水の流れを示す図
【図4】ヒータスイッチがオンであるときの冷却水の流れを示す図
【図5】予熱処理の実行時における冷却水の流れを示す図
【図6】本実施の形態における予熱制御ルーチンを示すフローチャート図
【符号の説明】
1・・・・内燃機関
1a・・・シリンダヘッド
1b・・・シリンダブロック
2a・・・ヘッド側冷却水通路
2b・・・ブロック側冷却水路
11・・・ヒータホース
13a・・第1バイパス通路
13b・・第2バイパス通路
13c・・第3バイパス通路
14・・・電動ウォーターポンプ
15・・・蓄熱容器
16・・・流路切換弁
20・・・ECU
21・・・イグニッションスイッチ
22・・・スタータスイッチ
23・・・ヒータスイッチ
24・・・ドアスイッチ
25・・・バッテリ
【発明の属する技術分野】
本発明は、自動車などに搭載される内燃機関に関し、特に内燃機関の始動に先駆けて該内燃機関を予熱する技術に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、自動車などに搭載される内燃機関では、始動に先駆けて内燃機関を予熱することにより、始動時及び始動後における排気エミッションや燃料消費率を向上させようとする技術の開発が進められている。
【0003】
上記したような技術としては、例えば、特開2002−38947号公報に記載されているような蓄熱装置を有する車両搭載用内燃機関が提案されている。
【0004】
この公報に記載されている内燃機関は、始動に関連する特定のタイミング要素を認識した場合に、蓄熱手段により蓄えられた熱を内燃機関の始動に先駆けて内燃機関へ供給することにより、内燃機関を予熱するよう構成されている。
【0005】
始動に関する特定のタイミング要素としては、内燃機関が搭載される車両に設けられた乗降用ドアの開扉、内燃機関が搭載される車両に設けられた運転座席への着座、内燃機関が搭載される車両の運転座席に備えられたシートベルトの着用、内燃機関が搭載される車両に設けられた制動装置の作動操作、内燃機関が搭載される車両に設けられたクラッチ機構(連動器)の作動、内燃機関が搭載される車両の乗降用ドアの解錠、内燃機関が搭載された車両に取り付けられた盗難防止装置の作動解除などが例示されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、内燃機関の始動にあたって上記したような特定のタイミング要素が検出されない場合も想定される。
【0007】
たとえば、車外からの遠隔操作により始動装置(スタータモータ)が作動される場合や、車両の乗降用ドアを開扉させずに窓越しに始動装置(スタータモータ)の作動操作がなされた場合などには、上記したような特定のタイミング要素が検出されないまま内燃機関が始動されることになる。
【0008】
このような場合には、内燃機関の始動に先駆けて該内燃機関を予熱することができず、始動時や始動後における排気エミッションや燃料消費率の向上を図ることが困難となる。
【0009】
本発明は、上記したような実情に鑑みてなされたものであり、始動に関連する特定のタイミング要素に従って内燃機関を予熱する機構を備えた内燃機関の予熱装置において、始動前に確実に内燃機関を予熱することができる技術を提供することにより、始動時およびまたは始動後における内燃機関の排気エミッションや燃料消費率の向上を図ることを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記した課題を解決するために以下のような手段を採用した。すなわち、本発明にかかる内燃機関の予熱装置は、
内燃機関の始動要求を入力する入力手段と、
前記入力手段が始動要求を入力したときに、前記内燃機関を始動させる始動手段と、
前記内燃機関の始動に関連する特定のタイミング要素を検出する検出手段と、前記入力手段が始動要求を入力する前に前記検出手段が特定のタイミング要素を検出した場合に、前記内燃機関を予熱する予熱手段と、
前記検出手段が特定のタイミング要素を検出する前に前記入力手段が始動要求を入力した場合に、前記始動手段の作動に先駆けて前記予熱手段を作動させる制御手段と、
を備える。
【0011】
この発明は、内燃機関の始動に関連する特定のタイミング要素が検出された場合に、始動に先駆けて内燃機関を予熱する装置を備えた内燃機関において、特定のタイミング要素が検出されない場合には、始動前に強制的に内燃機関を予熱することを最大の特徴としている。
【0012】
