JP2004026665A - 化学発光性インドール誘導体 - Google Patents
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Abstract
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、化学発光計測法に用いられる高感度化学発光試薬として利用できる新規なインドール誘導体に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、化学発光計測法は、蛍光法と比べて光源を必要としない超高感度で簡便な光分析法として一般的に知られており、測定対象物質の官能基との共有結合に基づいたラベル化法が主流であった。例えば、ルミノール誘導体及びアクリジニウムエステルを用いる化学発光イムノアッセイによるコルチゾールや甲状腺刺激ホルモン等の高感度化学発光計測、及び化学発光基質にジオキセタン誘導体を用いるアルカリホスファターゼ活性測定、及び核酸のドット・ハイブリダイゼーションアッセイ等があり、広く生化学の分野で適用されている。特に、ルミノール誘導体やアクリジニウムエステルは、化学発光ラベル化試薬として、アミノ酸やホルモン類の化学発光計測に用いられている。
【0003】
一方、インドール誘導体の化学発光性質を明らかにする最初の報告は1960年代に現れた。1965年に、Philbrookらにより3−メチルインドールが強塩基条件下で酸素より発光することが最初に見出された。McCapraらにより3−メチルインドールのヒドロペルオキシド体がジメチルスルホキシド中tert−ブトキサイドで処理すると化学発光が生じることが認められ、その発光機構はジオキセタンを経由することが証明された。その後、多数のインドール誘導体の置換基効果が調べられ、McCapraらの機構が指示されている。
しかしながら、上記のインドール誘導体は発光時間が短く、発光強度がルミノール及びアクリジウム誘導体と比較し低いため、現在、化学発光高感度計測法において有用な化学発光試薬として用いられていない。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題は、化学発光計測において安定で高感度な化学発光試薬として利用でき、長い化学発光時間を持続することが可能な化学発光性インドール誘導体を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討した結果、インドール骨格の3及び5位への置換基の導入と、分子内過シュウ酸エステル化学発光が可能であろうと考えられるインドールの3位がシュウ酸で置換されたシュウ酸インドール誘導体に着目し、該化合物が化学発光性を有することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0006】
すなわち、本発明は、以下の[1]〜[3]に記載した事項により特定される。
[1]一般式(1)(化3)で示されることを特徴とする化学発光性インドール誘導体。
【化3】
(式中、R1は置換されていてもよい炭素数1〜6の低級アルキル基、水酸基、エステル基又はエーテル基を表し、R2は水素原子又は置換されていてもよい炭素数1〜6の低級アルキル基を表す)
【0007】
[2]一般式(2)(化4)で示されることを特徴とする化学発光性インドール誘導体。
【化4】
(式中、R3は水素原子、置換されていてもよい炭素数1〜6の低級アルキル基、水酸基、エステル基又はエーテル基を表し、R4は水素原子、置換されていてもよい炭素数1〜6の低級アルキル基、水酸基、ハロゲン基、エーテル基又はアミノ基を表す)
【0008】
[3]β−シクロデキストリンを含有することを特徴とする[1]又は[2]に記載の化学発光性インドール誘導体。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明に係る化学発光性インドール誘導体は、強塩基性条件下、酸化することで化学発光が見られる。また、β―シクロデキストリンを含有することにより、化学発光に顕著な増感効果を与える。
【0010】
本発明に係る化学発光性インドール誘導体は、一般式(1)に示される。式中、R1は置換されていてもよい炭素数1〜6の低級アルキル基、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基や、水酸基、メトキシカルボニル基、アセトキシ基、ベンゾイルオキシ基等のエステル基、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、ペンチロキシ基、フェノキシ基、ベンジルオキシ基等のエーテル基等を表す。R2は水素原子、置換されていてもよい炭素数1〜6の低級アルキル基、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基等を表す。
【0011】
一般式(1)に示される化学発光性インドール誘導体の好適な例として、5−ヒドロキシインドール(式(3)(化5))、5−(3,4,5−トリベンジルオキシベンゾイルオキシ)インドール(式(4)(化6))、5−ベンジルオキシインドール(式(5)(化7))が挙げられる。
【0012】
【化5】
【0013】
【化6】
【0014】
【化7】
【0015】
一般式(1)に示される化学発光性インドール誘導体の製造方法としては、特に限定されるものではない。例えば、式(4)に示される化学発光性インドール誘導体は、溶媒中、5−ヒドロキシインドールと3,4,5−トリベンジルオキシベンゾイルクロライドとを当量比1:1にて、塩基の存在下、反応させて得られる。上記反応において使用できる溶媒に制限はないが、式(4)に示されるインドール誘導体を溶解できるものが好ましく、クロロホルムが好適に用いられる。使用する塩基はピリジンが好適に用いられ、また触媒としては4−ジメチルアミノピリジンが用いられる。
