JP2004026130A - 空気入りランフラットタイヤ - Google Patents
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Abstract
【課題】ランフラット走行時のタイヤ内面の磨耗と変質を防ぎ、高い耐久性を有する空気入りランフラットタイヤを提供する。
【解決手段】空気入りタイヤ14の内部に配設され前記空気入りタイヤ14と共にリム12に組み付けられ、ランフラット走行時に荷重を支持可能な環状の支持体16を備える空気入りランフラットタイヤ10であって、
前記空気入りタイヤ14のトレッド部24裏面に、シーリング材組成物を含有する特殊エラストマー層100が設けられ、特殊エラストマー層100の耐磨耗性が、トレッド部24裏面より低いことを特徴とする空気入りランフラットタイヤである。
【選択図】 図1
【解決手段】空気入りタイヤ14の内部に配設され前記空気入りタイヤ14と共にリム12に組み付けられ、ランフラット走行時に荷重を支持可能な環状の支持体16を備える空気入りランフラットタイヤ10であって、
前記空気入りタイヤ14のトレッド部24裏面に、シーリング材組成物を含有する特殊エラストマー層100が設けられ、特殊エラストマー層100の耐磨耗性が、トレッド部24裏面より低いことを特徴とする空気入りランフラットタイヤである。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明はパンクした時、その状態のまま相当の距離を走行し得るようにタイヤの内部に配設される環状の支持体が内部に配設された空気入りランフラットタイヤに関する。
【0002】
【従来の技術】
空気入りタイヤでランフラット走行が可能、即ち、パンクしてタイヤ内圧が0kg/cm2になっても、ある程度の距離を安心して走行することが可能なタイヤ(以後、ランフラットタイヤと呼ぶ。)として、タイヤの空気室内におけるリムの部分に、金属、合成樹脂製の環状の中子(支持体)を取り付けた中子タイプが知られている。
【0003】
この中子タイプでは、リムに組み込む回転中子タイプと、リムに取り付けられるタイヤ径方向断面において2つの凸部を有する形状(二山形状)の中子タイプが知られている(例えば、特許文献1参照)。回転中子タイプは回転中子を固定するための特殊ホイールが必要とされる点で汎用性に問題がある。一方、二山形状の中子タイプは、従来のリムに取り付けられるため汎用性が高い。
【0004】
【特許文献1】
特開平10−297226号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
かかるランフラットタイヤでは、ランフラット走行時にタイヤ内面に前記中子が接触することによる磨耗を防ぐため、タイヤ内面に潤滑剤が塗布されることがある。
しかし、当該潤滑剤は液状であるため、ランフラット走行が長距離に及ぶと中子との接触面に存在する潤滑剤が減少し、中子の金属面がタイヤ内面に接触しひび割れが生じて走行不良となることがあった。
また、潤滑剤によっては、走行中の磨耗を防ぐことが可能なものもあるが、その場合でも、塗布した潤滑剤の一部がタイヤに浸透しこれを変質させることで耐久性を低下させることがあった。
本発明は、上記事実を考慮し、ランフラット走行時のタイヤ内面の磨耗と変質を防ぎ、高い耐久性を有する空気入りランフラットタイヤを提供することが目的である。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記目的は、以下に示す本発明により解決される。
すなわち、本発明は、空気入りタイヤの内部に配設され前記空気入りタイヤと共にリムに組み付けられ、ランフラット走行時に荷重を支持可能な環状の支持体を備える空気入りランフラットタイヤであって、
前記空気入りタイヤのトレッド部裏面および前記トレッド部裏面に対峙する側の前記支持体表面の少なくともいずれか一方の面に、シーリング材組成物を含有する特殊エラストマー層が設けられており、
前記特殊エラストマー層の耐磨耗性が、前記トレッド部裏面より低いことを特徴とする空気入りランフラットタイヤである。
また、前記シーリング材組成物中にはオイルが含浸されていることが好ましく、前記オイルの含有量は、1〜100phrであることが好ましい。
