JP2004025987A - 折り畳み座席 - Google Patents

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Hisayasu Suzuki
鈴木 久康
Kenichi Goto
後藤 謙一
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Abstract

【課題】座部の展開状態への変位に連動して背当部が傾斜状態に変位する折り畳み座席において、簡便な機構によって座部を折り畳んだ状態で固定することができるようにする。
【解決手段】折り畳み座席の設置対象物に取り付けられる取付部材10と、該取付部材10に回動自在に支持され、傾斜状態と略鉛直状態とに変位する背当部30と、該背当部30に回動自在に支持され、展開状態と折り畳み状態とに変位する座部60と、一端側が前記座部60に回動自在に支持され、他端側が前記取付部材10に回動自在に支持されて、前記座部60の展開状態または折り畳み状態への変位に連動して前記背当部30を傾斜状態または略鉛直状態に変位させるリンク機構80と、前記取付部材10に設けられ、略鉛直状態の前記背当部30を固定して、前記座部60の展開状態への変位を防止するストッパ70とを備える。
【選択図】 図2

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本各発明は、バスや鉄道車両等の乗り物、劇場、競技場等の設置対象物に設置される折り畳み座席に関し、詳しくは、座部の展開状態への変位に連動して背当部が傾斜状態に変位する折り畳み座席に関する。
【0002】
【従来の技術】
例えば路線バスでは、車内に折り畳み座席を設置して、混雑時等に展開状態の座部を折り畳むことにより、より広い乗車空間を確保することが一般になされている。また、劇場や競技場等においても、折り畳み座席を設置して、座席の不使用時には座部を折り畳むことにより座席前方に通路としての空間を確保することが一般になされている。そして、座部が展開状態と折り畳み状態とで変位される従来の折り畳み座席では、折り畳み状態の座部が不用意に展開しないように、座部を折り畳み状態で固定することが要望される。よって、従来の折り畳み座席では、折り畳み状態の座部を種々の手段よって固定していた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、従来の折り畳み座席としては、使用時に座部が単に展開するだけではなく、背当部を傾斜状態に変位させることで座り心地を向上させたものが案出されており、中には、折り畳み座席の設置対象物に取り付けられる取付部材に背当部が回動自在に支持され、この背当部に座部が回動自在に支持されたものもある。そして、このような折り畳み座席においても、折り畳み状態の座部を固定することが要望されるのであるが、座部を単に固定することとするだけでは、以下のような問題を生じる。
【0004】
座部は、背当部に回動自在に支持されているのであるが、背当部自体が、取付部に対して回動するため、座部の展開状態と折り畳み状態とでは、取付部材に対して座部が複雑に変位する。何故ならば、座部が取付部材に回動自在に支持されているのであれば、座部は、展開状態と折り畳み状態とで、取付部材に対して単に回動するだけであるが、上記構造では、背当部が取付部材に対して回動し、この回動する背当部に対して、さらに座部が回動するためである。そして、このように取付部材に対して複雑に変位する座部を折り畳み状態で固定しようとすると、座部を固定するための構造が複雑化してしまう。また、折り畳み状態の座部を正確に位置決めしなければ座部を確実に固定することができなくなることから、座部を正確な位置精度で変位させなければならず、座部を変位させるための構造も複雑化してしまう。よって、折り畳み座席全体の構造が煩雑となってしまう。
【0005】
本各発明は、以上の実情に鑑みてなされたものであり、座部の展開状態への変位に連動して背当部が傾斜状態に変位する折り畳み座席において、簡便な機構によって座部を折り畳んだ状態で固定することができるようにすることを課題とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
