JP2004025606A - ガスバリア用積層フィルム - Google Patents

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JP2004025606A
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Tetsuya Yamamoto
山本 哲也
Chiho Yokoe
横江 千帆
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Nippon Shokubai Co Ltd
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Abstract

【課題】ポリシロキサン系重合体からなるガスバリア用フィルムの熱安定性を向上させる。
【解決手段】プラスチックフィルム(A)と、活性水素が結合した窒素原子を分子内に有する有機化合物(b−i)、前記活性水素と反応して前記窒素原子と化学結合を形成しうる官能基を分子内に有する有機化合物(b−ii)、ならびにR Si(ORで表される有機ケイ素化合物(b−iii)および/またはその加水分解縮合物(b−iv)を含む組成物を用いて形成されてなる被覆層(B)と、前記被覆層(B)に存在する官能基と化学結合を形成しうる官能基を有する被覆層(C)と、が積層されてなるガスバリア用フィルムによって、上記課題は解決される。
【選択図】      なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、酸素、二酸化炭素、水蒸気などの気体の透過度が極めて小さいガスバリア用フィルムに関し、より詳しくは、高い熱安定性を有するガスバリア用フィルムに関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、包装、医療等の分野において、酸素、窒素、二酸化炭素、水蒸気などの気体の透過度が極めて小さいガスバリア用フィルムに対する需要が増大している。これを受けて、近年、様々なガスバリア用フィルムが開発されている。
【0003】
ガスバリア用フィルムには、熱安定性、耐湿性、環境性、透明性、可撓性など種々の性質が要求される。本発明者らは、この要求に応えるべく、ポリシロキサン系重合体からなるガスバリア用フィルムを既に提案している(特開平8−295848号公報など)。かかるガスバリア用フィルムは、高いガスバリア性を保持しうる上、上述の各種特性も満足するものであり、各種用途に適用するに当たり、非常に高い有用性を有するものといえる。ただし、かかるガスバリア用フィルムをさらに改良し、よりいっそう特性を向上させることも所望されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
そこで本発明が目的とするところは、ポリシロキサン系重合体からなるガスバリア用フィルムの熱安定性を向上させることである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本願発明は、プラスチックフィルム(A)と、活性水素が結合した窒素原子を分子内に有する有機化合物(b−i)、前記活性水素と反応して前記窒素原子と化学結合を形成しうる官能基を分子内に有する有機化合物(b−ii)、ならびに下記式(1):
【0006】
【化3】
Figure 2004025606
【0007】
(式中、Rは水素原子または官能基を有していてもよいアルキル基であり、Rは水素原子またはアルキル基であり、xは0以上の整数であり、yは1以上の整数であり、x+y=4であり、xまたはyが2以上の場合にはRまたはRは異なっていてもよい)
で表される有機ケイ素化合物(b−iii)および/またはその加水分解縮合物(b−iv)を含む組成物を用いて形成されてなる被覆層(B)と、前記被覆層(B)に存在する官能基と化学結合を形成しうる官能基を有する被覆層(C)と、が積層されてなるガスバリア用フィルムである。
【0008】
本発明のガスバリア用フィルムにおいては、プラスチックフィルム(A)とポリシロキサン系重合体である被覆層(B)に加えて、さらに被覆層(C)が形成されており、ガスバリア性の向上を図ることが可能である。ところで、ガスバリア用フィルムにおいては、ガスバリア用フィルムを構成する層どうしの密着強度が不充分であると、ガスバリア用フィルムにクラックが生じたり、ガスバリア用フィルムの一部の層が剥離したりして、ガスバリア用フィルムのガスバリア性が低下する恐れがある。この点、本発明のガスバリア用フィルムは、被覆層(C)が被覆層(B)に存在する官能基と反応して化学結合を形成しうる官能基を有しており、被覆層(B)と被覆層(C)との密着が強固なものとなる。従って、本発明のガスバリア用フィルムは、非常に過酷な条件(例えば、高温における煮沸)に晒された場合であっても、優れたガスバリア性を維持できる。
【0009】
また本発明は、プラスチックフィルム(A)と、活性水素が結合した窒素原子を分子内に有する有機化合物(b−i)、前記活性水素と反応して前記窒素原子と化学結合を形成しうる官能基を分子内に有する有機化合物(b−ii)、ならびに下記式(2):
【0010】
【化4】
Figure 2004025606
【0011】
(式中、Rは水素原子またはアルキル基であり、各Rは同一であっても異なっていてもよい)