【0016】
一般に、化学発光性インドール誘導体を製造する際に用いられる有機溶媒としては、特に限定されるものではないが、エーテル、クロロホルム及びピリジン等の1種又は2種以上の混合物が用いられる。混合有機溶媒の混合比率は、用いられる有機溶媒の種類にもよるが、例えば、クロロホルムとピリジンの混合物の場合、クロロホルム:ピリジン=40:1が好ましい。
【0017】
また、本発明に係る化学発光性インドール誘導体は、一般式(2)に示される。式中、R3は水素原子、置換されていてもよい炭素数1〜6の低級アルキル基、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基や水酸基、メトキシカルボニル基、アセトキシ基、ベンゾイルオキシ基等のエステル基、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、ペンチロキシ基、フェノキシ基、ベンジルオキシ基等のエーテル基等を表す。R4は水素原子、置換されていてもよい炭素数1〜6の低級アルキル基、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基や水酸基、フルオロ基、クロロ基、ブロモ基、ヨード基、ヨードシル基、ヨージル基等のハロゲン基、メトキシカルボニル基、アセトキシ基、ベンゾイルオキシ基等のエステル基又はアミノ基等を表す。
【0018】
一般式(2)に示される化学発光性インドール誘導体の好適な例として、3−インドールグリオキシリルクロライド(式(6)(化8))、5−(ベンジルオキシ)−N,N−ジメチル−3−インドールグリオキシルアミド(式(7)(化9))、1,4−ビス−(3−インドールグリオキシル)−1,2−エチレンアミド(式(8)(化10))、メチル−3−インドールグリオキシレート(式(9)(化11))、3−インドールグリオキシリックアシッド(式(10)(化12))が挙げられる。
【0019】
【化8】
【0020】
【化9】
【0021】
【化10】
【0022】
【化11】
【0023】
【化12】
【0024】
一般式(2)に示される化学発光性インドール誘導体の製造方法としては、特に限定されるものではない。具体的には、R4がエーテル基の化合物は、3−インドールグリオキシリルクロライド誘導体と対応するアルコールとを、有機溶媒中、塩基の存在下に反応することにより得られる。また、R4がアミノ基である化合物は、3−インドールグリオキシリルクロライド誘導体と対応するアミン誘導体の大過剰を、溶媒中、必要ならば、塩基の存在下に反応することにより得られる。
【0025】
これらの化学発光性インドール誘導体を製造する際に用いられる有機溶媒としては、特に限定されるものではないが、エーテル、クロロホルム及びピリジン等の1種又は2種以上の混合物が用いられる。混合有機溶媒の混合比率は、用いられる有機溶媒の種類にもよるが、例えば、クロロホルムとピリジンの混合物の場合、クロロホルム:ピリジン=40:1が好ましい。使用する塩基は、ピリジン等が用いられ、また触媒としては4−ジメチルアミノピリジン等が用いられる。
【0026】
更に具体的には、式(7)に示される化学発光性インドール誘導体は、エーテル溶媒中、5−ベンジルオキシインドールとシュウ酸クロライドとを当量比1:2にて氷中で1時間反応させ、その反応液にジメチルアミンのエーテル溶液を加え、氷中で30分反応させて得られる。また、式(8)に示される化学発光性インドール誘導体は、エーテル溶液中、3−インドールグリオキシリルクロライドとエチレンジアミンとを当量比1:5にて室温で30分反応させて得られる。さらに、式(9)に示される化学発光性インドール誘導体は、エーテル溶媒中、3−インドールグリオキシリルクロライドとメタノールとを当量比1:30にて室温で14時間反応させて得られる。
【0027】
一般に、化学発光性インドール誘導体を製造する際に用いられる有機溶媒としては、特に限定されるものではないが、エーテル、クロロホルム及びピリジン等の1種又は2種以上の混合物が用いられる。混合有機溶媒の混合比率は、用いられる有機溶媒の種類にもよるが、例えば、クロロホルムとピリジンの混合物の場合、クロロホルム:ピリジン=40:1が好ましい。
【0028】
本発明における化学発光性インドール誘導体にβ−シクロデキストリンを含有させることにより、化学発光強度を増感させることができる。β−シクロデキストリンの添加量は5mM〜10mMが好ましい。ここで、5mMより少なくなるにつれ、増感効果は消失される。化学発光反応中、増感効果が得られるβ−シクロデキストリンの添加量はインドール誘導体に対し1当量以上である。
【0029】
【実施例】
以下、実施例をもって本発明を更に詳細に説明するが、これらの例は単なる実例であって本発明を限定するものではなく、また本発明の範囲を逸脱しない範囲で変更させてもよい。
【0030】
実施例及び比較例における化合物は次の通りである。
実施例1:式(3)の化合物(Aldrich社製)。
実施例2:合成例1で合成した式(4)の化合物。
実施例3:式(5)の化合物(和光純薬工業株式会社製)。
実施例4:式(6)の化合物(Aldrich社製)。
実施例5:合成例2で合成した式(7)の化合物。
実施例6:合成例3で合成した式(8)の化合物。
実施例7:合成例4で合成した式(9)の化合物。
実施例8:式(10)の化合物(アルドリッチ株式会社製)。
比較例1:式(11)(化13)の化合物(和光純薬工業株式会社製)。
【0031】
【化13】
【0032】
合成例1
97% 5−ハイドロキシインドール0.048g(0.35mmol)をクロロホルム溶液(安定剤:アミレン)20mlに溶解し、ピリジン0.5ml、4−ジメチルアミノピリジン0.048g(0.39mmol)及び3,4,5−トリベンジルオキシベンゾイルクロライド0.16g(0.35mmol)を加え、室温で2時間30分攪拌後、反応液を減圧濃縮した。