請求項1の発明に係る折り畳み座席は、設置対象物に取り付けられる取付部材と、該取付部材に回動自在に支持され、傾斜状態と略鉛直状態とに変位する背当部と、該背当部に回動自在に支持され、展開状態と折り畳み状態とに変位する座部と、一端側が前記座部に回動自在に支持され、他端側が前記取付部材に回動自在に支持されて、前記座部の展開状態または折り畳み状態への変位に連動して前記背当部を傾斜状態または略鉛直状態に変位させるリンク機構と、前記取付部材に設けられ、略鉛直状態の前記背当部を固定して、前記座部の展開状態への変位を防止するストッパとを備えるものである。
【0007】
ここで、「設置対象物」は、折り畳み座席が設置されるバスや鉄道車両等の乗り物、劇場、競技場等、広範の対象物を指すものである。なお、乗降口から段差なく車内の床面が形成されたいわゆる低床式のバスや鉄道車両等の乗り物では、車椅子の使用者の乗車時や混雑時に座部を折り畳んでより広い乗車空間を確保することが切実に要望され、しかも、折り畳まれた座部によって体を支えることもあるため、座部を堅固に固定することが要望される。よって、上記のような乗り物を設置対象物とするのが好適である。
【0008】
また、「取付部材」としては、背当部を支持する部分とリンク機構の他端側を支持する部分とを一体の部材により形成したものや、ストッパが設けられる部分も含めて一体の部材により形成したものに限らず、背当部を支持する部分とリンク機構の他端側を支持する部分とを各々個別に別体の部材により形成したり、ストッパが設けられる部分を個別に別体の部材により形成して、各部材を合わせて「取付部材」としてもよい。しかしながら、背当部を支持する部分と、リンク機構の他端側を支持する部分と、ストッパが設けられた部分とを一体の部材により形成すると、折り畳み座席を設置する際に別体の部材を相互に位置合わせする必要がなく、好適である。
【0009】
さらに、「取付部材と背当部との支持」、「背当部と座部との支持」、「座部とリンク機構の一端側との支持」または「リンク機構の他端側と取付部材との支持」については、円孔状の軸受けに支軸を挿入する等して相互の部材を回動にのみ自在に支持してもよいが、適宜の部材間において、長孔状の軸受けに支軸を挿入する等して、回動自在且つ摺動自在に支持してもよい。
【0010】
本発明では、背当部を固定することによって、折り畳み状態の座部が展開状態へと変位することを防止するため、背当部を固定するストッパとしては、取付部材に対して単に回動されるだけの背当部を固定するものであればよく、簡略な構造のものを採用することが可能となる。また、背当部は、取付部材に対して回動されるだけであるため、座部を折り畳んだ状態で略鉛直状態となった背当部は、取付部材に対して正確に位置決めされる。よって、背当部を正確な位置精度で変位させるために、複雑な機構を設ける必要がない。
【0011】
請求項2の発明に係る折り畳み座席は、請求項1に記載の折り畳み座席において、前記座部は、前記背当部の下部に設けられて前方に延出するアーム部に回動自在に支持されており、前記リンク機構は、一端側が、前記座部における背当部との支持部分よりも後端側に回動自在に支持され、他端側が、前記取付部材の部位であって、座部の折り畳み状態で一端側と座部との支持部分よりも上方に位置する部位に回動自在に支持されているものである。
【0012】
本発明では、背当部の下部前方に延出するアーム部に座部が支持されており、折り畳まれた座部は、背当部の前面とアーム部先端部分との間に確保された空間に納まるようにして背当部の前方に収納される。ここで、座部における背当部との支持部分よりも後端側にはリンク機構の一端側が支持されているため、座部の収納に際しては、座部におけるリンク機構の一端側を支持する部分、すなわち座部の後端部分が、背当部との支持部分を中心に下方に回動する。また、座部を折り畳んだ状態では、リンク機構の他端側と取付部材との支持部分が、座部におけるリンク機構の一端側との支持部位よりも上方に位置する。よって、座部を折り畳んだ状態では、リンク機構の他端側の前方に座部が存在することになり、リンク機構の他端側は、座部により隠蔽される。従って、座部の折り畳みにより確保された折り畳み座席の前方や下方の空間にリンク機構が大きく突出せず、折り畳み座席の下方及び前方の空間を有効に活用することが可能となる。
【0013】
