JP2004027476A - 経糸準備機械の張力付与方法およびその装置 - Google Patents

経糸準備機械の張力付与方法およびその装置 Download PDF

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Abstract

【課題】シート状の多数の経糸をテークアップローラに接触させるとともに、経糸に対するテークアップローラの作用力を調節することにより、経糸の巻取張力を制御する張力制御過程で、テークアップローラと経糸との間のスリップの増大を抑制する。
【解決手段】シート状の多数の経糸3をテークアップローラ9に接触させるとともに、経糸3に対するテークアップローラ9の作用力を調節することにより、経糸3に所定の張力を付与する経糸準備機械の張力付与装置11において、経糸3の走行中に、経糸3とテークアップローラ9との間のスリップ状態を検出し、スリップ状態に応じて経糸3に対するテークアップローラ9の作用力を低下させつつ、経糸3の走行を継続させる。
【選択図】図1

Description

 本発明は、経糸準備機械に用いられるる張力付与装置において、張力付与装置のアクチュエータによってテークアップローラを駆動し、このテークアップローラをシート状の多数の経糸に接触させることによって、多数の経糸に張力を付与する技術、および張力を付与しながら経糸の張力を制御する技術に関する。
 特許文献1は、巻返機などの経糸張力制御装置を開示する。その経糸張力制御装置は、シート状の多数の経糸をテークアップロールに接触させるとともに、テークアップロールよりも下流の位置で経糸張力を検出し、経糸に対するロールの作用力を設定張力値に対する偏差に対応して補正することにより、経糸張力を制御している。
 特許文献1の経糸張力制御装置によると、テークアップロールと経糸との間に一旦スリップが発生すると、張力制御により経糸張力が低下させられるため、テークアップロールに対するトルクを増大させようとする結果、スリップがますます増加させられることになる。このときのスリップ状態の悪化に伴い、スリップにより経糸にダメージを与えたり、また張力が低下した状態でビームに巻き取られるため、ビーム割れ等の問題が発生し、経糸(糸巻ビーム)の品質が著しく低下する。
 特許文献2は、整経機などの経糸張力制御装置を開示する。その経糸張力制御装置は、走行する糸シートに接触するテンションローラ(テークアップローラ)、テンションローラに所定の保持トルクを与えるトルク制御装置と、テンションローラと経糸との間のスリップを検出するスリップ検出手段とを備えている。経糸の走行速度とテンションローラの周速との差すなわちスリップ量が許容範囲を逸脱したとき、スリップ検出手段は、異常信号を発生することにより、整経機などを停止させる。
 特許文献2の技術によると、生産性の低下や経糸ビームの品質低下などの問題があり、またスリップ量の許容範囲の設定が難しい。許容範囲(閾値)を厳しく設定すれば、安全性が保たれるものの、誤停止(空止まり)が発生して、ビームの生産性が著しく低下することになり、逆に、許容範囲(閾値)を寛大に設定すれば、経糸ビームの品質低下は避けられない。
 このようにスリップが増大して生じる問題は、上記の特許文献のように、経糸張力の偏差によりテークアップローラ作用力を調節するいわゆる閉ループ系の張力制御技術に限らず、設定トルクで付勢されるテークアップローラについても発生する。
特開昭64−69468号公報 特許2696550号公報
 したがって、本発明の課題は、経糸準備機械において、シート状の多数の経糸をテークアップローラに接触させるとともに、経糸に対するテークアップローラの作用力を調節することにより、経糸の巻取張力を制御する張力制御過程で、テークアップローラと経糸との間のスリップの増大を抑制することである。
 上記の課題の解決のために、本発明に係る請求項1の経糸張力付与方法は、シート状の多数の経糸をテークアップローラに接触させるとともに、予め設定される目標張力値に基づき経糸に対するテークアップローラの作用力を調節することにより、経糸に所定の張力を付与する経糸準備機械の張力付与装置において、経糸の走行中に、経糸とテークアップローラとの間のスリップ状態を検出し、スリップ状態に応じて経糸に対するテークアップローラの作用力を低下させつつ、経糸の走行を継続させている。
 そして、本発明に係る請求項2の経糸準備機械の経糸張力付与装置は、シート状の多数の経糸をテークアップローラに接触させるとともに、予め設定される目標張力値に基づき経糸に対するテークアップローラの作用力を調節することにより、経糸に所定の張力を付与する経糸準備機械において、テークアップローラに連結されテークアップローラにトルクを発生させるアクチュエータと、前記目標張力値に基づき前記アクチュエータに対するトルク指令値を出力する制御部と、経糸とテークアップローラとの間のスリップ状態を検出するスリップ検出手段とを含み、前記制御部は、経糸の走行中に、スリップ検出手段からのスリップの信号の発生に応じて、前記アクチュエータに対するトルク指令値を低下させる。
 本発明に係る請求項3の経糸準備機械の経糸張力付与装置は、シート状の多数の経糸をテークアップローラに接触させるとともに、予め設定される目標張力値に基づき経糸に対するテークアップローラの作用力を調節することにより、経糸に所定の張力を付与する経糸準備機械の張力付与装置において、テークアップローラに連結されテークアップローラにトルクを発生させるアクチュエータと、前記目標張力値に基づきアクチュエータに対するトルク指令値を出力する制御部と、経糸とテークアップローラとの間のスリップ状態を検出するスリップ検出手段とを含み、前記制御部は、経糸の走行中に、スリップ検出手段からのスリップの信号の発生に応じて、前記アクチュエータに対するトルク指令値を低下させるためのスリップ軽減制御を実行する。
