JP2004025789A - 中実部及び中空部を有する成形品の射出成形方法及び金型組立体 - Google Patents

中実部及び中空部を有する成形品の射出成形方法及び金型組立体 Download PDF

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Abstract

【課題】中空部及び中実部を有する成形品の成形において所望の部位にまで中空部を形成することを可能にする金型組立体を提供する。
【解決手段】金型組立体は、第1金型部10、第2金型部11、ゲート部13、加圧流体導入部14、及び、可動コア20を備え、金型組立体に設けられたキャビティ30は、成形品の中実部を形成すべき第1キャビティ部31と、成形品の中空部を形成すべき第2キャビティ部32とから構成されており、加圧流体導入部14は、第2キャビティ部32を構成する金型の部分に配置されており、可動コア20は、第1キャビティ部31を構成する金型の部分に配置されている。
【選択図】 図5

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ひけや反りのない外観の美麗な成形品を成形するための金型組立体、及び、係る金型組立体を用いた射出成形方法に関し、更に詳しくは、金型組立体に設けられたキャビティ内に射出された溶融熱可塑性樹脂内に加圧流体を導入して、中空部及び中実部を有する射出成形品を成形するための金型組立体、及び、係る金型組立体を用いた射出成形方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
溶融熱可塑性樹脂の射出成形に基づき成形品を成形する際、ひけや反りのない外観の美麗な成形品を得るための技術が、例えば、特開昭63−268611号公報や特公平03−47171号公報から周知である。これらの公報に開示された技術においては、金型に設けられたキャビティ内に溶融熱可塑性樹脂を射出してキャビティ内を溶融熱可塑性樹脂で充填し、次いで、加圧ガス等の加圧流体をキャビティ内の溶融熱可塑性樹脂内に導入して、中空部を有する成形品を得る。尚、通常、成形品に厚肉部分を偏在させ、この肉厚部分に中空部を形成する。加圧流体は、金型に配設された加圧流体導入部から導入される。キャビティ内の溶融熱可塑性樹脂内に加圧流体を導入することによって、溶融熱可塑性樹脂が金型のキャビティ面に押し付けられる結果、成形品にひけや反りが発生することを効果的に防止することができる。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、これらの公報に開示された技術にあっては、キャビティ内を溶融熱可塑性樹脂で充填した後に加圧流体を導入するが故に、加圧流体は成形品の厚肉部分に相当する溶融熱可塑性樹脂の部分の冷却に伴う体積収縮に起因した容積しか導入することができない。従って、キャビティ内の溶融熱可塑性樹脂の所望の部位にまで加圧流体が到達しない場合があり、成形品にひけや反りが発生することを効果的に防止することができない場合がある。
【0004】
ひけが生じる場合、加圧流体の圧力を増加させることも対策の1つであるが、ひけの発生を抑制する効果が低く、逆に、成形品の薄肉部分への加圧流体のはみ出しが発生したり、成形品の表面外観が悪くなることがある。
【0005】
特開平5−96560号公報には、中空部を有する射出成形品を成形するための金型として、副キャビティを備えた金型が開示されている。副キャビティを設けることによって、キャビティ内に射出された溶融熱可塑性樹脂内に加圧流体を導入したとき、キャビティ内の溶融熱可塑性樹脂が副キャビティへと押し出される。その結果、キャビティ内の溶融熱可塑性樹脂の所望の部位にまで加圧流体を到達させることが可能となる。しかしながら、成形品の成形後、副キャビティによって成形された成形品の部分の切除という処理の煩雑さがあるし、切除した成形品の部分の外観が損なわれるといった問題もあり、しかも、成形品の生産性が著しく損なわれる。
【0006】