で表される有機ケイ素化合物(b−iii)および/またはその加水分解縮合物(b−iv)を含む組成物を用いて形成されてなる被覆層(B)と、が積層されてなるガスバリア用フィルムであって、前記被覆層(B)の固体29Si−NMRスペクトルにおいて、4つのRの1つがシロキサン結合に置換されたものに由来するピークの面積をQ1、4つのRの2つがシロキサン結合に置換されたものに由来するピークの面積をQ2、4つのRの3つがシロキサン結合に置換されたものに由来するピークの面積をQ3、4つのRの全てがシロキサン結合に置換されたものに由来するピークの面積をQ4としたときに、Q1:Q2:Q3:Q4=0〜0.001:0.001〜0.05:1:0.1〜1.0であることを特徴とするガスバリア用フィルムである。
【0012】
本発明者らは、ポリシロキサン系重合体を用いたガスバリア性フィルムの熱安定性を向上させるべく鋭意検討したところ、被覆層(B)におけるシロキサン結合の度合いと熱安定性との相関性を見出した。また、シロキサン結合の度合いを計測する基準として、固体29Si−NMRスペクトルが好都合であることを見出した。即ち、被覆層(B)に関する固体29Si−NMRスペクトルの形状が上記規定値を満たすガスバリア用フィルムは、非常に優れた熱安定性を有する。従って、本発明のガスバリア用フィルムは、非常に過酷な条件(例えば、高温における煮沸)に晒された場合であっても、優れたガスバリア性を維持できる。
【0013】
【発明の実施の形態】
本願発明の第一は、プラスチックフィルム(A)と、活性水素が結合した窒素原子を分子内に有する有機化合物(b−i)、前記活性水素と反応して前記窒素原子と化学結合を形成しうる官能基を分子内に有する有機化合物(b−ii)、ならびに前記式(1)で表される有機ケイ素化合物(b−iii)および/またはその加水分解縮合物(b−iv)を含む組成物を用いて形成されてなる被覆層(B)と、前記被覆層(B)に存在する官能基と化学結合を形成しうる官能基を有する被覆層(C)と、が積層されてなるガスバリア用フィルムである。
【0014】
まず、本発明のガスバリア用フィルムに用いられるプラスチックフィルム(A)について説明する。
【0015】
プラスチックフィルム(A)は、特に限定されるものではなく、ポリプロピレンフィルム、ポリエステルフィルム、ポリアミドフィルムなどが挙げられる。耐熱性の観点からは、ポリエステルフィルムまたはポリアミドフィルムがより好ましい。フィルム強度も考慮すると、ポリエステルフィルムが特に好ましい。
【0016】
ポリエステルとしては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)などのポリエステルが挙げられる。ポリアミドとしては、ポリε−カプロラクタム、ポリヘキサメチレンアジポアミド、ポリメタキシリレンアジポアミドなどが挙げられる。プラスチックフィルム(A)は無延伸のものであっても良いし、一軸あるいは二軸に延伸あるいは圧延されているものであっても構わない。また、これらのプラスチックフィルム(A)は重合により合成してもよいし、市販されているフィルムを用いてもよい。
【0017】
プラスチックフィルム(A)の形状は、特に限定されるものではなく、使用用途や作業性などを考慮して決定すればよい。厚さに関しても特に限定されるものではないが、薄すぎるとフィルム強度が不充分なものとなる恐れがあり、厚すぎるとクラック発生の恐れが高まる。このため、プラスチックフィルム(A)の厚さは一般的には5〜500μm、好ましくは7〜50μm、より好ましくは10〜30μmである。
【0018】
被覆層(B)は、被覆層(B)を形成するために用いられる組成物(以下、「被覆層(B)用組成物」とも記載)を予め調製し、これを塗布することによって形成される。被覆層(B)用組成物の調製方法については、特開平8−295848号公報などに記載されている手法を適宜参照することができる。
【0019】
有機化合物(b−i)は、活性水素が結合した窒素原子を分子内に有するものであれば特に限定されるものではない。本願において活性水素とは、反応性が強く各種の試薬と反応する水素原子をいい、具体的には、−NH−(式中、Nには他に水素原子が結合していない)または−NHとして分子中に存在する。有機化合物(b−i)からなる成分が被覆層(B)用組成物に含まれる場合、形成される被覆層(B)の可撓性を高める上で特に効果がある。
【0020】
有機化合物(b−i)の分子量は特に限定されるものではないが、形成される被覆層(B)の製膜性や可撓性を考慮すると、高分子化合物であることが好ましい。有機化合物(b−i)としての高分子化合物は、数平均分子量が小さすぎると形成された被覆層(B)の可撓性が劣る恐れや、プラスチックフィルム(A)や他の被覆層(B)上にコーティングして積層する際の製膜性が劣る恐れがある。このため、有機化合物(b−i)としての高分子化合物の数平均分子量は250以上であることが好ましく、300以上であることがより好ましい。一方、数平均分子量が大きすぎると形成される被覆層(B)の透明性が劣る恐れがあり、また、被覆層(B)の可撓性が劣る恐れがある。このため、有機化合物(b−i)としての高分子化合物の数平均分子量は200000以下であることが好ましく、100000以下であることがより好ましく、10000以下であることが特に好ましい。ただし、数平均分子量では計測できない複雑な構造を持つものも有機化合物(b−i)として使用可能であり、本発明においてはこれらのものを排除するものではない。
【0021】
有機化合物(b−i)の具体例としては、エタノールアミンなどの低分子化合物や、ポリアルキレンイミン、ポリアリルアミンなどの高分子化合物が挙げられる。
【0022】