かかる内燃機関の予熱装置では、入力手段が始動要求を入力する前に検出手段が特定のタイミング要素を検出すると、予熱手段が内燃機関を予熱する。この場合、内燃機関が始動前に予め暖められることになる。
【0013】
一方、検出手段が特定のタイミング要素を検出する前に入力手段が始動要求を入力した場合は、制御手段が始動手段の作動に先駆けて予熱手段を強制的に作動させる。この場合も、内燃機関が始動前に予め暖められることになる。
【0014】
このように本発明に係る内燃機関の予熱装置では、内燃機関の始動に関連する特定のタイミング要素が検出される前に始動要求が発生した場合であっても内燃機関が確実に予熱されることになる。
【0015】
尚、制御手段は、検出手段が特定のタイミング要素を検出する前に入力手段が始動要求を入力した場合に、内燃機関の温度と相関のある温度が所定温度未満であることを条件に、始動手段の作動に先駆けて予熱手段を作動させることが好ましい。
【0016】
これは、内燃機関の温度が低い状況下(冷間状態)で内燃機関が始動される場合には始動時およびまたは始動後の排気エミッションや燃料消費率が悪化し易いが、内燃機関の温度が比較的高い状況下(温間状態)で内燃機関が始動される場合には始動時およびまたは始動後の排気エミッションや燃料消費率が悪化し難いからである。
【0017】
また、内燃機関の始動に関連する特定のタイミング要素としては、(1)内燃機関が搭載される車両の乗降用ドア(運転席の乗降用ドア)が開扉された時、(2)内燃機関が搭載される車両の運転座席への着座がなされた時、(3)内燃機関が搭載される車両の運転座席に設けられたシートベルトが着用された時、(4)内燃機関が搭載される車両に設けられた制動装置の作動操作がなされた時、(5)内燃機関と変速機との間に介在するクラッチ機構(連動器)の作動操作がなされた時、(6)内燃機関が搭載される車両の乗降用ドア(少なくとも運転席の乗降用ドア)の施錠が解除された時、(7)内燃機関が搭載される車両に取り付けられた盗難防止装置の作動が解除された時、(8)内燃機関が搭載される車両に設けられたキーシリンダへイグニッションキーが挿入された時などを例示することができる。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係る内燃機関の予熱装置の具体的な実施の形態について図面に基づいて説明する。
【0019】
図1は、本発明を適用する内燃機関の冷却水循環系の概略構成を示す図である。図1に示す内燃機関1は、水冷式のガソリン機関またはディーゼル機関であり、シリンダヘッド1aとシリンダブロック1bとを備えている。
【0020】
シリンダヘッド1aとシリンダブロック1bとには、冷却水が流通するためのヘッド側冷却水路2aとブロック側冷却水路2bとが各々形成され、それらヘッド側冷却水路2aとブロック側冷却水路2bが相互に連通している。
【0021】
ヘッド側冷却水路2aには、第1冷却水通路4が接続され、その第1冷却水通路4はラジエター5の冷却水流入口に接続されている。ラジエター5の冷却水流出口には第2冷却水通路6が接続されている。
【0022】
第2冷却水通路6は、サーモスタットバルブ7に接続されている。サーモスタットバルブ7には、前記した第2冷却水通路6に加え、第3冷却水通路8とバイパス通路9とが接続されている。
【0023】
サーモスタットバルブ7は、該サーモスタットバルブ7を流れる冷却水の温度が所定の開弁温度:T1未満であるときは第2冷却水通路6を遮断して第3冷却水通路8とバイパス通路9とを導通させ、該サーモスタットバルブ7を流れる冷却水の温度が前記開弁温度:T1以上であるときはバイパス通路9を遮断して第2冷却水通路6と第3冷却水通路8とを導通させるよう構成されている。
【0024】
前記第3冷却水通路8は、機械式ウォーターポンプ10の冷却水吸込口に接続されている。機械式ウォーターポンプ10は、内燃機関1の図示しない出力軸(クランクシャフト)の回転トルクを駆動源として冷却水の流れを発生させるものであり、前記した冷却水吸込口から冷却水を吸い込むとともに、吸い込んだ冷却水を冷却水吐出口から吐出するよう構成されている。前記機械式ウォーターポンプ10の冷却水吐出口は、ブロック側冷却水路2bに接続されている。
【0025】
前記したバイパス通路9は、前記した第1冷却水通路4、ラジエター5、及び第2冷却水通路6を迂回する通路であり、ヘッド側冷却水路2aと接続されている。
【0026】
次に、前記した第1冷却水通路4の途中には、ヒータホース11が接続されている。このヒータホース11は、前記した第3冷却水通路8の途中に接続されている。
【0027】