中空部の形成を確実なものとするために、中空部を形成すべきキャビティの部分に可動コアを備えた金型が、例えば特開平4−212822号公報や特開平7−164486号公報から公知である。これらの技術においては、可動コアを前進端に位置せしめた状態で、キャビティ内に溶融熱可塑性樹脂を射出する。そして、射出完了後、キャビティ内の溶融熱可塑性樹脂内に加圧流体を導入し、併せて、中空部を形成すべきキャビティの部分の体積を増加させるために可動コアを後進端に移動させる。しかしながら、これらの公報に開示された技術にあっては、中空部を形成するために可動コアが設けており、可動コアが設けられたキャビティ部において成形品の中実部を形成する技術に関しては何ら開示されていない。
【0007】
従って、本発明の目的は、キャビティ内の溶融熱可塑性樹脂の所望の部位にまで確実に加圧流体を到達せしめ、且つ、中実部を形成すべきキャビティの部分を占める溶融熱可塑性樹脂の部分にまで加圧流体が侵入することを確実に抑制でき、中空部及び中実部を有する成形品の成形において所望の部位にまで中空部を形成することを可能にする金型組立体、及び、係る金型組立体を用いた射出成形方法を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するための本発明の金型組立体は、
第1金型部、第2金型部、ゲート部、加圧流体導入部、及び、可動コアを備え、第1金型部と第2金型部とが型締めされた状態において第1金型部と第2金型部と可動コアとによってキャビティが形成され、
キャビティ内にゲート部から溶融熱可塑性樹脂を射出してキャビティ内を溶融熱可塑性樹脂で充填した後、キャビティ内の溶融熱可塑性樹脂内に加圧流体導入部から加圧流体を導入し、中実部及び中空部を有する成形品を成形するための金型組立体であって、
キャビティは、成形品の中実部を形成すべき第1キャビティ部と、第1キャビティ部から延在し、成形品の中空部を形成すべき第2キャビティ部とから構成されており、
加圧流体導入部は、第2キャビティ部を構成する金型の部分に配置されており、
可動コアは、第1キャビティ部を構成する金型の部分に配置されていることを特徴とする。
【0009】
上記の目的を達成するための本発明の射出成形方法は、
第1金型部、第2金型部、ゲート部、加圧流体導入部、及び、可動コアを備え、第1金型部と第2金型部とが型締めされた状態において第1金型部と第2金型部と可動コアとによってキャビティが形成され、
キャビティは、成形品の中実部を形成すべき第1キャビティ部と、第1キャビティ部から延在し、成形品の中空部を形成すべき第2キャビティ部とから構成されており、
加圧流体導入部は、第2キャビティ部を構成する金型の部分に配置されており、
可動コアは、第1キャビティ部を構成する金型の部分に配置されている金型組立体を用いた、中実部及び中空部を有する成形品の射出成形方法であって、
(A)キャビティ内にゲート部から溶融熱可塑性樹脂を射出してキャビティ内を溶融熱可塑性樹脂で充填し、溶融熱可塑性樹脂の射出前に、若しくは、溶融熱可塑性樹脂の射出開始と同時に、若しくは、溶融熱可塑性樹脂の射出中に、可動コアを前進端に位置せしめた状態とし、
(B)キャビティ内を溶融熱可塑性樹脂で充填した後、キャビティ内の溶融熱可塑性樹脂内に加圧流体導入部から加圧流体を導入し、加圧流体の導入前に、若しくは、加圧流体の導入開始と同時に、若しくは、加圧流体の導入中に、可動コアを後進端に向けて移動させ、加圧流体の導入中に可動コアを後進端に位置せしめ、以て、第1キャビティ部において成形品の中実部を成形し、第2キャビティ部において成形品の中空部を形成することを特徴とする。
【0010】
本発明の金型組立体あるいは射出成形方法(以下、これらを総称して、単に、本発明と呼ぶ)にあっては、成形すべき成形品の形状等に依存して、ゲート部を、第1キャビティ部を構成する金型の部分に配置してもよいし、第2キャビティ部を構成する金型の部分に配置してもよい。ゲート部の構造は、本質的に任意であり、例えば、ダイレクト構造、サイドゲート構造、オーバーラップゲート構造、トンネルゲート構造、ピンポイントゲート構造を例示することができる。
【0011】
本発明においては、加圧流体導入部は加圧流体導入ノズルから成り、加圧流体導入ノズルの先端部は第2キャビティ部内に位置する構成とすることができるが、このような構成に限定するものではなく、加圧流体導入部を、金型組立体に設けられた溶融熱可塑性樹脂流路内に配置してもよいし、射出成形用シリンダーの先端部内に配置してもよいし、ゲート部内に配置してもよい。
