JP2004022796A - 炭化珪素半導体素子およびその形成方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】炭化珪素のエピタキシャル層表面の特性劣化による動作不良を低減することができる炭化珪素半導体素子およびその形成方法を提供する。
【解決手段】( 0 0 0 −1 )オフ面を主面(上面)として( 0 0 0 1 )オフ面を裏面(下面)とする炭化珪素基板11の主面上に炭化珪素層をエピタキシャル成長させることにより、( 0 0 0 −1 )オフ面を主面とするエピタキシャル層12を得る。このエピタキシャル層12の上面上にショットキー電極14を、炭化珪素基板11の裏面上にオーミック電極15を形成した後、600℃以下の温度で熱処理を行なう。本発明では、エピタキシャル層12のうち動作領域18の主面上がショットキー電極14により覆われた後に熱処理を行なうので、エピタキシャル層の主面上を清浄な状態で保つことができ、特性の高いショットキー界面を得ることができる。
【選択図】 図1
【解決手段】( 0 0 0 −1 )オフ面を主面(上面)として( 0 0 0 1 )オフ面を裏面(下面)とする炭化珪素基板11の主面上に炭化珪素層をエピタキシャル成長させることにより、( 0 0 0 −1 )オフ面を主面とするエピタキシャル層12を得る。このエピタキシャル層12の上面上にショットキー電極14を、炭化珪素基板11の裏面上にオーミック電極15を形成した後、600℃以下の温度で熱処理を行なう。本発明では、エピタキシャル層12のうち動作領域18の主面上がショットキー電極14により覆われた後に熱処理を行なうので、エピタキシャル層の主面上を清浄な状態で保つことができ、特性の高いショットキー界面を得ることができる。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は炭化珪素を用いた半導体素子およびその形成方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から、パワー素子として、シリコン(Si)を用いた整流素子やスイッチング素子が多く用いられている。しかしながら、近年になってSiの物性限界を超える新しい素子が要望されるようになってきている。例えば、ある程度以上の耐圧が必要な整流素子としてSiからなるpnダイオードが用いられている。このpnダイオードはスイッチング損失が大きいので、よりスイッチング損失の小さいショットキーダイオードを整流素子として使用することが期待される。しかしながら、Siをショットキーダイオードに用いた場合には、Siの物性的限界のために所望の耐圧が得ることが困難である。そこで高い耐圧を有し,スイッチング損失が小さいスイッチング素子を形成する材料として、炭化珪素(シリコンカーバイド、SiC)が注目を集めている。
【0003】
SiCは、Siに比べて高硬度でワイドバンドギャップを有する半導体材料であり、パワー素子や耐環境素子、高温動作素子、高周波素子等への応用が期待されている材料である。以下に、従来の炭化珪素(SiC)半導体素子の一例であるショットキーダイオードについて、図5を参照しながら説明する。図5は、従来のショットキーダイオードの構造を示す断面図である。
【0004】
図5に示すように、従来のショットキーダイオードは、n型の4H−SiCからなり,( 0 0 0 1 )シリコン面から数度だけオフカットされた主面を有する炭化珪素基板51と、炭化珪素基板51の上面上にエピタキシャル成長された,例えばn型の4H−SiCからなるエピタキシャル層52と、エピタキシャル層52の上部のうち動作領域58の側方を囲む領域に設けられたボロン(B)などのp型不純物を含む不純物注入領域53と、エピタキシャル層52のうち動作領域58の上からその周囲を囲む不純物注入領域53の上に亘って設けられたニッケル(Ni)からなるショットキー電極54と、ショットキー電極54の上面上に設けられた,チタン(Ti)と金(Au)とが積層された上部電極56と、炭化珪素基板51の下面上に設けられたニッケル(Ni)からなるオーミック電極55と、オーミック電極55の下面上に設けられた,チタン(Ti)と金(Au)とが積層された下部電極57とから構成されている。なお、上部電極56および下部電極57は、電極にアルミニウム等の配線を接続したり、ハンダを用いてリードフレームに素子を固定するために必要な部材であるが、整流素子としての基本動作には影響を及ぼさない。
【0005】
ここで、炭化珪素基板51およびエピタキシャル層52において適切な膜厚や不純物濃度を選択することにより、順方向電流で数アンペア以上、逆方向耐圧で600V以上、場合によっては1000V以上の耐性を有する整流素子が得られる。一般的に、このような大電流を実現するためは、ウェハにおける両面上に電極を形成する。
【0006】
また、従来の炭化珪素半導体素子においては、オーミック電極形成時の熱処理温度は1000℃程度であり、ショットキー電極形成時の熱処理温度である400〜600℃よりも高い。そのため、ショットキー接合界面における整流性を維持するためにオーミック電極55を形成して1000℃程度の熱処理を行なってから、ショットキー電極54を形成する必要がある。
【0007】
また、ショットキー障壁を形成することができるかどうかは界面の状態に依存するため、エピタキシャル層52の上面上にショットキー電極54を形成する工程では、エピタキシャル層52の上面上を可能な限り清浄化しておくことが好ましい。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述したような半導体素子の形成工程においては次のような不具合が生じていた。
【0009】
炭化珪素基板51の下面(裏面)上にオーミック電極55を蒸着する工程では、エピタキシャル層52のうち露出している表面において、蒸着治具との接触に起因する汚れが生じたりパーティクルの付着や傷の発生などが起こり、特性の劣化や歩留まりの低下が引き起こされるおそれがある。
【0010】
このようなおそれを回避するために、エピタキシャル層52の表面を保護膜で覆う対策が考えられるが、この方法では工程数が増大してスループットが低下するだけでなく、かえってエピタキシャル層52表面を汚すことがあった。