【0007】
【発明の実施の形態】
本発明の一実施形態に係る空気入りランフラットタイヤについて図1および図2を参照して説明する。
ここで、(空気入り)ランフラットタイヤ10とは、図1に示すように、リム12に空気入りタイヤ14と支持体16を組み付けたものをいう。リム12は、空気入りタイヤ14のサイズに対応した標準リムである。
空気入りタイヤ14は、図1に示すように、一対のビード部18と、両ビード部18に跨がって延びるトロイド状のカーカス20と、カーカス20のクラウン部に位置する複数(本実施形態では2枚)のベルト層22と、ベルト層22の上部に形成されたトレッド部24とを備える。
空気入りタイヤ14の内部に配設される支持体16は、図1に示す断面形状のものがリング状に形成されたものであり、支持部26と、支持部26の両端に加硫成形されたゴム製の脚部28とを備える。
【0008】
空気入タイヤ14のトレッド部24の裏面には、シーリング材組成物を含有する特殊エラストマー層100が設けられている。
特殊エラストマー層100は、シーリング材組成物を含有しているため、ランフラット走行時でも固体状として存在することができる。その結果、走行距離によらず常に支持体16とトレッド部24内面との接触面に、特殊エラストマー層100が存在するため、支持体16によるトレッド部内面の磨耗を防ぐことができる。
また、液状の潤滑剤のようにその一部がタイヤに浸透しこれを変質させることがなく、ランフラット走行時の耐久性を著しく向上させることができる。
【0009】
一方、図2に示すように、トレッド部24の裏面に対峙する側の支持体16の表面に特殊エラストマー層100を設けてもよい。かかる構成としても、図1に示す構成と同様の効果が得られる。この構成の場合、特殊エラストマー層100は、支持体16がトレッド部24の裏面に接触する領域に設けられていればよいため、少なくとも、支持体16の凸部30A、30B(支持体16のうち図面上、径方向外側に突出した部分)に形成されていることが好ましい。
【0010】
ここで、シーリング材組成物とは、一般的に使用されているシーリング材(機械・電機・化学等の各種工業において接合部や接触部の水密・気密の目的で使用される材料)からなる組成物という。
具体的は、シリコーン系、変成シリコーン系、アクリル系、ポリウレタン系、アクリルウレタン系等が好ましい。
【0011】
例えば、シリコーン系のシーリング材には、原料ポリマーとして、両末端に反応性の水酸基(シラノール)を持つ直鎖状オルガノポリシロキ酸(シリコーンポリマー)を使用することが好ましい。その他、メチルトリスアセトキシシラン、メチルトリスオキシモノシラン、メチルトリメトキシシラン等の架橋材や、Sn系、Pd系、Ti系といった微量の触媒等が、前記シリコーン系のシーリング材の原料として使用される。
なお、架橋材の含有量は、前記ポリマー100phr当たり、0.1〜5phrであることが好ましい。
【0012】
また、シーリング材組成物中には、オイルが含浸されていることが好ましい。オイルを含浸させることで、ランフラット走行時に支持体が特殊エラストマー層に接すると、シーリング材組成物中のオイルが染み出し、耐磨耗性をより向上させることができる。
【0013】
オイルとしては、シリコーン系、炭化水素系、エーテル系、アロマー系等、種々のオイルを使用することができる。当該オイルの含有量は、1〜100phrであることが好ましい。1phr未満では、オイルによる耐磨耗性の向上効果を十分に発揮できないことがあり、100phrを超えてもさらなる効果の向上が見られないことがある。
【0014】
特殊エラストマー層100の耐磨耗性は、トレッド部24裏面より低い。
例えば、支持体16上に特殊エラストマー層100を形成した場合、ランフラット走行時にトレッド部24裏面よりも特殊エラストマー層100の方が先に磨耗する。その結果、タイヤの損傷を少なくすることができる。
また、特殊エラストマー層100をトレッド部24裏面に形成した場合でも、特殊エラストマー層100がある程度磨耗することで、ランフラット走行時に支持体表面を傷めることがない。
すなわち、特殊エラストマー層100の耐磨耗性をトレッド部24裏面より低くすることで、ランフラットタイヤの耐久性を向上させることができる。