次いで、カラムクロマトグラフィー(Silica gel 60N、クロロホルム:メタノール=20:1)で精製し、5−(3,4,5−トリベンジルオキシベンゾイルオキシ)インドール(無色粉末)0.17g(収率:85%)を得た。物性値は以下の通りである。
m.p.:162℃
1H−NMR(CDCl3):5.83(m, 6H, BenzylH), 7.24(s, 1H, ArH), 7.68(dd, J = 8.5,1H, ArH), 7.93(m, 18H, ArH), 8.26(s, 2H, ArH), 8.88(s, 1H, ArH)
【0033】
合成例2
5−ベンジルオキシインドール1.11g(5mmol)を含むエーテル溶液(30ml)を氷中で冷却する。そのエーテル溶液に98%シュウ酸クロライド0.9ml(10mmol)を5分毎に0.3ml加え、氷中で1時間攪拌した。ジメチルアミン3g(66mmol)を含む20mlエーテル溶液を10分間で滴下した。その反応液を氷中で30分攪拌し室温に戻した。析出物を濾過しエーテルと水で洗浄し乾燥した。その粗生成物をカラムクロマトグラフィー(Silica gel 60N、クロロホルム:メタノール=2:1)で精製し5−(ベンジルオキシ)−N,N−ジメチル−3−インドールグリオキシルアミド(黄褐色粉末)0.54g(収率:33.8%)を得た。物性値は以下の通りである。
m.p.:170−172℃
1H−NMR[DMSO−d6]:3.3(s, 6H, −N(CH3)2−), 5.94(s, 2H, BenzylH), 7.77(m, 1H,ArH), 8.11(m, 6H, ArH), 8.5(s, 1H, ArH), 8.8(d, 1H, J = 3, ArH)
【0034】
合成例3
氷中で冷却したエーテル溶液50mlに、3−インドールグリオキシリルクロライド0.42g(2mmol)を加え、エチレンジアミン0.67ml(10mmol)を含む5mlエーテル溶液を5分で滴下した。その反応液を氷中20分攪拌し室温にもどし30分攪拌した。析出物を濾過し、ジメチルホルムアミド−水で2回結晶化し、1,4−ビス−(3−インドールグリオキシル)−1,2−エチレンアミド (無色粉末)0.11g(収率:13.6%)を得た。物性値は以下の通りである。
m.p.:>300℃
1H−NMR[DMSO−d6]:3.41(s, 4H, −(CH2)−), 7.23(m ,4H ,ArH), 7.50(m, 2H, ArH), 8.21(m, 2H, ArH), 8.75(s, 2H, ArH), 8.83(s, 2H, ArH), 12.1(brs, 2H, −CO−NH−)
【0035】
合成例4
氷中で冷却したエーテル溶液80mlに、3−インドールグリオキシリルクロライド0.31g(1.5mmol)を加え、30分攪拌する。その反応溶液にメタノール1.83ml(45mmol)を加え、その反応液を氷中で30分攪拌し、室温にもどし、14時間攪拌した。反応溶液を減圧濃縮し、カラムクロマトグラフィー(Silica gel 60N、クロロホルム:メタノール=10:1)で精製しメチル−3−インドールグリオキシレート(微赤褐色粉末)0.02g(収率:0.6%)を得た。物性値は以下の通りである。
m.p.:>222℃
1H−NMR[DMSO−d6]:3.88(s, 3H, OCH3), 7.24(m, 2H, ArH), 7.53(m, 1H, ArH), 8.14(m, 1H, ArH), 8.42(s, 1H, ArH), 12.3(brs, 1H, −NH−)
【0036】
試験例1
本試験例においては、従来にない持続性化学発光を有する実施例4の3−インドールグリオ―キシリルクロライドは、比較例1の3−メチルインドール(式(11)の化合物)の化学発光機構とは異なる発光機構を有しているのではないかと考え、3−インドールグリオキシリルクロライド化学発光における反応生成物の探索を行った。
【0037】
20mM 3−インドールグリオキシルクロライドのアセトニトリル溶液(50ml)に375mM水酸化ナトリウム水溶液(25ml)を加えた。その35秒後に5M過酸化水素水溶液(25ml)を加え、氷中で1時間放置した。その反応溶液に36%塩酸溶液を6滴加え、酢酸エチルを加え分液し、その酢酸エチル層(有機層)を無水硫酸マグネシウムで乾燥した。
次いで、有機層をろ過し減圧濃縮後、カラムクロマトグラフィー(Silicagel 60N、クロロホルム:メタノール=5:1)で精製し、インドール−3−カルボン酸の微褐色粉末0.03g(収率:20%)を得た。物性値は以下の通りである。
このことより、図1に示した従来のインドール化学発光とは異なるジオキセタンジオン経由の化学発光機構が考えられる。
m.p.:232 ℃
1H−NMR(CD3OD):7.14(m, 2H, ArH), 7.4 (dd, J = 8.5, 1H, ArH), 7.93 (s, 1H,
ArH), 8.05(dd, J=8.5, 1H, ArH)
FAB MS:162.1(M+H)+
【0038】
試験例2
本試験例において、実施例1〜8及び比較例1における各インドール誘導体の化学発光条件について検討した。
1mMインドール誘導体のアセトニトリル溶液(但し、実施例6のインドール誘導体についてはジメチルホルムアミド溶液)200μlに水50μlを加えた。
25秒後にNaOH水溶液100μlを加え、その35秒後にH2O2水溶液100μlを自動注入してLumat9501(Berthold社製)を用いて化学発光強度を測定した。10分間の積算発光量を測定した。なお、Blankにはアセトニトリルを用いた。NaOH濃度1mM−1000mMの範囲と、H2O2濃度0.1−1000mMの範囲でそれぞれ検討した。その結果を表1(表1)に示し、本発明における持続性インドール化学発光誘導体の化学発光強度を比較した。
【0039】
【表1】
【0040】