【0011】
また、ショットキー電極54を形成する前にウェハを洗浄するときには、すでに炭化珪素基板51の下面上にオーミック電極55が設けられているので、オーミック電極55を汚染しないような物質を用いて洗浄を行わなければならない。このことから、例えばオーミック電極55を汚染するおそれのある硫酸と過酸化水素水の混合溶液などは使用することができない。さらに、オーミック電極55から発生するパーティクルがエピタキシャル層52の露出面を汚染することもあり、良好なショットキー接合を形成することが困難であった。
【0012】
本発明の目的は、ショットキー接合およびオーミック接合を形成する手段を講ずることにより、炭化珪素のエピタキシャル層表面の特性劣化による動作不良を低減することができる炭化珪素半導体素子およびその形成方法を提供することにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明の炭化珪素半導体素子は、( 0 0 0 −1 )カーボン面からの傾きが10度以内の面を主面とする炭化珪素基板と、上記炭化珪素基板の主面上に設けられた炭化珪素層と、上記炭化珪素層の主面上に設けられたショットキー電極と、上記炭化珪素基板の裏面上に設けられたオーミック電極とを備える。
【0014】
これにより、炭化珪素基板の主面ではより整流性の高いショットキー接合を実現することができ、炭化珪素層の裏面では、より容易にオーミック接合を実現することができる。
【0015】
上記ショットキー電極と上記オーミック電極とは、少なくとも一部が同一の物質からなることにより、電極材料の種類を減らすことができ、また、製造工程において一方の電極に他方の電極の材料が混入することによって不具合が発生するおそれがなくなるので、製造工程の簡略化やスループットの向上を図ることができる。
【0016】
上記ショットキー電極は上記オーミック電極よりも融点の高い材料からなることが好ましい。
【0017】
上記炭化珪素基板のうち少なくとも上記オーミック電極と接する部分におけるn型不純物濃度が1x1018cm−3以上であることにより、熱処理を低温で行なう場合でもより確実にオーミック接合を得ることができる。
【0018】
本発明の炭化珪素半導体素子の形成方法は、( 0 0 0 −1 )カーボン面からの傾きが10度以内の面を主面とする炭化珪素基板の主面上に、炭化珪素層をエピタキシャル成長させる工程(a)と、上記炭化珪素層の主面上にショットキー電極を形成する工程(b)と、上記工程(b)の後に、上記炭化珪素基板の裏面上にオーミック電極を形成する工程(c)と、上記工程(c)の後に、少なくともオーミック接合を形成するための熱処理を行なう工程(d)とを備える。
【0019】
これにより、オーミック電極を形成する工程においては、すでに炭化珪素層の主面上がショットキー電極により覆われているので、炭化珪素層とショットキー電極との界面とを清浄な状態に保つことができ、素子特性の劣化や歩留まりの低下を抑制することができる。
【0020】
上記工程(d)では、上記熱処理を600℃以下の温度で行なうことが好ましい。
【0021】
上記工程(d)では、上記熱処理はショットキー接合を形成するための熱処理を兼ねることにより、さらなる工程の簡略化を図ることができる。
【0022】
【発明の実施の形態】
以下に、本実施形態の炭化珪素半導体素子について、図1を参照しながら説明する。図1は、実施形態におけるショットキーダイオードの構造を示す断面図である。ここでは、ウェハを分離して得られた複数のチップのうちの1つである,炭化珪素(SiC)層を有するショットキーダイオード(素子)を例として示す。
【0023】
図1に示すように、本実施形態のショットキーダイオード10は、n形の4H−SiCであり,( 0 0 0 −1 )カーボン面から<1 1 −2 0>方向に8度オフカットされた面を主面(上面)とする低抵抗の炭化珪素基板11と、炭化珪素基板11の上にエピタキシャル成長された4H−SiCであるエピタキシャル層12と、エピタキシャル層12の上部のうち動作領域18の側方を囲むように設けられたp型不純物を含む不純物注入領域13と、エピタキシャル層12のうち動作領域18の上面上を覆い,その外縁部が不純物注入領域13とオーバーラップしているアルミニウム(Al)からなるショットキー電極14と、炭化珪素基板11の裏面(下面)上に設けられたアルミニウム(Al)からなるオーミック電極15とから構成されている。なお、ショットキー電極14およびオーミック電極15は十分に厚い膜厚を有しており、上部電極および下部電極としての機能を兼ね備えている。
【0024】
なお、本明細書においては、エピタキシャル層12のうちショットキー電極14と接する面を主面(上面)と呼び、炭化珪素基板11がオーミック電極15と接する面を裏面(下面)と呼び、その方向に上下を規定する。
【0025】
次に、本実施形態におけるショットキーダイオードの製造方法について、図2(a)〜(c)および図3(a),(b)を参照しながら説明する。図2(a)〜(c)および図3(a),(b)は、本実施形態のショットキーダイオードの製造方法を示す断面図である。なお、説明を簡単にするために、マスクあわせのためのアライメントキー形成や、素子表面の絶縁体膜形成についての図示は省略する。
【0026】
まず、図2(a)に示す工程で、約0.02Ω・cmの抵抗率を有するn形の4H−SiCの炭化珪素基板11を用意する。ここで、炭化珪素基板11では、( 0 0 0 −1 )カーボン面から<1 1 −2 0>方向に8度程度傾いたオフカット面(いわゆる( 0 0 0 −1 )オフ面)が露出している。
【0027】
次に、図2(b)に示す工程で、基板上にカーボン(C)の原料ガスであるプロパン(C3 H8 )と,シリコン(Si)の原料ガスであるシラン(SiH4 )と,キャリアガスである水素(H2 )と,ドーパントガスである窒素(N2 )とを供給することにより、炭化珪素基板11の( 0 0 0 −1 )オフ面上に、1×1016 cm−3 の濃度のn形不純物を含む4H−SiCからなる,厚さ9μm程度のエピタキシャル層12を成長させる。
【0028】