【0015】
耐磨耗性の大小は、例えば、実車試験(ランフラット走行試験)により、実際の磨耗量を比較することで評価することができる。
特殊エラストマー層100の耐磨耗性を低くするには、使用するシーリング材組成物中のシーリング材の架橋密度を低くしたり、シーリング材とインタラクションの少ない第三成分(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン)の粒子をシーリング材組成物中に含有させればよい。架橋密度を低くすることで分子が切れやすくなり、また、第三成分の存在により当該成分が破壊の起点となって、磨耗が促進される。上記架橋密度や第三成分の種類、添加量などの条件は、トレッド部24裏面の材質等により適宜変更することが好ましい。
【0016】
特殊エラストマー層100は、公知の塗布法により形成することができる。特殊エラストマー層100の厚さは、0.1〜20mmとすることが好ましく、0.1〜15mmとすることがより好ましい。
0.1mm未満では、ランフラット走行時の衝撃吸収性能がほとんど見られなくなることがある。20mmを超えると、タイヤ内圧が通常圧のときでも突起物を乗り越える時にトレッド部24裏面と支持体16上の特殊エラストマー層100、または、支持体16とトレッド部24裏面の特殊エラストマー層100が接触し、操縦安定性の低下や異音の発生が起こることがある。
【0017】
また、トレッド部24とは、ランフラットタイヤ10(空気入りタイヤ14)を標準リム14に組み付けた状態で、大気圧とした空気入りタイヤ14に標準荷重を付与した場合の地面との接地幅(図1および図2中のL2)の領域のことである。
【0018】
ここで、標準リムとはJATMA(日本自動車タイヤ協会)のYear Book2002年度版規定のリムであり、標準荷重とはJATMA(日本自動車タイヤ協会)のYear Book2002年度版の単輪を適用した場合の最大負荷能力に相当する荷重である。
日本以外では、荷重とは下記規格に記載されている適用サイズにおける単輪の最大荷重(最大負荷能力)のことであり、内圧とは下記規格に記載されている単輪の最大荷重(最大負荷能力)に対応する空気圧のことであり、リムとは下記規格に記載されている適用サイズにおける標準リム(または、”Approved
Rim” 、”Recommended Rim”)のことである。
規格は、タイヤが生産又は使用される地域に有効な産業規格によって決められている。例えば、アメリカ合衆国では、”The Tire and Rim Association Inc. のYear Book ”であり、欧州では”The European Tire and Rim Technical OrganizationのStandards Manual”である。
【0019】
以上のような本発明のランフラットタイヤでは、空気入りタイヤ14の内圧が低下した場合、空気入りタイヤ14のトレッド部24を支持体16の凸部(支持体16のうち図面上、径方向に突出した部分)が支持して走行可能とする。
このとき、凸部30A、30Bがトレッド部24の裏面に接触するが、特殊エラストマー層100がこれらの間に介在するため、支持体16の磨耗や空気入りタイヤ14の内面を損傷することがない。
また、特殊エラストマー層100は母材が固体状であるため、空気入りタイヤ14の内面に浸透することがなく、タイヤの変質が生じることがない。
【0020】
【実施例】
下記実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0021】
(実施例1)
実施形態で説明したランフラットタイヤと同様の構成(図1参照)であり、195/65R15サイズの空気入りタイヤのトレッド部裏面にシリコーン系のシーリング材組成物を含有する特殊エラストマー層(厚さ5mm)を形成し、支持体を挿入したものを、上記タイヤサイズに対応する標準リム(6.5J)に組み付けたランフラットタイヤについて、200kmの走行試験を行った。
なお、走行試験は、当該ランフラットタイヤを乗用車に装着して1つの車輪のみ空気圧ゼロとしてランフラット走行して行った。結果を下記表1に示す。
【0022】
(実施例2)