前記ヒータホース11の途中には、室内暖房用空気と冷却水との間で熱交換を行うヒータコア12が設けられている。
【0028】
前記ヒータコア12と前記第3冷却水通路8との間に位置するヒータホース11の途中には、第1バイパス通路13aが接続されている。第1バイパス通路13aは、電動ウォーターポンプ14の冷却水吸込口に接続されている。
【0029】
前記電動ウォーターポンプ14は、バッテリ25から出力される電力を駆動源として冷却水の流れを発生させるよう構成され、前記冷却水吸込口から冷却水を吸い込むとともに、吸い込んだ冷却水を冷却水吐出口から吐出する。
【0030】
前記電動ウォーターポンプ14の冷却水吐出口には、第2バイパス通路13bが接続されている。第2バイパス通路13bは、蓄熱容器15の冷却水入口15aに接続されている。
【0031】
前記蓄熱容器15は、冷却水を蓄熱状態で貯蔵する容器であり、前記冷却水入口15aから冷却水が流入した場合に、それと入れ代わりに該蓄熱容器15内に元々貯蔵されていた冷却水を冷却水出口15bから排出するよう構成されている。
【0032】
前記蓄熱容器15の冷却水出口15bには、第3バイパス通路13cが接続されている。前記第3バイパス通路13cは、前記第1冷却水通路4と前記ヒータコア12との間に位置するヒータホース11の途中に接続されている。
【0033】
なお以下では、第1冷却水通路4とヒータコア12との間に位置するヒータホース11において、前記第3バイパス通路13cとの接続部位を基準にして第1冷却水通路4側の部位を第1ヒータホース11aと称し、ヒータコア12側の部位を第2ヒータホース11bと称する。ヒータコア12と第3冷却水通路8との間に位置するヒータホース11において、第1バイパス通路13aとの接続部位を基準にしてヒータコア12側の部位を第3ヒータホース11cと称し、第3冷却水通路8側の部位を第4ヒータホース11dと称するものとする。
【0034】
前記した第1ヒータホース11aと第2ヒータホース11bと第3バイパス通路13cとの接続部位には、流路切換弁16が設けられている。流路切換弁16は、電動モータ等によって駆動され、第1ヒータホース11aと第2ヒータホース11bと第3バイパス通路13cとの何れか一を遮断するよう構成されている。
【0035】
また、前記第3バイパス通路13cにおいて蓄熱容器15の冷却水出口15bの近傍には、蓄熱容器15から排出される冷却水の温度(以下、容器出口水温と称する)に対応した電気信号を出力する容器出口水温センサ17が設けられており、前記第1冷却水通路4においてヘッド側冷却水路2aとの接続部位の近傍には、該第1冷却水通路4を流通する冷却水の温度(以下、機関側水温と称する)に対応した電気信号を出力する機関側水温センサ18が設けられている。
【0036】
このように構成された内燃機関1の冷却水循環系には、該冷却水循環系における冷却水の流れを制御するための電子制御ユニット(ECU:Electronic Control Unit)20が併設されている。このECU20は、CPU、ROM、RAM、バックアップRAMなどから構成される算術論理演算回路であり、バッテリ25の電力を駆動源として作動するよう構成されている。尚、ECU20は、乃値機関1の運転状態を制御するためのECUと独立して設けられるようにしてもよく、或いは、内燃機関1を制御するためのECUと兼用されるようにしてもよい。
【0037】
前記ECU20には、前述した容器出口水温センサ17及び機関側水温センサ18に加え、内燃機関1を搭載した車両の室内に設けられたイグニッションスイッチ21とスタータスイッチ22とヒータスイッチ23が接続されるとともに、内燃機関1を搭載した車両に設けられた乗降用ドア(好ましくは、運転座席の乗降用ドア)の開扉を検出するドアスイッチ24が接続されている。
【0038】
また、前記ECU20には、電動ウォーターポンプ14と流路切換弁16とが電気的に接続され、ECU20が電動ウォーターポンプ14及び流路切換弁16を制御することが可能となっている。
【0039】
例えば、ECU20は、内燃機関1が冷間始動後の暖機運転状態にある場合のように、機関側水温センサ18の出力信号(機関側水温)がサーモスタットバルブ7の開弁温度:T1より低い場合には、電動ウォーターポンプ14を停止させるべくバッテリ25から電動ウォーターポンプ14への電力供給を遮断するとともに、第1ヒータホース11aを遮断すべく流路切換弁16を制御する。
【0040】