ポリアルキレンイミンとしては、ポリメチレンイミン、ポリエチレンイミン、ポリプロピレンイミン、ポリイソプロピレンイミン、ポリブチレンイミン、ポリイソブチレンイミンなどが挙げられる。ポリアルキレンイミンは各種公知の合成方法を用いて調製することができ、また、市販品を用いてもよい。例えば、株式会社日本触媒製のエポミンシリーズ;エポミンSP−003、エポミンSP−006、エポミンSP−012、エポミンSP−018、エポミンSP−103、エポミンSP−110、エポミンSP−200、エポミンSP−300、エポミンSP−1000、エポミンSP−1020(いずれも商品名)等のポリエチレンイミンを用いることができる。ポリアリルアミンとしては、各種公知の方法で合成したものを用いることができるほか、日東紡績株式会社製のPAA−L、PAA−H(いずれも商品名)などを用いることができる。これらは1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用して用いてもよい。上記列挙した有機化合物(b−i)のなかでは、被覆層(B)の熱安定性、透明性、可撓性、密着性を考慮すると、ポリアルキレンイミンが好ましく、ポリエチレンイミンが特に好ましい。
【0023】
有機化合物(b−ii)は、有機化合物(b−i)に含まれる窒素原子に結合した活性水素と反応してこの窒素原子と化学結合を形成しうる官能基を分子内に有するものであれば特に限定されるものではない。このような官能基としては、特に制限されるものではないが、エポキシ基、カルボキシル基、イソシアネート基、チオイソシアネート基、オキサゾリニル基、(メタ)アクリル基、アルデヒド基、ケトン基、アルキルハライド基などが挙げられる。窒素原子に結合した活性水素との反応容易性、耐熱水性を考慮すると、エポキシ基を有するエポキシ化合物が好ましい。なお、有機化合物(b−ii)からなる成分を被覆層(B)用組成物に含ませた場合、被覆層(B)用組成物の製膜性を向上させる上で特に効果がある。
【0024】
有機化合物(b−ii)は、特に制限されるべきものではないが、2−エチルヘキシルグリシジルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル、トリエチレングリコールジグリシジルエーテル、テトラエチレングリコールジグリシジルエーテル、ノナエチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ジプロピレングリコールジグリシジルエーテル、トリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、グリセロールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンジグリシジルエーテル等の脂肪族モノ−,ジグリシジルエーテル類;グリセロールトリグリシジルエーテル、ジグリセロールトリグリシジルエーテル、トリグリシジルトリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレート、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールテトラグリシジルエーテル等のポリグリシジルエーテル類;アジピン酸ジグリシジルエステル、o−フタル酸ジグリシジルエステル、フェニルグリシジルエーテル等の脂肪族および芳香族モノ−,ジグリシジルエステル類;ビスフェノールAジグリシジルエーテル、レゾルシノールジグリシジルエーテル、ヒドロキノンジグリシジルエーテル、ビスフェノールSジグリシジルエーテル、ビスフェノールFジグリシジルエーテルなどの芳香環またはその水素添加環(核置換誘導体も含む)を有するグリシジル類;グリシジル基を官能基として有するオリゴマー類;ヘキサメチレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、1,4−ジフェニルメタンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート、トリジンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート等のイソシアネート類;酒石酸、アジピン酸等のジカルボン酸類;ポリアクリル酸等のカルボキシル基含有重合体;オキサゾリニル基含有重合体などが挙げられる。これらは1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用して用いてもよい。なお、上記例示した有機化合物(b−ii)の中では、芳香環または脂肪族環を有する有機化合物が好ましい。芳香環または脂肪族環を有する有機化合物を使用することにより、被覆層(B)の耐水性を向上させ得る。
【0025】
有機化合物(b−ii)は、下記式(3):
【0026】
【化5】
Figure 2004025606
【0027】
で表される官能基(以下、「SiOR基」とも記載)を分子内に有していてもよい。式中、Rは、水素原子または炭素数1〜4のアルキル基である。炭素数1〜4のアルキル基は、直鎖状アルキル基、分岐状アルキル基、環状(脂環式)アルキル基のいずれであってもよい。アルキル基の中では、被覆層(B)を緻密にする観点からは、メチル基またはエチル基が好ましい。
【0028】
有機化合物(b−ii)中にSiOR基を有している場合には、有機化合物(b−i)と反応前または反応後にSiOR基において加水分解縮合が進行する。また、有機ケイ素化合物(b−iii)に含まれる加水分解性縮合基との間で共加水分解縮合が進行する。これらの縮重合の作用により、速やかにハードコート性に優れ、緻密な被覆層(B)の形成が可能となる。また、被覆層(B)の密着性を高める効果も有する。
【0029】