まず、NaOH濃度1mM−1000mMの範囲でそれぞれ検討した。
NaOHの最適濃度は、比較例1のインドール誘導体は750mMの時に、実施例1のインドール誘導体は25mMの時に、実施例2のインドール誘導体は10mMの時に、実施例3のインドール誘導体は10mMの時に、実施例4のインドール誘導体は25mMの時に、実施例5のインドール誘導体は250mMの時に、実施例6のインドール誘導体は10mMの時に、実施例7のインドール誘導体は750mMの時に、実施例8のインドール誘導体は25mMの時に、それぞれ最大積算発光量を示した。
次に、H2O2濃度0.1−1000mMの範囲でそれぞれ検討した。
H2O2の最適濃度は、比較例1のインドール誘導体は1000mMの時に、実施例1のインドール誘導体は250mMの時に、実施例2のインドール誘導体は250mMの時に、実施例3のインドール誘導体は500mMの時に、実施例4のインドール誘導体は100mMの時に、実施例5のインドール誘導体は100mMの時に、実施例6のインドール誘導体は10mMの時に、実施例7のインドール誘導体は500mMの時に、実施例8のインドール誘導体は1mMの時に、それぞれ最大積算発光量を示した。
表1より、比較例1のインドール誘導体の10分間の積算発光量と比較して、実施例4のインドール誘導体は5.9倍、実施例1のインドール誘導体は5.9倍、実施例2のインドール誘導体は0.53倍、実施例5のインドール誘導体は2倍、実施例8のインドール誘導体は48倍であった。また、実施例4、実施例1及び実施例8のインドール誘導体は、比較例1のインドール誘導体と比較して著しい発光強度の増大が見られた。
【0041】
特に、実施例4のインドール誘導体は、過酸化水素注入後35分後まで最大発光量を持続した。その結果を図2に示す。
図2より、従来のインドール誘導体にない化学発光時間の延長が見られた。更に、実施例4のインドール誘導体の化学発光における反応生成物の探索より、インドール−3−カルボン酸が生成していることより(試験例1)、化学発光反応においてジオキセタンジオンを経由していると考えられる(図1参照)。シュウ酸インドール誘導体は分子内過シュウ酸エステル化学発光が可能であろうと考えられる。
【0042】
試験例3
本試験例において、β−シクロデキストリンによる増感効果について検討した。
1mM 実施例4のインドール誘導体のアセトニトリル溶液200μlに、水又はβ−シクロデキストリン水溶液50μlを加えた。25秒後にNaOH水溶液100μlを加え、その35秒後にH2O2水溶液100μlを自動注入してLumat9501(Berthold社製)を用いて化学発光強度を測定した。10分間の積算発光量を測定した。なお、Blankにはアセトニトリルを用いた。濃度0.25−10mMの範囲で検討を行った。
その結果、β−シクロデキストリン濃度10mMの時、最大発光量を示した。H2O2注入後約3分で最大となった。その後、ほぼ一定となるが、約6分後に再び増加し、10分間増加し続けた。β−シクロデキストリン存在下における最大発光量は非存在下における最大発光量の約1.5倍となり増感作用が認められた。
【0043】
試験例4
本試験例において、D−グルコースを基質としてその酸化酵素であるグルコースオキシゲナーゼを反応させ過酸化水素を生成させ、実施例4のインドール誘導体を添加し生じる化学発光を計測する化学発光計測法が可能であるかについて検討した。
酸素を5分間通じた0.1M リン酸緩衝液(pH7)2.5mlに0.55M D−グルコース水溶液0.5mlに20mUグルコースオキシダーゼ0.02mlを加え、25℃で5時間及び10時間酵素反応を行い酵素反応溶液とした。
実施例4のインドール誘導体のアセトニトリル溶液200μlに、水50μlを加えた。25秒後に25mM NaOH水溶液100μlを加え、その35秒後に酵素反応溶液を自動注入してLumat9501(Berthold社製)を用いて化学発光強度を測定した。10分間の積算発光量を測定した。なお、Blankにはグルコースオキシダーゼの代わりに0.1M リン酸緩衝液(pH7)を添加した溶液を用いた。その結果、酵素反応時間5及び10時間の反応液について、化学発光はそれぞれ酵素反応溶液注入後、2分30秒及び2分で最大発光量を示した。10分間の積算発光量は約40万ホトンカウント及び約50万ホトンカウントであった。
Blankの積算発光量は酵素反応時間に関係なく一定であった。
これにより、固相に標識酵素としてグルコースオキシダーゼを用い、基質であるグルコースから酵素反応により生成する過酸化水素を化学発光で計測する酵素免疫計測法に応用可能であることが示唆された。
【0044】
【発明の効果】
本発明によれば、化学発光計測において安定で高感度な化学発光試薬として利用でき、長い化学発光時間を持続することが可能な化学発光性インドール誘導体を得ることができ、化学発光試薬として利用することができる。また、β―シクロデキストリンを含有させることにより、化学発光強度を増感させることができる。
更に、固相に標識酵素としてグルコースオキシダーゼを用い、基質であるグルコースから酵素反応により生成する過酸化水素を化学発光で計測する酵素免疫計測法に応用可能であるとともに、化学発光時間が長いため、化学発光計測における写真法による画像化に有用である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例4の化学発光におけるインドール−3−カルボン酸の生成メカニズム
【図2】本発明の実施例4における化学発光曲線
【発明の属する技術分野】
