JP2004020754A - ピグテイル型光ファイバ - Google Patents

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Abstract

【課題】本発明は、ピグテイル型光ファイバに関するもので、従来構造のピグテイル型光ファイバにおいて、高温高湿試験後に見られたスリーブ内部における光ファイバの断線や光ファイバのクラックの発生といった不良を低減し、高い信頼性を有するピグテイル型光ファイバを提供する。
【解決手段】ピグテイル型光ファイバにおいて、前記ピグテイル型光ファイバの入出射側端部の他端側における光ファイバ線が接着固定されるスリーブの挿入孔側近傍の側端面部に、外径が前記スリーブ外径より小さく、内径が前記スリーブ挿入孔径と同一な、スリーブと一体成形の軸方向に延設した段差部を設け、光ファイバ線を挿入孔側で接着剤により接着固定する際、前記スリーブの最大外径以下で側端面部を覆い、かつ前記段差部を接着剤でモールドした状態で、前記光ファイバ線の被覆部材と共に一体に接着固定する。
【選択図】 図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、光通信システムや光計測機器に用いられるピグテイル型光ファイバに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
そもそもピグテイル型光ファイバは、光通信システムや光計測機器に用いられるインライン型アイソレータ、サーキュレータ等のパッシブ光デバイス、並びに、双方向モジュール等のアクティブ光モジュールにおいて、光源及びレンズ等の光学系部品により伝送された光信号を、光ファイバのコア内へ導くため、光ファイバの片側の端部に、キャピラリ及びスリーブ等を組み込み、空間的に調芯して、YAG溶接または接着等の固定手段により位置決め固定するフェルール保持構造を付加した光ファイバのコネクタ機構である。
以下、図8に従来のピグテイル型光ファイバの一例を示す。
【0003】
図8に示す例では、中心に一次被覆を除去したファイバ芯線の光ファイバ6’の外径よりも僅かに大きい内径の細孔、及び挿入側にテーパ部Mが形成されているキャピラリ1を、スリーブ20の軸芯孔の一方の端部に圧入固定させて構造的に一体のフェルール10’としたものがある。
【0004】
また光ファイバ6の種類には、マルチモードファイバ、シングルモードファイバ等があるが、いずれの種類の光ファイバも、傷等による強度低下を防止するために、ファイバ芯線を、一般的にはエポキシ系、シリコン系等の合成樹脂で被覆(一次被覆)している。これらの光ファイバの外径は、φ0.25mm又はφ0.4mmのものが多く用いられている。
【0005】
図に示す円筒細長のルースチューブ5は、ルースチューブ5自身の曲げ強度により、光ファイバ6の取付け根もと部分の曲げ強度を補強することを目的として、一次被覆した部分の光ファイバ6とスリーブ20の内径との間に配置される。詳細にはルースチューブ5内径側に接着剤3が浸入しないように、あらかじめ別なマスク剤4にて目止めをおこなった後、このルースチューブ5と、片端部の一次被覆の一部を除去した光ファイバ6’とを、キャピラリ1の一端内側のテーパ部Mから細孔に挿入して、テーパー部M側の空間部分を接着剤3’で充填して接着固定する構造となっている。
【0006】
またキャピラリ1の前方部先端における、片端部の一次被覆の一部を除去した光ファイバ6’の端面Fは、接着固定が完了した後、キャピラリ1とともにスリーブ20の軸線方向と垂直な方向に対して、所定の角度を持つような同一平面に斜めに研磨加工される。
【0007】
このように構成されるピグテイル型光ファイバは、ヒートサイクル試験、高温高湿試験等の環境試験によって、光ファイバの位置ズレの発生、マイクロベンディングの発生、クラックの発生、断線等の不良が起こらないように、そのピグテイル型光ファイバを構成しているキャピラリ1、スリーブ20、ルースチューブ5等の材質およびそれぞれの形状、さらには接着剤3の種類および硬化条件等を最適化して仕様を決めることが重要である。
【0008】
そして、そのような観点に基づいて、接着剤として、スリーブの光ファイバ挿入孔への充填性、接着強度、耐熱的環境特性、硬化特性等を考慮して、従来からエポキシ系接着剤が特に好ましい接着剤材料として用いられてきた。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、現在の製造技術では、接着剤としてそのようなエポキシ系接着剤を採用しても、ヒートサイクル試験、高温高湿試験等の環境試験によって、ピグテイル型光ファイバの一部に、スリーブ内部で光ファイバの断線や、光ファイバのクラックの発生といった不良が少なからず見られ、このような不良問題を完全に無くすることは非常に困難とされていた。
【0010】
図9に、環境試験終了後に、スリーブ内部で光ファイバの断線が確認された従来型のピグテイル型光ファイバの側断面図の一例を示す。これは、環境試験後に、前記エポキシ系接着剤3とスリーブ20端面との境界面、およびエポキシ系接着剤3とキャピラリ1テーパ部との界面において、接着層が完全に剥離を生じてしまい、その結果、スリーブ20と接着剤3との間にギャップGが発生し、またキャピラリ挿入孔のテーパ部M近傍において、ファイバ芯線の光ファイバ6’の根もと(図に示すN部分)が断線しているのが確認されている。このように環境試験後に光ファイバの断線やクラックの発生といった不良が、従来のピグテイル型光ファイバの生産ロットの一部に起きる問題が生じていた。
【0011】
この不良問題は、熱膨張差と接着強度の不足に起因していると考えられ、これを回避するもっとも簡易な方法としては、例えば接着剤の塗布面積を増加させ接着強度を向上させることがあげられる。これは従来のピグテイル型光ファイバと比べて、スリーブを軸線方向の長さをより長くとり、接着剤をより多く充填する固定方法であり、原理としてはスリーブの軸線方向の長さに応じてスリーブの内径部の表面積が増加することにより、接着剤のせん断応力強度を向上させて、十分な接着強度を確保しようとするものである。
【0012】