SiOR基を有する有機化合物(b−ii)の具体例としては、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリイソプロポキシシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリイソプロポキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルメチルジメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルメチルジエトキシシラン等のエポキシ基とSiOR基を有するシランカップリング剤(以下、単にエポキシ基含有シランカップリング剤と省略することがある);γ−イソシアノプロピルトリメトキシシラン、γ−イソシアノプロピルトリエトキシシラン、γ−イソシアノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−イソシアノプロピルメチルジエトキシシラン等のイソシアネート基およびSiOR基含有シランカップリング剤(以下、単にイソシアネート基含有シランカップリング剤と省略することがある)などが挙げられる。これらは、1種単独で用いてもよいし、または2種以上を併用して用いてもよい。
【0030】
有機ケイ素化合物(b−iii)は、前記式(1)で表される化合物である。前記式(1)において、Rは水素原子または官能基を有していてもよいアルキル基である。アルキル基は、炭素数1〜4のアルキル基であることが好ましく、具体的にはメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基といった直鎖アルキル基、イソプロピル基、イソブチル基といった分岐アルキル基、シクロプロピル基、シクロブチル基といった環状(脂環式)アルキル基が挙げられる。このなかでは、緻密な被覆層(B)を形成する上での反応容易性の観点から、メチル基またはエチル基が好ましい。アルキル基に有され得る官能基としては、特に限定されるものではないが、アミノ基、エポキシ基、(メタ)アクリル基、チオール基、水酸基、ビニル基が挙げられる。特に、ビニル基を有する場合には、耐熱性が向上する効果がある。なお、Rは、xが2以上の場合には、同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0031】
前記式(1)において、Rは水素原子またはアルキル基である。アルキル基は、炭素数1〜4のアルキル基であることが好ましく、具体的にはメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基といった直鎖アルキル基、イソプロピル基、イソブチル基といった分岐アルキル基、シクロプロピル基、シクロブチル基といった環状(脂環式)アルキル基が挙げられる。このなかでは、緻密な被覆層(B)を形成する上での反応容易性の観点から、メチル基またはエチル基が好ましい。なお、Rは、yが2以上の場合には、同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0032】
前記式(1)において、xは0以上の整数であり、yは1以上の整数であり、x+y=4である。特に限定されるものではないが、形成される被覆層(B)の耐圧性、耐熱性、耐水性を考慮すると、x=0であり、y=4であることが好ましい。
【0033】
有機ケイ素化合物(b−iii)の具体例としては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラブトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリイソプロポキシシラン、メチルトリブトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、エチルトリイソプロポキシシラン、エチルトリブトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジメチルジイソプロポキシシラン、ジメチルジブトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、ジエチルジイソプロポキシシラン、ジエチルジブトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリイソプロポキシシラン、ビニルトリブトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−ヒドロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−ヒドロキシプロピルトリエトキシシラン等のアルコキシシラン類およびこれらの錯体化合物、メチルトリアセトキシシラン、トリメチルシラノール、並びにこれらの化合物を含む高分子有機ケイ素化合物類が挙げられる。この中では、被覆層(B)の耐湿性、耐水性などを考慮すると、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシランが好ましい。なお、これらは、1種単独で用いてもよいし、または2種以上を併用して用いてもよい。
【0034】
有機ケイ素化合物の加水分解縮合物(b−iv)は、上記式(1)で表される有機ケイ素化合物(b−iii)の加水分解縮合によって得られる化合物である。有機ケイ素化合物の代わりに、または有機ケイ素化合物に加えて、有機ケイ素化合物の加水分解縮合物(b−iv)を含んでもよいとしたのは、被覆層(B)を形成する際における被覆層(B)用組成物の不本意な乾燥を防止するためには、これらを予め加水分解縮合させておくことが好ましいからである。つまり、本発明の被覆層(B)用組成物は、有機ケイ素化合物(b−iii)を含むものであってもよく、有機ケイ素化合物の加水分解縮合物(b−iv)を含むものであってもよい。両者を含むものであってもよいことは勿論である。これらの加水分解縮合反応は、空気中に存在する水分によっても進行するが、酸または塩基等の公知の触媒を用いて反応効率を向上させてもよい。また、作業性を考慮すると、加水分解反応は溶媒中で行うことが好ましい。