【0012】
本発明にあっては、例えば、第1金型部を固定金型部とし、第2金型部を可動金型部とすることができる。そして、この場合、例えば、第1金型部にゲート部を設け、第2金型部に加圧流体導入ノズルを配置する構成とすることができる。また、成形すべき成形品の形状に依存して、可動コアを、第1金型部側に配置してもよいし、第2金型部側に配置してもよいし、第1金型部側及び第2金型部側に配置してもよい。可動コアの移動は、例えば、油圧シリンダーや空気圧シリンダー、電動モータを用いて行うことができる。
【0013】
本発明において使用する可動コアの個数に特に制限はなく、1つの肉厚部分(例えば、ボスやリブ)を有する成形品を成形するために、1つの可動コアを設置してもよいし、複数の可動コアを設置してもよい。また、例えば、複数の肉厚部分(例えば、ボスやリブ)を成形品に設ける場合、その数だけ可動コアを設置すればよい。更には、1つの可動コアによって複数の肉厚部分を形成することも可能である。前進端から後進端までの可動コアの移動速度は一定であってもよいし、例えば、中空部の形成状態に合わせて変化させてもよい。
【0014】
可動コアの前後進を、射出成形機や加圧流体の供給装置から送出される制御信号に基づき制御することができる。可動コアの後進端位置及び移動速度の制御は、所望する加圧流体によるひけ防止等の効果に基づき決定すればよい。また、可動コアの後進端位置の位置決めは、極めて簡単な機械的な位置制御、例えば、後退止めスリーブ、後退止めノックピン、後退止めブロック等を用いて行うことができる。
【0015】
本発明の射出成形方法にあっては、成形品の中空部の体積をV、可動コアの前進端から後進端への移動に伴う第1キャビティ部の体積増加量をVとしたとき、0.7V<V<V、好ましくは0.7V<V<0.9Vを満足することが、中空部及び中実部を有する成形品の成形において所望の部位にまで中空部を確実に形成するといった観点から望ましい。
【0016】
本発明の射出成形方法にあっては、加圧流体の導入中に可動コアを後進端に位置せしめた後、可動コアを前進端方向に再び移動させてもよく、これによって、第1キャビティ部内の熱可塑性樹脂の体積収縮を補償することができる。
【0017】
本発明にあっては、キャビティ内を溶融熱可塑性樹脂で充填した後、キャビティ内の溶融熱可塑性樹脂内に加圧流体導入部から加圧流体を導入するが、加圧流体の導入は、キャビティ内を溶融熱可塑性樹脂で充填したと同時であってもよいし、充填後、一定時間が経過した後としてもよい。尚、本発明においては、キャビティを溶融熱可塑性樹脂で100%充填した状態とする。導入される加圧流体の容積は、キャビティの主に第2キャビティ部における熱可塑性樹脂の冷却に伴う体積収縮を補償する容積、及び、可動コアの移動による第1キャビティ部における体積増加を補償する容積の合計である。また、場合によっては、更に、第1キャビティ部における熱可塑性樹脂の冷却に伴う体積収縮を補償する容積を加えた容積である。
【0018】
本発明での使用に適した樹脂として、結晶性熱可塑性樹脂や非晶性熱可塑性樹脂を挙げることができ、具体的には、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂等のポリオレフィン系樹脂;ポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミドMXD6等のポリアミド系樹脂;ポリオキシメチレン(ポリアセタール,POM)樹脂;ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂、ポリブチレンテレフタレート(PBT)樹脂等のポリエステル系樹脂;ポリフェニレンサルファイド樹脂;ポリスチレン樹脂、ABS樹脂、AES樹脂、AS樹脂といったスチレン系樹脂;メタクリル系樹脂;ポリカーボネート樹脂;変性PPE樹脂;ポリスルホン樹脂;ポリエーテルスルホン樹脂;ポリアリレート樹脂;ポリエーテルイミド樹脂;ポリアミドイミド樹脂;ポリイミド系樹脂;ポリエーテルケトン樹脂;ポリエーテルエーテルケトン樹脂;ポリエステルカーボネート樹脂;液晶ポリマーを例示することができる。