なお、本発明において、リンク機構の他端側と取付部材との支持部分を、座部を展開した状態ではリンク機構の一端側と座部との支持部分よりも下方に位置するように構成すると、リンク機構の一端側を他端側に対して大きく変位させることができる。よって、このように構成すると、座部の展開・折り畳みの回動角度を大きく設定することができ、好適である。
【0014】
請求項3の発明に係る折り畳み座席は、請求項1または請求項2に記載の折り畳み座席において、前記背当部は、上端部分にて前記取付部材に回動自在に支持されており、前記ストッパは、前記背当部の下端部分を固定することを特徴とするものである。
【0015】
本発明では、取付部材に対する背当部の回動中心から離れた部位にて、ストッパにより背当部が固定される。よって、ストッパとして、大きな固定力を必要とせず、ストッパ自体の構造を簡略化することが可能となる。
【0016】
請求項4の発明に係る折り畳み座席は、請求項1から請求項3までのいずれか一つに記載の折り畳み用座席において、前記ストッパは、前記背当部に設けられた固定部を係止する係止部を有し、前記取付部材に回動自在に支持されると共に前記固定部を係止する方向に付勢され、且つ、前記背当部の略鉛直状態への変位に伴い、前記固定部により押動されて該固定部を前記係止部に受け入れて係止すると共に、操作部による回動操作によって前記固定部の係止を解除することを特徴とするものである。
【0017】
本発明は、ストッパの構造を特定したものである。そして、本発明では、座部の折り畳みに連動して略鉛直状態となる背当部の変位に伴って、ストッパの係止部が背当部の固定部を係止する。よって、座部を折り畳めば、ストッパによって背当部が自動的に固定される。一方、操作部の回動操作によってストッパを回動させれば、座部の固定は解除され、座部は展開状態へと変位可能となる。
【0018】
請求項5の発明に係る折り畳み座席は、請求項4に記載の折り畳み座席において、前記操作部は、前記座部の展開方向とは逆方向に回動操作されることを特徴とするものである。
【0019】
本発明では、座部を展開状態へと変位させるための操作と、ストッパによる背当部の固定を解除するために操作部を回動する操作とが逆方向であるため、座部の展開操作と、ストッパの解除操作とは、全く別異な操作となる。よって、全く別異な上記の両操作を行わなければ座部を展開することができないことから、不用意にストッパが誤操作されても、予期せずに座部が展開する虞が少なく、安全性が高められる。
【0020】
【発明の実施の形態】
本発明に係る折り畳み座席の実施形態としての一例を、図面に基づいて説明する。なお、本例の折り畳み座席は、バス等の乗り物の室内空間を形成する壁面等、折り畳み座席の設置対象物の床面に対して立設状態にある立設部に固設されるものであり、折り畳み座席の下方の空間を、配管スペース等として有効に活用することができるものである。
【0021】
図1に示すように、本例の折り畳み座席100は、設置対象物の立設部に取り付けられる取付部材10と、背もたれとして機能する背当部30と、腰掛けとして機能する座部60と、肘掛けとして機能するアームレスト90とを備えるものである。ここで、この折り畳み座席100では、背当部30に対して座部60が折り畳み・展開自在となっており、座部30の展開状態への変位に連動して、背当部30が後述するリンク機構80(図1では図示省略)により傾斜状態に変位する。また、座部60を折り畳んだ状態では、後述するストッパ70(図1では図示省略)により背当部30が固定され、座部60が折り畳まれた状態で堅固に固定される。なお、アームレスト90は、座部60の変位に関わらず個別に変位される。
【0022】
次に、この折り畳み座席100の具体的な構造を、図2に基づいて説明する。取付部材10は、平板状の金属板により形成された基体部11と、この基体部11の両側に折り曲げ形成された側板部12と、別体の金属板により略コ字状に折り曲げ形成され、基体部11の下部中央に一体化されたブラケット15とを備えている。この取付部材10は、ボルト(図示省略)によって立設部に取り付けられるものであり、基体部11には、ボルトが挿通される取付孔13が穿設されている。また、基体部11には、複数の抜き孔14が穿設されており、この抜き孔14により取付部材10全体の重量の軽減が図られている。
【0023】