【0035】
被覆層(B)用組成物には、上記式(1)で表される有機ケイ素化合物(b−iii)および/またはその加水分解縮合物(b−iv)以外の成分が含まれていてもよい。
【0036】
なお、有機ケイ素化合物(b−iii)およびその加水分解縮合物(b−iv)は、有機化合物(b−i)が有する窒素原子に結合した活性水素と反応し得る官能基を有さない点で、有機化合物(b−ii)とは明確に異なるものである。
【0037】
被覆層(B)用組成物を調製する上で使用する化合物は、得られる特性を考慮して選択すればよい。例えば、(b−i)としてポリエチレンイミン、(b−ii)としてエポキシ基含有シランカップリング剤、(b−iv)としてテトラメトキシシランまたはテトラエトキシシランの加水分解縮合物を用いる。他にも例示すれば、(b−i)としてアミノ基含有シランカップリング剤、(b−ii)として芳香環もしくは脂肪族環を有するエポキシ化合物、(b−iii)としてテトラメトキシシランまたはテトラエトキシシランを用いる。
【0038】
前記(b−i)〜(b−iv)から被覆層(B)用組成物を製造するためには、まず、上述の(b−iii)および/または(b−iv)、そして、(b−i)および(b−ii)を反応させて、これらが反応した組成物を調製する。反応の媒体は、後述する溶媒(b−v)と同一の化合物を用いることができる。上述の(b−i)〜(b−iv)を反応させて組成物を得る際の配合量は、他の添加剤の使用の有無などに応じて決定されるべきものであり、一義的に規定することはできないが、通常の量を以下に規定する。
【0039】
有機化合物(b−i)の配合量は、被覆層(B)用組成物の構成成分(ただし、溶媒(b−v)を除く)の合計配合量に対して、通常5〜70質量%、好ましくは10〜60質量%、より好ましくは15〜40質量%の範囲である。
【0040】
有機化合物(b−ii)の配合量は、被覆層(B)用組成物の構成成分(ただし、溶媒(b−v)を除く)の合計配合量に対して、通常5〜50質量%、好ましくは7〜35質量%、より好ましくは10〜20質量%の範囲である。
【0041】
有機ケイ素化合物(b−iii)および/またはその加水分解縮合物(b−iv)の配合量は、被覆層(B)用組成物の構成成分(ただし、溶媒(b−v)を除く)の合計配合量に対して、通常10〜80質量%、好ましくは20〜70質量%、より好ましくは30〜60質量%の範囲である。なお、「有機ケイ素化合物(b−i)および/またはその加水分解縮合物(b−ii)の配合量」とは、両者の合計の配合量を意味するものであり、いずれか一方のみが被覆層(B)用組成物中に含まれる場合には、一方の配合量を意味するものである。
【0042】
(b−i)〜(b−iv)が配合される溶媒(b−v)は、有機化合物(b−i)、有機化合物(b−ii)、有機ケイ素化合物(b−iii)および/または有機ケイ素化合物の加水分解縮合物(b−iv)、ならびにこれらの反応反応物を溶解しうるものであれば特に限定されるものではなく、具体的には、メタノール、エタノール、2−プロパノール、ブタノール、エチレングリコール等のアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;トルエン、ベンゼン、キシレン等の芳香族炭化水素類;ヘキサン、ヘプタン、オクタン等の炭化水素類;メチルアセテート、エチルアセテート等のアセテート類;その他、エチルフェノールエーテル、プロピルエーテル、テトラヒドロフラン、水などが挙げられる。この中では、加水分解反応時の安定性や保存安定性に優れている点で、メタノール、エタノールなどのアルコール類が好ましい。溶媒は、使用する成分(b−i)〜(b−iv)との相性を考慮して選択するとよい。
【0043】
溶媒(b−v)の配合量は、特に限定されないが、被覆層(B)用組成物(ここでは、溶媒(b−v)を含む)の全質量を100質量%としたときに、通常20〜97質量%、好ましくは50〜95質量%、より好ましくは70〜95質量%、特に好ましくは75〜90質量%の範囲である。溶媒(b−v)の配合量が20質量%未満の場合には、被覆層(B)用組成物の反応安定性に劣ることがあり、また塗工中に、被覆層(B)用組成物の粘度が上昇して均一塗工ができなくなる可能性がある。一方、97質量%を超える場合には、被覆層(B)を形成する際の生産性が劣ることがあるほか、有効成分が低濃度となり過ぎるため、必要な被覆層(B)の厚さを確保できない場合がある。
【0044】
また、硬化触媒、濡れ性改良剤、可塑剤、消泡剤、増粘剤などの各種添加剤を、被覆層(B)用組成物の特性を損なわない範囲でさらに適量配合してもよい。
【0045】
被覆層(B)用組成物の製造方法は、特に限定されるものではなく、例えば、以下の方法を用いることができる。
【0046】
(1) 有機ケイ素化合物(b−iii)および/またはその加水分解縮合物(b−iv)と、有機化合物(b−i)と、有機化合物(b−ii)と、溶媒(b−v)とを含む配合成分(他の任意成分を含んでいても良い)を反応させる方法、(2) 予め溶媒(b−v)中で、有機化合物(b−i)と有機化合物(b−ii)とを反応させて、その後、有機ケイ素化合物(b−iii)および/またはその加水分解縮合物(b−iv)を加える方法、
(3) 有機化合物(b−i)を含む溶媒(b−v)中で、有機ケイ素化合物(b−iii)と有機化合物(b−ii)とを加水分解縮合する方法、
などが挙げられるが、これらに何ら制限されるべきものではない。なお、溶媒(b−v)は、その調製段階や方法に応じて適当なものを適時、補充ないし追加することが望ましい。