シーリング材組成物にシリコーン系のオイルを40phr含浸させた以外は、実施例1と同様のランフラットタイヤについて、200kmの走行試験を行った。結果を下記表1に示す。
【0023】
(実施例3)
特殊エラストマー層(厚さ5mm)をトレッド部裏面に対峙する側の前記支持体表面に形成(図2参照)した以外は、実施例1と同様のランフラットタイヤについて、200kmの走行試験を行った。結果を下記表1に示す。
【0024】
(比較例1)
特殊エラストマー層を形成しなかった以外は、実施例1と同様のランフラットタイヤについて、実施例1と同様に200kmの走行試験を行った。結果を下記表1に示す。
【0025】
(比較例2)
特殊エラストマー層の代わりにトレッド部裏面にエーテル系のグリース(潤滑材)を厚さ5mmとなるように塗布した以外は、実施例1と同様のランフラットタイヤについて、実施例1と同様に200kmの走行試験を行った。結果を下記表1に示す。
【0026】
【表1】
【0027】
このように、特殊エラストマー層を形成した実施例1〜3のランフラットタイヤは200km連続走行してもタイヤが破壊せず、高い耐久性を有することが確認された。また特に、実施例3では、特殊エラストマー層がトレッド部裏面より耐磨耗性が低かったため、特殊エラストマー層の磨耗が優先的に起こっていた。
【0028】
【発明の効果】
以上から、本発明のランフラットタイヤは、ランフラット走行時にタイヤ内面の磨耗や変質が起こらず、高い耐久性を有する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態に係る空気入りランフラットタイヤのリム装着時の断面図である。
【図2】本発明の他の実施形態に係る空気入りランフラットタイヤのリム装着時の断面図である。
【符号の説明】
10 空気入りランフラットタイヤ
12 リム
14 空気入りタイヤ
16 支持体
24 トレッド部
26 支持部
100 特殊エラストマー層
【発明の属する技術分野】
本発明はパンクした時、その状態のまま相当の距離を走行し得るようにタイヤの内部に配設される環状の支持体が内部に配設された空気入りランフラットタイヤに関する。
【0002】
【従来の技術】
空気入りタイヤでランフラット走行が可能、即ち、パンクしてタイヤ内圧が0kg/cm2になっても、ある程度の距離を安心して走行することが可能なタイヤ(以後、ランフラットタイヤと呼ぶ。)として、タイヤの空気室内におけるリムの部分に、金属、合成樹脂製の環状の中子(支持体)を取り付けた中子タイプが知られている。
【0003】
この中子タイプでは、リムに組み込む回転中子タイプと、リムに取り付けられるタイヤ径方向断面において2つの凸部を有する形状(二山形状)の中子タイプが知られている(例えば、特許文献1参照)。回転中子タイプは回転中子を固定するための特殊ホイールが必要とされる点で汎用性に問題がある。一方、二山形状の中子タイプは、従来のリムに取り付けられるため汎用性が高い。
【0004】
【特許文献1】
特開平10−297226号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
かかるランフラットタイヤでは、ランフラット走行時にタイヤ内面に前記中子が接触することによる磨耗を防ぐため、タイヤ内面に潤滑剤が塗布されることがある。
しかし、当該潤滑剤は液状であるため、ランフラット走行が長距離に及ぶと中子との接触面に存在する潤滑剤が減少し、中子の金属面がタイヤ内面に接触しひび割れが生じて走行不良となることがあった。
また、潤滑剤によっては、走行中の磨耗を防ぐことが可能なものもあるが、その場合でも、塗布した潤滑剤の一部がタイヤに浸透しこれを変質させることで耐久性を低下させることがあった。
本発明は、上記事実を考慮し、ランフラット走行時のタイヤ内面の磨耗と変質を防ぎ、高い耐久性を有する空気入りランフラットタイヤを提供することが目的である。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記目的は、以下に示す本発明により解決される。
すなわち、本発明は、空気入りタイヤの内部に配設され前記空気入りタイヤと共にリムに組み付けられ、ランフラット走行時に荷重を支持可能な環状の支持体を備える空気入りランフラットタイヤであって、