その後、基板上を水素雰囲気に保つことにより、エピタキシャル層12の表面処理を行う。
【0029】
次に、図2(c)に示す工程で、エピタキシャル層12の上に酸化シリコン(SiO2 )からなる,厚さ800nm程度の絶縁膜(図示せず)を堆積する。そして、絶縁膜上にフォトレジストによるパターン(図示せず)を形成した後、バッファードフッ酸を用いてエッチングを行うことにより、エピタキシャル層12の動作領域18の上に、0.6mm角のSiO2 膜からなるダミーマスク21を形成する。
【0030】
続いて、基板上から、ダミーマスク21をマスクとして、p形不純物のボロン(B)を注入角度0度,注入温度500℃,注入エネルギー30keV,注入量1×1015個/cm2 の条件でイオン注入することにより、エピタキシャル層12のうち動作領域18の側方に位置する部分に,深さ150nm程度の不純物注入領域13を形成する。
【0031】
その後、加熱炉を用いて、窒素雰囲気下,1100℃,90分間の条件で基板に熱処理を行うことにより、エピタキシャル層12に含まれる不純物を活性化する。そして、ダミーマスク21をバッファードフッ酸を用いたエッチングにより除去して、エピタキシャル層12の上面を露出させる。
【0032】
次に、図3(a)に示す工程で、エピタキシャル層12の上に厚さ2μm程度のアルミニウム(Al)層(図示せず)を形成する。フォトレジストのパターン(図示せず)を形成してウェットエッチングを行うことにより、エピタキシャル層12の上に、アルミニウム(Al)からなる0.63mm角のショットキー電極14を形成する。ここで、ショットキー電極14は十分に厚く形成されており、上部電極としての機能を兼ね備える。
【0033】
次に、図3(b)に示す工程で、炭化珪素基板11の下面上に厚さ400nm程度のアルミニウム(Al)からなるオーミック電極15を形成する。ここで、オーミック電極15は十分に厚く形成されており、下部電極としての機能を兼ね備える。
【0034】
その後、窒素雰囲気下,300℃,5分間の条件で熱処理を行うことにより、ショットキー電極14およびオーミック電極15を安定化させる。なお、このときの熱処理の温度は300℃には限られず、600℃以下の温度であれば他の温度であってもよい。
【0035】
なお、図示は省略するが、このように基板上に形成された複数のショットキーダイオードは1mm角のチップの形状に分割される。以上の工程により本実施形態のショットキーダイオード10が形成される。このショットキーダイオード10では、順方向のオン抵抗率が約2mΩcm2 、逆方向耐圧の絶対値が600V以上の良好な整流特性を得ることができる。
【0036】
一般に、炭化珪素の基板においては、一方の面(表の面)がシリコン面の場合には他方の面(裏面)はカーボン面となっており、その2面は異なる特性を示す。この特性は、炭化珪素基板の上に形成された炭化珪素のエピタキシャル層の表面や、あるいは、均一に研磨された炭化珪素基板の表面においても受け継がれる。ここで、シリコン面の方がカーボン面よりも半導体の伝導体のエネルギー準位が低いので、シリコン面においてはより容易にオーミック接合を実現することができ、カーボン面ではより整流性の強いショットキー接合を実現することができる。
【0037】
例えば、上面に低い不純物濃度のエピタキシャル層を有する4H−SiCの上面および下面にアルミニウムの電極を設けて300〜600℃程度で熱処理を施した場合には、カーボン面においてはショットキー接合が形成され、シリコン面においてはオーミック接合が形成される。つまり、この特性を利用した本実施形態においては、ショットキー電極およびオーミック電極を形成した後に一括して熱処理を行えばよく、従来のように1000℃程度の熱処理を行ってからショットキー接合を形成する必要はなくなる。
【0038】
本実施形態においては、オーミック電極15を形成する時点では、すでにエピタキシャル層12の動作領域18の上がショットキー電極14により覆われているので、従来のようにエピタキシャル層12の上面が汚染されるおそれはない。つまり、エピタキシャル層12とショットキー電極14との界面を清浄な状態に維持できるので、炭化珪素層の表面の汚染,パーティクルの付着あるいは傷の生成を防止することができる。このことから、特性劣化の防止と歩留まり向上を図ることができる。
【0039】
さらに、ショットキー電極14を形成してからオーミック電極を形成することができるため、ショットキー電極14を形成する直前のウェハの洗浄工程において、従来のようにすでに設けられているオーミック電極からのパーティクルによる汚染を懸念しなくてよくなる。したがって、洗剤の種類の選択の幅がひろがるとともに,より効果的に洗浄を行うことができる。
【0040】
また、ショットキー電極14およびオーミック電極15の熱処理を1度に行なうことができ、また、この熱処理の温度は従来のオーミック接合形成のための熱処理温度よりも低くすることができるので、熱処理工程の簡略化,コストの削減およびスループットの向上が可能となる。
【0041】
一般に、パワー素子では、アノード(ショットキー電極)側にアルミニウム(Al)からなるワイヤを用いて結線する。ここで、本実施形態のショットキー電極14には、ワイヤと同一の材料であるアルミニウム(Al)を用いているため他金属の混入を防ぐことができる。また、ショットキー電極14は上部電極としての機能を兼ねることができるほど厚く形成されているので、密着性よくワイヤと接続させることができる。
【0042】
また、上記実施形態では、ショットキー電極14およびオーミック電極15として、従来のように異なる材料を用いる必要はなく、共にアルミニウム(Al)膜を用いることができる。以上のようなことから、設備投資の低減が可能であり、歩留まりおよびスループットの向上とコストの低減を図ることができる。
【0043】
ただし、本発明では、図4に示すようにショットキー電極およびオーミック電極の上に上部電極や下部電極を設けてもよい。図4は、本発明のショットキーダイオードのその構造の変形例を示す断面図である。
【0044】