本発明は、化学発光計測法に用いられる高感度化学発光試薬として利用できる新規なインドール誘導体に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、化学発光計測法は、蛍光法と比べて光源を必要としない超高感度で簡便な光分析法として一般的に知られており、測定対象物質の官能基との共有結合に基づいたラベル化法が主流であった。例えば、ルミノール誘導体及びアクリジニウムエステルを用いる化学発光イムノアッセイによるコルチゾールや甲状腺刺激ホルモン等の高感度化学発光計測、及び化学発光基質にジオキセタン誘導体を用いるアルカリホスファターゼ活性測定、及び核酸のドット・ハイブリダイゼーションアッセイ等があり、広く生化学の分野で適用されている。特に、ルミノール誘導体やアクリジニウムエステルは、化学発光ラベル化試薬として、アミノ酸やホルモン類の化学発光計測に用いられている。
【0003】
一方、インドール誘導体の化学発光性質を明らかにする最初の報告は1960年代に現れた。1965年に、Philbrookらにより3−メチルインドールが強塩基条件下で酸素より発光することが最初に見出された。McCapraらにより3−メチルインドールのヒドロペルオキシド体がジメチルスルホキシド中tert−ブトキサイドで処理すると化学発光が生じることが認められ、その発光機構はジオキセタンを経由することが証明された。その後、多数のインドール誘導体の置換基効果が調べられ、McCapraらの機構が指示されている。
しかしながら、上記のインドール誘導体は発光時間が短く、発光強度がルミノール及びアクリジウム誘導体と比較し低いため、現在、化学発光高感度計測法において有用な化学発光試薬として用いられていない。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題は、化学発光計測において安定で高感度な化学発光試薬として利用でき、長い化学発光時間を持続することが可能な化学発光性インドール誘導体を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討した結果、インドール骨格の3及び5位への置換基の導入と、分子内過シュウ酸エステル化学発光が可能であろうと考えられるインドールの3位がシュウ酸で置換されたシュウ酸インドール誘導体に着目し、該化合物が化学発光性を有することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0006】
すなわち、本発明は、以下の[1]〜[3]に記載した事項により特定される。
[1]一般式(1)(化3)で示されることを特徴とする化学発光性インドール誘導体。
【化3】
(式中、R1は置換されていてもよい炭素数1〜6の低級アルキル基、水酸基、エステル基又はエーテル基を表し、R2は水素原子又は置換されていてもよい炭素数1〜6の低級アルキル基を表す)
【0007】
[2]一般式(2)(化4)で示されることを特徴とする化学発光性インドール誘導体。
【化4】
(式中、R3は水素原子、置換されていてもよい炭素数1〜6の低級アルキル基、水酸基、エステル基又はエーテル基を表し、R4は水素原子、置換されていてもよい炭素数1〜6の低級アルキル基、水酸基、ハロゲン基、エーテル基又はアミノ基を表す)
【0008】
[3]β−シクロデキストリンを含有することを特徴とする[1]又は[2]に記載の化学発光性インドール誘導体。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明に係る化学発光性インドール誘導体は、強塩基性条件下、酸化することで化学発光が見られる。また、β―シクロデキストリンを含有することにより、化学発光に顕著な増感効果を与える。
【0010】
本発明に係る化学発光性インドール誘導体は、一般式(1)に示される。式中、R1は置換されていてもよい炭素数1〜6の低級アルキル基、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基や、水酸基、メトキシカルボニル基、アセトキシ基、ベンゾイルオキシ基等のエステル基、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、ペンチロキシ基、フェノキシ基、ベンジルオキシ基等のエーテル基等を表す。R2は水素原子、置換されていてもよい炭素数1〜6の低級アルキル基、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基等を表す。
【0011】
一般式(1)に示される化学発光性インドール誘導体の好適な例として、5−ヒドロキシインドール(式(3)(化5))、5−(3,4,5−トリベンジルオキシベンゾイルオキシ)インドール(式(4)(化6))、5−ベンジルオキシインドール(式(5)(化7))が挙げられる。
【0012】
【化5】
【0013】
【化6】
【0014】
【化7】
【0015】
一般式(1)に示される化学発光性インドール誘導体の製造方法としては、特に限定されるものではない。例えば、式(4)に示される化学発光性インドール誘導体は、溶媒中、5−ヒドロキシインドールと3,4,5−トリベンジルオキシベンゾイルクロライドとを当量比1:1にて、塩基の存在下、反応させて得られる。上記反応において使用できる溶媒に制限はないが、式(4)に示されるインドール誘導体を溶解できるものが好ましく、クロロホルムが好適に用いられる。使用する塩基はピリジンが好適に用いられ、また触媒としては4−ジメチルアミノピリジンが用いられる。
【0016】
一般に、化学発光性インドール誘導体を製造する際に用いられる有機溶媒としては、特に限定されるものではないが、エーテル、クロロホルム及びピリジン等の1種又は2種以上の混合物が用いられる。混合有機溶媒の混合比率は、用いられる有機溶媒の種類にもよるが、例えば、クロロホルムとピリジンの混合物の場合、クロロホルム:ピリジン=40:1が好ましい。
【0017】