取付部材10の側板部12上部には、支軸20を介して背当フレーム31が回動自在に取り付けられている。支軸20の具体的な装着態様は、次の通りである。支軸20は、大径の頭部21を有しており、この頭部21を残して、取付部材10に設けられた支軸孔16及び背当フレーム31に設けられた支軸孔35に挿通され、各支軸孔16,35に挿通された後には、取付部材10の支軸孔16の近傍に突設された押さえ片19を支軸20の頭部21に被せるようにして折り曲げることにより抜けが防止されている。このようにして支軸20の抜けを防止することにより、支軸20が取付部材10の側方に大きく突出することを抑えることができる。
【0024】
背当フレーム31は、背当部30の骨組みを構成するものであり、左右一対の鉛直杆32と上下一対の水平杆33とを有する略方形の枠状に形成されている。また、背当フレーム31は、図3に示すように、その水平杆33に、背当部30の背当面を構成する背当シート部材40が着脱自在に装着されて、この背当シート部材40とで背当部30を構成するものである。なお、背当シート部材40は、背面を構成する平板状の背面板41の表側にクッション材42を介して布地等による上張り43が張られてなるものであり、背面板41の裏側に設けられた係止部44を背当フレーム31の水平杆33に係止させることにより、背当フレーム31に着脱可能に装着されるものである。ここで、係止部44は、一側が開口する略コ字状に形成されており、開口の入り口の幅は、水平杆33に係止部44を外嵌すると容易には外れないよう、背当フレーム31の水平杆33の外径よりも小さくなっている。
【0025】
また、背当シート部材40は、背当フレーム31に装着された状態で、図1に示すように、側板部12を含めて取付部材10の上部を覆うものであるが、取付部材10を立設部に取り付ける作業を行う際には、背当フレーム31から背当シート部材40を取り外すことで、上記作業を円滑に行うことができる。
【0026】
背当フレーム31の下部の両側には、前方に延出するアーム部34が設けられている。このアーム部34は、背当フレーム31に背当シート部材40を装着して全体で背当部30を形成した状態においても、背当部30の前方に延出するものである。そして、このアーム部34に、支軸50を介して座部60が回動自在に取り付けられている。支軸50の具体的な装着態様は次の通りである。支軸50は、ボルトにより構成されており、座部60に設けられた支軸孔62には、雌ネジが刻設されている。そして、支軸50は、背当フレーム31のアーム部34に設けられた支軸孔36にカラー51を介して挿入されると共に座部60の支軸孔62に螺着されている。また、アーム部34とボルトからなる支軸50の頭部との間には、平座金52及びバネ座金53が介在されている。
【0027】
座部60は、骨組みを構成する枠状の座フレーム61を内部に有し、この座フレーム61にクッション材(図示省略)を介して布地等による上張り64が張られてなるもので、全体が一体的に形成されたものである。なお、上記支軸孔62は座フレーム61に形成されており、この支軸孔62は、座部60の後部側方において上張り64から露呈されている。また、座フレーム61の後端の略中央部分も上張り64から露呈されている。
【0028】
座部60の後端部分に露呈された座フレーム61には、リンク機構80の一端側が支軸55を介して回動自在に取り付けられており、このリンク機構80の他端側は、取付部材10のブラケット15に支軸56を介して回動自在に取り付けられている。各支軸55,56の具体的な装着態様は、次の通りである。支軸55は、リンク機構80の一端側に設けられた支軸孔81と座部60の座フレーム61後端部分に設けられた支軸孔63とに挿通されている。また、支軸56は、リンク機構80の他端側に設けられた支軸孔82と取付部材10のブラケット15に設けられた支軸孔17とに挿通されている。そして、各支軸55,56は、両端に止め輪57が装着されて抜けが防止されている。
【0029】