一般に、スリーブ材質が金属である場合には、金属と接着剤の熱膨張係数の差によって、両者の界面あるいは接着剤層内に内部応力が発生し、そのために接着強度が低下することが一因として考えられる。概して、接着剤の膨張係数は金属より大きく、接着剤が温度1℃当たり4〜10 ×10−5であるのに対し、金属は1〜3×10−5であることから、温度変化が大きい場合には接着面に大きい応力が発生して、特にスリーブの軸線方向の長さが長い場合には無視できない応力となる。
【0013】
具体的には、特にスリーブの軸線方向の長さを長くした場合において、エポキシ系接着剤で接着し、加熱硬化すると、硬化後にエポキシ系接着剤に亀裂が入ってしまい、その結果、接着強度が著しく低下してしまうことがある。このような理由から、スリーブの軸線方向の長さを長くするにはおのずと限界があり、またスリーブの小型化と逆行するため、本当は好ましくない。
【0014】
しかも、環境試験が規格により比較的長期間を要する試験であり、この試験終了後に初めて上記のような不良の現象が発生することから、ピグテイル型光ファイバ製造直後の検査工程では、そのような問題を予測して、製品の良否判定をおこなうことは困難であった。
【0015】
前記に鑑み、本発明は、ピグテイル型光ファイバにおいて、高温高湿試験等の環境試験をおこなった後でも、スリーブ内部における光ファイバの断線やクラックの発生等といった不良問題を解決させることができるための構造を提供し、高い信頼性と優れた安全性を有することが可能な、全く新規なピグテイル型光ファイバ構造を確立することを目的とする。
【0016】
【課題を解決するための手段】
以上の課題を解決するため、請求項1に記載の発明では、光源及びレンズ等の光学系部品により伝送された光信号を、光ファイバのコア内へ導くため、光ファイバの片側の端部を、キャピラリ及びスリーブ等により空間的に調芯して位置決め固定するフェルール保持構造をもつピグテイル型光ファイバにおいて、前記ピグテイル型光ファイバの入出射側端部の他端側における光ファイバ線が接着固定されるスリーブの挿入孔側近傍の側端面部に、外径が前記スリーブ外径より小さく、内径が前記スリーブ挿入孔径と同一な、スリーブと一体成形の軸方向に延設した段差部を設け、光ファイバ線を挿入孔側で接着剤により接着固定する際、前記スリーブの最大外径以下で側端面部を覆い、かつ前記段差部を接着剤でモールドした状態で、前記光ファイバ線の被覆部材と共に一体に接着固定したピグテイル型光ファイバとしている。
【0017】
この構成によれば、スリーブの光ファイバ挿入孔側近傍の側端面部に、接着強度の向上手段としての抜け止め構造が形成され、構造上、熱による内部応力の発生に対し、接着面の接着強度を保持あるいは剥離を防止することができるため、高温高湿試験等の環境試験をおこなったとしても、従来のようなスリーブの内部における光ファイバの断線やクラックの発生といった不良発生を防止でき、高い信頼性と品質を有するピグテイル型光ファイバを提供することができる。
【0018】
また請求項2に記載の発明では、請求項1記載の内容に加え、前記段差部の形状が、延接した段差部の軸方向端部において、その端部に、円周外方に突出する張り出し部を設けたピグテイル型光ファイバとしている。
【0019】
この構成により、光ファイバ線が接着固定されるスリーブの挿入孔側近傍の側端面部では、スリーブと一体成形の軸方向に延設した前記段差部に加え、その端部において、円周外方に突出する張り出し部を設けているので、光ファイバ線を挿入孔側で接着剤により接着固定する際、前記スリーブの最大外径以下で側端面部を覆い、かつ段差部と前記張り出し部を接着剤でモールドした状態で、前記光ファイバ及び被覆部材と共に一体に接着固定することにより、スリーブの挿入孔側近傍の側端面部での接着剤が、環境試験での熱応力による軸方向への抜けを完全に防止できる。
【0020】
また仮に、万が一接着剤硬化後に、環境試験等で接着強度を超える力により、一部の接着面の接着層が剥離したとしても、上記構造のような張り出し部を設けているので、接着剤が張り出し部あるいは実質的に形成される溝部に引っかかり、接着剤側、つまり光ファイバ線の被覆部材と一体の接着剤が、スリーブの軸線方向に移動することを規制し、そのため、キャピラリ側に固定された光ファイバ先端の芯線部が引っ張られることによる光ファイバの断線やクラックの発生といった不良を回避することができる。
【0021】
また請求項3記載の発明では、前記段差部の形状が、延接した段差部の軸方向端部において、その端部に、円周外方に突出する張り出し部を全周に渡って連続的に設けたピグテイル型光ファイバとしている。
【0022】
この構成により、前記請求項2記載の発明と同様な効果が得られる。
【0023】
さらに請求項4に記載の発明では、請求項1記載の内容に加え、前記段差部の形状が、延接した段差部の軸方向端部において、その端部に、円周外方に突出する張り出し部を複数箇所に等間隔で設けたピグテイル型光ファイバとしている。
【0024】
この構成により、光ファイバ線が接着固定されるスリーブの挿入孔側近傍の側端面部では、スリーブと一体成形の軸方向に延設した前記段差部に加え、その端部において、円周外方に突出する張り出し部を複数箇所に等間隔で設けているので、光ファイバ線を挿入孔側で接着剤により接着固定する際、前記スリーブの最大外径以下で側端面部を覆い、かつ段差部と前記張り出し部を接着剤でモールドした状態で、前記光ファイバ線の被覆部材と共に一体に接着固定することとなり、よってスリーブの挿入孔側近傍の側端面部での接着剤が、高温高湿試験での応力により軸方向に抜けるのを防止できるのに加え、同時に回転方向のねじれも防止できる。
【0025】
また仮に、万が一接着剤硬化後に、環境試験などで接着強度を超える力により、一部の接着面の接着層が剥離したとしても、このような複数の張り出し部を設けているため、接着剤が張り出し部、又は実質的に形成される回転方向の段溝部に引っかかり、接着剤側、つまり光ファイバ線の被覆部材と一体の接着剤がスリーブの軸線方向及び回転方向に移動することを規制し、そのため、キャピラリ側に固定された光ファイバ先端の芯線部が引っ張られ、あるいはねじれることによる光ファイバの断線やクラックの発生といった不良を回避することができる。
【0026】
また請求項5記載の発明では、前記段差部に備えられた前記張り出し部の側断面視形状が、スリーブの軸線方向に垂直な面方向に対し、前記入出射側の側端面に逆傾斜を持たせるように返し部分を新たに設けたピグテイル型光ファイバとしている。
【0027】