【0047】
反応条件は、用いる組成物に応じて決定すればよく、例えば、30〜80℃程度で、0.5〜5時間程度反応させる。
【0048】
このようにして調製した被覆層(B)用組成物を用いて、被覆層(B)を形成する。被覆層(B)用組成物を塗布するには、各種コーティング法や印刷法などを用いることができる。例えば、ロールコーティング法、ディップコーティング法、バーコーティング法、ノズルコーティング法、ダイコーティング法、スプレーコーティング法、スピンコーティング法、カーテンコーティング法、フローコーティング法、スクリーン印刷、グラビア印刷、曲面印刷などの各種印刷法などが挙げられる。これらを組み合わせてもよい。通常は、被覆層(B)用組成物は、乾燥後の被覆層(B)の厚さが0.1〜3.0μm、好ましくは0.3〜1.5μmになるように供給される。被覆層(B)の乾燥後の厚さが0.1μm未満であると、充分なガスバリア性が発現しない恐れがある。一方、被覆層(B)の乾燥後の厚さが3.0μmを超えると、クラックの発生や不充分な密着強度によって、ガスバリア性が低下する恐れがある。
【0049】
コーティング後は、被覆層(B)用組成物の硬化および乾燥を行う。加熱を行う場合には、プラスチックフィルム(A)の耐熱温度以下で加熱することが好ましい。ここで、プラスチックフィルムの耐熱温度とは、実質上プラスチックフィルムの特性が保持できる上限の温度のことを意味し、ガラス転移点、結晶化温度または分解点を意味する。硬化および乾燥の条件は、特に限定されないが、迅速に被覆層(B)を形成するためには60〜120℃で1〜300秒間処理するとよい。水蒸気やミスト存在下で乾燥してもよい。
【0050】
高温多湿の環境下においても被覆層(B)に高いガスバリア性を発現させるためには、硬化・乾燥を行った後に、熟成処理を行うことが好ましい。熟成処理は、加熱処理(例えば、40〜60℃で1〜7日間熱処理)やコロナ処理を行う方法などある。
【0051】
なお、被覆層(B)用組成物をコーティングして被覆層(B)を形成するにあたっては、同一組成の被覆層(B)用組成物を数回に渡ってコーティングしてもよいし、異なる組成の被覆層(B)用組成物を数回に渡ってコーティングして被覆層(B)を多層構造にしてもよい。
【0052】
本発明のガスバリア用フィルムにおいては、プラスチックフィルム(A)および被覆層(B)に加えて、前記被覆層(B)に存在する官能基と化学結合を形成しうる官能基を有する被覆層(C)がさらに積層される。被覆層(B)には、用いる組成物に応じて種々の官能基が含まれており、これらの1種以上と反応して化学結合を形成する官能基が被覆層(C)に含まれる。好ましい実施形態においては、有機化合物(b−i)に含まれる窒素原子に結合した活性水素と反応して、被覆層(B)と被覆層(C)との間で化学結合が形成される。例えば、被覆層(C)には、イソシアネート基、カルボキシル基、酸無水物基、オキサゾリニル基、チオイソシアネート基、エポキシ基、アルデヒド基、ケトン基、(メタ)アクリル基などの官能基が含まれ得る。イソシアネート基を被覆層(C)が有する場合には、窒素原子に結合した活性水素(N−H)との反応によって、尿素結合が生じる。取り扱い性や化学結合の強度を考慮すると、被覆層(B)に存在する官能基は有機化合物(b−i)由来の活性水素が結合した窒素原子であり、被覆層(C)が有する官能基はイソシアネート基であることが好ましい。
【0053】
被覆層(C)が、前記被覆層(B)に存在する官能基と化学結合を形成しうる官能基を有すると、被覆層(C)が有する該官能基の少なくとも一部が被覆層(B)に存在する官能基と反応して化学結合を形成する。このため、被覆層(C)によってガスバリア性が向上する効果が得られることに加えて、被覆層(B)と被覆層(C)との間の密着強度も非常に優れたものとなる。従って、多層構造とした場合に起こりがちな、層の剥離やクラックの発生に起因するガスバリア性の低下を防止することができる。
【0054】
被覆層(C)は、ポリウレタン、ポリアミド、ポリビニルアルコールなどの原料となる所定の官能基を含む組成物を塗布し、乾燥、熟成させることによって形成される。原料化合物は、被覆層(B)に含まれる官能基と反応して化学結合を形成する官能基を2種以上含んでいてもよい。原料組成物中における層形成材料の含有量などは、用いる原料を塗布する際の一般的な条件でよく、本発明においては特に限定するものではない。また、被覆層(C)の塗布方法は、被覆層(B)と同様であるので、ここでは説明を省略する。
【0055】
被覆層(C)の厚さは、乾燥後において0.1〜10μm、好ましくは0.3〜5μm、さらに好ましくは0.5〜3μmである。被覆層(C)の乾燥後の厚さが0.1μm未満であると、充分なガスバリア性が発現しない恐れがある。一方、被覆層(C)の乾燥後の厚さが10μmを超えると、クラックの発生などによって、ガスバリア性が低下する恐れがある。
【0056】
本願発明の第二は、プラスチックフィルム(A)と、活性水素が結合した窒素原子を分子内に有する有機化合物(b−i)、前記活性水素と反応して前記窒素原子と化学結合を形成しうる官能基を分子内に有する有機化合物(b−ii)、ならびに前記式(2)で表される有機ケイ素化合物(b−iii)および/またはその加水分解縮合物(b−iv)を含む組成物を用いて形成されてなる被覆層(B)と、が積層されてなるガスバリア用フィルムであって、前記被覆層(B)の固体29Si−NMRスペクトルにおいて、4つのRの1つがシロキサン結合に置換されたものに由来するピークの面積をQ1、4つのRの2つがシロキサン結合に置換されたものに由来するピークの面積をQ2、4つのRの3つがシロキサン結合に置換されたものに由来するピークの面積をQ3、4つのRの全てがシロキサン結合に置換されたものに由来するピークの面積をQ4としたときに、Q1:Q2:Q3:Q4=0〜0.001:0.001〜0.05:1:0.1〜1.0であることを特徴とするガスバリア用フィルムである。