図4に示すショットキーダイオード40は、図1に示す構造と同様の炭化珪素基板11,エピタキシャル層12および不純物注入領域13を備えている。そして、エピタキシャル層12の上面上に設けられた厚さ200nmのショットキー電極44と、ショットキー電極44の上面上に設けられた厚さ100nmのチタン(Ti)とその上面上に設けられた厚さ3μmの金(Au)とが積層している上部電極46と、炭化珪素基板11の下面上に設けられた厚さ200nmのオーミック電極45と、オーミック電極45の下面上に設けられた厚さ100nmのチタン(Ti)とその下面上の厚さ400nmの金(Au)とが積層している下部電極47とをさらに備えている。
【0045】
このとき、上部電極46の上面および下部電極47の下面が金(Au)に覆われていることにより、電極の金属を酸素等の雰囲気から保護することができるが、他の金属により覆われていてもよい。また、上部電極47と下部電極47は互いに異なる材料を用いて形成されていてもよい。
【0046】
この場合には、選択する条件により、アノード電極(ショットキー電極)とワイヤとの間の密着強度や抵抗値を改善したり、カソード電極(オーミック電極)と素子とハンダとの密着性を向上させることも可能である。
【0047】
また、上記実施形態では、n型の炭化珪素基板11の不純物濃度は1x1018cm−3以上であることにより、シリコン面である下面とオーミック電極15とがオーミック接触しやすくなる。しかし、本発明においては、炭化珪素基板11のうち少なくとも下面付近の領域の不純物濃度が1x1018cm−3以上であれば、他の領域の不純物濃度が1x1018cm−3以下であっても同様の効果を得ることができる。このような構造は、不純物濃度1x1018cm−3以下の炭化珪素基板11のうちの一部にイオン注入やその他の方法によりドーパントを供給することによって形成することができる。
【0048】
また、本実施形態では、ショットキー電極およびオーミック電極を同一材料のアルミニウム(Al)により形成したが、それぞれショットキー接合およびオーミック接合を形成できる金属であれば他の金属を用いてもよい。具体的な例としては、まず、炭化珪素半導体素子のオーミック電極として一般に用いられているニッケル(Ni)よりも低い仕事関数を有する金属が好ましく、チタン(Ti)、タングステン(W)、クロム(Cr)、モリブデン(Mo)、銀(Ag)などの金属か、あるいはこれらの金属のうちのいくつかを含む材料が好ましい。
【0049】
また、高融点材料の方が低融点材料よりも炭化珪素層とショットキー接合を形成しやすいことから、ショットキー電極の材料として、オーミック電極の材料よりも高融点を有する材料によって構成することが好ましいといえる。
【0050】
なお、上記実施形態では、n型の炭化珪素基板11として4H−SiC基板を例に用いて説明したが、6H−SiC基板を用いてもよい。また、エピタキシャル層12として、4H−SiC層,6H−SiC層および3C−SiC層を用いてもよい。
【0051】
また、他の結晶形態であっても、主面および裏面において電子物性の異なる炭化珪素であれば、その伝導体のエネルギー準位が高いほうの面においてショットキー接合を形成して、伝導体のエネルギー準位の低いほうの面においてオーミック接合を形成すれば本発明の効果を得ることができる。
【0052】
また、例えば3C−SiCの上に4H−SiCが設けられている場合のように、基板上にエピタキシャル層がヘテロ接合して設けられている場合であっても、n型のSiCを用いた場合には、その伝導体のエネルギー準位が高いほうの面においてショットキー接合を、伝導体のエネルギー準位の低いほうの面においてオーミック接合を形成すれば本発明の効果を得ることができる。
【0053】
もちろん、炭化珪素基板11およびエピタキシャル層12の主面,裏面が( 00 0 1 )面,( 0 0 0 −1 )面以外の面であっても、互いに伝導体のエネルギー準位が異なる面が対向しておればよい。この場合には、それらの面のうち伝導体のエネルギー準位が高いほうの面おいてショットキー接合を形成し、伝導体のエネルギー準位の低いほうの面においてオーミック接合を形成すればよい。
【0054】
なお、上記実施形態では、( 0 0 0 −1 )カーボン面あるいは( 0 0 0 1 )シリコン面から<1 1 −2 0>方向に8度傾いたオフカット面を有する炭化珪素基板11を用いたが、本発明においては、オフカットの方向および角度はこの値に限られない。例えば、<1 1 −2 0>方向に3.5度傾いたオフカット面を有する炭化珪素基板などを用いてもよい。
【0055】
また、上記実施形態では、オーミック接合形成のための熱処理とショットキー接合形成のための熱処理とを同時に行ったが、本発明では、必ずしも同時に行わなくてもよい。
【0056】
また、上記実施形態では、ショットキーダイオードを例として説明したが、本発明は他の炭化珪素半導体素子にも応用できる。例えば、ショットキー電極により形成される空乏層を電圧の印加により変化させてスイッチング動作を行うトランジスタ等にも適応することができる。
【0057】
また、本発明の炭化珪素半導体素子においては、説明に用いた素子個々の形状、構成、作製方法等は上記実施形態の記載に限定されず、様々な変形が可能である。
【0058】
【発明の効果】
本発明では、歩留まり向上,コスト削減,工程の簡略化およびスループットの向上を図ることができ、高い特性を有する炭化珪素半導体素子およびその形成方法を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施形態におけるショットキーダイオードの構造を示す断面図である。
【図2】(a)〜(c)は、本実施形態のショットキーダイオードの製造方法を示す断面図である。
【図3】(a),(b)は、本実施形態のショットキーダイオードの製造方法を示す断面図である。
【図4】本発明のショットキーダイオードのその構造の変形例を示す断面図である。
【図5】従来のショットキーダイオードの構造を示す断面図である。
【符号の説明】
10 ショットキーダイオード
11 炭化珪素基板
12 エピタキシャル層
13 不純物注入領域
14 ショットキー電極
15 オーミック電極
18 動作領域
44 ショットキー電極
45 オーミック電極
46 上部電極
47 下部電極
【発明の属する技術分野】