この構造により、前記各張り出し部の上記記載の効果に加え、弾性変形する接着剤の抜け止め方向での保持状態が、逆傾斜の形状により、付加した返し部分でより確実に押さえられ、スリーブ端部での接着剤の保持状態の信頼性が向上する。
【0028】
また請求項6記載の発明では、前記段差部に備えられた前記張り出し部の側断面視形状が、スリーブの軸線方向に垂直な面方向に対し、段差部先端側が末広がりに逆三角形形状の傾斜面を持たせるように略円錐型のテーパ部を設けたピグテイル型光ファイバとしている。
【0029】
この構成により、光ファイバ線が接着固定されるスリーブの挿入孔側近傍の側端面部では、スリーブと一体成形の軸方向に延設した前記段差部に加え、その端部において、段差部先端側が末広がりに逆三角形形状の傾斜面を持たせるように略円錐型のテーパ部を設けているので、光ファイバ線を挿入孔側で接着剤により接着固定する際、前記スリーブの最大外径以下で側端面部を覆い、かつ段差部と前記張り出し部を接着剤でモールドした状態で、前記光ファイバ線の被覆部材と共に一体に接着固定することとなり、よってスリーブの挿入孔側近傍の側端面部での接着剤が、高温高湿試験での応力により軸方向に抜けるのを防止できる。
【0030】
また仮に、万が一接着剤硬化後に、高温高湿試験などで接着強度を超える力により、一部の接着面の接着層が剥離したとしても、このような前記テーパ部を設けているため、接着剤がテーパ部斜面に引っかかり、接着剤側、つまり光ファイバ線の被覆部材と一体の接着剤が、スリーブの軸線方向に移動することを規制し、そのため、キャピラリ側に固定された光ファイバ先端の芯線部が引っ張られることによる光ファイバの断線やクラックの発生といった不良を回避することができる。
【0031】
さらに請求項7記載の発明では、前記段差部の円筒外周面に、1つ以上の凹凸状の段引き部が設けられたピグテイル型光ファイバとしている。
【0032】
この構成では、段引き部は、前記段差部の円筒外周面に、所定の長さ及び所定の間隔で1つ以上、又は間欠的に複数個形成される凹形状の溝で、共に接着剤の軸方向への抜けを防止する方向、つまり軸方向に連立して配置されている。
【0033】
さらに請求項8記載の発明では、前記段差部の円筒外周面に、1つ以上のカギ裂き状の段引き部が設けられたピグテイル型光ファイバとしている。
【0034】
この構成においても、カギ裂き状の段引き部は、前記段差部の円筒外周面に、所定の長さ及び所定の間隔で1つ以上、又は間欠的に複数個形成される凹形状の溝で、共に接着剤の軸方向への抜けと回転方向の回りを防止する方向に配置されている。
【0035】
これらの請求項7及び請求項8の構成では、前記請求項2〜4記載での張り出し部と同様な構造的な作用効果が得られる。
【0036】
さらに請求項9記載の発明では、前記段差部及び前記段引部の表面の一部または全部に、面粗度が粗い粗仕上げ面を併用して設けたピグテイル型光ファイバとしている。
【0037】
この請求項9の構成により、前記請求項1〜8記載の段差部及び段引き部における接着部の表面状態向上し、また表面積が見かけ上増大し、前記接着剤とスリーブとの界面での密着力が向上して、接着強度が増加する。
【0038】
このため、接着剤硬化後の高温高湿試験などでの剥離限界が向上し、接着剤側、つまり光ファイバ線の被覆部材と一体の接着剤がスリーブの軸線方向に剥離することを防止し、そのため、キャピラリ側に固定された光ファイバ先端の芯線部が引っ張られることによる光ファイバの断線やクラックの発生といった不良を回避することができる。
【0039】
【発明の実施の形態】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の各実施形態に係るピグテイル型光ファイバについて、図面を参照しながら詳細に説明する。まず、本発明の代表例を図1に示す。
図1は、本発明のピグテイル型光ファイバを示す側断面図の一例であり、符号1はキャピラリ、2はスリーブ、3及び3’は接着剤、4はマスク剤、5はルースチューブ、6及び6’は光ファイバをそれぞれ示している。
【0040】
図1に示すように、ピグテイル型光ファイバの入出射側端部の他端側における光ファイバ6が接着固定されるスリーブ2の挿入孔側近傍の側端面部2bには、外径が前記スリーブ2の外径より小さく、内径が前記スリーブ2の挿入孔径と同一な、スリーブ2と一体成形で軸方向に延設した段差部2aが設けられている。また、段差部2aの延接した軸方向の先端部においては、その端部に、円周外方に突出する張り出し部2cを設けている。
【0041】
ここで光ファイバ6及び光ファイバ6を内挿保持しているルースチューブ5を、スリーブ2の挿入孔側で接着剤により接着固定する際の配置関係を、図2の部分拡大図を用いて説明する。
【0042】
図2に示すように、接着剤3は、前記スリーブ2側端面部2bにおけるスリーブ2の最大外径D寸法以下、理想的にはD寸法より多少小さいd寸法で側端面部を覆い、かつ前記段差部2a及び張り出し部2cを接着剤3でモールドした状態で、前記光ファイバ6の被覆部を保持するルースチューブ5と共に一体に接着固定している。
【0043】
この時、前記段差部2aの径寸法はD2、張り出し部2cの径寸法はD1となり、軸方向においては、張り出し部の軸方向の寸法はm1 、さらにスリーブ2側端面と前記張り出し部との間に形成される溝幅をm2として、接着剤3がこれらをモールドする形で充填されており、図2のような好適な位置、好適な形状に接着剤3部分が形成されている。
【0044】
ここで、スリーブ2は、光ファイバ6を空間的にx、y、z方向に調芯した後、YAG溶接または接着剤固定により、他の金具に溶接または他の部品と接着できるようにするためのもので、例えば、ステンレススチール、銅、コバール等の金属や、その他のセラミックス、ガラス、プラスチック等などでできていて、所定の形状に成形加工され、あるいは、あらかじめ所定の形状となるように射出成形されていて、外観上概略円筒形状の構造をもつものである。あるいは、光ファイバ6挿入孔近傍のみが円筒形状であって、その他は角筒構造という複合された構造をもつものもあるが、ここでは特に説明を省略する。
【0045】
このとき、前記図1で示すように、スリーブ2の一端には、光ファイバ6の位置をスリーブ2の中心に、もしくは中心から離れた所定の位置に配置することを目的として、光ファイバ6を内包するためのキャピラリ1が一体に圧入されている。
【0046】