この場合、電動ウォーターポンプ14が作動せずに機械式ウォーターポンプ10が作動するとともに、サーモスタットバルブ7が第2冷却水通路6を遮断し且つ第3冷却水通路8とバイパス通路9を導通させるため、図2に示されるように、機械式ウォーターポンプ10→ブロック側冷却水路2b→ヘッド側冷却水路2a→バイパス通路9→サーモスタットバルブ7→第3冷却水通路8→機械式ウォーターポンプ10の順に冷却水が流れる循環回路が成立する。
【0041】
図2に示されるような循環回路が成立すると、ヘッド側冷却水路2a及びブロック側冷却水路2bから流出した冷却水がラジエター5を迂回して流れるため、比較的低温の冷却水がラジエター5によって不要に冷却されることがなく、その結果、内燃機関1の暖機が妨げられることがない。
【0042】
その後、内燃機関1の暖機が進行して機関側水温センサ18の出力信号(機関側水温)がサーモスタットバルブ7の開弁温度:T1以上まで上昇すると、ECU20は、機関側水温がサーモスタットバルブ7の開弁温度:T1未満である場合と同様に、電動ウォーターポンプ14を停止させるべくバッテリ25から電動ウォーターポンプ14への電力供給を遮断するとともに、第1ヒータホース11aを遮断すべく流路切換弁16を制御する。
【0043】
この場合、電動ウォーターポンプ14が作動せずに機械式ウォーターポンプ10が作動するとともに、サーモスタットバルブ7がバイパス通路9を遮断し且つ第2冷却水通路6と第3冷却水通路8を導通させるため、図3に示されるように、機械式ウォーターポンプ10→ブロック側冷却水路2b→ヘッド側冷却水路2a→第1冷却水通路4→ラジエター5→第2冷却水通路6→サーモスタットバルブ7→第3冷却水通路8→機械式ウォーターポンプ10の順に冷却水が流れる循環回路が成立する。
【0044】
図3に示されるような循環回路が成立すると、内燃機関1が発生する熱を吸収した比較的高温な冷却水がラジエター5を流通することになるため、冷却水の熱がラジエター5において大気中へ放出され、それにより冷却水の吸熱能力が再生されるとともに冷却水の温度が低下する。ラジエター5において吸熱能力が再生された冷却水は、内燃機関1のヘッド側冷却水路2a及びブロック側冷却水路2bへ再流入して内燃機関1が発生する熱を好適に吸収する。この結果、内燃機関1の過熱が防止される。
【0045】
また、内燃機関1が暖機完了後の通常運転状態にあるときにヒータスイッチ23がオフからオンへ切り換えられると、ECU20は、電動ウォーターポンプ14を停止させるべくバッテリ25から電動ウォーターポンプ14への電力供給を遮断するとともに、第3バイパス通路13cを遮断すべく流路切換弁16を制御する。
【0046】
この場合、電動ウォーターポンプ14が作動せずに機械式ウォーターポンプ10のみが作動し、サーモスタットバルブ7がバイパス通路9を遮断し且つ第2冷却水通路6と第3冷却水通路8を導通させ、さらに流路切換弁16が第1ヒータホース11aと第2ヒータホース11bを導通させるため、図4に示されるように、機械式ウォーターポンプ10→ブロック側冷却水路2b→ヘッド側冷却水路2a→第1冷却水通路4→ラジエター5→第2冷却水通路6→サーモスタットバルブ7→第3冷却水通路8→機械式ウォーターポンプ10の順に冷却水が流れる第1の循環回路が成立すると同時に、機械式ウォーターポンプ10→ブロック側冷却水路2b→ヘッド側冷却水路2a→第1冷却水通路4→第1ヒータホース11a→第2ヒータホース11b→ヒータコア12→第3ヒータホース11c→第4ヒータホース11d→第3冷却水通路8→機械式ウォーターポンプ10の順に冷却水が流れる第2の循環回路が成立する。
【0047】
図4に示されるような第2の循環回路が成立すると、内燃機関1が発生する熱を吸収した高温な冷却水が第1冷却水通路4→第1ヒータホース11a→第2ヒータホース11bを介してヒータコア12へ流入するため、ヒータコア12において冷却水の熱が室内暖房用空気へ伝達され、その結果、室内暖房用空気が暖められる。
【0048】
ところで、内燃機関1が冷間状態で始動される場合は、図示しない吸気ポート周辺や燃焼室周辺の温度が低いため、燃料噴射弁から噴射された燃料が霧化(あるいは気化)し難く、吸気ポートの壁面や燃焼室の壁面へ付着し易くなるため、燃焼室内に可燃性の高い混合気を形成し難くなり、その結果、始動性の悪化や、始動時及び始動後における未燃燃料成分の排出量増加(排気エミッションの悪化)などが誘発される可能性がある。更に、内燃機関1が冷間始動される場合には、動弁機構、ピストン、コネクティングロッド、クランクシャフト等の各摺動部におけるクリアランスが適正でないため、フリクションロスが増大し、始動性の悪化や燃料消費率の悪化が誘発される可能性もある。