本発明は炭化珪素を用いた半導体素子およびその形成方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から、パワー素子として、シリコン(Si)を用いた整流素子やスイッチング素子が多く用いられている。しかしながら、近年になってSiの物性限界を超える新しい素子が要望されるようになってきている。例えば、ある程度以上の耐圧が必要な整流素子としてSiからなるpnダイオードが用いられている。このpnダイオードはスイッチング損失が大きいので、よりスイッチング損失の小さいショットキーダイオードを整流素子として使用することが期待される。しかしながら、Siをショットキーダイオードに用いた場合には、Siの物性的限界のために所望の耐圧が得ることが困難である。そこで高い耐圧を有し,スイッチング損失が小さいスイッチング素子を形成する材料として、炭化珪素(シリコンカーバイド、SiC)が注目を集めている。
【0003】
SiCは、Siに比べて高硬度でワイドバンドギャップを有する半導体材料であり、パワー素子や耐環境素子、高温動作素子、高周波素子等への応用が期待されている材料である。以下に、従来の炭化珪素(SiC)半導体素子の一例であるショットキーダイオードについて、図5を参照しながら説明する。図5は、従来のショットキーダイオードの構造を示す断面図である。
【0004】
図5に示すように、従来のショットキーダイオードは、n型の4H−SiCからなり,( 0 0 0 1 )シリコン面から数度だけオフカットされた主面を有する炭化珪素基板51と、炭化珪素基板51の上面上にエピタキシャル成長された,例えばn型の4H−SiCからなるエピタキシャル層52と、エピタキシャル層52の上部のうち動作領域58の側方を囲む領域に設けられたボロン(B)などのp型不純物を含む不純物注入領域53と、エピタキシャル層52のうち動作領域58の上からその周囲を囲む不純物注入領域53の上に亘って設けられたニッケル(Ni)からなるショットキー電極54と、ショットキー電極54の上面上に設けられた,チタン(Ti)と金(Au)とが積層された上部電極56と、炭化珪素基板51の下面上に設けられたニッケル(Ni)からなるオーミック電極55と、オーミック電極55の下面上に設けられた,チタン(Ti)と金(Au)とが積層された下部電極57とから構成されている。なお、上部電極56および下部電極57は、電極にアルミニウム等の配線を接続したり、ハンダを用いてリードフレームに素子を固定するために必要な部材であるが、整流素子としての基本動作には影響を及ぼさない。
【0005】
ここで、炭化珪素基板51およびエピタキシャル層52において適切な膜厚や不純物濃度を選択することにより、順方向電流で数アンペア以上、逆方向耐圧で600V以上、場合によっては1000V以上の耐性を有する整流素子が得られる。一般的に、このような大電流を実現するためは、ウェハにおける両面上に電極を形成する。
【0006】
また、従来の炭化珪素半導体素子においては、オーミック電極形成時の熱処理温度は1000℃程度であり、ショットキー電極形成時の熱処理温度である400〜600℃よりも高い。そのため、ショットキー接合界面における整流性を維持するためにオーミック電極55を形成して1000℃程度の熱処理を行なってから、ショットキー電極54を形成する必要がある。
【0007】
また、ショットキー障壁を形成することができるかどうかは界面の状態に依存するため、エピタキシャル層52の上面上にショットキー電極54を形成する工程では、エピタキシャル層52の上面上を可能な限り清浄化しておくことが好ましい。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述したような半導体素子の形成工程においては次のような不具合が生じていた。
【0009】
炭化珪素基板51の下面(裏面)上にオーミック電極55を蒸着する工程では、エピタキシャル層52のうち露出している表面において、蒸着治具との接触に起因する汚れが生じたりパーティクルの付着や傷の発生などが起こり、特性の劣化や歩留まりの低下が引き起こされるおそれがある。
【0010】
このようなおそれを回避するために、エピタキシャル層52の表面を保護膜で覆う対策が考えられるが、この方法では工程数が増大してスループットが低下するだけでなく、かえってエピタキシャル層52表面を汚すことがあった。
【0011】
また、ショットキー電極54を形成する前にウェハを洗浄するときには、すでに炭化珪素基板51の下面上にオーミック電極55が設けられているので、オーミック電極55を汚染しないような物質を用いて洗浄を行わなければならない。このことから、例えばオーミック電極55を汚染するおそれのある硫酸と過酸化水素水の混合溶液などは使用することができない。さらに、オーミック電極55から発生するパーティクルがエピタキシャル層52の露出面を汚染することもあり、良好なショットキー接合を形成することが困難であった。
【0012】
本発明の目的は、ショットキー接合およびオーミック接合を形成する手段を講ずることにより、炭化珪素のエピタキシャル層表面の特性劣化による動作不良を低減することができる炭化珪素半導体素子およびその形成方法を提供することにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明の炭化珪素半導体素子は、( 0 0 0 −1 )カーボン面からの傾きが10度以内の面を主面とする炭化珪素基板と、上記炭化珪素基板の主面上に設けられた炭化珪素層と、上記炭化珪素層の主面上に設けられたショットキー電極と、上記炭化珪素基板の裏面上に設けられたオーミック電極とを備える。
【0014】
これにより、炭化珪素基板の主面ではより整流性の高いショットキー接合を実現することができ、炭化珪素層の裏面では、より容易にオーミック接合を実現することができる。
【0015】
上記ショットキー電極と上記オーミック電極とは、少なくとも一部が同一の物質からなることにより、電極材料の種類を減らすことができ、また、製造工程において一方の電極に他方の電極の材料が混入することによって不具合が発生するおそれがなくなるので、製造工程の簡略化やスループットの向上を図ることができる。
【0016】