ここで、キャピラリ1は、例えば材料としては、ジルコニア、アルミナ等の酸化物セラミックス素材、その他として炭化珪素、窒化珪素、窒化アルミニウム等の非酸化物セラミック素材、または、ほう珪酸ガラス、結晶化ガラス等のガラス素材、ならびにプラスチックス素材、及びその他の金属材料などがある。
【0047】
そして、特にジルコニアは、熱膨張係数が光ファイバ6のコア(主に石英ガラス)部の熱膨張係数にほぼ等しく、また微細孔を高精度に加工することができ、且つ熱的環境変化に強く、さらにエポキシ系接着剤を介して光ファイバ6に接着すると、その接着力が強いことから、スリーブ2に圧入固定されるキャピラリ1の材質として最も好ましい。
【0048】
また、接着剤3としては、従来から光ファイバ接着用に用いることができるものであれば何でもよく、例えばエポキシ系接着剤やUV系接着剤等を用いることができる。ここで、スリーブ2の光ファイバ挿入孔への充填性、接着強度、耐熱的環境特性、硬化特性等を考慮すると、特にエポキシ系接着剤が好ましいことが知られている。また、上記接着剤にフィラー(充填剤)が混入されたものを用いてもかまわない。
【0049】
ところで、接着剤3により固定されたある部品をPなる力で接着面に平行に引っ張って、せん断破壊が生じる場合をここで考えると、接着面積をAとすると、単位面積当たりのせん断応力σは、
σ = P / A    ・・・・・(1)
という式で表される。
【0050】
次に、接着剤3により固定されたある部品を、P’なる力で接着面に対し垂直に引っ張って、垂直引張破壊が生じる場合を考えと、接着面積をA’とすると、単位面積当たりの垂直応力σ’は、
σ’= P’/ A’   ・・・・・(2)
という式で表される。
【0051】
また図2は、スリーブ2の光ファイバ挿入孔側近傍の側端面部2bに接着強度向上のための段差部2aを設けた場合のピグテイル型光ファイバの一例を示す部分拡大断面図である。ここで、図2に示すように、スリーブ2の光ファイバ挿入孔側近傍の側端面部2bの段差部2aの端部側に張り出し部2cを設けた場合、そこに形成される前記張り出し部2cの外径をD1とし、その部分の軸線方向の距離をm1とし、段差部2aの外径をD2(ただし、D1>D2)として、そこに形成される溝の幅寸法をm2とすると、次のようになる。
【0052】
軸線方向については、段差部及び張り出し部からなる溝部を形成していない場合と比べて、軸線方向の外周の表面積がπ×{(D1)×(m1)+(D2)×(m2)}だけ増加するため、上記の(1)式から、せん断応力強度は、溝部を形成していない場合と比べて、
P = σ × π ×{(D1)×(m1)+(D2)×(m2)}  ・・・・・(3)
だけ増加する。
【0053】
一方、径方向については、前記溝部を形成していない場合と比べて、径方向の表面積がπ ×{(D1)−(D2)}/2だけ増加するため、上記の(2)式から、垂直応力強度は、溝を形成していない場合と比べて、
P’= σ’× π ×{(D1)−(D2)}/2      ・・・・・(4)
だけ増加する。このように、接着強度向上の手段を設けた場合には、接着強度は確実に向上する。
【0054】
張り出し部2cを形成するスリーブ2の光ファイバ挿入孔に最も近い突出部の外径D1、およびその部分の軸線方向の距離m1、および溝の底となる段差部2aの外径D2、並びに溝幅m2は、キャピラリ、スリーブ、ルースチューブの材質および形状、その他スリーブの外径Dや接着剤の種類、硬化条件、粘度、せん断応力強度、垂直応力強度等を考慮して、接着剤の塗付および硬化後における前記接着剤の領域の外径の最大値dが、スリーブの外径Dを超えないように好適に決められ、かつ、接合部の表面において接着剤が十分な接着強度を有するように、好適な表面加工が施されている。
【0055】
そして、このように接着強度向上の手段として、前記張り出し部2c及び前記段差部2aを形成している場合、それらがスリーブ2の光ファイバ挿入孔側近傍の側端面部2bに設けられていることから、前記側端面部2b付近を覆う比較的狭い接着剤3の領域に関する応力は、スリーブ2内部には達せず、収縮・変形による応力の影響を与えることがない。
【0056】
つまりスリーブ2の側端面部2bを全て覆う場合、前記段差部2aの溝幅m2に入り込む接着剤3の塗布量をごくわずかに増加させたとしても、この端部における外部環境変化による接着剤3の微小な変化は、前記張り出し部2c及び段差部2aでのアンカー効果により、光ファイバの特性を悪化させるほどの応力の影響は少なく、高温高湿試験等を実施した際に、ピグテイル型光ファイバのスリーブ内部における光ファイバの断線や光ファイバのクラックの発生といった不良を全て回避することができる。
【0057】
さらに、仮に万が一接着剤硬化後に、このような接着強度向上の構造を設けていて、接着強度を超える力により接着面の接着層が剥離したとしても、前記のような張り出し部2c及び段差部2aをスリーブ端部側に設けることにより、接着剤3が前記構成からなる側端面部2bの溝部に引っかかるために、接着剤3がスリーブの軸線方向に変化して移動することはなく、そのため、高温高湿試験を実施した際にスリーブの内部における光ファイバの断線や光ファイバのクラックの発生といった不良を回避することができる。
【0058】
そして、前記接着強度向上の構造は、接着剤の充填塗布および硬化後において、前記スリーブ側端面部の段差部と張り出し部をモールドする接着剤の外径の最大値が、スリーブの外径寸法以下となるように、接着剤の粘度等を考慮して好適な位置に好適な形状を有するように決めている。これはピグテイル型光ファイバを位置決めして固定する際に用いるスリーブを固定する部品、例えばスリーブの外径より僅かに大きい内径を有するフェルールホルダ等に組み込む時に、前記スリーブの光ファイバ挿入孔近辺の接着剤に影響することなく、スムーズにセットすることができるという利点を有する。
【0059】
さらに、前記接着強度向上のための端部構造は、ピグテイル型光ファイバのスリーブの光ファイバ挿入孔側の外周側面部に形成されているので、一定の接着強度を保ってさえいれば前記スリーブを軸線方向に短くしてもよく、そのためフェルール全体を小型化することも可能である。
【0060】
なお、スリーブの段差部2a及び張り出し部2cは、切削加工によって形成してもよいが、金属材料を射出成形してスリーブ形状を形成してもよく、あるいはセラミックスを射出成形し、焼結させてスリーブ形状と同時に一体形成させてもよい。
【0061】