【0049】
これに対し、ECU20は、スタータスイッチ22がオフからオンへ切り換えられる前に内燃機関1の始動に関連した特定のタイミング要素が検出されると、始動に先駆けて内燃機関1を暖める予熱処理を実行する。
【0050】
内燃機関1の始動と関連する特定のタイミング要素としては、例えば、(1)内燃機関1を搭載する車両の乗降用ドア(運転席の乗降用ドア)が開扉された時、(2)内燃機関1を搭載する車両の運転座席への着座がなされた時、(3)内燃機関1を搭載する車両の運転座席に設けられたシートベルトが着用された時、(4)内燃機関1を搭載する車両に設けられた制動装置の作動操作がなされた時、(5)内燃機関1と変速機との間に介在するクラッチ機構の作動操作がなされた時、(6)内燃機関1を搭載する車両の乗降用ドア(少なくとも運転席の乗降用ドア)の施錠が解除された時、(7)内燃機関1を搭載する車両に取り付けられた盗難防止装置の作動が解除された時、(8)内燃機関1を搭載する車両に設けられたキーシリンダにイグニッションキーが挿入された時などを例示することができる。
【0051】
上記したような特定のタイミング要素が検出されると、ECU20は、機関側水温センサ18の出力信号(機関側水温)を読み込み、その機関側水温が所定温度未満であるか否かを判別する。
【0052】
上記した所定温度は、内燃機関1の暖機完了後における冷却水温度を基準にして、始動性、排気エミッション、燃料消費率等が悪化しない範囲で定められる温度であり、例えば、50℃程度に設定される。
【0053】
特定のタイミング要素が検出された時点における機関側水温が前記所定温度未満である場合には、ECU20は、以下に示すような予熱処理を実行する。
【0054】
すなわち、ECU20は、電動ウォーターポンプ14を作動させるべくバッテリ25から電動ウォーターポンプ14へ駆動電力を供給させるとともに、第2ヒータホース11bを遮断すべく流路切換弁16を制御する。
【0055】
この場合、機械式ウォーターポンプ10が作動せずに電動ウォーターポンプ14のみが作動するとともに、第1ヒータホース11aと第3バイパス通路13cとが導通するため、図5に示されるように、電動ウォーターポンプ14→第2バイパス通路13b→蓄熱容器15→第3バイパス通路13c→流路切換弁16→第1ヒータホース11a→第1冷却水通路4→ヘッド側冷却水路2a→ブロック側冷却水路2b→機械式ウォーターポンプ10→第3冷却水通路8→第4ヒータホース11d→第1バイパス通路13a→電動ウォーターポンプ14の順に冷却水が流れる循環回路が成立する。
【0056】
図5に示されるような循環回路が成立すると、電動ウォーターポンプ14から吐出された冷却水が第2バイパス通路13bを介して蓄熱容器15へ流入する。蓄熱容器15へ冷却水が流入すると、それと入れ代わりに蓄熱容器15内に元々貯蔵されていた高温な温水(以下、蓄熱温水と称する)が該蓄熱容器15から流出する。
【0057】
蓄熱容器15から流出した蓄熱温水は、第3バイパス通路13c→流路切換弁16→第1ヒータホース11a→第1冷却水通路4を介してヘッド側冷却水路2aへ流入し、次いでヘッド側冷却水路2aからブロック側冷却水路2bへ流入する。
【0058】
蓄熱容器15からの蓄熱温水がヘッド側冷却水路2a及びブロック側冷却水路2bへ流入すると、ヘッド側冷却水路2a及びブロック側冷却水路2bに元々滞留していた低温の冷却水がヘッド側冷却水路2a及びブロック側冷却水路2bから流出する。
【0059】
このようにしてヘッド側冷却水路2a及びブロック側冷却水路2bに蓄熱温水が充満すると、蓄熱温水の熱がヘッド側冷却水路2a及びブロック側冷却水路2bの壁面を介して内燃機関1へ伝達され、内燃機関1が好適に昇温する。
【0060】
この結果、内燃機関1の燃焼室周りの温度が高められるため、燃料の霧化が促進されるとともに壁面付着燃料量が減少し、始動性の向上と未燃燃料成分の排出量減少が図られる。更に、内燃機関1の昇温により、動弁機構、ピストン、コネクティングロッド、クランクシャフト等の各摺動部におけるクリアランスが適正値に近似するため、フリクションロスが低下して始動性の向上や燃料消費率の向上が図られる。
【0061】
尚、通常の燃料噴射制御では、内燃機関1の始動時および始動後において壁面付着燃料を見越して燃料噴射量を増量補正する制御が行われるが、予熱処理が実行された場合に従来通りの増量補正が行われると、混合気が燃料過濃な状態となり、却って燃焼安定性の悪化や未燃燃料成分の排出量増加を招く原因となる。