【0057】
本願発明の第二において、プラスチックフィルム(A)、有機化合物(b−i)、有機化合物(b−ii)、プラスチックフィルム(A)や被覆層(B)の形成方法などは、前述の本願発明の第一と同様であるため、説明を省略する。本願発明の第二は、有機ケイ素化合物(b−iii)が前記式(2)で表される構造であることを特徴とする。即ち、本願発明の第二において用いられる有機ケイ素化合物(b−iii)は、テトラアルコキシシラン型の構造を有し、加水分解縮合物(b−iv)もテトラアルコキシシランの加水分解縮合物である。Rは、本願発明の第一の部分において説明したものと同様であり、説明を省略する。また、本願発明の第二は、被覆層(B)を形成した状態において、固体29Si−NMRスペクトルが所定の規定値を満足することを特徴とする。
【0058】
ポリシロキサン系重合体からなる被覆層(B)の熱安定性やガスバリア性には、シロキサン結合のネットワークが大きく影響を及ぼすものと推察できる。また、シロキサン結合の状態を知る手段として、固体29Si−NMRスペクトルが有用である。これらに鑑み、本願発明の第二においては、前記被覆層(B)の固体29Si−NMRスペクトルにおいて、4つのRの1つがシロキサン結合に置換されたものに由来するピークの面積をQ1、4つのRの2つがシロキサン結合に置換されたものに由来するピークの面積をQ2、4つのRの3つがシロキサン結合に置換されたものに由来するピークの面積をQ3、4つのRの全てがシロキサン結合に置換されたものに由来するピークの面積をQ4としたときに、Q1:Q2:Q3:Q4=0〜0.001:0.001〜0.05:1:0.1〜1.0と規定する。なお、本願において「Rがシロキサン結合に置換される」とは、Si−O−RがSi−O−Siになることを意味する。固体29Si−NMRスペクトルにおいて、ピークのQ1〜Q4への帰属は、テトラメトキシシランや加水分解縮合を十分に進行させた組成物をサンプルとして用いて行いうる。また、Q1〜Q4の割合の制御は、水の添加量の調節によって行うことができる。一般に、水の割合を増加させると、Q3およびQ4が増加する傾向にある。固体29Si−NMRスペクトルは各種市販の装置を用いることができ、例えば後述する実施例において用いる手段を採用できる。
【0059】
本願発明の第一および第二にかかるガスバリア用フィルムは、上述の構成を有するがため、非常に優れたガスバリア性、熱安定性を有する。例えば、95℃の水中で40分間保持した後の酸素透過度を、20cm/(m・24hrs・atm)以下といった非常に小さくすることも可能である。また、本願発明の第一および第二の双方の特徴を有するガスバリア用フィルムとして、双方の特徴を発現させてもよい。
【0060】
本願発明に係るガスバリア用フィルムには、さらにシーラント層(D)を積層させてもよい。シーラント層(D)としては、ポリオレフィンフィルム、エチレンビニルアルコール共重合体フィルムなど各種ヒートシール性を有するフィルムを用いることができる。より好ましい例としては、低密度ポリエチレンフィルム、無延伸ポリプロピレンフィルム、エチレン酢酸ビニル共重合体フィルムが挙げられる。シーラント層(D)の厚さは、10〜200μmが好ましく、20〜100μmがより好ましく、30〜70μmが特に好ましい。
【0061】
シーラント層(D)を含めたガスバリア用フィルムの積層順序は、プラスチックフィルム(A)/被覆層(B)/被覆層(C)/シーラント層(D)が一般的であるが、必ずしもこの順序に積層させなければならないものではなく、場合によっては、順序を変えてもよい。また、シーラント層(D)を積層させるための接着層など、公知の層を追加してもよい。
【0062】
【実施例】
続いて、実施例および比較例を用いて、本発明の有用性について具体的に説明する。なお、各物性の測定に用いた装置および条件は以下の通りである。
【0063】
<酸素透過度測定>
モダンコントロールズ社製酸素透過度測定装置MHを用いた。測定は、20℃90%Rhで測定した。煮沸試験後の酸素透過度は、煮沸試験から5時間経過後に同様の方法で測定した。なお、煮沸試験は、95℃の水中における40分間煮沸である。
【0064】
<固体29Si−NMRスペクトル>
29Si−NMR(BRUKER AVANCE400)を用いて固体29Si−NMRスペクトルを測定した。詳細な測定条件は以下の通りである(積算回数:3872回、緩和時間:60秒、共鳴周波数:79.4870101MHz、90°パルス:2μsec)。
【0065】
<被覆層(B)用組成物の調製>
有機化合物(b−i)としてポリエチレンイミン(20.0g:株式会社日本触媒製エポミンSP−018)、有機化合物(b−ii)としてγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(18.1g)、および溶媒(b−v)としてメタノール(522.3g)を含む混合液を、60℃で3時間反応させ、室温まで冷却した。次に、この反応液に水(12.1g)とメタノール(51.9g)との混合液を加えて30分間反応させ、さらに有機ケイ素化合物の加水分解縮合物(b−iv)としてテトラメトキシシランの加水分解縮合物(131.7g:多摩化学工業株式会社製、Mシリケート51)とメタノール(243.9g)との混合液を加えた。これを室温で24時間反応させて、被覆層(B)用組成物とした。
【0066】
<被覆層(C)用組成物の調製>