なお、上記の実施形態は、全周にわたって連続的に段差部2aに張り出し部2cを形成するものとして説明してきたが、例えば、図3で示すように、スリーブ2の径方向に、所定の開口角および所定の間隔で間欠的に複数箇所形成するのもとしてもよい。図3は、図2で示したものと同様の側断面形状を有する段差部2aに設けられた張り出し部2cが、スリーブの径方向に開口角Sで等間隔に切り欠かかれた、4箇所の凸状の張り出し部2cが形成されたスリーブ2を、光ファイバ挿入孔側から見たときの形状の概略図である。
【0062】
このようにすると、接着充填した接着剤3の保持強度が段差部2aと張り出し部2cの溝と壁により向上して、接着剤3がスリーブの軸線方向に移動することがほとんどなくなるだけでなく、保持している光ファイバ6がスリーブ2の回転方向にねじれるような力を受けた場合でも、光ファイバ6および保持する接着剤3自身の回転方向への移動を阻止することができる。
【0063】
そしてさらに、上記張り出し部2cと段差部2aとの溝形状は、張り出し部2cの断面において、前記張り出し部2cの一部がスリーブ2の軸線方向に垂直な方向より鋭角な傾きをもつように形成されていてもよい。例えば図4に示すように、張り出し部2cの一部がスリーブ2の軸線方向に垂直な方向に対し傾きTをもつように返し部分が形成されたスリーブ側端面部形状を備えたピグテイル型光ファイバとしてもよい。
【0064】
このようにすれば、接着剤3の保持強度をさらに向上することができ、また、接着剤3が前記張り出し部により強固に引っかかるため、接着剤3がスリーブ2の軸線方向に移動することは容易ではなく、そのため、例えば高温高湿試験を実施した際にスリーブ2の内部における光ファイバ6の断線やクラックの発生といった不良を回避することができる。
【0065】
また、上記の実施形態は、接着強度向上のための張り出し部2cを段差部端に備えた場合の例を説明したが、図5で示す部分拡大断面図のように、張り出し部ではなく、段差部の外周面に、凹凸状の段引き部2eを設けてもよい。または、段引き部2eの応用として、前記段差部の円筒外周面に、1つ以上のカギ裂き状の段引き部形状が設けられたものとしてもよい。
【0066】
そしてまた、図6で示すように、段差部2aが端部に向けて末広がりにテーパ形状であっても前記同様に接着剤3の接着保持強度は向上する。図6は、本発明に係るところの段差部2aが末広がりにテーパ形状である場合のピグテイル型光ファイバの部分拡大断面図である。このようにしても、接着強度を向上することができ、また、接着剤がテーパ形状の部分に引っかかり、接着剤がスリーブの軸線方向に移動することが規制され、そのため、高温高湿試験を実施した際にスリーブの内部における光ファイバの断線や光ファイバのクラックの発生といった不良を回避することができる。
【0067】
さらに、前記段差部又は張り出し部の一方又は双方の表面の一部または全部に、サンドブラスト処理で粗仕上げ部を形成し、接着部表面に細かな凹凸の梨地状態を作ることによって、より一層、付加的に接着剤の密着強度を向上させてもよい。これは、表面の汚染層の除去、新しい表面の露出、もしくは投錨効果やファスナー効果などによって、接着剤が接触する界面での接着力の強度が向上するものと考えられている。
【0068】
ここで投錨効果やファスナー効果とは、接着剤が粗仕上げ部の凹部に流れ込んで硬化し、カギ又はアンカーのように作用する場合や、接着剤の硬化後において接着剤の凸部が粗仕上げ部の凹部に食い込んで弾性的な締付力が作用することを意味し、特に、エポキシ系接着剤のように容積変化がほとんどなく、凝集力の大きな接着剤では、このような機械的接着が存在する。
【0069】
なお、上記の実施形態では、ルースチューブ5の外部表面を覆う接着剤を1種類とした場合の例を説明したが、図7に示すように、ルースチューブ5の外部表面を覆う接着剤は1種類に限らずに、例えば複層の2種類でもよい。具体的には、図7において、スリーブ2内部でのルースチューブ5の外部表面を覆う接着剤3をエポキシ系接着剤とし、スリーブ2の外側でのルースチューブ5の外部表面を覆う接着剤7をシリコーン系接着剤などとしてよい。
【0070】
具体的に、接着剤7としてシリコーン系接着剤を用いた場合、前記シリコーン系接着剤は一般に耐湿性、耐水性に富みきわめて耐候性が良く、また、前記接着剤3を覆う構造となっているため、例えば高温高湿試験で接着剤3が劣化して接着強度が低下するのを低減でき、ビグテイル型光ファイバの信頼性を一層向上させることが可能である。
【0071】
加えて、前記シリコーン系接着剤は硬化後においても曲げなどの機械的なストレスが加わると弾性変形するため、光ファイバ自身が曲げなどの機械的なストレスを受けたとしても、前記シリコーン系接着剤の曲げ強度によって機械的ストレスは緩和されて、光ファイバがスリーブの光ファイバ挿入孔近傍で断線するのを回避することができる。
【0072】
以上これら上記の内容から、実際に本発明による新構造のピグテイル型光ファイバと、従来構造のピグテイル型光ファイバとをそれぞれ製作し、ヒートサイクル試験及び高温高湿試験の環境試験で比較して評価した。下記に組立手順と評価結果を示す。
【0073】
まず第一に、図1に示すように、外径φ2.55mm、長さ8.5mmの円筒状スリーブに、接着強度向上の手段として、スリーブ2の光ファイバ挿入孔側近傍の側端面部に段差部2aを設け、その段差部2aの先端に、全周にわたって連続的に張り出し部2cを設けたスリーブ2と、同じく図8に示すように、前記接着強度向上手段を備えていない従来型の外径φ2.55mm、長さ8.5mmの円筒状のスリーブ20をそれぞれ用意した。
【0074】
前記段差部2a及び張り出し部2cを設けたスリーブ2においては、段差部2aを形成するスリーブ2の光ファイバ挿入孔に近い先端に張り出し部2cの外径D1をφ1.9mmとし、その部分の軸線方向の距離(厚み)m1を0.2mmとし、段差部2aの溝の幅m2を0.4mmとした。そして、それぞれのスリーブ2及びスリーブ20の先端部に、キャピラリ1を圧入してフェルール構造とし、その後にキャピラリ1の細孔とスリーブ2の外径の同心度を高精度にするために、各フェルール10及び10’の外径をφ2.5mmとする外径成形加工を施した。ここで、各スリーブの光ファイバ挿入側の挿入孔の内径は、共にφ1mmであり、このとき、各スリーブの材質はステンレススチール(SUS304L)で、キャピラリ1の材質はジルコニアとした。
【0075】