上記ショットキー電極は上記オーミック電極よりも融点の高い材料からなることが好ましい。
【0017】
上記炭化珪素基板のうち少なくとも上記オーミック電極と接する部分におけるn型不純物濃度が1x1018cm−3以上であることにより、熱処理を低温で行なう場合でもより確実にオーミック接合を得ることができる。
【0018】
本発明の炭化珪素半導体素子の形成方法は、( 0 0 0 −1 )カーボン面からの傾きが10度以内の面を主面とする炭化珪素基板の主面上に、炭化珪素層をエピタキシャル成長させる工程(a)と、上記炭化珪素層の主面上にショットキー電極を形成する工程(b)と、上記工程(b)の後に、上記炭化珪素基板の裏面上にオーミック電極を形成する工程(c)と、上記工程(c)の後に、少なくともオーミック接合を形成するための熱処理を行なう工程(d)とを備える。
【0019】
これにより、オーミック電極を形成する工程においては、すでに炭化珪素層の主面上がショットキー電極により覆われているので、炭化珪素層とショットキー電極との界面とを清浄な状態に保つことができ、素子特性の劣化や歩留まりの低下を抑制することができる。
【0020】
上記工程(d)では、上記熱処理を600℃以下の温度で行なうことが好ましい。
【0021】
上記工程(d)では、上記熱処理はショットキー接合を形成するための熱処理を兼ねることにより、さらなる工程の簡略化を図ることができる。
【0022】
【発明の実施の形態】
以下に、本実施形態の炭化珪素半導体素子について、図1を参照しながら説明する。図1は、実施形態におけるショットキーダイオードの構造を示す断面図である。ここでは、ウェハを分離して得られた複数のチップのうちの1つである,炭化珪素(SiC)層を有するショットキーダイオード(素子)を例として示す。
【0023】
図1に示すように、本実施形態のショットキーダイオード10は、n形の4H−SiCであり,( 0 0 0 −1 )カーボン面から<1 1 −2 0>方向に8度オフカットされた面を主面(上面)とする低抵抗の炭化珪素基板11と、炭化珪素基板11の上にエピタキシャル成長された4H−SiCであるエピタキシャル層12と、エピタキシャル層12の上部のうち動作領域18の側方を囲むように設けられたp型不純物を含む不純物注入領域13と、エピタキシャル層12のうち動作領域18の上面上を覆い,その外縁部が不純物注入領域13とオーバーラップしているアルミニウム(Al)からなるショットキー電極14と、炭化珪素基板11の裏面(下面)上に設けられたアルミニウム(Al)からなるオーミック電極15とから構成されている。なお、ショットキー電極14およびオーミック電極15は十分に厚い膜厚を有しており、上部電極および下部電極としての機能を兼ね備えている。
【0024】
なお、本明細書においては、エピタキシャル層12のうちショットキー電極14と接する面を主面(上面)と呼び、炭化珪素基板11がオーミック電極15と接する面を裏面(下面)と呼び、その方向に上下を規定する。
【0025】
次に、本実施形態におけるショットキーダイオードの製造方法について、図2(a)〜(c)および図3(a),(b)を参照しながら説明する。図2(a)〜(c)および図3(a),(b)は、本実施形態のショットキーダイオードの製造方法を示す断面図である。なお、説明を簡単にするために、マスクあわせのためのアライメントキー形成や、素子表面の絶縁体膜形成についての図示は省略する。
【0026】
まず、図2(a)に示す工程で、約0.02Ω・cmの抵抗率を有するn形の4H−SiCの炭化珪素基板11を用意する。ここで、炭化珪素基板11では、( 0 0 0 −1 )カーボン面から<1 1 −2 0>方向に8度程度傾いたオフカット面(いわゆる( 0 0 0 −1 )オフ面)が露出している。
【0027】
次に、図2(b)に示す工程で、基板上にカーボン(C)の原料ガスであるプロパン(C3 H8 )と,シリコン(Si)の原料ガスであるシラン(SiH4 )と,キャリアガスである水素(H2 )と,ドーパントガスである窒素(N2 )とを供給することにより、炭化珪素基板11の( 0 0 0 −1 )オフ面上に、1×1016 cm−3 の濃度のn形不純物を含む4H−SiCからなる,厚さ9μm程度のエピタキシャル層12を成長させる。
【0028】
その後、基板上を水素雰囲気に保つことにより、エピタキシャル層12の表面処理を行う。
【0029】
次に、図2(c)に示す工程で、エピタキシャル層12の上に酸化シリコン(SiO2 )からなる,厚さ800nm程度の絶縁膜(図示せず)を堆積する。そして、絶縁膜上にフォトレジストによるパターン(図示せず)を形成した後、バッファードフッ酸を用いてエッチングを行うことにより、エピタキシャル層12の動作領域18の上に、0.6mm角のSiO2 膜からなるダミーマスク21を形成する。
【0030】
続いて、基板上から、ダミーマスク21をマスクとして、p形不純物のボロン(B)を注入角度0度,注入温度500℃,注入エネルギー30keV,注入量1×1015個/cm2 の条件でイオン注入することにより、エピタキシャル層12のうち動作領域18の側方に位置する部分に,深さ150nm程度の不純物注入領域13を形成する。
【0031】
その後、加熱炉を用いて、窒素雰囲気下,1100℃,90分間の条件で基板に熱処理を行うことにより、エピタキシャル層12に含まれる不純物を活性化する。そして、ダミーマスク21をバッファードフッ酸を用いたエッチングにより除去して、エピタキシャル層12の上面を露出させる。
【0032】
次に、図3(a)に示す工程で、エピタキシャル層12の上に厚さ2μm程度のアルミニウム(Al)層(図示せず)を形成する。フォトレジストのパターン(図示せず)を形成してウェットエッチングを行うことにより、エピタキシャル層12の上に、アルミニウム(Al)からなる0.63mm角のショットキー電極14を形成する。ここで、ショットキー電極14は十分に厚く形成されており、上部電極としての機能を兼ね備える。
【0033】
次に、図3(b)に示す工程で、炭化珪素基板11の下面上に厚さ400nm程度のアルミニウム(Al)からなるオーミック電極15を形成する。ここで、オーミック電極15は十分に厚く形成されており、下部電極としての機能を兼ね備える。