 請求項4の経糸準備機械の経糸張力付与装置は、シート状の多数の経糸をテークアップローラに接触させるとともに、予め設定される目標張力値に基づき経糸に対するテークアップローラの作用力を調節することにより、経糸に所定の張力を付与する経糸準備機械において、テークアップローラに連結されテークアップローラにトルクを発生させるアクチュエータと、前記目標張力値に基づき前記アクチュエータに対するトルク指令値を出力する制御部と、経糸とテークアップローラとの間のスリップ状態を検出するスリップ検出手段と、テークアップローラの経糸走行方向下流側で経糸の実際の巻取張力を検出する張力検出器とを含み、前記制御部は、前記目標張力値に対する前記実際の巻取張力の張力偏差と予め定められるゲインとの乗算結果を張力偏差を解消する方向に加算することにより前記トルク指令値を補正して出力する第1の張力制御と、スリップ状態を軽減する方向に前記トルク指令値を補正して出力するスリップ軽減制御とを選択的に実行可能であり、前記制御部は、経糸の走行中に、前記第1の張力制御を実行し、スリップ検出手段からの所定のスリップの信号の発生時には、前記スリップ軽減制御を実行する。
 請求項5のように、前記の制御器は、スリップ軽減制御を実行した後、前記第1の張力制御に再び切り換えられる。
 請求項6の経糸準備機械の張力付与装置は、シート状の多数の経糸をテークアップローラに接触させるとともに、予め設定される目標張力値に基づき経糸に対するテークアップローラの作用力を調節することにより、経糸に所定の張力を付与する経糸準備機械において、テークアップローラに連結されテークアップローラにトルクを発生させるアクチュエータと、前記目標張力値に基づき前記アクチュエータに対するトルク指令値を出力する制御部と、経糸とテークアップローラとの間のスリップ状態を検出するスリップ検出手段と、テークアップローラの経糸走行方向下流側で経糸の実際の巻取張力を検出する張力検出器とを含み、前記制御部には、予め定められる第1のゲインおよびこれよりも小さな値に定められる第2のゲインが選択可能に設定されるとともに、前記制御部は、目標張力値に対する前記実際の巻取張力の張力偏差と前記第1のゲインとの乗算結果を張力偏差を解消する方向に加算することにより目標張力値に対応する前記トルク指令値を補正して出力する第1の張力制御と、目標張力値に対する前記実際の巻取張力の張力偏差と前記第2のゲインとの乗算結果を張力偏差を解消する方向に加算することにより前記トルク指令値を補正して出力する第2の張力制御とを選択的に実行可能にされており、前記制御部は、経糸の走行中に、前記第1の張力制御を実行し、スリップ検出手段からの所定のスリップの信号の発生時には、前記第2の張力制御を実行する。
 前記スリップ検出手段は、スリップの発生を検出したときに、前記スリップの信号としてスリップ検出の信号を出力するようにしてもよいし、スリップ量に対応して出力されるスリップ量の信号を出力するようにしてもよい。前記制御部は、上記いずれかのスリップの信号の発生により、対応するスリップ軽減制御や第2の張力制御を実行することができる。
 請求項6の前記経糸準備機械の張力付与装置には、前記スリップ検出手段からのスリップ量の信号に対し前記制御を行うべく定められる許容範囲よりも外側に設定される警報用の閾値範囲が設定されており、スリップ量が閾値範囲から逸脱したとき、警報信号を出力する警報部が設けられる。
 上記のように、本発明は、経糸準備機械の張力付与装置において、シート状の多数の経糸をテークアップローラに接触させ、テークアップローラ駆動用のアクチュエータに対する張力制御の指令値によって、経糸に対するテークアップローラの作用力を調節し、経糸に所定の張力を付与する制御の過程で、走行中の経糸とテークアップローラとの間のスリップ状態に応じて、テークアップローラに対する指令値を変更することによって、経糸に対するテークアップローラの作用力を低下させている。
 アクチュエータは、通常、経糸の走行方向に抗する方向にトルクを発生させる。つまり経糸準備機械、例えばクリールからの経糸の引き出し抵抗分による付与張力よりも高い巻取張力で巻き取るために、アクチュエータは、テークアップローラに対して経糸の走行方向に抗する方向にトルクを作用させ、この作用力によって、経糸張力の不足分を補う。アクチュエータのトルクに対しシート状の多数の経糸から受ける力が勝るため、テークアップローラは、経糸の走行方向に従動回転させられる。この結果、アクチュエータは、テークアップローラに対してトルクを作用させながら、テークアップローラとともに回転することになる。走行中の経糸とテークアップローラとの間で、スリップが発生すると、テークアップローラの周速度が経糸の速度に対し低下するとともに、経糸の巻取張力が低下する。
 このとき、本発明の制御は、テークアップローラの作用力が低下する方向にトルク指令値を補正して、スリップを軽減した上で、経糸張力を目標値にもどす。より詳しくは、経糸の走行方向に抗する方向にトルクを作用させるときに、負のトルク指令値をアクチュエータに対して与えるように張力制御装置が構成されているとき、スリップが発生したときに、正の値の補正値をトルク指令値に加算して補正することにより、トルク指令値出力を減少させる。この結果、スリップが軽減されてテークアップローラの経糸に対する作用力をより有効に作用させることが可能になり、結果的に、経糸張力を目標値に戻すことが可能になる。
 なお、経糸の種類によっては、クリールの引き出し抵抗よりも低い巻き取り張力とする必要があり、このような場合、経糸に対するテークアップローラの作用力は、上記のように、経糸の走行方向に抗する方向に限らず、逆に順方向に作用させることもある。このために、アクチュエータは、経糸の走行方向(順方向)にトルクを発生させる。つまり、クリールの引き出し抵抗分による付与張力よりも低い巻取張力で経糸を巻き取るために、アクチュエータからテークアップローラに与える作用力は、クリールの引き出し抵抗の一部をを打ち消すように作用する。上記例と同様に、テークアップローラは、アクチュエータとともに経糸の走行方向に従動回転させられれる。走行中の経糸とテークアップローラとの間で、スリップが発生すると、ローラの周速度が糸速度に対し速くなるとともに、経糸の巻取張力が上昇する。より詳しくは、経糸の走行方向の順方向にトルクを作用させるときに正のトルク指令値をアクチュエータに対して与えるように張力制御装置が構成されているとき、スリップが発生したときに負の値の補正値をトルク指令値に加算して補正し、トルク指令値出力を減少させることにより、前者同様スリップが軽減され、経糸張力を目標値に戻すことが可能になる。