【0062】
これに対し、上記したような予熱処理が実行された場合には、ECU20は、始動時の燃料噴射制御にかかる増量補正量、及び始動後の燃料噴射制御にかかる増量補正量を減衰することが好ましい。その際、増量補正量の減衰率は、予熱処理が開始される時の蓄熱温水の温度(具体的には、容器出口水温センサ17が検出する容器出口水温)と機関側水温との温度差が大きくなるほど高く設定するとよい。
【0063】
また、特定のタイミング要素が検出された際の機関側水温が所定温度以上である場合は、ECU20は、内燃機関1の温度が始動性の悪化、排気エミッションの悪化、燃料消費率の悪化などの不具合を生じない程度に高いと判定して、上記したような予熱処理の実行を見合わせる。
【0064】
ところで、内燃機関1が搭載された車両の外部からの遠隔操作によりスタータスイッチ22がオフからオンへ切換操作される場合や、乗降用ドアを開扉せずに車窓越しにスタータスイッチ22がオフからオンへ切換操作される場合などは、上記したような特定のタイミング要素が検出されることなくスタータスイッチ22がオフからオンへ切り換えられる(すなわち、内燃機関1の始動が図られる)ことになるため、始動性の向上や、始動時及び始動後における排気エミッションと燃料消費率との向上を図ることが困難となる。
【0065】
そこで、本実施の形態における内燃機関1の予熱装置では、ECU20は、内燃機関1の始動に関連した特定のタイミング要素が検出される前にスタータスイッチ22がオフからオンへ切り換えられた場合には、図示しないスタータモータの作動を禁止しつつ上記したような予熱処理を実行するようにした。
【0066】
この場合、内燃機関1の始動時期が多少遅延するものの、始動性の向上、始動時及び始動後における排気エミッションと燃料消費率との向上を確実に図ることが可能となる。
【0067】
以下、本実施の形態における予熱処理について図6に沿って説明する。ここでは、内燃機関1の始動に関連した特定のタイミング要素として車両の乗降用ドアが開扉された時を例に挙げて説明する。
【0068】
図6は、予熱制御ルーチンを示すフローチャート図である。予熱制御ルーチンは、予めECU20のROMに記憶されているルーチンであり、始動に関連する特定のタイミング要素が検出された時、あるいは、スタータスイッチ22がオフからオンへ切り換えられた時にECU20が実行するルーチンである。
【0069】
予熱制御ルーチンでは、ECU20は、先ずS601においてECU20は、ドアスイッチ24がオフからオンへ切り換えられたか否かを判別する。すなわち、ECU20は、内燃機関1が搭載された車両の乗降用ドアが開扉されたか否かを判別する。
【0070】
前記S601においてドアスイッチ24がオフからオンへ切り換えられたと判定された場合は、ECU20は、S602へ進み、機関側水温センサ18の出力信号(機関側水温)を読み込む。
【0071】
S603では、ECU20は、前記S602で読み込まれた機関側水温が所定温度未満であるか否かを判別する。前記所定温度は、前述したように、内燃機関1の始動性、排気エミッション、燃料消費率等が悪化しない範囲で設定される温度であり、例えば、50℃程度に設定される。
【0072】
前記S603において機関側水温が所定温度以上であると判定された場合は、ECU20は、内燃機関1の温度が始動性の悪化、排気エミッションの悪化、燃料消費率の悪化等を招かない程度に高いため、予熱処理を実行する必要がないとみなし、本ルーチンの実行を終了する。
【0073】
前記S603において機関側水温が所定温度未満であると判定された場合は、ECU20は、内燃機関1の温度が始動性の悪化、排気エミッションの悪化、燃料消費率の悪化等を誘発する程度に低いため、予熱処理を実行する必要があるとみなし、S604へ進む。
【0074】
S604では、ECU20は、予熱処理を実行する。予熱処理では、ECU20は、電動ウォーターポンプ14を作動させるべくバッテリ25から電動ウォーターポンプ14へ駆動電力を供給させるとともに、第2ヒータホース11bを遮断すべく流路切換弁16を制御することにより、前述した図5の説明で述べたような循環回路を成立させる。
【0075】
この場合、蓄熱容器15に貯蔵されていた蓄熱温水が内燃機関1のヘッド側冷却水路2a及びブロック側冷却水路2bに供給されるとともに、ヘッド側冷却水路2a及びブロック側冷却水路2bに元々滞留していた低温の冷却水がヘッド側冷却水路2a及びブロック側冷却水路2bから流出するため、内燃機関1の温度が速やかに上昇する。