【0019】
更には、ポリマーアロイ材料から成る熱可塑性樹脂を用いることができる。ここで、ポリマーアロイ材料は、少なくとも2種類の熱可塑性樹脂をブレンドしたもの、又は、少なくとも2種類の熱可塑性樹脂を化学的に結合させたブロック共重合体若しくはグラフト共重合体から成る。ポリマーアロイ材料は、単独の熱可塑性樹脂のそれぞれが有する特有な性能を合わせ持つことができる高機能材料として広く使用されている。少なくとも2種類の熱可塑性樹脂をブレンドしたポリマーアロイ材料を構成する熱可塑性樹脂として、ポリスチレン樹脂、ABS樹脂、AES樹脂、AS樹脂といったスチレン系樹脂;ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂等のポリオレフィン系樹脂;メタクリル樹脂;ポリカーボネート樹脂;ポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミドMXD6等のポリアミド系樹脂;変性PPE樹脂;ポリブチレンテレフタレート樹脂やポリエチレンテレフタレート樹脂等のポリエステル樹脂;ポリオキシメチレン樹脂;ポリスルホン樹脂;ポリイミド樹脂;ポリフェニレンサルファイド樹脂;ポリアリレート樹脂;ポリエーテルスルホン樹脂;ポリエーテルケトン樹脂;ポリエーテルエーテルケトン樹脂;ポリエステルカーボネート樹脂を挙げることができる。2種類の熱可塑性樹脂をブレンドしたポリマーアロイ材料として、ポリカーボネート樹脂とABS樹脂とのポリマーアロイ材料を例示することができる。尚、このような樹脂の組合せを、ポリカーボネート樹脂/ABS樹脂と表記する。以下においても同様である。更に、少なくとも2種類の熱可塑性樹脂をブレンドしたポリマーアロイ材料として、ポリカーボネート樹脂/PET樹脂、ポリカーボネート樹脂/PBT樹脂、ポリカーボネート樹脂/ポリアミド系樹脂、ポリカーボネート樹脂/PBT樹脂/PET樹脂、変性PPE樹脂/HIPS樹脂、変性PPE樹脂/ポリアミド系樹脂、変性PPE樹脂/PBT樹脂/PET樹脂、変性PPE樹脂/ポリアミドMXD6樹脂、ポリオキシメチレン樹脂/ポリウレタン樹脂、PBT樹脂/PET樹脂を例示することができる。
【0020】
尚、以上に説明した各種の熱可塑性樹脂に、安定剤、紫外線吸収剤、離型剤、染顔料等を添加することができるし、ガラスビーズ、マイカ、カオリン、炭酸カルシウム等の無機充填材、あるいは有機充填材を添加することもできる。
【0021】
本発明において、導入する加圧流体として、窒素ガス、炭酸ガス、空気、ヘリウムガス等常温でガス状の物質を使用することができるし、水等の液体や高圧下で液化したガスも使用可能である。
【0022】
本発明においては、加圧流体導入部が第2キャビティ部を構成する金型の部分に配置されており、可動コアが第1キャビティ部を構成する金型の部分に配置されている。従って、キャビティ内を溶融熱可塑性樹脂で充填した後、キャビティ内の溶融熱可塑性樹脂内に加圧流体導入部から加圧流体を導入し、加圧流体の導入前に、若しくは、加圧流体の導入開始と同時に、若しくは、加圧流体の導入中に、可動コアを後進端に向けて移動させたとき、第1キャビティ部が溶融熱可塑性樹脂で充填された状態で、可動コアの前進端から後進端への移動に伴う第1キャビティ部の体積増加量Vに概ね等しい容積、中空部が第1キャビティ部に向かって拡大する。その結果、キャビティ内の溶融熱可塑性樹脂の所望の部位にまで確実に加圧流体を到達せしめ、中空部及び中実部を有する成形品の成形において所望の部位にまで確実に中空部を形成することができる。しかも、中実部を形成すべき成形品の部分にまで中空部が延びることを確実に防止することができる。
【0023】
【実施例】
以下、図面を参照して、実施例に基づき本発明を説明する。
【0024】
(実施例1)
図1に実施例1の金型組立体の模式的な断面図を示す。また、射出成形品の模式的な側面図、平面図をそれぞれ、図7の(A)及び(B)に示し、図7の(B)の矢印C−C、及び、図7の(A)の矢印D−Dに沿った射出成形品の模式的な断面図を図7の(C)及び(D)に示す。
【0025】