【0034】
その後、窒素雰囲気下,300℃,5分間の条件で熱処理を行うことにより、ショットキー電極14およびオーミック電極15を安定化させる。なお、このときの熱処理の温度は300℃には限られず、600℃以下の温度であれば他の温度であってもよい。
【0035】
なお、図示は省略するが、このように基板上に形成された複数のショットキーダイオードは1mm角のチップの形状に分割される。以上の工程により本実施形態のショットキーダイオード10が形成される。このショットキーダイオード10では、順方向のオン抵抗率が約2mΩcm2 、逆方向耐圧の絶対値が600V以上の良好な整流特性を得ることができる。
【0036】
一般に、炭化珪素の基板においては、一方の面(表の面)がシリコン面の場合には他方の面(裏面)はカーボン面となっており、その2面は異なる特性を示す。この特性は、炭化珪素基板の上に形成された炭化珪素のエピタキシャル層の表面や、あるいは、均一に研磨された炭化珪素基板の表面においても受け継がれる。ここで、シリコン面の方がカーボン面よりも半導体の伝導体のエネルギー準位が低いので、シリコン面においてはより容易にオーミック接合を実現することができ、カーボン面ではより整流性の強いショットキー接合を実現することができる。
【0037】
例えば、上面に低い不純物濃度のエピタキシャル層を有する4H−SiCの上面および下面にアルミニウムの電極を設けて300〜600℃程度で熱処理を施した場合には、カーボン面においてはショットキー接合が形成され、シリコン面においてはオーミック接合が形成される。つまり、この特性を利用した本実施形態においては、ショットキー電極およびオーミック電極を形成した後に一括して熱処理を行えばよく、従来のように1000℃程度の熱処理を行ってからショットキー接合を形成する必要はなくなる。
【0038】
本実施形態においては、オーミック電極15を形成する時点では、すでにエピタキシャル層12の動作領域18の上がショットキー電極14により覆われているので、従来のようにエピタキシャル層12の上面が汚染されるおそれはない。つまり、エピタキシャル層12とショットキー電極14との界面を清浄な状態に維持できるので、炭化珪素層の表面の汚染,パーティクルの付着あるいは傷の生成を防止することができる。このことから、特性劣化の防止と歩留まり向上を図ることができる。
【0039】
さらに、ショットキー電極14を形成してからオーミック電極を形成することができるため、ショットキー電極14を形成する直前のウェハの洗浄工程において、従来のようにすでに設けられているオーミック電極からのパーティクルによる汚染を懸念しなくてよくなる。したがって、洗剤の種類の選択の幅がひろがるとともに,より効果的に洗浄を行うことができる。
【0040】
また、ショットキー電極14およびオーミック電極15の熱処理を1度に行なうことができ、また、この熱処理の温度は従来のオーミック接合形成のための熱処理温度よりも低くすることができるので、熱処理工程の簡略化,コストの削減およびスループットの向上が可能となる。
【0041】
一般に、パワー素子では、アノード(ショットキー電極)側にアルミニウム(Al)からなるワイヤを用いて結線する。ここで、本実施形態のショットキー電極14には、ワイヤと同一の材料であるアルミニウム(Al)を用いているため他金属の混入を防ぐことができる。また、ショットキー電極14は上部電極としての機能を兼ねることができるほど厚く形成されているので、密着性よくワイヤと接続させることができる。
【0042】
また、上記実施形態では、ショットキー電極14およびオーミック電極15として、従来のように異なる材料を用いる必要はなく、共にアルミニウム(Al)膜を用いることができる。以上のようなことから、設備投資の低減が可能であり、歩留まりおよびスループットの向上とコストの低減を図ることができる。
【0043】
ただし、本発明では、図4に示すようにショットキー電極およびオーミック電極の上に上部電極や下部電極を設けてもよい。図4は、本発明のショットキーダイオードのその構造の変形例を示す断面図である。
【0044】
図4に示すショットキーダイオード40は、図1に示す構造と同様の炭化珪素基板11,エピタキシャル層12および不純物注入領域13を備えている。そして、エピタキシャル層12の上面上に設けられた厚さ200nmのショットキー電極44と、ショットキー電極44の上面上に設けられた厚さ100nmのチタン(Ti)とその上面上に設けられた厚さ3μmの金(Au)とが積層している上部電極46と、炭化珪素基板11の下面上に設けられた厚さ200nmのオーミック電極45と、オーミック電極45の下面上に設けられた厚さ100nmのチタン(Ti)とその下面上の厚さ400nmの金(Au)とが積層している下部電極47とをさらに備えている。
【0045】
このとき、上部電極46の上面および下部電極47の下面が金(Au)に覆われていることにより、電極の金属を酸素等の雰囲気から保護することができるが、他の金属により覆われていてもよい。また、上部電極47と下部電極47は互いに異なる材料を用いて形成されていてもよい。
【0046】
この場合には、選択する条件により、アノード電極(ショットキー電極)とワイヤとの間の密着強度や抵抗値を改善したり、カソード電極(オーミック電極)と素子とハンダとの密着性を向上させることも可能である。
【0047】
また、上記実施形態では、n型の炭化珪素基板11の不純物濃度は1x1018cm−3以上であることにより、シリコン面である下面とオーミック電極15とがオーミック接触しやすくなる。しかし、本発明においては、炭化珪素基板11のうち少なくとも下面付近の領域の不純物濃度が1x1018cm−3以上であれば、他の領域の不純物濃度が1x1018cm−3以下であっても同様の効果を得ることができる。このような構造は、不純物濃度1x1018cm−3以下の炭化珪素基板11のうちの一部にイオン注入やその他の方法によりドーパントを供給することによって形成することができる。
【0048】