【0076】
その後、スタータスイッチ22がオフからオンへ切り換えられると、内燃機関1は昇温した状態で始動されることになるため、燃料の霧化が促進されるとともに壁面付着燃料量が減少し、始動性の向上と未燃燃料成分の排出量減少が図られる。更に、内燃機関1の昇温により、動弁機構、ピストン、コネクティングロッド、クランクシャフト等の各摺動部におけるクリアランスが適正値に近似するため、フリクションロスが低下して始動性の向上と燃料消費率の向上とが図られる。
【0077】
一方、前記したS601においてドアスイッチ24がオフからオンへ切り換えられていないと判定された場合には、ECU20は、S605へ進み、スタータスイッチ22がオフからオンへ切り換えられたか否かを判別する。
【0078】
前記S605においてスタータスイッチ22がオフからオンへ切り換えられていないと判定された場合は、ECU20は、前述したS601以降の処理を再度実行する。
【0079】
前記S605においてスタータスイッチ22がオフからオンへ切り換えられたと判定された場合は、ECU20は、内燃機関1の始動に関連する特定のタイミング要素(この場合は、乗降用ドアの開扉)が検出されないまま始動要求が発生したとみなし、S606へ進む。
【0080】
S606では、ECU20は、機関側水温センサ18の出力信号(機関側水温)を読み込む。
【0081】
S607では、ECU20は、前記S606で読み込まれた機関側水温が所定温度未満であるか否かを判別する。
【0082】
前記S607において前記機関側水温が所定温度以上であると判定された場合は、ECU20は、予熱処理を実行する必要がないとみなし、S608及びS609の処理をスキップしてS610へ進む。
【0083】
S610では、ECU20は、スタータモータの作動を許可し、内燃機関1を直ちに始動させる。
【0084】
一方、前記S607において前記機関側水温が所定温度未満であると判定された場合は、ECU20は、S608へ進み、スタータモータの作動を禁止する。次いで、ECU20は、S609へ進み、前述したS604と同様の予熱処理を実行する。
【0085】
ECU20は、前記S609の予熱処理を実行し終えると、S610へ進み、スタータモータの作動を許可して内燃機関1を始動させる。
【0086】
この場合、蓄熱容器15に貯蔵されていた蓄熱温水が内燃機関1の始動前にヘッド側冷却水路2a及びブロック側冷却水路2bへ供給されるため、内燃機関1が昇温した状態で始動されることになる。
【0087】
この結果、内燃機関1の始動時及び始動後において、燃料の霧化、壁面付着燃料量の減少、各部クリアランスの適正化等が図られることとなり、以て始動性の向上、排気エミッションの向上、及び燃料消費率の向上を実現することが可能となる。
【0088】
以上述べたように、本実施の形態に係る内燃機関の予熱装置によれば、内燃機関1の始動に関連した特定のタイミング要素が検出されないまま内燃機関1の始動要求が発生した場合であっても、内燃機関1の始動前に予熱処理を実行することが可能となるため、始動性の向上を図ることが可能になるとともに、始動時及び始動後における排気エミッションの向上及び燃料消費率の向上を図ることが可能となる。
【0089】
尚、本実施の形態では、本発明に係る予熱手段として、第1バイパス通路13a、第2バイパス通路13b、第3バイパス通路13c、電動ウォーターポンプ14、蓄熱容器15、及び流路切換弁16からなる蓄熱機構を例に挙げて説明したが、これに限られるものではなく、例えば、(1)内燃機関1の潤滑油を蓄熱状態で貯蔵しておくとともに貯蔵された潤滑油を内燃機関1の始動前に内燃機関1へ供給する機構、(2)内燃機関1と独立した燃焼室を有し、その燃焼室から排出される高温な燃焼ガスを内燃機関1の始動前に内燃機関1の吸気通路やブローバイガス通路などに供給する機構などであってもよい。
【0090】
【発明の効果】
本発明によれば、内燃機関の始動前に始動に関連する特定のタイミング要素を検出して内燃機関を予熱する内燃機関の予熱装置において、特定のタイミング要素が検出される前に始動要求が発生した場合であっても、内燃機関を確実に予熱することが可能となるため、内燃機関の始動性の向上が図られるとともに、内燃機関の始動時およびまたは始動後における排気エミッションや燃料消費率の向上が図られることとなる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明を適用する内燃機関の冷却水循環系の概略構成を示す図
【図2】内燃機関が冷間状態で運転されているときの冷却水の流れを示す図