イソシアネート基を有するウレタン原料としてタケラックA−310(武田薬品工業製)およびタケネートA−3(武田薬品工業製)を6:1(質量比)に混合した。これを不揮発分濃度が19.2質量%となるように酢酸エチルで希釈し、被覆層(C)用組成物とした。
【0067】
<実施例1>
厚さ12μmのPETフィルム上に、被覆層(B)用組成物を乾燥後の厚みが1μmになるようにバーコーターで塗布し、90℃10%Rhで10秒間乾燥し、さらに100℃で10秒間乾燥させた。その後、60℃で7日間熟成して、プラスチックフィルム(A)と被覆層(B)とが積層されたガスバリア用フィルム1を得た。ガスバリア用フィルム1の酸素透過度は、0.7cm/(m・24hrs・atm)であった。
【0068】
さらに、ガスバリア用フィルム1の被覆層(B)側の表面に、被覆層(C)用組成物を乾燥後の厚みが2μmになるようにバーコーターで塗布し、100℃で20秒間乾燥させた。その後、60℃で7日間熟成して、プラスチックフィルム(A)、被覆層(B)、および被覆層(C)がこの順序で積層されたガスバリア用フィルム2を得た。ガスバリア用フィルム2の酸素透過度は、0.3cm/(m・24hrs・atm)であった。また、煮沸試験後の酸素透過度は、2.8cm/(m・24hrs・atm)であった。ガスバリア用フィルム2を確認したところ、クラックの発生や層の剥離は確認されなかった。
【0069】
また、被覆層(B)における、Q1:Q2:Q3:Q4の比を調査するため、固体29Si−NMRを用いてスペクトルを測定した。サンプルは、用いた被覆層用(B)組成物をシャーレに入れ、フィルムを製造する際と同一の条件で乾燥させ、その後、細かく磨り潰して得た。固体29Si−NMRスペクトルを図1に示す。得られたスペクトルにおいて、Q1に相当するピークは確認されなかった。Q2、Q3、およびQ4の面積比を算出したところ、Q2:Q3:Q4=0.037:1:0.693であった。観測されなかったQ1も含めた比で表せば、Q1:Q2:Q3:Q4=0:0.037:1:0.693である。
【0070】
<実施例2>
実施例1で得られたガスバリア用フィルム2上に、シーラント層(D)として厚さ50μmの無延伸ポリプロピレンフィルム(CPP)を、エクストリュージョンラミネートを用いて貼り合わせた(ガスバリア用フィルム3)。ガスバリア用フィルム3の酸素透過度は、0.2cm/(m・24hrs・atm)であった。また、煮沸試験後の酸素透過度は、1.9cm/(m・24hrs・atm)であった。ガスバリア用フィルム3を確認したところ、クラックの発生や層の剥離は確認されなかった。
【0071】
【表1】
Figure 2004025606
【0072】
【発明の効果】
本発明のガスバリア用フィルムは、非常に優れた熱安定性を有する。このため、本発明のガスバリア用フィルムは、非常に過酷な温度条件下においても優れたガスバリア性を維持できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】固体29Si−NMRスペクトルである。

Claims (4)

  1. プラスチックフィルム(A)と、
    活性水素が結合した窒素原子を分子内に有する有機化合物(b−i)、前記活性水素と反応して前記窒素原子と化学結合を形成しうる官能基を分子内に有する有機化合物(b−ii)、ならびに下記式(1):
    Figure 2004025606
    (式中、Rは水素原子または官能基を有していてもよいアルキル基であり、Rは水素原子またはアルキル基であり、xは0以上の整数であり、yは1以上の整数であり、x+y=4であり、xまたはyが2以上の場合にはRまたはRは異なっていてもよい)
    で表される有機ケイ素化合物(b−iii)および/またはその加水分解縮合物(b−iv)を含む組成物を用いて形成されてなる被覆層(B)と、
    前記被覆層(B)に存在する官能基と化学結合を形成しうる官能基を有する被覆層(C)と、
    が積層されてなるガスバリア用フィルム。
  2. 前記被覆層(B)に存在する官能基は前記活性水素が結合した窒素原子であり、前記被覆層(C)が有する官能基はイソシアネート基(−NCO)である、請求項1に記載のガスバリア用フィルム。
  3. プラスチックフィルム(A)と、
    活性水素が結合した窒素原子を分子内に有する有機化合物(b−i)、前記活性水素と反応して前記窒素原子と化学結合を形成しうる官能基を分子内に有する有機化合物(b−ii)、ならびに下記式(2):
    Figure 2004025606
    (式中、Rは水素原子またはアルキル基であり、各Rは同一であっても異なっていてもよい)
    で表される有機ケイ素化合物(b−iii)および/またはその加水分解縮合物(b−iv)を含む組成物を用いて形成されてなる被覆層(B)と、
    が積層されてなるガスバリア用フィルムであって、
    前記被覆層(B)の固体29Si−NMRスペクトルにおいて、4つのRの1つがシロキサン結合に置換されたものに由来するピークの面積をQ1、4つのRの2つがシロキサン結合に置換されたものに由来するピークの面積をQ2、4つのRの3つがシロキサン結合に置換されたものに由来するピークの面積をQ3、4つのRの全てがシロキサン結合に置換されたものに由来するピークの面積をQ4としたときに、Q1:Q2:Q3:Q4=0〜0.001:0.001〜0.05:1:0.1〜1.0であることを特徴とするガスバリア用フィルム。
  4. さらにシーラント層(D)が積層されてなる請求項1〜3のいずれか1項に記載のガスバリア用フィルム。
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