リンク機構80の他端側には、展開規制部83が溶接等によって固着されている。この展開規制部83は、リンク機構80の一端側に向かって突設されており、この展開規制部83には、規制具84が取り付けられている。この規制具84は、座部60に当接することで、座部60の使用状態を超えた展開を規制するものである。ここで、規制具84は、ボルトにより構成されており、リンク機構80の展開規制部83に刻設された雌ネジに進退自在に螺着されている。そして、座部60の展開量は、展開規制部83からの規制具84の突出量により調節される。なお、規制具84には、ナット85が螺合されており、このナット85を展開規制部83に向かって締め付けることにより、規制具84が不用意に進退することなく固定される。
【0030】
一方、取付部材10の下部には、両側板部12間にストッパ70が横架されている。このストッパ70は、座部60の折り畳みに連動して略鉛直状態となった背当部30を固定するものであり、軸部76と、この軸部76の両側に固着された板状のストッパ片71と、軸部76の一側(図示右側)に固着された操作部72とを備えてなるものである。
【0031】
ストッパ片71は、その取付孔75に支軸58が挿入されて、取付部材10に対して回動自在に支持されている。そして、このストッパ片71には、係止部77が設けられている。この係止部77は、背当フレーム31の下部に設けられて内方に突出するピン状の固定部39を係止して、略鉛直状態の背当フレーム31を、この状態で固定するものである。なお、本例では、背当部60側の固定部39を凸状とし、ストッパ70側の係止部77を凹状として、係止部77によって固定部39を係止することとしたが、固定部39を凹状とし、係止部77を凸状としてもよい。
【0032】
また、ストッパ片71と取付部材10との間には、支軸58周りに装着されたトーションスプリング73が介在されており、このトーションスプリング73の一端は、取付部材10に係止され、他端はストッパ片71に係止されている。このトーションスプリング73によって、ストッパ片71は、背当フレーム31の固定部39を係止する方向に付勢されている。
【0033】
ストッパ70の軸部76は、取付部材10の両側板部12を貫通し、側板部12に設けられた長孔状の案内部76aに挿通されている。これにより、ストッパ片71は、回動範囲が規制される。また、軸部76に固着された操作部72は、樹脂やゴム等の柔軟な材質からなるキャップ74が両端に装着された略T字状に形成されており、手で把持することにより操作されるものとなっている。
【0034】
ところで、背当フレーム31の一側方(図示右側)の中間部位には、支軸36が突設されている。この支軸36は、アームレスト90を回動自在に支持するものである。また、取付部材10の側板部12における支軸36に対応する部位には切り欠き18が設けられている。座部60の折り畳み状態では、背当部30が略鉛直状態に変位して背当フレーム31が取付部材10の両側板部12間に収容されるのであるが、側板部12の切り欠き18内に支軸36が納まることで、支軸36と取付部材10との干渉が回避される。
【0035】
アームレスト90は、図4に示すように、後端に支軸孔92を有するボス部91を有しており、このボス部91の支軸孔92に、背当フレーム31の支軸36を挿入することにより、背当フレーム31に対して回動自在に支持されている。ここで、支軸36の基端側は大径部37となっており、支軸36の先端には、平座金95及びバネ座金96を介して止めネジ94が螺着されている。そして、アームレスト90のボス部91は、支軸36基端の大径部37と止めネジ94との間に装着されている。なお、アームレスト90のボス部91は、スプリング等の付勢手段により支軸36の軸心方向に付勢されており、アームレスト90が所望の位置にて保持可能となるように、アームレスト90の回動に適度な抵抗が付与されている。具体的には、支軸孔92の止めネジ94側の部位に支軸36よりも大径の凹部93が設けられており、この凹部93に圧縮コイルバネ97が収容されており、この圧縮コイルバネ97が凹部93の端面と平座金95の端面とに当接することにより、ボス部91を支軸36の基端側に付勢している。
【0036】