この金型組立体は、第1金型部(固定金型部10)、第2金型部(可動金型部11)、ゲート部13、加圧流体導入部14、及び、可動コア20を備えている。そして、図1に示すように、第1金型部(固定金型部10)と第2金型部(可動金型部11)とが型締めされた状態において第1金型部(固定金型部10)と第2金型部(可動金型部11)と可動コア20とによってキャビティ30が形成される。ここで、キャビティ30は、成形品50の中実部51を形成すべき第1キャビティ部31と、第1キャビティ部31から延在し、成形品50の中空部52を形成すべき第2キャビティ部32とから構成されている。ゲート部13は、第1キャビティ部31を構成する金型の部分に配置されている。具体的には、ゲート部13は、固定金型部10に設けられ、サイドゲート構造を有する。ゲート部13は、第1金型部(固定金型部10)に設けられた溶融熱可塑性樹脂流路12を介して射出用シリンダー(図示せず)に連通している。
【0026】
加圧流体導入部14は、第2キャビティ部32を構成する金型の部分に配置されており、具体的には、加圧流体導入ノズルから成る。加圧流体導入ノズルの先端部は、第2キャビティ部32内に位置する。加圧流体導入ノズルは、具体的には、第1金型部(固定金型部10)側に配置され、油圧シリンダーから構成された加圧流体導入ノズル移動装置(図示せず)によって前後に移動可能である。加圧流体導入部14は、配管(図示せず)を介して加圧流体供給装置(図示せず)に接続されている。
【0027】
可動コア20は、第1キャビティ部31を構成する金型の部分に配置されている。具体的には、可動コア20は、可動金型部側に配置されている。そして、可動コア20は、油圧シリンダーから構成された可動コア移動装置21によって前後に移動可能である。尚、図1には、可動コア20が前進端に位置する状態を示す。可動コア20の前後進は、加圧流体供給装置から送出される制御信号に基づき制御される。
【0028】
実施例1における成形品50の体積を6.5cm、成形品50の中空部52の体積Vを0.3cm、可動コア20の前進端から後進端への移動に伴う第1キャビティ部31の体積増加量Vを0.25cmとし、移動距離を5mmとした。また、成形品を、ポリカーボネート樹脂(三菱エンジニアリングプラスチックス株式会社製、商品名:ユーピロンS3000 自然色)から成形した。
【0029】
以下、金型組立体等の模式的な断面図である図1〜図5、及び、溶融熱可塑性樹脂の射出、加圧流体の導入、可動コア20の移動のタイミングを表す図6を参照して、実施例1の射出成形方法を説明する。
【0030】
先ず、図示しない射出用シリンダー内で、熱可塑性樹脂を可塑化・溶融しておく。一方、可動コア移動装置21を作動させて、可動コア20を前進端に位置させる(図1参照)。更には、加圧流体導入ノズル移動装置を作動させることによって、加圧流体導入部(加圧流体導入ノズル)14の先端部を第2キャビティ部32内に位置させる。そして、図2に模式的に示すように、キャビティ30内に溶融熱可塑性樹脂流路12及びゲート部13を介して溶融熱可塑性樹脂40を射出して、キャビティ30内を溶融熱可塑性樹脂40で完全に充填した。射出条件を、以下の表1に例示する。
【0031】
[表1]
樹脂温度:280゜C
金型温度:80゜C
射出圧力:1×10Pa(1×10kg/cmf)
射出時間:1.5秒
【0032】
キャビティ30内を溶融熱可塑性樹脂40で完全に充填したと同時に、キャビティ30内の溶融熱可塑性樹脂40内に加圧流体導入部(加圧流体導入ノズル)14から加圧流体(具体的には、圧力7×10Pa=7×10kg/cmfの窒素ガス)を導入した(図3参照)。これによって、キャビティ30内の溶融熱可塑性樹脂40内には中空部52が形成され始めた。
【0033】
溶融熱可塑性樹脂の射出開始から2.0秒、経過後、可動コア移動装置21を作動させて、可動コア20を前進端から後進端に向けて移動させた。可動コア20の移動速度を5mm/秒とした。可動コア20の移動中、加圧流体を導入し続けた。この状態を模式的に図4に示すが、キャビティ30内の溶融熱可塑性樹脂40内に形成された中空部52の先端は第1キャビティ部31の方に向かって延びる。
【0034】
そして、加圧流体を導入し続けた状態で、可動コア20を後進端に位置せしめた(図5参照)。こうして、第1キャビティ部31において成形品50の中実部51を成形し、第2キャビティ部32において成形品50の中空部52を形成することができた。