また、本発明に係る化学発光性インドール誘導体は、一般式(2)に示される。式中、R3は水素原子、置換されていてもよい炭素数1〜6の低級アルキル基、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基や水酸基、メトキシカルボニル基、アセトキシ基、ベンゾイルオキシ基等のエステル基、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、ペンチロキシ基、フェノキシ基、ベンジルオキシ基等のエーテル基等を表す。R4は水素原子、置換されていてもよい炭素数1〜6の低級アルキル基、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基や水酸基、フルオロ基、クロロ基、ブロモ基、ヨード基、ヨードシル基、ヨージル基等のハロゲン基、メトキシカルボニル基、アセトキシ基、ベンゾイルオキシ基等のエステル基又はアミノ基等を表す。
【0018】
一般式(2)に示される化学発光性インドール誘導体の好適な例として、3−インドールグリオキシリルクロライド(式(6)(化8))、5−(ベンジルオキシ)−N,N−ジメチル−3−インドールグリオキシルアミド(式(7)(化9))、1,4−ビス−(3−インドールグリオキシル)−1,2−エチレンアミド(式(8)(化10))、メチル−3−インドールグリオキシレート(式(9)(化11))、3−インドールグリオキシリックアシッド(式(10)(化12))が挙げられる。
【0019】
【化8】
【0020】
【化9】
【0021】
【化10】
【0022】
【化11】
【0023】
【化12】
【0024】
一般式(2)に示される化学発光性インドール誘導体の製造方法としては、特に限定されるものではない。具体的には、R4がエーテル基の化合物は、3−インドールグリオキシリルクロライド誘導体と対応するアルコールとを、有機溶媒中、塩基の存在下に反応することにより得られる。また、R4がアミノ基である化合物は、3−インドールグリオキシリルクロライド誘導体と対応するアミン誘導体の大過剰を、溶媒中、必要ならば、塩基の存在下に反応することにより得られる。
【0025】
これらの化学発光性インドール誘導体を製造する際に用いられる有機溶媒としては、特に限定されるものではないが、エーテル、クロロホルム及びピリジン等の1種又は2種以上の混合物が用いられる。混合有機溶媒の混合比率は、用いられる有機溶媒の種類にもよるが、例えば、クロロホルムとピリジンの混合物の場合、クロロホルム:ピリジン=40:1が好ましい。使用する塩基は、ピリジン等が用いられ、また触媒としては4−ジメチルアミノピリジン等が用いられる。
【0026】
更に具体的には、式(7)に示される化学発光性インドール誘導体は、エーテル溶媒中、5−ベンジルオキシインドールとシュウ酸クロライドとを当量比1:2にて氷中で1時間反応させ、その反応液にジメチルアミンのエーテル溶液を加え、氷中で30分反応させて得られる。また、式(8)に示される化学発光性インドール誘導体は、エーテル溶液中、3−インドールグリオキシリルクロライドとエチレンジアミンとを当量比1:5にて室温で30分反応させて得られる。さらに、式(9)に示される化学発光性インドール誘導体は、エーテル溶媒中、3−インドールグリオキシリルクロライドとメタノールとを当量比1:30にて室温で14時間反応させて得られる。
【0027】
一般に、化学発光性インドール誘導体を製造する際に用いられる有機溶媒としては、特に限定されるものではないが、エーテル、クロロホルム及びピリジン等の1種又は2種以上の混合物が用いられる。混合有機溶媒の混合比率は、用いられる有機溶媒の種類にもよるが、例えば、クロロホルムとピリジンの混合物の場合、クロロホルム:ピリジン=40:1が好ましい。
【0028】
本発明における化学発光性インドール誘導体にβ−シクロデキストリンを含有させることにより、化学発光強度を増感させることができる。β−シクロデキストリンの添加量は5mM〜10mMが好ましい。ここで、5mMより少なくなるにつれ、増感効果は消失される。化学発光反応中、増感効果が得られるβ−シクロデキストリンの添加量はインドール誘導体に対し1当量以上である。
【0029】
【実施例】
以下、実施例をもって本発明を更に詳細に説明するが、これらの例は単なる実例であって本発明を限定するものではなく、また本発明の範囲を逸脱しない範囲で変更させてもよい。
【0030】
実施例及び比較例における化合物は次の通りである。
実施例1:式(3)の化合物(Aldrich社製)。
実施例2:合成例1で合成した式(4)の化合物。
実施例3:式(5)の化合物(和光純薬工業株式会社製)。
実施例4:式(6)の化合物(Aldrich社製)。
実施例5:合成例2で合成した式(7)の化合物。
実施例6:合成例3で合成した式(8)の化合物。
実施例7:合成例4で合成した式(9)の化合物。
実施例8:式(10)の化合物(アルドリッチ株式会社製)。
比較例1:式(11)(化13)の化合物(和光純薬工業株式会社製)。
【0031】
【化13】
【0032】
合成例1
97% 5−ハイドロキシインドール0.048g(0.35mmol)をクロロホルム溶液(安定剤:アミレン)20mlに溶解し、ピリジン0.5ml、4−ジメチルアミノピリジン0.048g(0.39mmol)及び3,4,5−トリベンジルオキシベンゾイルクロライド0.16g(0.35mmol)を加え、室温で2時間30分攪拌後、反応液を減圧濃縮した。
次いで、カラムクロマトグラフィー(Silica gel 60N、クロロホルム:メタノール=20:1)で精製し、5−(3,4,5−トリベンジルオキシベンゾイルオキシ)インドール(無色粉末)0.17g(収率:85%)を得た。物性値は以下の通りである。
m.p.:162℃
1H−NMR(CDCl3):5.83(m, 6H, BenzylH), 7.24(s, 1H, ArH), 7.68(dd, J = 8.5,1H, ArH), 7.93(m, 18H, ArH), 8.26(s, 2H, ArH), 8.88(s, 1H, ArH)
【0033】
合成例2