前記空気入りタイヤのトレッド部裏面および前記トレッド部裏面に対峙する側の前記支持体表面の少なくともいずれか一方の面に、シーリング材組成物を含有する特殊エラストマー層が設けられており、
前記特殊エラストマー層の耐磨耗性が、前記トレッド部裏面より低いことを特徴とする空気入りランフラットタイヤである。
また、前記シーリング材組成物中にはオイルが含浸されていることが好ましく、前記オイルの含有量は、1〜100phrであることが好ましい。
【0007】
【発明の実施の形態】
本発明の一実施形態に係る空気入りランフラットタイヤについて図1および図2を参照して説明する。
ここで、(空気入り)ランフラットタイヤ10とは、図1に示すように、リム12に空気入りタイヤ14と支持体16を組み付けたものをいう。リム12は、空気入りタイヤ14のサイズに対応した標準リムである。
空気入りタイヤ14は、図1に示すように、一対のビード部18と、両ビード部18に跨がって延びるトロイド状のカーカス20と、カーカス20のクラウン部に位置する複数(本実施形態では2枚)のベルト層22と、ベルト層22の上部に形成されたトレッド部24とを備える。
空気入りタイヤ14の内部に配設される支持体16は、図1に示す断面形状のものがリング状に形成されたものであり、支持部26と、支持部26の両端に加硫成形されたゴム製の脚部28とを備える。
【0008】
空気入タイヤ14のトレッド部24の裏面には、シーリング材組成物を含有する特殊エラストマー層100が設けられている。
特殊エラストマー層100は、シーリング材組成物を含有しているため、ランフラット走行時でも固体状として存在することができる。その結果、走行距離によらず常に支持体16とトレッド部24内面との接触面に、特殊エラストマー層100が存在するため、支持体16によるトレッド部内面の磨耗を防ぐことができる。
また、液状の潤滑剤のようにその一部がタイヤに浸透しこれを変質させることがなく、ランフラット走行時の耐久性を著しく向上させることができる。
【0009】
一方、図2に示すように、トレッド部24の裏面に対峙する側の支持体16の表面に特殊エラストマー層100を設けてもよい。かかる構成としても、図1に示す構成と同様の効果が得られる。この構成の場合、特殊エラストマー層100は、支持体16がトレッド部24の裏面に接触する領域に設けられていればよいため、少なくとも、支持体16の凸部30A、30B(支持体16のうち図面上、径方向外側に突出した部分)に形成されていることが好ましい。
【0010】
ここで、シーリング材組成物とは、一般的に使用されているシーリング材(機械・電機・化学等の各種工業において接合部や接触部の水密・気密の目的で使用される材料)からなる組成物という。
具体的は、シリコーン系、変成シリコーン系、アクリル系、ポリウレタン系、アクリルウレタン系等が好ましい。
【0011】
例えば、シリコーン系のシーリング材には、原料ポリマーとして、両末端に反応性の水酸基(シラノール)を持つ直鎖状オルガノポリシロキ酸(シリコーンポリマー)を使用することが好ましい。その他、メチルトリスアセトキシシラン、メチルトリスオキシモノシラン、メチルトリメトキシシラン等の架橋材や、Sn系、Pd系、Ti系といった微量の触媒等が、前記シリコーン系のシーリング材の原料として使用される。
なお、架橋材の含有量は、前記ポリマー100phr当たり、0.1〜5phrであることが好ましい。
【0012】
また、シーリング材組成物中には、オイルが含浸されていることが好ましい。オイルを含浸させることで、ランフラット走行時に支持体が特殊エラストマー層に接すると、シーリング材組成物中のオイルが染み出し、耐磨耗性をより向上させることができる。
【0013】
オイルとしては、シリコーン系、炭化水素系、エーテル系、アロマー系等、種々のオイルを使用することができる。当該オイルの含有量は、1〜100phrであることが好ましい。1phr未満では、オイルによる耐磨耗性の向上効果を十分に発揮できないことがあり、100phrを超えてもさらなる効果の向上が見られないことがある。
【0014】
特殊エラストマー層100の耐磨耗性は、トレッド部24裏面より低い。