【0035】
その後、キャビティ30内の熱可塑性樹脂を冷却・固化させ、溶融熱可塑性樹脂の射出開始から30秒、加圧流体導入部(加圧流体導入ノズル)14を後退させて、中空部52内の加圧流体を大気中に解放した。そして、溶融熱可塑性樹脂の射出開始から45秒、型開きを行い、金型組立体から成形品を取り出した。
【0036】
得られた成形品50には、所望の部位にまで中空部52が形成されており、しかも、中実部51にはひけの発生が認められなかった。
【0037】
(比較例1)
可動コア20を後進端に位置せしめた状態で(可動コア20の位置は図5を参照)、実施例1にて説明したと同様の射出成形を行った。その結果得られた成形品の長手方向に沿った模式的な断面図を図13に示すが、成形品には所望の部位にまでは中空部52が形成されておらず、しかも、中実部51にひけが発生していた。
【0038】
(実施例2)
実施例2の金型組立体は、実施例1の金型組立体の変形である。図8に模式的な断面図を示すように、実施例2においては、ゲート部13Aは、第2キャビティ部32を構成する金型の部分に配置されている。具体的には、ゲート部13Aは、固定金型部10に設けられ、ダイレクト構造を有する。ゲート部13Aは、第1金型部(固定金型部10)に設けられた溶融熱可塑性樹脂流路12Aを介して射出用シリンダー(図示せず)に連通している。この点を除き、実施例2の金型組立体は、実施例1の金型組立体と同じ構造、構成を有するので、詳細な説明は省略する。
【0039】
実施例2における成形品50の体積、中空部52の体積V等の諸元を実施例1の成形品と同じとした。また、実施例1と同じ熱可塑性樹脂を使用した。更には、可動コア20の前進端から後進端への移動に伴う第1キャビティ部31の体積増加量V、移動距離も実施例1と同様とした。
【0040】
以下、金型組立体等の模式的な断面図である図8〜図12、及び、図6を参照して、実施例2の射出成形方法を説明する。
【0041】
先ず、図示しない射出用シリンダー内で、熱可塑性樹脂を可塑化・溶融しておく。一方、可動コア移動装置21を作動させて、可動コア20を前進端に位置させる(図8参照)。更には、加圧流体導入ノズル移動装置を作動させることによって、加圧流体導入部(加圧流体導入ノズル)14の先端部を第2キャビティ部32内に位置させる。そして、図9に模式的に示すように、キャビティ30内にゲート部13から溶融熱可塑性樹脂40を射出して、キャビティ30内を溶融熱可塑性樹脂40で完全に充填した。射出条件を、表1に例示したと同様とした。
【0042】
キャビティ30内を溶融熱可塑性樹脂40で完全に充填したと同時に、キャビティ30内の溶融熱可塑性樹脂40内に加圧流体導入部(加圧流体導入ノズル)14から、実施例1と同様に加圧流体を導入した(図10参照)。これによって、キャビティ30内の溶融熱可塑性樹脂40内には中空部52が形成され始めた。
【0043】
溶融熱可塑性樹脂の射出開始から2.0秒、経過後、可動コア移動装置21を作動させて、可動コア20を前進端から後進端に向けて移動させた。可動コア20の移動速度を5mm/秒とした。可動コア20の移動中、加圧流体を導入し続けた。この状態を模式的に図11に示すが、キャビティ30内の溶融熱可塑性樹脂40内に形成された中空部52の先端は第1キャビティ部31の方に向かって延びる。
【0044】
そして、加圧流体を導入し続けた状態で、可動コア20を後進端に位置せしめた(図12参照)。こうして、第1キャビティ部31において成形品50の中実部51を成形し、第2キャビティ部32において成形品50の中空部52を形成することができた。
【0045】
その後、実施例1と同様にして、キャビティ30内の熱可塑性樹脂を冷却・固化させ、中空部52内の加圧流体を大気中に解放し、型開きを行い、金型組立体から成形品を取り出した。
【0046】
得られた成形品50には、所望の部位にまで中空部52が形成されており、しかも、中実部51にはひけの発生が認められなかった。
【0047】
(比較例2)
可動コア20を後進端に位置せしめた状態で(可動コア20の位置は図12を参照)、実施例2にて説明したと同様の射出成形を行った。その結果、図13に示したと同様に、成形品には所望の部位にまでは中空部52が形成されておらず、しかも、中実部51にひけが発生していた。