次に、外径φ0.9mm、内径φ0.35mm、長さ16mmのルースチューブ5と、外径φ0.25mmのシングルモードファイバである片端部の一次被覆の一部を除去した光ファイバ6とを、ルースチューブ5内に、マスク剤4としてUV系接着剤を塗布し接着固定して、目止めをおこない、その後、キャピラリ1のテーパ穴部から細孔部に挿入し、前記ルースチューブ5と一体の光ファイバ6を、前記テーパ穴部入口部分とルースチューブ5端面との密閉空間をエポキシ系接着剤3’で充填塗布して一体に接着固定した。また同時に、スリーブ2の光ファイバ挿入孔側近傍の側端面部の段差部2aを覆うように接着剤3で図のように充填接着する。なお、前記エポキシ系接着剤3の硬化条件は、いずれも100℃、3時間とした。
【0076】
またこのとき、前記段差部2aを覆うエポキシ系接着剤3の径方向の最大外径値は、図に示すように前記スリーブ2の最大外径以下が好ましい。なお、ルースチューブ5は、ルースチューブ自身が高温高湿試験によって、なるべく伸縮変化がないように、接着前にあらかじめ単体で−40℃〜85℃のヒートサイクル試験(50サイクル)によってエージングが実施されているものを用いた。
【0077】
そして、接着剤3及び3’の硬化が完了した後、キャピラリ1の前方部における、片端部の一次被覆の一部を除去した光ファイバ6’の端面を、キャピラリ1とともに、スリーブ2の軸線方向と垂直な方向に対して、約8度の傾斜角度になるように斜めに研磨加工を行った。
【0078】
このようにして、本発明によるピグテイル型光ファイバと、従来のピグテイル型光ファイバとを、それぞれ50台ずつ製作し、ともに高温高湿の環境試験器に投入して、試験終了後のデータを比較した。試験条件は75℃/90%RHとして、試験期間は500時間とした。そして、高温高湿試験の終了後に、両ピグテイル型光ファイバの内部を確認するため、研削加工でその断面を外観的に評価した。その際の外観評価の合否判定は、スリーブ内部で光ファイバに断線が見られるか、あるいはクラックが確認されたものを不良とした。
この時の結果を表1に示す。
【0079】
【表1】
Figure 2004020754
【0080】
前記表1からわかるように、高温高湿試験の終了後において、本発明によるピグテイル型光ファイバは、従来のピグテイル型光ファイバと比べて、明らかに光ファイバの断線や光ファイバのクラックの発生といった不良が著しく低減され、製品の品質が常に維持されている。実際には、500時間の高温高湿試験後に、従来のピグテイル型光ファイバでは不良率が8%であったのに対して、本発明によるピグテイル型光ファイバでは1台の不良も見られず、不良率は0%であった。
【0081】
なお、本発明の実施例として、キャピラリ1およびスリーブ2に内包する光ファイバ6は1本としたが、1本に限らずに複数本の光ファイバ6を内包している場合でも、同様な効果を得ることができ、また実施例としてキャピラリの細孔は1個としたが、1個に限らずにキャピラリが複数個の細孔を有している場合でも、同様な効果を得ることができる。
【0082】
このように、光通信システムや光計測機器における光学デバイスの高信頼性化が、時代とともに求められつつある現在において、高い信頼性を有するピグテイル型光ファイバが必要とされている。しかし従来のピグテイル型光ファイバでは、高温高湿試験後において、スリーブの内部における光ファイバの断線や光ファイバのクラックの発生といった不良が一部で発生していたが、本発明の方法は、スリーブの光ファイバ挿入孔側近傍の側端面部に、段差部及び/又は張り出し部からなる接着強度向上の手段を設けていることから、接着強度を向上させることが可能となり、そのために高温高湿試験でスリーブの内部における光ファイバの断線や光ファイバのクラックの発生といった不良を低減することができ、高い信頼性と安定した品質を有するピグテイル型光ファイバを提供することが可能となった。
【0083】
【発明の効果】
以上、請求項1に記載の発明では、光源及びレンズ等の光学系部品により伝送された光信号を、光ファイバのコア内へ導くため、光ファイバの片側の端部を、キャピラリ及びスリーブ等により空間的に調芯して位置決め固定するフェルール保持構造をもつピグテイル型光ファイバにおいて、前記ピグテイル型光ファイバの入出射側端部の他端側における光ファイバ線が接着固定されるスリーブの挿入孔側近傍の側端面部に、外径が前記スリーブ外径より小さく、内径が前記スリーブ挿入孔径と同一な、スリーブと一体成形の軸方向に延設した段差部を設け、光ファイバ線を挿入孔側で接着剤により接着固定する際、前記スリーブの最大外径以下で側端面部を覆い、かつ前記段差部を接着剤でモールドした状態で、前記光ファイバ線の被覆部材と共に一体に接着固定したピグテイル型光ファイバとした。
【0084】
この構成によれば、スリーブの光ファイバ挿入孔側近傍の側端面部に、接着強度の向上手段としての抜け止め構造が形成され、構造上、熱による内部応力の発生に対し、接着面の接着強度を保持あるいは剥離を防止することができるため、高温高湿試験等の環境試験をおこなったとしても、従来のようなスリーブの内部における光ファイバの断線やクラックの発生といった不良発生を防止でき、高い信頼性と品質を有するピグテイル型光ファイバを提供することができる。
【0085】
また請求項2に記載の発明では、前記請求項1記載の内容に加え、前記段差部の形状が、延接した段差部の軸方向端部において、その端部に、円周外方に突出する張り出し部を設けたピグテイル型光ファイバとした。
【0086】
この構成により、光ファイバ線が接着固定されるスリーブの挿入孔側近傍の側端面部では、スリーブと一体成形の軸方向に延設した前記段差部に加え、その端部において、円周外方に突出する張り出し部を設けているので、光ファイバ線を挿入孔側で接着剤により接着固定する際、前記スリーブの最大外径以下で側端面部を覆い、かつ段差部と前記張り出し部を接着剤でモールドした状態で、前記光ファイバ及び被覆部材と共に一体に接着固定することにより、スリーブの挿入孔側近傍の側端面部での接着剤が、環境試験での熱応力による軸方向への抜けを完全に防止できる。
【0087】
また仮に、万が一接着剤硬化後に、環境試験等で接着強度を超える力により、一部の接着面の接着層が剥離したとしても、上記構造のような張り出し部を設けているので、接着剤が張り出し部あるいは実質的に形成される溝部に引っかかり、接着剤側、つまり光ファイバ線の被覆部材と一体の接着剤が、スリーブの軸線方向に移動することを規制し、そのため、キャピラリ側に固定された光ファイバ先端の芯線部が引っ張られることによる光ファイバの断線やクラックの発生といった不良を回避することができる。