5−ベンジルオキシインドール1.11g(5mmol)を含むエーテル溶液(30ml)を氷中で冷却する。そのエーテル溶液に98%シュウ酸クロライド0.9ml(10mmol)を5分毎に0.3ml加え、氷中で1時間攪拌した。ジメチルアミン3g(66mmol)を含む20mlエーテル溶液を10分間で滴下した。その反応液を氷中で30分攪拌し室温に戻した。析出物を濾過しエーテルと水で洗浄し乾燥した。その粗生成物をカラムクロマトグラフィー(Silica gel 60N、クロロホルム:メタノール=2:1)で精製し5−(ベンジルオキシ)−N,N−ジメチル−3−インドールグリオキシルアミド(黄褐色粉末)0.54g(収率:33.8%)を得た。物性値は以下の通りである。
m.p.:170−172℃
1H−NMR[DMSO−d6]:3.3(s, 6H, −N(CH3)2−), 5.94(s, 2H, BenzylH), 7.77(m, 1H,ArH), 8.11(m, 6H, ArH), 8.5(s, 1H, ArH), 8.8(d, 1H, J = 3, ArH)
【0034】
合成例3
氷中で冷却したエーテル溶液50mlに、3−インドールグリオキシリルクロライド0.42g(2mmol)を加え、エチレンジアミン0.67ml(10mmol)を含む5mlエーテル溶液を5分で滴下した。その反応液を氷中20分攪拌し室温にもどし30分攪拌した。析出物を濾過し、ジメチルホルムアミド−水で2回結晶化し、1,4−ビス−(3−インドールグリオキシル)−1,2−エチレンアミド (無色粉末)0.11g(収率:13.6%)を得た。物性値は以下の通りである。
m.p.:>300℃
1H−NMR[DMSO−d6]:3.41(s, 4H, −(CH2)−), 7.23(m ,4H ,ArH), 7.50(m, 2H, ArH), 8.21(m, 2H, ArH), 8.75(s, 2H, ArH), 8.83(s, 2H, ArH), 12.1(brs, 2H, −CO−NH−)
【0035】
合成例4
氷中で冷却したエーテル溶液80mlに、3−インドールグリオキシリルクロライド0.31g(1.5mmol)を加え、30分攪拌する。その反応溶液にメタノール1.83ml(45mmol)を加え、その反応液を氷中で30分攪拌し、室温にもどし、14時間攪拌した。反応溶液を減圧濃縮し、カラムクロマトグラフィー(Silica gel 60N、クロロホルム:メタノール=10:1)で精製しメチル−3−インドールグリオキシレート(微赤褐色粉末)0.02g(収率:0.6%)を得た。物性値は以下の通りである。
m.p.:>222℃
1H−NMR[DMSO−d6]:3.88(s, 3H, OCH3), 7.24(m, 2H, ArH), 7.53(m, 1H, ArH), 8.14(m, 1H, ArH), 8.42(s, 1H, ArH), 12.3(brs, 1H, −NH−)
【0036】
試験例1
本試験例においては、従来にない持続性化学発光を有する実施例4の3−インドールグリオ―キシリルクロライドは、比較例1の3−メチルインドール(式(11)の化合物)の化学発光機構とは異なる発光機構を有しているのではないかと考え、3−インドールグリオキシリルクロライド化学発光における反応生成物の探索を行った。
【0037】
20mM 3−インドールグリオキシルクロライドのアセトニトリル溶液(50ml)に375mM水酸化ナトリウム水溶液(25ml)を加えた。その35秒後に5M過酸化水素水溶液(25ml)を加え、氷中で1時間放置した。その反応溶液に36%塩酸溶液を6滴加え、酢酸エチルを加え分液し、その酢酸エチル層(有機層)を無水硫酸マグネシウムで乾燥した。
次いで、有機層をろ過し減圧濃縮後、カラムクロマトグラフィー(Silicagel 60N、クロロホルム:メタノール=5:1)で精製し、インドール−3−カルボン酸の微褐色粉末0.03g(収率:20%)を得た。物性値は以下の通りである。
このことより、図1に示した従来のインドール化学発光とは異なるジオキセタンジオン経由の化学発光機構が考えられる。
m.p.:232 ℃
1H−NMR(CD3OD):7.14(m, 2H, ArH), 7.4 (dd, J = 8.5, 1H, ArH), 7.93 (s, 1H,
ArH), 8.05(dd, J=8.5, 1H, ArH)
FAB MS:162.1(M+H)+
【0038】
試験例2
本試験例において、実施例1〜8及び比較例1における各インドール誘導体の化学発光条件について検討した。
1mMインドール誘導体のアセトニトリル溶液(但し、実施例6のインドール誘導体についてはジメチルホルムアミド溶液)200μlに水50μlを加えた。
25秒後にNaOH水溶液100μlを加え、その35秒後にH2O2水溶液100μlを自動注入してLumat9501(Berthold社製)を用いて化学発光強度を測定した。10分間の積算発光量を測定した。なお、Blankにはアセトニトリルを用いた。NaOH濃度1mM−1000mMの範囲と、H2O2濃度0.1−1000mMの範囲でそれぞれ検討した。その結果を表1(表1)に示し、本発明における持続性インドール化学発光誘導体の化学発光強度を比較した。
【0039】
【表1】
【0040】
まず、NaOH濃度1mM−1000mMの範囲でそれぞれ検討した。
NaOHの最適濃度は、比較例1のインドール誘導体は750mMの時に、実施例1のインドール誘導体は25mMの時に、実施例2のインドール誘導体は10mMの時に、実施例3のインドール誘導体は10mMの時に、実施例4のインドール誘導体は25mMの時に、実施例5のインドール誘導体は250mMの時に、実施例6のインドール誘導体は10mMの時に、実施例7のインドール誘導体は750mMの時に、実施例8のインドール誘導体は25mMの時に、それぞれ最大積算発光量を示した。
次に、H2O2濃度0.1−1000mMの範囲でそれぞれ検討した。