【0048】
以上、本発明を好ましい実施例に基づき説明したが、本発明はこれらに限定されるものではない。実施例にて説明した金型組立体の構造、構成、使用した熱可塑性樹脂、射出成形条件は例示であり、適宜変更することができる。例えば、実施例2にて説明した金型組立体において、加圧流体導入部を、金型組立体に設けられた溶融熱可塑性樹脂流路12A内に配置してもよいし、射出成形用シリンダーの先端部内に配置してもよいし、ゲート部13A内に配置してもよい。
【0049】
実施例1及び実施例2においては、キャビティ内への溶融熱可塑性樹脂の射出開始前に可動コアを前進端に位置せしめ、キャビティ内への溶融熱可塑性樹脂の射出完了と同時に加圧流体の導入を開始し、加圧流体の導入開始後、可動コアを後進端に移動させ始めたが、本発明の射出成形方法は、このような形態に限定されない。以下の表2に、可動コアが前進端に位置せしめられるタイミング、加圧流体の導入開始のタイミング、可動コアの後進端への移動開始のタイミングを纏めた。実施例1及び実施例2は、表2のケース2に相当する。尚、ケース3、ケース8及びケース13にあっては、可動コアの後進端への移動開始は、キャビティ内への溶融熱可塑性樹脂の射出完了と同時あるいは完了後とする必要があるし、可動コアの移動中に加圧流体の導入を開始する必要がある。また、ケース11〜ケース15にあっては、可動コアが前進端に位置せしめられる時期は、キャビティ内に射出された溶融熱可塑性樹脂が第1キャビティ部に到達する以前とする必要がある。また、ケース1〜ケース15のいずれにあっても、可動コアを、後進端に位置せしめた後、第1キャビティ部内における熱可塑性樹脂の冷却に伴う体積収縮を補償するために、可動コアを前進端方向に再び移動させてもよい。
【0050】
[表2]
Figure 2004025789
【0051】
【発明の効果】
本発明においては、第1キャビティ部が溶融熱可塑性樹脂で充填された状態で、可動コアの前進端から後進端への移動に伴う第1キャビティ部の体積増加量に概ね等しい容積、中空部が第1キャビティ部に向かって拡大するが故に、キャビティ内の溶融熱可塑性樹脂の所望の部位にまで確実に加圧流体を到達せしめ、中空部及び中実部を有する成形品の成形において所望の部位にまで確実に中空部を形成することができる。しかも、中実部を形成すべき成形品の部分にまで中空部が延びることを確実に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、実施例1の金型組立体の模式的な断面図である。
【図2】図2は、実施例1の射出成形方法を説明するための金型組立体等の模式的な断面図である。
【図3】図3は、図2に引き続き、実施例1の射出成形方法を説明するための金型組立体等の模式的な断面図である。
【図4】図4は、図3に引き続き、実施例1の射出成形方法を説明するための金型組立体等の模式的な断面図である。
【図5】図5は、図4に引き続き、実施例1の射出成形方法を説明するための金型組立体等の模式的な断面図である。
【図6】図6は、溶融熱可塑性樹脂の射出、加圧流体の導入、可動コアの移動のタイミングを表す図である。
【図7】図7の(A)及び(B)のそれぞれは、射出成形品の模式的な側面図及び模式的な平面図であり、図7の(C)及び(D)のそれぞれは、図7の(B)の矢印C−C、及び、図7の(A)の矢印D−Dに沿った射出成形品の模式的な断面図である。
【図8】図8は、実施例2の金型組立体の模式的な断面図である。
【図9】図9は、実施例2の射出成形方法を説明するための金型組立体等の模式的な断面図である。
【図10】図10は、図9に引き続き、実施例2の射出成形方法を説明するための金型組立体等の模式的な断面図である。
【図11】図11は、図10に引き続き、実施例2の射出成形方法を説明するための金型組立体等の模式的な断面図である。
【図12】図12は、図11に引き続き、実施例2の射出成形方法を説明するための金型組立体等の模式的な断面図である。
【図13】図13は、比較例1及び比較例2にて得られた成形品の長手方向に沿った模式的な断面図である。
【符号の説明】