また、アームレスト90の回動は、所定角度範囲内にてなされるように規制手段により規制されており、この規制手段の具体的な構造は、次の通りである。図5に示すように、支軸36の大径部37の端面は、周方向に沿って扇状に切り欠かれており、切り欠きの境界部分に当接部38が形成されている。また、アームレスト90のボス部91の端面も扇状に切り欠かれており、切り欠きの境界部分に当接部98が形成されている。アームレスト90の回動に際しては、支軸36側の当接部38とアームレスト90側の当接部98とが互いに当接することにより、所定角度範囲内に規制される。なお、本例では、アームレスト90を最も下方に回動させた状態でアームレスト90が略水平状態となり、最も上方に回動させた状態で略鉛直状態となると共に背当部60の側方に収納されるように、規制されている。
【0037】
次に、この折り畳み座席100の使用態様を説明する。まず、折り畳み座席100の収納状態は、図6に示すように、背当部30に対して座部60を折り畳んだ状態であり、背当部30が支軸20を中心に取付部材10に対して回動して略鉛直状態となり、座部60が支軸50を中心に背当部30に対して回動して略鉛直状態となっている。なお、折り畳み座席100の収納状態は、アームレスト90を含めて全体をコンパクトに納めた状態であり、アームレスト90も、支軸36を中心として背当部30に対して回動して、略鉛直状態で背当部30の側方に収納された状態となっている。
【0038】
折り畳み状態の座部60は、背当部60の下部の両側に延出されたアーム部34の先端部分に支持されていることから、背当部30のアーム部34先端部分から背当部30前面の間の空間に、コンパクトに納まる。また、本例では、背当部30が下方ほど厚く、座部60が前方ほど厚く構成されており、座部60を折り畳んだ状態では、座部60の厚い部分と背当部30の薄い部分とが重なり合い、また、座部60の薄い部分と背当部30の厚い部分とが重なり合う。よって、座部60を折り畳んで背当部30と重ね合わせても、全体の厚さが無用に厚くなることはない。しかも、座部60の底面と背当部30の背面とが略鉛直の平行面となることから、収納状態の折り畳み座席100は、壁面等の立設部に沿って、コンパクトに納まる。
【0039】
また、座部60を折り畳んだ状態では、図7に示すように、リンク機構80の他端側の支軸56が一端側の支軸55よりも上方に位置し、リンク機構80の他端側は、座部60の後端部分の後方に位置して座部60により隠蔽される。よって、この折り畳み座席100では、座部60の折り畳みによって確保された折り畳み座席100の前方及び下方の空間にリンク機構80が大きく露呈することがなく、リンク機構80によって美観を損ねることがない。また、上記空間にリンク機構80が突出することがなく、リンク機構80によって上記空間の使用に支障を来すこともない。なお、本例では、リンク機構80が下側に湾曲する円弧状に形成されており、他端側が座部60の後方に位置しても、座部60に干渉しないように構成されている。また、規制具84は、リンク機構80下側に僅かに突出するだけであり、座部60に何ら干渉せず、座部60の折り畳みにより確保された空間に大きく露呈することもない。
【0040】
図8に示すように、座部60の折り畳みに連動して略鉛直状態となった背当部30は、固定部39がストッパ70の係止部77に係止されて、傾斜状態への回動が規制され、この状態で固定される。よって、背当部30が傾斜状態へと変位不能であることから、座部60は折り畳み状態から展開状態へと変位不能となり、座部60も折り畳み状態で固定される。なお、上記固定は堅固になされるため、乗り物用の折り畳み座席100として採用する場合等において、折り畳み状態の座部60によって体を支え易いように、例えば図6に示すように、略U字状や略L字状等に形成された把手66を座部60の底面に設けることができる。
【0041】
このような折り畳み状態から座部60を展開状態へと変位させるためには、ストッパ70の操作部72を操作して、ストッパ片71をトーションスプリング73の付勢力に抗して回動させ(図示矢印K1)、係止部77による固定部39の係止を解除しつつ、座部60を展開操作すればよい。ここで、座部60の展開操作は、略鉛直状態の座部60の上部を手前下方に回動させる操作であるのに対して、操作部72の操作は、手前上方への回動操作となる。よって、座部60を展開させるためには、全く別異の操作である座部60の展開操作と操作部72の回動操作とを同時に行わなければならず、誤操作等により座部60が不用意に展開されることはない。
【0042】