例えば、支持体16上に特殊エラストマー層100を形成した場合、ランフラット走行時にトレッド部24裏面よりも特殊エラストマー層100の方が先に磨耗する。その結果、タイヤの損傷を少なくすることができる。
また、特殊エラストマー層100をトレッド部24裏面に形成した場合でも、特殊エラストマー層100がある程度磨耗することで、ランフラット走行時に支持体表面を傷めることがない。
すなわち、特殊エラストマー層100の耐磨耗性をトレッド部24裏面より低くすることで、ランフラットタイヤの耐久性を向上させることができる。
【0015】
耐磨耗性の大小は、例えば、実車試験(ランフラット走行試験)により、実際の磨耗量を比較することで評価することができる。
特殊エラストマー層100の耐磨耗性を低くするには、使用するシーリング材組成物中のシーリング材の架橋密度を低くしたり、シーリング材とインタラクションの少ない第三成分(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン)の粒子をシーリング材組成物中に含有させればよい。架橋密度を低くすることで分子が切れやすくなり、また、第三成分の存在により当該成分が破壊の起点となって、磨耗が促進される。上記架橋密度や第三成分の種類、添加量などの条件は、トレッド部24裏面の材質等により適宜変更することが好ましい。
【0016】
特殊エラストマー層100は、公知の塗布法により形成することができる。特殊エラストマー層100の厚さは、0.1〜20mmとすることが好ましく、0.1〜15mmとすることがより好ましい。
0.1mm未満では、ランフラット走行時の衝撃吸収性能がほとんど見られなくなることがある。20mmを超えると、タイヤ内圧が通常圧のときでも突起物を乗り越える時にトレッド部24裏面と支持体16上の特殊エラストマー層100、または、支持体16とトレッド部24裏面の特殊エラストマー層100が接触し、操縦安定性の低下や異音の発生が起こることがある。
【0017】
また、トレッド部24とは、ランフラットタイヤ10(空気入りタイヤ14)を標準リム14に組み付けた状態で、大気圧とした空気入りタイヤ14に標準荷重を付与した場合の地面との接地幅(図1および図2中のL2)の領域のことである。
【0018】
ここで、標準リムとはJATMA(日本自動車タイヤ協会)のYear Book2002年度版規定のリムであり、標準荷重とはJATMA(日本自動車タイヤ協会)のYear Book2002年度版の単輪を適用した場合の最大負荷能力に相当する荷重である。
日本以外では、荷重とは下記規格に記載されている適用サイズにおける単輪の最大荷重(最大負荷能力)のことであり、内圧とは下記規格に記載されている単輪の最大荷重(最大負荷能力)に対応する空気圧のことであり、リムとは下記規格に記載されている適用サイズにおける標準リム(または、”Approved
Rim” 、”Recommended Rim”)のことである。
規格は、タイヤが生産又は使用される地域に有効な産業規格によって決められている。例えば、アメリカ合衆国では、”The Tire and Rim Association Inc. のYear Book ”であり、欧州では”The European Tire and Rim Technical OrganizationのStandards Manual”である。
【0019】
以上のような本発明のランフラットタイヤでは、空気入りタイヤ14の内圧が低下した場合、空気入りタイヤ14のトレッド部24を支持体16の凸部(支持体16のうち図面上、径方向に突出した部分)が支持して走行可能とする。
このとき、凸部30A、30Bがトレッド部24の裏面に接触するが、特殊エラストマー層100がこれらの間に介在するため、支持体16の磨耗や空気入りタイヤ14の内面を損傷することがない。
また、特殊エラストマー層100は母材が固体状であるため、空気入りタイヤ14の内面に浸透することがなく、タイヤの変質が生じることがない。
【0020】
【実施例】
下記実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0021】
(実施例1)