 トルク指令値は、経糸に対する付与張力の設定値(初期値)と張力制御での張力偏差に対する補正値との加算結果として定義される。上記のように、制御の目的、指令値は、以下の2つの具体例のときに変更される。(1)スリップ発生時に、一旦スリップ量が減少させられる方向に指令値を変更し、スリップ量が低下した後に張力制御を再開する。この制御によると、テークアップローラとシート状の多数の経糸とのスリップが一旦減少または解消する状態にさせられるため、スリップ発生時に比べ、テークアップローラは、経糸に対し作用力を確実に伝達可能になり、その後の張力制御を確実に実行できる。スリップが発生しているにもかかわらず、スリップを減少させないまま作用力を増大させる方向に変更する結果、スリップが増大し、経糸にダメージを与えてしまうという問題を防止できる。(2)スリップ発生時に、これ以降のスリップの増大を抑えるために、張力偏差に対応して出力する補正値を減少させるか、あるいは補正値を出力しないようにする。この制御によると、従前と変わらない補正値出力によりスリップ量が急速に増大することによる経糸品質の不良(ビーム割れ)や、張力異常により機械が停止する結果、経糸ビームの生産性低下といった不都合を防止する。なお、スリップ状態に応じて指令値を変える方法として、補正量を変える、設定値そのものを変えるのいずれも考えられる。
 スリップ状態の検出手段は、(1)経糸の走行速度とテークアップローラの周速度の差を用いて検出するか、または(2)糸張力の変動量を検出し、張力変動をスリップ状態に対応するものとして代用検出する。スリップ状態の検出には、スリップの有・無を検出する、スリップ量(スリップ率)を検出するの2つが考えられる。
 なお(1)の場合である速度差により検出するスリップ率について、例えば以下の2つの指標(スリップ量・スリップ率)が考えられる。経糸の巻取速度の設定に応じて閾値を調節しなくても済むことから、好ましくはスリップ率とする。
スリップ量=(経糸の走行速度SP1)−(テークアップローラの周速SP2)
スリップ率=(SP1−SP2)×100/SP1〔%〕
  請求項1の経糸張力付与方法および請求項2の経糸張力付与装置によると、経糸準備機械の張力付与装置において、シート状の多数の経糸の走行中に、経糸とテークアップローラとの間のスリップ状態を検出し、スリップ状態に応じて経糸に対するテークアップローラの作用力を低下させつつ、経糸の走行を継続させているから、経糸準備機械の運転状態を継続したまま、スリップ状態に対応して張力付与用のテークアップローラの作用力を調節できるから、従来のような不都合、つまりスリップ状態が悪化しているにもかかわらず、テークアップローラの作用力の増大を続ける結果、経糸にダメージを与えてしまうという不都合が解消し、従来の技術に比べ経糸の生産性や経糸の品質が向上する。
 より具体的には、請求項3の経糸張力付与装置のように、目標張力値に対応して決定されたトルク指令値でアクチュエータが駆動され、このアクチュエータが作用力を発生すする張力付与装置に適用することも可能である。後述の装置に比べて構成が簡略化されたこのような装置で、仮に一時的にスリップが発生したとしても、スリップ軽減制御を実行することにより、それ以降のスリップが阻止され、目標張力値に対応するトルクを継続的に付与することができる。
 請求項3および請求項4の経糸張力付与装置によると、経糸の走行中に、スリップ検出手段からの所定のスリップの信号の発生前には、目標張力値に対する前記実際の巻取張力値の偏差と予め定められるゲインとの乗算結果を、張力偏差を解消する正または負の方向に加算することにより、目標張力値に対応する前記トルク指令値を補正して出力する第1の張力制御部による前記の張力制御を行わせ、スリップ検出手段からの所定のスリップの信号の発生時には、張力制御部からスリップ制御部に切換え、スリップ制御部によって、スリップ状態を軽減する方向に前記トルク指令値を補正して出力するスリップ軽減制御を行わせるから、スリップの発生時それがただちに軽減されるため、テークアップローラは経糸に対する力を確実に作用可能な状態になる。
 請求項5の経糸張力付与装置によると、スリップ軽減制御を実行した後、スリップ軽減制御に切り換えられた直前の張力制御に再び切り換えられるから、スリップ発生前の張力制御がすみやかに再開され、経糸の品質がより向上する。
 請求項6の経糸張力付与装置によると、目標張力値に対する前記実際の巻取張力値の偏差と前記第1のゲインとの乗算結果を張力偏差を解消する方向に加算することにより、目標張力値に対応する前記トルク指令値を補正して出力する第1の張力制御を実行し、スリップ検出手段からの所定のスリップの信号の発生時には、第1のゲインよりも小さく定められた第2のゲインとの目標張力値に対する前記実際の巻取張力値の偏差との乗算結果を張力偏差を解消する方向に加算することにより、目標張力値に対応する前記トルク指令値を補正して出力する第2の張力制御を実行するから、張力制御に伴いスリップの増大される方向に対するトルク指令値のさらなる増大が抑えられ、従来のようなスリップの増大に伴う経糸への損傷(毛羽や糸切れの発生等)が抑制できる。
 請求項7の前記経糸準備機械の張力付与装置には、警報部が設けられ、過大なスリップの発生に対応して、警報信号が出力されるから、機械に対する信頼性が向上する。
 図1は、本発明に係る経糸張力制御装置1を経糸準備機械としての整経機に組み込んだ実施形態を示している。図1において、多数の経糸3は、クリール2に配置された多数の給糸体5から引き出され、それぞれテンサ6を経て上下のガイドローラ7の間を通過し、シート状となって、経糸準備機械の張力付与装置11に案内され、ここで2つのプレスローラ8によりテークアップローラ9に巻き掛けられてから、テンションローラ10を経て巻取装置20のビーム4の軸の外周に巻き取られる。