折り畳み座席100の使用状態は、図9に示すように、背当部30に対して座部60を展開した状態であり、座部60が支軸50を中心に背当部30に対して回動して略水平状態となっている。ここで、背当部30に対する座部60の回動に際しては、リンク機構80により座部60の移動が規制されるため、座部60と背当部30との支持部分である支軸50が前方に移動する。これにより、背当部30が支軸20を中心に取付部材10に対して回動して上部が後方に位置する傾斜状態となる。なお、アームレスト90については、アームレスト90の使用の要否に応じて、支軸36を中心として背当部30に対して回動させて、略水平状態の使用状態または略鉛直状態の収納状態とすればよい。
【0043】
座部60の展開状態では、図10に示すように、リンク機構80の他端側の支軸56が一端側の支軸55よりも下方に位置し、リンク機構80の略全体が座部60の下側に露呈されるのであるが、座部60を展開した状態における座部60の下側の空間は、使用に用いられる空間ではない。よって、リンク機構80が座部60の下側に露呈しても、何ら支障を来さない。
【0044】
また、座部60を展開した状態では、リンク機構80の規制具84が、座部60の後端部分において上張り64から露呈された座フレーム61に当接して、座部60の使用状態を超えた展開を規制する。ここで、規制具84は、座部フレーム61の後方斜め下側に当接しており、座部60や背当部30の表側に露呈したり突出することがない。なお、座フレーム61における規制具84の当接部分には、補強板65が取着されており、規制具84の当接に対する座フレーム61の十分な強度が確保されている。また、座部60の展開量は、展開規制部83に対する規制具84の突出量によって調節される。
【0045】
図11に示すように、座部60を展開した状態では、ストッパ70の係止部77から背当部30の固定部39が離脱して、ストッパ70のストッパ片71は、トーションスプリング73の付勢力によって回動し、係止部77が固定部39を係止する位置に復帰する。この状態から、座部60を折り畳むと、座部60の折り畳みに連動して背当部30が略鉛直状態となるのであるが、この際に、背当部30の固定部39は、ストッパ70のストッパ片71に当接し、このストッパ片71を押動する。これにより、ストッパ片71は、トーションスプリング73の付勢力に抗して回動し、係止部77に固定部39を受け入れ、その後には、係止部77が固定部39を係止する状態に、トーションスプリング73付勢力により復帰し、ストッパ70による背当部30の固定が自動的に行われる。
【0046】
以上、本各発明に係る折り畳み座席の一例を説明したが、本各発明はこれに限定されるものではなく、本各発明の要旨を逸脱しない範囲での種々の改良や変更が可能である。
【0047】
例えば、上述した折り畳み座席では、一側方にアームレストを設けたが、両側方にアームレストを設けてもよく、また、アームレストを設けなくてもよい。なお、左右の一側方にアームレストを具備する折り畳み座席と、アームレストを具備しない折り畳み座席とを、例えば、アームレストを具備しない折り畳み座席に隣接して、この折り畳み座席側にアームレストを具備するタイプの折り畳み座席を設ける等、種々のタイプの折り畳み座席を適宜組み合わせて連設すると、複数の折り畳み座席を連設した状態で所望の部位にアームレストを設けることができる。
【0048】
また、折り畳み座席として一人掛けのものを例示したが、2人掛け、3人掛け、或いは、4人以上の多数人掛け等、複数人掛けの折り畳み座席としてもよい。
【0049】
【発明の効果】
本発明によれば、以下のような効果を得ることができる。
【0050】
請求項1に記載の発明によれば、背当部を固定することによって折り畳み状態の座部を固定するのであるが、取付部材に対して単に回動されるだけの背当部を固定すればよいため、ストッパの構造を簡略化することができ、また、背当部を正確な位置精度で変位させるために、複雑な機構を設ける必要もないため、簡便な機構によって座部を折り畳んだ状態で固定することができる。
【0051】
請求項2に記載の発明によれば、請求項1に記載の発明の効果に加えて、座部を折り畳んだ状態では、リンク機構の他端側が、座部の折り畳みにより確保された前方や下方の空間に大きく突出しないため、折り畳まれた座部の前方や下方の空間を有効に活用することができる。
【0052】