実施形態で説明したランフラットタイヤと同様の構成(図1参照)であり、195/65R15サイズの空気入りタイヤのトレッド部裏面にシリコーン系のシーリング材組成物を含有する特殊エラストマー層(厚さ5mm)を形成し、支持体を挿入したものを、上記タイヤサイズに対応する標準リム(6.5J)に組み付けたランフラットタイヤについて、200kmの走行試験を行った。
なお、走行試験は、当該ランフラットタイヤを乗用車に装着して1つの車輪のみ空気圧ゼロとしてランフラット走行して行った。結果を下記表1に示す。
【0022】
(実施例2)
シーリング材組成物にシリコーン系のオイルを40phr含浸させた以外は、実施例1と同様のランフラットタイヤについて、200kmの走行試験を行った。結果を下記表1に示す。
【0023】
(実施例3)
特殊エラストマー層(厚さ5mm)をトレッド部裏面に対峙する側の前記支持体表面に形成(図2参照)した以外は、実施例1と同様のランフラットタイヤについて、200kmの走行試験を行った。結果を下記表1に示す。
【0024】
(比較例1)
特殊エラストマー層を形成しなかった以外は、実施例1と同様のランフラットタイヤについて、実施例1と同様に200kmの走行試験を行った。結果を下記表1に示す。
【0025】
(比較例2)
特殊エラストマー層の代わりにトレッド部裏面にエーテル系のグリース(潤滑材)を厚さ5mmとなるように塗布した以外は、実施例1と同様のランフラットタイヤについて、実施例1と同様に200kmの走行試験を行った。結果を下記表1に示す。
【0026】
【表1】
【0027】
このように、特殊エラストマー層を形成した実施例1〜3のランフラットタイヤは200km連続走行してもタイヤが破壊せず、高い耐久性を有することが確認された。また特に、実施例3では、特殊エラストマー層がトレッド部裏面より耐磨耗性が低かったため、特殊エラストマー層の磨耗が優先的に起こっていた。
【0028】
【発明の効果】
以上から、本発明のランフラットタイヤは、ランフラット走行時にタイヤ内面の磨耗や変質が起こらず、高い耐久性を有する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態に係る空気入りランフラットタイヤのリム装着時の断面図である。
【図2】本発明の他の実施形態に係る空気入りランフラットタイヤのリム装着時の断面図である。
【符号の説明】
10 空気入りランフラットタイヤ
12 リム
14 空気入りタイヤ
16 支持体
24 トレッド部
26 支持部
100 特殊エラストマー層
Claims (3)
- 空気入りタイヤの内部に配設され前記空気入りタイヤと共にリムに組み付けられ、ランフラット走行時に荷重を支持可能な環状の支持体を備える空気入りランフラットタイヤであって、
前記空気入りタイヤのトレッド部裏面および前記トレッド部裏面に対峙する側の前記支持体表面の少なくともいずれか一方の面に、シーリング材組成物を含有する特殊エラストマー層が設けられており、
前記特殊エラストマー層の耐磨耗性が、前記トレッド部裏面より低いことを特徴とする空気入りランフラットタイヤ。 - 前記シーリング材組成物中にオイルが含浸されていることを特徴とする請求項1に記載の空気入りランフラットタイヤ。
- 前記オイルの含有量が1〜100phrであることを特徴とする請求項2に記載の空気入りランフラットタイヤ。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2002347529A JP2004026130A (ja) | 2002-05-08 | 2002-11-29 | 空気入りランフラットタイヤ |
Applications Claiming Priority (2)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
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WO2005100051A1 (ja) * | 2004-04-14 | 2005-10-27 | The Yokohama Rubber Co., Ltd. | タイヤホイール組立体及びランフラット中子 |
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