H2O2の最適濃度は、比較例1のインドール誘導体は1000mMの時に、実施例1のインドール誘導体は250mMの時に、実施例2のインドール誘導体は250mMの時に、実施例3のインドール誘導体は500mMの時に、実施例4のインドール誘導体は100mMの時に、実施例5のインドール誘導体は100mMの時に、実施例6のインドール誘導体は10mMの時に、実施例7のインドール誘導体は500mMの時に、実施例8のインドール誘導体は1mMの時に、それぞれ最大積算発光量を示した。
表1より、比較例1のインドール誘導体の10分間の積算発光量と比較して、実施例4のインドール誘導体は5.9倍、実施例1のインドール誘導体は5.9倍、実施例2のインドール誘導体は0.53倍、実施例5のインドール誘導体は2倍、実施例8のインドール誘導体は48倍であった。また、実施例4、実施例1及び実施例8のインドール誘導体は、比較例1のインドール誘導体と比較して著しい発光強度の増大が見られた。
【0041】
特に、実施例4のインドール誘導体は、過酸化水素注入後35分後まで最大発光量を持続した。その結果を図2に示す。
図2より、従来のインドール誘導体にない化学発光時間の延長が見られた。更に、実施例4のインドール誘導体の化学発光における反応生成物の探索より、インドール−3−カルボン酸が生成していることより(試験例1)、化学発光反応においてジオキセタンジオンを経由していると考えられる(図1参照)。シュウ酸インドール誘導体は分子内過シュウ酸エステル化学発光が可能であろうと考えられる。
【0042】
試験例3
本試験例において、β−シクロデキストリンによる増感効果について検討した。
1mM 実施例4のインドール誘導体のアセトニトリル溶液200μlに、水又はβ−シクロデキストリン水溶液50μlを加えた。25秒後にNaOH水溶液100μlを加え、その35秒後にH2O2水溶液100μlを自動注入してLumat9501(Berthold社製)を用いて化学発光強度を測定した。10分間の積算発光量を測定した。なお、Blankにはアセトニトリルを用いた。濃度0.25−10mMの範囲で検討を行った。
その結果、β−シクロデキストリン濃度10mMの時、最大発光量を示した。H2O2注入後約3分で最大となった。その後、ほぼ一定となるが、約6分後に再び増加し、10分間増加し続けた。β−シクロデキストリン存在下における最大発光量は非存在下における最大発光量の約1.5倍となり増感作用が認められた。
【0043】
試験例4
本試験例において、D−グルコースを基質としてその酸化酵素であるグルコースオキシゲナーゼを反応させ過酸化水素を生成させ、実施例4のインドール誘導体を添加し生じる化学発光を計測する化学発光計測法が可能であるかについて検討した。
酸素を5分間通じた0.1M リン酸緩衝液(pH7)2.5mlに0.55M D−グルコース水溶液0.5mlに20mUグルコースオキシダーゼ0.02mlを加え、25℃で5時間及び10時間酵素反応を行い酵素反応溶液とした。
実施例4のインドール誘導体のアセトニトリル溶液200μlに、水50μlを加えた。25秒後に25mM NaOH水溶液100μlを加え、その35秒後に酵素反応溶液を自動注入してLumat9501(Berthold社製)を用いて化学発光強度を測定した。10分間の積算発光量を測定した。なお、Blankにはグルコースオキシダーゼの代わりに0.1M リン酸緩衝液(pH7)を添加した溶液を用いた。その結果、酵素反応時間5及び10時間の反応液について、化学発光はそれぞれ酵素反応溶液注入後、2分30秒及び2分で最大発光量を示した。10分間の積算発光量は約40万ホトンカウント及び約50万ホトンカウントであった。
Blankの積算発光量は酵素反応時間に関係なく一定であった。
これにより、固相に標識酵素としてグルコースオキシダーゼを用い、基質であるグルコースから酵素反応により生成する過酸化水素を化学発光で計測する酵素免疫計測法に応用可能であることが示唆された。
【0044】
【発明の効果】
本発明によれば、化学発光計測において安定で高感度な化学発光試薬として利用でき、長い化学発光時間を持続することが可能な化学発光性インドール誘導体を得ることができ、化学発光試薬として利用することができる。また、β―シクロデキストリンを含有させることにより、化学発光強度を増感させることができる。
更に、固相に標識酵素としてグルコースオキシダーゼを用い、基質であるグルコースから酵素反応により生成する過酸化水素を化学発光で計測する酵素免疫計測法に応用可能であるとともに、化学発光時間が長いため、化学発光計測における写真法による画像化に有用である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例4の化学発光におけるインドール−3−カルボン酸の生成メカニズム
【図2】本発明の実施例4における化学発光曲線
Claims (3)
- β−シクロデキストリンを含有することを特徴とする請求項1又は2に記載の化学発光性インドール誘導体。
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WO2005062677A1 (ja) * | 2003-12-22 | 2005-07-07 | Hitachi Chemical Co., Ltd | 発光システム、発光方法及び発光用化学物質 |
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2002
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WO2005062677A1 (ja) * | 2003-12-22 | 2005-07-07 | Hitachi Chemical Co., Ltd | 発光システム、発光方法及び発光用化学物質 |
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