【図3】内燃機関の暖機完了後における冷却水の流れを示す図
【図4】ヒータスイッチがオンであるときの冷却水の流れを示す図
【図5】予熱処理の実行時における冷却水の流れを示す図
【図6】本実施の形態における予熱制御ルーチンを示すフローチャート図
【符号の説明】
1・・・・内燃機関
1a・・・シリンダヘッド
1b・・・シリンダブロック
2a・・・ヘッド側冷却水通路
2b・・・ブロック側冷却水路
11・・・ヒータホース
13a・・第1バイパス通路
13b・・第2バイパス通路
13c・・第3バイパス通路
14・・・電動ウォーターポンプ
15・・・蓄熱容器
16・・・流路切換弁
20・・・ECU
21・・・イグニッションスイッチ
22・・・スタータスイッチ
23・・・ヒータスイッチ
24・・・ドアスイッチ
25・・・バッテリ
Claims (1)
- 内燃機関の始動要求を入力する入力手段と、
前記入力手段が始動要求を入力したときに、前記内燃機関を始動させる始動手段と、
前記内燃機関の始動に関連する特定のタイミング要素を検出する検出手段と、
前記入力手段が始動要求を入力する前に前記検出手段が特定のタイミング要素を検出した場合に、前記内燃機関を予熱する予熱手段と、
前記検出手段が特定のタイミング要素を検出する前に前記入力手段が始動要求を入力した場合に、前記始動手段の作動に先駆けて前記予熱手段を作動させる制御手段と、
を備えることを特徴とする内燃機関の予熱装置。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2002189686A JP2004028063A (ja) | 2002-06-28 | 2002-06-28 | 内燃機関の予熱装置 |
Applications Claiming Priority (1)
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JP2002189686A JP2004028063A (ja) | 2002-06-28 | 2002-06-28 | 内燃機関の予熱装置 |
Publications (1)
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JP2004028063A true JP2004028063A (ja) | 2004-01-29 |
Family
ID=31184029
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2002189686A Pending JP2004028063A (ja) | 2002-06-28 | 2002-06-28 | 内燃機関の予熱装置 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP2004028063A (ja) |
Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
WO2013183643A1 (ja) * | 2012-06-05 | 2013-12-12 | 日産自動車株式会社 | 内燃機関の排気装置 |
JP2014202180A (ja) * | 2013-04-09 | 2014-10-27 | トヨタ自動車株式会社 | 燃料噴射量制御装置 |
-
2002
- 2002-06-28 JP JP2002189686A patent/JP2004028063A/ja active Pending
Cited By (3)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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WO2013183643A1 (ja) * | 2012-06-05 | 2013-12-12 | 日産自動車株式会社 | 内燃機関の排気装置 |
JP2014202180A (ja) * | 2013-04-09 | 2014-10-27 | トヨタ自動車株式会社 | 燃料噴射量制御装置 |
US9951732B2 (en) | 2013-04-09 | 2018-04-24 | Toyota Jidosha Kabushiki Kaisha | Fuel injection amount control device |
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