 2つのプレスローラ8、テークアップローラ9および後述のアクチュエータ12は、経糸準備機械の張力付与装置11を構成している。張力付与装置11は、経糸3に対するテークアップローラ9の作用力を調節することにより、経糸3に所定の張力を付与する。テークアップローラ9は、多数のシート状の経糸3に接触する状態として設けられるため、シート状の経糸3の走行に伴いその走行方向に従動的に回転する。
 テークアップローラ9は、中心の軸の部分でアクチュエータ12の出力軸に連結されている。アクチュエータ12は、張力制御ユニット13の内部の制御部14および電流発生部15により制御される。制御部14は、シート状の経糸3に所定の張力を付与するために、引出張力設定器16からの引出張力Ts2の信号、巻取張力設定器17からの目標の巻取張力Ts1の信号、スリップ検出手段18からのスリップS(スリップ量S1またはスリップ検出S2)の信号、および張力検出器19からの実際の巻取張力Tの信号を入力として、トルク指令値Tcの信号を発生し、このトルク指令値Tcの信号を電流発生部15に送る。なお、引き出し張力設定器16には、各テンサ6により全経糸3に対して付与される引き出し張力の概算値が引き出し張力値として設定されており、また巻取張力設定器17には、ビーム4に巻取る際の所望の巻取張力値が目標の張力値として設定されている。
 電流発生部15は、制御部14からのトルク指令値Tcの信号に基づいて、トルク指令電流Tiを発生し、このトルク指令電流Tiによりアクチュエータ12を駆動し、テークアップローラ9に回転方向の所定のトルクを発生させる。このトルクは、既に記載したように、テークアップローラ9に作用し、経糸3に所定の張力を発生させることになる。
 スリップ検出手段18は、テークアップローラ9に連結されている速度検出器21および補正回路23からのテークアップローラ9の周速度SP2の信号と、テンションローラ10に連結されている速度検出器22からの経糸3の走行速度SP1の信号とを入力として、スリップ量S1の計算式S1=(SP1−SP2)/SP1からスリップ量S1の信号を発生するか、またはスリップ検出S2の計算式S2=(SP1−SP2)≠0のときスリップ検出S2の信号を発生する。スリップ量S1は、スリップ率を含む概念であり、スリップの大きさに関連する。これに対して、スリップ検出S2の信号は、スリップの有無に対応している。
 なお、補正回路23は、テークアップローラ9の外径とテンションローラ10の外径との相違を信号処理により一致させるためにある。また、張力検出器19は、例えばロードセルなどであり、テークアップローラ9の位置より経糸3の走行方向の下流側で、テンションローラ10を支える部分に組み込まれ、テンションローラ10に巻き掛けられている多数の経糸3の合力から各経糸3の実際の巻取張力Tの信号を発生する。
 なお、巻取装置20のビーム4は、モータ24および巻取制御装置25により駆動される。巻取制御装置25は、巻取速度設定器26からの巻取速度の信号とテンションローラ10に連結された回転検出器22からの回転(走行速度SP1)の信号とを加え合わせ点27の位置で図示の符号のもとに加減算し、加減算値を入力とする電流増幅器28の出力によりモータ24を駆動する。巻取速度設定器26は、巻径センサ29によりビーム4の巻径を検出し、その巻径の増大に反比例して巻取速度を減少させることにより、所定の巻取速度に対応する速度指令信号を出力する。もちろん巻取制御装置25での巻取速度、目標の経糸張力Ts1、引出張力Ts2などは、経糸3の糸種に応じて決定され、設定される。
 つぎに、図2は、実施例1(張力制御+スリップ軽減制御)による制御部14の構成を示している。また、図3は、実施例1による制御過程において、突発的に負(マイナス)の方向に、目標の経糸張力Ts1と実際の巻取張力Tとの差、つまり張力偏差ΔTが生じたときに、図2の制御部14による張力制御、スリップ軽減制御および張力制御の再開の一連の行程を時刻t上で示している。
 図2において、制御部14は、張力制御部30、スリップ制御部31および切換制御部32により構成されている。引出張力設定器16からの引出張力Ts2の信号および巻取張力設定器17からの目標の経糸張力Ts1の信号は、第1の加算点33で図示の符号のもとに加算され、加算結果の(Ts1−Ts2)の信号は、第2の加算点34で図示の符号のもとに積分器43の出力(通常の補正量g・Hまたは補正値−q)と加算され、最終的に目標の巻取張力設定値に対応するトルク指令値Tcとなる。
 経糸3の走行中に、スリップ検出手段18は、経糸3とテークアップローラ9の外周面との間でのスリップ状態を検出するために、速度検出器21からの経糸3の走行速度SP1と速度検出器22からの従動回転させられるテークアップローラ9の周速度SP2とを入力として、例えば前記計算式スリップ量S1=(SP1−SP2)/SP1からスリップ量S1を求め、このスリップ量S1の信号をスリップ制御部31、切換制御部32、および張力付与装置11に付設されている警報部46に送っている。
 切換制御部32の比較器39は、スリップ量S1と閾値設定器40からのスリップ量S1の閾値UL1とを比較して、スリップ量S1≦スリップ量の閾値UL1のときに、スリップ無しとみなし、比較出力C1を発生しない。このため、切換信号発生器41は、切換回路42を初期状態ままとしている。したがって、初期の切換状態の切換回路42は、張力制御部30の出力(補正量g・Hの信号)のみを積算器43経由で第2の加算点34に送っている。
 ここで経糸張力が図3の時刻t0の時点で、目標の経糸張力Ts1に対してして張力偏差ΔTだけ突発的に減少して張力偏差を生じたときを考える。この時点で、張力制御部30は、経糸3に対する第1の張力制御を継続しており、目標の経糸張力Ts1の信号と、張力検出器19からの実際の巻取張力Tの信号とを比較器35により比較するとともに、目標の経糸張力Ts1と実際の巻取張力Tとの差から張力偏差ΔT=(Ts1−T)を計算し、それを信号発生器36の入力とする。信号発生器36は、経糸準備機械の運転中に動作するクロック信号発生器50からのクロック信号Ckに同期して動作し、張力偏差ΔT>0のとき補正値H=−aに対応する信号を、張力偏差ΔT=0のとき補正値H=0に対応する信号を、また張力偏差ΔT<0のとき補正値H=aに対応する信号をそれぞれ発生して、乗算器37に送る。なおクロック信号発生器50は、所定の制御周期でクロック信号Ckを出力している。このため、張力制御部30は、クロック信号Ckの入力に同期して、補正値Hを更新することになる。