請求項3に記載の発明によれば、請求項1または請求項2に記載の発明の効果に加えて、ストッパとして、大きな固定力を必要としないため、ストッパの構造を、より一層、簡略化することができる。
【0053】
請求項4に記載の発明によれば、請求項1から請求項3までのいずれか一つに記載の発明の効果に加えて、座部を折り畳めば、ストッパによって背当部が自動的に固定されため、座部を折り畳む際の操作を簡略化することができる。
【0054】
請求項5に記載の発明によれば、請求項4に記載の発明の効果に加えて、全く別異な座部の展開操作と操作部の回動操作とを行わなければ、座部を展開することができないため、不用意にストッパが誤操作されても、予期せずに座部が展開する虞が少なく、安全性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る折り畳み座席の一例を示す斜視図である。
【図2】背当シート部材を取り外した状態での折り畳み座席の構造を示す分解斜視図である。
【図3】背当シート部材を示す縦断面側面図である。
【図4】アームレストの取付状態を示す要部断面平面図である。
【図5】アームレストの回動規制の構造を示す要部斜視図である。
【図6】折り畳み座席の収納状態を示す側面図である。
【図7】座部を折り畳んだ状態のリンク機構を示す要部断面側面図である。
【図8】座部を折り畳んだ状態のストッパを示す要部断面側面図である。
【図9】折り畳み座席の使用状態を示す側面図である。
【図10】座部を展開した状態のリンク機構を示す要部断面側面図である。
【図11】座部を展開した状態のストッパを示す要部断面側面図である。
【符号の説明】
10  取付部材
30  背当部
34  アーム部
39  固定部
60  座部
70  ストッパ
72  操作部
77  係止部
80  リンク機構
100 折り畳み座席

Claims (5)

  1. 設置対象物に取り付けられる取付部材と、
    該取付部材に回動自在に支持され、傾斜状態と略鉛直状態とに変位する背当部と、
    該背当部に回動自在に支持され、展開状態と折り畳み状態とに変位する座部と、
    一端側が前記座部に回動自在に支持され、他端側が前記取付部材に回動自在に支持されて、前記座部の展開状態または折り畳み状態への変位に連動して前記背当部を傾斜状態または略鉛直状態に変位させるリンク機構と、
    前記取付部材に設けられ、略鉛直状態の前記背当部を固定して、前記座部の展開状態への変位を防止するストッパと
    を備えることを特徴とする折り畳み座席。
  2. 前記座部は、前記背当部の下部に設けられて前方に延出するアーム部に回動自在に支持されており、
    前記リンク機構は、一端側が、前記座部における背当部との支持部分よりも後端側に回動自在に支持され、他端側が、前記取付部材の部位であって、座部の折り畳み状態で一端側と座部との支持部分よりも上方に位置する部位に回動自在に支持されていることを特徴とする請求項1に記載の折り畳み座席。
  3. 前記背当部は、上端部分にて前記取付部材に回動自在に支持されており、
    前記ストッパは、前記背当部の下端部分を固定することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の折り畳み座席。
  4. 前記ストッパは、前記背当部に設けられた固定部を係止する係止部を有し、前記取付部材に回動自在に支持されると共に前記固定部を係止する方向に付勢され、且つ、前記背当部の略鉛直状態への変位に伴い、前記固定部により押動されて該固定部を前記係止部に受け入れて係止すると共に、操作部による回動操作によって前記固定部の係止を解除することを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれか一つに記載の折り畳み座席。
  5. 前記操作部は、前記座部の展開方向とは逆方向に回動操作されることを特徴とする請求項4に記載の折り畳み座席。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
KR102292134B1 (ko) * 2021-04-30 2021-08-24 (주)씨엠텍 구조 차량용 의자

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