10・・・第1金型部(固定金型部)、11・・・第2金型部(可動金型部)、12・・・溶融熱可塑性樹脂流路、13・・・ゲート部、14・・・加圧流体導入部、20・・・可動コア、21・・・可動コア移動装置、30・・・キャビティ、31・・・第1キャビティ部、32・・・第2キャビティ部、40・・・溶融熱可塑性樹脂、50・・・成形品、51・・・中実部、52・・・中空部

Claims (9)

  1. 第1金型部、第2金型部、ゲート部、加圧流体導入部、及び、可動コアを備え、第1金型部と第2金型部とが型締めされた状態において第1金型部と第2金型部と可動コアとによってキャビティが形成され、
    キャビティ内にゲート部から溶融熱可塑性樹脂を射出してキャビティ内を溶融熱可塑性樹脂で充填した後、キャビティ内の溶融熱可塑性樹脂内に加圧流体導入部から加圧流体を導入し、中実部及び中空部を有する成形品を成形するための金型組立体であって、
    キャビティは、成形品の中実部を形成すべき第1キャビティ部と、第1キャビティ部から延在し、成形品の中空部を形成すべき第2キャビティ部とから構成されており、
    加圧流体導入部は、第2キャビティ部を構成する金型の部分に配置されており、
    可動コアは、第1キャビティ部を構成する金型の部分に配置されていることを特徴とする金型組立体。
  2. ゲート部は、第1キャビティ部を構成する金型の部分に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の金型組立体。
  3. ゲート部は、第2キャビティ部を構成する金型の部分に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の金型組立体。
  4. 加圧流体導入部は加圧流体導入ノズルから成り、
    加圧流体導入ノズルの先端部は、第2キャビティ部内に位置することを特徴とする請求項1に記載の金型組立体。
  5. 第1金型部、第2金型部、ゲート部、加圧流体導入部、及び、可動コアを備え、第1金型部と第2金型部とが型締めされた状態において第1金型部と第2金型部と可動コアとによってキャビティが形成され、
    キャビティは、成形品の中実部を形成すべき第1キャビティ部と、第1キャビティ部から延在し、成形品の中空部を形成すべき第2キャビティ部とから構成されており、
    加圧流体導入部は、第2キャビティ部を構成する金型の部分に配置されており、
    可動コアは、第1キャビティ部を構成する金型の部分に配置されている金型組立体を用いた、中実部及び中空部を有する成形品の射出成形方法であって、
    (A)キャビティ内にゲート部から溶融熱可塑性樹脂を射出してキャビティ内を溶融熱可塑性樹脂で充填し、溶融熱可塑性樹脂の射出前に、若しくは、溶融熱可塑性樹脂の射出開始と同時に、若しくは、溶融熱可塑性樹脂の射出中に、可動コアを前進端に位置せしめた状態とし、
    (B)キャビティ内を溶融熱可塑性樹脂で充填した後、キャビティ内の溶融熱可塑性樹脂内に加圧流体導入部から加圧流体を導入し、加圧流体の導入前に、若しくは、加圧流体の導入開始と同時に、若しくは、加圧流体の導入中に、可動コアを後進端に向けて移動させ、加圧流体の導入中に可動コアを後進端に位置せしめ、以て、第1キャビティ部において成形品の中実部を成形し、第2キャビティ部において成形品の中空部を形成することを特徴とする射出成形方法。
  6. ゲート部は、第1キャビティ部を構成する金型の部分に配置されていることを特徴とする請求項5に記載の射出成形方法。
  7. ゲート部は、第2キャビティ部を構成する金型の部分に配置されていることを特徴とする請求項5に記載の射出成形方法。
  8. 加圧流体導入部は加圧流体導入ノズルから成り、
    加圧流体導入ノズルの先端部は、第2キャビティ部内に位置することを特徴とする請求項5に記載の射出成形方法。
  9. 成形品の中空部の体積をV、可動コアの前進端から後進端への移動に伴う第1キャビティ部の体積増加量をVとしたとき、
    0.7V<V<V
    を満足することを特徴とする請求項5に記載の射出成形方法。
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