【0088】
また請求項3記載の発明では、前記段差部の形状が、延接した段差部の軸方向端部において、その端部に、円周外方に突出する張り出し部を全周に渡って連続的に設けたピグテイル型光ファイバとした。
【0089】
この構成により、前記請求項2記載の発明と同様な効果が得られる。
【0090】
さらに請求項4に記載の発明では、請求項1記載の内容に加え、前記段差部の形状が、延接した段差部の軸方向端部において、その端部に、円周外方に突出する張り出し部を複数箇所に等間隔で設けたピグテイル型光ファイバとした。
【0091】
この構成により、光ファイバ線が接着固定されるスリーブの挿入孔側近傍の側端面部では、スリーブと一体成形の軸方向に延設した前記段差部に加え、その端部において、円周外方に突出する張り出し部を複数箇所に等間隔で設けているので、光ファイバ線を挿入孔側で接着剤により接着固定する際、前記スリーブの最大外径以下で側端面部を覆い、かつ段差部と前記張り出し部を接着剤でモールドした状態で、前記光ファイバ線の被覆部材と共に一体に接着固定することとなり、よってスリーブの挿入孔側近傍の側端面部での接着剤が、高温高湿試験での応力により軸方向に抜けるのを防止できるのに加え、同時に回転方向のねじれも防止できる。
【0092】
また仮に、万が一接着剤硬化後に、環境試験などで接着強度を超える力により、一部の接着面の接着層が剥離したとしても、このような複数の張り出し部を設けているため、接着剤が張り出し部、又は実質的に形成される回転方向の段溝部に引っかかり、接着剤側、つまり光ファイバ線の被覆部材と一体の接着剤がスリーブの軸線方向及び回転方向に移動することを規制し、そのため、キャピラリ側に固定された光ファイバ先端の芯線部が引っ張られ、あるいはねじれることによる光ファイバの断線やクラックの発生といった不良を回避することができる。
【0093】
また請求項5記載の発明では、前記段差部に備えられた前記張り出し部の側断面視形状が、スリーブの軸線方向に垂直な面方向に対し、前記入出射側の側端面に逆傾斜を持たせるように返し部分を新たに設けたピグテイル型光ファイバとした。
【0094】
この構造により、前記各張り出し部の上記記載の効果に加え、弾性変形する接着剤の抜け止め方向での保持状態が、逆傾斜の形状により、付加した返し部分でより確実に押さえられ、スリーブ端部での接着剤の保持状態の信頼性が向上する。
【0095】
また請求項6記載の発明では、前記段差部に備えられた前記張り出し部の側断面視形状が、スリーブの軸線方向に垂直な面方向に対し、段差部先端側が末広がりに逆三角形形状の傾斜面を持たせるように略円錐型のテーパ部を設けたピグテイル型光ファイバとした。
【0096】
この構成により、光ファイバ線が接着固定されるスリーブの挿入孔側近傍の側端面部では、スリーブと一体成形の軸方向に延設した前記段差部に加え、その端部において、段差部先端側が末広がりに逆三角形形状の傾斜面を持たせるように略円錐型のテーパ部を設けているので、光ファイバ線を挿入孔側で接着剤により接着固定する際、前記スリーブの最大外径以下で側端面部を覆い、かつ段差部と前記張り出し部を接着剤でモールドした状態で、前記光ファイバ線の被覆部材と共に一体に接着固定することとなり、よってスリーブの挿入孔側近傍の側端面部での接着剤が、高温高湿試験での応力により軸方向に抜けるのを防止できる。
【0097】
また仮に、万が一接着剤硬化後に、高温高湿試験などで接着強度を超える力により、一部の接着面の接着層が剥離したとしても、このような前記テーパ部を設けているため、接着剤がテーパ部斜面に引っかかり、接着剤側、つまり光ファイバ線の被覆部材と一体の接着剤が、スリーブの軸線方向に移動することを規制し、そのため、キャピラリ側に固定された光ファイバ先端の芯線部が引っ張られることによる光ファイバの断線やクラックの発生といった不良を回避することができる。
【0098】
さらに請求項7記載の発明では、前記段差部の円筒外周面に、1つ以上の凹凸状の段引き部が設けられたピグテイル型光ファイバとした。
【0099】
この構成では、段引き部は、前記段差部の円筒外周面に、所定の長さ及び所定の間隔で1つ以上、又は間欠的に複数個形成される凹形状の溝で、共に接着剤の軸方向への抜けを防止する方向、つまり軸方向に連立して配置されている。
【0100】
さらに請求項8記載の発明では、前記段差部の円筒外周面に、1つ以上のカギ裂き状の段引き部が設けられたピグテイル型光ファイバとした。
【0101】
この構成においても、カギ裂き状の段引き部は、前記段差部の円筒外周面に、所定の長さ及び所定の間隔で1つ以上、又は間欠的に複数個形成される凹形状の溝で、共に接着剤の軸方向への抜けと回転方向の回りを防止する方向に配置されている。
【0102】
これらの請求項7及び請求項8の構成では、前記請求項2〜4記載での張り出し部と同様な構造的な作用効果が得られる。
【0103】
さらに請求項9記載の発明では、前記段差部及び前記段引部の表面の一部または全部に、面粗度が粗い粗仕上げ面を併用して設けたピグテイル型光ファイバとした。
【0104】
この請求項9の構成により、前記請求項1〜8記載の段差部及び段引き部における接着部の表面状態向上し、また表面積が見かけ上増大し、前記接着剤とスリーブとの界面での密着力が向上して、接着強度が増加する。
【0105】
このため、接着剤硬化後の高温高湿試験などでの剥離限界が向上し、接着剤側、つまり光ファイバ線の被覆部材と一体の接着剤がスリーブの軸線方向に剥離することを防止し、そのため、キャピラリ側に固定された光ファイバ先端の芯線部が引っ張られることによる光ファイバの断線やクラックの発生といった不良を回避することができる。
【0106】
上記のように、本発明によれば、スリーブの光ファイバ挿入孔側近傍の側端面部に、接着強度向上の手段として、段差部及び/又は張り出し部等の前記接着剤保持部の抜け止め構造が形成され、構造上、熱による内部応力の発生に対し、接着剤部分の接着保持強度を維持あるいは補強し、接着剤の剥離と脱落による変形移動を防止することができるため、高温高湿試験をおこなった際に、従来のようなスリーブの内部における光ファイバの断線やクラックの発生といった不良を無くし、高い信頼性と安定した品質を有するピグテイル型光ファイバを提供することができる。