 乗算器37は、更新された補正値Hの信号を受けるごとに、ゲイン設定器38により設定されているゲインgを補正値Hに掛けて、第1の張力制御のために、張力偏差ΔTを解消する方向の通常の補正量g・Hの信号を発生する。この通常の補正量g・Hの信号は、第1の張力制御のために、初期の切換状態の切換回路42を通過し、積分器43を経て、第2の加算点34に図示の符号のもとに送られる。
 なお、後段の積分器43は、クリール2から引き出される経糸3の引出張力Ts2の経時的な変動に対応するために設けられている。すなわち、経糸3の引出張力Ts2が例えば給糸体の巻径の減少により経時的に変動するため、積分器43は、張力制御部30からの補正量g・Hの信号を積分することによって、変動に対応する補正量を積分値として蓄積し、その積分出力を最終的な補正出力と第2の加算点34に送る。なお、糸種の変更等の条件変更時に、リセットRの信号が積分値をゼロに戻しておく。
 この結果、制御部14の出力つまりトルク指令値Tcは、最終的に、(+目標の経糸張力Ts1)+(−引出張力Ts2)+(+補正量g・H)となる。このようにして、張力制御部30は、スリップ量S1≦スリップ量の閾値UL1であるかぎり、張力検出器19からの実際の巻取張力Tの信号に基づき、目標の経糸張力Ts1の信号に対する張力偏差ΔTを解消する方向にトルク指令値Tcを補正して出力し、経糸3に対するアクチュエータ12の作用力(トルク)を調節することによって、経糸3の実際の巻取張力Tを目標の巻取張力Ts1に近づけるための第1の張力制御を継続することになる。
 図3において、経糸3の走行中に、時刻t1の時点で、スリップ量S1>スリップ量の閾値UL1となったときに、切換制御部32の比較器39は、比較出力C1を発生し、これを切換信号発生器41に送る。ここで、切換信号発生器41は、クロック信号発生器50からのクロック信号Ckに同期して動作し、所定の時間すなわち図3の時刻t1から時刻t2までの期間にわたって切換指令CHを発生する。この切換指令CHの発生によって切換回路42は、張力制御部30の出力(補正量g・Hの信号)からスリップ制御部31の出力(補正値−qの信号)へと切り換える。このときスリップ制御部31の信号発生器44は作動状態となる。
 ここで、スリップ制御部31は、スリップ軽減制御を行うために設けられる。すなわちスリップ制御部31内の信号発生器44は、補正値設定器45に設定されている補正値qを負の補正値−qの信号として発生し、この補正値−qの信号を切換回路42、積分器43を経て、第2の加算点34に図示の符号のもとに送る。なお、スリップ制御部31の信号発生器44は、クロック信号Ckの入力に伴い、そのクロック信号Ckに同期して動作し、補正値−qを出力する。この結果、時刻t1から時刻t2までの時間にわたって、制御部30の出力つまりトルク指令値Tcは、(+目標の経糸張力Ts1)+(−引出張力Ts2)+(補正値−q)となり、図3のように、時刻t1から時刻t2までの時間にわたって、急激に低下することにより、アクチュエータ12の出力トルクを低下させる。
 時刻t1から時刻t2までのスリップ軽減制御によって、経糸3に対するテークアップローラ9の作用力が低下し、経糸3とテークアップローラ9との間のスリップは、直ちに低下し、時刻t1から時刻t2までの期間中に無くなる。これにより、経糸3およびテークアップローラ9は、それ以降、両者間の静止摩擦により滑りのない状態で接触し、それぞれ走行または回転する。時刻t2の時点で、両者の力関係は、スリップ量S1≦スリップ量の閾値UL1の状態、換言すればスリップが解消あるいは軽減される状態に戻る。一方、時刻t2の時点で、切換回路42は、切換信号発生器41からの切換指令CHにより切り換えられ、スリップ軽減制御からもとの第1の張力制御に切り換える。この切り換えにより、制御部14は、再度、張力制御部30による切り換え直前の第1の張力制御を再開させる。
 上記のように、図2の制御部14は、目標の経糸張力Ts1とクリール2による引出張力Ts2との減算結果、つまりテークアップローラ9の受持ち分のトルク(初期値)に対し、制御部30からの補正量g・Hを加算出力する方式として回路構成されている。なお、目標の経糸張力Ts1、引出張力Ts2などは、経糸3の糸種に対応して設定され、テークアップローラ9の付勢方向および付勢力(トルク指令値Tc)は、2つの設定張力の差に応じて決定される。
 また、補正量g・Hは、ゲイン設定器38により調節可能である。補正量g・Hを過大にすると、スリップが発生し、補正量g・Hを過小にすると、張力の整定に時間がかかるため、これらの事情を考慮して適切な値に定める。実際には、数回の制御動作により偏差が解消されるよう、1回あたりの補正量を小さくする。糸種変更時、クリール2による経糸3に対する付与張力は、計算等で求められる仮の値を初期値として設定されるため、上記付与張力と実際の引出張力Ts2とにずれが生じている。また、給糸体5では、巻径の減少てなどにより引出し抵抗も変わる。従って、機械の運転に伴い、張力制御が行われる結果、積分器43の出力(積分値)は、これらのずれを補う方向に変更されていく。
 前記のように、図3において、時刻t上の時刻t0の時点で、突発的に負(マイナス)の方向に張力偏差ΔTが発生したとき、時刻t0以降、張力制御が行われるため、張力制御の出力としてのトルク指令値Tcは、それに伴い次第に大きくなり、経糸3に対するテークアップローラ9の作用力(トルク)も増大する。このトルクの増大により、経糸3とテークアップローラ9との間にスリップが起きると、このスリップがスリップ検出手段18によりスリップ量S1の上昇ということにより検出される。もちろん、トルク指令値Tcが次第に大きくなるものの、このスリップの発生により、実際の巻取張力Tは、張力制御の意図どうりに高まらない。