また、本実施形態では、ショットキー電極およびオーミック電極を同一材料のアルミニウム(Al)により形成したが、それぞれショットキー接合およびオーミック接合を形成できる金属であれば他の金属を用いてもよい。具体的な例としては、まず、炭化珪素半導体素子のオーミック電極として一般に用いられているニッケル(Ni)よりも低い仕事関数を有する金属が好ましく、チタン(Ti)、タングステン(W)、クロム(Cr)、モリブデン(Mo)、銀(Ag)などの金属か、あるいはこれらの金属のうちのいくつかを含む材料が好ましい。
【0049】
また、高融点材料の方が低融点材料よりも炭化珪素層とショットキー接合を形成しやすいことから、ショットキー電極の材料として、オーミック電極の材料よりも高融点を有する材料によって構成することが好ましいといえる。
【0050】
なお、上記実施形態では、n型の炭化珪素基板11として4H−SiC基板を例に用いて説明したが、6H−SiC基板を用いてもよい。また、エピタキシャル層12として、4H−SiC層,6H−SiC層および3C−SiC層を用いてもよい。
【0051】
また、他の結晶形態であっても、主面および裏面において電子物性の異なる炭化珪素であれば、その伝導体のエネルギー準位が高いほうの面においてショットキー接合を形成して、伝導体のエネルギー準位の低いほうの面においてオーミック接合を形成すれば本発明の効果を得ることができる。
【0052】
また、例えば3C−SiCの上に4H−SiCが設けられている場合のように、基板上にエピタキシャル層がヘテロ接合して設けられている場合であっても、n型のSiCを用いた場合には、その伝導体のエネルギー準位が高いほうの面においてショットキー接合を、伝導体のエネルギー準位の低いほうの面においてオーミック接合を形成すれば本発明の効果を得ることができる。
【0053】
もちろん、炭化珪素基板11およびエピタキシャル層12の主面,裏面が( 00 0 1 )面,( 0 0 0 −1 )面以外の面であっても、互いに伝導体のエネルギー準位が異なる面が対向しておればよい。この場合には、それらの面のうち伝導体のエネルギー準位が高いほうの面おいてショットキー接合を形成し、伝導体のエネルギー準位の低いほうの面においてオーミック接合を形成すればよい。
【0054】
なお、上記実施形態では、( 0 0 0 −1 )カーボン面あるいは( 0 0 0 1 )シリコン面から<1 1 −2 0>方向に8度傾いたオフカット面を有する炭化珪素基板11を用いたが、本発明においては、オフカットの方向および角度はこの値に限られない。例えば、<1 1 −2 0>方向に3.5度傾いたオフカット面を有する炭化珪素基板などを用いてもよい。
【0055】
また、上記実施形態では、オーミック接合形成のための熱処理とショットキー接合形成のための熱処理とを同時に行ったが、本発明では、必ずしも同時に行わなくてもよい。
【0056】
また、上記実施形態では、ショットキーダイオードを例として説明したが、本発明は他の炭化珪素半導体素子にも応用できる。例えば、ショットキー電極により形成される空乏層を電圧の印加により変化させてスイッチング動作を行うトランジスタ等にも適応することができる。
【0057】
また、本発明の炭化珪素半導体素子においては、説明に用いた素子個々の形状、構成、作製方法等は上記実施形態の記載に限定されず、様々な変形が可能である。
【0058】
【発明の効果】
本発明では、歩留まり向上,コスト削減,工程の簡略化およびスループットの向上を図ることができ、高い特性を有する炭化珪素半導体素子およびその形成方法を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施形態におけるショットキーダイオードの構造を示す断面図である。
【図2】(a)〜(c)は、本実施形態のショットキーダイオードの製造方法を示す断面図である。
【図3】(a),(b)は、本実施形態のショットキーダイオードの製造方法を示す断面図である。
【図4】本発明のショットキーダイオードのその構造の変形例を示す断面図である。
【図5】従来のショットキーダイオードの構造を示す断面図である。
【符号の説明】
10 ショットキーダイオード
11 炭化珪素基板
12 エピタキシャル層
13 不純物注入領域
14 ショットキー電極
15 オーミック電極
18 動作領域
44 ショットキー電極
45 オーミック電極
46 上部電極
47 下部電極
Claims (7)
- ( 0 0 0 −1 )カーボン面からの傾きが10度以内の面を主面とする炭化珪素基板と、
上記炭化珪素基板の主面上に設けられた炭化珪素層と、
上記炭化珪素層の主面上に設けられたショットキー電極と、
上記炭化珪素基板の裏面上に設けられたオーミック電極と
を備える炭化珪素半導体素子。 - 請求項1に記載の炭化珪素半導体素子において、
上記ショットキー電極と上記オーミック電極とは、少なくとも一部が同一の物質からなることを特徴とする炭化珪素半導体素子。 - 請求項1または2に記載の炭化珪素半導体素子において、
上記ショットキー電極は上記オーミック電極よりも融点の高い材料からなることを特徴とする炭化珪素半導体素子。 - 請求項1〜3のうちいずれか1つに記載の炭化珪素半導体素子において、
上記炭化珪素基板のうち少なくとも上記オーミック電極と接する部分におけるn型不純物濃度が1x1018cm−3以上であることを特徴とする炭化珪素半導体素子。 - ( 0 0 0 −1 )カーボン面からの傾きが10度以内の面を主面とする炭化珪素基板の主面上に、炭化珪素層をエピタキシャル成長させる工程(a)と、
上記炭化珪素層の主面上にショットキー電極を形成する工程(b)と、
上記工程(b)の後に、上記炭化珪素基板の裏面上にオーミック電極を形成する工程(c)と、
上記工程(c)の後に、少なくともオーミック接合を形成するための熱処理を行なう工程(d)と
を備える炭化珪素半導体素子の形成方法。 - 請求項5に記載の炭化珪素半導体素子の形成方法において、上記工程(d)では、上記熱処理を600℃以下の温度で行なうことを特徴とする炭化珪素半導体素子の形成方法。
- 請求項5または6に記載の炭化珪素半導体素子の形成方法において、
上記工程(d)では、上記熱処理はショットキー接合を形成するための熱処理を兼ねることを特徴とする炭化珪素半導体素子の形成方法。
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