【0107】
また、これらの構成により、光ファイバが接着固定されるスリーブの挿入孔側近傍の側端面部では、スリーブと一体成形の軸方向に延設した前記段差部に加え、その端部において、円周外方に突出する張り出し部を設けているので、光ファイバ線を挿入孔側で接着剤により接着固定する際、前記スリーブの最大外径以下で側端面部を覆い、かつ段差部と前記張り出し部を接着剤でモールドした状態で、前記光ファイバ線の被覆部材と共に一体に接着固定することとなり、よってスリーブの挿入孔側近傍の側端面部での接着剤が、高温高湿試験での応力により軸方向に抜けるのを完全に防止できる。
【0108】
また万が一接着剤硬化後に、高温高湿試験などで接着強度を超える力により、一部の接着面の接着層が剥離したとしても、上記のような張り出し部を設けているため、接着剤が張り出し部あるいは実質的に形成される溝部に引っかかり、接着剤側、つまり光ファイバ線の被覆部材と一体の接着剤が、スリーブの軸線方向に移動することを規制し、そのため、キャピラリ側に固定された光ファイバ先端の芯線部が引っ張られることによる光ファイバの断線やクラックの発生といった不良を回避することができる。
【0109】
そしてまた、本発明によれば、接着剤の充填塗布および硬化後において、前記接着剤を含む保持部外径の最大値が、前記スリーブの最大外径以下となるように、接着剤の充填量及び粘度等を考慮して好適な位置に好適な形状を形成するように決められていることから、ピグテイル型光ファイバを位置決めして固定する際に用いるスリーブ外径を固定保持する部品である、図示していない前記スリーブの外径より僅かに大きい内径を有するフェルールホルダ部品等が、ピグテイル型光ファイバのスリーブの光ファイバ挿入孔近辺の前記接着剤に影響されることなく、例えば挿入時にフェルールホルダ部品に引っかかることなく、スムーズにセットすることができる。
【0110】
さらに、本発明によれば、段差部及び張り出し部がスリーブの光ファイバ挿入孔側の側端面部に、前記スリーブ最大径以下の寸法で形成されているので、スリーブ径方向への寸法を一定にしながら、径方向の接着強度を常に保ってさえいれば、前記スリーブを軸線方向に短くしてもよく、そのためフェルール全体を軸方向においても小型化することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るピグテイル型光ファイバの構造の一例を示す断面図である。
【図2】本発明に係るピグテイル型光ファイバのスリーブ側端面構造の形状の一例を示す部分拡大断面図である。
【図3】本発明に係るピグテイル型光ファイバのスリーブ側端面構造の形状の一例を示す軸方向から見た拡大概略図である。
【図4】本発明に係るピグテイル型光ファイバのスリーブ側端面構造の形状の別の一例を示す部分拡大断面図である。
【図5】本発明に係るピグテイル型光ファイバのスリーブ側端面構造の形状の別の一例を示す部分拡大断面図である。
【図6】本発明に係るピグテイル型光ファイバのスリーブ側端面構造の形状の別の一例を示す部分拡大断面図である。
【図7】本発明に係るピグテイル型光ファイバの接着剤2層構造の一例を示す断面図である。
【図8】従来のピグテイル型光ファイバのスリーブ側端面構造の形状の一例を示す断面図である。
【図9】従来のピグテイル型光ファイバにおける、高温高湿試験後のスリーブ内部での光ファイバ断線の一例を示す断面図である。
【符号の説明】
1  キャピラリ
2  スリーブ
2a  段差部
2b  側端面部
2c  張り出し部
2e  段引き部
3  接着剤(エポキシ系接着剤)
4  マスク剤(UV系接着剤)
5  ルースチューブ
6 、6’  光ファイバ
7  接着剤(シリコーン系接着剤)

Claims (9)

  1. 光源及びレンズ等の光学系部品により伝送された光信号を、光ファイバのコア内へ導くため、光ファイバの片側の端部を、キャピラリ及びスリーブ等により空間的に調芯して位置決め固定するフェルール保持構造をもつピグテイル型光ファイバであって、
    前記ピグテイル型光ファイバの入出射側端部の他端側における光ファイバ線が接着固定されるスリーブの挿入孔側近傍の側端面部に、外径が前記スリーブ外径より小さく、内径が前記スリーブ挿入孔径と同一な、スリーブと一体成形の軸方向に延設した段差部を設け、光ファイバ線を挿入孔側で接着剤により接着固定する際、前記スリーブの最大外径以下で側端面部を覆い、かつ前記段差部を接着剤でモールドした状態で、前記光ファイバ線の被覆部材と共に一体に接着固定したことを特徴とするピグテイル型光ファイバ。
  2. 前記段差部の形状が、延接した段差部の軸方向端部において、その端部に、円周外方に突出する張り出し部を設けたことを特徴とする請求項1記載のピグテイル型光ファイバ。
  3. 前記段差部の形状が、延接した段差部の軸方向端部において、その端部に、円周外方に突出する張り出し部を全周に渡って連続的に設けたことを特徴とする請求項1記載のピグテイル型光ファイバ。
  4. 前記段差部の形状が、延接した段差部の軸方向端部において、その端部に、円周外方に突出する張り出し部を複数箇所に等間隔で設けたことを特徴とする請求項1記載のピグテイル型光ファイバ。
  5. 前記段差部に備えられた前記張り出し部の側断面視形状が、スリーブの軸線方向に垂直な面方向に対し、前記入出射側の側端面に逆傾斜を持たせるように返し部分を設けたことを特徴とする請求項2〜4記載のピグテイル型光ファイバ。
  6. 前記段差部に備えられた前記張り出し部の側断面視形状が、スリーブの軸線方向に垂直な面方向に対し、段差部先端側が末広がりに逆三角形形状の傾斜面を持たせるように略円錐型のテーパ部を設けたことを特徴とする請求項1記載のピグテイル型光ファイバ。
  7. 前記段差部の円筒外周面に、1つ以上の凹凸状の段引き部が設けられたことを特徴とする請求項1記載のピグテイル型光ファイバ。
  8. 前記段差部の円筒外周面に、1つ以上のカギ裂き状の段引き部が設けられたことを特徴とする請求項1記載のピグテイル型光ファイバ。
  9. 前記段差部及び前記段引部の表面の一部または全部に、面粗度が粗い粗仕上げ面を併用して設けたことを特徴とする請求項1〜8記載のピグテイル型光ファイバ。
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