 なお、張力制御系は、閉ループを構成しているが、制御動作の安定化のために、運転開始時や停止時などの過渡状態のときに、必要に応じて一時的に不作動の状態に設定してもよい。また、過渡的な回転状態のときには、目標の経糸張力Ts1などは、定常時よりも低く設定することもできる。
 なお、時刻t1から時刻t2までの時間中に、スリップ軽減制御が実行されるものの補正値qの設定ミスなど何らかの原因により、スリップ量S1がさらに増大を続けたとき、警報部46の比較器47は、スリップ量S1と警報用閾値設定器48からのスリップ量S1の閾値UL2とを比較して、スリップ量S1≧スリップ量の閾値UL2のときに、比較出力C2を発生し、警報信号発生器49に音または光の警報信号Aを発生させるようにしてもよい。通常、スリップ量S1がさらに増大を続けたときに、警報信号Aが発生するように、閾値UL2は、スリップ量S1の閾値UL1よりも大きい値として設定される。この警報信号Aは、音または光の警報と発生用として、あるいは制御ボックスなどの警報表示用として利用されるほか、整経機(クリール2および巻取装置20)を停止させるための信号としても利用される。
 図示の例において、テークアップローラ9は、経糸3の走行方向に反する方向(逆方向)に所定のトルクにより付勢されているが、その付勢方向は、逆に経糸3の走行方向と同じ方向(順方向)に設定することもできる。付勢方向を経糸3の走行方向と同じ方向(順方向)に設定する場合、スリップ状態の判別や、スリップに対する補正量等の設定もそれに合わせて変更される。また、制御部14における経糸張力制御を行うための構成について、積分器43をベースに張力制御系を構成したが、他の要素例えば比例要素を含むように公知のPID制御器を利用して構成することもできる。さらに、スリップ軽減制御(動作)における補正値−qの出力態様については、(1)所定期間にわたり、一定値の補正値を出力、(2)所定期間にわたり、経時的に増大または減少する補正値を出力、(3)スリップ軽減制御(動作)から張力制御に戻すことについて、スリップが軽減されたことを検出して戻すか、あるいはスリップの軽減結果に関係なく戻すようにしてもよい。前記(2)について、刻々と変化するスリップ量の大きさ毎に補正量を変更することも可能である
 次に図4は、実施例2(スリップ軽減制御)による制御部14の構成を示しており、図2に対して、張力制御部30および切換制御部32ガ省略されたものであり、通常時には、目標の経糸張力Ts1と引出張力Ts2との差から求めたトルク指令値Tcに対応するトルクを発生させ、その後、スリップの発生時には、スリップ制御部31によりスリップ軽減制御のみを実行する例である。
 この例で、アクチュエータ12は、テークアップローラ9に対して、専ら設定されたトルク指令値Tcに対応するトルクを与えている。補正の必要なスリップ状態が発生したとき、スリップ制御部31は、前記と同様に、トルク指令値Tcに補正値−qを加算し、トルク指令値Tcを減少させ、スリップを抑制する。
 なお、制御部14の内部に張力監視部51が設けられている。張力監視部51内の比較器52は、経糸3の実際の巻取張力Tと監視用閾値の設定器53からの閾値UL3とを比較し、閾値UL3>実際の巻取張力Tのときに、張力異常として比較出力C3を発生し、監視信号発生器54に監視信号Wを発生させる。この監視信号Wは、整経機(クリール2および巻取装置20)を停止させるための信号として利用される。
 従って、スリップ発生後、スリップ制御部31によりスリップ軽減制御が実行されているにもかかわらず、何らかの原因により張力異常が発生したときに、張力監視部51がそれを検出して適切に対応するから、機械(整経機)の安全性が高められる。このように、スリップ発生後、スリップ制御部31によりスリップ軽減制御が実行され、張力監視部51が張力異常を検知するまでの期間に、スリップが軽減された状態で、機械(整経機)の運転が継続されるため、その分、経糸3のビーム4の生産性が向上することになる。
 なお、機械(整経機)の運転開始・停止時など、経糸3の走行速度SP1が過渡状態にあるとき、経糸3の実際の巻取張力Tが変動する結果、張力のハンチング現象が起きやすくなり、一時的にスリップ軽減制御が実行されることにより、不都合が発生する場合にはこれを不作動にするようにしてもよい。
 つぎに、図5は、実施例3(張力制御)による制御部14の構成を示しており、図2に対して、スリップ制御部31および切換制御部32が省略されたものであり、張力制御のみを実行するとともに、ゲイン補正部55を付設し、通常時には、実施例1と同様に、第1の張力制御を実行するとともに、スリップの発生後は、そのとき以上のスリップ量S1の増大を阻止するために、第2の張力制御を実行することによって、張力偏差ΔTに対応するトルク指令値Tcの補正量g・Hを抑制する例である。
 図5のように、ゲイン補正部55は、制御部14の内部に設けられ、ゲイン補正部55内の係数発生器56は、クロック信号発生器50からクロック信号Ckを入力したときにゲイン係数設定器57からの設定値に基づいて、スリップ量S1を関数k=f(S1)とする係数kの信号を発生し、これを乗算器37に送る。その結果、乗算器37の出力つまり張力制御部30の出力は、入力これた3つの値、すなわち係数k、ゲインg、補正値Hを乗じることにより、抑制された補正量k・g・Hとなる。
 このように、スリップ量S1に対応して定められる係数kを補正のもとになる補正量g・Hに乗じることにより張力偏差ΔTに対応するトルク指令値Tcの補正量g・Hが抑制される。ここで係数kは、スリップ無しの時に「1」とし、許容範囲を超えたスリップ発生時に「1」未満(0を含む)に定められる。
 図6は、スリップ量S1に対する係数kの設定例を示している。図6の(1)は、スリップ量S1の増加に伴い係数kを連続比例的に「1」からも小さくする例である。図6の(2)は、スリップ量S1の増加に伴いスリップ量S1の一定の範囲毎に係数kを「1」から階段状に小さくする例である。図6の(3)は、スリップ量S1の所定の許容範囲で係数kを「1」とし、スリップ量S1の増加に伴いスリップ量S1の一定の範囲毎に係数kを「1」から階段状に小さくする例である。さらに図6の(4)は、スリップ量S1の所定の許容範囲例えばば0〜閾値ULの範囲で係数kを「1」とし、その閾値ULを越えたときに係数kを「0」とする例である。
 図7は、前記図3と同様に、突発的に負(マイナス)の方向に張力偏差ΔT(目標の巻取張力TS1と検出巻取張力Tとの差)が生じたとき、図5の制御部14による張力制御の一連の行程を示している。なお、この張力制御で、図6の(4)の係数kの設定例が採用されているものとする。図7の時刻t上の時刻t0の時点で、突発的に負(マイナス)の方向に張力偏差ΔTが発生したとき、時刻t0以降、第1の張力制御が行われるため、張力制御の出力としてのトルク指令値Tcは、それに伴い次第に大きくなり、経糸3に対するテークアップローラ9の作用力(トルク)も増大する。このトルクの増大によって、経糸3とテークアップローラ9との間にスリップが起きると、このスリップがスリップ検出手段18によりスリップ量S1の上昇ということにより検出される。トルク指令値Tcが次第に大きくなるものの、このスリップの発生により、実際の巻取張力Tは、張力制御の意図どうりに高まらない。
 時刻t1の時点で、スリップ量S1がスリップ量S1の閾値ULに到達すると、ゲイン補正部55により、係数k=1から係数k=0に切り換わるため、張力制御部30は、結果的に不作動になる。このとき増大していたトルク指令値Tcは現在(時刻t1の時点)の値を維持したままであり、それ以降も機械(整経機)の運転は継続される。スリップ量S1がスリップ量S1の閾値UL未満になれば、張力制御部30は、再び張力制御を開始する。なおもスリップ量S1が大きくなって、閾値UL2を越えると、図4と同様に設けられる張力監視部51は、前記の通り、監視信号Wを出力することになる。
 実施例1ないし実施例3において、図2、図4および図5での制御部14は、専用の回路として構成されているが、その機能は、コンピュータと制御のソフトウエアとの組み合わせにより実現することもできる。もちろん張力御部30などの内部構成は、図示の例に限定されない。また、スリップ状態は、実施例のような速度差によって検出できるほか、特許2696550号の発明のように、スリップの発生による張力変動から検出することもできる。また、図5のゲイン補正部55は、図2の回路の乗算器37に組み込むこともできる。
 本発明は、整経機のほか、一方の経糸ビームから他方の経糸ビームに巻き返す巻取装置や、複数のセクショナルビームから経糸ビームに巻取る巻返し機など、シート状の多数の経糸3を送給する経糸準備機械に広く適用できる。なお、張力付与装置11のテークアップローラ9は、巻取装置側に設けられる形態のほか、送出側に設けられる形態、さらに経糸糊付装置のように、全工程の長い機械の場合に、中間工程上(糊付工程・乾燥工程)に配置されるもの、さらには、経糸準備機械において、張力付与の必要な箇所に2以上適宜配置される。
クリール2から経糸3を引き出し、張力付与装置11により経糸3に所定の張力を付与した後に、巻き取り装置20によりビーム4に巻き取る過程の全体構成図である。 実施例1での制御部14のブロック線図である。 実施例1において、突発的に負(マイナス)の方向に張力偏差ΔT(目標の巻取張力Ts1と実際の巻取張力Tとの差)が生じたとき、図2の制御部14による張力制御、スリップ軽減制御および張力制御の再開の一連の行程を示している。 実施例2での制御部14のブロック線図である。 実施例3での制御部14のブロック線図である。 実施例3での係数kの設定例のグラフである。 実施例3において、突発的に負(マイナス)の方向に張力偏差ΔT(目標の巻取張力Ts1と実際の巻取張力Tとの差)が生じたとき、図5の制御部14による張力制御、スリップ軽減制御および張力制御の再開の一連の行程を示している。
符号の説明
 1 経糸張力制御装置
 2 クリール
 3 経糸
 4 ビーム
 5 給糸体
 6 テンサ
 7 ガイドローラ
 8 プレスローラ
 9 テークアップローラ
 10 テンションローラ
 11 経糸準備機械の張力付与装置
 12 アクチュエータ
 13 張力制御ユニット
 14 制御部
 15 電流発生部
 16 引出張力設定器
 17 巻取張力設定器
 18 スリップ検出手段
 19 張力検出器
 20 巻取装置
 21 速度検出器
 22 速度検出器
 23 補正回路
 24 モータ
 25 巻取制御装置
 26 巻取速度設定器
 27 加え合わせ点
 28 電流増幅器
 29 巻径センサ
 30 張力制御部
 31 スリップ制御部
 32 切換制御部
 33 第1の加算点
 34 第2の加算点
 35 比較器
 36 信号発生器
 37 乗算器
 38 ゲイン設定器
 39 比較器
 40 閾値設定器
 41 切換信号発生器
 42 切換回路
 43 積分器
 44 信号発生器
 45 補正値設定器
 46 警報部
 47 比較器
 48 警報用閾値設定器
 49 警報信号発生器
 50 クロック信号発生器
 51 張力監視部
 52 比較器
 53 設定器
 54 監視信号発生器
 55 ゲイン補正部
 56 係数発生器
 57 ゲイン係数設定器
 Tc トルク指令値
 T  実際の巻取張力
 Ts1 目標の経糸張力
 Ts2 引出張力
 ΔT  張力偏差
 Ti トルク指令電流
 SP1 走行速度
 SP2 周速度
 S  スリップ
 S1 スリップ量
 S2 スリップ検出
 Ck  クロック信号
 C1、C2、C3、 比較出力
 −q 補正値
 R  リセット
 H  補正値
 CH 切換指令
 g  ゲイン
 g・H 第1の張力制御による補正量
 k・g・H 第1の張力制御による補正量
 t、t0、t1、t2 時刻
 UL、UL1、UL2、UL3 閾値
 W  監視信号
 k  係数
 A  警報信号

Claims (7)

  1.  シート状の多数の経糸(3)をテークアップローラ(9)に接触させるとともに、予め設定される目標張力値に基づき経糸(3)に対するテークアップローラ(9)の作用力を調節することにより、経糸(3)に所定の張力を付与する経糸準備機械において、
     経糸(3)の走行中に、経糸(3)とテークアップローラ(9)との間のスリップ状態を検出し、スリップ状態に応じて経糸(3)に対するテークアップローラ(9)の作用力を低下させつつ、経糸(3)の走行を継続させることを特徴とする経糸準備機械の張力付与方法。
  2.  シート状の多数の経糸(3)をテークアップローラ(9)に接触させるとともに、予め設定される目標張力値に基づき経糸(3)に対するテークアップローラ(9)の作用力を調節することにより、経糸(3)に所定の張力を付与する経糸準備機械において、
     テークアップローラ(9)に連結されテークアップローラ(9)にトルクを発生させるアクチュエータ(12)と、前記定められる目標張力値に基づき前記アクチュエータ(12)に対するトルク指令値(Tc)を出力する制御部(14)と、経糸(3)とテークアップローラ(9)との間のスリップ状態を検出するスリップ検出手段(18)とを含み、 前記制御部(14)は、経糸(3)の走行中に、スリップ検出手段(18)からのスリップ(S)の信号の発生に応じて、アクチュエータ(11)に対するトルク指令値(Tc)を低下させることを特徴とする経糸準備機械の張力付与装置(11)。
  3.  シート状の多数の経糸(3)をテークアップローラ(9)に接触させるとともに、予め設定される目標張力値に基づき経糸(3)に対するテークアップローラ(9)の作用力を調節することにより、経糸(3)に所定の張力を付与する経糸準備機械において、
     テークアップローラ(9)に連結されテークアップローラ(9)にトルクを発生させるアクチュエータ(12)と、前記目標張力値に基づきアクチュエータ(12)に対するトルク指令値(Tc)を出力する制御部(14)と、経糸(3)とテークアップローラ(9)との間のスリップ状態を検出するスリップ検出手段(18)とを含み、
     前記制御部(14)は、経糸(3)の走行中に、スリップ検出手段(18)からのスリップ(S)信号の発生に応じて、アクチュエータ(12)に対するトルク指令値(Tc)を低下させるためのスリップ軽減制御を実行することを特徴とする経糸準備機械の張力付与装置(11)。
  4.  シート状の多数の経糸(3)をテークアップローラ(9)に接触させるとともに、予め設定される目標張力値に基づき経糸(3)に対するテークアップローラ(9)の作用力を調節することにより、経糸(3)に所定の張力を付与する経糸準備機械において、
     テークアップローラ(9)に連結されテークアップローラ(9)にトルクを発生させるアクチュエータ(12)と、前記目標張力値に基づき前記アクチュエータ(12)に対するトルク指令値(Tc)を出力する制御部(14)と、経糸(3)とテークアップローラ(9)との間のスリップ状態を検出するスリップ検出手段(18)と、テークアップローラ(9)の経糸走行方向下流側で経糸(3)の実際の巻取張力(T)を検出する張力検出器(19)とを含み、
     前記制御部(14)は、前記目標張力値に対する前記実際の巻取張力(T)の張力偏差(ΔT)と予め定められるゲイン(g)との乗算結果を張力偏差(ΔT)を解消する方向に加算することにより前記トルク指令値(Tc)を補正して出力する第1の張力制御と、スリップ状態を軽減する方向に前記トルク指令値(Tc)を補正して出力するスリップ軽減制御とを選択的に実行可能にされており、
     前記制御部(14)は、経糸(3)の走行中に、前記第1の張力制御を実行し、スリップ検出手段(18)からの所定のスリップ(S)の信号の発生時には、前記スリップ軽減制御を実行することを特徴とする経糸準備機械の張力付与装置(11)。
  5.  前記制御器(14)は、スリップ軽減制御を実行した後、前記第1の張力制御に再び切り換えられることを特徴とする請求項3記載の経糸準備機械の張力付与装置(11)。
  6.  シート状の多数の経糸(3)をテークアップローラ(9)に接触させるとともに、予め設定される目標張力値に基づき経糸(3)に対するテークアップローラ(9)の作用力を調節することにより、経糸(3)に所定の張力を付与する経糸準備機械において、
     テークアップローラ(9)に連結されテークアップローラ(9)にトルクを発生させるアクチュエータ(12)と、前記目標張力値に基づき前記アクチュエータ(12)に対するトルク指令値(Tc)を出力する制御部(14)と、経糸(3)とテークアップローラ(9)との間のスリップ状態を検出するスリップ検出手段(18)と、テークアップローラ(9)の経糸走行方向下流側で経糸(3)の実際の巻取張力(T)を検出する張力検出器(19)とを含み、
     前記制御部(14)には、予め定められる第1のゲインおよびこれよりも小さな値に定められる第2のゲインが選択可能に設定されるとともに、前記制御部(14)は、目標張力値に対する前記実際の巻取張力(T)の張力偏差(ΔT)と前記第1のゲインとの乗算結果を張力偏差(ΔT)を解消する方向に加算することにより目標張力値に対応する前記トルク指令値(Tc)を補正して出力する第1の張力制御と、目標張力値に対する前記実際の巻取張力(T)の張力偏差(ΔT)と前記第2のゲインとの乗算結果を張力偏差(ΔT)を解消する方向に加算することにより前記トルク指令値(Tc)を補正して出力する第2の張力制御とを選択的に実行可能にされており、
     前記制御部(14)は、経糸(3)の走行中に、前記第1の張力制御を実行し、スリップ検出手段(18)からの所定のスリップ(S)の信号の発生時には、前記第2の張力制御を実行することを特徴とする経糸準備機械の張力付与装置(11)。
  7.  前記経糸準備機械の張力付与装置(11)には、前記スリップ検出手段(18)からのスリップ量(S1)の信号に対し前記制御を行うべく定められる許容範囲よりも外側に設定される警報用の閾値(UL2)範囲が設定されており、スリップ量(S1)が閾値(UL2)範囲から逸脱したとき、警報信号(A)を出力する警報部(46)が設けられることを特徴とする請求項2、3、4または6記載の経糸準備機械の張力付与装置(11)。
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